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核武装した欧州連合?物議を醸す提案

【国連IPS=タリフ・ディーン】

ロシアからの間接的な威嚇が続き、ウクライナに対する核攻撃の警告が発せられる中、欧州の一部の政治家が欧州連合(EU)も核兵器を保有すべきだとの議論を展開し始めた。

しかし、国際反核法律家協会(IALANA、ドイツ)のフォルケルト・オーム共同代表はIPSの取材に対して、「EUの核保有を呼びかけることは国際法に反します。」と語った。

国際司法裁判所(ICJ)の勧告的意見は、国家は、自衛の極端な状況下にあっても、国際人道法の条件を満たした兵器でもって自らを防衛することができるのみであると判示しています。しかし核兵器はこの条件を満たしません。核兵器には放射性物質が含まれているため、『クリーン』な核兵器など存在しないのです。EU、とりわけ一部のドイツの政治家による議論や発言は、多くの点で国際法を蔑ろにしています。」とオーム共同代表は指摘した。

「ドナルド・トランプ氏が米大統領に返り咲くことが予想される中、EU最大の政治会派のトップが、欧州も米国からの支援なしに戦争に備え、自らの核の傘を持つべきだと主張している。」と米オンライン雑誌『POLITICO』が報じた。

中道右派「欧州人民党」グループのマンフレッド・ウェーバー議長は、「トランプ氏とロシアのウラジーミル・プーチン大統領は2024年の枠組みを決める2人の人物だ。」と述べた。

欧州連合の構成27カ国は、オーストリア・ベルギー・ブルガリア・クロアチア・キプロス・チェコ共和国・デンマーク・エストニア・フィンランド・フランス・ドイツ・ギリシャ・ハンガリー・アイルランド・イタリア・ラトビア・リトアニア・ルクセンブルク・マルタ・オランダ・ポーランド・ポルトガル・ルーマニア・スロバキア・スロベニア・スペイン・スウェーデンである。

しかし、フランスは、米国・英国・中国・ロシア・インド・パキスタン・イスラエル・北朝鮮と並んで、EUで唯一核兵器を保有している。

IALANA副代表で、核政策法律家委員会シニア・アナリストのジョン・バローズ氏は、IPSの取材に対し、「欧州連合(EU)やその他欧州機関が核兵器を取得することへの関心は、ロシアの違法なウクライナ侵攻と、それに伴う核の脅威に起因しています。」と指摘したうえで、「しかし、解決策は欧州の核兵器への依存を増やすことではありません。むしろ、ウクライナに対するロシアの戦争を早期に終結させることであり、これにはウクライナ側の痛みを伴う妥協が必要となってくるだろう。」と論じた。

John Burroughs/ LCNP
John Burroughs/ LCNP

「それによって、紛争から生じる核戦争の真の危険性を排除し、ロシアとの軍備管理および軍縮協議を再開する道を開くことが可能となります。これは、EUまたは他の欧州の組織が核兵器を取得するよりもはるかに良い道です。欧州自前の核武装はIALANAドイツ支部が声明で指摘しているように、核不拡散条約に違反し、すでに進行中の核軍拡競争を加速させ、他の地域での核拡散を助長する恐れがあります。」と、バローズ氏は指摘した。

「『欧州の核』への関心は、かつて米大統領を務め、また今度務めることになるかもしれないトランプ氏が『米国は北大西洋条約機構(NATO)から手を引く』と示唆したことによって加速した面がありますが、この懸念は誇張されています。」

「米国政府全体としてはNATOに深くコミットしており、そのことは、NATOからの脱退には米議会の同意が必要との法律を米議会が可決し、ジョー・バイデン大統領もそれに署名した事実に表れています。他方、フランスと英国の核戦力は、NATOを通じて欧州防衛のために利用可能だという現実もあります。」

「英仏の核戦力は米ロの核戦力ほど大きくも多様でもないが、ロシアなどの国々に攻撃を思いとどまらせるには十分な規模です。しかしより根本的には、IALANAドイツ支部の声明が述べているように、米国の核であれ欧州の核であれ、核兵器に依存すること自体が、法に基づく世界秩序と相いれないものであり、核依存を増すことは間違った方向です。」とバローズ氏は語った。

ウェーバー議長は、「私たちはNATOを望んでいますが、トランプの時代でも、それなしで自らを防衛できるほど強力でなければなりません。」と、キエフへの列車訪問の帰路で『POLITICO』との電話インタビューで語った。」

ドイツで強い影響力を持つ保守派のウェーバー議長は、「米国で誰が(大統領に)選ばれようとも、欧州は自らの外交政策をしっかりと持ち、独自の守りを固めねばなりません。」と語った。

しかしこの発言は、欧州による核防衛という難問を惹起した。『POLITICO』によれば、NATOは現在、ベルギー・ドイツ・イタリア・オランダ・トルコの6カ所の空軍基地に配備された米国の核兵器に大きく依存している。

「欧州は抑止力を構築しなければなりません。抑止力を持ち、自らを防衛せねばなりません。いざという時、核の選択肢が本当に決定的なものになることは誰もが知っています。」とウェーバー議長は語った。

Russian President Vladimir Putin addresses participants of the Russia-Uzbekistan Interregional Cooperation Forum in Moscow, Russia/ By Kremlin.ru, CC BY 4.0
Russian President Vladimir Putin addresses participants of the Russia-Uzbekistan Interregional Cooperation Forum in Moscow, Russia/ By Kremlin.ru, CC BY 4.0

ロシアによるウクライナへの全面侵攻以来、プーチン大統領の核のレトリックは激しさを増しており、西側諸国に対する間接的な核使用の威嚇を定期的にほのめかしてきた。

EU内で、より大きな役割を果たすことができる唯一の国はフランスで、約300発の核弾頭を保有している。

260発弱の核兵器を保有している英国は欧州の核保有国ではあるが、EUの一員でない。「おそらく、我々のオプションを明確にしておくために、英国のEU脱退という問題はあったものの、英国の友人たちと建設的な話を始める段階にあるのではないだろうか。」とウェーバー議長は続けた。

