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世界に衝撃与えたアラル海の縮小

【ヌクスIDN=ラウシャン・バリカノフ】

国連の潘基文事務総長は、4月4日、消滅しつつあるアラル海を上空から視察した。また、岸辺にたった潘事務総長は、「『砂に埋まったまま打ち捨てられた船の墓場』以外には何も見えない。」と語った。

アラル海は、カザフスタンとウズベキスタンの間にある。かつては、世界第4位の広さを誇る内海であった。しかし、いまや、50年前の面積のわずか4分の1しか残されていない。

 アラル海は「島々の海」を意味し、かつてこの内海に点在した1500以上の島々が語源となっている。人類は、数千年に亘って、アラル盆地に注ぐ河川(アムダリヤ川、シルダリヤ川)の豊かな水の恩恵を受けてきた。残されている記録によれば、20世紀初頭には、アラル海周辺における灌漑農業は十分に持続可能な状況であった。

しかし、60年代から70年代に入ると、乾燥したソヴィエト中央アジアにおける綿生産のための水の消費量が多くなり、水が枯渇し始めた。アラル海の水面はかつて66,100㎡(琵琶湖の約100倍)であったが、1987年までには水量の60%が失われ、水深は14メートル減少した。その結果、水中の塩分濃度が2倍になりアラル海での漁業は不可能となった。

また、水位の減少により、アラル海とそこに流れ込む河川の生態系は破壊されてしまった。干上がった大地には大量の塩分と有害物質が残され、それが風で巻き上げられて周辺住民に健康被害が発生することとなった。ガンなどの発生率はきわめて高いと伝えられている。

現在ではアラル海の面積は50年前の25%程度に縮小し、北側の小アラル海と南側の大アラル海に分かれている。小アラル海についてはシルダリア川デルタにおける堤防建設で水量の回復が確保されたが、専門家よれば、大アラル海は向こう15年以内に消滅する見通しである。

中東アジア歴訪の最後の訪問地ウズベキスタンで同国シャヴカト・ミルズィヤエフ首相とヘリコプターでアラル海を視察した潘事務総長は、ヌクスでの記者会見で、「(アラル海の惨状にはショックを受けました。これは明らかに世界最悪の環境破壊のひとつです。あの広大な海が消失するとは…深い悲しみとともに強烈な印象が私の心に刻まれました。」と語った。この環境破壊の結果、アラル海周辺の住民は病気になり、土地は汚染され、塩分と有害物質を含んだ埃は、風に運ばれて遠くは北極圏にまで達する事態となっている。



「アラル海で起こっていることは、私たちが環境を無視して乱開発し、共通の自然資源を破壊すれば、どのような事態になるかをまざまざと示しています。」
 
 その後首都タシケントで開かれた夕食会で講演した潘事務総長は、「今回のアラル海の上空からの視察は、2008年に視察したアフリカのチャド湖を彷彿とさせるものでした。チャド湖の場合もアラル海の場合と同じく、数百万人におよぶ周辺住民に深刻な被害を及ぼしながら水面の大半が消滅してきたのです。」

「私は、アラル海の悲劇は中央アジア諸国のみならず、全世界の集団責任だと思います。今回の視察でアラル海の問題に取り組む中央アジア諸国政府の様々な試みを知り、感銘を受けました。」

潘事務総長は、中央アジア5カ国のイニシャチブで設立されたアラル海救済国際基金を評価するとともに、同基金の努力に国連も支援していくことを約束した。

「私たちは地球環境に対してより良き管理人にならなければなりません。私たちは子々孫々が安心して環境的にも持続可能な生活ができるよう、地球環境を守り受け継いでいく道義的、政治的責務があるのです。」と、潘事務総長は語った。

アラル海とそこに流れ込む河川の生態系は、とりわけ塩分濃度の上昇によりほぼ破壊された。またアラル海周辺の土壌は汚染され地域住民は水不足と様々な健康被害に苦しんでいる。

水面が後退したことで塩分と有害物質で覆われた湖底が表出し、これに風が吹き付け、有毒な埃となって周辺地域に拡散している。アラル海周辺の住民の間では高い率で癌をはじめとする様々な呼吸器系の病気が発症している。地域の穀物も土壌に堆積した塩分により破壊された。

国連は、このまま何の手当てもしなければ、アラル海は2020年には消滅してしまうと見積もっている。

アラル海の生態系の破壊は、突然始まり急速に進行した。1960年代の初頭から、ソ連が「自然改造計画」の一環として実施した綿花栽培のための灌漑やアムダリア川の上流部にカラクーム運河を建設したことにより、アラル海の水位は激減した。

その後もウズベキスタン、カザフスタンをはじめとする旧ソ連を構成する中央アジア諸国は、漁獲高の減少、水質・土壌汚染、汚染大気物質の飛散を含む様々な環境被害が広がっているにもかかわらず、綿花をはじめとした輸出用作物を栽培するためにアラル海に流入するはずの水を使い続けた。

灌漑農業を編重した政策はその他にも直接的な被害を引き起こした。この時期、デリケートな生態系を持つ流入河川のデルタ地帯は穀物地帯に転換され、アラル盆地周辺の全地域において大量の殺虫剤が使用された結果、アラル海の水質汚染は深刻なレベルで悪化していった。また過剰な灌漑の結果、多くの耕作地に塩が集積された。

1990年代初頭までにアラル海の表面積は約半分に、水量は25%程度まで減少した。その結果、多くの副次的影響が表面化し始めた。例えば地域の気候が、より大陸的なものとなり、作物の生育期間が短くなったことから、綿花から水稲に切り替える農家が続出した。しかし水稲は綿花よりより多くの水を必要とするため問題はさらに深刻化した。

アラル海の縮小によりむき出しとなった地表は28,000㎡に及び、推定4300万トンの塩分と殺虫剤を含む堆積物が強風で周辺地域に運ばれ、深刻な健康被害をもたらしている。

このアラル海を起源とする汚染された砂塵嵐は、遠くは北極圏やパキスタンでも観測されている。その結果、特に呼吸器疾患が広がり、咽喉癌が急増した。またアラル海地域の植生の減少は年間降雨量の減少に繋がったとみられている。

カザフスタン・ウズベキスタン・トルクメニスタン・タジキスタン・キルギスは1992年にアラル海再生に向けた相互協力を約した協定を締結したが、その後ほとんど有効な対策はとられなかった。同諸国は1994年1月に再び会合を開き、各国が節水を努力しアラル海救済国際基金に拠出することが合意された。しかし、同基金によると、アラル海の縮小は今日も進行中で、南側の大アラル海は消滅の危機に瀕しており、その将来は不透明なままである。

翻訳=INPS Japan浅霧勝浩

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軍縮をすべき10億の理由

【バルセロナIDN=バドリヤ・カーン】

「世界には武器があふれており、他方では飢餓が蔓延している。」これは何も新しいスローガンではない。これは、世界が年間1兆ドル以上を武器に費やす一方で、10億人以上が腹をすかせているという証明済の事実を述べたものだ。

 最新の数字を見る限り、今日の世界では軍縮を進める10億の正当な理由がある。しかし現状を変革できるチャンスは、あったとしても限りなくゼロに近いものだ。 

なぜなら、武器取引という商売が、あまりにも莫大な利益を生む、そして政府や道理をも超越した強大な政治力を持った産業だからである。 

ここにいくつかの具体的な事例を紹介しよう。ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が今年4月に発表したところによれば、世界の軍事企業トップ100社による2008年の武器売り上げは(前年比で)390億ドル増加して、3850億ドルに達したことが明らかになった。 

