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国連の未来サミットに向けて変革を求める青年達が結集

【東京IPS Japan=浅霧勝浩】

Future Action Festival Poster. Photo: Yukie Asagiri, INPS Japan.
Future Action Festival Poster. Photo: Yukie Asagiri, INPS Japan.

今年9月にニューヨークの国連本部で開催される「国連の未来サミット」に先立ち、核兵器廃絶と気候危機の解決に向けて若者の理解と行動を促す青年・市民団体の共同イベント「未来アクションフェス」(同実行委員会主催)が3月24日、東京の国立競技場で開催された。会場には日本各地から約7万人が参加したほか、ライブ配信を通して延べ50万人以上が視聴した。

このイベントでは、今日の国際社会が直面している複合的な危機について、会場の大型画面に映し出されたクイズ形式で共に学ぶセッションがあった。また、国連広報センターの根本かおる所長が、核兵器や気候変動問題に取り組む若者代表らとともに問題意識を深堀するトークセッション、さらには広島原爆で奇跡的に焼け残った「被爆ピアノ」による演奏や、歌やダンスを通じて平和の尊さを伝えるパフォーマンスが披露されるなど、参加者一人ひとりが、自身の問題意識を広げたり、変革の担い手として明日から行動と連帯を育む勇気と希望を持てる空間を提供していた。

Mr. Jacob Koller played “Merry Christmas, Mr. Laurence” on the A-bombed Piano which miraculously survived the atomic bombing of Hiroshima in 1945. Photo: Yukie Asagiri, INPS Japan
Mr. Jacob Koller played “Merry Christmas, Mr. Laurence” on the A-bombed Piano which miraculously survived the atomic bombing of Hiroshima in 1945. Photo: Yukie Asagiri, INPS Japan

トークセッションに参加したジェンダーの視点から核兵器の廃絶を目指す団体「GeNuine」の共同創設者である徳田悠希さんは、「今回このイベントに先立って実施された『青年意識調査』では、『若い世代の声が反映されていないと思う』という回答が80%を超えていました。ここまでくると、個人の感覚ではなく制度やシステムに問題があって、そのせいで若い世代が諦めてこういった問題から離れていってしまう現状が明らかになったと思います。」と語った。

Yuki Tokuda, co-founder of GeNuine (Left) Photo: Yukie Asagiri, INPS Japan.
Yuki Tokuda, co-founder of GeNuine (Left) Photo: Yukie Asagiri, INPS Japan.

「しかしここには『そうではないんだよ』という思いを持つ人々が7万人も集まっています。だから一緒に声を上げていけば制度だって変わるかもしれないし、変わった先に生きたい未来を選択するための席があるはずだという希望が持てます。明日から今回のイベントのことを忘れずに、できることをやっていきましょうというメッセージを伝えられたらいいなと思っています。」と語った。

このイベントでダンスパフォーマンスを披露した富永幸葵さんは、長年広島での被爆経験の「語り部」として生涯を全うした祖母の活動を身近に見てきた。「祖母は自身の被爆経験を語る際、必ず後半には、広島を離れて実際に核兵器を保有しているインドやパキスタンを訪れたり、紛争で貧困が蔓延し、地雷が埋められている地域に実際に足を運んで見に行ったエピソードなどを織り交ぜて、『今も広島で起こったことは終わっていません。あなたのできることで平和を伝えていってください。』と若い世代に呼びかけていました。」と語った。

Yuki Tominaga, third generation Hibakusha from Hiroshima, continues her grandmothers legacy while using her passion for dance as a medium to communicate about peace and Hiroshima bombing. Photo: Yukie Asagiri, INPS Japan.

「祖母の語る言葉には勝るものはないので遺志を継ぐなんてことはできないと思っていましたが、『あなたのできることで平和を伝えていったらいいんだよ。』と言ってくれて、それを契機に好きなダンスを通じて平和や広島の被爆経験のことを伝える活動に携わるようになりました。」「かつての私がそうであったように、とかく被爆証言や平和活動、平和イベントというのは、どこか暗くて悲しくて、楽しくないという印象があるかもしれませんが、私は若者が楽しく関心を持ちやすいダンスパフォーマンスを入口にして、平和と広島について語り合っていく、被爆者と若い世代の架け橋になりたい。」と富永さんは語った。

このイベントの実行委員会が、昨年11月20日から本年2月29日まで、日本在住の10代から40代の個人を対象に行った「青年意識調査」(119,925人が回答)の結果は、9割超が「社会をより良くするために貢献したい」と回答するなど、若者の声が反映されない現状を指摘しつつも、彼女たちのように、問題意識を行動へとつないでいける若者達の大きなポテンシャリティーを浮き彫りにした。また、質問には「社会について」「気候変動について」「核兵器について」「青年と社会構造、国連について」の項目が設けられていたが、8割以上が「核兵器は必要ない」と回答する一方で、「国連の必要性を感じている」との認識が示された。

A panel discussion with Kaoru Nemoto, director of the United Nations Information Center(3rd from left), and youth representatives delved into nuclear weapons and climate change. Photo: Yukie Asagiri, INPS Japan.
Melissa Parke, Executive Director of ICAN. Photo: Yukie Asagiri, INPS Japan.

こうした「変革の世代」となりうる若者の大きなポテンシャルについては、国連や市民社会組織も注視しており、このイベントには、国連ユース担当のフェリペ・ポーリエ事務次長補やオーランド・ブルームユニセフ(国連児童基金)親善大使、ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)のメリッサ・パーク事務局長らがメッセージを寄せ、若者への期待が述べられた。

本年9月にニューヨークの国連本部で初めて開かれる「国連の未来サミット」では、世界が直面する重大な課題への協力の強化と、SDGsのさらなる推進を実現するために、国や国際的な枠組みにおける若者の意思決定への参画が議論の柱の一つであり、若者が主体的に参加し、その声で国際社会を動かしていくことが期待されている。

実行委員会では、「国連の未来サミット」における議論の促進に貢献するため、「青年意識調査」に寄せられた声を踏まえた主に4つの柱(①気候危機の打開、②核兵器なき世界の実現、③意思決定プロセスへの若者の参画、④国連改革)からなる「共同声明」を発表し、チリツィ・マルワラ国連大学学長・国連事務次長に手渡した。マルワラ事務次長は、未来サミットで「皆さんの声は持続可能な未来のために不可欠です。」と強調し、「若い皆さんこそが未来そのものなのです。平和な世界の実現に向けて共にもっと努力していきましょう。」と呼び掛けた。

Tshilisi Marwala, President of the UN University and UN Under-Secretary-General (Center) who endorsed the joint statement from the organizing committee, acknowledged the critical importance of young voices in shaping the Summit’s agenda and urged them to “be a beacon of hope and a driving force for change.Photo: Yukie Asagiri, INPS Japan.

同イベントはアムネスティ・インターナショナル日本、創価学会インタナショナル(SGI)ユース、赤十字国際委員会(ICRC)、ピースボート、カクワカ広島、GeNuine等が協力団体として参画し、国連広報センター、平和首長会議、長崎平和推進協会等が後援。会場には協力団体や後援団体による展示ブースや記念撮影スポットが設置され、参加者が問題意識や知識を広げ、具体的な行動に踏み出す様々な入口を提供していた。(原文へ

Inter Press Service, The Nepali Times, London Post, Global Issues
Future Action Festival Filmed and edited by Katsuhiro Asagiri, Yukie Asagiri and Kevin Lin of INPS Japan Media.

INPS Japan

This article is brought to you by INPS Japan, in collaboration with Soka Gakkai International in consultative status with UN ECOSOC.

