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米移民法改正に新たなはずみ

【シアトルIPS=ピーター・コンスタンチーニ】

1月4日、第110連邦議会が開会。民主党が両院を支配するなか、移民をめぐる議論で風向きが変化している。

議会開会を前にアリゾナ州の共和党ジョン・マケイン上院議員とマサチューセッツ州民主党エドワード・ケネディ上院議員をはじめとする超党派議員団が、新しい移民法案の策定を開始。不法滞在者が市民権を得るまでの滞在期間の短縮、臨時雇用制度などを策定中である。

 民主党指導部は包括的移民法改正を視野に入れ、最低賃金の引き上げを最初に実行するだろう。

米移民局弁護士協会は、米国土安全保障省傘下の移民税関執行局(ICE)が12月中旬にスイフト社の精肉工場で一斉捜査を行った見せしめ的摘発を批判。低賃金の未熟練労働者の需要は年間50万人であるのに、現行法では毎年5,000人にしか永住ビザを発給していないと指摘した。

IPSは2人の専門家に意見を聞いた。
 
 グアダラハラ大学のデュランド(Jorge Durand)博士は、プリンストン大学と共同でメキシコ移民プロジェクトを実施。過去20年間のメキシコ移民6,000人の追跡調査を行っている。

デュランド博士は、メキシコの労働者は従来アメリカとメキシコを頻繁に往来していたが、国境警備が厳しくなり、不法入国の金銭報酬と危険性が増し、アメリカに入国後は長く留まることになったと指摘。米政府は不法移民にビザを提供するなどの見返りを与えて帰国を促す策を講じたほうがよい。あと20年もすればメキシコ経済も堅調に転じ、人口増加に歯止めがかかって出国者が減少するだろう。アメリカの移民問題の中心は中国、バングラデシュ、アフリカ諸国に変わっていくだろうと述べた。

アメリカ唯一のナショナルセンター、 AFL-CIO (アメリカ労働総同盟・産業別組合会議)の移民労働者プログラム担当のアヴェンダノ(Ana Avendaňo)氏は、労働者と地域社会に利する「フェアな移民」が必要と指摘。移民には賃金や保障を与えずに働かせるなど、不正なシステムから利益を上げる雇用者を厳格に取り締まるべきだと述べた。

AFL-CIOは、移民に米国人労働者と同一の権利を認めない臨時雇用制度には反対し、他の労組、NGOと協力して議会でロビー活動を行っている。しかし、移民法関係者の意識も足並みが揃っていないという。

議会多数派を民主党が占めるなかで、風向きが変わった移民法改正議論ついて報告する。

翻訳/サマリー=IPS Japan 

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|米国|移民改革の期待をくじくフェンス

|中国|歴史の教訓に学ぶ、ただし選択的に

【北京IPS=アントアネタ・ペツロヴァ】

世界の次の超大国になる準備を整えている中国が、歴史の教訓を学ぼうと他の大国の盛衰を検討し始め

た。ただし、省かれている1章がある。中国自身の歴史だ。

中国経済はこの20年にわたる市場改革を通じて急速に成熟し、今や世界4位を占めるまでに至った。しかし一方で、10億人を超す国民に教えられている中国の近代史の多くは訂正されぬまま、依然として共産主義の教義に支配されている。中国の世界における影響力が高まる中、専門家は、検閲された歴史を基盤に国を育てることの影響について深く考え始めている。

「文化大革命」の発生原因とその結末や、3,000万人の命を奪ったと言われている「大躍進運動」中の大飢饉をはじめ、中国の近代史の多くは、検閲されあるいは一般に知らされぬままである。研究者による精査は継続されているものの、彼らの研究の多くは香港や台湾で発表されるに留まり、中にはまったく公表されないものもある。

中国共産党は、政治的失敗を精査されることをおそれ、自国の過去の苦難よりは将来の偉大さについて国民の関心を呼ぼうとするばかりだ。12月中国中央テレビで放映されたドキュメンタリー新番組「諸大国の台頭」もまさにそうした意図であった。

番組は、15世紀の新興ポルトガル帝国から現在世界を支配する米国に至るまで世界の大国9カ国の台頭を検証して、こうした国を成功に導いた要因を明らかにしようという内容だった。中国はこの9カ国に含まれていなかったが、番組は、現在の中国指導者が国民に訴えたいと願っているソフトパワーの重要性を説くものであった。

