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|中東|平和・共存を呼びかける女性デュオ

【エルサレムIPS=ジェロルド・ケッセル、ピエール・クロシェンドラ】

毎年5月になるとヨーロッパ諸国や地中海沿岸国から国を代表する歌手が集まり、国別対抗の大々的な音楽祭が開かれる。今年の『ユーロビジョン・ソング・コンテスト』はモスクワで5月12日から16日までの日程で開催され、テレビ視聴者は1億人を超えると見られている。 

歌唱力・振り付け・華々しさなどコンテストには様々な評価基準があるが、特に今年度は「イスラエルによる戦争行使の正当性」の問題をめぐる評価・議論が紛糾し、政治色の強いコンテストになると予測されている。 

イスラエルの放送局(IBA)はイスラエル代表として生まれの異なる女性デュオを選んだ。ユダヤ系イスラエル人のAhinoam Nini(39)さんと、アラブ系イスラエル人の血を引くMira Awad(33)さん。彼女たちは2人とも平和主義者である。

 「我々は過激な民族主義に傾倒してはいけない」とAwadさん。家族がイエメン出身のNiniさんも「平和と共存こそが必要だ」と訴える。 

しかし、2人に向けられる視線は様々だ。「彼女たちはイスラエルの広告塔だ」、「多くのパレスチナ人が殺されているのにユダヤ人とアラブ人の共存なんて有り得ない」、「彼女らは夢見る理想主義者である」などの批判的意見も多い。有名なパレスチナ人俳優ムハンマド・バクリー氏も「戦争擁護者に利用されているに過ぎない」と話した。 

一方、イスラエル人は平和を訴える彼女たちの歌声が多くの人々の心を動かすこと、イスラエルに対する偏った考えに何らかの変化をもたらすことを望んでいる。民族の対立を超えた女性デュオについて報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan 浅霧勝浩 


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|オーストラリア|危機にひんする先住民族の言語

【メルボルンIPS=スティーブン・デ・タルチンスキ】

オーストラリアの言語は主に英語で、その他にイタリア語、ギリシア語、広東語、アラビア語などが使用されている。さらに100を超える先住民族の言語が話されているが、その今後が危ぶまれている。 

2005年の全国先住民族言語調査報告書によると、250の先住民族言語のうち全年齢層で話されているのは18言語で、110言語は高齢者だけしか使っていない。その他は消失した。アボリジニ・トレス海峡島しょ民言語連盟(FATSIL)のP.ハーバート氏は「先の見通しは暗い」という。

 言語と文化の多様性を推進するための国際母語デーの2日前、2月19日に発表されたユネスコの「Atlas of the World’s Languages in Danger(危機にひんする世界言語地図)」の新版によると、世界のおよそ6,000の言語のうち、2,500が危機にある。 

危機にある先住民族言語を懸念して、ハーバート氏は下院宛ての請願書を作成し、国の先住民族言語政策の策定を求めている。請願書は教育や地域社会における言語の重要性を訴えるとともに、そうした言語を保存あるいは再導入する動きも紹介している。 

さらに、昨年12月に無党派のオーストラリア教育研究審議会が作成した「A Way Forward(ひとつの進展)」という報告書によると、16,000人の先住民族の生徒と13,000人の先住民族以外の生徒が先住民族言語プログラムに参加し、80の言語が260の学校で教えられていた。 

ジラード教育相は先住民族言語の学習を支援すると言っているが、予算は他の言語と比べてはるかに少ない。「先住民族言語の保護は文化の保護につながる」とハーバート氏はいう。 

モナシュ大学先住民族研究センターのJ. ブラッドレー氏も言語と文化は切り離せないと主張している。同氏はオーストラリア北部のヤニュワ族の人々と、過去30年にわたり、言語を含む自然や文化の維持にかかわってきた。 

ヤニュワ語を保存するために、ブラッドレー氏と専門家チームは地域社会の人々とともに二言語用のアニメを作成している。これにより若い世代だけでなく、未来の世代にもヤニュワ語とその文化に関する知識を伝えることが期待されている。 

オーストラリアの先住民族言語を保存する活動について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

未だに苦しんでいる元セルビア兵士たち

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【ベオグラードIPS=ヴェスナ・ペリッチ・ジモニッチ

セルビアの軍事医療アカデミーが『セルビア退役軍人の健康状態と保健ニーズ』と題する報告書を発表した。セルビアの元兵士たちが、バルカン半島での軍事紛争終結から10年近くたった今もなお、苦しみ続けていることが明らかにされている。 

