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|ナイジェリア|過去との決別を願う人権活動家

【ラゴスIPS=トイ・オロリ】

ナイジェリアの金融の中心都市、ラゴスを本拠とする人権団体「市民自由機構(CLO)」によると、長く続いた軍事独裁政権の後、1999年にナイジェリアに民主主義がもたらされたが、超法規的殺害は止むことなく、むしろ数は2倍に増えて、いまや日常茶飯事となりつつある。 

「軍事独裁の時代には、無益な殺生や器物損壊がほとんど国策のように行われていたが、新たな民主主義政権ではそうした醜い現象が、衝撃的なことだが、治安警備員、特に警察官による無実の民間人の不法な殺害というさらに悪化した形で目撃されている」とCLOが過去に発行した報告書は指摘している。 

この調査は1999年5月から2005年6月までの6年間に焦点を当てている。だが著者でありCLOの法執行プロジェクト代表であるダミアン・ウグ氏は、「現在も状況は改善されていない」とIPSの取材に応じて語った。「過去8年間に膨大な数の超法規的殺害を見てきた。警察、軍、国が雇った自警団が手を下している」。 

超法規的殺害とは法律によって認められていない処刑である。ナイジェリアの刑法では人間の不法な殺害は死刑に処される犯罪である。 

ナイジェリアでは、平均して少なくとも1日に5人が超法規的な状況で殺害されていると、CLOは推測している。そのほとんどが警察署で行われるとされ、武装強盗の容疑者は即座にその場で尋問中に処刑されるといわれている。一方警察側は容疑者の逃亡を阻止しようとして殺害が起きると主張している。 

「1日に5人という数字はかなり控えめなものだ」とウグ氏は語り、「地方の警察署や自警団では報告されない殺害もある。しかも、警察と軍隊が頻発する紛争に躍起になっている、問題の多い石油埋蔵量の豊富なニジェール・デルタで起きている事件は、数字に含まれていない」と言い添えた。 

CLOの報告書は、超法規的殺害が増加したのは、経済状況の悪化に原因があるとしている。オルシェグン・オバサンジョ大統領が政権にあった最後の数年に石油の歳入は増大したが、国連開発計画によると、ナイジェリアの1億4,000万の人口の80%以上が1日1ドル以下でいまだに生活している。この状況が銃犯罪、強盗、誘拐の増加を招いている。 

オバサンジョ大統領は今週退陣した。政権の座にあった8年の間に、50万人もの労働者が失業したとウグ氏はいう。多くは貧窮のまま放っておかれ、家族を養うために苦しんだ。「子供は授業料が払えず学校へ通えない。20歳以下の若者の多くが狂信的宗教や犯罪組織に加わり、犯罪に関わっていった」。 

警察は無法状態の広まりに「圧倒」された。「そのために問題を超法規的殺害により解消しようとしている」とウグ氏は語る。「この人間を殺せば、舞い戻ってきてまた面倒をかけられることはないと考えている。犯罪の可能性のあるものを減らすために超法規的殺害という手段を取っている」。 

警察が、自分たちの経済状態に憤りを感じ、その憤りを人々に放出しているという側面もある。ウグ氏は「数ヶ月給料を支払ってもらえない警察官は腹を立てている。検問所で警察官が賄賂を受け取ることは現在禁止されているのに、政府の役人や政治家が大金を流用しているのを見て、怒りを社会に向けている」と指摘する。 

IPSの取材では、自警団を備えている州の知事は、武装強盗の発生件数の多さに対処するために自警団が必要だと主張しているが、そうした自警団もまた、容疑者の不法な処刑を行ったとして非難されている。 

退陣するナイジェリア政府は、バカシ・ボーイズなど、こうした自警団のいくつかの禁止に乗り出し、これらの自警団が政治的目的のために利用されているとして告発していた。 

「当局が超法規的殺害の苦情について行動を起こしたのは極めてまれだった」とウグ氏はいう。「過去8年間で、政府や警察当局によって検挙された警察官はほとんどいない」。また、ウグ氏の知る限り、超法規的殺害にかかわったとして裁判所に訴えられた兵士は皆無である。 

