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|テロとの戦い|「アフィア女史を釈放せよ」とUAE紙

【ドバイWAM】

アラブ首長国連邦(UAE)の英字日刊紙は論説の中で、3人の子どもを持つ母親が、如何にして証明されていない「テロ容疑」の犠牲となったかについて報じた。 

「明らかに彼女は『テロとの戦い』の一環として拉致された数百人に及ぶ犠牲者(その大半は無実の人々)の一人である。」とカリージタイムスは「アフィア・シディキを釈放せよ」と題した論説の中で述べた。 

「アフィア・シディキ博士(38歳)は既に5年に亘って米国により身柄を拘束されており、近い将来拘束を解かれる見通しはない。」

 「シディキ博士をテロ容疑で審議した米国の判事は、彼女を公判に耐えうる精神状態ではないと述べた。これは言うまでもなく、米軍がアフガニスタンと米国で尋問戦術に基づいて拘留中の同女史に加えた拷問と高圧的な尋問の結果である。ところが、パキスタン政府が新たに女史の本国送還を米政府に求めたことから、今後の展開について多くの注目を集めている。」 

”Grey Lady of Bagram”(バグラム=アフガニスタンのバグラム空軍基地内の刑務所)とあだ名されるシディキ女史は3人の子どもの母親で神経科学者である。シディキ女史がどのようにしてアフガニスタンにたどり着き、(米軍によって)アルカイダ指導部を支援したとの容疑で逮捕されるに至ったかの経緯についてはあまり知られていない。 

「シディキ女史の弁護士の主張によれば、パキスタン生まれの同女史は、2003年3月にカラチ空港で子ども達とともに拉致され、以来5年間に亘ってパキスタン或いは米国当局の手によってアフガニスタンで身柄を拘束されてきた。そして今年7月、母国パキスタンが黙認する中、彼女は裁判を受けるため身柄を米国に移送された。」 

「しかし、パキスタン政府は、人権団体やメディアによる圧力に動かされて、米国に対してシディキ女史の本国送還を要請した。しかし米国の法律の下では、本国送還よりも米国の精神病院に終生収容されることになるのではないかとの懸念がある。アフィアの家族や人権団体が繰り返し主張しているように、彼女に対するテロ容疑の論拠にはなぞの部分が多い。」 

「パキスタン当局は、5年前のシディキ女史のカラチ空港からの失踪について詳細不明で事態を把握していないとしている。また、米国当局も、シディキ女史訴訟の理由をアルカイダとの関連容疑ではなく、『尋問官襲撃容疑』としていることからも分かるように、そもそも同女史を訴える論拠を持ち合わせていない。この茶番劇はどこまで行くのだろうか?介助なく自ら立ち上がることもできない独りの女性がどのようにして米軍や尋問官を襲うことができるのだろうか?もし彼女が米国に対するテロ攻撃を計画していたならば、実際彼女が(失踪時)そうしていたように幼い子ども達を連れて行くだろうか?」 

 「明らかに、シディキ女史は、米国による『テロとの戦い』の名の下に拉致された数百人に及ぶ、そしてその大半が無実の、犠牲者の一人である。今日、悪名高いグアンタナモ湾の収容所の閉鎖を約束したバラク・オバマ米国次期大統領に対する国際社会の注目が集まる中、アフィア・シディキ女史の事件は、テロとの戦いの名の下に行われている恐ろしい人権侵害の残酷な事例を示すものである。」 

「この3人の子どもを持つ若い母親は、彼女が犯した可能性が極めて低い犯罪の代償を既に払わされてきた。しかも、シディキ女史が有罪というならばそれを立証する責任は米国政府にあるのである。シディキ女史は既に医学、精神医学双方の治療を必要としている状態である。米国当局は、シディク女史の本国帰還を直ちに認め、彼女を今日の状態に陥れた補償を行うべきである。」と論説を締めくくった。 (原文へ
 