1991年から95年にかけてのクロアチア、ボスニアでの戦争、1998年から99年にかけてのコソボでの戦争に参加したセルビア人は約40万人と推計されている。セルビアの人口は750万人。 

調査対象は2399人の元兵士で、平均年齢は45.7才。そのうち、実に84%の元兵士が、主に心臓や血管などの慢性的な健康問題に悩まされている。また、54.1%が精神上の健康問題を抱え、3分の1が鬱やアルコール中毒を患っている。

 8.8%の元兵士は、いまだに心的外傷後ストレス障害(PTSD)にかかっている。過去にPTSDにかかっていた者も20%近くに上る。 

調査チームのひとりであるスピリッチ博士は「国際的な調査では、PTSD患者の3分の1が自力で回復し、3分の1が治療を受け、残り3分の1が永久にPTSDから抜け出すことができない」と話す。 

しかし、苦しんでいるのは元兵士だけではない。民間人もまたそうなのだ。非暴力行動センターのネナド・ブコサブイェビッチ氏によると、バルカン半島での武力紛争によって300万人が家を追われ、20万人が何らかの形で収容所に入ったことがあるという。 

人びとに心の平穏が訪れるには、まだまだ時間がかかりそうだ。 

元セルビア兵士の健康状態に関する調査について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan 

スーダン大統領訴追をめぐり問われる国際法廷の合法性

【国連IPS=タリフ・ディーン】

国際刑事裁判所(ICC)による逮捕状を受けてのスーダンのオマル・ハサン・アル・バシール大統領の行為は好ましくない。しかし、米国をはじめ世界の大国がICC非加盟であるのはいかがなものか」。コロンビア大学法学部のマイケル・ラトナー助教授は述べた。 

ICCは異例とも思われる現職大統領への逮捕状発行に踏み切った。これに対しバシール大統領は猛反発。外交官や外国人活動家をスーダンから国外退去をさせると脅し、先週13のダルフール支援団体を国外追放した。 

一方、ICCが設立されて6年になるがこれまでに起訴されたのはコンゴ民主共和国のトマス・ルバンガ(Thomas Lubanga)被告ただ1人。有罪判決は未だに出された事もない。逮捕状が出された13名の被告のうち4名は拘留されており、残りは逃亡中あるいは死亡したと見られている。

 このような現状に、専門家からはICCの存在に疑問を投げかける声も出始めた。「ICCが起訴するのはアフリカを中心とした途上国の人間だけ。米国や欧州に戦争犯罪人はいないのか」。 

米国では国連平和活動への参加を条件に戦犯の訴追から免責を受ける事ができる。スーダンの特使は、「米国はICCに加盟もせず、ICCを上手く利用しているだけ」とし、豊富な天然資源を有するスーダンに対して米国が石油利権獲得を狙っていると非難した。 

ヒューマン・ライツ・ウォッチのリチャード・ディッカー氏は国際司法制度の『ダブル・スタンダード(2重規範)』について、「国際法上まだ歴史の浅い制度であるため、西側諸国とその他の国々の間に不公平が生じてしまうのは否めない」と語った。国際司法制度のあり方について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 


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「取り戻そう分かち合いの文化」ガスル・ムブル氏へのインタビュー

【ナイロビIPS=テルナ・ギューズ

アフリカの緑の革命(AGRA)は、ウェブサイト上で、アフリカの総体的食糧安全保障および生計は世界でも特異な悲劇的状態にあると述べている。同問題に取り組むAGRAプログラムは、本当にアフリカに適したアプローチなのだろうか。

同計画に異議を唱える人々は、同プログラムはアフリカの食糧生産の核をなす零細農家ではなく商業的農業に寄与するもので、作物の多様性、伝統的農業知識の喪失をもたらすと主張している。同問題について、ナイロビを拠とする文化エコロジー研究所のガスル・ムブル所長に聞いた。

IPS:緑の革命はアフリカで既に試されているのですか。

ガスル・ムブル:アフリカの全ての国で肥料や除草剤が使用され、多くの改良種も紹介されていますから、それぞれの方法で緑の革命は行われていると思います。

IPS:その結果は?

