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|国連|気候変動は先住民族にとって「生死に関わる」問題

【国連IPS=ハイダー・リズヴィ】

「気候変動とその解決策の両方が先住民族にとっては懸念される問題」このように指摘するのは、国連の先住民族問題に関する常設フォーラムの議長Victoria Tauli-Corpuz氏である。

現在、同フォーラムの第7回年次会合が、世界各国から3,300人以上の参加者を得てニューヨークで開かれている。

 Tauli-Corpuz氏によれば「先住民族が及ぼした地球生態系への影響は最小であるのに、気候変動及びその影響の緩和策からもっとも深刻な影響を受けている」

フォーラムは、世界中のおよそ500もの先住民族を代表しているにもかかわらず、立法の権限が授与されておらず、国連経済社会理事会に助言できるだけだ。

昨年9月国連総会は、先住民族の土地と資源を管理する権利を認めることを求めた「国連先住民族の権利宣言」を採択したが、法的拘束力を謳うまでには至らなかった。

先住民族の指導者らは、各国政府および民間企業の双方に対し、先住民族が開発のプロセスに有意義な形で参加できるように、宣言を国の経済・政治・文化・環境政策に組み込むよう求めている。

指導者らは、インドネシア、マレーシア、ブラジルなど生物多様性に富むコミュニティの多くが、CO2排出権取引や気候変動の影響緩和策の名の下にバイオ燃料用に土地や森林が広範にわたって利用され、深刻な影響に苦しんでいると訴える。

Tauli-Corpuz氏は、こうした活動が先住民族の「事前のインフォームドコンセント」なしに政府や民間企業によってなされていると指摘する。これは、さまざまな国際フォーラムで環境団体や先住民族グループによって繰り返し提起されてきた問題である。

フォーラムのリーダーらは、2週間の会期中、気候変動の影響緩和策に関する国際的な意思決定への参加を要求することを含め、数多くの提案を国連加盟諸国に勧告する計画である。国連の先住民族問題に関するフォーラムでの気候変動と先住民族を巡る諸議論を報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩

アースデイに考える食糧問題

【サンディエゴ(カリフォルニア)IPS=エンリケ・ギリ】

先週末、世界中で“アースデイ”キャンペーンが開始され、芝生の上の集会からメディアが取り上げた企業スポンサーによる音楽イベントまで様々な催しものが繰り広げられた。 

1970年、米国において“アースデイ”がスタートした時には、地球温暖化もほとんど問題にされず、緑の革命により持続可能な食糧確保も約束されていた。 

しかし、農業科学技術国際評価(IAASRD)が発表した最近3年間の食糧安全保障に関する報告書によれば、“南北”農家の暮らしは悪化の一途を辿っているという。 

食糧および燃料価格の高騰や異常気象に直面し、もしIAASRDの調査結果が正しければ、今後数10年の間に持続性の中味が試されることになろう。

 同報告書は、2050年には30億人増加する地球人口を養うため、グローバル食糧ネットワークの変革が必要であると主張する。 

殺虫剤行動ネットワークの上級科学者でIAASRD報告書の著者の1人であるマリシア・イシイ・エイトマン博士は、同報告書は、各国政府および国際機関に対する警報と言う。 

同氏はIPSに対し、「地球の食糧システムの存続には、アグロ・エコロジー農業および平等公正な貿易が不可欠」と語った。 

同報告書はまた、食糧安全保障の前線に立つ活動家、NGO、科学者が提唱する基本に戻るアプローチが必要とされている。既存の投資集約的な大規模ビジネス農業はすぐに無くなることはないだろうが、世界の食糧供給を変える多くの画期的プロジェクトが進行中である。 

ガーデニング開発(DIG):病院食の質は悪いとされてきたが、西アフリカのある施設の場合、状況は特に酷かった。ピース・コー(平和部隊)の活動家でヘルスケア・ワーカーのスティーブ・ビリンジャーは、HIV/エイズ患者の容態が栄養不足で更に悪化するのではないかと心配した。そこで、同僚のサラ・コッチと共に、患者に基本的なガーデニングの技術と料理の方法を教えるDIGを思いついたのである。彼らは、セネガルの医療施設に3つのキッチン・ガーデンを作るところから始め、今では各ガーデンから月600ポンドの食糧を得ている。 