翻訳=IPS Japan浅霧勝浩 

禁止された後も数千人を殺害する地雷

【ブリュッセルIPS=デイビッド・クローニン】

地雷の使用禁止が国際的に合意されてから10年が過ぎたが、新しい報告書の推計によると、この武器は2007年にもなお数千人の命を奪っている。 

未だに地雷の使用を続けているのはビルマとロシアの2国だけだが、世界各地の数々の紛争の間に敷設され、いまだに不活性化されていない地雷による死傷者が後を絶たない。 

地雷監視年次報告書によると、地雷および手榴弾、迫撃砲、クラスター爆弾などの「戦争の爆発性残留物」は昨年5,426人を殺害した。

 11月21日にブリュッセルでこの報告書を発表したハンディキャップ・インターナショナルのスタン・ブラバン広報担当官は、この調査結果を「非常におそろしい」と表現した。実際の死亡者の数はこれをはるかに上回る可能性もある。 

それにもかかわらず、ブラバン広報官は、「1997年に国際的な地雷禁止条約が合意されてから、地雷による犠牲者の削減に関しては着実な進展がみられる」と指摘した。1990年代には、地雷および関連した武器による死亡者は毎年およそ2万6,000人に上っていた。 

 156の国が批准したこの条約の下では、各国政府にはその領土内の地雷を撤去するために10年が与えられている。英国はフォークランド諸島の地雷撤去をほとんど進めていないことから、「条約違反となる危険性のある」国のひとつだとブラバン氏はいう。フォークランド諸島は南大西洋上にあり、その領有をめぐって1982年にマーガレット・サッチャー英国首相の政権(当時)がアルゼンチンと戦争を行った。 

この条約のもっともプラスとなる影響のひとつは、条約への署名を拒否した国の多くへの抑止となり、少なくとも備蓄分を部分的に廃棄するまで、地雷に烙印を押したように思えることである。昨年は4,200万個の地雷が廃棄された。ロシアは最近のチェチェン紛争では地雷を使用しているが、100万個の地雷を廃棄した。 

さらに報告書によると、2007年には地雷の影響を扱う国際支援の総額は4億3,100万ドルだったが、前年と比べて4,500万ドル減っている。最大の資金提供者である欧州連合(EU)は、2億ドルの貢献を行ったが、2006年と比べると25%の減少だった。 

クラスター爆弾に反対する運動は、5月にダブリンでの会議で107カ国がその使用禁止を支持し、大きな後押しとなった。条約は来月オスロで行われる式典で正式に調印が始まることになっている。 

けれども禁止が合意されたにもかかわらず、8月のロシアとグルジアとの短い戦争でクラスター爆弾の使用を防ぐことにはならなかった。 

ヒューマン・ライツ・ウォッチの調査は、犠牲者の体から手足をもぎ取るこうした武器の使用により少なくとも16人が死亡し、56人が負傷したと断定した。 

ロシアはクラスター爆弾を投下したという申し立てを否定しているが、グルジア側はこれらの武器の使用を認め、その武器はイスラエルのメーカーから購入したといっている。 

ヒューマン・ライツ・ウォッチの上級軍事分析官のマルク・ガルラスコ氏は、これらの武器の使用を調査するためにグルジアに赴いた。ガルラスコ氏は「ゴリ地方で数千個のクラスター爆弾が不発のまま残っていて、除去には半年かかるだろう」という。グルジアは使用した大量の爆弾が不良品のようだったのはなぜか調査中である。 

米国は国際的な禁止に対して、もっとも執拗に反対してきた。ジョージ・W・ブッシュ現大統領が個人的に各国指導者に電話して完全な禁止に抵抗するよう要請したことは知られている。しかし活動家は後継者となるバラク・オバマ氏が、この合意と米国が批准していない1997年の地雷禁止条約に、より建設的な立場を取ることを期待している。 

ガルラスコ氏は、「米国は北大西洋条約機構(NATO)の他のほとんどの国と対立している」と主張する。「米国のNATO内の同盟国、英国、ドイツ、カナダ、フランスなどのほとんどがこうした地雷とクラスター爆弾という二つの武器の放棄に快く応じている。そのため米国が放棄しない理由が考えられない」 

一方で、EUの執行機関である欧州委員会の出資した調査は、拷問用具を製造する1万6,000社を超える企業を特定した。 

英国のマンチェスターを本拠とするオメガ財団によって行われたこの調査はまた、拘束者に苦痛を与えるため使用される可能性のある6,000品目を特定した。 

この調査は「拷問の商売」を規制するEUの法令が導入されてからどのような進展があったかを追跡調査するために企画されている。この法令の主要な弱点を指摘した、オメガ財団とアムネスティ・インターナショナルが共同で行った2007年の報告に続くものである。だが拷問者が使用する道具の中でもっとも悪名が高い、スティング・スティックとして知られている針のつきでた棒や死刑執行のために作られたロープなどは含まれていない。 

