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|カンボジア|国際的ドナー、汚職撲滅を要求

【バンコクIPS=マルワーン・マカン・マルカール

「政権を取るには下院の3分の2の多数を占めていなくてはならない」とのカンボジア憲法の条項が3月2日に改正され、フンセン首相率いるカンボジア人民党(全123議席中73議席)が晴れて政権の座に着いた。

同時に、フンセン氏にとってもう一つのうれしいニュースが舞い込んだ。3月2日から3日にかけて行なわれていた、カンボジアに対する国際ドナーから成る「協議グループ」の会合において、今後1年間に6億ドルの支援を行なうことが決定したのである。カンボジア政府が要求していたのは、5.13億ドルであった。国際援助は、カンボジア国家予算のおおよそ半分を占めるほど巨大なものだ。

 だが、協議グループは国際援助に3つの条件を課した。すなわち、包括的な汚職撲滅法の制定、司法改革、自然資源の破壊防止である。汚職・不正に関しては、土地の横領・違法森林伐採・リベート要求などが問題となってきた。

米国際援助庁(USAID)が2004年に出した報告書では、不正行為によりカンボジアでは毎年5億ドルが失われている、と指摘されている。
 
 市民団体からも批判の声が上がっている。「トランスペアレンシー・インターナショナル(TI)」の「2005年腐敗指標」によると、カンボジアは158ヵ国中131位に位置している。18のNGOから成る「カンボジア人権行動委員会」は、「汚職撲滅委員会」の設置を求める声明を発している。

また、「ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)」など5つの地域・国際団体が今回のドナー会議の直前に送った書簡では次のように述べられている。「官僚や強力な一族が広く土地を差押さえ、これに人権侵害がともなっている。昨年3月には、5名の村人が射殺された」。

汚職体質のカンボジア政治に対する国内外からの批判について紹介する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan



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墓標のない墓:米国国境を越えた不法移民をとりまく苛酷な状況

【メキシコシティーINPS=ディエゴ・セバージョス】
 
性別年齢国籍不詳、死因は溺死、2005年10月米国南部国境。これは1人の中南米移民の残した殺伐とした記録である。同様に目的を達しないままに死亡した数千人が、墓標のない墓に眠っている。

この犠牲者は人権連合/国境なき先住民同盟が2004~2005年に米国アリゾナ州で作成したリストに記載された280人のうちの1人である。

 
1993年以降、米国メキシコ国境では3,800人以上が死亡しており、そのうちの1,000人あまりが墓標のない墓に埋葬されている。
 
 中南米カリブ諸国から厳しい国境警備をかいくぐり、あらゆる手段で米国へ、あるいは別の目的地への入国を試みながら、多くの人々が死亡した。荒涼たる砂漠で迷い息絶えるものもいれば、荒れた海で難破するもの、殺されるもの、船のコンテナやトラックの荷台で窒息死するものもいる。正確な人数は把握できないが死亡者の数は確実に増え続けている。

「墓地に空きがなくなってきたために、ある役所(アリゾナ)は身元確認できない移民の死体を火葬するという話も聞いている」と非政府組織の人権連合/国境なき先住民同盟のコーディネーターであるカタリナ・ロドリゲス氏は、IPSのアリゾナへの電話による取材に応じて語った。

最近の事件では、1月に換気の悪いトラックの荷台に隠れて隣国のドミニカ共和国へ向かう途中で25人のハイチ人が窒息死した。

調査によるとこの地域的な移住現象による犠牲者は、主にキューバ、エクアドル、グアテマラ、ハイチ、ホンジュラス、メキシコ、エルサルバドル出身が多い。

米国を目指して海を渡ろうとしたキューバ人の100人に15人は死亡し、遺体はまったく発見されないことがほとんどだ。昨年は乗っていた船が沈んで31人のキューバ人が行方不明になった。

