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|ロシア|天然ガス供給をめぐりウクライナとの深まる溝

【モスクワIPS=ケスター・ケン・クロメガ】

ロシアからバルト海を経由するノース・ストリーム(North Stream)、ロシアから黒海を経由するサウス・ストリーム(South Stream)。天然ガス資源を豊富に持つロシアが進める欧州向け輸送パイプラインの敷設計画はウクライナとの亀裂をさらに深めようとしている。 

ロシア政府系ガス企業『ガスプロム社』のアレクセイ・ミラー社長は今月初めスペインを公式訪問し、埋蔵量3兆8,000億立方メートルの天然ガスが眠るとされる北海のガス田開発に乗り出すことを約束した。 

一方で、「天然ガス輸送の多極化」よりも「供給元確保」の重要性を指摘する声が大きくなっている。ウクライナの専門家は、ロシアからのパイプライン敷設ラッシュがロシアへのエネルギー依存を一層強めるだけだと懸念を示す。


エネルギー・エコノミストのVolodymyr Vakhitov氏はIPSとの取材で「天然ガスを巡る問題は、国家安全保障・土地所有権・環境といった更なる問題を招く恐れがある」と語った。 

Kiev School of EconomicsのValentin Zelenyuk助教授によると、ウクライナを介したガス輸送手段の多様化および欧州へのガス供給確保を考えると、ロシアのパイプライン計画は全くあてにならないという。「問題はガスの輸送手段ではない。欧州のガス市場をロシアが牛耳っている事、それによりロシアが政治的主導権まで握っている事、これこそが大きな問題なのだ」と述べた。 

また、同教授はヨーロッパの天然ガス輸送企業から成る、透明性の高いガス輸送事業の共同組合を設立する必要性を訴えた。ロシア主導の天然ガス輸送をめぐる問題について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=/IPS Japan浅霧勝浩 

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テロリストの狙いは不安定化とメディアの注目

【カラチIPS=ビーナ・サルワール】

南アジア諸国は、暴力の渦に巻き込まれている。昨年11月にはインドのムンバイで180人の犠牲を出す大規模テロ事件が起こり、3月3日には、パキスタンのラホールで、クリケットのスリランカチームが乗車したバスが襲われ、警備員8人が死亡、選手も8人が怪我を負った。 

バングラデシュでは、国境警備隊の兵士らが給与と勤務条件をめぐって反乱を起こし、70人の将校を殺害するに到っている。 

国同士が対立している南アジアにおいては、クリケットを通じた民衆同士の交流は重要だと考えられてきた。そのこともあって、まさかクリケットの選手がテロの対象になるとはほとんどの人たちが思っていなかった。

 
 しかし、この数年間、テロへの恐れから、多くのナショナルチームが遠征を控えるようになっている。 
 
パキスタンでは、タリバンやアルカイダ、地元の過激派である「Laskhar-e-Tayyaba」や「Jaish-e-Mohammed」などが、パキスタン諜報部などともつながりながら、次第に連携をみせるようになってきている。 

彼らの目的は、たんにイスラム国家を建設するということではなく、国家自体を不安定化させるという点にある。ラホールでのテロは、ムンバイ・テロ後難しくなっていた印パ間の対話の再開をさらに先送りにする効果を持った。 

パキスタン諜報部(ISI)のハミード・グル元長官(元中将)は、インドはパキスタンをテロ国家だと宣伝したいがために、ラホールでのテロという陰謀を企てた、とテレビで発言している。他方で、ジャムシェド・アヤズ・カーン元少将のように、ろくな調査もせずにそのような結論を導くべきでないとの冷静な意見もある。 

結局、こうした状況の中で損をするのは両国の普通の民衆であり、勝者となるのは、国家の不安定化にまんまと成功したテロリストたちなのである。 

ビーナ・サルワールが南アジアのテロの状況について解説する。(原文へ) 

翻訳/サマリ=IPS Japan

隣国インドネシアを知ろう、オーストラリアが呼びかける

【メルボルンIPS=スティーブン・デ・タルチンスキ】

両国間関係の一層の強化に熱心な関心を寄せるオーストラリアとインドネシアが、2月末、政治、実業、宗教、学術、市民社会の代表を含む多方面の指導者の参加を得て3日間のサミットをシドニーで開催した。 

