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草の根の挑戦が必ず変化を(国際安全保障政策センターアリムジャン・アフメトフ代表インタビュー)

この記事は、聖教新聞電子版が配信したもので、同社の許可を得て転載しています。

核兵器禁止条約の第2回締約国会議が11月27日から12月1日までアメリカ・米国ニューヨークの国連本部で開催された。創価学会インタナショナル(SGI)はカザフスタン共和国国連代表部等と関連行事を開催(11月28日、国連本部で)。同国の核実験被害者の証言をまとめたドキュメンタリー映画を上映した。聖教新聞では、同映画をSGIと共に制作したCISP(国際安全保障政策センター)のアリムジャン・アフメトフ代表にインタビューした。(聞き手=同新聞社記者)

――核兵器廃絶への取り組みを始めた理由を教えてください。

私は長年、カザフスタン共和国の外務省に勤めていました。転機となったのは、2015年にアメリカ・ニューヨークの国連本部で開催されたNPT(核兵器不拡散条約)再検討会議に参加した時のことです。多くのNGOが参加しており、声を上げていました。

しかし、カザフスタンからは、一つのNGOも参加していなかったのです。わが国には核実験場がかつて存在し、多くの方が今も苦しんでいます。だからこそ、核兵器廃絶に向けて、カザフスタンが国際社会でリーダーシップを発揮すべきであり、わが国からも多くの市民が声を上げるべきだと感じました。

そこでCISP(国際安全保障政策センター)を創設しました。以来、CISPは、SGIと様々な関連行事を開催するなど、あらゆる取り組みを推進しています。

ーー映像制作の経緯をお聞かせください。

カザフスタンでは、約150万人が核実験の影響を受けて苦しんできましたが、記録された証言は多くはありません。より大勢の人に、核被害者の真実を伝えるための、映像制作を始めました。

CISP(国際安全保障政策センター)がSGIの支援を得て制作したドキュメンタリー「私は生きぬく:語られざるセミパラチンスク」。12/28のサイドイベントで先行公開され、参加者から大きな反響があった。映像:CISP

私自身、核被害者が住む地域を訪れ、直接、映像に出演してくださる方々を探しました。整備されていない道を通り、車で6,7時間をかけて街に向かったこともあります。

長時間かけて訪問したとしても、映像制作の趣旨に賛同いただけず、出演を断る人もいました。「これまで、何度も核実験被害の証言をしてきたが、結局、現実は何も変わらなかった。もう、話したくない」と言われたこともありました。そこには、被害者への支援が足りていない現実があるのです。

一方で、当初は出演に対して消極的だったものの、私が首都のアスタナから来たことを伝えると、出演を承諾してくださった人もいます。首都から来た人のプロジェクトであるならば、政府などの必要なところに声を届けてくれるはずだと信じてくださったのかもしれません。「この証言映像が希望です」と語られ、核被害者への支援などが改善されることを願われていました。

ーー今回の第2回締約国会議には、カザフスタンの若者も参加しました。

第2回締約国会議のサイドイベントには、カザフスタンから被爆3世のアイゲリム・イェルゲルディが参加して証言を行った。映像:INPS Japan浅霧勝浩

カザフスタンの青年の代表が、今回の会議に参加できたことは画期的なことだを感じています。核兵器廃絶に向けて、青年の参画は非常に重要です。

私は以前、研修プログラムの一環で、ある国の若い外交官を核実験場の跡地へ案内したことがあります。彼らは核軍縮の必要性は感じつつも、核兵器廃絶については考えていないようでした。しかし、核実験被害者の実相について学んだ後に意見を交わすと、核兵器廃絶を本気で考えるようになっていました。

今の青年が将来、各団体や各国の重要な役割を担っていきます。だからこそ若い世代への軍縮教育が大事になってくるのです。

ーー日本の読者へのメッセージをお聞かせください。

セミパラチンスク核実験場における核実験 資料:国立原子力センター
セミパラチンスク核実験場における核実験。1949年から89年まで、ソ連軍により456回の核実験が実施された。 資料:国立原子力センター

日本とカザフスタンは、核被害に苦しんだ過去があるからこそ、核兵器廃絶を実現するための、世界をリードする使命と責任があります。

市民社会の役割は非常に重要です。NGOの草の根の取り組みは、小さいことのように思えるかもしれませんが、川の流れが少しづつ岩を削るように、取り組みを長く続けていくことで必ず変化を起こすと確信します。

現在、世界は核兵器廃絶から逆の方向に向かっているように見えます。しかし、世界を良い方向へと転換するまで、私たちは諦めてはいけません。核兵器をゼロにするその日まで、共に平和への行動を続けましょう。

INPS Japan/『聖教新聞12月8日付を転載」

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|ウクライナ戦争|より悪く、より広範な事態への第一歩か?

【ルンド(スウェーデン)IDN=ジョナサン・パワー】

Portrait of Trotsky/ By LeonidasTheodoropoulos - Own work, CC BY-SA 4.0
Portrait of Trotsky/ By LeonidasTheodoropoulos – Own work, CC BY-SA 4.0

かつてウラジーミル・レーニンに近い立場にあったレフ・トロツキー「あなたは戦争に関心がないかもしれないが、戦争の方ではあなたに関心があるのだ」と言ったとされる。核兵器使用の可能性が取りざたされるこの時代にあって、立ち止まってこの言葉の意味をゆっくり考えてみるべきだ。

対ロシア・対ウクライナ政策について、ジョセフ・バイデン大統領こそがこのことをよく考えてみるべきだと思われる。それはロシア自体に直接挑戦する危険性があるからだ。米国がビル・クリントン、ジョージ・W・ブッシュ、バラク・オバマの歴代政権を通じて北大西洋条約機構(NATO)の境界線を強引に(東に)前進させたのち、バイデン大統領が、外交政策に関する豊かな経験を活かして、その動きに歯止めをかけてくれるものだと期待した人もいただろう。

NATOに加盟する国の数が増えたことで、1991年に冷戦が終結した時点では消滅したと考えられていたロシアと米国および欧州の敵対関係が、このようなレベルにまで拡大したのである。

私たちが生きているうちは国際協調を基調とする平和な時代が続くだろうと考えられていたが、実際には、ロシアが核の威嚇を繰り返し、米国はロシアの国境ぎりぎりまでNATOの境界線を広げようとし、ウクライナへのロシアの軍事介入に激高して経済制裁に訴え、ウクライナの戦争機構に物資を送り続けている。

西側諸国とロシアの間に戦争が起こるという観測もある。トロツキーは正しかったのか? フランスがフランスであり続け、NATOのいかなる軍事行動にも拒否権を発動する限り、そのようなことは起きそうにないが、(ワーテルローの戦いでナポレオン・ボナパルトに勝利したウェリントン公爵が言ったとされる)「とんでもない危機一髪の出来事」になるかもしれない。

ウラジーミル・プーチン大統領に領土的野心はないものと私は見ているが、他国から脅威を受けることはないロシアをめざしてはいるだろう。

米国はいかにロシアを騙したか

それは、ロシアの初の民選大統領であるボリス・エリツィンの時代にまで遡る。エリツィン大統領は時をうまく利用したが、時としてクリントン大統領に利用されることもあった。クリントン大統領はしばしば、あまり体調の良くないエリツィンが疲労し、ウォッカを飲みすぎた夜間を狙って難しい交渉を持ちかけてきた。

Mihail Gorbachev/ Katsuhiro Asagiri
Mihail Gorbachev Photo:Katsuhiro Asagiri、President of INPS Japan.