極端なケースでは、輸送サービス会社のDHLがバハマから送った木箱に入って若いキューバ人女性が米国に到着し、政治亡命者として米国に受け容れられた。

2005年からメキシコ外務省は、必要な書類をもたずに人身売買組織である「コヨーテ」と呼ばれる不正密輸業者に連れられて、米国へ不正入国することの危険性を警告する冊子を、国境地域や空港で配布し始めた。

そのうちの一冊である「メキシコ移民ガイド」は道中の危険を指摘し、安全に関する助言を掲載し、外国で拘束された人の権利について解説している。さらに居住許可を持たずに米国で生活する間はどう行動すべきかまでアドバイスを行っている。

エクアドルも今年1月からメディアを通じて同様のメッセージを伝え始めた。その目的は「人々に不法入国と人身売買組織を信頼することの危険に気付かせることだ」と政府は公式声明を発表している。

だがこうした警告も危険も、移住を望む人々を引き止めることはない。

26歳のメキシコ人ラウルは、頑固に米国に行こうとする意思を変えようとしない。「一度は米国の国境警備隊に送り返され、次にコヨーテに身ぐるみはがされたが、すぐにもう一度挑戦するつもりだ」とラウルはいう。

32歳の匿名を望んだキューバ人も同じようなことをいう。「7回(キューバから不法に米国に入国しようと)挑戦したが、いつも何かがうまくいかなかった。けれども入国できるまであきらめない」とこの人物はIPSの取材に応じて語った。海上で米国の沿岸警備隊やキューバ当局に阻止されたり、手作りの船が壊れたりすることもあったという。

2月20日には98人のエクアドル人が漁船に乗って中米を目指したが、途中で阻まれて送り返された。計画では中米から陸路で米国に達するはずだった。他にこのグループには24人のペルー人、1人のドミニカ人、3人のアジア人も含まれていた。

昨年の8月には94人のエクアドル人が中米に向かう途中で船が沈んで溺死した。15人乗りの船に103人が乗り込んでいた。

「まずコスタリカ、グアテマラ、メキシコを目指して、最終的な目的地の米国に入国する前にそこで命を落としたり、見捨てられたりする場合もある」とエクアドルの国選弁護人事務所のイバーン・グランダ広報官はIPSの取材に応じて語った。

エクアドル移民事務所は1990年代の半ばから数万人のエクアドル人が米国と欧州に移住したと報告している。IPSの取材によると、2002~2005年には496人の移民の遺体が本国へ送還されてきた。

人権連合/国境なき先住民同盟のロドリゲス氏は、アリゾナ州の荒涼とした砂漠が広がる国境地帯では、「状況は確実に悪化しており、毎年命を落とす移民は増え、遺骨だけしか発見されないなど、身元確認がきわめて難しい」と語った。

犠牲者の出身地、名前、国籍などの身元確認は困難なことが多いため、墓標のない墓地に多くの移民が埋葬されることになる。火葬されてしまえば家族が犠牲者に何が起きたのかを調べようとしても何のてがかりもなくなる。

この問題に対処するためにメキシコ政府は2004年末に、遺体を特定して身元を突き止めるシステム、米国との国境地帯で死亡したものと行方不明になったものの情報と写真を記録したコンピュータープログラムを作成した。

このシステムを利用して検索を始めるために、およそ11,000人のメキシコ人家族が既に多くの情報を書き込んで申し込んでいる。発見された290の遺体の写真が掲載されているファイルも閲覧されているが、その中には遺体発見時に腐敗が進んでいて性別も分からない写真も44枚ある。

米国への入国を何とか達成しようと、多くの人々は拘束されないように、川を渡り、灼熱の砂漠を歩き、汽車やトラックの荷台に隠れる。

しかし移民の多くはメキシコで米国へ向かう道中最大の障害に遭遇する。

メキシコは昨年235,297人の密入国者を本国に送還した。多くはエルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラスからの密入国者だった。

メキシコ当局は2005年に国内で200人の移民の死体が発見されたと報告している。さらに政府の人権委員会は2005年末に、中米からの外国人はメキシコで「深刻な社会的疎外と不当な扱い」に苦しんでいると報告した。

