【ベルリン/ワシントンIPS=ウマル・マンズール・シャー】
世界では2025年、森林伐採によって700万ヘクタールを超える森林が失われた。近年と比較すればわずかな改善が見られるものの、2030年までに世界的な森林保護目標を達成するには、なお程遠い状況にあることが、国際的な森林保全の取り組みを評価した最新の報告書で明らかになった。|英語版|

市民社会団体と研究者らによる連合体がまとめ、10月14日に世界同時に公表した「森林宣言評価報告書2026年版(Forest Declaration Assessment 2026)」によると、森林の消失を食い止め、回復させるという国際公約にもかかわらず、森林破壊は依然として深刻な水準で続いている。
2021年以降、年間の森林消失面積は平均800万ヘクタールを超えており、各国政府の公約と現場での進展との間に大きな隔たりがあることが浮き彫りになっている。
気候変動問題を専門とするコンサルティング機関「クライメート・フォーカス(Climate Focus)」の上級コンサルタントで、報告書の主要執筆者の一人であるイヴァン・パルメジャーニ氏は、IPSの独占インタビューに応じた。
同氏は、森林破壊が高い水準で続いている主な理由として、各国の公約に見合う規模の対策が実施されていないことを挙げた。また、対策が講じられた場合でも、持続的な効果を生み出すには不十分なことが少なくないと指摘した。
「ルーラ政権下のブラジルのように、明確な政治的指導力があれば何が実現できるのかを、私たちは目の当たりにしてきました。的を絞った政策、法規制の執行、そして政治的意思によって、1期の政権のうちに森林破壊を減少させることができたのです。しかし、こうした成功例は一般的というより例外的なものであり、政策の優先順位が変われば、その成果は短期間で失われかねません。」
パルメジャーニ氏は、さらに根本的な問題として、森林保護に関する公約が、天然資源の管理や利用のあり方を根本から変える制度的・構造的な改革につながっていないことを指摘した。
森林には、農業、インフラ開発、資源採掘、その他の土地利用による強い経済的圧力がかかり続けている。
その一方で、政策決定の仕組みや経済的な誘因は、森林に生活や福祉、文化的アイデンティティーを依存する多くの人々よりも、森林から物理的にも心理的にも遠く離れた一部の有力者に有利に働くことが少なくないという。
「森林やその他の生態系に関する意思決定のあり方を、社会や政治・経済制度そのものが変えない限り、世界的な公約があっても、森林の消失は高い水準で続くでしょう。」

報告書によると、2024年には、人間の活動によって世界で少なくとも6540万ヘクタールの森林が生態学的な健全性を損なった。
この数字は、森林問題が樹木の完全な伐採だけにとどまらないことを示している。
森林が外見上は残っていても、生物多様性や炭素を蓄積する能力、野生生物や地域社会を支える機能が失われる場合があるからだ。
報告書は次のように指摘している。
「これら二つの数字は、森林の保全と再生を目指す世界的な目標と、森林を破壊し続ける現実との間に、根強い隔たりが存在することを示している」
今回の評価では、森林保護、持続可能な生産、資金調達、ガバナンスの各分野における進展を検証した。
森林の監視体制の改善や先住民の土地権利の承認など、一部の取り組みでは前進が見られる。しかし、森林破壊の流れを逆転させるために必要な規模の変化には、いまだ結びついていない。
2021年の国連気候変動会議で発表された「森林と土地利用に関するグラスゴー首脳宣言」では、140カ国以上が2030年までに森林の消失と土地の劣化を食い止め、その回復を目指すことを約束した。
それから5年が経過した現在も、最新の評価は、世界がその目標の達成から大きく遅れていることを示している。
熱帯林は特に、農地の拡大、インフラ開発、商業活動による強い圧力にさらされている。
報告書によれば、環境法の執行が不十分であることに加え、森林破壊を伴う経済活動を優遇する仕組みが、こうした圧力をさらに強めている。
「国別の数値による評価は行わなくなった」