米国企業が依然としてリストの上位を占めているが、今回はじめて、非米国企業であるBAEシステムズ(英国)がトップの座に躍り出た。 

「引き続き、アフガニスタンとイラクにおける戦闘が、装甲車両、無人航空機、ヘリコプター等の軍装備売り上げに大きく貢献している。」とSIPRI報告書は説明している。 

軍事企業トップ100社のうち、45社が北米企業(1社を除きすべて米国)で売上高は全体の60%を占めている。以下、34社が西欧企業(売上高32%)、7社がロシア企業(売上高3%)、それに、日本、イスラエル、インド、韓国、シンガポールの企業が続いている。 

欧米先進諸国の実態 

これは世界の武器取引の実に95%が、民主主義、自由、人権の擁護者を自認する米国及び西欧諸国によって行われていることを示している。まさにこれらの国々こそが、いわゆる「自由のための戦争」をとおして、自由の擁護者たる自らの価値モデルを、組織的に世界に押しつけてきたのである。 

さらに事例を紹介する:装甲車両を製造している米企業ナヴィスター(Navistar)社の売上高は1年で960%増加した。 

ロシア企業Almaz-Antei 社は、2008年に初めてトップ20入りした。 

軍事企業トップ100社のうち、前年より売上げを落としたのはわずかに6社に過ぎず、一方で年間売上を10億ドル以上伸ばした企業が13社、また、売上高を30%以上伸ばした企業は23社にのぼった。 

SIPRIによると、こうした軍事企業の売上が伸びた要因には、アフガニスタン、イラクの戦場に要する軍事装備・物資の調達需要に加えて、軍事トレーニングサービス関連の売り上げが世界的に伸びたこと等が挙げられる。 

一方、国連はより驚くべき数字を発表していている。すなわち世界全体で武器購入に費やされる予算が年間1兆ドルを大幅に超えており、さらに増大傾向にあるというのである。 

軍縮 

この数値は、国連の潘基文事務総長が4月19日に開催された軍縮に関する国連総会の会合において明らかにしたものである。 

「世界には武器があふれており、他方では飢餓が蔓延しています。」と、潘事務総長は軍縮と安全保障に関する討議に先立って、国連総会の出席者に語りかけた。 

「優先順位を変えるべきです。軍縮を進めることにより、私たちは(軍事予算から)解放された資金を、気候変動対策や、食の安全保障への取り組み、さらにはミレニアム開発目標の達成のために活用することが可能になるのです。」と、潘事務総長は語った。 

また潘事務総長は、大量破壊兵器のみならず、通常兵器を規制していくことの重要性を強調した。「小型武器が誤った人々の手に堕ちれば、多くの命が失われ、平和への努力は阻害され、人道支援は妨害を受け、麻薬などの不正取引が蔓延り、投資や開発が滞ることになるのです。」と、潘事務総長は語った。 

国連総会のアリ・トレキ議長は、5月の核不拡散条約(NPT)の運用検討会議を成功させ、包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効に向けた具体的な手順を踏んでいけるよう、加盟各国に協力を求めた。 

またトレキ議長は、「(核問題にのみならず)国際社会は、小型武器を含む通常兵器の生産、使用、輸出入についても、真剣に取り組んでいくことが極めて重要です。」と述べ、生物化学兵器拡散の脅威にも取組んでいく必要性を強調した。 

日常の脅威 

トレキ議長によれば、一方で、核兵器は実に悲惨な効果を伴なったとはいえ人類史上二度(広島・長崎への原爆投下)しか使用されていない。しかし、通常兵器は日常的に世界各地で紛争に火を注いでおり、国際社会の平和と安全保障に対する深刻な脅威となっている。 

トレキ議長は、「さらに(核戦力とは異なり)通常戦力では力の不均衡が即、『脅威認識と軍拡競争』に結びつき、地域・国際間の平和と安全保障を脅かす問題へと発展するのです。」と警告した。 

一方、潘事務総長は、4月13日から14日にかけてワシントンで開催された核安全保障サミットの成果を踏まえて、テロリストの核関連物質入手を阻止する努力を具体化することを目的とした、一連のハイレベル会合の開催を提案した。 

国連総会は5年前に、「核によるテロリズムの行為の防止に関する国際条約(核テロリズム防止条約)」を採択しているが、今日までに批准した国は、国連加盟国の3分の1にあたる65カ国にすぎない。 

潘事務総長は、「これは全く満足できる状況ではありません。」と述べ、全ての核分裂性物質の備蓄状況を正確に管理する透明性のある管理体制と、その生産を抑制する信頼できる国際的な仕組みを作る必要性を強調した。 

また潘事務総長は、「検証可能で法的拘束力がある核分裂性物質生産禁止(カットオフ)条約が発効しない限り、どのような努力も中途半端な結果に終わってしまいます。」と述べ、ジュネーブ軍縮会議が一刻も早くカットオフ条約締結に向けた協議を開始するよう繰り返し強く要請してきたことを指摘した。 

犠牲者は増加し続ける 

大量破壊兵器の絶え間ない脅威から世界を開放すべきだとする様々な呼びかけがなされている一方で、そうした兵器の大半が米国及び西欧諸国によって絶え間なく日々生産・販売されている現実は、意図的に無視されている。 

例えばこの現実が意味することは、世界が武器購入に費やす年間1兆ドルの資金があれば、気候変動に伴う災害から十分地球を救えるということである。 

また、人類の6人に1人にあたる10億2百万人が恒常的に飢餓に苦しんでおり、一人当たり1.5ドルの支援を1週間継続するだけで、地球上から飢餓を根絶できることも明らかにされている。 

飢えている10億の人々救うのには、年間440億ドルしかかからない。この金額は毎年軍需産業に費やされている1兆ドルからしてみれば、ごく僅かな金額である。(原文へ) 

翻訳=IPS Japan戸田千鶴 

This article was produced as a part of the joint media project between Inter Press Service(IPS) and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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ラメシュ・ジャウラ国際協力評議会会長記念講演を収録

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Filmed by Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director, President of IPS Japan.

ドイツから来日したラメシュ・ジャウラ国際協力評議会会長(IPS欧州総局長)を憲政記念館に迎えて開催した記念講演会を収録した映像。IPS Japanから海部俊樹会長が挨拶と浅霧勝浩理事長が通訳兼進行、石田尊昭理事がレセプションを担当した。

翻訳=INPS Japan

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核サミット後の安全保障

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【ワシントンDC・IDN=アーネスト・コレア】

バラク・オバマ大統領が招集した「核安全保障サミット」には47ヶ国の代表が集まった。そのうち30ヶ国以上は元首による参加である。彼らは、「ならず者」からの核攻撃―「非国家」主体による場合もあれば、ルールを守らない国家主体によるものもある―に対して世界を安全に保つための道筋に関して、小さくはあるが重要な合意に到達した。 

ジャヤンタ・ダナパラ氏は「47ヶ国が核物質と核技術の保全に関する合意に至ったことは、とりわけ、核兵器の拡散と非国家主体による核兵器の取得という危険性をなくす点で、歓迎すべきことだ。」と語った。ダナパラ氏は、1995年の核不拡散条約(NPT)運用検討・延長会議の議長であり、1998年から2003年にかけては国連事務次長(軍縮担当)を務めた。現在は、「科学と世界の諸問題に関するパグウォッシュ会議」の議長であり、米国平和研究所ジェニングス・ランドルフ上級客員研究員でもある。

