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|アフガニスタン|タリバン、アフガン人通訳者を殺害

【カブールIPS=ダウド・カーン、サマド・ロハーニ】

(タリバンの指揮を執るムラー・ダドゥラー最高司令官のスポークスマン)シャブディン・アタル氏は8日、パジュワク・アフガン・ニュースの電話取材に応じて、アフガン人通訳者マドゥジマル・ナシュクバンディ氏が殺害されたことを明らかにした。

同氏はイタリア人記者ダニエレ・マストロジャコモ氏と共にイスラム原理主義勢力タリバンに誘拐・拘束されていた。ナシュクバンディ氏の切断遺体は、アフガニスタン南部ヘルマンド州で発見されたが、この現場は(先月19日に解放された)マストロジャコモ氏がイタリア政府関係者に引き渡された場所でもある。

マストロジャコモ氏の解放の裏では、投獄されていたタリバン兵士5人の身柄と交換することを条件とした交渉が行われていたされている。しかし今回アフガニスタン政府は、タリバン幹部の解放要求をめぐる交渉を拒否したため、ナシュクバンディ氏は殺害されたと見られている。

 ランギーン・ダドファル・スパンタ外務大臣は先月29日、アフガニスタンメディア会議(IPS-The Killid Group共催)の席で「テロリストの釈放を求めるタリバンと交渉を進めるつもりはない」と述べた。タリバンが拘束していたアフガニスタン人通訳者の殺害事件について報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan

|対外援助|国益最優先の政府と国民との間に温度差

【シドニーIPS=ニーナ・バンダリ

オーストラリアの国民の多くは、対外援助を貧困削減と持続可能な開発を目的に行うべきであると考えている。しかし、国会議員の大半は商業的利益に即した対外援助を目指しているようだ。オーストラリアのNGO団体AID/WATCHは5日、ニューサウスウェールズ議会で対外援助政策に対する国民と政府との考え方には大きな開きがあることを指摘した。

MDG(ミレニアム開発目標)によると、途上国は2010年までに政府開発援助(ODA)を国民総所得(GNI)の0.5%、2015年までには0.7%にするという目標を掲げている。

一方、オーストラリア政府は2010年までに援助総額を32億米ドルにまで増やすとしているが、対外援助の割合としては僅か0.36%に過ぎない。2006年から2007年にかけて、同国のODA総額は23億ドル(GNIの0.3%)で、OECD加盟国22カ国中19位である。

AID/WATCHは、オーストラリア政府が『貧困対策を中心とした人道的援助』から大きく逸れて、『自国の経済成長に焦点を当てた援助』へと進んでいることを懸念している。AID/WATCHの調査によると、71%の国会議員が開発援助の目的は国益増進であるとしている。

AID/WATCHのケイト・ウィーン氏は「オーストラリアが(援助供与国である)パプアニューギニアソロモン諸島との関係の緊密化を進めているなかで、このような調査結果が出るのは非常に残念だ」と語る。対外援助をめぐるオーストラリア国内での意見の違いについて報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan

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|エジプト|ムスリム同胞団への弾圧強まる

【カイロIPS=アダム・モロー、カレッド・ムーサ・アルオムラニ】

エジプトの反体制的運動である「ムスリム同胞団」に属するメンバーの逮捕が相次いでいる。

3月はじめ、国営日刊紙『アルアフラム』のオサマ・サラヤ編集長は、ムスリム同胞団の最高指導者メフディ・アケフをアルカイダやオサマ・ビンラディンに例えた。3月7日の独立系『アルマスリ・アルヨーム』紙によると、サラヤ氏は「(ムスリム同胞団とアルカイダの)両者とも、イスラム教徒の中に過激主義の文化を持ち込もうとしている」と述べたと伝えられている。

 アケフ氏は、3月13日、ムスリム同胞団が暴力的手法を称揚しているとする政府の主張は誤っていると発言した。

しかし、3月に入り同集団のメンバー60人以上がすでに逮捕され、昨年12月以来の逮捕者はこれで約240人になった。「禁止集団への参加」「抗議活動の教唆」「政府転覆の企図」といったことが罪状となっている。

