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軍縮に向けた議会の行動に関する新たなハンドブック発行

【ジュネーブIDN=ジャムシェッド・バルーア】

国連のアントニオ・グテーレス事務総長が2018年5月に「私たち共通の未来を守る:軍縮へのアジェンダ」を発表してから約1年半、安全保障と持続可能な開発に向けた軍縮を促進する新たなハンドブックが出された。そのアプローチと焦点は主に「軍縮アジェンダ」を基礎としたものである。「私たち共通の未来を確実にする」と題されたこのハンドブックは、4つの国際的な議会組織と2つの国際的な政策団体が11月5日に発行したもので、軍縮の広範な問題に関する効果的な政策や議会の行動について、その背景と事例を示したものである。

そうした軍縮問題には、大量破壊兵器、通常兵器、小型武器、未来の兵器技術、宇宙やサイバー空間における軍縮問題などが含まれる。そのことは、軍縮問題が、持続可能な開発の問題や、新型コロナウィルス感染症のようなパンデミックの問題といかにつながっているかを示している。

国連軍縮部の協力を得て作られた同書は、軍縮の重要性を再確認し、効果的な軍縮政策を策定し、監視・履行する上で議員が果たすきわめて重要な役割について述べている。

ガイドブックは「議会と議員には、軍縮協定を批准し、国の履行措置を採択し、軍縮を支援する予算を割りあて、政府の軍縮履行義務を監視し、模範的な政策と実例に焦点を当てて広め、地域及び世界において議員・議会間の協力を構築する責任がある」と指摘し、「議会の行動は、国家安全保障の優先事項を、軍事安全保障に主眼を置いたものから、協力と人間の安全保障に重点を置いたものへとシフトさせる上で、極めて重要である。」と付け加えている。

中満泉 国連事務次長・軍縮担当上級代表は、「議員らは、国連事務総長の『軍縮アジェンダ』を履行していくための重要なパートナーです。このハンドブックは、豊富な実例を通じて議員らに指針となる原則を示すことで、『私たち共通の未来を確保する』ための議会の行動に向けた貴重な資料を、議員や有権者に提供している。」と語った。

ハンドブックは、国連事務総長の「軍縮アジェンダ」に沿って、次のような内容を盛り込んでいる。

人類を救う軍縮核兵器、生物兵器、化学兵器、宇宙兵器に焦点。

命を救う軍縮人道主義的で、安全保障や法的側面に関わる原則を基礎とした兵器の規制に焦点を当て、通常兵器や小型武器、非人道的兵器(地雷やクラスター弾など)、人口密集地での爆発性兵器の使用、適用可能な国際法の概要について記述。

将来世代のための軍縮自立型兵器システムやサイバー空間での戦力の使用など、新たな兵器技術に焦点を当てる。

パートナーシップの強化軍縮における様々な有権者や利害関係者について、議員が軍縮に関するイニシアチブに関していかに彼らと連携できるかに焦点を当てる。

ハンドブックにはまた、軍縮や気候変動、持続可能な開発、パンデミックと軍縮、公衆衛生、経済的な持続可能性に関連した議会の行動に関する内容も盛り込まれている。

全体で53項目にのぼる議会による行動のための提言と、85項目の効果的な政策や議会による行動例が紹介され、リスト化されている。これらの事例は世界のすべての地域をカバーしており、この問題が包摂的で党派を超えたアプローチを必要とすることを反映している。

ハンドブックの作成に際して、「核不拡散・軍縮議員連盟」(PNND)と「列国議会同盟」(IPU)は、議員や軍縮専門家、国連軍縮部関係者、包括的核実験禁止条約機関準備委員会(CTBTO)などの条約機関の関係者、国連加盟国の代表、主要な市民団体関係者などと、オンラインや対面を通じて協議している。これらの協議を通じたフィードバックが、効果的な政策や議会の行動の実例など、ガイドブックの内容に反映されている。

ハンドブックは「ジュネーブ安全保障政策センター」「列国議会同盟」「地球規模問題に取組む国際議員連盟」「核不拡散・軍縮議員連盟」「小型武器に関する議員フォーラム」「世界未来評議会」の共同の取り組みとして、国連軍縮局からの後援を得て出版された。

これらの組織のリーダー等が、以下のような言葉をハンドブックに残している。

マリア・エスピノーサ(世界未来評議会メンバー、第73回国連総会議長)

「軍縮に関する必携のハンドブック。各国で効果的な軍縮政策・軍縮法を前進させ、地域・国際レベルで協力を促進しようという議員にとって貴重な資料です。」

マーティン・チャンゴン(列国議会同盟事務局長)

「さまざまな政治的立場の政治家を巻き込むことが、世界中の人々にとっての平和・安全・民主主義・経済的幸福を高め、地球を守るための軍縮措置を前進させる上で肝要だ。軍縮の重要性は、新型コロナウィルスの感染拡大に照らしても明らかになってきている。よい公衆衛生システムや科学、エビデンス重視の政策、国際協力、知識を蓄えた市民社会、平和は、銃や爆弾などとはまた違った意味で、パンデミックと闘う『武器』になる。」

ナビード・カマール議員(「地球規模問題に取組む国際議員連盟」国際の平和・安全プログラム責任者、パキスタン元国防相)

「『安全と持続可能な開発のための議員軍縮ハンドブック』の発行を強く支持する。このハンドブックは、主唱者でもあり立法者でもある議員が、軍縮目標を前進させる決定的かつ媒介的な貢献を成すための数多くの方法を紹介したすばらしい資料だ。」

デイジー・リリアン・トルネ・バルデス(「小型武器に関する議員フォーラム」議長)

「国連事務総長が2018年に発表した『軍縮アジェンダ』は、今日の世界にとって極めて重要かつ必要とされているものだ。議会の行動が、軍縮や平和、持続可能な開発を世界で推進し、小型兵器の野放図な移転を防ぐうえで決定的だ。このハンドブックは、議員が今後進めていく軍縮への取り組みを刺激する歓迎すべき書である。」

フィル・トワイフォード議員(ニュージーランド軍縮・軍備管理相、元PNNDニュージーランド支部議長)

