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「核兵器なき世界への連帯―勇気と希望の選択」展

Filmed by Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director, President of INPS Japan

この展示会は、10月2日~13日にカザフスタンの首都ヌルスルタンで開催された。創価学会インタナショナル(SGI)は、長崎と並んで原爆が初めて使用された広島で2012年に最初の展示会を開催して以来、これまで20カ国90都市で開催してきたが、ロシア語版の展示が披露されたのは今回が初めてだった。INPSからは、INPS Japanの浅霧勝浩マルチメディアディレクターが、ヌルスルタンでSGI代表団と合流し、展示会開会式と、旧セミパラチンスク核実験場跡、セメイ訪問に随行し、ドキュメンタリーを制作した。

2019 marks the 30th anniversary of the end of nuclear weapons testing in Semipalatinsk, the primary testing venue for the Soviet Union’s nuclear weapons, the 10th anniversary of the entry into force of the Treaty on a Nuclear-Weapon-Free Zone in Central Asia, and the ratification by Kazakhstan as the 26th country to ratify the Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons.

This year also marks the first showing of the Russian-language version of the exhibition ‘Everything You Treasure – For a World Free from Nuclear Weapons’, from October 2-13 in Nur-Sultan city, the capital of Kazakhstan.

The exposition which Soka Gakkai International (SGI) made in collaboration with International Campaign to Abolish Nuclear Weapons (ICAN) was first shown in 2012 in Hiroshima, the sight of first ever nuclear bombings along with Nagasaki. It has since been seen in 90 cities in 20 countries. Kazakhstan is the 21st country to host it.

IDN-INPS Multimedia Director Katsuhiro Asagiri, after covering the opening ceremony of the exhibition at the Library of the First President of the Republic of Kazakhstan – Elbassy, joined the SGI delegation headed by Mr. Hirotsugu Terasaki, Director General of Peace and Global Issues of the SGI, a two-day field trip to Semey city and Kurchatova town in East Kazakhstan Region, once the center of operations for the adjoining Semipalatinsk Nuclear Test Site.

カザフスタン下院議会議員Gennadi Shipovckihが展示会開会式に寄せたメッセージ

Filmed by Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director, President of INPS Japan

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[INPS-IDN – October 2019]

「足るを知る経済」を実践するタイ農民

【チャンタブリ(タイ)IDN=ブロンウェン・エバンズ】

タイの農民が有機農業を始めるのには2つの理由がある。ひとつは健康面、もうひとつは経済面である。クムナン・チャンタシットさん(73)にとっては経済面が動機だった。タイ東部チャンタブリ県に住む彼は、幼少期から同じ土地を耕し続けている。豊かな火山性の土壌であるにも関わらず、かつては必要だと考えていた肥料や除虫剤の代金を支払うために、彼はますます借金地獄にはまり込んでいった。

26年前、彼はようやく他の方策に目覚めた。それは、タイの故プミポン・アドゥンヤデート国王が提唱した「足るを知る経済」だ。わずか4エーカーで家族の生活を支えられるという統合的な農業のやり方である。これに対し、クムナンさんの土地は8エーカーもあった。

Bhumibol Adulyadej/ By John Dominis, Public Domain
Bhumibol Adulyadej/ By John Dominis, Public Domain

彼は、この原則に従って、果実樹、魚の生息する池、薬草や鶏などのある豊かな農場を作り上げ、防虫剤や肥料を止めてコンポストを使い、自分の作った薬草と余った果物で作った有機茶を作ることにした。このやり方はうまくいって借金を返すこともできた。今では、孫やひ孫を十分養うだけの収入があり、この手法を駆使して尊敬を集める先駆者になった。

彼の農場を訪問してまず気づくことは、虫や腐葉を含んだ土壌であり、巨大なタコノキやカルダモンを含んだ豊かな表土である。長年にわたって耕され、育てられてきたものだ。果樹に共に育てられているこれらの木々は生物多様性を増すものであり、微生物を繁殖させ、年間を通じた収穫を可能にする。農業用水は、土壌に栄養を加える魚が生息する池から来る。

他方で、タイ土着の赤ヤケイの子孫である野生の鶏100羽が土地を耕し、昆虫を遠ざけ、卵を産んでくれる。クムナンさんはその卵を使って、果実の栽培や木々の育成に役立つホルモン剤を自家製造している。

森の木々は生い茂り健康である。葉の緑は深く、土壌が豊かであることを示している。彼は主に、ドリアンやマンゴスチン、ロンゴン、ランブータンといった、タイ東南部でよく育つ熱帯の果実を育てている。パパイヤやバナナ、ココナッツ、ライムもある。最も高い木々は東南アジア原産のドリアンだ。木は45メートルの高さにもなり、ちょうどフットボールサイズでとげのある果実を持つ太い枝が生えている。

ドリアンはタイでは「果実の王様」と呼ばれている。甘くクリーミーな果肉はアジアで人気があり、価格も高い。クムナンさんの果樹園のドリアンの木の一つは樹齢55年。年間100~150キロの実を生らせ、3000ドル以上の収入を生む。森林の中層にはロンゴンとマンゴスチン、ライムの木があり、地面近くには、ハーブや、最近植えたばかりのドリアンの木が生えている。

SDGs Goal No. 15
SDG Goal No. 15

木々が成長すると、太陽光に向かう性質のあるバナナの木よりも高くなる。バナナが切られると、土壌には繊維や微生物、カリウムが加えられる。コショウの木が、他の木々に沿って成長する。

土壌かく乱の制限、植物による土壌の被覆、生体系への動物の統合といった、バイオダイナミックスとパーマカルチャーに共通した考え方に加えて、クムナンさんは、「足るを知る経済」に関するプミポン国王の哲学的な教えを取り入れている。