冷戦終結において西側のパートナーであったソ連のミハイル・ゴルバチョフ大統領は、ブッシュ大統領やドイツのハンス=ディートリッヒ・ゲンシャー外相と、ドイツの再統一を認め、統一ドイツをNATO加盟国とする見返りとして、NATOのこれ以上の東方拡大は行わないという了解を得たと考えていた。

実際、ゴルバチョフ大統領がプーチン大統領と同じように表現したように、ロシア自身がNATO加盟国になり、ロシアが「ヨーロッパの家」に加わる構想が真剣に協議されたこともある。ヘンリー・キッシンジャー、ズビグニュー・ブレジンスキー、ジョージ・ケナンといった米国外交の重鎮たちはみな揃って、NATOをあまりに(東に向かって)遠く、あまりに早急に拡大することでロシアを追い詰めないよう警告していた。

NATO's Eastward Expansion/ Der Spiegel
NATO’s Eastward Expansion/ Der Spiegel

クリントン政権時の国防長官ウィリアム・ペリーもまた、英国紙『ガーディアン』が主催した会議で、「(冷戦の終結によって)米ロ間で得られた利益はロシアではなく米国の行動によって「浪費」されてしまった。」と指摘したうえで、「この数年、非難の大部分はプーチン大統領の行動に向けられてきた。しかし、初期には米国にも非難されるべき点があったと指摘せざるを得ない。我々を悪い方向に導いた最初の行動は、東欧諸国を取り込んだNATOの東方拡大であった。」と語った。ペリー元国防長官はさらに、「困難に陥ったかつての超大国に対して米当局が侮蔑的な態度を取ったことがこの決定の背景にある。」と指摘した。

第二の大きな過ちは、ブッシュ政権が、ロシアからの激しい反発を押し切って、東欧にミサイル防衛システムを導入したことだ。「イランからの核ミサイルから防衛するというのがその正当化理由であった。しかし、イランのミサイルにそのような射程はなく、核兵器を運搬する能力もなかった。ロシアは『ちょっと待ってくれ、それではロシアの防衛能力が弱まる』と抗議した。しかし、米国の決定は、それ自体に利点があるかどうかという観点よりも、『ロシアがどう考えようが関係ないだろう?』という見方からなされてしまった。」

ウクライナの革命を支援

オバマ政権はその後、東欧を拠点とするミサイル防衛システムを変更し、長距離迎撃ミサイルを中距離迎撃ミサイルに置き換えた。ロシアはこれを歓迎したが、ミサイルが依然としてロシアに向けられる可能性があることを指摘し、ミサイルがロシアに向けられないという保証と確約を求めた。

その後、米国とEUは、ウクライナの革命を支援するという決定を下した。しかし当時控えていた選挙は、おそらくロシアに同調する政府を退陣に追い込むものであったため、それを正当化する理由はなかった。また、西側の政策は、ファシストの流れを汲む組織のメンバーである過激派を容認することを意味した。

非常に腐敗した国家の政治的渦中に介入する代わりに、オバマとその後継政権は、米国とロシアが保有する核兵器の削減にエネルギーを集中すべきだった。(オバマはロシアと核軍縮協定を結んだ最後の大統領であったが、それはかなり限定的なものであり、それまで米国によって破棄された核軍縮条約を補うものではなかった)

バイデン大統領は正しいことをして損害を修復し、トロツキーの間違いを証明できるだろうか?彼の現在の政策から判断すると、私はそれを疑い始めている。ウクライナ紛争は、より悪く、より包括的なものへの足がかりになるかもしれない。「戦争は西側諸国を追いかけている」のである。(原文へ

INPS Japan

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太平洋小島嶼国にとって、COP28は気候正義という砂漠の「オアシス」には小さ過ぎる

この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています。

【Global Outlook=ジェームズ・バグワン】

アラブ首長国連邦で開催されたCOP28の成果について熟考を重ねているが、ドバイ砂漠の砂塵が徐々に収まりつつある。

実際のところ「ドバイ合意」は、太平洋の小島嶼開発途上国とそれが代表するコミュニティーにとって何を意味するのだろうか? 小島嶼国連合(AOSIS)が全体会合の場に参加してもいない間に、つまり何の介入もできないうちに、いわゆる合意が採択されてしまったという事実は、争点は常に「化石燃料(Fossil Fuel)」という「Fワード」となるCOPの姿を示している。(

早い段階で「損失と損害」基金に関する議案が採択され、資金拠出が表明されたことは歓迎すべきニュースだが、この決定がもたらすはずの喜びに水を差したのは、基金の運用や最も脆弱で最も責任のない国やコミュニティーによる基金へのアクセス、影響を受けるコミュニティーの尊厳や価値を保つ形で非経済的な損失と損害を算定する方法などに関して、なすべきことがなおも多いということである。最初から、太平洋島嶼国は立場を明確にしていたし、パリ協定が2015年のCOP21で採択されて以降それは明確だった。すなわち、これ以上極端で不可逆的な気候影響を回避するためには、産業革命以前と比較した世界の平均気温の上昇を1.5°C以内に抑えるべきだという立場である。太平洋諸国による“生き延びるために1.5度達成を(1.5 to stay alive)”というスローガンは、パリ会議以降のCOPで毎回掲げられている。今年は太平洋小島嶼国にとって1.5は「レッドライン」だった。「もし」も「しかし」もない。

太平洋地域の教会は、太平洋の人々を代表して政府のこのような姿勢を継続的に支持しており、緩和に関する具体的解決策(化石燃料の段階的廃止)を伴わなければ、適応や「損失と損害」に対する資金提供は「血の代償」であると一貫して主張してきた。2023年のCOP28では、太平洋の政府、教会、市民社会、活動家らが団結してこの立場を主張した。すなわち、化石燃料からの早急かつ公正な移行を実現するとともに、適応のため、ならびに非経済的なものを含めた損失と損害への資金提供のために多額の資金を新たに用意することによって、“生き延びるために1.5度達成を”の「一線を譲らない」ことを主張したのである。

8年前にパリ協定が結ばれてからわれわれの惑星はどのような状況にあるのか、何をなす必要があるのかに関するグローバル・ストックテイク(GST)最終文書は、化石燃料にごく簡単に触れたのみである。これは由々しきことではあるが、移行に関連する抜け穴に比べればまだ可愛いものだ。科学への力強い言及があったことは高く評価された。また、各国が2025年までの「国が決定する貢献」を策定し、より良いものを提出しようとする努力を後押しするマイルストーンを定めた明確な道筋と、技術実施プログラムの設立がそれを補足した。しかし、これらの決定は、気候変動による影響を不釣り合いに大きく受けているAOSISの39の小島嶼開発途上国にとっては、「レッドライン」に及ばないものだった。化石燃料からの自発的かつ非拘束的な「移行」を求め、いかなる誓約や計画、強制力のある改善措置も定めない妥協文書を採択したことで、COP28は、AOSISが「行動と支援における飛躍的な変革」としての「軌道修正」と呼ぶものを提供することはできず、代わりに平常運転を維持することを選んだのである。AOSISによれば、COP28の結果は後退である。

とはいえ、2週間にわたるCOP28の会期中に一部の化石燃料産出国が「化石燃料不拡散条約イニシアチブ」に署名したことは、有意義なことである。気候変動が小島嶼国に、ひいては自国のコミュニティーに及ぼす影響に対処するため、化石燃料経済からの公正な移行に尽力することを約束する国は増え続けており、太平洋地域の周縁に位置する東ティモールや石炭と石油の両方を産出するコロンビアもそれに加わった。COP28終了までに化石燃料不拡散条約イニシアチブに署名した国はすでに12カ国に上り、キャンペーンへの賛同を表明と見なし得る国も増え続けている。

興味深くもCOP28に先立って発表された教皇フランシスコの回勅「ラウダーテ・デウム」(Laudato Deum)は、既存文書(2015年の回勅「ラウダート・シ」)を補完する初めての回勅であり、また、ドバイにおけるCOP28の全体会合に向けた一国(バチカン)の元首としてのメッセージでもあり、化石燃料時代を終わらせることを求めるものだった。バチカンは現在、署名の可能性を視野に入れて化石燃料不拡散条約に関連する文書の検討を行っている。それは、一国家だけでなく世界最大の宗教団体の一つを代表するものとなるため、実現すれば非常に大きな意味を持つ。

信仰・宗教団体は、COPにおいて興味深い動きを発揮し続けている。COP28では「信仰パビリオン」が設置され(主催者によれば費用は約150万ドル)、国連環境計画、ムスリム長老評議会、持続可能な開発のための宗教間対話センター、監督派教会カリフォルニア司教区、その他多くの信仰に基づく団体が資金を提供した。これは、化石燃料不拡散条約の支持など、気候変動対策に重点を置いた大規模な宗教間運動の結果である。COP28の期間中、パビリオンは、気候行動に向けた宗教間の交流と協力を促進する革新的かつ包摂的なスペースとしての役割を果たした。思索のスペースのほか、信仰パビリオンでは、先住民コミュニティーのための気候正義、環境再生の取り組み、損失と損害、気候運動におけるフェミニストや若者のリーダーシップ、グリーンファイナンスといったテーマに関する公開討論会を開催した。

COP28で公表された宗教間合同の呼びかけは、信仰パビリオンでの議論を反映し、政策決定者や意思決定者に次のように呼びかけた。

  • グリーン経済への公正な移行を優先する
  • 化石燃料不拡散条約を採択する
  • 気候交渉において種と生態系の保護を優先する
  • 新規かつ持続的な資金源や緑の気候基金への新たなアクセス方法を提供する
  • 「損失と損害」基金への公正かつ包摂的なアクセスのため、資金源を拡大し、多様化する

信仰心の篤い地域であるがゆえに、COP28における太平洋教会協議会(PCC)の存在は信仰パビリオンを越えて広がった。PCCは、太平洋諸国の代表者やAOSISの交渉者に聖職者による精神的支援を行い、2者間協議、特に化石燃料不拡散条約に関するバチカンとの協議に参加し、活動家らとともに行動を起こした。COP28の議長国やリーダーたちには“生き延びるために1.5度達成を”が確実に守られるよう迫り、最も影響を受けた国々の代表者には、資金拠出、公正、迅速、「永久的」な化石燃料の段階的廃止などを要求する「一線を譲らない」よう求めた。