彼らはまた、強制移住により農村生活から切り離され、都市の中で失われてしまった技能であるホーム・ガーデンの作り方をセネガル都市居住者10数人に訓練した。ホーム・ガーデンは、持続性の源だけでなく、1日1ドル以下の生活を余儀なくされる家庭の補助収入にもなる。DIGは、南アフリカ、できればアジアの孤児院にも拡大の計画である。 

ブルックリンのティラピア:世界の魚需要拡大と伴に、魚の養殖がブームとなっている。喧騒の大都会に住んでいることにはおかまいなく、マーティン・シュレイブマン博士は、ニューヨークのブルックリン大学キャンパスで丈夫な魚、ティラピアを養殖する決心をした。もう何年もそうしている。シュレイブマン氏は、例えば打ち捨てられた倉庫などを養殖所に改造することで、ティラピアを地域の経済発展に役立てようとしている。 

ティラピアの養殖の利点は明らかだ。ティラピアは成長が早く病気に対する抵抗力も強い上、飼育するのに場所をとらない。この魚は肉食ではなく、鮭の養殖で問題となっている魚肉合成餌の使用をせずに済む。タンク内でティラピアを飼うことで、魚の糞が隣接地に流れ出すことによる汚染を回避できる。

輸入魚が安いため、シュレイブマン氏のティラピア・プロジェクトは、目下のところ広く受け入れられていないが、同氏は、魚の養殖が都市部の持続に貢献できることを証明した。 

オルガノポニコス:40年に亘る米国の輸出入禁止措置と1989年のソ連崩壊でキューバの経済は大打撃を蒙った。卵、肉、野菜といった必需品が不足。その上、キューバは、近代農業経営に必要な化石燃料、肥料、殺虫剤を輸入するための現金も無くなった。 

餓死を避けようと、キューバは、崩壊した全国のインフラストラクチャーから化石燃料、作物補助に頼らない食糧システムを生み出し、都市農業を開始した。 

今日、キューバには数千のオルガノポニコス、つまり低コストで安全な食品を生産する都市型農園が点在する。ハバナの食糧の多くは地元産で賄われている。この過程で、キューバは、堆肥、自然殺虫剤、益虫などを使用する基本回帰型の農業技術を復活させ、毎年確実な収穫を行っている。 

スマート品種改良:数十年に亘る研究の結果、科学者達は、病気、日照り、害虫に対する抵抗力といった長い間眠っていた特質を有する植物を発見している。遺伝子組み変えに頼らずに、これらの特質を生かしたり殺したりすることが可能である。 

農家は、数千年に亘り望ましい結果を生み出すため品種改良を重ねてきた。その結果、トウモロコシやリンゴ、トマトといった主要作物が生まれたのである。植物ゲノムのより良い理解によってこの作業のスピード化が図れる。ナデム・ケダーが初めてこの技術を導入し、つたで熟し、搬送の間は熟性を停止する新種のトマトである「ビーフステーキ・トマト」を誕生させた。 

これはトマトに限らない。長期の日照り、高温/乾燥に強い作物にスマート品種改良を加え実用化することが可能である。科学者達は、農業経営学者および食糧安全活動家の双方を満足させる方法で、強い作物を作りだす方法を追及している。 

“公共利益科学センター”(Center for Science in the Public Interest)のバイオ技術政策部長でIAASTD報告執筆者の1人であるグレッグ・ジャフィー氏は、「生産の面では飛躍的な進歩があった。しかし、いわゆる農業産業が大きな位置を占めており、現在および将来の食糧維持のためには、持続性へのより大きな配慮が必要だ」と語っている。 
 
南北間の不平等な農業技術移転や貿易が継続されれば、地球全体の食糧需要が増大する中、生物多様性や自然保護の面で、これまで保護されてきたものの多くが失われる。アースデイを祝う人々は、この事を忘れてはならない。(原文へ) 

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩

|ブラジル|アフリカに技術支援

【リオデジャネイロIPS=マリオ・オサヴァ

ブラジルの人々が、世界の飢餓と環境の脅威の削減に真の貢献を果たしていると考えるには、それだけの理由がある。ブラジルは、農業技術を開発し、貧困諸国にその技術を提供し始めたからだ。 