EUの職員の話では、評価基準の範囲の拡大についての話し合いが2009年初めにブリュッセルで予定されている。(原文へ) 

翻訳=IPS Japan 浅霧勝浩 

|人権|カンボジア|『民主カンプチア時代』の真実とは

【プノンペンIPS=アンドリュー・ネット】

「30年前の1978年、27歳の私がカンボジアを初めて訪れた頃はこの国の苛酷な運命を想像もしなかった」。共産主義政党クメール・ルージュを支持するSweden-Kampuchean Friendship Association(SKFA)の代表団の1人、ガンナー・ベルグストローム(Gunnar Bergstrom)氏は今週、カンボジアを歴訪。14日間の旅の中で様々な土地を案内され、ポルポト派指導者らやイエン・サリ外務大臣との会食も行った。 

カンボジアではクメール・ルージュ統治時代に過労や飢餓、処刑などでおよそ200万人もの犠牲者を出した真実が国際社会に明らかにされなかった。ベルグストローム氏も当時の状況を回顧する。「60年代の思想家と同様に、私も若い頃、ラオス・ベトナム・カンボジアの革命を強く支持し、クメール・ルージュ政権がより良い社会をもたらすものと思い込んでいた」。

 同氏は、今回のカンボジア訪問が同国のプロパガンダの役目を果たしかねないとの懸念を示した。ベルグストローム氏を含む代表団は国内の工場、農業関連企業、学校、病院などを案内され、港町Sihanoukville(Kompong Som)では大量のコメが中国行きの船に積荷されている様子を見せられた。 

そして、ベルグストローム氏ら代表団が撮った写真にも本当のカンボジアの姿を垣間見ることはできない。笑顔の子供たち、工場労働者、公共施設で食事する男女、米作りに精を出す農民など。 

「何が嘘で何が真実であるかを判断できるまでまだ多くの時間が必要だ」と、ベルグストローム氏は話す。外国人から見たカンボジアの現在と過去について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan 浅霧勝浩

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|カンボジア|市場経済を学ぶクメール・ルージュの拠点

|キューバ・中国|友好関係強化

【ハバナIPS=パトリシア・グロッグ】

中国の胡錦濤主席は11月19日、2日間のキューバ訪問を終え、アジア太平洋経済協力サミット参加のためペルーへ向かった。同主席は、18日には病気療養中のフィデル・カストロ前大統領を見舞い、その様子はゴールデン・タイムのニュース番組で報道された。 

ラウル・カストロ現首相は、来賓および300人の中国留学生の前で、1953年にウィーンで開催された社会・共産青年大会で習ったという毛沢東に捧げる歌を中国語で歌い、中国への謝意を表したという。(現在1,917人の中国人留学生が、キューバの大学でスペイン語、医学、看護、観光、心理学などを学んでいる)

 両国首脳はは公式会談の後、キューバ産砂糖およびニッケルの輸入、キューバ港湾施設の改善、キューバのバイオテクノロジーへの投資などを含む数多くの合意に調印。また中国は、キューバの負債支払延期、病院改装のための7千万ドルの融資などで合意した。 

キューバの共産党紙グランマは、同会議は両国共産党および政府間の友好関係を再確認すると共に今後の関係の更なる強化を約束するものと評価。また、胡錦濤主席を空港で見送ったラウル・カストロ首相は、毎回の事ながら、中国主席の訪問は今回も有意義なものであったとコメントした。(両国は1960年9月28日に外交関係の正常化を行っており、中国はベネズエラに次ぐキューバ第2の貿易相手国となっている。2007年の貿易は前年比23パーセント増の26億ドル) 

胡錦濤主席の訪問に先立ち、10月後半にはブラジルのルラ大統領もキューバを訪れ、両国は石油戦略協定で合意した。11月にはロシアのメドヴェージェフ大統領もキューバ政府の要請により同国を訪れ、エネルギー、観光、鉱業への投資で話し合いを行う予定だ。また、10月末には、75人の政治犯投獄に抗議して2003年から外交を断絶していた欧州連合(EU)も政治対話を再開している。 

