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│EU・ロシア関係│EUがグルジア問題で主導権

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【プラハIPS=ゾルタン・ドゥジジン】

ロシア・グルジア紛争で仲介役としての欧州連合(EU)の存在感が増している。 

先週には、フランスのサルコジ大統領とロシアのメドベージェフ大統領がモスクワで会談し、8月の紛争開始以前のラインまでロシアが徐々に軍隊を撤退させる合意が導びかれた。 

ロシアはまた、問題となっている南オセチア自治州とグルジアとの境界付近にEUが200人の監視員を派遣することにも合意した。しかしながら、監視員は南オセチア内に入ることはできない。

ロシアに対するEUの態度は、構成諸国の意見の違いを反映して、妥協に満ちたものとなった。EUはロシアによる南オセチアの占領を「反応」と呼んだ。いちおう「度の過ぎた」という形容付きではあったが。またEUは、ロシアが南オセチアの独立を勝手に承認してしまったことを非難した。 

しかし、EU内部にはポーランドのような対露強硬派も存在する。これらの国々はロシアへの経済制裁を主張している。 

実際には、EUがロシアに対してエネルギーを依存しているため(天然ガスの半分、石油の3分の1)、ロシアに対して強硬な態度に出ることはなかなか難しい。 

他方で、米国の役割はあまり目立っていない。チェイニー副大統領は、親米的なグルジアとウクライナを相次いで訪問したが、多くの政治家やメディアは、あまり意味がなくタイミングもよくない訪問だとみなしている。 

プラハの「国際問題協会」のミシャル・ティム氏は「米国はイラクやアフガニスタンで手一杯。グルジアへの政治的支援は表明するが実際に行動には出ない。グルジアをNATOに加盟させるぞといって脅しをかけることぐらいしかできない」と話す。 

グルジア紛争における欧州連合(EU)の役割について検討する。

翻訳/サマリ=IPS Japan

|パキスタン|活動家、女性生き埋め事件に政府の対応を要求

【カラチIPS=ゾフィーン・エブラヒム

7月14日、バロチスタン州のババコット村で、与党パキスタン民主党(PPP)に所属する州政府大臣の兄弟アブドゥル・サッタール・ウムラニ氏の命令によるとされる女性生き埋め事件が起こった。 

香港を拠とするアジア人権委員会(AHRC)によると、ウラムニ氏と6人の仲間は犠牲者を村から近くのナウ・アバディへ移送。そこで10代の少女3人を車から引きずり出し、殴った挙句に発砲。まだ息のある少女たちを溝へ投げ入れた。1人の少女の叔母と母親も、このむごい仕打ちに抗議したため、溝に突き落され生きたまま埋められたという。少女たちは、好きな男性との結婚を願ったために処刑されたのだ。

 8月30日、野党のヤスミン・シャー上院議員は、連邦議会で同問題を取り上げ、政府の無対応を非難したが、バロチスタン州選出のイスラルラー・ゼーリ上院議員は、それは慣習の1つであると反論。ジャン・モハンマド・ジャマリ議員は、野党は事件を意図的に政治化していると述べゼーリ議員を弁護した。 

長年パキスタン部族地域の古く残忍な慣習と闘ってきたセマール・ミナラー氏は、「議会にはゼーリ、ジャマリ議員と同じ考えの議員が多い。彼らと2議員の違いは、その考えを口にしたかしないかだけである」と語る。ニューヨークを拠とするヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)のアリ・ダヤン・ハサン氏は、部族の慣習の名のもとに犯罪を擁護しているとして、ゼーリ議員の即時退任を求めている。 

パキスタン憲法は、18歳以上の女性に自由意志による結婚を認めているが、旧態依然たる慣習によって処罰あるいは処刑される女性は多い。パキスタン人権委員会によると、2007年には‘名誉のための殺人’の犠牲となった女性は636人に達するという。しかし届け出のないケースも多いため、実際は同数を遥かに上回ると思われる。(名誉のための殺人は2004年に禁止されたが、法の力は弱く加害者が処罰されるケースは稀だ) 