一般市民の抗議を受けて当局が行動を起こしたことは一度だけあった。それはナイジェリアの首都アブジャのアポで2年前に警察によって6人の若者が殺害されたときのことだ。アムネスティ・インターナショナルの2006年8月22日の声明によると、「いわゆるアポの6人とは、5人の若いイボ人の商人グループと1人の女子学生で、武装強盗の疑いで逮捕され、アブジャで拘留中に処刑された。この事件では死体が警察との銃撃戦で殺された武装強盗として公開された」。 

ウグ氏によると、「当時ナイジェリアは国連の安全保障理事会の一員になろうとしていたため、この事件は特殊だった。国連の超法規的殺害に関する特別報告官がナイジェリアを訪問する予定にもなっていたため、政府は何かをする必要があり、査問を行ってみせた。だがそれ以来、数千人が殺害されながら、何もなされていない」。 

活動家は軍事政権の間も超法規的殺害の数は多かったと認める。しかし軍隊が国を支配していた頃には、殺害をめぐる報復として、町や村が兵士や警察の手で壊滅状態にされることはなかった。1999年11月にはニジェール・デルタのバイエルサ州にあるオディの町が破壊された。その2年後、兵士たちはナイジェリア中央部のベヌエ州にあるザキ・ビアムとバアセ地区に大挙して押しかけ、数百人の民間人が死亡し、活動家が検挙された。 

IPSはラゴス警察に人権組織とウグ氏の主張についてコメントを求めた。広報官は、自分自身が今の任務にある過去2年間に、ラゴス州で略式処刑が行われた事実はないと否定した。「超法規的殺害は起きていない。それがコメントである」と警察のオルボデ・オジャジュニ広報官は答えた。 

このように警察が問題を認めようとしないため、CLOは積極的に国民の意識を高めるキャンペーンに乗り出し、政府役人や国際社会に向けてアピールしているという。さらに、「拷問と超法規的殺害に関する国家的警告」というネットワークを立ち上げ、拷問や超法規的処刑などの行動を監視している。このネットワークは全国に3,000人を超える会員がいる。 

「だれかが、どこかで、『この人々は自らの罪をあがなうべきだ』という日がやってくるのを期待している」とウグ氏は語った。(原文へ) 

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩 

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|メキシコ|堕胎は犯罪ではなくなった

【メキシコシティーIPS=ディエゴ・セバジョス】

メキシコシティー議会は4月24日、妊娠12週間までの中絶を合法化する法案を可決。同法案は、民主革命党(PRD)のマルセロ・エブラルド市長の署名を待つばかりとなった。

投票に先立ちPRDメンバーのもとには電話/電子メールによる殺人予告や脅迫が相次いだという。エブラルド市長は、新法は堕胎を奨励するものではなく、闇手術による死亡や事故を防ぐためのものと語り、性教育や避妊方法の普及に努力していくと語っている。

しかし、市民投票を要求し7万人の署名を提出していたカソリック教会および保守派は、法案可決に猛反発。堕胎反対組織Comite Pro Vidaのリーダーは、「病院/診療所に押しかけ中絶手術を阻止する」と警告している。また、メキシコのアギーレ大司教も、堕胎を補助した者は全て破門すると発表している。

民間調査会社および全国紙が行った世論調査によると、首都住民の過半数は中絶合法化を支持している。(反対は約40パーセント)

保守の国民行動党(PAN)のカルデロン政権は堕胎に反対しているが、政府スポークスマンは新法を尊重すると発言。しかし、PAN幹部は最高裁への異議申し立てを行う旨明らかにしている。

メキシコでは強姦による妊娠、母体の危険を除き中絶は犯罪であり、1-6年の懲役と定められているが、年間100万件といわれる施術にも拘らず、2000-2006年の逮捕者は僅か28人となっている。

WHOによれば、国連加盟193カ国の内188カ国が母体の健康を考慮した中絶を認めており、理由の如何に拘らず禁止しているのはチリ、エルサルバドル、ホンジュラス、ニカラグア、バチカンのみという。ラテンアメリカでは、中絶が認められているのはキューバとガイアナのみ。しかし、同地域では毎年約4百万人が中絶手術を受けており、5千人が死亡。30-40パーセントが重度の合併症に苦しんでいるという。首都メキシコシティーの左派市議会が可決した妊娠中絶合法化法案について報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩

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国連は米国の資金援助をものともせず

|国連|武器貿易条約案、策定の動き本格化

【国連IPS=タリフ・ディーン】

米バージニア工科大学で発生した銃乱射事件で銃規制の強化を求める国際世論の高まりを受け、国連は小型武器の世界的拡散を規制する新たな国際条約の協議に乗り出している。

アムネスティ・インターナショナルと International Action Network on Small Arms(小型武器規制に取り組む国際ネットワーク: IANSA)と共に武器貿易条約(Arms Trade Treaty: ATT)の実現に向けた活動を続けている、オックスファム・インターナショナルのジェニファー・アブラハムソン氏は「各国政府は国際人道法および国際人権法に基づき具体的な計画案を今月末までに国連に提出することになっている」と現在の状況を述べた。

国連総会で昨年12月、加盟国中153カ国の支持を受けて採択された武器貿易条約(ATT)では、拳銃を含む小型武器の製造・販売の規制が項目として盛り込まれる予定だ。

現在、同条約に関して米国、中国、ロシア、一部のアラブ諸国は懐疑的な立場を示している。元アイルランド共和国大統領であり元国連人権問題担当高等弁務官のメアリー・ロビンソン氏は、「小型武器貿易の規制を求めるキャンペーンを通じて、反対国に対して銃規制の必要性を説いていくことが重要だ」と語った。

アブラハムソン氏は「法案策定に何らかの障害が出たとしても、(『対人地雷禁止条約』の時のように)国連の外でも活動は継続できる。ATT実現に向けた強力なコンセンサスはすでに形成されているのだ」と強調した。

武器移転を規制する条約作りの具体化に向けて一歩を踏み出そうとする国連の動きを報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩

|スリランカ|茶農園の労働力不足

【コロンボIPS=フェイザル・サマト】

かつてスリランカの特産品であり、輸出額第1位を誇った紅茶が、もはや国の経済問題の解決策ではなくなってきた。1960年代に始まったインド系タミール人の大量追放以来、プランテーションの労働者不足が深刻になったためである。 

記事本文1964年10月、インドとスリランカはスリランカのプランテーションで働く「インド系タミール人」60万人を段階的にインドへ送還するという協定を結んだ。37万5,000人はスリランカの市民権を得たが、その多くはスリランカ北東部の「スリランカ系タミール人」が優勢な地域に移った。 

茶農園に残った人々の中でも、茶摘みの仕事を子供が受け継ぐという習慣が失われている。さまざまなチャンスが広がり、大学に進んで医者などの職業に就く農園労働者の子供もいる。

 「自分の2人の子供を茶農園で働かせたくない。もっといい仕事に就いて幸せになってほしい」と、ハットンの丘陵地のプランテーションで働くP.ジャヤラニさんはいう。「茶畑の仕事には労働の尊厳がない」。

また別のインド出身の茶農園労働者のS.ラジェスワリさんは、自分の子供には農園から出て行って欲しいと思っている。「13年間この農園で働いてきたが、生活は良くならない。子供たちが望んでも茶農園では働かせたくない。もっといい生活をしてほしい」。 

 プランテーションの関係者の話では、祖父母や両親の跡を継ぎたがらない茶園労働者の子供が増えている。1世紀以上前の植民地時代を支配していた英国人の農園主に、南インドのタミール・ナドゥ州からスリランカへ連れてこられた人々の子孫が、代々の仕事を厭うようになった。 
 
 加えて、もはや紅茶産業は優秀な人材に魅力的なものでなくなっている。数十年前には首都コロンビアの一流の学校の優秀な卒業生が、プランテーション経営に幹部補佐として参入し、多くの使用人に囲まれて植民地時代からの邸宅で贅沢な生活を送り、英国人の残した壮大なクラブハウスを中心とした華やかな社交生活を楽しんだ。 
 
だが今日の状況は植民地時代とは全く様変わりし、労働組合の力が強まり、労働者の権利意識が高まって、ストライキがひんぱんに起きるなど、若い管理職にとって経営は容易ではなくなった。 
 
