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|エジプト|ムスリム同胞への団弾圧続く

【カイロIPS=アダム・モロー、カレッド・モウサ・アルオムラニ】

エジプト政府がイスラム教徒の集団である「ムスリム同胞団」への弾圧を強めている。1月28日には、当局が、資金洗浄に関与していたとの容疑で、同胞団に関連した29人の経営者の資産を凍結した。

対象者の中には、同胞団の最高指導者代理であるカイラート・アルシャタル氏も含まれていた。悪いことに、アルシャタル氏とその他の15名は、その前日に釈放されたばかりであった。被疑者側は異議申し立てをし、裁判所は最終決定を2月24日まで延期したが、その間も資産は凍結される。

 12月中旬以降、当局による弾圧は加速している。12月10日に首都カイロのアルアズハール大学において同胞団系の学生が集会を開いたのがきっかけだと見られている。国家メディアではこの集会をまるで「軍事パレード」だと記述した。この集会の直後に、当局は120名の学生と20名の同胞団幹部を、騒擾を教唆したとの容疑で逮捕している。

同胞団は、これら一連の弾圧は当局の政治的思惑によるものだと批判している。エコノミストであり「サダト・アカデミー」の元代表であるハムディ・アブデル・アジム氏は、弾圧は、来る上院議員選挙と地方選挙に先がけて、同胞団の資金源を断つ目的を持っている、と指摘した。

エジプトのムスリム同胞団弾圧について報告する。(原文へ)

翻訳/サマリー=IPS Japan

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|米国|国土安全保障省監査総監、移民拘留所の不当待遇を明かす

【ニューヨークIPS=ウィリアム・フィッシャー】
 
米国土安全保障省(DHS)監査総監室は、マイアミの「クローム・サービス処理センター」(Krome Service Processing Center)、民間契約企業「アメリカ矯正社」(Corrections Corporation of America=CCA)のサンディエゴ施設を始めとする国内各地の刑務所、留置所を対象として行われた調査の結果を発表した。

不法移民の待遇について同報告書は、拘留中の不法移民容疑者に対する医療や食事は不十分で、性的嫌がらせも多く、弁護士や家族、移民担当官との面会も不法に制限されていると述べている。

移民拘留センターの多くは民営化され、CCAやワッケンハット(現在は「GEOグループ」に改称)といった民間企業により運営されている。民営化によりコストが大幅に削減されるというのがその理由だが、米議会検査院は1996年に、企業側のその主張には明確な証拠が見出せないとする報告書を提出している。

 
2001年9月11日のテロ攻撃で、数千のイスラム教徒とおぼしき移民が収監されてから、刑務所の民間経営ブームが始まった。DHS 監査総監室は2003年に、彼等の扱いを強く批判する報告書を提出。囚人の基本的権利侵害、精神的・肉体的な嫌がらせ、ヘルスケアや医療の欠如、過密、シャワーやトイレの使用拒否などを指摘したが、その後の不法移民取締り強化で、拘留施設経営契約も民間に流れたのである(CCAの2005年第2四半期収入は約3億ドル)。
 
 DHSを批判するグループは、今回の報告書について、これまでの提案が全く活かされていないと落胆している。移民留置所の実態を暴露した本「アメリカン・グーラグ」(グーラグとは強制収用所の意味)の著者であるマーク・ダウ氏は、「DHSが移民の拘留、移民関税執行局、警察の役割を同時に担っている限り、不当な扱いはなくならない。強制権のない監査は無意味だ」と言う。アムネスティ・インターナショナルUSAのメアリー・ショウ氏は、「米国の移民システムは、9/11からさらに悪化した。保護を求めて来る者と攻撃のため入国する者を一緒にしてはならない」と述べている。

同報告書を受けて、国内10数の団体はDHSに対し、強制力のある留置関連規則の制定を求める請願書を提出した。DHS監査総監室の刑務所・留置所実態調査について報告する。

翻訳/サマリー=IPS Japan

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|南太平洋|フィジーの将来を決める賢人会議報告書

【スヴァIPS=シャイレンドラ・シン】


クーデターが頻発するフィジーは、2006年12月の軍事クーデターを契機に断絶した国際社会との関係を修復し、必須の財政支援再開の道を開くことができるか。成否は、太平洋諸島フォーラムの賢人会議(EPG)が作成する現地調査報告書にかかっている。

賢人会議は1月29日に作業を開始した。くしくも同日、アメリカの数百万ドル規模の支援中止の公表があり、地元紙は軍による人権侵害の記事を掲載した。

有力団体「市民憲法フォーラム(Citizens Constitutional Forum)」のダクブラ(Jone Dakuvula)企画担当代表はIPSの取材に応じ、支援を中断した英連邦、アフリカ・カリブ海・太平洋諸国(ACP)、EU、アメリカは関係正常化の開始に向け、賢人会議の評価を参考にするだろうと述べ、「賢人会議の活動の重要性」を指摘した。一方、同国の基幹産業である砂糖産業向け3億5,000万ドル規模のEUによる支援パッケージにはまだ疑問符がついているとも語った。

