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|パキスタン|モスク襲撃後にタリバンに立ち向かう政府

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【ペシャワールIPS=アシュファク・ユフスザイゾフィーン・エブラヒム

アフガニスタンとの国境近くで活動するタリバン寄りの反政府勢力は、政府との和平交渉を打ち切り、7月10、11日のイスラマバードのラル・マスジード(赤いモスク)への軍の襲撃に報復する決意であることを、週末に80人が死亡した治安部隊に対する一連の自爆攻撃により示した。

反体制勢力の強い北西辺境州(NWFP)での反発を予想し、バルヴェーズ・ムシャラフ将軍を大統領とする軍事政府は、ラル・マスジードの施設の制圧後まもなく、部隊を急きょ派遣した。これに対し、この地域からの政府軍撤退を交渉していたタリバン寄りの勢力は、政府軍の移動部隊と防犯施設に自爆攻撃を仕掛けて怒りを示した。

「和平交渉は終わった」とアブドラ・ファルハド氏はNWFPの州都でありアフガニスタンへの主要な出入り口であるこの町、ペシャワールで記者団に語った。

 政府役人は15日に少なくとも44人が自爆攻撃で死亡したことを確認した。スワト地区を移動中の軍の移動部隊が襲撃され、18人が殺害された。さらに警察官採用センターが人間爆弾による攻撃を受け、26人が死亡した。

14日にはワジリスタン北部で少なくとも26人の兵士が車による自爆攻撃で殺害された。ミランシャの町では、タリバンにより、10カ月の和平協定は終わったと告げるビラが配られた。声明は「我々は同胞の生命と財産の安全と保護を目的として協定に調印した。だが政府軍はタリバンへの攻撃を続け、多くの人々を殺害した」と述べている。

2006年9月5日の協定のもとに、在アフガニスタン米軍との合意の一環としてタリバン及びアルカイダ分子と闘ってきたパキスタン軍は退却した。見返りに、民兵はハーミド・カルザイ大統領を支援している米国とNATOの部隊に対する国境を超えた攻撃を停止することに合意した。

ところが、どちらの側も協定の実施状況に関して満足せず、ラル・マスジードの騒動のときにも、軍の25か所の検問所からの撤退に関して交渉が行われていた。

週末の治安部隊への攻撃は、扇動的な聖職者であるマウラナ・ファジルッラーによる、ラル・マスジード強襲を行なった政府に対するジハード(聖戦)の呼びかけに従ったものだった。ラル・マスジードの施設では子供を含む100人以上が大量殺戮される事態となっていた。
 
 ラル・マスジードと付属する女性神学校ジャミア・ハフサでの軍の行動を擁護して、「危険なテロリスト」を暴き、2人の反体制派の聖職者兄弟によるシャリア法(イスラム法)を強行しようとする企てに対抗して国の威信を取り戻すため、テロとの戦いはまだ終わらないとムシャラフ大統領は語った。

弟の方の聖職者アブドル・ラシード・ガジは、テレビのインタビューに応えて、「ムシャラフ政府はラル・マスジードの施設を包囲するなど米国の命令で行動している」と語った後で、襲撃により死亡した。

13日に包囲攻撃が終了した後、ムシャラフ将軍は国民に演説し、神学校あるいはモスクといえどもラル・マスジードの聖職者が行ったような方法で要塞に転換することは決して許されないと強調した。

さらに、ラル・マスジードの運営陣とNWFPの過激派との間で確立されていた結びつきについて、大統領は、法律実施機関である警察の強化を、数を増やし、設備を整え、軍隊の支援を受けた6カ月の特別訓練を通じて行い、対処していくと宣言した。

「大統領は未来を方向付けており、その姿勢を持続可能にできれば、テロとの戦いにおいて我々に勝機がある」と、カラチに本拠を置く政治防衛専門家のイクラム・セーガル氏はIPSの取材に応じて語った。

NWFPでの交戦状態と宗教的過激派を根絶するための政府戦略について、大統領は「我々はすでにいくつかの機関に戦車を配備しており、今後も狂信分子や民兵と対決するために近代兵器を装備していく」と述べた。

