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米国でイスラエル擁護派が跳梁

【ワシントンIPS=ジム・ローブ】

ウォールストリート・ジャーナルが「イスラエルによる近年で最悪の国際関係上の失策」と呼ぶなど、パレスチナ・ガザ地区に向かって支援物資を届けようとしていた船団へのイスラエル軍特殊部隊による攻撃に対する国際的な非難が強まる中、米国のいわゆる「イスラエル・ロビー」がイスラエル擁護の強力な論陣を張っている。

彼らが懸念するのは、イスラエルの特殊部隊がトルコの国旗を掲げていたナヴィ・アルマラ号の乗員少なくとも9人を殺害した事件をきっかけに、バラク・オバマ政権がイスラエルから距離を置くのみならず、イスラエル包囲網に加わってしまうのではないかというものである。

 「反中傷連盟」(ADL)のエイブラハム・フォックスマン代表は、「国際社会はイスラエルに対する偏向を持った判断をし、外交的リンチを加えているが、今こそ米国がイスラエル国家と市民の擁護のために立ち上がるべき時だ。」と語った。

「米国は、テロから自国の領土と市民を守るイスラエルの権利を支持するとともに、人道支援を行う「平和活動家」を装いながらハマスを支援しイスラエル軍兵士を攻撃してくる人々に対して、イスラエルが自衛権を行使する権利を有していることを支持する姿勢を国際社会に示さなければならない。」とフォックスマン氏は付け加えた。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の報道官は、5月31日に国連安保理議長が出したイスラエル非難声明のトーンが弱められたことを米国に対して感謝したが、イスラエル擁護のネオコンは、オバマ大統領が最大の同盟国イスラエルを裏切って、安保理声明に拒否権を発動しなかったとして盛んに非難した。

ジョージ・W・ブッシュ政権で中東問題の補佐官をつとめたエリオット・アブラム氏は、「Joining Jackals」と題した記事の中で、「我が国はどうして(イスラエルを非難する)安保理議長声明に同意したのだろうか?」と問いかけた。

「オバマ政権は、イスラエルと連帯する明確な方針を持ち合わせていなかったことから、(公海上で民間船の乗務員を殺害したイスラエルを非難した)国連安保理メンバーを向こうにまわしてまでイスラエル支持の姿勢を出したくなかったのだ。」と、現在は外交問題評議会 (CFR)に拠点を置くアブラム氏は、ネオコン系週刊誌に寄稿した記事の中で語った。「なぜなら、オバマ政権がその気になれば、イスラエルを非難する安保理議長声明は阻止できたはずだからだ。」

イスラエルのネタニヤフ首相率いるリクード党と世界観を共有するネオコンの中には、オバマ政権が今回の危機に際して無条件にイスラエルを擁護しなかったことから、イスラエルは将来もっと攻撃的な行動に出ることになると示唆する者さえいる。

アメリカン・エンタープライズ研究所のマイケル・ルービン氏は、ナショナル・レビュー・オンラインに、「もしオバマ大統領が、カイロやベイルート、テヘラン、アンカラの歓心を買おうとしてガザ船団事件に関してイスラエルを見せしめにすることが米国の利益になると考えているのであれば、イスラエルの指導層は、米国はもはやイスラエルの安全を守る気がないと判断し、いかなる問題についても、とりわけイランによる核開発問題について、自らの手でことを処理しなければならないと考えるようになるであろうことを理解しておかねばならない。」と書いている。

またルービン氏は、「つまり、もし米国政府がここでイスラエルに対して厳しい態度をとるならば、それはすなわち、イスラエルがイランを攻撃する青信号が点されたに等しい。」と付け加えた。

こうしたイスラエルの心理は、6月1日付ウォールストリート・ジャーナル紙に掲載されたイスラエルの大手新聞イディオット・アハロノット(Yediot Aharonot)のローネン・バーグマン記者のコラムによく描かれている。バーグマン氏は、イスラエル特殊部隊の作戦を「無責任なもの」としたうえで、その背景には、世界がイスラエルというユダヤ人国家を敵視しているとする「脅迫観念」が同国の指導者層と国民の間で支配的となっている現状を反映したものだと指摘している。

またバーグマン氏は、イランの核開発計画に言及して、「疲弊し孤立しながらもイスラエルがなお、敵国(=イラン)に対して先制攻撃で、しかも取り返しがつかない手段を含む大打撃をもたらす能力を有している現実を考えれば、イスラエルがこのような「不健康な」思考にとわられている現状に深く憂慮せざるを得ない。」と語った。

ネオコン達が、オバマ政権がイスラエルと距離を置いた場合の地政学的代償について脅迫的に警告を発する一方で、ロビイストと米議会内の親イスラエル議員達は、5月31日にガザ沖約100キロの公海上で未明に起こった事件について、イスラエル政府側の見解を擁護する姿勢を見せた。