ドキュメンタリー番組は、中国共産党の中央委員会の委託であったにもかかわらず、歴史の描写からはマルクス主義の視点がまったく排除されており、世界の諸大国がいかにしてソフトパワーを構築したかを重点的に描いている。

従来の中国の歴史本のように帝国の圧政を強調するのではなく、番組はそれら帝国が理念、制度、文化の魅力によって他に影響を及ぼすその力を掘り下げて検討している。

このシリーズ番組のチーフ・プロデューサーRen Xue’anは、中国日報の取材に応えて、「中国が世界に門戸を開く中、私たちは世界についてもっと合理的な理解を身につけることが必要です」と述べている。

ドキュメンタリーは、英国とその産業革命の紹介に当たっては、経済発展における同国の偉大な科学者ニュートンとワットならびに経済学の天才アダム・スミスの貢献に時間を割いている。米国を扱った部分では、台湾との再統一を目指すことを誓っている中国共産党自身の中核理念である国の結束に功績を上げたフランクリン・ルーズベルト大統領に焦点を当てている。

12部構成のドキュメンタリーは高視聴率を上げ、中国中央電視台(CCTV、中央テレビ)で2回連続して放映された後、現在では地方テレビネットワーク各局で放映されている。

「世界の大国の台頭にとって理念や哲学、文化がいかに大切であったかを見ることはすばらしい」とインターネット掲示板に匿名で書き込んだあるネチズンは、「しかしそれら大国が恐ろしい軍事力なしに大国になったと考えるのは間違いだ」と記している。

もうひとりのネチズンは、「従順に知識を深めることがすべてと考える上で儒教の伝統の影響を排除する必要がある。米国や日本の例から明らかなように、技術と科学を全面的に推進することによってのみ、国家は大きな権力を達成することができる」と書いている。

中国の将来の台頭を見据えたこの番組は、国のソフトパワーがいかに重要であり得るか、あるいは経済力ははたして軍事力なしに実現可能なのかどうかについて十分な議論を巻き起こした。ただし真正な歴史の欠如またはその重要性について意見の分かれる問題を提起することはなかった。

中国が最後に自らの自己分析をテレビで放映したのは、18年も前のことになる。1988年に放映された6部構成のテレビシリーズ「黄河哀歌」は、放送後直ちに中国全土にセンセーションを巻き起こし、その結果放送禁止となった。

論議を呼んだこのシリーズは、黄河の緩やかな不変の流れに形作られた中国文明が極度に安定した抑圧的な「封建的」政治文化を生み出したのだと示唆し、西側世界はこれと対照的に、科学と民主主義に教え導かれたものとして描き、そして変革を呼びかけた。

中国共産党の保守派の多くは、「黄河哀歌」放送禁止後の激しい議論が、学生の民主化運動に影響を及ぼし、後に天安門広場でのデモと政治改革の要求にまで至らしめたと考えている。中国共産党長老のひとりWang Zhenは、このドキュメンタリーを「文化的ニヒリズム」と呼び、全面的な西洋化を提唱したとして番組を非難したと言われている。

「諸大国の台頭」は、こうした公認されない領域にまでは踏み出していない。チーフ・プロデューサーRenの言葉を借りれば、ドキュメンタリーは、大国を構成する要素と大国に至った過程とを明らかにする「答探し」にすぎない。

過去の亡霊を追い払い、厄介な過去の説明を試みることは、ドキュメンタリーで推奨されていることではない。有識者は、共産党は依然、過去を問題にすることで古傷を開き、政治改革への要求を再び呼び起こす結果になることをおそれていると見ている。

中国の歴史書におけるナショナリズムを批判する論文を掲載したことで2006年初頭に週刊紙『氷点』の編集長を解任された李大同は、「物事に疑問を呈し始めれば、それがどのようなことに行き着くか誰もわからない。ひとつの疑問が別の疑問を生み、尽きることはない」と述べている。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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ネパールに逃げ込むチベットの人々

|エジプト|労働者の反乱、功を奏する

【マハラ・エル・コブラIPS=エマド・メカイ】

エジプト北西部にあるアル・マハラ繊維公社の労働者は、会長のボーナス支払い停止決定に抗議し5日間のストを決行した。ムバラク政権の度重なる圧力で弱体化していた労働組合にとって、ストライキは1988年以来初のことである。

