ホーム ブログ ページ 234

|世界市民|「私から私たちへ」を平和につなげる

【国連IPS=ヨエル・イェーガー

もしシリコンバレーが「平和の文化」のために存在していたとしたならば、産業の次なる大再編の担い手として、ほぼ間違いなく世界市民に目を向けるだろう。

「世界市民、すなわち、人類は一つであるという考え方は、『平和の文化』の中核的な要素です。」と述べるのは、元国連事務次長・高等代表のアンワルル・チョウドリ大使である。同氏は、9月9日に開催された「平和の文化」について討論するハイレベル・フォーラム(193加盟国、国連諸機関、市民社会、メディア、民間セクターなどが参加)において、IPSの取材に答えた。

終日開催された今年のハイレベル・フォーラムでは、「平和の文化に向けた女性や若者の役割と貢献」と「平和の文化への道筋としての世界市民」をテーマとした双方向型のパネル討論などが開催された。

チョウドリ大使は、「平和の文化」を国連の課題とする動きを90年代後半に主導した。「平和の文化」の概念は、国連教育科学文化機関(ユネスコ)において進化を遂げていたが、チョウドリ大使は、より高いレベルで討議されるべき問題だと感じていた。

「国連は、従来の平和維持活動から『個人とコミュニティーの変革に焦点をあてる』姿勢へと『ギアをシフト(=態度を変える)』する必要がありました。」とチョウドリ大使はIPSの取材に対して語った。

1999年、チョウドリ大使の働きかけもあって、国連総会は「平和の文化に関する宣言及び行動計画」と題する画期的な決議53/243を採択した。同決議には、平和の文化は、非暴力、領土の一体性、人権、開発への権利、表現の自由、男女平等の推進を基礎にした生活のあり方であると明記されている。

Photo: The UN General Assembly Hall. Credit: Manuel Elias/UN.
Photo: The UN General Assembly Hall. Credit: Manuel Elias/UN.

決議の第4条には、「すべてのレベルにおける教育は平和の文化を構築する主要な手段の一つである。」と明記されており、諸政府や市民社会、メディア、親や教師に対して、平和的な文化を推進するよう呼びかけている。

この1999年の決議は、2001年から10年には「世界の子どもたちのための平和の文化と非暴力の国際10年」に結実している。

この国連の10年は公式には終了しているが、決議53/243が採択されてから15年が経過した今日においても「平和の文化」は意義を保ち続けている。国連総会は、平和の文化構築に対する加盟国の意思を再確認するため、毎年この決議を採択している。

2012年と13年の過去2回のハイレベル・フォーラムの成功を受けて開催された今年の全日のイベントは、加盟国や国連機関、市民社会に対して、非暴力や協力、全ての人々にとっての尊厳をいかに促進できるかについて意見交換する機会を提供する場となった。

Ban Ki-moon/ UN Photo
Ban Ki-moon/ UN Photo

第3回「平和の文化」について討論するハイレベル・フォーラムは、潘基文事務総長の「平和の文化」を支持する以下の演説で始まった。

「私たちは、諸社会の間で、そして社会内において、文化的なリテラシーと文化外交の新しい形を必要としています。グローバルな連帯と世界市民性を深めるための教育カリキュラムを必要としているのです。…私は毎日のように、仲裁や紛争解決、平和構築、平和維持の新しい文化を築く必要性を目の当たりにしています。」

パネル討論では、平和の文化を実現するためのいくつかの鍵について話し合われた。

UNウイメン」のラクシュミ・プリ事務局長代理(国連事務次長補)は、平和の文化を構築し維持するうえでの女性の役割に焦点を当てた。

プリ事務局長代理は、「女性や母親、祖母、その他の家族の構成員は、しばしば子どもたちにとって最初の教育者となります。彼女たちは、若者に平和の価値を教える重要な役割を果たしてきましたし、またそうすることができるのです。」と指摘したうえで、「女性は紛争予防の主体とみなされねばなりません。」と語った。

パネリストらは、女性は平和構築の場でリーダーシップを発揮し解決策を打ち出すべきという点で一致した。

若者たちもまた、「平和の文化」を実現するうえで、重要な役割を果たす。

国連事務総長の青少年問題特使であるアフマド・アルヘンダウィ氏は、「若者は平和の主体になることができます。」と指摘したうえで、「人類で最大の人口比率を占める世代が、現代の重荷ではなく、機会となるようにするため、私たちは協力していかねばなりません。」と語った。

Ahmad Alhendawi, Secretary-General Ban Ki-moon’s first-ever Envoy on Youth
Ahmad Alhendawi, Secretary-General Ban Ki-moon’s first-ever Envoy on Youth

米平和研究所ジェンダー平和構築センターのキャサリン・キューナスト所長は、創造的でエネルギーに満ちた起業家精神を引き合いに出しながら「平和の文化」に関する新しい観点を提唱し、拍手喝采を受けた。

「私たちは、平和構築にインセンティブを与える必要があります。」とキューナスト所長は指摘したうえで、「まずは、平和の文化を最初の活動として位置づけるべきです。私たちに必要なのは、グローバルな問題解決に非暴力的なアプローチで臨んでいくためのシリコンバレーなのです。」と語った。

全米平和アカデミー(ニューヨーク)のドロシー・マーヴァー会長は、共有型経済やグローバル・コモンズ、バイオリージョン(生命地域)対話といった、世界市民の台頭の先駆けとなる、最新動向や概念について指摘した。

人間のコミュニティーとして、「私たちは『私』から『私たち』へというシフトを生み出しつつあります。」「世界市民は、『私から私たちへ』を平和につなげる道筋に他なりません。」とメイヤー会長は語った。

国連は世界市民や平和の文化を強力に支持しているが、そのメッセージを拡散するためにさらに多くのことができるはずだ、とチョウドリ大使は言う。

「国連は、これまで平和維持のハード面に焦点を当て、その資金の大半を投じてきましたが、今後は個人を平和と非暴力の主体に変えることに重点を置いていくべきです。」とチョウドリ大使は指摘したうえで、「教育インフラへ資金を投入するだけでは、正しいタイプの教育に資金が回るかどうかの保証がないため、十分ではありません。国連は、若者たちが世界市民になれるような教育システムを構築するために、世界各地のコミュニティーや社会ともっと協力していかなくてはなりません。ただしそれは、包括的なアプローチかつ、変革的な投資でなくてはなりません。」とチョウドリ大使は語った。

UN Photo
UN Photo

マーヴァー会長は発表の中で、「思考にはエネルギーが伴います。私たちは何であれ、焦点を当てようと選択したことについて、人生の中でより多くのものを手にするでしょう。」と所見を述べた。

平和の文化の支持者らは、この日のハイレベル・フォーラムで得たエネルギーやアイディアが人間社会に世界市民のメッセージを広げ、真の変革につながっていくことを願っている。(原文へ

翻訳=IPS Japan

関連記事:

世界市民教育に余地を与える持続可能な開発目標(SDGs)

勢力ます排外主義に国連が「平和の文化」を強調

|視点|カザフスタンはなぜ核兵器を廃絶したか(カイラト・アブドラフマノフ・カザフスタン国連大使)

0

【国連IPS=カイラト・アブドラフマノフ】

8月29日、「核実験に反対する国際デー」が制定されて5周年を迎えた。カザフスタンは1991年に独立を果たしたが、ヌルスルタン・ナザルバエフ大統領(当時はカザフソビエト社会主義共和国大統領)が同年打ち出した大統領令の一つが、当時世界第2位の規模であったセミパラチンスク核実験場の閉鎖を命じるものだった。

