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|UAE|人道主義の模範的役割を担う

【アブダビWAM】

経済協力開発機構(OECD)の開発援助委員会(DAC)が8日、2013年の政府開発援助(ODA)実績を公表し、アラブ首長国連邦(UAE)の援助実績(総額53億ドル)が、国民総所得(GNI)比(1.25%)でOECD加盟34か国中で一位であることが明らかになった。これは2012年の19位から大きな前進であり、UAE国民及び住民にとって誇るべき実績である。」と英字日刊紙「ガルフ・ニュース」が4月10日の論説の中で報じた。

ドバイ首長のムハンマド・ビン・ラーシド・アール・マクトゥーム副大統領兼首相は、この結果について早速自身のソーシャルネットワークのサイトに「OECDによると、2013年におけるUAEの援助実績が50億ドルを超え(NGI比で)世界ナンバーワンの人道主義キャピタルになった。施しの文化は私たちの社会に深く根ざしたものであり、UAE建国以来歴代指導者が常に育んできた価値観である。」とツウィートした。

さらに「UAEは多くの国々に対して積極的に寛大な援助パッケージを提供してきた。(ムハンマド・モルシ政権崩壊後の)エジプト新政府と、多くのプロジェクトを通じて同国民の生活状況の改善、人間開発を目指す49億ドル規模の開発計画支援枠組合意に真っ先に署名したのもUAEであった。」とツウィートした。

「シリア危機への対応を呼びかけた国連計画に対しては、総額2億2000万ドゥルハム(約60億7200万円)を拠出し、その内、1億8300万ドゥルハム(約50億5080万円)をシリア国内の国連プログラムに、3700万ドゥルハム(約10億2120万円)を国連のヨルダン国内におけるシリア難民支援プログラムに充てた。」

「UAE指導者の寛大な姿勢に感銘を受けた、ワシントン・ポストのコラムニスト兼作家で政治アナリストのディビッド・イグナチウス氏は、『UAEの賢明なリーダーシップは、世界における人道主義の模範である。』と述べている。」

故ザイード・ビン・スルタン・アール・ナヒヤーン首長(UAE初代大統領)は、施しの文化について「神からの恩恵で手にした富は広く同胞や友人と分かち合うべき。」という見解を示している。

ザイード首長の跡を継いだハリーファ・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン大統領は、この路線を引き継ぎ、「人道外交はUAE外交の基軸の一つであり、UAEは今後も引き続き災害に対する国際的な取り組みを支援するとともに、様々な救援要請に積極的に応えていく。」との自身の信念を表明している。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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世界の死刑執行件数が増加

【国連IPS=サミュエル・オークフォード】

人権擁護団体「アムネスティ・インターナショナル」が3月27日に発表した報告書によると、2013年の世界における(公式に記録された)死刑執行件数は、前年より14%増加し、その内、厳格な反テロ法を施行しているイラクと、厳しい麻薬取締を実施しているイランが全体の半数以上を占めていることが判明した。

アムネスティによると、2013年に22か国で少なくとも778人に対する死刑が執行されたという。しかしこの報告書には、死刑に関する公式発表を行っていない中国は含まれていない。中国は、死刑執行数では他国を圧倒する数千人規模を毎年銃殺で処刑しているとみられているが、依然として死刑についての情報は国家機密とされている。

「中国は独自のケースと考えるべきです。実際の死刑執行数ではこの国に匹敵する国はありません。しかし中国に関して一縷の望みがないわけではありません。近年、中国共産党エリートの間で死刑に関する疑念の声が上がっており、私たちはこうした内部議論の行方を見守りたいと考えています。」と、アムネスティ・インターナショナルの死刑問題アドバイザーであるヤン・ヴェッツェル氏は語った。

中国を除けば、世界の死刑執行数全体の8割が、中東の3カ国、つまり、イラン、イラク、サウジアラビアに集中している。

宗派間闘争が激化し、政府による取締も強化されたイラクでは死刑執行数が前年比で30%増加した。昨年少なくとも169人が処刑され、その大部分が米軍によるイラク侵攻後の2005年に制定された厳格な「反テロ法」によるものである。アムネスティは今回の報告書の中で、この法律全体を覆っている曖昧な法律表現(例:テロ行為を挑発、計画、資金支援、実施する行為、或いは他者がテロ行為を行うのを支援する行為を処罰対象とする)について懸念を表明している。

ヴェッツェル氏は、「イラクにおける死刑執行数が急増している背景には、イラクの治安状況が急速に悪化している現実を理解する必要があります。つまり(スンニ派)反政府勢力による武装蜂起が頻発する中、(シーア派主導の)イラク政府は手っ取り早い対抗手段として『反テロ法』による死刑を適用することで、テロと戦う強い政府を演出しているのです。しかし、死刑執行数が増えても宗派闘争の勢いが収まらないことから、死刑の効果そのものを疑問視せざるを得ない状況にあります。」と指摘したうえで、「私たちは、死刑は長期禁固刑ほど犯罪抑止効果がないことを知っています。」と語った。

またアムネスティは、エジプトとシリアに関しては司法の判断に基づく死刑が執行されたか否かについて特定できなかったとしている。悲惨な内戦が繰り広げられているシリアの場合、仮に処刑執行数が明らかにされたとしても、その法的根拠に対する疑問が生じる。一方エジプトでは、3月24日、昨年失脚したムハンマド・モルシ大統領(当時)の支持者528人に対して、警官殺害等に関する容疑で死刑判決が下されている。

イランでは2013年に少なくとも369人が処刑された。しかし、アムネスティによると、公式には発表されていない処刑が他に数百件あるという。

Mahmood Amiry-Moghaddam
Mahmood Amiry-Moghaddam

イランは、北朝鮮、サウジアラビア、ソマリアと並んで、公開で処刑を行う数少ない国のひとつである。権利擁護団体「イランの人権」の共同創設者であるマフムード・アミリー=モガダム氏は、「イラン当局は恐怖を市民の頭の中に植え付ける政治的手段として公開処刑を用いています。過去10年における公開処刑のタイミングをみると、政府当局が民主化要求のデモが発生することを恐れている時期か、デモが行われた直後に死刑執行数が増加するなど、慎重に時期を見計らっているのが分かります。一方、イランの人権問題に対する国際社会の厳しい目が向けられた時期には、死刑執行数も低く抑えられています。」とIPSの取材に対して語った。

