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|コロンビア|暴力に満ちた世界で希望となる子どもたち

【ボゴタIPS=ヘルダ・マルティネス】

コロンビアで生まれたオルネラ・バロスさんは12歳の時、「未来ではなく現実、希望ではなく確実なこと」を求めていこうと決意した。それから6年後、政治学を専攻する学生となったバロスさんは、「子どものための宗教者ネットワーク(GNRC)に参加しようと決めたのは正しかった」と語る。

 「現在大学生となり、確信をもって言えるのは、もっとも大事なのは人間の尊厳を推進する道徳的価値観を教えることで、それをすべての宗教が共通して行っている」とバロスさんは、ボゴタで家庭内暴力を克服するための異教徒間の対話に関するGNRC地域会議が開会された28日、IPSの取材に応じて語った。

 この会議は、ラテンアメリカ司教会議(CELAM)、キリスト教の救援組織であるワールド・ビジョン・インターナショナルおよびユニセフ(UNICEF)の支援を受けている。

参加者は「家庭内暴力を取り巻く原因、影響、文化的構造を分析しながら、コミュニケーションの機構を作り上げ、暴力を克服するために活動する人々を支援していく」とGNRCのラテンアメリカ・カリブ諸国担当のコーディネーターであるメルセデス・ロマン氏はいう。

「私たちが生きる地球環境を守りながら、貧困の中で生活する子どもをなくすことが急務であるとともに、子どもに対する暴力をなくすことは道徳的な責務である」とロマン氏は述べた。

中南米数カ国、および異なる宗教的信条を持つ人々の代表による討議は、「5月24~26日に日本の広島で開催されることになっている第3回GNRCフォーラムで発表される」と、ロマン氏は今回の地域会議の冒頭で告げた。
 
「第二次世界大戦が日本社会に及ぼした劇的な影響を認識するために、広島が次期フォーラムの開催地となる」とロマン氏は述べ、1950年に敬虔な仏教徒である宮本ミツ師が妙智會(心を豊かにする)教団を創始して、仏教の価値観を平和の達成に利用しようと献身的な活動を行ったことに言及した。
 
1990年に、その妙智會の宮本丈靖会長が、子どものためにより良い世界を作り上げていくことを目的とした「ありがとう基金」を設立した。
 
「ありがとう基金」は国連が認定するNGO団体であり、子どもに対する暴力のない世界を目指す、すべての宗教的伝統の結集として2000年5月に創設されたGNRCを支える原動力だった。
 
「子どものために活動できるようにしてくれた人々に感謝する」とロマン氏は会議の参加者に述べた。参加者には、ボゴタ郊外のボサ、ソアチャ、カスーカなどのスラム地区に住む6~16歳の少年少女の「希望の歌声」聖歌隊のメンバーも含まれていた。

「スラムでは、いたるところで争い事がある。道の曲がり角ではどこでも殴り合いのけんかをしていて、10~12歳の子どもがたばこを吸い、アルコールを飲み、してはいけないことをやっている」と聖歌隊のメンバーのホルヘ・モリナさんはIPSの取材に応じて語った。

「だから私たちは、暴力によって住む場所を失ったたくさんの人々に希望の歌声を届けるため、やさしい気持ちを広めるために歌を歌う」とモリナさんはいう。

コロンビアでは、半世紀近く続く内戦のために、故郷を離れて国中から集まってきた数万人の人々が、ボゴタを取り巻くスラムで避難民となっている。

「希望の歌声」はコロンビアの作曲家、サンチアゴ・ベナビデス氏の作品を歌っている。作品の歌詞では「銃弾では世の中を変えられない」「明日になって振り返った時に、自分の足跡が見えるようにするには、今何ができるだろう」「ウラバからやってきたウゴは、茶色のリュックを持っていて、どこに行ったらいいかわからないまま、生まれた町から逃げてきた」などと歌われている。

この歌詞はコロンビアの現実を映し出している。「1万1,000~1万5,000人の子どもが武力紛争に巻き込まれている」とワールド・ビジョン・コロンビアのサミュエル・アルバラシン副代表はIPSの取材に応じて語った。

「状況は非常に深刻で、ワールド・ビジョンは3万5,000世帯の40万人ほどの子どもの命を救うためにあらゆる努力を行っている。世界的には、私たちの組織は、300万人の子どもに手を差し伸べていると推定している」