週末の攻撃に対し、パキスタンのアフタブ・シェルパオ内務相は、「政府は断固とした行動を取る」と警告した。「政府はこれまで彼ら(部族の長及び民兵)が協定を厳格に実施していないと主張してきた・・・これで政府の行動が正当化される」

「ムシャラフ政府は宗教的道徳的権限という観点が非常に弱い状況にある。感情的な宗教問題が関与するときには、より高い道徳的宗教的権限が必要であり、法律的に正しい軍事力だけでは不十分である。宗教的な信頼感がないのだから、政府は抑制を示すべきだった」とイスラマバードに本拠を置くシンクタンク、ブラスタックスを創設したコンサルタントで防衛専門家のザイード・ハミド氏は語る。

政府の懸念は、襲撃の際の女性と子供を含む死亡者数の多さから悪評が生じていることである。「行方不明者リストの人数がさらに増えると犠牲者の数を隠そうとする政府の試みは反発を受けるだろう」とハミド氏は予測する。

「国家が数字を過少報告する必要はない」とセーガル氏はいう。「今回のような攻撃が行われれば、犠牲者が出るのは当然であり、国民はそれを受け入れるだろう。信頼できる筋からの報告によると、死亡したのは104人である」

モスクの内部で身を隠していた完全武装した訓練を積んだ民兵と軍隊との間で起きた戦闘では、11人の兵士も死亡した。

ハミド氏はムシャラフ大統領がワシントンからの圧力のもとにあわただしく行動を起こしたと考える。「米国はパキスタンの政治家が民兵に対して弱腰になるのではないかと感じて、作戦を完遂するよう圧力をかけたと思う。選挙の年の流血事件は決してよいことではない。理想的には、包囲攻撃を行いながら圧力を増した方がよかった。神経戦で耐えられなくなった」(この記事はIPS記者であるカラチのゾフィーン・エブラヒムとペシャワールのアシュファク・ユスフザイが作成した)(原文へ

翻訳=IPS Japan 

|リビア|ケニアに安価で石油供給へ

【ナイロビIPS=ステファニー・ニーウッド

6月初め、リビアがケニアに優遇価格で石油を供給することで両国指導者は合意、覚書に調印した。

石油業界関係者によると、この合意によりケニアは4,500万米ドル相当の石油施設の建設、ならびに2,200万米ドル相当のトラック・鉄道の積み替え輸送プロジェクトの契約をリビア筋の投資家と締結することになるという。

両プロジェクトについては、海外投資家の入札が行われる予定だが、ケニア・リビア両国はすでにプロジェクトの実行に向け話し合いに入った模様である。

リビアは、ケニアの陳腐化した石油精製施設の改修にも関心を示している。改修費用は3億2,200万米ドルに上ると見られている。

 両国の合意覚書によると、リビアはケニアの石油精製業が営業を継続するのに必要な160万tの原油の60%を供給する予定。ケニア全体で必要な原油、精製油は280万tに上る。

「どのようなものであれ、安価な石油は歓迎する」とケニア国営石油会社のアスマニ(Sumayya Hassan Athmani)総務部長はIPSの取材に応じて語った。「ケニア経済は発展途上にあり、発展には石油が必要。発展に応じて、石油需要も拡大しており、全輸入額の4分の1、国内総生産(GDP)の11%を石油購入に費やしている。石油価格が下がれば、多額の資金を他に回すことができる」

政府が石油の割引価格を公表していないので、ケニアにどの程度の節約がもたらされるか不明である。今のところ節約した資金が消費者に還元される兆候はない。
 
アスマニ氏は既存の石油精製所の改善に戦略的投資家が必要と主張。リビアのムアンマル・カダフィ指導者がその役を務めることになるかもしれない。

独立シンクタンク域内経済ネットワーク(Inter Region Economic Network: IREN)のシクワティ(James Shikwati)氏はIPSの取材に応じ、カダフィ指導者は今回の合意でサハラ以南へのコミットメントを示したと指摘。「リビアがケニアに参入すれば、市場に競争がもたらされる。有利な価格で、よりよいサービスが受けられるかもしれない。西側の石油企業は長い間石油価格を操作してきた。競争は良いことだ」と言う。