その一例が、4月20日ガーナを公式訪問中のブラジルのルーラ大統領によって開設されたブラジル農牧研究公社(EMBRAPA)のアフリカ新事務所である。 

EMBRAPAのアフリカ担当技術コーディネーターのパウロ・ガレラニ氏は、ブラジルはまた「開発のための農業科学技術国際評価」(IAASTD)の提言の多くについても実績をあげていると述べている。

 IAASTDは、あらゆる角度から農業を検討し、農業の持続可能性を高める方法を探るため世界銀行と国連5機関が支援するパネルである。 

各国政府、市民団体および民間セクターから400人以上の科学者や専門家が参加するパネルは、4月7日から12日まで南アフリカのヨハネスブルクで政府間本会議を開催し、作成した5地域の各評価報告書と統合報告書を採択した。会議にはおよそ60カ国の政府の代表が出席した。 

報告書では、貧困、環境破壊そして8億人以上の飢餓に苦しむ人々などの問題を抱える世界において農業が目指すべき方向性について、きわめて批判的な評価を行っている。また、気候変動の影響にさらされる将来のシナリオを概説するとともに、知識体系、科学および農業技術の役割について提言を行なっている。 

ヨハネスブルク会議に出席したガレラニ氏は、サトウキビを原料とするエタノール燃料の生産技術は気候変動の影響を緩和する効率的で低コストのバイオ燃料の開発において大きな進展だと述べている。ただ気候変動対策としてのバイオ燃料に関する主張には、環境保護論者その他から疑問の声が上がっている。 

ガレラニ氏によれば、ブラジル、特に41の研究センターのネットワークであるEMBRAPAは、農薬や科学肥料の使用を削減し、渇水や害虫に対する穀物の耐性を高めるバイオ技術においても大きな前進を遂げている。 

 ブラジルは、こうしたノウハウや技術の進歩をアフリカに「移転し、適合させる」計画であり、したがってアフリカは時間を無駄にすることなくその恩恵にあずかることができるようになる、とガレラニ氏は説明する。 

アクラにあるアフリカ事務所責任者のクラウディオ・ブラガンティニ氏は、IPSの取材に応えて、2006年に創設が着手されたEMBRAPAのアフリカ事務所は、2領域において発展に協力すると説明した。ひとつは、ブラジルの貧しい北東部半乾燥地帯で活動を行っている研究センターの経験に基づく小規模農業、もうひとつは商業的農業である。 

前者は、家族経営の農家が大半を占めるブラジル北東部と同じような状況にある小規模ながら潜在的生産力のある後発開発途上国を対象とする。ブラジルではルーラ政権の下、そうした家族経営の農家には、長期低利貸付や技術支援が広範囲にわたり提供されている。 

後者は、ブラジルの中部セラド地区のように「地形に優れ、大規模生産の可能性に富む広大な草原地帯を有する諸国」を対象とする。ブラガンティニ氏は、アンゴラ、コンゴ、ザンビアを例に挙げた。 

ブラジル人農学者であるブラガンティニ氏は、アフリカの民間セクターからブラジルの技術の活用に早くも大きな関心が寄せられており、「嬉しく、また驚いている」と述べた。この数十年アフリカの国々に暮らしてきた彼は、昔に比べ農民たちの意識に大きな変化が見てとれると話す。 

技術移転は、当初、国際機関が関与した二国間技術協力やメカニズムによる研修という形態をとっていた。しかし後には、ブラジルのバイオ燃料に関するノウハウ、アグリビジネスの各種製品、畜産などに主に関心のあるアフリカの大規模農家を含むまでに拡充された。 

ブラガンティニ氏は、「アフリカでは緑の革命はまだ起きていない。形になってきたところだ」、だからこそ先進諸国からの支援がきわめて重要だと言う。 

ブラジルは、アグロ燃料(農村物燃料)の開発に優先的に取り組み、ルーラ大統領は頻繁に諸外国を訪れ、多数の国と協定を結んでいる。 

しかしこのところブラジル政府と産業界は、食糧価格の高騰をもたらしているとしてバイオ燃料に対する厳しい非難にさらされている。 

ブラジルがガソリンの代替策として30年以上にわたりサトウキビを原料に生産してきたエタノールと、食糧の世界市場の不均衡を生んでいる米国のトウモロコシ由来のバイオ燃料との違いについて、世界の世論に実証してこなかったブラジルは、情報戦で劣勢にあるようだ。 