アルバラシン氏によると、コロンビアで子どもが被害者となる暴力の根源は、疎外、貧困、社会的排斥、児童労働、武力紛争である。

けれどもこうしたことにもかかわらず、「私たちは未来を見つける」と同氏は断言した。

30日まで続く会議では、ユニセフが、2006年10月に発表された国連事務総長の「子どもに対する暴力に関する調査」の結果を議論することになっている。

この調査は2003年から世界中の専門家、子ども、青少年が参加して行われたもので、暴力の原因と実態を理解するためにこれまで行われた取り組みの中で最大のものだった。

その中には「大人中心主義」などの文化的な傾向、そのもっとも弱い子どもたちへの影響、体罰とその影響、性的および精神的虐待がある。

3日間の議論の中心テーマは価値観としての人間の尊厳の重要性であり、それは宗教および社会が共有し、世界を変える変化を起こす力となるものである。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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|アジア|自由にとどまらず

【バンコクIPS=リネット・リー・コーポラル】

5月3日の「世界報道の自由の日」を前に、2日バンコクにおいて国連教育科学文化機関(ユネスコ)の主催で表現の自由、アクセス、エンパワーメントをテーマに会合が開かれた。

会合では、昨年17人のジャーナリストの命が奪われた政治的弾圧の問題に加えて、多くのメディア事業の「レベル低下」を招いているとの批判が出ているメディアの極端な商業化の問題が議論された。

 ユネスコ、バンコク事務所のシェーファー所長は「報道の自由はジャーナリストだけでなく、社会全体にとって重要。より多くの情報を得ることで、人々は自分たちの生活に影響を与えるより多くの活動に参加する力を得る」と述べた。

アジアは経済開発および人間開発においてこの数十年大きな進歩を遂げてきたが、しかし経済格差を含む不平等は広がるばかりである。

「この不平等の原因のひとつは『知識の貧困』である」と国連開発計画の民主的ガバナンス実践チームの代表Patrick Keuleers氏は述べた。知識の貧困とは、情報の欠如が貧困者の経済・社会・政治プロセスへの参加を阻むことであり、あらゆる腐敗を招く透明性の欠如のことでもある。

Keuleers氏は、インターネット利用者のみならず個人所有のメディア発信源やウェブサイトが急増する「パラドックスの地域」とアジアを称した。

メディア手段の増加は必ずしも、メディアが社会的ニーズや社会変革に対応する情報をより多く生み出すことにはならない。「メディアの発信源は個人的利害に独占され、多くのジャーナリストが微妙な問題を報道する際に何らかの自己検閲を行っている」とKeuleers氏は指摘する。

マレーシアの独立オンライン・ニュースサイトMalaysiakini.comの編集長スティーヴン・ガン氏は、一般市民が数多くのメディア・ツールを利用できるようになった現代において、ジャーナリストは娯楽的なメディアソースと競って読者に魅力的なニュースを届けるのに苦労していると語った。

アジアのメディア議論を報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan

|レバノン|ヒズボラ、ベイルート銃撃戦で政治力拡大

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【ベイルートIPS=モナ・アラミ】

シリアが行ったとされる2005年のハリリ前首相の暗殺以来、シーア派のアマルおよびヒズボラとスンニ派与党の未来運動(Future Movement)との抗争が続いているレバノンで5月7日、生活苦およびインフレ高騰に抗議するデモが両派の暴動に発展。銃撃戦で少なくとも11人が死亡、30人が負傷した。 

ヒズボラのリーダー、ハッサン・ナスララ師が、ワフィク・ショウカイール准将を空港セキュリティーの任務から外したこと、政府がヒズボラの通信ネットワークを捜査したことを糾弾し、同暴動は翌8日には政治衝突に発展。ヒズボラ・リーダーは、内閣のこれら決定を“戦線布告”と糾弾。この発言に呼応するかの様に、首都ベイルートに銃声が響いた。

 戦闘訓練、装備が不十分な未来運動は武装した野党メンバーを前に退却。野党側は未来運動のサアド・ハリリ党首および社会進歩党のワリド・ジュンブラット党首宅ならびに政府建物を包囲した。この間、レバノン軍は、緊急事態宣言を行わず、中立を保って衝突に加わらなかった。 

政治学者で「ヒズボラ:政治および宗教」の著者でもあるアマル・サアド・ゴライェブ氏は、「これはレバノン政治の新局面以外の何ものでもない。力関係の不均衡により、紛争は短期間で解決されるだろう」と語る。同氏は、「今回証明されたヒズボラの軍事的優位により、与党は譲歩を余儀なくされる。政府は総辞職を余儀なくされ、暫定政府は、野党が以前から望んでいた早期議会選挙を要求するだろう」と語る。 