 ダナパラ氏は「これに関する規範は、核物質と核施設の物理的防護に関する条約とその改正によってすでに確立されている。核テロの問題についても、国連安保理決議1540と、核テロ防止国際条約がすでに存在する。」と付け加えた。また、「残念なことに、核安全保障サミットに参加した47ヶ国がすべてこれら2つの条約に署名・批准しているわけではない。本当の問題は、悪人が持っているのでも善人が持っているのでもない核兵器にあるのだということを銘記しておかねばならない」と指摘した。 

本当の問題は核兵器がいまだに存在し続けていることにあるというダナパラ氏の指摘は、オバマ大統領の見方とも合致する。オバマ大統領は、2009年4月のプラハ演説で、「核兵器のない世界の平和と安全を目指す」ことを明らかにした。 
盗難・紛失あるいは使用されるリスクから核物質の安全を確保することは、平和を目指す人々が希求する核兵器なき世界の追求のあくまで一環に過ぎない。 

義務 

米国は「ならず者」からのテロ攻撃の対象になりうると考えられている。なぜなら、アルカイダは、核物質の取得が主要目的であるとみずから明確にしているからだ。 

その他の国々もこうした攻撃に対しては脆弱である。たとえば、ムンバイでテロ攻撃を仕掛けた者たちが「スーツケース核爆弾」をもし使っていたら、被害がどれ程のものだったかを想像してみればよい。 

高濃縮ウランやプルトニウムが紛失・盗難されたケースはこれまで18件以上ある。2000トン以上のプルトニウムと高濃縮ウランが数ヶ国に貯蔵されているが、中には盗難に対する備えを持たない国もある。 

こうした目の覚めるような事実を前に、核安全保障サミットの参加者たちは、「核テロは国際社会の安全にとって最も重大な脅威のひとつであり、核保全の措置を強化することは、犯罪者又はその他の権限のない者による核物質の取得を防止する上で最も効果的な手段である。」という見方で一致した。したがって、核安全保障サミットの目標は、核装置製造に利用しうる物質が最大限防護されるような管理体制の構築に向けて動き出すことにあった。 

 オバマ大統領はサミット終了に際して記者会見でこう述べた。「私は今朝、『今日という日は、核物質をテロリストの手に渡らないようにするために、各国が個別あるいは集団で、核物質の保全強化に向けた公約と明確な措置をとる機会となるだろう。』と述べました。」「今晩、我々はその機会を確かに手にしたこと、そして、個別国家として、国際社会として、(本日の会議において)我々が取ってきた措置によって、米国民はより安全になり、世界はより安心感を得るであろうことをご報告します。」 

サミット・コミュニケの公式サマリーはその要点を以下のようにまとめている。 

・すべての脆弱な核物質の管理を4年以内に徹底する必要性を認識する。 

・核物質の保全と計量を改善する各国別の努力がなされるべきこと、プルトニウムと高濃縮ウランに関する規則が強化されるべきことを提案する。 

・高濃縮ウランと分離プルトニウムには特別な予防措置が必要。高濃縮ウランの使用の最小化を奨励する。 

・核保全と核テロに関する主要な国際条約の普遍的加入を推進する。 

・「核テロリズムに対抗するためのグローバル・イニシアティブ」のようなメカニズムが、法執行機関、原子力産業界、技術者間のキャパシティビルディングに貢献していることを認識する。 

国際原子力機関(IAEA)が、核保全に関するガイドラインを策定し、その実施に関する助言を加盟国に対して行えるような資源を獲得するために行動する。 

・二国間あるいは多国間での安全保障支援を、それが最善の結果をもたらす場合において実施する。 

・原子力産業が核保全に関する経験を共有することを求め、同時に、保全措置によって各国が原子力の平和利用の利益を享受することが妨げられないようにする。 

サミットは、このコミュニケに加え、作業計画と、それへの参照ガイドを策定した。 

イニシアチブ 

またサミットでは、参加政府がこれまで既に行ってきた、あるいはこれから行う予定の試みについて発表する機会もあった。例えば: 

ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相と米国のヒラリー・クリントン国務長官は、両国が保有している兵器級プルトニウム34トンを原子炉で燃やすことによって処理する2000年の合意を更新した。加えて、ロシアのメドベージェフ大統領は、プルトニウム生産炉を閉鎖する計画を再確認した。 

ウクライナは、高濃縮ウランの備蓄90kg分を放棄し、研究炉で使用するウランを高濃縮から低濃縮に切り替えると発表した。2012年を目標達成の年とする。 

カナダは、大量の使用済み高濃縮ウラン燃料を医療用アイソトープ生産炉から米国に返却すると発表した。「大量破壊兵器及び関連物質の拡散に対するG8グローバル・パートナーシップ」を拡大延長したものである。また、メキシコとベトナムから高濃縮ウランを除去する資金援助、世界核安全研究所による交流ワークショップのオタワでの主催、ロシアとの新たな二国間安全協力に1億ドルを供与といった策も発表した。 

インドは、グローバル原子力パートナーシップセンターを設立し、核安全に必要な知識を生産・普及させていくとの方針を披露した。 

チリ、カザフスタン、ベトナムは、民生施設で利用された高濃縮ウランを処理する合意を結んだ。 

これらは、あくまで代表的なものに過ぎない。総じて言えば、個別国家による特定の試みは、核保全に向けた動きが実際に始まっていることを示している。 

非拘束 

サミットの主要成果は単に拘束力のないコミュニケであり、起草の苦労をそれほど要しないものにすぎないという批判が間違いなく出てくるであろう。 

また、その核濃縮計画が今日の核を巡る国際不安の最大の源だとみなされているイランに対していかなる行動をとるべきかについて、サミットでは合意もなければ議論もなされていないという不満が既に出てきている。 

たとえばイスラエルが保有しているような秘密の核備蓄については議題に上らなかったし、オバマ大統領は実際、その問題が記者会見で出されたときも回答を避けた、ということもできる。 

サミットの参加国は米国が選び、普遍的な参加ではなかったという事実も、サミットの成果を損なうものだとの見方も出てくるだろう。 

支持 

これらは重要な問題であり、これからも問題にされ続けるであろう。しかし、拘束力のないコミュニケしか出されなかったことは、決定的な欠陥ではない。なぜなら、「拘束力ある」合意ですら、しばしば破られることがあるからだ。さらに、30ヶ国以上の元首が署名したコミュニケが簡単に無視されるとも思えない。 

世論のもう片方側をみれば、核安全保障サミットの成果を評価する声もある。たとえば、核問題の専門家であり、長年にわたって核軍縮に向けて努力してきたサム・ナン元米上院議員は「我々はいま、分裂ではなく協力に向かって近づきつつある。」と語った。 

英国のデイビッド・ミリバンド外相は、「サミットは核問題に関する『冷笑主義の文化』を破壊することに成功した。」と語った。 

軍備管理協会のダリル・キンボール事務局長と同協会の核不拡散専門家ピーター・クレイル氏は、「サミットでは、核テロのリスクは各国で共有されており、単に米国にとってだけの脅威ではないということを指摘することができた。」と述べた。2人は、「米国議会が、世界中で核安全を高め違法な核密輸を取り締まる事業を支援する」よう求めた。 

課題 

オバマ大統領にとっては、核安全保障サミットは2009年4月のプラハ演説で打ち出した完全なる核軍縮という目標につながる、もうひとつの一里塚となるものだ。オバマ大統領は、日本に訪問した際、「核兵器なき世界に向けた共同声明」という形でこの目標を再確認している。 