「西部諸州法律家協会」(米カリフォルニア州オークランド)のジャクリーン・カバッソ代表はIPSの取材に対し、「ロシアの違法なウクライナ侵攻とそれに伴う騒がしい核使用の威嚇の中で、ドイツ政府の元高官や政治家の一部が欧州連合による核保有を主張し始めています。」と語った。

例えば、緑の党のヨシュカ・フィッシャー元外相は昨年、『シュピーゲル』誌に対し、「プーチンの帝国主義的なイデオロギーに従う隣国ロシアがある限り、このロシアを抑止せずにはやっていけません。」と語っている。

抑止力とは、ドイツが独自の核兵器を保有することも含まれるのか、と問われたフィッシャー元外相は、「それは実に難しい問題だ」としたうえで、ロシアのプーチン大統領は「核の威嚇を行っている」と指摘し、 「ドイツ連邦共和国は核兵器を保有すべきかと問われればノーだ。では欧州はとうかと問われればイエスだ。EUには独自の核抑止力が必要だ。」と語った。

Jacqueline Cabasso, Executive Director, Western States Legal Foundation. Photo Credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director, INPS Japan.
Jacqueline Cabasso, Executive Director, Western States Legal Foundation. Photo Credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director, INPS Japan.

「IALANAドイツの声明で指摘されているように、このような計画は核不拡散条約やその他の関連法規に違反します。しかし、それ以上に憂慮すべきは、フィッシャー元外相らが示唆しているような核の脅威が常態化し核拡散が正当化されることです。」と、カバッソ事務局長は語った。

「すべての核保有国が核兵器を質的、場合によっては量的にアップグレードし、新たな多極的軍拡競争が進行中であり、核保有国間の戦争の危険性が高まっていいます。このような状況でさらに世界の核保有国の数が増えることになれば、それは実に恐ろしいことです。」

「ドイツをはじめとするEU加盟国は、核兵器保有を示唆するいかなる主張もはねのけ、核兵器への依存を率先して否定し、あらゆる外交手段を駆使してロシアとの温度差を縮め、ウクライナ戦争を終結させ、核軍縮プロセスを開始するために核保有国間の交渉を促進すべきです。」と、カバッソ氏は主張した。

ブリティッシュ・コロンビア大学(バンクーバー)公共政策グローバル問題大学校「軍縮・グローバル・人間の安全保障プログラム」の責任者であるM・V・ラマナ教授は、EU加盟国の大部分はNPTに非核兵器国として署名している事実を指摘した。

NPT第2条は「核兵器を保有しない締約国は、いかなる移譲者からも、直接的または間接的に核兵器やその他の核爆発装置、あるいはそれらの制御を受け取らないこと、また、核兵器やその他の核爆発装置を製造またはその他の方法で取得しないこと、ならびにその制御を求めないこと」と規定している。

同様に、EU加盟国であれ(例えばフランス)、そうでない場合であれ(例えば米国)、NPTの締約国である核兵器国は、条約第1条によって「核兵器その他の核爆発装置又はその管理をいかなる者に対しても直接又は間接に移譲しないこと及び核兵器その他の核爆発装置の製造若しくはその他の方法による取得又は核兵器その他の核爆発装置の管理の取得につきいかなる非核兵器国に対しても何ら援助、奨励又は勧誘を行わないこと」を義務付けられている。

提案されている「EUのための核兵器」を誰が管理することになるのか、その詳細に立ち入るまでもなく、このような兵器庫がNPTの精神に反し、すでに脆弱な核不拡散・軍縮規範を弱体化させることは明らかである。

IALANAが指摘しているように、EU諸国はこのような考えから距離を置き、核兵器のない世界に向けて邁進すべきです。」とラマナ氏は語った。(原文へ

This article is brought to you by IPS Noram, in collaboration with INPS Japan and Soka Gakkai International, in consultative status with UN ECOSOC.

INPS Japan/IPS UN Bureau

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世界の破壊者:世界戦争と気候危機の時代におけるオッペンハイマー伝の妥当性

【カトマンズNepali Times=ソニア・アワレ

2005年にカイ・バード氏とマーティン・J・シャーウィン氏によって初めて出版された「アメリカン・プロメテウス:J・ロバート・オッペンハイマーの勝利と悲劇」以来、多くの出来事があった。この本はピューリッツァー賞を受賞して波紋を広げたが、クリストファー・ノーラン監督がこの作品を脚色した2023年の超大作映画『オッペンハイマー』がアカデミー賞を席巻したことから大きな関心を呼び起こしている。

「アメリカン・プロメテウス」は、科学者の「その輝かしさに匹敵する内部葛藤」を描いた精緻な作品であり、主人公であるオッペンハイマー博士の人生と時代を語り直すことで、大量破壊兵器とテロの恐怖に対抗するための「核時代における合理性」を呼びかけている。

この本は25年にわたる研究と執筆を経て完成し、冷戦終結以来、世界終末時計が今日ほど真夜中に近づいたことはないという厳しい現実を想起させるものである。この時計は、1943年に、世界最高水準の米国科学者たちがドイツに先行して原子爆弾を製造するためにニューメキシコ州のロスアラモスに集結して以来、時を刻み続けている。

ドイツは1945年5月に降伏したが、それでも米軍のタカ派は、同年8月に広島・長崎に対して原爆を使用し20万人の一般市民を殺害した。アメリカ人は、日本本土への攻撃を長期化させれば多くの命を奪うと主張して原爆投下を正当化した。オッペンハイマー自身は、その破壊力があまりに凄まじいものであれば将来的な使用を抑止するだろうと感じていた。しかし本書は、彼が長崎への2発目の原爆使用や水爆の開発に反対したことを思い出させてくれる。

その後80年にわたって核兵器が戦争で使用されていない事実は、彼の主張にある程度の妥当性があることを示している。しかし、核拡散は止まらず、現在ではパキスタン、インド、北朝鮮などの国々も原子爆弾を保有している。

ネパール文学フェスティバルにおいてネパール・タイムズとのインタビューに応じたカイ・バード氏は、ウラジーミル・プーチン大統領によるウクライナに対する戦術核兵器使用の脅威や、イスラエルによる戦略的曖昧性、イランによる差し迫った核兵器保有などを例に挙げ、「核の物語は終わっておらず、非常に悪い結末を迎える可能性があります。」と、強調した。