戦闘が収まり、野党が市の西側を支配したことにより、今回の事件は国内だけでなく地域にも影響を与えるだろう。ゴライェブ氏は、「これが政治秩序の大幅な変革に繋がることは明らかであり、システムの不均衡を修正するためのタエフ合意見直しの布石となるかも知れない」と語っている。(タエフ合意は1990年のレバノン内戦終結時に調印された民兵組織の解体とイスラム/キリスト教徒間の平等な力配分を定めた関係者間合意) 

ヒズボラと未来運動のベイルート銃撃戦について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

|ネパール|食料自給率の低下と食品価格高騰

【カトマンズIPS=マリカ・アリヤル】

5人家族のうち唯一の稼ぎ手であるマヤ・タマンさんは、家族の食費を抑えるのに余念がない。しかし、食料価格が高騰する中、多くの食品が食卓から消えてなくなる日を彼女は予想してもいる。「食用油は高くなりました。米を買うことも難しくなっています。肉の値段は恐ろしい勢いで上がっています」。 

ネパールでは昨年に比べて食品価格が2倍にはね上がった。しかし政府は、4月10日に行われた制憲議会選挙に執心して食糧危機がネパール国民に与える苦難を顧みることはなかった。

 人口2900万人のネパールの食料自給率は90年代を通じて下がり続けている。毎年、3070万ドル相当の米と76万ドル相当の小麦を輸入している。また、肥料から農薬、種子にいたる、食料生産のすべての要素を輸入に頼らざるを得なくなってきている。 

普段ネパールに食料を輸出しているインドとバングラデシュが、自らも食料危機に直面して食料輸出の禁止を決めたことが、ネパールにとっては大打撃となった。 

短期的要因もある。上で述べた制憲議会選挙のために資金を必要とする政党に資金供与している業者が、食品価格を意図的に高く設定したり売り惜しみをしたりしたのである。 

世界食糧計画(WFP)では、ネパールで食料不足に苦しむ民衆の数は400万人から800万人にまで拡大したとみている。 

他方、ネパール自身もチベットや中国、バングラデシュに小麦や米を輸出していた。しかし、政府は、4月30日、これらの輸出禁止措置を決めている。 

食料不足に悩むネパールの状況について報告する。 

翻訳/サマリー=IPS Japan 

仏紙「ルモンド」でスト、不振続く欧州新聞業界

【パリIPS=ジュリオ・ゴドイ】

経営不振の仏紙『ルモンド』で4月中旬に2日間に及ぶ前代未聞のストライキが行われた。これは、フランスをはじめとする欧州諸国の新聞界が直面する危機の拡大を象徴するものだ。 

フランスの新聞は読者と広告が絶え間なく減少し、大打撃を受けている。インターネットの普及、フリーペーパーの台頭も追い討ちをかける。 

週刊の文化雑誌『Les Inrockuptibles』の編集長Sylvain Bourmeau氏は今年初めに、インターネットで会員向けにニュースと分析を提供するMediapartに転職した。同氏はこの職場がフランスのジャーナリストに「新聞改革の機会」を与えると考えている。実際、Mediapartに転職した『ルモンド』の記者、編集者は多い。

 Bourmeau氏はフランスの新聞出版業界の危機は「季節的あるいは一時的な現象ではなく、一つの時代の終わりだ。フランス人は新聞を読むことを忘れた」と言う。 

ストライキのために『ルモンド』は4月15日と19日が休刊となった。これは1944年の創刊以降初めてのことだ。ストライキは経営陣が示した厳しい経費削減案に抗議したものだ。 

この経費削減案はルモンド社が発行する様々な雑誌の販売予測に基づいて、130人の解雇を計画したもので、新聞部門では90人が対象となる。 

さらに、個人投資家が資本を買い増すことが予定されている。そうなれば、社員が経営に意見を言うことはできなくなる。『ルモンド』は現在、協同組合形式で運営されている。経営陣は、これらの対策でおよそ1億5,000万ユーロ(2億2,000万ドル)の負債を完済できるとしている。 

『ルモンド』の副会長David Guiraud氏は4月25日の声明で「我々には、この案を夏になる前に、直ちに実行に移すしか道はない。社員の皆さんが、自ら退職を希望する決断の機会とする」と宣言した。 

