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|北極圏会議|伝統的知識と教育が最大テーマに

【レイキャビクIDN=ロワナ・ヴィール】

ポリネシア航海協会のナイノア・トムソン氏は、伝統的知識・科学・気候変動に関するグローバルな観点についての北極圏のセミナーで「島の人々は、気候変動とは何の関係もないのに、最大の被害者になっている。」と語った。トムソン氏はハワイ出身だが、彼とともに発言者として登壇したのは、タイ、チャド、フィジー、ケニア、そして、ノルウェーのラップランド出身の人々であった。

南太平洋の島民らの窮状は、5年連続でレイキャビクで開催されている今年の「北極圏会議」の主要テーマの一つであった。10月中旬(13日~15日)に開催された今年の会議は特に取り扱う範囲が広く、105もの分科会(セミナー)やスピーチ、パネル討論が開かれた。

The Arctic/ Public Domain

近年では、海洋汚染や、マイクロプラスチックが海洋に及ぼす影響が大きなテーマとなっている。この問題に対処するために、オランダの海洋学者エリック・ファンセビール氏が、プラスチックの行方を追跡できる双方向型の地図を開発した。

欧州の北西部から海に流出したすべてのプラスチックの7割以上が北極圏に流れ着くと報告したファンセビール氏らは、今年初めにスバルヴァル諸島ヤンマイエン島への遠征隊を組織した。そこで彼らが見たものは、元々は2000年にノバスコティア沖で海中に投入された破れた漁業用の網や、英国で1958年に生産されたシリアルの入れ物だった小さな船形のプラスチックだった。

北極動植物保全プログラム」のトム・バリー氏は、2017年5月に出版された「北極海における海洋生物多様性の概況」報告書を紹介し、その主要な知見と、監視に向けたアドバイスについて語った。「主要なツールは、北極における海洋生物多様性の現状と傾向に関する再現可能な報告とコミュニケーションを促進するために、海洋計画が定めた枠組みです。」とバリー氏は語った。

バリー氏は、海氷の消失は動植物の生命に影響を及ぼすという。なぜなら、海氷が消失する際に、さまざまな地域に難題をもたらすからだ。

昨年のように、イヌイット社会がこの3日間の会議の焦点となった。しかし、今回の会議で強調されたのは、(昨年の主要テーマであった)再生可能エネルギーよりも、むしろ伝統的な知識についてであった。

カナダのメモリアル大学は「スマートアイス」と呼ばれるプロジェクトを続けてきた。これは、科学を地元の伝統的諸問題とつなげるものだ。プロジェクトは、地域の人々の声を聴き、彼らと協力し、人々をつなげ、問題を把握し、伝統的知識を大学の知見と統合する。主にイヌイットの人々から成るカナダ北方地域の社会は、狩りや木材収集、その他のニーズのために、海氷にかなりの程度依存している。

ノルウェーの「トナカイ飼育国際センター」のアンデルス・オスカル氏は、同国では北極評議会の北極監視・査定プログラムがトナカイ飼育者と協力し、気候変動への対処法を検討している、と報告した。

オスカル氏は、「北極評議会は伝統的知識の包摂においてパイオニア的役割を果たしています。」と指摘したうえで、「しかし、伝統的知識の受入れについては、経営サイドが『経営には客観的な知識が必要』だとしてそれほど積極的でないのに対して、研究サイドではより積極的に受入れています。…一部のトナカイ飼育者が博士号を持っているように、2種類(科学と伝統)の知識をブレンドするような、先住民族の機関、境界線を越える機関がもっと必要です。」と語った。

「伝統的な知識」は気候変動に関するパリ協定に盛り込まれ、伝統的な民族のプラットフォームが知識の交流のために作られてきている、と会議で報告された。「伝統的な民族と地域社会のパビリオンがボンのCOP23(2017年の国連気候変動会議)に設置され、7つの地域が参加することになる」と語るのは、「気候変動に関する国際先住民族フォーラム」のヒンドウ・イブラヒム共同代表である。

Image credit: COP23

個人による行動が今年は重要な役割を果たした。カナダのコンサル企業「オーラノス」のマルコ・ブラウン氏は、気候変動とエネルギーに関する全体会で、「スイッチが切られて」から約30年のタイムラグがあると指摘した。つまり、気候変動を抑えようと思うなら、今行動する必要があるのだ。

昨年のマラケシュでの2016年国連気候変動会議(COP22)で、アイスランドのオラフール・ラグナー・グリムソン元大統領の働きかけによって提案から数週間で策定されたロードマップの任務が、会議の全体会に提出された。グリムソン元大統領は、北極圏会議でもこの考え方を主導した。

これは、「実行する人々」に焦点を当てた20の建設的な声明からなる。第一の声明がそれをよく表している。「私たちは今こそその時だと考える。行動をとるべき時だ。パリ協定で提示された変化をもたらすためにやらなければならないことをやる時だ。『何』を議論するのはやめて、『どうやって』を考え始めよう。」

会議はまた、北極圏における持続可能な開発目標(SDGs)に関する初めての議論の場となった。この議論は月に一度開かれ、2018年9月の北極評議会会合に報告が出されることになっている。グリーンランドの狩猟社会のニーズに関する問題から、持続可能な鉱業のような問題に関連して「レトリックを超える」必要性に至るまで、さまざまな問題が取り扱われた。

SDGs Goal No. 5
SDGs Goal No. 5

アイスランド外務省国連局のマリア・ムジョル・ジョンスドティール局長は、聴衆に向かって、「あらゆることが主要な課題に帰着します。つまりは、気候変動の問題です。アイスランドは、より緑の大地となることを目指しています。魚は温かい水の方へと移動します。これらの問題には統合的な性格があります。」しかし、「ジェンダー平等と女性のエンパワメントについて規定したSDGs第5目標は、その他の目標達成のための主要な推進力となります。」と語りかけた。