近隣では、ネパールは互いに友好的でない核武装国に囲まれている。インドはパキスタンや中国との間で頻繁に国境紛争を抱え、ネパール人兵士はインド軍に従事している。

アミタフ・ゴーシュ氏はインドによる核実験後に出版した著書『カウントダウン』(1999年)の中で、戦術的な核兵器の使用でも、風によって運ばれる放射性降下物がヒマラヤ地域の氷河に到達し、アジアの河川と帯水層を放射能汚染する可能性があると記している。

中東の緊張が核対立にエスカレートすれば、そこで働く200万人のネパール人が危険にさらされ、ほとんどが安全のために帰国を余儀なくされるだろう。イスラエルではネパール人学生がハマスに殺され、ロシアが軍事侵攻しているウクライナでは戦闘で命を落とし続けてる。

Oppenheimer poster/The Nepali Times
Oppenheimer poster/The Nepali Times

核兵器を最も厳しく批判していたのは、最初の原子爆弾の設計者自身だった。この本には、日本が降伏した後、オッペンハイマー博士がトルーマン大統領と面会した際、「大統領、自分の手は血で汚れているように感じる。」と、大統領に語ったことが記されている。トルーマン大統領は後に側近に、あの「泣き虫の科学者野郎」には二度と会いたくないと語ったという。

オッペンハイマー博士は、著名な科学者としての新たな名声を利用して、核軍拡競争を遅らせようとした。「アメリカン・プロメテウス」の著者たちは、「彼は、自らが世に解き放つ手助けをした核兵器の脅威を封じ込めることで、私たちを爆弾文化から遠ざけようと果敢に努力した。」と記している。

しかし、1950年代のジョセフ・マッカーシー上院議員による共産主義者を摘発・排除する運動「赤狩り」が全米を席巻する中、オッペンハイマー博士の平和活動は問題視され、彼を沈黙させ屈辱を与えることを目的とした公聴会に引き出された。

「オッペンハイマーはマッカーシズムの魔女狩りの主要な有名人の犠牲者となりました。そして今日、世界中で移民、少数民族、宗教的少数派、技術やグローバリゼーションによって混乱した労働者に対する同様の排外主義が起きているように思えます。」とバード氏は、ネパーリタイムズのインタビューに対して語った。

700ページに及ぶこの伝記は、オッペンハイマー博士の早熟な子供時代から始まる政治スリラーのようだ。彼は岩石や鉱物に魅了され、ニューヨーク鉱物学クラブが彼が12歳の少年であるとは知らずに講演を依頼するほどだった。

ハーバード大学やケンブリッジ大学に在籍中は惨めな日々を送り、精神状態は試され、統合失調症と診断される。しかし、ドイツのゲッティンゲンで量子物理学を学び、米国に帰還後はバークレー校で原子物理学の基礎研究の中心となる。彼は左翼運動を支持するが、共産党には入党しなかった。

今日、全面核戦争と気候崩壊のどちらが悪いかという理論的な議論があります。前者は後者よりも即時的かつ不可逆的な影響を持つが、事実としてどちらも人間が引き起こした脅威であり、私たちにはそれらを取り除く力がある。

原子力の利用は常に諸刃の剣であった。原爆以外にも、多くのエネルギー専門家が気候変動に優しい原子炉開発を推進している。しかし、原子炉には放射性廃棄物処理の問題があり、チェルノブイリや福島で発生したようなメルトダウンの危険性もある。

エネルギーの未来は、オッペンハイマー博士が断固として反対した熱核爆弾を駆動するのと同じ物理学を利用した核融合炉にあるかもしれない。核融合はよりクリーンなエネルギーであり、副産物は水だけである。

ニューヨーク大学スターン・スクール・オブ・ビジネスのヌリエル・ルービニ氏は、「再生可能エネルギー(成長速度が遅すぎて大きな変化をもたらさない)や、炭素回収・隔離やグリーン水素のような高価な技術では、問題が解決できない可能性が高まっています。その代わりに、商業用炉が今後15年以内に建設されれば、核融合エネルギー革命が起こるかもしれません」と語った。

オッペンハイマー博士は、核テロに対する唯一の防衛策は核兵器の廃絶であり、核軍拡競争の時代にあっては、人類の道徳的な生存も心配していたという。彼の友人で理論物理学者仲間のイシドール・アイザック・ラビ博士は、『爆弾を落とせば、正義の者も不正義の者も同じように被害を受ける』と言った。

日本では、原爆投下を生きのびた被爆者とその子孫が遺伝的欠陥に苦しみ続けている。また、南太平洋、カザフスタン、その他の核実験が行われた地域では、放射性降下物による壊滅的な健康被害に多くの人々が今も苦しんでいる。米国のロスアラモスの核実験場でも、実験前に警告を受けていなかった風下に住む15,000人のナバホ族が今なお世代を超えた健康被害に苦しんでいる。

I Want To Live On: The Untold Stories of the Polygon. Documentary film. Credit:CISP

「アメリカン・プロメテウス」は、動揺する世界における核軍縮の緊急性を思い起こさせます。バードとシャーウィンは、恐ろしい武器を発明した科学者の道徳的ジレンマと迫害を語り、将来の世代が核兵器の使用を防ぐ方法に取り組む必要があることを伝えている。(原文へ

