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未来に向けて国連とその創造的進化を強化する(池田大作創価学会インタナショナル会長インタビュー)

【ベルリン/東京IDN-INPS】

新たな希望の時代を招来するうえで「青年の役割」に注目することがなぜ大切なのか。核兵器を法的に禁止し、廃絶する条約制定を目指す国連の画期的な交渉会議は成功するだろうか。国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、SDGsやパリ協定の推進のために、どうすれば国際社会から十分な支援を得ることができるだろうか。 これらは、インターナショナル・プレス・シンジケート(INPS)の基幹媒体であるIDNのラメシュ・ジャウラ記者兼編集長が、創価学会インタナショナル池田大作会長に電子メールインタビューで問いかけた質問の一部である。インタビューの全文は以下のとおり。 …

Q:貴殿は、1983年から毎年、平和提言を発表されています。本年の「希望の暁鐘 青年の大連帯」と題する提言の冒頭で、「青年の役割」に焦点を当てられております。「青年の役割」に注目することがなぜ大切なのかについて、説明いただけますでしょうか。

A:それは、「青年の数だけ希望があり、未来がある」と固く信じるからです。現在、世界では多くの問題が山積していますが、青年たちが連帯して行動を起こしていけば、そこから希望の暁鐘が生み出されるとの思いを、提言のタイトルに込めました。

SDGs for All Logo
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今回、私は、SDGs(持続可能な開発目標)をめぐる課題を中心的に論じましたが、その制定プロセスにおいて国連が実施した調査に、最も多くの声を寄せたのも青年たちでした。

市民社会から700万人以上の声が届けられる中、7割以上を30歳未満の若い世代が占めていたのです。

以前のミレニアム開発目標とSDGsの違いは様々ありますが、なかでも重要なのは、市民社会の声、特に青年の声を踏まえる形で採択された“民衆のアジェンダ”であるという点だと思います。 

SDGsでは、貧困や飢餓をはじめ、ジェンダー平等や気候変動など、17分野・169項目にわたる目標が盛り込まれました。

いずれも容易ならざる課題であり、国レベルでの取り組みの強化はもとより、市民社会の力強い後押しが絶対に欠かせません。

“民衆のアジェンダ”という特色を最大の強みとし、グローバルな行動の連帯を築くことがSDGsの成否を握る鍵であり、その結集軸となる存在こそ「青年」にほかならないと私は考えます。

私どもSGIが、国連の協議資格NGOとして軍縮・人権・環境・人道を軸に活動を続ける中、その中核を担ってきたのも青年たちでした。青年には、自らの創造力をもって希望のシナリオを紡ぎ出し、自らの情熱と行動をもってそれを前に進める力が具わっています。

今、世界には10歳から24歳までの若い世代が、18億人いるといわれています。こうした若い世代が、暴力や争いではなく、平和や人権を守るために共に立ち上がり、行動の輪を広げていけば、SDGsが目指す「誰一人取り残さない」社会への道は、必ずや大きく開けていくに違いありません。

Q:「大連帯」とは、国家、人種、民族、経済、イデオロギーの違いを超えるものかと思います。貴殿の視点から、青年たちはどのように大連帯を実現することができるでしょうか。

A:様々な違いを乗り越えて連帯を築くための出発点となるのは、「思いを共有すること」ではないでしょうか。

それは、難民の人々が直面する窮状に対して“胸を痛める心”であったり、環境破壊を食い止めたいという“やむにやまれぬ思い”であったり、戦争のない世界を求める“心の底からの願い”といったものです。

実際、私どもSGIが国連支援の活動を続ける中で、他の団体と連携を深める基盤となってきたのも、そうした思いでした。

例えば人権の分野では、各地で広がる差別や排他主義に対し、問題意識を同じくする多くの団体と連携する中で、「人権教育および研修に関する国連宣言」の採択を後押しました。採択から2年後の2013年には、アムネスティ・インターナショナル人権教育アソシエイツ(HREA)と一緒に、「人権教育2020」という市民社会ネットワークを立ち上げ、この3月にも同ネットワークなどと共同し、「変革の一歩――人権教育の力」と題する新展示をジュネーブの国連欧州本部で開催したところです。

Ambassador Maria Nazareth Farani Azevedo of Brazil (left in the photo) addressing launch of the Exhibition as representative of the Platform for Human Rights Education and Learning, comprising the governments of Brazil, Costa Rica, Italy, Morocco, the Philippines, Senegal, Slovenia, Switzerland, and Thailand. Credit: Kimiaki Kawai | SGI
Ambassador Maria Nazareth Farani Azevedo of Brazil (left in the photo) addressing launch of the Exhibition as representative of the Platform for Human Rights Education and Learning, comprising the governments of Brazil, Costa Rica, Italy, Morocco, the Philippines, Senegal, Slovenia, Switzerland, and Thailand. Credit: Kimiaki Kawai | SGI

また、青年の連帯という面では、核兵器の廃絶を求める国際ネットワーク「アンプリファイ」が昨年5月に発足し、SGIの青年メンバーが他の団体の青年たちと力を合わせて、核時代に終止符を打つための活動を広げています。

このように思いを共有し、問題解決のために何をすべきかを共に考えることが、連帯を形づくる基盤になると思うのです。

SGIが「世界市民教育」を重視し、地球的な課題に関する様々な展示等の開催を通して、特に若い世代の意識啓発に力を入れてきた理由の一つもそこにあります。

その上で最も大切なのは、共に行動を重ねる中で、垣根を超えた“一対一の友情”を深め合っていくことではないでしょうか。

「大連帯」といっても、あくまで重要なのは、規模の大きさではなく、つながりの強さです。困難な状況を乗り越えながら、現実変革のうねりを巻き起こすスクラムの強さです。“一対一の友情”こそ、「青年の大連帯」の生命線なのです。

Q: 2015年8月に広島の地で、SGIが共同主催された「世界青年サミット」を鮮明に思い起こします。貴殿は、師匠である創価学会の戸田城聖第2代会長が「原水爆禁止宣言」を発表してから60周年の佳節である本年も、青年に焦点を当てた行事の開催をお考えでしょうか。