ルーラ大統領は、バイオ燃料はアフリカの農業開発の機会をもたらすものであり、所得を創出し、農村の生活を改善して飢餓と貧困を削減するとともに、化石燃料を代替することによって気候変動の影響を緩和できると主張している。 

したがって、持続可能な方法での生産が確保されれば、IAASTDが謳う3つの目標すべてを達成できることになる。 

この10年で耕作面積がわずか20%増であるのに対し、農業生産高が2倍という急成長を遂げたブラジルの農業にあって重要な役割を果たしてきたEMBRAPAは、ブラジルの環境的および社会的に持続可能な発展ならびに貧困地域に対する援助に中心的機関として貢献してきた。 

しかしながらIAASTDは、ラテンアメリカには広大な肥沃な土地があるにもかかわらず、それらは少数の大規模地主が掌握し、数百万人が未だ貧困と飢餓に苦しむままに放置されていることに対し、ブラジルをはじめラテンアメリカにも容赦ない非難を向けている。 

EMBRAPAのガレラニ氏によれば、評価は当初、市民団体の「イデオロギー」に影響され、たとえば、遺伝子組み換え作物やバイオ燃料を徹底して排除する傾向にあった。しかし最終的には、各国政府の懸念が考慮され、新技術も、必要なセーフガードを設けて注意をもって活用されるかぎり、受入れられて、一定のバランスがとられた。(原文へ) 

翻訳=IPS Japan 浅霧勝浩

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|南アフリカ|大規模農業は持続不可能

|米国|ローマ法王訪米により明らかになる教会の断層

【ニューヨークIPS=アーリ-ン・チャン】

ローマ法王ベネディクト16世の訪米は、カトリック教徒の信仰心を新たに鼓舞するものとなるだろうが、その一方で米国の進歩的な教会組織は、ローマ法王庁が女性聖職者、避妊、同性愛に関する厳格な立場を考え直すべき時期だとしている。 

18日に国連総会で講演を行った法王は「人権の推進が不平等を無くし安全を高めるためにもっとも効果的だ」と強調した。だが、より寛容な教会を求める組織は、法王庁こそ人権を重視すべきだと考えている。ニューウェイズ・ミニストリーのF.デベルナルド事務局長は「同性愛者をカトリック教会から追放することは明らかな人権侵害だ」と語った。

 現法王は同性愛者に対し厳しい発言をしたことが知られており、「法王は自分とは異なる人々の声に耳を傾けるべき」とF.デベルナルド代表はいう。 

さらに法王がワシントンで行ったミサで聖体拝領から女性が排除されたことに対し、女性聖職者を求める人々は不快感を表明した。女性聖職者の1人は、「教会は女性に親身ではなく、避妊や生殖の選択に反対することも人権侵害につながっている」という。 

カトリック教会と社会における平等と公平を求めて活動している「コール・トゥー・アクション」のN.ソテロ氏は、法王庁に教会での児童虐待という人権侵害に注目してもらいたいと思っている。「5年前に小児愛の聖職者を教会がかばった事件の後の法王の対応は不十分であり、子どもたちは危険にさらされている」と同氏はいう。 

進歩的なカトリック組織の感情は「自由選択のカトリック教徒」のジョン・オブライエン代表の言葉に要約される。「教会の聖職者と一般の人々の間には大きな隔たりがある。法王庁は米国の多様性を認識する必要がある」 

宗教は人々の生活に密着したものであり、法王は人々の声に耳を傾けてほしいと進歩派は願っている。ローマ法王の訪米について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 


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│キューバ│ローマ法王訪問に向けた環境づくり進む 

|カンボジア|食糧安全保障を脅かす魚種資源の減少

【カンダル州キエン・スヴェイIPS=アンドリュー・ネット】

「10年間もメコン河で漁をしてきたけれど、この数年明らかに魚が減っている。前は漁獲高も随分あったが、今では1日3kgあればましな方だ。今朝はまったくだめだった」カンダル州の漁師Im Vandangさんのこうした不安は、カンボジアの漁業の現状に関する大きな論議の一部である。 

