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│中国│30周年記念で再燃する「一人っ子政策」論争

【北京IPS=アントアネタ・ベッカー】

今年、中国では、一人っ子政策が始められてから30年を迎える。独自性の高い社会工学上の実験だとして賞賛する意見もあれば、中国がグローバル・パワーとしてのし上がっていくことを妨げるとの予測もある。

政府は政策の是非に関する論争を避けようとしているが、あまり都合のよくない意見がこのところ頻出している。

12月には、学者の胡鞍鋼氏が、中国共産党への公開書簡という形で、一人っ子政策は主に1960年代のベービーブーマー世代による人口圧力を緩和するために導入された30年という時限を切った政策であり、今後は家族計画の適切なルールを別に考えていく必要があるとの見方を示した。

さらに一人っ子政策の策定者の一人である田雪源氏が、12月の『人民日報』で、中国はふたりっ子政策に移行し、都会・農村を問わず全ての夫婦に2人の子供を持つことを認めるべきだとの見解を披露した。

田氏は同紙の中で、「中国は時代の流れに適応していくべきだ。次期開発5カ年計画(2011年開始予定)の重点項目を考えれば、人口政策の転換を図るのは今である。」と述べた。一人っ子政策の策定者自身によるこうした見解が人民日報に掲載されたことは、この政策を巡る議論が学術論争の枠を出て、今や政治課題となったとの見方が広がっている。

こうした中、李克強副首相が、今年実施される「第6回人口調査」の責任者に任命された。李氏は、しばしば13億人と言われる中国の正確な人口を把握するという困難な事業の責任者に任命された最高位の政府要人となった。前回2000年に実施された人口調査では、未登録の農村子女や国内移民など政府がそれまで把握していなかった多くの人口集団の存在が明らかにされた。

「一部の学者が如何に良い側面を評価しようとも、一人っ子政策こそ、今日中国社会が直面している深刻な諸問題(急速な高齢化、極端な男女格差)の原因なのです。」と、人口学者のHe Yafu氏は語った。

中国指導部は、一人っ子政策のおかげで約4億の人口抑制が可能となり、人口管理が不可能となる事態が回避できたと評価している。それと同時に、かつて厳格を極めた一人っ子政策の適用の在り方は徐々に変化し、多くの場合、暗黙のうちに、より緩やかな法律が適用されるようになった。

広州や上海、そして最近では北京のような大都市においては、「ダブル・シングル」のカップル(双方とも一人っ子の夫婦)に対して、子どもを2人作ることを容認する政策が始まっている。その背景には、上海のような富裕層が多い大都市において子どもの出生率が全国平均の1.8をはるかに下回っている(上海の場合0.8)ことに対する当局の危機感があり、政策の変化を導いている。

昨年、中国で最も裕福な広東省では、「2人の子供を持つ」資格のある夫婦が2番目の子供を儲けるまで4年待つ規則が静かに廃止された。北京も今年この前例に続く予定である。

「私は政府の方針が変わるのを待てませんでした。」と北京のホテルでスポーツクラブを経営するFan Xirongは言う。彼は30万人民幣(RMB=44,000ドル)罰金と手数料を支払い第二子(娘)を登録した。これにより子供は国から教育と医療の恩恵を受けることができる。

「私達夫婦はお金を払うことで第2子の登録ができました。最初の子供は男の子だったのですが、年を重ねるにつれて女の子がほしくなったのです。」とFan夫人は語った。「私たちは老後のお金については心配していません。それよりも年をとって頼れる息子と娘がほしいのです。」

30年に亘る一人っ子政策を通じて、家族計画の担当官達は、「子沢山が幸福をもたらす」という中国人民の間に根付いていた伝統的な観念を変えることに成功したかもしれない。しかし経済成長で裕福となり老後の孤独を不安が高まるのかでこの伝統的な観念が再び復活しつつある。

超高齢化社会に対する一般人民の不安は、「4-2-1」と言われる中国の人口構造に端的に表れている。2人の大人が4人の老人の面倒をみて、1人の子どもを育てる、という意味である。こうした状況の下で、中国の60歳を超える人口は2030年には3億5500万人に達するとする、家族計画当局による予測もある。

「この30年間、中国経済は人口抑制政策の『恩恵(=ボーナス)』を受けてきた。しかし一人っ子政策を今見直さなければ、急速に進む高齢化がやがてこの『ボーナス』を『負債』に変えていくだろう。」と、田雪源氏は3月に南方周末(Southern Weekend)紙の取材に応えて語った。

経済学者の胡鞍鋼氏は12月下旬に「経済観察(Economic Observer)」紙の中で、1980年の中国共産党文書を引用し、「いづれにしても一人っ子政策は30年の期間限定の政策だったのですから。」と述べている。(原文へ
 
翻訳=IPS Japan戸田千鶴

「私には核兵器なき世界実現を訴えていく義務がある」(秋葉忠利広島市長インタビュー)

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【国連IPS=アンナ・シェン】

Tadatoshi Akiba, Mayor of Hiroshima
Tadatoshi Akiba, Mayor of Hiroshima

国連で世界の市長が核問題について果たせる役割について演説した秋葉忠利広島市長は、核廃絶の早期実現を一貫して訴え続けている人物である。

秋葉氏は今年で原爆投下から65年を迎える広島市の市長をつとめるとともに、世界で4000近い市が加盟している世界平和市長会議(Mayors for Peace)の会長をつとめている。秋葉氏はアンナ・シェンIPS特派員の取材に応え、広島市の復興、核廃絶への想い、そして今月国連で開催中の核不拡散条約(NPT)運用検討会議について語った。

IPS:今では広島市は完全に現代的な街として再建されています。広島市は原爆投下後、どのような復興の道を歩んだのでしょうか?

秋葉:日本降伏後に来日した進駐米軍の一部に実に素晴らしい都市計画の専門家たちがいました。お陰で、広島市の復興計画は当時最新の都市計画のノウハウを反映したものとなったのです。例えば、平和記念公園の設計に丹下健三氏を起用したのもその表れでした。

また一方で、歴史的な要因もあります。原爆による破壊はあまりにも凄まじく、しかし人々の生活はその中で続けていかなければならなかったことから、当時は、夥しい犠牲者に対する適切な埋葬や葬儀を行う余裕がありませんでした。その結果、いわば、人々は広島の街中に横たわる死骸の上を歩いているような状態だったわけです。こうした実情から、戦後の都市計画を進めるにあたっては犠牲者に対する繊細な配慮がなされることになったのです。

例えば、原爆投下前にあったある花屋の周りでは、多くの人々が犠牲となりました。そしてそこには記念碑が出来ています。こうした数千におよぶ記念碑が広島の街全体に建立されました。広島市民にとって美しい街を再建することは、犠牲者を慰霊する神聖な空間を作り上げることでもあるのです。