その教えとは、穏健、合理性、予測不能な出来事や危機に対する適切な防衛といった面で、人間の行動や資質の涵養を謳うものだ。我々は、広い知識を持ち、行動において思慮と他者へのケア、倫理を絶やさず、正直・誠実・勤勉・自制をもって活動せねばならない。タイは仏教国であるから、「足るを知る経済」は仏教からの考えを引用している。それは、「中庸」を重んじ、自己からの極度の収奪や行き過ぎた消費といった極端を避けるものだ。

Map of Thailand
Map of Thailand

この哲学の不可欠の部分は、日常生活における独立を目指すという点だ。したがって、浪費をせず、適度な収入と、生存を維持するに足るレベルの生産を旨とする。それ以上のものに関しては分割をし、一つは他者に与え、一つは自ら取り、一つは販売する。この道を取ることによって、我々は強さを備え、生活における均衡と調和を保つことができる。

クムナンさんは最近、自分の土地を3人の子どもに分け与えた。たった8エーカーで多くの人の生存を支えることができるとは驚くべきことだ。土壌を育て、植物を植え、ダイナミックな生態系を作っていくことの価値をこれほど証明するものはない。(原文へ)

※ブロンウェン・エバンズは、ニュージーランド出身で、受賞歴のあるジャーナリスト、キャスター。タイに移住して20年、東南岸チャンタブリにあるファアサイ・リゾート&スパでエコリゾートを作っている。パーマカルチャーの原則に依りつつ、責任ある観光や、自然の聖地・有機農場づくりに励んでいる。

INPS Japan

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国連ハイレベル会合、CTBT早期発効を訴え

【ニューヨークIDN=J・ナストラニス】

10年前の2009年12月2日、第64回国連総会が8月29日を「核実験に反対する国際デー」と定める決議64/35を全会一致で採択した。決議は、カザフスタンを中心とする多くの共同提出国によって出されたもので、1991年8月29日にセミパラチンスク核実験場が閉鎖されたことを記念するものだ。

第74回国連総会は9月9日、世界各地で8月29日に行われた各種イベントのフォローアップとして、ハイレベル会合を招集した。8月29日は旧ソ連・セミパラチンスク核実験場が1991年に閉鎖された日でもあり、1949年にソ連の核実験が初めて実施された日でもあるという、象徴的な一日である。

決議は「核爆発実験やその他の核爆発の効果と、核兵器なき世界という目標を達成するための一つの手段として核実験を禁止する必要性に関して」社会に認識を高め教育を充実させることを求めている。

UN Secretariate Building/ Katsuhiro Asagiri
UN Secretariate Building/ Katsuhiro Asagiri

さらに、「核軍縮と核兵器の完全廃絶が、核兵器使用および使用の威嚇を予防する唯一の保証であるとの考えから」、国連総会は9月26日を「核兵器の全面的廃絶のための国際デー」と定め、国際的な取り組みを通じて、核兵器の完全廃絶という目的を前進させることを狙っている。

あらゆる形態の核実験を禁止する国際法としては、1996年に採択された包括的核実験禁止条約(CTBT)がある。しかし、発効要件国(=付属書IIの諸国)44か国中8カ国が批准していないことから未発効の状態にある。8カ国とは、中国・エジプト・イラン・イスラエル・米国(署名済み)、インド・北朝鮮・パキスタン(未署名)である。

CTBTは、どこでも、誰によるものであっても、あらゆる核爆発を禁じている。ジュネーブ軍縮会議で条約交渉がなされ、国連総会が採択、1996年9月24日に署名開放された。それ以降、条約はほぼ普遍的な地位を確立した。現在、184カ国が署名し、168カ国が批准を済ませている。

条約が発効すれば、核実験を禁止する法的拘束力のある規範が確立することになる。また、核実験が引き起こす人的被害や環境汚染の予防にも寄与することとなる。

国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、ハイレベル会合での開会挨拶で、「CTBTは最も多くの支持を集めている条約の一つであり、『国際監視制度(IMS)』というその検証メカニズムによって平和と安全が促進されてきた。」と指摘したうえで、条約発効に批准が必要な8カ国に対して速やかに批准するよう訴えた。

グテーレス事務総長は、核兵器が人類と環境にもたらす深刻な影響を指摘して、「21世紀の今、核実験は容認しがたい。また、CTBTの発効を阻止する動きも、核兵器の質的・量的拡散に対する制約と核廃絶に向けた実践的な措置を押しとどめようとする動きも、容認しがたい。」と語った。

IMS/ CTBTO
IMS/ CTBTO

グテーレス事務総長が昨年5月24日に発表した軍縮アジェンダ「私達共通の未来を守る」で示していたように、核実験に反対する規範は、軍縮と不拡散双方の目的に寄与する基準となるものの一例だ。CTBTは、新型核兵器の開発を抑制することで、軍拡競争に歯止めをかけている。また、別の国が不拡散の約束を破って、核兵器を開発・生産し、結果として取得することに対する強力な規範的障壁ともなっている。

Photo: UN Secretary-General António Guterres speaks at the University of Geneva, launching his Agenda for Disarmament, on 24 May 2018. UN Photo/Jean-Marc Ferre.
Photo: UN Secretary-General António Guterres speaks at the University of Geneva, launching his Agenda for Disarmament, on 24 May 2018. UN Photo/Jean-Marc Ferre.