賢人会議を派遣したのは、オーストラリア、ニュージーランドを含む16カ国で構成する太平洋諸島フォーラム(PIF)の行政機関であるPIF事務局。PIFは太平洋地域における基幹的政治経済組織。賢人会議を構成する4人の委員は、バヌアツのキルマン副首相・外相、サモアのルイガ天然資源環境相、パプアニューギニアのアメット元最高裁判所長官、コズグローブ元オーストラリア軍長官。

賢人会議の使命は「フィジーが憲法と法律に則って民主的政権を回復する道を開くことであり、フィジーがこれを達成するために、PIF事務局ならびに加盟国はどのような役割を果たすことが最も有益であるか考慮することである。」委員はイロイロ大統領、暫定首相のバイニマラマ司令官と面会した。

賢人会議のキルマン委員長は面会後も多くを語らず、週末の訪問終了までに声明を発表すると記者団に語った。バイニマラマ司令官は、面会は「有意義だった」とラジオを通じて語った。

賢人会議の一行は週末までに、フィジーで影響力を持つ部族代表の大酋長会議、さらに政党、市民団体、その他関係者と面会する。さらに追放されたガラセ前首相の出身地ラウ諸島のマバナ島に飛び、同氏と面会する予定。軍はガラセ前首相を巧妙に同島に追いやり、首都スヴァに帰還することを許可していない。一行の訪問には米政府の後ろ盾があり、米政府は声明の中で、太平洋諸島フォーラムが迅速な民主主義の回復を促す努力をしていることを支持すると表明。さらに、軍政はフィジーの政治経済的発展ならびにアメリカとの関係を著しく阻害するものであり、米政府はフィジーに民主政治を回復するために賢人会議、太平洋諸島フォーラムと緊密に連携する用意があると述べている。

これに先立ち、米政府はフィジーのミレニアム・チャレンジ・アカウントへの支援停止を発表している。同じメラネシア諸国のバヌアツは最近、同プログラムで6,500万ドルの支援を受領している。

バイニマラマ司令官は28日国営テレビのインタビューで、暫定政府は3年から5年の任期を全うすると答えたが、ダクブラ氏は賢人会議が通常1年半から2年のうちに選挙の実施を求めると言及。さらに人権の尊重、報道と言論の自由、総選挙と民主的政権に向けた現実的スケジュールも強く求められると述べた。

南太平洋大学の作家、学者のソム・プラカシュ(Som Prakash)氏はIPSの取材に応じ、軍が迅速に民主主義に回帰すれば、フィジーは国際社会の承認と尊厳を取り戻し、国内的にも反体制運動の危機が遠のくことになると語った。

さらに、発展途上国のフィジーは多額の資金を失うわけにはかない、EUの砂糖産業復興資金を失えば大変なことになる。「砂糖はフィジーの生命線。砂糖の収入は国内に留まり分配される。国外に流出してしまう観光業収入とはわけが違う」と指摘した。

軍による人権侵害が訴えられていることで、事態が複雑になる可能性がある。『フィジー・デイリーポスト』紙は29日、民主化回復活動家に対する軍の人権侵害を報じたオーストラリアの『エイジ』紙記事を1面に引用。

記事は、女性活動家が襲われ、性的屈辱を受けたと報じている。EUは協議を開始、人権侵害が確認されれば、新たな制裁に発展する可能性もある。(原文へ) 

翻訳=IPS Japan


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|フィリピン|「超法規的殺害」に国連が命綱

【バンコクIPS=マルワン・マカン・マルカール】

左派傾向の思想を持つ政治家や活動家を抹殺しようとする非人道的な一連の事件に関わったとしてフィリピン軍部を糾弾することで、国連の使節団は命の危険に晒されている多くの人々に命綱を投げかけたようである。 

国連の超法規的殺害に関する特別報告者であるフィリップ・アルストン氏は、21日にマニラで発表された声明の中で、フィリピン国防軍(AFP)は、この東南アジアの国、フィリピンで起きた政治的殺害について、その多くが「AFPにほぼ間違いなく起因する」にもかかわらず、「ほとんど完全否定という状態を変えようとしない」と述べた。 

さらにアルストン氏は、殺害事件の捜査が不十分であり、適切な「法医学的」措置をとらないことが多いとして、フィリピン国家警察を非難した。特に捜査の甘さを指摘し、そのために「虐殺者」あるいは「死刑執行人」と呼ばれていて最近退役したホビト・パルパラン陸軍少将が、自身が勤務していたフィリピン諸島北部の中部ルソン地方などで起きた大量の超法規的殺害への関与に対する嫌疑を回避してしまったと語った。 