IPS:広島、長崎の原爆投下を経験した被爆者についてお話しください。

秋葉:被爆者は様々な身体的・精神的苦痛を背負って生きているのです。従って、自らの被爆の経験を世間に語ることは、同時にその苦痛を呼び起こすことでもあります。多くの戦争や惨劇の犠牲者がそうであるように、自らの経験について固く口を閉ざす被爆者も少なくないのが実情です。そうした中で、被爆の後遺症等に苦しみながらも、幸い高齢になるまで生き延びて、自らの被爆経験を語ることができた人々も多くいます。

例えば60歳の還暦を迎えるまで自身の被爆体験を語ったことがなかった田辺さんという被爆者がおられます。彼は原爆で両親を失い、叔父夫婦のもとで育てられました。当時、育ての親に心配をかけたくないと、自身の被爆経験について一切話さなかったとのことです。田辺さんはどのようにして、長い年月に亘ってこうして耐え続け、しかも復讐や悔恨の念を抱かないでおられるのでしょうか。この田辺さんが唯一望んだことは、爆心地(旧中島地区=現・平和記念公園)に嘗て住んでいた人々の記憶から当時の人々の営みや佇まいを映像で再現し、見てもらうことだったのです。原爆によって永遠に失われたあの街に生きていた人々のストーリーを見てもらうことで、失われたものの尊さと、このような悲劇が二度と繰り返されてはならないというメッセージを伝えたかったのです。

IPS:市長としての役割についてどのようにお考えですか?

秋葉:私たち市長は、どこにいても民衆の声を代弁する存在でなければなりません。そうして初めて政府も民衆の声に耳を傾けるのです。同様に、私たち世界平和市長会議のメンバーが国連に来て演説をするのは、国連に集う各国代表に、(広島の被爆体験を含む)世界の都市の民衆の経験を理解してもらうためなのです。

その点を証明する出来事がありました。約2週間前、マルコム・フレーザ(インターアクション・カウンシル名誉議長)元オーストラリア首相をはじめ、世界各国の大統領、首相経験者らによる「インターアクション・カウンシル」(OBサミット)の第28回年次総会が広島で開催されました。

広島平和記念資料館の視察や被爆者との対話を経て、参加者たちには核兵器のもたらす苦しみがどのようなものかということを、より深く理解していただけたと思います。そしてそこで得た危機感が、「世界の全ての政治指導者は広島と長崎を訪れるべき」というコミュニケに繋がったと思います。参加者の方々は、一般の人々ではなく、思いやりがあり博愛主義を信奉する大きな影響力を有する元国家指導者の方々ですが、今回広島を訪問して本当に心を動かされたようでした。

広島市は今年の8月6日、原爆投下65周年を迎えますが、私は全ての核保有国の指導者を是非この機会に広島に招待したいと考えています。

広島市長としての私の役割は、被爆者の方々の声を代弁して「核兵器のない世界」を実現させることだと考えています。被爆者の方々は、原爆で命を落とした方々に天国で再会した時、「あなたたちの死は無駄ではなったかですよ。私は『核兵器のない世界』をこの目で見てきたのですから。」と語れるようになるために、彼らが存命のうちに、是非とも核廃絶の実現を目の当たりにしたいと切望しているのです。私は市長として被爆者の方々のこうした望みを実現する義務があると感じています。

IPS: 今回のNPT運用検討会議の結論には、どのようなものを期待されていますか?

秋葉:今回の会議は、世界の民衆の意見を動員し、それを全人類の福祉のために活用する素晴らしい機会です。開会式でのいくつかの演説内容は、平和市長会議がその実現に向けてこれまで努力を傾けてきた目標の多くに言及するものでした。(原文へ

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩



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|イラン|制裁でなく交渉こそ問題打開への道

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【アブダビWAM】

「今こそ、イランと協議すべきときである。制裁を科すなどというときではない。」とアラブ首長国連邦(UAE)の日刊紙が報じた。

カリージタイムス紙は5月15日付の論説の中で、「新たな対イラン制裁へ向けた動きは順調には進んでいないようだ。中国とロシアはイランの核兵器開発を阻止するために懲罰的な手段を講じることには同意したが、米国の対イラン戦略そのものには同意しかねている。」と報じた。

 このことから国連安保理常任理事国5カ国にドイツを加えた「P5プラス1」での交渉は難航している。その原因は関係国の中にイランに対する好意・同情論があるというわけではなく、概して制裁の内容を巡る対立によるものである。このイスラム共和国に対する制裁は、新しい動きではない。事実、イランは過去30年に亘って様々な制裁の対象となってきた。しかし、そうした制裁にも関らずイランはウラン濃縮を諦めていない。

「イランは自ら招いた国際的な孤立に加えて、執拗な制裁を科せられてきたことから、安全保障の手段として極端な手段(核開発)を模索するようになった。従って、制裁を科すかどうかは別として、国際社会はイラン革命政権との交渉を通じて、国際社会の一員に復帰させることに主眼を置くべきである。すなわち、イランの安全保障と独立に関する問題を含めた包括的な取り組みがなされてはじめて、今日の状況は打開に向かって動き始めるだろう。」と、カリージタイムズ紙は報じた。

同紙は、イランが、NPT運用検討会議で現行のNPT体制を痛烈に非難して議論を大いに紛糾された後、様々な条件を出しながらも冷静な交渉を行う用意がある意思を示している点を指摘した。また、イランがトルコ・ブラジルの仲介案(イランは、国内の低濃縮ウラン1.2トンをトルコに搬出しIAEAの管理下に置く代わりに20%に濃縮・加工された核燃料棒120キロを受け取るというもので、安保理非常任理事国でもある両国は、これでもって米国が中心になって進めようとしている対イラン追加制裁措置は必要なくなったと主張している:IPSJ)を受け入れたことを国際社会は認知し適切な対応をすべきである。さらに、イランは国連が推した低濃縮ウランと燃料棒の交換案は拒否したものの、その後一連の代替提案を申し出ている。

同紙は、「こうしたイランの動きについても、欧米諸国が(イランの核開発疑惑について)従来表明してきた懸念内容と十分照らし合わせ検討する必要がある。また、現在対イラン追加制裁に向けた協議を同盟諸国と進めている米国に対して、発想を転換してイランへの対話を呼びかけるようアドバイスすべきだ。」と報じた。

同紙は、「おそらく米国は参考にすべき問題解決への処方箋を持っているはずです。米国は、かつてリビアを説得して友好国に転換し、北朝鮮に対しても説得して協議を通じた核危機の回避を志向させた実績がある。それを考えればイラン問題もそんなに困難な問題ではないはずだ。」と報じた。

さらに同紙は、「イランは核不拡散条約(NPT)加盟国であり、常に国際原子力機関(IAEA)に協力してきた。しかもイラン指導部は、核兵器は本質的に非イスラム的だという認識を示している」と指摘し、「リビア、北朝鮮と異なり、イランにはいくつかのメリットがある。」と指摘した。

カリージタイムズ紙は、「こうしたメリットはイランとの交渉の出発点に十分なり得るものであり、イランの核開発を巡って紛糾している問題は、同国が抱えている安全保障上の不安と孤立感にも配慮した包括的な取り組みをもって初めて打開に向けた方向性を見出すことができる。」と指摘した。

同紙は、「制裁を通じてイランを屈服させるという選択は、非現実的なアプローチであり、今はむしろ制裁よりも、イランとの対話をすすめる時だ。」と締めくくった。(原文へ

翻訳=IPS Japan戸田千鶴

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反核会議の行方を脅かす中東を巡る覇権争い

【国連IPS=タリフ・ディーン】

前回2005年の核不拡散条約(NPT)運用検討会議が4週間に及んだ交渉の末に要領を得ないまま閉幕した時、同会議は、実質的な合意を伴わない「ほとんど成果のないもの」と評された。

国連の潘基文事務総長も、先週前回の会議を振り返って「明らかな失敗」と評した。しかし今回の2010年NPT運用検討会議(5月3日~28日開催予定)は、前回と同じ轍を踏むだろうか?