カンボジアの人々のタンパク源は75%が魚であり、また100万人以上が漁業で生計を立てていることを考えると、これは極めて重大な食糧安全保障上の問題である。

 この深刻な状況を懸念したカンボジア政府は、厳しい漁業規制の導入を検討している。だがこれは、貧困者をさらに不利な立場に追いやる動向と見る者もいる。 

プノンペンの世界魚類センターの科学研究員Eric Baranさんは「総漁獲高の減少を厳密に実証するのは難しい。個々の漁師の漁獲高が減っていることは確かだが、漁師の数が増えている現状も併せて考えなければならない」と述べている。 

専門家の意見が一致している点は、メコン河の漁獲の種類が変わってきたことだ。 

Baranさんは「重要なことには、寿命の長い大型の魚種に代わって、環境の変化を受けやすい寿命の短い小型の魚種が増えていること」と述べている。 

農林水産省のNao Thuok漁業局長は「漁師があまりにも増えたため、魚は翌年の産卵のために上流に遡上することもできない。漁業規制を省内で議論し、首相の承認を求めるつもりだ。実施は難しいが、漁業を持続可能なものとし、大型の魚が戻ってくるようにするには必要なことだ」と主張している。 

これに対し、トンレサップ湖のコミュニティと協力している団体Fisheries Action Coalition TeamのMak Sithrith事務局長は「乱獲を防ぐには、コミュニティによる管理が一番」と述べ、「漁業規制が行われると、規制を逃れるため賄賂を使う漁師も出てきて、金持ちだけが利益を得る」と非難している。 

専門家らはまた、乱獲に加えて、汚染の悪化と浸水した森林の伐採が進んでいることも漁業に悪影響を及ぼしている他、メコン河支流での水力発電用ダムの建設も大きな問題となっていると指摘している。 

メコン河流域のカンボジアの漁業問題について諸議論を報告する。(原文へ) 

INPS Japan 浅霧勝浩 

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同化を恐れるフィンランドのサーミ族

同化を恐れるフィンランドのサーミ族

【ヘルシンキIPS=リナス・アタラー、4月7日】

フィンランドのサーミ族の人々の間に、先住民族としての伝統的な生活様式が脅かされるという不安が高まっている。サーミ族はフィンランド憲法で先住民族と認められ、独自の議会をもち、独自の言語を守る権利を有している。だが行政の各方面でこの権利に注意が払われず、「常に同化問題に直面している」とサーミ議会のP.アイキオ議長はいう。

Sami activists Ristenrauna (left) and Juha Magga. Credit: Linus Atarah

北欧のサーミ族は10万人と推定され、そのうち8,000人がフィンランドに住む。多くがトナカイの放牧で生活しているが、現代的な生活スタイルを選ぶものも増えている。

先週、フィンランド人権連盟主催によりサーミ族の人権に関する会議が開かれた。会議に参加した国際法を専門とするM.シェイニン教授によると、国が行う森林の伐採によりサーミ族のトナカイの放牧に支障がでている。多くのサーミ族が住む北部地域は国営地で、サーミ族がフィンランドで土地の権利を確保していないことが問題となっている。

「政府が行う伐採、採鉱、ダム建設などのプロジェクトを告訴する権利はなく、何の補償もなく放牧地が奪われてしまう」とアイキオ議長はいう。サーミ族の過半数が住むノルウェーでは、政府が土地の共同所有権をサーミ族や地元の人々に認め、補助金の額も多い。

フィンランドは先住民族の土地の権利に関する国際労働機関(ILO)の169号条約を批准していない。この条約の第14条では政府が先住民族の土地保有の権利を保障するよう定めている。シェイニン教授は土地問題が言語と文化に密接につながっているとし、言語と文化を守るため、トナカイの放牧や自然に根ざした生活様式の維持が重要だという。

フィンランド北部ではサーミ族以外の人々もトナカイの放牧をおこなっており、問題の解決は容易ではない。土地問題が注目されるが、言語についても問題は深刻で、公的サービスをサーミ語で受ける権利は保障されていても、実際の現場ではサーミ語による十分な公的サービスは行われていない。