イランで処刑された死刑囚の大半は麻薬関係事犯として収監されていた人々で、大麻やヘロインの密輸に関与しているとして警察当局の標的になることが少なくないアフガン難民出身者などイラン社会の底辺に生きる人々が占めている。アミリー=モガダム氏によると、昨年59件が執行された公開の絞首刑は「死刑の執行であると同時にある種の拷問でもある」という。

「死刑囚は、クレーンで吊し上げられますが、死に至るまでに10分以上かかることも少なくないことから、ある種の拷問でもあるのです。」とアミリー=モガダム氏は語った。

今年になって、そのような事例を示す凄惨な公開絞首刑の様子を写した映像が流出した。その映像には、「おかあさん」を叫びながらクレーンに吊るされ、中刷りになった足をバタバタとさせている死刑囚に、「私の子ども、私の子ども」と悲痛な声を上げている母親の姿が映っていた。

3月初め、国連薬物犯罪事務所(UNODC)のユーリ・フェドートフ事務局長がイラン政府による国境地帯における麻薬取締を賞賛する発言をしたが、死刑に批判的な欧州諸国からの反発を招き、イランにおける国連麻薬対策プログラムへの拠出金を一部欧州諸国が拒否する事態に発展した。

「イランは違法薬物の取締に活発に取組んでおり、素晴らしい業績をあげている。」とフェドートフ事務局長は語っていた。

国際法では、死刑そのものは禁じられていないが、拷問は禁止している。この問題が改めて浮き彫りになった事例が最近米国で相次いで起こった。

今年1月、オハイオ州において試験的に開発された新型混合薬物(毒薬に鎮静剤と鎮痛剤を混入したもの)の投与による死刑が執行されたが、囚人が息絶えるまでに15分以上を要する異常事態が発生した。これらの新型薬物は、殺人への使用に反対する立場を打ち出した欧州の製薬会社が提供を拒否した従来の薬物の代わりとして使用されたものだった。また、オクラホマ州で執行された死刑の現場では、死刑囚が別種の混合薬物を注入された際、「身体中が焼けるようだ」と叫んだとされ、人道的観点から物議を醸しだした。

南北アメリカでは、アメリカ合衆国が唯一の死刑執行国である。2013年の米国全体における死刑執行数(43件)は、前年より10%減少したが、その内、南部9州で39件を占めた。また、テキサス州では、前年比3割増の16人の処刑が執行されている。

他方で、世界全体を見れば5大陸の全ての地域において、死刑廃止への流れができつつあり、アムネスティによると、この20年で死刑執行国の数は半分になったという。

2013年には、インドネシア、クウェート、ナイジェリア、ヴェトナムが死刑を再開したが、過去5年間で死刑を執行した国は、バングラデシュ、中国、イラン、イラク、北朝鮮、サウジアラビア、スーダン、米国、イエメンにとどまっている。また、欧州と中央アジアでは死刑が執行されていない。

しかしサウジアラビアでは、犯行がなされたとされた時点で18歳未満だった少なくとも3人の囚人が、国際法の規定に反して、死刑に処せられている。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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ナイル川をめぐる激しいエジプト・エチオピアの対立

【カイロINPS=キャム・マグレイス】

昨年6月、エジプトのムハンマド・モルシ大統領(当時)が、エチオピアがナイル川上流で続けているダム建設に対抗して、「交渉のテーブルには全ての選択肢が用意されている」と述べた際、軍事介入まで示唆するのはジェスチャーに過ぎないと見られていた。しかし専門家の間では、エジプトは自国への歴史的な割当水量を巡る権益確保については本気であり、もしエチオピアがアフリカ最大規模になることが確実視されている水力発電ダムの建設を継続するならば、軍事介入のオプションもあながち排除できないだろう、との見方も出てきている。

エジプトとエチオピアの関係は、エチオピアが2011年に42億ドルをかけた水力発電用のグランド・ルネッサンス・ダム(貯水量:740億立方メートル)の建設に着手して以来、急速に悪化してきている。

エジプト政府は、8500万人の国民の水需要の100%をナイル川に依存しているため、上流に位置するエチオピアでこのダムが2017年に稼働し始めると下流への水供給量が減らされるのではないかと危惧している。エジプト水資源・灌漑省の当局者は、このダム建設によってエジプトはナイル川の水資源の2~3割を失うとともに、(自国のナセル湖の貯水量が減少するため)アスワンハイダムによる発電量の3分の1を失うことになると主張している。

一方エチオピア政府は、グランド・ルネッサンス・ダムの建設は、エジプトの割当水量に関してなんら悪影響はないと主張している。エチオピア政府は、このダムの優れた発電能力(概算で6000メガワット)により、ゆくゆくはエネルギーの自給を達成し、電力輸出で経済苦境から脱却することを企図している。

Grand Ethiopian Renaissance Dam/Wikimedia Commons
Grand Ethiopian Renaissance Dam/Wikimedia Commons

「エジプト政府は、ナイル川からの割当水量は、安全保障にかかわる問題だと見ています。一方でエチオピアにとって、建設中のダムは国家の威信の源(とりわけ1980~90年代に同国を襲った大飢饉からの再生の象徴)であり、これからの経済発展に不可欠なものなのです。」と戦略アナリストのアハメド・アブデル・ハリム氏はIPSの取材に対して語った。

エチオピアは昨年5月に水流の方向事業転換を開始し、エジプトの怒りを掻き立てることになった。エジプト国内では、一部の国会議員から、エチオピアが工事を中止しなければ、軍隊を派遣するかエチオピア現地の反体制勢力を支援するなどの策を取るべきだとの声も出てきている。

これに対してエチオピアは先月、軍関係者がダム建設予定地を訪れ、建設事業を守るために「代償を払う覚悟がある」と国営テレビに対して語るなど、事態はエスカレートの兆しを見せている。

エジプト政府は、大英帝国時代に締結された条約を根拠に、エジプトには少なくともナイル川の流量の3分の2を使用する権利があり、ダムや灌漑用水路の建設といった開発プロジェクトをナイル川上流地域で行うことに関して、拒否権を持っていると主張している。

英国が1929年に作成したエジプトとスーダン間のナイル川の割当水量に関する合意(1959年に改訂)は、ナイル川の上流地域にあたる国々に相談することなく締結された。

Caricature of Cecil John Rhodes, after he announced plans for a telegraph line and railroad from Cape Town to Cairo.
Caricature of Cecil John Rhodes, after he announced plans for a telegraph line and railroad from Cape Town to Cairo.