マニラの全国ネットのテレビ局であるグローバル・メディア・アーツ(GMA)は、「AFPの指揮官が、徹底的な内部調査に乗り出すのではなく、パルパラン少将に対する執拗で広範囲の疑惑は根拠がないものだと安心させるために少将自身に3度も電話しているようでは、まだまだ前途多難であることは明らかだ」というアルストン氏の発言を報じた。 

パルパランがフィリピンの左派に対して抱いている見解は、広く知られている。昨年は「左派の活動には嫌悪感を持たなければならない」とフィリピンのメディアに語った話が報道された。それ以前にも、「合法的な存在ではあるが、非合法の活動を行なっている」などと述べて合法的な左派活動家に対する自身の悪感情を正当化したと伝えられていた。 

オーストラリア出身のアルストン氏は、繰り返される政治的殺害を10日間にわたって調査した後、コメントを発表した。地元の人権グループは、グロリア・マカパガル・アロヨ大統領が2001年に就任して以来、殺害された人々は830人を超えたという。犠牲者には、ジャーナリスト、弁護士、裁判官、僧侶、労働組合員、草の根の活動家、人権擁護者に加えて、360人以上の左派活動家が含まれている。 

「アルストン氏が毅然として取り組んだことで、アロヨ政府が広めた主張の誤りと虚偽が明らかにされた」と、フィリピン最大の左派連合「バヤン」のレナト・レイエス事務局長は、IPSの取材に応じてマニラから語った。「これがさらに、特に殺害を続けさせ容認してきた軍の役割に対策を講じるため、政府に対して何か手を打つよう圧力をかけるにちがいない」。 

「これで政府が責任を否定する余地は劇的に少なくなり、アルストン氏が3ヶ月を費やして最終報告書を発表するときには、よりいっそう厳しくなるだろう」とアロヨ政権を批判する人々はいう。左派のバヤン・ムラ党に所属するテディ・カシーニョ下院議員はIPSのインタビューに応えて、「アルストン氏のコメントは客観的で公正だ」と語った。「政府は超法規的殺害についての責任を否定できず、調査結果を認めなければならない」。 

国連の使節団がフィリピンの左派活動家に投げかけた命綱は、感謝の念で受けとめられている。AFP通信社によると、アルストン氏は、左派に対する支持が強い地域で国民の支持を得るために行なったフィリピン政府の反乱対策作戦が、「左傾組織を中傷し、そうした組織の指導者を恫喝しよう」とする試みを招いたと語った。「いくつかの事例では、そのような恫喝がエスカレートして超法規的処刑となった」。 

アルストン氏のコメントは、他の批判的報告書と同調して、殺害される政治家の多さを釈明するために当局が主張する議論を退けた。たとえばフィリピン軍は、非合法化されたフィリピン共産党(CPP)の軍事部門である新人民軍(NPA)の内紛に責任を負わせようとしてきた。 

国連使節団の調査結果はまた、元最高裁判事のホセ・メロ氏が主導した、政治家殺害を調査するために政府が任命した委員会の調査結果を明らかにするようフィリピン政府に対して圧力を加えるものと期待されている。委員会は昨年、アムネスティ・インターナショナルなどの人権監視組織がフィリピン軍の一部が相次ぐ流血事件に関与していると糾弾し、政府に対する批判が高まった際に設立されたものである。 

しかしながら現在の左派に対する弾圧行為は目新しいものではない。1980年代末のフィリピンでも、左派活動家やCPPの支持者を弾圧する公式に容認された動きが見られた。人権活動グループによると、その弾圧の際には、暗殺者は覆面をつけてバイクに乗った男たちで、580人を超える人々が狙撃された。 

さらにさかのぼり、1940年代、50年代にも、左派の議員と活動家が、国家が背後にある暴力的な弾圧のターゲットになったことがあった。 

結局のところ、フィリピン政府が反対者を黙らせようとする試みには、現在も過去も類似した点がある。「殺害が反対派を抑える政府の手段のひとつになっている」と地元人権グループ「カラパタン」のルース・セルバンテス広報担当者はIPSの取材に応じて語った。「政府は左派活動家の政治の領域への参加に反対している」。(原文へ) 

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩 


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死刑制度、一部いまだ廃止に至らず

死刑制度、一部いまだ廃止に至らず

【パリIPS=ジュリオ・ゴドイ】

死刑執行をあくまで存続している一握りの国がなかったら、2月1日から3日までパリで開催された第3回世界会議に世界中から参加した死刑廃止活動家は「任務完了」と口々に唱えて帰国の途についたであろう。 

この一握りの国:米国、中国、サウジラビア、イランおよび北朝鮮は、今なおあらゆる論拠と証拠を退け、この5カ国だけで5,000件以上にのぼる年間死刑執行件数の97%以上を占めている、とイタリアの団体「ハンズ・オフ・ケイン」の2006年報告書『世界の死刑(Death Penalty Worldwide)』は明らかにしている。 