アケフ氏によると、この一連の弾圧は、政府が提案している憲法改正にムスリム同胞団が反対していることへの政府の反応だという。反改憲派は、改憲により現在の与党である国民民主主義党の権威が強められるだけだと批判している。

反体制派週刊誌『アルカラマ』のカンディル編集長によれば、政府はムスリム同胞団に対して挟み撃ち的な攻撃をかけているという。すなわち、憲法レベルにおいては、第5条・88条の改正によって同胞団のメンバーが選挙に出られないようにすることを狙い、他方で資産凍結によって同胞団を兵糧攻めにしている。

カンディル氏は、1950~60年代のナセル大統領時代における弾圧と現在のそれを比較した。ナセル時代には、貧困層に対する社会政策との組み合わせによりムスリム同胞団をうまく封じ込めることができたのに対し、現在は、貧困と失業が進む中、治安政策を中心に弾圧を図ろうとしているという。

エジプト・ムスリム同胞団に対する弾圧について報告する。(原文へ)

翻訳/サマリー=IPS Japan


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|米国|ゲスト労働者に奴隷のような扱い

【ワシントンIPS=エリ・クリフトン】

3月12日ワシントンで発表された報告書によると、米国の所謂ゲスト労働者は、仕事斡旋業者に不動産証書を渡すことを強要されたり、雇用主にパスポートやビザなどを取り上げられ捕囚状態に置かれたり、基本的な生活/保健レベルに満たない扱いを受けているという。 

南部貧困法律センター(Southern Poverty Law Center:SPLC)は、「奴隷状態:米国のゲスト労働者プログラム」と題された報告書の中で、米労働省が管理するH-2ゲスト労働者ビザは、母国および米国内で移民労働者を搾取するシステムを作り上げた」と述べている。

同報告書の著者でSPLCの移民正義プロジェクトのメアリー・バウアー部長は、「議会は滅茶苦茶な移民制度の改革を行うべきだが、それを広大な新ゲスト労働者プログラムに頼ってはいけない。現行プログラムの実態は恥じ入るばかりであり、労働者の権利保護は殆ど行われていない」と言う。 

48ページの同報告書は、H-2ビザで入国したゲスト労働者に対する虐待の詳細を明らかにしている。同ビザは、砂糖業界に外国人労働者使用を認めるため1943年に導入され、議会は1986年、適用を非農業労働者に拡大した。 

2005年には、H-2のゲスト労働者12万1000人が米人雇用主により“輸入”されている。(H-2Aの農業労働者は3万2000人。森林、海草加工、造園、建設その他非農業作業に従事するH-2B労働者は8万9000人) 

これら労働者に対する搾取は、母国にいた彼等が、米国内での高賃金、住宅購入の可能性を謳った宣伝にのった時点から始まる。 

これらの民間労働斡旋業者は、労働者に対し時に数千ドルに及ぶ金の支払いを要求する。多くの労働者は、この金を月20%という高利で金貸しから借りるのだ。 

また、労働斡旋業者は時として、労働契約を満了できないことを見越して労働者に家や車の譲渡証書を担保として残すことを要求する。 

H-2ビザを取得し米国に到着した時点で既に大きな負債を抱えている労働者は、約束された賃金が嘘であったことを知るのである。報告書によれば、例えば松植樹業界では、労働者の月収は1,000ドル以下という。 

米国内のゲスト労働者虐待は、雇用主が彼等のパスポート、社会保険カードを取り上げることから発生する。もし強制退去に直面した場合、これら書類は彼等にとって非常に重要となる。 