1959年の合意では、ナイル川の年間平均水量840億立方メートルのうち、エジプトが555億立方メートル、スーダンが185億立方メートルを利用できると定めている。残りの100億立方メートルは、エジプトが1970年代に建設したアスワンハイダムによってできたナセル湖で蒸発してしまう。他方で、ナイル川に接する他の9か国には何の権利も与えられなかった。

この取り決めは、ナイル川上流の国々に対して不公平な内容に見えるが、ナイル川以外にも水源として降雨を期待できる上流の赤道地帯に位置する山岳国家とは異なり、砂漠気候に位置するエジプトとスーダンは、ほぼすべての水需要をナイル川に依存している。

「ここまで危機感が高まっている理由の一つとして、このダムの建設によってエジプトの取水量が実際どの程度影響を受けるのか誰も知らないという現状があります。エジプトは全くナイル川に依存した国です。ナイル川がなければ、エジプトは存在しないと言っても過言はないのです。」とカイロにあるアメリカン大学(AUC)のリチャード・タットワイラー氏はIPSの取材に対して語った。

エジプトの懸念には正当な根拠がある。同国の「人口一人当たりの最大利用可能水資源量」は僅か660立方メートル(1700立方メートルが最低基準とされ、これを下回る場合は「水ストレス下にある」状態、1000立方メートルを下回る場合は「水不足」の状態、500立方メートルを下回る場合は「絶対的な水不足」の状態を表す:IPSJ)で、既に世界最低レベルにあるが、これから50年の間に人口が倍増しさらなる水不足が予想されている。

一方、ナイル川上流域の国々も人口増加の問題に直面しており、それに伴う農業用水や飲み水の需要をナイル川からの取水で賄おうという考えが魅力的な選択肢として浮上してきている。

2010年、エチオピア、ケニア、ウガンダ、タンザニア、ルワンダのナイル上流域5か国はエンテベ協定を結び、これまでの協定に代わって、他のナイル川流域の国の水の安全保障に「重大な」影響を与えないかぎり、ナイル川に関するあらゆる活動を認めると取り決めた。ブルンジも翌年、この協定に署名した。

The six African presidents who signed the Entebbe Agreement/Newscast Media
The six African presidents who signed the Entebbe Agreement/Newscast Media

エジプトは、この新協定を断固拒否した。しかし、これまで数十年に亘って貧しいナイル川上流域諸国に対する影響力を駆使して水利開発を抑え込んできたエジプト政府も、今やナイル川の水資源に対する支配権が失われていっている現実に直面している。

「エチオピア政府の行動は前代未聞です。かつてナイル川上流域の国が下流域の国の承諾を得ることなく一方的にダム建設に踏み切ったことはありません。もし、他の上流域の国がエチオピアの前例に続いた場合、エジプトは深刻な水不足に陥ることになるでしょう。」とカイロに本拠を置くアフリカ研究所(Institute for Africa Studies)のアイマン・シャバーナ氏は、昨年6月にIPSの取材に対して語っている。

エジプト政府はこの協定を「挑発的だ」として、グランド・ルネッサンス・ダムの建設が下流地域に及ぼす影響が明らかになるまでエチオピアに建設作業を停止させるよう国際機関に提訴した。エジプトの政府関係者は外交的手段による危機回避を切望する旨を表明しているが、治安当局筋によるとエジプト軍当局はナイル川に関する国益を守るためには軍事力を行使する用意ができているという。

ウィキリークスに掲載された軍事情報機関「ストラトフォー」からの漏洩された電子メールによると、2010年、ホスニ・ムバラク大統領(当時)はエチオピアによるダム建設を空爆で阻止する計画を打ち出し、スーダン南東部に出撃拠点となる空港を建設していた。

しかし、ナイルの問題に関してはエジプトの同盟国だったスーダンが2012年にグランド・ルネッサンス・ダムに対する反対を取り下げ逆に支援に回ったことで、エジプトは窮地に追い込まれている。

AUCのタットワイラー氏によると、ダム建設による自国への影響が最小限に止まると判断したスーダン政府は、むしろこの巨大プロジェクトがもたらす恩恵に着目しはじめたのだろうという。グランド・ルネッサンス・ダムが稼働すれば、下流地域の洪水制御や灌漑という点でもメリットが発生するうえに、エチオピアの電力需要を満たしたあとの余剰電力を、国境をまたぐ送電線を通じて電力事情が切迫しているスーダンに引き込めるメリットも期待できる。

また研究の中には、エチオピアにおける水力発電ダムを適切に制御すれば、洪水被害を軽減できるのみならず、エジプトが取得する全体的な取水量を増やすことも可能だとするものも出てきている。砂漠地帯にあるエジプトのアスワンハイダムよりもより涼しい気候のエチオピアのダムで貯水することで、太陽熱に奪われる河川の水量を大幅に抑制できるのである。

しかし、エジプト政府はグランド・ルネッサンス・ダムの貯水にかかる5年とも10年ともいわれる期間に、自国への水量割り当てが少なくなることに深い懸念を示している。この点についてタットワイラー氏は、「エチオピアが必要なのは電力です。水力発電ダムは堰き止めた水を通過させて初めて発電ができるのです。」と述べ、エチオピア政府がその期間に下流への流れを大幅に制限したり停止したりする可能性は低いと指摘している。

翻訳=INPS Japan

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水不足は国境を越える

ハーグ核安全保障サミットの話題となった非核国ウクライナ

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【国連IPS=タリフ・ディーン】

前評判が高かった「核安全保障サミット」(NSS)は、3月25日まで2日間にわたりオランダのハーグで開催されたが、ウクライナ騒乱をめぐる問題に政治的に終始してしまった。旧ソ連のウクライナは、1994年に約1800発の核兵器を廃棄し、世界でも最も成功した軍縮の取り組みだと評価されていた。