「人間の安全保障や外交、国際的な紛争解決、法と強い結びつきを持った適切な軍縮措置は、武力紛争を減らし、命を救い、世界全体で1兆9000億ドルに上る軍事予算を削減するのに役立つ。これによって、気候保護や公衆衛生を促進し、持続可能な開発目標(SDGs)を達成するためのさらなる予算を捻出することができる。」

クリスチャン・ダシー大使(「ジュネーブ安全保障政策センター」所長)

「ジュネーブに集まる各種国際機関のひとつとしての『ジュネーブ安全保障政策センター』が、軍備管理と軍縮に関する議会の行動に関するこの有益なハンドブック作成のパートナーになれたことを喜ばしく思う。この分野で大いに必要とされている進展を可能ならしめるエネルギーと革新的な思考を私たちは必要としている。」

アレクサンドラ・ワンデル(「世界未来評議会」事務局長)

「政策決定者には、現在及び将来世代に対する責任がある。このハンドブックは、より平和的な世界の構築に向けて議員らが取り組むための完璧なツールだ。」(原文へ

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サバクトビバッタ大発生:「アフリカの角」地域への脅威続く

【ローマIDN/FAO】

国連食糧農業機関(FAO)は、2020年を通じて実施されてきたサバクトビバッタ防除への集中的な取り組みにもかかわらず、サバクトビバッタの新たな世代の成虫の群れが、「アフリカの角」地域とイエメンの何百万ものの農家と牧畜民の生計と食料安全保障を脅かしている、と発表した。

国際的な支援とFAOの調整による、これまでにない大規模な対応活動により、今年1月以来10か国において130万ヘクタール以上の被害地域で駆除作業が行われた。

防除作戦により、すでに急性食料不安と貧困により大打撃を受けている国々で、推定270万トンの穀物(約8億ドル相当)の損失が免れた。これは年間1800万人の人々を養うのに十分な量である。

Cyclonic Storm Gati on November 22, 2020/ By The National Aeronautics and Space Administration (NASA) – EOSDIS Worldview, Public Domain

しかし、バッタにとって好条件な気候と広範囲にわたる季節的降雨により、エチオピア東部とソマリアでは大規模な繁殖の発生が確認されている。先月、ソマリア北部に洪水をもたらしたサイクロン「ガティ」によって、この状況は悪化しており、今後数か月でバッタの発生をさらに拡大させる模様。新たな成虫の群れがすでに形成されており、ケニア北部に再び侵入する恐れが高まっている。同時に、紅海をはさんだ両岸で繁殖が広まりつつあり、エリトリア、サウジアラビア、スーダン、イエメンに新たな脅威をもたらしている。

FAOの屈冬玉事務局長は、「私たちは多くを成し遂げたものの、この執拗な害虫との闘いはまだ終わっていません。」と指摘したうえで、「私たちは見放してはいられません。バッタは昼夜を問わず成長を続けており、被害地域全域の脆弱な家庭の食料不安の悪化が懸念されます。」と語った。

FAOは政府やその他のパートナー機関に対して、監視と調整、技術的アドバイス、物資と設備の調達を支援している、被害国の食料生産を保護し、食料不安の悪化を防ぐためには、取り組みをさらに強化する必要がある。

これまでにドナー国とパートナー機関から得た防除活動への資金援助額は、2億ドル近くに上る。このおかげで、FAOと各国政府は、過去何世代もの間、この規模でのバッタの大発生に直面していなかった地域においても、バッタへの対応能力を迅速に拡大することが可能となっている。地上偵察・防除要員1500人以上に対して訓練が実施され、現在、地上噴霧器搭載車両110台と航空機20機が稼働している。

FAOは現在、最も被害を受けている国(エチオピア、ケニア、ソマリア、スーダン、イエメン)での監視・防除活動を強化するため、さらに4000万ドルの呼びかけをしている。これら5か国では、すでに3500万人以上が急性の食料不安に陥っている。 今期の発生に対する制御活動がなされなければ、この数値はさらに350万人増加する可能性がある、とFAOは推定している。


農村の生計を守ることは必須

FAOは、政府やパートナー機関と協力して防除活動を実施しているだけではない。FAOは、被害を受けた生産者には栽培パッケージ、牧草地が不足している地域では家畜への獣医療や飼料、作物を損失した家庭には、次の収穫期までの期間を乗り越えるための資金を提供することで、農村部の生計保護の活動を行っている。

Desert locust (Schistocerca gregaria) laying eggs during the 1994 locust outbreak in Mauritania/ Christiaan Kooyman – public Domain

すでに20万世帯以上の家庭が生計支援を受けており、この数値はさらに増えると予想されている。 FAOは、2012年初頭にさらに9万8000世帯を支援し、主に人道対応計画を通して、継続的な支援を呼びかけている。

追加資金がなければ、防除への取り組みは2021年1月末から減速または停止せざるをえない状況が予想され、作物を食い尽くす害虫数が急増する地域も出てくる可能性がある。 生計への被害を受ける農家は一層の支援を必要とし、各国のバッタの監視・対応能力もさらに強化する必要がある。

これまでに、ベルギー、カナダ、中国、デンマーク、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、ノルウェー、ロシア連邦、サウジアラビア、スウェーデン、スイス、アラブ首長国連邦、イギリス、アメリカ合衆国、アフリカ開発銀行、アフリカ連帯信託基金、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団、ルイ・ドレフュス財団、マスターカード財団、国連人道問題調整部(OCHA)内の中央緊急対応基金(CERF)、および世界銀行グループから資金提供をいただいている。

サバクトビバッタの監視、予測、防除は、FAOの任務の中核の一つである。サバクトビバッタ情報サービスは約50年間、運用され続けている。FAOは、現在の東アフリカでの危機などのバッタ大発生への対応において、現場での確固たる存在、各国政府の連携を図る能力、サバクトビバッタ管理の専門知識により、主要な役割を果たしている。(原文へ

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|ポルトガル|EU議長国として食料システムを主流化する議論をリード

【ブリュッセルIDN=パウロ・カルーソ・ディアス・デ・リマ】

来年は国連食糧システムサミットやCOP26で食料システムの改革が国際議論の中心になるとみられる中、2021年EU議長国(1月~6月)としてEUグループの議論をリードしていくことになるポルトガルの実績と戦略を解説した国連食糧農業機関(FAO)EUリエンゾンオフィサーによる寄稿文。新型コロナ下で世界的に飢餓が広がっているなかで、年間10億トンもの食糧が廃棄される現状を改革するには、かつてない規模の協力体制を構築できるか否かにかかっている。(原文へ