労働者達は、書類は、彼等が契約の途中で逃げ出すことを防ぐため取り上げられるのだと言う。 

SPLCは、これら書類の返還を拒み、労働者を不法労働者とするためパスポートを破り捨てたケースを報告している。 

不法労働者となれば、労働者は司法当局への訴えはできず、雇用主が当局に通報した場合、強制送還を避ける法的手段がなくなる。 

報告書は、雇用主は労働者に対する圧倒的力により、約束を裏切り、賃金を引き下げ、労働時間をごまかしていると述べている。 

酷使、虐待、不法な取り扱いに抗議した労働者は、暴力や強制送還をちらつかせるなどの“脅迫作戦”に会う。 

H-2ビザ雇用主による虐待に抗議し法的手続きを取る者に暴力が加えられるのは珍しくない。 

ゲスト労働者ヒューゴ・マーチン・レシノス・レシノスは、最低賃金および超過勤務規則違反を理由にExpress Forestry社に対する集団訴訟を起こし、自宅で数人の男から暴力を振るわれた。 

報告書は、ゲスト労働者を虐待から守る現行の連邦法および規則、またH-2ビザ制度により保証されているゲスト労働者の保護に関する連邦機関の強制執行力を強化すべきと提案している。 

SPLCは、議会はゲスト労働者に対し、司法システム/裁判所への意味あるアクセスを保証する必要があるとしている。 

報告書は、移民手続きは今後変更されるが、移民労働者の権利に対する保証条項を保護、強化する必要があると述べている。 

ニューヨーク移民連合で労働者権利支援を担当しているミラン・バット部長は、IPSのインタビューに応え、「経済格差は搾取の段階に来ていることから、今後の米国への移民流入は、国際的移動を考慮したより現実的な対処が必要」と語っている。 

米議会両院は非公開で包括的移民改正法案を議論しているが、SPLC報告書はそのような動きの中で公表された。 

殆どのアナリストは、同法案には現在国内に居住する不法労働者に市民権を認める何らの条項が盛り込まれると見ているが、投票は、早くても2008年11月の大統領選挙後になるだろう。 (原文へ

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩 

|ドミニカ共和国|小麦と砂糖で栄養向上計画

【サント・ドミンゴIPS=ディオゲネス・ピナ】

2月15日、公衆衛生省は国際機関と共同で食品栄養添加プログラムを立ち上げた。

ドミニカ共和国では、ビタミンAの欠乏で毎年350人が死亡、葉酸の欠乏で脳と脊髄に障害のある新生児が400人誕生し、多くの女性が周産期で鉄欠乏性貧血に苦しんでいる。

プログラムはミレニアム開発目標(MDGs)を達成するためにもこれらの疾病と障害の削減をめざし、小麦粉に鉄・葉酸・複合ビタミンBを、砂糖にビタミンAを添加しようというもの。市民団体、食品会社、研究機関が共同で構成した微粒栄養素委員会が GAIN(Global Alliance for Improved Nutrition:栄養向上のためのグローバル同盟)から190万ドルの寄付を獲得して実現した。

 国連世界食糧計画(WFP)によると、ドミニカ共和国では近年栄養失調が拡大し、昨年は人口の7.2%に栄養失調が及んでいる。2003年の三大銀行倒産が史上最悪の経済危機をもたらし、飢餓と栄養不良が拡大したことが原因である。

このようなプログラムは短期間で終了してしまうこと、そもそも栄養素の添加よりも栄養価の高い食品の生産に目も向けるべきであることなどが問題点として指摘されている。

ドミニカ共和国における小麦粉と砂糖のビタミン・ミネラル添加プログラムについて報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩

関連サイト:
奴隷制の歴史を記憶するプロジェクト
兵士が街路を占拠

|モロッコ|歴史的な日の訪れを告げる大規模な恩赦

【カサブランカIPS=アブデラヒム・エル・オウアリ】

次期国王が誕生した直後に、とりわけ十数人の死刑囚が恩赦を受けたことは、モロッコがアラブ世界で初の死刑制度廃止国になるという歴史を刻みつつある兆候ではないかと解釈されている。 

2月28日、モハメッド6世国王の妻であるララ・サルマ王妃は、国王夫妻の長女、ララ・ハディージャ王女を出産した。この吉報の直後、モロッコのモハメド・ブズ法務大臣は全国放送のテレビに出演し、これまでで最大規模の、14人の死刑囚を含むおよそ9,000人の受刑者に国王が恩赦を与えると発表した。「公式声明」を読みながら、法務大臣は何度もこの恩赦には死刑囚も含まれると繰り返した。これがモロッコ国王の死刑制度廃止支持を明らかに示すものと見なされている。