A:戸田第2代会長が「原水爆禁止宣言」を発表した神奈川の地で、「青年不戦サミット」の開催を予定しています。これは、広島・長崎・沖縄の青年部をはじめ、各地の青年の代表が集って行われるものです。

Josei Toda/ Seikyo Shimbun

今から60年前の1957年9月8日、戸田会長は、5万人の青年たちを前に、世界の民衆の生存の権利を根源的に脅かす核兵器は“絶対悪”にほかならず、いかなる理由があろうと、その使用を断じて許してはならないと訴えました。

そして、核兵器の禁止と廃絶を時代潮流に高めていくことを、“遺訓の第一”として、当時、青年だった私たちに託しました。

以来、私は、その遺訓を胸に、「核兵器のない世界」への道を切り開くための行動を続けてきました。

SGIが現在、ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)をはじめ、他のNGOや宗教コミュニティーの団体などと力を合わせて、核兵器禁止条約の締結を目指す運動に取り組んでいる精神的な源流も、この戸田会長の「原水爆禁止宣言」にあるのです。

時を経て、核兵器の非人道性に対する認識が高まる中、核兵器禁止条約をめぐる交渉がいよいよ国連で始まりました。

条約の締結によって、一切の例外を認めることなく核兵器の使用を禁止する国際規範を打ち立てることが、1996年の国際司法裁判所の勧告的意見で焦点となった“明示的な法の不在”の克服につながることは間違いありません。

この禁止条約の交渉を成功に導く上でも、また、条約の締結後に実効性の確保を図る上でも、市民社会の声、なかんずく、核時代との決別を強く求める青年の声を結集し、目に見える形で示していくことが、非常に重要になると思います。

神奈川で開催する「青年不戦サミット」が、その一翼を担う集いとなることを、心から念願してやみません。

Q:核兵器を法的に禁止し、廃絶する条約制定を目指す国連の交渉会議の第1会期が3月31日に終了したことを受けて、6月15日から7月7日に行われる第2会期に何を期待されますか。

A:交渉会議の第1会期で、国連加盟国の3分の2を上回る130カ国以上の国々と市民社会の代表が参加する中、条約の大枠をめぐる建設的な議論が進んだことを、強く歓迎するものです。

会議にはSGIの代表も参加して発言を行ったほか、作業文書を提出しましたが、討議では“何としても禁止条約を成立させよう”という熱気に満ちた発言が相次いだといいます。討議の進展を踏まえ、議長を務めるコスタリカのホワイト大使は、第2会期の最終日には条約の成案を採択したいと表明しました。

そこで私が申し述べたいのは、第1会期ではほとんど参加がみられなかった核保有国や核依存国を含めて、より多くの国が、今後の討議に参加するよう、強く呼び掛けたいという点です。

意見の対立があるから対話は不可能なのではなく、対立があるからこそ対話が必要となるからです。

今日、核兵器がもたらす壊滅的な結末への懸念と、偶発的な事故などによる核爆発の危険性に対する認識は、核保有国や核依存国を含め、どの国にも基本的に共有されたものであるはずです。

その点は、2010年のNPT運用検討会議の最終文書でも確認されております。

そこを足がかりに、NPT第6条の核軍縮義務に焦点を合わせた討議を行う中で、各国が抱える安全保障上の懸念と、「核兵器のない世界」を実現するための方途が交差する点がどこになるのか浮き彫りにし、前に進めるべき時が来たと思うのです。

第1会期で行われた市民社会の代表を交えての自由討議の機会を第2会期でも設ける中で、禁止条約の制定を“地球的な共同作業”として推し進め、会期末の成立を期すべきではないでしょうか。

Q:核兵器禁止条約をめぐる今後の交渉会議において、貴殿は、日本がどのような役割を担うべきであるとお考えでしょうか。

A:私は、唯一の戦争被爆国である日本が歴史的な使命と責任を深く自覚し、交渉会議に積極的に臨むことを呼び掛けてきました。

それだけに、3月末に行われた交渉会議の第1会期で、日本が不参加となったことを、極めて残念に思います。

しかし同時に、日本から多くの市民社会の代表が会議に集い、核兵器の禁止と廃絶を求める声を条約への具体的な提案と併せて届けたことの重みは非常に大きかったと感じてなりません。

会議では3人の被爆者の方々が体験を生の声で語りました。その体験を通し訴えられた“核兵器による惨害を二度と誰にも味わわせてはならない”との切実な思いは、核兵器禁止条約の立脚点がどこにあるのかを明確に示したものといえましょう。

これまで日本が核軍縮・不拡散外交の柱としてきたNPTは、核戦争が全人類に惨害をもたらすとの認識に立ち、「諸国民の安全を守る措置」の必要性に基づいて制定されたものです。この本旨に照らせば、禁止条約はNPTと決して相反するものではなく、NPTが目指す核軍縮・不拡散の強化につながるものです。

Photo: Hiroshima Ruins, October 5, 1945. Photo by Shigeo Hayashi.
Photo: Hiroshima Ruins, October 5, 1945. Photo by Shigeo Hayashi.

その意味で大切なのは、日本が近年、広島で開催した軍縮・不拡散イニシアチブの会合やG7外相会合で、核保有国や核依存国の外相らと共に採択した宣言を今一度想起することではないでしょうか。そこには、核兵器の非人道的影響をめぐる議論は「国際社会の結束した行動のための触媒であるべき」との文言や、「核兵器は二度と使われてはならないという広島及び長崎の人々の心からの強い願いを共にしている」との一節が刻まれています。

核兵器のない世界を築くために何が必要か、議論を徹底して深めながら、道を切り開くことに、日本の使命と責任があります。その一点に立ち返って、第2会期からの討議への参加に踏み出すことを、強く願ってやみません。

そして、第1会期に参加していた核依存国のオランダなどとも連携しながら、核保有国と非保有国との橋渡し役を担い、日本だからこそできる貢献を果たしてほしいと望むものです。

Q: 貴殿は、米ロ首脳会談をできるだけ早期に開催し、核軍縮の流れを再活性化することを提言されております。近い将来に、そのような会談が開催される可能性について、どのような見通しをお持ちでしょうか。