労働者は、年額35ドルという小額ボーナスの支払いを停止するのは、世界銀行の民営化提案に従い入札企業の便を図るためだとして、直ちに抗議行動を開始。集会では、数千人の労働者が会長の名前が書かれた棺を担ぎ、会長退陣と役員/業績の調査を要求した。

 いつもは乱暴なエジプト警察も、デモ参加者の数に圧倒されたのか鎮圧行動に出ることなく、政府の介入もなかった。メディアも同事件を大きく取り上げ、反政府スローガンを叫び、棺を担いだ労働者の写真が新聞の一面を飾った。

同デモは、労働活動家/労働者にとって様々な問題を提起するまたとない機会となった。

マハラ工場で働くサイード・アブダラ氏は、「羊毛の屑で汚染された空気で喘息になった。我慢にも限界がある」と抗議。アイマン・タハ氏は、「政府は、ストはイスラム同胞団が指揮していると批判しているが、同胞団メンバーは組合選挙の前に逮捕され誰も残っていない。彼らは自らの行動を省みることなく、何でもイスラム同胞団のせいにする」と語った。

また別の労働者は、「経営側は厳しい労働により肝臓病になった同僚を首にしたが、本来なら保健または年金を給付すべきだ」と指摘。多くの労働者は、劣悪な労働条件、低賃金、管理者と労働者の給与格差に不満の声を上げた。

労働者が一様に批判するのが不正である。彼らは、「管理者は数百万ドルで会社の資産/土地を売却したが、労働者には何の保障もない。経営トップは、正規の手続き無しに親族/友人を経営に参加させている」と批判した。

ストの結果、政府は約束したボーナスの支払いを認めると共に提起された問題への対応を約束した。ある労働者は、最初からデモに参加すれば良かったと残念がっている。

政府に大幅な譲歩を認めさせたエジプト繊維公社のストライキについて報告する。(原文へ

INPS Japan

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|アフガニスタン|タリバン勢力の復活にNATOが苦戦

【カブールIPS=サイード・ザブリ(Pajhwork Afgan News)】

トニー・ブレア英首相は、北大西洋条約機構(NATO)軍によるイスラム原理主義勢力、タリバン掃討作戦の任務は着実に成功へ近づいてきていると主張。しかし、この驚くべき発言は実際のアフガニスタンの現場で実証する必要があるだろう。

ブレア首相はNATO首脳会議が閉幕した29日、ラトビアの首都リガで報道陣に対し「アフガンでのNATOの任務について(現在はまだ大きな成果は見られないが)今後必ず目に見える成果をもたらすだろう」と楽観的見方を示した。

 この記者会見のわずか数時間前、南カブールの道路で反政府勢力による待ち伏せ攻撃を受けたNATO軍兵士2名が負傷。会見ではこの銃撃戦に関する詳細は明らかにされなかったが、最近アフガニスタンの首都カブールやその周辺地域で連合軍の車列を狙った襲撃が多発している。

昨年12月、米軍が(イラクへの派兵増員により)アフガニスタンで活動を展開する4,000人の兵士を撤退させることを発表して以降、多国籍軍・アフガニスタン国軍とタリバンの間での攻撃は激化している。米軍から指揮権を移譲したカナダ・英国・オランダ、さらにNATO主導の国際治安支援部隊ISAF(International Security Assistance Force)は、南部ヘルマンド州やカンダハール州のタリバン拠点地域で戦闘を行っている。

月曜日(27日)、警備の厳しいカンダハール空港でNATO軍車列への自動車による自爆攻撃でカナダ兵2名が死亡した。これによりカナダ人の犠牲者数は今年に入って36人になった。

このような自爆テロ行為が行われたのは、アフガニスタンの30年にわたる紛争でも初めてのことである。今年は102件を超える自爆テロが発生したが、これによる死者のほとんどは民間人であった(このうち外国人兵士の死亡者数は17人)。

木曜日(30日)には、ヘルマンド州でタリバン兵との戦闘中にNATO軍兵士1名が負傷。軍のスポークスマンは1名のISAF兵士が(近接支援機と軍の支援を受けた)軍事行動の際に軽症を負ったことを確認した。