 「中間管理職の既婚男性は、以前とは異なり、プランテーションで働くことを好まない」とプランテーション省のJ.アベーウィックラマ秘書官はIPSの取材に応じて語った。 
 
 プランテーション企業2社を経営するダヤン・マダワラさんは、ライフスタイルの変化により管理職は農園の仕事に就くのを思いとどまるという。「子供の教育と多様な職業のチャンスを考えると、茶農園から遠ざかる」。関係者によると、毎年、中間管理職も茶園労働者も10%ずつ減っているのが現状である。 

茶農園で働く親と同居しながら、別の仕事先で働くものが増え、現在、茶農園で仕事をしながら生活している人口は100万人だが、実際に茶園で働いているのは40万人に過ぎない。プランテーション企業を代表する農園主協会のM.Goonatillake事務局長は、世界銀行の調査を引用して、「農園に住む一家庭当たりの茶農園労働者の数は、統計によると2.6人から1.9人に減った」という。 

「これは茶農園に住みながら、農園内で働く人の数が減っていると意味している。おそらく茶農園で無料の家に住み、子供の医療も診てもらい、親が仕事をしている間は子供の世話を任せるなど、あらゆる恩恵を享受しながら、農園の外で仕事をしている」とGoonatillake事務局長は語った。 

Goonatillake事務局長は、労働力不足に悩むプランテーションを経営する企業が、手摘みの代わりに「一心二葉」を摘みとる刈り取り機の利用などの機械化を進めるよう期待している。「すでに取り入れているところもある」。 

だが、スリランカの紅茶は特に女性労働者による手摘みを売り物にしているため、機械化は打開策にならないかもしれない。機械の利用によって客を失う恐れがある。「機械摘みにするとこれまでの客を失う可能性がある」とアベーウィックラマ秘書官はいう。 

労働力不足を克服するために一部で検討されているのは、企業がプランテーションの区画を労働者へ貸し出すという方策である。企業は労働者から葉を買い、工場を経営するだけでいい。 

商工会議所連盟支部のG.ラサイア副部長は、多くの若者が、さらに教育を受けて、この地域に次々に誕生している教育機関で、コンピュータ技能を学び、英語に堪能になりたいと望んでいるという。 

スリランカの紅茶は、中部丘陵地、内陸部、起伏のある低地で栽培され、世界で最高の品質を誇っている。ケニアなどの新たな茶の生産国との競合で、スリランカでは従来のバルク梱包から個別包装へと切り替え、リプトンやインドのタタ紅茶などの世界的なブランドとの争いも首尾よく進めている。 

茶農園経営への新規参入はなく、スリランカ最大の企業連合のジョン・キールズ・グループなどの大企業は、数年前にプランテーション事業を売却し、その資金を不動産業やレジャー産業につぎ込んでいる。 

茶農園の若者も、生活の質を高める携帯電話、衛星テレビ、三輪自動車、分割払い、バイクなどに心を奪われ、先祖たちのように茶農園で単調な重労働をして生活を送る必要性を感じていない。 

けれども農園主協会のGoonatillake事務局長は、多くの若者がよりよい仕事を求めてコロンボに出かけていくが、小さなうらぶれた道路わきの食堂や宝石店で長時間労働を強いられるはめになるという。「茶農園での生活より、ずっと大変だ」。 

被服縫製工場や毎年数千人を海外へ送り出す移住労働者産業も、茶農園の労働者を奪っている。特に女性は、中東や東南アジアでの家政婦の仕事を求めて、茶農園を去る。 

移住労働者からの送金と服飾産業は、紅茶を追い抜いて主要な外貨の稼ぎ手になっている。2006年には、スリランカは紅茶により8億ドルの収益を得た。それに比べて、服飾品の輸出は27億ドル、移住労働者からの送金は21億ドルに上った。 

興味深いことだが、こうした分野すべてにおいて女性が特別な役割を果たしていること考えると、やはり女性はスリランカの経済を動かす原動力に思える。(原文へ) 

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩 

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|ナイジェリア|死刑囚に希望の光

【ラゴスIPS=トーイ・オロリ】

IPSが入手したナイジェリアの司法行政改革に関する大統領委員会の文書によれば、囚人4万人が裁判にかけられることもあるいは判決が下されることもないまま放置されているという。この結果、刑務所は過密状態にあり、更正や社会再統合プログラムもままならないと報告書は述べている。国連の特別報告者も昨年、囚人の事件簿のうちおよそ3.7パーセントが紛失されていると、刑事司法制度の無秩序ぶりを報告した。 