A:今年1月、アメリカでトランプ新政権が発足した直後、ロシアのプーチン大統領との電話会談で意見の一致をみていたように、3年前のウクライナ情勢をめぐる対立以来、冷え込んでいた両国関係の改善を目指す機運が見え始めていました。

しかし、先日のシリアへの空爆を巡って、米ロ関係はより深刻な状況に陥り、先行きが見えない状況となっています。

両国の対立は、シリアを巡る国連安保理での議論にも影響を及ぼすなど、国際社会に大きな陰を落としており、緊張緩和に向けての糸口を早急に探る必要があります。

空爆から5日後(4月12日)に、アメリカのティラーソン国務長官がモスクワを訪れ、ロシアのラブロフ外相に続いて、プーチン大統領との会談が行われましたが、両国の間で対話の回路を閉ざさない努力は、緊張状態のエスカレーションを防ぐために、ますます求められるでしょう。

かりに対話の過程で激しい意見の応酬が続いたとしても、互いの懸念がどこにあるのかを知ることが、関係改善の一歩となることは間違いありません。

先日(5月2日)にも、トランプ大統領とプーチン大統領が電話会談を行いましたが、こうしたさまざまな形を通じて対話の継続を図っていくことが重要だと思います。

現在、米ロ両国とも、核兵器の関連予算は莫大のものとなっており、このままではさらに増えていく恐れがあります。その莫大な資金が削減されれば、福祉や保健などの向上のために充当することもできます。

昨年11月、トランプ大統領の当選直後に、プーチン大統領と行った電話会談で話題になったように、今年は両国が国交を樹立してから210年にあたります。その時の会談で一致した「実務的で互いの利益となる協力関係への復帰」に向けて、歩み寄りへの模索を続ける中で、両国の行動が大きな鍵を握る核軍縮の問題についても対話を開始することを、切に願うものです。

Q: 国連の新事務総長であるアントニオ・グテーレス氏が直面する課題とは何であるとお考えでしょうか。また、そうした課題を事務総長はどのように解決できるとお考えでしょうか。どうしたら、事務総長は、SDGsやパリ協定の推進のために、国際社会から十分な支援を得ることができるでしょうか?

A:国連では創設以来、「世界人権宣言」の採択をはじめ、様々な分野で基盤となる国際規範や条約の整備を進める一方で、「持続可能な開発」や「平和の文化」といった人類が共同して追求すべき理念や指標を打ち立てることに貢献してきました。

こうした一連の取り組みが、第2代の事務総長を務めたハマーショルドが提起していた、憲章の精神に基づく国連の“創造的進化”の重要な一端を担ってきたといえましょう。

それは、多くの地球的な課題に対する「認識の共有」を国際社会で押し広げ、近年もSDGsの制定とともに、温暖化防止のためのパリ協定を採択に導く大きな牽引力となりました。

しかし難民問題のように、事態の深刻さへの「認識の共有」が進んでいても国際協力の強化が難航する課題も多く、「認識の共有」から「行動の共有」への流れをいかに強めていくかが、現在の国連が直面する大きなテーマであると思えてなりません。

その意味で、グテーレス事務総長が、10年にわたる難民高等弁務官としての経験などを踏まえて、「予防の文化」の重要性を呼び掛けるとともに、ジェンダー平等の実現を最優先課題の一つに挙げておられることに、強く共感するものです。

なぜなら、温暖化の問題が象徴するように、地球的な課題に無縁でいられる国はどこにもなく、どの国にとっても有益となる「予防の文化」の追求は、国連の挑戦を支える「行動の共有」の強いインセンティブ(動機)になると思うからです。

また、ジェンダー平等は、私も今年の提言で強調したように、平和構築や紛争解決の面で不可欠の要素であるだけでなく、SDGsの全ての目標を前進させる中軸となるものです。

この点、グテーレス事務総長がその一環として、国連幹部のジェンダー平等を目指して、副事務総長や事務次長、官房長や政策担当特別顧問に女性を任命し、自ら国連におけるジェンダー主流化の流れを強めようとしていることを、強く歓迎するものです。

The ninth Secretary-General of the United Nations, António Guterres. /UN Photo/Eskinder Debebe
The ninth Secretary-General of the United Nations, António Guterres. /UN Photo/Eskinder Debebe

私は、グテーレス事務総長が重視する「予防の文化」やジェンダー平等こそ、SDGsやパリ協定をはじめとする国連の挑戦の大きな推進力になるに違いないと確信します。

そのためにも、これまでの質問の中で述べてきたように、「国連と市民社会との協働」をあらゆる分野で強めていくことが大切であり、とりわけ「青年の参画」の場を積極的に設けることが何よりも欠かせない要素となるに違いありません。

グテーレス事務総長のリーダーシップの下、「市民社会との協働」と「青年の参画」が、国連の強化と創造的進化をもたらす基盤として広がっていくことを、私は強く期待しています。(原文へPDF

INPS Japan

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国連、改革を約束するも、急激な財源の削減に警戒感

予算削減、そして打ち切りの危機にさらされる国連PKO活動

【ニューヨークIDN=シャンタ・ラオ】

2016年から17年にかけて79億ドルもの高額の予算に支えられている16件の国連平和維持活動(PKO)が大規模な予算削減の危険に直面している。また一部については、活動そのものが打ち切られる可能性さえある。

米国は、PKO予算全体の約28%を負担する最大の拠出国だが、これを今後は25%以下に削減するほか、現在進行中の一部の任務についても格下げ、あるいは完全な打ち切りを求めている。

Nikki Haley/Office of the President-elect -, CC BY 4.0
Nikki Haley/Office of the President-elect -, CC BY 4.0

米国のニッキー・ヘイリー国連大使は、3月に外交関係評議会(CRF)で行った演説で、PKOの現在の状況に疑問を呈して事前の警告を行った。

「私たちは、PKO活動をどのように再検討すべきか、包括的なビジョンを今後示すことになります。原則に立ち返って、厳しい問いを発することになるでしょう。つまり、任務の元々の意図は何だったのか、任務は目的を達しているのか、対象地域の人びとを独立に導けているのか、対象国は自助努力として何をしているか、出口戦略はあるか、そして、アカウンタビリティはあるか、といった問いです。」とヘイリー大使は問いかけた。