2001年に米国主導の連合軍によりカブールからの撤退を余儀なくされたタリバンは、アフガン政権の奪還と海外からの治安部隊の崩壊を目指して、僅か5年で勢力を回復させた。この戦闘により、今年は約4,000人もの死亡者が出たと見られている(死亡者数の4分の1は戦争による被害を最も多く受けている南部の民間人)。

アフガニスタンのハミド・カルザイ大統領は、同国全土に3万2,000人もISAF兵士を配備することでテコ入れを図った。主な派遣国の内訳は、米国が1万1,800人、英国が6,000人、ドイツが2,700人、カナダが2,500人、オランダが2,000人、イタリアが1,800人、フランスが975人である。

しかし、(域外活動として初めてとなる)NATOが指揮するアフガニスタンでの軍事任務は、NATO26の加盟国の立場を真っ二つに分けることになった。フランス・スペイン・イタリア・ドイツなどの加盟国はタリバン掃討作戦で自国の兵士を犠牲にすることを拒否した。タリバンによる外国人兵士の犠牲者は今年、英国人兵士36人を含めおよそ100人に上っている。

NATO加盟各国は、アフガニスタンの復興を目指した平和維持活動の役割においてそれぞれが異なる立場をとっている。このため治安の悪化する同国の各地域では復興支援がほとんど進んでいない状況である。この加盟各国が独自に決めた自国部隊の展開地域や行動規範が障害となり、首都カブールではNATOの機能が麻痺している。

この長い戦争を体験するなか、アフガニスタンの人々は同国の治安回復や資金面の援助などの実現に向けた西側諸国の復興支援活動に大きな期待を抱いた。しかし、部隊の配備や航空機の移動範囲の決定をめぐるNATO加盟国の間の論争は、アフガンの人々を落胆させる結果となった。

ジャーナリストで『タリバン~イスラム原理主義の戦士たち~』の著者であるアハメド・ラシッド氏は「カブール周辺の紛争多発地域で暮らす住民のNATOに対するイメージは決して良くない」と述べた。
 
 NATOは今回の首脳会議で、フランス・スペイン・イタリア・ドイツの首脳から、緊急時に限り南部の治安への関与を行うとする僅かな譲歩を得ることができた。しかし、この『緊急時』に関する詳細な定義も未だに不透明なままである。

比較的平和な西部地域を拠点としているスペイン軍がこれまで妥協することはなかったが、今回の会議でホセ・ルイス・ロドリゲス・サパテロ首相は、緊急時における負傷したNATO軍兵士を避難させる手段として同国のヘリを用意することを申し出た(ただし激しい戦闘が続く南部での使用は認めていない)。

ドイツのアンゲラ・メルケル首相は、現在アフガニスタンで展開する2,900の強力部隊の要員をさらに増やすことを求めたNATOの要請を拒否した。しかし同首相は、時限的なものとして(情勢の不安定な)南部への支援を確約した。

フランスのジャック・シラク大統領は、アフガン上空に多数の戦闘機やヘリを配備すること、さらに1つの大隊をカブールから派遣させることに同意した。一方イタリアのロマノ・プロディ首相は「兵士を西部から最も治安の悪い南部や西部に移動させるかどうかについては、臨機応変に決断していくつもりだ」と述べた。

アフガンに要員を派遣しているその他の国々も、大幅な増派を表明した。活動規制の緩和については、オランダ・ルーマニアの派遣部隊はすべての規制を解除するものと報じられている。一方、チェコ・デンマーク・ハンガリー・ギリシャも規制を緩める方向で同意している。

NATOは、各国に対して派遣中の部隊への活動制限の緩和と大規模な増員を求めるなかで、今回は僅かではあるが動きが見られたことを高く評価した。

NATO幹部のJaap de Hoof Scheffer氏は「アフガニスタンに駐留する3万2,000人の兵士のうち2万人が戦闘地域・非戦闘地域での軍事行動が可能である」と述べたものの、未だに軍の要求を満たしてはいないことを認めた。アフガンの現状を考えると、ブレア首相の『勝利予測』はあまりにも楽観的過ぎると言わざるを得ない。(この記事はPajhwork Afgan Newsの同意を得て発表されたものである)(原文へ

