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|南アフリカ|大規模農業は持続不可能

【ヨハネスブルクIPS=スティーブン・リーヒ

「開発のための農業科学技術国際評価」(IAASTD)の最終報告書が、4月12日、南アフリカのヨハネスブルクで発表された。報告書は、地域ごとの5つの評価書と110ページの総合レポートから成っている。人口爆発や気候変動などといった難題に立ち向かうために農業をどのように再構築すべきかを述べたものだ。 

重要な結論のひとつは、工業的で大規模な農業はもはや持続不可能だということである。安い石油に依存しすぎている点、生態系に悪影響を与える点、水を大量に利用する点、どれをとっても困難が目に付く。

 また、報告書は、モノカルチャーよりも生物多様性の方が重要であると結論づけた。 

IAASTDの共同議長ハンス・ヘレン氏によれば、実際のところ世界が悩んでいるのは食料の「量」が足りないという問題ではない。それよりも、適切な場所に適切な食料が存在しているかという問題なのである。 

国際環境団体「グリーンピース」のヤン・ファン・エイケン氏も同じような主張だ。0.5haの土地で高収穫型のコメを生産するよりも、同じ広さの土地で70種類の野菜や果物などを生産した方が栄養という点でははるかに優れている、とエイケン氏は語る。 

また、バイオテクノロジー、とりわけ遺伝子組み換え作物(GMO)をめぐる議論もあった。報告書は、バイオテクノロジーには確かに一定の役割があるものの、GMOの与える利益については科学的に証明されていないこと、遺伝子の特許は農民や研究者に悪影響を与えることなどの結論を出した。 

当初、米豪両政府の代表がこの部分に対して激しく反発していたが、両国の留保の意思を報告書に記述する妥協がなされて、ようやく報告書が採択されたという経緯があった。 

IAASTDの最終報告を受けて、この問題は、科学的な議論から政治的な意思決定という新たな段階に進んだといえるだろう。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩

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新しい「緑の革命」へ向けて

|バルカン半島|学校にも宗教の違い

【ベオグラードIPS=ヴェスナ・ベリッチ・ジモニッチ】

旧ユーゴスラビアのボスニア・ヘルツェゴビナ、クロアチア、セルビアでは、宗教教育がカリキュラムに組み込まれている。 

一般には選択科目だが、子どもたちは小学校(一部は幼稚園)入学と同時に宗教教育を受けることになる。 

3国の教育省は宗教教育を受けている子どもの実際の人数を発表はしていないが、その数は多いと明らかにしている。 

ただ、紛争後のボスニアとクロアチアでは宗教教育の導入は円滑に行ったが、セルビアではLjiljana Covic教育相がダーウィンの進化論を教えることを差し止めようとしたことがきっかけで関心が大幅に後退、現在は宗教教育の受講率は35%にとどまっているという。教育相は辞任に追い込まれた。 

また、専門家の間からは宗教教育の動向の他の側面について指摘がなされている。 

ボスニアでは紛争終結後宗教教育が導入され、2004年には法制化された。子どもたちは民族ごとの宗教教育、すなわち、イスラム教、カトリック教、セルビア正教のクラスに出席する。しかし、これら3つの宗教を含め他の主要な宗教の信条や無心論者の立場についてなど「宗教についての授業」を行なっているものは少ない。 

ボスニア、クロアチア、セルビアおよびノルウェーの執筆者グループが発表した西バルカン諸国の宗教と学校に関する2005年の調査報告書「Religion and Pluralism in Education」も、3宗教とも自身の説教に重点を置くばかりで、他の信仰に注意を払うことはほとんどないと指摘している。 

報告書は「イスラム教とセルビア正教では務めと服従を重視し、貧困、消費者主義、自由など現代社会やその問題を取り上げているのはカトリックのカリキュラムだけである」と述べている。 

セルビアの南部の町Vlasotinceで数学を教えるMiroslav Mladenovic氏は有力紙『Politika』に「教会は従順な信者を望んでいるだけ。たとえばセルビア人、クロアチア人、ハンガリー人、スロバキア人が暮らす北部ボイボディナ自治州など多民族環境における寛容の問題については何もしてない。民主社会の発展の必須条件が整っていない」として、学校での宗教排除を当局に訴えている。 