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宇宙は本当に平和目的にだけ使われているのか

【ベルリン/ニューヨークIDN=ラメシュ・ジャウラ

ソ連の宇宙船ソユーズ19号と米国の宇宙船アポロ18号が地球の周回軌道上でドッキングした1975年7月17日、米ソの飛行士が地球上のはるか高い上空で握手を交わした。

ソ連の指導層は「ソ連と米国の宇宙船の共同飛行」は、「宇宙空間の平和的な探査協力に関して多くの国に可能性を拡げた、ソ米間の科学技術協力の発展における大きな一歩」だとして、歓迎の意を示した。

Portrait of ASTP crews/ By NASARestoration by Adam Cuerden -, Public Domain

同じ日の夜、米国では、CBSのニュースキャスターであるウォルター・クロンカイト氏が「宇宙での握手は、未知なるものに向けた人類の前進における新しい時代の到来を告げるものかもしれない。」と語った。

この歴史的な瞬間を振り返って、ゲナディ・ゲラシモフ氏は、1983年10月にノーボスチ通信社に寄稿した書簡の中で、「当時私たちは、その日は忘れられない一日になるだろうと思ったが、今では、そんなことはなかったように思えてくる。」を記している。実際、この宇宙のロマンスは、束の間のものに終わった。

あれから45年。公式の核兵器5大国のうち、米国・ロシア・中国の3カ国が宇宙司令部を設置し、宇宙兵器・対宇宙兵器を保有している。他方で、1967年の宇宙条約は大量破壊兵器を宇宙空間に置くことや天体における軍事活動を禁止し、宇宙の平和的探査と使用に関する法的拘束力のあるルールを規定している。

宇宙条約は1967年10月10日に発効し、110カ国が加盟しているが、その他の89カ国が条約に署名しながらも批准手続きを済ませていない。条約は「核兵器あるいはその他のいかなる種類の大量破壊兵器」も宇宙空間に配備することを禁止している。

「軍備管理協会」のダリル・キンボール事務局長が指摘するように、「大量破壊兵器」(WMD)の語は定義されていないが、通常は、核兵器・化学兵器・生物兵器を含むものと解されている。他方で、WMDの弾頭を搭載した弾道ミサイルを宇宙空間を経由して発射することは、条約上禁じられていない。

宇宙条約は、宇宙は平和目的のために使用されるものであると繰り返し強調しているため、WMDだけではなくあらゆる種類の兵器システムが宇宙空間においては禁止されていると解釈する専門家もいるほどだ。

しかし、米州兵陸軍のティム・ローソン少将は、国防総省は宇宙を陸・海・空と並ぶ戦域として見なしているという見解だ。新型コロナ感染症対策のため今年はオンラインで開催された全米防衛産業協会の「宇宙戦争産業フォーラム」でローソン少将は、「中国は既に対衛星ミサイルを実験し、ロシアは米国の衛星に脅威を与えかねないシステムを軌道上に配備している。」と語った。

Outer Space Treaty parties/ By User:Happenstance, User:Danlaycock et al. – File:Seabed Arms Control Treaty parties.svg, CC BY-SA 2.5

ローソン少将は、朝鮮半島のような地政学的なホットスポットに展開している米軍戦闘部隊に適用されてきた合言葉を引用して、「アメリカ合衆国宇宙軍(米宇宙軍)は、今夜でも戦う用意ができていなければならない。しかし、宇宙軍が完全な作戦能力を得るまでにあと数年かかるだろう。」と語った。

しかし、米宇宙軍は他方で、中国やロシアに対抗する新たな能力を開発しつつあると報じられている。

ローソン少将は、米軍の宇宙関係プログラムの大部分は「裏予算」となっており、外部の人間が内部を伺い知ることは難しいと語る。

米宇宙軍は、米国防総省の統合軍部門の戦種の一つである。宇宙での軍事作戦、とりわけ海抜高度100キロ以上の空間における作戦を担当する。

The logo of United States Space Command/ By United States Space Command – /, Public Domain

米宇宙軍は、宇宙空間におけるあらゆる軍事力を共同で指揮・管制し、他の戦種との調整を図ることを目的に、1985年9月に創設された。米宇宙軍は2002年にアメリカ戦略軍に整理統合されたが、17年間後の2019年8月29日に再び宇宙軍が立ち上げられ、戦域としての宇宙が改めて強調されることとなった。

米宇宙軍の任務は、「紛争を抑止するために、宇宙において、宇宙から、宇宙を通じて作戦を行うこと。必要ならば、攻撃を打ち破り、統合軍に対して宇宙空間での戦闘能力を提供すること。同盟国やパートナーとともに米国の死活的な権益を守ること。」と規定されている。

ロシアで米宇宙軍に相当する組織はロシア航空宇宙軍で、2011年12月1日にそれまで宇宙関連の軍事活動を担当してきた航空宇宙防衛軍とロシア空軍の一部を統合して創設された。指揮の責任範囲には、ミサイル攻撃の警戒、宇宙監視、軍事衛星の管制が含まれる。

ロシア航空宇宙軍総司令部は、航空宇宙軍の4つのセクションの一つで、その他3つは、航空・ミサイル防衛部隊、プレセツク宇宙基地、兵器庫である。航空宇宙軍総司令部の下には、3つのセンターとその補助施設が統合された。

中華人民共和国の宇宙関連プログラムは当初、人民解放軍のとりわけ第2砲兵軍(後にロケット軍に改称)の中に組織されていた。1990年代、中国軍は防衛産業再編成の一貫として宇宙プログラムの総合的な再組織化を図り、西側の防衛調達体制と似たような組織形態になった。

張克倹が委員長を務める「国防科学技術工業委員会」の一部局である中国国家航天局(CNSA)が発射を担当している。ロケット「長征」は中国キャリアロケット技術研究院が製造し、衛星は中国航天科技集団有限公司が製作している。