現在、世界の政治的に不安定な地域(そのほとんどはアフリカ)において国連の旗の下で活動している制服職員は9万8200人以上おり、うち兵士が8万5408人、警官が1万2786人である。

安全保障理事会のイニシアチブにより、国連は既にリベリア・コートジボワール・ハイチの3件のPKOを終了させることを決定しており、まもなく任務の数は13件になる。さらに終了される任務もあるかもしれない。

中絶を推進しているとの誤った非難により国連人口基金への拠出金を既に削減しているドナルド・トランプ政権は、開発や人道支援目的の自発的拠出額の削減も含め、さらなる予算カットを実行することになりそうだ。

現在のところ、米国は国連への最大の拠出国で、国連の通常予算54億ドルのうち22%を拠出している。それ以外は残りの192カ国で出しあっている。

トランプ政権はまた、2018年会計年度の国務省と国際開発庁を合わせた予算を約28%カットしたが、国連への支払いの一部は国務省関連予算を通過しているため、マイナスの波及効果がありそうだ。

Peacekeeping Fact Sheet as of 31 March 2017/ UN Peace Keeping
Peacekeeping Fact Sheet as of 31 March 2017/ UN Peace Keeping

しかし、主に行政上の理由で、大ナタが振るわれるのはもう少し先のことになりそうだ。

ジョージ・A・ロペス氏(ノートルダム大学クロック国際平和研究所セオドア・M・ヘスバーグ師名誉教授[平和学])はIDNの取材に対して、「平和維持活動の割り当てと予算削減は、国連拠出金委員会の助言を受けて国連総会が3年ごとに算定をやり直し変更を加えることになっています。」と語った。

次の大きな見直しは2018年12月の予定だ。それまでは毎年の「技術的」な見直しのみがなされる。2017年の見直しは6月に行われる。

「米政府はこのスケジュールを守り、今後数か月間はニューヨークの国連本部と協力していかなければなりません。現在の規則がそうなっている以上、大きな変化は次の3年ごとの見直しまでなされるべきではありません。」とロペス氏は語った。ロペス氏は、国連による北朝鮮制裁を監視・履行する国連専門家パネルの委員を務めたこともある。

国連のステファンドゥジャリク報道官は4月24日、アントニオ・グテーレス事務総長が21日にホワイトハウスでトランプ大統領と短い会談を行った際に分担金削減の件についても議論されたのかとの記者の問いに対して、「米国内での資金提供と予算策定プロセスはまだ進行中です。皆さんが知ってのとおり、この国の憲法に従って、米議会内で協議と議論が行われている最中です。」と記者団に語った。

Stéphane Dujarric/ UN Photo/Evan Schneider
Stéphane Dujarric/ UN Photo/Evan Schneider

ドゥジャリク報道官はまた、「トランプ氏との会談はわずか20分間でしたが、グテーレス事務総長は会談の内容に『非常に満足』しており、また近いうちにトランプ氏と再度会談を持つことを希望しています。」と語った。

他方で、PKO参加兵士による児童も含めた大規模な性的暴行スキャンダルが報じられ、PKO自体が厳しい批判にさらされている。少なくとも8件の事件が調査中だ。

一部兵士による法定強姦[訳注:同意能力を認められる年齢に達しない者と性交を行う罪]などに関する容疑について問われたドゥジャリッチ報道官は4月21日、8つの事件のうち1件は解決済みと述べた。この事件では[強姦の結果として生まれた子の]父親が誰であるかはすでに明らかになり、[当該兵士を派遣した]加盟国によって母親に対して養育のための補償金が支払われている。

「他の7件についても関連加盟国と協力して追跡している」と報道官は付け加えた。

ある事件では「国連が被害者と(容疑者の派遣元)加盟国の間に入って進めているDNA検査を通じて父親を特定しました。国連は、各加盟国と連携してDNA検査を促進し、随時訴えを処理しています。」と報道官は語った。

「私たちは、名前が記録に表れない被害者に関する調書を提供するよう弁護士に求めるべく、関係省庁に働きかけています。私の理解する限り、事件の真相解明に向けた努力は進められています。嫌疑がかかっているPKO隊員の派遣元にあたる各加盟国は、捜査に協力して犠牲者の母親に補償金を支払い、罪が特定されれば訴追する責任があることは明白です。」と報道官は指摘した。

国連は昨年、それまで6年間にわたって否定し続けていた、PKOによるハイチのコレラ蔓延の責任(それまでコレラの症例が確認されていなかったハイチでPKO要員からコレラが蔓延した事件)について認めた。これによって1万人以上が死亡し、さらに数千人が倒れている。

ロペス氏は、「政治レベルでは、トランプ政権による国務省予算の削減と、米国を世界とその中における米国のリーダーシップから孤立させることになるその他多くの問題について、米上院議員の重鎮たちが困惑しています。」とIDN取材に対して語った。

したがって、皮肉なことに、共和党の歴代大統領やさらに保守的な下院・上院議員が、これまでは国連を批判し、実際にさまざまなレベルで対国連予算を削減してきたにも関わらず、「トランプ氏の下でこれらの議員が大統領の路線を拒絶し、政治的に首尾一貫した行動をとるために、(トランプ氏が求める国連に対する)予算削減に反対の声が強まるかもしれません。」とロペス氏は語った。

The United States Capitol/ Public Domain.
The United States Capitol/ Public Domain.

