【ミラノINPS Japan/CitiPlat(気候変動と持続可能な世界のための市民プラットフォーム)編集部】
北北米では今、気候変動の影響が最も深刻になる5月から10月までの「危険シーズン(Danger Season)」が、2026年も本格的に始まっている。この時期には、ソーシャルメディアをはじめとするさまざまなプラットフォームで、偽情報が一段と増えることが予想される。|英語版|

だからこそ、私が「セーフティー・チェーン」と呼ぶ一連のつながりを維持することが、これまで以上に重要になる。この連鎖がしっかり機能していれば、気候変動によって深刻化し、私たちの身に迫る可能性のある異常気象や災害を正しく理解し、それに備え、被害を受けた場合にも、できるだけ迅速かつ人道的に復旧するために必要な情報を得ることができる。
しかし残念ながら、トランプ政権、とりわけ行政管理予算局(OMB)のラッセル・ヴォート局長は、予算削減、科学者の解雇、監督の拒否、説明責任の回避、さらには露骨な偽情報の拡散を通じて、このセーフティー・チェーンのほぼすべての環を弱体化させてきた。
気候変動の影響が、反科学的な政権、そして私たちに経済的な打撃を与えるその政策と重なり合うことで、「危険シーズン」は三重に危険な時期となっている。
「セーフティー・チェーン」とは何か
「セーフティー・チェーン」とは、危険シーズンや気候変動によって深刻化する災害から私たちを守る、一連のつながりを指す私の呼び方である。
その出発点となるのは正確なデータである。それによって、明確で理解しやすい気象予報が可能になる。そして、その予報が信頼できる発信者を通じて伝えられることで、人々の理解が深まり、個人や地域社会が適切な備えを行い、必要な場合には効果的に対応し、復旧することができる。
誰がセーフティー・チェーンを壊しているのか
トランプ政権は、気候システムを理解するうえで不可欠なデータ収集や研究支援を停止してきた。こうした連邦政府による気候研究への打撃は、結果として気象予報の精度や基盤をも損なう。
さらに事態を悪化させているのが、政権自らが気候科学に関する偽情報を積極的に広め、化石燃料業界が長年用いてきた主張を繰り返していることである。
トランプ大統領自身も、前政権時代にハリケーンの進路予測をめぐる自らの誤りを訂正することを拒み、いわゆる「シャーピーゲート(SharpieGate)」では、政権側に自らの主張を擁護させた。ハリケーンの進路について誤った情報を発信することは、気象予報士を含む科学コミュニケーターが市民に正確な情報を伝える力を損なう。
一方、連邦緊急事態管理庁(FEMA)は、トランプ政権下のこの15カ月間、激しい混乱に見舞われてきた。経験と専門性を備えた指導部が失われ、その後を十分な資質を欠く指導部が担ったことで、人材流出が進み、FEMAの災害対応能力に疑問が投げかけられている。
トランプ大統領は、民主党支持の強い「ブルー・ステート」に対する災害支援を遅らせたり拒否したりしてきたほか、地域社会の防災・減災を支えるFEMAの取り組みを廃止しようともしてきた。その一つが、「強靱なインフラと地域社会の構築(Building Resilient Infrastructure and Communities=BRIC)」プログラムである。
しかし、連邦裁判所が二度にわたり命令を出した結果、国土安全保障省(DHS)はようやく、インフラ投資・雇用法とFEMAの災害救援基金(DRF)の留保分から確保された46億ドルのうち、10億ドルについて資金提供の通知を出した。
FEMAの災害対応資金は、危険シーズンが始まる前から危険なほど低い水準にあったが、議会がDHSの政府機関閉鎖を終結させたことで、切実に必要とされていた追加資金がようやく確保された。
今年の大西洋ハリケーンシーズンは平年よりやや穏やかになると予想されているものの、DRFについては、シーズン途中で議会による追加予算措置が必要になる可能性が高い。
その一方で、FEMA長官代行を務めたキャメロン・ハミルトン氏が、現在、同庁長官候補として再び指名されている。ハミルトン氏は、法律で求められる資格を満たしておらず、ソーシャルメディア上でFEMAに関する誤情報を共有したことも自ら認めている。
トランプ政権による数千人規模の人員削減、不安定な指導体制、資源の削減によって、連邦政府の緊急事態管理能力は弱体化してきた。その結果、FEMAは、頻度と強度を増す異常気象や、気候変動によって深刻化する災害に対応する態勢を十分に整えにくくなっている。