今回の評価対象となった地域のうち、森林消失面積が最も大きかったのは熱帯ラテンアメリカだった。一方で、2018~2020年の基準期間と比較すると、最も大きな改善を示した地域でもある。
同地域では2025年、森林破壊が33%減少した。
これに対し、熱帯アフリカでは森林の消失が増加し続けている。
2025年の年間森林消失面積は約240万ヘクタールに達し、熱帯ラテンアメリカの約250万ヘクタールに匹敵する規模となった。
熱帯アジアでは2025年、約160万ヘクタールの森林が失われた。これは2018~2020年の基準期間と比較して12%の減少となる。
ただし、報告書は、森林破壊を引き起こす根本的な要因はほとんど変わっていないと警告している。
熱帯アジアの改善について、報告書は評価が難しいとしている。
2年連続で小幅な減少が見られたことは、近年の最も深刻な森林破壊のピークを越えた可能性を示している。しかし、それだけで同地域が森林回復に向けた持続的な軌道に乗ったと判断することはできない。
一方、熱帯オセアニアは、評価対象となった熱帯地域のなかで唯一、2030年の森林目標達成に向けて順調に進んでいると評価された。これには、世界の熱帯林全体に占める同地域の森林面積が比較的小さく、現在の森林への圧力も相対的に低いことが一因となっている。
こうした結果は、各国の政策、農林産物などの商品生産のあり方、法規制を執行する能力によって、地域ごとの成果に大きな違いが生じ得ることを示している。
森林破壊の減少に最も貢献している国や、さらなる削減を妨げている課題について尋ねられたパルメジャーニ氏は、次のように答えた。
「私たちは現在、国別の数値による評価は行っていません。計算に使用する世界規模のデータセットが、各国の実際の動向を正確に反映しない場合があるからです。データの精度を過大に示すことを避けるため、指標は地域別と世界全体の集計値に限定して公表しています。」そのうえで、同氏は次のように説明した。
「独立した分析や地域の取り組みを見ると、インドネシアとマレーシアが、熱帯アジアにおける森林破壊の減少に重要な役割を果たしてきたと考えられます。」
「しかし、こうした進展にもかかわらず、同地域は依然として強い経済的圧力に直面しています。特に重要鉱物への需要が増大しており、そのなかには世界最大の輸出国がインドネシアであるニッケルも含まれます。さらに、地政学的な紛争や世界市場の混乱に伴う経済的不確実性もあります。こうした圧力が強まると、短期的な経済的利益が環境への配慮に優先され、森林がその代償を払うことになりがちです。」
農地の拡大と商業的利益
森林消失の主な要因の一つは、依然として農業である。商業的な農業生産に加え、食料、家畜用飼料、バイオエネルギーへの需要増加が、自然の生態系に圧力をかけ続けている。
報告書によれば、商業的農業に関連する熱帯林の伐採のうち、61~94%が違法である可能性がある。
また、違法な森林伐採、木材や野生生物の密売などを含む環境犯罪によって、年間最大2810億ドルの不法収益が生み出されていると推計している。こうした活動は、他の犯罪組織の活動と重なっていることも少なくない。
報告書が引用した国連薬物犯罪事務所(UNODC)の2025年の研究では、環境犯罪と麻薬密売、違法採掘、人身取引などの犯罪との関連が明らかにされている。こうした違法活動の規模の大きさは、森林を保護しながら国際的な商品供給網を規制しようとする政府にとって、大きな課題となっている。
報告書は、企業の説明責任にも不十分な点があると指摘している。
森林破壊に関係する産業分野の企業では、持続可能性に関する公約や情報開示制度の導入が進んでいるものの、実際の情報開示や取り組みの実施状況には、依然としてばらつきがある。
金融機関も、森林破壊が環境面だけでなく金融面のリスクであることを認識し始めている。しかし報告書によれば、多くの規制制度では、銀行がこうしたリスクをどのように評価し、管理すべきかについて、詳細な指針が定められていない。
評価対象となった国々の60%以上では、銀行や保険会社に対して、森林破壊に関連するリスクの情報開示を義務づける制度が、まだ整備されていなかった。