CTBTO準備委員会のラッシーナ・ゼルボ事務局長は、「CTBTはきわめて重要かつ長らく待ち望まれているものであり、国際的な核不拡散・軍縮レジームの活力を保たせるのに一役買うであろう。我々が協力̪しあえばこの崇高な目的を達することができると確信している。核実験禁止への我々のコミットメントを強化することで、この『核実験に反対する国際デー』を迎えよう。」と語った。

ゼルボ事務局長は基調講演で、「『核実験に反対する国際デー』は、我々の仕事は未完のまま(=CTBTが発効に至っていない)とのメッセージを国際社会に対して明確に示す機会だ。」と語った。

ゼルボ事務局長はまた、「核実験を永遠に廃絶する任務は、まだ終わっていない」と指摘するとともに、「今日の記念日が、核実験の危険から世界を解き放つという目的を最終的に実現するための具体的措置をとるよう各国に促すものであることを期待する。この崇高な目標に我々を導く唯一の道は、CTBTを検証可能にすること、普遍性を達成することである。」と語った。

ゼルボ事務局長は、核兵器の保有を放棄し、国内に配備されていた旧ソ連の核弾頭をロシアに移送し、セミパラチンスク核実験場を永久に閉鎖する歴史的決定を下したカザフスタンのヌルスルタン・ナザルバエフ初代大統領の勇気とリーダーシップを褒め称えた。

また、セミパラチンスクで実施された500回近くの核実験によって影響を受け、実験場閉鎖に重要な役割を果たした科学者、公務員、芸術家、一般市民など、カザフスタンの人々の勇気と決意に賛意を送った。

「本日、核実験のすべての犠牲者に哀悼の意を示し、人生に悪影響を受けた人々に敬意を払いたい。核実験と核爆発の恐怖を繰り返すことのないようにできるかどうかは、彼らと来たる世代に掛かっている。」と、間もなく退任するマリア・フェルナンダ・エスピノーサ・ガルセス国連総会議長は語った。

Semipalatinsk Former Nuclear Weapon Test site/ Katsuhiro Asagiri
Semipalatinsk Former Nuclear Weapon Test site/ Katsuhiro Asagiri

ガルセス議長は開会挨拶の冒頭で、「1996年に国連総会がCTBTを採択したことは、軍縮に向けた道のりにおいて重要な瞬間であった。」と指摘するとともに、付属書IIの諸国に対して、「このきわめて重要な条約が発効するように」早期にCTBTを批准するよう訴えた。(原文へ) |アラビア語|

INPS Japan

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国連、インドの原子力供給国グループ入り支持を否定

【ニューヨークIDN=シャンタ・ロイ】

核兵器を保有するインド、パキスタン、イスラエルの3カ国は、核不拡散条約(NPT)の「核兵器国」として認知されていない。この核兵器国という「特権」は米国・英国・ロシア・フランス・中国だけに与えられているものであるが、この5カ国は同時に「原子力供給国グループ」(NSG)の加盟国でもある。

しかし、『エコノミック・タイムズ誌』(ニューデリー)は、「待ち望まれたインドのNSG加盟をアントニオ・グテーレスが支持」と題する記事で、「インドは民生用核事業に対して国連という大きな支援を得た。アントニオ・グテーレス事務総長が、ナレンドラ・モディ首相との会談でインドのNSG加盟支持を表明したのである。」と報じた。

国連のファルハン・ハク副報道官に、事務総長による支持の有無について尋ねると、「事実ではありません。その議題は会合で上がっていません。」と回答した。

しかし、インドのNSG加盟に関する報道は、核専門家の間に懸念を引き起こしている。

Jayantha Dhanapala
Jayantha Dhanapala

元スリランカ大使で元国連事務次官(軍縮担当)のジャヤンタ・ダナパラ氏はIDNの取材に対して、「インドは事実上の核保有国ではあるが、法律上の核兵器国ではない。」と語った。米国や英国、ロシア、フランス、中国のようなNPT加盟国の目からすれば、インドは「核兵器国」ではないのである。

「したがって、インドには、NPTの認める核兵器国が享受する権利が与えられない。仮に原子力供給国グループに入るなら、それは正当化されることになる。」とダナパラ氏は語った。

NPTは5つの「核兵器国」を認知しているだけである。イスラエルは核保有の事実そのものを認めていない。

「もちろん、NPTは署名当時の現状を反映したものだ。インドはこれに不満を持ち、『大国クラブ』に属するために核兵器国としての認知を得ようと多大なる努力をしてきた」とダナパラ氏は語った。

ブリティッシュ・コロンビア大学リュー国際問題研究所長で、軍縮・グローバル・人間の安全保障プログラムの代表を務めるM・V・ラマナ博士は、「インドのNSG加盟問題が国連事務総長との会談で話題に上がったといくらインドの首相が主張したとしても、2つの点が強調されねばならない。」と語った。

第一に、事務総長がこの問題で対処できることはない、という事実である。NSGは、核燃料・技術の貿易を規制する一種のカルテルであり、全会一致方式で運営されている。したがって、48の加盟国すべてが決定に合意しなくてはならない。

現実には、そうした意見の一致が得られる可能性はほとんどない。「従って、インド首相が国連事務総長の意向について何事かを語ったとすれば、それは単にこの問題への注目を集める手段であり、インドにCO2削減を迫る圧力を逸らすものでしかない。」とラマナ博士は語った。

第二に、NSGに加盟しても、インドの原子力開発に影響はない。「NSG加盟国が2008年に合意した例外措置によって、インドは既に原子炉やウランを輸入できるようになっている。」とラマナ博士は指摘した。

「原子力がインドの発電量のごく一部である僅か3%しか占めていない理由は、原子力がきわめて高価だからだ。」「実際、輸入された原子炉は国内で設計されたものよりもはるかに高価である。従って、輸入が増えれば電気はもっと高くなる。」とラマナ博士は主張した。