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【ベルリンIDN=ラメシュ・ジャウラ】

ロシアのウクライナに対する全面的な軍事侵攻は3年目に突入した。ウラジーミル・プーチン大統領は核兵器使用の恫喝をしている。米国の元大統領で次期大統領選での共和党候補でもあるドナルド・トランプ氏はさらに威嚇を強め、防衛予算の対GDP比2%という目標を達成できない北大西洋条約機構(NATO)加盟国に侵攻するようプーチン大統領に促しているかにすら見える。

核戦争の真の危機が迫り、長年にわたる「核のタブー」が打ち破られてしまった。全世界的な大惨事につながりかねない核紛争のリスクは大きく高まっている。現在、ロシア・米国・中国・フランス・英国・パキスタン・インド・イスラエル・北朝鮮の9カ国が核兵器を保有している。

これらの国は合計でおよそ1万3000発の核兵器を保有していると推定されており、そのうち9400発が実戦使用可能な状態にある。冷戦期の約7万発に比べれば大幅削減ではあるが、今後10年で核兵器数は増加することが見込まれ、その能力も大幅に向上することになろう。そのほとんどが、1945年8月に日本の広島に投下された核兵器よりも強力である。

その他32カ国も問題の一部である。そのうち5カ国が他国の核兵器の配備を認め、残り27カ国が核兵器使用を是認している。核兵器はたった1発でも数十万人を死に至らしめ、人間や環境に永続的かつ壊滅的な効果を与えうる。ニューヨークで1発の核兵器を爆発させただけでも58万3160人が死亡すると推定されているのである。

にもかかわらず、核による恫喝は止んでいない。ドイツの元駐米大使で安全保障の専門家であるウォルフガング・イシンジャー氏は「仮にトランプ大統領がNATOや米国の核の傘に対する疑念を表明したり、あるいは、我々の頭越しにロシアのプーチン大統領と取り決めを結んだりして、ウクライナや欧州の安全を損なうようなことになったらどうだろうか」と問う。「多くの警告があるにも関わらず、我々欧州人には『プランB』がない。」

抑止

ドイツ外務省は「NATOの核抑止は信頼性のあるものでなくてはならない。」と主張している。「国際的な規則を基にした秩序に挑戦する国々が核兵器を保有している一方でNATOは核兵器を持っていないという世界は安全ではない。ドイツ政府がF-35を調達する決定を下したのはこのためである。現在の航空機のF-35への更新はNATOによる核共有の枠組みの下で行われる。」

それぞれ290発、225発の核兵器を保有しているフランスや英国と異なり、ドイツは自前の核兵器を持たない。しかし、トルコやイタリア、ベルギー、オランダと並んで、ドイツは米国の核兵器の自国内配備を認めている。ドイツ空軍は「B61」核爆弾のおよそ15発使用の任務を割り当てられており、この爆弾は同国ラインラント-ウェストファリア州のブッヒェル空軍基地に配備されている。

ICAN
ICAN

2017年にノーベル平和賞を受賞した核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のメリッサ・パーク事務局長は「核保有国が核兵器と誤った抑止ドクトリンに固執し続ける限り、遅かれ早かれ核兵器は使用される可能性がある。手遅れになる前に核兵器を廃絶すべきだ」と語った。

パーク事務局長は、昨年11月27日から12月1日にかけてニューヨークの国連本部で開催された第2回核兵器禁止条約締約国会合で科学者や国際赤十字委員会、ICANが合意した宣言について指摘した。宣言は「核兵器が人間に与える帰結とリスクに関する新たな科学的知見に焦点をあて、その理解を促進し、核抑止が本来的にもつリスクと想定をこれと並べてみることによって、核抑止の基盤となっている安全保障パラダイムに挑戦することが必要だ。」と述べている。

核兵器禁止条約はとりわけ、核兵器の展開や保有、移転、貯蔵、配備を禁止している。ドイツ外務省は「こうした広範な禁止事項によって、核禁条約とNATO同盟国が負っている義務との間には衝突が生じる。核共有がいい例だ。このためにドイツも他のNATO諸国も条約に参加せずにいる。」との見解だ。

ICANはすべての核保有国に対して、緊張を緩和し、核抑止という危険なドクトリンから離脱する緊急の措置を採るべきだと訴えている。「核軍縮はロシア・ウクライナ間での交渉を通じた和平の本質的な要素のひとつだ。多国間核軍縮は、他の核保有国がロシアのような道を歩み核兵器を使用してしまうことを防ぐ唯一の方法だ。これが、戦争犯罪を犯し民間人を恐怖に陥れることへの防護壁となる。核禁条約への参加は、核抑止論を非正当化し核兵器を廃絶するための重要な一歩になる。」

強さを増す核兵器禁止条約

第2回締約国会合は、条約が力強さを増していることを示した。複数のオブザーバー国が条約に近々参加する意志を表明し、これによって、条約に署名、批准、あるいは加入した国の数は、国連の全加盟国193の半数以上に達することだろう。

A view of the 2nd meeting States Parties to the TPMW. Photo credit: ICAN | Darren Ornitz. - Photo: 2023
A view of the 2nd meeting States Parties to the TPMW. Photo credit: ICAN | Darren Ornitz.

ドイツもまた、条約締約国と同じく、核軍縮が停滞していることに懸念を持っている。オーストラリアやベルギー、ノルウェーと同様にドイツも締約国会合に[オブザーバーとして]参加した。

「ドイツ政府は、現在の安全保障環境の下でいかにして核軍縮に進展をもたらしうるかについて、核兵器禁止条約締約国との対話を続ける所存だ」とドイツ外務省は述べている。

創価学会インタナショナルの寺崎広嗣平和運動局長は、「核禁条約締約国は過去2年間、あらゆる核の恫喝に反対し核抑止という誤った考え方に抵抗する中心的な役割を果たしてきた。」と語った。

2021年の第1回会合で締約国は「明示的なものであれ暗黙のものであれ、そして状況がどのようなものであれ、あらゆる核の恫喝」に我々は反対すると明確に述べた。ニューヨークでの第2回会合では「核兵器が人間に与える帰結とリスクに関するあらたな科学的知見に焦点をあて、その理解を促進し、核抑止が本来的にもつリスクと想定をこれと並べてみることによって、核抑止の基盤となっている安全保障パラダイムに挑戦すること」に合意した。

Photo: First Meeting of the States Parties (MSP) to the Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons (TPNW). Credit: Seikyo Shimbun
Photo: First Meeting of the States Parties (MSP) to the Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons (TPNW). Credit: Seikyo Shimbun

寺崎氏はまた、「宗教団体が手を取り合って、国連や国際社会、市民社会の草の根の意識喚起活動において、一般市民の人命が奪われる事態に、一刻も早く終止符を打つための道を見出す。人間性の名において、壊滅的な非人道的な結末を回避し、人々が集い互いを理解して、苦しんでいる人々を誰も取り残さないようにし、誰もが自分らしく輝いて、多様な生を享受できる世界をつくることが必要だ。」と語った。

ICANがオランダ最大の平和団体「PAX」と共同で行った新たな調査は、核兵器製造企業からの投資引揚げが重要だと強調している。紛争によって世界的な核軍拡競争が加速し、核保有9カ国の2022年の核兵器関連支出は計829億ドルにも達している。結果として核兵器産業は、核戦争に対する世界の心配をよそに、恥も外聞もなく核兵器から利益を得ている。

ウクライナ紛争とそれに伴う核の緊張の高まりによって、核兵器製造企業の利益は急増し、保有株・債券で157億ドル増、融資と証券引受業務で571億ドル増となっている。

調査報告書は、核兵器製造に関わる24企業と実質的な金融・投資関係にある287の金融機関を特定している。

この287の投資機関のうち、核兵器禁止条約締約国に本拠を置く企業は3社しかない。うち、1事例においては、報告書では親会社の関連と記述されているものの、条約締約国外に拠点を置く子会社によるものであった。債券・株で4770億ドルが保有され、融資と証券引受で3430億ドルが[核兵器製造企業に]供与されている。(原文へ

INPS Japan

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アーメダバードのスラム街の女性たちはどのように猛暑を撃退しているか

【アーメダバードIPS=マニパドマ・ジェナ】

シーマ・マリさんは必死だ。この気候の変化による残酷な暑さに対して、彼女には何の防御策もない。マリさんは一年中生花の花輪を作っているが、夏の収入は猛暑のためにここ8~10年で30%も激減している。

インドは毎年3月と5月に記録的な猛暑に見舞われている。インド気象局(IMD)によると、昨年(2023年)は1901年以来、同国で2番目に記録的な暑さだった。その前年(2022年)は、3月から5月にかけて全州で280日もの熱波が観測され、過去12年間で最も暑かった。IMDは、2024年3月初めには、インド全州で平年より暖かい夏が到来し、3月から5月にかけて熱波の日が増えると警告している。