また当時のカザフスタンは、地球上のいかなる地点をも標的にできる110基を超える弾道ミサイルと1200発の核弾頭からなる世界第4位の核戦力を保持していたが、これも自発的に廃棄する決定を下した。

Address by His Excellency Nursultan Nazarbayev, President of the Republic of Kazakhstan
Address by His Excellency Nursultan Nazarbayev, President of the Republic of Kazakhstan

当時多くの人々が、カザフスタンのこの決断は、膨大な核戦力を維持管理する能力を持ち合わせていないからだと考えたようだ。しかしそれは事実ではない。なぜなら、我が国には当時もそし も、最高の技術専門家が揃っているからだ。

私たちにとって、核クラブ(=核保有諸国)から脱退するという当時の決断は、むしろ政治的意思の問題だった。なぜなら私たちは、人類と自然環境に想像を絶する破滅的な結果をもたらす核兵器の無益さ、それを実験し続けることの無益さを心の底から確信していたからだ。

セミパラチンスク核実験場が閉鎖されると、ネバダ(米国)、ノバヤゼムリャ(ロシア)、ロプノール(中国)、ムルロア(フランス領ポリネシア)等の世界各地の主要な核実験場の閉鎖がそれに続いた。

そこで国連総会は、2009年12月2日にカザフスタン政府の提案を受け、8月29日を「核実験に反対する国際デー」を宣言する決議64/25を全会一致で採択した。

an Ki-moon visited the Ground Zero of Semipalatinsk in April 2010/ UNDP
an Ki-moon visited the Ground Zero of Semipalatinsk in April 2010/ UNDP

潘基文国連事務総長は、2010年4月にセミパラチンスク核実験場跡のグラウンドゼロを訪れ、カザフスタン大統領の決断を大胆かつ前例のないものだったと称賛するとともに、世界の指導者に対してこの決断に続くよう強く訴えた。

ナザルバエフ大統領は当時の決断について、「23年前にカザフスタン国民が踏み出したこの歴史的な1歩は、人類の文明にとって重要な意義を持っており、その意義は今後数十年にわたって益々重要性を増していくだろう。」と語っている。

今日では、核実験を停止すれば(新型核兵器の開発が事実上不可能となるため)最終的に核兵器の廃絶に繋がること、従って、包括的核実験禁止条約を早期に発効させることの重要性が広く認識されている。

カザフスタンは同条約に最初に署名・批准した国の一つであり、核兵器の放棄に伴う利益を人間開発に転換したモデル国となってきた。とりわけ持続可能な開発に力点が置かれるポスト2015期においては、このモデルがますます重視されることになるだろう。

今日の国際社会においては、関連諸国の自由意思による合意に基づいて構築された核兵器禁止地域(下の世界地図のオレンジの部分:IPSJ)は、国際及び地域の平和と安全を強化し、核不拡散体制をより堅固なものとし、核軍縮という目的実現のために貢献するものと、認定されている。

確かに、国際社会の前途には、政治的な激変や障害が立ちはだかるかもしれないが、私たちは恒久的な平和と安全を追及していかなければならない。

毎年、国連総会第一委員会(国際平和を主要議題とし、軍縮と国際安全保障問題を主に取り扱う:IPSJ)では、核廃絶を支持し、核軍縮に関する公約の実施を加速するよう求める圧倒的多数の加盟国によって、多くの決議が採択されている。

また、核兵器禁止条約の締結を求める加盟国や様々なステークホールダー、市民社会による断固とした努力が継続されている。

さらに核兵器の使用がもたらす破滅的な人道的側面に注意を喚起する活動が、とりわけ市民社会を中心に、世界各地で活発に展開されている。

昨年ノルウェー政府が主催した「核兵器の人道的影響に関する国際会議」(非人道性会議)や今年の初めにメキシコ政府が主催した「第二回核兵器の人道的影響に関する国際会議」(ナヤリット会議)は、こうした核兵器の非人道性に着目する国際的な動きに、さらなる弾みをつける機会となった。

Nayarit Conference in Mexico/ICAN
Nayarit Conference in Mexico/ICAN

国際社会は、核兵器なき世界の実現という目標を達成するために、あらゆる面でそしてあらゆるレベルでこれからも努力を継続していくでしょう。

また核兵器国も、全てのNPT加盟国が同条約第6条の下で同意する核軍縮につながる、核兵器の全面的廃絶を達成することを明確に再確認しています。

国際社会は、市民社会による熱のこもった関与を得ながら、引き続きグローバルゼロに到達するための一層の努力を重ねていくものと確信しています。(原文へ

翻訳=INPS Japan浅霧勝浩

関連記事:

オーストリア議会、核軍縮に向けた政府の取り組みを後押し

|視点|世界を核の連鎖から解き放つ(ザンテ・ホール核軍縮・不拡散議員連盟欧州コーディネーター)

|軍縮|政治が核実験禁止への努力を曇らせる

世界市民教育に余地を与える持続可能な開発目標(SDGs)

【国連IPS=ヨエル・イェーガー】

市民社会のリーダーや国連の開発専門家らが8月27日、2015年以後の開発アジェンダにおける「世界市民教育」の役割を論じるために集まった。

創価学会インタナショナル(SGI)が主催したこのワークショップは、第65回「国連広報局/非政府組織(DPI/NGO)年次会議」の一環として開催された。

教育は「持続可能な開発のあらゆる領域とつながっており、全ての持続可能な開発目標(SDGs)およびターゲットの達成においてきわめて重要なものです。」とSGIニューヨーク国連連絡所の桜井浩行所長は語った。

Ambassador Anwarul Chowdhury/ Hiro Sakurai, SGI
Ambassador Anwarul Chowdhury/ Hiro Sakurai, SGI

「この点において、世界市民教育は特別の注目と強調に値するものです。というのも、これは様々な問題や分野をつなげ、すべてのステークホルダーを巻き込み、共有されたビジョンと目的を育むのに役立つからです。」と桜井氏は語った。

元国連事務次長・高等代表のアンワルル・チョウドリ大使がこのワークショップでの基調講演を行った。チョウドリ大使は、その中で「開発専門家の間で世界市民の考え方が広まってきたことに感激している。」と語った。

チョウドリ大使によると、世界市民には「自己変革」が必要であり、「平和の文化への道」を切り開くものであるという。

進歩のためには「個々人を世界市民として扱う決意」が必要であり、「私たちはより大きな人類の一部なのです。」と、チョウドリ大使は語った。

バハイ国際共同体」のサフィラ・ラメスファー氏も、世界市民に備わっている変革をもたらす性質について言及した。

Saphira Ramesfar/ Hiro Sakurai, SGI
Saphira Ramesfar/ Hiro Sakurai, SGI

ラメスファー氏は、「読み書きや計算ができるような人間を育てることだけが教育ではありません。」と指摘したうえで、「教育は、人間を変革させ、共有の価値に命を吹き込むようなもの、つまり、この世界とそこで共に暮らしている全ての人々を慈しむ気持ちを涵養するものでなくてはなりません。教育は、公正で一つにまとまった、多様性が受け入れられる社会をつくるという役割を十分に担う必要があります。」と語った。

過去には、世界市民を育もうとする試みが、若者に焦点を当てたこともあった。しかし、チョウドリ大使は、「この概念はもっと広いものとして理解されなくてならない」と指摘したうえで、「世界市民教育は、年齢や、公式の教育経験を受けてきたかどうかに関わらず、万人のためのものであると信じています。」と語った。