軍備管理協会(ACA、米ワシントン)によれば、1975年創設のNSGは加盟48カ国から成り、非核兵器国に対する輸出管理の調整を自発的に行っている。

NSGは、民生用核物質と核関連機器・技術の移転を規制している。

加盟国は以下の通り。アルゼンチン、オーストラリア、オーストリア、ベラルーシ、ベルギー、ブラジル、ブルガリア、カナダ、中国、クロアチア、キプロス、チェコ共和国、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイスランド、アイルランド、イタリア、日本、カザフスタン、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、ロシア、セルビア、スロバキア、スロベニア、南アフリカ、韓国、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ、ウクライナ、英国、米国。

NSGは、商業用・平和目的の核輸出が核兵器に使用されることの予防を目的としている。

ACAによると、核輸出が兵器開発に使用されないようにするために、NSG加盟国は信頼醸成的な国際措置や査察に従わない国々との核貿易を禁止することが期待されている。

「戦争を超える世界」の理事長であり、「核時代平和財団」の国連NGO代表であるアリス・スレイター氏は、「インドのNSG加盟を支持することは、すでに傷ついているNPTの意義を大きく損なうものだ。」と語った。

Alice Slater
Alice Slater

1970年に成立したNPTは、当時の核兵器国(米国・ロシア・英国・フランス・中国)に核軍縮に向けた誠実な努力を行うことを義務づけている。見返りに、非核兵器国は核兵器を取得しないことを約束しているが、インドやパキスタン、イスラエルは、その後核兵器を自ら製造して、この枠からは外れている。

NPTは、加盟している非核兵器国は、核兵器を取得しないとの約束を行う見返りに、原子力の平和利用を認められると規定している。

しかし、平和目的での核技術を共有するためにはNPTに加盟していなくてはならないとスレイター氏は説明する。彼女は、「宇宙への兵器と原子力の配備に反対するグローバルネットワーク」の理事、「アボリション2000」グローバル評議会委員、「核兵器禁止US」アドバイザーのひとりでもある。

軍民両用核技術の販売を規制するというNSGの本来の目的は、いわゆる「原子力の平和利用」という形で非核兵器国が核爆弾製造へのカギを手にする「不可侵の権利」を認めたNPTの致命的な欠陥を補おうとした、ただの「ザル法」以上のものではない。

NPT非加盟国の加入容認という、NSGが認めようとしている今回の新たな例外は、既に疑問符がつけられているNPTの意義に対する重大な一撃となる。「これまでのNPTは、核軍縮を実行するという核兵器国の約束を履行することができていない。」とスレイター氏は語った。

IAEAでNSG連絡官をかつて務めたことのあるタリク・ラウフ氏はIDNの取材に対して、「第一に、インドメディアにおけるこの報道は、ニューヨークの国連本部そのものによって否定されている。このインドメディアは、記事によって事態を動かそうとしたのではないか。こうしたやり方は珍しくない。私の見方では、過去にもインドメディアは意図的に誤った報道をしたことがある。あるいは、インドのNSG加盟に対する国際的支持に関して前進をもたらそうとしたか。インド外務省の直接・間接の支援がこの記事にあったかどうかは、わからない。」と語った。

第二に、ラウフ氏の意見によると、国連や国際原子力機関(IAEA)、あるいはその他の国際機関にも、NSGやMTCR、ワッセナー協定、オーストラリア・グループのような自発的組織に、ある国が加盟することに賛成だとも反対だともいう権限や義務はない。

上記の組織はそれぞれ、核兵器、ミサイル、通常兵器、化学・生物兵器の輸出規制を自主的に行うグループだが、これらは国連憲章の統制には服していないし、国連総会によって承認されたものでもない。「NSGに関しては、NPT再検討会議の成果文書や総会で承認されたものでもない。」とラウフ氏は語った。

「IAEAは情報通知(INFCIRC/254)という形でNSGガイドラインを公にしているが、これらの文書は単に情報提供のためのものであり、IAEA加盟国からの要請によって配付され、法的な根拠はない。」とラウフ氏は語った。ラウフ氏は、2015年NPT再検討会議軍縮委員会議長の元特別アドバイザーであり、IAEA検証・安全保障政策調整局長、IAEAのNSG連絡官も務めた経験がある。

Tariq Rauf
Tariq Rauf

第三に、「参加政府」(PG)と自らを呼ぶNSG加盟国は、ブッシュ政権からの強い圧力と嫌がらせによって、自らの指針と政策に違反した。インドにNSGガイドラインからの「逸脱」を認め、核関連品目をインドと取引することを容認したのである。

インドに課された条件は、軍民の核施設を分離し、民間施設をIAEAの保証措置下に置くこと、IAEAの追加議定書を履行すること、輸出管理に関する国内法を制定することであった。

「インドはIAEAに既存及び建設中の22の民間核施設のリストを提出し、(包括的ではなく)項目ごとの保障措置下に置いた。しかし、インドが建設した、プルトニウムが製造可能なすべての重水炉(CANDU炉のコピー)や、プルトニウム再処理施設はここから外された。また、外国からの原子力協力が得られるという条件を保障措置受け入れの条件にした。そうした協力がなければ、保障措置はないということである。」

ラウフ氏はまた、「NSGがインドに与えた『免除」』は、1995年と2000年にNPTが全会一致でなした合意に反するものだ。」と指摘した。これは、NPT上の非核兵器国との原子力協力にあたっては、フルスコープの(=包括的な)保障措置を条件としなくてはならない、とするものだった。

第四に、2008年のNSGの免除によって、インドが核保有国として認知されたり正当化されたわけではない。単に核関連品目の貿易を容認したに過ぎない。しかしインドは、そうした解釈を施している。