この他50カ国が死刑制度を存続しているが、たまのことであり、2005年における執行件数は156件余であった。 

世界会議では、死刑廃止の傾向が明白であることが確認された。1981年、フランスは世界35番目の死刑廃止国となった。それから25年、死刑全面廃止および死刑執行の一時停止を含め、死刑を実施していない国は142カ国となった。 

世界各国からパリに数百人の著名人や活動家が集まり3日間にわたり開かれた世界会議は、こうした統計に対する複雑な思いと、全世界における死刑執行停止(モラトリアム)の承認を国連総会に促さなければならないという切迫感で満ちた。 

会議には、フランスのロベール・バダンテール元法相をはじめ欧州連合全加盟国の代表、ならびに各国の弁護士協会やアムネスティ・インターナショナル、国際人権連盟などの諸団体の代表が参加した。 

死刑が今なお存続している北米や中東からも、死刑廃止団体の代表が参加した。 

1970年代末にフランスの死刑廃止運動を主導し、死刑廃止を実現させたバダンテール元法相は、閉会式で次のように会議の雰囲気を総括した。「私たちの大義は正しく、世界における死刑全廃の時が到来したことを心から確信した。人の命を奪う正義はあり得ない」。 

バダンテール元法相の楽観は、「地の塩」たる活動家のなすべきことがまだ山積しているという現実への認識の前に薄らいだ。この心情は、会議の最終宣言に反響している。 

「私たちは、死刑が世界において減少傾向にあり、モントリオール会議(2004年)以降ギリシャ、キルギス、リベリア、メキシコ、フィリピンおよびセネガルが死刑を廃止し、他方死刑を復活した国はない事実を歓迎する」と宣言は述べている。 

しかし宣言は続けて、「私たちは、同期間中、2006年におけるバーレーンなど、一部諸国が長期にわたるモラトリアムの後死刑執行を再開し、中国、イラン、サウジアラビア、米国およびベトナムをはじめとする多数の国で・・・依然死刑が適用されていることを遺憾に思う」と述べている。 

宣言は、国連総会に対し全世界における死刑執行停止を承認するよう強く求めた。これが今実現されれば、「ハンズ・オフ・ケイン」の推定では、およそ2万人の死刑囚が救われる。 

この2万人の大半は中国である。パリ会議は、中国政府に対し、「2008年の北京オリンピックと2010年の上海万国博覧会を見据えて」モラトリアムを導入するよう具体的に請願した。 

会議はまた、「中国における経済や薬物に関連する犯罪を含む非暴力犯罪」に対する死刑の廃止も求めた。 

会議の主催者であるフランスの人権団体「皆と一緒に死刑に反対する会(Ensemble contre la peine de mort)」のエリック・ベルナール事務局長は、この数十年間にますます多くの国が死刑廃止に至ったのには数多くの要因があると、IPSの取材に応えて述べた。活動家は、彼らの運動を世界規模で展開し始めた。死刑制度の問題はもはや国内の刑法上の問題ではなく、「重要な国際人権問題」となったと、事務局長は述べた。 

「死刑執行は、犯罪抑止効果が高いとはもはや考えられておらず、むしろすべての社会にとって非人間的なことであると見なされている。死刑を適用している国に誤審が数多く見られている事実も、こうした認識を広める要因となった」。 

また、死刑執行を巡る恐ろしい出来事も、世論と諸国政府が死刑反対に転じる要因となっている。 

最近の出来事のひとつ、昨年12月に死刑に処されたアンジェル・ニエヴェス・ディアスの例がそれに当たる。最初の薬物注射に失敗し、もう1本注射が必要となり、致死までに34分も要した。 

現地の郡検視官によれば、注射によってディアスの腕に30センチもの化学火傷ができた。ディアスの弁護士ニール・デュプリー氏を含む目撃者は、死刑執行が長くかかったのでディアスは苦痛に顔を歪めたと宣誓した上で報告している。 

死刑執行の失敗により、フロリダ州のジェブ・ブッシュ知事は、予定の死刑執行をすべて中止し、州内における死刑の適用に関する調査委員会を設置することを余儀なくされた。これによって、フロリダ州の死刑囚398人の死刑執行が猶予されている。 

ワシントンに本拠を置く「死刑情報センター(Death Penalty Information Center)」のリチャード・ディーター所長は電話でIPSの取材に応え、「全国で死刑が問題として取り上げられている」と述べた。 

ディアスの死刑は2006年中53件目の執行に当たったが、これは10年間でもっとも少ない件数である。 

しかし死刑は、米国内50州のうち38州で存続されている。10州が死刑を中止しており、ニュージャージー州1州が死刑を廃止することを1月発表した。 

ディーター所長は、「死刑はリスクの伴う費用のかかるものであり、取り返しのつかない誤りをもたらす可能性がある。このような誤った政策を信じようとする人は今やほとんどいない」と述べた。 