国連経済社会局のアンジャリ・ランガスワミ氏は、(2015年の採択に向けて国際的な議論が活発になっている)持続可能な開発目標(SDGs)案の策定において、NGOがいかに積極的に参加しているかについて説明した。同氏によると、ここ数年、市民社会の関与はきわめて高い水準になってきているという。

2015年に期限を迎えるミレニアム開発目標(MDGs)には、普遍的初等教育の達成(すべての子どもが男女の区別なく初等教育の全過程を終了できるようにする)が目標に含まれている。SDGsは、もし現在の起草内容のまま採択されたとしたら、普遍的な中等教育の達成も同様に目指すことになる。

SDGsは、「目標4」の下で「世界市民教育」に特に言及している。これは、MDGsでは触れられなかった問題だ。

「世界市民の養成」を3つの主要課題のひとつに挙げている国連のグローバル・エデュケーション・ファースト・イニシアチブ(GEFI)が、この新しい動きを創出するうえで影響力を持った。

Min Jeong Kim/ Hiro Sakurai, SGI
Min Jeong Kim/ Hiro Sakurai, SGI

GEFI事務局のキム・ミンジュヨンチーム長によると、GEFIは2012年に国連事務総長によって立ち上げられたが、それは「当時教育が、MDGs採択以後の急速な成長の時期を経て停滞していたから」だという。

ワークショップの発言者が締めくくりの発言をした後、参加者らは小グループに分かれて、世界市民教育に関する意見交換を行った。

このイベントは、「バハイ国際共同体」、「平和の文化に向けたグローバル運動」、「人権教育アソシエイツ(HREA)」、「持続可能な開発教育コーカス」、「国連Valueコーカス」が共催し、多様な専門家が参加した。

SDGsは、教育に関する全く新しい将来の展望を開く機会となる。

チョウドリ大使はIPSの取材に対して、「教育は、生計を立てるためというよりも、有意義な人生を送れる資質を育むことに注力すべきです。」と指摘したうえで、「これまでの支配的な考え方は、もしいい仕事に就ければ教育には意味があるが、いい仕事に就けなければ意味がないというものでした。しかしこのような考え方は、変えていかなければなりません。」と語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan

関連記事:

教育から始まる世界市民

国連での平和フォーラム、核廃絶を訴える

国境を消す教育ネットワーク

オーストリア議会、核軍縮に向けた政府の取り組みを後押し

【ウィーンIDN=ジャムシェッド・バルーア】

オーストリア政府が12月8日から9日にかけてウィーンで開催される第3回「核兵器の人道的影響に関する国際会議」(非人道性会議)に向けた準備を進める中、オーストリア議会が、核兵器のない世界を導くための同国の取り組みに法的基盤を与えた。

ウィーンでの来たる会議は、ノルウェーのエスペン・バート・アイデ外相によって招集されオスロで2013年3月に開催された「核兵器の人道的影響に関する国際会議」(オスロ会議)以降、3回目の会議となる。アイデ外相は、オスロ会議は「核兵器の爆発が人間や開発に及ぼす影響について事実を基礎とした討論を行う場を提供した。」と述べている。

Oslo Conference/ MFA
Oslo Conference/ MFA

オスロ会議には、127か国の代表に加え、国連機関、国際赤十字運動、市民社会代表、その他の利害関係者が参加した。アイデ外相は会議を総括して、「(会議に)これだけの幅広い参加を得たということは、核兵器の影響に関する地球規模の懸念とともに、世界中のすべての人々にとって最重要課題であるという認識が広がったことを反映した結果であると考える。」と述べた。

2014年2月13日から14日にかけてメキシコ西部ナヤリット州のヌエボバジャルタで開催された第2回「核兵器の人道的影響に関する国際会議」(ナヤリット会議)では、「とりわけ、公衆衛生、人道支援、経済・開発・環境問題、気候変動、食料安全保障、リスクマネジメントといった領域を含め、21世紀の観点と関心から、偶発的か意図的かにかかわらず、いかなる核爆発もがもたらす地球規模かつ長期的な結末」について検討を加えた。

ナヤリット会議には、146か国の代表、国連、赤十字国際委員会、国際赤十字・赤新月社運動、市民社会組織の代表が参加した。

Chair's Summary/ MOFA, Mexico
Chair’s Summary/ MOFA, Mexico

ナヤリット会議の議長は、オーストリアが第3回「核兵器の人道的影響に関する国際会議」を主催すると申し出たことは、「オスロ及びナヤリットのフォローアップとして、現在の気運を高め、それらの結論をより確固たるものとし、前進させるものとして、参加者からは強い支持が示された。」と指摘したうえで、「多くの参加者が述べたように、ナヤリット会議は、核兵器国及びNPT未加盟国に対し、オーストリアでの第三回会議への参加を繰り返し求めていきます。」と語った。

さらに議長は次のように語った。「そうしていく上で、私たちは、過去において諸兵器がまず非合法化され、そして廃棄されてきたことを考慮しなければならない。これこそが、核兵器のない世界を達成する道だと信じています。また、このことは、核不拡散条約(NPT)やジュネーブ条約共通第1条でも示されているように、国際法に基づく私たちの義務と合致するものであると考えています。」

「核兵器の人道的影響に関する広範かつ包括的な議論は、法的拘束力のある条約を結ぶことを通じて、新たな国際基準及び規範を実現するとの、政府及び市民社会の誓約につながっていかなければならない。」

2nd Conference in Nayarit
2nd Conference in Nayarit

「私たちは、ナヤリット会議はこの目的に資する外交プロセスを開始する時期が来たことを示したと考えます。またこのプロセスには、特定の時間枠、最も適切な議論の場の明示、明確かつ実質的な枠組みが含まれるとともに、核兵器の人道的影響が軍縮努力の本質に据えられたものでなければならないと考えています。」

新たな原動力となるか?

「今こそ行動に移るべき時です。広島、長崎への核攻撃から70年目を迎える来年こそが、私たちが(核廃絶という)目標に向かうにふさわしい里程標である。ナヤリット会議は『ポイント・オブ・ノー・リターン(もはや後戻りできない地点)』なのです。」と議長は総括した。

こうした背景の下、オーストリア議会は全会一致の決議で、ウィーンでの来たる会議に「完全なる支持」を表明した。オーストリア議会は、この会議が、核兵器の人道的影響に関する議論を深化させ、市民社会組織の関与をさらに促進することで、国際的な軍縮の言説に新たなダイナミズムをもたらす」ことを期待している。

この動議は、クリスティン・ムトネン議員(社会民主党、核軍縮・不拡散議員連盟[PNND]共同議長)とラインホルト・ロパトカ議員(オーストリア国民党代表)が4月30日に外務委員会に提出したものである。

動議は、オーストリア連邦政府に対して、「軍縮と、国際法の下での核兵器の開発・販売・取得・拡散・保有の完全禁止に向けて、国際及び欧州レベルにおける取り組みを継続」するよう強く求めている。

決議は、連邦政府に次の行動をとるよう要請している:

・二国間及び多国間のレベルにおいて、非大量破壊兵器地帯の実現のために積極的に行動すること。

・この点に関連して、国連安保理決議687に規定されている中東非核兵器地帯の構築という目標を自らの目標として採択し、多国間及び二国間レベルでこの目的のためにイニシアチブをとること。