しかし、社員はまだ計画を受け入れていない。全国ジャーナリスト組合ルモンド支部のChristiane Chombeau氏は記者会見で「社員の大多数が新しい再建案を求めている」と述べた。 

ルモンド社の財政難は今に始まったことではない。2005年3月にも年間赤字が1,500万ドルとなり、90人を解雇し、株式の15%を軍事産業を抱えるコングロマリットのラガルデール・グループ(Groupe Lagardere)に売却した。さらに15%をスペインのメディアグループPRISAに売却している。 

 2007年末には地方紙を多数売却し、従業員を3,200人から1,600人に削減した。同社の経営で新聞部門を代表する協同組合のSociete de Redacteurs du Mondeは、資本の29.5%を握って拒否権を確保している。しかし、ラガルデール・グループとPRISAが株を買い進めれば、拒否権も失ってしまう。 

苦境にある新聞は『ルモンド』だけではない。2006年秋には『リベラシオン』が個人投資家のEdouard de Rothschild氏に売却された。Rothschild氏は新しい編集長を連れてきて、『ルモンド』のような再建案を採用した。ある記者グループは退職して、インターネット・マガジンの『Rue 89』を創刊した。 

フランスの多くの新聞が同じような困難に直面している。1960年代半ばに100万部以上の発行部数を誇った『フランス・ソワール』は、現在3万部を発行するにすぎない。 

フランス共産党の機関紙『ユマニテ』は毎日5万部を発行するが、1975年に比べると読者数は80%減となっている。資本の一部は軍事産業グループのラガルデールを含むコングロマリットに握られている。 

これらの変化はジャーナリズムの独立性の質に大きな影響を及ぼしているとBourmeau氏は指摘。「保守系『ル・フィガロ』のオーナー軍事産業Serbe Dassaultのビジネスに関する報道を見れば分かる」と言う。 

他の国でも新聞読者は着実に減少している。ドイツでは政府と幾つかの新聞社、ジャーナリスト組合が協力して、4月17日から若者に新聞購読を勧めるキャンペーンが立ち上がっている。 

キャンペーン開始時にベルント・ノイマン文部副大臣「この時代に政治社会問題で議論をしたい人は、新聞を読まなければならない」と宣言。学校や青少年クラブにおける定期新聞購読会などの計画を実行していく。 

ドイツ文化省は声明の中で「児童、青少年の活字離れ」に懸念を表明している。(原文へ) 

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩 

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逮捕された親チベットの抗議活動家

 【スバIPS=シャイレンドラ・シン】


フィジーの首都スバで、チベットでの死者を出した軍隊の弾圧を非難し、中国大使館の外で平和的な抗議活動を行った17人が逮捕された。フィジーの市民運動組織と主要労働組合は、この逮捕を非難している。

非難する人々は、9日の逮捕は憲法に違反しており、抗議活動を行った人々(現在は釈放されている)を起訴する根拠はないと主張している。

フィジー政府は現在、中国から2億2,800万ドル相当の融資を受けるために協議中であり、中国政府のチベット政策を支持している。

隣国のトンガのタウハ・アハウ・トゥポウ5世国王も、先週の中国公式訪問の際に、中国のチベット騒乱への対応を支持すると表明した。

フィジーとトンガは、他の太平洋諸島の国々と同様に中国から多大な支援を受けており、政府は中国の「一つの中国」政策を堅持している。

新華社通信によると、温家宝中国首相に海南省へ招待されたトゥポウ国王は、「中国の問題は中国だけが対処できるもので、他国からの干渉は容認できない」と語った。

フィジーとは異なり、トンガからは、国王の見解に反対して一般市民が抗議した、あるいはデモを行ったという報告はない。

バヌアツもトンガやフィジーのように中国からの多額の無利子融資を求めていて、チベット問題には口を閉ざしている。メラネシアの国、バヌアツからは中国の軍隊による弾圧に関する抗議活動やデモなどの報告は聞こえてこない。

インドにあるチベットの亡命政府は3月10日に始まった抗議活動を鎮圧するために中国の軍隊が侵攻して数十人が死亡したと述べており、世界中からの批判を招いている。

先週スバで逮捕された人々の中には、フィジー人権委員会の委員でフィジー女性危機センター(FWCC)のシャミラ・アリ代表も含まれていた。

アリ氏によると、同氏らのグループは中国の軍隊によってチベットで殺害された人々を追悼する徹夜の座り込みを行っていたが、プラカードを掲げたり、通行人の妨げになったりするようなものはいなかった。