公社の組織は国有企業だが、関係筋によれば、中国政府は、同公社の運営に国家が積極的に関わる必要はなく、独立の組織として動かす意向であるという。中国の宇宙関連事業は、中国国家航天局(CNSA)が担当している。

宇宙は、他国への優勢を見せつける場面として働くだけではなく、軍事衛星あるいは軍民両用衛星が展開する場所でもある。2018年12月時点でそうした衛星は320基あった。そのうち半分が米国のもので、それにロシア・中国・インドが続いている。

Soyuz (TMA version) Spacecraft/ By The original uploader was Thegreenj at English Wikipedia. – Transferred from en.wikipedia to Commons., Public Domain

ウィキペディアの情報によれば、宇宙にも衛星兵器はある。通信衛星も軍事通信の用途に使える。典型的な軍事衛星は、UHF、(Xバンドとしても知られる)SHF、(Kaバンドとしても知られる)EHFの周波数帯で機能する。米軍は、さまざまな大陸に配備した地上施設と組み合わせた衛星の国際ネットワークを維持している。

衛星通信にとっては、通信の遅れが大きな問題となる。そのため、地理条件や気象条件が通信ネットワーク拠点の選択する際に重要な要素となる。米軍の主要な軍事活動は国外領土で展開されていることから、米政府は、気象条件の好ましい場所にある外国のキャリアに衛星サービスを委託する必要がある。

英国もまた、スカイネット・システムを通じた軍事通信衛星を運用している。「スカイネット5」は、英国の最新の軍事通信衛星システムである。現在、4基のスカイネット衛星が軌道上を周回しており、最近では2012年12月に打ち上げに成功している。(原文へ

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This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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核兵器は国際法の下で非合法となる – 国連にとって画期的な勝利(ソマール・ウィジャヤダサ国際弁護士)

EEPA(アフリカに関する欧州海外プログラム)アフリカの角地域状況報告(12月20日現在)

*エチオピア連邦政府軍による北部ティグレ州(同州政府を率いるティグレ人民解放戦線(TPLF)への軍事侵攻(11月5日)は、スーダンへの多数の難民流出(過去20年で最悪の1日当たり4000人規模の強制移動/UNHCR)やTPLFと対立関係にあるエリトリアの軍事介入を誘発しており、もはや内戦の域を超えて、「アフリカの角地域」全体に大きな影響を及ぼす国際紛争に発展しつつある。EEPA(事務局長:ミリアム・ヴァン・ライゼンINPS顧問)では、エチオピア連邦政府による厳しい情報封鎖下にある流動的な情勢の中で、国境を越えて逃れてきた難民や人道支援団体、外交筋、市民社会等から収集した最新状況報告(情勢を把握するための参考資料として、各種報道や発表と比較チェックすることを勧めている)を、11月9日以来随時IDNを通じて配信している

軍事状況

エチオピアと難民が多数流入しているスーダン間の緊張が高まっている。スーダン政府は急速支援部隊と装備をエチオピア国境地帯に派遣した。(エチオピア・エリトリア国境に近い)カッサラ州、ガダーレフ州のバニアメール族とアルハブ族が食料・資金支援を行う。現在、スーダンとエチオピア間の交渉は中断したままになっている。

Tigray Province and the map of Ethiopia/ Nationalnews.com

3人のエジプト政府関係者と欧州の外交官の証言によると、アラブ首長国連邦(UAE)がエリトリアのアッサブに保有する軍事基地からエチオピアのティグレ州に対してドローン攻撃を行ったという。ベリングキャット(ファクトチェックとオープンソースインテリジェンスを専門とする調査ジャーナリズムのウェブサイト)は、エリトリアのアッサブ基地に中国製のドローンが配備されていることを確認している。

報道によると、エジプトはトランプ政権の仲介で9月に国交樹立したUAEとイスラエル間の関係強化の動きを憂慮している。とりわけ両国がスエズ運河に代わるルートをイスラエルのハイファから建設するのではないかと危惧している。

報道によれば、エジプトはスーダンに対してティグレ州のTPLFを支援するよう働きかけている。エジプトは、同じくエチオピアの下流に位置する国として影響を受けるスーダンに対して、グランドルネッサンスダムを巡るエチオピアとの交渉で足並みを揃えられるよう関係強化を志向している。

報道によるとスーダン当局はアムハラ人特殊部隊と共にスーダン国境地帯で戦っていたアムハラ民兵の軍服を着たエリトリア兵を捕虜にした。

外交筋によると、「数千人規模の」エリトリア兵がティグレ州内で作戦に従事している。2人の外交官が、エリトリア兵がエチオピア北部国境の街ザランベッサラマバドメの3か所からエチオピアに侵入したと述べている。

Map of Eritorea

報道によると、ティグレ州の小さな街エドガ・ハムスでエリトリア兵による住民虐殺事件が起こった。犠牲となったのは聖職者と教会に避難していた女性達を含む約150人。マリエアム・デンゲラートと周辺の村々(マイメゲルタ、デンゲラート、ツァア、ハンゴダ)は、エリトリア軍の支配下にある。兵士達は家畜を殺害し、地元民らが餓死している。

ティグレ州の州都メケレの住民と情報集に当たっている2名の外交官によると、メケレ市内でエリトリア兵が確認されており、中にはエリトリア兵の制服を着ている者もいれば、エチオピア連邦軍の制服を着ている者いたが、「いずれもエリトリア語訛りでティグリニャ語を話していたほか、ライセンスプレートがないトラックを運転していた。」

エチオピア連邦政府軍がスール社(エチオピアの建設会社)を略奪し略奪品をアジスアベパに運んでいるとする複数の報告がなされている。

アディグラトでは、アディス薬品工場を略奪から守ろうとした助祭と15人の民間人がエリトリア軍の兵士とエチオピア連邦政府軍の兵士に殺害された。

国際的な動き

コリー・ブッカー上院議員(ニュージャージー州/民主党)とトッド・ヤング上院議員(インディアナ州/共和党)は、共同声明を発表しその中で、「アビー・アハメド首相は軍事作戦は完了したと主張しているが、エチオピア紛争は未だに終結からは程遠い状態にある。我々は、ティグレ州内のエリトリア難民(難民キャンプ4か所に約96,000人が暮らしていた)がエリトリア軍によって殺害、拉致、強制送還されているという報告や、より安全な地域に逃れようとする人々が足止めされているとする痛ましい報告に、深く憂慮している。」と述べた。両上院議員はまた、「紛争の国際化は米国の利益を脅かすもの」と指摘したうえで、エチオピアに対して公約を順守するよう求めた。」