トレント大学(カナダ)のヒーザー・ニコル氏によると、教育もまた重要な問題だ。ニコル氏は、SDGsの目標を小規模な北部の共同体にもより適用可能なものにすべきだ、と語った。「教育機会のあまりない北部の小規模地域社会の教育をどうやって支えたらいいのか。」とニコル氏は問いかけた。さらに、SDGs第1617目標に関連して、「技術は教育と社会インフラにどう影響を及ぼすのか。」と続けた。

教育問題はその他のセミナーでも話題になった。北極圏の若者と持続可能な将来に関する集会で、アラスカ・アンカレジ大学のダイアン・ハーシュバーグ氏は、教育機会はアラスカの小規模地域では限定されていると指摘した。ハーシュバーグ氏は「自分の地元から出ることを決断したら、自分の地元全体よりもたくさんの学生がいるクラスに入ることになるかもしれない」と指摘した。また、もしその新しい学校が自分の元々の言葉で教えていないならば、「時として、第2言語を学ばねばならないかもしれない」と語った。これはストレスと不満につながる。同じような懸念がグリーンランドで持ち上がっている。

北極圏大学(UArctic)は、北部地方の教育・研究を取り扱う大学、研究機関、諸機関から構成されている。その「地政学と安全保障に関するテーマ別ネットワーク」は、毎年、北極圏会議でセミナーを開催している。今年のあるセミナーでは、平時に軍隊によって引き起こされる環境破壊に焦点をあて、別のセミナーでは、あらたな安全保障上の脅威としての気候変動を検討した。

ラップランド大学のラッシ・ハイネノン氏は、これらセッションの主催者の一人だ。彼は、少なくとも1.41億トンのCO2に相当するものが、2003年3月から2007年にかけてのイラク戦争で排出されたと説明する。ハイネノン氏は、「軍隊は、ある種の保護された汚染者です。」と指摘したうえで、「数週間前にロシアとベラルーシが行った軍事演習の間に使われたすべての資源を考えてみるといい。」と語った。これはZAPAD2017演習を指している。

冷戦期、ロシア国土の一部は古い弾薬や石油製品、その他の軍事廃棄物の廃棄場になった。ロシア大統領国家経済行政アカデミーのアナトリー・シェフチュク教授は、2012年から継続されているフランツヨーゼフ諸島の廃棄場の浄化作業について説明し、コラ湾の浄化も間もなく始まるという。

第2のセミナーは新たな脅威としての気候変動を検討するものだった。このセミナーでは、ビクトリア大学(カナダ)のウィルフリッド・グリーブズ氏が、都市化と気候変動の関係を検討し、巨大インフラのある都市は気候変動に対して脆弱だが、都市への気候変動の影響は過小評価されていると指摘した。「都市の温暖化は非都市化区域の10倍にもなります。」とグリーブズ氏は指摘した。(原文へ

INPS Japan

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和田征子氏の被爆証言を収録(Vaticn Conference on Nuclear Disarmament)

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Filmed by Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director, President of INPS Japan.

INPSは、ローマ教皇庁人間開発のための部署が11月10・11両日に主催した国際シンポジウム「核兵器なき世界と統合的な軍縮に向けての展望」を取材した。INPS Japanからは浅霧勝浩マルチメディアディレクターは、日本から被爆者を代表して全体会議で証言した和田征子氏の英語による発表を映像で収録し、日本語字幕を加えた。

Ms. Masako Wada, Assistant Secretary General of ‘Nihon Hidankyo’ (The Japan Confederation of A- and H-Bomb Sufferers Organization), gave a personal testimony as a Hibakusha (survivor of atomic bombing in Hiroshima and Nagasaki in 1945) during the International Conference titled “Prospects for a World free from Nuclear Weapons and for Integral Disarmament” in Vatican City on November 10-11, 2017.SHOW LESS

INPS Japan

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サン・ピエトロ寺院におけるミサに参加

Filmed by Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director, President of INPS Japan.

INPS Japanの浅霧勝浩マルチメディアディレクターが、教皇庁人間開発のための部署が11月10・11両日に主催した国際シンポジウム「核兵器なき世界と統合的な軍縮に向けての展望」を取材した際に、プログラムの一部としてピーター・タークソン枢機卿が主宰したミサを収録したもの。

Holy Mass presided over by Cardinal Peter K.A. Turkson, Prefect Dicastery for Promoting Integral Human Development at Saint Peter’s Basilica in Vatican on November 11, 2017.

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【バチカンIDN=ラメシュ・ジャウラ】

11月10・11両日にローマ教皇庁が主催した「核兵器なき世界と統合的な軍縮」への展望を巡る初の国際シンポジウムが、北朝鮮との緊張が激化する米国のドナルド・トランプ大統領のアジア歴訪と重なったのは、意図した結果ではない。会議は数年の準備を経たものであり、そのタイミングは、ガーナ出身のピーター・タークソン枢機卿がうまく表現したように、「摂理」とでも言うべき偶然であった。

正式には、「冷戦期の抑止政策から完全核軍縮への移行に対する支持を活性化することを目的とする」と説明されたこの国際シンポジウムには、11人のノーベル平和賞受賞者をはじめ、国連、北大西洋条約機構(NATO)関係者、ロシア・米国・韓国・イランを含む一部の核能力を持つ国々や、仏教系NGOである創価学会インタナショナル(SGI)の代表者らが参加した。

この国際シンポジウムは、バチカン市国を含む122カ国が7月7日にニューヨークの国連本部で採択した核兵器禁止条約に続くものである。同条約は、核兵器は非道徳的であるというだけではなく、戦争の違法な手段であると見なされるべきであるとしている。この条約の実現に大きな役割を果たしたとして、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)が2017年のノーベル平和賞を受賞している。

NATOのローズ・ガテマラー事務次長は、最近成立した核兵器禁止条約について、北朝鮮の違法な核開発による脅威の高まりなど、今日の安全保障上の問題を無視する危険を冒すものだと警告した。この点は、条約交渉に加わらなかったフランスや英国、米国によっても強調された点である。

これらの国々は共同声明でこう述べている。「我々は、条約に署名・批准したり、加盟国になったりする意図は全くない。したがって、核兵器に関して我々の法的義務にはいかなる変化も生じない。たとえば、我々は、この条約が、慣習国際法を反映しているとか、いかなる意味においても、その発展に寄与することになるとかいった主張には与しない。重要なことは、核兵器を持つその他の国々や、核抑止に依存するほぼ全てのその他の国々もまた、交渉には参加していないということだ。」

Rose Gottemoeller/ Katsuhiro Asagiri| IDN-INPS
Rose Gottemoeller/ Katsuhiro Asagiri| INPS Japan.