アリ氏は「逮捕は言論の自由を記したフィジー憲法に違反している」とし、「チベットの人権侵害に抗議する平和的な座り込みには何の問題もない」という。スバの中国大使館はプレスリリースで警察の行動を支持すると述べた。

軍の有力者であるバイニマラマ首相が率いるフィジーの暫定政府は、逮捕に関して沈黙したままでいる。

2006年12月5日にクーデターで権力についたバイニマラマ首相は、チベットで騒乱が発生し、それに引き続き軍事的弾圧が行われた直後に中国政府に書簡を送り、先のラサでの暴動における中国政府の対応を支持すると表明した。

書簡では、中国は国家の平和と安全を守るために適切な手段を取る必要があったとされ、チベット問題は国内問題であり、中国が対処する問題だと明言された。

けれども市民運動組織の激しい抗議と、多くの怒りに満ちた手紙が投稿記事に掲載されるのを受け、バイニラマラ首相は暫定政府の主張を守勢する立場に追い込まれていた。

同首相は、政府の主張は法律の範囲内で平和的に問題を解決するという点で非常に明確で筋が通っていると述べ、この問題は「フィジーにとって長期的な友好国である」中華人民共和国の国内問題であるとしていた。

古くからフィジーの緊密なパートナーだったオーストラリアやニュージーランド、主要大国である米国や英国は、フィジーのクーデターを非難し、その体制に制裁を科したが、中国はクーデターに関して非難を行わず、フィジーとの友好関係を維持してきた。

フィジーは2億2,800万ドル以上に相当する中国からの融資を交渉中であり、すでに1億1,300ドルは国内の地方道路の整備資金として承認されている。

大手労働組合は逮捕を非難し、抗議活動家を支持すると声明を出した。

フィジー諸島労働組合評議会のアター・シン事務局長は、逮捕が言論の自由の権利を侵害しているとし、抗議活動家は起訴されてはならないと述べた。

フィジー女性の権利運動のタラ・チェティ広報官も逮捕された1人だったが、警察の行為は不当だと述べた。「こうした無益な逮捕により、チベットでの仲間の活動家との連帯を示す静かな平和的抗議活動が、とんでもない出来事のように仕立て上げられた」とチェティ氏はいう。「フィジーの憲法と国際法で守られている言論の自由や平和的集会の自由という人権の侵害は、特に現在、フィジーが選挙で選ばれていない政府によって統治されているため、問題である」

逮捕された人々は、公の集会を統制する法律を順守するため、個別のグループで座り込みをしようとしていた。尋問はグループごとに行われた。チェティ氏によると警察が逮捕者を虐待することはなかった。

「非合法の集会を行ったことで逮捕され、そのうち数人は起訴されている。けれども現場の警察官はどのような法律に違反しているとされているかについて当初は混乱しているようだった」とチェティ氏はいう。

市民憲法フォーラム(CCF)は抗議活動を行った人々に対する起訴を取り下げるよう要請している。

「CCFは平和的な市民グループが静かなデモを行って逮捕されたことを憂慮する。こうした市民は国の平和を脅かしていなかったし、何の業務の支障にもなっていなかった」とCCFのヤバキ牧師は語り、さらに「フィジー暫定政府がチベットで中国政府が犯した人権侵害を容認しているように見えるのは非常に遺憾である」と述べた。

「フィジーの歴史にとって大事なこの時期に、政府はフィジーへの中国からの支援の約束のために中国政府寄りの立場をとっているように見える」とヤバキ牧師はいう。

「CCFはフィジー政府に、表現の自由、移動の自由、不当な捜査押収からの自由などの、基本的人権を尊重する姿勢を示すよう求めている」(原文へ

翻訳=IPS Japan

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|エジプト|ムバラク政権に抗議する第2のデモ

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【カイロIPS=アダム・モロー&カーリド・ムッサ・アル・オムラニ】

カイロから車で2時間の所にあるマハラ市の国営繊維工場の労働者が、食糧価格高騰に見合った賃金の引き上げを要求するストライキを計画。イスラム系の労働党、民主化を求めるケファヤ運動がこれに参加して、4月6日マハラ市では実際にデモは行われなかったものの、別の町で緊急経済支援、政治変革を要求する大規模な抗議行動が勃発した。 

治安部隊はデモ鎮圧にゴム弾、催涙ガスを使用。死者3人、けが人多数を出す騒ぎとなった。(カイロを始めとする多くの都市でもデモが計画されたが、治安部隊の出動で実現が阻まれた)