・武器輸出、及び、とりわけ紛争地帯への核兵器運搬手段の輸出に対する、欧州での効果的な禁止を推進すること。

北大西洋条約機構(NATO)のドクトリンから核抑止論を撤回させるよう立場を明確にすること。

・現在のウクライナ危機に関連して、核抑止の拡大を目的としたいかなる政治的あるいは軍事的行為にも反対すること。

・核兵器の使用の威嚇を最も強い言葉でもって非難すること。

・欧州内外における安全保障及び協力のための非軍事的政府間組織の強化、及び必要な場合にはその創設を支持すること。

・欧州における核技術の輸出禁止、あるいは少なくとも強力な規制を支持すること。

Austrian Chancellor Sebastian Kurz/ Készítette: Kremlin.ru, CC BY 4.0
Austrian Chancellor Sebastian Kurz/ Készítette: Kremlin.ru, CC BY 4.0

この議会決議は、オーストリアのセバスチャン・クルツ外相が、ナヤリット会議において、オーストリア政府が第3回目のフォローアップ会議を主催する旨を提案した際に表明した次のような見方に完全に合致したものである。クルツ外相は、「核兵器は人類すべてにとっての恒久的な脅威であるのみならず、私たちが最終的に乗り越えなければならない冷戦の遺産でもあります。とりわけ、さらなる核拡散の危険を考慮すれば、国際的な核軍縮の取り組みには緊急のパラダイムシフトが必要です。」と指摘したうえで、「核軍縮は世界的な課題であると同時に、人類の集団責任なのです。」と語った。

ダモクレスの剣

新しい研究によると、限定的な地域核戦争でさえも、直後の人道的な緊急事態を超えて、保健、食料安全保障、気候、経済、社会秩序の面で世界的に破滅的な影響を及ぼすとされている。「この危険はけっして抽象的なものではありません。核の脅威は、例えて言えば、私たちの頭上にぶら下がったダモクレスの剣であり、国際的な取り組みの中心に据えるべきものなのです。さらに、偶発や判断ミス、テロによる核爆発の可能性は、私たちが注目しなくてはならない大きなリスクです。核兵器への依存は安全保障への時代遅れのアプローチです。地球そのものの完全なる破壊を基礎とした概念は21世紀においてあってはならないものなのです。」とクルツ外相は強調した。

「こうした言説は、安全保障ドクトリンにおいて冷戦思考がいまだ支配的な欧州において特に必要なものです。100年前、第一次世界大戦における破滅的な化学兵器使用によって、大量破壊兵器の時代が幕を開けました。今日の統合された欧州では、私たちはこの記念を利用しあらゆる努力を払って、20世紀の最も危険な遺産である核兵器を乗り越えなければなりません。」とクルツ外相は訴えた。

来たる会議の重要性は、ウィーンが国際原子力機関(IAEA)という核問題を取扱う唯一の世界機構の本拠地であるという事実にある。包括的核兵器禁止条約機構(CTBTO)とともに、IAEAは核兵器のさらなる拡散を防止するうえで重要な役割を担っている。

冷戦が終結して以来、世界における核兵器の総数は減っているものの、現状の規模は依然として人類の文明を絶滅させるに十分なものである。同時に、核武装国の数は増加し、核兵器を製造する技術的なハードルは下がってきている。したがって、オーストリア政府は、核兵器拡散の防止は、信頼性があり不可逆的な核軍縮と、核兵器を悪だとみなす国際的な取り組みと合わさってはじめて成しうるという立場を採っている。

オスロ会議やナヤリット会議で強調されたように、核爆発が起これば、政府や援助機関は、事態の大きさに対応できるような人道支援を行うことはできない。このために、オーストリア政府は、人道支援組織や市民社会組織全体との密接な協力が、核兵器廃絶のために必要な広範な国際支援体制を構築していくために不可欠な要素だと考えるのである(オーストリア外務省ウェブサイト上のメモによる)。

人類によって共有された目標

「核兵器のない世界」は人類すべてが共有した目標だが、これまでのところ実現していない。冷戦後も、推定1万6300発の核兵器が依然として存在している。9か国が核兵器を保有していると考えられているが、核技術がより入手可能になるにつれて、よく多くの国家、さらには非国家主体さえもが、将来的に核兵器を開発しようとするかもしれない。

オーストリア外務省は「核兵器が存在し続けるかぎり、意図的であれ、計算違いあるいは狂気のためであれ、技術的または人為的なミスのためであれ、核の使用のリスクは現実のものである。従って核兵器は、人類と、地球上のすべての生命にとって耐えがたいリスクを呈しつづけている。いかなる核兵器の使用であっても、人類に最も甚大な緊急事態を引き起こし、地球規模で環境や気候、保健、社会秩序、人間開発、経済に壊滅的な帰結をもたらす。」と述べている。

現代の核兵器が一発でも爆発すれば、広島・長崎での災難をはるかに上回るような破壊と人的被害がもたらされるだろう。どの国家や国際機関も適切な支援を行うことなどできないだろう。核兵器は人類すべてにとっての存在上の危機であり続けている。これらのリスクは抽象的なものではない。それは、これまで理解されているより現実的で深刻なものであり、完全に除去することはできない。

Photo: A test of a U.S. thermonuclear weapon (hydrogen bomb) at Enewetak atoll in the Marshall Islands, November 1, 1952. U.S. Air Force
Photo: A test of a U.S. thermonuclear weapon (hydrogen bomb) at Enewetak atoll in the Marshall Islands, November 1, 1952. U.S. Air Force

したがって、核兵器がもたらす人道的帰結に対する関心の高まりは重要な動きであり、核兵器に関する国際的な議論に前向でまとまりのある効果をもたらしている。国際社会が、核兵器がもたらす帰結とそれに伴うリスクの大きさを議論し理解を深めれば深めるほど、核兵器を廃絶すべきだとの主張の正当性がより明確になり、そうすることの緊急性も強まっていくだろう。

オーストリア政府は、来たる会議で、世界的な核軍縮・不拡散体制を強化し、核兵器及び核軍縮に関するすべての世界的な取り組みにおいて人道上の要請を強く根付かせる世界的な推進力の強化に貢献することを目指している。

オーストリア外務省によると、ウィーン会議はすべての関心ある人びとに開かれたものになるという。すべての国に公的な招待状が送られ、専門家及び/あるいは高官を指名するよう求められるという。また国際組織や、専門的知識を持った市民社会の代表も歓迎される。

さらにウィーン会議では事実を基礎にした討論や専門的発表が行われ、参加者間での双方向的な議論を行うことを目指す。また、より一般的な性格の声明をなす機会が代表らに与えられるという。また、最貧国からの代表に対する限定的な支援計画も準備中であるという。(原文へ

翻訳=IPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between Inter Press Service and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

関連記事:

期限を切った核兵器禁止を求める活動家たち

|視点|核軍縮の現状(ピーター・ワイス核政策法律家委員会名誉会長)

国連、核実験の世界的禁止に向けて圧力

|UAE|「ユナイテッドネイションズ・オブ・コメディ」最強のアラブ人コメディアンを引き連れて来演

【アブダビWAM】

8月28日・29日の両日、アブダビのエミレーツパレス内の劇場において「ユナイテッドネイションズ・オブ・コメディII」(アブダビ観光・文化庁主催)が開催され、世界で最も有名なアラブ人コメディアン7名が登壇する予定だ。