INPS Japan/Nepali Times

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世界環境デー2024

【ニューヨーク/東京INPS Japan/IPS NORAM】

世界中で生態系が脅かされている。

森林から乾燥地まで。

農地から湖まで。

干ばつと砂漠化は、淡水と土壌の生態系を最も脅かしている。

これらは地球上の生命を可能にする重要な結合要素である。

乾燥地は水不足に直面している地域である。

乾燥地域は世界の陸地面積の約41%を占め、世界の放牧地の78%を占めている。

また、世界の作物の44%を生産し、世界の家畜の半分を養っている。

20億人以上の人々の生活と生計を支えている。

世界の約14億の生計は、淡水へのアクセスに直接依存している。

しかし、地球上の土地の40%が劣化し、世界人口の半数に影響を及ぼしている。

5秒毎にサッカー場1面分の土壌が侵食されている。

しかし、3cmの表土を生成するには1,000年かかる。

2000年以降、干ばつの期間は29%増加している。

2050年までに、干ばつは世界人口の75%に影響を及ぼすだろう。

土地の回復は、「国連生態系回復の10年」の重要な柱である。

これは、世界中の生態系の保護と復活のための呼びかけである。

だからこそ、2024年の世界環境デーは、土地の回復、砂漠化の阻止、干ばつへの耐性の強化に焦点を当てているのだ。

時間を戻すことはできないが、森を育て、水源を復活させ、土壌を取り戻すことはできる。

私たちは大地と共存できる世代(再生の世代)なのだ。(原文へ

#再生の世代 (#GenerationRestoration):人間による環境破壊。その影響は気候変動や、生態系の損失、土地の砂漠化など目に見える形で日々深刻化している。この時代を生きる私たちには、環境を守り、あるべき状態へと土地や自然を回復させていく責任がある。世界環境デー2024年のテーマは 「私たちの土地、私たちの未来。私たちは #再生の世代」(Our Land. Our Future We are #GenerationRestoration) 土地の回復、砂漠化の阻止、干ばつへの耐性の構築に焦点を当てている。

NPS Japan/ IPS UN Bureau

IPS North America

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|カザフスタン|親善大使プロジェクトが発足

【東京/アスタナINPS Japan/カザフMFA】

カザフスタン外務省は、ムラト・ヌルトレウ副首相兼外務大臣が出席し、「カザフスタン親善大使」プロジェクトの発足式典を開催した。

Deputy Prime Minister – Minister of Foreign Affairs Murat Nurtleu. Photo credit: MFA of Republic of Kazakhstan.
Deputy Prime Minister – Minister of Foreign Affairs Murat Nurtleu. Photo credit: MFA of Republic of Kazakhstan.

カシム・ジョマルト・トカエフ大統領によって始められたこのプロジェクトは、文化や民族間の対話を促進し、カザフスタンの知名度を高め、その成果を海外に広めることを目的としている。

ヌルトレウ外務大臣は歓迎スピーチの中で、国連憲章と国際法に従って進められているカザフスタンの建設的で多方面にわた外交政策(=マルチベクトル外交)に代わるものはないと強調した。

「前例のない地政学的環境の中で、公共および文化・人道的外交の需要がますます高まっています。皆さんが世界の舞台や競技場、国際会議等でご活躍頂いたお陰で、カザフスタンのターコイズブルーの国旗は世界中に掲げられ、誇りと共に国歌が響き渡ってきました。」とヌルトレウ外務大臣は語った。

Artist and anti-nuclear activist Karikbek Kuyukov(Center) Photo Credit: MFA of the Repblic of Kazakhstan.
Artist and anti-nuclear activist Karikbek Kuyukov(Center) Photo Credit: MFA of the Repblic of Kazakhstan.

このプロジェクトには、カザフスタンの国際的なイメージ形成に具体的に貢献している以下の著名人が招待された。ヴァイオリンの名手、指揮者、アジア太平洋オーケストラ連盟のディレクターであるマラット・ビセンガリエフ氏、オリンピック・チャンピオンの自転車競技選手アレクサンドル・ヴィノクロフ氏、芸術家で反核活動家のカリクベク・クユコフ氏、アダムという芸名で世界的に知られるポップ歌手のミルヒダイ・ミルファルク氏、「大学医療センター」企業基金理事長で心臓外科医のユーリー・ピヤ氏、政治学者で歴史地図研究者のムヒト・アルダゲル・シディクナザロフ氏、国立学術民俗学民族誌管弦楽団の首席指揮者の トレンディエフ “オトゥラル・サジィ” ディナラ・トレンディエワ氏、パワーリフティング世界記録保持者であり、ギネスブック記録保持者でもあるセルゲイ・ツィルルニコフ氏。

Dinara Tlendiyeva Photo Credit: MFA of the Republic of Kazakhstan.
Dinara Tlendiyeva Photo Credit: MFA of the Republic of Kazakhstan.

ヴィノクロフ氏はスピーチの中で、パリ・オリンピッを目前に控えて、アスタナ・カザクスタン・チーム全員と共に親善大使の地位を得たことで、勝利への決意と信念を一層強めることができたと語った。

クリエイティブ系知識人を代表して登壇したディナラ・トレンディエワ氏は、信頼に感謝の意を表し、国際的な観衆がカザフ文化をどれほど肯定的に受け入れているかの重要性を強調した。

芸術、スポーツ、科学、医学、その他の分野で成功を収めた同胞が参加する親善大使プログラムをカザフスタンに導入することは、同国の権威を強化し、文化的・人道的コミュニケーションを拡大し、平和、友好、国際連帯のパイプ役となることを意図している。(原文へ

INPS Japan

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バイデン大統領:COP29は、アゼルバイジャンが主要なグローバル・イニシアティブを推進するまたとない機会だ

【バクーREPORT=ニガール・アバソヴァ】

COP29 Logo

国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(COP29)はアゼルバイジャンにとって、石油・ガス部門におけるメタン排出の制限やクリーンエネルギー転換の推進など、重要な世界的イニシアチブを推進するまたとない機会である、とジョー・バイデン米大統領がバクー・エネルギー・フォーラム参加者に宛てたメッセージで述べた。」と国際通信社REPORTが伝えた。

この書簡は、米国務省エネルギー資源局多国間エネルギー外交上級顧問のハリー・ケミアン氏によって読み上げられた。

バクーでのCOP29開催は、2023年12月11日にドバイで開催されたCOP28の本会議で決定された。アゼルバイジャンの首都は、11月11月~22日に開催されるこの画期的な気候変動会議のために、約7万人から8万人の海外からのゲストを迎えることが期待されている。(原文へ)