COP28の成果が期待外れであった一方で、化石燃料不拡散条約イニシアチブや、気候変動と人権について国際司法裁判所の勧告的意見を求める動き(太平洋地域が主導した)が示しているのは、COPの相変わらずの膠着状態を打破して前進する解決策や手段として、気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCCC)の枠外のプロセスに目を向ける国々が増えているということだ。これは、30年にわたるプロセスが気候危機への対処にほとんど成功を収めていないことへの苛立ちというだけでなく、最もリスクにさらされた人々による革新的なアプローチとして認識される必要がある。それは希望と現状への抵抗の兆しであり、Pacific Climate Warriors(太平洋地域の青年たちによる気候変動行動団体)の言葉を借りるなら「われわれは溺れてはいない! 戦っているのだ!」ということを示している。それはドバイにおける、気候正義という砂漠のなかで太平洋のわれわれが持ち得た唯一の青いオアシスだった。

ジェームズ・バグワンは、太平洋教会協議会の事務局長。

INPS Japan

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【国連IDN=タリフ・ディーン】

核攻撃から自らを守るということを口実にして核保有することは正当化できるだろうか?

この議論は「核抑止」概念を下敷きにしている。核兵器は核攻撃を抑止するためのものである――広く問題視されているこの理論はたちまち次のような疑問を惹起する。すなわち、もしウクライナが核保有国だったらロシアはウクライナを攻撃しただろうか?

アフガニスタンやイラクへ侵略、リビアの指導者ムアンマル・アル・カダフィの失脚は、おそらくひとつの事実によって促進されたのだろう。それは、いずれの国も核兵器を持っていなかったか、(リビアのように)核兵器開発を断念していたことである。

北朝鮮のある外交官は、米国や西側諸国による侵略はもしこれらの国々が核武装していれば起こらなかったと指摘しながら、「だからこそ、われわれは核兵器をあきらめてはならないのだ。」と語ったという。

しかし、2017年にノーベル平和賞を受賞した、世界100カ国以上の非政府組織の連合体である「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)は「抑止は証明されていない賭け(ギャンブル)に過ぎない。それによって人類の将来をリスクにさらす理論であり、核兵器を使用すると暗に示唆することが前提になっている。このために世界が核戦争に近づいたことが何度もあった。」と述べている。

ICANによれば、1週間に及び12月1日に終了した核兵器禁止条約第2回締約国会合では、核保有国やその同盟国がこだわっている核抑止のドクトリンについて、人間の安全保障への脅威であり、核軍縮への妨げであるとの主張がなされたという。

核抑止ドクトリンへの非難

ICAN
ICAN

ICANのメリッサ・パーク事務局長は「核禁条約締約国がニューヨーク国連本部での締約国会議で核抑止ドクトリンを非難したことはきわめて重要な動きだ。」と語った。

核抑止がこの地球の生命の将来に対して呈する脅威について国連の条約が何らかの見解を示したことはない。抑止は容認できない。それは核戦争を行うとの威嚇に基づいたものであり、即時に数百万人を殺し、核の冬につながり、(最近の研究によって数十億人の死をもたらすとされる)大規模な飢餓につながる、とパーク事務局長は指摘した。

国際原子力機関(IAEA)で検証・安全保障政策局長をかつて務め、2017年の核兵器禁止条約策定時に検証などの問題で知見を提供したタリク・ラウフ氏は、「同条約の第2回締約国会議や、核兵器が人間に与える影響や条約の地位・運用に関するテーマ別議論があった点で注目すべきものだった。」と語った。

具体的には、被害者支援、環境修復、国際協力・支援、核不拡散条約との補完性、核軍縮の検証に関する科学諮問グループ(SAG)の報告などが議論された。

第2回締約国会議で採択された政治宣言は、概してレトリカルであり行動を強く促す内容ではあったが、具体的な内容には欠けているとラウフ氏は評した。

締約国は、2025年の第3回締約国会議に向け、会期中作業部会を設置し、被害者支援と環境修復のための国際信託基金、締約国の安全保障上の懸念に関する協議プロセスの様式を検討することに合意した。

国際信託基金については、「カナダやドイツ、ノルウェーのような条約反対国が、被害者支援に出資することでイメージアップを図りながら実際には決然と条約に反対しその価値を損なおうとする事態が考えられる。」とラウフ氏は指摘した。

科学諮問グループの設置

Tariq Rauf
Tariq Rauf

第1回締約国会議の重要な成果の一つは、科学諮問グループの設置であった。同グループは、核兵器の現状や開発状況、核兵器のリスク、核兵器の人道的影響、核軍縮及び関連する問題について、第2回締約国会議に有益な報告書を提出した。

公的な情報を利用して作成されたこの報告書は、米国科学者連盟や『原子力科学者紀要』が公表している核弾頭や関連する核物質の現状に関するデータや報告書を下敷きにして、核戦力の現状に関するデータをまとめたものだ、とラウフ氏は指摘した。

多国間の核軍縮交渉を支援するために科学諮問グループが設置されたのは、今回が2度目である。このような科学諮問グループが初めて設置されたのは、1976年、核実験禁止条約の検証および国際的な地震データ交換システムを構想するための科学専門家アドホック・グループが設置された時である。

ラウフ氏は、米国が主導する「核軍縮検証に関する国際パートナーシップ」(IPNDV)やQUADなどの既存の核軍縮検証の取り組みは、核燃料サイクル検証をめぐるIAEAによる既存の慣行や手順を模倣したものであると指摘した。

「しかし、核弾頭廃棄の検証に関する実現可能あるいは実践的な措置に関して国家間の合意はない。実際、米国は、核弾頭廃棄についていかなる国際的監視も認めていない。」とラウフ氏は指摘した。

「すなわち、実務的な理由によって、核保有国が核兵器や関連インフラを廃棄してから条約に加入するという核禁条約第4条1項で定められた方式は問題となっていない。しかし条約が2021年1月に発効してから、実際にそんなことが起きるだろうか。」とラウフ氏は問うた。

国連事務総長は第2回TPNW締約国会議の成功を歓迎

General Assembly Seventy-first session, 59th plenary meeting Appointment of the Secretary-General of the United Nations.
General Assembly Seventy-first session, 59th plenary meeting Appointment of the Secretary-General of the United Nations.

国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、12月1日の声明で核兵器禁止条約第2回締約国会議が成功したことを歓迎した。

グテーレス事務総長は、「締約国が他の利害関係者と協力し、多国間核軍縮交渉の中で何が可能かを示し、世界的な軍縮・不拡散体制を強化するために行っている作業に勇気づけられている。」と指摘したうえで、「採択された政治宣言は核兵器なき世界という私たちの共通の目標に向けた貢献となる。」と歓迎した。

一方、会議では、100を超える非政府組織(NGO)を代表する約700人が、締約国との対話プロセスに参加した。締約国会議自体は、1週間に及ぶより広範な軍縮会議の場ともみなせるもので、パネル討論や文化的展示、コンサート、授賞式など65以上のサイドイベントがニューヨーク国連本部の内外で行われた。西部諸州法律財団のジャッキー・カバッソ事務局長は、「議長の事実概要まとめの合意にすら失敗した8月の核不拡散条約(NPT)再検討会議と比較して、核禁条約の会合は、核戦争の高まる脅威は容認できないものであり、その唯一の解決策は核兵器の完全廃絶しかないという一致した明確な認識を表明した。」と語った。

また、「核禁条約は核保有国の参加なしには実際に核軍縮を達成できないが、現在の締約国は、より広範でグローバルな文脈における有益な情報や分析を行い、拡散するためのプラットフォームとして精力的に活用していることは明らかだ。」と指摘した。

その例として、放射線が女性と女児の健康に及ぼす不釣り合いな影響を含むジェンダー影響に関する報告書や、核兵器、核兵器のリスク、核兵器の人道的影響、核軍縮、および関連問題に関する科学諮問グループの第1回報告書が挙げられる。

科学諮問グループはまた、核戦争の影響に関するあらたな国連の研究を呼びかけた。1980年代末以来、このような包括的な調査はなされていない。

「締約国会議が、『核兵器が人間に与える影響とリスクに関するあらたな科学的証拠に焦点を当て、それらを促進し、核抑止に本来的に伴うリスクや想定をこれらと並べることによって、核抑止を基盤とした安全保障パラダイムに挑戦する』ために、締約国や国際赤十字委員会、ICANやその他の利害関係者と協議し、その結果を2025年3月の第3回締約国会議に提示するよう義務づけたことはきわめて重要だ。」とカバッソ事務局長は語った。

核抑止は「ゴルディアスの結び目」

Jacqueline Cabasso, Executive Director, Western States Legal Foundation. Photo Credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director, INPS Japan.
Jacqueline Cabasso, Executive Director, Western States Legal Foundation. Photo Credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director, INPS Japan.