米国家安全保障会議のキャメロン・ハドソン元アフリカ担当ディレクターは、「ティグレ州におけるエリトリアの関与を公に語ることについては、戦略・戦術面の配慮から、米国政府内で意見が分かれている。」述べた。

エリトリアのイサイアス・アフェウェルキ大統領の力は弱まっており、TPLFの排除に成功すれば、将軍たちはイサイアス大統領を排除してエリトリアとエチオピアの「統合」(エチオピアに紅海の港へのアクセスを確保)に動くと分析する専門家の見方が報じられている。

欧州連合(EU)は、ティグレ州は周辺地域を不安定化する人道的大惨事の瀬戸際にあると述べた。EUはこの地域に向けた人道支援資金を12月19日に2370万ユーロ増資した。EUの人道支援はエチオピア、ケニア、スーダンに対して実施される。

アントニオ・グテーレス国連事務総長の副報道官は、ティグレ州では多くの民衆が全く支援を受けられておらず、いくつかの援助団体による支援も制限を受けていると述べた。国連は引き続き、民衆が戦闘の影響を受けているあらゆる地域に「迅速かつ自由なアクセスが確保されるよう求めている。」

ティグレ州の状況に関する報道

ティグレ州の首都メケレは、警察とTPLF不在により無法地帯と化している。特に若者らがエチオピア連邦政府軍兵士らの標的となっている。

メケレでは、電気と電話線が断続的に繋がるものの、ティグレ州の大半の地域では繋がらない。インターネットは依然として使えない状況が続いている。

公務員はティグレ州の臨時政府により職場に戻るよう指示されているが、出勤するものはほとんどいない。

ティグレ州の住民の多くが、食料、水、現金、電気、電話へのアクセスができていないと指摘する国連報告書が公開された。

アディグラトのテスファセラシエ・メディン司教は、自宅で安全が確保されていることが報じられた。駐エチオピア教皇大使であるアントワーヌ・カミレリ大司教は、教区における戦闘が激しくなったために集会を欠席していたメディン司教との連帯を表明していた。

エチオピア情勢(ティグレ州以外)に関する報道

引き続き、ティグレ人を対象にした人種選別が行われている。首都アジスアベバ在住の著名なティグレ人活動家や弁護士が19日にエチオピア警察に逮捕された。また、ティグレテレビ局の元職員やティグレ系聖職者らも逮捕されたと報じられた。先週、エチオピア航空に勤務するティグレ人1名も逮捕された。(原文へ

INPSの顧問を務めるミリアム・ヴァン・ライゼン 欧州政策アドバイザーが率いるEEPA(Europe External Programme with Africa) はベルギーを拠点とするシンクタンク。エチオピア、エリトリア、ケニア、ジブチ、ソマリア、スーダン、南スーダン、ウガンダを含むアフリカ諸国の専門家、大学、市民社会組織と協力して、アフリカの角地域における平和構築、難民保護、レジリエンス強化に取組んでいる。また、アフリカの角地域及び地球海中部ルートにおける難民の移動及び人身売買問題に関する報告書を出版している。

INPS Japan

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EEPAアフリカの角地域状況報告特集ページ

グローバルサミットでバイオエコノミーへの移行を提唱

*「バイオエコノミー」とは、生物資源(バイオマス)やバイオテクノロジーを活用して、天然資源枯渇、気候変動、少子高齢化、食料安全保障など、人類が直面する地球規模の諸問題を解決し、長期的に持続可能な成長を目指す概念であり、第5次産業革命とも言われる社会構造改革の原動力である。そのアウトプットは2030アジェンダ(SDGs)のほぼ全ての項目を網羅している。

【ベルリンIDN=リタ・ジョシ】

グローバル・バイオエコノミー・サミット2020」(11月16~20日)がベルリンで開催され、参加者らは、危機的な脅威に直面している地球環境の現状や、科学の進歩が可能にした様々な機会、さらには新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の世界的な大流行(パンデミック)がもたらした甚大な影響を踏まえて、バイオエコノミーへの移行の必要性を訴えるコミュニケ(共同声明)を発表した。同サミットは、世界各地から参画した約40人の先導的なバイオエコノミーの専門家から成る「国際諮問委員会」(IACGB)が開催したものだ。声明は、「(移行時期について)これほど緊急性を帯びている時はない。」と指摘している。

3回目となる今年のサミットは、COVID-19の影響でオンライン開催(1000人以上が視聴した)となったが、政府・産業界・学術界などから主要な利害関係者が参加した。サミットの目的は、世界中で持続可能なバイオエコノミー政策を展開していくために、忌憚なく話し合いができるプラットフォームを構築することにあった。4日間の会期中、参加者らはバイオエコノミー政策と、世界の持続可能な開発や気候問題との密接な関連について協議した。

国際諮問委員会は当初、2015年の「第1回グローバル・バイオエコノミー・サミット」を支援するために発足し、サミットのプログラム作りを担当してきた。諮問委員会のメンバーは、帰属する政府や組織を代表するのではなく、専門家として個人資格で活動している。現在は非公式なメカニズムだが、専門家のシンクタンクとして信頼性と正当性を獲得しており、さらなる発展に向けて積極的な取り組みを行っている。

Global Bioeconomy Summit 2020

今回の声明は、「バイオエコノミーは、供給サイドでは産業や製造部門で、また、需要サイドでは消費の変革や廃棄物の削減といった分野において、影響力が強い変革の力として頭角を現してきた。」と強調している。実際、近年、世界各国において、地域の実情に応じてバイオエコノミーの実現に向けた産業育成が政策的取り組みとして進められている。

また、バイオエコノミーが人間や地球にもたらす全般的な貢献を3つ指摘している。第一は、コロナ禍、さらにポストコロナの時代において社会を復活させるための主たる要素として、人間の健康や幸福に貢献するバイオエコノミーの側面。第二に、持続可能なバイオエコノミーを前進させる科学的・技術的なブレイクスルー(躍進)。第三に、持続可能なバイオエコノミーに伴い、それをめざす気候関連の行動や生態系、生物多様性の保護である。