ガテマラー事務次長はさらに、NATOとその同盟国には、世界において核兵器を削減してきた長い歴史があると語った。冷戦終結以来、NATOの同盟国は、欧州における核戦力を合計で9割以上削減してきた。ガテマラー事務次長は、核不拡散条約(NPT)こそが現実的かつ検証可能な核戦力の削減を通じた、核兵器なき世界を実現する最善のメカニズムであるとして、全てのNATO同盟国によるの強いコミットメントを強調した。

今回の会議でフランシスコ教皇に対して出された11月10日の声明で、会議に参加したノーベル平和賞受賞者11人のうち5人が、「今回の会議が新たな国際的法規制を立ち上げ、核兵器と、それを放棄することを拒絶している国家に一層の『違法の烙印を押す』ことに役立つものとなることを望む。」と述べた。

彼らは、市民社会や宗教コミュニティ、さまざまな国際組織、諸国家が、核兵器禁止条約を前進させるうえでの共同の役割を称賛した。この条約は、「瞬く間に生命を根絶やしにする能力がある」兵器に終止符を打つことを目的としたものだ。

彼らは、核兵器に依存する必要性を感じる国がなくなるような「包摂的で平等な」国際安全保障体制が必要であり、誰もが「どんな倫理的で道徳的な人間が、機械に人間を殺す能力を与えても問題ないと考えられるだろうか」と自らに問う必要がある、と強調した。

彼らはまた、「差し迫った戦争の第三次革命」を回避するために、「核兵器が戦争で使用される前に、廃絶されねばならない」と指摘したうえで、そのためには、「富の創出よりも人間を優先すること」さらに、「真の安全保障は、個人や社会のニーズを満たすこと、すなわち、人間の安全保障の確保と共通善の促進に集中することから生まれると認識する」必要性を訴えた。

この声明に署名したのは、モハメド・エルバラダイ元国際原子力機構(IAEA)事務局長マイレッド・マグワイヤ氏アドルフォ・ペレス・エスキベル教授ジョディ・ウィリアムズ教授ムハマド・ユヌス博士らである。

Cardinal Peter Turkson/ K.Asagiri|IDN-INPS
Cardinal Peter Turkson/ K.Asagiri|INPS Japan

タークソン枢機卿は開会の挨拶で、この国際シンポジウムは「核兵器国に対して、進行している戦略的な核戦力の削減について、加速させるとまでは言わないにしても、努力を根気強く継続させ、究極的には、核兵器なき世界を目指させる世界の意思」に関するものだ、と強調した。

タークソン枢機卿はまた、「この国際シンポジウムは、『キューバミサイル危機以来ほとんど経験されたことがないような、潜在的な世界規模の大惨事への恐怖が高まっている人類の歴史の瞬間』において開催されています。核兵器が再び世界的な問題となり、諸国家並びに、私たちの将来と将来世代に影響を及ぼしているのです。」「そこで私たちの対話は極めて重大な意味合いを持つことになります。国際社会が平和と戦争に関して、今後数か月、数年で行う決定、とりわけ、政治的責任を持った人々による決定は、人類と地球の将来に大きな影響を及ぼすことになるだろう。」と語った。

このシンポジウムを主催した教皇庁人間開発のための部署を率いるタークソン枢機卿は、核兵器国間の緊張、さらには、核兵器国と核兵器保有をめざす国々との間の緊張状態を考えると、こうした対話は緊急に必要とされているものだ、と語った。

こうした状況を背景に、フランシスコ教皇は11月10日にシンポジウムの参加者に対して、核兵器は「紛争の当事者だけではなく人類全体に影響を及ぼす『恐怖の精神構造』に奉仕するために存在するものです。」と指摘したうえで、「大量破壊兵器、とりわけ核兵器は、誤った安心感を生み出むだけです。」と語りかけた。

「国際関係は武力や、相互の威嚇、軍事力の顕示によって統治することはできません。これらのものは、連帯の倫理に育まれた人類の平和的共存の基礎を築くことはできません。」

フランシスコ教皇は、今年発布50周年を迎えたパウロ6世の回勅「ポプロールム・プログレッシオ-諸民族の進歩推進について-」で人類の総合的発展という概念が示され、それを「平和の新しい名前」として提言されたことに注目し、「『無駄と切り捨ての文化』を拒絶し、自己中心的でその場限りの利益を追求するのではなく連帯のプロセスを重んじる地道な努力を通じて、痛みを伴う不平等の中で精励している諸個人や諸民族を慮る必要があります。」と語った。

中満泉国連軍縮問題上級代表は「非核兵器地帯を追求する方法について議論する、世界の指導者や市民社会のアクター、諸政府によるいかなる集まりも、国連の軍縮活動の目的にとって非常に有益なものです。」と指摘したうえで、核兵器を根絶するために実質的に何ができるかについて、大いに話し合っていきたいと語った。

中満上級代表はまた、「北朝鮮の核問題への唯一の解決策は政治的なものであり、軍縮や軍備管理、核不拡散に関する協議は、こうした政治的解決を見出そうとする努力に「熟考の機会を与える空間」を創出するものだと国連は考えている。」「従って、私たちは軍縮に関して決してあきらめてはいません。それどころか、状況が厳しいからこそ、軍縮の議論がより重要だと考えています。」と語った。(原文へ

INPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

*統合的な軍縮(Integral Disarmament)=人々の精神から戦争の不安や強迫観念を誠実に排除する取り組みを伴う軍縮

Filmed and edited by Katsuhiro Asagiri, President of INPS Japan.

