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|ケニア|見放される国内避難民

【ナイロビIPS=ナジム・ムシュタク

ケニアで多くの国内避難民(IDP)が追い詰められている。政府はこれまでの国内避難民支援の政策(『Operation Rudi Nyumbani』)を終了すると発表。国内の難民キャンプを閉鎖し、避難民に対して1、2週間のうちに帰還するよう促している。

ナイロビの『IDPs Advocacy and Policy Centre』のPrisca Kamungi氏は「実際に故郷に戻り再定住できる避難民は僅かである。彼らの多くはキャンプを追い出された後も、市外地の劣悪な状況でテント生活を強いられるだけだ」と、怒りを露にした。

国連によるとケニアにおけるピーク時の避難民の数は35万人から50万人とも言われている。現在、同国全土に設置された300ヶ所の国内避難民キャンプでは30万人を越える人々が身を寄せているという。

 市民団体や人権団体からもケニア政府に対して強い反発が出ている。ケニア国家人権委員会(KNCHR)は今月24日、政府の計画は大きな失敗を招くと酷評した。「ケニア政府は、世界で進められている難民のための再定住計画の国際基準を無視している」。

ケニア政府は和平合意を経て国際社会に国内の『正常化』をアピールしたい意図がある。同国では近年、暴動や混乱で世界から厳しい非難を受け、また人権団体からは国内避難民の窮状を訴える報告が相次いでいた。

「ケニアの難民支援に世界からの注目が集まる今こそ、国内避難民の帰還・再定住支援に向けた総合的な政策が必要だ」と、Kamungi氏は述べる。

ケニア国内避難民が直面する新たな苦難を伝える。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan

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|ブラジル|気候変動が再生可能エネルギー源にも影響

【リオデジャネイロIPS=マリオ・オサヴァ

ブラジルはエネルギーの45%を再生可能エネルギー源に頼っている。これは先進諸国の3倍にも相当し、これは高く評価されることである。しかしこのために、ブラジルは気候変動に対する脆弱性が高い、と6月2日に発表された研究報告書は指摘した。

予測される2071~2100年の気候条件下では、サトウキビを除き、国内における再生可能エネルギー源によるエネルギー生産は減少する、とブラジル連邦リオデジャネイロ大学(UFRJ)の大学院 Institute of Engineering Graduate Studies and Research(COPPE)による研究のコーディネーターのひとりRoberto Schaeffer氏は述べている。

風力エネルギーの潜在発電量は、国内中部の強風の頻度が減るため、60%の減少が予測さる。バイオディーゼルの生産も、温暖化による北東部および中西部の油料作物生産の減少もしくは消滅により、深刻な影響を受けるだろう。

報告書はまた、降雨不足および異常降雨により、ブラジルの電力生産の85%を担っている水力発電所も影響を免れないとしている。

矛盾しているようだが、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が予測する温室効果ガスの排出が高めのシナリオ(A2シナリオ)では、水力発電量は平均1%の減少が予測されるが、排出量が低めのシナリオ(B2シナリオ)では、それよりも高い2.2%の減少が予測される。

Schaeffer氏によれば、これは「控えめな予測」であり、貯水池の水位が低く、小規模ダムが発電能力を失い、また、短期間に集中して豪雨が発生し、ダムの決壊を回避するために水門を開け、貯水された水を放流する必要が生じると、予測はさらに悲観的なものとなる。

また、2071~2100年の気候変動の予測に基づくと、平均気温の上昇により、2030年頃までにブラジルの電力消費量は8%増加するとの推定も明らかにされた。

すでに国内最大の貧困地域である北東部に、もっとも深刻な影響が予測される。北東部の半乾燥地帯はさらに乾燥が進み、バイオディーゼル用の作物生産が困難となり、水力発電の水源であるサンフランシスコ川流域の発電力は今世紀末までに7.7%の減少が見込まれる。

COPPE/UFRJのエネルギー・プラニング・プログラムの8人の研究者が執筆した気候変動とエネルギー安定供給に関する今回の研究報告書は、将来計画に当たっては、現状ではなく、予測される気候の影響を考慮に入れなければならないことを実証することが目的である。

研究報告書のもうひとりの執筆者Alexandre Szklo氏は、「不確実度が増した」ことで、アマゾン密林の河川の未開拓の可能性や気候変動がその流量に与える影響など、発電に影響を及ぼすさまざまな要因についてさらに適切なデータが求められると指摘している。