セミナーでは、環境、民主主義、経済発展および投資に関する他、両国国民のそれぞれに対する認識や理解についても議論が行われた。 

両国は現在活発な外交関係を維持している。2008年における両国閣僚の相互訪問は32回に及んだ。インドネシアはオーストラリアの最大被援助国だが、先のビクトリア州の山火事の際には100万豪州ドルの支援を約束するとともに法医学チームを派遣した。また両国は2005年に、経済、技術、安全保障分野での協力を図るため包括的なパートナーシップ協定を締結している。 

しかし70人のインドネシア代表団を率いたハッサン外相が「両国関係の強化を図るためには、両国の政府の努力だけでは十分ではなく、両国の国民の関与が必要」とサミットで述べたように、政府間レベルの良好な関係は必ずしも両国国民間の関係に反映されていないことが懸念されている。 

シドニーに本拠を置く国際的なシンクタンク「ローウィー国際政策研究所」が実施した2008年の世論調査でも、オーストラリアに対するインドネシアの認識は改善してきている一方で、インドネシアに対するオーストラリア国民の認識は同国政府ほど熱心ではないことが明らかにされている。 

オーストラリアはこの点を改善する上で教育が大切と考えており、オーストラリアのラッド首相はサミットでの晩餐会で、大学や学校レベルでのインドネシア語やインドネシア研究の推進とインドネシアのイスラム教の理解の促進に向け一層の努力が必要と述べた。 

インドネシアに関する理解促進に向けたオーストラリアの動きは、影響力を増すアジア地域への関与を強化したいと考える同国の取り組みのひとつと思われる。 

オーストラリアとインドネシアの関係強化への動きについて報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

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|朝鮮半島|ミサイルによる威嚇は通用しない

【ソウルIPS=アン・ミヨン】

韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領は3月1日、日本の植民地時代の抗日運動の記念式典の演説で、北朝鮮の指導者に対し隣国諸国を脅かすミサイル開発は北朝鮮政府にとって逆効果だと警告し、「北朝鮮を守るのは、核兵器でもミサイルでもなく、韓国や国際社会との協力だ」と述べた。 

北朝鮮は、実験通信衛星の打ち上げを予告しているが、しかしこれには長距離ミサイルにも利用できる「軍用・民生用二重用途」の技術が関わっている。 

評論家によれば、北朝鮮政府は、西側に圧力をかけ、可能であればさらに譲歩を引き出すための手段としてミサイル威嚇を利用するとともに、この技術をイランやシリアなどの国に売却して資金を得たい意向だ。 

だが韓国政府は、北朝鮮は楽観的な考え方をやめ、もはや瀬戸際外交は許されないという現実を直視するべき時がきたとの考えである。 

軍事消息筋は、北朝鮮がミサイルを再発射すれば、抑止力として軍事増強を主張しているソウルとワシントンの強硬派の勢力を強めることになると見ている。 

韓国政府は、北朝鮮が核計画を放棄すれば、食糧・燃料援助を含む経済援助を再開すると申し出ている。北朝鮮の天然資源開発のプロジェクトの具体化も進んでいる。製造業者も、中国より経費面でも規制面でも有利な北朝鮮への投資機会を待っている。 

中央日報の記者、金永煕(キム・ヨンヒ)氏は社説に「北朝鮮がミサイル発射を主張すれば、核のカードを放棄することで得られるはずのあらゆる富を放棄することになる」と書いている。 

一方で、経済悪化に苦しむ韓国では、北朝鮮からの脅威を理由に投資家による資金の引き揚げが進んでいる。 

北朝鮮のミサイル発射に自制を促した韓国政府について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

|リベリア|寂れる鉱山の町イェケパ

【イェケパ(リベリア)IPS=レベッカ・マレイ】

リベリアの奥地ニンバ郡の粗末なバーで、疲れ切った3人の鉄道工夫がビールを啜っていた。闇の中で、バイクの騒音と近くにある発電機の音が鳴り響く。これが、ブキャナン港から鉱山町イェケパまで250キロ強の鉄道改修に当たる労働者の1日10時間の過酷労働の後の楽しみだ。彼らは、鉄鋼業界最大手のアルセロールミッタル(ArcelorMittal)の契約会社であるブラジルのオーデブレヒト社に雇われている。 

彼らは、熱帯の高温の中で週6日から7日、ハンマーを振り降ろして働き、夜はテントのべニアの床で寝ている。食事は1日カップ1杯の米とスープ。井戸の水を飲み、病院へ行けば、その費用は給料から差し引かれる。 

