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『核兵器と爆発』、複雑なテーマをわかりやすく解説する書籍

マリア・エスター・ブランダンは核物理学の専門家であり、メキシコのような都市での核兵器の使用がいかに壊滅的であるかを例証している。

【INPS Japanメキシコシティー=ギレルモ・アラヤ・アラニス】

核物理学者のマリア・エステル・ブランダン氏は、核爆弾の定義や仕組み、そして地球や生物に対する壊滅的な影響といった複雑なトピックを、極めて簡単な方法で説明する手法に着想を得て、メキシコで『核兵器と爆発:人類の危機』(原題:Armas y explosiones nucleares: La humanidad en peligro)を執筆した。

このテキストは「みんなのための科学」(La ciencia para todos)というコレクションの一部として1988年に初めてFondo de Cultura Económica(FCE)によって出版された。このコレクションは、学生や科学的な訓練を受けていない一般の読者に、複雑なトピックを理解させ、友人や家族に広めることを目的としている。

この本は別の時代に書かれたものだが、核戦争の危険が非常に現実味を帯びてきている今日の国際状況を背景に、若い読者の関心を惹きつけている。ブランダン教授はINPS Japanの取材に対して、「本質的な内容は今も変わっていません…私たちは、ますます核兵器が実際に使用されるのではないかという恐怖に怯えて暮らしています。しかもそれはほんの一握りの人々に依存している構造も変わりません…人類が連綿と築き上げてきたあらゆるものが、核ボタンを押されれば一瞬して失われる可能性があるということを、社会の多くの人々に改めて認識してほしいと考えています。」と語った。

この本の着想は、ブランダン教授が、ニューヨークで1メガトン(TNT火薬100万トン)の核爆発が起きたと仮定した場合の影響と被害に関する文章を40年以上前に母国チリで読んだときに遡る。その数ヵ月後、彼女はその文献を首都サンティアゴの街に当てはめて、地元の人気科学雑誌で発表することを思いついた。

後年メキシコに移住した後、新たに本を執筆するにあたってこれを同国の首都に適応し、「メキシコシティー上空のメガトン」という章を設けた。ブランダン教授は、核爆弾がメキシコの首都の中心部から2000メートル上空に落ち、数秒以内に灼熱に輝く火の玉が形成され、衝撃波と相まって現在2200万人が住む大都市の大部分を壊滅させる様子を詳述している。

メキシコに30年以上在住し、メキシコ国立自治大学(UNAM)で核物理学の研究に専念しているブランダン教授は、「今日の方が、『オッペンハイマー』のような映画が上映されたり、核兵器に関する機密文書が公開されて関連情報も入手しやすくなっていますが、著書『核兵器と爆発』の土台となった歴史的・技術的研究は今日でも正当性と関連性を保っており、この本の出版に向けた研究を誇りに思っています。」と語った。

María Ester Brandan author of the book Nuclear weapons and explosions. Humanity in danger. Credit: Guillermo Ayala Alanis
María Ester Brandan author of the book Nuclear weapons and explosions. Humanity in danger. Credit: Guillermo Ayala Alanis

この本は52,000部以上売り上げ、「みんなのための科学」コレクションの中でも最も人気のある書籍のひとつである。ブランダン教授は、この本を広めたFCEの功績と、友人や家族の間で知識を伝えることに関心を持つ読者の存在に感謝している。逸話として、この本の要約とエッセイを書くという課題を与えられた高校生が、核兵器のテーマに関心を持ち両親や親戚に広め、数日間夕食時のメイントピックになったというケースを話してくれた。

ブランダン教授はまた、「キューバやチリなど、メキシコ以外の公立学校でもこの本を見つけることができたのは幸運だった。」とコメントしている。「私たちはチリ南部を旅していて、チランという街に行ったのですが、そこにはエスクエラ・メヒコという公立学校がありました。夫がメキシコ人なので、娘たちとエスクエラ・メヒコに行くことにしたのです。なぜなら、その場所には著名なメキシコ人画家ダビッド・アルファロ・シケイロスが亡命中に図書館に描いた壁画があったから…。その壁画とメキシコから届いた本を図書館で見たとき、自分の本があることに気づきました。同じことをハバナでも経験しました。」とブランダン教授はコメントした。

この作品の創造性は、核兵器の複雑さと核爆発が引き起こす壊滅的な被害を分かりやすく説明している点にとどまらない。表紙もデザイナーの才能と努力の賜物である。36年前の初版から3つの表紙が発表されたが、ブランダン教授は、「核爆発を再現するためにカリフラワーとオレンジ色の紙を使用して作成された最初の表紙に特別な愛着を感じています。」と説明した。

彼女はまた、最新版の表紙も評価しており、放射能のシンボルの手前で地球が綱渡りしているデザインが描かれている(下の写真中央の表紙)。

Covers of the book Nuclear weapons and explosions. Humanity in danger. Credit: Guillermo Ayala Alanis
Covers of the book Nuclear weapons and explosions. Humanity in danger. Credit: Guillermo Ayala Alanis

核戦争の将来について、ブランダン教授は悲観的であり、今は非常に深刻で危険な時期であると断言した。彼女は、今日人類が核兵器に関して経験していることを表現するのに、ガブリエル・ガルシア・マルケス氏の引用ほど適切な言葉はないと強調した:

「地上に目に見える生命が誕生して以来、蝶が飛ぶことを覚えるまでに3億8千万年、美しいということ以外に何のこだわりもないバラができるまでにさらに1億8千万年、そして、先祖のピテカントロピストとは違って、人間が鳥よりもうまく歌えるようになり、愛のために死ぬことができるようになるまでに4つの地質時代を要した。科学の黄金時代に、ボタンを押すという単純な技術によって、このような途方もない千年単位のプロセスが元の無に還る方法を思いついたことは、何の名誉でもない。」原文へ

Guillermo Ayala Alanis
Guillermo Ayala Alanis

* ギエルモ・アヤラ・アラニスはメキシコのジャーナリスト・テレビレポーター。メキシコ国立自治大学(UAM)ソチミルコ校では核軍縮を研究、国際関係学の修士号を取得。INPS Japanとは、2019年に国際プレスチームのメンバーとしてセミパラチンスク旧核実験場とセメイ、アスタナを取材。INPS Japanが創価学会インタナショナルと推進している「核廃絶」「SDGs for All」メディアプロジェクトにメキシコ特派員として参加している。

INPS Japan

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南太平洋諸国で核実験が世代を超えてもたらした影響

国連の未来サミットを前に、若者に焦点を当てた「未来アクションフェス」の教訓

【ナイロビIPS=ジョイス・チンビ

世界は、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた折り返し地点を通過したが、未曽有の破壊力を持つ複合的な脅威に見舞われている。なかでも、最も差し迫った世界的課題は気候危機と核武装の脅威である。また、深刻な懸念事項として、重要な世界的課題に対する若者の関与が著しく不足していることが挙げられる。

2024 UN Civil Society Conference

ナイロビで開催された2024年国連市民社会会議(5月9日~10日)においてIPSの取材に応じた永井忠氏は、SDGs達成に向けた進展を加速させるために、連携と運動の構築、そして若者の関与の重要性を強調した。この市民社会会議(ナイロビ会議)の成果は、国連が9月にニューヨークで数百人の世界の指導者、政策立案者、専門家、提唱者を招いて開催する「国連の未来サミット」のハイレベル会合に提出される。