彼らは、作戦に参加したイスラエル特殊部隊は当時ペイントボールライフルと拳銃しか装備しておらず、船舶の乗員が鉄棒、ナイフ、その他の固いものを振り回して襲ってきたため、自衛の対応を取らざるを得なかったと主張した。

「イスラエル兵には、ナイフやこん棒を武器にリンチを行おうとする暴徒から自らの生命を守る当然の権利があります。」と、米下院外交委員会の共和党委員長イレーナ・ロス=レーティネンは語った。

両者の武器を含めて、イスラエル側が主に同国防軍(IDF)が配布した短いビデオ映像を元に主張している説明内容については、船上にいた約600名の多くが証言の中で異議を唱えている。彼らは、船をイスラエルに曳航された後、約24時間に亘って外部との連絡がたたれた状態で監禁されたのち、国外追放処分を受けた。

またイスラエル側の主張には、(イスラエル軍に)公海上で攻撃に晒された船上の人々の自衛権について考慮されていない。この点について、Media MattersのM.J.ローゼンバーグ氏は、「イスラエルの言い分は、あたかも車乗っ取り犯が、警察に対して、運転手が座席下のバールを取り出して自分に殴りかかってきたと不平を言っているようなものだ。」と語った。

またイスラエル擁護団体は、メディアと一般大衆の注目を、彼らの言う「テロリストと関係がある、イスラム系過激派集団」というイメージに集中させようとしてきた。すなわち、トルコに拠点を置く「過激派集団」、「インサニ・ヤルディム・バクフィ」( IHH)が、(今回襲撃を受けた)「マビ・マルマラ」号を購入し、3年間にわたるイスラエルによるガザ封鎖を突破するために8隻で出港した船団を後援しているというものである。

また、アメリカ・イスラエル広報委員会(AIPAC)は、5月31日、9.11同時多発テロ後に機密解除となった中央情報局(CIA)レポートにIHHが、テロ要員を雇い、アルカイダを含むテロリストグループの活動を支援している15組織のうちの一つに挙げられていると指摘したレポートを発表した。

またAIPACは、他のレポートの中で、「IHHはアルカイダによるロサンゼルス国際空港襲撃爆破計画において重要な役割を果たしていた」とする「著名なフランス人対テロ捜査官」による証言を引用した。

「しかし、このCIA報告書が書かれた90年代中頃には、IHHがボスニアやチェチェンで戦士を集めたこともあったが、現在は、ガザやハイチ、アフリカ諸国など100カ国以上において人道支援活動を行っている。」と6月1日付『ニューヨーク・タイムズ』は報じた。そして、イスラエルに拿捕されたいずれの船舶からも、各種棒きれとキッチンナイフの他には、武器らしきものは何も発見されなかった。

また、右派シオニスト団体「ザ・イスラエル・プロジェクト」(TIP)は、メンバーを動員して、それぞれの地域の政治家、メディアを対象したイスラエル支持を求める電子メールによる働きかけを行っている。6月1日午後の僅か2時間の内に、ここIPSワシントン支局にもイスラエルが主張する事件経過を支持するよう求めるTIPメンバーからの電子メールが20件近く寄せられた。(原文へ)

翻訳=IPS Japan戸田千鶴

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【ニューヨークIDN=タリク・ラウフ】

ニューヨークの国連本部で開かれていた核不拡散条約(NPT)2020年再検討会議第3回準備委員会は、核軍縮のペースと程度をめぐって、合意に達せずに終了した。

4月28日から5月10日まで開催されていた準備委員会には150カ国が議論に加わり、一般討論(各国の代表による意見表明)では106件の発言がなされた。これに続いて、3つのクラスターでは時として繰り返しになるような多数の発言がなされた。3つのクラスターとは、(1)核軍縮と安全の保証、(2)核の検証(IAEA保障措置)、非核兵器地帯、中東・北朝鮮・南アジアなどの地域問題、(3)原子力の平和的利用、NPT再検討プロセス、条約の脱退問題、である。

2020年は、1970年にNPTが発効してから50周年、1995年に同条約が無期限延長されてから25周年となる。191の加盟国を持つNPTは、核不拡散・核軍縮・原子力の平和利用の領域をカバーする核のグローバル・ガバナンスの礎石だと広くみなされている。

Tariq Rauf
Tariq Rauf

核兵器の拡散を予防し、その保有を9カ国(保有順に米国・ロシア・英国・フランス・中国・イスラエル・インド・パキスタン・北朝鮮)にとどめてきたことは、NPTの大きな成果だと考えられている。もっとも、イスラエル・インド・パキスタンの3か国はNPTに加盟したことがなく、北朝鮮は2003年に脱退している。