オーデブレヒトのウェブサイトには、月給の他に毎日1キロの米と1米ドル相当の食費が与えられると書かれているが、労働者は、手取り月収は平均80ドルで、インフレ高騰の折これではまともな生活は不可能と語っている。

 アルセロールミッタルの鉄鋼採掘所の中心地イェケパは、1950年代から1989年のチャールス・テイラー軍侵攻までLAMCO(Liberian American Swedish Chemicals Company)の鉄鋼石採掘地として栄えてきた。町の郊外にはアールデコ調のプールや略奪され骨だけになった白亜の建物などが残っている。 

アルセロールミッタルは、エレン・ジョンソン・サーリーフ政権の要請に応じ、旧LAMCO施設復活に期間25年、総額15億ドルの投資を約束。3年前リベリアに進出した。リベリア政府は、純益の30パーセント、4.5パーセントの鉱山使用料、グランドバッサ等の開発計画のため年間3百万ドルを受け取ることになった。また、鉄道、港湾施設は企業ではなく国の資産とし、国が運営、監督などに当たるとした。 

 サーリーフ政権は、鉄鉱石、ゴム、材木などの資源開発投資を各国に呼び掛けてきたが、世界経済の崩壊で大きな痛手を蒙っている。アルセロールミッタルは今四半期263億ドルの赤字を計上。イェケパからはいまだ鉄鉱石は輸出されていない。アルセロールミッタルのマシューズCEOは、「2009年末には鉄鉱石の輸出ができると見ていたが、2010年に持ち越される模様だ。2か月に雇用を凍結したが、既存のリベリア人労働者はできるだけ確保する計画だ」と語っている。 

しかし、労働者は僅か6ヶ月の契約で働いており、経営者は契約満了と共に首切りを行うかも知れない。組合オーガナイザーのダリウス・ダーン氏は、労働大臣に対し労働者の署名を提出したが、アルセロールミッタルおよび下請会社の組合組織は難航するだろうと語っている。 

リベリアの海外投資促進計画に対する世界金融危機の影響について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

│ビルマ│少数民族ロヒンギャの問題に「バリ・プロセス」を活用か

【チャアム(タイ)IPS=マルワーン・マカン-マルカール】

東南アジア諸国連合(ASEAN)が「バリ・プロセス」と呼ばれる地域メカニズムをビルマの少数民族ロヒンギャに対する人権侵害の問題で利用する可能性が出てきた。 

同メカニズムは、アジア太平洋地域における人身取引の問題解決のために2002年2月に創設され、現在50ヶ国が参加している。ロヒンギャ問題の大元であるビルマはこのプロセスに参加していないが、4月14日から15日にかけて、この問題に関する会合がバリで開かれる予定だ。

 ロヒンギャは、ビルマ軍政によって強姦や虐待、強制労働、土地の接収、強奪などの厳しい人権侵害にあっている。自由に移動したり、同民族間で結婚することすら禁じられている始末だ。 

1962年に始まった軍政の下でも、かつてロヒンギャには政治的権利が与えられていた。公営のビルマ放送では、ロヒンギャ語の番組もあった。しかし、1982年になって軍政はロヒンギャから市民権を奪ったのである。 

ロヒンギャの多くは、苦しみに耐えかねて、インドネシアやタイ、マレーシア、バングラデシュ、インドなどの周辺諸国に逃亡しはじめた。周辺国がロヒンギャ問題を取り上げるようになったのはこのためだ。 

国際移民機関(IOM)アジア太平洋支局のクリストファー・ロム報道官は、あらゆることが議論の俎上に上せられるであろうバリ・プロセスの動きを歓迎している。 

タイのピロミャ外相によると、ビルマのニャンウィン外相は、「ロヒンギャはミャンマーの(100以上ある)少数民族のリストの中に入っていない」とかつて発言したそうである。 

「バリ・プロセス」では、ロヒンギャに対する社会調査を行って、誰をビルマ市民とみなすことができるかを確定するものとみられている。 

ビルマの少数民族ロヒンギャの問題に対する国際的反応について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリ=IPS Japan 

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|スリランカ|国連に対する民間人保護要求高まる

【国連IPS=ハイダー・リズヴィ】

シンハラ人主導の政府軍と中央支配脱却を望むタミール民兵との新たな戦闘に巻き込まれたスリランカ北部住民の窮状に、国際人道団体から国連の介入を求める声が上がっている。 