「2024年3月、東京で開催された未来アクションフェスには、約6万6千人が参加し、ライブ配信を通じて延べ50万人以上が視聴しました。このイベントは、核軍縮と気候変動の解決という2つの世界的な関心事について、若者の理解を深め、積極的な姿勢を育むために、若者と市民団体が協力して開催したものです。」と、創価学会インタナショナル(SGI)ユースと未来アクションフェス実行委員会を代表してナイロビ会議に参加していた永井氏は語った。

未来アクションフェス実行委員会はGeNuineグリーンピース・ジャパン日本若者協議会カクワカ広島Youth for TPNW、SGIユースを含む6団体の代表で構成されている。永井氏は、「この実行委員会は、核兵器の脅威気候危機という、人類の存立を脅かす今日の2大脅威について、世界的、国家的、地域的な問題を解決するための具体的かつ影響力のある連携と運動の構築を目指して活動しています。」と語った。

Future Action Festival convened at Tokyo's National Stadium on March 24, drawing approximately 66,000 attedees. Photo: Yukie Asagiri, INPS Japan.
Future Action Festival convened at Tokyo’s National Stadium on March 24, drawing approximately 66,000 attedees. Photo: Yukie Asagiri, INPS Japan.

永井氏は、SDGsやその他の関連する世界的・国家的コミットメントを達成するために必要不可欠な、「若者の参画」と「平和な世界という約束の実現」との間の不可分のつながりについて語った。未来アクションフェスの開催に先立ち、実行委員会は2023年11月から24年2月にかけて、日本全国で10代から40代を対象に若者の意識調査を実施した。この調査では、社会、気候変動、核兵器、若者と社会システム、国連といったテーマに焦点を当てた。

調査結果は示唆に富んだもので、若者がこれらの問題をどのように受け止め、その解決にどのような役割を果たしうるかについての洞察を与えてくれた。例えば、核兵器のない世界の実現については、回答者の82%が核兵器は必要ないと答えている。調査対象のサンプル数が119,925人にのぼっていることから、核兵器廃絶は日本の若者の間で広く共有されているビジョンである。

Future Action Festival Filmed and edited by Katsuhiro Asagiri, Yukie Asagiri and Kevin Lin of INPS Japan Media.

「私たちは、ナイロビ会議に参加する市民社会組織が、今日人類が直面している最も深刻な存続の危機に対処するために、いかにインパクトがあり、有益で、人生を変えるような連合や運動を構築できるかについて、日本からの教訓を携えてきました。ナイロビ会議は国連の未来サミットを前にして開催されるユニークで歴史的イベントであり、非常に重要なものです。未来アクションフェスは、ナイロビ会議の成果が9月の国連の未来サミットに報告されるのと同じように、国際社会にとって極めて重要な問題について若者の声を結集する機会でした。」と永井氏は語った。

未来アクションフェス実行委員会は、このイベントを通じて国連のイニシアチブに貢献し、新設された国連ユース・オフィスを支持することを決定した。さらに、平和で持続可能な未来に向けた国際協力と連帯を強化する機運を醸成することを目指している。

こうしてこのことを念頭に、「未来アクションフェス」の共同宣言は、国連の未来サミットのハイレベル会合における協議に資するべく、国連に提出された。同ハイレベル会議では、「未来のための協定」(ゼロ・ドラフト)、「グローバル・デジタル・コンパクト」、「未来世代宣言」の3つの国際的な枠組みを作成される予定である。永井氏は、「未来のための協定」は野心的で、包括的で、革新的でなければならないと語った。

UN Summit of the Future
UN Summit of the Future

国連の未来サミットは、「より良い明日のための多国間の解決策」というテーマの下、集合的な未来がどのようなものであるべきか、そしてそれを確保するために今日何ができるのかについて、新たな世界的コンセンサスを形成することを目的としている。また、SDGsを含む既存のコミットメントを再確認し、人々の生活にプラスの影響を与えられるような、より活性化された多国間システムに向けて、重要な課題に対する協力を強化し、グローバル・ガバナンスのギャップに対処する。国連の未来サミットは、持続可能な開発のための2030アジェンダの迅速な実施を支援する条件を創出する。

2030アジェンダにおける世界の指導者たちの立場は、持続可能な開発における若者の重要な役割を認め、SDGsが人々の、人々による、人々のためのものでなければ達成できないというものである。2030アジェンダは、市民の参加、特に若者の参加を呼びかけており、「その無限の行動力を、より良い世界の創造に向けさせようとしているのです。」と永井氏は語った。

それゆえ、国連の未来サミットへと続くナイロビ会議や未来アクションフェスのようなイベントは、いずれも気候変動、戦争、不平等の悪化といった世界的な関心事への効果的な対処に向けたものである。グテーレス国連事務総長が国連の未来サミットで検討するために示すあらゆる提案は、SDGsの達成に明確な影響を及ぼすだろう。

ナイロビ会議は、結局のところ、あらゆるレベル、すなわち人々、国々、そして世代間の信頼と連帯を再構築するプロセスであった。すべての人々に対してより公平かつ効果的に機能するように、政治、経済、社会システムを根本的に再考することを求めている。

2024 UN Civil Society Conference. Photo: UN News
2024 UN Civil Society Conference. Photo: UN News

ナイロビ会議の閉会にあたり、汎アフリカ気候正義同盟のミティカ・ムウェンダ氏は、すべての人に持続可能な開発を保証し、貧困緩和を実現し、最終的には行動志向の「未来のための協定」(国連の未来サミットで期待される成果の一つ)を達成するために、「大胆さと率直な対話」が必要だと強調した。

ナイロビ会議に参加した市民社会諸団体はまた、来たる「国連の未来サミット」を、平等、公平、そして分かち合われた繁栄によって定義される未来を実現するために必要な、最も重要な改善について合意する決定的な機会と位置づけ、多国間システムを刷新するよう提言した。

グテーレス事務総長とケニアのウィリアム・ルト大統領は、市民社会の努力を賞賛し、その「不可欠な貢献」を強調した。

Antonio Gutierrez, Director General of UN/ Public Domain
Antonio Gutierrez, Director General of UN/ Public Domain

グテーレス事務総長は演説の中で、市民社会は、多くの人々が個人的リスクを冒しながら、他者の苦しみを和らげ、平和と正義を推し進め、真実を訴え、ジェンダーの平等と持続可能な開発を推し進めるなど、世界のあらゆる場所で多大な影響を及ぼしていると語った。

ガザ地区、スーダン、サヘル地域、大湖地域、アフリカの角等で進行中の危機を含む現在の紛争について、グテーレス事務総長は、「国連は平和、正義、人権を推進するためにこの状況を変える闘いをあきらめません。」と断言した。事務総長また、市民社会が世界の多くの問題に対処するために重要であり、デジタル格差の解消や平和と安全保障への集団的アプローチの再活性化を含む課題に取り組む上で不可欠であるとの認識を示した。