 おそらく、会議の行方を危うくしかねない最大の争点は、軍事情勢が不安定な中東地域に非核地帯(NWFZ)を創設するとした積年の提案を巡る議論となるだろう。

IPSの取材に応じた、アメリカ・フレンズ奉仕委員会(AFSC)全米軍縮コーディネーターのジョセフ・ガーソン氏は、この点について「中東非核地帯の創設を求める議論が過熱すればNPT運用検討会議そのものが頓挫する可能性があります。」と語った。

さらにガーソン氏は、「潘事務総長は、先週インターナショナルヘラルドトリビューン紙に掲載された記事の中で、非核地帯の創設を改めて呼びかけました。また、エジプト政府は、イラン(の核兵器開発疑惑)問題と同様に中東非核地帯創設の問題を主要議題としてくるでしょう。」と付け加えた。

「しかし、危機には必ずチャンスも付き物です。この問題について何ができるか見極めていきましょう。」と、ガーソン氏は語った。同氏は「帝国と核兵器:アメリカは世界支配のために核兵器をいかに使っているのか」の著者である。

ワシントンに拠点を持つ米英セキュリティ情報協議会(BASIC)のアン・ペンケス・プログラムディレクターは、IPSの取材に応えて「この問題が会議を頓挫させるのではないかとの懸念があるのは事実ですが、エジプト政府は受ける印象よりは柔軟さを発揮すると思います。事実、エジプトは米国との間で真剣な交渉を進めている最中です。」と語った。

「現実的な手段の合意を目指して誠心誠意交渉に臨む場合、活路が開ける場合があります。しかし現時点では、交渉の方向を見極めるのは時期尚早だと思います。」とペンケス氏は付け加えた。

中東唯一の核兵器保有国であるイスラエルを支持している米国政府は、中東非核地帯の創設については、常に中東和平交渉の進展具合と関連付けて交渉を行ってきた。
 
 しかしペンケス氏は、著書「玉葱の皮むき:中東非核地帯を目指して」の中で、「もしNPT運用検討会議においても、このジレンマの構図(中東和平問題の進展と中東非核地帯の創設をリンクする論理)がまかり通るならば、それは国際社会が、NPT体制そのものの将来について、NPT加盟国でもないイスラエルに拒否権を引き渡すに等しいことを意味します。」と指摘している。

ペンケス氏は、「中東非核地帯の交渉を阻害している主な原因は政治的意思の欠如にあります。」と語った。

アラブ諸国の間には、イスラエルが正式にその存在を認めようとしない同国の核兵器を巡る不安と深い不公平感が広がっており、そうした感情が(イスラエルの現状を黙認してきた)核兵器保有国の『二重基準』に対する批判となって噴出しているのです。」と、ペンケス氏は指摘した。

「核兵器保有国は、イスラエルをかばう一方で、NPT加盟国の権利として民生用核エネルギー開発を進めていると主張し続けるイランのような国に対する制裁をおこなっているとして非難されているのです。」と、ペンケス氏は付け加えた。

この『二重基準』について、ガーソン氏は、「イランについては、常に『リアルポリティーク(=現実政策)』の観点から二重基準が適用されてきたのです。」と語った。

「第一次世界大戦は、弱体化したオスマン帝国領の支配を巡る戦いでしたが、当時大英帝国海軍大臣だったウィンストン・チャーチル氏はこれを『中東の石油利権』と巡る戦いと理解していました。以来、欧米列強諸国は、イクバル・アーマッド氏(ジャーナリスト・反戦活動家)がかつて『世界覇権を巡る列強間の地政学的闘争の中心地』と定義した中東の石油利権を支配するために、各々が必要と思われる手段を講じてきたのです。」と、ガーソン氏は指摘した。

ガーソン氏は、「イランは、米国による石油が豊富な中東支配への脅威と見られているのです。従って(イランは)秩序に対して挑戦していると思われていることから、それを封じ込めようとする力学が働いているのです。」と語った。

「明確にしておきたいのですが、私はいかなる国も、核兵器はもとより、原子力発電所でさえ保有すべきではない、と考えています。」と、ガーソン氏は強調した。

「核兵器の使用は大量虐殺を引き起こしますし、原子力発電所も、(原子炉の)炉心溶融の危険性のみならず、幾万年も地球を汚染し生物を脅かす放射能廃棄物の安全な処分方法を人類が未だに習得していないことから、本質的に危険なものなのです。」と、ガーソン氏は強調した。

インド、パキスタン、イスラエルに対する二重基準について、ガーソン氏は、米国は中国包囲網を構築していく上でインドと暗黙の同盟関係にあること。そして、パキスタンは、米国が中央アジアにおける戦争を遂行していく上で重要な同盟国であることを指摘し、「従って、先月の核安全保障サミットで明らかになったとおり、(インド、パキスタン)両国が米国から(核開発に関する動向について)問題視されることはないのです。」と語った。

一方イスラエルについて、ガーソン氏は、「長らく中東において米国の覇権を補強するハンマーの役割とみなされてきており、ワシントンには政治的な影響力をもつイスラエルロビーの存在があります。」と指摘し、「しかし現在の米国・イスラエル間の緊張関係とエジプトがイスラエルの核兵器問題をNPT運用検討会議の主要議題としようとしている状況を考えれば、これから数日の議論の中で興味深い展開が見られるかもしれません。」と語った。

またガーソン氏は、あまり知られていない事実として、最近イスラエルの核科学者や技術者による研究を目的としたビザ申請が、米国当局より拒否されている事実を指摘した。

5月3日のNPT運用検討会議初日に演説したヒラリー・クリントン国務長官は、「米国政府は、1995年の『中東に関する決議』に従い、中東大量破壊兵器フリーゾーンを創設するという目標の実現に向けた取り組みを支持します。」と語り、米国政府としてこの課題に柔軟に対応していく姿勢を示した。

クリントン長官は、「中東地域が今日の世界において核不拡散の最大の脅威となるかも知れません。」と指摘したうえで、「しかしそうした困難な状況に関わらず、米国政府は、『大量破壊兵器なき中東』という目標に対する米国のコミットメントを再確認するともに、その目的の実現に向けた現実的な方策を支援していく用意があります。」と語った。
 