メンバーのラインアップは、いずれも著名な、ネムル・アボウ・ナッサール、アロン・ケイダー、モハメド・アメールハレド・ハラファラアミールK、アリ・アル・サイードそしてサミー・オベイドである。

アブダビでの出演が2度目となるネムル・アボウ・ナッサール氏はWAMの取材に対して、「UAEは伝統的な文化と多様な文化が共存する国なのでコメディアンとしては大変やりがいがあります。多様な観客を前にしたチャレンジは質の高い喜劇を生み出す貴重な機会にもなりますし、観客と出演者双方にとって心に残る楽しいひと時となるでしょう。」と語った。

7人のコメディアンは両日とも出演予定で、ネタの大部分は英語で披露される予定だ。(原文へ

翻訳=IPS Japan

関連記事:

|カンヌ映画祭|華々しさの陰で語られる人権問題

笑いを誘わない風刺マンガもある

|UAE|メイク・ア・ウィッシュ財団が白血病の苦しむ少女の夢を叶える

|クウェート|国営石油公社(KPC)と中国の石油商社の間で、史上最大規模の契約が締結される。

【クウェートWAM】

クウェート国営石油公社(KPC)と中国国営石油会社Sinopecの子会社である石油商社UNIPECが8月22日、向こう10年間で中国への原油供給量をこれまでのほぼ2倍とする原油供給契約を締結した。これはKPC史上最大規模の契約である。

これによるとKPCはUNIPECに対して2014年から新契約の下で原油の供給を開始するが、供給量は既に失効した前回の契約における1日当たりの供給量16万~17万バレルのほぼ2倍にあたる30万バレルにのぼる予定である。

香港で行われた契約調印式のあと、クウェート代表団を率いたKPCのナセル・アルムダフ国際マーケティング担当常務理事は、クウェート通信の取材に対して、「私たちは今回10年間に及ぶ原油供給合意に至ったことを誇りに思っています。これは運賃込みで原油の対中国輸送は全て我々の船舶を使用する初めてのパッケージ合意となったもので、素晴らしい成果です。これによって原油の掘削から中国への輸出までスムースな運用が可能となります。」「中国は、原油の輸送にクウェートの全船舶の50%以上を動員する新たな販路先です。」と語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan

関連記事:

|UAE|中国との文化的架け橋を目指すイベントを開催予定

|UAE|ホルムズ海峡を迂回するハブシャン-フジャイラ石油パイプラインが開通

|UAE|日本政府、ドバイとの関係強化を模索

今もなお続く核の脅威を照射する原爆忌

0

【東京IPS=スベンドリニ・カクチ】

原爆投下から69年が経過したが、19万人にのぼる被爆者とその子孫の方々にとってあの日の記憶は今なお鮮明に残っている。あれから69年が経過したが、公式の謝罪は未だにない。あれから69年が経過したが―人類は依然として、核兵器による惨事が再び繰り返されかねない恐ろしい現実に直面している。

各国の要人が69回目の原爆忌を祈念するために日本に降り立つ中、広島市からのメッセージは、あらたな核攻撃が人類と地球に及ぼす甚大な脅威を真剣に考慮するよう諸政府に求める緊急のアピールであった。

Hirohima Peace Memorial Park/ Wikimedia Commons
Hirohima Peace Memorial Park/ Wikimedia Commons

1945年8月以来、核兵器を世界的に禁止するための弛みない努力を続けてきた「被爆者」として知られる原爆投下の生存者たちは、9つの核保有国のうち4か国(米国、イスラエル、パキスタン、インド)を含む各国の大使らに、2014年の広島平和宣言の言葉を噛みしめるよう訴えた。

広島平和宣言は、高齢化が進む被爆者と平和活動家の苦痛に満ちた願いを代表して、核兵器国の為政者らに対して、早期に被爆地を訪れ、米国が広島に投下したウラン爆弾(リトルボーイ)とその3日後に長崎に投下したプルトニウム爆弾(ファットマン)が引き起こした今日にまで続く被爆の実相を自らの目で確かめるよう求めている。

爆心地に近い平和記念公園で8月6日、約4万5000人が黙祷を捧げた。広島では推定14万人が亡くなり、3日後に、第2の原爆が投下された長崎では約7万人が亡くなっている。

Nagasaki, Japan, before and after the atomic bombing of August 9, 1945./ Public Domain
Nagasaki, Japan, before and after the atomic bombing of August 9, 1945./ Public Domain

この悲劇的な出来事は、日本が第二次世界大戦(1939~45)の末期に、連合国への降伏を模索している中で起こった。

平均年齢が79才と推定される被爆者は、これらの運命的な日々に原爆がもたらした身体的・心理的な傷がいかなるものであったかを、今日の私たちに伝えてくれる生き証人である。多くの被爆者とその近親者が、原爆投下時とその後被爆地に長期に亘って残留した放射線による被爆がもたらす様々な後遺症に苦しみながら懸命に生きている。

広島平和宣言は、被爆者の苦しみに哀悼の意を込めつつ「現在の核兵器の非人道性に焦点を当て非合法化を求める動きを着実に進め、2020年までの核兵器廃絶を目指し核兵器禁止条約の交渉開始を求める国際世論を拡大します。」と述べている。

しかし、この夢が現実になる可能性は依然として明るいとは言えない。ワシントンに本拠を置く「軍備管理不拡散センター」が今年初めに発表したところによると、9つの核兵器国は2014年4月現在で合計1万7105発の核兵器を保有している。

核兵器を他国に対して使用した唯一の国である米国は、公的な謝罪を行うことを一貫して拒絶する一方で、当時における原爆投下の決定は第二次世界大戦を終わらせるための「必要悪」だったと主張している。

この手の議論は現在の世界的な地政学の中で大いに利用されている。いまだに核不拡散条約(NPT)に署名していないイスラエルのような国が、中東の今も続く政治的緊張に直面して国家安全保障を守る基本的な手段として核戦力を頑強に保持しているのである。

イスラエルのガザ地区に対する軍事進攻によって、エジプトが仲介した停戦が8月5日に発効するまでに約1800人の民間人被害が出ている事態を受けて、アラブ諸国の一部が、イスラエルこそが中東にとっての最大の脅威であって、その逆ではないと主張している。

一方、推定250発の核弾頭を保有し、現在日本との領土を巡る対立を抱えている中国(日本政府は、尖閣諸島は日本固有の領土であり、領有権の問題はそもそも存在しないと言う立場ととっている:IPSJ)は、事の成り行きから明確に身を遠ざけている。

また、中国の海洋進出を背景に南シナ海においても中国と周辺諸国との対立が激しさを増すにつれ、東アジア地域の平和活動家は、北朝鮮を含めた核保有国間の緊張関係に対処する緊急の必要性を感じている。

広島平和研究所ロバート・ジェイコブズ准教授はIPSの取材に対して、「(核廃絶の)訴えは、人間を殺戮し多大なる苦しみを引き起こす核兵器を禁止せよ、というものです。核保有国はこれらの兵器を保有することによって、犯罪行為に手を染めているのです。」と指摘したうえで、「現在、世界の反核運動は、核保有国が1968年のNPTに従っていないことについて、責任を取らせようと懸命に努力しているのです。」と語った。

ジェイコブズ准教授は、そうした取り組みの例として、マーシャル諸島で3月1日に行われた年次行事「原水爆禁止運動の記念の日(ビキニ・デー)」を挙げた。マーシャル諸島は、米合同任務部隊が1954年3月にビキニ環礁で始めた高出力の核実験「キャッスル作戦」によって破壊的な放射能汚染に晒された。