翻訳=IPS Japan

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タリバンの復権
タリバンの命令で閉鎖される学校
NATOはタリバンを制圧できるか

「世界と議会」2006年12月号

特集:地方分権のゆくえ

■論文
「第二次地方分権改革に何が問われているのか」

新藤宗幸(千葉大学法経学部教授)

■議員に聞く
逢坂誠二(衆議院議員)

■解説
地方交付税改革

■咢堂政経懇話会
「日本の課題と展望」
片山虎之助(参議院自由民主党幹事長)

■IPS特約
市場取引は森林破壊を防げるか?

1961年創刊の「世界と議会では、国の内外を問わず、政治、経済、社会、教育などの問題を取り上げ、特に議会政治の在り方や、
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|チリ|ピノチェト元大統領、裁かれることなく91歳で死亡

【サンティアゴIPS=グスタヴォ・ゴンザレス】

20世紀のチリの独裁者ピノチェトは10日午後、裁きを受けることなく心不全のため陸軍病院で死去した。人々には人権侵害と汚職にまみれた政治家という記憶だけが残ることとなった。 

91歳で亡くなったピノチェトは人権侵害で4件、汚職裁判で2件の被告となっていた。選挙で選出された社会主義のアジェンデ政権を崩壊させた1973年9月11日のクーデターにおいて、ピノチェトは追従しながら、狡猾に立ち回った。

 その後17年間にわたり鉄拳で国を支配し、死亡・行方不明者は3,000人、拷問を受けたのは少なくとも3万5,000人、亡命者は80万人に上る。 

ピノチェトは決して罪を認めようとはしなかった。秘密警察最高幹部としてコンドル作戦を実行したマヌエル・コントレラスは、ピノチェトは人権侵害の罪をかぶった側近に不実であると非難している。 

権力掌握以来、ネオリベラルな自由主義経済を取り入れ、社会保障、医療、教育を民営化し、軍に保護された独裁政権を守る憲法体制を作り上げた。このメカニズムと健康の理由で訴追を免れ続けたピノチェトも、ようやく法廷に向き合わなければならないところであった。 

10日になくなったアウグスト・ピノチェト前大統領が国民に残した傷について報告する。

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

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|アルゼンチン|司法がコンドルを捕らえる

|ソマリア|平和支援軍投入案に内戦激化の懸念

【ワシントンIPS=ジム・ローブ】

米ブッシュ政権が、内戦の進行するソマリアに「平和支援」軍を投入し、1992年以来実行されているソマリアへの武器禁輸措置をこの軍隊に対してのみ緩和するという内容の国連安保理決議案を成立させようとしている。

しかし、ソマリア暫定連邦政府(TFG)を実質的に支援することを目的としたこの軍隊派遣には、同国をほぼ実効支配しているイスラム法廷連合(ICU)が強く反対している。

 この決議案は、もともと2年前にアフリカ連合(AU)等が提案していたものであったが、昨夏にICUが諸軍閥を破って支配的な勢力になるにつれ、米国がこれに関心を示したものである。

だが、米議会調査局(CRS)の東アフリカ問題専門家Ted Dagne氏は、軍隊が派遣されれば戦闘はむしろ激化すると指摘する。また、TFGが暫定首都のバイドア以外を支配できていない状況の下では、ICUを巻き込んだ和平交渉をやらない限り意味がないと語る。

TFGはソマリア国民に反感を持たれている。なぜなら、TFGが、イスラム勢力を敵視する隣国エチオピアの代理人だと見られているからだ。一説には、エチオピアはすでに自国軍2,000~8,000人をソマリアに投入している。
 
 これに対抗して、エリトリアもICU支援のための軍隊を投入しており、ソマリア内戦は、エチオピア・エリトリアの代理戦争の様相も呈している。国連が11月頭に出したレポートによれば、92年に始まったソマリアへの武器禁輸のルールを、エチオピア・エリトリア両国を含む10カ国が破っているという。