昨年12月から再び始まった戦闘で、24万の民間人が戦闘地域に封じ込まれ、既に3万の避難民がシェルターを必要としている。

 最近北部戦闘地域を訪れたヒューマンライツ・ウォッチ(HRW)のアンナ・ニスタット氏は2月27日、タミール兵士が支配する地域からの避難を余儀なくされた多くの民間人が政府の軍事基地に拘束されており、国連安保理の緊急対応が必要であるとの声明を発した。 

この数時間後には、3日間のスリランカ視察から戻った国連の人権担当トップ、ジョン・ホルムズ氏が安保理に対し民間人の窮状について説明した。 

国連は、民間人の緊急救援資金として1千万ドルを手当しているが、ホルムズ氏は、事態は非常に深刻だと語った。同氏は、スリランカ訪問中、反政府軍に対し民間人の移動の自由を認めるよう、また政府に対しては紛争の秩序ある平和的解決を迫ったというが、急場しのぎの粗末な屋外施設で数週間を過ごした国内難民の殆どは、精神的にも肉体的にも憔悴しきっていたと説明した。 

HRWを始めとする人権団体は、安保理に対し、国際人権法に基づき直ちにスリランカ問題に対処するよう求めている。 

ニースタット氏は、「タミールの虐待から逃れた人々が、再び政府軍の暴力を恐れることがあってはならない。しかし、国際機関の対処がこの様に遅いのには、恐れる理由があるのだろう」と言う。 

最近多くのジャーナリストが殺害されていることを考えれば、彼女の発言は正しいかも知れない。アムネスティ・インターナショナルによれば、2006年以降スリランカで少なくとも10人のメディア関係者が殺害されており、その多くはコロンボの軍、その他法執行機関が関係しているという。(国境なき記者団による昨年の報道自由指数では、スリランカは173カ国中165位にランクされている) 

地域報道によれば、インド政府が平和解決へ向けスリランカ政府に圧力をかけているというが、成果のほどは定かではない。スリランカ問題に詳しい外交筋は、安保理は目下のところ平和維持軍派遣の方向へ動いていないと語っている。 

スリランカ紛争激化と安保理の対応の遅れについて報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

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|コロンビア|内戦の渦中に置かれたアワ族

【ボゴタIPS=コンスタンサ・ヴィエイラ】

コロンビアの反政府左翼ゲリラ「コロンビア革命軍(FARC)」は、国軍の情報提供者だとしてアワ族のインディオ8人を殺害したことを認める声明を発表した。軍事問題の専門家アリエル・アヴィラ氏によると、内戦で荒廃するナリーニョ県に暮らすこの先住民族は自警団を結成しているという。 

ボゴタを拠点とするシンクタンクCorporacion Nuevo Arco IrisのArmed Conflict Observatoryのメンバーであるアヴィラ氏は「自警団が国軍によって創設されたのか、あるいは先住民族が自発的に結成したのかが議論となっている」と述べている。

コロンビア南西部の山岳地域に位置するナリーニョ県には、非合法武装勢力によって強制的に立ち退きを迫られた国内避難民が最大数暮らし、また国内で最も地雷の密度が高い県でもある。 

 どの勢力の支配下にもない緩衝地帯であり、麻薬密輸業者の戦略的回廊であり、非合法武装勢力の供給ルートであるナリーニョ県では、コロンビア国軍、極右民兵組織そして反政府左翼ゲリラなどコロンビアの内戦に関与するすべての武装勢力が支配権を巡って争っている。 

こうした状況のなかで、FARCの主張するように「これらの先住民が国軍のために活動しているだけ」なのかどうかは明らかでない、とアヴィラ氏は言う。 

アヴィラ氏によれば「民兵組織も地元住民を脅し、追い出している。彼らはアフリカの油ヤシを植えて立ち退きを迫っており、ところかまわずコカ畑になっている」 

アワ族8人が殺害されたナリーニョ県のバルバコアス市を訪れたウリベ大統領は、テロ防止政策を策定する意向を明らかにし、アワ族コミュニティとの連絡役に軍当局者を任命したと発表した。 

アヴィラ氏は、コロンビアの重要な問題点のひとつは、国際人道法に反し、「政府ならびにFARC、国民解放軍(ELN)を含むあらゆる勢力が紛争に民間人を巻き込んできたことだ」と指摘し、次のような現状を説明した。 