キューバ政府は、11月13日のリオ・グループ参加承認に伴いラテンアメリカにおける地位強化にも乗り出している。ラウル・カストロ首相はルラ大統領の要請を受けて12月中旬にブラジルを公式訪問すると共に同国で開催されるラテンアメリカ・カリビアン・サミットに出席する予定だ。ベネズエラのチャベス大統領は、カラカスにおいて、カストロ首相は、ブラジル、中国、ロシアなどの国々から訪問を要請されているが、ベネズエラが最初の訪問先になるだろうと語った。しかし、キューバ政府からは同発言に対するコメントは出ていない。 

米国のオバマ次期大統領もキューバ制裁の緩和を約束しており、キューバ外交は更なる展開を見せるだろう。活発化するキューバ外交について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan 浅霧勝浩

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|文化|パキスタンの自由な一面を示す国際舞台芸術祭

【ラホールIPS=ビーナ・サルワル】

外国から約370人の俳優、音楽家、舞踊家、人形師が集まり、パキスタンの文化都市ラホールで11月13日から世界舞台芸術祭が開催された。民間主催の同芸術祭は、今は亡きラフィ・ピールが1980年代初めにカラチに創設したラフィ・ピール・シアター・ワークショップ(RPTW)主催の国際フェスティバルを含めると26回目のフェスティバルとなる。 

ラフィ・ピールはドイツで教育を受けた近代パキスタン舞台芸術の祖である。彼の双子の息子ファイザーンとサダーンは人形劇および演劇のキャリアをカラチで開始。人形劇に情熱を燃やしていたファイザーンは、1992年、生まれ故郷のラホールで世界の人形師を招き第1回国際フェスティバルを開催した。ピール兄弟はそれ以来、人形劇、舞踊、音楽演劇、映画関係のフェスティバルを年3回主催している。

 しかし、ファイザーン(50)によれば、今年は治安問題で大手スポンサーの支援が得られず苦労したという。「各国政府は、以前にはパキスタン渡航は商用に限るよう勧めていたが、現在では渡航の全面延期を勧めている。今やパキスタンは投資に値しない国となり、ヨーロッパからの参加者は約250人減った」と同氏は言う。 

今回は、イラン、アフガニスタン、インドおよびチェコ、米国、英国、アイルランド、イタリア、ドイツ、オーストリア、ノルウェー、オランダ、フランスの代表とパキスタンから約700人の芸術家が参加した。 

2005年から同フェスティバルに参加している。ジャック&ジョー・シアターのアドリアーノは、「パキスタンは確かに危険なようだ。しかし、主催団体の人々は親切だし、雰囲気は盛り上がっている。参加した海外のアーティストとも知り合いになり、ここは快適だ」と語る。 

レバノン生まれでフランスのアルゼンチン音楽のバンド・メンバーであるマノ・サンタは、同フェスティバルの精神をヨーロッパに紹介する努力を続けており、南フランスのアールで行われるレ・スッド音楽祭の姉妹フェスティバルとする計画だ。 

参加アーティストは一様に治安に問題はないと言うが、観客に対するセキュリティー・チェックは厳しい。娘と一緒にチェコの人形劇を見にきたアレフィア・ハッサンは、「駐車は会場の遥か遠くにしなければならず、3回も持ち物をチェックされた。でも、用心するにこしたことはない」と語った。 

ラホールで開催された国際舞台芸術祭について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

|ハイチ・ドミニカ共和国|メディア、相互理解に立ち上がる

【ペデルナレスIPS=エリザベス・エアメス・ローブリング

ヒスパニオラ島にあるハイチとドミニカ共和国の格差は、特に国境地帯で明らかだ。ドミニカ南西部の砂漠地帯ペデルナレスは確かに貧しいが、そこには停電もなく、水道も舗装された道路も完備している。しかし、川を渡った配置のアンス・ア・ピトルは、舗装道路どころかわずかな井戸と、ソラー・パネルを設置した床屋、発電機を装備した小さなホテルがあるだけだ。ドミニカ側の岸壁には大型の船外モーター付きボートが並んでいるが、ハイチ側のモーター付き漁船は1隻のみ。残る10数隻は帆船だ。