 モロッコ国民に対する国王からのメッセージは、法務大臣がモロッコの伝統的な民族衣装でテレビに登場するという異例の行動によって強調された。それはまた、モロッコで死刑制度の正式な廃止が速やかに近づいていることを告げた。死刑制度廃止の最終的な決断は、モロッコ議会によって下されることになる。だが、首相およびその他の要職にある大臣を任命する国王は、国の既存の憲法と法律制度における重大な変化に対して、支持を示す必要があった。 

2月にパリで開催された「死刑制度に反対する第三世界総会」で、モロッコの国選人権諮問委員会のベン・ゼクリ委員長は、モロッコの国会議員の中に死刑廃止について全体的な合意があると認めた。モロッコの報道機関は、6月に終了する今期の国会中に、この問題に関して議会での投票が行なわれると予測している。死刑廃止法案はすでに作成されていて、政府に提出されている。国王もまた、国の法典からの死刑制度除去について検討する特別法律委員会を設立した。 

1993年以降、モロッコは死刑執行を一時停止している。モロッコを含み、10年以上死刑を執行していない国がアフリカでは20カ国ある。1956年にフランスから独立して以来、モロッコでは500人以上が裁判所の判決により、あるいは超法規的に、死刑になったとされている。今回の恩赦以前には、人権運動家の話によると、131人が死刑囚となっていた。 

世界の死刑制度反対活動家は、モロッコが法令から死刑を排除することで、北アフリカと中東の国々の手本となるのを期待している。この地域の22カ国のうち、死刑制度を廃止した国はない。サウジアラビアとイランにいたっては毎年100人以上を処刑している。 

死刑制度廃止に向けたモロッコの着実な進展は、2005年の公平和解委員会の最終報告書に大きな後押しを得た。この報告書は死刑廃止を1999年にモハメッド6世国王が即位して以来行なわれてきた司法改革および政治改革を強化する手段として推奨した。 

委員会は国王の参謀であるドリス・ベンゼクリ氏が委員長を務め、独立してから1999年までに起きた重大な人権侵害を調査した。委員会はさらに公聴会を開催し、全国ネットのテレビで放映されたが、アラブ世界では前例のないことだった。 

モロッコのテレビはまた、死刑に関する国民的論議に主要な役割を果たした。昨年10月には全国死刑反対連合が、モロッコの首都ラバトの弁護士クラブ本部において死刑に関する討論を企画し、これも全国にテレビ放映された。 

その後に、死刑に関するドキュメンタリーがテレビで放映された。このような番組がアラブ各国で制作されて公表されたことは一度もないと、死刑に反対するパリ世界総会に出席した代表者の1人はいう。 

このドキュメンタリーによって、多くの人々が死刑支持者から死刑制度廃止論者へと転向するよう説得されたようだ。 

「テレビ番組を見た後で考えを変えた」と弁護士助手のケルツーム・アルーフ氏はIPSの取材に応じて語った。さらにイラクのサダム・フセイン前大統領の処刑される姿を見せた最近の映像が、断固として死刑反対を決意させたという。 

「サダム・フセインは犠牲祭の日に処刑された。あの映像は非常に残酷であり、今でも夢に見る」とアルーフ氏はいう。 

モロッコの圧倒的多数のイスラム教徒のすべてが、廃止論者の議論に説得されたわけではない。多くは今なおコーランと聖典が定める死刑を正当と考えている。モロッコの法律専門家の中には法律のいかなる変更も好まないものもいる。 

「廃止論者は生命の権利に関して誤った取り組みをしている」と弁護士のモハメッド・チェムシー氏はIPSの取材に応じて語った。「この権利は、まさにこの権利を他人から奪ったものを守るために利用されてはならない。廃止を支持する人々は犯罪者のことだけを考えてはならない。被害者の家族についても考えなければならない」 