 今日世界には、アフリカ(ぺリンダバ条約)、南太平洋(ラトロンガ条約)、東南アジア(バンコク条約)、中央アジア(セメイ/セミパラチンスク条約)、ラテンアメリカ・カリブ地域(トラテロルコ条約)、モンゴル非核兵器地位宣言、南極地域(南極条約)において非核地帯が創設されている。

しかし、中東(域内のイスラエルが核兵器保有国)と南アジア(域内のインドとパキスタンが核兵器保有国)の両地域は未だにこれらの条約の適用範囲外に位置している。

またクリントン長官は、オバマ政権は、アフリカと南太平洋の非核地帯条約に批准するための議定書を上院に提出する予定であることを公表した。

「米国の条約批准をもって、これらの非核地帯条約加盟国は、米国が(これらの国々に対して)核兵器の使用及び使用の威嚇は行わず、これらの非核地帯の地位を完全に尊重するいという法的拘束力を伴う保障を得ることとなります。」と、クリントン長官は宣言した。

さらにクリントン長官は、「米国政府は、中央アジアと東南アジアの非核地帯条約加盟国とも、当該条約署名に向けた合意を目指した交渉を行う用意があります。」と、語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩

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|6カ国青年意識調査|青年層は核廃絶を求め、核兵器禁止条約を支持

【ベルリン/東京IDN=ジャムシェド・バルアー】

世界各国の政府高官がニューヨークで核兵器拡散の防止を目指して交渉を行う中、6カ国で青年層を対象に実施された核兵器に関する意識調査結果が発表された。そこから浮彫になったことは、「平和の文化」を広げる対話の必要性であった。

世界に1200万人の会員を擁する創価学会インタナショナルの青年部のメンバーが、6カ国の同世代の青年層(10代~30代)を対象に、核兵器とその廃絶についての意識調査を行った。

調査は、核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議開催前の2010年1月から3月にかけて実施され、日本、韓国、フィリピン、ニュージーランド、米国、英国の青年4,362人が回答した。

核保有国で実施した調査結果の中には当惑するものもあった。例えば、米国では自国の政府が核兵器を保有していることを認識している回答者は僅か59.2%に止まった。また、英国でも自国が核保有国であることを理解している回答者は僅か43.2%であった。

一方、勇気づけられる側面も明らかになった。「核兵器の存在が世界の平和と安定に寄与すると思うか否か」との質問に対して、核兵器保有国の青年を含む59.6%の回答者が「否」と回答した。また、67.3%が、「いかなる状況においても核兵器の使用は受け入れられない」と回答した。

僅か17.5%が、「核兵器の配備を、国の存続が脅かされている状況下において最後の手段として認める」、6.1%が、「国際テロや大量虐殺を防止するためならば認める」と回答した。しかし、59.1%が、「核兵器が廃絶された方が安心できる」と回答した。

どの国が核兵器を保有しているかとの質問に対しては、66.9%が米国、48.7%がロシア、30%が中国、19.8%が米国、19.8%がフランスと回答した。

40.7%が「北朝鮮は核兵器を保有していると思う」と回答した一方で、インド、パキスタン、イスラエルの核兵器保有を認識している者は比較的少なかった。

今回の意識調査を組織した宮尾尊久創価学会学生部長は、「調査対象の約7割の青年が、核兵器の使用はいかなる状況下においても受け入れられないと回答しました。私たちはこの結果に大変勇気づけられています。それは、核兵器廃絶に向けた努力を行っていく上で、核兵器を拒否する青年層を広げていくことが成功の鍵となるからです。」と指摘した。

宮尾氏は、IDN-InDepth Newsの電子メールによるインタビューの中で、今回の意識調査に関してコメントした。以下にインタビューの抜粋を紹介する。

IDN:あなたの視点から、調査結果のもっとも重要な側面は何ですか?

宮尾:各設問共通して、また国の違いを超えて、6~7割の若者が核兵器に否定的な態度をとっていること、肯定的な見方をする人はかなり少数であることが最も重要だと思います。中でも、核兵器の脅威を具体的に認識しているほど、否定的な態度をとる人が増える傾向にあることがわかりました。これは、核兵器がどのような兵器であるかを知らせていくことが、核兵器廃絶への意識を高める上で重要であることを物語るものです。

一方、核兵器について、意見がどちらでもない中間的な人々もいますが、核兵器の使用が認められる条件に関する回答を見ればわかるように、通常兵器とは異なる特殊な存在ととらえている人が大半です。しかし、廃絶するとなると「不安」を覚える人が1割、あるいは安心か不安か「わからない」という人が3割程度存在します。

核兵器の廃絶を求める運動を推進する私たちとしては、今回の世論調査の結果から、核兵器がもたらす悲惨さを同世代の人々にさらに広く訴えることで、核兵器を拒絶する強固な世論を築いていくことができるとの確信を深めることができました。

IDN:核兵器保有国および非保有国内において、廃絶の必要性について若者を刺激するのに何がなされるべきだと思いますか?

宮尾:1つには、核兵器がどういった兵器であるか、どういう被害をもたらすものであるかを知らせていくことが必要です。時間の経過に従い、ヒロシマ、ナガサキの惨禍の記憶は薄れて行くことは逃れようもない事実です。そうした観点から、SGIはこれまで、5カ国語で被爆者の証言を収録したDVDを作成したり、「核兵器廃絶への挑戦」展(23か国・地域、170都市で開催)を展開して参りました。

こうした活動では、大変勇気づけられる反響を得ています。展示を見学した人々は、核兵器の脅威に対する認識を新たにし、核廃絶を実現させる決意を持ったと語っています。また、人間の意識が変わることで核廃絶は可能なのだということを知り、大いに力を得て自信が持てたと言う声も寄せられています。創価学会の若いメンバーには被爆者の子孫が多くいます。私たちはこうした経験を未来の世代へと伝えていく活動を通じて、世界的な若者の連帯を強めて参りたいと考えております。

その上で、抽象論を脱し、具体的な目標設定を行うことが重要ですが、中でも、核兵器への関与を包括的に禁止する核兵器禁止条約(NWCという目標が、人々の関心を呼び起こす一つの有効な手段ではないかと考えています。

日本の創価学会青年部のメンバーは、意識調査と並行して、同条約の制定を求める署名運動も全国で展開しました。地雷やクラスター爆弾について禁止条約が成立した前例があるだけに、彼らは、核廃絶に向けたビジョンを共有し明確な目標設定を持って活動に取組んでいます。

核兵器についても同様の条約の成立を強く求めてゆく中で、核兵器は「本来存在してはいけない」「無くさなければならない」という規範意識を、人々の心の中で、そして国際社会の中で高めていくことができるのではないでしょうか。

おりしも運用検討会議開幕を前に、潘基文国連事務総長も同条約実現への努力を歓迎すると語っており、今後注目が高まることが予想されます。

いずれにしても、時代を動かす鍵を握るのは青年です。創価学会の戸田城聖第二代会長(1900~58)は「未来は青年の力と情熱が作る」と語り、1957年に、青年への遺訓として核兵器の廃絶を訴えた歴史があります。

これまで、核兵器という問題は一般の民衆、なかんずく青年からはどうしても遠く複雑な存在と映ってきてしまっていましたが、核兵器禁止条約を1つの指標にして、国連諸機関や他のNGO等とも連携しながら、運動を進めて参りたいと思います。

IDN:青年リーダーは、NPT運用検討会議に向けて何を計画してきましたか?