報告書はまた、マラリア、結核、インフルエンザ、肺炎など予防可能な疾病が刑務所では見られており、その原因は主に崩れ落ちそうな建物と貧しい食事にあるとしている。 

報告書をすでに大統領に提出した委員会は、ナイジェリアの司法制度、さらには死刑執行の恐怖の中で暮らすおよそ700人の死刑囚の運命を一夜にして変える大胆な提案を行った。 

15年以上が経過した死刑囚は釈放し、10年以上および病人(精神病を含む)の死刑囚は事件の見直しを行い、現時点で111人を数えるその他死刑囚は終身刑に減刑するというものである。さらに、5年以上経過した囚人で事件簿が紛失している者は釈放すべきとも提言している。 

委員会の書記長Olawale Fapohunda氏はIPSの取材に応えて、「正式なモラトリアム(死刑執行停止)が必要。死刑制度は憲法で認められているが、南アフリカで実現されたようにすべての死刑囚を終身刑に減刑できるよう憲法改正の道を探っている」と述べた。 

一方国会でも司法制度を拡充し、近代化を図るための法案が審議されている。1999年に初めて提出された法案だが、これまで国会の会期が変わるたびに一から審議がやり直されてきた。Fapohunda氏は、現会期中に採択されるよう、委員会は懸命に努力していると述べた。 

ナイジェリアの司法制度改革の動きを報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

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|アフガニスタン|タリバン、アフガン人通訳者を殺害

【カブールIPS=ダウド・カーン、サマド・ロハーニ】

(タリバンの指揮を執るムラー・ダドゥラー最高司令官のスポークスマン)シャブディン・アタル氏は8日、パジュワク・アフガン・ニュースの電話取材に応じて、アフガン人通訳者マドゥジマル・ナシュクバンディ氏が殺害されたことを明らかにした。

同氏はイタリア人記者ダニエレ・マストロジャコモ氏と共にイスラム原理主義勢力タリバンに誘拐・拘束されていた。ナシュクバンディ氏の切断遺体は、アフガニスタン南部ヘルマンド州で発見されたが、この現場は(先月19日に解放された)マストロジャコモ氏がイタリア政府関係者に引き渡された場所でもある。

マストロジャコモ氏の解放の裏では、投獄されていたタリバン兵士5人の身柄と交換することを条件とした交渉が行われていたされている。しかし今回アフガニスタン政府は、タリバン幹部の解放要求をめぐる交渉を拒否したため、ナシュクバンディ氏は殺害されたと見られている。

 ランギーン・ダドファル・スパンタ外務大臣は先月29日、アフガニスタンメディア会議(IPS-The Killid Group共催)の席で「テロリストの釈放を求めるタリバンと交渉を進めるつもりはない」と述べた。タリバンが拘束していたアフガニスタン人通訳者の殺害事件について報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan

|対外援助|国益最優先の政府と国民との間に温度差

【シドニーIPS=ニーナ・バンダリ

オーストラリアの国民の多くは、対外援助を貧困削減と持続可能な開発を目的に行うべきであると考えている。しかし、国会議員の大半は商業的利益に即した対外援助を目指しているようだ。オーストラリアのNGO団体AID/WATCHは5日、ニューサウスウェールズ議会で対外援助政策に対する国民と政府との考え方には大きな開きがあることを指摘した。

MDG(ミレニアム開発目標)によると、途上国は2010年までに政府開発援助(ODA)を国民総所得(GNI)の0.5%、2015年までには0.7%にするという目標を掲げている。

一方、オーストラリア政府は2010年までに援助総額を32億米ドルにまで増やすとしているが、対外援助の割合としては僅か0.36%に過ぎない。2006年から2007年にかけて、同国のODA総額は23億ドル(GNIの0.3%)で、OECD加盟国22カ国中19位である。

AID/WATCHは、オーストラリア政府が『貧困対策を中心とした人道的援助』から大きく逸れて、『自国の経済成長に焦点を当てた援助』へと進んでいることを懸念している。AID/WATCHの調査によると、71%の国会議員が開発援助の目的は国益増進であるとしている。