A group of Haitian journalists meets their Dominican colleagues at a three-day gathering to promote cross-cultural understanding. Credit: Elizabeth Roebling/IPS
A group of Haitian journalists meets their Dominican colleagues at a three-day gathering to promote cross-cultural understanding. Credit: Elizabeth Roebling/IPS

 水道や電気、ガスコンロ、豊富な食料を享受する者がそうでない者を下に見るのはよくあることだ。開発機関「プラン・インターナショナル」の文化交流プログラム・コーディネーターを務めるジゼルダ・リベラト氏は、「小さい時からハイチに対する悪いイメージを教え込まれているのだからドミニカ人を責める訳にはいかない。我々は、ハイチの人間は野蛮人で人肉を食べるという様な酷い話を聞かされてきた。ドミニカ人の多くはハイチの高等教育を受けた人と会う機会もない。我々はドミニカのジャーナリストとハイチのジャーナリストを会わせたかった」と語った。 

この様な背景から、espaninslar.orgを運営する6人のドミニカ人ジャーナリストがプラン・インターナショナルの支援を得て、11月14日から16日までハイチ・ジャーナリストとの会議を開催した。同会議には両国から新聞、ラジオ、テレビ報道に携わるそれぞれ25人のジャーナリストが参加。相互理解の向上、政府に対する国境地帯政策立案の呼びかけ、人権犯罪の取り締まりなどで合意した。また、両国ジャーナリストのネットワーク設立のため8人の代表を選出した。 

会議の席上、カリブ諸国連合の元事務総長で社会学者のルーベン・シリー氏は、参加者にコロンブスの発見から現在までの島の歴史を説明。何故ドミニカ人はアフリカの伝統を意識しないのかとの質問に対し、トルヒーヨ政権(1930年~61年)が教科書から奴隷に関する項目をすべて削除し、ドミニカ人はスペイン植民地支配者および先住民の子孫であると教育したからだと説明。ハイチ人ジャーナリストからどよめきが起こった。 

ドミニカ共和国の駐ハイチ大使ホセ・セルエレ氏は、「独裁者のトルヒーヨは、ハイチ問題を政治利用したが、人種差別はドミニカ人の心の中ではなく学校教育にある。しかし、ドミニカ市民および政府は同問題の解決に努力している。フェルナンデス大統領は人種差別に反対しており、宗教、肌の色による差別を認めることはない。我々は同じ島に住み、共通の歴史およびエコシステムを共有しているのだから、相互理解を深め、愛する島の保全に努めなければならない」と語った。 

ドミニカ共和国とハイチの相互理解のため開催された両国ジャーナリスト会議について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリ=IPS Japan浅霧勝浩 

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|環境|ハイチはこれ以上の被害に耐えられない

|バルカン半島|複雑化する組織犯罪に民族・宗教の壁はない

【ベオグラードIPS=ベスナ・ペリッチ・ジモニッチ

ユーゴスラビア崩壊以降、ボスニア・クロアチア・セルビアといったバルカン諸国内では民族、宗教、国境を越えた大規模な組織犯罪が深刻化している。 

先月23日、クロアチアの首都ザグレブで地元週刊新聞社『Nacional』のオーナー、イボ・プカニッチ氏(47)と販売責任者のニコ・フラニッチ氏(35)が車に仕掛けられた爆弾により殺害された。プカニッチ氏は、バルカン諸国地域で蔓延する組織犯罪に関する記事を頻繁に取り上げていた人物である。 

事件には3人のクロアチア人、爆弾を仕掛けたボスニア系セルビア人、共犯のクロアチア人の逃亡を助けたモンテネグロ出身のセルビア人など、異なる民族の人間が犯行に関与した。 

この事件を受け、組織犯罪問題の専門家Milos Vasic氏はIPSの取材で「同地域の組織的犯罪集団の間には国境や民族紛争という概念は存在しない」とし、このような犯罪がバルカン諸国のEU加盟への道を阻む原因になると指摘した。


プカニッチ氏の殺害事件後、欧州連合(EU)はクロアチア政府に対しEU加盟条件として組織犯罪の撲滅を強く要求。クロアチアのIvan Simonovic法相は、犯罪組織の取締りを強化すると明言した。 

「バルカン諸国は地域間の相互協力・連携を図り、早急に組織的犯罪や汚職を撲滅しなければならない」と、フランスのミシェル・アリヨマリ内相はザグレブでのEU首脳会合で語った。バルカン諸国を悩ます組織犯罪について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan 