「私たちには、皆様が持つ、最前線のノウハウについての情報が必要です。私たちは、障害を克服し、革新的な解決策を見いだそうとする、皆様の積極的な姿勢を必要としています。そして、解決策を実行し、各国政府に行動を促すために、皆様がそのネットワーク、知識、人脈を活用してくださることが必要です。」とグテーレス事務総長は語った。(原文へ

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INPS Japan/IPS UN Bureau

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国連の新開発アジェンダ、若者に重要な役割を与える

|国連市民社会会議|包摂性・インパクト・革新がSDGs達成には必要

【ナイロビIPS=ジョイス・チンビ】

世界は、持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けて順調に進んでもいないし、極度な飢餓、貧困、紛争、気候変動といった世界的な課題に効果的に対処するためのあらたな機会を活用できてもいない。

2024 UN Civil Society Conference
2024 UN Civil Society Conference

国連ナイロビ事務所は、世界的な観点を強化するために、「グローバルで持続可能な前進の未来を形作る」というテーマの下で国連市民社会会議を開催している。市民団体や研究機関、シンクタンク、加盟国、民間企業、国連機関、変革者、その他の利害関係者など、世界各地から2000人以上の参加者が集っている。

 「ヘルプエイジ・インターナショナル」のグローバル活動推進・アフリカ地域代表であるキャロル・アジェンゴ氏は、「市民社会の関与が開発の歯車を回す上で重要な要素であるという考えはすでに確立されています。市民団体や政府、民間部門の連携を強化することは、『国連の未来サミット』に力を入れていこうという中で、緊急の課題となっています。」と語った。

「実際、市民社会の参加は、現在および将来に直面する課題に対処するため、そして全人類と未来の世代のためにより適切に準備された国際システムを実現するうえで大いに貢献するでしょう。」

1947年以来、68回の市民社会会議が、市民社会組織とのこれまでの交流により成功が導かれてきた。現在開催されているナイロビ会議は、国連の市民社会カレンダーにおける主要なイベントであり、アフリカで開催される初めての国連市民社会会議である。

ジンバブエで生まれ、現在は南アフリカで人権活動家として活動しているコンスタンス・ムカラティは、IPSの取材に対して、「市民団体の役割、とりわけ人権擁護者らの役割は、『誰一人取り残さない』という(SDGsの)目標の中で強調されすぎることはない。」と語った。

「アフリカ女性人権活動家イニシアチブ」のムカラティ氏は、「私たちにとっては、SDGの第5目標は第1目標と同じことです。緊急性の問題から言えば、どこに住んでいる女性・女児であっても、平等の権利と機会を持たねばなりません。依然として女児教育が軽視されている時代に私たちはおり、今回のような会議は、各国や世界における課題についての私たちの考え方、それら問題に関する私たちの語り方、誰が決定権を握っていて、持続可能な開発に向けた公約をいかにして実行していくのかといったことについて、変革をたらすことになるだろう。」と語った。

市民社会やその他の利害関係者による今回の集まりは、今年9月22・23両日にニューヨークの国連本部で開催される世界の指導者らによる国連の未来サミットを前にした予備的な議論やデータを提供することになるだろう。既存の国際公約を果たす努力を加速させ、新たな課題と機会に対応するための具体的なステップを踏むべく、世界的な協力をリセットするための大きな取り組みの一部である。

UN Summit of the Future
UN Summit of the Future

究極的には、国連の未来サミットの目的は、公的機関に対する信頼の低下、富の偏在の加速、世界の大多数の人口が低開発の状態にあり極度の飢餓と貧困が加速している状況が世界で見られる中で、多国間主義が意味するものを再考する点にある。同サミットは、世界的な課題に対処するために、「未来のための協定」(ゼロ・ドラフトとして入手可能)、「グローバル・デジタル・コンパクト」、「未来世代宣言」の3つの国際枠組みを打ち出すことになろう。

 ナイロビを中心に活動するエリック・オモンディ氏は、「国連システムが地球市民との関わり方を見直し、再設計することが緊急の課題となっています。SDGsを再び軌道に載せるためにまさに必要なことです。今日直面している複合的な課題に関して人々がどう考えているか? 市民社会運動の中には、国連システムの中で政府の声が優先されているという思いがあります。ナイロビ会議への参加は、活動家や人権擁護者としての私たちの声を国連に伝え、国連の未来サミットの方向性に影響を与える、ユニークで非常に関連性の高いものです。」と語った。

「ナイロビ会議は、持続可能な開発に関する市民社会の連携を活性化しその関与を強めることを目的とした歴史的な集まりです。私たちの世代は、私たちが取る行動のひとつひとつが、私たちが共有する地球の未来を大きく形作ることができる重要な分岐点に立っていると認識しています。」と、SDGケニアフォーラムの代表で、「我々の望む国連連合」の共同議長であるフローレンス・スエヴォ氏は語った。

スエヴォ共同議長は、気候変動のような地球規模の問題に取り組む緊急性を認識する必要性が、人間と自然との相互作用がより明確になるにつれ、かつてないほど顕著になっていると強調し、この会議の成果がすべての人々にとって重要である理由を強調した。

ナイロビ会議と国連の未来サミットは、国際協力における市民社会の知見を集め、広く参画を促す重要なプラットフォームである。ナイロビ会議では、国連の未来サミットへの序章として、「包摂性」・「インパクト」・「革新性」という3つの主要テーマに沿った、詳細な対話や様々なワークショップ、展示が行われている。

「包摂性」は、多様な声の可視性と影響力を高めることで、グローバルな問題に対する言説の幅を広げるのに役立つ。「インパクト」については、参加者は、9月の国連の未来サミットの成果となる主要な課題の重要性を訴え前進させるさまざまなステークホールダーから成る連合が参加者らによって形成されようとしている。「イノベーション」に関しては、今回の2日間の集まりで市民社会と政府間プロセスの相互作用が再定義されようとしており、世代と部門を越えた連携の新しいモデルが示されている。

UN Photo
UN Photo

ウガンダからきた青年参加者キコンコ・シャローム・エステル氏は、「若者の声をSDGsやそれに関連した公約実施のプロセスに取り込むことが最重要課題です。私は最近カンパラ国際大学で法学を修めたばかりで、グローバル・サウスの若者と彼らが住む地域が直面している最も緊急の課題に対処するために法律に関する自分の知識を使いたいと思っています。」と語った。

この画期的な市民社会会議の1日目が終了する中、国連加盟国主導の国連の未来サミットプロセスを強化するために、市民社会の洞察やイニシアチブを促進する必要性についてのコンセンサスが得られた。また、再活性化され組織化された市民社会グループが、公正で公平な共有された未来に向けた進展について、政府や権力をより効果的に責任を追及できることが強調された。(原文へ

INPS Japan/ IPS UN Bureau Report

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ファクトチェック:フェイクニュースへの反撃

【INPS Japan/ 国連ニュース】

紛争時には混乱が生じ、悪意がなくても事実が誤って解釈されることが少なくない。国連はこれをディスインフォメーション(偽情報)ではなく、ミスインフォメーション(誤報)と呼んでいる。

誤報が偶発的な虚偽の流布を指すのに対し、偽情報は、武力紛争時を含め、国家または非国家主体によって意図的に流布され、世論や政治的意見に影響を及ぼすことがある。すなわち偽情報は、平和と安全保障から人道援助に至るまで、開発のあらゆる分野に影響を及ぼす可能性がある。