西バルカン3国における宗教教育について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー= IPS Japan 浅霧勝浩 

|イスラエル|最悪の事態を想定し最大規模の国防演習を実施

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【エルサレムIPS=ピーター・ヒルシュバーグ】

イスラエルは先週、国家史上最大の国防演習を実施。早朝、国中に鳴り響いたサイレンと共に、子ども達は防空壕へと急いだ。 

5日間に亘る全国規模の演習では、特に化学工場が林立する北部ハイファ湾地域の防衛、市民居住区に対する特殊ミサイル攻撃防衛を最重要課題とした。 

イスラエル指導者は、シリア、ヒズボラ、ガザ民兵によるミサイル/ロケット砲一斉攻撃を恐れている。同演習実施の裏には、2006年夏のレバノン戦争における銃後防衛の失敗への反省がある。ヒズボラは数千のロケット弾をイスラエル北部に打ち込み、市民40人が命を落とした。もし数10万の市民が難を逃れて南下していなければ、死傷者は更に増えていただろう。

 国家監視委員会は昨年、レバノン戦争の銃後防衛に重大な誤りがあったとする報告書を発表。危険物質が集中している北部地帯にミサイル攻撃が行われた際、軍の銃後司令部は市民防衛に必要な措置を講じなかったと批判した。また、政府は北部イスラエル居住者の避難について一度も議論せず、避難手段を持たない老人や貧しい人々を助けるために部隊を派遣することもしなかったと指摘した。 

政府は、将来的にはミサイル攻撃に化学兵器が含まれるようになるのではないかと見て、市民にガスマスクを再配布することを決めた(米イラク侵攻に際し、市民にガスマスクを配ったが、昨年回収されている)。 

イスラエルは、国内の如何なる地点も攻撃可能な長距離ミサイルを有し、原子力計画を維持しているイランが防衛上の最大の脅威とし、イランのシハブ・ミサイルを迎撃するアロー・ミサイルを開発した。しかし、レバノン戦争の際にヒズボラが行ったような短距離/中距離ロケット弾による銃後攻撃を防ぐ有効な手段を有していない(シリアはこの種のミサイルを大量に所有しているとされる)。 

イスラエルの大規模国防演習について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

|ネパール|共産党毛派を中心とした新政権誕生か?

【カトマンズIPS=ダマカント・ジェイシ】

2回の延期を経て10日、ネパールでは憲法制定議会選挙(議席数601)が実施された。(治安の悪化している東ネパールのタライ地方を除き)投票率は60%にも達し、選挙は概ね『成功』したと見られている。 

選挙結果は10年にわたる武装闘争を終結させ選挙に初めて参加したネパール共産党毛沢東主義派(CPN-M、マオイスト)が圧勝する勢いで、第1党はほぼ確実な情勢となった。

 しかし、国内外のメディアからは選挙前の毛派による暴力・破壊行為を問題視する声が出ている。政治アナリストのNilambar Acharya氏は「国民はマオイストが和平プロセスに参加したことは大きく評価しているが、それ以上のことは望んでいない」 

「多くの国民が2大政党であるNC(ネパール議会)およびCPN(UML)(ネパール共産党・統一マルクス=レーニン主義)に幻滅を感じているのは事実である。毛派が票を伸ばしたのは国民の『毛派への期待』という意味ではない」と述べた。 

ネパール議会(NC)のPrakash Sharan Mahat氏はIPSとの取材に応じて「選挙でのNCの敗因は国民の怒りや不満だけではない。もし選挙で毛派が負けることになれば、あの悪夢(市民に対する暴力行為)が再び始まるのでは、と多くの国民が恐れているのだ」と語った。 

一方、CPN-Mのナンバー2、バブラム・バタライ氏は「有権者の既成政党に対する失望感は計り知れないほど大きい。今回の毛派の躍進は国民の変革への強い期待の現れである」と、選挙結果に満足を示した。 

政権議会選での毛派圧勝の波紋について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan 

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|ネパール|『ヒンズー王国』の終焉

|ノルウェー|世界種子貯蔵庫をNGOが警戒

バンガロールIPS=ケヤ・アチャルヤ

ノルウェー領スヴァールバルにオープンした世界種子貯蔵庫( Global Seed Vault::GSV )に対し、インドをはじめ世界各地の農業NGOからは公平性を欠くその目的に非難の声が上がっている。

バンガロールを拠点とし、アフリカ・アジア・ラテンアメリカの主要途上諸国に支部を持つ農業ロビー団体GRAIN は、種子貯蔵庫の深刻な欠点は、国および民間の貯蔵庫供託者を基本的に対象とするもので、これらの種子にアクセスできない貧しい農民の権利を排除するものだと主張している。

GRAINは、GSVの生息域外貯蔵システムは、元来種子を生み出し、選択し、保護し、共有してきた農民たちから植物品種を奪い取ると訴える。システム確立に関わる科学的および制度的枠組みへのアクセス方法を知らない農民は排除されていると主張している。

 GRAINのアジアプログラム担当官としてニューデリーに本拠を置くシャリニ・ブータニ氏は、IPSの取材に応えて「このシステムは農民が世界の最初の、そして現在も変わらぬ植物育種家であることを忘れている。したがって、元来農民たちが保全してきた種子の知的財産権やその他権利の交渉が、各国政府と種子産業のビジネスになってしまう」と述べた。

GSVに関する決定はノルウェー政府によって行われることになるが、現在のところ信頼に足ると見なされているものの、その方針に変更はないという保証はない。ノルウェー政府は、供託者と10年間の協定を締結しており、方針が変わった場合には供託者に協定を終了する権限を認める条項が含まれている。

GSVの運営は、ノルウェー政府、世界作物多様性財団(GCDT)および北欧諸国の共同事業である北欧遺伝子資源センターの三者間協定に細かく規定されている。

GRAINは、GSVに関する決定事項をGCDTと共有することを主張している。GCDTは、企業から多額の資金供与を受け、世界の農業生物多様性へのアクセスおよびそれからの便益に関するあらゆる「激論」を積極的に取り上げている民間団体である。

多国籍種子企業は現在、年間300億米ドル規模の世界の種子市場の半分を支配しており、数多くの公的な植物育種プログラムを買い占め、各国政府にその管理を放棄させている。「最終的受益者は、作物多様性の崩壊の根源にあるのと同じ企業となるだろう」とGRAINの刊行物は述べている。

しかしGSVを管理する世界作物多様性財団の責任者ケアリー・ファウラー氏は、そうした批判について「スヴァールバル世界種子貯蔵庫の目的と活動を誤って伝えており、不正確で誤解を与えるような好ましくない形でGCDTについて論じている」と述べている。

ファウラー氏はIPSの取材に電子メールで応えて「種子貯蔵庫は、165カ国を超す国々ならびに国連食糧機関(FAO)の遺伝子資源委員会に歓迎されており、すでに先進諸国や途上諸国ならびに種子貯蔵NGOに利用されている(ただし企業は使用していない)」と語った。

北極点から約1,000km、摂氏マイナス6度の永久凍土層深くに建てられたGSVには、さらに低温のマイナス8度の冷凍庫3室があり、450万組の種子を貯蔵できる。

たとえば核戦争や自然災害など深刻な災害に世界の農業が見舞われた時でも、各国は「地球最後の日の貯蔵庫」とも広く言われているこの貯蔵庫を頼って、種子を取り出し、食糧生産を再開することができる。

しかし、農業保全の策にこだわり続けるGSVに不満を抱いている人は多い。

コミュニティの種子銀行ネットワークを通じて農場における種子保全活動が評価されて2004年に国連の赤道賞を受賞した GREEN財団は、遺伝的多様性を保護するという貯蔵庫の主張は「幻想」にすぎないと述べている。GREEN財団は、バンガロールを本拠に主に女性が運営に当たっている団体である。

「リオデジャネイロでの国連環境開発会議(UNCED)生物多様性条約(CBD)が、遺伝子銀行には限界があることを認識してからすでに10年が経つ。その固有の限界とは、大規模な停電はもとより、これらの銀行への農民のアクセスを除外している点、冷凍で保管された種子を異なる環境条件下で栽培しようとしても発育しない点などである」と、GREEN財団の創設者ヴァナジャ・ラムプラサド氏はIPSの取材に応えて述べた。「世界の食糧は冷凍庫の中で安全に保管されているとの考えだが、その裏には、悲しむべき科学的注釈がある」

GREEN財団、GRAIN、デカン開発協会(DDS)などのNGOは、農民たちが畑で種子を育て、保全し、これらを他の農民たちと交換していくことが遺伝的多様性と資源を保全するもっとも確実な方法と主張する。

ラムプラサド氏は、この10年、遺伝資源を収集し、それらを畑で保全しようという努力が世界的に行われており、遺伝資源は育種のためだけのものという概念を打ち破ってきたと指摘。「これによって、遺伝資源の生息域内保全は世界の何百万人の食糧安全保障だけでなく、食糧主権にとっても不可欠である事実が再確認されている」と述べている。

ハイデラバードに本拠を置き、貧困層のダリット(インドのカースト最下層)の女性の農村におけるエンパワーメントに取り組み、ミレット(キビ、アワの一種)など在来の穀類の保全を行っているDDSは、科学界が冷凍貯蔵システムによって作物の多様性を保全できるとは考えていない。

DDSの創設者P・V・サティーシュ氏は、「世界の豊富な種子は、畑で、世界の農村地域でしか生き残ることができない。GSVはこうした種子を農民から奪い取り、食物連鎖の最初のリンクを打ち壊す」と述べている。

GSVの供託者は現在、FAOの下で運営されている国際農業研究協議グループ(CGIAR)で、国際社会に代わって受託協定に基づき世界各地の作物を保管する15の遺伝子銀行を所有する。

GRAINは、受託制度は結局CGIARに貯蔵庫の保管物への「ほぼ排他的」なアクセス権を与えるものであり、農民を排除するものと非難している。

インドやアジアからの登録は、CGIARの傘下にあるインドのコメ研究所やハイデラバードにある国際半乾燥地熱帯作物研究所(ICRISAT)の貯蔵物の一部で、GSVに保管されることになる。GRAINのブータニ氏は、「この貯蔵庫はむしろ、農民の重要な伝統的知識を『略奪』するものとして知られる生命科学産業が必要としているもの」と述べている。

ICRISATの報道発表は、貯蔵庫における種子複製保全に同組織が参画することにより、世界の農業を気候変動から守る努力が一層強化されるだろうと述べている。しかしICRISATから受け渡される種子や遺伝資源は、気候変動に耐え得る耐寒性の乾地作物であるモロコシ、トウジンビエ、ヒヨコ豆、キ豆、落花生、ミレットなどである。

ブータニ氏は、この戦略とともに採用されるべき保全方法があると述べ、スヴァールバルが確実な保全方法と信じるに足るものはないと言う。

ICRISATは、世界各国で現在運営されている1400あまりの遺伝子銀行を通じて提供されている保全例を挙げている。たとえば、エチオピアやルワンダの内戦中モロコシの遺伝資源が失われたが、遺伝子銀行に保管されていた貯蔵物から補充された。

GRAINは、各国政府は、国際遺伝子銀行よりむしろ、まず自国の農民や市場を支援し、革新的な農業や種子交換に携わっている農民の手に種子を委ねるべきと提言している。農業生物多様性資産を有する開発途上諸国は、企業支配の農業協定に同意する前に、自国の農民の利益を守ることが必要だ。

ファウラー氏は、生息域外および域内の保全は補完的なものであるという見解をGCDTは支持すると語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩

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|中東|シリアと「戯れる」イスラエル?

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【エルサレムIPS=ピーター・ヒルシュバーグ】

パレスチナとの交渉が不調に終わったイスラエルが、今度はシリアとの和平交渉を進めようとしているかにみえる。

イスラエルのインフラ大臣であるベン=エリーザー氏は「イスラエルはシリアを交渉のテーブルにつかせるためのあらゆる努力を行っている」と述べた。また、オルメルト首相も、シリア政府との直接交渉を示唆する発言をしている。

シリア側も、第3者を介してイスラエルと接触していることを認めた。シリア外務省のカンファニ報道官は、トルコを交渉のチャンネルとして利用しているとクウェートの新聞に対してコメントした。

シリアの要求は1967年の中東戦争で奪われたゴラン高原を奪還することにあり、それが和平交渉成立の条件となる。2000年にイスラエルのバラク首相とシリアのアシャラ外相が米ウェストバージニア州シェパーズタウンで会談した際には、交渉が成立しなかった。この時は、シリア側が、(ゴラン高原とイスラエル領土に挟まれた)ガリラヤ湖岸までイスラエルが撤退することを要求した。

今回のシリアの和平姿勢は、強硬なブッシュ政権に対するポーズに過ぎないとの見方もある。また、イスラエルは、最大の同盟国であるアメリカの顔色を伺って、シリアに接近することができずにいる。

他方では、イスラエルからの報復を恐れてシリア軍が予備兵の動員を初めたとの報道もある。イスラエルでいわれている一つの説明は、2月にダマスカスで起こった Imad Mughniyah の暗殺事件にヒズボラが報復するとの情報をシリア政府がつかんでおり、その報復に対してイスラエルが反撃してきた時に備えているのではないか、というものだ。Mughniyahはヒズボラのテロリストであるとイスラエルは長らく主張していた。しかし、イスラエル政府は暗殺への関与は否定している。

イスラエル・シリア間和平の見通しについて報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan

|ウガンダ|性的暴力に怯える難民キャンプの女性達

【ナイロビIPS=クワンボカ・オヤロ】

ウガンダ北部では、神の抵抗軍(LRA)と政府軍の武力闘争が続いている。ジョセフ・コニー( Joseph Kony )率いる反乱軍は、聖書の10戒に基づく政府の樹立を主張しているが、子供を兵士や慰安婦、召使に使うなどの人権侵害で悪名を馳せている。 

20年に亘るこの紛争は、2006年に最初の休戦で合意したが、最終和平合意の目途は立っていない。コーニーは、4月10日にスーダンとコンゴ民主共和国の国境地点で和平合意に署名する予定であったが、更なる話し合いを要求していると伝えられる。国際刑事裁判所(ICC)がコーニーを始めとする反乱軍リーダーを戦争犯罪者として裁こうとしていることが、和平交渉を一層難しいものにしている。LRAは武装解除の条件として、ICCの裁判中止命令を要求しているのだ。

 ジュネーブを拠とする「国内難民監視センター」によれば、同紛争により現在約123万の人々が難民キャンプや仮設居住地での暮らしを余議なくされているという。 

カンパラに本部を置く市民団体「女性のための民主主義フォーラム」のローズマリー・ニャキコンゴロ氏は、「難民キャンプの女性達は性的迫害に遭っている。夫さえ、彼女達に兵隊の所へ行き金を貰って来いという始末だ」と言う。また、国連人口基金(UNFPA)のプリモ・マドラス氏は、「8歳の女子も食糧を得るため体を売ることを余儀なくされている」と語っている。 

UNFPAの2007年調査によると、難民キャンプ内では避妊具の需要が高く、配布されるとすぐに無くなるという。しかし、これらは容易に手に入るものではなく、無料で1か月配られたかと思うと、翌月には有料になったりする。その上、戦争状況下では、“産めよ増やせよ”の感覚が浸透しており、失った家族の代わりを産まなければとのプレッシャーも強い。 

その結果、難民キャンプの女性1人当たりの出産は7.4人と全国平均の6.7人を上回る。(ウガンダ統計局)また、全国的には18歳以下の母親は全体の25パーセントであるが、キャンプ内では40パーセントを超える。言うまでもなく、エイズも蔓延しており、全国感染率の6.5パーセントに対しキャンプ内では12パーセントに達している。 

ウガンダ難民キャンプの惨状について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

|国連|母親から子供へのエイズ感染防止を強化

【国連IPS=タリフ・ディーン

国連は4月3日、母体からのエイズ感染防止は可能だとする報告書を発表した。

2007年現在、15歳以下のエイズ死亡者は29万人。サハラ以南のアフリカ諸国では1,210万人の子供が両親あるいは片親をエイズで失っていると予測される。

「子供とエイズ」と題された同報告書は、1)エイズ/HIVは子供の成長に深刻な影響を与えており、貧困、途中退学、差別を余儀なくされる子供は数百万人に達する、2)HIVに感染している子供210万人の殆どは出産あるいは授乳中の感染による、3)15歳以上の感染者の内15-24歳の若者が40%を占める、と述べている。

ユニセフのアン・ヴェネマン事務局長は、「今日の子供、若者は、エイズの無い社会を知りません。毎年数千人がこの病気で死亡し、数百万の親、親族を失っています。グローバル・エイズの課題は子供を中心に据える必要があります」と語っている。

国連報告によれば、エイズ感染を防ぐ手段を持たない青少年が最もエイズに犯され易く、エイズ対策の重要な鍵になるという。

母体感染防止キャンペーンは、2005年10月に国連が「子供のための連帯、エイズに対する連帯」と称し国連合同エイズ計画(UNAIDS)、WHO、ユニセフと共同で成果の見直しをし、母親から子供への感染防止、小児科治療の提供、青少年間の感染の防止、エイズに感染した子供達の保護/支援の4つを今後の課題に設定したことに遡る。

同報告書は、資金拠出のギャップは存在するものの、政府、ドナーのリソース提供は増加しており、2004年には61億ドルであった資金が2007年には100億ドルに増加。特に母親から子供への感染防止はかなりの成果、進歩を遂げていると述べている。

今回、国連は子供への感染防止を目的に、1)コミュニティー、家族の連携強化、2)保健、教育、社会保障システムの強化、3)母親、乳幼児のための母子感染予防対策の統合、4)防止活動強化のためのデータ、評価システムの統合の4つの分野で行動を強化するよう呼びかけている。国連の新エイズ防止策について報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan

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ヨルダンは米国のテロ容疑者引き渡しの拠点、と人権団体の報告書

【ニューヨークIPS=ウィリアム・フィッシャー】

有力メディアではアラブ中東地域の中でもっとも穏健な国と報じられているヨルダンだが、「CIAの真の代理看守として」囚人を引き受けた最初の国であり、世界でもっとも多くの「特例拘置引き渡し」の犠牲者を受入れている、とヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)の新しい報告書は伝えた。 

HRWは、CIAからヨルダンに引き渡された拘留者の大半に対して「拷問および残虐・非人道的処遇を組織的に行っているようだ」と非難している。報告書は、引き渡された囚人は「赤十字の国際委員会が視察に来る時にはいつも隠蔽された」と主張している。 

さらに、CIAのヨルダンの治安部隊との長年にわたる関係が、ヨルダン人は拘留の事実を他言しないとの確信を米政府高官に与えたようだと、報告書は述べている。 

HRWのテロおよび反テロ・プログラムのディレクター、ジョアンヌ・マリナー氏はIPSの取材に応えて「ヨルダンで私たちが実証した引き渡し事件は、拷問が待っているような引き渡しは行っていないというブッシュ政権の主張が偽りであることを示すもの」と述べた。

 彼女はさらに「9・11以後、CIAは囚人をCIAの収容所に不法に拘留するだけでなく、ヨルダンにおいて十数人もの囚人の尋問・拘留・拷問を秘密裏に委託した」と述べている。 

HRWによれば、ヨルダンに引き渡された正確な人数は判明していないが、引き渡しの目的はただひとつ、テロ活動の自白を引き出すことにあった。拘留者の多くが、ヨルダンにおいて虐待的な尋問を集中的に受けた後直ちにCIAの監督下に戻され、一部は自国に、他はグアンタナモ米軍基地に移送され、一部は未だ拘留されている、と報告書は明らかにしている。 

HRWは、2001年9月以降、CIAの引き渡しの慣行は変わったと、次のように指摘している。「CIAは、容疑者を本国に送還して『公正な裁き』(但し、拷問や極めて不公正な裁きを含む)を受けさせるのではなく、虐待的尋問を手助けする第三国に引き渡し始めた」 

米国の囚人引き渡しに協力するヨルダンについて報告する。

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

新しい「緑の革命」へ向けて

【ヨハネスブルクIPS=スティーブン・リーヒ】

Rice ready for harvest. Credit: Amantha Perera/IRIN
Rice ready for harvest. Credit: Amantha Perera/IRIN

食料価格が高騰し、世界の数億人が飢えに苦しむなか、食料安全保障を守るための新しい方法が模索されている。これについて、「開発のための農業科学技術国際評価」(IAASTD)をめぐる国際会議が4月7日から12日まで南アフリカのヨハネスブルクで開かれる。 

昨年は、食料価格が猛烈な勢いで高騰した。たとえば、トウモロコシは前年比31%、大豆が87%、小麦が130%といった具合である。世界の食糧備蓄はわずか40日分しかない。他方で、2050年までの間に人口がさらに30億人拡大するとみられている。 

IAASTDには、30ヶ国の政府代表、バイオ技術産業、農薬産業、グリーンピースやオックスファムなどの国際NGOが参加している。彼らの報告は、人々を貧困から救い出すには地元の伝統的な知と定式的な知識を組み合わせることが必要だと結論づけた。

 しかし、2つの巨大バイオ技術企業であるシンジェンタ社とBASF社が、IAASTD報告草案が遺伝子組み換え作物に対して警戒的すぎるとしてIAASTDプロセスから降りることになった。 

ハーバード大学の農業政策の研究者であるロバート・パールバーグ氏は、IAASTDは1960年代の「緑の革命」をたんに失敗としてのみ描いていると批判し、バイオ技術を中心とした科学を貧しいアフリカ農業にもっと適用すべきだと主張している。 

これに対してトロント大学のハリエット・フリードマン氏は、IAASTDはたんなる「意見」ではなく明確に「科学」的知見に基づいたものであると反論する。「バイオ技術産業は農業科学に対する視野が狭すぎる」と氏は批判した。 

貧困層を救うための新しい農業のあり方について考察する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩

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