「私たちが密接に協力しているアーメダバードのスラム街に暮らす女性たちは、2014年になると突然、猛暑を最大の懸念事項として挙げるようになりました。気候変動に関連した暑さ、洪水、蚊の脅威に対するニーズが、水やトイレ、レンガ造りの家といった日常的なニーズよりも急増したのです。」と、非営利団体マヒラ・ハウジング・トラスト(MHT)のシニア・プログラム・マネージャー、シラズ・ヒラニ氏は語った。

Map of India
Map of India

インド西部の都市アーメダバードでは、2022年夏の最高気温は45.8度だった。2016年、5月の1日の最高気温48℃は、同市の過去100年の記録を更新した。2010年5月は46.8℃という前代未聞の猛暑に見舞われ、2009年と2011年の5月の平均死亡者数と比較すると、1344人もの死者が出た。このため、アーメダバード市は2023年、南アジアで初の「暑さ対策計画」を策定した。

アーメダバードのスラム街に住む女性たちは、仕立物、刺繍、凧作り、お菓子作り、あるいは八百屋、野菜、花などの零細小売業を営むなど、在宅で多くの仕事をしている。彼女たちの収入と家の中での存在は、ここで共に暮らす多世代家族にとって重要である。

MHTによると、インドの都市部の雇用の18%を在宅ワーカーが占めている。

グローバル・サウスの貧しい女性たちは、設備が不十分な家で働く可能性が高いため、異常気象の矢面に立たされることが多い。

グジャラート州では168万人、13人に1人がスラムで暮らしている。アーメダバードはスラム人口で2番目に多い。2011年の国勢調査による最新の数字は、時代遅れの可能性が高い。

オドニ・チャウル(オドニとはインド人女性が上半身にまとうスカーフのこと)に住むシーマ・マリさんのように、住民は窓がなく、金属板でできた屋根と、炎天下から身を守る唯一の手段である扇風機しかないワンルーム住宅に住んでいる。小屋が密集しているため、狭い路地では換気もままならない。

Nimaben Harishbhai works at her sewing machine in her tiny 8×4-square-foot sewing room behind her home in an Ahmedabad slum. Credit: Manipadma Jena/IPS
Nimaben Harishbhai works at her sewing machine in her tiny 8×4-square-foot sewing room behind her home in an Ahmedabad slum. Credit: Manipadma Jena/IPS

屋根を白く塗るのは誰か?

SDGs Goal No. 11
SDGs Goal No. 11

「スラムの居住地で暑さ対策が実地テストされた。熱を反射する白い塗料で家の屋根を塗ることが、女性たちから満場一致で最も効果的だと選ばれたのです。」とヒラニさんは語った。日射反射塗料は、屋根の温度を下げることを目的とした断熱塗料である。

MHTが塗料購入の資金を手配したため、塗装自体は自助努力で行わなければならなかった。誰がやるのか?労働者を雇えば、500インドルピー(6.033米ドル)を請求される。このために一日分の給料を失うことを嫌った男たちは、この仕事に従事することを拒否した。

そこで「ペンキ塗りは私たちがやります」と女性たちが立ち上がった。少しの助けを借りて、彼女たちは自らを訓練し、本来は男性の仕事であるはずのペンキ塗りをこなせるようになった。高齢者や病気の隣人のトタン屋根やアスベスト屋根の塗装も行った。

「私があなたの家の屋根を洗ってペンキを塗っている間に、私たちの昼食を作ってちょうだい。」と、在宅で仕立て業を営み、このコミュニティのリーダーでもあるニマベン・ハリシュバイさん(28歳)は自信に満ちた身のこなしで語った。

ニマベンさんはMHTからデジタル室温計を新しく白い屋根を葺いた家に設置してもらい、コミュニティの女性たちにトタン屋根の家との違いを感じてもらった。「温度は明らかに3~5度低く、換気や周りに樹木があればもっと涼しくなります。」と彼女はIPSの取材に対して語った。

SDGs Goal No. 5
SDGs Goal No. 5

ニマベンさんのように、多くの女性たちが率先して他人を鼓舞して回った。その結果、及効果は絶大だった。現在、MHTが協力している都市のスラム街には、3万2000の涼しく白い屋根がある。MHTは14,784人のスラム女性をヴィカシニ(開発をリードする女性という意味)として養成した。彼女たちは気候レジリエンスのスペシャリストでもあり、他の人々を動機付け、指導し、技術専門家から学び、都市の貧困層のための気候政策で自治体と提携している。

「私があなたの家の屋根を洗ってペンキを塗っている間に、私たちの昼食を作ってちょうだい。」と、在宅で仕立て業を営み、このコミュニティのリーダーでもあるニマベン・ハリシュバイさん(28歳)は自信に満ちた身のこなしで語った。

ニマベンさんはMHTからデジタル室温計を新しく白い屋根を葺いた家に設置してもらい、コミュニティの女性たちにトタン屋根の家との違いを感じてもらった。「温度は明らかに3~5度低く、換気や周りに樹木があればもっと涼しくなります。」と彼女はIPSの取材に対して語った。

ニマベンさんのように、多くの女性たちが率先して他人を鼓舞して回った。その結果、及効果は絶大だった。現在、MHTが協力している都市のスラム街には、3万2000の涼しく白い屋根がある。MHTは14,784人のスラム女性をヴィカシニ(開発をリードする女性という意味)として養成した。彼女たちは気候レジリエンスのスペシャリストでもあり、他の人々を動機付け、指導し、技術専門家から学び、都市の貧困層のための気候政策で自治体と提携している。

A regular visitor to Odni Chawl, Niruben Badoria, field organiser with Mahila Housing Trust (2nd from right), sits chatting with the women. Credit: Manipadma Jena/IPS
A regular visitor to Odni Chawl, Niruben Badoria, field organiser with Mahila Housing Trust (2nd from right), sits chatting with the women. Credit: Manipadma Jena/IPS

女性たちが自分たちの手で問題解決に乗り出してから、もはや労働時間を失うことはなくなった。

「涼しい屋根を選ぶまで、夏の午後は耐え難い気温のため、毎日4時間の労働時間を失っていました。」と、MHTの現場オーガナイザーであるニルベン・バドリアさん(45歳)はIPSの取材に対して語った。「暑さに関連した医療費の増加は、すでに減少している収入の一部を奪っていきました。」

「アーメダバード市公社(AMC)の医師で副保健官であるテジャス・シャー医師は、アーメダバード南部の事務所でIPSの取材に応じ、「最もひどい被害を受けているのは、屋外で働く労働者、妊婦、子供、高齢者です。」と語った。

「脱水症状、皮膚感染症、あせも湿疹、尿路感染症はよくある症状です。」と、オドニ・チャウルの女性たちの大半が語った。

その日の稼ぎで大家族の食卓を支えていかなければならないスラムの女性たちにを苦しめたのは、日銭を失うことだった。

「私たち一人ひとりにとっては、どんな職業に就いていたとしても、涼しい屋根塗料を塗った後と塗る前の収入の差は相当なものです。」と35歳のシーマ・マリさんは語った。

マリさんはあぐらをかいて座り、竹籠に盛られた赤ちゃんの握りこぶしほどの大きさの、鮮やかな淡い黄色のマリーゴールドに囲まれている。それらは湿らせた茶色の麻袋で覆われている。彼女は一日中、マリーゴールドを何十本もの花輪に束ねている。夕方までには、参拝客に販売する寺院の売店に供給される。

「夏の収入は、酷暑のためにここ8~10年で30%以上も激減していました。」と、マリさんはIPSの取材に対して語った。「兄が手を貸してくれるので、原料として買う2万ルピー(241.25米ドル)分の花から、1ヶ月で1万ルピー(120.65米ドル)を稼ぐことができました。」

夏の暑さが定期的に40℃を超えるようになると、収入は7000ルピー(84.45米ドル)まで落ち込むようになり、十分な原材料を購入する能力が制限されるようになった。

「トタン屋根の一人部屋は昼前でも竈(かまど)の中にいるような状態になります。」

30分おきに麻袋に必死に水をかけ、その下に花を隠して暑さをしのいだ。昼過ぎになると、熱と水と高い湿度が重なり、太い針が刺さると花の受け皿や根元が持ちこたえられなくなり、花びらが落ちてしまうことも少なくなかった。