死刑を恒久的に廃止する決意が高まる中、フランスがそれを象徴する行動に出た。 

ロベール・バダンテール元法相が死刑反対運動をフランスで成功に導いてから25年、フランス議会は今年2月、死刑廃止の決定を憲法の条項に加えることを承認した。(原文へ) 

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩 

|ソマリア|対テロ戦争の新たな前線に

【ヨハネスブルグIPS=モイイガ・ヌドゥル】

ソマリアは、アフガニスタン、イラクに次ぐ対テロ戦争の新たな前線となり、アフリカに不安が起こっている。

唯一の違いは、ジョージ・W.ブッシュ大統領が9.11同時多発テロ事件の後、カブールのタリバン、バグダッドのサダム・フセインを追放するため米軍を派遣したという点だけだ。ブッシュは自らが言うところの「テロリスト」を追い詰めるため、同じ武力を使用している。

ソマリアでは、ブッシュの“汚い仕事”をエチオピアが肩代わりしている。エチオピア軍は弱体のソマリア暫定連邦政府(TFG)を支援し、2006年12月28日に、過激派イスラム民兵グループを首都モガデシュから駆逐した。

市民の支援を得たイスラム軍は、15年に亘る無法状態からある程度の安定を築いた。1991年の独裁者シアド・バレ失脚以来、ソマリアには有効な中央政府が存在せず、バレ失脚後、反乱軍は互いに勢力闘争に明け暮れていた。

イスラム軍は、昨年7月に米国寄りの軍事指導者を打ち負かし、モガデシュを支配下に置いた。

エチオピア軍のイスラム軍追放には10日しかかからなかった。彼らは現在、エチオピアのメレス・ゼナウィ首相言うところの“国際ジハーディス(International Jihadists)”をソマリア・ケニア国境の潜伏地から狩出す作戦に当たっている。

米国は、対テロ戦争の一環として、ソマリア・ケニア国境のある村に隠れているイスラム軍とおぼしき一団に対する空爆のため戦闘機を出動させた。

アナリストは、「米国政府の介入は、平和維持部隊8千人のソマリア派遣を提案したアフリカ諸国を難しい状況に追い込んだ」と語っている。

南アフリカ・ウィットウォーターズランド大学で国際関係を教えているデイビッド・モンヤエ講師はIPSの取材に対し、「米爆撃機のソマリ空爆により、アフリカの立場は微妙になった。水を濁すようなものだ。このことで、ソマリアに部隊を派遣するものは皆、米国の代理人と看做される」と語っている。

侵攻したエチオピア軍に対するソマリ人の攻撃報告も、散発的ではあるが増加している。エチオピアのゼナウィ首相が、エチオピア軍のソマリア駐留は“数週間”と述べたことで、同軍撤退後の混乱に対する懸念が高まっている。

プレトリアにある南アフリカ・アフリカ研究所(Africa Institute of South Africa)のアナリストで「63~83年のケニア対ソマリア外交政策」の著者でもあるコルワ・アダル氏はIPSの取材に対し、「エチオピア軍のソマリ撤退は、早ければ早いほど良い。彼らのソマリア駐留は、両国の過去の恨みを掘り起こすことになる」と語った。

ソマリアと隣の大国エチオピアは、過去45年間に2度の戦争を経験している。ソマリアは圧倒的にイスラム教徒が多いのに対し、エチオピアでは多数のキリスト教徒が首都アジスアベバを支配している。

アダル氏は、「米国およびEUは、できる限り早くエチオピアに代わる平和維持部隊に資金を提供すべきである」と言う。米政府は既に、ソマリアに対し4千万ドルの支援を約束している。

東アフリカ諸国が派遣したケニアのラファエル・トゥジュ外務大臣は1月15日、南アフリカのタボ・ムベキ大統領と会い、ソマリアへの部隊派遣を要請した。ムベキ大統領は今週、問題の調査を約束した。

アフリカの経済/外交を主導する南アフリカは、広範な活動を行っており、コンゴ民主共和国、ブルンディ、スーダン、コートジボワール、エチオピア・エリトリア国境地帯に合計3千人の平和維持部隊を派遣している。

モンヤエ氏は、「南アフリカは、ソマリアに対する長期軍事介入を避ける訳にはいかないと思う。これは私観であって、状況は変化すると思うが、その前に、南アフリカはアフリカ連合および国連において外交的努力を主導することが可能だろう」と言う。

ソマリアのアリ・モハメド・ゲディ首相は1月16日、暫定議会において、1月末までに少なくともウガンダ、南アフリカ、ナイジェリア、マラウィ、セネガルの5カ国から部隊が派遣される予定と語った。

しかし、1,500人の派兵を約束したウガンダを除く4カ国は、1月29~30日にエチオピアで開催されるアフリカ連合(AU)サミットでの決定および部隊派遣の明確なガイドラインが打ち出されるのを待っている。モンヤエ氏は、「派遣した部隊が虐殺されるのを欲する者はいない」と語る。