米国の中南米からの移民はメキシコ人が最多であり、メキシコは他の中南米からの移住者が通過する国でもある。

メキシコ政府の報告書によると2005年にビザなしで米国に入国した移民は40万人以上、拘束され強制送還されたものは100万人にも上る。

翻訳/サマリー=INPS Japan 

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ディエゴ・セバージョスの記事

バイオテクノロジー推進の危険性とは

【ブルックリンIPS=スティーブン・リーヒ

世界の指導者たちは、生物テロ対策とバイオテクノロジー推進との間の矛盾を解決すべきだ――これが、トロント大学生物倫理共同センターの報告書『平和のためのDNA』の結論である。

バイオテク・ナノテクの研究所は世界中に広がっている。ブラジルだけでもそうした研究所が400以上もある。

同センターのピーター・シンガー所長は、「最先端のバイオテクノロジーやナノテクノロジーは、一般市民にとっての重大なリスクとなる可能性がある」と語る。しかし、トロント大学の報告書はむしろ、感染症対策・貧困対策などにおけるバイオテクノロジーの可能性を強調している。

 他方、ピッツバーグ大学バイオ安全センターのギギ・キウィク・グロンバール助教授は、生物テロの危険性に対する懸念はもっともなことだとして理解を示す。同氏は、「耐抗生物質バクテリアを作り出すことは、新しい抗生物質を作るよりたやすい」と語る。

さらに、バイオテク推進に対する別の方面からの批判もある。米国のNGO「オークランド研究所」のアヌラダ・ミッタル氏は、実際の生き物を取り扱うバイオテクノロジーの危険性について警鐘を鳴らしている。特に氏が懸念するのは、遺伝子操作(GE)生物の問題だ。彼女によれば、GE植物・ウィルスは、いったん環境中に解き放たれてしまうと、追跡・回収することができなくなってしまう。

そこで彼女が提唱するのが、「生物安全に関するカルタヘナ議定書」を使った、バイオテクノロジーの国際的規制である。この議定書は、GE生物の国際的移動を規制するものであるが、GE作物の90%を生産する米国・アルゼンチン・カナダがいまだに加盟していない。

バイオテクノロジーが飢餓対策に有効だといわれることもある。しかし、ミッタル氏は、インドの例を挙げながら、実は食糧そのものは不足していないと主張する。また、感染症を防ぐのは公衆衛生システムの整備であって、新しいバイオテクノロジーの開発ではないとも指摘する。

バイオテクノロジー推進をめぐる論争についてカナダより報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan

ヨーロッパ、鳥インフルエンザへの不安高まる

【パリIPS=ジュリオ・ゴドイ】
 
フランスでは、H5N1ウィルスに感染した野生のカモが2月13日に初めて発見されて以来、食肉の販売額が30%以上も低下している。ベルトランド保健相は、死んだ鳥の報告や、ハトがバルコニーに降りてきたという相談などが、1日平均3,000件以上も寄せられていると語った。通常、こうした通報は日に30件ほどである。

しかし、世界保健機構(WHO)は、パニックを何とか抑えようとしている。確かに、ウィルスに感染した鳥と直接接触すると、鳥インフルエンザにかかってしまう。ただ、H5N1は熱に弱いから、よく加熱した鳥肉なら食べても問題はない。

 WHOが一番恐れるのは、H5N1が突然変異して、人体間感染が可能な新しいウィルスができてしまうことである。

2月22日、欧州連合は、フランスとオランダに対して、飼っている鳥にワクチンを投与することを認めた。ただしこれは、特定の地域においてのみ、厳しい管理の下行なわれなければならない。というのも、ワクチンを投与することによって、病気の発症を防ぐことはできるが、ウィルスを保有しているという事実に変わりはなく、健康な鳥と感染している鳥との区別がむしろつかなくなってしまうからだ。