「白い屋根はとても役に立っています」とマリさんは言う。屋根を塗っていなかった頃に比べ、収入は15~20%増えた。夏は日が長いので、彼女は余った時間を生産性の向上に充てている。

励まされて、彼女はさらに品質に気を使けるようになった。夏は朝4時には家を出る。暗いうちにアーメダバード最大の花市場、ジャマルプール・フール・バザールに向かう。日の出までに、彼女はすでにマリーゴールドの生花を量り、代金を支払い、日差しで焦げる前に2つの大きな袋を室内に持ち込む。

婦人服を仕立てているニマベンさんは、屋根を塗装する選択をしてから、収入が倍になった日もあるという。

「午後の4時間はとても暑く、4×8フィートの小さな縫製室に座っているのがやっとでした。そんななかで急いで家事をこなせば、どうにか300ルピー(3.62米ドル)の工賃の服を1着縫うことができる状態でした。ところが、屋根を塗装したことで、午後も働けるようになったので、生産量も増えました。」と、1歳の幼児を抱えるニマベンさんは語った。「電気代も節約できました」とニマベンさんは付け加えた。ニマベンさんはベッドの上に電気代の請求書を広げ、「50%以上の節約になります。ポータブル・クーラーの使用量も減り、扇風機は昼夜稼働させる必要はなくなりましたし、また、新しく開けた窓のおかげで、電球を1日15時間も点けている必要がなくなりました。」と語った。

2年前、ニマベンさんと夫ハリシュバイさんは、暑さが厳しくなるにつれて、築50年の先祖代々の家を改築し、相互換気をすることに決めた。年老いた両親と3人の子供たちが同居している。ハリシュバイさんは1日350ルピー(4.22米ドル)の収入を得て、ステンレス製の調理器具を磨いている。

彼らは長男が人生でより良い機会を掴めるようにと、私立の英語学校に入学させた。

SDGs Goal No. 13
SDGs Goal No. 13

「できる限りの収入が必要なのですが、暑さが収入の大部分を奪っていたのです。」とニマベンさんはIPSの取材に対して語った。「つまり、私たちにとっては『白い屋根』が『泥棒(=暑さで自分たちの収入を奪っていた)』を捕まえてくれたのです。」と付け加え、自分の機知にニヤリと笑った。

その場に座っていた他の女性たちも力強く頷き、同意した。彼女の義母(60歳)は、古い鉄の棒を家々から集める屋外労働者で、夏の暑さが増してきたと感じたのは、彼女が35歳の頃、つまり25年前の2000年頃だったという。

ヒラニ氏によれば、インドの冷房需要は2038年までに8倍に増加し、2050年にはピーク時のエネルギー需要の45%を占めるようになると予測されている。

都市スラムの女性たちが、自身と都市の気候チャンピオンになる

2017年、AMCはクールルーフ(=涼しい屋根)プログラムの策定を開始し、とりわけ都市の貧困コミュニティからの意見を求めた。MHTのスラム街を視察して白い屋根の有効性を確信した市民団体は、女性気候リーダーを暑さ対策のパートナーとして招いた。

この時すでに、MHTのビカシニさんたちは、低コストで効果的なさまざまな解決策を開発していた。 熱をこもらせる暑い屋根に対しては、モジュール式の屋根、クロス換気された部屋、竹の波板屋根や竹マットの壁を鉄のフレームに固定したような自然建材の使用、トタン屋根を冷やすために厚い匍匐茎の層の使用、サーモコールを敷き詰めた屋根などを思いついた。

「クールルーフの大規模な実施には、スラムのコミュニティの参加が不可欠である。何百万軒ものスラムの屋根を塗装する資金が市にはない。AMCのテジャス博士はIPSの取材に対し、インドの大手塗料会社は企業の社会的責任(CSR)にクールルーフィングを含める必要があると述べた。

連邦政府の経済的貧困層向け住宅プログラムでは、AMCは中国製のモザイク屋根タイルを採用している。

「AMCの暑さ対策は、主に健康リスクの軽減に重点を置いています。」とテジャス博士は語った。女性気候リーダーたちは、スラム居住区における生活保護と生活の質全般のための気候適応を含むように、政策の話を広げることに成功した。

このような女性たちのクールルーフ・イニシアチブは、インド政府のインド冷房行動計画(ICAP)と一致している。この計画では、2037年までに冷房需要を20~25%、冷蔵需要を25~30%削減することを目標としている。

「自治体公社と提携してから、私たちは大きな自信を得ることができ、役人の前で発言できるようになりました。私たちは認められています。電気メーターの設置に自治体事務所からの『異議なし証明書』が必要になったとき、私一人で自分の家だけでなく、他の人の家も設置することができました。」とニマベンさんは語った。(原文へ

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米国は荒廃したガザに生と死の両方をもたらす

【国連IPS=タリフ・ディーン】

バイデン政権の偽善ぶりは、荒廃したガザに食糧を投下する一方で、飢えと飢餓に苦しむパレスチナの市民を殺すためにミサイルや重砲でイスラエルを武装させ続けている政策に表れている。

ロ・カンナ下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)は先週、 「(パレスチナ人への)援助と、食糧輸送車を爆撃する武器をイスラエルに与えることを、同時に行うことはできない。」と語った。

そしてニューヨーク・タイムズ紙は、 「ガザの上空から、アメリカの爆弾とアメリカの食料パレットが落下し、死と生を同時に届けている。」と報じた。

ジャダィーヤ紙の共同編集者であり、独立調査機関の紛争人道研究センター(本部カタール)で客員研究員を務めるムイン・ラバニ氏は、米国がガザ地区の包囲されたパレスチナ人住民に形ばかりの援助を行っていることには、相互に関連したいくつかの側面があると語った。

そのひとつは、空中投下や移動式桟橋の計画などは、イスラエルのガザ地区に対する中世的な包囲を含む虐殺的攻撃への米国の積極的な関与や共謀から監視の目をそらすことを意図した、いわば見せかけの演出であるということだ。

「現在の危機は、イスラエルが米国に並々ならぬ依存を抱いていること、そして米国の支援なしには、持続的な軍事作戦を実施したり、説明責任を回避したりすることができないことを示している。しかし米国は、イスラエルに対して、大量殺戮的な猛攻撃を止めることも、飢饉や疫病などの発生を明確に意図した包囲を止めることも指示しないことを方針としている。」と、ラバニ氏は語った。

ラバニ氏は、「こうした芝居じみた空中投下は、イスラエルの入植者4人を制裁することで、ヨルダン川西岸の入植地拡大というイスラエルの国策に反対するイメージを広めようとした最近の決定と同様、見せかけのものだ。」と指摘したうえで、「米国がガザ地区のパレスチナ住民に提供したパンと爆弾の比率を計算すれば、米国の意図、優先順位、嗜好についてすべてわかる。」と語った。

IPSに寄稿したアロン・ベン=ミール博士は、国際関係学の教授を退任し、最近ではニューヨーク大学のグローバル・アフェアーズ・センターで教鞭を執っている。イスラエルの安全保障上のニーズを支援する一方で、パレスチナ人への人道支援も行うという二重のアプローチは、この地域における利害のバランスを取るという米国の広範な外交努力の一環である。

しかし、米国はイスラエルの自衛権を支持することで地域の安全保障を推進する一方で、パレスチナ人の人道的ニーズを擁護し、それに基づいて行動するという努力は、バイデン大統領にジレンマをもたらす。

「バイデン政権は、ネタニヤフ首相に政策を変更させるために、直接的な手段に訴えなければならないかもしれない。」とミール博士は付け加えた。

Donald Trump/ The White House
Donald Trump/ The White House

「11月に予定されている米国大統領選挙が、ネタニヤフ首相の戦略に一役買っていることに注目すべきだ。この秋の選挙でドナルド・トランプ候補に勝ってほしいと思っている人が世界に2人いるとすれば、1人目はトランプ氏自身、2人目はネタニヤフ首相だ。彼はバイデン大統領の再選を弱体化させるために全力を尽くすだろう。」

ネタニヤフ首相は、バイデン大統領が、何万人ものパレスチナ人が死亡しているにもかかわらず、イスラエルを揺るぎなく支持していることに反対する多くの若い有権者だけでなく、一部の議会民主党議員からも激しく批判されていることに喝采を送っている。彼は、自身の利益のためになる限り、戦争を長引かせ、再選キャンペーンに着手しているバイデンを政治的に弱体化させようとするだろう。