しかし、議員らが言うように、トランプ政権の予算に最終的に何が残るかが判明する前に、「多くのことが水に流されねばならない。」

「とはいうものの、より重要な問いは、PKO活動について任務を損なうことなく3%の予算削減の影響を吸収できるのか、また、あるいは、PKO活動関連で既に着手している改革によって、国連がより効率的な運用能力を見せることで、米国議会の議員らを実際に満足させることができるのか、というものだ。」

「この後者の懸念は、伝統的に国連を非難し分担金削減や引き揚げを口にする米国の政治家の常套文句となっています。」とロペス氏は語った。ロペス氏はかつて、米国平和研究所(ワシントンDC)国際紛争管理・平和構築アカデミーの副所長を務めたこともある。

他方、経費と加盟国が拠出した財源の使用に関して事務局が現在進めている見直し作業の一環として、グテーレス事務総長は4月20日、PKO活動における航空関連資産使用の効率性を高めることで経費を削減する取り組みを開始した。

国連は現在、固定翼機58機、回転翼機157機を、16件のPKO活動の任務のうち12件と、6件の特別警備任務において使用している。これらの航空機使用の年間経費は2015-16年期で7億5000万ドル近くにのぼった。

これらの資産は必要な兵站と軍事機能を提供しており、グテーレス事務総長はその重要なコスト上の含意を考慮に入れて、各現場のトップに対して、航空機の構成及び使用状況を体系的に分析・調整し、よりコストを抑える別の解決策がないか探るよう求めている。「これもまたPKO活動が革新するひとつの機会です。」とドゥジャリッチ報道官は語った。

国連によると、初のPKO活動はイスラエルとアラブ諸国間の休戦協定を監視するために1948年に開始した国連休戦視機構(UNTSO)として知られる活動である。

それ以来69件のPKOが実施され、約120カ国の3326人が国連の旗の下での活動により殉職している。1988年には国連PKOはノーベル平和賞も受賞している。

ロペス氏は、「もっぱら国連の観点からこの状況を眺めてみると、国連がそのPKO活動における非効率や過ち、不透明性の問題を解決する姿勢を見せるには、今が最も適切な時です。」と指摘した。

「潘基文前事務総長の離任直前に報告書を出した『PKO活動に関するハイレベル再検討パネルの勧告』の中で、まだ履行されていないものが数多くあります。」とロペス氏は語った。

勧告に記された多くが履行されることで、効率性と予算面で大きな改善につながることになる。さらに、グテーレス新事務総長は、PKO活動を改革し費用対効果を高める手法で、国連改革に対するスマートなアプローチを示している。

SDGs Goal No. 16
SDGs Goal No. 16

「したがって、国連はすでに、脅されたり兵糧攻めにされたりしなくても、幾つかの点で、既に内部改革を進めていると言える。これが進展すれば、国連と米国の双方がある種の勝利を宣言し、25~28%の間での3年間の分担金支払いに問題なしとすることができるだろう。」と、カーネギー倫理・国際問題評議会(ニューヨーク)で上級研究員を務めたこともあるロペス氏は語った。

ロペス氏はまた、3件の平和維持活動の終了について、「コートジボワールとリベリアでの任務終了は長く待ち望まれていたものでした。なぜなら国連の制裁やその他の大型の事業も同様に終わりに近づいているからです。それぞれの国が安定を見たことは国連の活動の勝利だと言えます。」と語った。

他方で、「人道上の悲劇と国連に対するイメージ低下を招いたハイチPKO活動は、人間の安全保障の改善手法に関して、より多角的な取り組みが必要であることを物語っています。しかし、それが国連の下で活動している多国間PKOから確実に生まれるということにはなりません。」「これら3つの事例における変化は、PKO活動の効率性とアカウンタビリティの向上を印象付けることになるかもしれません。」とロペス氏は指摘した。(原文へ

翻訳=INPS Japan

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Meeting and Interview with PNND’s Alyn Ware

Meeting and Interview with PNND’s Alyn Ware

Eminent disarmament campaigner Alyn Ware, Founder and Coordinator of Parliamentarians for Nuclear Non-Proliferation and Disarmament (PNND) attended the first session of the Preparatory Committee for the 2020 NPT Review Conference from May 2-12 in Vienna. INPS multimedia director and President of INPS Japan joined IDN-INPS DG and Editor-in-Chief Ramesh Jaura at a meeting with Alyn Ware and invited him to a video interview.

Disarmament Talk with Alyn Ware 

Meeting Ambassador Shafi, Mission of the State of Palestine to Austria

IDN-INPS DG and Editor-in-Chief Ramesh Jaura met Ambassador Salah Abdel Shafi from the Mission of the State of Palestine to Austria & Slovenia and the Permanent Observer Mission to UN and International Organisations in Vienna met during the first session of the Preparatory Committee for the 2020 NPT Review Conference from May 2-12 in Vienna.

Discussions centred around:

The background to the State of Palestine becoming the 191st member-state of the NPT in the 2015 NPT Review Conference in New York,

50 years since Israel occupied the West Bank, the Gaza Strip, East Jerusalem, and the Golan Heights;

100 years since the Balfour Declaration, issued by the British Empire in support of a Jewish state in historic Palestine; and

70 years since the UN Partition Plan allotting 56% of historic Palestine for a Jewish state, which triggered the Nakba (mass displacement of Palestinians from their lands).

More on two video clips:
https://www.youtube.com/watch?v=0WFUh54u0jM


https://www.youtube.com/watch?v=O6gSZsTNLvo

In Vienna with Nuclear Disarmament Expert Daryl Kimball

Daryl Kimball, the Executive Director of the Washington-based Arms Control Association (ACA), was in Vienna in the second week of the first session of the Preparatory Committee for the 2020 NPT Review Conference from May 2-12. IDN-INPS DG and Editor-in-Chief Ramesh Jaura discussed with him the status of negotiations on May 9 and invited him to a video interview which was recorded by the INPS multimedia director Katsuhiro Asagiri.

Disarmament Talk with Daryl Kimball

Encounter with India’s Minister of State Piyush Goyal

India’s Minister of State for Power, Coal, New and Renewable Energy and Mines was a keynote speaker at the Vienna Energy Forum 2017 on May 11 at Hofburg Palace in the Austrian Capital.

Vienna Energy Forum Has 10 Key Messages for UNIDO

IDN-INPS DG and Editor-in-Chief Ramesh Jaura met him briefly and invited him for a video interview, which was recorded by INPS multimedia director Katsuhiro Asagiri.

Sustainable Energy for All Talk with Minister Piyush Goyal

「石器時代」のレイプ法廃止に動いたヨルダン政府の決定がなぜ重要なのか?