ソマリアには、無法、無政府状態、流血のイメージが付きまとう。90年代には、民兵組織リーダーと国連平和維持部隊の戦闘があった。93年には、ソマリ兵士が米国の軍用ヘリコプターブラック・ホーク2機を撃ち落し、米兵18人を殺害した。この事件を受け、米部隊は1994年にソマリアから撤退。翌年には国連平和維持部隊も同国から撤退している。

アダル氏は「米国は平和維持やソマリ和平協議に参加すべきではない。IGAD(政府間開発機構)およびAUが主導すべきである」と言う。IGADは、ジブチ、エチオピア、ケニア、ソマリア、ウガンダ、スーダン、エリトリアで構成される。

モンヤエ氏は、「中立の平和維持部隊を派遣することが望ましい。これにより正当性がもたらされる。ここでは、正当性が鍵となる。エチオピア、ジブチといった米国の同盟国と看做されている国々(米国が軍事基地を維持している)は除外すべきである」と言う。

同氏はまた、「ソマリアの平和維持部隊は同時展開とし、平和に反対するものは切り離すべきである」と語っている。

アダル氏は更に続け、「暫定連邦政府は、出来るだけ早期に政府内の力を結集し、和平交渉を開始すべきだ。千載一遇の機会を失ってはならない」と言う。

暫定連邦政府が、逃亡したイスラム軍リーダー、シーク・ハッサン・ダヒール(米国のテロリスト容疑者リストに載っている)との話合いを行うかどうかは定かでない。ダヒールは、アルカイダと関係のあった「アルティハード・アルイスラミヤ」のリーダーであった。アルティハードは既に存在しないが、彼はいまだ演説の中で激しい反米発言を続けている。

米政府は、米人12人を含む214人の死亡者を出した98年のケニア大使館爆撃事件の犯人と思われる数人のアルカイダメンバーが無法のソマリアに潜伏していると見ている。

その内の1人、コモロ人のファズル・アブドラ・モハッメドを逮捕しようと米政府は500万ドルの懸賞金をかけている。

モハンメドはまた、タンザニアの首都ダル・エス・サラームにおける98年の爆弾事件およびケニア・モンバサの海岸リゾートホテル(イスラエル人所有)の爆破を実行したテロリスト・グループとも関係している。

エチオピアは、国境に接するイスラム国スーダンおよびソマリアを警戒すると共に、イスラム系住民のGreater Somalia思想の復活を憂慮している。

Greater Somaliaは、ソマリアの空色の旗の5つの星に象徴される。これらの星は、南部ソマリア、分裂したソマリランド共和国(両者は60年代に独立国として統合された)、エチオピアのオガデン地域、ジブチの一部、ケニア北部を表している。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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|インド|国境なき医師団「特許より患者優先を」

【ブルックリン・カナダIPS=スティブン・リーヒ】
 
1月29日、インド政府とスイスの大手製薬約会社Novartis AGの医薬品パテント(特許)を巡る裁判が、インド最高裁判所で開始された。

国境なき医師団」(MSF)基本医薬品アクセス・キャンペーン担当のTido von Schoen-Angerer部長は、「インドは世界の貧しい人々のための製薬会社となった。開発途上国のHIV/ AIDS患者の半数強は、インドが供給する低コストのジェネリック医薬品に依存している。しかし、Novartisが勝利すれば、インドのジェネリック医薬品産業は消滅する」と語る。

同氏によれば、 UNAIDS3x5や米国際開発局の大統領エイズ救援緊急計画といった多数の国際保健プログラムもインドのジェネリック医薬品を使用し、数百万ドルのコスト削減を行っているという。

 WTOは、2001年のドーハ会議で、公衆衛生の危機に当たってはパテントを無視し、開発途上国に対しジェネリック医薬品の製造および輸出を認めると宣言した。しかし、大手製薬会社はドーハ宣言を無視し、自由貿易合意と法的手段により知的所有権(IP)の強化を図っている。カイロを拠とする保健活動家の国際連合組織「 People’s Health Movement 」の共同主催者であるアミト・セン・グプタ氏は、「我々はインド政府に対し、パテントや利益よりも人々の健康を優先する法律を制定するよう強く働きかけてきたが、Novartisはこのパテント法を覆そうとしている」と言う。

Novartisのスポークスマンはニューヨークにおいて、「当社は、医薬品を必要としている人々の99%に薬を無料配布する。今回の裁判の争点はパテント保護であり、生命維持に必要な薬のアクセスは問題ではない」と語っている。Novartisは、強力なパテント保護がなければ、企業は新たな薬の開発に投資する意欲を失ってしまうと主張しているのである。

MSFの政策担当エレン・ホーエン部長は、「製薬産業は年間6千億の大産業であり、利益獲得の機会は多いはずだ。我々は、新たなそして手頃な費用の医薬品開発/製造を必要としている」と語っている。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan

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|エジプト|大統領、ムスリム同胞団を非難

【カイロIPS=アダム・モロウ、カレド・ムッサ・アルアムラニ】

エジプトのホスニ・ムバラク大統領は、独立系の週刊誌『Al-Esboua』のインタビューの中で、ムスリム同胞団について「国家の安全を危険に晒す集団である」と非難し、同団体の宗教・政治活動は国家経済に悪影響を及ぼしかねないと警告した。

一方、(政府の圧力を受けながらも2005年末の選挙で5分の1の支持を獲得した)ムスリム同胞団のスポークスマンは、インタビューが発表された翌日、ムバラク大統領が出したコメントに対して即座に反論。ムスリム同胞団のホームページで「同国で問題となっている資本流出の拡大は、『緊急法(警察官の判断で逮捕・強制連行ができる法律:IPSJ)』といった不当な法律の存在や、汚職が蔓延している現政権の独裁政治に原因がある」と激しく抗議した。

 そもそもムバラク大統領の発言は、先月カイロの(イスラム系の大学)アズハル(al-Azhar)大学でムスリム同胞団に所属する学生らによる反政府活動に端を発している。政府はこの出来事を『軍事パレード』として非難し、数十名の学生を逮捕・拘留した。

政府寄りの新聞『Al-Ahram』紙は「学生たちはハマスや(パレスチナの武装組織)アルアクサ殉教者旅団などと同様の服を着ていた。ムスリム同胞団の指導者たちは多数の学生を勧誘し、彼らにデモ活動に参加するよう強要して多くの不安を与えている」と報道した。

これに対して、ムスリム同胞団の最高指導者代理モハメド・ハビブ氏は「我々は平和的な手段でこの国を改革に導こうとしている。民兵の軍事訓練は行っていない」と反論した。ムバラク政権から依然として抑圧を受けるムスリム同胞団について報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan


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|アルゼンチン|Madres de Plaza de Mayo、スラムに住宅の夢を届ける

【ブエノスアイレスIPS=ルシアナ・ペカール】

Madres de Plaza de Mayoのシンボルである白いスカーフのマークが付いた青の作業服を着た男女約300人のスラム住民が自らの新居そして新たな人生の建設を行っている。 

人権擁護団体・Associacion Madres de Plaza de Mayoの活動家は、軍事独裁政権時代(1976-1983)に姿を消した反政府の息子や娘達に何が起こったのかを明らかにしようと30年に亘る活動を続けてきた。 

人権擁護活動で世界的に有名なMadres(母親)は、活動の範囲を広げた。彼らは昨年、アルゼンチンでは「villas miseries」(悲惨な街)として知られるスラムに住宅を建設する活動を開始したのだ。 

10月16日、Ciudad Oculta(隠された街)として知られるブエノスアイレス南ビラ・ルガノにおける第1プロジェクトを、280人のスラム住民と共に立ち上げた。同プロジェクトに参加した280人の労働者の内半数は女性である。 

彼らは、36ユニット、2棟の住宅建設を行っている。3部屋で構成される1ユニットの面積は62平方メートルで、浴室、台所、給湯/集中暖房装置が付いている。

 
建設中の建物は、基本的な衛生も確保されていないスラムの崩れんばかりの住居、泥道の真中に際立っている。 

Mardes de Plaza de Mayoの活動家は1970年代、姿を消した息子や娘の返還を求め、頭に白いスカーフをしてブエノスアイレス市庁舎前の広場で毎週木曜に無言の行進を開始した。住宅建設プロジェクトに参加している男女は、「decent housing」(まともな住宅)というロゴとこの白いスカーフのマークがついた青い作業服を着ている。(人権擁護団体によれば、独裁政権時代には約3万の左派、反政府活動家が拉致されたという。) 

同プロジェクトが採用したのはイタリア企業M2の工法で、塗装鉄骨で強化された構造パネルと波型のポリスチレン材、高速乾燥コンクリートを使用する。世界40カ国強で使用されてきたこの簡易コンクリート工法は経済的な上、夏は涼しく冬は暖かい。 

1棟当りのコストは約200万アルゼンチン・ペソ(65万ドル)で、これはブエノスアイレス市の人権省が負担している。プロジェクト参加者および入居者は、Ciudad Ocultaの住民、特に火災によりホームレスとなりトタンとボール紙の小屋に住むことを余儀なくされた者を主に選ばれた。 

10歳のヤミル、8歳のフェリックス、2歳のケビンの父親フェリックス・マルバエスさん(38)は、1年前の火災で焼き出された住民の1人である。彼は現在プロジェクトの電気工事主任であるだけでなく、将来はこの近代的な住宅のオーナーになる。 