アメリカの投資会社コロニー・キャピタルは最近、リビア国営石油会社タモイルの過半数の株式を取得している。この1週間前には、大手石油多国籍企業ブリティッシュ・ペトロリアム(BP)がリビアと探査事業契約を締結している。シェル、エクソン・モービルなどの多国籍企業もリビアに戻った。

今年4月にアメリカが対リビア経済制裁措置を解除して以来、リビアはあらゆる機会を捉えて西側の投資を導入している。これはリビアの核兵器開発プログラム放棄宣言に対する『見返り』と見られている。(国連は経済制裁を昨年解除している)

アメリカなどがリビアを国際テロリストグループの支援国と指定した1986年以来、経済制裁は続いていた。リビアはパレスチナと紛争中のイスラエルに対する西側の支援に抗議、数十年にわたって石油の禁輸措置で政治的に対抗した。

リビアの外資導入は、政府の民営化計画に則ったもの。タモイルは事業をウガンダに拡大し、ケニア・ウガンダ間の石油パイプラインの建設、運用事業を落札した。

ケニア北東部のエルドレトからウガンダの首都カンパラを結ぶ全長320kmに及ぶパイプラインが完成すれば、ガソリン、ディーゼル油、灯油、ジェットA-1燃料の輸送が容易になる。

今回のケニアとリビアの合意の裏には、石油業界がケニアにおける油田発見を確信していることがある。同国ではすでに何百万ドルもの探査事業が展開中である。

「ケニアの近隣諸国、たとえばスーダンをみても、東アフリカは豊富な石油に恵まれているようだ。東アフリカに位置するケニアで油田が発見されるのは時間の問題だと信じている」とアスマニ氏は言う。

シクワティ氏はリビアのケニア参入は一見良いことのように見えるが、不安定要素はぬぐえないとし、「ケニアが利益を享受する可能性がある一方、リビアが国債石油カルテルに参加して石油価格操作に転じるかもしれない」と指摘する。

さらに、ケニア政府が節約額を消費者に還元しなければ、一般の人々は安価な石油から何も得ることはできない。

ケニアNGOの経済問題機関( Institute of Economic Affairs )でプログラム・コーディネーターを務めるオウィノ(Kwame Owino)氏はIPSの取材に対して、リビアがどのようにコストを削減するのか分からないと表明。「石油は米ドル建てで価格が決まる国際商品であり、国際市場で売買される。リビアがどのような方法で安価に石油を提供するのか不明である」と語り、「東南部アフリカ共同市場(Common Market for Eastern and Southern Africa: COMESA)に加盟する両国は、COMESAの場で議論を行った方がよいと感じている。加盟国間で多角的な合意を得ることができれば、経済的恩恵も大きくなる」と主張する。

リビアの対ケニア投資は石油部門に留まらない。今月初めケニアのキトゥイ(Mukhisa Kituyi)貿易大臣は、リビア資本によるナイロビの高級ホテル建設ならびに沿岸都市モンバサの展示場建設を発表した。

ケニアとしてはコーヒー、紅茶製品の新規市場としてリビアに期待すると同大臣は語った。(原文へ) 

翻訳=IPS Japan

|北米|NAFTA申し立ては棄却されるも、危険な条項は存置

【ワシントンIPS=エマド・ミケイ】

公的資金により維持される郵便網は競合相手カナダ・ポストに不当な優位性を与えており、事業が損なわれていると申し立ててきた米国の小口貨物運送会社最大手UPS(ユナイテッド・パーセル・サービス)による7年に及ぶ訴訟が棄却された。

この訴訟は、北米自由貿易協定(NAFTA)第11条に基づき提訴されたもので、こうした貿易協定が多国籍企業に対し主権を有する政府や国内企業に異議を申し立てる過剰な権限を付与することを示す一例として注目されてきた。

カナダ・ポストのCEOモヤ・グリーン氏は「長年UPSはカナダにおける不当競争の申し立てを行なってきたが、いずれの事例でも規制当局や独立した専門家から却下され、このたび国際法廷からも申し立てに根拠がないとの裁定が出された」と述べた。