AID/WATCHのケイト・ウィーン氏は「オーストラリアが(援助供与国である)パプアニューギニアソロモン諸島との関係の緊密化を進めているなかで、このような調査結果が出るのは非常に残念だ」と語る。対外援助をめぐるオーストラリア国内での意見の違いについて報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan

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|エジプト|ムスリム同胞団への弾圧強まる

【カイロIPS=アダム・モロー、カレッド・ムーサ・アルオムラニ】

エジプトの反体制的運動である「ムスリム同胞団」に属するメンバーの逮捕が相次いでいる。

3月はじめ、国営日刊紙『アルアフラム』のオサマ・サラヤ編集長は、ムスリム同胞団の最高指導者メフディ・アケフをアルカイダやオサマ・ビンラディンに例えた。3月7日の独立系『アルマスリ・アルヨーム』紙によると、サラヤ氏は「(ムスリム同胞団とアルカイダの)両者とも、イスラム教徒の中に過激主義の文化を持ち込もうとしている」と述べたと伝えられている。

 アケフ氏は、3月13日、ムスリム同胞団が暴力的手法を称揚しているとする政府の主張は誤っていると発言した。

しかし、3月に入り同集団のメンバー60人以上がすでに逮捕され、昨年12月以来の逮捕者はこれで約240人になった。「禁止集団への参加」「抗議活動の教唆」「政府転覆の企図」といったことが罪状となっている。

アケフ氏によると、この一連の弾圧は、政府が提案している憲法改正にムスリム同胞団が反対していることへの政府の反応だという。反改憲派は、改憲により現在の与党である国民民主主義党の権威が強められるだけだと批判している。

反体制派週刊誌『アルカラマ』のカンディル編集長によれば、政府はムスリム同胞団に対して挟み撃ち的な攻撃をかけているという。すなわち、憲法レベルにおいては、第5条・88条の改正によって同胞団のメンバーが選挙に出られないようにすることを狙い、他方で資産凍結によって同胞団を兵糧攻めにしている。

カンディル氏は、1950~60年代のナセル大統領時代における弾圧と現在のそれを比較した。ナセル時代には、貧困層に対する社会政策との組み合わせによりムスリム同胞団をうまく封じ込めることができたのに対し、現在は、貧困と失業が進む中、治安政策を中心に弾圧を図ろうとしているという。

エジプト・ムスリム同胞団に対する弾圧について報告する。(原文へ)

翻訳/サマリー=IPS Japan


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|米国|ゲスト労働者に奴隷のような扱い

【ワシントンIPS=エリ・クリフトン】

3月12日ワシントンで発表された報告書によると、米国の所謂ゲスト労働者は、仕事斡旋業者に不動産証書を渡すことを強要されたり、雇用主にパスポートやビザなどを取り上げられ捕囚状態に置かれたり、基本的な生活/保健レベルに満たない扱いを受けているという。 

南部貧困法律センター(Southern Poverty Law Center:SPLC)は、「奴隷状態:米国のゲスト労働者プログラム」と題された報告書の中で、米労働省が管理するH-2ゲスト労働者ビザは、母国および米国内で移民労働者を搾取するシステムを作り上げた」と述べている。

同報告書の著者でSPLCの移民正義プロジェクトのメアリー・バウアー部長は、「議会は滅茶苦茶な移民制度の改革を行うべきだが、それを広大な新ゲスト労働者プログラムに頼ってはいけない。現行プログラムの実態は恥じ入るばかりであり、労働者の権利保護は殆ど行われていない」と言う。 

48ページの同報告書は、H-2ビザで入国したゲスト労働者に対する虐待の詳細を明らかにしている。同ビザは、砂糖業界に外国人労働者使用を認めるため1943年に導入され、議会は1986年、適用を非農業労働者に拡大した。 

2005年には、H-2のゲスト労働者12万1000人が米人雇用主により“輸入”されている。(H-2Aの農業労働者は3万2000人。森林、海草加工、造園、建設その他非農業作業に従事するH-2B労働者は8万9000人) 