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米議会の報告書が、高騰する核兵器予算について警告を発する

【トロント/ワシントンD.C. IDN=J.C.スレッシュ】

ある新たな研究報告書が、現在米国が進めている核戦力の維持・近代化計画に要する費用が高騰し続けている現実にスポットライトをあてるとともに、実質的により少ない費用で信頼性を確保しつつ強力な抑止力を維持可能な、いくつかの選択肢を示している。

米議会予算局(CBO)が10月31日に発表した試算によると、米国が保有する核兵器の保管・信頼性の維持と近代化に、今後30年間(2017年~2046年)で1兆2400億ドルの費用がかかることが明らかになった。CBOは、この費用はインフレ率を考慮すると、30年間で1兆5000億ドル超にのぼると試算している。これらの金額はこれまで公表されてきた約1兆ドルという試算額をはるかに上回るものである。

Kingston Reif, Director of Disarmament & Threat Reduction Policy/ACA

「米議会予算局が示した厳しい現実は、米国が夢のような大金でも得ない限り、トランプ政権が引き継いだ核兵器支出計画は、深刻な価格問題に直面するということだ。」と、ワシントンのシンクタンク「軍備管理協会」のキングストン・ライフ軍縮・脅威削減政策局長は語った。

米議会予算局の研究報告書は、年末に完成予定のトランプ政権による「核態勢見直し」の結果、新型の核兵器が提案され、米国の政策において核兵器の比重が大きくなる可能性があるとの報告がなされるなかで、発表された。

「もしトランプ政権による『核態勢見直し』が、現在の核兵器関連支出を削減せず、それどころか支出を一層拡大した場合、核兵器に費やす支出額が、その他の重点国家安全保障プログラムを危険に晒すことになるだろう。」とライフ氏は指摘した。

米議会予算局の研究報告書は、膨れ上がった巨額の費用を管理し削減するための、現行の支出計画に代わる10余りの選択肢について評価を加えている。例えば、戦略核戦力の3本柱(弾道ミサイル搭載潜水艦、巡航ミサイル搭載戦略爆撃機、大陸間弾道ミサイル)を維持したままでも既存の計画を縮小することで全体の約15%(約2000億ドル)の削減が可能としている。また、戦略核戦力の3本柱を2本柱に移行させれば、さらなる節約が可能としている。

「この報告書は、米国防総省(ペンタゴン)の関係者らが、核戦力を維持し改良するためには、高価な全ての計画を推進するか、何もしないかの二者択一の中で前者しかないと繰り返し結論付けてきた主張に一撃を与えるものです。なぜならこの報告書は、費用を削減してもなお、米国の核戦力を、敵対するいかなる核武装勢力をも全滅させられるレベルに維持できる複数の選択肢があるということを示しているからです。」と「軍備管理協会」のダリル・キンボール会長は語った。

Daryl Kimball/ photo by Katsuhiro Asagiri
Daryl Kimball/ photo by Katsuhiro Asagiri

「1兆5千億ドルにものぼる戦略核戦力の3本柱は、あまりにも高価で費用が負担できないのみならず、不必要なものです。米国は核攻撃の抑止或いは反撃するために必要な戦力をはるかに上回る規模の、核兵器と運搬システム及び支援インフラを保有し続けています。」と、キンボール会長は語った。

「軍備管理協会」は、過去数年にわたって、繰り返し現在の核支出計画に対する懸念を表明するとともに、費用の過剰負担がその他の軍事的な優先事項に脅威を及ぼしており、より費用効率が高い選択肢を検討するよう提案してきた。

ライフ氏が8月18日に投稿した「1兆(5000億)ドルの戦略核戦力の3本柱」では、ドナルド・トランプ大統領が8月9日にツィートした内容に言及している。トランプ大統領はそのツィートの中で、「私の大統領としての最初の命令は、核戦力の改修と近代化だった。今やそれは従来よりはるかに強く、より強力になっている。」と語った。トランプ大統領は、8月11日の記者会見においても、同じ主張を繰り返した。

「大統領のこれまでの多くの発言同様、この主張も真実を反映したものではありません。」

「事実、米国の核戦力は2017年1月20日のトランプ大統領就任時から全く強化されていません。大統領は確かにペンタゴンに対して、核政策の指針を定める『核戦略体制の見直し』の策定に着手するよう命じましたが、改定作業は4月になって正式に開始されたものの現在も進行中であり、早くても作業が完成するのは本年末と見られています。」とライフ氏は指摘した。

「実際には、大規模で費用がかかる核戦力の近代化計画に着手したのはバラク・オバマ大統領でした。この計画の大半は未だ初期段階にあり、完成には数十年を要します。」「トランプ大統領はこの計画を引き継いだのであり、現在議会による承認待ちの最初の予算要求では、オバマ大統領の計画を急ピッチで進めるよう提案しています。トランプ政権が未だ独自の核態勢見直しを終えていないことを考えれば、このことは驚くにはあたりません。」とライフ氏は語った。

ライフ氏はまた、「トランプ大統領の誤った(そして危険な)核武力による威嚇に関する重要な事実確認作業の中で最も欠落しているのは、米国の核戦力が過去7カ月間変化していない一方で、現行の核近代化計画に要する年間予算の見通しは高騰し続けている点です。そして、この予算高騰はトランプ大統領の判断に起因するものではないという点です。」と語った。

ライフ氏はさらに、米議会予算局が今年2月に発表した報告書によると、2017年から26年の間における核兵器関連の費用を4000億ドルと試算している。これは同予算局が2015年1月に発表した前回の10年間の試算額3480億ドルを15%(=520億ドル)上回っている。

ICAN
ICAN

「この向こう10年間の試算は、既存の戦略核戦力の3本柱(弾道ミサイル搭載潜水艦、巡航ミサイル搭載戦略爆撃機、大陸間弾道ミサイル)と関連する核弾頭や支援施設に対して大幅な資金増強が初めて計画的に図られることを示しています。しかし、将来的にこの試算はさらに高額なものになっていくとみられます。」とライフ氏は指摘した。

「軍備管理協会」は独立系の会員制組織で、世界で最も危険な兵器が及ぼす脅威に取り組むために、信頼できる情報や実践的な政策を提供している。(原文へ

翻訳=INPS Japan

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Filmed by Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director, President of INPS Japan.