生活様式と言語の保持が懸念されているフィンランドのサーミ族について報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan

|南アフリカ|大規模農業は持続不可能

【ヨハネスブルクIPS=スティーブン・リーヒ

「開発のための農業科学技術国際評価」(IAASTD)の最終報告書が、4月12日、南アフリカのヨハネスブルクで発表された。報告書は、地域ごとの5つの評価書と110ページの総合レポートから成っている。人口爆発や気候変動などといった難題に立ち向かうために農業をどのように再構築すべきかを述べたものだ。 

重要な結論のひとつは、工業的で大規模な農業はもはや持続不可能だということである。安い石油に依存しすぎている点、生態系に悪影響を与える点、水を大量に利用する点、どれをとっても困難が目に付く。

 また、報告書は、モノカルチャーよりも生物多様性の方が重要であると結論づけた。 

IAASTDの共同議長ハンス・ヘレン氏によれば、実際のところ世界が悩んでいるのは食料の「量」が足りないという問題ではない。それよりも、適切な場所に適切な食料が存在しているかという問題なのである。 

国際環境団体「グリーンピース」のヤン・ファン・エイケン氏も同じような主張だ。0.5haの土地で高収穫型のコメを生産するよりも、同じ広さの土地で70種類の野菜や果物などを生産した方が栄養という点でははるかに優れている、とエイケン氏は語る。 

また、バイオテクノロジー、とりわけ遺伝子組み換え作物(GMO)をめぐる議論もあった。報告書は、バイオテクノロジーには確かに一定の役割があるものの、GMOの与える利益については科学的に証明されていないこと、遺伝子の特許は農民や研究者に悪影響を与えることなどの結論を出した。 

当初、米豪両政府の代表がこの部分に対して激しく反発していたが、両国の留保の意思を報告書に記述する妥協がなされて、ようやく報告書が採択されたという経緯があった。 

IAASTDの最終報告を受けて、この問題は、科学的な議論から政治的な意思決定という新たな段階に進んだといえるだろう。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩

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新しい「緑の革命」へ向けて

|バルカン半島|学校にも宗教の違い

【ベオグラードIPS=ヴェスナ・ベリッチ・ジモニッチ】

旧ユーゴスラビアのボスニア・ヘルツェゴビナ、クロアチア、セルビアでは、宗教教育がカリキュラムに組み込まれている。 

一般には選択科目だが、子どもたちは小学校(一部は幼稚園)入学と同時に宗教教育を受けることになる。 

3国の教育省は宗教教育を受けている子どもの実際の人数を発表はしていないが、その数は多いと明らかにしている。 

ただ、紛争後のボスニアとクロアチアでは宗教教育の導入は円滑に行ったが、セルビアではLjiljana Covic教育相がダーウィンの進化論を教えることを差し止めようとしたことがきっかけで関心が大幅に後退、現在は宗教教育の受講率は35%にとどまっているという。教育相は辞任に追い込まれた。 

また、専門家の間からは宗教教育の動向の他の側面について指摘がなされている。 

ボスニアでは紛争終結後宗教教育が導入され、2004年には法制化された。子どもたちは民族ごとの宗教教育、すなわち、イスラム教、カトリック教、セルビア正教のクラスに出席する。しかし、これら3つの宗教を含め他の主要な宗教の信条や無心論者の立場についてなど「宗教についての授業」を行なっているものは少ない。 

ボスニア、クロアチア、セルビアおよびノルウェーの執筆者グループが発表した西バルカン諸国の宗教と学校に関する2005年の調査報告書「Religion and Pluralism in Education」も、3宗教とも自身の説教に重点を置くばかりで、他の信仰に注意を払うことはほとんどないと指摘している。 

報告書は「イスラム教とセルビア正教では務めと服従を重視し、貧困、消費者主義、自由など現代社会やその問題を取り上げているのはカトリックのカリキュラムだけである」と述べている。 

セルビアの南部の町Vlasotinceで数学を教えるMiroslav Mladenovic氏は有力紙『Politika』に「教会は従順な信者を望んでいるだけ。たとえばセルビア人、クロアチア人、ハンガリー人、スロバキア人が暮らす北部ボイボディナ自治州など多民族環境における寛容の問題については何もしてない。民主社会の発展の必須条件が整っていない」として、学校での宗教排除を当局に訴えている。 