匿名希望のあるバローチ共和党(BRP)議員は、「警察の捜査を逃れるため、3人の少女の遺体は掘り返され、どこか別のところへ埋められた。サッタールが土地問題を主原因に、20人強を殺害しているのは周知の事実だが、どれも問題にされていない。これがパキスタンだ。力のある者は殺人、まして複数殺人を犯しても罪を免れることができるのだ」と語っている。 

バロチスタン州で起こった少女生き埋め事件について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

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|パキスタン|自爆テロに駆り出される女学生

|環境|環境問題を変える大手慈善団体

【オハイオ州オバーリンIPS=サム・カサノス】

「慈善資本家」も多くの伝統ある財団も、気候変動などの地球規模の問題に非常に熱心に取り組んでいる。これまでは、慈善団体の環境への取り組みは自然保護に偏り、体系的でないと批判されていたが、最近は変わってきている。

エコノミスト誌のライターでマイケル・グルーン氏との共著「Philanthrocapitalism: How the Rich Can Save the World(慈善資本主義:金持ちが世界を救う)」(近刊)の著者のマシュー・ビショップ氏は、「慈善家は従来の問題に加えて気候変動問題に関心を持ち始め、特にIT関連の慈善家は革新的な方法を模索している」という。

 慈善資本主義という新語は、慈善に市場原理を持ち込んで問題解決に当たる姿勢を表している。環境にやさしい技術の研究開発への投資、環境に配慮したオフィスビルの設計、市場本位の社会変革活動を行う組織への寄付などにより、新たな世代の慈善家は環境問題に取り組む。政府に温暖化防止条約への加盟を促し、条約を産業に配慮したものにする働きかけも怠らない。さらに従来の環境団体への寄付も多額で、2007年には20億ドルに上った。

慈善資本主義が社会と環境に大きな変革をもたらす可能性について、ボストンのノースイースタン大学のダニエル・フェイバー教授は、「変革に必要なのは草の根の活動であり、慈善家が投資の短期的回収を目指すのは問題だ」と批判的である。ビショップ氏もこの点は同意し、変革に向けて政府を動かすには市民のための情報構築と市民による政府への圧力が必要だという。

政府や企業への働きかけに有効なのはインターネットである。環境団体のコンサルティング会社を起業したイーサン・オーギネル氏は「環境関連団体と慈善家が協力してインターネットを利用した意識改革活動が効果をあげている」という。たとえばアポロ連合は、石油依存をやめてクリーンエネルギーを利用するプログラムへの米政府支援金を求めるキャンペーンをネット上で行い、エネルギー問題の理解に大きな効果をあげている。

インターネットの革命的影響を認めつつ、フェイバー教授は組織の資金調達は慈善団体の政治的基準に左右されると指摘する。たとえば環境の公正の問題に取り組み、草の根の運動を重視しているジェシー・スミス・ノイズ財団は資金調達に苦労している。

慈善団体の環境問題への取り組みについて報告する。 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩

ライス国務長官のリビア訪問に暗い影を落とす人権問題

【ワシントンIPS=ザイナブ・ミネイア】

リビアの最重要ビジネスパートナーとしての地位を回復したい米国の石油会社は、リビアとの関係正常化に熱心であったが、人権擁護団体は、より親密な関与の対価として人権状況の改善をリビア最高指導者のカダフィ大佐に求めるよう米政府に要求してきた。

ニューヨークに本拠を置くヒューマン・ライツ・ウォッチは、リビアに拘束されている政治犯の釈放、拷問の廃止、および現政権批判を罰する法律の撤廃を求める書簡を2日ライス長官に送った。

とりわけ懸念されているのが、言論の自由と政治改革を要求したことで2002年に逮捕され、現在健康状態の悪化が心配されているFathi Aljahmi(66)さんである。

 ボストンに本拠を置く人権のための医師団も2日声明で「リビアとの関係正常化の進展は、Aljhami氏の無期限拘留が解かれるまで中断すべき」と訴えた。

アムネスティ・インターナショナルは、表現の自由の権利を非暴力的に行使しただけの理由で拘留されているAljahmiさんは「良心の囚人」であるとしている。

ライス国務長官の訪問目的は、米国の対リビア投資を拡大する道筋をつけるために、米パンナム機爆破事件の賠償請求の最終解決を含む両国間の未決事項を片付けることにある。リビアの石油埋蔵量は世界の3.5%を占めると推定されており、また政府系ファンド(ソブリン・ウェルス・ファンド)は500億ドルにものぼり、米国企業が大きな関心を寄せている。