Szklo氏は、気候変動にもかかわらず、代替エネルギー源を促進する政策を引き続き実施すべきと言う。風力エネルギーは潜在能力の60%を失う可能性があるが、しかし「格別に好ましい」風が沿岸や沿岸水域に集中すると思われるので、このセクターにおける「投資の実行可能性は増大する」と語る。

ブラジル鉱業エネルギー省の計画立案機関であるエネルギー研究公社(EPE)のトップMauricio Tolmasquin氏は、不確実度は増すが、水力発電量の1~2%の減少は「このセクターのリスクの許容範囲内」であるので、事態全般については「ある程度平静」に見て大丈夫だと述べている。

水力発電は今後も、ブラジルのエネルギー基盤のもっとも重要な部分を担うだろう。将来の技術はヒマシ油や大豆など北東部における油料作物の損失を補うことができ、人口密度が高く、エネルギー需要が集中しているブラジル海岸線沿いの強い風力は引き続き役立つだろうと、Tolmasquin氏は報告書発表の場で述べた。

また、COPPEのエネルギー計画プログラムのコーディネーターLuis Fernando Legey氏は、気候変動に対処するためには、すでに技術的に可能であるものの費用が法外である酵素加水分解によるバイオ燃料の生産など、将来の代替エネルギーについて「大胆な仮説」が必要と述べている。

世界の人口の増加を考えると、省エネには「消費習慣」を変えることも必要と、Legey氏は指摘している。

国家電力エネルギー庁のジェルソン・ケルマン長官は、ブラジル国内で気候変動のもっとも深刻な影響を受ける地域においては、高圧送電線が問題解決の鍵を握っているとの考えを明らかにした。

ブラジルには8万kmに及ぶ高圧送電線が敷設されており、電力網は完全に相互連結しているので、エネルギー不足の地域があれば、他の地域がそれを補うことができる。

2001年のエネルギー危機の際は、一部地域で停電が発生し、エネルギー配給が行われた。研究報告書の発表に出席したケルマン長官によれば、降雨に恵まれた南部は他の地域に電力を分け与える余裕があったが、しかし当時は電力網の整備が不十分だった。(原文へ

翻訳=IPS Japan

|南太平洋|広がる児童労働と性的搾取

【スバIPS=シャイレンドラ・シン】

南太平洋諸国においても、児童労働と児童に対する性的搾取が広がっている。正確な統計はないが、国際労働機関(ILO)の推計によると、パプアニューギニアの労働力の19%、ソロモン諸島の労働力の14%がそれぞれ児童であるという。

性産業も盛んだ。ユニセフは、2004年から05年にかけてフィジー・キリバス・パプアニューギニア・ソロモン諸島・バヌアツにおいて調査を行った。それによれば、これらの国のいずれにおいても、児童売春・児童ポルノ・児童セックスツアー・人身売買が起こっていたという。同調査書では、南太平洋では、貧困のために家族や友人によって児童が性産業のために売られる危険性が極めて高いとしている。

また、ある地域では、セックス・ワーカーのうち13才から19才までの児童が占める比率が3分の1であった。中には11才の子供もいた。

こうした問題に対処するいくつかの試みもある。ILOでは、今後2年間にわたって、TACKLE(教育を通じた児童労働根絶)というプログラムをアフリカ・カリブ海地域・太平洋の11ヶ国で展開する予定だ。

オランダ政府も、児童労働根絶のためにパプアニューギニアに250万ドルを投下することにしている。

ILOは、世界全体では5才から17才の子供2.46億人が児童労働に従事しているとみている。このうち3分の2にあたる1.8億人が最悪の形態の児童労働につかされているとされる。

南太平洋における児童労働の問題について報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan

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Q&A・エジプト:百を超える犯罪に死刑適用

IPS:
エジプトではどれ位の人が、またどの様な罪によって極刑となっているのですか? 