フリードリッヒ・ロフラー研究所のトーマス・メッテンライター所長はこう語る。「抗体に直面したウィルスは、それに反応して突然変異を起こす。だから、飼っている鳥に対する広範なワクチン投与は誤っている」。

ドイツでも、ウィルスに感染している死んだ鳥がリューゲン地方で100羽以上見つかり、パニックが起こっている。国内では、6月から7月にかけてドイツで行なわれるサッカーのワールドカップを中止すべきだとの声すら上がり始めている。WHOの鳥インフルエンザ対策責任者クラウス・ストアーもこの意見に同調している。

欧州各地における鳥インフルエンザ・パニックについて報告する。(原文へ)

翻訳/サマリー=IPS Japan

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無防備なまま鳥インフルエンザに見舞われたインド

【ムンバイIPS=サンダヤ・スリニバサン】

2月18日、インド当局は、1月末の家禽類の大量死発生後、鳥のサンプルから病原性の高いH5N1型鳥インフルエンザウイルスが確認されたと発表した。西部マハラシュトラ州のナンドゥルバル地区の養鶏場ではこれまでにおよそ4万羽の鶏が死亡している。ラマドス保健相は2月20日、「事態は収拾され、人への感染は確認されていない」と国会で述べた。

州政府は、感染地区での40万から80万羽の処分とワクチン接種の計画を発表した。養鶏農家には鶏1羽当たり7〜14セントの補償が出るが、実際の養鶏経費70セントには大きく足りない。養鶏場の閉鎖に仕事を失った数千の労働者については、補償も発表されていない。養鶏場主らは、少なくとも500万ドルの損失と見ている。

 報道によれば、鶏の処分に関するWHOの予防策は守られておらず、養鶏場労働者や環境に対する基本的な保護もないまま処分が行なわれているという。

一方National Egg Coordination Committeeの委員長であり、国内の農家に販売されているひよこの75%を供給するVenkateshwara HatcheriesのAnuradha Desai会長は、死因は人への感染のないニューカッスル病だと主張、85億ドル規模のインド養鶏業界は、政府の鳥インフルエンザの発表に異議を唱えている。

世界的に著名なウイルス学者T. Jacob John氏は、「当初ニューカッスル病と推測されていたため、予防策がとられなかった。ウイルスは地域に蔓延しており、人から人への感染も起こり始めるだろう。そうなれば、世界的な大惨事に直面することになる」と警告する。
 
 ただ、ひとつの希望の兆しはインドの強力なジェネリック医薬品産業である。抗ウイルス剤タミフルの製薬特許を保持するスイスのロッシュ社は、インド企業ヘテロ社にライセンスを付与したが、他の2社シプラ社とランバクシー社も、ジェネリック版の製造を始めたもようである。シプラ社は、週当たり15万回分、1治療当たり25ドルで35,000人を治療できる量を製造でき、さらに、卸売価格16ドルで政府に供給する準備もあると述べている。ロッシュ社はインドで特許を出願しているが、政府はまだ付与しておらず、シプラ社をはじめ他社も、法的には深刻な問題なく製造できると自信を持っているようである。

世界第2位の鶏卵生産国であり、世界第5位のブロイラー生産国であるインドでの鳥インフルエンザの動向を報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan


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貧困という荷を負う女性

【バンコクIPS=マルワーン・マカン・マルカール

今週、貧困問題に苦しむカンボジアへの支援について話し合うために、世界の支援団体の代表たちがカンボジアに集うことになっているが、彼らが売春問題を取り上げるかどうかは分からない。

だが、支援団体から派遣されたこうした役人が、もし居心地のいい高級ホテルから足を伸ばしてプノンペンの性産業を視察に出かければ、女性問題に取り組む機関があからさまな貧困の指標と考える数字を目にすることになる。

 カンボジアの首都プノンペンで女性の権利拡大のための活動を行っているNGO、Womyn’s Agenda for ChangeのコーディネータであるR.バルベロ氏は、「800リエル(23円)というわずかな金額で売春する女性もいる」とし、「売春婦が増えてますます値段が下がっている」という。