さらに付け加えて、「死刑は民主主義、独裁制、イスラム教およびその他の宗教と結びつけてはならない。死刑は正義と結びつくものだ。死刑を廃止する必要はない。必要なのは、すべての人々にとって公正な裁判と、どんな罰にせよ公正に判決を言い渡す独立した司法を保証することである」と述べた。 

けれども、医者でアムネスティ・インターナショナルの活動家であるアフメッド・クーザ氏は逆の見方をしている。 

「廃止はこの国のイメージを改善し、生命の権利が何よりも大事にされる人権の尊重を強化するのに役立つ」とIPSの取材に応じて述べた。「死刑判決と処刑によって犯罪がなくなった国はない」。 

司法の過ちは無視できない。犯罪者の更生と社会復帰が重視されるべきだ。「イスラム教徒として、神のみが生死をもたらすと信じている」とクーザ氏は言い添えた。 

モロッコの死刑廃止はほんの数ヶ月先に実現すると明らかに示唆しながら議論は続いているが、裁判官たちはいまだ死刑判決を下している。2月にラバトの法廷は、モロッコ人のカリム・ジマクに、イタリア人外交官とそのベルギー人妻を殺害した罪で死刑を言い渡した。 

「この判決により、モロッコが死刑廃止問題を考え直していると解釈されてはならない」とチェムシー氏はいい、「モロッコは死刑制度廃止を政治的に必要としているので、死刑廃止は間違いない」と断言した。(原文へ) 

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩 

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|エジプト|ムスリム同胞団幹部、軍事裁判に

【カイロIPS=アダム・モロウ&カレド・ムッサ・アル・オムラニ】

エジプトの政府機関紙「アル・アハラム」は2月7日、カイラート・アルシャタルを始めとするムスリム同胞団のリーダー49人が、アル・アズハル大学の反政府学生グループへの資金提供および海外からの“暴力活動”資金受け取り容疑で軍事裁判にかけられると報じた。

軍事裁判で有罪判決が下った場合は控訴が認められず、大統領の恩赦を待つ以外にない。

12月アル・アズハル大学(在カイロ)で同胞団に所属する学生が抗議行動を行ったのに端を発し、政府は圧力を強化。学生の抗議行動は小規模であったにも拘らず、政府機関紙は“イスラム民兵”の暴動と報じた(同事件で学生124人とイスラム同胞団のリーダー20人が逮捕された)。

 同事件を受けて、ムバラク大統領は1月15日、「同グループは、その宗教性により国家の脅威となる」と異例の声明を発表。また同胞団と関係のあるビジネスマン29人の資産凍結を行った。

これについて、政治評論家の一部は、「最も有力な野党である同胞団を政治の舞台から追放するための形振り構わぬ措置」と批判している。また、法律専門家、人権活動家も、「緊急事態法に基づき軍事裁判を行うのは、法の乱用」と非難している。カイロを拠とする「司法独立アラブ・センター」は、軍事裁判で民間人を裁くことに強く反対。公平な裁判を保証する国際条約に違反するとの声明を発した。

また、人権擁護団体Egyptian Organization for Human Rightsのアブ・サエダ氏は、「緊急事態法の延長に際し、政府はテロと麻薬密輸にのみ適用されると説明したが、ムスリム同胞団は、テロリスト・グループでも麻薬密売組織でもない」と語っている。

多くの批判にも拘らず、政府は2月25日、カイロ、アレキサンドリア等で更に80人を拘束している。ムバラク政権の対ムスリム同胞団弾圧について報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan


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|エジプト|ムスリム同胞への団弾圧続く

【カイロIPS=アダム・モロー、カレッド・モウサ・アルオムラニ】

エジプト政府がイスラム教徒の集団である「ムスリム同胞団」への弾圧を強めている。1月28日には、当局が、資金洗浄に関与していたとの容疑で、同胞団に関連した29人の経営者の資産を凍結した。