アイマン・オカイル:
はっきりした数はわかりませんが、アムネスティ・インターナショナルは2007年の死刑判決は40強といっています。死刑が適用されるのは、公共利益破壊、麻薬犯罪、テロなど105種の犯罪です。エジプトでは27年間緊急事態法が敷かれており、これが2010年まで続く予定です。この他に、大統領は、軍事規則に従い民間裁判の軍事法廷移行を決定することができます。

 IPS:
多くの死刑関連法には欠陥があるとおっしゃいましたが。

AO:
死刑法の文言は曖昧で様々な解釈が可能なのです。また、裁判には政治的思惑も大きく作用します。

IPS:
宗教組織の反応はどうですか。 

AO:
死刑は社会に平和をもたらすものでも犯罪を抑止するものでもないのですが、エジプト最大の宗教組織アル・アザールの指導者は、死刑は神に与えられた権利であり、何者もこれを廃止することはできないと主張しており、人々もこれに影響されています。

IPS:
議会はどうですか。

AO:
広場などでの公開死刑を要求しています。外交委員会の副議長は、広場の処刑が無理であればテレビ放送をしろと提案しています。臓器密輸犯罪への死刑拡大、核関連用法に則ったテロ行為への死刑拡大も行われています。

IPS:
軍事法廷はどうですか。

AO
最も死刑判決が多いのが軍事裁判です。これまでにテロ関連で93人に死刑判決が下り、その内67人は既に処刑されてしまいました。我々は、死刑対象の105の罪を予謀殺人、国家反逆、戦時スパイ活動、ハイジャックおよび婦女暴行の大罪に制限し、全面廃止への足がかりとしたいのです。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan


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イスラエルとシリアが演じる外交劇

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【カイロIPS=アダム・モロー、カーリド・ムッサ・アル・オムラニ】

8年間の中断を経て、イスラエルとシリアは、トルコを介して、ゴラン高原問題の交渉を再開した。2000年に米国の仲介による交渉が決裂したのは、シリアがイスラエルの全面撤退を求めているのに対し、イスラエルがガリラヤ湖の領有を譲らず、さらには、反イスラエル組織のシリア追放や、米国のシリア駐留を主張したためである。

シリアはゴラン高原を占領された1967年の第3次中東戦争以来、中東地域において対イスラエルの急先鋒となってきた。今回の交渉にあたって、イスラエル側が狙いとしているのは、シリアのイランとの関係、或いはハマス、ヒズボラそれぞれとの結びつきを、解消することである。

 だがそれらの結びつきは、近来米国とイスラエルが押し進めてきた強硬な中東政策によって、却って強まっている。米国は2005年のレバノン・ハリリ首相暗殺事件以来、シリアの関与を示す確たる証拠はないものの、シリアへの圧力を国際社会に呼びかけてきた。イランは核兵器開発に関して、米国から圧力をかけられているし、イスラエルと戦闘のあったハマスとヒズボラは、米国が「テロリスト組織」と呼ぶところとなっている。

アルカラマ紙のハリム・カンディル氏は、シリアはイスラエルとの交渉の窓を開けることによって、「米国政府がシリアを孤立化させようとしているのに対抗し、国際社会に対して、和平に積極的だという姿勢をアピールするつもりだ。できれば米国に、シリア政府に反発する勢力への援助を、緩めてもらいたいと思っている」と分析する。

さらにカンディル氏は、「イスラエルはシリア一国なら恐れるものでなく、イラン、ヒズボラ、ハマスとの同盟があるから、深刻に警戒しているのだ。逆にシリアは、このような戦略的効力を発揮する同盟を、容易に放棄しようとはしない」と述べた。

カイロ大学のサラアマ教授(国際法)は、「シリアはヒズボラやハマスと手を切っても、イランとの緊密な関係は維持するだろう」と述べている。先月、シリアとイランの防衛大臣は、防衛協定の改定と軍事協力について会談したところである。

「だが、トルコの積極的な仲介、米国政府の協力、イスラエル、シリア双方の譲歩によって、交渉が実を結ぶこともあり得る」と同教授は見ている。また「常に地域のリーダーであったエジプトでなく、トルコが仲介役に選ばれたことは、驚きだった。エジプトが外交上の重みを失ってきているのに対し、トルコは政治的にも経済的にもプレゼンスを増している」と述べた。

一筋縄ではいかないイスラエルとシリアの交渉だが、対立深まる中東地域で、問題解決のきっかけとなればという期待がかかる。トルコを仲介として行われているイスラエル、シリア間の外交交渉について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan

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イラン人権団体、少年死刑囚に関する詳細情報を発表

【国連IPS=オミド・メマリアン】

イランの人権擁護団体International Campaign for Human Rights in Iranは6月18日、同国の少年死刑囚に関する詳細リストを初めて公表した。同リストは、著名なイラン人人権活動家エマド・バギ氏の広範な調査の結果で、「未成年者の死刑はイラン当局が主張するイスラム法に基づくものではない」と主張する同氏の著書「Right to Life II」にも盛り込まれている。(同著書はイランの議会、司法、NGO等に配布されたが、検閲により出版は禁止された。) 