一部通商問題専門家は、裁定は国営企業やサービスが第11条の対象外となることを示唆するものと述べている。しかし論争はNAFTAの規定の下で解決されたが、市民社会活動家らは、貿易協定は相変わらず問題有りと断言している。

カナダ郵便労組のデボラ・バーク全国会長は今回の裁定を評価しながらも、NAFTAの有効性を認めているわけではないとし、「NAFTAは、公共郵便事業と雇用を非公開裁判にかけるのをUPSに許した。雇用や公的サービスが脅かされる時には、一般市民や労働者にも発言の権利が与えられるべき」と述べている。
 
 NGOカナダ人評議会のジャン・イヴ・ルフォー氏は「第11条などの投資ルールはカナダが締結するNAFTAその他貿易協定から排除されるべき」と主張。スティーヴン・シュリブマン貿易担当弁護士は、対政府訴訟を外国企業に認めるNAFTAは違憲としている。

第11条の規定により、カナダ・メキシコ・米国各国政府に対し総額数十億ドル相当の請求が多数起こされている。納税者が納めた数百万ドルにかかわる問題であっても、訴訟の裁定は、その国の法廷制度外における「投資家と国」の間の仲裁裁判所で行われることになる。ワシントンに本拠を置くパブリック・シチズンズ・トレード・ウォッチによれば、終結となった訴訟数は少ないものの、和解合意の中でNAFTA裁判所または政府によって外国投資家にはおよそ3,500万ドルの裁定がこれまでに下されている。国内法や国内裁判所では認められない請求を多く含む。(原文へ

INPS Japan 

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|イラン|公開の石打の刑を非難する国連

【国連IPS=タリフ・ディーン】

Image from a German anti-stoning campaign. Credit: Jung von Matt
Image from a German anti-stoning campaign. Credit: Jung von Matt

 国連は6月20日、イランで予定されている姦通罪を犯したひと組の男女に対する公開石打の刑を激しく非難した。21日にイラン北部のガズヴィーン州にある町の広場で行うことになっていた石打の刑は延期になっているが、インターネットを利用した世界的なキャンペーンを含み、世界中から抗議の嵐を受けたためと思われる。 

国連のファルハン・ハク報道官は、「イランも批准している市民的及び政治的権利に関する国際規約は石打の刑を残酷で、非人道的で、恥ずべき罰だとして、明確に禁止している」と語った。「国際法では、死刑制度はもっとも重大な犯罪だけに科されるとされ、殺人罪だけに限定されると広く解釈されている。」 
 
ニューヨークに本拠を置くヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)によると、イランのガズヴィーン地方治安委員会は、43歳の女性Mokarrameh Ebrahimiとその11歳になる息子の父親の男性を公開で行われる石打の刑に処すると公表した。2人は11年前に刑事法廷で死刑判決を受けていた。非嫡出子を生んだ罪だった。 

昨年、アムネスティ・インターナショナルはイラン政府に9人の女性の姦通罪に対する石打の刑による死刑判決を撤回するよう緊急提言を行っている。HRWによると、イランのAyatollah Mahmud Hashemi Shahrudi司法長官は2002年12月に石打の刑禁止を命じたが、実際には引き続き行われている。イランの女性人権活動家と人権組織は「石打の刑永続的廃止運動」に乗り出している。 

この運動の一環である、インターネットで広まっている石打の刑の廃止を求める請願書は、イランの国会議員に送られ、「石打の刑で死刑にするという罰則そのものが、今日の世界では容認できない非人道的な残虐行為で、政府関係者がその行為を認可していることさえ恥ずべきことである」としている。 

イランでは現在、少なくとも11人が(女性9人、男性2人)石打の刑による死刑を宣告されている。国際的に非難を浴びているイランの石打の刑について報告する。(原文へ) 

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩 

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ボスニア・ヘルツゴビナ紛争の貯蔵武器をイラクへ

|米国|「イランによるタリバン支援」説、否定される

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【ワシントンIPS=ガレス・ポーター】

米国のディック・チェイニー副大統領に近いとみられる米政府「高官」筋が、アフガニスタンで活動するタリバンに対してイランが武器支援をしているとの説を各種メディアに流している。