しかし、ここには答えが出ていない問題が残っていた。ロシアのウラジミール・プーチン大統領は、もしウクライナが今でも米国とロシアに続く世界第3位の核保有国であり続けていたとしても、果たして軍事介入を行っただろうか、という疑問である。

John Loretz/IPPNW
John Loretz/IPPNW

核戦争防止国際医師会議」(IPPNW)のプログラム・ディレクターであるジョン・ロレツ氏は、ウクライナが仮にソ連崩壊後も核兵器を保有し続けたとして、この紛争の経緯が今と違った形であるとすれば、唯一考えられる状況は、「2つの核兵器国が、政治的危機のさなかで、互いに考えられないことをする(=核兵器を使用する)意思を試し合っているというものになるだろう。」と指摘したうえで、「核抑止は機能し、従ってウクライナは核兵器を保有していればより安全だっただろうとする主張は、安直であり、とても支持することはできません。」と語った。

ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)』紙は3月19日付の社説で、ウクライナが核兵器を保有していたとするならば、プーチン大統領がこれほど素早くクリミア(自治共和国)を侵略したかどうかはわからない。しかし、少なくともプーチン大統領はもう少し躊躇したであろう。」と指摘したうえで、ウクライナの運命は「イランや北朝鮮といった世界のならず者国家に、核施設あるいは核兵器を放棄する意志を弱めさせたのではないか。」と論じた。

さらに同紙は、「そして、サウジアラビア、そしておそらくはエジプトを含めた一部の中東諸国は、もしイランが核武装化すれば、自らも核オプションを検討することになるだろう。ウクライナの運命は、米国からの保証を信用していない国々の意志を固めるだけの結果に終わるのではないか。」と論じた。

グローバル安全保障研究所」のジョナサン・グラノフ所長は、こうした議論を否定して、「WSJ紙の論理が正しいと仮定してみましょう。そうすると、核兵器の拡散を押しとどめている核不拡散条約(NPT)の中心的な前提が、条約に従って核という恐ろしい兵器を保持せずにきた180ヵ国を超える国々の安全保障上の利益に反しているということを意味してしまいます。」「大多数の国の安全保障上の利益に反するような条約は長持ちしません。」と語った。

Jonathan Granoff
Jonathan Granoff

米国法曹協会(ABA)軍備管理・安全保障委員会の上級顧問でもあるグラノフ氏は、「より問うべき問題は、核兵器を保有する国が増えることで世界はよくなるのか、それとも、NPTが要求するように核兵器を普遍的に廃絶することがより安全な道なのか、ということです。」と指摘したうえで、「もし核兵器が普遍的に禁止され、核兵器が生み出す恐怖や敵意が減少すれば、より安全な世界における私たち共通の利益をより冷静に見極めることができるのではないだろうか?」と問いかけた。

ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)欧州安全保障プログラムの責任者イアン・アンソニー博士は、「核兵器による安全保障の未来を、そもそも達成不可能な完全なるリスク不在の上に構築していくことはできません。つまり、世界的な核による安全保障は、達成してからそれを永続的に保てるようなものでなく最終的な状態ではありえないのです。」とIPSの取材に対して語った。

アンソニー博士はまた、「核の保安上のリスクを低減するために必要な道具立ては、変化する政治的、経済的、技術的条件に沿うように、継続的に作り替えられなくてはなりません。」「核保安の取り組みを長期的に維持していけるかどうかは、このプロセスをいかに多国間化できるかに結局のところかかっています。」と指摘した。

複雑な核燃料サイクルを持つ一部の国は、核安全保障サミットに参加しなかった。「しかし、これらの国もどこかの時点で関与し、プロセスに入ってこなければならないだろう。」とアンソニー博士は付け加えた。

ハーグサミットは、非国家主体やテロリストが核兵器あるいは核物質を入手することを予防するのが目的であった。

ハーグ核安全保障サミットは3回目で、1回目は2010年にワシントンDCで、2回目は2012年に韓国ソウルで開かれた。

先述のウクライナの運命に関するWSJの仮定の議論について、グラノフ氏は、「WSJ紙の近視眼的な見方は、経験的に定義可能な脅威を歪めるものです。その脅威の中でもとりわけこれ以上無視することができないのは、核兵器には引き続き、偶発的、意図的、あるいは狂気によって使用されうる現実的なリスクがあるということです。」と語った。

そのうえでグラノフ氏は、「(私たちは核兵器で威嚇し合うよりも)ロシアや米国、英国、中国、インド、イスラエル、パキスタン、フランス、北朝鮮、ウクライナの全ての市民が等しく直面している人類の存亡に関わる脅威、例えば、気候変動や熱帯雨林の破壊や海洋汚染、さらには感染病やサイバー安全保障、テロ、金融市場のようなきわめて重要なグローバルな脅威に関して協力し合う方がよいのではないでしょうか?」と語った。

ロレツ氏はIPSの取材に対して、「核抑止が機能するとの証拠はなく、単にこれまで失敗していないにすぎないのです。もし『核抑止が失敗することはありえず、100%機能すると信じている者がいるとすれば、単に空想の世界を生きているのです。』と指摘したうえで、「1962年のキューバ危機を思い起こしてみるとよいでしょう。単純でばかばかしいような幸運が(核戦争勃発という)大惨事の回避と関係しただけで、合理的な意思決定があったわけではないのです。事実、そんなものは殆どなかったのです。」と語った。

さらにロレツ氏は、「より多くの国が核兵器を取得するようになると、抑止が破れて核兵器が使用される日が単に近づくことになります。ほとんどの国がこの避けがたい結論に数十年前に到達しているのです。だからこそ我々にはNPTがあり、世界から核兵器を完全になくすまでの間、その重要性を失わせないよう懸命になっているのです。」と指摘した。

ロレツ氏は、(核兵器の人道的影響に関する国際会議/非人道性会議)2013年のオスロ会議、2014年のナヤリット会議から生まれた近年の「人道的アプローチ」は、誰が保有していようと核兵器の存在そのものが問題であり、核の使用を予防する唯一の確実な方法はその非合法化と廃絶だという理解を基礎にしています、と語った。