「プラハの春」に対する当初の熱狂から1年が過ぎ、米国政府はその精神をさらに涵養しようとしている。米国は、核兵器への依存を低減するとした「核態勢見直し」(NPR)を発表し、他方で、核不拡散条約(NPT)を強化しようとしている。ロシアとは戦略兵器削減条約(START)の後継条約を結んで、両国の戦略兵器の数を削減することに合意した。そして、今回の核安全保障サミットである。この次は、2010年5月のNPT運用検討会議だ。 

次回の核安全保障サミットは2年後に韓国で開かれることになる。2009年から10年にかけての約束と希望が、すべての当事者によってどれだけ実現されるか、2012年に向けてどれだけの実行がなされるかによって、世界が(核保全を含めた)核軍縮に向けての準備ができているのか、それとも今日の大いなる希望と構想が明日の大きな失望に変わるのかが、測られることになろう。 

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩 

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|中央アフリカ共和国|被害児童に教科書を

【ナイロビIDN=バブカール・カシュカ】

中央アフリカ共和国は、近年における政府軍と反政府武装勢力による散発的な衝突に加えて、数十万人に及ぶ難民を生みだしたコンゴ民主共和国の政情不安の影響を受けている。 

国連諸機関はできる限りの支援を行っているが、国際連合児童基金(UNICEF)は、同国の紛争に巻き込まれた子供達145,000人を対象に、教科書(国語、算数、科学)の支援を行っている。

UNICEFは今日までに、ベルギーの資金援助を得て、数学の教科書60,000冊、フランス語(公用語)教科書60,000冊、教師用ガイドブック2,400冊を中央アフリカ共和国教育省に寄贈している。

国連人道問題調整部(OCHA)によると、中央アフリカ共和国における就学率は低く、2008年の調査によると男子が56%、女子が49%であった。また、退学率も特に女子が高く54%に及んでいる。さらに、教科書不足が深刻で、生徒9人につき2冊しか普及しておらず、教育の質を向上するうえで大きな障害となっている。 

国際支援が不可欠 

中央アフリカ共和国の状況は深刻である。 

「10年にわたる政府軍と反政府武装勢力間の抗争と経て今年ようやく選挙に向けた準備が進められている中、中央アフリカ共和国を政治的危機状態に戻らないようにするためには、国際支援が不可欠です。」と、サーレワーク・ゼウデ(Sahle-Work Zewde)国連事務総長特別代表は語った。 

ゼウデ特別代表は、「とりわけ2010年4月末までに元兵士の武装解除・動員解除・社会復帰(DDR)作業を完了させ無事選挙を実施できるかどうかが、その後の中央アフリカ共和国の政治プロセスの方向性を決めることになります。国内で進行中の仲介努力や平和イニシャチブを通じて、来る選挙に向けて新たな政治危機が発生しないよう、引き続き取り組んでいく必要があります。」と強調した。 

ゼウデ特別代表は、今日における中央アフリカ共和国の政情不安の背景には、和平プロセスに未だ参加していない武装勢力と、国境を越えて侵入してきたウガンダの反政府武装勢力「神の抵抗軍」の暗躍があると語った。 

ゼウデ特別代表は、平和合意に署名した様々な反政府武装組織の元兵士の社会復帰作業を加速するとともに、「現在DDRプロセスの対象となっていないカラ、グーラ(Goula)、ロウンガ(Rounga)等の少数民族民兵や各地の自警団を含む各種武装勢力の武装解除も進めていかなければならない。」と語り、未だ和平プロセスに組み込まれていない各種武装グループの武装解除を進めるよう呼びかけた。 

潘基文国連事務総長は、安全保障理事会への報告の中で、「元兵士の武装解除・動員解除・社会復帰(DDR)作業開始がこれ以上遅れることは、予定された選挙に悪影響を及ぼすばかりか、武装解除を待つ元兵士達の不満や暴力への回帰につながりかねない。」と述べ、迅速な武装解除と動員解除の重要性を強調した。 

コンゴ難民 

また中央アフリカ共和国は、南に隣接するコンゴ民主共和国の政情に大きく影響を受けている。2009年10月末、コンゴ北西部にあたる赤道州ドンゴ地域の漁業・農業権を巡って、エンイェレ(Enyele)族の民兵がムンザヤ(Munzaya)族を襲撃した。 

この地域紛争は赤道州全体に広がり、北西に隣接するコンゴ共和国に114,000人、コンゴ民主共和国の他の諸州に60,000人、そして北に隣接する中央アフリカ共和国に17,000人が難民として州境/国境を越えて流込していった。 

ジョン・ホームズ国連人道問題調整官(事務次長)は、「コンゴ共和国の国民は、再びコンゴ民主共和国の内戦から逃れてくる難民を寛大に受け入れた。」と語った。 

コンゴ共和国のアンフォンドの南に位置するリランガの、ウバンギ川沿いで暮らす難民の数は10万人を超えるまでに増えた。難民家族は、全長500kmに及ぶ川岸に沿い、100以上の小人数の集団に分かれて点在している。国連によると、その多くの地域では、難民数が地元村民の数を5対1の割合で大幅に上回っている状況である。 

旧フランス植民地の中央アフリカ共和国は、コンゴ民主共和国、スーダン、チャドの南部に隣接する「不安定な三角地帯」に位置し、アフリカでも最も貧しい10カ国に位置している。人口の95パーセントの人々は毎日2ドル以下で生活しており、同国の人間開発指標は0.369で182カ国中179位である。人口のうち100万人以上は孤立し、保健医療、教育、その他基本的なサービスを受けられない状況におかれている。また、20万人もの国内避難民が存在し、農業が崩壊しているため、食糧確保が不安定な状態にある。 

中央アフリカ共和国の国土は623,000平方キロで人口は2008年現在440万人、首都はバンギである。国土の大部分が標高600m以上の台地で北部にはボンゴ山地が聳え立つ。中部から北部にはサバンナが広がり、南部には熱帯雨林が広がる。また北部と南部にはウバンギ川(南のコンゴ川に注ぐ)、シャリ川(北にチャド湖に注ぐ)が流れている。 

中央アフリカ共和国の主な輸出産品は地場産アルコール、ダイヤモンド、象牙であるが、中でも最重要品目はダイヤモンドで、総輸出額の40%から55%を占めている。しかし中央アフリカ共和国から産出されるダイヤモンドの30%から50%が非合法な手段で国外に持ち出されている。

翻訳=IPS Japan

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近代的な核安全保障事業を目指して

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【ベルリンIDN=ラメシュ・ジャウラ】

米国の核兵器施設群を「現代的で21世紀の核安全保障事業」に相応しいものに転換していくことこそ、バラク・オバマ大統領がロシアのドミトリー・メドベージェフ大統領との間で4月8日に署名した新戦略兵器削減条約(新START)で明らかにしたオバマ政権の核安全保障戦略の中核をなす部分である。

新核安全保障事業は、米国の納税者に2015会計年度までの間、毎年76億ドルの負担をかけることとなる。また2011会計年度には、それに加えてミサイル防衛計画に99億ドル(2010会計年度より7億ドル増)の予算が投入される見込みである。

21世紀型の核安全保障事業は、米国の核抑止力維持はもとより、核不拡散、核テロ対策、緊急時対応、諜報機関支援といったその他の核安全保障関連の使命を遂行していく上で、極めて重要な位置を占めるものと考えられている。