「バイデン大統領は、ネタニヤフ首相にアジェンダを設定させるべきではない。イスラエルの国家安全保障に対する米国のコミットメントは揺るぎないが、米政権はイスラエル国家と、根本的な意見の相違がある現在のネタニヤフ政権とを区別していることを、イスラエル国民に警告する決定的な措置を今取らなければならない。」と、国際交渉と中東研究のコースで教鞭をとったベン・ミール博士は語った。

ラバニ氏はさらに詳しく説明し、(援助物資の)空中投下についてコメントしたすべての専門家や機関は例外なく、この手段では、米国とイスラエルがガザ地区に作り出した人道的な事態に対処することは不可能であり、既に存在している陸路を通じた援助で対処できると結論付けていると述べた。

「陸路を通じた援助の再会であれば、ホワイトハウスからイスラエル政府に電話をかけるだけで済む。ワシントンはこの選択肢を追求しないという政策決定を下したのだ。」

第二に、これらの見せかけは、イスラエルのガザ地区に対する大量虐殺的な猛攻撃を正当化するためのものである。11月の一時休戦は、アントニー・ブリンケン米国務長官の言葉を借りれば、イスラエルの戦争に対する西側の支持を維持し、昨年12月初旬に戦争を再開・激化させるために必要だったのだ。

「以上のことから、パレスチナ人たちにとっては、このような空中投下はない方がよい。特に、少なくとも5人がすでに空中投下によって死亡しているのだから。」とラバニ氏は語った。

一方、ヨハネスブルグを拠点とする市民社会国際連合(CIVICUS)は、3月13日に発表した第13回年次報告書『市民社会の現状』において、「2023年にルールに基づく国際秩序を弱体化させ、人権の促進や世界で最も破壊的な戦争を解決することを難しくしているのは、強力な国々による偽善である。」と指摘し、これらの強国がいかに選択的に国際法を尊重し、同盟国を庇い、 敵国を非難しているかを詳述した。

最も露骨な例は、ロシアの侵攻に対してウクライナ防衛に駆けつけながら、イスラエルによるガザの市民への攻撃を支持した国々である。

「世界中の軍隊、反乱軍、民兵が2023年におぞましい人権侵害を行ったのは、二重基準だらけの国際システムのおかげで逃げおおせるとわかっていたからです。」と、CIVICUSのエビデンス・エンゲージメント担当のマンディープ・ティワナ最高責任者は語った。

「国連安全保障理事会を手始めに、人々を意思決定の中心に据えるグローバル・ガバナンス改革が必要です。」とティワナ氏は語った。

ガザでの死者が31,000人を超えたというガザ保健省の報告について問われたステファン・デュジャリック国連報道官は、3月13日の記者会見で、「またも悲惨な犠牲者数が明らかになった。このまま手をこまねいて事態が改善するのを傍観していないことを望む。」と語った。

「ガザの市民が苦しみから解放され、食料を手に入れ、必要な基本的サービスを受けられるようにするためだ。

「私たちが今一度求めているのは、人道的な即時停戦である。つまり、必要な人道的アクセスを確保し、必要な規模の人道支援活動を行えるようにすること、そしてガザの市民が苦しみから解放され、 食料を入手し、必要な基本的サービスを 受けられるようにすること、そして、ガザで拘束されているイスラエル人その他の人質が直ちに解放されるようにすることだ。」

一方、ガザでの人道的大惨事が続く中、バーニー・サンダース上院議員、クリス・ヴァン・ホーレン上院議員、ジェフ・バークレー上院議員、および民主党の同僚議員5名はジョー・バイデン大統領に書簡を送り、ネタニヤフ首相に対し、ガザへの人道援助アクセスを制限することをやめさせるか、イスラエルへの米軍援助を没収するか、連邦法を執行するよう求めた。

Photo: US President Joe Biden. Source: The Conversation.
Photo: US President Joe Biden. Source: The Conversation.

書簡の中で上院議員たちは、ネタニヤフ首相によるガザでの米国の人道的活動への干渉は、人道援助回廊法としても知られる1961年外国援助法第6201条に違反することを明らかにした。

この法律は以下のように規定している。 サンダース上院議員の事務所からのプレスリリースによると、「この章または武器輸出管理法の下で、いかなる国に対しても、その国の政府が米国人道援助の輸送または配達を直接的または間接的に禁止または制限していることが大統領に知られた場合、援助は提供されない。」

バイデン大統領に対し、上院議員たちは次のように書いた。「公的な報告やあなた自身の発言によれば、ネタニヤフ政権はこの法律に違反している。この現実を踏まえ、我々はネタニヤフ政権に対し、人道的アクセスを即座に劇的に拡大し、ガザ全域への安全な援助物資の輸送を促進しなければ、米国の現行法で規定されているように、深刻な結果を招くことを明確にするよう強く求める。米国は、米国の人道支援を妨害するいかなる国にも軍事援助を提供すべきではない。」

「連邦法は明確であり、ガザ危機の緊急性と、ネタニヤフ首相がこの問題に関する米国の懸念に対処することを繰り返し拒否していることを考えると、同首相の政策変更を確実にするために、早急な行動が必要である。」(原文へ

INPS Japan

*INPS Japanでは、ガザ紛争のように複雑な背景を持つ現在進行中の戦争を分析するにあたって、当事国を含む様々な国の記者や国際機関の専門家らによる視点を紹介しています。

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国連の2030年期限までに児童婚がなくなる可能性は低い

【国連IPS=ナイェマ・ヌサラット】

「今は結婚したくありません。私には長い人生と夢が目の前にあるのだから…。」バングラデシュに暮らす14歳の少女は、結婚する準備ができていないことを両親に告げた。

国連の持続可能な開発目標(SDG5.3)は、2030年までに児童婚をなくすことを目標としている。国連児童機関(ユニセフ)が昨年6月に発表した報告書によると、世界では現在生存している6億5000万人の少女と女性が18歳になる前に結婚している。

ユニセフの上級顧問兼有害文化的慣行防止コーディネーターのナンカリ・マクスード氏はIPSの取材に対して、「証拠によれば、児童婚は特定の集団や文化的規範に限定されるものではなく、むしろ構造的・社会文化的要因(貧困、教育的・経済的機会の欠如、社会的期待、少女や女性に対する差別、制限的な性別役割分担、少女の保護に関する信念、代替手段に対する認識やアクセスの低さ等)の幅広い組み合わせなのです。」と語った。

また、多くの家庭では、女児は家計の重荷と認識されており、児童婚は、貧しい家庭にとって最良の選択肢と見なされることが少なくない。「状況によっては、児童婚は女児を守りながら家族の負担を減らし、名誉を守る道とみなされています。児童婚の原動力となっている構造的・社会文化的な根本原因が取り除かれれば、児童婚は減少し、最終的にはこの慣習も終わることを、様々な証拠が示唆しています。」とマクスード氏は語った。

ジェンダー平等と女性のエンパワーメントを目的とする国連機関UN Womenの広報担当者はIPSの取材に対して、人道危機が発生している環境では、治安の悪化により児童婚がさらに悪化する可能性があると語った。

「例えば、中東・北アフリカ地域における児童婚の普及率は世界平均に近く、若い女性の約5人に1人が18歳になる前に結婚しています。これは、過去25年間における進展を示していますが、減少の速度は過去10年間で停滞しているように見えます。」

また、特定の紛争地域では、進展が逆転している。「(内戦が続く)シリアやイエメンなどでは、特に悲惨な経済状況において、紛争が否定的な対処メカニズムを生み出すことが多く、それが子どもの結婚率を高める可能性があるため、(進展が)大幅に逆転しています。」

ユニセフによると、近年、児童婚の減少率は世界的に進展を見せているが、南アジアでは、インドでの減少が大きく寄与し、50%近くから30%まで減少している。

ユニセフのマクスード氏は、 「子どもの頃に結婚した女性の割合は、この10年間で15%減少し、4人に1人から5人に1人になりました。」と指摘した。

世界全体では、「子ども時代に結婚する女児の総数は、現在、年間1200万人と推定されている。ユニセフとUN Womenは、「これは、10年前の世界的な水準で予想されていたよりも、2500万件減少していることを意味します」と指摘した。