世界の人口の半数以上が、核兵器と「核抑止」ドクトリンに明確に依存した国家安全保障態勢の下で生きている。カバッソ事務局長は「私の見方では核抑止は核軍縮への道を閉ざしている『ゴルディアスの結び目』のようなものだ。」という。

ラテン語を起源とする「抑止」という言葉は、「恐れおののかせ、恐怖で満たす」ことを意味する。すなわち「威嚇する」ということだ。抑止概念は軍事・産業複合体全体と安全保障国家体制、それらに奉仕するエリートの下敷きになっている、とカバッソ事務局長は語った。

抑止は、その起源である冷戦期を超えて生き延びたイデオロギーであり、核兵器の永続的な保有と、(先行使用も含めた)その使用の威嚇を核保有国が正当化するために使われている。

NPTもTPNWも、核保有国が核の強制力(婉曲的に抑止力と呼ばれる)によって強要される「国家安全保障」という狭い利益よりも、普遍的な人間の安全保障を優先するグローバルなシステムを再構築しようとしない限り、軍縮を達成することはできないという厳しい現実がある。

ラウフ氏はさらに、「私の見方では、核弾頭解体検証の態様を追求しても『いたちごっこ』に終わるだろう。」と指摘したうえで、「私たちにとって不都合な真実は、100%の核弾頭解体検証など不可能だということだ。ミサイルや潜水艦、爆撃機に関しては可能だが、弾頭に関しては不可能なのが現実だ。」と語った。

これは科学者や大学にとっては興味深い知的挑戦かもしれないが、実践的に取れる選択肢ではない。

冷戦の最盛期、最大時の1986年で世界の配備核弾頭数は推定7万374発にも達していたことを考えてみるとよい。1945年以降、これまでに12万5000発以上の核兵器が製造されたとみられるのだ。

現在の世界の核弾頭数は約1万2500発である。かつての7万374発と現在の1万2500発との差である5万8000発に何が起こったのか? 12万5000発中の11万2500発には何が起こったのか? これらは結局、直接的な検証を受けることなく、各国が単独でひっそりと解体したのである。

ラウフは主張する。「核禁条約の締約国は『科学技術専門家国際パネル』を立ち上げて、核弾頭解体の関連側面に関する実践的問題について科学諮問グループに助言するようにしたらどうか。引退した兵器専門家、核兵器を扱っていた元査察官など、核兵器や検証問題の専門家を集めたらよい。」

他方、ICANによると、今回の締約国会議では、同条約が強さを増していることが示されたという。一部のオブザーバー国は近々条約に加入する意志を示したといい、条約に署名、批准あるいは加入した国々の数は国連加盟国の半数を上回ることになる。

インドネシアは、同国議会が条約批准を最近承認したことと発表し、ブラジル・ジブチ・赤道ギニア・モザンビーク・ネパールも近々批准すると発表している。

会議にはまた、オーストラリアやベルギー、ドイツ、ノルウェーなど、NATO諸国や米国の核に防衛上依存している国々も出席した。(原文へ

INPS Japan

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この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています。

【Global Outlook=ハルバート・ウルフ

米国政府は、長々しい国内論争の末に、ウクライナへのクラスター爆弾供与を決断した。この一手により、この残忍な戦争はエスカレーションのはしごをもう1段上ることになる。以前はヘルメットのようなシンプルな軍事物資の供与についても長期にわたる消極的な議論がなされていたが、その後はウクライナへの無制限の防衛を約束。高射砲のような近代兵器の提供、戦車提供の是非を問う激しい議論、次に戦闘機、そして今度は非合法なクラスター爆弾の供与というわけである。(

ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領がクラスター爆弾を繰り返し要求したのは、それが、塹壕、大砲、軍の隊列といった標的に対して軍事的に極めて有効と考えられるからである。ウクライナは、より圧倒的に反転攻撃を行うことを望んでいる。ウクライナがずっと以前から予告している反転攻撃ではあるが、現在も遅々として進まず、コストがかさんでいることが、恐らく米国政府にこの問題をはらむ一歩を踏み出させたのであろう。

2008年にいわゆるオスロ条約が調印され、2010年に発効して以来、クラスター爆弾の生産、貯蔵、委譲、使用は禁止されている。これらの兵器が問題である理由は、戦争終結後も人々の苦しみと破壊をもたらし続けるからである。分散器にはいわゆる子爆弾(ボムリット、ペレットとも呼ばれる)が収容され、それらが標的の上空高くで容器から放出され、落下時に広い範囲に広がる。クラスター爆弾が地上で爆発すると、単独の集中爆発よりはるかに広範囲に被害が及ぶ。このようなクラスター爆弾は、500を超える発射体を含むものもある。

このようなクラスター爆弾は無差別に人を殺害し、また、地面に着弾した場合、常に完全に爆発するとは限らない。爆弾のタイプによって2.5~40%と幅があるが、非常に多くの不発弾が、戦後数十年にわたって民間人を危険にさらすのである。四肢切断や農地の耕作不能が、その結果である。ベトナム戦争中、数億発のクラスター爆弾が森林や水田に落とされ、そのうち何百万発もの不発弾が今なお地上や地中に残されている。

このような兵器がもたらす悲惨な影響ゆえに、オスロ条約はクラスター爆弾を非合法化したのである。国連加盟国の大多数を占める123カ国が条約に署名しているが、米国もウクライナもロシアも署名していない。この非合法なクラスター爆弾を供給するという物議をかもす決定を正当化するために、三つの論拠、あるいは言い訳が用いられている。これらの兵器は軍事的に有効であり、ウクライナに利益をもたらし得る。米国の決定は、この消耗戦で通常兵器、特に砲弾の製造において明らかに重大なボトルネックがあるという事実によって駆り立てられたものだ。クラスター爆弾は、米国で大量に入手可能であり、この砲弾不足を改善することができる。

この決定を擁護するため、支持者らは、ロシアがすでにウクライナの都市空爆で数回にわたってクラスター爆弾を使用していると指摘する。NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は、双方がすでにクラスター爆弾を使用していると述べることによって、米国の発表を大目に見ている。一方が非人道的な戦争を仕掛けたからといって、他方の決定を正当化することができるだろうか? そうすることによって、西側同盟は、彼らが常に強調してきた自らの道徳的優越性に疑いを投げかけている。

ウクライナのクラスター爆弾使用はロシアに占領された自国領のみに限定するのだから、問題は少ないともいえるという主張は、その後幾世代にもわたって不発弾に苦しむ人々への慰めにはほとんどならない。

クラスター爆弾には、砲弾型、ミサイル搭載型、航空機による投下型という三つの異なるタイプがあり、今現在、米国は砲弾型のみ提供している。しかし、この戦争のエスカレーションを見るに、今後のさらなるエスカレーションの可能性を誰が排除できるだろうか? F-16戦闘機の供与を約束した後、その次には航空機による投下型クラスター爆弾の供与へと進むのは、論理的な(軍事的)ステップといえるだろう。

オスロ条約のもとで、締約国は、クラスター爆弾の生産、貯蔵、委譲、使用を行わないことを約束するだけでなく、非締約国によるこれらの兵器の使用を支援しないこと、それ以上に、禁止の強化に貢献することを強く言明している。オスロ条約第21条には、「締約国は、すべての国によるこの条約への参加を得ることを目標として、この条約の締約国でない国に対し、この条約を批准し、受諾し、承認し、又はこれに加入するよう奨励する」と記されている。条約署名国は、他の国々がクラスター爆弾を委譲または使用しないよう説得するべきであり、また、条約によれば「条約の普遍化及び完全な実施を促進するために精力的に努力する」べきである。

異を唱えたのは、人権団体だけではない。英国、カナダ、ニュージーランド、スペインといった米国の同盟国は、米国製クラスター爆弾の移譲に反対する姿勢を明らかにしている。ニューヨーク・タイムズは、「クラスター爆弾に対する幅広い世界規模の非難と、それらが戦争終結後も民間人にもたらす危険を前にすれば、それは、米国ほどのパワーと影響力を持った国家が広めるべきではない兵器だ」と書いた。

