SDGsGoal13(気候変動に具体的な対策を)ネパール中部の洪水、その翌日

ネパール中部の洪水、その翌日

衛星画像が示す「ランタン北壁の氷河崩壊」はネパール国内で発生

【カトマンズINPS Japan/Nepali Times=クンダ・ディクシット】

首都カトマンズの真北約45キロに位置し、標高7245メートルを誇る雄大なランタン・リルン峰には、悲劇の歴史がある。

Kunda Dixit.
Kunda Dixit.

2015年4月、ネパール中部を襲ったマグニチュード7.8の大地震によって、同峰南壁で巨大な雪崩が発生した。雪崩は眼下の氷河へ崩れ落ち、ランタン村を埋め尽くした。少なくとも300人が死亡した。

そして8月26日、ネパール時間午前8時37分ちょうどに、中国との国境付近でマグニチュード4.4の地震が発生した。今回は、それとほぼ同時にランタン峰北壁で巨大な雪崩が起きた。

ランタン・リルン峰は全体がネパール領内にある。雪崩による大量の土砂と氷は、中国との国境をなすレンデ・コラ川をせき止めた。同川はモンスーンの雨で増水していた。

せき止められてできた湖は間もなく決壊し、泥と巨石が壁のようになってトリスリ川を猛スピードで流れ下り、ネパール国内を襲った。

少なくとも、プラネット・ラボの衛星画像を確認した専門家たちは、そのように分析している。

ただし科学者の間では、地震が北壁の斜面崩壊を引き起こしたのか、それとも雪崩そのものがあまりに巨大だったために地震波として観測される揺れを引き起こしたのかについて、なお見解が分かれている。

仮に地震が引き金だったとしても、崩壊した山では地球温暖化の影響によって雪と氷がすでに不安定な状態にあった。

さらに発生時期はモンスーン終盤で、山の斜面には大量の雪が積もっていた。氷河の後退によって取り残されたモレーン(氷河堆積物)は、かつて永久凍土によって固く固定されていたが、すでに大量の水を含んだ状態になっていた。

今回の災害自体はネパール国内の氷河に起因したとみられている。しかしそれでも、チベット高原を起点として国境を越える災害につながり得る、氷河湖決壊洪水(GLOF)、永久凍土の融解、モレーン崩壊という長期的な脅威が増大していることを浮き彫りにしている。

地震が引き金にならなくても、近年のヒマラヤでは、同じような複数の要因が重なって発生する「ヒマラヤの津波」ともいうべき大規模災害が相次いでいる。

2021年のチャモリ、同年のメラムチ、2023年のシッキム、2024年のタメ、2025年のボテ・コシ、そして2026年の今回の災害である。そのほぼすべてがモンスーン期に発生している。

昨年7月8日の洪水(下図参照)では18人が死亡した。ネパールと中国の貿易・観光にとって最も重要な国境検問所が押し流され、ネパール国内の幹線道路、水力発電所、送電線も破壊された。これらは最近になってようやく復旧工事が始まったばかりだった。

Nepali Times

科学者たちは昨年の洪水について、氷河表面に形成された複数の池が拡大して一体化し、やがて決壊したことで、大量の土砂や岩石が壁のようになって下流へ押し寄せたと分析している。

昨年は、中国側からネパールの地方当局に危険が警告されていたと報じられている。しかし今年は、事前の警告はまったくなかった。

しかも今回は、雪崩と洪水の発生地点が国境に非常に近かった。このため、土石流がラスワの国境検問所に到達するまでには、わずか数分しかなかったとみられる。

木曜日の朝までに、公式の死者数は160人を超え、その後さらに増加して数百人に達する可能性がある。

Nepali Times
Nepali Times

夜の間には、200キロ下流のナワルパラシ郡を流れるナラヤニ川で、人の遺体や家畜の死骸、さまざまな瓦礫が流れていくのが目撃された。

今回の災害によって、ネパールが国際的な気候変動交渉の場で訴えてきた「損失と損害(Loss and Damage)」の問題が、改めて大きく取り上げられることになるだろう。

とりわけ脆弱な山岳国において、気候危機が経済にもたらす損失は深刻である。今回のインフラや財産への被害額は、数十億ドル規模に達するとみられる。

わずか数分のうちに、ボテ・コシ川とトリスリ川沿いにある少なくとも6か所の主要水力発電所、送電線、変電所が破壊されるか、大きな損傷を受けた。

ヌワコットにあるネパールの象徴的な25メガワット級大規模太陽光発電所も、土砂に埋没した。

建設中の他の事業も壊滅的な被害を受けた。

ボテ・コシ川とトリスリ川に架かる少なくとも12本の橋が流され、その中には被災地点から70キロ下流に位置するものもあった。北部へ向かう幹線道路も各地で寸断された。

今回の災害は、2025年9月の「Z世代(GenZ)抗議運動」によって早期選挙が実施されてから、ほぼ1年後にネパールを襲った。

その選挙では、バレンドラ・シャー首相率いるRSPが地滑り的勝利を収めた。政権発足からまだ半年もたっていないなか、政府は今、緊急の捜索・救助活動と、壊滅的な被害を受けたトリスリ渓谷の復旧・復興という大きな試練に直面している。

長期的に見れば、ネパールは今後、発生頻度がほぼ確実に増えるとみられる地震や気候変動に起因する災害に対処するため、実効性のある戦略を構築しなければならない。

クンダ・ディクシットは『Nepali Times』の元編集長で、現在は同紙発行人。著書に『Dateline Earth: Journalism As If the Planet Mattered』、ネパール紛争を扱った3部作『A People War』がある。コロンビア大学でジャーナリズム修士号を取得。メディア教育にも携わり、ネパール調査報道センター(Centre for Investigative Journalism Nepal)の理事長を務めている。

Original URL: https://nepalitimes.com/central-nepal-flood-the-day-after

INPS Japan

関連記事:

チベット高原の下流に暮らすという危険

アジア太平洋地域、新たな災害リスク時代への備え

|防災|ネパールとブータン、地震緊急対応で連携

最新情報

中央アジア地域会議(カザフスタン)

アジア太平洋女性連盟(FAWA)日本大会

2026年NPT運用検討会議第1回準備委員会 

パートナー

client-image
client-image
client-image
client-image
Toda Peace Institute
IPS Logo
The Nepali Times
London Post News
ATN

書籍紹介

client-image
client-image
seijikanojoken