GM:商業的農業では、パッケージとなっている肥料、農薬、種を買うための継続的資金が得られますから、成果が出ています。

IPS:アフリカの食糧安全保障は小規模農家が担っていると聞きますが、緑の革命が彼らに利益をもたらさないのは何故ですか。

GM:実を言えば、緑の革命は彼らの農業システムを崩壊させているのです。このモデルでは継続的に改良種子を購入しなければならないのですが、小規模農家の収入は不安定でそれができないのです。収穫が悪ければ、翌年は肥料、農薬どころか種子を買うこともできません。

IPS:緑の革命はアジアでは成功しましたが。

GM:アジアは生産性の高い作物の栽培で成功しましたが、作物の多様性が失われました。基本的に緑の革命は作物の多様性を問題としないのです。

IPS:アフリカの小規模農業を支えているのは女性です。緑の革命がジェンダー問題に与える影響は。

GM:AGRAはアフリカの女性地位向上にとどめを刺すものです。AGRAは銀行ローンにより行われますから、銀行口座を持たない女性は資金を手にできません。ローンを獲得できるのは男性で、それも農業従事者ではありません。この資金は女性支援に使われるどころか彼女たちを奴隷状態に追いやるのです。

IPS:緑の革命がアフリカに適さないとしたら、どの様な代替策があるでしょう。

GM:アフリカが必要としているのはローカルな革新、つまりエコ農業、多様な作物から取れる自前の種の使用、地元農家支援のための法の確立、原生植物の耕作技術開発などです。

IPS:実践例はありますか。

GM:ジンバブエでは緑の革命のフィージビリティー・テストが行われました。同国ではオーガニック運動も盛んです。ケニアでは、オーガニック農業を促進しているNGOがあり、食の安全への関心の高まりにより我々は文化を取り戻さなければなりません。収益を上げています。またインドでも、エコロジー農業への回帰が食の確保に必要だとの認識が高まっています。私は、世界のいかなる企業も意義ある社会変換をもたらすことはできないと考えます。緑の革命は利益に基づくものです。真の社会変革は人によってもたらされるものです。

アフリカの緑の革命をテーマとしたケニア文化エコロジー研究所所長とのインタビューを紹介する。 (原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan 浅霧勝浩

|ロシア|天然ガス供給をめぐりウクライナとの深まる溝

【モスクワIPS=ケスター・ケン・クロメガ】

ロシアからバルト海を経由するノース・ストリーム(North Stream)、ロシアから黒海を経由するサウス・ストリーム(South Stream)。天然ガス資源を豊富に持つロシアが進める欧州向け輸送パイプラインの敷設計画はウクライナとの亀裂をさらに深めようとしている。 

ロシア政府系ガス企業『ガスプロム社』のアレクセイ・ミラー社長は今月初めスペインを公式訪問し、埋蔵量3兆8,000億立方メートルの天然ガスが眠るとされる北海のガス田開発に乗り出すことを約束した。 

一方で、「天然ガス輸送の多極化」よりも「供給元確保」の重要性を指摘する声が大きくなっている。ウクライナの専門家は、ロシアからのパイプライン敷設ラッシュがロシアへのエネルギー依存を一層強めるだけだと懸念を示す。


エネルギー・エコノミストのVolodymyr Vakhitov氏はIPSとの取材で「天然ガスを巡る問題は、国家安全保障・土地所有権・環境といった更なる問題を招く恐れがある」と語った。 

Kiev School of EconomicsのValentin Zelenyuk助教授によると、ウクライナを介したガス輸送手段の多様化および欧州へのガス供給確保を考えると、ロシアのパイプライン計画は全くあてにならないという。「問題はガスの輸送手段ではない。欧州のガス市場をロシアが牛耳っている事、それによりロシアが政治的主導権まで握っている事、これこそが大きな問題なのだ」と述べた。 

また、同教授はヨーロッパの天然ガス輸送企業から成る、透明性の高いガス輸送事業の共同組合を設立する必要性を訴えた。ロシア主導の天然ガス輸送をめぐる問題について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=/IPS Japan浅霧勝浩 

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テロリストの狙いは不安定化とメディアの注目

【カラチIPS=ビーナ・サルワール】

南アジア諸国は、暴力の渦に巻き込まれている。昨年11月にはインドのムンバイで180人の犠牲を出す大規模テロ事件が起こり、3月3日には、パキスタンのラホールで、クリケットのスリランカチームが乗車したバスが襲われ、警備員8人が死亡、選手も8人が怪我を負った。 

