SDGsGoal16(平和と公正を全ての人に)ソ連の「人道に対する罪」から生まれた、核実験・核兵器廃絶の世界的な運動

ソ連の「人道に対する罪」から生まれた、核実験・核兵器廃絶の世界的な運動

この記事は、アメリカン・テレビジョン・ネットワーク(ATN)が配信したもので、同通信社の許可を得て転載しています。

【クルチャトフ/ ニューヨークATN=アハメド・ファティ、イラリア・マローニ】

1949年8月29日、カザフスタン東部のセミパラチンスクからわずか100マイル(約161キロ)に位置するクルチャトフ付近に設けられたこの広大で特徴のない土地(グラウンドゼロ)で、ソ連初の核実験が実施された。この実験場は、冷戦期を通じてソ連の核開発の中心であり続け、1989年までに456回の核実験が行われた。核爆発に伴う放射能を帯びた凄まじい破壊力は、がんや先天性異常など、実験場の周辺住民に暗い遺産を残し、今日に至るまで地域住民の苦しみは続いている。

アハメド・ファティ (グラウンドゼロでの映像

ここでは、地上では116回、地下では340回の核実験が行われ、実験場よりはるかに広い範囲に放射性降下物を撒き散らした。つまり、ベルギーや米国のメリーランド州とほぼ同じ面積の地域で毎月1回、核爆発が起きていたことになる。

ATN

セミパラチンスク核実験場は、1990年以前はソ連の数ある閉鎖都市の1つであった。クルチャトフやポリゴンのように、ソ連軍の特別許可が必要な秘密都市とされ、地図にも存在しない都市で、ソ連共産党政治局の高官だけがその内部事情を知っていた。

その土地に住む何千人もの人々は、しばしば非常に高いレベルの放射線に晒され、ソ連当局が住民への影響を測定するために、あえて窓を開けておくように言われた。実験場が閉鎖されて30年近くが経過した今でも、がん、流産、奇形、不妊など、多くの住民がその影響に苦しみながら生きている。現在、東カザフスタン州におけるがん罹患率は、全国平均の2~3倍に上っている。

核爆発の際、ソ連は住民に放射線の影響を調査するため、何の警告もなくその場にとどまるよう求めた。

ATN

ソ連の歴代指導者は、長年にわたってカザフスタンの人々に対して重大な人道に対する罪を犯したが、ソ連の崩壊によっていかなる結果に対しても責任を取ることはなかった。

ソ連崩壊後、セミパラチンスクは1991年8月29日(現在は「核実験に反対する国際デー」として記念されている)に閉鎖され、カザフスタン初代大統領ヌルスルタン・ナザルバエフは、核兵器を自主的に放棄するという歴史的な決断をした。

ATN

カザフスタンは今日、核軍縮と核実験禁止を求める闘いの世界的リーダーである。独立後の初代大統領ヌルスルタン・ナザルバエフは、2012年に「ATOM(Abolish Testing.Our mission)プロジェクト」を立ち上げた。

2016年には「核兵器の無い世界とグローバル・セキュリティのためのナザルバエフ賞」が創設された。第1回受賞者は、中東非核・非大量破壊兵器地帯創設に向けた努力と150万人のシリア難民の受け入れに貢献したヨルダンのアブドゥラ2世。「ナザルバエフ賞」の授賞式は、カザフスタン初代大統領がセミパラチンスク核実験場の閉鎖を決定した歴史的な日に合わせて実施されている。

セミパラチンスク核実験場の閉鎖日(8月29日)は、国際社会全体にとって特に重要であり、カザフスタンの主導により、この日は国連総会で「核実験に反対する国際デー」として宣言された。

今年の受賞者は、包括的核実験禁止条約(CTBTO)準備委員会のラッシーナ・ゼルボ事務局長と、国際原子力機関(IAEA)の故天野之弥前事務局長の2名であった。

「ナザルバエフ賞」を受賞したラッシーナ・ゼルボ包括的核実験禁止条約事務局長、国連グローバル・コミュニケーション部のナルギズ・シェキンスカヤ氏と。/ATN

天野之弥氏は、2019年7月18日に逝去した。受賞のために、故天野事務局長の妻の幸加氏、弟で元ジュネーブ軍縮会議日本政府代表部特命全権大使の天野万利氏がカザフスタンに到着した。

ナザルバエフ・センターで、今年の「ナザルバエフ賞」を受賞した故天野之弥IAEA事務局長の未亡人、天野幸加氏と。

ナザルバエフ初代大統領は、故天野之弥事務局長がIAEAの主要目標の達成に特別な貢献をしたこと、またIAEAとカザフスタンとの協力関係が高いレベルにあることに言及し、さらに検証体制の強化とCTBT国際監視ネットワークの構築に向けたラッシーナ・ゼルボ事務局長の貢献を強調した。

授賞式には、イタリアのフランコ・フラッティーニ元外務大臣、IAEAのメアリー・アリス・ヘイワード事務次長、OPCWのアフメット・ウズムク元事務局長、核脅威イニシアチブ財団のデズモンド・ブラウン元国防長官、国連経済社会局の沙祖康元事務次長、ライナー・ブラウン国際平和局共同代表といった著名人が出席し、授賞式は盛大に行われた。

参加者は、この賞の重要性と関連性、カザフスタンの初代大統領が軍縮と不拡散の分野で果たした重要な役割、自国の利益だけでなく世界全体の利益のために尽力した世界的な政治家としての活動、地域と国際社会のセキュリティ強化への貴重な貢献について言及した。(原文へ

ATN

翻訳=INPS Japan浅霧勝浩

Filmed by Katsuhiro Asagiri, INPS Japan

関連記事:

「核実験に反対する国際デー」記念行事を取材

INPS Japanが国際プレスチームと共に旧セミパラチンスク核実験場とセメイを取材

核兵器廃絶展を通じて絆を深める日本とカザフスタン

ATOMプロジェクト名誉大使カリプベク・クユコフ氏インタビュー

最新情報

中央アジア地域会議(カザフスタン)

アジア太平洋女性連盟(FAWA)日本大会

2026年NPT運用検討会議第1回準備委員会 

「G7広島サミットにおける安全保障と持続可能性の推進」国際会議

パートナー

client-image
client-image
client-image
client-image
Toda Peace Institute
IPS Logo
The Nepali Times
London Post News
ATN
IDN Logo

書籍紹介

client-image
client-image
seijikanojoken