1990年代後半にはプノンペンの売春婦は客に2ドル求めていた、とバルベロ氏は電話でのインタビューの中で明らかにし、「競争が増えて、売春婦たちがなりふりかまわず稼ごうとしていることを心配している」と語った。

貧困との戦いを伝える別の話題もある。カンボジアの成功物語として取り上げられる女性、つまり縫製工場に勤める女性の生活の質を調べる調査が増えているが、外見の華やかさと実際の窮乏との差が大きいことを明らかにしている。

カンボジアの主要な食料品の価格が跳ね上がっていて、魚の値段は昨年18%上がり、米は5%上がった。そのため、縫製工場の女性も食事の栄養価を落とさざるを得なくなった。ある女性労働者たちが調査員に打ち明けた話では、1日おきに食べていた魚を2週間おきに食べるようになったという。

「こうした女性は粗末な米とスープだけの食事という選択肢しかない」と、以前プノンペンの縫製工場で働いていたChrek SopheaはIPSの取材に応じて語り、「田舎から出てきている女性は、ふるさとの家族に送金する前に家賃も支払わなければならず、さらに大変だ」といった。

カンボジアの保健省が行った調査によると、主要な食料品の値段が上がる前の2004年でも、90%の縫製工場の女性労働者が検査の結果貧血だった。

しかしながら世界銀行は縫製工場の女性を別の観点から見ている。この部門は25万人の女性労働者を雇用し、国の輸出の80%を稼いでおり、世銀の最近の報告書は、縫製工場が1330万人のカンボジアの人々を貧困から救ってきたと賞賛している。

国際労働機関(ILO)によるとカンボジアの被服産業の輸出額は1995年の2600万ドルから2004年には19億ドルへと大きく成長している。

工場労働者の平均最低賃金は月45ドルで、残業をすれば月50ドルから60ドルに増えるので、その結果労働時間が1日12時間ということもある。

世界銀行が2月半ばに発表した「カンボジアの貧困の評価」と題する報告が、カンボジアの貧困の解消に貢献しているとするもうひとつの産業は観光である。北西部のシエムレアプ州近くのアンコール寺院のすばらしい遺跡には、特にたくさんの観光客がおしかけている。

この2つの部門のおかげで、カンボジアの貧困層は10年で47%から35%へと減少したと世銀の役人は達成を称える。この世銀にとっての朗報は、カンボジアの貧困ラインを1日1,826リエル(50円)に世銀が定めて算出したものである。

カンボジアの貧困に関する報告書の共著者であるティム・コンウェイ氏はIPSの取材に対して「状況は改善している。被服産業はこの部門の成長から恩恵を受けている人々を相対的に示しており、月に45ドルという数字は満足できるものであり、カンボジアでは十分な額だ」と語った。

「過去10年に貧困が減少したとする調査結果に大いに自信を持っている」とコンウェイ氏は付け加えた。報告書の中では、ラジオやテレビを持ち、電気を利用できるようになったカンボジア人の数が増えたことも言及されている。

世銀によると「地方で減少した」貧困は、地方の家の屋根に使用される材料の変化に見られる。草ぶきが74%から29%に減り、代わって鉄かアルミ製の屋根が6%から31%に増えた。

コンウェイ氏によると、この世銀の報告書は3月2~3日に年次諮問委員会がカンボジア支援について話し合う際に、状況を説明する資料として利用される。この諮問委員会には国際通貨基金(IMF)も含まれ、カンボジアへの援助の流れにとってきわめて重要な存在である。国際支援は過去10年間、カンボジアの国家予算の半分近くに寄与している。
 
一方世銀の最新の貧困削減の成果報告を、長期にわたったカンボジアの内紛を終結させた1991年の和平協定後に国際的な開発組織がカンボジアに課した経済計画を正当化しようとするにすぎないと批判するものもいる。