政府は、コカ栽培をやめる農民に補助金を供与する「森林監視者ファミリー」などの社会支援プログラムを使って住民から軍事情報や一般情報を引き出している。 

またELNとFARCの対立、地域の麻薬取引の増加そして内戦の激化に伴い、「どの武装勢力から見ても、地元住民は内通者となる可能性があり、したがって住民はどの勢力も信頼していない」 

内戦の犠牲となっているコロンビアの先住民族について報告する。(原文へ) 


翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

|ウガンダ|パピルス製衛生用品が難民女性を救う

【カンパラIPS=ジョシュア・キャリンパ】

Bagging papyrus - women are creating livelihoods and providing an affordable alternative for menstrual hygiene. Credit: Joshua Kyalimpa/IPS
Bagging papyrus – women are creating livelihoods and providing an affordable alternative for menstrual hygiene. Credit: Joshua Kyalimpa/IPS

古代エジプトで紙の原料となり、現在もコンゴやウガンダなどの地域で自生しているパピルス。特に政府軍と反政府勢力CNDP(人民防衛国民会議)との戦闘悪化で大量の難民を出したウガンダでは、このパピルスから作られる安価な女性用衛生用品が多くの貧困女性を救っているという。 

ウガンダ西部キエンジョジョ県の難民キャンプKyaka2でも多くのコンゴ難民が暮らしているが、その生活は極めて過酷だ。しかし最近、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の支援を受け、周辺の湿地で豊富に生育しているパピルスを利用したサニタリー・パッド(生理用ナプキン)の製造・販売が女性の間で盛んに行われている。

  ウガンダのマケレレ大学のMoses Kiiza Musaazi教授は、パピルス製サニタリー・パッドの製造を開発。低い生産コストで効率的な収益を上げることができる製造方法により、今ではこの難民キャンプだけで1日に約1,000枚も生産している。 

海外から輸入されたサニタリー・パッドの市場価格は通常1枚およそ2ドル。一方、パピルス製のサニタリー・パッドは1パック(10枚入り)900シリングで売られている。1枚当たり僅か約50セントほどである。 

この難民キャンプでは現在、60名の女性がサニタリー・パッドの製造に従事している。そのうちの1人は「最近新しいベッドを購入しました。髪も結えるようになったし、子どもの世話もできるのです」と、自活できる喜びを語った。 

ウガンダでは800万人の女性がこのサニタリー・パッドを必要としている。そして、Kyaka2の難民が作った製品は市場に流れ、毎月およそ100万ドルの収益を上げている。ウガンダの難民キャンプで行われているパピルス製の衛生用品について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

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危機に立つアマゾン

【リオデジャネイロIPS=マリオ・オサバ】

国連環境計画(UNEP)とアマゾン協力条約機構が支援した調査「アマゾン環境概観」(GEO Amazon)が2月19日、発表された。2026年時点においてありうるアマゾンの4つの将来シナリオを検討している。報告書は、アマゾン地域8ヶ国の150人の科学者による共同研究の成果である。 

シナリオの第一は「叢生するアマゾン」。「汚染者負担の原則」が貫徹されることによって、環境管理は現在より強固になっている。第二は「光と影」シナリオで、有害な生産活動を止めるべく、地域諸国が持続可能な開発を継続している。 

第三は「かつて緑の地獄」シナリオで、「自然的・文化的富が不可逆的に失われ」、貧富の格差が広がるというもの。そして最後に、「絶壁の上を歩く」シナリオで、巨大開発プロジェクトによってアマゾンが壊滅的に破壊されたというものである。

2005年までの累計で、アマゾンのジャングル全体の17%にあたる85万7666平方キロメートルが失われている。2000年から2005年にかけての喪失面積の平均は年間2万7218平方キロメートルである。 

生物多様性も影響を受けている。これまでに少なくとも26の種が絶滅し、644種が危機状態、3827種が絶滅危惧種とされている。 

アマゾンが失われるひとつの原因は、肉牛の飼育である。ブラジルのアマゾンにおける肉牛の個体数は、1994年の3470万頭から2006年には7370万頭まで急拡大している。 

また、大豆栽培、材木業、鉱業、水力発電なども森林破壊の大きな原因となっている。これに関連してアマゾンの人口も増えている。1970年には500万人超しかいなかったが、2007年には3350万人にまで達した。これは、アマゾン地域8ヶ国の人口の11%を占めている。 

報告書は、アマゾンの生態系の劣化を防ぐために、地元の人びとの参加が必要であると主張している。 

アマゾンの将来について予想した報告書について伝える。(原文へ) 

翻訳/サマリ=IPS Japan 

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