さらに声明には、「グローバルで持続可能なバイオエコノミーへのビジョン」という文書が付属している。ビジョンでは、「バイオエコノミーは、持続可能な経済成長を基盤とした経済システムを追求し、資源の消費を減らし、生態系を保護し再生することで、人間や地球の状態をよりよいものにする。生物資源や生物学的プロセスに価値を与えるべく科学を利用することで、バイオエコノミーは、再生可能性や循環性といった原則を取り込む。」と強調している。

さらに、バイオエコノミーは、人間と自然のニーズを調和させることも目的としており、今日の経済システムよりも遥かに優れたシステムを追求する。すなわち、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」や17項目の持続可能な開発目標の達成を目指すシステムであり、人間の幸福や社会的不平等を改善し、資源消費を減らして生態系の回復を図ることを目的とした、持続可能な経済成長を基盤とするシステムである。

「ビジョン」は、バイオエコノミーの活動は経済・社会・生態系のレジリエンスを高め、都市と農村社会がたとえ経済危機に見舞われても、苦境を切り抜けることを可能にする、と明言している。グローバルで持続可能なバイオエコノミーは社会のあらゆるレベルを包含し、全ての人々の生活の質を向上させる一方、経済成長に対する生物物理的な限界を尊重するものである。

Sustainable Development Goals affected by bioeconomy activities. Blue arrow: socioeconomic targets; green arrow: ecological targets; red arrow: clean industry and economic targets./ by Tobias Heimann

また、自然はバイオエコノミーにおける最大のインスピレーション源であると指摘している。生物は、貴重な再生可能な物質であり、エネルギー源となるだけではなく、自然のサイクルやシステム、プロセスに関する重要なノウハウを提供する。生命科学は、新たな高価値の解決策や応用策を生み出すために、自然界の生物のこうした特徴や能力、機能を探求する学問である。

「現在、多くのバイオイノベーションが依然として初期段階にあるが、すでに、社会や健康、生態系に明確な利益をもたらす前途有望な解決策を示しつつある」とビジョンは指摘している。

ヘルスケア部門における先進的な事例としては、例えば、がん免疫療法や生分解性インプラントやセンサー、バイオプリンティング器官など、生物学的療法がなされている。

繊維・ファッション業界では、バイオイノベーションが持続可能な素材とプロセスに貢献している。例えば、バイオ技術を用いて大量生産が可能となったクモ由来の新素材「スパイダーシルク(柔らかくしなやかで、鋼のように強い)」や、バイオ技術による防水加工、染色、洗濯プロセスなどである。

IT部門では、高度に効率的なデータ貯蔵のためのDNAテスト(DNAストレージ)がすでに成功しているし、大気汚染を測定する装置に培養細胞が組み込まれるようになった。食料・飼料産業におけるバイオイノベーションは、善玉菌を含んだ健康食品や、菜食主義者向けに開発されたタンパク質オプション(大豆由来の代替肉等)、廃棄食品から生まれた高価値の産品(農業廃棄物由来のバイオプラスチック)を生み出している。さらに、微生物を使った肥料のように、農業に対する解決策、動物の飼料となり人間の健康にも貢献することを目的とした、肥満と非感染性疾患対策の解決策も開発されている。

産業部門では、合成生物学や微生物工学がプラスチックや鉄に替わる生体材料につながるだけではなく、より持続可能な製造プロセスを刺激してきた。バイオテクノロジーとそれに関連した技術の収斂が、持続可能な開発を推し進め、革新的なスタートアップ企業の立ち上げや、グローバルなパートナーシップを通じた雇用創出を加速する潜在能力を大いに発揮している。

今回のサミットでは、ドイツのアンヤ・カルリツェク教育・研究相が冒頭で登壇し、同じくドイツのユリア・クロックナー食料農業相が、持続可能なバイオエコノミーにおける農業と食料システムの重要な役割を強調した。

国連食糧農業機関(FAO)屈冬玉事務局長は、技術と社会的インパクト、倫理を結びつける必要性と、複数の利害関係者から構成されるプラットフォームとしての「グローバル・バイオエコノミー・サミット」の意義を強調した。

Joachim von Braun/ Global Bioeconomy Summit 2020

ドイツ政府がサミットを主催・支援し、東アフリカ、ASEAN(タイが代表)、EU委員会、ラテンアメリカ・カリブ海地域、日本が公的パートナーとなった。これらの地域や国々の同サミットへの貢献は、この動きがいかに世界的なものであるかということ、そしてバイオエコノミーがいかに多様なものであるかを示していた。

「バイオエコノミーは、地域で応用され、グローバルにつながっているものです。人々がバイオエコノミーを地域のニーズと状況に応用していることには感心させられます。」と国際諮問委員会の共同議長であるホアキム・フォン・ブラウン教授は語った。

バイオエコノミーが持つ多様な側面は、サミットのサイドイベントとして開催された「バイオエコノミー若者大使ワークショップ」にもよく表れていた。このワークショップは、若い世代がそれぞれの国で地域のバイオエコノミーの概念をいかにして形成するか、それを成功に導くのに必要な前提条件は何かについて活発に話し合う出発点となった。

8人の「バイオエコノミー若者大使」の一人である米国のロニット・ランガー氏は「より良い未来を実現するために優れた政策が必要であることを若い参加者が深く理解していること、そして、今日我々がいる場所から未来へ向かってどう進んでいくかについて人々がビジョンを持ち寄ったことに感銘を受けました。」と語った。(原文へ)|フランス語 |

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【ニューヨークIDN=リサ・ヴィヴェス】

世界各地のメディアは、イスラエルとモロッコ間の外交関係樹立をトランプ政権の外交努力による「歴史的な快挙」として喧伝しているが、両国は数十年に亘って密接な関係を築いており、協力分野は、諜報・軍事分野から野党指導者の暗殺まで含むものだった。