こうした調査結果は、自主的な公約や企業による情報開示だけでは不十分であり、生産や投資のあり方に測定可能な変化をもたらすには、より厳格な法規制の執行と明確な要件が必要であることを示している。
森林保全に向けた資金確保が大きな課題に
報告書は、資金の規模と配分のあり方も、森林保護を妨げる重要な要因として挙げている。
国際的な資金拠出の公約は増加しているものの、森林保全に向けた資金支援と、森林に悪影響を及ぼす経済活動を促す仕組みとの間には、依然として大きな矛盾が存在する。
報告書の推計によると、化石燃料の生産と利用に関連する補助金は、2024年に9210億ドルに達した。さらに、エネルギー価格の高騰を緩和するため2026年に導入された緊急措置によって、今年の補助金総額は1兆ドルを超える可能性がある。
報告書は、こうした補助金が環境への負荷の少ないエネルギー源への転換を妨げるおそれがあると警告している。
その一方で、公的支援の対象を自然の再生に役立つ活動へと転換することには、大きな可能性があると指摘する。「農業支援に充てられる資金を、アグロフォレストリー(森林農業)、林間放牧、低炭素型農業など、自然の回復に貢献する農法へ振り向ければ、1ドル当たり最大30ドルの経済的利益を生み出すことができます。その恩恵は、とりわけ農村地域の人々に大きく及びます。」
こうした調査結果は、政府が新たな財源の確保だけに頼るのではなく、既存の支出を見直すことによっても、森林保護を前進させられる可能性を示している。
しかし、報告書は、国際的な森林保全資金が、実際に森林を管理し保護している先住民や地域社会に十分に届いていないことも指摘している。
地域社会が主導する資金配分の仕組みは、地域の優先課題に資金を振り向けるうえで役立つ。それでも、政府や多国間機関からの直接資金供与において、こうした仕組みは依然として主要な資金提供先とはなっていない。
先住民の権利と政策決定への参加
報告書は、先住民の土地に対する権利を認めることが、効果的な森林管理の重要な要素であると指摘している。
2025年に開催された第30回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP30)では、16カ国と一つの準国家行政区域が参加する政府間の取り組みにおいて、さらに1億6000万ヘクタールの先住民の土地や領域について、権利を新たに承認、または強化することが約束された。
また、「熱帯林永続基金(Tropical Forests Forever Facility)」の設立に伴い、各国への資金支払いの20%を、先住民や地域社会の組織への直接的な資金移転に充てる規定も設けられた。
これらは前進を示す動きだが、報告書は、国際的な政策決定の場に参加できるようになったからといって、必ずしも実際の決定権を得られるわけではないと指摘している。
先住民団体の連合体は、COP30で先住民の参加機会が増えたものの、その役割はおおむね意見を求められる立場にとどまっていたと強調している。
先住民は、11月9日から20日にかけてトルコのアンタルヤで開催されるCOP31を含め、国連気候変動交渉において、依然として正式な参加資格を与えられていない。
各国の気候変動対策計画でも、先住民や地域社会への言及は頻繁に見られるが、政策の立案や実施にどのように参加するのかについて、具体的に示されていないことが多い。
2026年に84カ国の気候変動対策計画を検証した調査では、そのうち61カ国が先住民や地域社会など、十分に代表されていない人々に言及していた。
しかし報告書によると、その多くは状況を説明する記述にとどまり、具体的な対策には結びついていなかった。
報告書は、意味のある参加を実現するには、政策文書のなかで存在を認めるだけでは不十分だと主張している。
土地に対する確実な権利を保障し、政策決定に影響を及ぼす機会を与えるとともに、土地や森林の管理に必要な資金を利用できるようにすることが不可欠だとしている。
環境保護活動家への脅威が続く
森林を守る活動には、違法行為に異議を唱え、地域社会の土地を守ろうとする人々にとって、深刻な危険が伴う。
報告書が引用した国際NGO「グローバル・ウィットネス」のデータによると、2025年には土地や環境を守る活動家が少なくとも124人殺害された。