INPSは、ローマ教皇庁人間開発のための部署が11月10・11両日に主催した国際シンポジウム「核兵器なき世界と統合的な軍縮に向けての展望」を取材した。INPS Japanからは浅霧勝浩マルチメディアディレクターがラメシュ・ジャウラ編集長とバチカンで合流し、主催したピーター・タークソン枢機卿(ローマ教皇庁人間開発のための部署長官)をはじめ、主な参加者とのインタビューや会議の様子を記事並びに映像に収録した。

同部署は、「すべてのことが繋がっている」とするフランシスコ教皇の金言に基づき、「統合的軍縮」と「総合的な開発」の間のつながりに焦点を当てるとともに、「開発」・「軍縮」・「平和」の間の関連性を協議すべく、世界各地から宗教指導者、市民社会、諸政府、国際機関、著名な学者、ノーベル平和賞受賞者、学生代表をバチカン市国に招いた。

Cardinal Peter K A Turkson explains why nuclear weapons do not guarantee security, pleads for human solidarity.

INPS Japan

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|イラク|ISIL構成員らがモスルでの「国際犯罪」で糾弾される

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【ジュネーブIDN=ジャヤ・ラマチャンドラン】

国連の報告書は、いわゆるイスラム過激派組織『イラク・レバントのイスラム国(ISIL)』がイラク第二の都市モスルにおいて、「国際犯罪」に相当する深刻かつ組織的な犯罪を行ったと非難している。

国連イラク支援ミッション(UNAMI)と国際連合人権高等弁務官事務所(OHCHR)が11月2日に発表した報告書は、目撃者の証言に基づいて、民間人の集団拉致、多数の人の『人間の盾』化、民間人の住居に対する意図的な砲撃、モスルから逃げようとする民間人を標的とした無差別攻撃を記録している。

UN High Commissioner for Human Rights Zeid Ra’ad Al-Hussein. Credit: UN Photo/Jean-Marc Ferré
UN High Commissioner for Human Rights Zeid Ra’ad Al-Hussein. Credit: UN Photo/Jean-Marc Ferré

イラク治安部隊(ISF)と有志連合軍は2017年7月に、2014年6月以来ISILの支配下にあったモスルを奪還した。

モスル奪還作戦の期間中、数千人の民間人が衝撃的な人権侵害と明らかな国際人道法違反に晒されました。」「いかなる武力紛争においても、処刑方式による民間人の殺害、家族に苦痛を与えること、財産の無差別な破壊は決して許されません。凶悪な犯罪に関与した者には責任を取らせなくてはならない。」と、ザイド・ラアド・アル・フセイン国連人権高等弁務官は語った。

報告書は、「ISIL構成員らは、2016年11月初旬にモスル市内のISIL占領下の地区から、イラク治安部隊に奪還された市内地区の住民は政府軍に『抵抗しなかった』ことを理由に(ISILによる)『正当な攻撃目標』と見なされる、と拡声器で発表した。」と詳述している。

「このいわゆる『ファトワ』は、モスル東部に住む民間人を直接標的にしたISILによる軍事作戦を伴うものだった。そしてその戦術は、砲撃、簡易爆発装置の使用、逃げ惑う民間に対する発砲を含んでいた。」と、報告書は述べている。

ヤン・クビシュ国連事務総長特別代表(イラク担当)は、「報告書は民間人に対してISILが行った大量殺戮や、モスルをISILの首都と主張しながらこの都市を意図的かつ徹底的に破壊した証拠が記録されています。」と語った。

「ISILによる恐怖の支配はあらゆる人々に及び、丸腰の住民に計り知れない苦痛を負わせた。彼らの『罪』は、ISILの支配地域に偶然住んでいたということだけのことである。ISILの邪悪な所業は住民に対する殺人や威嚇にとどまらず、モスルを象徴するアル・ハドバ・ミナレット(1172-73年創建)の破壊など、このテロ組織が代表していると主張するイスラム教や歴史を一切顧みることなく、歴史的・宗教的建造物を恣意的に破壊した。」

報告書は、国連安全保障理事会や人権委員会を含む国際社会に対して、大量虐殺をはじめ人道に対する罪や戦争犯罪を行った者たちが断罪されるよう、行動をおこすよう訴えた。

報告書によると、モスル奪還作戦では少なくとも2521人の民間人が殺害され、その大半がISILによるものだった。その中にはISILによって処刑された741人が含まれている。その他、1673人が負傷している。また、市民防衛軍は、2017年10月26日現在でモスルの瓦礫から1642人の遺体を回収したと報告している。

軍事作戦に伴い、数多くの市民が避難を余儀なくされた。7月11日現在、137,339家族(824,034人)が住居を追われることとなった。

また報告書は、イラクでは2014年以来、元ISIL占領地域で少なくとも74の集団墓地が発見されたと記している。こうした集団墓地の規模は、数人から数千人が疑われるものまで様々である。