昨夏にICUが勝利を収めて以来、ICUとTFGとの間で何度か和平交渉が持たれているが、ほとんど進展はない。次は12月15日に交渉が予定されている。

交渉がうまくいかないひとつの理由は、米国の強硬な姿勢である。とくに、国務省のアフリカ担当、ジェンデイ・フレイザー次官補が対ICU強硬論を主張している。ICUはアルカイダとつながりを持っている、というのが強硬派の主張のひとつだ。

ソマリア内戦への国際社会の対応について報告する。(原文へ)

翻訳/サマリー=IPS Japan
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ソマリアから脱出するジャーナリスト

ビルマに新たなHIV・結核・マラリア基金援助

【バンコクIPS=マルワン・マカン・マルカール】 

長年にわたり軍事政権下で苦しむビルマの国民に、命にかかわる3大感染症対策のための新たな援助基金が供給されることとなった。この基金により、国際社会と秘密主義の軍事政府との関与が深まるとの期待が寄せられている。 

なによりもまず、エイズ、結核およびマラ3リア対策のための1億ドルのこの基金「3疾病基金」により、「ビルマへの人道援助は問題の多いこの東南アジアの国の政治とは切り離すべき」との一部西側諸国政府間で広がっている考えが試されることになる。

国連の監督の下、来年初頭から実施に移される基金には、欧州連合、オーストラリア、英国、オランダ、ノルウェーおよびスウェーデンが支援を寄せている。基金は、ビルマ政府が規制を課したことから2005年8月に9,840万ドル相当の活動が停止に追い込まれた世界エイズ・マラリア・結核対策基金(世界基金)の撤退後の空白を埋めることとなる。 

「人道上の理由から、国際社会はビルマ人民の窮状を無視できない」と欧州委員会のビルマ外交代表のフリードリッヒ・ハンブルガー氏はIPSの取材に応え電子メールで伝えてきた。「十分に計画を練れば人道支援も貧困者や恵まれない立場にある人々のもとに必ず届くと確信している」と述べた。 

欧州は、3疾病基金に対しては規制や妨害を受けないとの確約をビルマ(軍事政権はミャンマーと称する)から得ている、とハンブルガー氏は次のように言い添えた。「私たちは、政府の関連当局から、重要な資源がそれらをもっとも必要としている人々のもとに届くよう、また効率的に届けられるよう条件を整備するとの約束を取り付けている」 

3疾病基金は、また、先週ビルマのKyaw Myint保健相と国連プロジェクトサービス機関高官の間で交わされた覚書に盛り込まれた特別条項によって、世界基金よりも前進を図ることができると期待されている。 

「作業を進めるための全般的な政治的枠組みを整えた。大きな相違点のひとつとして、今回の取り組みでは『3疾病基金』を通じてプログラムを実施する事業者に対し郡区レベルでの医療制度との連携が義務付けられている」と国連のビルマ担当調整官のチャールズ・ペトリー氏はラングーンから電話で取材に応えて述べた。「実際に地元の医療当局と協力して活動しなければならない」 

報道によれば、覚書は、民族紛争下にある国境付近の地域も含め、基金の監視に当たる担当官にはビルマ全土へのアクセスも保証している。ジュネーブに本拠を置く世界基金の場合はこれほど恵まれた状況にはなかった。ビルマ政府は農村地域で世界基金の一部プログラムに取り組むNGOに対して厳しい移動制限を課していた。他の人道救援組織にも同様の規制が課せられ、フランスに本拠を置く国境なき医師団(MSF)など一部組織は今年初め撤退を余儀なくされた。 

エイズ、結核およびマラリアの感染率が地域の中でももっとも高い国のひとつであるビルマへの新たな基金供与に対しては、世界基金の撤退に大きな打撃を受けた地元コミュニティと協力する国際人道援助組織からも期待が寄せられている。 

ワールドビジョン・ビルマ事務所のHIVプログラム顧問キー・ミン博士はIPSの取材に応えて、「(3疾病基金)は抗HIV療法や必須医薬品で結核、マラリアの治療を受けている人々のニーズを満たすだろう。こうした病気に苦しむ人々にも生きる希望が出てきた」と述べた。 

実際、キリスト教精神に基づく国際救援機関であるワールド・ビジョンは、世界基金が抗議して撤退してから、HIVプログラムの財源削減に苦しんでいるNGOのひとつである。なかでも、ビルマ西部のエーヤワディ管区とチン州のHIV陽性者を対象とした在宅ケア・プログラムおよびカウンセリング・サービスが財政難にある。 