「この人道的な観点は、核兵器の政治的な有用性に関するあらゆる主張を無効にします。

Second conference on the humanitarian impact of nuclear weapons
Second conference on the humanitarian impact of nuclear weapons

なぜなら核兵器の政治的有用性を訴えるいかなる主張も、結局のところは核兵器を使うと脅しをかければ相手方か引き下がるだろうというギャンブルに帰着するからです。」とロレツ氏は強く主張した。

「現在の危機においては、そのようなギャンブルは、誰もやるべきではないロシアン・ルーレットのゲームになってしまうだろう。」とロレツ氏は語った。

「議論の便宜上、ソ連が崩壊したときに残された戦略核兵器をウクライナが保持していたと仮定してみましょう。」とロレツ氏は語った。

「はたしてそれによって、地域に長くあった違いが対処しやすいものになったでしょうか? あるいは、ロシアが、大きな政治的・経済的野望を持つ地域において、力を誇示することを控えようとするでしょうか? あるいは、ウクライナの欧州との関係、特に北大西洋条約機構(NATO)との関係が、今よりも単純なものになり、ロシアにとって挑発的なものでなくなっていたでしょうか?」

「そんなことは断じてあり得ないというのが答えです。」とロレツ氏は主張した。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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核保有国の問題を避ける核安全保障サミット

米ロ軍縮交渉は2歩後退

核廃絶のエネルギーを削ぐ「核の恐怖」の脅威(ケビン・クレメンツ、オタゴ大学平和紛争研究センター教授)

核兵器のない世界への道筋(池田大作創価学会インタナショナル会長)

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【IPSコラム=池田大作】

「核兵器の人道的影響」をテーマにした国際会議が、昨年のオスロでの会議に続いて、2月にメキシコで行われた。

科学的検証に基づき、そこで出されたのが次の結論である。

「核兵器爆発の場合に、適切に対処し、または必要とされる短期的、長期的人道支援と保護を提供できる能力を持つ国や国際機関は存在しない」広島と長崎への原爆投下から来年で70年を迎えるが、今もって、核兵器の使用がもたらす壊滅的な結果から、人々の生命と尊厳を守る手段など、世界のどこにもありはしないのだ。

2012年5月以来、「核兵器の人道的影響に関する共同声明」の発表が4回にわたって重ねられる中、共同声明に賛同する国々の輪が広がりをみせている。

だがメキシコの会議には、国連安保理の常任理事国である核保有5カ国は参加しなかった。今、最も必要なのは、共同声明に賛同する国々と保有国とをつなぐ、“共通言語”を見出すことだと言えよう。

共同声明の背景には、「核兵器がもたらす惨劇を誰にも味わわせてはならない」と訴え続けてきた広島と長崎の被爆者をはじめ、核兵器廃絶を求める人々の力強い支持があった。

146カ国の代表が出席したメキシコ会議でも、議長総括において、人間の尊厳に反する核兵器を禁じる法的枠組みが必要であるとし、「この目標に資する外交プロセスを立ち上げる時が到来した」との認識が示された。国連加盟国の4分の3にあたる国々が、核兵器のない世界を求める意思を共有した意義は大きい。

一方で保有国の間でも、他の兵器とは異なる核兵器の性質を、多くの指導者が核のボタンの責任を背負う中で感じ取ってきたことが、〝核不使用の楔〟になってきたのではないかと思われる。

その意味で、双方をつなぎうるものは、「誰も核兵器がもたらす壊滅的な人道的結果を望んでいない」との思いではないだろうか。

私はかねてより、原爆投下から70年となる来年に「核廃絶サミット」を広島と長崎で開催することを提唱してきた。

その参加者として、共同声明に賛同する国々や、NGOの代表をはじめ、保有国を含む各国の青年たちを主軸に据えることで、「世界青年核廃絶サミット」と銘打って開催してはどうだろうか。

そこで、核時代に終止符を打つ誓いの宣言を青年が中心となって取りまとめ、核兵器に安全保障を依存する状況からの脱却を図る出発点とすることを呼び掛けたい。

さらに関連して、私は二つの提案を行いたい。

第一の提案は、来年の核不拡散条約(NPT)運用検討会議で「核兵器の壊滅的な人道的結果」を中心議題の一つに取り上げ、核軍縮の誠実な追求を定めたNPT第6条の履行を確保する措置として、「核兵器の不使用協定」の制定に向けた協議を立ち上げることである。

そして、この協議を突破口に、北東アジアや中東など非核兵器地帯が実現していない地域で、その前段階としての「核不使用地帯」の設置を目指すべきではないだろうか。“核の傘”の下にありながら共同声明に賛同した日本は、被爆国としての原点に立ち返って、「不使用協定」の成立とともに、「核不使用地帯」の設置に向け、積極的に貢献することを強く望みたい。

第二の提案は、このNPTに基づく枠組みと並行させる形で、共同声明の取り組みなどを軸としながら、国際世論を幅広く喚起し、核兵器の全面禁止に向けての条約交渉を開始することである。

例えば、条約には「核兵器による壊滅的な人道的結果に鑑み、安全保障の手段として核兵器に依存することを将来にわたって放棄する」との趣旨の条文だけを設けて、具体的な禁止事項や廃棄と検証に関する内容は議定書で定めるという方式も考えられよう。

かりに議定書の発効に時間がかかったとしても、条約の締結をもって、“核兵器は世界にあるべき存在ではない”との国際社会の意思を決定づけることが何よりも重要だと思われる。

4月11日から12日に、軍縮・不拡散イニシアティブ(NPDI)の12ヵ国外相会議が広島市で行われる。また4月28日からは、ニューヨークの国連本部でNPT再検討会議の第3回準備委員会も始まる。

この機を逃さず、市民社会の力強い後押しで世論を喚起し、核兵器の禁止と廃絶に向けた挑戦を加速させることが急務である。

「核兵器のない世界」の建設は、核兵器の脅威を取り除くことだけが目標ではない。平和と共生に基づく時代への道を、民衆自身の手で切り開く挑戦に他ならない。そしてそれは、将来の世代を含めて、すべての人々が尊厳を輝かせて生きていくことのできる「持続可能な地球社会」の必須の前提となるものだ。(原文へ