しかしながら、この見方に対しては、即座に否定的な反応が出てきた。ロバート・ゲーツ国防長官は、イランがタリバンに武器を密輸している証拠は何もない、と6月4日の記者会見で語った。

Dick Cheney, Vice President of the United States./By Image from the U.S. Air Force website, but likely made by office of the President. -, Public Domain
Dick Cheney, Vice President of the United States./By Image from the U.S. Air Force website, but likely made by office of the President. -, Public Domain

 また、北大西洋条約機構(NATO)のアフガニスタン現地司令官であるダン・マクニール大将も、イラン領土内からの武器密輸は、イラン政府ではなく私的集団によって行われているものだとの見方を示した。

ゲーツ氏もマクニール氏も、アフガニスタンからイランへ向けたヘロインの流れが対タリバン武器密輸と関連があるとみている。つまり、ヘロインを売却して得た資金で武器を買い、自衛のために使うというわけである。
 
 「イランがタリバンを支援している」というチェイニー氏らの説は、「イランがイラクのシーア派武装集団を支援している」という同グループが今年はじめに流したうわさの焼き直しであり、いずれも根拠が薄い。チェイニー氏らは、イラン諜報筋とタリバン司令官が接触を持っているとの情報を米諜報筋から得て、その情報だけを頼りに「タリバン支援説」を宣伝しているものと思われる。

しかし、歴史的にみるとこうした見方には無理がある。イランは長年にわたってタリバンを敵だとみなしてきた。それは単に、シーア派のイランがスンニ派のタリバンを嫌っているということではなくて、イランとの関係が良好でないパキスタンがタリバンを支援しているということがイランにとっては問題なのである。

チェイニー米副大統領らによる「イランによるタリバン支援説」について検討する。(原文へ


翻訳/サマリー=IPS Japan 

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|メキシコ|移住は生物圏保護区への恵みか

【シエラゴルダIPS=ディエゴ・セバージョス】

メキシコ・ケレタロ州シエラ・ゴルダ生物圏保護区の自然資源や生物多様性への環境負荷が、住民半数(約5万人)の米国への移住で低減している。38万4,000haに及ぶ保護区当局もこの事実を認めている。

ユネスコの世界生物圏保護区の認定も受けているこの保護区は、乾燥地帯から亜熱帯、低山岳地帯の生態系が広がり、多数の固有種が生息する。

住民は、自給的農業や一部商業で生計を立てているが、移住の増加に伴い、農業、放牧、伐採などの活動が減少した。しかし移住者からの家族への送金で、派手な新築の家や米国のナンバープレートを付けたトラックの増加など、地域の景観が変わったことも事実だ。

とりわけ26歳以下の若者をはじめとする移住は、昔からのことだが、調査によれば1990年代から急増している。保護区の住民の月収が平均240ドルであるのに対し、移住して米国の農場や建設現場で働けば1,000ドルから2,000ドルもの月収となる。

シエラ・ゴルダでは、保護区の価値を伝え、保全を教える環境教育を実施しており、およそ16,000人の中学生が環境教育授業を受けている。しかし、こうした取り組みも、若者の米国への移住を食い止めるに至っていない。大半は、米国の移民書類もないまま、人身売買業者に2,000~3,000ドル支払って国境を越える。

シエラ・ゴルダの移民問題は矛盾した状況にある。保護区の責任者マーサ・ルイス氏は「移民が止むことになれば、森林地帯に深刻な負荷がかかることになる」と述べ、「10年間のうちに、森林や重要な地区の所有者に補償金や奨励金を支払って、子どもたちが将来保護区を離れる必要を感じないようにしたいと考えている」という。

この4年間に当局は、政府や民間基金から、また国連開発計画(UNDP)を通じて地球環境ファシリティから支援を得て、環境保全活動に努めた土地所有者およそ215人に、1ha当たり年間18~27ドルを支払った。保護地区は連邦法と州法の下保護されているが、97%は個人やコミュニティの所有であり、保全・再生プログラムはすべて、そうした個人やコミュニティと合意され、策定されている。