ライス長官のリビア訪問を機に高まっている人権擁護団体からの政治犯釈放の要求について報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan

|オセアニア|「気候変動難民」発生の時代へ

【メルボルンIPS=スティーブン・デ・タルチンスキ】

「地球の友」オーストラリア支部のダミアン・ローソン氏によると、ツバルやキリバスでは、水面の上昇により海岸線付近の住民や作物への影響が出始めているという。また、海外援助など60団体からなるネットワーク「貧困を過去のものに」が7月に出した報告書では、キリバスの2つの村全体が、すでに移住を始めているという。

パプアニューギニアのカートレット諸島の島民2000人も、86km離れたブーゲンビルに避難する準備を進めている。

「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の試算によれば、今世紀末までに海水面が18~59cmも上昇する可能性がある。

8月19日から20日にかけてニウエで第39回太平洋諸島フォーラムが開催されたが、その直前に、オーストラリアのラッド首相とニュージーランドのクラーク首相に対して、100以上のNGOが連名で公開書簡を提出した。書簡では、両国が移民の受け入れ枠を拡大して、海水面上昇により島に住めなくなった人々を「気候変動難民」として受け入れることを求めている。

もっとも、書簡では、そうしたことよりも先に、両国が地球温暖効果ガスの排出抑制にまず努めることを要求している。世界のCO2排出に関して、オーストラリアは全体の1.2%を、ニュージーランドは0.1%をそれぞれ示している。

それだけ聞けばたいした量ではないが、1人当たりの排出量では、両国は世界のトップクラスに入っている。

「気候変動難民」の問題について報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan

|パキスタン|無法のタリバン、メディアを自由に操る

【ペシャワールIPS=アシファク・ユスフザイ】

パキスタン人権委員会(HRCP)のアスマ・ジャハンギル委員長は、タリバンの言いなりになっているパキスタン・メディアを批判。「タリバンは自爆テロにより無実の市民を殺害した後で、メディアを通じ犯行声明を出している。

メディアはタリバンの人権犯罪を批判する報道こそを行うべきだ。特に問題なのは、タリバンの大量殺戮に対し政府が沈黙していることだ。タリバンは自由にメディアと接触しているのに、政府はそれを取り締まろうともしない」と語っている。

国営のPTVでさえ、ゴールデンアワーのニュース番組の一部をタリバン・スポークスマンのために空けているのだ。

1997年に制定されたテロ対策法は、執筆、オーディオ、デジタルを始めとする様々な手段で、宗教、宗派あるいは民族間の憎しみを煽る題材を印刷、発行、ばら撒いた者またテロ行為により有罪となった者、テロに関係すると思われる個人あるいは組織、更には監視下に置かれている組織に同調した者は略式裁判にかけられ、有罪と認められた場合は最高6か月の懲役および罰金に処されると定めている。

 しかし、テロ関連のニュースに対する国内外の関心は高く、ジャーナリストの誰ひとりとして同法を気にかける者はいない。所謂「売れる記事」を追い求める野心家のジャーナリストは、命をかけて違法とされる組織の首領にインタビューを敢行するだけでなく、中には一歩進んで違法組織自体のスポークスマン的役割を担う者までいる。

匿名のあるメディア関係者は、「パキスタン・メディアは中立の立場を忘れてしまった。違法組織が言うことはすべてニュースとして受け入れ、報道している」と語っている。

パキスタン・メディアとタリバンの関係について報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan

|人権|「対テロ戦争」に対する闘い

【パリIPS=ジュリオ・ゴドイ】

パリのユネスコ本部において先週、世界人権宣言60周年を記念する国連広報局NGO委員会(DPI/NGO)の年次総会が開催された。 

今会議には世界の人権専門家および活動家約2,000人が参加。国連の潘事務総長は、ビデオメッセージを寄せ、代表団は人類の最も偉大な業績の1つを記念するために集まったと述べた。しかし、会場に祝賀ムードはなく、人権は国内および国際レベルでのテロ対反テロの戦いにより弱体化しているとの雰囲気が漂っていた。