 新START締結に合わせて発表された67ページからなるブリーフィングブック(新STARTと核態勢見直しに関する米国政府の核政策を説明した上院議会へのブリーフィングブック)によると、米国政府はこの点を考慮して、「時代遅れの(核兵器・関連施設の)物理的インフラの近代化に加えて、(核抑止力の)基礎である知的インフラの再活性化に投資する。」予定である。

エネルギー省国家核安全保障局(NNSA)には、幅広い核安全保障任務に加えて、「米国が貯蔵する核兵器を安全かつ安定した信頼性の高いものに維持強化する」任務が法律によって規定されている。

「オバマ大統領がNNSAのために議会に要求した2011会計年度予算は、同政権の核抑止政策及びその裏打ちとしての核安全保障事業に対するコミットメントを反映したものである。その予算要求には2010会計年度予算と比較して10%増の70億ドルを超える核兵器アクティビティ予算(核兵器貯蔵支援、科学・技術・エンジニアリング、インフラストラクチャー改善、安全保障及び核テロリズム対策)が含まれている。」と、ブリーフィングブックは指摘している。

国務省と国防省が共同で作成したこのブリーフィングブックには、以下の予算要求が明記されている。

核兵器貯蔵支援(貯蔵している核兵器をメンテナンス、オーバーホールする事業)への25%割り当て増資(具体的には以下の作業を含む):

-W76-1(老朽化が進んだW76核弾頭〈トライデントⅠ型・Ⅱ型用の多頭型核弾頭、破壊力は100ktでヒロシマ・ナガサキに投下された原爆の5倍以上〉の一部部品を更新し寿命を延長したもの)への変換作業を完遂して核弾頭の寿命を30年間延長する。
B61核爆弾(0.3-340kt)の耐用年数、安全・操作性、及び新型戦闘機・爆撃機への搭載適応能力を研究する。
W78核弾頭(335-350kt)を維持していくための将来的なオプションを研究する。
-引き続き全ての核兵器のメンテナンス、監視、検証を行う。

要求予算はまた、コンピュータ・シミュレーションによる核実験・検査能力の維持や、(コンピューターアニメーション等を通じて)将来求められるものを予測する能力開発を段階的に進めていく目的で、科学、技術、エンジニアリングへの予算について、前年比10%以上の増額を求めている。

オバマ政権は、「老朽化したプルトニウム・ウラン保管施設の長期的な建て替え事業を含む物理的インフラ近代化事業や備蓄兵器管理計画(Stockpile Stewardship Management Program)に携わる」科学者、専門技術者、エンジニアへの再投資を行う計画である。

またオバマ政権は、2015会計年度まで毎年76億ドルを投入して備蓄兵器管理への支援を維持・増大させる予定である。

「これらの投資を通じて、科学的な技術革新で幅広く安全保障上のニーズに対応するとともに、環境管理を通じて米国の核抑止維持に専念する高度に訓練された技術専門家チームをNNSAの核安全保障事業に確保することができる。」とブリーフィングブックは記している。

弾道ミサイル

またブリーフィングブックには、「新STARTの条項には、現行及び将来予定されている米国のミサイル防衛計画における実験、開発、(迎撃ミサイル)配備、及び米国の通常兵器による長距離攻撃能力に関して一切制約が加えられていない。」という断固とした主張が明記されている。

「米国は、米国本土、在外駐留米軍、及び同盟国、友好国を弾道ミサイルの脅威から守るためにミサイル防衛の開発・配備を行っている。」とブリーフィングブックは説明した上で、引き続き「新STARTには、米国が引き続きミサイル防衛開発・配備することに関して制限が設けられていない。しかし同条約の前文には、2009年7月にオバマ・メドベージェフ両大統領が共同宣言で合意したとおり、戦略攻撃兵器と戦略防衛兵器との相互関係を認識するとの一文がある。ただし前文に掲げられた目的と原則には法的拘束力がない。」と追加している。

ブリーフィングブックは、後に米露間で深刻な論争となるかもしれない両国間の重要な不一致点に言及している。

第1次STARTの場合と同じく、ロシアはミサイル防衛に関して一方的な声明(ロシアは、米国のミサイル防衛が強化されれば新条約脱退の根拠になる)を発している。「(ロシアの)声明は法的に拘束力がなく、従って米国のミサイル防衛計画に制約を加えるものではない。事実、我々(米国)も、同様に一方的な声明を発し、その中で、この条約には、現行及び将来予定されている米国のミサイル防衛計画に制限を加えるいかなる規定も設けられていないことを明確にした。このような(米露の)一方的な声明は、この条約の関連文書ではあるが、条約の一部ではない。従ってこれらの声明に関しては、上院に(参考情報として)提出されるが、上院のアドバイスや同意を必要とするものではない。」とブリーフィングブックは記している。

新STARTは、弾道ミサイル防衛インターセプターの発射基を大陸間弾道ミサイル(ICBM)および潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の配置のために転換も使用もしてはならず、ICBM発射基およびSLBM発射基をミサイル防衛インターセプターの配置のために転換も使用もしてはならないという規定を定めている。しかしブリーフィングブックは、「この条項は、我が国(米国)のミサイル防衛開発や配備計画に影響を及ぼさない。」としている。

ブリーフィングブックは、米国がアラスカ州のフォートグリーリー基地に14基の弾道ミサイル迎撃ミサイル(GBI)格納庫を建設中であることを報告している。米国がミサイル防衛のための新たな発射施設をフォートグリーリー基地かヴァンデンバーグ空軍基地、或いはその他の場所に建設することに関して、新STARTの制限は受けない。

「新START締結前にICBM発射基から転換されたヴァンデンバーグ空軍基地にある5基のGBIは、締結前に転換されたものを例外とするこの条約の規定に基づいて、条約による制限(変換の禁止)の適用を受けない。」

ブリーフィングブックは、様々な方面からの非難を顧みることなく、米国が今後も戦略ミサイル防衛、戦域ミサイル防衛双方について、「本国及び同盟国の安全保障上の必要性に応じて」質量共に向上を図っていく旨を明記している。オバマ政権の弾道ミサイル防衛計画の維持・強化に向けたアプローチは、2010年2月に発表された「弾道ミサイル防衛見直し(BMDR)報告書」に詳述されている。また、オバマ政権が2011年会計年度予算要求に際して、ミサイル防衛計画に99億ドル(2010会計年度比7億ドル増)を要求していることにも反映している。

核戦力構造

さらにブリーフィングブックは、新STARTは「米軍が爆撃機、潜水艦、ミサイルを含む戦力を米国の安全保障上の利益に最も沿う形で柔軟に配備することを保証している」と指摘している。

オバマ政権の核戦略報告書「2010核態勢見直し(NRP)」の作成作業は、新START交渉に向けた米国の立場を確定する作業でもあった。新STARTで合意された戦略核の削減レベルは、NPR作成の初期段階であった2009年に実施した(新STARTの下で想定される新たな制限枠における米軍戦力のあり方に関する)分析に基づいて打ち出されたものである。NPRには以下の結論が明記されている:

-(新START条約の合意では)、戦略的運搬手段(ICBM・SLBM・戦略爆撃機)をSTARTⅠから50%減、2002年のモスクワ条約から30%減となるまで減らすことになるが、安定した抑止は維持される。

-米国の地域抑止と再保証(リアシュアランス)のための非核システムによる貢献は、ミサイル防衛に対する制限を避け、従来の役割内で、戦略爆撃機と長距離ミサイルシステムを使用するオプションを保持することによって維持される。