バングラデシュでは、国境警備隊の兵士らが給与と勤務条件をめぐって反乱を起こし、70人の将校を殺害するに到っている。 

国同士が対立している南アジアにおいては、クリケットを通じた民衆同士の交流は重要だと考えられてきた。そのこともあって、まさかクリケットの選手がテロの対象になるとはほとんどの人たちが思っていなかった。

 
 しかし、この数年間、テロへの恐れから、多くのナショナルチームが遠征を控えるようになっている。 
 
パキスタンでは、タリバンやアルカイダ、地元の過激派である「Laskhar-e-Tayyaba」や「Jaish-e-Mohammed」などが、パキスタン諜報部などともつながりながら、次第に連携をみせるようになってきている。 

彼らの目的は、たんにイスラム国家を建設するということではなく、国家自体を不安定化させるという点にある。ラホールでのテロは、ムンバイ・テロ後難しくなっていた印パ間の対話の再開をさらに先送りにする効果を持った。 

パキスタン諜報部(ISI)のハミード・グル元長官(元中将)は、インドはパキスタンをテロ国家だと宣伝したいがために、ラホールでのテロという陰謀を企てた、とテレビで発言している。他方で、ジャムシェド・アヤズ・カーン元少将のように、ろくな調査もせずにそのような結論を導くべきでないとの冷静な意見もある。 

結局、こうした状況の中で損をするのは両国の普通の民衆であり、勝者となるのは、国家の不安定化にまんまと成功したテロリストたちなのである。 

ビーナ・サルワールが南アジアのテロの状況について解説する。(原文へ) 

翻訳/サマリ=IPS Japan

隣国インドネシアを知ろう、オーストラリアが呼びかける

【メルボルンIPS=スティーブン・デ・タルチンスキ】

両国間関係の一層の強化に熱心な関心を寄せるオーストラリアとインドネシアが、2月末、政治、実業、宗教、学術、市民社会の代表を含む多方面の指導者の参加を得て3日間のサミットをシドニーで開催した。 

セミナーでは、環境、民主主義、経済発展および投資に関する他、両国国民のそれぞれに対する認識や理解についても議論が行われた。 

両国は現在活発な外交関係を維持している。2008年における両国閣僚の相互訪問は32回に及んだ。インドネシアはオーストラリアの最大被援助国だが、先のビクトリア州の山火事の際には100万豪州ドルの支援を約束するとともに法医学チームを派遣した。また両国は2005年に、経済、技術、安全保障分野での協力を図るため包括的なパートナーシップ協定を締結している。 

しかし70人のインドネシア代表団を率いたハッサン外相が「両国関係の強化を図るためには、両国の政府の努力だけでは十分ではなく、両国の国民の関与が必要」とサミットで述べたように、政府間レベルの良好な関係は必ずしも両国国民間の関係に反映されていないことが懸念されている。 

シドニーに本拠を置く国際的なシンクタンク「ローウィー国際政策研究所」が実施した2008年の世論調査でも、オーストラリアに対するインドネシアの認識は改善してきている一方で、インドネシアに対するオーストラリア国民の認識は同国政府ほど熱心ではないことが明らかにされている。 

オーストラリアはこの点を改善する上で教育が大切と考えており、オーストラリアのラッド首相はサミットでの晩餐会で、大学や学校レベルでのインドネシア語やインドネシア研究の推進とインドネシアのイスラム教の理解の促進に向け一層の努力が必要と述べた。 

インドネシアに関する理解促進に向けたオーストラリアの動きは、影響力を増すアジア地域への関与を強化したいと考える同国の取り組みのひとつと思われる。 

オーストラリアとインドネシアの関係強化への動きについて報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

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|朝鮮半島|ミサイルによる威嚇は通用しない

【ソウルIPS=アン・ミヨン】

韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領は3月1日、日本の植民地時代の抗日運動の記念式典の演説で、北朝鮮の指導者に対し隣国諸国を脅かすミサイル開発は北朝鮮政府にとって逆効果だと警告し、「北朝鮮を守るのは、核兵器でもミサイルでもなく、韓国や国際社会との協力だ」と述べた。 