確認された殺害事件の半数以上は土地をめぐる紛争に関連しており、犠牲者の約4分の3は先住民、小規模農家、またはアフリカ系住民だった。
一方、人権活動家の保護に取り組む国際組織「フロントライン・ディフェンダーズ」は、2025年に28カ国で少なくとも358人の人権擁護活動家が殺害されたと報告している。
特に、土地、環境、農民の権利、先住民の権利を守る活動に携わる人々が、頻繁に標的となっていた。

クライメート・フォーカスの主任コンサルタントで、報告書の執筆者の一人であるエリン・マトソン氏は、IPSのインタビューで次のように述べた。「私たちが毎年引用しているグローバル・ウィットネスの統計を見るたびに、事態の深刻さを改めて思い知らされます。この数字は、実際よりもかなり少ない可能性が高いことを忘れてはなりません。多くの殺害事件や失踪事件が報告されていないからです。」
マトソン氏は、こうした暴力の背景には複数の要因があるが、その大半は統治のあり方に根ざしていると説明した。「環境保護活動家の殺害事件の大多数は、土地をめぐる紛争に関連しています。例えば、鉱山開発が先住民の土地に侵入してくるような場合です。」
「先住民の共同体が、自分たちの土地に対する法的に認められた確実な権利を持っていなければ、違法な活動を行う事業者に抵抗することは、はるかに困難になります。」
そのため、土地の保有・利用に関する権利を保障することは、政府が実現すべき重要な課題だと指摘した。
さらに同氏は、汚職と不処罰が蔓延する環境では、加害者が殺人を犯しても文字どおり処罰を免れてしまうと警告した。
「政府関係者や法執行機関が特定の利益集団の影響下にあり、金銭的な利益を受け取っているような地域では、人々が被害に遭っても見て見ぬふりをすることがあります。」「だからこそ、汚職を根絶し、腐敗した制度を改革することが不可欠なのです。そもそも公務員が汚職に手を染めないよう、職務に見合う適切な報酬を確保することも必要です。」
報告書は、法規制の執行の弱さ、政府の行政能力の不足、権力を持つ者が処罰を免れる状況を、効果的な森林管理を妨げる主要な要因として挙げている。
また、環境保護活動家が直面する脅威は、殺害などの直接的な暴力だけではないと警告している。活動を犯罪とみなす措置や脅迫、嫌がらせなども、深刻な問題となっている。
一方、技術の進歩によって、当局が違法な森林伐採を発見する能力は向上している。
衛星による監視、商品の流通経路を追跡するトレーサビリティー制度、新たな捜査技術などは、違法行為の特定や国境を越えた協力の強化に役立つ。例えば、グアテマラのマヤ生物圏保護区では、研究者らが人工知能(AI)を搭載した音響センサーの実証実験を進めている。
このセンサーは、チェーンソーの音、銃声、エンジン音などを識別するよう設計されており、定期的な巡回が難しい遠隔地でも、違法伐採の疑いがある活動を森林監視員に知らせることができる。
ただし、報告書は、違法行為の発見能力が向上しても、それに見合う公正で効果的な法執行が伴わなければならないと強調している。そうでなければ、力のある事業者が責任を免れる一方で、小規模生産者や地域社会に過度な負担が押しつけられるおそれがある。
報告書によれば、2025年の森林破壊は、それ以前の約10年間の多くの年と比べて少ない水準にとどまった。森林保全に向けた資金も増加し、監視体制も改善された。また、先住民の土地権利を認めるための措置を講じた国もある。
しかし報告書は、こうした進展を、森林破壊の流れが持続的に逆転し始めた証拠と捉えることには慎重であるべきだと指摘している。
森林破壊の減少には、一部の国や地域における法規制の執行強化、商品価格の変動、土地転換のペースを鈍らせた経済状況など、一時的な要因が影響している可能性もあるからだ。
報告書は、次の言葉で警鐘を鳴らしている。
「こうした成果を、なお必要とされている根本的な変革が実現したことと取り違えてはならない。」
INPS Japan/IPS UN Bureau Report
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