 ヒューマンライツ・ウォッチのテロおよび対テロプログラム担当ジョアンヌ・マリナー部長は、「我々は、9/11事件直後に人権協定および合意の適用は必要ないとする政府政策の劇的変化を目撃した。米国の権利抑圧は世界的傾向の一部でしかない。世界約80カ国が2001年9月11日以降テロ取り締まり法を採択し、新たな法律により個人の権利/自由を抑圧するパターンが出来上がった。司法の監視、透明性、個人の権利保護の仕組みも全く不十分なまま、政府の個人調査、拘束、収監が大幅に強化された」と語った。 

会議参加者は、国連機関が人権抑圧に協力的であることを指摘。マリナー氏は、「国連では、人権問題に関する力の均衡が安全保障理事会およびテロ対策目的に創設された機関に傾いている。安保理は、「立法的色彩の濃い」決議を立て続けに採択し、各国にテロ資金の流れ、テロ容疑者の入国ルートを突き止めるため、また容疑者を投獄するための新法を可決するよう迫ったと」と非難した。 

また、アクション・エイド・エチオピアのダニエル・ベケレ氏は、「近年アフリカでは市民社会運動が急速に発展しているが、同時に国内あるいは国際治安を口実に市民社会団体への圧力を強めている国が多いのも事実だ」と語った。 

同会議では、12月10日から始まる「人権学習国際年」(International Year of Human Rights Learning)に先立ち、人権に関する教育、学習、対話を推し進めるための方法についても話し合われた。 

ユネスコ本部で開催された国連広報局NGO委員会の年次総会について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan 浅霧勝浩 

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平和の籠がルワンダ女性にもたらす平安

【キガリIPS=ローレン・ヴォプニ】

首都キガリ郊外で3人の女性たちが楽しそうにおしゃべりしながら真っ赤な籠を編んでいる。昔ながらの風景のようだが、この籠はルワンダ女性のビジネスである。

米国の2000年アフリカ成長機会法(AGOA)は、ルワンダを含むサハラ以南の39カ国に米国市場進出の機会を与えた。ルワンダではパピルスなどで編み上げる伝統的な籠に着目した政府が、女性たちに籠作りの協同組合設立を働きかけた。国連女性開発基金(UNIFEM)などが研修の協力をした。

このようにして障害者、HIV感染者、1994年の大虐殺で夫を失った者など弱い立場にある女性を中心に協同組合が作られた。14年前の大虐殺のしこりにもかかわらずツチ族、フツ族の女性たちは協力してカゴを作り、フェアトレードの輸出業者に商品を供給するようになった。

先駆的な組合はGahaya Linksである。「平和への道プロジェクト」と『オプラ・マガジン』を通じて年間5万個の籠を「メイシーズ百貨店」に輸出する。

歴史的に男性が支配してきたルワンダのビジネス界で、このプロジェクトの成功は女性たちに自信をもたらした。ルワンダ・バスケット・カンパニーというフェアトレードの輸出業者が名乗りを上げ、より高い値段で輸出することを目指している。

人口の60%が貧困ライン以下の生活を送るなかで、籠作りに携わる女性は1月に25,000から40,000ルワンダフラン(およそ50から80ドル)の収入を得る。「経済的基板を得た女性たちは互助ネットワークを生んだ。希望のない女性たちに希望を取り戻すのが私たちの仕事。それには経済的安定を与えることだ」とUNIFEMルワンダ支部のD.K.ガサナ氏は言う。

女性たちが経済的に安定すると、地域社会における地位も向上する。ギタラマ郊外のRebunyurwe組合で籠を作るE.Nyanziraさんは、地方自治体に携わるようになった。選挙に出る者もいるとUNIFEMは報告する。

米国の2000年アフリカ成長機会法(AGOA)を利用したルワンダ女性の籠輸出ビジネスの成功について報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan

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|カンボジア|大規模立ち退きを伴う湖の開発

【プノンペンIPS=アンドルー・ネット】

ボエン・カック湖の再開発プロジェクトの開始が発表されたのは、国連人権理事会(UNHRC)のカンボジア担当官の任期を話し合う会議の直前だった。地元および世界のNGOはその会合で問題を提起する予定である。

湖の再開発については10年以上前から噂があったが、2007年2月にプノンペン市がシュカク社と7,900万ドルで土地の99年リース契約を結び、確定した。シュカク社は与党のLau Meng Khin上院議員とつながりがあるとされている。


 
警察が厳重に警戒する中、8月26日には業者が133haの商業地と宅地の造成の準備として湖の埋め立てを始めた。90haの湖の80haが埋め立てられる予定である。住民側弁護士は27日の記者会見でプロジェクトの違法性を訴え、裁判の準備を進めていると語った。

市当局は影響を受けるのはおよそ600世帯だとしているが、NGOは3万人に上るとみている。住民は市の用意した住宅に移るか、8,500ドルの補償金を受け取るか、開発地周辺の新たな住宅ができるのを待つか、3つの選択を迫られている。住民は保障費の低さに憤るとともに埋め立てを中止して話し合いに応じるよう企業に求めている。

国際的なNGOも開発計画は違法であり、住民の参加がないと非難している。環境への影響も懸念されるが、カンボジアの水資源気象省は問題ないと影響を否定している。

大規模な土地開発事業が進められているカンボジアでは、土地の接収と強制立ち退きが問題になっている。7月だけでも、南部のシアヌークビル州の小島の開発とフランス植民地時代のリゾート市ケップの宅地開発の2つの重要プロジェクトが明らかになった。

居住権問題に取り組むNGOは、違法に、かつ適切な補償なしに立ち退かされる地域の住民の権利について憂慮している。選挙前の小康状態を過ぎ、今後立ち退きへの圧力は高まると思われる。UNHRCの会議が期待される。住民からの反発を受けるカンボジアの再開発事業について報告する。(原文へ

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|スワジランド|多くの女性・市民が、贅沢な生活を送る国王・ムスワティ3世に抗議

【ムババネIPS=マントエ・パカティ】

南部アフリカ開発共同体(SADC)の首脳会議でジェンダー議定書が調印された直後、スワジランドでは、女性およびHIV/エイズ陽性者を中心に1,000人以上が参加して、国民が深刻な貧困と病に苦しむなかで贅沢な生活を送る国王に対し抗議デモが行われた。

デモのきっかけとなったのは、国王・ムスワティ3世がSADC首脳会議に向けて出発した8月15日に、国王の13人の妻のうち8人が子ども、随行員を引き連れて未公表の任務のためプライベートジェットで中東に旅立ったことである。政府はこの旅行に関してその性質についても財源についても沈黙を守っているが、9月6日の国王の誕生日とスワジランド独立40周年を前にドバイに買い物に行ったというのが巷の憶測である。

スワジランドは依然世界でエイズ感染率がもっとも高いにもかかわらず、保健制度の資金不足は深刻であり、人口100万人のうち3分の2が食料援助に頼って暮らしている。こうした現状とは対照的な国王の派手な生活ぶりが、国内各地から多くの人を抗議に駆り立てた。


王室は13億ドルの国家予算のうち5.3%を使っているのに対し、保健・社会福祉省への割当は10.6%に過ぎない。

ジム・ガマ(Traditional Prime Minister)は、抗議はスワジランドの文化に反するものであり、無礼な女性たちの行動だと非難。「女性がたとえ不当な扱いをされた時でも、男性が代弁するのがスワジランドの文化だ」と述べた。

スワジランドの女性が国王を直接非難し、政府に対し国民の血税を使った国王の贅沢な生活に対応を求めたのは初めてのことである。女性の権利団体を率いるSwaziland Positive Living for Life(SWAPOL)の指導者Siphiwe Hlophe氏は「女性として、私たちには表現の自由、生活、治療、ケアの権利がある。このことを抗議デモを通じて要求した」と訴えている。

抗議の声を上げたスワジランドの女性たちについて報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan