ホーム ブログ ページ 291

|スーダン|拷問を受けたとの申し立てで死刑判決に疑念

【ハルツームIPS=ブレイク・エヴァンス・プリッチャード】

2006年にスーダンの著名ジャーナリスト、ムハンマド・タハを殺害した容疑で2007年11月に有罪判決が下った10人について、弁護団が自白は拷問によって強要されたものだとし、免訴を主張。しかし3月8日、控訴が棄却された。 

日刊紙「al-Wifaq」の編集長だったタハ氏は、預言者ムハンマドの出自に疑問を呈した記事を発表したとして2005年に冒涜的な言動を非難されていた。後にこうした容疑は撤回されたものの、死刑を求める一般の声は高かった。 

拷問の申し立ては困難を伴う。人権団体で活動する医師がIPSの取材に述べたように、「刑務所も裁判所も、拷問が立証されないように、身体検査を遅らせる」さらに身体検査は担当裁判官が任命する公立病院の者が実施することが義務付けられており、人権団体や独立した病院による検査は容認されない。

 10人の主任弁護士カメル・オマール氏は、こうした拷問の申し立てを理由に逮捕され、1晩拘留された。彼はIPSの取材に、訴訟について発言を拒んでいる。 

しかし、昨年まで弁護団の一員だったムハンマド・シェリフ氏も、拷問が行われたことは明らかと、IPSの取材に対し述べている。 

スーダンの多くの人権派弁護士が、拷問はスーダンの深刻な問題と主張している。だが、依頼人に対する守秘義務からこうした主張を立証する具体的事例を明らかにできない場合が多い。ロンドンに本拠を置く「拷問に反対するスーダン組織(Sudan Organization Against Torture)」も、「スーダンの拷問者は法執行組織の一員であるため、一般に法の網を逃れる」と主張している。 

IPSの取材に応えた政府機関「人権諮問委員会」の報告者アブドゥール・モネイム・オスマン氏は、「スーダンは拷問の件数がもっとも少ない国のひとつ。人権派弁護士の主張は政治的目的のためであり、国際社会の同情を集めるためのものだ」と話し、タハ事件の公正さを主張した。 

アムネスティ・インターナショナルの最新の報告書によれば、スーダンはアフリカで死刑執行件数が最多であり、2006年には65人以上が死刑に処せられた。 

他の死刑判決についても疑念が生じるスーダンの拷問慣行について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 


関連記事: 
独裁政権を支持するEUに不満の声

|オーストラリア|地位を確立したアボリジニのラジオ局

【ブリスベンIPS=カリンガ・セレヴィラトネ】

オーストラリアの大都市でアボリジニの運営による初のコミュニティラジオ放送局「ブリスベン先住民メディア協会」(Brisbane Indigenous Media Association: BIMA)がこの4月5日で開局15周年を迎えた。

通称「98.9FM」がライセンスを取得し、開局にこぎ着けた1993年当時は、ブリスベンにはアボリジニよりもキリスト教徒の人口が多いとして放送ライセンスの優先権を主張するキリスト教団体に対し、主要メディアを通じて発言権が確保されている彼らよりも、アボリジニこそ発言の場を得る権利があると放送当局を説得しなければならなかった。

 今や98.9FMは、非主流のコミュニティ放送というよりは主流ラジオにとなった。

このラジオ放送局の創設者でゼネラルマネジャーのTiga Bayles氏は、IPSの取材に応えて「私たちはたまたま黒人で、たまたまコミュニティラジオであるが、ブリスベンの主流ラジオ業界のステークホルダーだと自認している。週当たりの白人のリスナーも12万人にのぼる」と述べた。

白人にもアボリジニにも人気のあるカントリーミュージックが、この24時間放送のラジオ局の売り物である。ブリスベンのグリフィス大学のマイケル・メドーズ教授も「カントリーミュージックが先住民族と非先住民族の2つのコミュニティの架橋となっている」とし、このラジオ局の成功要因に挙げている。

98.9FMではこの他、午前6時から午後8時まで毎時間5分間のアボリジニ・コミュニティに関連するニュースを放送している。Bayles氏が会長を務める全国先住民族ニュースサービス(National Indigenous News Service?NINS)が制作するニュースは、先住民族の視点からニュースを伝えるもので、オーストラリア全国およそ150のコミュニティラジオ放送局にも衛星で配信されている。

Bayles氏はまた、週5日1時間のトーク番組を生放送し、これもNINSを通じて全国に配信。「白人リスナーに黒人の体験を伝えている」と述べている。

メドーズ教授がラジオを中心にクイーンズランド州のアボリジニ・メディアの視聴者調査を行ったところ、このトーク番組は医療従事者や公務員の白人専門職のリスナーも多く、先住民族の考え方を知ることのできる貴重な機会と評価が高かった。

「人民の声」として先住民族社会と外部社会を結ぶ重要な役割を果たすコミュニティラジオについて報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩

IPS Japan日本の国会議員連盟で活動紹介を行う

【東京IPS=浅霧勝浩】

IPS Japanは、3月25日に東京の衆議院第一議員会館において開催された途上国貧困問題解決国会議員連盟の総会に招かれ、IPSについてのプレゼンテーションを行った。同国会議員連盟は、2007年に海部俊樹元首相、同議連名誉総裁によって設立されたもので、現在総裁は鳩山邦夫法務大臣が務めている。 

総会に先立ち、欧州議会の超党派国会議員連盟”Friedns of IPS”を代表して、パスカリーナ・ナポレターノEU議員より海部・鳩山両氏に対してレターが送られた。ナポレターノ議員はIPSを推薦したそのレターの中で、「声なき声」に光をさす同通信社を通じて、欧州連合の議員と方向性を同じくする日本の国会議員の間で新たな対話のチャンネルが開けることを切に希望している旨を伝えた。 

議連会合では、まずIPS Japanの浅霧勝浩理事長よりInter Press Serviceの設立理念、歴史、活動概要、そして同通信社特有のユニークな国際支援体制について説明がなされた。IPSは、開発問題に関わる様々な機関(国連諸機関、各国政府、開発援助機関、市民社会組織、民間財団)による支援体制が確立されている。浅霧理事長は、また、プレゼンテーションの中で、IPSグループがTICAD、洞爺湖G8サミットを通じて日本政府に対する初めてのメディア協力を実施する予定であることに言及し、5月下旬にラメシュ・ジャウラ欧州総局長が外務省の招聘でTICAD取材に来日すること、そしてIPS総裁も今年来日予定であることを述べた。 

広中和歌子同議連幹事長、元環境庁長官からは、日本の議連や市民社会組織を含む、世界各地において厳しい境遇にある人々のために活動している様々な活動が今後IPSによって報道されることを期待する旨の発言がなされた。広中幹事長は、日本の国会においても、言葉の壁とメディア報道についての議論が高まっており、日本国内の様々な社会各層において活発に活動が展開されている各種団体・個人によるイニシャティブについても積極的に国際社会に発信していく必要性が議論されている現状を披露した。その上で広中幹事長は、IPS Japanが、今後の活動を通じて、日本国内のメディアが殆ど取り上げてこなかった(開発問題に真摯に取り組んできた)人々と海外のIPS報道を通じて既に繋がっている世界の方向性を同じくする人々を「橋渡しする」役割を期待したい旨の発言があった。 

上田勇同議連事務局長からは、今年の議連の活動計画に言及し、5月の月例会合にIPS欧州総局長、そして後の会合でIPS総裁をゲストに迎え、IPSグループとのさらなる意見交換の機会を持つことによって、同議員連盟とIPSの将来に向けた連携の可能性について引き続き協議をしたい旨の対案がなされ、一同の了承を得た。 

また、4月3日には浅霧理事長らが再び同議員連盟の4月月例会議に招待された。同議連は、5月下旬のTICADに向けてアフリカ7カ国から在京大使をゲストに迎え、意見交換の機会を設けた。

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩

|米国|拷問の合法化(クミ・ナイドゥー)

0

【IPSコラム=クミ・ナイドゥー】

恐ろしいことに、民主主義と自由を標榜するはずの政府が拷問を擁護するようになり、拷問が再び公共の場で議論されるようになったと、CIVICUS(市民参加のための世界同盟)の前事務局長クミ・ナイドゥは書いている。この記事の中で著者は、ブッシュ大統領が最近、拷問を違法とする法案に拒否権を発動し、テロリスト容疑者に対する拷問の使用を全面的に認め、米国当局者による拷問の実施を実質的に容認した、と書いている。この決定は、CIA長官マイケル・ヘイデンが、CIAは水責めの技術を被拘禁者に使用したと最近証言したことを受けてのものである。米国が公に拷問を認め、容認することは、米国が1984年に批准した拷問禁止条約の効力を弱め、政治的自由と被拘束者の善処を提唱してきた多くの米国の活動家や進歩的政治家の前向きな活動を損なうものである。このアプローチが送るメッセージは明確だ。正当化できるのであれば、拷問は問題ない(ほら、アメリカ人だってやっているじゃないか!)。

ジョージ・ブッシュ米大統領は最近、テロ容疑者に対する拷問の使用を全面的に認め、拷問を違法とする法案に拒否権を発動し、米当局者による拷問の実践を実質的に容認した。

2008年の情報認可法は、CIAを含むすべての政府機関に尋問に関する米陸軍野戦教範を適用するものであった。現在、国防総省にのみ適用されているこのマニュアルは、水責め(擬似溺死)を含む特定の拷問・虐待行為を禁止し、一連の合法的な尋問方法を認めている。

今回の決定は、CIAのマイケル・ヘイデン長官が最近、CIAが被拘束者に水責めの技術を使用したと証言したこと、グアンタナモ収容所の囚人に対する拷問の疑いが続いていること、2004年にイラクのアブグレイブ刑務所での米兵による被拘束者への虐待の衝撃写真が公表されたことを受けて行われたものである。

米国は1988年4月18日に1984年の「拷問禁止条約」を批准し、63番目締約国となった。この条約は、拷問を特に違法とし、罰を与えるため、あるいは情報を引き出すために、「肉体的であれ精神的であれ、激しい痛みや苦痛を意図的に人に与える行為」、「そうした痛みや苦痛が、公務員や公的資格で行動する他の者によって、あるいはその扇動によって、あるいは同意や黙認の下に与えられる場合」と定義している。

当時の米国大統領ロナルド・レーガンは、「この条約の批准に助言と同意を与えることによって、米国上院は、拷問という忌まわしい行為を終わらせたいという我々の願いを明確に示すだろう」と述べている。

残念ながら、現在、米国(および他の多くの条約署名国)は、テロとの戦いという文脈で拷問を正当化しているように見える。テロとの戦いが、拷問からの自由といった基本的人権を守ることを保証するのではなく、むしろそのような行為を正当化することを許しているのだ。

南アフリカでは、アパルトヘイトの時代、テロという概念は、政権による広範かつ組織的な人権侵害の道具として使われた。しかし、アパルトヘイト国家は、その残忍さゆえに、残酷な尋問方法の使用を公表すれば、国際的なスポットライトを浴びることになると考え、その使用を公に否定していたのである。

民主主義国家が、自国の民主主義の欠陥や世界的地位の深刻な低下にもかかわらず、公に拷問を認め、容認することは、拷問禁止条約の効力を弱め、政治的自由と被拘束者の良い待遇を提唱した多くの米国の活動家や進歩的政治家の前向きな活動を損なうものである。このアプローチが送るメッセージは明確だ。正当化できるのであれば、拷問は問題ない(ほら、アメリカ人だってやっているじゃないか!)。米国国務省の報告書では、多くの国で被拘禁者が虐待されていることが強調されているが、この報告書は今や空虚で不誠実なものに思えるだろう。

さらに心配なのは、グアンタナモ基地の軍事委員会裁判で、公式の残虐行為によって得られた証拠が使われていることである。これを許すことで、米政権は自国の司法制度を弱体化させ、テロ法で訴えられた多くの人々が明らかに不公正な裁判を受けることを確実にしているのだ。ヒューマン・ライツ・ファーストが、このような証拠の使用を記録した最近の報告書で指摘したように、拷問を受けた容疑者は、単に虐待を止めるため、あるいは精神的・身体的機能が損なわれたために、しばしば虚偽または誤解を招く情報を提供していることが、調査で一貫して示されている。

ハリウッド映画『レンディション』では、拷問と虚偽または誤解を招くような情報との関連性が示され、米国政府によるもう一つの疑わしい慣行、すなわち過酷な尋問技術を採用していることが知られている国に容疑者を移送する代理人による拷問システムである特別移送が強調されている。

私たちCIVICUSは、ブッシュ大統領がこの法案に拒否権を発動したことに不信と憤りを表明している全米の市民社会組織とともに、この法案に反対している。オルタナティブ・ニュースワイヤーであるコモン・ドリームスが発表したアピールは、支持者に立ち上がり、「それは私のアメリカではない」と叫ぶよう求めている。私のアメリカは拷問をしない!」と叫ぶようにと。国際的な組織として、私たちはこのアピールに参加し、米国は自国民だけでなく、米国の政策に影響され、長い間自らの残忍な行為の正当性を求めてきた政府を持つ国々の人々も失望させていることを表明する。

民主主義の真の試練は、すべてが順調なときに人権侵害を控えることではなく、むしろ内外の脅威に直面したときにその価値を維持することである。テロとの闘いの名の下に、民主主義のある種の基本的な信条を損なうことは、民主主義の理念や人権の実践を損ない、ひいてはテロとの闘いを弱体化させるだけである。(原文へ

翻訳=IPS Japan

|中央アジア|イスラムを通じた近代化

【ワシントンIPS=ジョン・フェファー】

中央アジアの中心にあるフェルガナ盆地は、不安定性、武力紛争、イスラム原理主義でよく知られている。この人口の密集した山岳地域で国境を接している3共和国ウズベキスタン、タジキスタン、キルギスは、ソ連解体後、近代国家構築に苦心してきた。それはまさに激動のプロセスである。 

タジキスタンでは1990年代、政治勢力間の紛争から内戦が勃発。キルギスでは2005年の「チューリップ革命」で独裁的指導者が失脚。2005年後半には、ウズベキスタンのアンディジャン市で反政府暴動が発生、政府は数百人を殺害してデモを制圧した。その一方で、3国政府はいずれも、ヒズブ・タフリール(解放党)やウズベキスタン・イスラム運動などのイスラム原理主義過激派に対し行動を起こしてきた。最近では、ウズベキスタンのコカンドにおいて新たなグループ「ブラック・ターバン」の組織化が報道されている。

 しかしこうしたフェルガナ盆地のイスラム原理主義に傾倒した暴力的なイメージは不正確だと、ジョン・ホプキンス大学中央アジア・コーカサス研究所所長のS・フレデリック・スター氏は言う。 

「未解決問題山積の地域と見なし、破局が近いように言う傾向がある。それは事実とは異なる」と、スター氏は3月初旬ワシントンにおいて笹川平和財団との共催で開いたフェルガナ盆地に関するセミナーで述べた。「地域は一触即発の状態にはない。3区域いずれにおいても紛争は起きている。1991年以前の紛争は民族紛争の傾向にあった。しかし驚くべきことに、国境に変化はない。独立がもたらしたあらゆる混乱においても、民族間の衝突は比較的限られたものにとどまっている」

3つの要素が緩和効果を発揮していると、スター氏は次のように論じている。「移民労働者が安全弁となっている。土壌は肥沃で、灌漑が十分であれば、農地として最適だ。ものを買うお金がないとしても、人民は食べるに困らない。そして人々はお互いを良く知っている。何百、何千前年も共に暮らしてきたのだから」 

タジキスタン有数の学者であるPulat Shozimov氏も同様に、新たな観点で地域をとらえる。Shozimov氏は、中央アジア・コーカサス研究所の支援の下3カ国から24人の学者の協力を得て8つの異なる社会経済問題について論文を作成する新たな学際研究プロジェクトをまとめる編集者3人のうちの1人である。Shozimov氏は、この研究プロジェクトについて「フェルアナ盆地の新たな可能性を発見するため重要な問題や課題について自由に議論する場としてモデルとなるもの」と述べている。 

研究プロジェクトは「この極めて重要な地域に関してこの半世紀に実施された中であらゆる分野にわたるもっとも包括的な研究となるだろう」とスター氏も言う。「3カ国3人の編集者が成し遂げたことは、地域全域に及ぶ真の協力を生み出すための建設的な環境づくりである」 

 フェルアナ盆地はイスラム教徒が圧倒的に多く、大半がスンニ派である。ソ連崩壊後、地域の共通の要素として挙げられるのは、宗教的な関心が急速に高まっていることである。 

ジョージ・メイソン大学の政治学教授Eric McGlintchey氏も、「明らかにイスラム教の復興が見られる。金曜日の祈祷に行く人の数や人々の服装を見るだけでそれは明らかだ。50年以上実践が禁じられていた宗教上の教えを今は公然と守ることができるようになった。好奇心が起きるのも当然だ」と言う。 

外部のアナリストの中には、フェルアナ盆地における宗教的急進主義の脅威に注目する者もいる。しかしMcGlintchey氏は、イスラム過激派はそれほど受入れられていないと考える。「ヒズブ・タフリールはキルギスではかなり公然と活動しているが、しかしウズベキスタンではそうでもない。彼らは文献や論点は知っているが、しかしイスラム教やそれより広範なことについて少しでも問いつめると、『ウンマ』(イスラム共同体)に関する物事はすぐにも崩れてくる。大半の人は、自らの信仰をヒズブ・タフリールで無駄にする気はない。彼らの地位は誇張されている」と報告している。 

重要ながらもあまり分析されていない点として、イスラム教と経済の近代化の関係性がある。Pulat Shozimov氏によれば、タジキスタン・イスラム復興党(IPRT)が新興中流階級への働きかけを強めている。Shozimov氏は、「現時点で彼らに明確な経済プログラムはないが、しかし独自の経済ネットワークを構築しようとしている」と述べ、IPRTは、イスラム教の価値観と民主的な機構そして世界に連結した近代的な経済との融合を図ろうと、その手本としてトルコの与党に関心を向けていると指摘する。 

McGlintchey氏も同じ意見だ。「トルコを民主的な方向に動かすのにイスラム教政党が政権を握ることが必要だった。タジキスタンでも同様の原動力を見ることができよう」と述べている。 

ウズベキスタンについても、McGlintchey氏は同じ原動力を指摘する。「イスラムの社会資本と経済成長を結びつける好循環が見られる」とし、次のように主張する。「アンディジャンでは、信頼しあい、お互いに誠実だと認めあうビジネスマンが力を合わせている。腐敗が横行し、資金を無理矢理引き出し、信頼を寄せ難い国家当局とは対照的である。こうしたビジネスマンらはグループ内に資本をプールし、さまざまなビジネスを育ててきた。これらの有能なイスラム教徒ビジネスマンを見て、その成功を目の当りにしている人々は『彼らの工場で働きたい、宗教について学びたい』と話すようになっている」 

このように、フェルアナ盆地は、イスラム過激派の拠点とも言われ、散発的に暴力が発生して不安定な地域というイメージの脱却を図っている。イスラム教近代化の新たな経済的・政治的モデルとともに、新たな協力のイニシアティブも生まれている。3国のいささか冷ややかな公的関係がこうした新しいダイナミクスの推進に役立つことはほとんどないだろうが、しかしそれでも下からのチャレンジを受けている。 

スター氏は「3国間には明白な緊張があるものの、3国の国民はお互いを知り尽くしているし、何世紀もの間親密に交流してきた。緊張関係にあっても、彼らは、現実の関係をどのように維持するかは十分承知している」と指摘する。(原文へ) 

翻訳=IPS Japan 浅霧勝浩 

関連記事: 
HIV/エイズの脅威に晒される移民たち

|パキスタン|ギラーニ新首相、過激派との対話路線を求める

0

【イスラマバードIPS=アミル・ミル】

パキスタンの新しい顔になった人民党(PPP)のユスフ・ギラニ首相は、これまでムシャラフ大統領が進めてきた対テロ武力路線を見直すことを示唆している。 

ムシャラフ大統領が行ってきたパキスタンと米国の『対テロ協調』は、2月に行われた総選挙でパキスタン人民党(PPP)およびパキスタン・イスラム教徒連盟シャリフ派(PML-N)が第一党に躍進する一因をもたらした。 

しかし、ギラニ首相は国民議会の演説でイスラム過激派が武器を捨てるならいつでも対話をする準備ができているとし、「北西部の部族地域が(国際テロ組織アルカイダなど)過激派の温床となっているのは、教育水準の低さや貧困が原因である」と述べた。

 これに対して、イスラム武装勢力との強硬姿勢を主張してきた米国は、パキスタンの対テロ政策の今後に気を揉んでいる様子だ。しかし、実際パキスタン情勢はここ数年で少しも好転していない。パキスタン軍は部族勢力との和平合意を成立させたにもかかわらず、テロ行為はむしろ拡大しているのである。 

PML-Nのナワズ・シャリフ元首相は、メディアの取材に対して「新政権が求めているのは真の平和であり、パキスタン市民の犠牲ではない」と語り、(米国主導の)対テロ戦争の対応の見直しを強調した。 

クルシド・カスリ前外相はIPSの取材に応じて「パキスタン国内に広がる反米感情を利用することで、テロリストは一層勢力を強めている」と語った。パキスタンでは、テロ行為そのものだけでなく米国によるテロ政策にも反発が出ており、ムシャラフ大統領と米国政府は共に苦しい立場に追い込まれている。 

先日、ニューズウィーク誌の最新号で「パキスタン領内での米国の攻撃で死者が出たことに関して、ムシャラフ政権は黙認した」との記事が掲載された(パキスタン政府は米軍が領土内に入ることを認めていない)。 

対テロ強硬路線を軌道修正するパキスタンの新政権について報告する。(原文へ) 
 
翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩

|宗教|大手主要メディアによるテロ

【アブダビWAM】

アブダビに本拠を置くアラブ首長国連邦(UAE)の『カリージ・タイムズ』は、「宗教を悪者扱いする」と題する社説で、暴力行為の扇動に大手主要メディアを利用することを非難した国連人権理事会の最近の決議について次のように論評した。 

「国連人権理事会は、『暴力行為、外国人嫌悪やそれに関連する不寛容、およびイスラム教徒に対する差別を扇動する』ために大手主要メディアを利用することを非難する決議を採択した。これは、時宜を得た行動と言える。ただ採択において、賛成票は理事会47理事国中21カ国にとどまり、14カ国が棄権、10カ国が反対票を投じた」。 

「欧州連合に関しては、議長国スロベニアが反対票を投じた。しかしこれを相殺するものとして、物議を醸しているオランダの国会議員ヘールト・ウイルダース(Geert Wilders)氏の反イスラム教映画について『憎悪を煽る以外の何ものでもない』と厳しく非難したことが特筆されよう」。 

「オランダ政府も、『自由と尊重の両方が成り立つ』環境を提言して、賢明にも、常軌を逸した国会議員の行動と距離を置いている。同国政権は、冒涜的な風刺画が残した余波をおそらくよく覚えているのだろう。あの時には、表現の自由としてその行動を支持した者たちは結局のところ、表現の名を借りて挑発を促すことへの非難の声になんとか反論しようとして、自らの理念と自己矛盾を起こしてしまったのである」。

 「当初のニュース報道から判断して、欧州のイスラム・コミュニティはあらゆる関係者の中でもとりわけ賢明なことに、前回のようには街頭で抗議して怒りをあらわにすることは避けることを決めたようである。だが、欧州以外での反応は大きく異なるようだ。イランとパキスタンでは政府の激しい反応を呼んだ。伝統的な聖職者が有力な地位を占めるイスラム諸国は、当然、怒りをあらわにする意向だ」。 

「ウイルダースの短編映画が公開された今、こうしたイニシアティブを支持する者たちが、そのようなことからは益あることは生まれないこと、その理由を理解できるようになってほしいと願うばかりである。イスラムと西側の分裂の橋渡しをしようという努力にようやくなんとか反応が出てきつつあるこの時期に、映画によって助長されたのは、予想した通り、憎悪だけである。自由を愛する西側のより多くの人々が、ウイルダースのような試みは政略的なものであり、強硬派である自らの野望を遂行するがために敵意を増幅するよう入念に考え抜かれたものであるという事実に気付くまで、事態は好ましい方向には進まないだろう」。

「同様の傾向を帯びた過激主義を自由に放置しておけば、今日の世界を少なからず変えるおそれのある不愉快な事件がさらに増えることになるだろう。したがって、こうした過激主義が勢いを得て阻止し難いものとなる前にそれを抑え込むための大いなる努力が、真に憂慮する人々に求められている。欧州には、間違いなく、果たすべき大きな役割がある。しかし理解しやすい理念を利用して自らの歪んだ目的の達成だけを望んでいるようなウイルダースなどの好ましからぬ人々を放置しているかぎり、欧州はその役割を果たすことはできないだろう」。 

翻訳=IPS Japan 浅霧勝浩 

関連記事: 
|オランダ|反イスラム教映画に対し高まる不安

|パレスチナ|花とイチゴとミサイルと

0

【ガザ地区ベイト・ラヒヤIPS=モハメッド・オメール】

ガザは、肥沃な土地と豊かな光・雨により、世界有数のイチゴの産地として知られ、その品質の高さからヨーロッパの一流レストランで使用されてきた。しかし、ハマスの勝利以来、米国の支援を得たイスラエルは、23マイルの国境線および地中海沿岸を封鎖。これにより、ガザで栽培される花々、イチゴは流通の道を閉ざされてしまった。 

国境の町ベイト・ラヒヤは、イスラエルのシデロットから僅か数マイル。イスラエル軍は、侵入して来てはロケット砲が隠されていると思しき場所をブルドーザーで破壊する。破壊した後で、もしロケット砲が発見されなくても、補償金を支払うことはない。

栽培農家のアーメド・フェルフェルさんは、「死んだも同然だ。灌漑システムや温室、機材は、イスラエルの戦車やブルドーザーでめちゃくちゃにされた」と語る。同家の損失は35,000から45,000ドルに達する見込みだ。 

ガザ内6,000戸のイチゴ農家の年間生産は約2,000トン、売上総額は約1千万ドル。通常であれば、その3分の2はイスラエルが50パーセント所有する青果物取引所アグレックスコを通じ出荷される。イスラエルは、昨年11月、花についてはトラック2台、イチゴについては6台の通行を認めたが、再び閉鎖を行った。ガザ農業協同組合のアーメド・アル・シャフィ会長は、昨年12月にはカレム・シャロム通行所での留め置きで、12トンのイチゴが腐ってしまったと語っている。 

ガザには空港も港もあるのだが、イスラエルがその使用を阻止している。また、エジプトに通じるラファ検問所も、米国の圧力を受けたエジプト政府がその使用を禁じている。 

欧州市場は、ガザの商品が入らなければ他の輸入先を探すだろう。ガザにとって、これは長期的被害を意味する。また、優秀農家はエジプトへ逃げだしており、これまで蓄積してきた生産ノウハウを失うことにもなりかねない。 

今年は、保守ユダヤ教徒が、非ユダヤ教徒が生産した食べ物を食する7年に1度の“シミタの年”に当たる。ということは、少なくとも、この国境閉鎖は、イスラエルの伝統にも反することになる。国境閉鎖で壊滅的被害を受けている“ガザのイチゴ”について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

独裁政権を支持するEUに不満の声

0

【ブリュッセルIPS=デイビッド・クローニン】

欧州連合(EU)によるチャドへの欧州連合部隊( Eufor )の派遣をめぐり、チャドの独裁政権を支持しているとの非難が高まっている。Euforはダルフール難民および国内避難民の保護を目的に作られたが、その大部分はフランス人が占めている。 

旧フランス植民地であったチャドでは、国民のフランス人に対する感情は決して良いとは言えない。また、「すでにチャド国内で別の軍事行動を展開しているフランス軍との区別ができない」との意見も出ている。

 今年に入ってから首都のヌジャメナでは、反政府勢力と政府軍との戦闘が激化。その間、フランス軍はイドリス・デビ大統領率いる政府軍を支援し、攻撃型ヘリコプターが待機する空港で警備を行った。 

また、2006年の反チャド政府組織『United Front for Democracy』による攻撃の時も、フランス軍はデビ大統領政権の後方支援にあたっている。 

ドイツ人欧州議会議員(MEP)のTobias Pfluger氏は「Euforの派遣は場当たり的なものであり、その目的も明確でない」とEuforの活動停止を訴えた。 

これに対して、チャド・スーダンのEU代表である外交官Torben Brylle氏は、Euforが国連安保理の指示のもと活動している点を強調し「派遣について、チャド国内の多くの指導者からの十分な理解は得られている。我々は治安の確保と人々の保護のために、ここに留まるのである」と説明した。 

ドイツ人保守派MEPのMichael Gahler氏は「チャドの人々は『中立の立場にいる』白人兵士と、『政府軍の側にいる』白人兵士とを見分けることができるのだろうか」と懸念を示した。 

EUはすでに派遣が予定されているEufor要員3,700人のうち、ほぼ半数の派遣を3月中旬までに完了した。残りは6、7月の雨季に入る前に配備する予定になっている。 

チャドへの欧州連合部隊(Eufor)派遣をめぐる諸意見を報告する。

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

|ポーランド|新政権、ミサイル基地建設で米国に具体的見返りを要求

0

【プラハIPS=ゾルタン・ドゥジジン】

米国のミサイル基地建設に一度は同意したポーランドであるが、昨年のドナルド・トゥスク政権誕生以来、外交政策の大幅見直しが行われている。 
 
カチンスキー前政権は、ロシアを敵視するだけでなくEUとの関係をも複雑にしていたが、今やポーランド・メディアのほとんどがその対米政策についても甘すぎたと批判している。 
 
カチンスキー氏は、米軍基地の存在はポーランドの益になると考えていたが、基地建設は安全保障上むしろ不利になるとするトゥスク政権は、基地建設に強硬反対していたロシアとの対話を再開し、EUの主要政策にも参加した。また、対米発言も強さを増している。 
 
米国はポーランドとの協力拡大を約束していたが、トゥスク政府は、口約束だけでは不十分だというのだ。 
 
ポーランドは、真っ先に大量の兵士をイラク、アフガニスタンに派遣した。しかし約束された建設/石油ビジネスへの参入は実現していない。基地建設を事実上認めたチェコは、ワシントンとの技術協力拡大で合意したが、ポーランド政府は、基地建設の条件として具体的な見返りを要求しているのだ。その柱は、航空防衛と軍の近代化だ。 
 
ライス国務長官はポーランドに対し、同国の安全はNATOにより完全保証されており、軍事力の更なる強化はロシアの反発を買うだけだと説明した。しかし、ポーランドは、基地が建設されればそれがロシアの攻撃目標になるとして、短距離ミサイル防衛が必要としている。実際、ロシア軍の一部にはこの様な主張もあり、ロシアのラヴロフ外相は、ロシア側の意見にも耳を傾けてもらいたいとして、今回の対話を歓迎している。 
 
ポーランドの方向転換に驚いたのは米国である。彼らの要求を満たすには追加200億ドルの予算が必要となり、これによりポーランドは米国にとって最大の軍事援助国となる。ポーランドは共和党政権が要求を飲み、そのつけを新政権に残すことを期待している。 
 
しかし、もし米国が代替国を探し始めるとすれば、それはロシアの勝利を意味する。ポーランド国民の多くそして米国にとって、それだけは何としても避けたいところである。米国のミサイル基地建設に対するポーランド新政権の対応について報告する。 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