批判の提起は、部分的なものにとどまっており、かなり遠慮がちである。バイデン政権は、2023年7月11~12日にビリニュスで開催されたNATOサミットの直前に、ウクライナにクラスター爆弾を供与する意図を発表した。この物議をかもす決定がビリニュスでほとんど議論を引き起こさなかったのは、驚くべきことである。NATO加盟国のほとんどはオスロ条約に署名しており、条約の文言に従って、同盟国に供与をやめるよう勧奨する義務があるはずである。しかし、NATOサミットは、米国の決定に対し、オスロ条約の精神に則って期待されるはずの批判を行うことを避けた。NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は、明確な立場を取ろうとせず、事実上それは米国の自由に任せるということだった。このような振る舞いが、ルールに基づいた秩序という何度も繰り返される美辞麗句とどう一致するというのだろうか? グローバルサウスの多くの国の政府が西側は偽善的だと考えるのも、もっともなことだ。

ドイツでは、政府に対する批判は厳しいものだった。ドイツの日刊紙「南ドイツ新聞」は、フランク=ヴァルター・シュタインマイヤー独大統領を「協定に違反しており、卑怯だ」と書いた。なぜなら、彼は2008年に外務大臣としてオスロ条約に調印し、「世界をより安全な場所にするために一歩近づいた」と評したにも関わらず、彼は米国の発表を擁護し、米国の行動を邪魔したくはないと明言したからである。

どうやら、NATOサミットは米国に対し、米国の決定がオスロ条約に真っ向から反するものだと釘を刺す勇気はなかったようだ。ビリニュスのNATOサミットでは、出席者らはどうやら、結束とウクライナへの継続的な連帯と支援を示したかったようだ。しかし、ウクライナへの連帯とクラスター爆弾禁止条約の軽視は別物である。このエスカレーションの忌まわしい旅はどこへ向かうのだろうか? 核兵器の使用さえも、クレムリンの暗黙的な、また、あからさまなほのめかしを真剣に受け止めるなら、もはやその可能性を除外できない。そして、われわれは、それらを真剣に受け止めなければならないようだ。

ハルバート・ウルフは、国際関係学教授でボン国際軍民転換センター(BICC)元所長。現在は、BICCのシニアフェロー、ドイツのデュースブルグ・エッセン大学の開発平和研究所(INEF: Institut für Entwicklung und Frieden)非常勤上級研究員、ニュージーランドのオタゴ大学・国立平和紛争研究所(NCPACS)研究員を兼務している。SIPRI(ストックホルム国際平和研究所)の科学評議会およびドイツ・マールブルク大学の紛争研究センターでも勤務している。Internationalizing and Privatizing War and Peace (Basingstoke: Palgrave Macmilan, Basingstoke, 2005) の著者。

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COP28、観測史上最も暑い年に化石燃料と向き合う

【IPS国連=ビデオレポート】

2023年は、地球上で記録された約12万5千年間で最も暑い年になりそうだ。

9月と10月は、世界の月別最高気温の衝撃的な記録を更新した。

壊滅的な暴風雨と洪水が発生した。

極端な干ばつと山火事が対照的である。

COP28 Confronts Fossil Fuels During Hottest Year in Recorded History. Credit: IPS

南極の海氷の融解は加速している。

今後10年以内に、北極圏では夏の終わりの海氷が完全に失われる危険性がある。

アマゾンの干ばつと森林伐採は、熱帯雨林をサバンナに変えてしまうかもしれない。

現時点では、2010年比でガス排出量を45%削減するという目標は達成不可能である。

国連気候変動会議(COP)の代表団が今後数週間にわたって再会する際には、気候変動対策を加速させるためのロードマップが切実に求められている。

しかし、大国や裕福な国々は化石燃料を段階的に削減するどころか、実際にはその逆を行っている。

国連事務総長の言葉を借りれば、彼らは「文字通り化石燃料の生産を倍増している」のだ。

米国やカナダを含む炭素排出量上位10カ国では、石炭はインド、石油はサウジアラビア、天然ガスもロシアがトップである。

世界最大の温室効果ガス排出国である中国は、2022年に週に2基の大型石炭発電所の新設を承認した。

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の科学者たちの最善の判断によれば、世界は「すべての人にとって住みやすく持続可能な未来を確保する機会の窓を急速に閉ざしている」。

彼らの予測は不吉である。「この10年間に実行される選択と行動は、現在から数千年にわたり影響を及ぼすだろう。」

彼らは昨年も同じことを言っていたが、当時は耳を傾ける者はほとんどいなかった。

排出量の削減は深く、即座に行われなければならない。それがCOP28の核心である。

私たちの未来のために、指導者たちは化石燃料を段階的に削減し、それを迅速に実行しなければならない。

そして、IPCCの議長が皆に思い出させたように、「我々は温暖化を抑制するために必要なツールとノウハウを持っている。」

いずれにせよ、傾向は明らかであり、必要な行動も明らかである。(原文へ

INPS Japan/IPS UN Bureau

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広島G7への宗教者の見解:地球との平和には化石燃料条約が必要

信仰を基盤とした組織が、核兵器は「最も邪悪」と非難

【国連IDN=ラジーナ・ラヒーム】

12月1日まで1週間かけて開催された核兵器禁止条約第2回締約国会議で、115の信仰を基盤とした組織(FBO)や市民社会組織(CSO)が、気候変動のもたらす災害と荒れ狂う軍事主義の二重の暴力に対して警告を発する共同声明を発表した。

「核兵器は、水や空気、土地、お互いの存在といった、私たちにとって最も大切なものをすべて消し去る力を持って、この愛すべき地球に解き放たれた悪であり、最悪の類の脅威をもたらすものです。」と声明は述べている。

11月29日に発表された声明文にはこうある。「私たちは、宗教指導者、実践者、さまざまな伝統の信者としてここに集い、核兵器に反対し、核兵器のない世界は可能であるだけでなく、核兵器のない未来はすでに実現しつつあるという絶対的な信念を、声を一つにして確認します。」

「私たちは、核兵器禁止条約(TPNW)が存在することに大きな喜びを感じるとともに、第2回締約国会合を機に、TPNWとその支持者である世界中の人々が、正義と平等の世界を目指して活動する勇気と決意、想像力を発揮してきたことを心から讃えたい。私たちは、森林や山、川、海を他の生物と共有するこの美しい地球に暮らしています。」

「しかし、この地球とそこに住まうすべてのものが、核兵器の恐怖にさらされています。世界の道徳的暴挙を、善なるものの再創造へと向かわせることは、信仰を持つ私たちの責任である。この観点から、私たちは昨年の国連総会で、クリーンで健康、持続可能な環境に対する権利が認められたことを歓迎するとともに、今回の締約国会議と同じ週に始まる国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)の成功に向けて祈りを捧げます。

画期的な国際法の制定

The Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons, signed 20 September 2017 by 50 United Nations member states. Credit: UN Photo / Paulo Filgueiras
The Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons, signed 20 September 2017 by 50 United Nations member states. Credit: UN Photo / Paulo Filgueiras

「私たちは、核実験や核使用の恐怖に苦しんだ世界中の被爆者(グローバル・ヒバクシャ)、そして世界をより安全な場所にするために生涯を捧げた何世代もの外交官、宗教指導者、活動家、研究者、芸術家、提唱者といった先人たちに敬意を表します。」「私たちはこの瞬間、この画期的な国際法と、それを普遍化したいとの決意をもって共にいます。そしてこのことが可能なのは、先人たちの努力の賜物であることを知っています。」

「同時に、この活動を未来に引き継ぐ勇気と才気、そして希望を持ち合わせた新世代の若いリーダーたちが急増していることにも勇気づけられています。私たちが誠実さと揺るぎない決意を持ってこの活動に取り組むのは、過去と未来の両方に多くの責務を負っているからです。」

「私たちの宗教的な伝統は広範なもので、何百万人もの人々を代表しています。それぞれがかつてないほど参事発生の恐怖に晒されているこの世界にあって、意味ある善良な人生を追求しようとしています。」

気候変動による大災害と横行する軍事主義という二重の暴力によって、地球と人類が世界的に脅かされている現状を目の当たりにしてもなお、人類が平和、健康、喜び、愛のために存在するという私たちの信念は揺ぎません。」

「核兵器は、水や空気、土地、お互いの存在といった、私にとって最も大切なものをすべて消し去る力を持って、この愛すべき地球に解き放たれた悪であり、最悪の類の脅威をもたらすものです。」

「すべての国にTPNWへの参加を呼びかける一方で、私たちは信仰者のコミュニティーとして、核抑止力を私たちの最も神聖な約束に反する誤ったイデオロギーとして糾弾する役割を真剣に受け止めています。私たちは、いかなる核兵器の使用にも反対するだけでなく、核兵器を使用するための準備や脅迫にも、不道徳なものとして心から反対します。」

前進

「私たちは、今回の会議で締約国に対し、条約第6条および第7条に規定された被害者支援と環境修復を実施する実践的な公約を前進させるよう求めます。私たちは、核兵器の直接的な影響を受けたコミュニティーの人々をケアし、汚染された土地や水を修復するよい担い手として行動するために、自分たちの役割を果たしていきます。」