偽情報はどのようにセーフティー・チェーンを壊すのか
気候変動によって深刻化した異常気象や災害が発生する際、化石燃料企業、それと連携する政治勢力、関連するメディアや擁護団体のネットワークは、市民の理解や公的機関への信頼、気候対策や災害対応への支持を損なう偽情報を繰り返し拡散、増幅してきた。
こうした偽情報は、大きく五つの類型に分けることができる。
1.原因の歪曲
例えば、山火事の原因を事実に反して放火だとするソーシャルメディア上の投稿は、正確なデータ、予報、そして状況の理解を結ぶ連鎖を断ち切る。
その結果、人々が危険を過小評価したり、逆に過剰反応したりする可能性がある。
2.責任の所在の歪曲
異常気象や災害を深刻化させる気候変動の役割が認識されなければ、化石燃料業界など、気候変動を主に引き起こしてきた企業に十分な責任を問うことができなくなる。
その結果、責任を負うべき相手を取り違え、問題の根本原因に十分対処できなくなる。
3.信頼への攻撃
「政府機関や当局者は何も分かっていない」「政府は私たちのことなど気にかけていない」といった主張は、信頼を築き、人々の適切な備えにつなげる情報伝達を損なう。
その結果、人々が警告を無視したり、行動を遅らせたりする恐れがある。例えば、ハリケーンの接近を前に避難を拒むといった事態につながりかねない。
その一方で、トランプ政権の下では、政府が実際に何をしているのか、あるいはどのような意図で行動しているのかを見極めること自体が、ますます難しくなっている。
4.誤った安心感を与える情報
一方、人々に「危険はない」と思わせるような誤った安心感は、状況の理解と、備えや対応とのつながりを断ち切る。
当局やメディアから「緊急事態ではない」と受け取れる情報が発信されれば、人々は避難を遅らせたり、必要な予防措置を取る機会を逃したりする可能性がある。
重要なのは、こうした誤った安心感が、必ずしも偽情報やプロパガンダによって生み出されるとは限らないという点である。例えば、危険な熱波のさなかに、人々が浜辺で楽しんでいる映像を流すだけでも、「安全だ」という誤った印象を与えかねない。
5.論点のすり替え
「論点のすり替え」とは、悪意ある主体が、災害警報や防災、災害対応を、選挙や移民といった社会的に対立の激しい問題と意図的に結び付け、有害なメッセージを持ち込むことである。その標的となった人々は、避難所や支援サービスの利用を避けたり、公的機関による公式の情報提供を敬遠したりする恐れがある。
私たちに何ができるのか
第一に、ヒポクラテスの誓いにならい、「まず害を与えない」ことを心がけてほしい。特にソーシャルメディアで情報を共有する前には、情報源を確認することが重要である。検索や投稿日時の確認、情報の出所をたどるために利用できるさまざまなツールがある。
「気候偽情報に対抗する行動(Climate Action Against Disinformation=CAAD)」連合は、気候や異常気象をめぐる偽情報キャンペーンの動向を示すブリーフやデータモニターを公表している。
第二に、米国立気象局(NWS)や地域の緊急対応機関など、信頼できる情報源をすぐに確認できるようにしておくことである。気候変動と異常気象との科学的な関係を理解するためには、憂慮する科学者同盟(UCS)の「Danger Season」に関する情報や、提携団体Climate Centralの活動にも目を向けてほしい。
信頼できる情報は、できるだけ周囲と共有することも大切である。正確な情報が不足すれば、その空白を偽情報が埋めることになるからだ。
第三に、異常気象や災害が、選挙や移民など社会的に対立の激しい問題と結び付けられていないか注意する必要がある。情報の歪曲や信頼を損なう攻撃が持ち込まれていないかを見極め、そうした動きが見られた場合には、偽情報に効果的に対抗する方法をまとめたUCSの各種資料を活用してほしい。
最後に、セーフティー・チェーンの重要な環を立て直すため、必要な資金と議会による監督を確保するよう、私たちとともに議会に働きかけてほしい。それには、連邦政府の気候科学研究や災害への備え・対応に十分な資金を確保し、適切な監督を行うことが含まれる。
INPS Japan
ORIGINAL URL: https://www.citiplat.org/post/your-anti-disinformation-safety-chain-for-danger-season
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