【ハノイIPS=ヘレン・クラーク】
ベトナム戦争中に米軍によって大量に撒布された猛毒ダイオキシンを含む枯れ葉剤のベトナム人被害者に正義は訪れるのだろうか。3月2日米国最高裁は、米化学薬品大手ダウとモンサント2社に対するベトナム被害者の上告審を棄却した。
以来地元紙は人権が踏みにじられたと報じ、外務省のLe Dung広報官は国は憤慨していると述べたが、2004年に始まった訴訟は終わりを迎えるようだ。米国の裁判所は、枯れ葉剤と奇形などの先天的異常の因果関係は認められないと裁定。さらに米国の法律では、これらの企業は政府の命令で行動したので訴追を免れる。
希望の道は、友好協会やNGOそしてオバマ新政権に対する圧力強化など、「ソフトパワー」の面から開けるかもしれない。
オーストラリア国防軍士官学校のカール・タイヤー氏は「現政府はこれを二国間関係の障害にはしたくないと考えているが、何らかの補償を要求している有権者を抱えている。国家統制下にあるメディアや政府高官の非難は、真の不満の表れと言えるだろう」と述べている。
さらに続けてタイヤー氏は「枯れ葉剤の汚染地帯の浄化の援助に300万ドルを割当てるなど米政府の対応と、次第に改善しつつある国家安全・防衛上の提携には、暗黙の関連があると思う。枯れ葉剤問題は、ベトナムの政治制度や社会全体に影響力を及ぼしうる道を米国に与えている」と言った。
オバマ政権に期待を寄せる者もいる。英越友好協会のレン・アルディス事務局長は3月2日の最高裁の決定に抗議して、オバマ大統領宛の公開書状を2通用意、「裁判所の決定にもかかわらず、大統領には枯れ葉剤被害者と家族に損害賠償を支払う政策を策定する権限がある。それは大統領の道義的責任である」と訴えている。
ベトナムの人々は、枯れ葉剤の使用を引き起こした戦争についてもはやこだわっていないと言いながらも、枯れ葉剤に対する思いは大きい。戦争は過去のことだ。しかし先天的異常をもって生まれてきた子どもたちや癌に苦しむ復員兵は違う。
1984年には米復員兵との和解で1億8,000万ドルの補償金を支払った米政府だが、ダイオキシンと先天的異常の因果関係を否定している。
第3世代まで影響が出ているベトナム枯れ葉剤被害者問題について報告する。 (原文へ)
翻訳/サマリー=IPS Japan 浅霧勝浩
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