対象者の中には、同胞団の最高指導者代理であるカイラート・アルシャタル氏も含まれていた。悪いことに、アルシャタル氏とその他の15名は、その前日に釈放されたばかりであった。被疑者側は異議申し立てをし、裁判所は最終決定を2月24日まで延期したが、その間も資産は凍結される。

 12月中旬以降、当局による弾圧は加速している。12月10日に首都カイロのアルアズハール大学において同胞団系の学生が集会を開いたのがきっかけだと見られている。国家メディアではこの集会をまるで「軍事パレード」だと記述した。この集会の直後に、当局は120名の学生と20名の同胞団幹部を、騒擾を教唆したとの容疑で逮捕している。

同胞団は、これら一連の弾圧は当局の政治的思惑によるものだと批判している。エコノミストであり「サダト・アカデミー」の元代表であるハムディ・アブデル・アジム氏は、弾圧は、来る上院議員選挙と地方選挙に先がけて、同胞団の資金源を断つ目的を持っている、と指摘した。

エジプトのムスリム同胞団弾圧について報告する。(原文へ)

翻訳/サマリー=IPS Japan

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|米国|国土安全保障省監査総監、移民拘留所の不当待遇を明かす

【ニューヨークIPS=ウィリアム・フィッシャー】
 
米国土安全保障省(DHS)監査総監室は、マイアミの「クローム・サービス処理センター」(Krome Service Processing Center)、民間契約企業「アメリカ矯正社」(Corrections Corporation of America=CCA)のサンディエゴ施設を始めとする国内各地の刑務所、留置所を対象として行われた調査の結果を発表した。

不法移民の待遇について同報告書は、拘留中の不法移民容疑者に対する医療や食事は不十分で、性的嫌がらせも多く、弁護士や家族、移民担当官との面会も不法に制限されていると述べている。

移民拘留センターの多くは民営化され、CCAやワッケンハット(現在は「GEOグループ」に改称)といった民間企業により運営されている。民営化によりコストが大幅に削減されるというのがその理由だが、米議会検査院は1996年に、企業側のその主張には明確な証拠が見出せないとする報告書を提出している。

 
2001年9月11日のテロ攻撃で、数千のイスラム教徒とおぼしき移民が収監されてから、刑務所の民間経営ブームが始まった。DHS 監査総監室は2003年に、彼等の扱いを強く批判する報告書を提出。囚人の基本的権利侵害、精神的・肉体的な嫌がらせ、ヘルスケアや医療の欠如、過密、シャワーやトイレの使用拒否などを指摘したが、その後の不法移民取締り強化で、拘留施設経営契約も民間に流れたのである(CCAの2005年第2四半期収入は約3億ドル)。
 
 DHSを批判するグループは、今回の報告書について、これまでの提案が全く活かされていないと落胆している。移民留置所の実態を暴露した本「アメリカン・グーラグ」(グーラグとは強制収用所の意味)の著者であるマーク・ダウ氏は、「DHSが移民の拘留、移民関税執行局、警察の役割を同時に担っている限り、不当な扱いはなくならない。強制権のない監査は無意味だ」と言う。アムネスティ・インターナショナルUSAのメアリー・ショウ氏は、「米国の移民システムは、9/11からさらに悪化した。保護を求めて来る者と攻撃のため入国する者を一緒にしてはならない」と述べている。

同報告書を受けて、国内10数の団体はDHSに対し、強制力のある留置関連規則の制定を求める請願書を提出した。DHS監査総監室の刑務所・留置所実態調査について報告する。

翻訳/サマリー=IPS Japan

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|南太平洋|フィジーの将来を決める賢人会議報告書

【スヴァIPS=シャイレンドラ・シン】


クーデターが頻発するフィジーは、2006年12月の軍事クーデターを契機に断絶した国際社会との関係を修復し、必須の財政支援再開の道を開くことができるか。成否は、太平洋諸島フォーラムの賢人会議(EPG)が作成する現地調査報告書にかかっている。