「私たちは、TPNWが核兵器がもたらす様々な害に対して目を向けていることを歓迎します。私たちの信仰コミュニティーは、多大なる破壊をもたらす核兵器によって最も影響を受けた先住民族に対する独自のコミットメントを重く受け取っています。」

「私たちの信仰が、最も社会から疎外されている人々に対して特別な慈愛と配慮を向けるよう要請しているように、私たちは過去の暴力に対処し、より公正な未来に向けてコミットする意義ある道が同条約によって提示されていることを認識しています。」

「外交官や政策決定者、主唱者、活動家らが今週ニューヨークに集まる中、私たちは、核兵器のない別の世界は可能であると信じ、その新しい世界を実現するために働き、執筆し、街頭を行進し、祈り、唱え、瞑想し、声を上げ続ける世界中の人々の、より大きな輪によって支えられていることを知っています。核兵器は、私たちの身体の滋養とはならず、心に勇敢さを与えることはなく、精神に創造性を与えることはなく、魂にインスピレーションを与えることはありません。」

「核兵器は、私たちの生活に意味を与えてくれるあらゆるものを消滅させ、脅かし、破壊することしかできません。核兵器は、貧困や人種差別、病気、早死になどへの対処に必要な財源を奪います。だが私たちは、核兵器による破壊に直面して、強靭さと活発さを保ち、すべての人々が平和裏に生きる正義と権利を要求して、希望やビジョン、大胆さを奪う核のイデオロギーを拒絶します。まだまだやるべきことはたくさんあるのです。」

「私たちは信仰を持つ者として、核の暴力を正当化し、あるいは、核のイデオロギーの根底にある貪欲さと攻撃性を無視することを選択してきた私たち自身の宗教的伝統の中にある暴力の根源に取り組むことを約束します。私たちは、心の内を深く見つめ、私たち全体の安全に対する脅威に向き合いその脅威を生き延びる強さを手に入れることができるし、またそうするつもりです。」

UN Secretariate Building. Photo: Katsuhiro Asagiri
UN Secretariate Building. Photo: Katsuhiro Asagiri

「私たちは、あらゆる人々にとっての安全、安心、平和が実現しない限り、誰にとっても真の安全、安心、平和はないことを知っています。私たちは、今この時が緊急であること、そして、私たち全員にとって問題となっているのが愛する自然界と人類のコミュニティーであることを認識しています。」

「私たちの運命は絡み合っており、私たちの前に立ちはだかる脅威を無視することはできません。私たちが共有する未来を考えるとき、常に存在する脅威として強い恐怖と不安を感じます。」

「この恐怖は、今の時代に特有のものではありません。巨大な挑戦は、成し遂げるまでは常に不可能に感じられたという教訓に安らぎを得ながら、正義を求める過去の闘いの大胆さとビジョンから勇気を引き出そうではありませんか。」と声明は結ばれた。

次の組織が声明に賛同している。(原文へ

貧困に対抗する市民アクション、米国フレンズ奉仕委員会、アングリカン平和主義者フェローシップ、節制を求める会、ピッツバーグ牧師教会、教皇ヨハネ23世コミュニティー協会、ビーヒューマン、ブルーデンホフ、聖心会総本部、平和教育センター、メキシコ・エキュメニック研究センター、クリスチャン核軍縮キャンペーン、クリスチャンノルウェー評議会、平和を求めるクリスチャンの会、教会と平和:欧州エキュメニカル平和教会ネットワーク、CIDSE:国際カトリック社会正義諸組織連合、スペイン司法平和一般委員会、キリスト・コミュニティ、キリスト・コミュニティ(英国)、ノートルダム・ド・シオン修道会アウグスティノ会総監部、民主主義を活かす会、ドミニカ修道女会:グランドラピッズ・シンシナワドミニカ修道女会、ドロシーデイ・カトリック労働者(ワシントンDC、ドゥビューク)、フランシスコ・リーダーシップ・チーム、友和会(イングランド・スコットランド)、フランシスコ平和センター(アイオワ州クリントン)、フランシスコ修道女会(イエスとマリアの御心の娘たち、米国)、米国メソジスト教会・教会と社会理事会、ハレ・ホオナニ:AMEフェローシップ、ニューヨークヘイワ平和と和解財団、メキシコ・シャローム・バプテスト教会、モントリオール・ノートルダム学院、コモンセンス研究所、聖母マリア修道会・ロレート総本部、ネバダ南部多宗教評議会、国際多文化協力アカデミー(IFCSN)、国際友和会(IFOR)、中米に関する多宗教タスクフォース、マサチューセッツ西部イスラム協会、シアトル公正平和評議会、メノナイト教会正義と平和委員会(スコットランド)、ロレット(国連BVM)、メリノール神父と兄弟たち、メリノールグローバル問題局、聖ドミニコ・メリノール修道女会、英国メソジスト教会、オーストラリア聖心宣教会正義と平和センター、オーストラリア南部多宗教教会、全国障害者サービス豪州全国教会評議会、ネバダ砂漠の経験を伝える会、北太平洋年次会合(クエーカー)、北部フレンズ平和理事会、聖エリザベス慈善修道会平和・正義・生態系保全局、核兵器廃絶オリンピア連合、メキシコ聖公会社会司牧、パックス・クリスティ(アオテアロア・ニュージーランド)、パックス・クリスティ(オーストラリア)、パックス・クリスティ(イングランド・ウェールズ)、パックス・クリスティ(フランス)、パックス・クリスティ(グリーンズバーグ)、パックス・クリスティ・インターナショナル、パックス・クリスティ(アイルランド)、パックス・クリスティ(ロングアイランド)、パックス・クリスティ(マサチューセッツ)、パックス・クリスティ(ニューヨーク州)、パックス・クリスティ(北西太平洋)、パックス・クリスティ(フィリピン)、パックス・クリスティ(クイーンズランド)、パックス・クリスティ(スコットランド)、パックス・クリスティ(ウビラ・アスブル)、アオテアロア平和運動、アフリカの平和を人々に、国民のための人民連合、平和と開発(PEFENAP)、ピッツバーグ地域パックス・クリスティ、プラム村実践センター(フランス)、プレスビテリアン平和フェローシップ・豪州クエーカー、英国クエーカー、ラレイフレンズ会合(クエーカー)、平和を求める宗教、豪州ロータリー、サレジオ宣教会、塩水機構アクションネットワーク、ノートルダム学校修道女会、トーゴ塩と光の会、SFフレンズ会合平和と社会問題、シェパルトン多宗教ネットワーク、シンシナティ慈善修道女会、米州慈悲修道女会正義問題チーム、アッシジ聖フランシスコ修道女会、クリントン(アイオワ州)聖フランシスコ修道女会、キャロンデレ(ロサンゼルス)聖ヨゼフ修道女会、スプリングフィールド(マサチューセッツ州)聖ヨゼフ修道女会、尊き血の修道女会(オハイオ州デイトン)、創価学会インタナショナル、南サリッシュフレンズ礼拝集団、聖マグダラ・マリア教区、社会正義と平和委員会(ピッツバーグ)、パックス・クリスティ(スザンナ教区、マサチューセッツ州デダム)、聖ザビエル大学(パラヤムコッタイ)、ティルネルヴェリ(インド)、世界主の教会、カナダプレスビテリアン教会、トラスト:気候アクション戦略家、公正な経済社会を求めるユニタリアン普遍主義者、連合改革教会(英国)、連合宗教イニシアチブビジョンGRAMインターナショナル、核兵器なき世界を求める声(連合宗教イニシアチブ)、豪州ウェルスプリングコミュニティ、ワシントン西部友和会、アマゾンの羽、世界教会評議会、ヨガコミュニティ

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なぜ戦争なのか、どうやって平和を生み出すか―北欧の観点

【レイキャビク(アイスランド)IDN=ロワナ・ヴィール】

イスラエル・パレスチナ紛争に並んで、ウクライナ戦争を背景としてフィンランドとスウェーデンの北大西洋条約機構(NATO)加盟決定に世界のメディアの注目が集まっているが、デンマーク・フィンランド・アイスランド・ノルウェー・スウェーデン・ファロー諸島・グリーンランド・オーランド諸島を構成国・地域とする「北欧評議会」の閣僚会議とそのビジョンが北欧を世界で最も持続可能で統合された地域にしようとしていることはあまり注目されていない。

北欧評議会閣僚会議の今年の議長国はアイスランドが務めている。同国は昨年、翌年の議長国就任に備えて「平和への力としての北欧地域」と題するプログラムを創出した。北欧評議会閣僚会議は2019年には「新たな北欧の平和―北欧の平和・紛争解決の取り組み」を生み出した。後者は、「イマジン・フォーラム:平和のための北欧の連帯」で発言したアナイン・ヘーグマンとイザベル・ブラムセンが執筆したものだ。フォーラムは今年の10月10・11両日、レイキャビクのハルパ会議センターで開催された。