報告書はイラク政府に対して、加害者の特定に資する犯罪の証拠を保管できるよう、こうした集団墓地を厳重に管理する措置をとるよう要請した。

報告書はまた、イラク当局に対して、軍事作戦期間中におけるイラク治安部隊や有志連合軍関係者による違反行為や人権侵害疑惑についても捜査するよう強く要請した。イラク治安部隊が主導し、2月19日に開始されたモスル奪還作戦が最も激しかった時期に、有志連合軍による空爆で461人の民間人が犠牲になった、と報告書は記録している。こうした民間人が犠牲になったほぼすべての事例について、国連イラク支援ミッション(UNAMI)と国際連合人権高等弁務官事務所(OHCHR)は、空爆によるものと断定できてはいないが、報告書は、国際社会の関与により発生した民間人の犠牲に関しては、徹底的に事実関係を捜査し、結果を公表するよう強く求めている。

Families flee their homes in Mosul, Iraq, heading for an army outpost in the Samah neighbourhood where they will be taken away from the heavy fighting engulfing the city. Photo: UNHCR/Ivor Prickett
Families flee their homes in Mosul, Iraq, heading for an army outpost in the Samah neighbourhood where they will be taken away from the heavy fighting engulfing the city. Photo: UNHCR/Ivor Prickett

報告書はまた、イラク政府とクルディスタン地域政府に対して武力紛争に関連して行われてた犯罪行為は、イラク司法制度のもとで裁くよう求めている。また、イラク政府に対して、国内の司法制度の下で国際犯罪を裁けるよう法律を改正するとともに、イラクが直面している特定の状況に関しては、緊急の措置として、国際司法裁判所の裁判権を認めるよう強く要請した。

報告書は、「モスルでの『国際犯罪』に関与した者をイラク当局が起訴すれば、被害を受けた国民に、犯人はいつどこにいようとも、最終的には正義の審判が下されるというメッセージを送ることになるはずだ。」と述べている。

さらに報告書は、「被害者のために正義を確保することこそが、イラクにおけるコミュニテイー間の信頼を再構築していくうえで欠かせないものであり、同国に恒久的和解をもたらす鍵となる。」と指摘している。(原文へ

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バチカン会議、「持続可能な開発」と「核兵器禁止」のネクサス(関連性)を強調

【バチカンIDN=ラメシュ・ジャウラ】

2015年以後の開発問題をめぐる成果文書として、「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」が2年前の「国連持続可能な開発サミット」において採択された際、世界の首脳らはこれを「より大きな自由における普遍的な平和の強化を追求する人間、地球及び繁栄のための行動計画」だと規定した。

17分野・169項目からなる持続可能な開発目標(SDGs)を掲げたこの文書は、公開作業部会における長い議論から生まれてきたコンセンサスを基礎としている。しかしそれは、「核兵器のない世界」といったような言葉を巧妙に避けている。

SDGs Goal No. 16
SDGs Goal No. 16

しかし、国連総会が採択した文書には、SDGsの「相互のつながりと統合的な性格」を説明した「持続可能な開発は、平和と安全保障なしには実現しえない。また、平和と安全保障は、持続可能な開発なしには危機に晒されるだろう。」という宣言も含まれている。平和、安全保障、持続可能な開発のネクサス(関連性)は、今年9月28・29両日に国連がアフリカ連合と共催した会合でも強調された。

そしてこのネクサスは、教皇庁人間開発のための部署が11月10・11両日に主催した国際シンポジウム「核兵器なき世界と統合的な軍縮に向けての展望」においても、大いに脚光を浴びた。

教皇庁のコミュニケでは、同部署の長官であるピーター・タークソン枢機卿が、今回のシンポジウムは「世界平和のための行動をとり、持続可能な開発を実現するために資源を創造的に活用し、全ての国のあらゆる人々の生活の質を差別なく向上させるという、フランシスコ教皇の優先課題に対応するものです。」と語った。

同部署は、「すべてのことが繋がっている」とするフランシスコ教皇の金言に基づき、「統合的軍縮」と「総合的な開発」の間のつながりに焦点を当てるとともに、「開発」・「軍縮」・「平和」の間の関連性を協議すべく、世界各地から宗教指導者、市民社会、諸政府、国際機関、著名な学者、ノーベル平和賞受賞者、学生代表をバチカン市国に招いた。

北朝鮮と米国が核戦力を互いに誇示しあう中、フランシスコ教皇は11月10日、参加者らを前に、「不安定と対立が蔓延る今日の国際情勢という複雑な政治的課題に照らして見ると」、核兵器なき世界の見通しは「ますます遠のくように思われるかもしれません。」と語った

「実際、軍拡競争はとどまるところを知らず、核兵器のみならず、兵器の近代化や開発に各国がかける費用は相当高額なものとなっている。」

フランシスコ教皇は、「平和」、「安全保障」、「開発」の間のネクサス(関連性)を強調しつつ、「結果として、貧困との闘いや平和の促進、教育・環境・保健関連プロジェクトの実施、人権の発展といった、人類が直面している真の優先課題が後回しにされています。」と語った。

Pope Francisco/ Wikimedia Commons
Pope Francisco/ Wikimedia Commons

フランシスコ教皇はまた、「核兵器は『恐怖の精神構造』を反映したもの」と指摘したうえで、効果的で包摂的な努力が核武装の解体につながりうると主張した。さらに、「国際社会は、軍事力や相互の威嚇、軍備の誇示に囚われてはいけません。」「大量破壊兵器、とりわけ核兵器は、誤った安心感を生み出むだけです。」「これらのものは、人類間の平和的共存の基盤にはなりえません。それはむしろ、連帯の倫理によって形作られるべきものなのです。」と語った。

フランシスコ教皇はこの文脈で、広島と長崎の被爆者や、マーシャル諸島などの核実験による被害者について言及した。

フランシスコ教皇はさらに、「核技術がデジタル通信などを通じて拡散していることや、国際法が新規に核兵器を取得する国の出現を防げていないことを残念に思う。」と指摘したうえで、「その結果生まれたシナリオは、テロや非対称的戦争など、現代の地政学が抱える問題を考えると、非常に憂慮すべきものです。」と語った。