-新START発効から10年間、米国の戦略核戦力の三本柱である、ICBM、SLBM、及び核爆弾が搭載可能な戦略爆撃機は維持される。また海軍では少なくとも短期的には14隻すべてのオハイオ級戦略原子力潜水艦(SSBN)が維持される。また危機に際して安定性を高めるため、ミニットマンⅢ型ICBMの単弾頭化(de-MIRVing)を実施し、ミニットマンⅢ型ICBMは、それぞれ、核弾頭を1個しか搭載しないようにする。

2011会計年度予算要求には、戦略核戦力三本柱を維持するための以下の項目が含まれている。(①ミニットマンⅢ型ICBMの寿命延長作業の継続、②2027年から退役するオハイオ級戦略原子力潜水艦(SSBN)に代わるモデルの技術開発、③向こう5年間に10億ドル以上を投資しB-2ステルス爆撃機の性能向上を支援。)

新STARTは、米国が同条約の定める制限内で自国の戦略攻撃兵器の構成を決定する権利を認めている。

これによって、米国は今後自軍の核戦力構造を(条約発効後の)戦略的な状況に合わせて調整していくことができるようになる。米露両国は、新STARTで合意した制限内容を(両国議会の批准を経て)発効後7年間で削減合意を履行する。
 
翻訳=IPS Japan浅霧勝浩


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【ワシントンIPS=プラタップ・チャタジー】

米国映画界(ハリウッド)、IT産業界(シリコンバレー)のリーダーが、中東の王族や米政府の高官と協力して、来週ワシントンで開催される核安全保障サミットに出席する各国の首脳に対して、「国際社会は一刻も早く核兵器をゼロに削減する必要がある」というメッセージを送る予定である。

米国のバラク・オバマ大統領は、来週ワシントンにロシアのドミートリー・メドベージェフ大統領、中国の胡錦涛主席、フランスのニコラ・サルコジ大統領、ドイツのアンゲラ・メルケル首相を含む47カ国の首脳を核安全保障サミットに招聘し、核兵器を如何にテロリストの手に渡らないよう安全確保するかについて協議する予定である。今回のサミットには、事実上の核保有国であるインド及びパキスタンも参加する予定であるが、一方でイランと北朝鮮は招待されていない。

 
サミット開催に先立つ4月8日、核廃絶を訴える世界規模の運動「グローバル・ゼロ」の代表がワシントンで記者会見を開いた。

そこでの目玉は、新作映画『ゼロへのカウントダウン(Countdown to Zero)』の発表であった。本作品は、英国のルーシー・ウォーカー女史が監督をつとめ、地球環境問題を扱い賞賛された『不都合な真実』や、『イングロリアス・バスターズ』等のクエンティン・タランティーノ作品を手掛けてきたローレンス・ベンダー氏が制作を担当した。

このドキュメンタリー作品は、オンラインオークションサイト「EBay」の創業者でカナダ出身の億万長者ジェフ・スコール氏の出資を得て制作された。スコール氏はこれまでにもドラマ『チャーリー・ウィルソンズ・ウォー』をはじめ『Food, Inc』といった一連の政治的メッセージを持った映画作品に出資している。
記者会見で映画の広報担当者は、各国元首脳とのインタビュー(ジミー・カーター元米国大統領、ミハイル・ゴルバチョフ元ソ連大統領、トニー・ブレア元英国首長、パルヴェーズ・ムシャラフ元パキスタン大統領)を収録したこのドキュメンタリー作品について、「人類に残された唯一の選択肢は全ての核ミサイルを廃絶すること。」というメッセージを伝えていると語った。

「核兵器は既に政治的、軍事的有用性を失っています。」とリチャード・バート元米国大使は語った。バート大使は1991年同時、旧ソ連との間に進められた第一次戦略兵器削減交渉(START1)の米国側首席代表を努めた人物である。

記者会見の席上でヨルダンのヌール王女や元大西洋軍最高司令官のジョン・シーハン将軍らスピーカーを紹介したバート元大使は、「今日国際社会が直面している危機は核戦争ではなく、核物質の拡散なのです。」と語った。

冷戦の最盛期、米ソ両国は合計で19,000発の戦略核を保有していた。これは地球全体を何百回も破壊するに十分な量であった。その後両国は、戦略核の保有上限を各々2,200発にまで削減したが、オバマ、メドベージェフ米露大統領は7月8日プラハで、新・戦略兵器削減条約(新START)に調印し、米露各々の配備戦略核を向こう7年間でさらに1,550発にまで削減することに合意した。

またオバマ大統領は、4月6日、米国が核兵器を使用する環境を大幅に制限する新「核態勢見直し(NPR)」を発表した。新NPRは、核拡散防止条約(NPT)を順守する国々に対する核兵器の使用禁止の他、核兵器の実験及び新核弾頭の開発停止を謳っている。また、ホワイトハウスに対して、米上院が核実験全面禁止条約(CTBT)を批准・承認するよう働きかけるとともに、同条約の早期発効を目指すよう求めている。

オバマ、メドベージェフ両大統領は、プラハでの新START署名後の共同会見で、イラン・北朝鮮両国がこのままNPTに加盟しなければ報復もあり得るとして、両国への圧力を一層強めた。この際、オバマ大統領が国連による強硬で厳しい追加制裁措置を訴えたのに対して、メドベージェフ大統領は「イランは(米露などによる)これまでの建設的妥協案に反応しておらず、目を閉ざすことはできない。」と述べた。

ただし両大統領が全ての議題に同意したわけではなかった。イランの潜在的な核ミサイルの脅威から欧州を防衛するとして米国が主張してきたミサイル防衛計画については、ロシアは最後まで認めない立場を崩さなかった。

映画制作を担当したベンダー氏とスコール氏は、「核兵器の完全なる廃絶と核物質の徹底管理を求める署名をできるだけ多くの民衆から集めることによって、今日における政治指導者間の交渉の行き詰まりを打破したい。」と語った。

7月9日公開予定の『ゼロへのカウントダウン(Countdown to Zero)』の予告編では、一般市民にまじって世界の指導者が登場し、口々に「(核兵器)ゼロ」を訴える内容となっている。

ベンダー氏は、この映画を北朝鮮やイランでも公開意図があるかとの記者の質問に、「(出来ることなら)是非そうしたい。」と語った。シリアを定期的に訪問し、同じく記者会見に出席したヨルダンのヌール女王は、「私は中東全域の指導者に、この映画を観て核兵器廃絶を訴える宣誓書に署名するよう是非とも働きかけていきたい。」と語った。

一方、反核活動家の間には、「オバマ大統領は、核態勢見直し(NPR)、新START締結、核安全保障サミットという一連の機会を通じて、核問題に関して自らの鳩派イメージを演出している。しかし対イラン・北朝鮮対応を見れば明らかなように、核拡散の脅威に対しては、もっと効果的な対応が出来たのではないか。」といった、オバマ大統領の従来の取組を不十分とする意見もある。

ロス・アラモス研究グループ(ロス・アラモス研究グループ:米国最初の核兵器開発地に因んだ名称)のグレッグ・メロ代表は、「新NPRは大変好戦的なものであり、言い換えれば、『鳩の羽毛を纏った鷹』のようなものだ。新NPRは、リベラルな理想と好戦的な米核戦略の現実の間の折り合いをつけようとしたものである。しかし、米国の核政策は今後もほぼ従来通りの路線を踏襲していくだろう。」と語った。