Credit: United Nations
Credit: United Nations

マクスード氏は、アフリカにおける子どもの花嫁率の進展について語る一方で、「データはアフリカ大陸における進展の可能性も示している」と指摘した。「例えば、かつてサハラ以南のアフリカで児童婚が多い国のトップ5に入っていたエチオピアでは、過去10年間で児童婚率が3分の1に減少しています。」

児童婚のような有害な慣行がある国々は、2030年までに児童婚をなくすというSDGsの目標(SDGs 5.3)に沿うために、責任を優先する必要がある。

マクスード氏は、「SDGs達成の説明責任は各国にあり、児童婚のような有害な慣行を終わらせることを優先する責任があります。適切な投資と加速度的な進展があれば、SDGsの目標は達成可能です。」と語った。

一方、ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)のヘザー・バー氏は、「2030年までにすべての児童婚を終わらせるという国連の目標が達成できる可能性はおそらく低い。」と指摘したうえで、「この目標はすでに児童婚の削減に大きく貢献しており、今後もそうなると思います。しかし、2030年までにすべての児童婚を終わらせるという目標は、おそらく完全には達成できないでしょう。まだ道半ばであり、児童婚を合法的または違法に容認し続けている国が多すぎるからです。」と語った。

UN Womenの広報担当者は、SDGsの目標達成の可能性についての見解を語った。過去10年間に大きな進展が見られたにもかかわらず、どの地域も2030年までに児童婚を根絶するめどが立っていないようだ。

「現在の児童婚の減少率は、SDGsの野心的な目標を達成するには不十分であるため、大幅な加速が必要です。」「過去10年間の児童婚の減少率は年率1.9%であったが、2030年までに児童婚をなくすというSDGsの目標を達成するには、23%でなければなりません。1990年からの進展率が改善されなければ、全世界で児童婚をなくすには100年近くかかり、2030年までに1億5000万人以上の女児が結婚することになります。」

「過去10年間の減少速度が速まったとしても、児童婚をなくすには50年かかります。したがって、進展を大幅に加速させなければならなりません。」

「しかし、持続可能な開発目標で定められた目標である2030年までに児童婚をなくすためには、過去10年間の12倍のスピードで進展を加速させなければなりません。進展を加速させなければ、人口増加により、2030年までにさらに1億5000万人以上の女子が18歳の誕生日を迎える前に結婚することになります。」

UN Womenは、様々な調査によると、ジェンダー平等の改善が最大の原動力の一つであることを強調している。「残っている主な課題の中には、この有害な慣習に取り組む上で、ジェンダーを変革するアプローチが欠けていることがあります。証拠は、結婚の年齢を遅らせるだけでは不十分であることを示しています。」

「ジェンダー平等は、少女や女性の主体性を促進し、結婚や社会に受け継がれるパワー・ダイナミクスに対処し、ジェンダーの役割をめぐる態度、規範、行動を転換することに重点を置くなど、総合的に推進される必要があります。」

ジェンダー平等を促進することの重要性については、バー氏も同意見である。「世界各国における児童婚に関する私たちの調査から、児童婚の主な原因は単にジェンダーの不平等であると確信しました。」とバー氏は語った。

UN Womenのスポークスパーソンは、さらに重要な要因を指摘した。「伝統的な児童婚や強制結婚の理解と並んで、同性婚、同棲、結婚につながる思春期の妊娠が存在することを示す、結婚パターンの変化が増えています。」「適切なジェンダー・アプローチでは、早期結婚や自発的な結婚も、それが女児に与える不釣り合いな影響や、教育的・経済的機会に対する障壁を考えると、有害な慣行であることを認識する必要があります。」

UN Womenによれば、児童婚に対応する教育的介入には、女性の経済的エンパワーメント・アプローチを統合することが極めて重要である。貧困は唯一の要因ではないが、貧困は依然として児童婚、早期結婚、強制結婚の主要な要因であり、少女や若い女性に不釣り合いな影響を与え、ジェンダーに深く影響された慣行であり続けている。

「少女と若い女性が自らの声を上げ、自らの選択をし、自らの主体性を発揮できるようにするためには、児童婚、早期結婚、強制結婚のリスクに晒されている少女と若い女性のための技能や社会的保護を促進することによって、若い女性の経済的機会を広げることを支援する、システム全体とライフサイクル全体のアプローチを確実に実施することが極めて重要である。」

SDGs Goal No. 5
SDGs Goal No. 5

UN Womenの広報担当者は、さらに重要な要因を指摘して、「伝統的な児童婚や強制結婚の理解と並んで、同性婚、同棲、結婚につながる思春期の妊娠が存在することを示す、結婚パターンの変化が増えています。適切なジェンダー・アプローチでは、早期結婚や自発的な結婚も、それが女児に与える不釣り合いな影響や、教育的・経済的機会に対する障壁を考えると、有害な慣行であることを認識する必要があります。」と語った。

UN Womenによれば、児童婚に対応する教育的介入には、女性の経済的エンパワーメント・アプローチを統合することが極めて重要である。貧困は唯一の要因ではないが、貧困は依然として児童婚、早期結婚、強制結婚の主要な要因であり、少女や若い女性に不釣り合いな影響を与え、ジェンダーに深く影響された慣行であり続けている。

「少女と若い女性が自らの声を上げ、自らの選択をし、自らの主体性を発揮できるようにするためには、児童婚、早期結婚、強制結婚のリスクにさらされている少女と若い女性のための技能や社会的保護を促進することによって、若い女性の経済的機会を広げることを支援する、システム全体とライフサイクル全体のアプローチを確実に実施することが極めて重要である。」(原文へ

INPS Japan/ IPS UN Bureau

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2024年、AIに期待すること

【カトマンズNepali Times=ナレッシュ・ネワール】

人工知能(AI)はもはや誇大広告ではなく、現実のものとなり、コンテンツクリエイターがよりクリエイティブになるための適切な時期が到来している。

2023年のニュースは、AIがわずか1年で驚異的なスピードで発達するさまが話題となった。AIの革新が日常の雑事に解決策を提供する一方で、私たちを危険な新境地へと導いているのだ。私のようなギークや技術フリークは、この1年でAIの応用が加速するのを夢中になって見てみてきた。私がAIアプリに夢中になり、『ネパール・タイムズ』の一面に『Ayo AI』と題したレポートを書いたのは2023年3月のことだった。

先週、同紙はデジタル・アーティストのアシム・シャクヤによるAI支援アートワーク(下の写真)を掲載し、既存の創造的プロセスを強化する巨大な可能性を示した。

The Nepali Times
The Nepali Times

AIのノウハウを把握し始めた頃は、ジェネレーティブAIアプリを使い続けるとは思ってもみなかったが、夢中になってしまった。Open AIのChatGPT3.5と他の2つの画像ジェネレーターから、今では1,000以上のアプリを試している。それでも、現在利用可能なAIアプリという大海のほんの一滴にすぎない。

本稿でAyo AIを取り上げた5月には、AIアプリの数は約640個だった。木曜日に報道した時点では、9,000のタスクに対して10,842の関連AIがあった。これらのAIがワークフローに直接組み込まれれば、5,000の職種に影響を与える可能性がある。

The Nepali Times
The Nepali Times

今のところ、まだその証拠はない。世界ナンバーワンのAIアグリゲーターである『There is an AI for that(そのためのAIがある)』によると、ジョブホルダーのうち、影響を受けるのは98%がコミュニケーション・マネージャーなど、この分野の人々だという。しかし、それはあくまで意見であり、まだ事実ではない。

コンテンツクリエイターにとって、2023年はほとんどすべてのタスクに対応するジェネレーティブAIアプリが登場する素晴らしい年になった。これらは、アイデア、ストーリー、ナレーション、画像、イラスト、ウェブサイト、インフォグラフィック・デザイン、アニメーション、音楽、ビデオを生成するために、いくつかのテキストプロンプトだけで行うことができる。

ChatGPTは、もはやチャットボットの主流ではないが、今でも最高級のチャットボットの一つだ。7月にリリースされたAnthropicのClaude-2を使い始めるまでは、私のお気に入りだった。Claude-2は200,000トークンを提供し、75,000ワードまでの大きな文書をアップロードして、箇条書きに要約してテキストを簡素化することができる。このレビューをまとめるのに使うこともできるが、昔ながらの方法でやっている。