NGOや国連機関はもとより、多国籍企業なども支援の手を差し伸べ始めたメキシコの生物圏保護区について報告する。

翻訳/サマリー=IPS Japan 

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|オーストラリア|アボリジニの失われた過去は戻って来ない

【メルボルンIPS=スティーブン・デ・タルチンスキ】

オーストラリア政府は、先住民の子供を強制的に親から引き離す嘗ての政策を反省し5月26日を「National Sorry Day」(国家謝罪の日)と定めている。しかし、3歳で親から引き離されメルボルンの孤児院で育ったユウジン・ロベットは、「両親の願いにも拘らず、当局は我々が親の元に帰ることを認めようとしなかった。記念日の意義は認めるが、失った過去は戻ってこない」と語っている。 

1997年に発表された同施策に関する報告書「アボリジニおよびトレス・ストレイト島の子供達の隔離に関する国家調査」によれば、欧州の占領が始まると間もなく先住民の子供の隔離が始まったというが、その数は明らかにされていない。

 同報告書は、犠牲者に対する54項目の支援策を提案。政府は同年、家族支援、文化/言語の維持、全国家族ネットワークの設立などの費用として6千3百万豪ドル(5百7十万米ドル)を計上。2002-1006年に追加5千4百万豪ドル(4千5百万米ドル)の支援を約束した。しかし、犠牲者支援団体「Stolen Generations Victoria」(ビクトリア州失われた世代)のリン・オースチン会長は、「実施されているのは2項目のみ」と憤っている。 
 
連邦政府のアボット保健大臣は、オーストラリア先住民の生活向上を歓迎しているが、オックスファム・オーストラリアおよびNational Aboriginal Community Controlled Health Organizationが4月に発表した共同報告書によれば、先住民の平均寿命は男性56歳、女性63歳と非先住民の76・6歳、82歳に比べ大きく劣っている。また、ニュージーランド、カナダ、米国の先住民と比べ男性の平均寿命は12年短い。社会/経済的悪条件、栄養不良、ヘルスケアに対するアクセスの欠如が原因で、慢性病も多い。幼児死亡率は、14.3パーセントで、非先住民の3倍に上る。 
 
Stolen Generations Victoriaのメリッサ・ブリケル氏は、「ハワード首相は、遺憾の表明だけで謝罪を拒んでおり、国民の願いとは異なる態度を取っている」と批判している。オーストラリア政府のアボリジニ対策について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

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オーストラリア、アボリジニの女性・子供虐待に対する無関心

ボスニア・ヘルツゴビナ紛争の貯蔵武器をイラクへ

【ベオグラードIPS=ヴェスナ・ペリチ・ジモニッチ】

ボスニア・ヘルツゴビナ紛争終結のための1995年デイトン和平合意の重要点は、膨大な貯蔵兵器の破壊であった。 

しかし、ボスニアの日刊紙「Nazavisne Novine」およびクロアチアの日刊紙「Vecernji List」は、「9・11テロ攻撃後、米国の圧力によって貯蔵された武器/弾薬をアフガニスタンおよびイラクへ売却する命令が下され、少なくとも29万丁のライフルが米国内の民間企業に売却された」とのオーストリア人元UE軍メンバーの証言を伝えている(ライフルは、イラク/アフガニスタンの治安部隊用という)。 

Vecernji List紙は更に、サラエボを拠とする国営武器貿易企業ユニス・プロメックスのMaglajlija社長が、米国のスカウト社との取引を認め、「スカウトとの取引は国が承認しており問題はない。武器の最終売却先については知らない」と語ったと述べている。 

アムネスティ・インターナショナルが昨年発表した武器不法取引に関する報告書によると、2004年7月31日―2005年6月31日の間にボスニア/ヘルツゴビナ紛争時の小型/軽兵器数10万および数千万の弾丸が、米国防省の仲介で秘密裏に武器ブローカーの手に渡ったという。アムネスティーはまた、2004年12月の紛争の際にこれら武器の一部がルワンダにも送られたと述べている。 