賢人会議は1月29日に作業を開始した。くしくも同日、アメリカの数百万ドル規模の支援中止の公表があり、地元紙は軍による人権侵害の記事を掲載した。

有力団体「市民憲法フォーラム(Citizens Constitutional Forum)」のダクブラ(Jone Dakuvula)企画担当代表はIPSの取材に応じ、支援を中断した英連邦、アフリカ・カリブ海・太平洋諸国(ACP)、EU、アメリカは関係正常化の開始に向け、賢人会議の評価を参考にするだろうと述べ、「賢人会議の活動の重要性」を指摘した。一方、同国の基幹産業である砂糖産業向け3億5,000万ドル規模のEUによる支援パッケージにはまだ疑問符がついているとも語った。

賢人会議を派遣したのは、オーストラリア、ニュージーランドを含む16カ国で構成する太平洋諸島フォーラム(PIF)の行政機関であるPIF事務局。PIFは太平洋地域における基幹的政治経済組織。賢人会議を構成する4人の委員は、バヌアツのキルマン副首相・外相、サモアのルイガ天然資源環境相、パプアニューギニアのアメット元最高裁判所長官、コズグローブ元オーストラリア軍長官。

賢人会議の使命は「フィジーが憲法と法律に則って民主的政権を回復する道を開くことであり、フィジーがこれを達成するために、PIF事務局ならびに加盟国はどのような役割を果たすことが最も有益であるか考慮することである。」委員はイロイロ大統領、暫定首相のバイニマラマ司令官と面会した。

賢人会議のキルマン委員長は面会後も多くを語らず、週末の訪問終了までに声明を発表すると記者団に語った。バイニマラマ司令官は、面会は「有意義だった」とラジオを通じて語った。

賢人会議の一行は週末までに、フィジーで影響力を持つ部族代表の大酋長会議、さらに政党、市民団体、その他関係者と面会する。さらに追放されたガラセ前首相の出身地ラウ諸島のマバナ島に飛び、同氏と面会する予定。軍はガラセ前首相を巧妙に同島に追いやり、首都スヴァに帰還することを許可していない。一行の訪問には米政府の後ろ盾があり、米政府は声明の中で、太平洋諸島フォーラムが迅速な民主主義の回復を促す努力をしていることを支持すると表明。さらに、軍政はフィジーの政治経済的発展ならびにアメリカとの関係を著しく阻害するものであり、米政府はフィジーに民主政治を回復するために賢人会議、太平洋諸島フォーラムと緊密に連携する用意があると述べている。

これに先立ち、米政府はフィジーのミレニアム・チャレンジ・アカウントへの支援停止を発表している。同じメラネシア諸国のバヌアツは最近、同プログラムで6,500万ドルの支援を受領している。

バイニマラマ司令官は28日国営テレビのインタビューで、暫定政府は3年から5年の任期を全うすると答えたが、ダクブラ氏は賢人会議が通常1年半から2年のうちに選挙の実施を求めると言及。さらに人権の尊重、報道と言論の自由、総選挙と民主的政権に向けた現実的スケジュールも強く求められると述べた。

南太平洋大学の作家、学者のソム・プラカシュ(Som Prakash)氏はIPSの取材に応じ、軍が迅速に民主主義に回帰すれば、フィジーは国際社会の承認と尊厳を取り戻し、国内的にも反体制運動の危機が遠のくことになると語った。

さらに、発展途上国のフィジーは多額の資金を失うわけにはかない、EUの砂糖産業復興資金を失えば大変なことになる。「砂糖はフィジーの生命線。砂糖の収入は国内に留まり分配される。国外に流出してしまう観光業収入とはわけが違う」と指摘した。

軍による人権侵害が訴えられていることで、事態が複雑になる可能性がある。『フィジー・デイリーポスト』紙は29日、民主化回復活動家に対する軍の人権侵害を報じたオーストラリアの『エイジ』紙記事を1面に引用。

記事は、女性活動家が襲われ、性的屈辱を受けたと報じている。EUは協議を開始、人権侵害が確認されれば、新たな制裁に発展する可能性もある。(原文へ) 

翻訳=IPS Japan


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