High resolution AI-generated image of a Nepali child walking with baby rhino. The only problem is that AI didn’t seem to be able to tell the difference between an Asiatic and African rhino. All prompts: NARESH NEWAR

最大のセンセーションはジェミニAIで、グーグル・ディープマインドによって開発された最も有能なAIモデルと考えられており、コミュニケーションをとり、人間のようなテキストを生成することができる。ジェミニ・プロ・ビジョンは、画像推論タスクを通じてあらゆる画像を解釈することができ、画像を説明し、キャプションを書く能力を持っている。その最大の特徴は、写真やアートワークがオリジナルかAIが生成したものかを識別することだ。

AIを搭載した画像ジェネレーターは大きく進歩し、写真やアートにリアリズムを生み出す上で大きな飛躍を遂げた。動画はまた別のレベルに進んでいる。

例えば、InVideoは、テキストプロンプトだけで、完全なスクリプトを書き、ナレーションを入れ、900万のビデオストックから選択したビジュアルを作成することで、ビデオ全体を作成することができる。ジェネレーティブAIの大きなマイルストーンとなるのが、テキストプロンプトだけで驚くべきビジュアルを生成するランウェイだ。

ランウェイの最大のライバルとなりうるもうひとつの新機能はPikaで、ウェブベースのバージョンは現在利用可能だが、長い順番待ちリストがある。(テキストからビデオへ、ビデオからビデオへ、そしてユーザーはビデオをアップスケールし、デュレーションを追加し、アウトペインティング、インペインティング、キャンバス機能を持つことができる。

AIが生成する音楽もまた、オーディオ生成ツールやプラットフォームの一部として勢いを増しており、大手テック企業によって多大な投資が行われている。Suno AIは、マサチューセッツ州ケンブリッジでAIの専門家と提携したミュージシャンのグループによって始められた、これまでで最高の音楽アプリと考えられている。

12月にはマイクロソフトと提携し、同社のCopilotにプラグインとしてSuno AIを統合した。フェイスブックやグーグルも他の音楽企業と提携し、独自のAI音楽音声生成アプリを開発している。

The Nepali Times
Water colour of rural Nepal, showing how AIs now have perfected hues and textures without the need for colour correction.

AIはもはや誇大広告ではなく、現実のものとなっている。今こそ、このビジネスに参入すべき時なのだ。アドビ製品やアフィニティのようなデザインソフトの技術的な知識やスキルを持つコンテンツ制作者にとって、AIは仕事を豊かにし、生産性や費用対効果を高め、創意工夫を強化する。警告:テクニックをマスターし、完璧なコンテンツを作るには時間がかかる。

 しかし、AIが生成したコンテンツは、人々が考えているほどまだ有利とは言えない。顧客はまだオリジナルの文章やアート、写真や動画を好む。クリエイターにとって最大のプラットフォームであるYouTubeは、オリジナルのコンテンツを奨励している。

ユーチューブのユーザーは、AIで作られた偽のコンテンツを見るのに時間を費やしたくないため、AIが生成したコンテンツに批判的なことが多い。私も一度、自分のYouTubeチャンネルで試してみたが、多くの人が怒りのメッセージを書き、彼らは不快に感じたようだ。

Snow leopard in the Nepal Himalaya.

今のところ、ユーチューブで本当に売れているAIコンテンツは、AIの最新アップデートに関するニュース、AIを使って収入を得る方法に関するクリックベイトタイトルの動画、新しいAIアプリを紹介する動画、AIの専門家へのインタビュー、そして特にAIが人類を滅ぼすという恐怖を煽るニュースだけだ。

インスタグラムは、独創的でクリエイティブなコンテンツクリエイターにとって人気のあるプラットフォームであり、今や数百万人のクリエイターで賑わっている。しかし、AIが生成したコンテンツは、オリジナルの投稿ほど良い反応を得られていない。

AIがクリエイティブ分野の人々のキャリアを破壊するのではないかという懸念が喧伝されているが、AI生成ツールは、デザイナー、コンテンツライター、写真家、ビデオグラファー、ペイントアーティストといったプロのコンテンツクリエイターをダメにしてはいない。

AIジェネレイティブ・ツールの進化が加速しているのは事実であり、さらに進化したジェネレイティブAIアプリが登場することは予測できる。コンテンツ制作の時代が到来し、AIアプリは倫理的かつ透明性をもって使用されれば、商業的にも社会的にも受け入れられるかもしれない。

勤勉なクリエイティブ・プロフェッショナルにとって、テクノロジーの変革が彼らの芸術的創造に対する脅威や挑戦であったことはない。ジェネレーティブAIが脅威であるというこの議論、いや思い込みは誇張されている。多くのクリエイティブな人々がAI革命に参加し、オリジナルの芸術的創作物を強化している。  (原文へ

INPS Japan/Nepali Times

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この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています。

【Global Outlook=ジョン・R・キャンベル】

太平洋島嶼国および地域(PICTs)は、気候変動の最前線にいると広く描写され、 従って気候変動の影響に極めて脆弱であると見なされてきた。しかし、気候変動によってPICTsが直面している状況を詳細に調査すると、状況はそれほど単純ではないことが分かる。確かにPICTsは、海面上昇(海岸浸食や浸水を伴う)、熱帯低気圧の強度増大、気温上昇、サンゴ礁の劣化、海洋酸性化の影響、極端な降雨現象とそれに伴う洪水の程度と頻度の増大、それとは逆に干ばつの増加と深刻化、疾病媒介生物の変化といった、気候変動の物理的影響に極めてさらされやすいと思われる。これらは、太平洋諸島民の極めて深刻な懸念となっている。(

その結果、気候変動によって太平洋諸国は存亡の危機にあると言われ、住民は故郷を捨て、「より安全な」場所に移住せざるを得なくなるかもしれないとされてきた。しかし、このナラティブには異論がある。特に環礁島の人々について、国際メディアや外部の観測者によって描かれた強制移住のシナリオには拒絶反応がある。自分たちの島が居住不可能になるという予測に抵抗する太平洋諸島民が増えている。彼らは、何が自分たちの故郷を居住可能にするかは自分たちが知っており、西洋人の科学者たちにそれを教えてもらう必要はないという、全くもって当然の事実を指摘している。そのような科学者の大部分は、土地(そして、そこにいる全ての生き物と無生物)と人間がまごうことなく一体のものとして結び付いているという太平洋諸島民の関係性の存在論をほとんど理解していない。ヴァヌア(vanua)、ウェヌア(whenua)、フェヌア(fenua)、フォヌア(fonua)、ホヌア(honua)といった言葉(オーストロネシア祖語の「バヌア(*banua)」から派生した語)は、特にポリネシアにおいてこの絶対的な結び付きを表しているが、太平洋の他の多くの場所においてもこの関係性はほぼ同じである。故郷の土地に背を向けることはこの結び付きを断つことであり、彼らが慣習的に所有してきた土地がもたらす居住性の関係的要素は、他のいかなる場所ももたらすことができないだろう。気候変動の影響がひどくなって土地が物質的な生命維持基盤を提供できなくなったとしたら、その土地で死ぬ覚悟はできていると、太平洋の人々が口にするのは珍しいことではない。

精神的な観点から、太平洋の人々は、自分たちがこれほどまでに深く愛し、自分たちの一部となっている場所からなぜ去らなければいけないのかと問うている。確かに、太平洋の人々は盛んに移住し、アオテアロア・ニュージーランド、オーストラリア、米国に住む大勢のディアスポラがいる。しかし、移住の重要な基盤は、帰るべき「バヌア」がいつもそこにあると知っていることである。もはやそうではなくなったとき、移住は、はるかに問題の多い選択肢となる。

太平洋の気候移民あるいは気候難民というナラティブに関するもう一つの重要な問題は、第一に気候変動に対処できない人々の問題、第二に移住先国の人口に脅威をもたらすかもしれないという、社会構造への影響である。アオテアロア・ニュージーランドでは人口の8%が太平洋の民族集団に属しており、この国が気候移民の移住先となるのは自然な帰結である。しかし、太平洋の人々に対する社会全体の、そして個人レベルでの人種差別は、国に対する彼らの経済的、社会的、文化的貢献にもかかわらず、依然として深刻である。