【ローマIDN=フィル・ハリス】

今日でも、多数の国々で多くの女児や若い女性が、「男性は女性をレイプしてもその後犠牲者と結婚すれば罪を問われない」と規定する、「石器時代」の法律と呼ばれてきた、ある刑法の条項に恐れおののきながら暮らしている。

中東のヨルダンもこうした条項が適用されてきた国の一つであるが、政府が4月15日に同国の刑法308条を廃止する勧告を行ったことから、レイプ被害者を取り巻く状況が好転する兆しが見えてきた。

その勧告とは、「レイプ犯が被害者と結婚すれば収監されない」と規定する同条項を廃止すべきとする内容で、現在ヨルダン議会と国王アブドラ2世による最終承認待ちの状況である。

女性・女児のための公正な世界の実現に向けて活動している国際女性人権団体「イクオリティ・ナウ(Equality Now)」は、最終承認は4月末にもなされる可能性があると見ている。

Suad Abu-Dayyeh/ Equality Now
Suad Abu-Dayyeh/ Equality Now

「イクオリティ・ナウ」のスアド・アブ・ダイエ中東・北アフリカ顧問は、刑法308条の廃止に対する広範な民衆の支持へとつながった女性権利擁護団体や国会議員らの長年にわたる活動を称賛しつつ、「この条項が女性や女児に及ぼす悪影響について、一般大衆がようやく理解し始めるところまできました。…レイプされた女児は被害者であり、家族の支援や政府の助けを必要としています。」と語った。

二十歳の時に55歳の男にレイプされたヌール(仮名)さんもそうした被害者の一人だ。彼女の経験は、これまで多くの女児や若い女性に、自分をレイプした犯人が罪を逃れるのを強制的に受け入れさせてきたこの法律の背後にある現実を如実に物語っている。

ヌールさんは、ヨルダンの女性権利支援団体「SIGIヨルダン」に対して、彼女が通学を断念して仕事を探していたときに遭遇したレイプの経験について詳細に語っている。

「私は家の近所の携帯電話ショップで働くために学校を退学しました。店のオーナーは、妻と離婚し子どもを抱えた男性で、私の家庭が財政的に困難な状況にあることを知っていました。彼はそこで、職場の仕事に加えて、彼の家で子供の世話や掃除、料理をこなすことで給料を引き上げてもよいと提案してきました。」

「私は家庭の財政事情からこの申し出を受け入れ、彼の家で働き始めました。ある日、家事をしているところにオーナーが現れ、鎮痛剤を2錠渡されました。私が頭痛を訴えたからでしたが、服用した後のことを覚えていません。目が覚めると、私は全裸でレイプされていたのです。」

「家族にはこのことを打ち明けられず、どうしていいかわからず大泣きしました。家族が、私がレイプされたことを知れば、計り知れないショックを受けると気づいたからです。オーナーはそんな私に『おまえと結婚してやるから。両親にも結婚の許可を求めにいってやるから。』といって落ち着かせようとしました。彼はさらに私を納得させようと、その場で婚姻契約書を作成し、そこに2人で署名しました。」

「その日は、どうしていいかわからないまま帰宅しました。打ちのめされ怯えきっていた私は、このことを両親に黙っていることにしました。しかしその月に生理がなく、妊娠していることが分かりました。私はオーナーに妊娠を伝え、何度か堕胎も試みましたがうまくいきませんでした。結局、母が私を私立病院に連れて行ってくれてそこで子供を出産しました。」

「私は子どもの将来を思い警察に訴え出ることにしました。オーナーにレイプされたと告発したのです。すると彼は、「結婚すれば罪に問われない」という刑法第308条を利用して、私との結婚を提案してきたのです。私は心の底からこの男を憎んでいましたが、家族は「一族の名誉」を救うためとして、無理やり彼と結婚させたのです。

「私はこの男に騙されレイプされた暗い記憶とともに結婚し同居生活を始めざるをえませんでした。しかしこうした絶望の淵にあっても、自分の子供と暮らすことでそのうち事態は好転するのではないかと希望を抱いていました。しかし、現実は悪化の一途をたどりました。」

私の唯一の望みは子どもの安全を確保することでした。そこで子供を父親名で登録させようと試みましたがうまくいきませんでした。ついに彼は、私との離婚を条件に、子供の認知をちらつかせる交渉にでてきました。私をレイプした男とそれ以上同居することには耐えられなかった、私はその条件を呑みました。」

「私は彼と裁判所で離婚手続きを申請し、妻としての全ての権利を放棄しました。しかし今日になっても、未だに子供を父親の名前で登録したいという私の訴えは認められないままです。」

ヌールさんが語った経験談は、ヨルダンのみならず多くの国々で、来る日も来る日も繰り返されている多くの事例のほんの一例に過ぎない。」

SDGs Goal No. 5
SDGs Goal No. 5

例えば、レバノンの女児や女性は同国の刑法第522条の規定の下で類似した状況に直面している。レイプ犯は、この条項により、被害者と結婚すれば罪を免れることができるのである。

レバノンではこの刑法第522条の廃止を巡る国会審議が進められており、4月21日には、活動家らがこの問題に対する社会の注目を集めようと、首都ベイルートの海岸通りに、白いレースと包装紙でできた花嫁衣装31着を吊るして展示するパフォーマンスを行った。

この展示を企画したレバノン人芸術家のミレーユ・オネイン氏はAFPの取材に対して、「刑法第522条は、女性からアイデンティティを奪い去るものであり、このような法律を女性に強要しつづけることは恥ずべきことです。」と語った。

国連の推計によると、約10億人の女性と女児が生涯の間にレイプや性的な虐待の被害に遭遇している。(原文へ

翻訳=INPS Japan

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2020年核不拡散条約運用討会議に備える

【ベルリン/ニューヨークIDN=ラメシュ・ジャウラ】

核不拡散条約(NPT)の締約国は5年に1度集まり、3回の会期にわたってこの核軍縮体制の履行状況を検討する。2020年NPT運用検討会議に向けて、その準備委員会の第1回会合がウィーンで5月2日から12日に開催される。