キー・ミン博士は、「ちょうどプログラムを開始したばかりのところで、資金の拠出が停止されてしまった。プログラムは潜在的移民と一般住民を対象とし、受益者は15万人にのぼるだろうと推定していた」と説明した。 

地元草の根の取り組みを強化するため無償資金協力の対象としている120カ国以上の開発途上国のひとつに世界基金がビルマを選んだことは、命に関わる3大感染症の蔓延を考えると時宜を得たものだった。世界基金が撤退という前例のない措置をとってから1年、ビルマの医療情勢に改善は見られていないとさまざまな報告は伝えている。 

国連エイズ合同計画(UNAIDS)その他保健機関によれば、人口5,000万のビルマのHIV感染率は東南アジアで一番高く、成人感染率は1.3~2.2%、HIV陽性者は36~61万人にのぼる。 

加えて、ニューヨークに本拠を置くシンクタンク、外交問題評議会は、2005年の調査報告書で、ビルマは、西はカザフスタンから東はベトナム南部までの広域におけるあらゆる変種のHIVの蔓延源になっていると明らかにしている。 

結核についても状況は同様に厳しい。ビルマの年間新規感染者数は9万7,000人にのぼり、世界保健機関(WHO)の統計では、結核罹患率がもっとも高い22カ国の中に入っている。ジュネーブに本拠を置くWHOが現在直面している厄介な問題は、多剤耐性結核(MDRTB)の流行である。ビルマでは、新規感染率が4%と、5.3%の中国に次ぐ東アジア第2位の深刻な状況となっている。 

マラリアも感染が広がっており、昨年WHOが実施した調査によれば、2003年に71万6,000症例と、アジアでもっとも深刻な国のひとつとなっている。2001年には66万1,463症例であった。 

しかしこうした深刻な状況にあっても軍事政権は強硬な姿勢を崩しておらず、ビルマの少数民族が暮らす地域の感染症の影響を受けやすいコミュニティに対する保健プログラムの提供を認めていない、と野党グループは述べている。彼らは、感染症に苦しむ人々に希望と救いを提供する保健活動の取り組みをビルマ政府がいかに阻害しているかを示すものとして、依然実施されている移動制限を指摘する。 

1991年に軍事政権によって禁止された政党「新社会のための民主党」の外交担当広報官ゾー・ミン氏は、「NGOや人道援助機関の国境地帯への移動を阻止するための移動制限が依然として実施されている」と語っている。

ミン氏は、「『3疾病基金』が自由に活動するには地元パートナーが必要だ。しかし軍事政権は、コミュニティに基盤を置く地域社会組織(CBO)は住民の政治意識を高めることになる懸念があるとして、CBOをおそれている」と取材に応えて説明した。「最近、(野党)NLD(国民民主連盟)との政治的提携関係を理由に、HVI/AIDS活動家が逮捕された」(原文へ

翻訳=IPS Japan

「世界と議会」2006年11月号

特集:少子高齢社会の政治

■論文
「人生百年を支える政策と社会」
樋口恵子(東京家政大学名誉教授)

■論文「少子化する高齢社会の政治課題」
金子勇(北海道大学院教授)

■論文
「これからの子育て支援策と求められる政治の決断」
橘秀徳(衆議院議員政策秘書) 

■議員に聞く
野田聖子(衆議院議員)

■IPS特約
汚い水で毎日4000人の子どもが死亡

世界と議会
1961年創刊の「世界と議会では、国の内外を問わず、政治、経済、社会、教育などの問題を取り上げ、特に議会政治の在り方や、
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アフリカに友人と影響力を持つ中国

【北京IPS=アントアネタ・ベツロヴァ】

アフリカの腐敗した政権を支援していると非難されながらも、豊富な資源を持つアフリカ大陸からの石油や原材料の輸入を推進している中国が、アフリカとの取引を正当化する大規模な外交フォーラムを主催している。

今週開催される2日間の北京首脳会議には、アフリカの48カ国から指導者や政府関係者が出席する予定で、この会議はアフリカの後援者としての中国の役割を強調する意味合いを持つ。中国政府は外交上の得点を稼ぎ、貿易の機会を得ながら、中国の開発モデルと対外政策信条を広めようとしている。