これら労働者に対する搾取は、母国にいた彼等が、米国内での高賃金、住宅購入の可能性を謳った宣伝にのった時点から始まる。 

これらの民間労働斡旋業者は、労働者に対し時に数千ドルに及ぶ金の支払いを要求する。多くの労働者は、この金を月20%という高利で金貸しから借りるのだ。 

また、労働斡旋業者は時として、労働契約を満了できないことを見越して労働者に家や車の譲渡証書を担保として残すことを要求する。 

H-2ビザを取得し米国に到着した時点で既に大きな負債を抱えている労働者は、約束された賃金が嘘であったことを知るのである。報告書によれば、例えば松植樹業界では、労働者の月収は1,000ドル以下という。 

米国内のゲスト労働者虐待は、雇用主が彼等のパスポート、社会保険カードを取り上げることから発生する。もし強制退去に直面した場合、これら書類は彼等にとって非常に重要となる。 

労働者達は、書類は、彼等が契約の途中で逃げ出すことを防ぐため取り上げられるのだと言う。 

SPLCは、これら書類の返還を拒み、労働者を不法労働者とするためパスポートを破り捨てたケースを報告している。 

不法労働者となれば、労働者は司法当局への訴えはできず、雇用主が当局に通報した場合、強制送還を避ける法的手段がなくなる。 

報告書は、雇用主は労働者に対する圧倒的力により、約束を裏切り、賃金を引き下げ、労働時間をごまかしていると述べている。 

酷使、虐待、不法な取り扱いに抗議した労働者は、暴力や強制送還をちらつかせるなどの“脅迫作戦”に会う。 

H-2ビザ雇用主による虐待に抗議し法的手続きを取る者に暴力が加えられるのは珍しくない。 

ゲスト労働者ヒューゴ・マーチン・レシノス・レシノスは、最低賃金および超過勤務規則違反を理由にExpress Forestry社に対する集団訴訟を起こし、自宅で数人の男から暴力を振るわれた。 

報告書は、ゲスト労働者を虐待から守る現行の連邦法および規則、またH-2ビザ制度により保証されているゲスト労働者の保護に関する連邦機関の強制執行力を強化すべきと提案している。 

SPLCは、議会はゲスト労働者に対し、司法システム/裁判所への意味あるアクセスを保証する必要があるとしている。 

報告書は、移民手続きは今後変更されるが、移民労働者の権利に対する保証条項を保護、強化する必要があると述べている。 

ニューヨーク移民連合で労働者権利支援を担当しているミラン・バット部長は、IPSのインタビューに応え、「経済格差は搾取の段階に来ていることから、今後の米国への移民流入は、国際的移動を考慮したより現実的な対処が必要」と語っている。 

米議会両院は非公開で包括的移民改正法案を議論しているが、SPLC報告書はそのような動きの中で公表された。 

殆どのアナリストは、同法案には現在国内に居住する不法労働者に市民権を認める何らの条項が盛り込まれると見ているが、投票は、早くても2008年11月の大統領選挙後になるだろう。 (原文へ

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩 

|ドミニカ共和国|小麦と砂糖で栄養向上計画

【サント・ドミンゴIPS=ディオゲネス・ピナ】

2月15日、公衆衛生省は国際機関と共同で食品栄養添加プログラムを立ち上げた。

ドミニカ共和国では、ビタミンAの欠乏で毎年350人が死亡、葉酸の欠乏で脳と脊髄に障害のある新生児が400人誕生し、多くの女性が周産期で鉄欠乏性貧血に苦しんでいる。

プログラムはミレニアム開発目標(MDGs)を達成するためにもこれらの疾病と障害の削減をめざし、小麦粉に鉄・葉酸・複合ビタミンBを、砂糖にビタミンAを添加しようというもの。市民団体、食品会社、研究機関が共同で構成した微粒栄養素委員会が GAIN(Global Alliance for Improved Nutrition:栄養向上のためのグローバル同盟)から190万ドルの寄付を獲得して実現した。

 国連世界食糧計画(WFP)によると、ドミニカ共和国では近年栄養失調が拡大し、昨年は人口の7.2%に栄養失調が及んでいる。2003年の三大銀行倒産が史上最悪の経済危機をもたらし、飢餓と栄養不良が拡大したことが原因である。

このようなプログラムは短期間で終了してしまうこと、そもそも栄養素の添加よりも栄養価の高い食品の生産に目も向けるべきであることなどが問題点として指摘されている。

ドミニカ共和国における小麦粉と砂糖のビタミン・ミネラル添加プログラムについて報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩

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