SDGsGoal16(平和と公正を全ての人に)希望は行動の後に生まれる―宗教者が語る「核なき世界」への実践の道

希望は行動の後に生まれる―宗教者が語る「核なき世界」への実践の道

イスラム教のイマーム、クエーカー系の政策提言活動家、仏教系の平和教育者、非暴力運動の指導者が、道義的信念を戦略や若者の主体性、核被害を受けた人々の声と結びつける必要性を訴えた。

【東京INPS Japan=浅霧勝浩】

核兵器への懸念を、教育、政治への働きかけ、組織的な非暴力行動にどうつなげるか。核兵器禁止条約(TPNW)初の再検討会議に向けて市民社会が準備を進めるなか、10月29日に開かれた宗教間ウェビナーでは、宗教共同体が果たせる具体的な役割が議論された。

Caption: Hayley Ramsay-Jones, director of the SGI Office for UN Affairs’ Geneva Liaison Office Credit:SGI
Hayley Ramsay-Jones, director of the SGI Office for UN Affairs’ Geneva Liaison Office Credit: SGI

「Choose Life: Faith Communities and the Movement for a World Without Nuclear Weapons(いのちを選ぶ―宗教共同体と核兵器のない世界を求める運動)」と題した会合は、全3回の企画の第2回。宗教共同体がなぜ核兵器廃絶に関わる必要があるのかを考えた9月30日の第1回に続き、今回は実践に焦点を当てた。

核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)、創価学会インタナショナル(SGI)、アメリカ・フレンズ奉仕委員会、バハイ国際共同体、ガンジー開発トラスト、米国キリスト合同教会、「核兵器のない世界を求める声」、世界メソジスト協議会が共催した。司会はSGIのヘイリー・ラムゼイ=ジョーンズ氏が務めた。

ボスニア系米国人のイスラム教指導者で、ジャスティス・フォー・オール国連活動責任者のサフェト・チャトヴィッチ氏は、2018年に国連で参加した宗教間会合が、核兵器廃絶に関わる転機になったと語った。

そこでICANと核戦争防止国際医師会議(IPPNW)のアイラ・ヘルファンド博士が、核の冬や、「限定的」とされる核戦争でさえ大気、農業、食料供給に何をもたらすかを説明した。その話を聞き、自分の中で何かが変わったという。

Imam Saffet Catović Credit: Parliament of the World’s Religions
Imam Saffet Catović Credit: Parliament of the World’s Religions

「これは抽象的な政策論争ではありませんでした。神から託された責務への直接の脅威なのです。」

チャトヴィッチ氏は、地球とそこに生きるすべての存在の世話をし、守る責任を人間に求めるイスラムの教えと、この経験を結びつけた。生命の神聖さ、人間の尊厳、被造世界の健全性は「交渉の対象にはなりません」と強調した。核兵器は、その三つすべてへの直接的な攻撃だという。

ボスニア・ヘルツェゴビナでのジェノサイドの生存者としての経験にも触れ、核兵器と通常兵器を支える企業、政府機関、軍事計画の立案者、制度的な構造は共通していると指摘した。核兵器に反対するなら、同じ構造を持つ通常兵器による戦争の仕組みにも向き合わなければならないと訴えた。

さらに、被爆者、先住民族、太平洋の島々の人々、核実験場の風下住民、女性が受けてきた被害に言及した。核廃絶運動は、被害を受けた共同体の「ために」活動するだけでなく、当事者とともに主導していく運動でなければならないと強調。宗教指導者に発言の場が与えられた際には、自らは一歩退き、被害当事者自身が語れるようにすべきだと述べた。

具体策として提案したのは、地域からの取り組みだ。個々の教会、モスク、シナゴーグ、グルドワラ、寺院がTPNWへの支持と核の先制不使用を求める意思を公にし、新聞への寄稿などを通じて発信する。そのうえで地域の宗教間ネットワークと連携し、自治体にも同様の決議の採択を働きかけるよう呼びかけた。

Rivera Sun Credit: Pace e Bene
Rivera Sun Credit: Pace e Bene

作家で、非暴力運動団体「パーチェ・エ・ベーネ/キャンペーン・ノンバイオレンス」のプログラム・コーディネーターを務めるリベラ・サン氏は、声を十分に上げれば政治は変わるという思い込みを問い直した。

必要なのは、核兵器を支える仕組みの「戦略的な弱点」を体系的に見極め、そこに働きかけるキャンペーンを選ぶことだという。許認可、供給網、技術者、政治的な後ろ盾などが、その対象になり得る。

例として挙げたのは、米国の核戦力近代化に必要なプルトニウム・ピット(核弾頭の中核部品)の製造だった。製造を担える施設はロスアラモスなどに限られるとし、こうした箇所に働きかける戦略の重要性を指摘した。

サン氏によれば、非暴力行動は、人々の意識を高めるだけでなく、核兵器の製造、保管、配備に必要な資源の流れや確保にも影響を及ぼす。一つひとつの行動を繰り返すだけでなく、キャンペーン同士が積み重なり、運動全体の目標に近づくよう設計する必要があるという。

参加者に一生をささげるよう求めるのではなく、6~9か月と期間を区切り、具体的な目標に取り組んでもらうことも提案した。成果が出なければ、いったん立ち止まり、息をつき、態勢や戦略を立て直す。参加者には生活があり、ほかにも取り組む課題がある。

長く活動を続ける人々にも休息は必要だという。「苦労して得た経験を、燃え尽きによって失いたくはありません」と語った。

行動の道筋を示さずに危機感をあおることにも、注意を促した。懸念や不安をどこに向ければ効果があるのか分からなければ、人々はその問題を「頭の片隅にしまい込んでしまう」。危険を伝えるなら、その事態を防ぐために実際に行動できる道も示す必要があると述べた。