平和維持部隊は、1998年以降5万2千の小型兵器、3万8千5百の地雷、22万5千の手榴弾などを回収しているが、UNDP(国連開発計画)および地元当局は作業完了には20年を要し、密売の危険性も高いとしている。ボスニア・ヘルツゴビナの貯蔵武器がイラク/アフガニスタンに密売されているとの地元新聞報道を紹介する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 


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|ナイジェリア|過去との決別を願う人権活動家

|UAE|中東分断の架け橋となるイランの芸術

【ドバイIPS=ミーナ・ジャナルダン】

5月にイランのアフマディネジャド大統領がアラブ首長国連邦(UAE)を訪問した頃、UAEのシャルジャー(7つの首長国のうちのひとつ)では、イラン芸術フェスティバルが開かれていた。絵画、映画、写真、彫刻、音楽、舞台などさまざまな分野の芸術作品がイランから出された。

湾岸協力会議(GCC、加盟国:サウジアラビア、クウェート、バーレーン、カタール、UAE、オマーン)は、1979年のイスラム革命以来、イランに対する恐れを持っている。イランとUAEは、イランが1971年に占領した3つの島(アブムサ、大タンブ、小タンブ)をめぐって長年にわたって領土紛争を行っている。また、自国の核計画をめぐって軍事攻撃の脅しを米国からかけられているイランは、湾岸諸国にある米軍基地に対して報復するとして、湾岸諸国を恐れさせている。

 しかし、今回行われている芸術フェスティバルは、芸術の力を借りて、こうした緊張関係を解きほぐそうとの試みだ。そもそも、UAEには40万人のイラン人が住んでいるし、両国間の貿易も2006年には110億ドル規模に達しており、緊張緩和にいたる素地はある。

米国の世論調査機関「ゾグビー・インターナショナル」が昨年11月から12月にかけて行った世論調査でも、民衆レベルでは湾岸諸国間に不信感が少ないことがわかっている。イランが主要な脅威であると答えた人はわずか6%に過ぎなかった。他方で、約80%の回答者が、イスラエルと米国が2大脅威であると回答した。

イランへの脅威認識を取り除く芸術フェスティバルについて伝える。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan


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メッセージの意味をひっくり返す活動芸術家

メキシコで中南米からの移民への人権侵害

【メキシコシティIPS=ディエゴ・セバージョス】

メキシコの移民支援組織「国境なき社会」(Sin Fronteras)が、中米から米国へ向かう途中の移民に対してメキシコ当局がひどい人権侵害を加えている、と訴えた。

メキシコでは、中米から(ごく一部は南米から)の移民が毎年20万人も逮捕・強制送還される。そして、移民たちは、当局からの人権侵害に対してきわめて弱い立場にある。嫌がらせを受けたり、殴られたり、金品を奪われたり、拉致されたり、強姦されたりすることが頻繁に起こっている。また、メキシコ北部に向かう列車から振り落とされて死んだり大怪我をしたりすることも少なくない。そのため、これは「死の列車」と呼ばれている。

こうした苦難の末にメキシコを抜けることができたとしても、それで苦しみは終わらない。米国にたどり着いた中米からの移民のうち毎年約7万3000人が強制送還されているからだ。米国に居住する権利を最終的に得るのは、約7万人ほどでしかない。

「国境なき社会」は、5月23日、米州人権委員会に対して、同グループのメンバー20名の人身を保護するよう要請した。

同グループのカリーナ・アリアス広報担当によると、今年に入ってからの人権侵害はすさまじいという。今年3月には、グループのファビエネ・ベネット代表がメキシコ国立移民研究所を訪ねて当局と移民問題について議論したが、この会談の間、ベネット代表のID情報の入った文書を当局が勝手にビデオ撮影していた。

また、移民を支援する弁護士が、収容所内の移民との接見を妨害されることがしばしばある。3月20日には、収容所の移民と面談するためメキシコ南部に向かっていた同グループのメンバーが、当局から逮捕される事件も起こっている。

しかし、昨年12月に就任したフェリペ・カルデロン大統領は、移民の取り扱いは改善されてきていると開き直っている。

メキシコを通過する中米からの移民への人権侵害についてレポートする。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan

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