宮尾:周知のように、NPT条約は「非拡散」とともに「核軍縮」が欠かせない柱です。核兵器保有国には、それを誠実に実施する義務があります。その意味でも、核兵器禁止条約の制定を求める署名運動を展開して参りました。これらは5月11日に、NPT運用検討会議議長および国際連合軍縮担当上級代表に提出の予定となっております。

今回のNPT運用検討会議においては、核兵器禁止条約の議論にまず先鞭がつくことは願うところでありますが、その地ならしとして、非保有国に対し保有国が核兵器を使用しない「消極的安全保障」の法的拘束力を伴う合意や、非核兵器地帯条約(NWFZが成立していない地域において、「核不使用宣言地域」の成立といった進展を期待したいと思います。世界の青年と共に、その推移を注意深くフォローして参りたいと思います。

ただ、私たちは今回のNPT運用検討会議についても、「核兵器なき世界」という最終目的に向かっての1つの通過点であると認識しています。各国の民衆が明快に核兵器を拒絶する態度を構築しない限り、核兵器の拡散の種は残り続けます。

そうした意味で、私たちは今後も、NPT運用検討会議の結論に関わりなく、仏教徒として人々の意識に焦点を当て、対話を通し一人ひとりの心に変革と希望の炎を点火していくという、人間の内面へのアプローチを重視した教育的な活動を展開してまいりたいと思います。(原文へ

INPS Japan

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普天間問題に見る鳩山首相の「本当の問題点」(石田尊昭)

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【IPS東京=石田尊昭

Mr. Takaaki Ishida
Mr. Takaaki Ishida

普天間問題が完全に行き詰まった。

メディアには「首相退陣」の文字がおどる。「5月危機説」がにわかに現実味を帯びてきたようだが、政局の話は少し横に置いておこう。

普天間問題に見る鳩山首相の本当の問題点とは何だろうか。

総選挙時の演説で「国外へ。最低でも県外へ」と主張し、首相になってからは「最後は私が決める」と自信あり気に語り、その後も、時折余裕とも思える笑みを浮かべながら決意を語り続けていた。

 政権交代直後から、水面下で様々なルートを通じて米国や地元とアクティブな交渉に入り、その成果が実りつつある、あるいは道筋が見えつつあることから、上記の自信に満ちた言葉・姿勢になっているに違いない…そんな希望的観測を僕は持っていたが、まんまと裏切られてしまった。「甘かったと言われれば、そうかもしれない」―。奇しくも首相と同じセリフが頭をよぎる。

この普天間問題においては、首相の言葉の軽さ、二転三転する主張、本人も認めた認識の甘さ、リーダーシップの欠如などが指摘・批判されている。それらはいずれも事実だが、問題の本質はそこではないと僕は思っている。

批判されるべきは、「行政府の長として、国民への説明責任を全く果たしていない点」ではないだろうか。

以前、当ブログで、マニフェストで約束された政策が二転三転することに対して、開かれた政策論議を行ない、首相が説明責任を真摯に果たせば、国民は理解を示すのではないか、と述べた。

つまり、政策を変更せざるを得なくなった場合、「なぜ、そうしなければならないのか」について充分かつ説得的な説明がなされるか否かによって、国民の首相に対する見方が百八十度かわる可能性があるからだ。

この普天間問題で、首相の述べた「抑止力についての認識が甘かった」とか、ましてや「『県外』は公約ではなく個人的見解」などという物言いは、「説明」ではなく「釈明」だ。それを聞かされた国民は、どう反応すればいいのか。ただただ、この人で大丈夫だろうか、という不安が募るだけである。

その政策の何が問題だったのか。分析内容か、交渉プロセスか、実施体制か。何が原因で、どう見誤ったかを明らかにする(=自ら把握する)ことによって初めて、同じ轍を踏まないための指針・戦略を再構築することができる。

それを国民に明示し、真摯に「説明」すれば、少なくとも「釈明」するよりかは理解が得られるだろう。

それとも、「説明」できるだけの分析・整理が未だなされていないのか。さらに、する意図も能力もないとなれば、怒りを通り越し、虚脱感におおわれてしまう。そうでないことを願うばかりだ。

石田尊昭(IPS Japan理事

*原文は石田尊昭和ブログに5月8日に掲載されたものです。

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NPT運用検討会議でイスラエルとイランが議論の焦点に

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【国連IPS=タリフ・ディーン

5月3日、約1カ月に亘って開催されるNPT運用検討会議が開幕したが、予想通り議論はイスラエルに集中した。

イスラエルは中東地域で唯一核武装した国であるが、政治的に特別な地位(=Sacred Cow)を享受しており、その武器開発計画が米国及び西欧諸国から公式に非難されたことはない。

しかし会議初日、国連加盟国の圧倒的多数にあたる192カ国中118カ国が、イスラエルは自国の核兵器開発計画について公表し、核不拡散を目的とするNPTに加盟するよう求めた。

 
 118カ国が加盟する非同盟運動(NAM)を代表してインドネシアのマルティ・ナタレガワ外相は、「イスラエルがNPTへの署名、批准を拒否してきたために、中東の国々(=非核保有国)がこの大量破壊兵器を有する唯一の国(=イスラエル)による核の脅威に晒されてきました。」と語った。
 
「イスラエルは『(IAEAの管理下にない)未知の安全基準に基づく未保護の核施設を運営』していることから、それに伴う様々なリスクを国際社会に広げてきました。さらに悪いことに、イスラエルは、暗黙のうちに、『中東及び国際的な広がりを孕んだ』破滅的な核軍拡競争を引き起こす脅威の引き金となってきました。その結果、NPT体制そのものが危機的な状況に陥っているのです。」と、ナタレガワ外相は、国連最大の政治的組織の見解を代弁して警告した。
 
 またナタレガワ外相は、「現在の状況を看過するわけにはいきません。なぜならこのままでは、『中東大量破壊兵器フリーゾーン』創設を求めた1995年のNPT運用検討会議決議の実現が危うくなってしまうからです。」と語った。
 
 5月28日まで約1カ月に亘って開催される会議では、核拡散の防止と世界の兵器廠からの核兵器廃絶を究極の目的とするNPT体制の現状について、成功・失敗の両側面が検証されることとなっている。
 
 NPTは1968年7月に署名公開され、5年ごとに運用検討会議が開催されてきた。
 
現在、NPT体制の下で核保有が認められている5カ国(米国、英国、フランス、中国、ロシア:これらの国々は国連常任理事国でもある)を含む189カ国がNPTに加盟している。