※池田大作氏は日本の仏教哲学者・平和活動家で、創価学会インタナショナル(SGI)会長。池田会長による寄稿記事一覧はこちらへ。

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ジンバブエで10代の妊娠が増加

【ブラワヨIPS=タンデカ・モヨ】

プリティ・ニャティ(仮名:17歳)は、無理やりベッドから体を起こすと、子どもに授乳してから背中に紐でくくり、ブラワヨ市内の街頭で売るための野菜を調達しに急いで市場へと向かう。彼女は毎朝目覚めるたびに「人生こんなはずではなかったのに…」というやり場のない喪失感に苛まれている。

「10代で母親やっているなんて何も面白いことなんてないわ。」「時計の針を戻して、再び学校に通って他の女の子たちみたいにできたら、どんなにいいことか。」とニャティはIPSの取材に対して語った。

ニャティの母親は5年前に他界し、ブラワヨジンバブエ第二の都市)の北東116キロのトショロットで酒場(shebeen)を営む祖母と暮らすようになった。

14才の時、ニャティは酒場の客にレイプされた。「おばあさんに助けを求めたけど、追い出すぞって脅されて、どうしようもなかった…。」

まもなく祖母は、ニャティに売春婦として客を取らせるようになった。「たくさんの男と寝たけど、避妊はしなかったわ。」とニャティは語った。

2012年、彼女は祖母のもとを逃げ出し、ブラワヨで路上生活を始めた。街中で客を引いていたが2か月後に妊娠が発覚、しかも病院からはHIV陽性だと告げられた。その後ニャティは、ある牧師に助けられて保護施設で暮らせるようになり、ムピロ病院で抗レトロウィルス薬による治療も受けられることになった。幸い、子どもはHIV陰性だった。

「神のご加護で、この子はHIV陰性だったわ。」とニャティは語った。

ニャティは今では親戚宅に身を寄せて、抗レトロウィルス薬による治療を受けながら、「少なくともこの子が学校に行くまで見届けたい。」として、エイズの進行を抑える効果があるとされるバランスダイエットに挑戦している。

「ジンバブエ人口保健調査(ZDHS)」によると、15~19歳の女子の出産率は2006年には1000人中99人だったが、2011年には112人に上がっている。

「これは大幅な上昇です。」と国連人口基金(UNFPA)ハラレ事務所のスチュワート・ムチャペラ氏はIPSの取材に対して語った。

ニャティのように農村部に暮らす少女は都会で暮らす少女よりも10代で妊娠する確率が2倍も高くなっている(都市部の1000人中70人に対して農村部では144人)

危険な妊娠

「思春期は身体に急速な変化が生ずる時期にあたるため、若者がこの発達段階を安全に乗り切るためには大人たちによる適切な指導が必要です。」とムチャペラ氏は語った。

ムチャペラ氏は、十代の妊娠率を引き上げている要因として、思春期に関する適切で正確な情報が不足している現状を挙げ、「そのために、若者が不十分な知識しかない同世代の友人が提供する情報や無軌道なインターネット検索情報に頼らざるを得ないでいる。」と指摘した。

また、『児童婚』のような文化的・宗教的規範によるものや、異世代間の性交渉(intergenerational sex)、金品と引き替えに要求される性交渉(transactional sex)のような社会問題による要因を挙げた。

先述の「ジンバブエ人口保健調査」によると、15~19歳の性的に活発な女性のうち9割が何らかの婚姻状態にあり、そのなかで15歳になる前に性的関係を持った女性の3分の2が、意思に反した性交渉を経験していた。

さらに、近年の政治経済危機で貧困層が拡大した一方で、保健・教育サービスが途絶した。こうした中、少女らは食料、衣服、通学、安全を確保する手段として、危険な性交渉をするようになった。

ブラワヨで助産師をしているシマンガ・ンコモは、IPSの取材に対して、「年を追うごとに主産する少女の低年齢化が進んでいて心配です。中には14歳やもっと若い子もいましたよ。彼女たちの大半は妊産婦の健康について十分な知識を持ち合わせておらず、妊産婦死亡に繋がるリスクが高いのです。」と語った。

15~19歳の妊婦の死亡率が20代女性の2倍なのに対して、妊婦がさらに若い10~14歳の場合は5倍に跳ね上がる。

シフォ・ニクベもブラワヨ在住の十代の母親である。ニクベは高校での成績は優秀だったが、男の子の妊娠・出産を契機に勉強を止めてしまった。子どもは今では生後7カ月である。

「一時的なつきあいで始めたものが、いろいろなことが重なって気が付けば妊娠していました。避妊具の知識はありましたが、なぜか使いませんでした。」とニクベは語った。ニクベの場合、母子ともにHIVには感染していなかった。しかしジンバブエの労働人口(15~49歳)のHIV罹患率が15%近いことを考えると、結果が異なっていたとしても不思議ではない。

国連児童基金によると、2012年現在、ジンバブエの15~19歳の青年のうちHIV陽性が12万人おり、そのうち6万3000人が女性である。

ニクベは、ブラワヨ郊外の人口密集地ムポポマ地区に2部屋の家を借りて2人の兄弟(13歳と7歳)の面倒を見ている。彼女の両親は南アフリカ共和国に出稼ぎに行っており、年に3回帰ってくるが、普段は僅かな仕送りがあるだけである。子どもの父親はジンバブエ西部のヴィクトリア・フォールスで働いており、余裕のある時は仕送りをしてくれている。

「今は全てを後悔しているわ。でも自分がしでかした馬鹿げた選択と共に生きていくしかないのよ。今は高校に復学してこの子を育てることができたらいいなと思っています。」とニクベはIPSの取材に対して語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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核兵器なき持続可能なグローバル社会へ