INPSジャパン/REPORT通信

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持続可能な食料システムのためのレシピ

【ニューデリーINPS Japan/ SciDev.Net=ランジット・デブラジ

肉料理やファストフードが生物多様性や持続可能性に大きな負荷をかけていることはよく知られている。しかし、最近の科学的研究によれば、南アジアで人気のある一部のベジタリアンレシピも驚くほど大きな生物多様性フットプリントを持っていることが明らかになっている。

Ranjit Debraj
Ranjit Debraj

消費者は、環境への負荷を高める食材を使った特定の料理を選ぶことが生物多様性に与える影響について、限られた情報しか持っていない。

例えば、ひよこ豆のカレーは、すでに高い農業圧力と人口圧力がかかっているインドで人気のある料理である。

『PLOS One』誌に掲載された研究結果によると、世界最大のひよこ豆の生産国であり消費国であるインドは、他のレシピに切り替えるだけで持続可能な農業に貢献できるかもしれない。

ひよこ豆カレーは、この研究で生物多様性に有害と特定された25の主要な料理の一つである。ひよこ豆は主に、生物多様性のホットスポットであるインドの西ガーツ山脈南部の農業用地に転換された土地で栽培されている。

このリストのトップには、生後35日以下の子羊の肉を使用した「レチャゾ・アサード」(スペイン風子羊のロースト)が挙げられている。

しかしこの研究では、ビーガンやベジタリアン料理は肉料理よりも生物多様性のフットプリントが低い傾向にあることが確認された。また、菜食主義者や卵菜食主義者(乳製品や卵を含む)の食事から排出される温室効果ガスも、天然資源の利用が少ないため、雑食主義者の食事よりも環境への影響が少ない。

朗報なのは、現在利用可能な科学的方法が、世界中の人気料理の生物多様性フットプリントを分析するのに役立ち、将来的には持続可能性を考慮した食事の意思決定を支援できることだ。

食糧に関連する排出量が環境に与える負荷に対する意識の高まりから、このテーマに関する研究が進み、食品のカーボンフットプリント値がレストランのメニューや食品を包装するラベルに記載される日もそう遠くないかもしれない。

生物多様性の保全に貢献したい人が避けるべきレシピの例としては、ブラジル発祥の牛肉料理であるフラルディーニャや、インドの有名な豆料理などが挙げられる。

温室効果ガスの排出

SDGs No. 13
SDGs No. 13

持続可能な食糧システムと持続可能な食事は、気候変動に対処する上で重要であることはよく知られている。国連によれば、人類が排出する温室効果ガスの約3分の1は食品に関連しており、中でも赤肉、乳製品、養殖エビが最大の原因となっている。

赤肉や乳製品の生産には広大な牧草地が必要であり、これらはしばしば樹木やマングローブを伐採して作られるため、樹木に蓄えられた二酸化炭素が放出している。

さらに、家畜は草や植物を消化する際に、強力な温室効果ガスであるメタンを排出する。家畜の糞や化学肥料は、もうひとつの重要な温室効果ガスである亜酸化窒素を放出する。

エビの養殖場は、炭素吸収源として知られる沿岸のマングローブ林を伐採して作られることが多い。エビやクルマエビのカーボンフットプリントが大きいのは、主にマングローブが伐採される際に大気中に放出される蓄積炭素によるものである。

食品データ

ニューデリーにあるインドラプラスタ情報技術研究所の、食品を専門とする計算機研究者、ガネッシュ・バグラー氏は、「レシピのカーボンフットプリントを推定することで、文化的な影響を受けたレシピの環境持続可能性に関する実用的な洞察を得ることができます。」と語った。

バグラー氏によれば、味と栄養の相関関係を理解すれば、おいしく、かつ環境的に持続可能なレシピを考案することが可能になるという。「きめ細かなカーボンフットプリントのデータを収集することは、100億人の人口を養いながら持続可能性にも配慮するという問題に取り組む最善の方法です。」と、バグラー氏は語った。

バグラー氏によれば、世界中の食生活は、炭素や生物多様性のフットプリントを考慮しない伝統的なレシピに従って調理された食品に左右されているという。

あらゆる食品システムの二酸化炭素排出量を削減することは、レシピや食生活を修正することよりもはるかに広範な課題である。エネルギー効率の高い技術の採用、再生可能エネルギーへの移行、食品廃棄物の脱炭素化、より良い農業慣行、健康と環境への配慮を考慮した食品加工技術などが求められる。

良質な栄養と環境の持続可能性は、土壌の質と地域の農業の生物多様性を保全する一方で、農家をはじめとする供給側の人々が気候変動とその適応の必要性を認識できるような食料システムと、切っても切れない関係にある。

持続可能な食事

需要側では、消費者が持続可能な食生活や環境に優しい食材やレシピの価値を認識する必要がある。伝統的な食材やレシピの生物活性成分に注意を払いながら、その栄養価を促進・保存するためのデータベースの作成が待たれる。

特に、レシピやメニューに細心の注意を払うことで、生物多様性の保全や温室効果ガスの大幅な削減が達成できることが確実に分かっている今、健康的で持続可能な食生活を採用することがこれほど重要なことはない。

UN Photo
UN Photo

世界は、食糧不安、気候変動、生物多様性の喪失、栄養不良、不公平、土壌劣化、水とエネルギーの不足、天然資源の枯渇、そして予防可能な疾病の相互関連に目を覚ます必要がある。

要するに、私たちが何を食べ、どのように調理するかは、人間の健康だけでなく、地球の健康にも深刻な影響を及ぼすのである。(原文へ

INPS Japan/ SciDev.Net

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岐路に立つ 自律型兵器システム:国際的な規制へ緊急の呼びかけ

【ウィーン INPS Japan=オーロラ・ワイス

144カ国の政府代表、国際組織、産業、学界、科学者、市民社会などから1000人以上のゲストがウィーンに集まり、自律型兵器システム(AWS)の規制に関する会議が開催された。「岐路に立つ人類―自律型兵器システムと規制の課題」と題された今回の初の国際会議は、オーストリア外務省が主催し、4月29・30日に開催された。