フランシスコ教皇は「こうした状況の中にも、健全な現実主義は今日の秩序を失った世界に希望の灯を灯し続けています。」と述べ、国連で採択された核兵器禁止条約について、「この条約は、主に『人道的イニシアティブ』として、市民社会や諸国家、国際機関、教会、学者、専門家グループなどの様々な協力連帯のうちに推進された成果として意義深いものです。」と指摘した。

今回教皇庁が主催した国際シンポジウムは、核兵器の完全廃絶を呼びかけた新たな国連条約(=核兵器禁止条約)に122カ国が7月7日に署名してから初めての、軍縮に関する世界的な会合であった。バチカンは、この協定に既に批准している3カ国のうちのひとつである。これまでのところ、どの核保有国も、NATO加盟国も、同条約に署名していない。

Cardinal Peter Turkson/ K.Asagiri | IDN-INPS
Cardinal Peter Turkson. Photo:Katsuhiro Asagiri, President of INPS Japan.

タークソン枢機卿は開会の挨拶で、平和や安全保障、安定への希求は人間の心に深く根差した願望であり、「恐怖に駆られた人々ががむしゃらに安心と安全を求めることは理解できます。」と述べる一方、「そうした要求に応える方法は、大量破壊兵器一般や、とりわけ核兵器の拡散によるものではありません。」「これは安全保障の問題を悪化させるだけではなく、保健や雇用の創出、環境の保護といった長期的な平和の構築に投資する国の財政能力を損なうことにもなるのです。」と語った。

「世界の人的及び経済的資源を軍備のために転用することを最も少くして国際の平和及び安全の確立及び維持を促進する」(国連憲章第26条)ために、第二次世界大戦のなかから立ち上がった世界の国々が国連憲章の中で決意を示したという事実にタークソン枢機卿は注意を促した。

Dwight D. Eisenhower, President of the United States/ Public Domain
Dwight D. Eisenhower, President of the United States/ Public Domain

タークソン枢機卿はまた、第二次世界大戦時に陸軍元帥であったドワイト・アイゼンハワー元米大統領が、ソ連の指導者ヨシフ・スターリンの死の直後にあたる1953年に行った演説「平和への機会」の中で提示した、軍事支出に関する警告的な分析に対して注意を向けた。「製造される1丁の銃器、新たに建造される1隻の戦艦、発射される一発のミサイル、これらひとつひとつは究極において、食べ物がなく飢えに苦しむ人々からの、そして服がなく寒さに耐えている人々からの盗みであるといえる。武装したこの世界は、お金だけを費やしているのではない。それは汗して働いている労働者、科学者の天賦の才、子どもたちの希望をも費やしているのである。」

「近代的な重爆撃機1機のコストは、近代的なレンガ造りの学校を30都市以上に建設するコスト、あるいは、それぞれ6万人の人口に対応できる発電所2基のコスト、あるいは、フル装備の総合病院2カ所を建設するコストに相当するものだ。またはこの金額で、コンクリートの舗装道路を50マイルにわたって整備できる。戦闘機1機のコストは、小麦50万ブッシェル分だ。戦艦1隻分で、8000人以上が住める新築の家が建てられる。…いかなる真の意味においても、これは正しい生活のあり方とはいえない。戦争の脅威の影が差すなか、鉄の十字架に架けられているのは私たち人間だ。……世界が生き残れる他の方法はないものだろうか?」

Muhammad Yunus/ K.Asagiri | IDN-INPS
Muhammad Yunus. Photo:Katsuhiro Asagiri, President of INPS Japan.

2006年のノーベル平和賞受賞者モハマド・ユヌス氏は、今日の矛盾を指摘して、「私たちは幸運にも大きな可能性(驚異的な技術や莫大な富、無限の人間の能力)の時代に生まれました。有史以来人類を苦しめてきた、飢えや貧困、病気など、世界の緊急の諸課題に対する解決策は、すでに私たちの手の届く範囲内にあります。」と語った。

「しかし、人類の文明をより良い方向に変革できるこの同じ技術は、私たちを絶滅に追いやることもできるのです。まさに、今日集った私たちがこの国際シンポジウムの議題に注目するのはこのためです。核兵器の増強と核軍拡競争は、私たちの想像を超える災禍を人類にもたらしかねません。この競争をともに止める努力をすべき時なのです。私たちが貧困のない世界を望んでいるように、核兵器のない世界を創ることも望んでいます。そうした世界では、核兵器を見られるのは博物館でのみということになるでしょう。」

元ロシア下院議員/元下院軍事委員会副委員長で現在はロシア科学アカデミー会員のアレクセイ・アルバトフ氏は、「核抑止が過去に人類を救ったかどうかはともかく、将来的にそうした保証を与えることはないだろう。核戦争によって数時間のうちに人類を絶滅させる能力でもって安全を保障する人類文明というものは、もはや『文明』の名には値しません。これに代わる保証を見つけるべき時にきています。」と率直な口調で語った。

Alexey Arbatov. Photo:Katsuhiro Asagiri, President of INPS Japan.