同リストによると、今年に入ってから既に2人が処刑され、少なくとも114人が極刑を待っているという。その中には、犯行当時12歳だった者もいる。International Campaignのハディ・ガエミ氏は、世界が死刑廃止に向かう中で、イランの未成年処刑増加は恥ずべきことと語る。 

ヒューマンライツ・ウォッチの報告書によると、2004年以降未成年者の処刑を行っているのはイラン、スーダン、中国、パキスタンのみで、スーダンは2005年に2人、中国は2004年に1人、パキスタンは2006年に1人を処刑したという。これに対し、イランは2004年に少なくとも3人、2005年に8人、2006年に4人を処刑している。総数でいえば中国の処刑人数はイランを上回るが、比率ではイランが世界で最も高い。同国では、殺人、強姦、強盗、誘拐、麻薬密輸はすべて極刑となる。 

国連子ども権利条約および国際自由権規約は、18歳以下の犯行に死刑を課すことを禁じており、イランは両条約を批准している。 

死刑判決を受けた子供達の罪状は殺人である。しかし、バギ氏の調査が示すように多くの判決は厳しい尋問/拷問の後の疑わしい自白に基づいたものの様だ。裁判所は、被告が提出した正当防衛の証拠を取り上げることはないと、同報告書は述べている。 

ヒューマンライツ・ウォッチ中東・北アフリカのクラリサ・ベンコモ氏は、「我々が調べたケースでは、もし子供達に十分な法的支援と適正な裁判が行われていれば、多くは無実となっていただろう」と語っている。9月の国連総会でも取り上げる予定のイラン未成年処刑について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

|ポーランド|前政権による情報機関濫用を正す

【プラハIPS=ゾルタン・ドゥジジン】

ポーランドでは右派「法と正義(PiS)」のヤロスワフ・カチンスキ前政権によるイデオロギーおよび政治的目的のための情報機関の濫用によって、諜報活動が完全な混乱に陥っている。 

昨年10月の総選挙で政権を奪ったリベラル「市民プラットフォーム」のドナルド・トゥスク首相は、情報機関の徹底改革を進める意向であり、検察官および調査委員会が各種情報機関における権力濫用の調査を進めている。 

情報機関は、党利党略への対応、文書偽造、機密情報の漏洩、盗聴装置の濫用、腐敗汚職への誘惑、内規違反などを非難されている。

 こうした中、前政権が政権中の活動の証拠を隠そうとしているとの容疑が高まっている。とりわけ注目を集めている公安庁(ABW)の活動の悲劇的な結果は、謎に包まれたままである。 

PiSは、情報機関からの共産主義後およびロシアの影響の排除という前政権の功績を現政権が台無しにしていると非難している。前政権は、共産党時代のロシア情報機関との関係、そしてポーランドの多くの高官がモスクワで訓練を受けたという事実が国家安全保障上の脅威となっているとの考えから、旧軍情報部(WSI)の解体を図ったのである。 

だが、当時の野党市民プラットフォームも支持したこの動きは今、アフガニスタンおよびイラクにおけるポーランド部隊と高官の安全を著しく阻害していると考えられている。昨年10月には、ポーランドの駐イラク大使の車列が爆弾攻撃にあった。多くの人はこの事件が、間接的には現地におけるポーランドの諜報活動が突然の欠如したことによる結果であると解釈している。 

ポーランド前政権による情報組織再編がもたらしている影響について報告する。

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩

|ノルウェー|平和協議の一方で武器を輸出

【オスロIPS=タルジェイ・キッド・オルセン】

平和調停国ノルウェーは、世界第7位の武器/弾薬輸出国である。

アムネスティ・インターナショナル、オックスファムおよび小型武器に関する国際ネットワーク(International Action Network on Small Arms:IANSA)が主宰する武器規制キャンペーンによると、現在世界には約6億3,900万の小型武器が存在するという。そして、これらの武器が武器商人などの手に渡って戦争や犯罪を引き起こし、発展の妨げとなっているのだ。

ノルウェー中央統計局(SSB)によれば、2007年の武器輸出収入は前年比18パーセント増の4億2,500万ドルで、世界全体の3.5パーセントとなる。ノルウェーの外務省規定では、紛争地帯への武器輸出は認められていないが、NGOノルウェー・チャーチ・エイド(NCA)によれば、1990年代にクルド反政府勢力と武装闘争を行っていたトルコなどへの輸出が行われてきたという。