北朝鮮は、実験通信衛星の打ち上げを予告しているが、しかしこれには長距離ミサイルにも利用できる「軍用・民生用二重用途」の技術が関わっている。 

評論家によれば、北朝鮮政府は、西側に圧力をかけ、可能であればさらに譲歩を引き出すための手段としてミサイル威嚇を利用するとともに、この技術をイランやシリアなどの国に売却して資金を得たい意向だ。 

だが韓国政府は、北朝鮮は楽観的な考え方をやめ、もはや瀬戸際外交は許されないという現実を直視するべき時がきたとの考えである。 

軍事消息筋は、北朝鮮がミサイルを再発射すれば、抑止力として軍事増強を主張しているソウルとワシントンの強硬派の勢力を強めることになると見ている。 

韓国政府は、北朝鮮が核計画を放棄すれば、食糧・燃料援助を含む経済援助を再開すると申し出ている。北朝鮮の天然資源開発のプロジェクトの具体化も進んでいる。製造業者も、中国より経費面でも規制面でも有利な北朝鮮への投資機会を待っている。 

中央日報の記者、金永煕(キム・ヨンヒ)氏は社説に「北朝鮮がミサイル発射を主張すれば、核のカードを放棄することで得られるはずのあらゆる富を放棄することになる」と書いている。 

一方で、経済悪化に苦しむ韓国では、北朝鮮からの脅威を理由に投資家による資金の引き揚げが進んでいる。 

北朝鮮のミサイル発射に自制を促した韓国政府について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

|リベリア|寂れる鉱山の町イェケパ

【イェケパ(リベリア)IPS=レベッカ・マレイ】

リベリアの奥地ニンバ郡の粗末なバーで、疲れ切った3人の鉄道工夫がビールを啜っていた。闇の中で、バイクの騒音と近くにある発電機の音が鳴り響く。これが、ブキャナン港から鉱山町イェケパまで250キロ強の鉄道改修に当たる労働者の1日10時間の過酷労働の後の楽しみだ。彼らは、鉄鋼業界最大手のアルセロールミッタル(ArcelorMittal)の契約会社であるブラジルのオーデブレヒト社に雇われている。 

彼らは、熱帯の高温の中で週6日から7日、ハンマーを振り降ろして働き、夜はテントのべニアの床で寝ている。食事は1日カップ1杯の米とスープ。井戸の水を飲み、病院へ行けば、その費用は給料から差し引かれる。 

オーデブレヒトのウェブサイトには、月給の他に毎日1キロの米と1米ドル相当の食費が与えられると書かれているが、労働者は、手取り月収は平均80ドルで、インフレ高騰の折これではまともな生活は不可能と語っている。

 アルセロールミッタルの鉄鋼採掘所の中心地イェケパは、1950年代から1989年のチャールス・テイラー軍侵攻までLAMCO(Liberian American Swedish Chemicals Company)の鉄鋼石採掘地として栄えてきた。町の郊外にはアールデコ調のプールや略奪され骨だけになった白亜の建物などが残っている。 

アルセロールミッタルは、エレン・ジョンソン・サーリーフ政権の要請に応じ、旧LAMCO施設復活に期間25年、総額15億ドルの投資を約束。3年前リベリアに進出した。リベリア政府は、純益の30パーセント、4.5パーセントの鉱山使用料、グランドバッサ等の開発計画のため年間3百万ドルを受け取ることになった。また、鉄道、港湾施設は企業ではなく国の資産とし、国が運営、監督などに当たるとした。 

 サーリーフ政権は、鉄鉱石、ゴム、材木などの資源開発投資を各国に呼び掛けてきたが、世界経済の崩壊で大きな痛手を蒙っている。アルセロールミッタルは今四半期263億ドルの赤字を計上。イェケパからはいまだ鉄鉱石は輸出されていない。アルセロールミッタルのマシューズCEOは、「2009年末には鉄鉱石の輸出ができると見ていたが、2010年に持ち越される模様だ。2か月に雇用を凍結したが、既存のリベリア人労働者はできるだけ確保する計画だ」と語っている。 

しかし、労働者は僅か6ヶ月の契約で働いており、経営者は契約満了と共に首切りを行うかも知れない。組合オーガナイザーのダリウス・ダーン氏は、労働大臣に対し労働者の署名を提出したが、アルセロールミッタルおよび下請会社の組合組織は難航するだろうと語っている。 

リベリアの海外投資促進計画に対する世界金融危機の影響について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