こうしたなか、国連は信頼できる情報源からニュースを入手することの重要性を強調するとともに、メディア・プラットフォームに対し、有害なコンテンツの拡散を防ぐための独自のガードレールを強化する取り組みを推進する促している。(原文へ

UN News

INPS Japan

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今年は数十億人が投票する – LGBTIQ+の人々を排除してはならない

【国連IPS=ウルリカ・モデール、クリストフ・シルツ】

今年は「スーパー選挙」の年と呼ばれ、実に37億人もの有権者が投票に行く可能性がある。この歴史的な瞬間は、何十億人もの有権者がどのような経験をするのか、つまり、誰が投票するのか、誰が立候補できるのか、そして誰が政治プロセスから排除されるのか等を考える良い機会でもある。

誰もが自国の政治プロセスに参加する権利を有するべきであることは、言うまでもないことであり、世界人権宣言にも明記されている。近年、LGBTIQ+の権利を認め、擁護するために大きな前進がなされてきた。しかし、LGBTIQ+の人々をとりまく現実はしばしば大きく異なっている。

様々な進歩が見られてきた一方で、世界の3分の1の国が同性間の関係を違法とする法律を維持している。このような国に住むLGBTIQ+の人々は、有権者として、あるいは候補者として、選挙でどのような経験をするのだろうか。

家を出るたびに嫌がらせに直面し、最終的にはコミュニティから排除されるトランスジェンダーのことを考えてみよう。あるいは、ソーシャルメディアの偽情報によりネット上で絶え間ない憎悪に晒されているLGBTIQ+グループ、差別やヘイトスピーチ、あるいは身体的暴力を恐れることなく、政治的見解を表明する自由はどこまであるのだろうか。

このような経験は一過性のものではない。反LGBTIQ+の法律や政策が国によっては勢いを増し続けており、多くのLGBTIQ+の人々が日常生活で直面する偏見や差別が蔓延している。

そしてこれらの法律は、人々を沈黙させ、こうしたマイノリティーが社会に対して発言できる範囲を制限し、構造的な差別を定着させることで政治プロセスに直接的な影響を及ぼしている。

UNDPは数十年にわたり、こうした障壁を取り除き、すべての個人の人権を尊重する法律、 政策、プログラムを強化するための支援に取り組んできた。これは、LGBTIQ+の人々が多様なグループであり、様々な形態の差別に直面していることを認識し、幅広いグローバル・パートナーや擁護者と協力することを求めている。

しかし、世界人口の約半数が今年投票を行う可能性があると推定される中、自国のリーダーシップと政治的方向性を決定する人々が、私たちの住む世界の多様性を真に反映したものであることを確認する必要性に焦点が当てられている。

私たちには、彼らがそうなることを期待する理由がある。なぜなら、ルクセンブルクのようなパートナーの揺るぎない支援を受けて、UNDPはLGBTIQ+の権利を変革するために、LGBTIQ+の団体や活動家を含む世界的な取り組みを支援してきたからだ。

例えば、UNDPは昨年10月、欧州議会のLGBTIインターグループとの共同開催イベント』において「Inclusive Democracies(包摂的民主主義): 政治・選挙プロセスにおけるLGBTI+の参加を強化するための手引書」を発表した。

その目的は、政策立案者、選挙管理機関、立法者、市民社会、その他の利害関係者に、市民的・政治的権利、表現と結社の自由、公共サービスへのアクセスのより平等な行使に向けて取り組むための明確な一連のツールを提供することである。この出版物は、UNDPの世界的な活動から情報を得ており、主に南半球の80カ国以上からのベスト・プラクティスを収録している。

同時にUNDPは、世界の72カ国と全地域で、LGBTIQ+の人々や問題を開発努力に統合するために活動している。

これには、南部アフリカの若いキー・ポピュレーション(ゲイをはじめとする男性と性交渉を持つ若い男性、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、インターセックスの人々が含まれる)と協力して、主流メディアに登場する否定的なステレオタイプに異議を唱え、否定的なナラティブ(物語)を変えるための支援も含まれる。

支援は、若者のメディア・スキル・トレーニングを開催し、記者としてのスキルを身につけさせるとともに、自分たちに影響を与える問題についてアドボカシーを行うためのデジタル・プラットフォームの利用を強化することに重点を置いてきた。

しかし、デジタル・プラットフォームには大きな害を及ぼす力もあり、LGBTIQ+の人々は、しばしば不釣り合いなオンライン・ハラスメントに直面し、平等な政治参加への脅威となっている。ルクセンブルクの支援により、UNDPはジェンダー、性的指向、民族に基づいて個人を標的にする危険なオンライン言論との闘いを優先してきた。

例えば、UNDPの取り組みの一環であ る「カーボ・ベルデ自由で平等なキャンペーン」は、ジェ ンダーに対する固定観念と闘い、法的手段やコミュニ ケーション手段を通じて偏見をなくすことに重点を置いている。

LGBTIQ+の権利に取り組む世界的な取り組みは、影響を与えつつある。ジョージタウン大学のオニール研究所、UNDP、「HIVとともに生きる人々の世界ネットワーク(GNP+)」が共同で作成した最近のHIVポリシーラボ報告書では、世界中で合意による同性間の性交渉が非犯罪化される傾向が続いていることが明確に示されており、2022年には過去25年間のどの年よりも多くの国が刑罰法規を撤廃している。

これらの進歩は、共同の努力の一環である。なぜなら、包摂的で公平な社会の構築は、パートナーとの連携を築くことを意味するからである。UNDPでは、ルクセンブルクのようなパートナーがこの重要な活動に資金を提供し、LGBTIQ+の人々が直面する不公正に光を当てることを支援しており、その重要性は決して過小評価されていない。

人権への投資は私たちの社会への投資でもあることからこの点は重要である。UNDPは、ルクセンブルクと主要なドナーの支援を得て、誰であろうと、どこであろうと、人々が自分たちの社会を形成する上で声を上げることができるよう支援する活動に取り組んでいる。

今年は、かつてないほど注目度が高い。選挙での決定が、社会の発展や人権の尊重に大きな影響を与えるだろう。だからこそ私たちは、この機会にパートナーシップを認識し、LGBTIQ+コミュニティへのコミットメントを新たにしなければならない。

世界の関心は、選挙の勝者と敗者に集まるだろう。しかし、結果はパズルの1ピースに過ぎない。行われる政治プロセスが包括的で、信頼でき、平和的であることを確実にすることが、最終的に、誰もが投票でき、誰もが立候補でき、そして最も重要なことは、誰も沈黙を強いられることのない世界を構築する方法である。(原文へ)

ウリカ・モデールは国連事務次長補兼UNDP対外関係・アドボカシー局長、クリストフ・シルツはルクセンブルク外務・欧州問題・国防・開発協力・対外貿易省開発協力・人道問題局長。