人工知能の導入によってますます自律化する兵器は、武力紛争のあり方を根本的に変えた。多くの努力と議論がなされているにもかかわらず、国際レベルにおいては急速な技術進歩に対する規制が実行されていない。AWSは、イスラエルのガザ地区における戦争やロシアによるウクライナ侵攻など、現在の紛争ですでに使用されている。紛争におけるAIの利用が国際法や道徳、人道主義、安全保障に関する根本的な疑問を呈する中、規制が緊急に必要とされている。

2024 Vienna Conference on Autonomous Weapons Systems Credit: Federal Ministry Republic of Austria
2024 Vienna Conference on Autonomous Weapons Systems Credit: Federal Ministry Republic of Austria

「自律型兵器システムはまもなく世界中の戦場を埋め尽くすでしょう。人工知能(AI)対応ドローンやAIベースの標的選択に既に見られるように、技術は急速に進歩している一方で、政治は遅れを取っています。私たちは深刻な法的、倫理的、安全保障上の問題に直面しています。つまり、命と死の決定を機械に委ねることをどう防ぐか?誤作動とバイアスを起こしやすいアルゴリズムをどう扱うか?AIによって駆り立てられた軍拡競争をいかにして防ぎ、これがテロリストの手に渡らないようにするにはどうすればよいか?これらの課題の緊急性は、いくら強調しても足りないほどです。これは私たちの世代の『オッペンハイマーの瞬間』*です。今こそ、人間の手による規制を実現するために国際ルールと規範に合意すべき時です。」と、オーストリアのアレクサンダー・シャレンベルク外務大臣は開会の挨拶で語った。彼は、あまりに多くの人命が失われており、生と死をめぐる決定が機械によってなされてはならないと訴えた。

オーストリアはAWSの国際規制に長らく取り組んでおり、この分野で先駆的な役割を果たしてきた。2023年、オーストリアはAWSに関する初の国連決議採択を主導し、規制の必要性を強調した。国際法や規範の策定には時間がかかるが、条約の採択までには通常、数十年に及ぶ作業や緊密なパートナーシップ、集団的な動員が必要とされる。また、ひとたび合意がなされた後でも、効果的な支援が必要とされる。

自律型兵器システムは特定の「ターゲットプロファイル」を殺害するように事前にプログラムされており、顔認証などのセンサーデータを用いた「ターゲットプロファイル」をAIが行うような環境で配備される。AWSは、デジタル化のもたらす非人間化の極致だと言えよう。機械に対して生殺与奪の権利を与えることで人間の尊厳は損なわれ、私たちの権利は否定される。個人は、人間としてではなく、単なる客体として処理される。自律型兵器が作動すると、誰が、何が、どこで、いつ攻撃されるかを正確に知ることはできなくなる。

PHOTO Credit: Michael Gruber (BMEIA)

またオーストリアには、核兵器禁止条約(TPNW)など、国際的に法的拘束力のある条約の策定に取り組んできた長い伝統がある。核兵器禁止条約を最終的に生み出すことになった「人道イニシアチブ」の立案者の一人が、同国外務省で軍縮・軍備管理・不拡散局長を務めるアレクサンダー・クメント氏だ。

J. Robert Oppenheimer/ public Domain.

会議中、多くの講演者が再び歴史的な「オッペンハイマーの瞬間」に立ち会っていると指摘した。そこでクメント氏に核兵器と自律型兵器の比較について尋ねてみた。

『オッペンハイマーの瞬間』との比較は、広島・長崎以降、ロバート・オッペンハイマー博士やアルベルト・アインシュタイン博士を含む多くの人々が核兵器の持つ意味合いについて警告し、その規制を推進した状況を指しています。今日、AIやAWSの持ちうるリスクについて主要なAI専門家らが警告を発しており、その規制を求めています。しかし、現在の地政学的な状況では、国際ルールに合意することは極めて困難です。防止措置がまだ可能な瞬間を逃さないようにしなければなりません。」とクメント氏は説明した。

クメント氏のような軍備管理の専門家から見て、AWSにはいくつかの重大な課題がある。(AIの使用を通じた)兵器システムにおける自律性の増大は武力紛争の性格を根本から変えるだろう。そうした変化はすでにいくつか現れている。主要な懸念の一つは、機械が事前にプログラムされたアルゴリズムに基づいて生死の決定を下すことだ。

「機械が互いに学習し意思疎通を行うようになれば、兵器がそうした決定を下す際の人間の役割はどのようなものであり、どのようなものであるべきだろうか? すでにAI軍拡競争の兆候は表れている。早晩、これらの兵器が世界各国の戦力の中に現れるようになり、テロリストなどの非国家主体の手に渡ることになるだろう。」とクメント氏は警告した。

The Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons, signed 20 September 2017 by 50 United Nations member states. Credit: UN Photo / Paulo Filgueiras
The Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons, signed 20 September 2017 by 50 United Nations member states. Credit: UN Photo / Paulo Filgueiras

現在、AWSのような兵器システムがもたらす法的、倫理的、安全保障面での問題に対応する特定のルールは存在しない。クメント氏は、「オーストリア政府はこの問題への政治的意識を高め、AWSの国際規制に進展をもたらす推進力を生み出したいと考えている。」と語った。昨年オーストリアは国連総会に決議案を提出し、今回はこの会議を主催している。これはこの問題に関する最大の国際会議であり、国際規則に向けた政治的勢いを高める一歩となることを期待している。TPNWの創設に大きく貢献したクメント氏に、この会議がAWSに関する条約が近々準備されている兆候かどうか尋ねた。

「現在の問題は、もう長年続けられている議論の段階から条約交渉へと実際に踏み出すことにあります。国連事務総長は国際社会に対して、2026年までに条約を作るようにと課題を出しています。交渉を行うならば、国際法に従って使用されることのない、あるいは基本的な倫理的原則に反するシステムを明確に禁止し、人間による意味のあるレベルの制御がなされていないその他のシステムを規制することを目指すべきでしょう。」「科学技術におけるイノベーションは急速なペースで進んでいます。中には、指向性エネルギー兵器からナノ兵器、神経兵器、さまざまな自律型ロボット基盤に到る兵器開発への応用が可能なものもあります。こうした開発は、国際の平和と安全の維持、人権の擁護、持続可能な開発目標の達成といった、確立された規範に反しかねないものです。」とクメント氏は語った。