トルコ問題を重要視したノルウェーは、その後外務省への武器輸出年次報告を義務化し議会の監視、透明性の強化を図った。また、2007年には、武器輸出の決定に民主主義/人権の原則を考慮することを宣言した。

しかし、これで問題がなくなった訳ではない。最大の課題は、武器輸入国の再販防止である。たとえば、ノルウェーから大量の武器を輸入しているチェコは、スーダン、アンゴラ、エジプト、サウジアラビアなどへの武器輸出を行っている。ノルウェーは、北欧諸国およびNATO同盟国に対しては、再販しないとの誓約を義務化していないのだ。ノルウェーが和平努力を行っている間も、米国を始めとするNATO加盟国はコロンビア、イスラエル、ネパール、フィリピン、スリランカといった紛争国への武器輸出を行っている。

スカンジナビアの武器/弾薬は主にNammo社を通じ行われている。Nammoはノルウェーに本社を、スウェーデン、フィンランドに姉妹会社を置き、ポーランド、マレーシア、米国を含む数社と武器のライセンス製造を行っている。Nammoは、ノルウェーの通商産業省とフィンランドの国防企業Patriaとの共同所有であるが、ノルウェー通商産業省は、Nammoの道義的責任について、外務省のガイドラインに従うものと期待すると述べるに止まっている。

ノルウェーの武器輸出について報告する。(原文へ

INPS Japan

アフリカ開発支援における日本の重要な役割

【IPSコラム=緒方貞子】

今アフリカは、開発支援の主要なフロンティアとなっている。最近のアフリカ大陸の経済的、民主的、社会的な前進を確固たるものとし、さらに強化していくことには、大きなチャンスとともに課題もある。

今年日本はアフリカの検討課題を策定する上で重要な意味を持つ2つのイベントを主催する。5月28~30日に開催されるアフリカ開発会議(TICAD)と、その後7月に行われアフリカ大陸の問題が注目されるG8サミットである。

最近まで、日本の多くの領域にとってアフリカは常に遠い問題だと思われていたが、TICADプロセスにより、アフリカ大陸が日本政府の外交政策の主流にしっかりと組み込まれた。簡単にいえば、アフリカは急速に日本にとって重要性をもつ存在となっている。

Sadako Ogata

 
5月のTICAD会議は、アフリカに関する一連の会議の中で4回目のものであり、これらの会議はアフリカ大陸への国際的な対応と措置の立案を支援してきた。第1回TICAD会議は1993年に開催され、もっぱら経済問題に集中した。その後は、紛争防止、平和の構築、住民と地域社会のための「人間の安全保障」、さらに最近では気候変動や環境にも取り組んでいる。

2000年に日本で開催された沖縄G8サミットの際に、アフリカの4カ国が初めて招待され、ようやくアフリカ自らがTICADプロセスに直接かかわることになった。対照的に、今回のTICAD会議にはアフリカから40人の国家および政府の首脳が出席する予定となっている。

5月の会議は進展状況を見直すとともに、今後の課題に取り掛かる機会となる。経済的には、アフリカは近年、5%という堅調な年間成長率を享受しており、2008年の主要目標のひとつはこの発展を加速することになる。その一環として、農業および工業の拡大を促進する、全国的、地域的、および大陸間を結ぶ道路網など、大規模なインフラ整備プロジェクト支援が検討されるだろう。

一方、私が理事長を務める独立行政法人国際協力機構(JICA)は、開発支援には十分に統合された取り組みが不可欠だと考えている。したがって、経済的拡大を支援しながらも、草の根の活動、「人間の安全保障」という概念にもさらに大きな関心を払っており、生活に直接的にかかわる医療や教育などの分野で地域社会と個人がより大きな役割を果たすべきだということを重視している。

日本国内の発展が、アフリカの開発支援に影響するのはもちろんである。JICA独自のアフリカ大陸向けの事業予算は、2008年度に15%増額し、およそ2億6,000万ドルとなった。これは心強いが、政府開発援助(ODA)が同時期に減少しているのが気になる。

日本は世界第2位の経済大国であり続けながらも、政府は国内で財政上の大きな制約に直面しており、この困難な環境の中で私たちは開発支援の減少傾向を食い止めていかなければならない。2007年のODAは76億9,000万ドルだった。