国連事務局及び一部関連機関の本部としても機能しているこのオーストリアの首都は、非核世界を導く条約実現に向けた国連の取り組みにおいて、歴史的な役割を果たしてきた。2014年12月にはウィーンが、(2013年3月のオスロ会議、2014年2月のナヤリット会議に続く)第3回「核兵器の人道的影響に関する国際会議(非人道性会議)の舞台となり、「核兵器を絶対悪とし、禁止し廃絶する」ことを目指す「オーストリアの誓約」(「人道の誓約」としても知られる)への道を切り開いた。

UN General Assembly approves historic resolution on December 23, 2016. /ICAN
UN General Assembly approves historic resolution on December 23, 2016. /ICAN

国連総会は2016年12月23日、「核兵器を禁止しその完全廃絶につなげるような法的拘束力のある文書」を交渉するすべての加盟国に開かれた会議を今年3月と6・7月に開くことを決めた決議71/258という形で、この誓約を採択した。

2020年NPT運用検討会議第1回準備委員会は、世界全体で1万4900発の核兵器(米国科学者連盟[FAS]による)のうち合計で93%を保有する米国とロシアの間の緊張が高まる中で開かれようとしている。残りの核兵器は、英国・フランス・中国・インド・パキスタン・イスラエル・北朝鮮の7カ国が保有している。

北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)が次第に爆発力を強めながら核爆発装置の実験を継続するなか、北朝鮮以外の核武装国は、核軍縮ではなく「永久に大きな核戦力を保持し続ける意向のようだ。」と、FASは警告している。

オランダのヘンク・コル・ファンデルクワスト軍縮大使を議長とした今回の準備委員会の重要性は、核兵器を禁止しその完全廃絶を導く法的拘束力のある文書を交渉するための国連会議の第1会期から1カ月後に開催される事実によっても明らかだ。同会議の第2会期は約1カ月後の6月15日から7月7日にかけて開かれる。

今回の準備委員会が重要であるもう一つの理由は、2005年と同様に2015年にニューヨークで開かれた運用検討会議(2015年4月27日~5月22日)もまた、実質的な成果文書に関する合意に達することができなかったことだ。米国・英国・カナダの3つの締約国が、非締約国であるイスラエルが合意に反対したことを理由として、会議を頓挫させてしまった。

これら3か国は、中東非核兵器地帯創設への呼びかけを運用検討会議の最終文書で繰り返すべきだと主張したエジプトの要求が会議を失敗に終わらせたと非難した。

しかし、中東非核兵器地帯は、2010年運用検討会議でもすでに想定されていたものであった。同年の運用検討会議では、核軍縮、核不拡散、原子力の平和利用、中東問題(とりわけ中東に関する1995年決議の履行)の領域におけるフォローアップ(行動計画)について合意に達していた。

Map of the Middle East between Africa, Europe, and South Asia/ Public Domain
Map of the Middle East between Africa, Europe, and South Asia/ Public Domain

それ以前の2000年運用検討会議では、核軍縮について規定した第6条の履行に向けた体系的かつ漸進的な努力に関する実際的な措置などについて実質的内容を持った最終文書に合意していた。

NPTは1970年に発効し、1995年に無期限延長された。NPTは、グローバルな核不拡散体制の要であり、核軍縮追求の不可欠な基礎だとみなされている。

国連軍縮部(UNODA)のウェブサイトにあるように、NPTは、核兵器の拡散を防ぎ、核軍縮及び一般的かつ完全な軍縮の目標に向かって前進し、原子力の平和利用分野における協力を促進することを目的としたものだ。

NPTの下では、核兵器国は核兵器やその他の核爆発装置の保有または管理をいかなる受領国に対しても移譲せず、同兵器や装置の製造、取得、あるいは管理を行うよう非核兵器国を援助、奨励、あるいは勧誘しないことが義務づけられている。

一方、非核兵器国は、核兵器やその他の核爆発装置の移譲あるいは管理を受領しないこと、同兵器や装置の製造や取得を行わないこと、加えて、こうした点に関していかなる援助を求めたり受け取ったりしないことが義務づけられている。

非核兵器国はさらに、国際原子力機関(IAEA)による保障措置を受けることが義務付けられている。これは、核エネルギーが平和利用から核兵器やその他の核爆発装置に転用されることを阻止するために、領土内あるいはその管轄下にあるすべての平和のための原子力活動について実施する査察を含む検認制度である。

またNPTは、核エネルギーの平和的目的のための研究・生産・利用を行う権利を、すべての締約国に保証している。

NPT第6条は、核軍縮に関連した効果的措置を誠実に追求することを締約国に求めた、唯一の法的拘束力ある義務を含んでいる。

NPT第8条は、前文の目的および同条約の条項が実現されるようにするため、この条約の運用を検討するために5年毎に条約の締約国会議を招集すると規定している。

1995年、条約の無期限延長の決定に関連して、締約国は、運用検討プロセスを強化し、運用検討会議を5年に1度開催していくことに合意した。準備委員会は通常、運用検討会議に先立つ3年間の時点から3期にわたって毎年10日間の会合を開くことになっている。

2000年に締約国が決定したように、準備委員会は、最初の2期(=第1回と第2回準備委員会)においては、条約の全面履行とその普遍性を推進するための原則、目標および方途を検討することになっている。 

そして第3回準備委員会では、先の2回の会期における審議と結果を踏まえた上で、運用検討会議に対する勧告を含む合意報告書の作成に向け、全力を尽くすことを期待されている。

NPTの文脈の下では、2020年NPT運用検討会議に向けた3期にわたる準備委員会の中で、サイクルの最初にあたる第1回準備委員会に特に重要性があることには別の理由もある。

United Nations Office at Vienna/ Wikimedia Commons
United Nations Office at Vienna/ Wikimedia Commons

2010年運用検討会議の行動計画はごく部分的にしか履行されなかった。もっともひどかったのは軍縮関連の行動で、22項目の行動計画のうち実質的な前進を見たのは僅か5項目に過ぎなかった。2010年以前に合意を得た2000年運用検討会議では『13項目の実際的措置』の合意があったが、その履行状況もまた無残なものであった。」と指摘しているのは、婦人国際自由平和連盟(WILPF)の発行した『2017NPTブリーフィング・ブック』である。WILPFの軍縮関連事業は、レイ・アチソン氏が責任者を務め、「リーチング・クリティカル・ウィル」と呼ばれている。