 当局は、デモ鎮圧後数日間で労働組合リーダー、政治活動家、政治主張を掲載するブログ関係者など数百人を逮捕。その内200人は釈放されたが、依然450名が騒乱罪で拘束されている。 

 4月半ば、検察庁長官は、20人(その半数は、インターネットを通じデモ参加を呼びかけた所謂オンライン活動家)の釈放を命じたが、内務省は緊急事態法を盾に彼らの再逮捕と無期拘束を命令した。カイロに本部を置くエジプト人権組織(Egyptian Organization for Human Rights)のハフェズ・アブ・サエダ事務局長は、「非暴力の活動家の拘束、再逮捕は許されない。政治活動家の大量逮捕は、政府が表現の自由の権利を認識していないことの表れ」と憤る。 

しかし、この逮捕にも拘わらず、活動家はムバラク大統領の誕生日に当たる5月4日に第2の全国抗議行動を行うべく、市民に当日の職場放棄、不買運動を呼びかけている。11万5000人のメンバーを有するエジプトの人気ブログ“フェイスブック”の支持グループ2つは既に支持を表明している。今回は、抗議の内容を社会/経済分野に絞り、生活費高騰に見合った賃金の引き上げ、インフレ/市場寡占対策、拘束者の釈放を要求。スト指導者に対しては、大量の逮捕者を出さないよう、一か所に多数の人員を集めないよう指示している。 

この動きに対し、政府は目下沈黙を守っているが、アブ・サエダ氏は、「内務省によるフェイスブックのシャットダウン、同サイト設立メンバーの逮捕はあり得る」と語っている。 

食糧価格高騰が引き金となったエジプトの社会不安について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

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【ブリュッセルIPS=デビッド・クローニン】

EU高官の内部文書によると、EU各国の政府は米国の拷問と誘拐の秘密計画に結託し、人権を推進するEUの活動を台無しにしている。2001年にEUは、「拷問に対する戦いの実践」として、他国の抑留者に対する不当な扱いをめぐる懸念の表明についてガイドラインを承認していた。

 ガイドラインの適用に関する新たなEU評価は、米国のCIAによる特例拘置引き渡しにかかわるEU加盟国のダブルスタンダードに対し非難があることを認めた。この内部文書は、IPSが確認したところによると、「EUの信頼性を強化」するよう特に推奨し、人権に対する「十分な尊重」を保証すべきとしている。 

英国を始め、ドイツ、スウェーデン、ポルトガル、アイルランド、イタリアはCIAの秘密工作に協力したことが非難されており、ポーランドとルーマニアは両国におけるCIAの収容所の存在について情報を提供しないと欧州委員会(EC)から批判されている。 

欧州議会の調査委員会が作成した2007年報告書によると、2001~5年の間にCIAの航空機が少なくとも1,245回、欧州を通過、あるいは着陸している。調査委員の1人で英国労働党の政治家であるクロード・モラエス氏は、「EUとCIAの共謀ということでは信頼性が崩壊する」という。 

CIAの活動を調査しているレプリーブのC.デイビーズ氏は、「人権擁護者としてのEUの名声が失墜しつつある」という。さらに、拷問あるいは死刑の道具の輸出を禁ずる法規が破られているとアムネスティ・インターナショナルに抜け穴を指摘され、英国政府はEUと協力して対策に乗り出した。EUの人権に対するダブルスタンダードについて報告する。(原文へ) 

INPS Japan浅霧勝浩 

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地域を問わず、報道の自由に賛同

【ワシントンIPS=ジム・ローブ】

5月3日報道の自由の日に先がけ、ワールド・パブリック・オピニオン(World Public Opinion. org )は、20ヶ国18,000人を対象に、メディアに関する世論調査を行った。(対象国は人口の多い中国、インド、米国、ロシア、インドネシア。ラテンアメリカからはメキシコ、ペルー、アルゼンチン。欧州から英、仏、ポーランド。その他アゼルバイジャン、エジプト、イラン、ヨルダン、パレスチナ自治区、トルコ、韓国、ナイジェリアなど) 

「メディアが政府の統制から自由であることは、どれくらい重要であるか」という質問に、「とても重要」または「どちらかといえば重要」と答えた人は、全体の8割に上る。その意見は、南米諸国、エジプト、韓国、ナイジェリアで特に強い。「報道の自由の原則は、幅広く力強い支持を得ている。」と、WPOを運営するメリーランド大学のメリーランド大学国際政策志向プログラム(PIPA)理事スティーブ・カル氏は、IPS記者に語った。 