ニューヨークタイムズ紙の最近の報道によると、モロッコは少なくとも過去60年間に亘ってイスラエルから高性能兵器や諜報活動機器の提供及び使用訓練を受けてきた。モロッコはそれと引き換えに、1967年の6日戦争(第3次中東戦争)ではイスラエルの勝利に貢献したとされている。また、アメリカ同時多発テロ前の時点で、失敗に終わったものの、イスラエルの諜報機関(モサド)によるオサマ・ビンラディン暗殺の試みを支援したと報じられている。

Map of Morocco

イスラエルで最大の発行部数を持つ日刊紙「イェディオト・アハロノト」のルポライターであるローネン・ベーグマン氏は、このようにイスラエルが共通の利益や敵が存在する場合にアラブの政権とも秘密裏の繋がりを構築する協力関係を「周辺戦略(periphery strategy)」と説明している。

1961年にハッサン2世がモロッコ国王に即位するとイスラエルとの2国間関係はまもなく好転した。国王は国内ユダヤ人のイスラエル移住を禁じた従来の政策を転換。イスラエルはその見返りに、諜報員を通じて野党党首メフディー・ベン・バルカ氏による国王追放の陰謀を伝えた。ベン・バルカ氏はフランスでモサド工作員により殺害されたとみられているが、遺体が発見されることはなかった。

1965年、ハッサン国王は、モサドが来訪中のアラブ指導者との会議や宿泊先に盗聴することを許可した。これにより、イスラエル政府は極めて重要な情報を入手することが可能となり、2年後に6日戦争が勃発した際には、こうした情報がアラブ軍の侵攻を回避し撃破するうえで役立ったとされている。

イスラエルとモロッコは長年に亘って同盟関係を維持してきたが、1999年に即位したムハンマド6世は、未解決の西サハラ問題(1975年に旧宗主国のスペインが去ったあと、モロッコが軍事侵攻して西3分の2を実効支配中。東部の砂漠地帯に追われた地元住民は亡命政権サハラ・アラブ民主共和国を樹立して抵抗中。亡命政権は国連には加盟してはいないが、アフリカ・中南米諸国を中心に承認されており、アフリカ連合にも加盟してる。一方、欧米や日本などの先進諸国は、モロッコとの関係上からサハラ・アラブ民主共和国を国家としては承認していない。)に不満を露わにしていた。国王は国際社会の反対を押し切って領地奪回を決意し、今年11月にモロッコと亡命政権による実効支配地の中間に国連が設けた緩衝地帯に軍を侵攻させた。これにより停戦の終了が宣言される局面もあったが、現在のところ本格的な戦争には至っていない。

Map of states which have recognized independence of Sahrawi Arab Democratic Republic. The information is taken from en:International recognition of the Sahrawi Arab Democratic Republic

(上記地図:青色:サハラ・アラブ民主共和国の実効支配地域。緑色:サハラ・アラブ民主共和国を承認している国。赤色:承認を撤回した、もしくは凍結している国。灰色:未承認の国。)

Photo: U.S. Secretary of State Mike Pompeo speaks with Benjamin Netanyahu, the Prime Minister of Israel, in Tel Aviv, on 29 April 2018. (State Department photo by Ron Przysucha / Public Domain).

国連決議が、西サハラ人民の「民族自決権」を認め、モロッコによる占領状態に「深い懸念」を表明しているにもかかわらず、トランプ政権は12月10日、モロッコ政府がイスラエルを「承認」することと引き換えに、西サハラにおけるモロッコの領有権と認める宣言に署名した。退任直前になされたトランプ大統領のこの「業績」は、物議を醸している。

戦略国際問題研究所アフリカ所長のジャッド・デヴァーモント氏は、トランプ大統領が発表したいわゆる「歴史的な快挙」に異議を唱えている。「米国はイスラエル政策で短期的な勝利を優先するあまり、アフリカ諸国に対して公正さを欠く外交を進めている。今回の決定は、早速多くのアフリカ諸国に問題をもたらすことになるだろう。」とデヴァーモント所長は語った。(原文へ

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「世界と議会」2020年秋冬号(第586号)

特集:咢堂塾・特別講義録

◇「咢堂塾」発足22年を迎えて
◇「渋沢栄一と論語」/長峯基
◇「地方政治と日本の未来」/北川正恭
◇「地方自治を取り戻すただ一つの道」/高橋富代

■歴史資料から見た尾崎行雄
 第4回「尾崎行雄日記と「唐様で売家と書く三代目」」/高島笙

■連載『尾崎行雄伝』
 第十六章 東京市長

■INPS JAPAN
 軍縮に向けた議会の行動に関する新たなハンドブック発行

1961年創刊の「世界と議会では、国の内外を問わず、政治、経済、社会、教育などの問題を取り上げ、特に議会政治の在り方や、
日本と世界の将来像に鋭く迫ります。また、海外からの意見や有権者・政治家の声なども掲載しています。
最新号およびバックナンバーのお求めについては財団事務局までお問い合わせください。

ジスカールデスタン大統領とボカサ一世のダイヤモンド

【ルンドIDN=ジョナサン・パワー】

12/2に逝去した故ヴァレリー・ジスカールデスタン元フランス大統領と中央アフリカ帝国(現中央アフリカ共和国)のボカサ一世の黒い関係に焦点を当てたジョナサン・パワー(INPSコラムニスト)による視点。冷戦の最中、ジスカールデスタン大統領は反共産主義を掲げていたボカサ独裁政権を支持し、個人的な友好関係(ダイヤモンド等の収賄やボカサが用意した個人的な狩場での休日等)も育んでいたが、国際人権擁護団体により人権侵害(デモに参加した約100名の子どもを含む400名を虐殺)の実態が明るみに出て国際世論から批判を受けると、態度を一変して軍事介入し、ボカサ政権を崩壊させた。(原文へ