ヘーグマンの発表は「なぜ戦争なのか、どうやって平和を生み出すか」と題されたもので、平和研究におけるコミュニケーションを活発化する必要について論じ、ブラムセンは、トルコや中国・シリア・アルメニアのような国々やロシアですら、仲介者としてふるまうようになってきており、かつては見られなかったことだと述べた。

「経済平和研究所」によって14年連続で「世界で最も平和な国」に選ばれたアイスランドでこの会議が開かれたことはおそらく適切だっただろう。アイスランドのカトリン・ヤコブスドッティル首相は「各地で戦争が行われているときに平和について語るのは容易ではない」とフォーラムの開会あいさつで述べた。

SDGsが根本

左派緑運動党のヤコブスドッティル首相は、気候問題と資源確保との間で摩擦が起こっているし、アフガニスタンやイランで女性の権利が大幅に奪われていると指摘した。そして、「平和がなければ気候関連活動など起こせない」と述べた。

基調講演を行った国連SDGグループのアミナ・J・モハメド国連事務次長は「SDGsにより真剣に取り組まねばならない。SDGsなくしては平和は常にリスクに晒されている」と語った。「2030年に向けた目標のわずか15%を達成しただけだ。」

ノルウェーのアン・ベーテ・トヴィネレイム国際開発相(兼北欧協力相)は、「気候変動と移住問題が平和問題に複雑性を増した」とし、SDGsが和平プロセスの根本だと述べた。「これが重要な点だ」と彼女は付け加えた。

アイスランドでトヴィネレイムと同じ職務にあたっているギュドムンドゥール・インギ・グドブランドソン(北欧協力相に加え、社会問題・労働市場相も務める)は「もし気候変動と平和についてより多くの情報を手にしたならば、解決策が見出せるだろう。ある国では環境難民が増えている。環境保護が平和促進のカギを握る。」

モハマド国連事務次長は「チャドでは難民問題の厳しさが増している」と指摘し、他方、ノルウェー国際問題研究所のトビアス・エツォルドは、気候変動のために難民が増加しているが、他方で気候難民は通常、国内移動か陸上で国境越えしていると指摘した。「気候変動の影響を受けている国と紛争の影響を受けている国との間には重なりがある。」

スウェーデンのシンクタンクストックホルム国際平和研究所(SIPRI)のジャニー・リルジャは、信頼が鍵を握っており、平和が全体主義的であったり、冷淡であったりすることもあると指摘した。彼女は、「紛争後の問題解決においては、援助対象を絞り込んだ国の方が、そうでない国に比べて平和を維持する傾向にある。」と指摘し、開発援助の役割は精査される必要があり、SIPRIは援助の構成に注目していると述べた。

フィンランドのタンペレ平和研究所のマルコ・レーティは、グローバル・サウスに重点を置いてきた平和研究において、ヨーロッパは盲点であったと指摘した。「ロシアの対ウクライナ戦争は戦間期の状況の問題を欧州に投げかけた。平和は輸出できるものではない。」ジャニー・リルジャはこの発言を捉えて、「私たちがグローバル・サウスとそこでの暴力に集中していなければ、指標を見ることができたはずです」と、ロシアのウクライナ侵攻を念頭に述べた。

人権活動家もまたイマジン・フォーラムに積極的に参加した。MBE 国際市民社会行動ネットワーク(ICAN)の代表で「安全保障におけるリーダーシップを求める女性連合」の指導者でもあるナラギ・アンダーリニは、過激主義の時代に生きることについて言及した。水が多国籍資本によって保有され、アイデンティティの兵器化が進んでいる。民族にしても宗教にしても、他者を「制する」アイデンティティが重視される時代だ。「我々は平和に投資しているとはいえない。米国では、平和よりも戦争に多く投資されている」と彼女は述べた。

「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」のブルーノ・スタグノ・ウガルテによれば、集団安全保障措置は人権に十分な目を向けておらず、我々は自らの責任を解除してしまっているが、早期警戒こそがもっとも効果的な人権擁護のツールであると述べた。人権侵害が誤った方向に向かい、協議と並んで、正義をもたらすための活動は不十分であるが、小規模国は時として大国が無視するような問題に敢然と挑んでいる。「たとえば、ガンビアのような小国がミャンマーを国際刑事裁判所に訴えたりしている」。

女性の不在

協議テーブルにおける女性の不在の問題は何度も取り上げられた。モハマド国連事務次長は、ウクライナ戦争に関して「男性と会話しているテーブルのどこに女性の姿があるのか? 壁はどこにあるのか?」と疑問を呈した。アフガニスタン女性のことを示唆しつつ彼女は「アフガニスタンの女性の声がもっと聴かれるべきだ」と語った。

長きにわたってアフガニスタンで活動しているマボウバ・セラジは同国の女性の状況について語った。女子はもはや学校に行くことが許されていないが、「タリバン幹部の娘たちはドーハで学校に通っている。タリバンの教育は制裁対象にすべきだ。アフガニスタンではまるで『ジェンダーのアパルトヘイト』がしかれている」と「アフガン女性ネットワーク」の議長を務めるセラジは述べた。

会議の終幕にあたって、国際問題研究所所長でイマジン・フォーラムの主催者の一人であるのピア・ハンソンは、今回の会議は成功であったかどうかと問われた。

「ええ。そう思います。私たちがやろうとしていたことは、学者、学生、利害関係者、政府関係者、外交官など多様な人々を集めることでした。多様な会議を目指し、実際それに成功したと思います。また、北欧の平和研究所のネットワーク化の種をまきたいとも思っていました。もし『北欧モデル』というようなものがあるとすれば、それをさらに発展させる可能性を探りたかったからです。いま私たちが考えるべき問題は何なのか、それが将来にどうつながるのかを考えたかったのです。問題は複雑ですから」。

まだ表に出てきていない解決策もあるのかと問われたハンソンはこう答えた。「行く先には難題が待ち構え、世界はますます複雑化し、あらゆる紛争状況において私たちがなすことに希望を持つことは難しいかもしれません。しかし、さまざまな観点から平和を検討してみるならば、世界の紛争地で何が起きているのかということだけではなく、北欧社会の状況も見てみること、そして平和な社会づくりのために何ができるのかを考えてみることが重要なのです。しかし、解決策はいまここにあるのでしょうか? 私は、解決策はあると思っています。私たちは、より深掘りしていける道を見つけたのです。問題に関わるすべての人々がそうできるようにする必要があるのです。」(原文へ

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【国連IPS=ナウリーン・ホセイン】

核兵器禁止条約(TPNW)の文言は、核兵器がもたらす深刻な人道的影響について明確に焦点を当てている。TPNWはまた、「核兵器の全面的な廃絶の要請に示された人道の諸原則の推進における公共の良心の役割」を認めている。

この公共の良心は、核実験がもたらす結果について私たちがすでに知っている知識によって形成されてきた。第二次世界大戦末期の広島と長崎への原爆投下は、核軍縮を主張する歴史的な理由である。それから数十年が経過したが、原爆投下を生き延びた日本の被爆者(HIBAKUSHA)たちは、核兵器の拡散を止めるよう世界の指導者たちに訴え続けている。一方、広島・長崎にとどまらず、世界各地で行われた核実験の影響を受けた被爆2世、3世の体験は、核実験が世代を超えて及ぼす影響を明確に思い起こさせるものである。

第2回TPNW締約国会議は、加盟国やNGOが条約を支持し、被害を受けたコミュニティーとの連帯を表明する機会であったが、被害を受けた人々が自らの経験を直接証言できるのは、市民社会が主催するサイドイベントを通じてであった。このようなサイドイベントを開催することで、核被爆者を巡るナラティブを拡大し、議論をより包括的なものにすることができる。

11月30日、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)は、ピースボートや核時代平和財団などのパートナー団体とともに、核被爆者フォーラムを開催した。国連教会センターで開催されたこのサイドイベントでは、世界各地の被爆コミュニティーから集まった人々が、核実験の体験や今日に続く核実験がもたらした影響について語り合った。

キリバス政府代表とともにこのサイドイベントに参加した青年代表のタラエム・タウカロさんによれば、このフォーラムは、とりわけ「このような機会がめったにない」コミュニティーにとって、核実験に関する共通の経験や意見、アイデアを共有できる場となった。キリバス共和国は、20世紀半ばに英米軍によって実施された核実験の影響を受けた太平洋の島嶼国の一つである。同共和国の一部であるキリスィマスィ島では、1956年から62年にかけて、複数回の核実験が行われたことがある。