中満泉国連軍縮問題上級代表は、「国際の安全と平和を強化する外交の柱としての軍縮・不拡散体制の役割」に関する11月10日の発言に焦点をあてた。

中満上級代表は、「軍縮は国連創設時の原則でした。」と指摘した。そのことは、「世界の人的及び経済的資源を軍備のために転用することを最も少くして国際の平和及び安全の確立及び維持を促進する」ことや、軍備規制の体制構築を呼びかけた国連憲章と、「原子兵器と、大量破壊に適用可能なその他すべての兵器」の廃絶を追求した国連総会決議第1号に現れている。

東京に本部を置く仏教系NGO「創価学会インタナショナル」(SGI)の池田博正副会長は、11月11日の発言で、世界の民衆を人質にとり、恐怖の均衡によって「平和」を保つとする核抑止論の「狂気の悪夢から人々を呼び覚ます」必要性を強調した。

「私たちは、新しいビジョンの輝きで、人々を悪夢から呼び覚まさなければなりません。『統合的軍縮』や『人間の安全保障』、『人間開発』といったコンセプトは、そうしたビジョンの方向性を示すために役立ちましょう。」と池田副会長は語った。

さらに、「核軍縮の分野で、そのようなビジョンに一定の方向性を指し示したのが、『人道』というコンセプトでした。それは、安全保障の議論に『人間』という観点を入れる重要な役割を果たしました。人道の議論は、国際社会において核兵器は許されないことを明示的に確認する規範、すなわち核兵器禁止条約の実現に大きな役割を果たしたのです。」と続けた。

Mr. Hiromasa Ikeda, Vice President of SGI addressing at the conference/ K.Asagiri | IDN-INPS
Mr. Hiromasa Ikeda, Vice President of SGI addressing at the conference. Photo:Katsuhiro Asagiri, President of INPS Japan.

「そして人道の議論を下支えしてきたのが、核兵器の問題は国際法上の問題であるのみならず、優れて倫理・道徳的な問題だとする主張でした。」と池田副会長は語った。

「その点で宗教は、積極的な役割を果たしてきました。」と池田副会長は述べ、さらに、「ローマ教皇は、2014年のウィーン会議と今年のニューヨークの核兵器禁止条約交渉会議に声明を寄せ、議論に大きなインパクトを与えました。SGIも参画する『核兵器を憂慮する宗教コミュニティ』のイニシアティブは、国連総会や核不拡散条約(NPT)運用検討会議、核兵器禁止条約交渉会議等で8回にわたり、核兵器の禁止と廃絶を求める共同声明を発表してきました。」と語った。

「核兵器禁止条約の前文に、『宗教指導者』による努力に対する認識が示されたのは、長年にわたる倫理的、道徳的働きかけが、国際的な議論に欠かせない要素として認識されていることの現れでありましょう。」と池田副会長は指摘した。

「SGIは、核兵器廃絶に向けての議論をより幅広い人々と共有するために、どのような立脚点に立つべきかを考え続けてきました。そこから生まれたのが、『あなたにとって大切なものすべて』というコンセプトです。」と池田副会長は語った。

International Conference in Vatican/ K.Asagiri | IDN-INPS
International Conference in Vatican. Photo:Katsuhiro Asagiri, President of INPS Japan.

教皇庁は、この国際シンポジウムの概要を示した12項目の準備段階の文書でこう述べている。「すべてのものがつながっている。すべての人がつながっている。私たちは共に、核兵器を廃絶し、総合的人間開発に投資し、平和を築くことができる。」「これらの予備的な結論は、対話の終わりを意味しない。むしろ、将来の対話と行動の始まりである。」

今年は、「ポプロールム・プログレッシオ-諸民族の進歩推進について-」というテーマに関するパウロ6世の回勅から50年にあたる。フランシスコ教皇は今回の国際シンポジウムの参加者に対して、1967年3月に出されたこの書簡は、人類の総合的発展という概念の出発点であり、それは「平和の新しい名前」として提案されたものだ、と述べた。

パウロ6世は簡潔にこう語っている。「開発は経済成長に限られない。開発が真のものであるためには、総合的でなければならない。それは、それぞれの人間の発展と、人類全体の発展を涵養するものでなければならない。」(原文へ

INPS Japan

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IDN-INPS covered the Vatican Conference on “Prospects for a World free from Nuclear Weapons and for Integral Disarmament” on November 10-11, the first such gathering organised by the Pope. Apart from giving a glimpse of conference sessions, IDN-INPS Multimedia Director Katsuhiro Asagiri shot video clips of interviews with the Vatican representatives and independent experts.

WATCH VIDEO > A Glimpse of the Vatican Conference

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Filmed by Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director, President of INPS Japan.
Katsuhiro Asagiri (Left), Rick Wayman(Center), and Ramesh Jaura (Right) at the Vatican Conference.

INPS Japanは、ローマ教皇庁人間開発のための部署が11月10・11両日に主催した国際シンポジウム「核兵器なき世界と統合的な軍縮に向けての展望」を取材した。浅霧勝浩理事長はラメシュ・ジャウラIDN編集長とバチカンで合流し、「核時代平和財団」の事業責任者リック・ウェイマン氏をはじめ、主な参加者とのインタビューや会議の様子を記事並びに映像に収録した。

ウェイマン氏は、核兵器の保有そのものを明確に否定したフランシスコ教皇の公式見解をはじめ、この会議が世界のカトリック教徒に与えるインパクトは大きいと語った。今回のバチカン会議は、「統合的軍縮」と「総合的な開発」の間のつながりに焦点を当てるとともに、「開発」・「軍縮」・「平和」の間の関連性を協議すべく、世界各地から宗教指導者、市民社会、諸政府、国際機関、著名な学者、ノーベル平和賞受賞者、学生代表をバチカン市国に招いた。

INPS Japan covered the international symposium “Prospects for a World Free from Nuclear Weapons and for Integral Disarmament,” hosted by the Vatican’s Dicastery for Promoting Integral Human Development on November 10 and 11. INPS Japan President Katsuhiro Asagiri joined IDN Editor-in-Chief Ramesh Jaura at the Vatican, where they conducted interviews with key participants, including Rick Wayman, Director of Programs at the Nuclear Age Peace Foundation, and recorded the proceedings in both articles and video.

Wayman said the conference would have a significant impact on Catholics around the world, particularly in light of Pope Francis’s official position clearly rejecting the very possession of nuclear weapons. The Vatican conference focused on the connection between “integral disarmament” and “integral development,” and brought together religious leaders, civil society representatives, governments, international organizations, eminent scholars, Nobel Peace Prize laureates, and student representatives from around the world to Vatican City to discuss the links between development, disarmament, and peace.

INPS Japan

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