「第五に、インド、続いてパキスタンが、NSGへの加盟を正式に申請しているが、NSGの多くの加盟国がインドはよくてもパキスタンは受け入れられないという態度を取っている。」と、ラウフ氏は指摘した。

ラウフ氏は、中国とトルコが、印パ両国を同時に加盟させるか、さもなくば両者とも認めないとして、インドに関するNSGの全会一致の合意を阻んでいる、と語った。もしインドが(先に)加盟すれば、パキスタンが加盟する全会一致の決定を阻むこともできるからだ。

NSGはこの問題に対処し続けている。NSGは、新加盟に関して「基準によるアプローチ」を追求しているが、一部の加盟国は、ある国がそうした基準を満たしていたとしても、政治的理由からその国の加盟を阻みたいと考え、同アプローチには反対している。

「NSG加盟国が、自らは包括的核実験禁止条約(CTBT)に署名しながら(中国やアメリカの例にみられるように、すべてが批准しているわけではないが)、CTBT加盟をNSG加入の要件にすることに否定的なのは、きわめて残念だ」とラウフ氏は主張した。(原文へ)

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This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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移民らが、リビアからルワンダに移送される

【IDN/GINニューヨーク=リサ・ビベス】

欧州諸国は、アフリカからの移民が欧州側に上陸しないように「壁(海の壁)」を構築している。欧州連合からの資金とアフリカ諸国の協力のもと、難民らは地中海から遥か離れた難民収容センターに移送され、そこで難民申請をすることになっている。ちょうど、ルワンダが破壊的なリビアの内戦から逃れようとする約500人の難民を一時的に受入れる契約に署名したところだ。

しかし、ルワンダのポール・カガメ大統領は単に寛容さから難民の受入れに合意したわけではない。この措置に対する外交的な見返りを欧州諸国に求める可能性が高い。つまり、今回の措置でもって、移民・難民問題に対してルワンダ政府が示したリーダーシップを欧州諸国が強調する一方で、最近同国で起った人権侵害については黙認するという要求だ。

またこの措置は移民や難民に代償を強いる可能性がある。ルワンダは既に148,000人の難民を受入れており、彼らには働く権利を含む社会的・経済的権利が保障されてはいるが、書面上の権利が必ずしも実際に守られているわけではない。ルワンダ在住の難民は、しばしば公共サービスや就労機会を得るのに四苦八苦しているのが現状である。さらにルワンダ政府は、難民キャンプにおける差別や食料不足について抗議した難民を暴力的に抑圧してきた。

Map of Ruwanda
Map of Ruwanda

ルワンダはまた、深刻な人権侵害の問題を抱えている。昨年、難民に対する月当たりの食糧支援額が8.9ドルから6.7ドルに引き下げられたことから、コンゴ民主共和国からの難民が国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の外で抗議活動を行った。これに対して警察が難民に発砲する事態に発展したのである。その結果9人が死亡。この発砲事件から1年が経過するが、ルワンダの警察当局は、この死者を出した発砲事件に関する調査報告書を公表していない。また、この過剰な武力行使を行った責任者の特定もしていない。

「非武装の抗議参加者に対して発砲するなど決して正当化できません。その発砲事件で実際に何人が犠牲になったのかを認めようとせず、責任者に責任を問わないウガンダ政府の姿勢は、あたかも犠牲者の墓を踏みつけているような行為です。」とヒューマン・ライツ・ウォッチの中央アフリカ事務所長のルイス・ムドゲ氏は語った。

一方、必死の難民を受入れるルワンダ政府の新たな役割によって、リビアから既に3000人近くの難民を受入れていると報じられているニジェールの難民収容施設にかかる負担が緩和されることが期待されている。

ニジェールの難民キャンプに避難してきた人々はこの施設を一時的な受け入れ場所として、国連の移住機関の支援を得て故郷に帰還するか、欧州に移住することとなっている。しかし欧州連合による避難民の受入れが遅々として進まないため、この事業はこれまでに何度も問題にぶつかってきた。この実態は、この難民対策における根本的な欠陥を浮き彫りにしている。つまり、地中海から遠く離れた国に設けた難民収容施設の規模があまりにも小さく、難民の再定住に関する受入国による誓約もあまりにも少ないという欠陥だ。

この間、数万人におよぶ移住者や難民申請者が、リビア各地に点在する民兵組織が支配する収容所で身動きがとれないままでいる。そしてこれらの収容所では移住者らが奴隷や売春婦として売られたり、横になって寝る空間が確保できないほどすし詰め状態で拘置されている。(原文へ)

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【東京IDN=池田大作】

「最も多くの人が共有するものは、最も注意が払われにくい」とは、古代ギリシャの哲学者・アリストテレスの箴言である。

人間が陥りやすい心理を剔抉した言葉だが、現代においてその意識転換が特に急務となっているのは、地球温暖化の防止に向けた取り組みといえよう。

4年前、その国際的な枠組みとなる「パリ協定」が合意され、対策の強化が目指されるようになったものの、国連のアントニオ・グテーレス事務総長が人類の「生存の脅威」と警鐘を鳴らすように、“気候変動が我々の取り組みを上回るスピードで進んでいる”という状況が生じているからだ。

実際、今年に入ってからも、ヨーロッパ各国やインドを熱波が襲ったほか、シベリアやアラスカなどの北極圏が記録的な高温に見舞われた。世界気象機関(WMO)は、各地で起こる異常気象の原因は一様ではないが、長期的な地球温暖化の傾向と関係している面は否めず、極端な異常気象は今後も続くとの予測を示している。