「今回の会議は中国とアフリカの歴史における画期的な出来事だ」と、中国外交部のXu Jinghuアフリカ局長はマスコミに対して11月3~5日の会議について述べた。

このフォーラムは正式には中国とアフリカの通商50周年を祝ったものだが、2国間貿易の急成長と協力関係の強化は過去6年ほどのものであり、それが会議の背景となっている。

増え続ける原材料の需要に後押しされ、中国はアフリカに重要な存在感を築き上げ、昨年末までに67億2,000万ドルの投資を行い、港、鉄道、道路、ダムを建設してきた。長期低利貸付と多額の援助金によって、急成長する中国経済のために、アフリカの石油や貴金属などの天然資源を確保してきた。


中国は昨年3,800万トンの石油をアフリカから輸入したが、これは中国の石油の総輸入量の30%に達している。2国間貿易は2000年の100億ドルから昨年には400億ドルへと急激に増大している。

だがこのとどまるところを知らない貿易拡大は、スーダンのような国の人権侵害を見逃しているとして非難され、「新植民地主義」の勢力だと表現して批判するものもいる。

中国はスーダン最大の投資国として、さらに重要な石油の取引先として、戦火で疲弊した国の暴力的な政権に制裁を加えようとする国連の努力を妨げようとしてきた。

8月には、9月30日に委託任務が終了するアフリカ連合からダルフールにおける平和維持の任務を国連が継承するのを認める国連決議の投票を、中国政府は棄権した。

中国のスーダンへの関与が、過去3年間に20万人の命を奪った虐殺をやめさせようとする国際的な取り組みを妨害しているという非難を、中国は退けている。それに反論して、中国政府は内政不干渉の外交方針を守り、自決権を尊重していると主張する。

中国商務省の魏建国次官は「中国の投資がアフリカの経済成長と雇用拡大、生活水準の向上に貢献している」と先週記者団に語った。「中国からの投資は地方の人々に恩恵をもたらし、歓迎されている」。

アフリカ大陸における中国の関与を評価する際に、中国を新植民地主義と非難することは、「冷戦時の思考方法」だと、中国社会科学院の国際問題専門家Shen Jiruは主張し、中国が最近100億元の元建て外債を減免したことを指摘して、「これが植民地主義といえるだろうか」という。

だが世界銀行や国際通貨基金などの多国間機関は、最近債務免除を受けた貧困国への中国からの債務が、再びこうした国を苦しめることになるのを懸念している。

この点に関して正当性を主張するよりも、中国政府は中国・アフリカ首脳会議が、アフリカの指導者に中国政府への支持をじかに表明する公的なフォーラムの場となることを期待している。

「われわれは何も失うものはない。帝国主義者の鎖から解き放たれたいだけだ」とジンバブエのロバート・ムガベ大統領が語ったと、新華社通信は伝えている。

これだけ多くのアフリカの指導者が一堂に会する機会は、中国が開催した初めての大規模なイベントであり、外交的な成功だと中国は見なしている。アフリカ連合の53カ国のうち5カ国は中国と外交関係を持たずに台湾との関係を維持しているが、オブザーバーを派遣するように招待された。

北京にある中国メディア大学のXu Tiebing教授によると、この会議は、中国とアフリカの48カ国との国連で互いを支持するという「暗黙の了解」を確固たるものにするだろう。

「国際的な舞台におけるアフリカ諸国の支援は、特に国連において、中国にとって重要である」と同教授はいう。

中国は、2,300万人が住む台湾は中国の領土であり、台湾が正式に独立を宣言すれば武力によって併合すると明言している。過去5年間に中国は金銭的誘引と外交的手段でアフリカの台湾同盟国に対して同盟関係を中国政府に切り替えるように説得してきた。

2000年に第1回の中国・アフリカ協力フォーラムの首脳会議を北京で主催して以来、アフリカの台湾との外交同盟国の数は8カ国から5カ国に減った。その5カ国とは、ブルキナファソ、スワジランド、マラウィ、ガンビア、サントメ・プリンシペである。

「国際的な影響力が増大していることから、中国はこの利害の戦いの勝利者になりつつある」と中国社会科学院のアフリカ専門家He Wenpingはいう。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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