広島型原爆の1000倍の威力を持つと推定されているこの核実験の結果、数千人のマーシャル諸島の住民が放射線障害を負うことになった。

Photo: A test of a U.S. thermonuclear weapon (hydrogen bomb) at Enewetak atoll in the Marshall Islands, November 1, 1952. U.S. Air Force
Photo: A test of a U.S. thermonuclear weapon (hydrogen bomb) at Enewetak atoll in the Marshall Islands, November 1, 1952. U.S. Air Force

米国は、冷戦期におけるソ連との核軍拡競争という背景の下、1946年から1962年の間に合計で67回に及ぶ核実験を行った。

マーシャル諸島政府は今年4月24日、9つの核保有国が核戦力を解体していないとして、ハーグの国際司法裁判所と米連邦地方裁に別々の訴訟を起こした。国家安全保障の言説に対する挑戦であった。

マーシャル諸島政府の訴訟は、公式核保有国(米国、英国、フランス、中国、ロシア)に対して「核軍拡競争を早期に終わらせ軍縮を進める協議を誠実に行う」義務を定めたNPT第6条を引き合いに出している。

Hiromichi Umebayashi
Hiromichi Umebayashi

広島・長崎への原爆投下の場合と同様に、米国はマーシャル諸島に対しても謝罪しておらず、被害を起こしたことへの「遺憾の意」を表明したに過ぎない。マーシャル諸島のアバッカ・アンジャイン・マディソン元上院議員は、IPSの取材に対して、「米国は依然として、この災難(被爆被害)は、『多数の安全のために少数を犠牲にしたものだ』という見方を崩していません。」と語った。

しかし、非難されているのは米国だけではない。長崎大学核兵器廃絶研究センター梅林宏道センター長は、東アジアに非核兵器地帯を創設する構想の主要な主唱者であり、核兵器は国家安全保障のために必要であるという主張を現在打ち出しているとされる安倍首相に対して厳しい批判をしている。

梅林氏は、核の傘の下で米国と緊密に協力し、国防能力を強化しようという日本の最近の決定を覆す運動を先導している。

「東アジアにおける北朝鮮の核の脅威は、より強力な軍事活動を推し進めるために日本政府によって利用されているのです。唯一の被爆国として、日本は大きな過ちを犯しています。」と梅林氏は語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan

関連記事:

世界の大国に挑戦する核爆発証言者

共通の未来のためにヒロシマの被爆体験を記憶する

核兵器のない世界への道筋(池田大作創価学会インタナショナル会長)

|UAE|ドバイモールで「世界人道デー」記念ウォークを開催

【ドバイWAM】

2014年「世界人道デー」を記念するウォーキングイベントが、国際連合人道問題調整事務所(UN OCHA)と国際人道シティの協力、ドバイ首長妃ハヤ・ビント・アル・フセイン(国連ピースメッセンジャーで国際人道シティ理事会議長)の後援のもと、ドバイモールで開催された。

8月19日は2003年にイラク・バグダッドの国連事務所が爆破され、22名の国連支援関係者が犠牲になった日で、国連総会は2008年に世界各地で起きている紛争や自然災害などの人道問題に焦点を当て、被災地の現場で緊急人道支援に携わる人々に心を寄せる目的でこの日を「世界人道デー」に定めた。

それ以来、「世界人道デー」には、世界各地で関連行事が開催されている。今年は、「世界がもっと必要としているのはヒューマニタリアンヒーロー(The World Needs More Humanitarian Heroes)」をテーマに、支援を必要としている世界各地のコミュニティーに日々命がけで救援物資を届けている人道支援団体に従事する人々の勇気を称えることに焦点をあてている。

会場となったドバイモール(世界最大のショッピング・レジャー・娯楽施設)では、約30000人の来訪客が見守る中、UAE内外の人道支援団体の代表、中東地域のアーチスト、UAE市民、観光客など1500人以上の人々が世界で人道支援活動に従事する人々との連帯を表明して行進に参加した。

イベント期間中、今年のテーマの趣旨にちなんで、「人道メッセンジャー」に任命された各界の著名人による「(人道支援活動を支援する)行動をおこす呼びかけ」が放映された。

国際人道シティのCEOシャイマ・アル・ザルーニ氏は、「UAEでは今年で3度目となりますが、私たちは、危険なリスクに顧みず、支援を必要とする人々のために人道支援活動に世界各地で従事している人々を称えるこの世界的なイベントを、国連のパートナーと共に、ここドバイで開催できることを誇りに思っています。」と述べるとともに、今年のキャンペーンを支えた官民各種団体及びイベントに参加した全ての人々に感謝の意を表明した。(原文へ

翻訳=IPS apan

関連記事:

|UAE|「国際人道デー」キャンペーンが「平和」という言葉とともに閉幕

|UAE|「まさかの時の友こそ真の友」とUAE紙

│中央アフリカ共和国│住民が逃げるなか支援に入る困難さ

|視点|ジレンマとたたかうイスラエルの平和活動家たち

0

【エルサレムIPS=ピエール・クロシェンドラー】

「共に団結しよう。私たちはイスラエルを愛し軍を信じる」一時休戦が定着するなか、国旗の色で飾られた横断幕(上の写真)が、依然として国中の街頭や道路を埋め尽くしている。

国民に無条件の愛国主義と連帯を求めるこうしたイスラエル当局の「囲い込み」戦略は、7月8日に始まった国防軍によるガザ地区に対する侵攻作戦のメリットと道徳性に疑問を抱く一部の市民の心理をしっかりと抑え込んでいるようだ。

(ガザ地区から撃ち込まれてくる)ロケット弾を警告するもの悲しげなサイレンの音と、それを迎撃するミサイル防衛システム「アイアン・ドーム」の耳をつんざくような音に晒されるなかで、イスラエル国民のパレスチナ人に対する民族主義的な反感は悪化の一途をたどっている。さらに、理性的な判断が戦争遂行のために動員され、戦争の効果に関する合理的な評価は顧みられない状況に陥っている。こうした状況下で、一般市民が平和の信条に殉じるのは難しい。

言葉で戦争が平和の反対というのは、単なる同語反復に過ぎない。現実の戦争という難問に直面したイスラエルの平和活動家らは、ジレンマと闘っている。

いったん始められた戦争は、勝利しなくてはならない。しかしこの戦争は、勝利にも敗北にも終わるものではなく、全ての戦争を終わらせるものでもない。イスラエル当局は抑止という手段によって次の戦争を避けるための戦争としているが、実際そのような効果があるかは不明である。つまり「戦争には、損失と敗者のみがあるのだ。」と平和活動家らは考えている。

もし戦争が紛争を解決するものではないとしたら、すなわち、戦争には次の暴力への種が埋め込まれているのだとしたら、平和こそが紛争を解決するものだ、と活動家らは主張する。

A funeral procession for two children killed in the Israeli attacks on Gaza. Credit: Mohammed Omer/IPS
A funeral procession for two children killed in the Israeli attacks on Gaza. Credit: Mohammed Omer/IPS

しかし、大砲が唸りをあげるとき、平和は沈黙させられてしまう。

平和NGOフォーラム」は、軍事作戦開始22日目にあたって、イスラエル・パレスチナ紛争に軍事的解決はないと強調し、停戦と(パレスチナが独立してイスラエルとパレスチナが2つの国として共存する)二国家解決案に向けた交渉の再開を訴えた。