彼はIPSの取材に対し「愛情を込めて建設している。ここでは、搾取されることも無く尊敬されており、人々が私の言うことに従ってくれるのであり難い。火災の日、息子のフェリックスはこれからどこで寝るのだと聞いた。それはこれまでで一番辛い質問だった。しかし今は、息子の質問に答えるために建設を行っている」と語った。 

人権擁護団体の労働方法は、民間企業のそれと明らかに違う。 

Plaza de Mayoのプロジェクト・ディレクターでエンジニアのエンリケ・リアレ氏はIPSの質問に対し、「我々は、長時間労働/低賃金の資本主義論理の下で利益を上げるのではなく、きちんとした住宅を建設し仕事を生み出すことにより小さな革命を起こそうとしているのだ」と語る。 

プロジェクトに参加しているスラム住民は一般に、スラムに暮らす故に仕事を見つけることが困難だ。 

プロジェクト参加者の半数は女性で、彼女達は男性支配の領域である建設の訓練を受けている。 

3人の子供を持つ26歳の母親ジェシカ・レタさんは、如何にして同プロジェクトが新たな可能性を広げるのに役立つかを示す好例である。 

彼女は、住宅建設を手伝いながら、「私の人生の唯一の目的は夫や子供、家庭に仕えることだった」 

「高校は卒業したが、スラムに住んでいるため仕事は見つからず、先に進むことは無理だと分かった時に野心や希望は消えてしまった」と彼女は言う。 

しかし、彼女は今では一日の仕事で疲れて家へ戻っても、新たな技術を学ぶことが出来て幸せだという。彼女は、「電気配線、配管、タイル貼りの訓練があり、失業中の男性隣人が先生」と説明する。 

リアレ氏は、「彼女達の仕事に対する熱意、意思、正確さは見事」と語る。 

同氏はまた、作業服、ヘルメットで仕事に来る母親達が多く、彼女達が働いている間に子供達の面倒を見る新たな保育所の建設が必要になった」指摘する。 

Associacion Madres de Plaza de MayoのHebe de Bonafini会長は、「住宅建設イニシアブは、地区の人々、ホームレス、疎外された人々に対する償いである」と語る。 

Madres de Plaza de Mayoは今年1月22日、ブエノスアイレスVilla Soldatiの別のスラムLos Piletonesでも住宅建設を開始した。 

同プロジェクトの特徴は、ブエノスアイレス市の入札に民間企業と共に参加し、M2 Emmedeue工法による432ユニットの建設契約を獲得したことにある。 

Madres de Plaza de Mayoのプロジェクトは、社会的負荷価値により公共入札に勝利した。同計画には、地域住民のための職業訓練、適切な労働条件の提供と保育所、学校2校、コミュニティー・センター、病院の建設が含まれる。 

この様に、Madres de Plaza de Mayoは、アルゼンチン史の悲劇のシンボルだけでなく将来の希望のシンボルでもある。 

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩 

|ソマリア|対テロ戦争の境界拡大

【ヨハネスブルグIPS=モイイガ・ヌドゥル】

2006年12月28日、エチオピア軍は、ソマリアの暫定連邦政府を支援し、首都モガデシュからイスラム民兵グループを追放した。(ソマリアは、1991年の独裁者シアド・バーレ失脚以来内戦状態にあり、昨年7月にはイスラム系部隊が米国寄りの軍事指導者を打ち負かし、首都を占拠していたもの)

エチオピア軍のイスラム民兵攻撃は10日に及び、その後もケニア国境地帯に潜伏したイスラム兵の追跡を行っている。

米国は、これを対テロ戦争の一環と捉え、同地での空爆を行っているが、専門家は、米国の介入は、8000人の治安部隊派遣を提案しているアフリカ諸国の立場を危うくするものと語っている。南アフリカ・ウィットウォーターズランド大学のデイビッド・モンヤエ講師は、「米国の介入により、ソマリアへ派遣された者は皆、米国の代理人と見られてしまう」と指摘する。

 
ソマリアのアリ・モハメド・ゲディ首相は1月16日、暫定議会において、1月末までに少なくともウガンダ、南アフリカ、ナイジェリア、マラウィ、セネガルの5カ国から部隊が派遣される予定と語った。しかし、1500人の派兵を約束したウガンダを除く4カ国は、1月29~30日にエチオピアで開催されるアフリカ連合(AU)サミットでの決定を待つとしている。

プレトリアを拠とする南アフリカ・アフリカ研究所(Africa Institute of South Africa)のコルワ・アダル氏は、「治安維持部隊は中立を旨とし、米国は、治安活動や和平交渉に参加すべきではない。また、米国の同盟国と看做されているエチオピアやジブチは除外すべきである」と語っている。

エチオピアは、国境を接するイスラム国スーダンおよびソマリアを警戒すると共に、エチオピアのオガデン地域、ジブチの一部、ケニア北部を含んだ統合を主張するイスラム派の「Greater Somalia 」構想の復活を警戒している。
 
翻訳/サマリー=IPS Japan

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