Allen Hester credit: FCNL
Allen Hester credit: FCNL

クエーカー系の政策提言団体「フレンズ全国立法委員会(FCNL)」で核軍縮と国防費を担当するアレン・ヘスター氏は、米首都ワシントンでの活動から見える障壁を説明した。

議会の議論は、核抑止や、大国間の競争、軍拡競争という枠組みに収まりがちだという。多くの課題を担当する議員スタッフには、核政策の専門知識を深める時間が限られる。核兵器が政治家の優先課題になるのも、威嚇などが大きく報じられる局面に偏りやすく、それが再び競争や恐怖を中心とする議論を強めると指摘した。

それでも、核兵器への不安は党派を超えて存在する。米ロ間の新戦略兵器削減条約(新START)が2026年2月5日に失効した際には、両党のスタッフが非公式に懸念を表明していたと語った。人工知能(AI)が独立して核兵器の発射や爆発を決定する事態を防ぐ措置についても、超党派で協力を広げられる余地があるとした。

安全保障の専門用語が支配する議論に、道徳と人権の視点を持ち込むことが、宗教共同体の役割になるという。

「私たちは『核抑止』という言葉を使うことで、真実を口にするのを避けています」。ヘスター氏が指したのは、核戦争に向けた準備や計画という現実だ。有権者が、人権や地域社会、核被害を受けた共同体への影響を訴えることで、議員は自らが何に賛同し、何を追認しているのかを、もう少し深く考えざるを得なくなると述べた。

若者にも、問題を具体的に理解し、その解決に実際に関わる役割が必要だと語ったのが、センツァトミカの教育コーディネーター、アンドレア・ユウジ・バレストラ氏だった。

Senzatomica exhibition. Photo: Katsuhiro Asagiri/INPS Japan
Senzatomica exhibition. Photo: Katsuhiro Asagiri/INPS Japan

センツァトミカは、イタリア創価学会から生まれた「ビー・ザ・ホープ財団」の核軍縮キャンペーン。巡回展示は100以上の都市で、これまでに約50万人の来場者を迎えてきた。

バレストラ氏は、核兵器を「暴力のピラミッド」の頂点にたとえた。その土台には、無関心、恐怖、軽蔑、ある命はほかの命より価値が低いという考え方など、ゆがんだ人間関係があるという。

「ピラミッドの頂点を取り除きたいのなら、その土台にも働きかけなければなりません」

展示の出口には、来場者が一人で通る「意志のトンネル」と呼ばれる狭い通路がある。中のマイクに向かい、自分の言葉で希望のメッセージを一言残す。その言葉が入口で次の来場者を迎える。

来場者はメッセージを受け取るだけでなく、自らも残す。「最後の言葉を発するのは、来場者自身なのです」とバレストラ氏は説明した。

展示を訪れた学生を対象に委託した効果検証では、より多くを学ぶことは、意識の高まりや、責任を共に担う感覚と強く結びついていた一方、不安との結びつきはそれより弱かったという。核兵器について学ぶことは、若者に不安を抱かせるとは限らず、責任を持って関わるきっかけにもなり得るとした。

バレストラ氏は、池田大作・創価学会第3代会長による2006年の国連改革提言にも言及した。過去にとらわれにくい次の世代が、平和と共通の繁栄に向けて新たな考え方や道筋を探れるよう、機会を開く重要性を強調した。

Andrea Yuji Balestra
Andrea Yuji Balestra Credit: Senzatomica

「希望は、いつも先に生まれるわけではありません。」

誰かとともに小さな一歩を踏み出すことが、希望を生む場合がある。行動は、遠く抽象的に感じられる問題を具体的にし、自分が関われる場所を示す。小さな成果が変化の可能性を教え、次の一歩を踏み出す力になる。そして、ともに行動するなかで生まれる友情が喜びをもたらし、その喜びが活動を続ける支えになるという。

「若者を信頼してください。話を聞くことだけを求めず、若者が主導できる場を与えてください。」

参加者からの質問は、議論を日々の実践に引き戻した。スコットランドの核潜水艦基地前で行う祈りの集会を、どう政治家への働きかけにつなげるかとの問いに、サン氏は、誰に届けたいのかを明確にし、意思決定者の目に届く形で活動を伝え、具体的な要求を示すよう助言した。

「大切なのは、私たちの行動を無視できないものにすることです。」

シリーズは11月29日、ニューヨークのリバーサイド教会で開催される「核兵器禁止フォーラム(Nuclear Ban Forum)」での対面イベントへと続く。翌30日から12月4日までは、国連本部でTPNW初の再検討会議が予定されている。

The United Nations Headquarters as seen from First Avenue in New York City. Credit: UN News/Vibhu Mishra
The United Nations Headquarters as seen from First Avenue in New York City. Credit: UN News/Vibhu Mishra

バレストラ氏が勧めた、今すぐ始められる一歩は、若者が核兵器と平和について自分の言葉で話せる場をつくることだった。答えを示すことだけに終始せず、問いかけ、若者の考えに耳を傾け、その少なくとも一つを行動に移せるよう支えることだという。

被爆80年の昨年、日本を訪れた際には、被爆者から、すべてを若者に託してほしいとの言葉を受け取った。若者の創造性や新しい道を切り開く力、情熱が、被爆者自身に新たな力を与え、その証言を未来へと歩ませてくれるのだという。

バレストラ氏は、希望についてこう語った。「私にとって希望が本当に生まれるのは、待つことからではなく、ともに行動することからなのです。」

ICAN

This article is brought to you by INPS Japan in collaboration with Soka Gakkai International, in consultative status with the UN’s Economic and Social Council (ECOSOC).

Toward a Nuclear Free World Banner
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INPS Japan

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