一方、NPT非加盟の核兵器保有国はインド、パキスタン、イスラエルである。北朝鮮は、NPTに加盟していたが、規定違反を犯した後に脱退している。

2000年のNPT運用検討会議では、イスラエルがNPTに加盟し全ての核関連施設を国際原子力機関(IAEA)の統合保障措置の下に置く必要性が確認された。

しかしイスラエルは今日に至るまでこの提案を拒否している。

従来より軍縮と核不拡散を「最優先課題」と宣言してきた潘基文国連事務総長は、開会式の演説の中で、イランと北朝鮮について名指しで言及した。

潘事務総長は、イランに対して「国連安保理決議を完全順守しIAEAに協力する」よう強く促すとともに、北朝鮮に対しては、「朝鮮半島の検証可能な非核化」実現に協力するよう求めた。
しかし潘事務総長は、イスラエル、インド、パキスタンについて言及するには至らなかった。

もっとも、潘事務総長は、当該3カ国の国名を言及することは避けたものの、「現在NPT体制外にある国々が一刻も早くNPTに加盟することを強く求めます。」と語った。

一方、会議に元首クラスとしては唯一の出席となったイランのマフムード・アフマディネジャド大統領は、「核兵器の唯一の機能は生き物全てを殲滅し環境を破壊するものです。」と語り、核兵器に関する道徳的な見地に立った演説を行った。

「核兵器に伴う放射能は、未来の世代へも悪影響を及ぼし、惨禍は数世紀にもわたって継続するのです。」

「核爆弾は防衛のための武器ではなく、むしろ人間性に対する攻撃です。従って核兵器の所有は、誇りにすべきようなことではありません。むしろ最低かつ恥ずべき行為なのです。」とアフマディネジャド大統領は語った。イランは現在、核兵器を開発しようとしているとして非難に晒されているが、アフマディネジャド大統領は嫌疑をきっぱりと否定している。
 
 「核兵器の使用や、平和的核施設への攻撃をほのめかして他国を脅迫するのはさらに恥ずべきことです。それは、歴史上のいかなる犯罪とも比べられない最悪の行為です。」と同大統領は指摘した。

またアフマディネジャド大統領は、「イスラエルは中東で多くの戦争を仕掛け、今も地域の国々や人々を恐怖と侵略で脅迫し続けている。また、数百基もの核弾頭を蓄積している。」として、イスラエルを非難した。

さらに同大統領は、「イスラエルは米国及びその同盟諸国より無条件の支持を享受しており、核兵器開発計画への必要な支援さえ受けている。」と指摘した。

また同大統領は、IAEAについて、「核軍縮と核不拡散の双方で失敗した」と非難した。

これに対して、米国のヒラリー・クリントン国務長官は、「イランはあらゆる手段で自らの(核兵器開発の)行いから国際社会の注意を逸らし、説明責任を回避しようとしている」と非難した。

「イランは国連安保理とIAEAを公然と無視し、核不拡散体制の未来を危うくしました。」とクリントン長官は語った。

一方、オバマ大統領は4月に開催した核安全保障サミットにおいて、イスラエルの核兵器開発計画についての見解を記者団に求められている。

しかしオバマ大統領は、その質問を巧みにかわすとともに、あえて記者団に対して、「イスラエルに関しては、同国の(核兵器)計画についてコメントするつもりはない。」と語った。

「私が指摘しておきたいのは、米国は一貫して、全ての国に対してNPTに加盟するよう強く促してきた事実です。従って何ら矛盾することはないのです。」「イスラエルであろうとその他の国であろうと、私たちは、NPTへの加盟が重要だと考えています。」「ところで、これは新しい方針ではなく、私の政権誕生以前から米国政府が一貫して主張してきた立場です。」とオバマ大統領は付け加えた。(原文へ

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩

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オバマを保護する責任―15ヶ月が経過して(ジャヤンタ・ダナパラ)

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【ワシントンDC・IDN=ジャヤンタ・ダナパラ】

ジョン・F・ケネディ大統領以降、これほどの熱狂と希望を呼び起こした米国の大統領はいなかった。もしバラク・オバマ大統領が米国と世界にとってのビジョンを実現することができなかったなら、そうした潜在力を持った大統領が次に出てくるまで、我々は長いこと待たなくてはならないだろう。

しかし一方で、妥協を重ねて何とか議会で通過させた医療改革法案と、ロシアとの間に締結した新核兵器削減条約(START)ぐらいが、オバマ大統領が就任後15ヶ月の間に成し遂げた成果といえるのかもしれない。

共和党右派の批判勢力はこうした状況を、典型的な口先だけの政権として攻撃を続けるだろう。一方オバマ支持者は、山積する諸問題-恐らくどの新任の大統領よりも過酷な-を生き延びた功績を讃えるだろう。

 そして彼らはオバマ大統領の功績として、世界恐慌以来最悪と言われる金融危機後の経済の緩やかな回復や、グアンタナモ基地の閉鎖決定と拷問の禁止、「核兵器なき世界」というビジョンの提示と実現に向けた行動、アフガン戦争の「出口戦略」の提示と増派、気候変動サミットでの仲介、その他ネオコン前政権とは全く異なる路線を打ち出した諸政策を挙げるだろう。

つづめて言えば、オバマ大統領も人間であり(神のように水面を歩くことができる訳ではない)、オバマ政権への評価は真っ二つに割れている。つまり、オバマ大統領も膨大な抑制と均衡に基づく制度から成り立っている米国の政治制度の中の一部であり、この制度の中においては、議会の多数派を擁する大統領と言えども、常に個人の理想主義を政策に反映することは必ずしもできないのが現実である。(その好例が自ら提唱した国際連盟への米国の加盟を上院の反対で断念させられたウィドロー・ウィルソンのケースである。)

しかしオバマ大統領の最初の1年の実績について賛否両論の評価があるのは国内のみではない。

アラブ諸国では、米国とイスラム世界間の懸け橋を構築するとしたオバマ大統領のカイロ演説には当初大きな期待がもたれたが、その後イスラエルに引きずられてパレスチナ問題を解決できていないことへの不満が強い。とりわけガザ問題に関するゴールドストーン報告書へのオバマ政権の対応は、それまでの米政権が示してきた米国のイスラエル寄りの政治姿勢を改めてアラブ世界に印象付けることとなった。

ラテンアメリカでも、ホンジュラスのクーデターに対するオバマ大統領の反応が、歴代の米政権に通ずるものを感じさせている。

またロシアは、過去の経緯から、オバマ大統領による東欧のミサイル防衛計画(一時凍結にはしているものの)に対する警戒を緩めていない。

我々が目にしているのは、複数のオバマ像である。片方には、政治に飽き飽きした米国の有権者、とくに若者を奮い立たせた理想主義的なオバマ大統領がいる。

そしてもう片方には、米議会との妥協を迫られる現実主義的なオバマ大統領がいる。上下両院とも民主党が過半数を占めているが、それでも妥協が必要なのだ。右翼勢力はオバマ大統領への追撃の手を緩めていないし、それに穏健な共和党勢力も加わっている。今年の秋の中間選挙で、民主党の多数が崩れた1994年のギングリッチ革命の再来、ということになるかもしれない。