「平和NGOフォーラム」は、ユダヤ系及びパレスチナ系の市民団体からなるアンブレラ組織で、パレスチナ問題に対する二国家解決案の枠組みに沿った平和の実現を目指している。女性の平和連合「バット・シャロム」や「平和のための戦闘員」などのパートナー団体は、ネットワーキングや能力開発、共同のデモ(映像)などを行っている。

同フォーラムのユダヤ人側の諸団体が遅ればせながら発表した関連声明には、彼らが直面しているジレンマが滲み出ている。「イスラエル国民には、自衛の権利を保持し、彼らに対して発射されるロケットの脅威や、彼らの生活空間の只中に掘られた敵のトンネルの脅威に晒されることなく、安全と平和のうちに生きる権利がある…。」

イスラエル国内では戦闘が激化するなか、戦争が正当化され、ユダヤ系イスラエル国民の間でのガザ侵攻作戦に対する支持率は、表面的にはほぼ完全に近いものとなった。そしてソーシャル・メディアには、「アラブ人を殺せ」「左翼を殺せ」といった人種差別主義的で威圧するような言辞であふれた。

一方、戦闘開始から19日目、「人が死ぬのはもうたくさんだ!」と叫ぶ5000人のイスラエル国民が、平和を訴える市民団体が主催したデモに集まった。(上の写真/映像)しかしそこには、従来からイスラエルとパレスチナの共存を訴えてきた象徴的な「ピース・ナウ(今こそ平和を)」運動や、野党左派のメレツ党の姿はなかった。さらに、テルアビブの市街にロケット弾が撃ち込まれると、デモ参加者は散り散りになった。

一般のイスラエル国民は、テレビで一日中放映されているニュース番組の内容をあえて受入れ、当局が喧伝する国家的な不安に心理的に足並みを揃えることで「感情のセーフティーネット」に身を委ねている。そのような彼らにとって、「イスラエル国防軍は世界で最も道義的な軍である」という格言的な主張に異議を唱える国内の同胞は、「聖人ぶった偽善者」と映り、道徳的な判断を下す対象となっている。

イスラエルの左派は、「(国防軍に関する)そうした宣言には独善的なものが本性的につきまとっている。」と反論している。

これに対して、「同胞が脅威に晒されているとき、国の痛みを分かち合わないとはどういう了見なのか。」というのが、平和活動家らに右翼がしばしば投げかける非難である。

政治的思考でいえば圧倒的多数が中道か右派に分類されるイスラエルの世論は、彼らの祖国は、(パレスチナ人の)犠牲者に焦点を当てた紛争の描き方、すなわち「被害者学」の犠牲になっていると非難している。

平和運動の支持者らは、アムネスティ・インターナショナルイスラエル支部のヨナタン・ガル代表が6日付のリベラル系『ハアレツ』紙に語っているように、「人権の尊重が最後の防衛線」だとみなしている。彼らは、イスラエル国防軍の過剰反応に反対しており、「イスラエルは自らの軍事力に本来的に潜む弱さを理解しなくてはならない。」と考えている。

Amnesty International
Amnesty International

イスラエル世論の主流は、平和活動家らはあまりにも頻繁に「『戦争は地獄』であり『悪』であり、『本質的に戦争犯罪』である」という「究極の同語反復」に頼りすぎる傾向にあると見ている。現在のイスラエルでは、この戦争が正義の戦いではないと自己反省するような兆候が(平和運動家の行動から)少しでも察知されれば、(敵に利する)イスラエル側の動揺や無用の自責につながりかねないとして、世論の憤慨の対象となっている。

一方平和活動家らは、パレスチナ占領地域におけるイスラエルの政策こそが、諸悪の根源であると見なしている。

ところがほとんどのイスラエル国民は、(平和活動家らが主張する)「47年に亘る占領」という非難に対して、「(パレスチナ人の)窮状をあまりにも単純なイメージに還元したものであり、占領という事実によって、パレスチナのイスラム原理主義組織『ハマス』が唱えるイスラエルに対する憎悪や、繰り返される暴力のサイクルを正当化することはできない。むしろ占領は、(イスラエルに危害を加えようとする)パレスチナ側との平和が達成できないから継続しているのだ。」と主張している。

これに対して平和活動家らは、「イスラエルは平和のためにリスクをとれるだけの強さを備えていることを十分に証明してきた。従って、私たちはそれを実行に移すべきだ。」と反論している。

イスラエル国民は、この14年間に亘って幾度となくこの議論を繰り返してきた。

この間、イスラエル国民は、終わりの見えないあまりに多くの紛争を経験している。つまり、2000年から05年のパレスチナ蜂起「インティファーダ」、2006年の対ヒズボラ戦争、ガザ地区のハマスに対する侵攻作戦(2006年の作戦「夏の雨」、2008年~09年の作戦「鋳造された鉛」、2012年の作戦「防衛の柱」)、そして現在の軍事侵攻作戦である。

オスロ合意の時期に、相互和解のプロセスをとおしてイスラエルとパレスチナの双方をして、他方の痛みをためらいながらも理解する方向に持っていっただけに、かえって以前にもまして和解に対する幻滅と絶望感が、両者の心理を支配している。

イスラエルとパレスチナの双方は、その後の対立の中で、自身の生存を賭けた、本質的な紛争の次元へと、急速に後退していった。

その結果、イスラエル国民とパレスチナ人の双方が、逆境に際して他者の痛みを理解しようとしなくなっただけではなく、自らの痛みを和らげ、他者から痛みを与えられることを抑止する唯一の方法として他者に痛みを与えることが必要だと感じるようになってしまった。

しかし、戦争を支持する圧倒的多数の人々と、平和を支持する献身的な人々の双方を結び合わせるものは、「現実は複雑である」ことへの理解であろう。

イスラエル国民の主流は、現状を評価するには、単にガザ地区における死者数を数えるだけでは十分でないという議論の有効性が既に失われたことを認識している。

平和活動家らは、イスラエルの軍事作戦を引き起こした脅威は実在することを理解している。それと同時に彼らは、イスラエルの軍事作戦の結果が導く方向や帰結、それがイスラエルとパレスチナ、さらには両者間の和平に及ぼす影響についても理解しているのである。

共存という彼らの理想は、長年に亘る戦争によって揺らいでいる。平和活動家らは、もし被害にばかり注目することで、一方で、戦争においては目的が(ほぼ)すべての手段を正当化するとか、他方で、戦争は正当化できないといった、使い古された教訓しか導けないとすれば、そんなものは拒否するであろう。

彼らは、不当な侵略行為に対する正当な自衛権の行使と、より大規模な武力行使との間、さらに、戦争の道徳性や権利、法律と、占領の過ちとの間に、明確な線を引いている。

そして、戦争が収束するかに見える今、平和活動家らは、国家の指導者らが、パレスチナ側との和平に向けた大胆な外交を緊急に開始し、膨大な時間を無駄にした前回の失敗を繰り返さないとの認識を持つことに、希望をつないでいる。(原文へ

翻訳=IPS Japan

関連記事:

|イスラエル-パレスチナ|和平が遠のく中で平和の灯を守る人々

|イスラエル|向こう側の小さな戦争の物語

平和と戦争の種を持つ教科書

政治情勢が混乱させるレバノン難民キャンプの教育

【ベイルートIPS=シェリー・キトルソン】

レバノンの首都ベイルート南部にあるシャティラ難民キャンプや、その近くにあるサブラ難民キャンプ(両方とも1982年のパレスチナ難民虐殺事件の舞台となった場所)、さらに南部シドン郊外にある同国最大のアイン・エルヒルウェ難民キャンプを見渡しても、図書館が1軒もない。しかも、レバノンの外務大臣による先般の発言を受けて、こうした難民キャンプで暮らしている数千人におよぶシリア難民の子どもたちが読み書きを学ぶ機会さえ、さらに制限されるのではないかと懸念する声がでてきている。