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国連事務総長が警鐘:「自然に対する戦争」は「自殺的」

この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています。

【Global Outlook=フォルカー・ベーゲ 】

「地球の状態は壊れている」。これは、人類が今日陥っている状況を端的にまとめた国連事務総長の言葉である。12月2日、世界の気候変動非常事態と環境の劇的劣化についての講演の中で、気候と環境が現在直面する危機の深刻さを示す最も重要な事実をいくつか挙げている。「この10年間は、人類の歴史上最も暑い10年間だった」、「二酸化炭素濃度は依然として記録的に高く、さらに上昇している」、「今世紀、われわれは摂氏3~5度という途方もない気温上昇に突き進んでいる」、「いつものことだが、最も深刻な影響を受けるのは世界で最も脆弱な人々である。問題を引き起こすようなことを最もしていない人々が最も苦しんでいる」。「われわれが気候の大惨事にいかに近づいているか」を示すこれらの事実に注意を引くことによって、グテーレス事務総長は国連加盟国がより断固とした行動を起こす必要があることを強調するとともに、パリ協定5周年の日である12月12日に国連、英国、フランスがオンラインで共同開催した「気候野心サミット」への布石を打とうとしたのである。このサミットで事務総長は、世界中のすべてのリーダーに気候非常事態を宣言するよう求めた。(原文へ 

平和研究者および平和構築者の観点から見ると、グテーレス事務総長が気候危機を紛争と平和に明確に関連付け、気候危機は「平和のための取り組みをいっそう困難にする。なぜなら、この混乱が不安定化、避難民化、紛争に拍車をかけるからである」と述べている点が興味深い。これにより彼は、気候変動は“脅威の増幅要因”という主流的見解を追認している。すなわち気候変動に関連する(暴力的な)紛争は、国内レベルから国際レベルまでさまざまな規模で、平和と安全保障上の重要な課題となっているということである。実際、気候変動に起因する避難民化は、特に避難民と受け入れ側のコミュニティーの対立のような紛争を引き起こしやすいことが分かっている。

しかし平和研究者および平和構築者の観点から見てさらに興味深く、また、気候変動/平和/安全保障をめぐる言説に新たな視点をもたらす要素は、事務総長が目の前の問題を人間と自然の関における戦争と平和という枠組みで捉えたことである。「人間は自然に対して戦争を仕掛けており」、それは「自殺的」だと述べた。それに基づき「自然と和解することは、21世紀を決定付ける課題である」と宣言した。このような自然との和解は「すべての人、すべての場所にとって最優先課題」でなければならないとグテーレス事務総長は述べた。目標は、「自然と調和して生きる道筋に世界を導くこと」でなければならない。

国連事務総長が、「自然」、そして自然と「調和して」生きる必要性を議論の中心に置いたことは、もちろん大いに称賛に値する。真剣に受け止めれば、これは、そもそもわれわれを気候の大惨事に向かわせた世界観や考え方からの根本的な転換である。しかしその一方で、上に引用した言葉に表れている思考の流れは、依然として“世界”や“人間”を“自然”と切り離しており、“自然”を人間に尽くすものとして捉えている。「自然は、われわれに食料を与え、衣服を与え、渇きを癒し、酸素を作り、われわれの文化や信仰を形成し、まさにわれわれのアイデンティティーを作り上げている」。確かにそれは真実であるが、同時に、二元論的、人間中心主義的世界観を具象化している。それは、過去何世紀にもわたって圧倒的に支配的で、また、国連システムの根底にあり、気候危機の原因の根底にもある世界観である。

これ以外にも、世界における在り方、世界に関する考え方はある。それらは今日、世界規模できわめて周縁化されているが、それでもなお、気候危機を脱する道を模索するにあたって検討するだけの価値があるものだ。グテーレス事務総長は講演の中で、気候危機という文脈においては先住民族と在来知が重要であると強調し、正しい方向性を示した。「先住民族が住んでいる土地は、気候変動と環境劣化に対して最も脆弱な土地に含まれていることを考えると、今こそ彼らの声に耳を傾け、彼らの知識に報い、彼らの権利を尊重するべきである」。そして「何千年にもわたって自然と密接かつ直接的に接触する中で集約されてきた在来知は、道を指し示すために役立つだろう」

実際世界各地の先住民族は、グテーレス事務総長の講演に今なお染み込んでいる、世界中で支配的な世界観に対して異議を唱えている。彼らは人間を自然から切り離された存在とも、自然を支配する存在とも考えておらず、関係性に応じて自然に組み込まれる存在と考えている。このような考え方に基づけば、気候危機に対する人間中心のアプローチを克服し、人間と人間社会を関係性に応じて理解するアプローチを推進することができるだろう。それは他の人間との関係性だけでなく、人間以外の存在(「自然」)との関係性である。“人類”を脱中心化することによって、「自然と和解する」新たな道筋を切り開くことができるだろう。それは、国連の文脈において非常に影響力を持っている“人間の安全保障”という進歩的概念さえも超越していく道である。“人間の安全保障”はなおも区分を作り、自然と社会の分断を具象化し、人間を創造物の頂点として概念化している。

最後に、国連事務総長は「体系的な適応支援は……特に存続の脅威に直面している小島嶼開発途上国にとって緊急に必要である」と表明した。実際、ツバル、キリバス、マーシャル諸島のような小さな太平洋島嶼国を見ると、上記の問題すべてが合体している状況である。これらの国々は気候非常事態の原因となることをほとんど何もしていないにもかかわらず、海面上昇、自然災害、食料と水の不安定など気候変動による影響に際立って脆弱であり、深刻な影響を受けている。これらの国々の国民にとって気候変動に起因する避難民化は緊急の問題となっており、気候変動の経済的、社会的影響に起因する暴力的な紛争は、生計、福利、安全を脅かしている。同時に、太平洋諸島の人々は豊かな在来知を持っている。それは彼らの世界における在り方や世界観に根差したものであり、人間と自然の分断や、気候非常事態への取り組みにおける世界的に支配的なアプローチに内在する人間中心主義を超越するものである。彼らの脱人間中心主義的な、関係性に基づく振る舞い方や考え方はまさに「道を指し示すために役立つだろう」。

そのため、太平洋島嶼国における平和研究や平和実践に焦点を当てるだけの多くの十分な理由がある。

フォルカー・ベーゲは、戸田記念国際平和研究所の「気候変動と紛争」プログラムを担当する上級研究員である。ベーゲ博士は太平洋地域の平和構築とレジリエンス(回復力)について幅広く研究を行ってきた。彼の研究は、紛争後の平和構築、混成的な政治秩序と国家の形成、非西洋型の紛争転換に向けたアプローチ、オセアニア地域における環境劣化と紛争に焦点を当てている。

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