【ベルリンIDN=ラメシュ・ジャウラ】

アイルランドの詩人ウィリアム・バトラー・イェイツは、1919年の有名な詩「再臨(The Second Coming)」で、第一次大戦後の混乱と無秩序についてこう書いている。「世界はバラバラになり、中心は持ちこたえられない/無秩序がこの世にぶちまかれ/いたるところに血で濁りきった潮が押し寄せ/無垢な儀式(従来の慣習を重んじる伝統的な階級)を飲み込んでしまう/すべての信念が失われ、最悪が/熱を帯びて充満している。」世界戦争こそ起きていないが、ふたたび世界がバラバラになっていくような現代、仏教哲学者で教育者の池田大作創価学会インタナショナル(SGI)会長は、希望を捨てず「グローバルな変化を引き起こすための価値を創造する」方途を示している。

東京に本拠を置く在家仏教組織で、世界に1200万人以上の会員を擁するSGIの創立記念日(1月26日)に寄せて、池田会長は「21世紀の潮流を希望と連帯と平和の方向に力強く向けながら、全ての人々が尊厳を輝かせて生きられる『持続可能な地球社会』を築くための方途についての考え」を提言している。

池田会長は、1月26日に発表された2014年の「平和提言」の中で、持続可能な地球社会を築くために肝要な3つの領域に焦点を当てた提言を行っている。3つの領域とは、①世界市民教育、②異常気象や災害による被害を減らすための地域的協力メカニズムを設置することによって、アジアやアフリカなどの地域でレジリエンス(深刻な外的ショックに対して社会を回復する力)を強化すること、③核兵器の禁止・廃絶である。

池田会長は、「近年、災害や異常気象による被害が深刻化する状況を踏まえると、国際的な支援の強化のみならず、『いかに脅威に備えるか』『危機に直面した時どう対応し、どう回復を図るのか』との観点に基づいた取り組みが急務であり、社会のレジリエンスを高める必要性が叫ばれるようになってきました。」と述べている。

つまりそれは、共通の目標に向けて協働しその目標に向けた前進を確かな手応えとして感じたいという人びとの自然な欲求に根差した、希望ある未来を実現することである。池田会長はこれを「未来を創るための人類の共同作業(それぞれの地域で誰もが関わることができる、持続可能な地球社会のかけがえのない基盤を築くプロジェクト)の一体的な側面」と呼んでいる。

世界市民教育

UN General Assembly/ Wikimedia Commons
UN General Assembly/ Wikimedia Commons

池田会長は、持続可能な地球社会を築くためには、特に青年に焦点をあてた世界市民教育が重要だと考えている。「持続可能な開発目標(SDGs)」と呼ばれるあらたなグローバル開発目標の採択が予定される2015年9月の国連サミットを念頭に置き、池田会長は、次のような内容を教育関連の目標に含めるべきだと強く呼びかけている。すなわち、「初等・中等教育の完全普及」、「すべての教育レベルでの男女格差の解消」、「世界市民教育の促進」である。

池田会長はまた、「世界市民教育プログラム」の骨格に据えることが望ましい3つの観点として、①人類が直面するさまざまな問題への理解を深めるような教育、②グローバルな危機が悪化する前に、それらの兆候が表れやすい足元の地域において、その意味を敏感に察知し、行動を起こしていくための力をエンパワーメントで引き出す教育、③自国にとって利益となる行動でも、他国にとっては悪影響や脅威を及ぼす恐れがあることを常に忘れず、他の人々の苦しみを思いやる想像力と同苦の精神を養う教育、を提起している。

さらに池田会長は、教育と並んでSDGsで焦点が当てられるべき領域として「青年」を挙げ、SDGs策定にあたって、含められるべき3つのガイドライン(①「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)」の確保に各国が全力を挙げること、②社会が直面する問題を解決するプロセスに「青年の積極的な参加」を図ること、③国境を越えた友情と行動の連帯を育む青年交流を拡大すること)、を提案している。

とりわけ交流を通じて育まれた友情や心の絆は、憎悪や偏見に基づく集団心理に流されない防波堤として機能するだろう。池田会長は、これらがSDGsに含まれることには大きな意義があると考えているのである。

レジリエンスのための地域協力

また2014年の「平和提言」には、アジアやアフリカをはじめとする各地域で、異常気象や災害の被害を軽減する地域協力メカニズムを立ち上げて、レジリエンスを強化すべきとの提案が含まれている。池田会長は、こうしたメカニズムは、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の下で発展してきたグローバルな規模での対応策と並行する形で機能するだろうと、と述べている。

池田会長は、「事前の備え」「被災時の救援」「復旧・復興」を一連のプロセスとしてとらえ、近隣諸国の間で災害対応の協力体制を築いていくよう呼びかけるとともに、「レジリエンスの強化や復興支援の面で、近隣諸国が息の長い協力を積み重ねていく中で、助け合いと支え合いの精神を地域の共通化として育むことが可能なのです。」と述べている。

ARF DiREx 2013
ARF DiREx 2013

池田会長は、そうした地域協力の先鞭を、災害による被害が最も深刻であるアジアがつけ、世界の他の地域にも「レジリエンス強化と復興支援の協力の輪」を広げる流れをつくることを呼びかけている。そして、そのような基盤が、(災害救援に関する協力のあり方を定期的に)討議する枠組みを持つASEAN地域フォーラム(ARF)において既に存在している点を指摘したうえで、ARFでの実績をベースに「アジア復興レジリエンス協定」を締結することを、アジア地域の国々に訴えている。

さらに池田会長は、姉妹都市間の交流と協力を通じてレジリエンスを強化する取り組みをさらに推奨している。これによって、地域を通じた平和的共存の空間を創出する重要な基盤となるだろう。現在、日中間で354、日韓間で151、中韓間で149の姉妹都市協定がある。さらに、1999年以来、同種の交流を促進するために、日中韓地方自治体会議が毎年開催されている。

池田会長は、環境問題での協力など、この種の協力に向けた対話を開始するため、できるだけ早く日中韓サミットを開催すべきだと強く訴えるとともに、「来年3月に仙台で行われる『第3回国連防災会議』を契機に、どのような協力を具体的に進めるかについての協議を本格化させることを、呼び掛けたい。」と述べている。

核兵器なき世界に向けて

UN World Conference on Disaster Risk Reduction
UN World Conference on Disaster Risk Reduction