西バルカン3国における宗教教育について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー= IPS Japan 浅霧勝浩 

|イスラエル|最悪の事態を想定し最大規模の国防演習を実施

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【エルサレムIPS=ピーター・ヒルシュバーグ】

イスラエルは先週、国家史上最大の国防演習を実施。早朝、国中に鳴り響いたサイレンと共に、子ども達は防空壕へと急いだ。 

5日間に亘る全国規模の演習では、特に化学工場が林立する北部ハイファ湾地域の防衛、市民居住区に対する特殊ミサイル攻撃防衛を最重要課題とした。 

イスラエル指導者は、シリア、ヒズボラ、ガザ民兵によるミサイル/ロケット砲一斉攻撃を恐れている。同演習実施の裏には、2006年夏のレバノン戦争における銃後防衛の失敗への反省がある。ヒズボラは数千のロケット弾をイスラエル北部に打ち込み、市民40人が命を落とした。もし数10万の市民が難を逃れて南下していなければ、死傷者は更に増えていただろう。

 国家監視委員会は昨年、レバノン戦争の銃後防衛に重大な誤りがあったとする報告書を発表。危険物質が集中している北部地帯にミサイル攻撃が行われた際、軍の銃後司令部は市民防衛に必要な措置を講じなかったと批判した。また、政府は北部イスラエル居住者の避難について一度も議論せず、避難手段を持たない老人や貧しい人々を助けるために部隊を派遣することもしなかったと指摘した。 

政府は、将来的にはミサイル攻撃に化学兵器が含まれるようになるのではないかと見て、市民にガスマスクを再配布することを決めた(米イラク侵攻に際し、市民にガスマスクを配ったが、昨年回収されている)。 

イスラエルは、国内の如何なる地点も攻撃可能な長距離ミサイルを有し、原子力計画を維持しているイランが防衛上の最大の脅威とし、イランのシハブ・ミサイルを迎撃するアロー・ミサイルを開発した。しかし、レバノン戦争の際にヒズボラが行ったような短距離/中距離ロケット弾による銃後攻撃を防ぐ有効な手段を有していない(シリアはこの種のミサイルを大量に所有しているとされる)。 

イスラエルの大規模国防演習について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

|ネパール|共産党毛派を中心とした新政権誕生か?

【カトマンズIPS=ダマカント・ジェイシ】

2回の延期を経て10日、ネパールでは憲法制定議会選挙(議席数601)が実施された。(治安の悪化している東ネパールのタライ地方を除き)投票率は60%にも達し、選挙は概ね『成功』したと見られている。 

選挙結果は10年にわたる武装闘争を終結させ選挙に初めて参加したネパール共産党毛沢東主義派(CPN-M、マオイスト)が圧勝する勢いで、第1党はほぼ確実な情勢となった。

 しかし、国内外のメディアからは選挙前の毛派による暴力・破壊行為を問題視する声が出ている。政治アナリストのNilambar Acharya氏は「国民はマオイストが和平プロセスに参加したことは大きく評価しているが、それ以上のことは望んでいない」 

「多くの国民が2大政党であるNC(ネパール議会)およびCPN(UML)(ネパール共産党・統一マルクス=レーニン主義)に幻滅を感じているのは事実である。毛派が票を伸ばしたのは国民の『毛派への期待』という意味ではない」と述べた。 

ネパール議会(NC)のPrakash Sharan Mahat氏はIPSとの取材に応じて「選挙でのNCの敗因は国民の怒りや不満だけではない。もし選挙で毛派が負けることになれば、あの悪夢(市民に対する暴力行為)が再び始まるのでは、と多くの国民が恐れているのだ」と語った。 

一方、CPN-Mのナンバー2、バブラム・バタライ氏は「有権者の既成政党に対する失望感は計り知れないほど大きい。今回の毛派の躍進は国民の変革への強い期待の現れである」と、選挙結果に満足を示した。 

政権議会選での毛派圧勝の波紋について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan 

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|ネパール|『ヒンズー王国』の終焉