「とても重要」と答えた人の比率だけで見ると、メキシコが約80%ともっとも高く、他の南米諸国ではアルゼンチン70%、ペルー65%が続く。その比率が低いのは、ロシア23%、イラン29%、インド34%である。 

インドは「敵とみなされている国も含めて、どんな国の出版物でも人々は読む権利があるか」という質問についても、イエスと答えた人の比率は低く、唯一70%以下であった。 

全体の56%が、「メディアは政府の統制なしに、ニュースや意見を発表する権利をもつべき」と答えたが、反対に「政府は、政治的不安定の原因となるものについては、発表を阻止する権利をもつべき」と答えた人も少なくなく、ヨルダン66%、パレスチナ自治区59%、インドネシア56%、エジプト52%、イラン45%などであった。 

世界の報道の自由については、フリーダム・ハウス(Freedom House)の調査もある。それによると、2001年同時多発テロ以来、6年間連続で、「明らかに後退」しているという。理事のジェニファー・ウィンザー氏によると、いくつかの国で前進が見られたものの、中国、中央欧州、東欧州、旧ソ連、南アジア、アフリカの何カ国かでは状況は悪化しており、報道の抑制、暴力、脅迫、記者に対する名誉毀損罪の適用が増加している。 

 前出のWPOによる調査では、インターネットについての質問もあった。全体の60%が「人々はインターネット上のすべてを見る権利がある」と答え、この答えが多くの国で多数派意見であった。7割以上がそう答えた国は、アゼルバイジャン、米国、ナイジェリア、中国である。一方、全体の32%は、「政府が一定のアクセス制限をすべき」と答え、イランとヨルダンではこちらの答えが上回った。 
 
 「自国により多くの報道の自由を望むか」という質問に対しては、10ヶ国で半数以上が「より多くを望む」と答えた。上位から、メキシコ75%、ナイジェリア70%、中国66%、韓国65%、エジプト64%、パレスチナ自治区62%である。 

多数派ではないが、「自由がより制限されることを望む」と答えた人の比率が高いのは、インド32%、トルコ30%であった。 

WPOの世界各地における世論調査には、報道の自由拡大を支持する傾向が表れている。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan 浅霧勝浩 

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アフガニスタンで死刑制度議論が再燃

【カブールIPS=タヒル・カディリ】

生存死刑囚、およそ100人。これまで秘密のベールに包まれていた死刑囚の人数をアフガニスタン政府が明らかにしたことで、同国の審理手続に重大な疑念を残す結果となった。 

アフガニスタン最高裁判所は16日、誘拐・強盗・殺人・強姦など重大犯罪を犯した約100人の刑事被告人に対して死刑判決を出したことを発表した。これは昨年10月、カブール郊外の刑務所で1日のうちに15人が(事前の予告なしに)銃殺刑に処せられた出来事を思い出させるものだ。 

「100人というのはアフガニスタンにおける全死刑囚のあくまで『推定の』数だ。最高裁は死刑囚の氏名および収監場所については未だ公表していない」と、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)のエレイン・ピアソン氏はIPSとの取材で答えた。

 北アフガニスタンの独立系の人権委員会も詳細については把握していないとした。同委員会のQazi Sayed Mohammed Sami氏はIPSの取材に対して「名前が判明すればメディアに公表するつもりだ。そうすれば、全ての裁判で国際的に公正な審理が行われているかどうかを判断できるようになるだろう」と述べた。 

一部の専門家は100人の死刑囚が公正な審理を受けてこなかったとして、最高裁が死刑判決を破棄するよう強く求めている。 

カブール大学の国際法の専門家、Wadi Safi教授はHRWに対して「全ての裁判は、立会人なしで(殆どが法定代理人もいない)非公開で行われたものである」 

「しかも、地方裁判所では被告人が(自分に有利な)証言を述べさせてもらえないのが普通だ」と話した。 

HRWも同教授の意見を支持した。ピアソン氏は「死刑裁判だけでなく多くの刑事裁判で正当な法の手続きが行われていない」と語った。 

一方、これらの批判に対して最高裁の関係者らは「死刑裁判では専門の判事が『透明性の確保された』裁判で審理を行っている」と主張。Abdul Rashid Rashed判事はアフガニスタン裁判所の見直し手続きを求める訴えを撥ね退けた。 