「世銀が貧困ラインとして利用している数字は、どれだけ現実からかけ離れているかを示している」とバンコクに本部を置くシンクタンクFocus on the Global Southの調査員であるS.グッタル氏はIPSの取材に応じて語り、「小椀1杯の麺でさえ800リエル(20セント、23円)する」と指摘した。

「カンボジア社会は自ら再建できないでいる。カンボジアは部外者によって考え出された特定の経済的、社会的、政治的モデルを受け容れざるを得なかった。支援国と世銀は自分たちの紛争後の再建モデルによって作り出された現実を正確に見つめる必要がある」とグッタル氏はいう。(原文へ

翻訳=IPS Japan

「世界は見ている」国連が警告

【カトマンズIPS=マーティ・ローガン】
 
イアン・マーティン国連人権高等弁務官は人権委員会に提出した報告書について、カトマンズのネパール法律家協会で報告。ネパールにおける深刻な人権侵害について語った。

報告書が焦点を当てたのは、10年前のネパール共産党(マオイスト:毛沢東主義派共産主義武装組織)の武装闘争を契機とする人権侵害。マオイストとこれに対抗するネパール国軍(Royal Nepali Army:RNA)の闘争に巻き込まれ、農村部で13,000人の犠牲者を出し、負傷者は数千人、これまでに数十万人が国内難民となっている。

 現在、マオイストはネパールの人口が集中する周辺部の80%を支配し、1月3日の停戦期限切れを受けて武装闘争を再開。とりわけ農村部の住民はマオイストの襲撃におびえている。

報告書はマオイストによる明らかな処刑事案に言及すると同時に、国王軍による殺戮行為も指摘。国連人権高等弁務官ネパール事務所(OHCHRネパール)は1件ごとに犯人を特定するのは難しいとしつつ、国軍の人権侵害関与を示唆した。

また、2月8日の地方選挙に絡み政党指導者、活動家が数百人単位で逮捕されたのはネパールにとって大きな汚点とマーティン弁務官は指摘。ギャネンドラ政権に対する国際的制裁を求める声について「人権委員会を構成する各国政府の判断にゆだねる」と語った。

周辺部を支配するマオイストと、これに対抗する国王軍、さらに2005年2月1日の無血クーデターで政権を奪ったギャネンドラ政権による人権侵害を訴える国連人権委員会報告書について報告する。(原文へ

翻訳/サマリー:IPS Japan
 
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国王のクーデターから1年、いまだ膠着状態続くネパール

憲法改正で各党合意か

【バンコクIPS=マルワーン・マカン・マルカール】

カンボジアの野党「サム・レンシー党」の党首サム・レンシーが、「政権を担当するためには議会の3分の2以上の議席を保有していなければならない」と定めた1993年の憲法を改正して、単純過半数を要件とするよう提案している。フンセン首相もこの提案を歓迎している。

これまで、3分の2を確保しなければ政権を取れなかったことから、選挙後に無益な多数派工作が繰り返され、ただでさえ貧困等の社会問題に悩むカンボジアにおいて、政治が機能しなくなってしまうことがしばしばであった。

 2003年7月の選挙では、フンセン氏率いるカンボジア人民党が73議席、ラナリット派のファンシンペック党(FUNCINPEC)が26議席、サム・レンシー党が24議席であった。フンセン派が3分の2を取れなかったため、選挙後11ヶ月間にわたって政府が存在しない状態が続いたが、ラナリット派が自らのスタンスを曲げて連立政府を組むことに同意し、ようやく政治的停滞が終わったのである。

NGO「カンボジア自由公正選挙委員会」のコウル・パン・ハ代表は、この憲法改正により野党の議員が増えることになるだろうと予想し、それは望ましいことだと述べた。

しかし、カンボジア憲法がこのような柔軟性に欠ける条項を持っているのにはそれなりの理由がある、と擁護する意見もある。すなわち、大量虐殺などの負の歴史を持つカンボジアにおいて、各党派の和解を押し進め平和を実現するには、極力多くの人々が同意する形で政府を形成した方がよい、という考えであった。