Taraem Taukaro, nuclear survivors forum. Credit: Katsuhiro Asagiri

核実験を生き抜いたタウカロさんの母親は、放射性降下物による被曝が原因と思われる健康問題に苦しんでいる。また被爆の影響は次世代に及んでおり、タウカロさんの妹は生まれつき耳が聞こえない。このような影響を受けたことは、タウカロさんの家族にとって大きな試練である。直接的な影響のひとつは、核実験を生き抜いたキリバス先住民が健康問題に悩まされ、環境と生物多様性に損失を被ったことだ。彼らの子孫は現在、同じ問題に直面している。

太平洋教会会議の活動家であるベディ・ラクレさんは、核実験がマーシャル諸島と南太平洋地域に与えた影響について見解を述べた。米軍は1946年から58年にかけて、ビキニ環礁を中心にこの地域で核実験を行った。ラクレさんが指摘したように、多くの太平洋地域コミュニティーでは、癌、移住、生態系汚染など、核実験の影響が今も続いている。

「私たちの健康や 生活の質、土地や祖先、文化とのつながりが失われており、多くの痛みとトラウマがあります。」とラクレさんは語った。

フォーラムに参加した被爆者について、ラクレさんこう付け加えた。「私はまた、彼らのレジリエンス(回復力)や強さを強調したいのです。脆弱性を持つことは弱さではありません。核兵器のないより良い世界のために、今も昔も立ち上がっている人たちを称賛したい。具体的には、非核兵器地帯を持ち、初の非核憲法(パラオ共和国)を制定したことです。」

若者たちに対しては、核実験の影響について教育し、歴史と文化との結びつきがどのように変化してきたかを、失われたものも含めて文脈的に説明する、より大きな責任がある。

Bedi Racule, nuclear survivors forum. Filmed and Edited by Katsuhiro Asagiri, President of INPS Japan

ラクレさんは、「フォーラムの中で、被害を受けたコミュニティーから諮問グループの設立を求める声が上がった。」と指摘したうえで、「TPNWの核心は、核兵器に対する人道的な対応であり、過去に何が起こったかを知り、それに対する正義を求め、このような経験を二度と誰にもさせないようにすることにあります。」と語った。

タウカロさんは、「英国政府を含む国際社会は、キリスィマスィとその近隣の島々で被害を受けたコミュニティーに対する補償の一環として、医療資源や環境浄化のための資金提供や支援をもっと行うべきだ。」と語った。

ラクレさんは異なる見解を示した。「核の正義を訴える私たちのネットワークでは、核の問題が植民地化や自決の問題と本質的に結びついていることはよく知られています。自由で独立した主権国家である太平洋の国々でさえ、地政学的な利害関係や援助ドナーの資金提供のために、自分たちの要求を表明することが難しいのです。開発援助は、政治的な自由を奪うだけでなく、経済的、財政的、社会的な自由を奪い、何が起こっているのかを左右するものだと私たちは考えています。」と語った。

 核兵器廃絶は、私たちの未来の世代が平和に暮らし、まともな生活を送れるようにするため、早急に実現されなければならない。核実験によって不釣り合いな影響を受け、その放射性降下物の中で生きてきた先住民族の声を、新しいミレニアムを超えて、尊重し、高めていかなければならない。(原文へ

INPS Japan/IPS UN Bureau

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この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています。

【Global Outlook=シャーム・サラン 】

ウクライナ戦争は、ロシアとウクライナとの間ではなく、ロシアと米国率いるNATOとの間の戦争である。ロシアが表明した「特別軍事作戦」の目的は、今後NATOがこれ以上ロシア国境に向かって拡大するのを防ぐことである。また、この軍事作戦を通して欧州安全保障構造の改変を余儀なくさせ、自国にとって不可欠な安全保障上の利益を受け入れさせることも望んでいる。これは、ウクライナ侵攻の直前にロシアが米国に提示し、米国が拒絶した一連の要求からも十分明確に見て取れる。(

この見解が正しいとするなら、これまでのところ、この戦争でロシアはその目的を一つも達成していないという結論に至らざるを得ない。ロシアが今後数週間、数カ月の間に成し遂げ得る戦果がまだあろうとも、このことに変わりはない。NATOを国境から遠ざけるどころか、すでにフィンランドが中立の立場を捨ててNATOの完全な加盟国になるという状況に陥っている。スウェーデンもNATO加盟を申請し、200年以上にわたる中立政策を手放そうとしている。加盟はトルコの反対により棚上げされているが、一時的である可能性が高い。(7月10日、トルコのエルドアン大統領はスウェーデンのNATO加盟を容認した:INPSJ)

ウクライナ自身も、今後NATO加盟に近づいていくと思われる。さらに、ロシアが新たな欧州安全保障秩序に自国の居場所を見いだす見込みは、当面の間、非現実的と思われる。

近頃エフゲニー・プリゴジンと彼のワグネル・グループがウラジーミル・プーチン大統領の政権に対して起こした反乱を受けて、状況はロシアにとって一層複雑かつ困難なものになっているかもしれない。

このような状況を背景に、ウクライナの平和を回復する戦略は、ロシアにとって名誉ある退路、あるいは救出戦略を見いだせるかどうかにかかっている。敵対行為をやめることは双方にとって有益であろう。

  • 第1に、この武力戦争に巻き込まれた、罪のない男性、女性、子どもたちに降りかかっている計り知れない損失と損害を止めること。人道的要求を考慮してはいけないだろうか?
  • 第2に、アフリカや世界各地で最も脆弱な立場に置かれる人々を苦しめている、エネルギーと食料のサプライチェーンのさらなる破壊を防ぐこと。
  • 第3に、米国や欧州のウクライナ支援者や庇護者の間で「支援疲れ」が顕在化しつつある。ウクライナは、際限のない永続的な支援に頼ることはできない。

最終的かつ包括的な解決は現時点ではあり得ず、恐らく今後長期にわたってもあり得ないであろうことは事実である。領土保全と主権の問題は、微妙かつ複雑である。しかし、いくつかの妥協要素を模索することはできるかもしれない。

第1は、ロシアによるウクライナ侵攻が始まった2022年2月24日時点の原状を回復することである。その場合、クリミアとドネツク州の一部がロシアの占領下に残されるが、この最初の一歩はそれぞれの領土権の主張を損なうものとはならないだろう。そのうえでロシアとウクライナが対話を行い、領土問題に関する交渉の地ならしをすれば良い。ミンスク3が目標となり得る。

第2は、ロシアを敗戦国として扱い、新たな欧州安全保障構造から排除しようとするのは短絡的であり、自滅行為であると認識することである。ロシアは、核能力を含む大きな軍事力を保持しており、今後も重要な主要国としての地位にとどまるだろう。最終的にロシアを包含することなく、欧州に恒久的な平和と安定をもたらすことは不可能である。

第3は、緊張が高まり対立が深まっているときでも、関与を維持する必要がある。フランスのエマニュエル・マクロン大統領とドイツのオラフ・ショルツ首相がプーチン大統領とある程度の接触を保っていたことは重要だったが、現在はそれも途絶えている。中国は、仲介案を提示して踏み込んでいるが、それもまだ結果を出していない。アフリカ諸国のグループも当事国に働きかけ、ブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ大統領はトルコとともに役割を果たすことについて言及している。

外交成果をもたらそうとする全ての努力は歓迎である。G20も、グループとして役割を果たせる可能性があるが、この問題については深刻な分裂がある。

ほとんどの討論の場が閉じられている現在、この戦争を止めるための欧州の話し合いは、どこで行うことができるのだろうか?

欧州安全保障協力機構(OSCE)には、ロシアとウクライナを含む全ての関係国が参加している。欧州における安全保障と協力に関する新たな会議を設置して、冷戦時代にデタントの盛り上がりを示した歴史的な1975年ヘルシンキ宣言の新たな取り決めを策定することも考えられる。そのような会議では、ロシアの中核的利益を守ると同時に、ウクライナの復興と再建の道を切り開く新たな欧州安全保障秩序を策定することも可能であろう。ロシアとウクライナの間に残る領土問題を解決するプロセスを開始することもできるだろう。

核兵器使用の脅威は、ウクライナ戦争のダイナミクスを構成する要素として突出した重要性を帯びるようになっているが、これを減じることが重要である。これは、現在進行中の、あるいは今後開始されるさまざまな仲裁努力において、重要課題とするべきである。核の魔物が再び現れ、全世界に壊滅的な結果をもたらしかねない状況を許すことは、誰の利益にもならない。その意味で、ザポリージャ原子力発電所の安全を確保する早期の合意が不可欠である。

「物事は、行動が結果を生む時点まで熟さなければならない」という中国のことわざがある。今がその時点であると、筆者は信じる。

シャーム・サランは元インド外務次官であり、政策研究センターのシニアフェローを務めている。本稿は、2023年7月2~3日に北京で開催された世界平和フォーラムでの発表に基づいている。

INPS Japan

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