「我々は法律のプロ集団であり、確固たる公正な採決を行っただけである。全ての判決はイスラム法に従って下されるのだ」。 

昨年1月若いアフガニスタン人ジャーナリスト、サイード・パルウィッツ・カムバクシ氏が死刑判決を受けたことを期に近年、アフガニスタンの法制度は非難の的になっている。カムバクシ氏は女性の権利に関するコーランの論議を呼ぶ部分を指摘したインターネットの記事を印刷・配布したことで告発された。もちろん、裁判の内容は明らかにされなかった。 

ピアソン氏は同裁判の違法性を指摘した。「特殊な裁判にも拘らず、カムバクシ氏には弁護士が付けられなかった。彼の家族は、拘留中に彼が肉体的暴行や心理的脅迫を受けた可能性があると訴えている」。 

 (アフガニスタン北部バルク州の裁判所で最初に死刑判決を受けた)カムバクシ氏は現在、カブールに移送されたと報じられている。ハミド・カルザイ政権の関係者は「同氏は間もなく釈放される」と語った。 

HRWをはじめ西側諸国の人権擁護団体が取り上げたカムバクシ氏の裁判は、アフガニスタンの裁判官が過激で超保守的な信仰に基づき判決を下した例として、世界的にも広く報道された(特に、情報発信の手段としてインターネットが大きな役割を果たした)。 

最高裁が示した死刑判決確定の突然の発表は、再び、アフガニスタンの法制度をめぐり国際世論を喚起する結果となった。 

2006年、カルザイ大統領は最高裁に数名の若い新人判事を指名した。彼らは明らかに高齢で保守的なイスラム教徒とは無関係のようであった。また、カルザイ大統領は(保守派のFaisal Ahmad Shinwari氏に代わって)Abdul Salam Azimi氏を最高裁裁判長に任命した。 

最高裁の判事は裁判官の選定および下級裁判所への指令公布など重要な役割を担っている。新たな裁判長の任命は、タリバン崩壊以降、大きな変化を求め続けた政府の期待がAsimi氏の肩にかかっていることを示すものになった。 

「2001年のタリバン政権崩壊以降、莫大な資金が司法制度改革のためにつぎ込まれている。アフガニスタン政府は現在、司法関連の費用として3億6,000万ドルの追加資金を求めている」と、カルザイ大統領は昨年11月の米国訪問の際、USINFOの記者に語った。 

アフガニスタン最高裁による100人の刑事被告人への死刑判決は、同国の死刑制度について様々な議論を巻き起こしている。 

カルザイ大統領は最高裁の発表後の翌日の記者会見で、自分は死刑制度に反対の立場であると述べた。しかし、同政権は死刑執行を現在も実際に行っていることに変わりはない。アフガニスタン憲法では、死刑執行までに大統領の執行命令への署名が必要であると定められている。 

カルザイ大統領は16日の会見で今回の問題に触れた。「タリバンが囚人らの処刑に反対し、国際社会に囚人らの助命を嘆願していると聞いた。彼らにも慈悲があるのだなと感じた」。 

しかし、皮肉にも、27日のカブールで行われた軍事式典ではカルザイ大統領を狙った暗殺未遂事件が起こった。 

一方、HRWはカルザイ大統領に対してこれ以上の死刑執行命令に署名することのないよう強く求めている。 

HRWのピアソン氏は次のように述べた。「カルザイ大統領は即刻、死刑制度を撤廃するべきだ。アフガニスタン、米国、いかなる国であっても我々は断固として死刑制度に反対する」。 

「差し迫った死刑執行などない。もし大統領が『ある権力者』からの圧力に屈すれば、今年15名の囚人が処刑されることになると、アフガニスタンの多くの有識者からHRWに情報が寄せられた」。 

カルザイ大統領の記者会見後、IPSは100人の死刑囚に刑の執行延期が認められるか否かについて検討した。 

マザリシャリフ市のMohammad Usaman検事はIPSとの取材で「アフガニスタンは他国に依存しない独立した国であるため、裁判所の決定は絶対的である。アフガン最高裁は今回の裁判について適切な判決を下したと思う」と答えた。 

また、バルク大学のUstad Norollah教授は「私はこの判決に賛成である。アフガニスタンには同じような罪で罰せられるべき犯罪者が他にもたくさんいる」と述べた。 

一方、(少数派の意見として)ジャーナリズムを専攻する学生Arzoo Gesoは「私は死刑が怖い。かつてテレビで見たが、数日間は眠れなかった。死刑の代替刑として終身刑を導入するべきだ」とIPSとの取材に応じて語った。(原文へ) 

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩 

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