カンボジアの憲法改正論議について報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan

米国のキリスト教指導者たちがイラク問題で謝罪

【ニューヨークIPS=シメナ・ディエゴ】

世界教会協議会(WCC)米国会議議長のレオニッド・キシュコフスキー師は、WCC世界大会に集まった世界中のキリスト者に向かって、「私たちは、特別の苦悩をもって、イラク戦争への嘆きを表明します。この戦争は、人を欺き、正義と人権の国際規範を破って遂行されたのです」と語りかけた。 

WCCは1948年に創設され、現在、120カ国の340のキリスト教宗派を束ねる団体である。5.5億人の信者が傘下にいるといわれている。米国会議はそのうち400万人を占める。ローマカトリック教会はWCCに入っていないが、東方正教・福音主義教会・ルター派・英国国教会などさまざまな宗派が加入している。今回の世界大会は、ブラジルのポルトアレグレで開かれている。 

米国会議の声明はこう述べる。「私たちの指導者は全米および全世界の教会指導者の声に耳を貸さず、自らの国益のために世界を支配しコントロールしようという帝国的プロジェクトを開始したのです」。 

声明はまた、地球温暖化対策に不熱心なブッシュ政権を非難している。さらに、飢餓・HIV/AIDS・疾病などに対する無策を指摘し、ハリケーン「カトリーナ」後の支援に見られた人種差別主義を批判している。

 また、その数日前、全米教会協議会(NCC)のロバート・エドガー事務局長が、コンドリーザ・ライス国務長官にあてた書簡の中で、キューバのグアンタナモ収容所にいる囚人をきちんと裁判にかけ釈放するか、あるいは収容所そのものを閉鎖することを要求した。 

WCC世界大会は、2000人の参加したキャンドルマーチで幕を下ろした。 

ブッシュ政権のイラク政策を批判する米国のキリスト者について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=山口響/IPS Japan浅霧勝浩

「新しい映像流出」でイラクに広がる怒り

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【バスラIPS=ダール・ジャメイル、アーカン・ハメッド】

デンマークの新聞を初めとしてヨーロッパ各地の新聞にムハンマドの風刺画が掲載され、イラク占領に対する住民の怒りを増幅させる形になっている。 

イギリス軍が駐留しているバスラに住む43歳の食品小売業、アリ・シェハブ・ナジムさんは、「私たちバスラの人間は、イギリス軍とどのような形であっても協力しないことを決めた。このバスラの占領者は侵略者であり、彼らの必要とするものを私たちは彼らに売らないことにする」と語った。

 ナジムさんによれば、人々は特に、デンマーク軍がイラクに駐留していることに怒っているという。彼は、はじめは占領軍の存在を受け入れていたが、いまや、自分たちは彼らを尊重などしていないことを示すときだ、という。 

さらに、英軍兵士が若いイラク人をこぶしや棒で殴っている映像が最近公開され、バスラ知事は、今後英軍との関係を断ち切ると発表した。共同パトロールもやめる。バスラ議会の元議長カシム・アタ・アルジョウボリ氏は、「イラクはこの35年間苦しんできた。しかしいま、われわれの国に侵略してきた外国人に拷問を受けている」と語った。英軍と協力するどころか、彼らと闘うことすらいま人々は考え始めている、とアルジョウボリ氏は語った。 

最近、オーストラリアのテレビ局SBSが、2003年にイラクのアブグレイブ刑務所で起こった虐待の様子を収めた新しい映像と写真を放送した。これらは以前のものよりも残虐性や性的刺激の点において程度が強く、他のメディアが公開を躊躇したものであった。これらの中には、米自由人権協会(ACLU)が情報公開法で取得した写真も含まれている。また、「憲法権利センター」のある弁護士は、ワシントンポストなどの有力紙はこうした写真を実際には保有しているにもかかわらず、米国政府からの圧力により公表を避けているのだろう、と語っている。 

イラク占領に対する新たな怒りの声を伝える。(原文へ) 
 
翻訳/サマリー=山口響/IPS Japan浅霧勝浩 

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