この予算を増やすことは難しいだろうが、増やしてほしいというにとどまらず、増やすべきだと主張する。

日本のODA制度全体の複数年点検の一環として、JICAと国際協力銀行(JBIC)の長期低利貸付部門が年内に合併する。この合併はアフリカにとって朗報であり、おそらくまず、経済基盤を拡大するために長期低利貸付を求めるアフリカ諸国が、そうした貸付をより容易に迅速に得られるようになるという効果を上げると思われる。

アフリカ諸国はココアやコーヒーの栽培だけにとどまらず、科学、情報技術の専門知識、工業に進出し、発展させていきたいと考えている。現代社会では国が農業だけに頼っていては生活水準を向上させられず、新たな収益源となる商品も生産していかなければならない。

TICADの代表者たちはふたつの比較的最近の重大局面についても検証する予定である。

ここ数カ月、一連の要因による世界規模の食糧価格高騰が、政治不安、栄養不良の増加、貧困を引き起こしている。コートジボワール、カメルーン、エジプト、モーリタニア、モザンビークおよびその他のアフリカ諸国では、暴動や抗議運動が起きている。

数万人のアフリカの人々がすでに十分な食料を得られていない状況であり、短期的にはアフリカの苦しみは続くだろう。食糧価格を下げるための一連の緊急支援機構が必要である。長期的には、たとえば10年を考えると、生産方法の改善と民間への投資により、アフリカは農業において莫大な利益を上げることも可能である。たとえばJICAは現在、ネリカと呼ばれる新しい品種の米の開発に関与していて、ネリカ米は特にアフリカ大陸に適したものであり、収穫量を大幅に高めると思われる。

気候変動については、おそらくアフリカが直面している危機の中でもっとも予想のつかないものである。

開発の専門家は長い間、教育、健康、紛争後の復興に携わってきたが、地球温暖化、海水面の上昇、その他の関連する現象の長期的影響は、まったく新たな課題となっている。

アフリカは大きく前進し始めている。世界の他の国々に追い付くための「時間との競走」と表現されたレースで、アフリカはその差を縮め始めたものの、すべきことはまだ山積している。2008年に実現しつつある進展から、アフリカと日本の双方が恩恵を得られることを期待する。相互依存の時代である今日、日本を含め、どんな国も一国だけで繁栄はできない。(原文へ

翻訳=IPS Japan
 

|ウガンダ|色褪せる平和への願い、和平交渉決裂

【カンパラIPS=ジョシュア・キャリンパ

ウガンダ北部出身のAlfred Bogominは10歳の頃、内戦を避けるためPaicho村から避難した。難民キャンプで20年間過ごしたBogominは先月、生まれ故郷の村に戻った。しかし、このままPaicho村に残るかどうかについては決まっていない。Bogominは「和平協定が調印されれば、父の亡骸をきちんと埋葬することができるのに」と、悔しさを滲ませた。 

2006年に始まったウガンダ政府と LRA(神の抵抗軍)との和平交渉は、進度は遅いものの紛争終結に向けて大きな前進になったと見られている。

The return of IDPs like this Ugandan girl to their homes is in jeopardy as a peace agreement remains unsigned Credit: Manoocher Deghati/IRIN
The return of IDPs like this Ugandan girl to their homes is in jeopardy as a peace agreement remains unsigned Credit: Manoocher Deghati/IRIN

 しかし、その後の2年にわたる交渉を経て今年4月、LRA指導者ジョセフ・コニー氏は最終の和平協定の調印を拒否した。また、コニー氏は人道に対する罪でICC(国際刑事裁判所)が出した告訴を取り下げるか否かについて明らかにするよう求めている。 

ウガンダのヨウェリ・ムセベニ大統領は6日、演説の中で和平交渉が決裂したと述べた。政府軍は『プランB』を進めようとしていることを発表した。同計画では、コンゴ民主共和国(DRC)と中央アフリカ共和国との国境付近で政府軍が近隣国の軍と協力し、LRAを鎮圧するとしている。 

政府は今後の和平協議のためにもICCの告訴をうやむやにしたくはないようだが、和平調印がまたもや延期されたことでウガンダ北部の国民の不安は益々大きくなっている。Bogominは「なぜ政府はLRAとの交渉を続けないのか。戦争が再開すれば、再び我々は難民キャンプに戻らねばならないじゃないか」と訴えた。 

行き詰まるウガンダ政府と反政府組織との和平協議について伝える。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 


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