INPS Japan/IPS UN Bureau

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|ジンバブエ|気温上昇が人間と野生動物の紛争を助長

【ブラワヨIPS=イグナチウス・バンダ】

ジンバブエでは気温の上昇により、ヘビなどの動物が通常よりも早く自然の生息地を離れるため、人間と野生動物の衝突が増加している。

当局によれば、気温が高いために山火事シーズンが早まり、野生動物が人間の住む地域に押し寄せ、すでに医療サービスが低下しているジンバブエでは、多くの人々の命が危険に晒されているという。

世界保健機関(WHO)などの諸機関が気候変動と健康との関連性を強調し、研究の強化を呼びかけているときでもある。

世界的に、かつてないほどの気温の上昇が壊滅的な山火事の原因となっているが、ジンバブエのような低所得のアフリカ諸国も気候変動の影響を受けている。

今年の初め、ジンバブエ保健省は、ヘビが人間の住む地域に移動したため、ヘビに噛まれる件数が急増したと報告した。

住宅地でヘビが急増しているのを目撃した住民によると、これはジンバブエ全土が猛暑に見舞われていることと重なるという、 また、国内の都市部ではヘビ捕り業者も繁盛しているという。

野生動物当局によると、野生動物の生息地が失われつつあるため、人間への危険性が高まっている一方、気候研究者は気温の上昇と蛇による被害との関連性を指摘している。

ジンバブエ国立公園野生生物局(Zimparks)によると、ヘビが冬眠している期間である冬眠期は、異常な高温の長期化によって短くなり、ヘビは例年よりも早く隠れ場所から移動するようになったという。

また、急速に変化する世界的な気候の中で、冬が短く、日中が長くなることも常態化しており、野生生物は適応を余儀なくされ、状況によっては人間の住む地域に移動せざるを得なくなっている、と研究者たちは指摘している。

このため、ヘビに噛まれる件数が過去最多を記録している、と公園・野生動物局のティナシェ・ファラウォ広報官は指摘した。

ジンバブエで猛暑が続いていることも、山火事のシーズンが長くなっている原因である。乾燥した状況は、ヴェルド(草原)火災の拡大に理想的な条件を提供しているからだ。

そして、草原火災が広がると、ヘビなどの危険な野生生物は安全な場所を求め、さらに人間の命を危険にさらすことになる、とジンバブエ政府関係者は語った。

しかし、影響を受けたコミュニティは、気候変動が引き起こすこの現象にどう対処すべきか、窮地に立たされている。

ジンバブエでは、人間が生命の危機を感じていても、野生動物や保護されているヘビ類を殺すことは処罰の対象であり、気候変動が生物多様性や生態系のバランスに与える影響と複雑さを浮き彫りにしている。

「生態系が変化するにつれ、人間も野生動物も食料、水、資源を求めて遠くまで移動するようになります。ジンバブエにおける人間と野生動物の衝突問題は、ますます大きくなっています。」と環境省の気候変動管理ディレクター、ワシントン・ジャカタ氏は語った。

「気温の上昇は、植生、食料源、水へのアクセスなど、多くのことに影響を及ぼしています。生態系は徐々に特定の動物にとって住めなくなりつつあり、野生動物は食料と住みやすい環境を求めて、通常のパターンから外れた移動を余儀なくされています。」と、ジャカタ氏はIPSの取材に対して語った。

ジンバブエはここ数ヶ月、記録的な高温を記録し、農作物から人々の健康まで、あらゆるものに影響を及ぼしている。

研究者たちは、地球温暖化が長年にわたって生物多様性を破壊し、野生生物がより住みやすい地域に移動することを余儀なくされ、その過程で自然の生態系が乱れていることを指摘している。

「サハラ以南のアフリカの多くの地域では、干ばつの時期になると、人と家畜が減少する資源をめぐって野生生物と競合しています。」と、世界自然保護基金で野生生物と気候レジリエンスのシニアディレクターを務めるニヒル・アドバニ氏は語った。

気候変動がもたらす難題の中で、専門家たちは、人間と野生動物の衝突の増加に対処するために、より良い介入が必要だと言う。

こうした兆候にもかかわらず、ジンバブエのような後発開発途上国は、気候管理プログラムへの資源の動員や投入に苦慮しており、人間と野生生物の紛争が顕在化している。

「人間と野生動物の衝突を緩和するのに役立つ介入策はいくつもあります。例えば、捕食動物を防ぐボーマス(安全地帯)や、その地域の野生動物に対する早期警告システムなどです。重要なことの一つは、野生動物と共存することのメリットをコミュニティが理解することです。」とアドバニ氏は語った。

SDGs Goal No. 13
SDGs Goal No. 13

ジンバブエには、人間と野生動物の衝突などの問題を解決することを目的としたCAMPFIRE(先住民資源の地域社会による管理プログラム)があるが、気候変動が生態系に与える影響など、より広範な問題は依然として取り組まれていないと、影響を受けたコミュニティは指摘した。

「エコツーリズムのような取り組みは、観光事業が、バリューチェーン全体を通じて地域社会を強く取り込むものである限り、地域社会が野生生物と共存することの利点を知るための素晴らしい方法です。」と、アドバニ氏は指摘した。

気候研究者が地球は今後も温暖化し続けると警告し、地域社会が危険な動物との共生を何とか常態化させようと奮闘する中、気候変動が人間と野生動物の紛争に長期的な影響を及ぼす懸念が高まっている。

「すでに今日、私たちは30年前と比べ、気候や天候に関連した自然災害の急激な増加に直面しています。これらの災害は、人間、ペット、野生動物の生命と生息地に壊滅的な損失をもたらしています。」とジャカタ氏は語った。(原文へ

INPS Japan/ IPS UN Bureau Report

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EUベラルーシ国境地帯の移民を取巻く状況が悪化

【ブラチスラバ IPS=エド・ホルト】

ベラルーシと欧州連合(EU)の国境における難民危機が4年目を迎えようとしている中、ベラルーシ国内における活動家への弾圧が、国外に脱出しようとして「死の地帯」から抜け出せない移民の状況を悪化させている。

難民の支援活動を行っている団体によれば、ベラルーシ当局のNGOに対する弾圧により、多くの団体が移民のための支援活動を停止したため、移民には人道的支援が限られているか、まったくない状態になっているという。

一方、ベラルーシでは国際機関が難民に何らかのサービスを提供しているが、NGOはそれが十分でないと懸念している。

「この危機が始まって以来、(国境警備隊による)難民に対する暴力は激しくなっています。以前は難民を助けようとする人がもっといましたが、刑事罰を受ける可能性があるため、今ではほぼ誰も助けていません。」と、ベラルーシから撤退を余儀なくされ、現在はポーランドで活動しているベラルーシのNGO『ヒューマン・コンスタンタ』の人権活動家、エニラ・ブロニツカヤ氏はIPSの取材に対して語った。

2021年夏にベラルーシとEUの国境で難民危機が始まって以来、人権擁護諸団体は国境の両側の警備員による難民に対する残忍な「押し戻し」について抗議の声を上げてきた。

EUによる経済制裁に対する対抗策として、ベラルーシ政府が危機を作り出していると非難する声もある。彼らによれば、ベラルーシ当局は積極的に移民を組織し、奨励し、さらには強制的に国境を越えさせようとしているが、同時に国境警備隊による同じ移民に対する暴力的で卑劣な扱いを是認している。