メロ代表は、プラハ合意を振り返って、「オバマ政権下における今日までの備蓄核兵器の廃棄処分の進捗状況は、ジョージ・W・ブッシュ前政権下の実績にさえ及ばない。新NPRは、一方で世界的な核管理体制強化(核不拡散と核保有国の拡大阻止)を推進しつつ、同時に米国による(必要ならば核抑止による脅迫を含む)「軍事力の行使」を担保することを目的としているのです。」と語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩

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米国映画界(ハリウッド)、IT産業界(シリコンバレー)のリーダーが、中東の王族や米政府の高官と協力して、来週ワシントンで開催される核安全保障サミットに出席する各国の首脳に対して、「国際社会は一刻も早く核兵器をゼロに削減する必要がある」というメッセージを送る予定である。

米国のバラク・オバマ大統領は、来週ワシントンにロシアのドミートリー・メドベージェフ大統領、中国の胡錦涛主席、フランスのニコラ・サルコジ大統領、ドイツのアンゲラ・メルケル首相を含む47カ国の首脳を核安全保障サミットに招聘し、核兵器を如何にテロリストの手に渡らないよう安全確保するかについて協議する予定である。今回のサミットには、事実上の核保有国であるインド及びパキスタンも参加する予定であるが、一方でイランと北朝鮮は招待されていない。

 サミット開催に先立つ4月8日、核廃絶を訴える世界規模の運動「グローバル・ゼロ」の代表がワシントンで記者会見を開いた。

そこでの目玉は、新作映画『ゼロへのカウントダウン(Countdown to Zero)』の発表であった。本作品は、英国のルーシー・ウォーカー女史が監督をつとめ、地球環境問題を扱い賞賛された『不都合な真実』や、『イングロリアス・バスターズ』等のクエンティン・タランティーノ作品を手掛けてきたローレンス・ベンダー氏が制作を担当した。

このドキュメンタリー作品は、オンラインオークションサイト「EBay」の創業者でカナダ出身の億万長者ジェフ・スコール氏の出資を得て制作された。スコール氏はこれまでにもドラマ『チャーリー・ウィルソンズ・ウォー』をはじめ『Food, Inc』といった一連の政治的メッセージを持った映画作品に出資している。
記者会見で映画の広報担当者は、各国元首脳とのインタビュー(ジミー・カーター元米国大統領、ミハイル・ゴルバチョフ元ソ連大統領、トニー・ブレア元英国首長、パルヴェーズ・ムシャラフ元パキスタン大統領)を収録したこのドキュメンタリー作品について、「人類に残された唯一の選択肢は全ての核ミサイルを廃絶すること。」というメッセージを伝えていると語った。

「核兵器は既に政治的、軍事的有用性を失っています。」とリチャード・バート元米国大使は語った。バート大使は1991年同時、旧ソ連との間に進められた第一次戦略兵器削減交渉(START1)の米国側首席代表を努めた人物である。

記者会見の席上でヨルダンのヌール王女や元大西洋軍最高司令官のジョン・シーハン将軍らスピーカーを紹介したバート元大使は、「今日国際社会が直面している危機は核戦争ではなく、核物質の拡散なのです。」と語った。

冷戦の最盛期、米ソ両国は合計で19,000発の戦略核を保有していた。これは地球全体を何百回も破壊するに十分な量であった。その後両国は、戦略核の保有上限を各々2,200発にまで削減したが、オバマ、メドベージェフ米露大統領は7月8日プラハで、新・戦略兵器削減条約(新START)に調印し、米露各々の配備戦略核を向こう7年間でさらに1,550発にまで削減することに合意した。

またオバマ大統領は、4月6日、米国が核兵器を使用する環境を大幅に制限する新「核態勢見直し(NPR)」を発表した。新NPRは、核拡散防止条約(NPT)を順守する国々に対する核兵器の使用禁止の他、核兵器の実験及び新核弾頭の開発停止を謳っている。また、ホワイトハウスに対して、米上院が核実験全面禁止条約(CTBT)を批准・承認するよう働きかけるとともに、同条約の早期発効を目指すよう求めている。

オバマ、メドベージェフ両大統領は、プラハでの新START署名後の共同会見で、イラン・北朝鮮両国がこのままNPTに加盟しなければ報復もあり得るとして、両国への圧力を一層強めた。この際、オバマ大統領が国連による強硬で厳しい追加制裁措置を訴えたのに対して、メドベージェフ大統領は「イランは(米露などによる)これまでの建設的妥協案に反応しておらず、目を閉ざすことはできない。」と述べた。

ただし両大統領が全ての議題に同意したわけではなかった。イランの潜在的な核ミサイルの脅威から欧州を防衛するとして米国が主張してきたミサイル防衛計画については、ロシアは最後まで認めない立場を崩さなかった。

映画制作を担当したベンダー氏とスコール氏は、「核兵器の完全なる廃絶と核物質の徹底管理を求める署名をできるだけ多くの民衆から集めることによって、今日における政治指導者間の交渉の行き詰まりを打破したい。」と語った。

7月9日公開予定の『ゼロへのカウントダウン(Countdown to Zero)』の予告編では、一般市民にまじって世界の指導者が登場し、口々に「(核兵器)ゼロ」を訴える内容となっている。

ベンダー氏は、この映画を北朝鮮やイランでも公開意図があるかとの記者の質問に、「(出来ることなら)是非そうしたい。」と語った。シリアを定期的に訪問し、同じく記者会見に出席したヨルダンのヌール女王は、「私は中東全域の指導者に、この映画を観て核兵器廃絶を訴える宣誓書に署名するよう是非とも働きかけていきたい。」と語った。

一方、反核活動家の間には、「オバマ大統領は、核態勢見直し(NPR)、新START締結、核安全保障サミットという一連の機会を通じて、核問題に関して自らの鳩派イメージを演出している。しかし対イラン・北朝鮮対応を見れば明らかなように、核拡散の脅威に対しては、もっと効果的な対応が出来たのではないか。」といった、オバマ大統領の従来の取組を不十分とする意見もある。

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メロ代表は、プラハ合意を振り返って、「オバマ政権下における今日までの備蓄核兵器の廃棄処分の進捗状況は、ジョージ・W・ブッシュ前政権下の実績にさえ及ばない。新NPRは、一方で世界的な核管理体制強化(核不拡散と核保有国の拡大阻止)を推進しつつ、同時に米国による(必要ならば核抑止による脅迫を含む)「軍事力の行使」を担保することを目的としているのです。」と語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩


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包括的核兵器禁止条約を作るべきとき(ディミティ・ホーキンス)

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【IPSコラム=ディミティ・ホーキンス】

歴史の中で今ほど核軍縮に向けて動くべき好機はないでしょう。現在世界に2万3300発ある核兵器を廃絶したいという希望は、世界の指導者と市民社会の主導によって、明るいスポットライトの中に躍り出てきたのです。 

米国のバラク・オバマ大統領は、昨年4月に行ったプラハ演説の中で、「核兵器なき世界の平和と安全を目指す」と宣言しました。世界の市民社会もこうした目標を共有しています。 

この4月には、米ロ両国が1991年の戦略兵器削減条約(START1)に代わる後継条約に署名しようとしています。そうすれば両国の核兵器は25%削減されるでしょう。現在、米ロ両国で世界の核兵器の96%を保有しています。従って、核兵器廃絶に向けた米ロ間のこうした動きは、歓迎すべきものでもあり、長く待ち望まれていたことでもありました。

 検証可能で完全な核軍縮は段階的な措置だけでは実行不可能で、包括的な枠組みによってのみ実現可能なのだという認識が高まりつつあります。市民団体は包括的な核兵器禁止条約(NWC)を求めているし、それを支持する政府も増えつつあります。 