偉大な指導者は、大義に関して人々を奮い立たせるだけでは足りない。いかなる障害があろうともそれを乗り越えて、鼓舞し続けることが必要なのだ。よりよきアメリカと世界を目指すオバマの高邁な理想をくじくべく、米国の政治制度を悪用しようとする人々がいる。結局それを防ぐことができるのは、ピープル・パワー(民衆の力)だけなのだ。

※ジャヤンタ・ダナパラ:スリランカの外交官で元国連大使。1995年核不拡散条約(NPT)運用検討会議の議長。1998年-2003年、国連軍縮担当事務次官。現在は、科学と世界の諸問題に関するパグウォッシュ会議会長。本オピニオンは、ダナパラ氏の個人的見解である。

翻訳/サマリー=IPS Japan戸田千鶴


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核不拡散体制には三重基準がある(ジョン・バローズLCNP事務局長インタビュー)

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【国連IPS=タリフ・ディーン】

John Burroughs/ LCNP
John Burroughs/ LCNP

核兵器の廃絶と、この恐ろしい兵器の拡散をいかに阻止するかということが、5月3日から約1カ月に亘って国連を舞台に開催される核不拡散条約(NPT)運用検討会議における主な協議事項となっている。

5年に一度開催されるこの会議は、米国のバラク・オバマ政権が「核兵器のない世界」を目指すとする不可能に近い公約が行われた中で開催されることとなった。

体制内外の核保有国が、少なくとも何の前提条件もなしに自国の核兵器を廃絶したり放棄したりする意思を示していない中、オバマ大統領の公約は実現には至らないかもしれない。

ニューヨークに本拠がある「核政策に関する法律家委員会(LCNP)」のジョン・バローズ事務局長は、「市民社会は1980年代以来最大規模となる運動を展開し、世界規模の核廃絶合意を目指した協議を求める嘆願書に1000万人を超える署名を集めました。」と語った。

 しかしバローズ氏は、5月3日から28日まで開催予定のNPT運用検討会議は「イランの核開発プログラムを巡る対立を解決したり、北朝鮮による核兵器取得の流れを転換したりする場にはならないだろう。」と警告する。

タリフ・ディーンIPS国連総局長のインタビューに応じたバローズ氏は、「NPT運用検討会議が望ましい結論を導き出す要素は確かにあります。」と語った。

「それは世界の大半の国々がNPT体制崩壊へと進んできたこの10年の流れを逆転したいと決意していることです。」と。バローズ氏は語った。

バローズ氏は、「オバマ大統領は核兵器の危険性について雄弁に説明し、『核兵器なき世界』というビジョンを明確に示したうえで、その目標に向けた一連の動きを開始しました。とりわけ、米露両国は4月8日に新戦略兵器削減条約を締結し、長距離核弾頭の削減状況を相互に検証するシステムを復活させました。」と語った。しかしバローズ氏は同時に、「もっとも、削減規模は世界の国家社会を滅亡させる破壊力を維持したままの小規模なものにとどまっていますし、米国はその一方で武器製造能力の向上に予算増強を図っています。」と、依然として山積する課題についても指摘した。

以下にインタビューの抜粋を紹介する。

IPS:NPT運用検討会議はほぼ一カ月に亘って開催されるわけですが、今回の会議に何を期待されていますか?また、会議を成功と判断する基準をどこに置いていますか?

バローズ:
もし今までの主な合意事項が再確認され、核兵器の削減・廃絶への具体的な方策について(米露のみならず他の)核保有国間の合意がなされ、追加議定書(各非核保有国が自国の核関連活動への査察アクセスと透明性を高めることに合意する)のような核不拡散体制強化措置への支援が表明されれば、会議は成功だと思います。

しかし、交渉は3つの議論が争われている分野で、激しく困難なやり取りが行われるでしょう。一つ目の争点は、核軍縮に向けた行動計画に関してです。おそらく、1995年及び2000年のNPT運用検討会議における合意内容の改訂版を今回の会議で認めることは、それほど困難なことではないでしょう。そうした合意内容には、包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効、核兵器用核分裂物質の生産禁止に関する交渉の開始、核兵器削減への不可逆性の原則の適用、安全保障政策における核兵器の役割低減が含まれています。

IPS:会議成功への障害は他にどのようなものがあるでしょうか?

バローズ:
2つ目の争点は、核兵器の拡散防止強化に関する分野です。具体的には、追加議定書の適用を通じた国際原子力機関(IAEA)の査察権限の強化、核施設用燃料の生産と供給を多国間の管理下に置く仕組み、NPT脱退に関する制限の追加、等が含まれています。

こうした追加措置に対しては、多くの非核保有国が、NPTに加盟し規則順守を通じて既に十分な貢献を行ってきたとして、受入れに難色を示しています。ただし、例えば「追加議定書」の締結を各国に促すといった、より緩やかな公約については合意にたどり着ける可能性は十分あります。

3つ目の争点は、1995年のNPT運用検討会議で採択された「中東に関する決議」、すなわち、中東大量破壊兵器(核兵器・生物兵器・化学兵器)フリーゾーン構想の実現に向けて前進を図ることができるかどうかという点です。これはアラブ諸国にとって非常に重要な点であると同時に、イランの核兵器開発疑惑を巡る論争解決の一助ともなり得る可能性を秘めています。この点については、1~2年後にこのテーマについて協議する国際会議を招集することで合意がなされる可能性がでてきています。

IPS:その他にもNPT運用検討会議中に障害として浮上してくるものがあると思いますか?

バローズ:
核兵器の削減プロセスに、米露以外の核保有国を組み込んでいく多国間核軍縮交渉も複雑な課題です。オバマ政権は、原則的にこのアプローチを支持していますが、近い将来における具体的な方策はなにも提示していません。もしかするとそのあたりで進展があるかもしれません。

IPS:2005年の運用検討会議は実質的内容のある「最終文書」を不採択で閉幕しましたが、今回の会議では「最終文書」の採択に成功するでしょうか?

バローズ:
今回の会議で「最終文書」採択に至るためには、各国がこれらの争点について合意することに加えて、独自の目的から協議結果を妨害したい国が現れないことが条件となります。たとえ、各国のコンセンサスが確保できなかったとしても、「最終文書」以外の方法で、幅広い合意がなされていることを示す方法を見出すことができるでしょう。

IPS:米国や西欧諸国が、核兵器開発疑惑で(NPT加盟国の)イランに対して制裁を求める一方で、インド、パキスタン、イスラエルといったNPT未署名の核保有国に対しては異なった対応をしていることから、これを偽善でダブルスタンダード(二重基準)だとする見方もありますが?