しかし、ポーランド、ラトビア、リトアニアのEU国境警備隊が、同じ移民たちに対して同様に暴力的で非人道的な方法を用いていること、また亡命を申請する権利が組織的に侵害されていることを問題視する声もある。

「これらの人々は、ベラルーシとポーランド双方の国境警備隊員から、数多くの暴力を受けています。 私たちは、殴打、蹴り、ライフル銃床の後頭部で殴られた後のあざ、目の周りのあざ、折れた歯、唐辛子ガスを吹きかけられた後の皮膚や目の炎症、犬に噛まれた後の歯形などを目の当たりにしてきました。」と、ベラルーシからポーランドに到着した移民を支援するポーランドのNGO、We Are Monitoring (WAM)のバルテク・ルミエンチク氏はIPSの取材に対して語った。

「私たちはまた、ポーランドで国際的な保護を求める権利があることも伝えていますが、実際には、こうした訴えは国境警備隊に無視されることが多いのです。私たちの目の前で亡命を求めているにもかかわらず、ベラルーシに押し戻される状況を何度も目撃しました。」と彼は付け加えた。

このような行為によって、人々は2つの国境の間に悲惨な状況で取り残されている。援助活動家の中には、そこを「死の地帯」と表現する者もいる。

「(EUに)何とかたどり着いた難民は、EU国境のフェンスとベラルーシ側の剃刀ワイヤー、そしてベラルーシに引き返すことを許さない国境警備隊の間の『死の地帯』について語っています。」と、ポーランドの国境なき医師団(MSF)の医療コーディネーター、ジョアンナ・ラドミルスカ氏はIPSの取材に対して語った。

「この死の地帯はベラルーシとEUの国境に沿って広がっており、その広さは数万平方キロメートルにも及びます。私の心配は、NGOも誰もこの地帯にアクセスできないことです。」とラドミルスカさんは付け加えた。

ヒューマン・コンスタンタの調査によると、危機が始まって以来、少なくとも94人が国境地帯で死亡したことが確認されているが、さらに多くの人々が命を落としたと考えられている。

国境を越えることができた人々の中には負傷し、中には重傷を負う者もいる。疲労困憊、低体温症、沼地や川の水を飲まざるを得なかったことによる胃腸障害などが一般的で、ほぼ3分の1が塹壕足になり、剃刀や有刺鉄線のフェンスで重傷を負う者も少なくない。また、医療ケアを提供する援助団体によれば、凍傷のために手足の一部を切断しなければならない者もいるという。

「国境のEU側では国際機関や地元団体が移民を支援する活動を続けているが、ベラルーシ側ではもっと限られています。」と、移民と直接関わっている人々は語った。

2020年の再選後の大規模な抗議行動以来、独裁的なベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領は、反対意見に対する徹底的な弾圧を実施してきた。その結果、とりわけ市民社会で働く人々が広く訴追された。

これまで移民を支援してきたNGOを含め、多くのNGOが閉鎖を余儀なくされ、移民のためにできることをする主要な国際組織はほんの一握りとなっている。

しかし、彼らの活動がどれほど効果的であるかについては、疑問の声が上がっている。

「赤十字と協力しているICRCのような国際機関はありますが、ベラルーシ赤十字は特定の地域で食料小包を配っているだけで、定期的で安定した供給はしていません」とブロニツカヤさんは語った。

「基本的に、(移民に)必要な支援を与える人がいないのです。以前よりもさらに多くの死者が出る可能性があります。」とブロニツカヤ氏は付け加えた。

しかし、助けを得るのに苦労しているのは、国境の間で立ち往生している人々だけではない。

EUへの入国に失敗し、ベラルーシに戻ることになった者は、非正規移民として分類され、医療や手当を受けることができず、合法的に働くこともできない。

「多くの人はすぐに貧困に陥り、入国管理当局に発見されることを常に恐れて生活し、搾取されやすくなります。ミンスクや他のベラルーシの都市で、生きていくために売春を余儀なくされている移民の話を聞いたことがあります。」と、ある匿名の援助活動家はIPSの取材に対して語った。

このような窮状に直面すると、多くの移民は危険を顧みず再び越境を試みるしかないと決断する。

援助団体や世界的な人権擁護団体は、EU諸国やベラルーシ政府は、これらの移民の権利を保護する義務を守らなければならないと述べている。

「EUが物理的な壁や法的な障壁を設けたりして、国境を越えることを難しくしたり、不可能にしたりするのは、今日の状況に対する最善のアプローチではありません。また、ベラルーシが人々を立ち往生させるような状況を作り出すのもよくありません。」と、「ベラルーシにある国境なき医師団(MSF)のメディカル・オペレーション・マネージャー、ノーマル・シタリ氏はIPSの取材に対して語った。

「独立した人道支援組織や、国際機関、市民団体が、この悲惨な状況に対応するために、国境地帯に自由に立ち入ることができなければなりません。各国政府は、国際組織が医療を提供したり、その費用を負担したりする必要がないよう、これらの人々の医療へのアクセスを確保することに目を向ける必要があります。また、これらの人々の法的保護についても検討する必要があります。さらに、これらの人々が通過中に個人としての権利を主張するための空間と保護をどのように確保できるかを検討する必要があります。」と付け加えた。

危機の間、何千人もの移民を支援したMSFは、保護や法的支援のニーズが、移民の医療ニーズを上回ったと判断し、移民へのサービス提供を停止した。MSFは、医療ニーズは特定の専門知識を持つ専門組織のみが提供できると述べている。

しかし、ベラルーシとEU諸国の政治関係がひどく緊張しているため、状況がすぐに改善されるとは思えないという声もある。

「政府は何かしなければならないが、政治的な状況が事態を複雑にしています。ベラルーシでは弾圧が続いているため、EU各国政府はルカシェンコ大統領と交渉しないだろう。何か大きな変化がない限り、事態は好転しないだろう。」とブロニツカヤ氏は語った。

しかし、変化を期待する声もある。

昨年12月に誕生したポーランドの新政権は、新政権下で移民のベラルーシへの押し戻しの件数が減少したと主張し、人権保護を最優先とする新たな国境・移民政策を策定中であると述べた。また、国境での人道危機を食い止めるため、国境警備隊が特別捜索救助隊を設置する計画も進められているという。

「欧州の国として、(ポーランドは)欧州の人権法を尊重し、人々に安全なアクセスを提供すべきです。そのためにベラルーシ政権と交渉する必要はありません。」とラドミルスカ氏はIPSの取材に対して語った。

「ポーランドの新政権によって、何かが変わることを期待しています。私たちは彼らと話し合っています。変化を起こすことは可能ですし、新政権にはそれを実現するチャンスがあります。」(原文へ

INPS Japan/ IPS UN Bureau

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アゼルバイジャンとアルメニア、アルマトイで和平交渉開催

【アスタナINPS Japan/The Atana Times=ダナ・オミグラジィ

アゼルバイジャンのジェイフン・バイラモフ外相とアルメニアのアララト・ミゾヤン外相は、5月10日にカザフスタンのアルマトイで交渉を開始した。カザフスタンのムラト・ヌルトレウ副首相兼外相は、両外相を歓迎し、カザフスタンが仲介役を引き受けることなく、交渉をホストする事務局としての職務を誠実に遂行する準備ができていることを強調した。