Alexander Kmentt, Director for Disarmament, Arms Control, and Non-Proliferation at the Austrian Ministry of Foreign Affairs. PHOTO Credit: Michael Gruber (BMEIA)
Alexander Kmentt, Director for Disarmament, Arms Control, and Non-Proliferation at the Austrian Ministry of Foreign Affairs. PHOTO Credit: Michael Gruber (BMEIA)

「36条の会」の代表のリチャード・モイエス氏は、今回のウィーン会議は、新たな条約作りを見据えて、諸政府や国際機関、市民社会の間にパートナーシップを創り出すうえで重要なものであったと評価する。「ストップ・キラーロボット」は、人権や紛争、技術、民間人の保護に関心を寄せる世界各地の市民団体の連合体である。新たな国際条約の策定に向けて諸国に圧力をかける市民団体のパートナーシップだ。

紛争が民間人に与える影響と兵器技術の国際規制を専門とするモイエス氏は、「まだ条約文の草案を作成する段階にはありませんが、さまざまなパートナーの間で『条約は可能だ』という機運を創り出しています。究極的には新たな条約に合意できるのは国家だけですが、国家が行動できるように私たちは協力して事を進めることができます。」と語った。

Serbian Land Rover Defender towing trailer with "Miloš" tracked combat robot/ By Srđan Popović - Own work, CC BY-SA 4.0
Serbian Land Rover Defender towing trailer with “Miloš” tracked combat robot/ By Srđan Popović – Own work, CC BY-SA 4.0

モイエス氏は、兵器と戦争に関する国際的な法的・政治的枠組みの創設に多く関わってきた。AWSに関しては、戦力の使用から人間による制御と責任を奪うことが特に危険だと感じている。「人間は過ちを犯すし、時にはひどいこともします。しかし、戦力の使用をめぐる法的枠組みのすべては、人間が意思決定を行い人間が責任主体となることを前提として作られているのです。私たちは、武力紛争における法律という概念を守ろうとするならば、人間による意味のある制御という観念を維持しなくてはなりません。生死の問題を機械に委ねることは非人間化をもたらし、人間、とりわけすでに社会の中で周縁化されている人々の生命の価値をさらに下げることにつながります。」とモイエス氏は述べ、問題が広範なものになってしまう前に新たな技術を規制することがいかに困難なことであるかを指摘した。自律型兵器の問題が広範に問題化してしまってからではもう遅いのだ。モイエス氏は、法的条約には、人間による意味のある制御を通じて使用することが不可能なシステムを禁止する条項や、そうした制御を実際に可能にするルールが盛り込まれるべきであると語った。また、人間を直接標的とする自律型システムも禁止されるべきであるとした。彼の観点からは、これらは、技術の将来的な発展の道筋に影響を与える重要なルールである。

「主要な問題は、高度に軍事化された国家が、自らの軍事オプションに対する制約を受け入れたがらないという大きな課題があります。社会を安全な方向に導くことのできる線を引くよう、より多くの国家の賛同を得る必要があります。」と英国の非政府組織である「36条の会」のモイエス代表は語った。

法的枠組み、とりわけ国際条約を策定することの重要性は、「ストップ・キラーロボット」キャンペーンの一員でもある創価学会インタナショナル(SGI)も強調している。

日本から参加したSGIの山下勇人軍縮担当プログラムコーディネーターは声明の中で、「私たちは、急速に進む技術革新の中で人間の権利と尊厳を守るため、兵器システムにおける自律性を禁止・規制する国際条約の制定を求める多くの関係者の声に賛同します。」と訴えた。(原文へ)|ドイツ語中国語

『オッペンハイマーの瞬間』という言葉の由来は、2018年に行われたアラン・クーパー氏(Visual Basicというプログラム言語を開発した著名なエンジニア)による基調講演タイトルで、同氏はこの言葉を「自分の最善の意図が裏切られたと悟る瞬間」と定義した。

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アゼルバイジャンのエルヌール・マムマドフ外務次官が日本を訪問した際、COP29議長国の枠組みにおけるアゼルバイジャンの活動について日本側に伝えた。

また、深沢陽一外務大臣政務官に、アゼルバイジャンのイリハム・アリエフ大統領から岸田文雄首相に宛てた、今年11月12-13日に開催されるCOP29のキックオフとなる世界気候行動サミットへの参加に関する招待状を手渡した。(原文へ)

INPSジャパン/REPORT通信

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【INPS Japan/ 国連ニュース】

「ジェノサイド」という言葉は、1944年にポーランドの弁護士ラファエル・レムキンが著書『占領下のヨーロッパにおける枢軸国の支配』の中で初めて使った造語である。ギリシャ語で人種や部族を意味する接頭辞genosと、ラテン語で殺害を意味する接尾辞cideからなる。レムキンは、ホロコーストでユダヤ人を組織的に殺害したナチスの政策に対応するため、また、歴史上、特定の集団の破壊を目的とした標的を絞った行動が過去にあったことに対応して、この用語を考案した。

その後、ラファエル・レムキンは、ジェノサイドを国際犯罪として認定し、成文化する運動を主導した。1946年、国連総会でジェノサイドが国際法上の犯罪として認められ、1948年の「ジェノサイドの犯罪の防止及び処罰に関する条約」で独立した犯罪として成文化されるに至った経緯を、条約75周年を機に振り返る。この条約は153カ国によって批准されている(2022年4月現在)。

国際司法裁判所(ICJ)は、この条約は一般的な国際慣習法の一部である原則を具体化したものであると繰り返し述べている。つまり、各国がジェノサイド条約を批准しているか否かにかかわらず、ジェノサイドは国際法で禁止されている犯罪であるという原則に、法的に拘束されるということである。(原文へ

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『核兵器と爆発』、複雑なテーマをわかりやすく解説する書籍