気候変動による移民や難民という概念に伴う難しさの一部は、太平洋諸島とその住民に関連付けられる脆弱性という図式である。実際には、異常気象などの環境変動性が非常に高く、島での生活という限られた制約にも関わらず、伝統的に太平洋の人々は驚くほどレジリエントだった。植民地化政策とキリスト教の宣教活動によって、レジリエンスを弱体化させるプロセスが始まったが、資本主義の導入、より近年ではその現代版である新自由主義とグローバリゼーションが、それまで持続可能な社会経済システムに寄与してきた経済的、社会的、文化的実践にさらなる影響を及ぼしたのである。

気候変動は、太平洋諸島のコミュニティーに困難をもたらしつつあり、今後も続くだろう。以前なら、彼らはそれに十分対処できていたかもしれない。実際、相当の困難にも彼らは対処し続けることができるだろう。彼らは、大きな気候危機(存亡の危機と言う者もいる)に直面しているが、彼らはその原因をほとんど作っていない。彼らの温室効果ガス(GHG)排出量はごくわずかであり、1人当たりで考えればさらに少ない。そこにPICTsのジレンマがある。開発への野心は、気候変動が島の生態系に及ぼした影響に妨げられる恐れがある。努力のほとんどは、環境劣化に直面して、経済的、社会的、文化的な現状を維持するために注がれることになるだろう。一部の国の政府は、国民が危険を逃れて移住する良い機会を模索している。COPのような国際フォーラムに出席した際には、彼らは、気候変動によって直面している存亡の危機を強調している。資金提供者にとっては、気候変動による移住は現地での適応策よりも安上がりである。しかし、太平洋の人々が望まないのなら、なぜ移住しなければならないのだろうか? そのため、太平洋島嶼国の政府は、自分たちを見舞っている危機が存亡にかかわるものであることに強く抗議すると同時に、自分たちの土地で暮らす権利があるはずだという要求を改めて主張している。彼らの世界観においては、土地は人間の一部であり、人間は土地の一部なのだ。

来るCOP28では、これまでよりはるかに有意義な温室効果ガス排出量削減策を講じるとともに、PICTsが現地での有効な適応策を策定して、故郷に留まりたいと願う人が安心して留まることができるようにするため、財政支援を行うことが重要である。そうでなければ、ほとんど何も変わらないだろう。また1年が過ぎ、COPが終わり、温室効果ガス排出量を削減する意志は低調なままで、島嶼国の損失と損害を補償しようという気持ちは生まれないだろう。

ジョン・R・キャンベルはニュージーランド在住。気候変動への適応と災害リスク軽減に関わる人間的側面(環境移住を含む)について研究している。

INPS Japan

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|視点|「人類が直面している安保上の問題は気候変動と重度の病気:世界の指導者たちよ、立ち上がれ」(ジョサイア・V・バイニマラマ フィジー共和国首相)

労働移住と気候正義?

世界の女性の10人に1人が極貧状態にある

【ニューヨークIDN=J.ナストラニス】

コミュニティに甚大な圧力をかける複数の危機に直面する世界において、ジェンダー平等の達成はこれまで以上に不可欠である。生活のあらゆる場面で女性と女児の権利を確保することが、豊かで公正な経済と健全な地球を次世代に残す唯一の方法だ。

ジェンダー平等と女性のエンパワーメントを専門とする国連機関であるUN Womenによると、2030年までにジェンダー平等を達成するための重要な課題の一つは、憂慮すべき資金不足である。

国際女性デーに際し、UN Womenは、経済成長を加速させ、より豊かで公平な社会を構築する最善の方法として、「女性への投資、進歩の加速」を世界に呼びかけた。

戦争や危機がジェンダー平等への数十年にわたる投資の成果を侵食している今、これは特に緊急の課題である。中東からハイチ、スーダン、ミャンマー、ウクライナ、アフガニスタン、そしてその他の地域に至るまで、女性は自分たちが引き起こしたのではない紛争によって最も高い代償を払っている。平和の必要性はかつてないほど切迫している。

気候変動は根強い貧困格差を加速させている。希少な資源をめぐる競争が激化するにつれ、生活は脅かされ、社会は二極化し、女性の負担はますます重くなる:

世界の女性の10人に1人が極度の貧困状態にある。

紛争地域で暮らす女性と女児の数は2017年から倍増し、現在では6億1400万人以上の女性と女児が紛争地域で暮らしている。紛争地域では、女性が極度の貧困の中で暮らす可能性が7.7倍高い。

気候変動により、2030年までに飢餓に苦しむ女性と女児は2億3600万人増加すると言われており、これは男性(1億3100万人)の2倍である。

働き盛りの年齢で労働力となっている女性は、男性の90%に対し、61%に過ぎない。

ジェンダー平等の配当を逃す

「男女平等の配当を逃し続けるわけにはいかない。政府が教育と家族計画、公正で平等な賃金、社会的給付の拡充を優先すれば、1億人以上の女性と女児が貧困から抜け出すことができます。」とUN Womenは指摘している。

デイケアや高齢者ケアなどのケアサービスに投資すれば、2035年までに約3億人の雇用を創出できる。ジェンダーの雇用格差を解消すれば、すべての地域で一人当たりの国内総生産を20%押し上げることができる。

現在の現実は、これにはほど遠い。ジェンダー平等に特化したプログラムは、政府開発援助のわずか4%に過ぎない。ジェンダー平等と女性のエンパワーメントを達成するためには、開発途上国で年間3600億米ドルの追加予算が必要である。例えば、これは2022年に世界で軍事費に使われる2兆2000億米ドルの5分の1以下である。

SDGs Goal No. 1
SDGs Goal No. 1

「投資が必要な分野は明確であり、理解されている。何よりもまず、平和への投資が必要です。それ以上に必要な投資としては、女性と女児の権利を向上させる法律と政策、ジェンダー平等の障壁となる社会規範の変革、土地、財産、医療、教育、ディーセント・ワークへの女性のアクセスの保証、あらゆるレベルにおける女性グループのネットワークへの資金援助などがある。”

UN Womenはまた、2024年3月11日にニューヨークで始まる女性の地位委員会において、ジェンダー平等に関する公約を資源でバックアップするよう加盟国に呼びかけている。「世界の指導者たちは、ジェンダー平等、女性のエンパワーメント、女性組織に資金を提供する極めて重要な必要性を反映した、具体的かつ進歩的な合意結論を策定するこの機会を手にしている。彼らは、平等、私たちの地球、そして持続可能な開発目標のために、この機会をつかまなければなりません。」とUN Womenは宣言している。(原文へ

INPS Japan

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2024年国際女性デー

【ニューヨーク/東京INPS Japan/IPS NORAM】

3月8日、私たちは国際女性デーを祝います。

世界中の女性の回復力、功績、可能性を称える日です。

世界は地政学的紛争、貧困、気候変動といった危機に直面しています。

これらは、世界のあらゆる場所で女性の苦境を悪化させています。

さらに、グローバルな経済・金融システムはジェンダー不平等を永続させています。

世界の労働力人口に占める生産年齢女性の割合は50%未満です。

女性は男性の約3倍の時間を無償の家事労働に費やしている。

世界全体では、有給労働に従事する女性の平均所得は男性より20%低い。

この格差が35%に跳ね上がる国もあります。

労働人口の半数以上の女性が非正規経済に従事しており、多くの場合、不安定な状況で弱い立場に置かれています。

女性による無償の介護労働は、評価すればGDPの40%以上を占めます。

現在の傾向が続けば、2030年までに3億4,200万人以上の女性と女児が極度の貧困状態に陥る可能性があります。

皮肉なことに、女性への投資という強力な解決策があります。

女性の権利を投資問題として認識することは、変革的な解決策を生み出すために極めて重要です。

女性に投資することで、貧困のシステム的な連鎖から抜け出し、真に繁栄することが可能になります。

男女平等を達成するためには、さらに年間3600億ドルが必要です。

しかし、雇用における男女格差を解消すれば、1人当たりGDPを20%押し上げることができます。

介護の格差を解消し、まともな雇用を伴うサービスを拡大すれば、2035年までに約3億人の雇用を生み出すことができます。

今年の国際女性デーは、男女平等を擁護しましょう。「女性に投資しましょう: 進歩を加速させましょう。」(原文へ

INPS Japan/ IPS UN Bureau

IPS News Agency

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