国際連合は先月初め、2011年に始まるシリアからの大規模な難民の流入によって、今年末までにはシリア難民がレバノンの人口の3分の1を超える勢いであり、少なくとも30万人の子どもが学校に通えずにいる、と発表した。

7月初め、レバノンのゲブラン・バジル外相が、「食料であれ住居であれ医療であれ、シリア難民を支援すべきではない。なぜならそうした支援が、彼らのレバノン残留を促すからだ。私たちが望むのは彼らがレバノンを早急に退去することである。」と発言した

バジル氏は、かつて前政権でエネルギー水資源相だった時代に、「シリア人はレバノンの安全や経済、アイデンティティへの脅威とみなされるべきだ。」と語っていた人物である。

絡んだ電線が危険なほど低く垂れ下がり、パレスチナ人の「抵抗(レジスタンス)」指導者や殉教者らのポスターに混じってバシャール・アサド大統領のポスターが目立つシャティラやサブラのパレスチナ人難民キャンプは、レバノンの首都ベイルート南部に設けられたものである。そしてシリア難民は、いずれの難民キャンプにおいても当初は歓迎されたという。

レバノン政府は、パレスチナ解放機構(PLO)に国内に12か所あるパレスチナ人難民キャンプの自治的な管理を認めた1969年のカイロ協定から脱退しているものの、今でもレバノンの治安部隊は難民キャンプへは立ち入らない。

シャティラ難民キャンプでIPSの取材に応じた数名のシリア難民は、「ここはヒズボラの支配下にある地域よりましです。」と語った。ヒズボラは、シリアのアサド政権側について内戦に参画しているほか、その政治部門はレバノン政府の一翼を担っている。

1949年にパレスチナ難民のために設置されたこの難民キャンプでは、シリア内戦が勃発して以来、1~2万人の難民がシリアから流込しており、今ではシリア人難民の数が元々いたパレスチナ人難民の数を上回っている。

軽量ブロックで作られた粗末な建物がひしめき合う難民キャンプには、国境を越えてシリアから逃れてきた多数の学齢期の子どもたちが暮らしているが、こうした子どもたちの多くが、精神障害や栄養失調を患っており、レバノンの教育施設への編入の可能性も制限されている。

難民キャンプ内で活動を展開しているNGO「バスメ&ザイトゥーネ」のシリア人創設者兼事務長のファディ・ハリッソ氏によると、レバノンの公立学校の収容能力に限界がある問題に加えて、難民の子どもたちにとって最も明白な障害になっているのは、シリアでは学校教育でアラビア語が使われるのに対して、レバノンではフランス語か英語が使われている点だという。

また、両親と行き別れて戦災孤児となり、生きていくために労働や物乞を余儀なくされる極貧環境の問題や、戦争を起因とするトラウマの問題など、子どもたちの就学を妨げる複雑な要因が明らかになってきている。さらに慢性的な食糧不足がこうした状況をさらに複雑にしている。

国際連合児童基金(UNICEF)は、今年2月25日に発表したレバノン在住のシリア難民の子どもの健康状態を調査した報告書の中で、2012年から2013年の間に北レバノンベッカー県では重度の栄養失調児の数が2倍になっていると指摘した。また、緊急に治療措置が施されなければ、約2000人の5歳未満の子どもたちが命を落とす危険な状態に直面していると警告している。また同報告書は、より軽度の栄養失調の場合でも、子どもたちの心身の発達が阻害されている、と指摘した。

「バスメ&ザイトゥーネ」は、シャティラ難民キャンプに300人規模の学校を作り、レバノンのカリキュラムに従って、シリア人とパレスチナ人の先生が教えている。ハリッソ氏によると、ここでの教師の月給は400~700ドルだが、「この給料レベルで働くレバノン人はいない。」という。この学校は「国境のない医師団」(MSF)の診療所と薬剤所が2階に入っている最近改修されたビルに位置している。

また「バスメ&ザイトゥーネ」は、難民の子どもたちが気軽に立ち寄って読書をしたり、参考文献の相談をしたり、コンピューターを使用できるような、発電機を備えた小さな図書館を建設しようと、資金集めに奔走している。

ハリッソ氏の同僚であるマリア・ミンカラ氏は、IPSの取材に対して、「混雑した難民キャンプの中を歩けばすぐに気づくことですが、多くの子どもたちが、電気が通っていない暗くて不健康な環境の中で生きることを余儀なくされています。子どもたちには物理的に勉強できるスペースがないのです。」と指摘したうえで、「数万人もの難民が住んでいるこの地域に現在は1軒の図書館もありませんが、この構想が実現すれば、パレスチナ人とシリア人双方の学齢期の子どもたちに開かれた施設にしたいです。」と語った。

レバノンの難民キャンプで教育支援活動を行っている「社会サービスのための合同キリスト教徒委員会」のハダッド専務は、「私たちは最近、約120人のシリア難民の子どもたちに本国で試験(中学三年時試験と学士試験)を受けさせるために、シドン近郊のアイン・エルヒルウェ難民キャンプを離れて、子どもたちを一時的にダマスカスに帰還させる許可をレバノン当局から得ることに成功しました。結果として、そのうち83%の子どもたちが合格しました。」と語った。

さらにハダッド専務は、「その際、アサド体制への恐怖から子どもをシリアに戻さなかった親もいましたが、彼らは今ではその決断を後悔しています。」と付け加えた。

またハダド代表は、難民の子どもたちへの教育内容に政治と宗教関連の内容は含まれていないと強調したうえで、同団体が採用しているカリキュラムに関する質問に答える担当として同難民キャンプ住人のアブ・ハッサン氏(パレスチナ民兵がよく使う「アブ(~の父親)」で始まる偽名)を紹介してくれた。

アブ・ハッサン氏は、過去にパレスチナの「レジスタンス」勢力で戦ったことがあると打ち明けたが、どの派閥に属していたかについては言及を避けた。そして教科書の内容については、政権を支持するような(政治的な)表記はないと明言した。

アブ・ハッサン氏は、ダマスカスまで生徒に随行してから再び難民キャンプに戻ることが許可された。しかしレバノンにおける最近の法改正によって、シリアを逃れようとするパレスチナ人がレバノンに入国するのが以前より困難になっている。人権擁護団体アムネスティー・インターナショナルは、先週発表した報告書の中で、入国条件としてレバノン政府からの事前の入国許可や在留許可の取得を新たに義務付けた規制措置を非難している

また、シリア難民に関する法律も6月初頭に変更され、シリア国内のレバノン国境付近で戦闘状態が続いている地域からのレバノンへの入国が制限されるとともに、レバノンを離れてシリアに帰国した人々はレバノンへの再入国の権利を喪失する旨が明記された。(原文へ

翻訳=IPS Japan

関連記事:

|シリア難民|子ども達が失っているのは祖国だけではない

|中東|危ういスンニ・シーア間の宗派対立(R.S.カルハ前駐イラクインド特命全権大使)

|UAE|イド・アル=フィトルを迎え人類の平和を祈る