Photo: Ministry of Foreign Affairs of Kazakhstan

アゼルバイジャンアルメニア両国は、カザフスタンにとって親密な国であるだけでなく、重要な戦略的パートナーでもあります。古来より、両国民は何世紀にもわたる友好の絆、相互理解、共通の歴史的過去によって結ばれてきました。両国間の協議が、信頼にもとづく対話を通じて実りあるものとなり、成功裏に目標を達成することを祈念します。」と語った。

バヤラモフ外相は、カザフ政府、とりわけこの交渉をホストするイニシアチブをとってくれたカシム・ジョマルト・トカエフ大統領に感謝の意を表した。

「我々はこのプロセスを非常に重要視しており、作業を継続する用意があることを確認したい。アルマトイでの交渉は非常に有益なものになると確信しており、今後2日間、未解決の問題の解決策を見出すために前向きに取り組んでいきたい。」とバイラモフ外相は語った。

ミゾヤン外相もまた、今回の会談をホストしたカザフ政府に感謝の意を表した。

「アルメニアは和平を目指していることを強調したい。我々は非常に建設的に交渉プロセスに参加しています。さらに、我々は平和条約の締結にとどまるべきでないと考えています。すべての輸送インフラは、その領土を通過する国々の主権の下に置かれるという理解の下で、(現在遮断している)域内のすべての交通通信を共同で解除することができます。私たちが合意する国境、行政、税関手続きを抑制するすべての手続きは、相互主義の原則に従い、相互のものとなります。」とミゾヤン外相は語った。

ヌルトレウ外相はまた、アゼルバイジャンおよびアルメニアの外相と個別に二国間協議を行い、協力の展望について話し合った。

ミゾヤン外相との会談では、両外相はカザフスタンとアルメニア間でハイレベルの政治対話が進展している現状に満足の意を示した。

3カ国の外相は、国境画定を含むアゼルバイジャン・アルメニア間の関係解決における画期的な1991年のアルマ・アタ宣言の役割を挙げ、今般アルマトイでアゼルバイジャンとアルメニア外相が会談した象徴的な重要性を強調した。

Political Map of the Caucasus and Central Asia/ Public Domain
Political Map of the Caucasus and Central Asia/ Public Domain

バヤラモフ外相との会談では、カザフ・アゼルバイジャンの戦略的パートナーシップと同盟の強化について話し合われ、貿易と通過・輸送拡大の可能性について意見交換が行われた。

バイラモフ外相は、アゼルバイジャンとアルメニアの二国間和平プロセス促進におけるカザフスタン政府の努力と支援に感謝の意を表した。(原文へ

INPS Japan

この記事は、The Astana Timesに初出掲載されたものです。

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雨漏りする屋根: 「アジアの世紀」脅かすヒマラヤ融解

この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています。

【Global Outlook=ロバート・ミゾ】

世界の屋根が雨漏りしている。より正確には、融けている。脆弱なヒマラヤの生態圏は、気候変動が引き起こした気温上昇による大きな脅威に直面している。これは、生態系への影響をもたらすだけでなく、下流に住む何百万もの人々の生活を、政治的境界や文化を超えて、破壊はしないまでも変えてしまうだろう。次なる世界的大国と目され、「アジアの世紀」の二大主役として競い合ってもいる中国とインドは、経済や政治の安全保障という点でヒマラヤの健全性に負うところが極めて大きい。しかし、気候変動がもたらすであろう運命がこの地域に差し迫っており、そのうちのいくつかはすでに起こりつつあることを考えると、アジアの世紀は控えめに言っても不確実であるようだ。(

ヒマラヤ地域は、そこに暮らす人間や他の多くの生き物にとって極めて重要であるだけでなく、近隣の数カ国、具体的にはアフガニスタン、インド、中国、ネパール、ブータン、パキスタン、バングラデシュ、さらにはミャンマーの何十億人という人々の命を支えている。ヒマラヤは、北極、南極に次ぐ膨大な量の凍った水が集中していることから「第3の極」とも呼ばれ、ガンジス川、インダス川、黄河、メコン川、イラワジ川といった命を支える主要な河川系の水源となっている。これらの河川は、流域にアジア文明の主要な中心地を擁し、何十億人もの人々に、食料、エネルギー、生計手段を直接的あるいは間接的に提供している。いわゆるアジアの世紀は、これらの川の流域に根差していると言って良いだろう。また、地政学的にも、ヒマラヤ地域には世界で最も重武装された二つの国境(インド・パキスタン間、インド・中国間)があり、そのため軍事インフラの設置面積が拡大している。それがさらに、全体的な生態系の脆弱性に拍車をかけている。

ヒマラヤの氷河が融解していることは、だいぶ前から知られている事実である。科学者らは10年以上前からこの融解について警告し、時には「論争」を引き起こしてきた。しかし、最近の科学研究により、さらに憂慮するべき事実が裏付けられた。当初の記録または予測よりもはるかに速いペースで融解が進んでいるのだ。カトマンズにある国際総合山岳開発センター(ICIMOD)は、2023年の研究で、2011~2020年におけるヒマラヤ氷河の融解スピードはその前の10年間より65%速かったと報告した。報告では、たとえ地球温暖化がパリ協定で定めた通り1.5℃~2℃に抑えられたとしてもヒマラヤ氷河は2100年までに容積の3分の1から半分を失うと結論付けている。ただし、これはまだ最善のシナリオの話である。

イースト・アングリア大学の大規模な研究プログラムでは、気候温暖化のレベルが上昇すると人間や自然のシステムへのリスクがどのように増大するかが検討された。学術誌「Climatic Change」に発表されたこの研究では、地球の気温が3℃上昇するとヒマラヤ地域の約90%で1年以上続く干ばつが起こり、予測される上昇が4℃の場合は4年以上続く干ばつが起こると予想されている。報告書の執筆者らは、破滅的な気候現象を回避するためには、地球温暖化をパリ協定が掲げる1.5℃の限度内に抑える持続的な政策が必要であると繰り返し述べている。

ヒマラヤ氷河の融解による破滅的な影響は現れ始めている。2023年10月、インド北東部のシッキム州のサウス・ロナック湖が決壊し、住宅、橋、高速道路、1,200 メガワット級ウルジャ水力発電所のチュンタン・ダムが破壊されて、30人が死亡したほか、下流の村のさらに多くの人が家を失った。当初、決壊は集中豪雨によるものと報道されたが、インド宇宙研究機関(ISRO)が湖増水の様子を捉えた衛星画像から、氷河湖決壊洪水(GLOF)と過剰降雨の組み合わせによって引き起こされたことが明らかになった。この事態は2013年にすでに予見されており、湖が決壊する可能性は42%であるとインドの国立リモートセンシングセンターが予測していた。それ以前には、インド側のヒマラヤ地域で鉄砲水やGLOFにつながる集中豪雨が数回観測されていた。