2017NPTブリーフィング・ブックは、「NPTの外におけるより広範な状況はさらに危機的なものだ。」と警告し、現在の状況は「より多くのプレーヤーが参入し、さらなる資金が投入され、『殺戮力』が以前よりも増した新たな核軍拡競争」として特徴づけられると指摘している。

WILPFは「一方では、核軍縮に対する口先だけのコミットメント(そんなものがまだ存在すればの話だが)すら怪しくなっている。」と述べている。2009年4月にプラハでバラク・オバマ大統領が提示した「核兵器なき世界」のビジョンから遠く離れて、ドナルド・トランプ政権は核軍縮が「現実的な目標」であることに疑問を呈している。同政権が核爆発実験を再開するのではないかとの警戒感すらある。

ウラジーミル・プーチン大統領が支配するロシアとの緊張が強まり、北朝鮮が脅威を感じた場合米国への核使用も辞さないと威嚇するなかで進行する米政府の政策見直しで、あらたな核態勢が提示されるものと見られている。(原文へ

翻訳=INPS Japan

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若者1人当たり年間30ドルかけることがなぜ必要なのか

【ニューヨークIDN=J・ナストラニス】

1人当たり年間30ドルに満たない予算をかけるだけでも、若者の健康や教育に驚くほど効果を上げることが可能であると、国連人口基金(UNFPA)が委託した最新の研究が示している。

報告書は、4月21日から23日にかけてワシントンDCで世界銀行春季会合が開催されるのを前にして『ランセット』誌に掲載された。春季会合では188カ国の財務・開発担当閣僚らが若者への投資の重要性について討論する予定だ。

『ランセット』誌は、医療が社会に奉仕して社会を変革し、人々の生活に良い影響を与えるべく、科学の成果を公衆が広く利用できるようにすることを目的とした、国際的な独立系総合医学誌である。

この研究は、米国政府がUNFPAに対する分担拠出金の停止を決定してから数日のうちに発表された。これは、ドナルド・トランプ大統領が発表した国連に対する米国の分担金削減策の第一弾である。1985年の制定以降共和党の歴代大統領が利用してきたケンプ・カステン修正法案を引用した米国務省の覚書は、UNFPAが中国において、「強制 妊娠中絶、不妊手術などのプログラムを支援または協力して行っている。」と主張している。

同修正法案は、強圧的な堕胎や不本意な不妊手術を支援する組織への対外援助を禁じている。ロナルド・レーガン、ジョージ・HW・ブッシュ、ジョージ・W・ブッシュの共和党歴代大統領が、この法案を根拠にUNFPAへの資金提供を拒んできた。

10歳から19歳の若者の身体的・性的・精神的健康を向上させることで、1200万人以上の死と、3000万件以上の若者による望まない妊娠を避けることができる、と報告書は述べている

同様に、1人あたり約3.8ドルで実行可能な、児童婚を減らす政策は、投資額に対する6倍近くのリターンがあり、児童姻を約3分の1減らすことができる。

Babatunde Osotimehin/ UNFPA
Babatunde Osotimehin/ UNFPA

「若者に投資することは、すべての人にとっての長期的で戦略的な利益にかないます。」と語るのは、UNFPA事務局長のババトゥンデ・オショティメイン博士である。「世界の10億人以上の若者をエンパワーし保護するための小規模の投資でも、10倍以上、いや時にはそれ以上の見返りが可能です。我々の先駆的な研究が政策決定者によって参照され、世界を前進させる導きとして利用されなければなりません。

オーストラリアのビクトリア大学、メルボルン大学、さらにUNFPAがこの研究を主導した。著者らはとりわけ、若者に対する医療サービスの向上とヒトパピローマウィルス(HPV)ワクチンの普及に関する保健当局の介入が経済や社会に及ぼす影響を計算した。また、児童婚姻や近親者による暴力を減らす政策や、登校率や教育の質を向上させる政策の影響も計算した。

主執筆者のピーター・シーハン教授(ビクトリア大学)は、「若者の健康や福祉に対する投資の中で最も成果を上げているものは、児童婚の問題に対する対処、交通事故の抑制、教育の改善など、しばしば保健部門以外の取り組みに見出すことができます。」と指摘したうえで、「私たちの調査で提示した取り組みが、世界各国で大規模に展開でき、少年少女たちの生活を変えることができることは、疑いの余地がありません。青年の保健・福祉に対する投資がもたらす経済的・社会的効果は、あらゆる基準をもってしても高いものであり、国連の持続可能な開発目標(SDGs)を達成するために国際社会がなしうる最善の投資のひとつです。」と語った。

報告書は、調査の対象となった措置のすべて(教育関連を除く)に関して2030年までに必要となるコストは5240億ドルであり、これは1人当たり年間約6.7ドルに相当する。教育に関しては全体のコストが1兆7700億ドルと(1人当たり年間約22.6ドル)推計される。

UN Photo
UN Photo

これらを合計すると、若者1人あたりに年間で必要なコストは30ドルにも満たない。つまり、すべての政策に対する年間の投資総額は、世界全体の国民総生産合計のわずか0.2%にしかならないのである。(原文へ

翻訳=INPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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ダリル・キンボール米軍備管理協会会長インタビュー

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Filmed by Katsuhiro Asagiri, President of INPS Japan

核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議第1回準備委員会を取材のためウィーンの国連報酬本部に滞在中のINPS取材チームは、ダリルキンボール米軍備管理協会会長にインタビューを行った。

Daryl Kimball, the Executive Director of the Washington-based Arms Control Association (ACA), was in Vienna in the second week of the first session of the Preparatory Committee for the 2020 NPT Review Conference from May 2-12. IDN-INPS DG and Editor-in-Chief Ramesh Jaura discussed with him the status of negotiations on May 9 and invited him to a video interview which was recorded by the INPS multimedia director Katsuhiro Asagiri.

翻訳=INPS Japan

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