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|バルカン半島|学校にも宗教の違い

|環境|ハイチはこれ以上の被害に耐えられない

【カナダ、アクスブリッジIPS=ステファン・リーヒ】

西半球で最も貧しい国、ハイチは今、歴史上最悪の自然災害を経験しており、環境への脆弱性を軽減する大規模な解決策を必要としていると当局者や人道支援要員は言う。 

8月、9月で4つの大暴風雨がハイチを襲い、1,000人が亡くなり、100万人が家を失った。国際援助隊が人命救助を行い仮設住宅を造っているが、国中広範囲にわたる枯れた土地はさらにダメージを受け、穀物や肥沃な土地や残り少ない木まで洗い流した。 

「今この国は最悪な状態で、地球上上で最も環境危機がある場所だ。」人道支援団体の責任者で、国連開発計画(UNDP)ポルトープランスの責任者でもあるJoel Boutroue氏はTierraméricaの取材に応じて語った。

 しかし、世界各国の支援への反応は非常に良く、深刻な栄養失調の傾向はまだあるものの、きれいな水が手に入り、10月時点で仮設住宅がないのが3,000家族のみだと言う。とはいえ、国民950万人を長期間国際援助で食糧支給するのは不可能だ。今ハイチは自給出来ておらず、何年も経たないと食料自給率50パーセント分の穀物さえ育てられないとBoutroue氏は恐れる。 

ハイチでは、森林の98パーセントを燃料用に伐採し、水をせき止める物がなくなり、通常の暴風雨でも大洪水を引き起こして被害が拡大。表土がほとんど侵食してしまった。また、水を浄化する森林や植物の生えた土地がないので、子供の90パーセントが水系感染症(伝染病) にかかり、腸内寄生虫がいる。 

不毛でやせた土地という環境危機への改善対策では、森林再生、台地形成、水流の水路化といった流域復旧が最優先事項だが、遅々として進まず、1つの修復プロジェクトの開始準備に3年かかるとBoutroue氏は嘆く。北部ゴナイブ市周辺流域2パーセントを200万ドルから300万ドルかけて修復したが、今年の暴風雨で最もひどい災害を被り、作業のほとんどが破壊した。他の地方も同じ状況だ。 

ハイチは貧困のサイクルから抜けられない。農民は懸命に努力しても、家族をやっと養う食料しか作れず、長期的に健康な土地を作れない。慈善団体は救済活動として新しい農作方法を提案するが、資金が無くなると数カ月や数年で去ってしまうとルイス氏は言う。 

先月、ロバート・B・ゼーリック世界銀行総裁はハイチを視察し、追加の緊急無償援助2,500万ドルを行い、主要な橋を建設し、ハイチの自然災害への脆弱性を軽減するために実行中のプログラムをさらに広げていくと発表した。これは世界銀行が国際開発協会(IDA)経由で2005年から行っている無利子の融資・補助金2億4,000万ドルに追加で行うものだ。 

国連や世界銀行などの「ハイチ復興フレームワーク」では、3年にわたり流域復旧、基本サービス、食料安全保証のために数十億ドル規模というこれまでにない力とお金を注ぎ、「国が思い切った手段で再出発し、復興する」計画を2008年末までに開始する予定だとBoutroue氏は言う。 

「流域を復旧する方法は知っている。うまくいくのもわかっているし、人もいるし、作業能力もある。お金だけが足りない」と国連職員は言う。 

史上最悪の自然災害に苦しむハイチと復旧支援状況について報告する。 (原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

|キューバ|嵐に慣れるしか選択肢はない

【ハバナIPS=パトリシア・グロッグ】

最新の公式推計によると、グスタフ、アイク、パロマと3つのハリケーンが3カ月足らずでキューバに総額100億ドルの被害を引き起こし、キューバの住宅の脆弱性が明らかになった。「気候変動の結果、ハリケーンが強大化し、我々には慣れるしか選択肢はない」と、8日にハリケーン・パロマの被害を受けた中東部を視察したラウル・カストロ国家評議会議長は語った。 

ハリケーンの強風、豪雨、高波で、沿岸部の町では多くの人々が家を失った。ハリケーン・パロマによる被害はテレビ放映されたが、1932年に3,000人の命を奪ったキューバ史上最悪のハリケーン9号から76年目という日の直後の放映だった。だが今回は住民の避難は迅速に行われた。