GLOFは、ブータン、インド、中国、ネパール、パキスタンにまたがるヒマラヤ地域のコミュニティーに深刻な脅威をもたらしている。2020年、ヒマラヤ地域の重要な氷河湖に関する国連開発計画(UNDP)とICIMODの合同報告では、極めて危険であるとして47の氷河湖が特定された。これらは、決壊して中国、インド、ネパールの下流域に洪水を発生させる恐れがあった。さらに、「Nature」に発表された氷河湖決壊に関する2023年の研究では、世界でGLOFのリスクにさらされている全ての人々のうち50%以上がインド、パキスタン、中国、ペルーに住んでいることが示された。

このような生態学的不安と不確実な未来に直面すれば、予想されているアジアの優位性がどれほど脆弱なものか想像できるというものだ。アジアの世紀は、成熟に達する前にすでに阻まれているようだ。経済成長は生態学的基盤に根差しており、そこでは全ての経済活動が直接的または間接的に生起する。水、物質、生計手段のまさに源泉が脅かされれば、最終的には努力、事業、イノベーションの妨げとなる。気候変動に起因する氷河の融解と湖の決壊は、ヒマラヤ地域に領土を有する国々に今後も破壊的な影響を及ぼし、それによってアジアの興隆をめぐる熱狂に水をかけるだろう。何をなすべきかという問いを地域が一丸となって模索し、差し迫る破滅から自国のコミュニティーを守る手立てを団結して見いだす必要がある。

最近では、市民社会が声を上げ、政府に対してヒマラヤ地域に関する懸念に目を向けるよう求めるようになった。2024年2月、インドのヒマラヤ地域で活動する多くの社会団体や環境団体が、気候変動に対する地域の脆弱性を訴える「ピープル・フォー・ヒマラヤ(People for Himalaya)」宣言に署名した。彼らは、気候災害は生態学的であるだけでなく、政治的、経済的、社会的でもあると主張するとともに、開発プロジェクトを持続可能な形で設計し、ヒマラヤの脆弱な生態系に配慮することを求めた。宣言は、資本主義の強欲さがヒマラヤのさらなる商品化をもたらしているとして、国際金融機関から国や州の政府まで、さまざまな機関を非難している。それらの全てが、ヒマラヤ地域とそのコミュニティーの脆弱性増大に影響しているのだ。同様に、インドのラダック地方出身の気候活動家でありイノベーターであるソナム・ワンチュクは現在、脆弱な先住民のコミュニティーと地域の保全を保証するインド憲法第6付則の特別規定をラダック地方に適用することを求めて、「決死の気候ハンガーストライキ」を実行している。

インドや中国のような経済成長大国は、それぞれ自国の台頭と優越の脚本を書くことに熱心で、しばしば互いに競争しているが、気候に起因する変化によって彼らが直面している脅威は、彼らの野心をひどく損なうものとなる。ヒマラヤの健全性に大きな利害を持つ二つの隣国として、ヒマラヤを差し迫った大惨事から保護し、国境を越えて脆弱なコミュニティーを守る方法を見つけるという目標に向けて、ヒマラヤ地域に領土を有する国々の協調を導くことが両国の共同利益になる。しかし、残念なことに、国境問題と領土保全に関する地政学的検討事項が、依然として両国にとって重要度の高い課題となっている。優先順位の見直しを少しでも早く行うことが、地域にとっては利益となる。

ロバート・ミゾは、デリー大学政治学部の政治学・国際関係学助教授である。気候政策研究で博士号を取得した。研究関心分野は、気候変動と安全保障、気候政治学、国際環境政治学などである。上記テーマについて、国内外の論壇で出版および発表を行っている。

INPS Japan

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【カトマンズNepali Times=クンダ・ディキシット】

The Napal Timesは、INPS Japanが創価学会インタナショナル(SGI)と推進している「Toward A Nuclear Free Words(核なき世界に向けて)」と「SDGs for All(万人のための持続可能な開発目標)」メディアプロジェクトに2024年4月から参画しています。本プロジェクトに参画しているジャーナリストは、世界で起こっている環境、紛争、人権問題等について、他人事ではなく自らの問題意識として捉え、身近にできることから変革の主体者となる「同苦の精神」を持ち合わせたSGIメンバーをはじめとした読者の存在を励みに、世界各地から最新の分析記事を配信してまいります。

世界が気候変動という緊急事態に直面するなか、環境対策と報道の自由のための闘いは相互に絡み合っています。

私たちは今日、5月3日の「世界報道自由デー」と第3回ヒマラヤ・メディア・メラを記念してここに集まりました。今年私たちは、報道の自由と環境活動の関連性に焦点を当てるため、ユネスコのテーマ「地球のための報道・環境危機に直面するジャーナリズム」を採択しました。

人間の活動が世界的に自然を絶滅させ、地球上のすべての生命を脅かしているにもかかわらず、こうした問題を報道するジャーナリストたちは、脅迫や威嚇に直面したり、罵詈雑言の荒らしによって沈黙させられたりしています。フィリピン、ブラジル、メキシコ、インドでは、違法伐採や採掘について報道しているジャーナリストが殺害されたことさえあります。

特に、地元の環境犯罪や悪質な政治家とのつながりを調査する記者は危険に晒されています。気候否定派は、二酸化炭素排出者や自然エネルギーへの取り組みを訴えるジャーナリストを恐怖に陥れるため、ボット軍団(ソーシャルメディア上で偽のアカウントとして機能し、情報を操作したり人々を威嚇するために使われるインターネット上で自動的に活動を行うソフトウェアプログラム)を展開しています。

環境ジャーナリストへの脅威が、民主主義、多元主義、表現の自由を蝕んでいるのと同じところから来ているのは偶然ではありません。

昨年のメディアメラでは、民主主義の後退、報道の自由への脅威、気候の崩壊、紛争について議論しました。それらの問題はまだそこにありますが、今年唯一違うのは、それらがすべてはるかに悪化しているということです。

報道の自由とジャーナリストの安全は、世界中で危険に晒されています。ジャーナリスト保護委員会は、昨年10月7日以来、少なくとも100人のパレスチナ人ジャーナリストがガザでイスラエル軍に殺害されたと推定しています。これは、第2次世界大戦の6年間に殺害されたジャーナリストの数よりも多い。

気候崩壊の新たな兆候がいたるところで現れています。昨年の異常気温の記録は、今年すでに私たちの地域や世界中で破られています。パリ協定が目標に掲げた、2050年までに世界の平均気温を産業革命時の1.5℃に抑えるというというレベルは2024年に既に到達されようとしています。

ネパールでは、気候による深刻な干ばつもありますが、政府の怠慢と無関心のせいもあり、かつて経験したことのない山火事と大気汚染の緊急事態が起きています。

The Nepali Times
The Nepali Times

気候変動と環境の脅威は、マスメディアが存亡の危機に直面しているときに起こっています。メディア各社は生き残りに必死であり、ジャーナリストたちは給料が支払われなかったり、職を失ったりしています。

私たちの地域では、権威主義政権や選挙で選ばれた独裁者が、取り巻きを通じてマスメディアを懐柔しています。番犬は飼い犬と化しているのです。弱体化したメディアは、現代の切実な問題を独自に取り上げることができません。

民主主義の後退とメディア抑圧の逆風はネパールにも吹いています。ネパールには現在、アジアで最も自由なメディアがありますが、私たちは警戒を怠らず、自由を守るために自由を十分に行使しなければなりません。(原文へ

INPS Japan/Nepali Times

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