こうした状況を踏まえ、「気候危機」や「気候非常事態」との言葉も叫ばれる中、9月23日にニューヨークの国連本部で気候行動サミットが開催される。温室効果ガスの削減といった温暖化の“原因”をめぐる対策とともに、異常気象がもたらす被害という温暖化に伴う“影響”をめぐる対応について、各国が連帯した行動を強めていくことができるのかどうか――。その正念場を迎えているのである。

南極とグリーンランドの巨大な氷床の融解が引き起こす海面上昇や、熱波と集中豪雨などの異常気象による被害は、さまざまな国の経済や産業に打撃を与えるだけではない。今や気候変動は、強制的な移動を余儀なくされる人々を増加させる要因ともなっている。

Toda Peace Institute
Toda Peace Institute

私が創立した戸田記念国際平和研究所では、近年、この問題に焦点を当てた「気候変動と紛争」と題する研究プロジェクトを推進してきた。その研究を通して浮き彫りになったのは、太平洋の島嶼国の人々が直面している状況の深刻さである。

この地域では、海面上昇などの影響を特に強く受ける中で、他の場所への移住を迫られる人々が少なくない。しかし、その移住がどのような重い意味を持つのかという現実は、しばしば見過ごされてきた。

多くの島では、生まれ育った土地を“母”のような存在として捉える伝統があり、深い精神的つながりをもった土地からの移動を迫られることは、自分自身の根源的なアイデンティティーを失うことに等しい。そしてまた、生まれ育った土地には、新しい場所への移住による「物理的な安全環境」の確保だけでは決して得ることのできない、「存在論的な安心感」ともいうべきものがあるのではないか――。

研究プロジェクトでは、こうした人間と土地との関係性に対する眼差しを、気候変動の対策を考える上での重要な要素の一つとして組み込む必要があると提起しているのだ。

この眼差しの問題を考えるにつけ、私が思い起こすのは仏教で説かれる「沙羅の四見」の話である。同じ一つの場所を見ても、見る人の心の状態によって風景の映り方が違ってくることを示唆した譬えだ。

例えば、同じ森林を見ていても、自然の美しさに着目する人もいれば、経済的な生産性の観点から価値を判断しようとする人もいる。

問題なのは、その映り方の違いによって、自分の意識にないことが自分の世界から欠落してしまうことだ。その結果、ある人々にとって“かけがえのない重み”を持つものが奪われる危機が生じていても、多くの人が気づくことなく事態が悪化してしまう恐れがある。

同じように、気候変動の対策を考える際にも、経済的な影響のような数値化されやすいデータだけに目を向けるのではなく、温暖化に伴う被害で苦しむ各地の人々をはじめ、ジェンダーなどの差別構造によってもともと弱い立場にある人々の思いを、十分に汲み取った対策を講じていく必要があるといえよう。

その意味で、気候行動サミットに出席する各国の首脳らに求められるのは、地球温暖化という課題を通して“世界とどう向き合うのか”を共に見つめ直し、行動の連帯を強固にすることではないだろうか。

「パリ協定」の積極的な推進のために、発電や移動手段、食料の生産と流通をはじめ、あらゆる分野での温室効果ガスの削減とともに、植林などの温室効果ガスの吸収量を高めるための方策に関し、英知を結集しなければならない。

国連では、この開催に先駆ける形で9月21日に、世界の青年たちの代表が集っての「ユース気候サミット」も行われる。

地球温暖化に歯止めをかけることは容易ではないが、青年たちによるイニシアチブを積極的に受け止めて、そこから希望のシナリオを紡ぎ出し、より多くの人々の行動を喚起していけば、持続可能な地球社会を築くための道は必ず開くことができるはずだ。その挑戦を成し遂げることに、21世紀の人類の命運がかかっていると思えてならない。(原文へ)

https://events.daisakuikeda.org/2019/0919-idn-op-ed-news/

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This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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核兵器のない世界はあらゆる人々にとって共通の問題―カリプベク・クユコフ氏から学べること(イリヤ・クルシェンコCTBTO Youthメンバー)

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【モスクワIDN=イリヤ・クルシェンコ】

今日私たちの世代は、冷戦下で平和の脆さを痛感して育った親の世代ほど、核兵器に対して恐怖心を抱いていない。親の世代が抱いていた懸念を、私たちの世代は共有できていないようだ。恐らく私たちは、歯止めのきかなくなった軍拡競争の結果を目の当たりにするか、その被害を蒙った人々に直接会ってはじめて、私たちが暮らすこの時代に前世紀の恐ろしい遺物が存在する余地などないということを理解し始めるのだろう。

私の場合、カリプベク・クユコフ氏に出会ったのを契機に、核兵器の廃絶こそが自分自身にとっての大義となった。カザフ人のクユコフ氏は、ソ連の核実験場近くの村で暮らしていた母親の胎内で被爆し、その影響で深刻な障害を持って誕生した。彼の物語は、核実験がもたらず悲惨な人道被害を伝えている。これは極めて個人的なケースだが、核兵器の問題が全ての人々の関心事であることを如実に示している。私たちがどのような世界に暮らしたいのか、それを決めるのは私達次第だ。そして今日、核軍縮を実現するという大義に市民が積極的に参加することが、何にもまして求められている。

Karipbek Kuyukov/ Atom Project
Karipbek Kuyukov/ Atom Project

クユコフ氏は1968年にポリゴンの名称でも知られるセミパラチンスク核実験場近くの村で誕生した。国連ニュースサービスによるインタビュー取材で、クユコフ氏が最初に話したのが、「母が(私を出産した)ショックと恐怖を克服して私の様子を見に来たのは3日目のことでした。」という部分だ。両手がない状態で生まれたクユコフ氏は、セミパラチンスク核実験場(大きさは日本の四国に相当する:INPS)周辺の広大な地域で放射線に晒され、遺伝子レベルで引き起こされた多くの健康被害に苦しんできたひとりだ。