 カストロ議長は地元の人々に、できるだけ早く家を同じ地域に、けれども海からは離れた場所に再建するといい、被害の保障を約束した。議長はキューバにはハリケーンと「共存」していく用意が必要だとし、「手段を尽くして対処していく」と述べた。 

キューバ共産党の機関紙「グランマ」は12日に、グスタフの被害額は20億7,000万ドル、アイクは72億7、000万ドルだったと報じ、カストロ議長はパロマも合わせて総額100億ドルだと語った。 

市民防衛システムが運営する、国際的に高い評価を受けているキューバの災害防止システムが人的被害を最小限に食い止めたが、物的損害は甚大であり、キューバですでに差し迫った問題となっていた住宅不足がさらに悪化した。 

専門家は、気候の変化、粗悪な建築資材、定期整備が行われていないインフラ、海に近い住宅地などの問題が重なって、ハリケーンの被害を受けやすくなっているという。ハリケーン被害後に、キューバ住宅研究所は、わらぶき屋根、木造あるいはタイル屋根の家は壊れやすく、強化コンクリートの屋根だけが強風に耐えられると報告した。 

カストロ議長は「建材産業の基礎を築き、国内のすべての家の屋根を強化していく」と言明した。今年初めにキューバの住宅不足は60万棟に及んでいた。2005年の計画では年間10万棟の建設が予定されていたが、実際には半数しか実現していない。 

キューバのハリケーンによる被害について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリ=IPS Japan浅霧勝浩 

|オーストラリア・米国|オバマ氏との争点になる可能性のあるアフガニスタン

【メルボルンIPS=スティーブン・デ・タルチンスキ】

オバマ次期米大統領により米国に変革が訪れるのを、オーストラリアは歓迎している。オーストラリアと超大国米国との同盟関係は揺るぎないままだろう。「これまでもこれからも両国の関係は繁栄を続ける」とラッド首相はアフリカ系アメリカ人初の米国大統領の誕生を歓迎して述べた。 

オーストラリアのあらゆるメディアもすばやくオバマ氏勝利を歓迎する報道を行った。シドニー大学のUS研究センター(USSC)が選挙前に行った調査によると、オーストラリア人のほとんどがオバマ氏を支持していた。3分の1は選挙結果がオーストラリアに影響しないと答えたが、49%がオバマ氏の勝利の方が有利だと答えた。

 米豪の二重国籍を持つUSSCのジョフリー・ガレット教授は、オバマ氏の勝利はブッシュ政権と決別したかったオーストラリア国民には大きな意味を持つが、オーストラリアの政権に影響はないという。オーストラリアは第二次世界大戦後に米国と緊密な関係を築いた。1951ANZUS条約で結ばれた軍事同盟であり、ベトナム、イラク、アフガニスタンで米軍を支援する役割を果たしてきた。 

ラッド首相とオバマ氏の若さ、現実派、多国間主義者といった類似性も同盟を強化するとみられている。受諾演説でオバマ次期大統領は気候変動問題、テロとの戦い、米国の経済問題を最大の課題としたが、ラッド首相も同様の認識をしている。 

オバマ氏もラッド首相も、温室効果ガスの大幅削減を目指し、金融システムに規制強化を図り、テロとの戦いではアフガニスタンを重視している。オバマ氏は就任後16カ月以内のイラクからの米軍撤退を望んでおり、6月にイラクから撤退しているオーストラリアのラッド首相は、アフガニスタンでの長期的活動を重視する姿勢を明言している。 

だが国際治安支援部隊(ISAF)での負担が公平でないという不満もあり、オバマ次期大統領がオーストラリアへの要求を増すのではないかとガレット教授はみている。イラクに関わっている米軍には余裕がなくNATO諸国も部隊の増員は期待できない。 

オーストラリアはアフガニスタンにおける非NATO国最大の貢献国であり、1,100人規模の部隊を派遣している。ラッド首相は先週、オーストラリア軍の負担が増える可能性を否定したことから、この点が米豪の関係にとってひとつの争点となるかもしれない。 

オバマ次期大統領が選出された米国とオーストラリアの今後の関係について報告する。 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 


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