バローズ:
核不拡散体制は二重基準というよりも実に三重基準という根本的な問題を抱えています。NPTそのものは2階建て構造で、核兵器廃絶に向けた交渉義務を有する核保有を認められた国々と、核兵器を取得していないことを証明するため査察の受け入れを義務付けられている非核保有国から構成されています。そしてそれらの国々の他に、NPT未加盟で事実上核兵器を保有している国々-インド、パキスタン、イスラエル、(そして最近は)北朝鮮-があるのです。

このことは、核兵器の取得が禁じられているNPT加盟国の間に不公平感を呼び起こしています。また原子力供給国グループ(NSG)が、米国の圧力でインドを例外扱いしたことは、こうした不公平感にさらなる拍車をかけることとなりました。それはNSGが、NPT加盟の核保有国に課されている核軍縮義務や約束を公式に認めてさえいない国に対して核関連の商取引を認めたからです。

一方で、NPT加盟の非核保有国であるイランが核兵器製造能力を得ようとしているとする疑惑から検査、制裁の対象になっています。こうした三重基準の問題を解決する方法は一つしかありません。それはすなわち、「核兵器の保有を認めない」とする単一の規則を全ての国々に適用する全地球的な体制を創出することです。

この体制をいつどのように達成するかについては多くの意見がありますが、この基本的なポイントは、エリートと一般大衆、先進国と途上国、平和活動家と安全保障専門家の違いを問わず、ますます多くの方面で受け入れられてきているのです。(原文へ

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩

This article was produced as a part of the joint media project between Inter Press Service(IPS) and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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NPT運用検討会議に何千人もの反核活動家が集う

【国連IPS=アンナ・シェン】

NPT運用検討会議開幕前日の5月2日、約15,000人の市民が核廃絶を訴えてニューヨーク市内を行進した。この群衆の中には、「ノーモア・ヒロシマ」と訴える横断幕を掲げた着物姿の日本人女性や、80歳の老婦人、世界から集った18人の市長等、多彩な顔ぶれが見られた。
参加者たちは当日の蒸し暑い天気にも関わず、ニューヨークの中心部タイムズスクェアーから国連本部前を経由して「国際平和・音楽フェスティバル(世界の音楽演奏と核廃絶・平和活動に関するブースが出店)」が開催されるダグ・ハマーショルド広場まで行進した。

参加した人々の核問題に対する見方は様々だが、「核軍拡競争を早急に終わらせるべき。」という一点において固く団結していた。

「今こそ世界から全ての大量破壊兵器を廃絶する時です。核兵器反対。戦争反対。YES WE CAN! そうなのです、これは実現しなければならないのです。」と、ピース・アクションの創設者、ジュディス・ル・ブラン氏は語った。

 「今年の8月9日は、日本の長崎市に原子爆弾が投下されて65周年になります。」「私たちは皆、繋がっています。市民を核兵器から守るという確固たる信念を共有しなければなりません。私たちが団結すれば、政府を動かし、世界を変えることができるのです。長崎を最後の被爆地にするために連帯していきましょう。」と田上富久長崎市長は語った。

長崎から参加した吉田勲氏は1945年の米軍による長崎原爆投下の際、わずか4歳で被爆し、祖母と友人を失った。今回のNPT運用検討会議開催に合わせたニューヨーク訪問は吉田氏にとってとりわけ感慨深いものだった。

「今回の会議には多くの人々が熱い期待を寄せています。是非とも成功してもらいといと思っています。昨年の4月、オバマ大統領は『核兵器なき世界』を目指すとの公約を掲げました。今回の会議に国際社会とヒロシマ・ナガサキの被爆者の思いが届くことを期待しています。」と吉田氏は語った。

環境安全のための多文化連合(MASE)のコーディネーター、ナディネ・パディリャ氏は「核兵器がもたらす人命の犠牲は、兵器の配備(と結果的な使用)に伴うものに限りません。そこには核兵器製造に伴う環境と健康に対する影響も含まれるのです。従って私たちは(こうした核関連活動から)土地を守るために闘わなければなりません。」と語った。パディリャ氏はまた、ウラン鉱山を閉鎖し、癌や流産など人体に様々な問題を引き起こす原因となっている放射性廃棄物の源を断つよう訴えた。

戦争で疲弊したコンゴ民主共和国におけるウラン採掘をやめさせることは、ニューヨーク在住のコンゴ人教授ヤーレンギ・ンゲミ氏にとっても重要な問題である。

「ウランは広島への投下された原爆に使用されました。そして現在、コンゴの(ジョセフ・カビラ)大統領はウランをイランに売却しているのです。テロリストを支援しコンゴ人を殺戮しているカビラ大統領を取り除かねばなりません。私はそれを訴えるために行進に参加しているのです。」と、ンゲミ教授は語った。

また他の参加者から、「NPT運用検討会議に世界の指導者が参集する機会を捉えて、米国は率先して自らの(核兵器開発の)状況について実態を公開すべきだ。」との意見も聞かれた。
「米国には今も3つの核兵器製造工場があり、その内の1つがテネシー州にあります。」と同工場閉鎖を訴えているオークリッジ平和同盟のラルフ・ハンチンソン氏は語った。

「米国は世界最大級の核保有国であり、未だに核兵器の生産を継続しています。また、米国は配備されている核弾頭の他にも1500発のアクティブストックパイル(=核兵器が配備されている場所に保管しているスペア)及び戦略予備として核弾頭を保管しています。米国が自国の管理状況について正直にならない限り、世界から核兵器を廃絶することはできません。」とハンチントン氏は語った。

「どうして米国には核兵器の所有が許されて他国には許されないのでしょう?これを道徳的にどうやって正当化できるでしょう?」とハンチントン氏は問いかけた。さらに、「国連総会において核兵器保有を巡って米露両国を非難する雰囲気があることから、今回の会議では国連が影響力を行使でできるだろう。」と付け加えた。

デトロイトピースアクションのメンバー、ダン・ロンバルド氏もこの考えに同意する。「米国は1970年にNPTが発行した際に示された軍縮ビジョンを順守すべきです。」「NPTは容易に結果が出せるものです。私は宗教的観点からNPTを支援するために参加しました。なぜなら、戦争や戦争への準備は神の意志に反するからです。」と、ロンバルド氏は語った。

平和市長会議「2020ビジョンキャンペーン」の国際ディレクター、アーロン・トヴィシュ氏は、「今こそ、核兵器を廃絶するという約束-オバマ大統領が少なくとも理論上受け入れた-を果たす時です。」「核兵器を製造する施設と解体する施設は同じであり、2019年までに全ての核兵器を解体することは可能なのです。これは政治的な決断を要する問題であり、今こそ、その決断をする時なのです。国際社会は向こう10年以内に、核兵器の廃絶に関して検証・モニタリングを行うシステムを構築することは十分可能です。」と語った。さらにトヴィシュ氏は、「今回の会議が核兵器の脅威に対してより包括的なアプローチを打ち出すことができるかどうかという疑問は残っています。」と付け加えた。

ドキュメンタリー映画「フラッシュ・オブ・ホープ-世界をまわるヒバクシャたち」を上映したコスタリカのエリカ・バニャレロ監督は、国連で、「いま地球上のすべての都市を7回以上にわたって破壊できるほどの核兵器が存在しています。」と指摘した。

バニャレロ監督は、今回のNPT運用検討会議では、前回の2005年の会議よりも力強く、問題への対処を前進させるような文書が採択されることを期待すると語った。

「世界の人々が、今日の世界には23,000発の核弾頭が存在し、その大半は米露両国が保有している事実を知っています。私たちはその数を削減していく必要があるのです。」と、パニャレロ監督は語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩

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