クユコフ氏の両親は核実験場からわずか48マイルしか離れていない村に生活していた。彼の幼少時、クユコフ氏の母親は、丘を登った際に周り一帯を閃光が埋め尽くしたかと思うと瞬く間に漆黒の闇に包まれた経験を語って聞かせたという。

ベルリンの壁が崩壊すると、カザフスタンでもソ連の核実験場の閉鎖を要求する抗議活動が盛んになり、クユコフ氏はこの運動に身を投じた。カザフ国民は、カザフスタンの国土から核兵器を一掃するというヌルスルタン・ナザルバエフ大統領の判断を強くし支持した。クユコフ氏は、自身の使命を、「自分が核実験の最後の犠牲者になる」ことだと言う。彼はまた、自身の作品のなかで世界の美しさを表現し続ける芸術家でもある。クユコフ氏の絵画作品の1つは、彼が理念と価値観を強く支持する米国のバラク・オバマ前大統領に寄贈された。

Atom Project
Atom Project

ソ連が支配していた時代、誰もクユコフ氏のような症例に関するデータにアクセスすることはできなかった。全てが厳格に秘密とされ、医師達は、核実験場の周りで起こっていた健康異常を訴える患者を診断することは、固く禁じられていた。それどころか当時は、医師たちが深刻な問題を抱えて生まれた子供に、薬物注射を投与して安楽死を勧めることが一般的だったという。クユコフ氏の父は、その時息子の顔を覗き込むと自分を見つめる彼の視線を感じ、どうしも安楽死を選択できず、母親とともに彼を引き取って病院から連れ帰ったという。

Ilya Kursenko
Ilya Kursenko

クユコフ氏はこうした経験を経て、持ち前の意志の強さと行動力で核軍縮に貢献する原動力となっていった。今日私たちは、新たな軍事技術の登場と無関心が広がる中で、これまで構築してきた協調的な安全保障環境が崩壊しかねない帰路に立っている。世界が平和的に共存していくためのアジェンダを前進させていくためには、クユコフ氏のような市民社会の活動家の活躍が極めて重要になっていく。もしこの方向にあらゆる人々が参加すれば、私たち青年の未来を「明るい未来」から「明るい現実」へと変貌させることが可能だ。つまり、核兵器のない世界は、あらゆる人々にとって共通の問題なのだ。(原文へ)

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世界の貧困層が地球温暖化の影響に最も苦しむことになる

【ジュネーブIDN=ジャムシェド・バルーア】

国際労働機関(ILO)が発表した報告書よると、地球温暖化による熱ストレス(=身体が生理的障害なしに耐え得る暑熱の上限)の増加がもたらす生産性の低下は、2030年までに世界全体で、フルタイム労働換算で8000万人分の雇用に相当する規模になると予想されている。これは世界全体で失われる労働時間に換算すると世界合計の2.2%に上り、経済損失の規模は2兆4000億ドルに達すると見られている。貧しい国々や貧困層の人々が最も顕著にこの影響を受けることになるだろう。

ILO報告書『温暖化する地球で働く:労働生産性とディーセント・ワークに対する熱ストレスの影響) 』は、気候、生理学、雇用に関するデータをもとに、各国、地域、世界全体の現在及び予想される生産性低下を推定している。

報告書によると、熱ストレスとは、一般に多湿時で35℃を上回ると生理的な障害が発生し、「労働時の過度の暑熱は労働衛生上の危害に相当し、労働者の身体機能や身体能力、労働能力、したがって生産性が制限されることになる。極端な場合には、命に関わる熱中症に至る可能性がある。」とILOは警告した。

Working on a warmer planet: The effect of heat stress on productivity and decent work/ ILO
Working on a warmer planet: The effect of heat stress on productivity and decent work/ ILO

本報告書の主要な著者の一人であるカトリーヌ・サゲILO調査研究局勤労所得・公平ユニット長は、「熱ストレスの労働生産性に対する影響」について、「気候変動により深刻な結果を招くもの」と説明し、「低所得国と高所得間の不平等が拡大し、最も脆弱な人々の労働条件が悪化する可能性」を指摘した。

世界的に最も影響が大きいと見られる産業は、世界全体で9億4000万人が従事する農業で、2030年までに熱ストレスによる世界の労働時間損失の6割が農業で発生すると見られている。

次に大きな影響を受けるのは建設業で、世界の労働時間損失の推定19%がこの産業で発生すると見られている。このほかに特にリスクが高いと見られる産業としては、環境関連の商品やサービス、廃棄物回収、緊急補修工事、運輸、旅行観光、スポーツ、ある種の産業労働を挙げることができる。

「影響は地域によって異なり、労働時間損失が最も高いと見られる地域は南アジアと西アフリカで、それぞれ2030年までに5%近い労働時間が失われると見られている。これは、フルタイム労働換算では約4300万人分と900万人分の雇用に当たる。」とILO報告書は指摘している。

経済損失が最も大きいのは、とりわけ効果的な暑熱対策を講じるための資金・資源が少ない下位中所得国や低所得国といった最貧困地帯の人々であると見られている。このように熱ストレスによる経済損失は、既に存在する経済的に不利な立場(高い勤労貧困者層、非正規かつ脆弱な雇用状況、自給自足農業、社会保障の欠如)を一層強めるように作用すると見られている。

報告書はさらに、「自給自足農業の労働者の大半を構成する女性、建設産業の圧倒的多数を占める男性が受ける影響が特に大きいと見られている。熱ストレスの社会的影響の一つとして、農山漁村地帯からより良い展望を求めた移住が増加する可能性がある。」と指摘している。