池田会長はまた、「先に論じた地震や津波などの被害は、事前の備えで被害の軽減は図れても発生自体は止められないものであるのに対し、その災害以上に取り返しのつかない惨劇をもたらす核兵器の脅威は、大多数の国々の明確な政治的意思を結集することができれば、防ぐことのみならず、なくすことさえ可能なものであります。」と論じている。

この点に照らして、池田会長は、核兵器の禁止と廃絶が持続可能な地球社会の背骨であると考えている。そして、2010年核不拡散条約(NPT)運用検討会議の最終文書、および、ノルウェーのオスロで昨年3月に開催された「核兵器の非人道性に関する国際会議」は、核軍縮・不拡散をめぐるすべての協議の中心に「核兵器の人道的影響」を据えることを求めるますます多くの国々の努力を後押しするものだった、と述べている。

2012年5月以来、これらの政府はこの問題に関する共同声明を繰り返し発し、4回目となった昨年10月の声明の際には、賛同国が「核の傘」の下にある日本などを含めた125か国に拡大した。

池田会長は、核兵器は他の兵器とは決定的な違いがあること、核兵器は決して超えてはならないラインの向こう側に存在すること、核兵器がもたらす惨劇を誰にも味わわせてはならないこと、などの共通認識を強調したうえで、「この認識は、核兵器が国家安全保障上の目的を実現するために使用されうるという考え方そのものを超えるために極めて重要だ。」と論じている。

池田会長は、被爆70周年にあたる2015年に広島・長崎で核廃絶サミットを開くべきとの提案を繰り返した。とりわけ、「核兵器の人道的影響に関する共同声明」の署名国に加え、地球市民社会の代表、特に世界中からの若者たちが「世界青年核廃絶サミット」に集い、核時代に終止符を打つ誓いの宣言を採択するよう望む、と記している。

Photo: The remains of the Prefectural Industry Promotion Building, after the dropping of the atomic bomb, in Hiroshima, Japan. This site was later preserved as a monument. UN Photo/DB
Photo: The remains of the Prefectural Industry Promotion Building, after the dropping of the atomic bomb, in Hiroshima, Japan. This site was later preserved as a monument. UN Photo/DB

これに並行して池田会長は2つの提案を行っている。ひとつは、核兵器不使用協定の締結である。池田会長の見方では、これは、核兵器の人道的影響の問題を2015年NPT運用検討会議の議論の中心に置いた当然の帰結であり、核兵器国が核軍縮を誠実に追求することを約束したNPT第6条の履行を促進する方法でもある。

池田会長は、核兵器国が、NPTの中心的精神に根差した義務のひとつとして、条約加盟国に対して核兵器を使用しないと誓う不使用協定の締結は、同盟国の核の傘に依存している国々に対して物理的・心理的安心を高め、核兵器に依存しない安全保障取り決めへの道を開くことになる、と論じている。

池田会長の第2の具体的提案は、「核兵器の人道的影響に関する共同声明」の取り組みを軸としながら、国際世論を広く喚起し、核兵器の全面禁止に向けた交渉を開始することである。

「『不使用協定』も最終目的にいたる橋頭堡にすぎないだけに、核兵器の禁止と廃絶に向けた挑戦を加速させることが急務であり、市民社会の連帯で後押しすることが欠かせません。」 

ICAN
ICAN

池田会長は、「『深刻な対立が存在した』からこそ危険だった時代から、深刻な対立が抜け落ち、『核兵器が存在しつづけている』からこそ危険という時代へと移り変わった」と指摘したうえで、「冷戦時代には『抜き差しならない対立』が互いの危機意識を高め、抑止政策によって核兵器が角突き合せる対峙を招いていたのに対し、現在では、『世界に核兵器が存在している状況』が常に不安を生むために、新たに保有を望む国が出てきたり、どの保有国も核兵器を手放せない心理が働いているとは言えまいか。」と述べている。

さらに、核兵器をなくすためのもうひとつの冷静な議論は、6年前に始まった世界経済危機が、世界ほぼすべての国々の財政的基盤を揺るがしたということである。にもかかわらず、このますます有用性が低くなる兵器を維持するために、全核保有国で毎年1000億ドルもの資金が費やされている。

結果として、核兵器は「国の威信を高める資産」というよりも、「国の財政を傾ける重荷」になりつつあるとの声が人びとの間で高まりつつある。池田会長は、「こうした状況に鑑みて、保有国は核兵器の存在がもたらす脅威を削減するための行動に踏み出すべきだ。」と述べている。(原文へ

翻訳=INPS Japan

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【ドバイWAM】

アラブ首長国連邦(UAE)の英字日刊紙は、22日から2日連続で日本海に向けて短距離ミサイル(計46発)を発射した北朝鮮の行動について、国際社会ののけ者国家(pariah state)の現政権は「危険なほど予測不能」であることから「全ての国にとっての最良の策」として、これを無視するよう各国に呼びかけている。

同紙は3月24日付の論説の中で、「北朝鮮によるミサイル発射は、韓国が毎年米国と実施している共同軍事演習(野外機動訓練「フォール・イーグル」)を牽制する象徴的な意味合いがある。国際社会が北朝鮮包囲網を形成しているという妄想にとらわれている同国は、この米韓軍事演習を侵略行為と見なすとともに、外国からの侵略に備えて常に警戒態勢を維持する大義名分にしている。」とドバイに本拠を置くガルフ・ニュース紙が報じた。

「しかし、60年前にこの国が危険な個人崇拝に基づく国づくりに乗り出して以来、国民を洗脳し恐怖と拷問で支配する専制国家に成り下がったというが現実である。」

「その結果、北朝鮮は恐怖を梃に行動を繰り返し、南の隣国(韓国)の安定と北東アジアの平和を脅かしてきた。抑制のきかない核開発にせよ、虚偽発表が絶えない大陸弾道ミサイル技術にせよ、国家による数世代に及ぶ人権侵害にせよ、現政権の動向は危険なほど予測不能である。」と同紙は報じた。

「一つ明らかなことは、北朝鮮は国際社会からの譲歩と栄養失調に苦しむ国民のための食糧援助を獲得するために、あえて危険な行動に出る『瀬戸際外交』に熟達した国になっているということである。」とガルフ・ニュース紙は結論付けた。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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