1997年には、世界中の民間の専門家によって、モデルNWCの発表という大胆な試みもなされました。こうした条約案は多国間フォーラムにおいて長年にわたって議論され、2007年にふたたびモデルNWCが発表されたことで勢いを得ています。国連では、1997年と2007年の2度にわたってモデル条約が承認されているのです。 

政府がこうした協議を進める中、市民社会はふたたび積極的な解決策を打ち出してきています。そうして、実行可能な道筋をつけ、検証可能で包括的なNWCに関する作業を始める青写真を描いているのです。 

NWCは何も目新しいものではありません。しかし、いよいよそれが注目を集めるときがやってきたのです。 

NWCは、核分裂性物質の生産と、核兵器の開発・実験・貯蔵・移転・使用(その威嚇を含む)を禁止することによって、すでに行われている数多くの軍縮交渉を強化することになるでしょう。この条約の加盟国には、すべての核兵器、核物質、施設、運搬手段を申告する義務があります。そして、決められた段階にしたがって自国の核兵器を廃絶していくことになっています。第一段階は、核兵器の警戒態勢を解除することであり、次に兵器を配備状態から撤去し、運搬手段から核弾頭を取り外して弾頭を無能力化し、最後にすべての核分裂性物質を国際的な管理下に置くこととなっています。 

きわめて困難な国内情勢にあって核軍縮を推進することでどれだけの政治的な得点が稼げるのか、という疑問をもつ政府もあります。しかし、市民社会は、この究極の大量破壊兵器を世界からなくすという課題に向かって前進しつづけています。 

国連総会では毎年、NWCの早期交渉入りを求める決議に3分の2の国が賛成しています。「グローバル・ゼロ」が2008年に21カ国で行った調査でもこのことは示されています。回答者の76%が、自国政府が決められた時間枠の中で核兵器を廃絶する法的拘束力のある合意に達することを望んでいるのです。国連事務総長は、核兵器なき世界に向けた5つの提案の中で、NWCを第1点に挙げていました。包括的な条約を作成することに意味があると市民社会は考え、それに同意する政府も増えてきています。核兵器ゼロに向けた計画に及び腰な(特に核兵器を保有している)国々を牽引していくリーダーシップが求められるのは、まさにここの点にあるのです。 

NWCの交渉成功を阻むものは、技術的な問題ではなく政治的なものです。すべての政府からの同意表明が必要であり、それには行動が伴わなくてはなりません。NWCに向けた準備は、核兵器なき世界という目標を実現しようと思うのなら、いま始めなくてはなりません。 

核戦争防止国際医師会議(IPPNW)、平和市長会議アボリション2000婦人国際平和自由連盟創価学会インタナショナル(SGI)核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のようなグローバルな市民社会集団は、協力してこの課題に取り組んでいる。医師や地方政府、平和を目指す女性、宗教人、ビジョンを持った人々を代表するこうした集団は、政府高官や大使と定期的に会合を持って、NWCを推進してきました。 

今年の6月5日には、世界中の人々が「核兵器禁止条約―いまこそできる」という標語の下に同時行動を起こす予定です。世界各国に対して、核兵器ゼロという課題に向けて行動するよう求める予定です。ちなみにこの同時行動は、5月に国連本部で開かれる核不拡散条約(NPT)運用検討会議において実質的な進展がないのではないか、との懸念から発した行動なのです。 

核拡散の脅威が消えない中、発効後40年にもなるNPTへの不満は強まりつつあります。この40年間、核軍縮については満足のいく前進が見られませんでした。NWCは、核廃絶へのロードマップを示すことによって、NPT第6条規定にある「各締約国による誠実に核軍縮交渉を行う義務」を強める効果を持つでしょう。 

今まさに、世界にはNWCを追求すべき理由が少なくとも2万3300あるのです。そして、そのひとつひとつが、行動を不可避のものとしています。市民社会はこのことを知っています。今こそ、各国政府は、世界の多数の人々の期待に応え、永遠に、そしてすべての人々にとって核兵器を廃絶するために、NWCを準備すべきときなのです。(原文へ)(アラビア語) 

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩 

※ディミティ・ホーキンスは、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のキャンペーン担当。オーストラリアのICAN本部に常駐。 



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2つの震災を比較する

【バーリントン(米バーモント州)IDN=アシュリー・スミス】

世界の地殻はつねに変動しているが、このところの2ヶ月間の動きは特に激しい。1月12日、マグニチュード7.0の地震がハイチを襲い、30万人が死亡、150万人が家を失った。2月27日にはチリをマグニチュード8.8の地震が襲い、数百名が死亡、200万人以上が家を追われた。

2つの地震には明確な違いがある。ハイチの地震はマグニチュードが7.0と比較的小さかったにもかかわらず、震源が地表の8マイル下で首都のポルトープランスにも近かったために、被害は甚大になった。他方で、チリの地震はハイチ地震の500倍のエネルギーを持っていたにもかかわらず、震源は人口密集地に遠く地表から22マイル下だったために、比較的少ない被害で済んだ。

 しかし、実際のところ、両国の被害の大きさの違いは、地殻や活断層、震源といった自然現象が生み出したものではなく、社会的状況の違いが生み出したものなのだ。

よく知られているようにハイチは世界で最も貧しい国のひとつであり、人口の80%以上が貧困線以下で暮らしている。

このような状況は、おおよそ米国が生み出したものだと言ってよい。米国はハイチに新自由主義的な経済モデルを押し付けて農業を破壊し、首都の人口爆発をもたらした。しかし、活断層の上にあるポルトープランスにはまともな建築規制がなく、今回のような事態を招いてしまったのである。

他方、チリは、1人あたりの年間国内総生産が1万4700ドルに上る、ラテンアメリカでは比較的裕福な国のひとつだ(ちなみに、ハイチは1300ドル)。チリの先進的な耐震基準は、民主主義的なサルバドール・アジェンデ政権時代の1972年に作られていた。
 
とはいえ、チリでも、アジェンデ政権をクーデターで倒したアウグスト・ピノチェト政権以降の自由主義的経済の流れの中で、利潤獲得に走った建築産業が基準を守らない不動産開発を進めていたため、今回の地震で犠牲になったものが少なくなかった。かつて国家が建設した古い道路や橋は地震で壊れなかったのに、民営化されてからの構築物は実に脆弱だったという。

震災対応の点でも、ハイチとチリでは似通っている部分もある。ハイチで政府が何もできていないのは周知のとおりだが、チリでも、海軍が沿岸部で警告して回らなかったために津波被害を防ぐことができなかったし、家を失った200万人への食料援助は十分行き届いていない。

生活の術を失った人々が「暴徒」と化すと、国際メディアはそのことばかりに焦点をあてるようになり、ハイチでもチリでも軍隊が震災地に派遣されることになった。ハイチには米兵2万人が送られ、チリでは1万4000人の軍隊が動員されて18時間の屋内待機令が出されている。

こうして人々は、実際のところ、自ら助け合って生き延びるしかなくなっている。

「国際社会」からの支援は、実にお粗末なものだ。米国はハイチに1億ドルの支援を約束したが、バラク・オバマ政権は軍事予算に6500億ドルを使っているのである。チリに対しては、欧州委員会が400万ドル、日本が300万ドル、中国が100万ドルを約束したに過ぎない。

ハイチとチリの震災拡大の社会的要因を探る。

INPS Japan


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