気候変動の提示する課題は、今年6月のILO総会で採択された「仕事の未来に向けたILO創立100周年記念宣言 」が焦点を当てる分野の一つであり、今後のILOの活動及び調査研究を形作るテーマの一つとなる。この報告書はまた、「熱ストレスが及ぼす経済、社会、健康に対する影響は、貧困問題への取り組みや人間開発の促進を困難にし、従って、国連の持続可能な開発目標(SDGs)のほとんどの達成を困難にするだろう。」と指摘するなど、国連の「持続可能な開発のための2030アジェンダ 」にも幅広い影響が及ぼすと述べている。

SDGs Goal No. 8
SDGs Goal No. 8

「熱ストレスによる膨大な経済的コストに加え、低所得国と高所得間の不平等の拡大、最も脆弱な人々の労働条件の悪化、移動を強いられる人々が出てくる可能性があります。この新しい現実に適応するには、最も脆弱な人々の保護に焦点を当てた、政府、雇用者、労働者による適切な措置が緊急に求められています」とサゲユニット長は語った。

報告書は、適切なインフラ構造と暑熱事象用早期警報システムの改善、労働安全衛生分野の国際労働基準などといった暑熱関連危害に取り組む政策の設計を手助けする基準の実施改善など、熱ストレスのリスクに対処し、労働者を保護する国内政策の設計・財源確保・実行のための努力の強化を求めている。

労働者が高温に対処し、仕事を続けられるよう、リスクを評価し、職場における適切な行動を講じるのに最も適した立場にあるのは雇用主と労働者である。雇用主は飲料水や熱ストレスの認識・管理に関する訓練を提供することができ、屋内外の労働方法に関する合意形成や、労働時間や服装規定、装備の適応、新技術や日陰、休憩の活用において社会対話は決定的に重要な役割を果たすことができる。(原文へ)

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【東京IDN=石田尊昭】

尾崎行雄は、1890年の第1回総選挙から第25回まで連続当選し、衆議院議員を60年以上にわたり務めました。この当選回数と在職期間は、日本の議会史上、まだ誰にも破られていない偉大な記録です。
しかし、それは「尾崎が打ち立てた」というより、「有権者が打ち立てた」記録です。

国の存続・繁栄と国民の幸福のために立憲政治を命懸けで実現させようとした政治家・尾崎の生き方は、未来に大いに語り継ぐべきものだと思います。と同時に、地元に直接的な利益をもたらさなかった尾崎を、「国のために」という思いで国会に送り続けた当時の有権者の姿も忘れてはいけません。

尾崎行雄は、時の政府・権力と厳しく対峙しますが、同時に有権者に向けても厳しい要求を突きつけます。真の立憲政治・民主政治の実現のためには、有権者こそがしっかりしなければならないからです。

前回の参議院議員通常選挙が行われた2016年、私は『18歳からの投票心得10カ条』という本を書きました。この本は、政治や選挙と初めて向き合う若い人たちだけでなく、これまでの政治や選挙に慣れてしまった大人の皆さんにも、改めて民主主義の本質を見つめ直してほしいという思いで書いたものです。「投票率を高める」ことよりも「投票(一票)の質を高める」ことを目的に書きました。

この本には、尾崎行雄が説き続けた政党・議会・選挙のあり方、そして、尾崎が掲げた「有権者の投票心得(10項目)」を載せています。その中から、以下二つ、ご紹介します。
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(第1条)
何よりもまず、自分はいかなる政治を希望するかという自分の意思を、はっきり決めてかかることが大切だ。選挙は、国民の意思を国政に反映させるために行われる。つまり、反映する本体がしっかりしていなければならない。有権者自身に政治的意思――どのような政治、どのような国・社会を実現したいと考えるのか――がなければ、いくら投票しても意味がない。

Mr. Takaaki Ishida
Mr. Takaaki Ishida

(第7条)
演説会場その他あらゆる機会をとらえて、有権者は各政党または候補者に向かって、具体的な政策を明示するように要求しなければならない。そして政党本部で発表した政策と候補者の言質(げんち)を箇条書きにして、台所の壁にでも貼っておき、実行された公約の上には○をつけ、実行されなかった公約の上には×をつけるようにすること。公約を裏切った政党や議員に対しては、次の選挙の時に絶対に投票しないことを覚悟すれば、政党も議員も、完全に有権者によってリードされるようになる。

『18歳からの投票心得10カ条』より
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
この二つは、いずれも「当たり前」のことで、「心得」などと大袈裟に言うほどのものではない、と思われるかもしれません。しかし、この二つを私たちは確実に実行できているでしょうか。ついつい面倒臭くなって「思考停止」になることはないでしょうか。

選挙になると、政党も候補者も様々な政策を掲げます。

聞き心地は良いが実現性に乏しいもの、分かりやすいが具体性に欠けるもの、今の自分にとっては「お得」でも社会全体で長期的に見た場合は負担が大きすぎるものなどなど。

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【タラスIDN=ミレナ・メルニコヴァ】

Photo: Visitors scanning lists of vacancies. Credit: Milena Melnikova | INPS-IDN.

中央アジアのカザフスタンでは、2050年までに世界の先進30か国入りすべく様々な改革が実施されている。なかでも大幅な予算拡充を背景に進められている教育改革に焦点を当てた記事。同国ではカザフ語のラテン文字(ABC)表記導入をはじめ、旧来のロシア式教育に代わってアメリカ式教育の導入が進んでいる。IDNが中央アジア大学と進めているメディアプロジェクト。(原文へ)

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カザフスタンの村祭りを取材