マリア・エスター・ブランダンは核物理学の専門家であり、メキシコのような都市での核兵器の使用がいかに壊滅的であるかを例証している。

【INPS Japanメキシコシティー=ギレルモ・アラヤ・アラニス】

核物理学者のマリア・エステル・ブランダン氏は、核爆弾の定義や仕組み、そして地球や生物に対する壊滅的な影響といった複雑なトピックを、極めて簡単な方法で説明する手法に着想を得て、メキシコで『核兵器と爆発:人類の危機』(原題:Armas y explosiones nucleares: La humanidad en peligro)を執筆した。

このテキストは「みんなのための科学」(La ciencia para todos)というコレクションの一部として1988年に初めてFondo de Cultura Económica(FCE)によって出版された。このコレクションは、学生や科学的な訓練を受けていない一般の読者に、複雑なトピックを理解させ、友人や家族に広めることを目的としている。

この本は別の時代に書かれたものだが、核戦争の危険が非常に現実味を帯びてきている今日の国際状況を背景に、若い読者の関心を惹きつけている。ブランダン教授はINPS Japanの取材に対して、「本質的な内容は今も変わっていません…私たちは、ますます核兵器が実際に使用されるのではないかという恐怖に怯えて暮らしています。しかもそれはほんの一握りの人々に依存している構造も変わりません…人類が連綿と築き上げてきたあらゆるものが、核ボタンを押されれば一瞬して失われる可能性があるということを、社会の多くの人々に改めて認識してほしいと考えています。」と語った。

この本の着想は、ブランダン教授が、ニューヨークで1メガトン(TNT火薬100万トン)の核爆発が起きたと仮定した場合の影響と被害に関する文章を40年以上前に母国チリで読んだときに遡る。その数ヵ月後、彼女はその文献を首都サンティアゴの街に当てはめて、地元の人気科学雑誌で発表することを思いついた。

後年メキシコに移住した後、新たに本を執筆するにあたってこれを同国の首都に適応し、「メキシコシティー上空のメガトン」という章を設けた。ブランダン教授は、核爆弾がメキシコの首都の中心部から2000メートル上空に落ち、数秒以内に灼熱に輝く火の玉が形成され、衝撃波と相まって現在2200万人が住む大都市の大部分を壊滅させる様子を詳述している。

メキシコに30年以上在住し、メキシコ国立自治大学(UNAM)で核物理学の研究に専念しているブランダン教授は、「今日の方が、『オッペンハイマー』のような映画が上映されたり、核兵器に関する機密文書が公開されて関連情報も入手しやすくなっていますが、著書『核兵器と爆発』の土台となった歴史的・技術的研究は今日でも正当性と関連性を保っており、この本の出版に向けた研究を誇りに思っています。」と語った。

María Ester Brandan author of the book Nuclear weapons and explosions. Humanity in danger. Credit: Guillermo Ayala Alanis
María Ester Brandan author of the book Nuclear weapons and explosions. Humanity in danger. Credit: Guillermo Ayala Alanis

この本は52,000部以上売り上げ、「みんなのための科学」コレクションの中でも最も人気のある書籍のひとつである。ブランダン教授は、この本を広めたFCEの功績と、友人や家族の間で知識を伝えることに関心を持つ読者の存在に感謝している。逸話として、この本の要約とエッセイを書くという課題を与えられた高校生が、核兵器のテーマに関心を持ち両親や親戚に広め、数日間夕食時のメイントピックになったというケースを話してくれた。

ブランダン教授はまた、「キューバやチリなど、メキシコ以外の公立学校でもこの本を見つけることができたのは幸運だった。」とコメントしている。「私たちはチリ南部を旅していて、チランという街に行ったのですが、そこにはエスクエラ・メヒコという公立学校がありました。夫がメキシコ人なので、娘たちとエスクエラ・メヒコに行くことにしたのです。なぜなら、その場所には著名なメキシコ人画家ダビッド・アルファロ・シケイロスが亡命中に図書館に描いた壁画があったから…。その壁画とメキシコから届いた本を図書館で見たとき、自分の本があることに気づきました。同じことをハバナでも経験しました。」とブランダン教授はコメントした。

この作品の創造性は、核兵器の複雑さと核爆発が引き起こす壊滅的な被害を分かりやすく説明している点にとどまらない。表紙もデザイナーの才能と努力の賜物である。36年前の初版から3つの表紙が発表されたが、ブランダン教授は、「核爆発を再現するためにカリフラワーとオレンジ色の紙を使用して作成された最初の表紙に特別な愛着を感じています。」と説明した。

彼女はまた、最新版の表紙も評価しており、放射能のシンボルの手前で地球が綱渡りしているデザインが描かれている(下の写真中央の表紙)。

Covers of the book Nuclear weapons and explosions. Humanity in danger. Credit: Guillermo Ayala Alanis
Covers of the book Nuclear weapons and explosions. Humanity in danger. Credit: Guillermo Ayala Alanis

核戦争の将来について、ブランダン教授は悲観的であり、今は非常に深刻で危険な時期であると断言した。彼女は、今日人類が核兵器に関して経験していることを表現するのに、ガブリエル・ガルシア・マルケス氏の引用ほど適切な言葉はないと強調した:

「地上に目に見える生命が誕生して以来、蝶が飛ぶことを覚えるまでに3億8千万年、美しいということ以外に何のこだわりもないバラができるまでにさらに1億8千万年、そして、先祖のピテカントロピストとは違って、人間が鳥よりもうまく歌えるようになり、愛のために死ぬことができるようになるまでに4つの地質時代を要した。科学の黄金時代に、ボタンを押すという単純な技術によって、このような途方もない千年単位のプロセスが元の無に還る方法を思いついたことは、何の名誉でもない。」原文へ

Guillermo Ayala Alanis
Guillermo Ayala Alanis

* ギエルモ・アヤラ・アラニスはメキシコのジャーナリスト・テレビレポーター。メキシコ国立自治大学(UAM)ソチミルコ校では核軍縮を研究、国際関係学の修士号を取得。INPS Japanとは、2019年に国際プレスチームのメンバーとしてセミパラチンスク旧核実験場とセメイ、アスタナを取材。INPS Japanが創価学会インタナショナルと推進している「核廃絶」「SDGs for All」メディアプロジェクトにメキシコ特派員として参加している。

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