2020年にNPT発効50周年を迎えるにあたって、多くの西側諸国は、農業や発電、人の健康維持、海水の淡水化などの形で核エネルギーの広範な平和利用に成功してきたことや、国際原子力機関(IAEA)の検証能力の強化に焦点を当て、核兵器の廃絶に失敗してきていることからは目を逸らそうとしている。

他方、アジアやアフリカ、ラテンアメリカの多くの非核保有国は、核兵器の時代に終止符を打つというNPTの約束は、依然として果たされていないと指摘している。

NPTの会合では、一般的に言えば、各国はいくつかの国家グループに分かれる。最大のものは、122カ国を要する非同盟諸国(NAM)グループだ。他には、欧州連合(EU)・北大西洋条約機構(NATO)・カナダ・米国を含む西側諸国にオーストラリア・日本・韓国・ニュージーランド加えた西洋・その他の諸国グループ(WEOG)、ロシアやベラルーシ、ハンガリー、ポーランドなどからなる東側グループがある(その一部はEUやNATOに加入してもいるが)。

加えて、問題別に、ブラジル・エジプト・アイルランド・メキシコ・ニュージーランド・南アフリカから成る新アジェンダ連合(NAC)、オーストラリア・カナダ・チリ・ドイツ・日本・メキシコ・オランダ・ナイジェリア・フィリピン・ポーランド・トルコ・アラブ首長国連邦から成る核不拡散・軍縮イニシアチブ(NPDI)、オーストラリア・オーストリア・カナダ・デンマーク・フィンランド・ハンガリー・アイルランド・オランダ・ニュージーランド・ノルウェー・スウェーデンから成るウィーン10か国グループ、チリ・マレーシア・ニュージーランド・ナイジェリア・スウェーデン・スイスから成る(核兵器の)「警戒態勢解除」グループ、中国・フランス・ロシア・英国・米国の「P5」、アラブ諸国グループなどがある。

こうして、さまざまな考え方を追求する国家グループに複雑に分かれ、全会一致の合意に到達することがますます難しくなっている。

準備委員会の任務は2つある。ひとつは、次の2回の準備委員会の日程や手続き面のルール、作業プログラムの内容、再検討会議議長の決定を含めて、次の再検討会議に関する手続き的合意を行うこと、もうひとつは、核不拡散・核軍縮・原子力の平和利用という条約の三本柱や、非核兵器国への安全の保証、地域問題などに関連して「勧告」を行うことである。

今年の準備委員会は、以前の会合と同じく、手続き面での合意には何とか達し、ラファエル・グロッシ大使(在ウィーン国際機関アルゼンチン政府代表部)が2020年再検討会議の議長に就任することを原則的に承認した。しかし、以前と同じように、諸国は意見の大きな違いを埋めることができず、再検討会議を拘束するものでないにも関わらず、その「勧告」に関してすら合意することができなかった。

今日の国際社会の残念な現状や政治的・軍事的紛争、単独行動主義に有利となる多国間主義の後退、偏狭な国益の追求に関して、多くの懸念や主張が聞かれた。

しかし、かつてローマの街が燃え盛る中、議員らがつまらないことにうつつを抜かしていたのと同じく、今日の外交官も、核軍備管理が完全に崩壊する様を手をこまねいて見ているだけで、危険な核軍拡競争が起き、核兵器の偶発的・意図的使用の危険が増す方向へと道を切り開いているようだ。

核兵器が議論の中心にある。1975年の第1回NPT再検討以来、そしてその後の5年に一度の会合では、分断と対立の焦点は、条約第6条に規定された核軍縮問題であった。5つの核保有国とその同盟国は、軍縮を国家安全保障・国際安全保障の考慮や、通常兵器などの他の種類の兵器の軍縮とリンクさせてきた。

他方で、一般的には、非核兵器国のほとんどがNPT第6条の履行を重視する傾向にある。西側諸国は、長年にわたって、軍縮の達成に関して「ステップ・バイ・ステップ・アプローチ」あるいは「ブロック積み上げ型」を主唱してきた。すなわち、NPTに続いて包括的核実験禁止条約、次に兵器用核分裂性物質生産禁止条約、その後にまた別のステップが続くという想定である。他方で、非同盟諸国は、包括的核兵器禁止条約を通じた核兵器の完全廃絶に向けた、段階的かつ時限を規定した枠組みを提唱してきた。

UN Secretariate Building/ Katsuhiro Asagiri
UN Secretariate Building/ Katsuhiro Asagiri

2017年7月に122カ国の賛成で採択された核兵器禁止条約の主導国は、今回の準備委員会の軍縮問題クラスターの発言で同条約に中心的に言及することを避ける賢明な策を採った。これによって、準備委員会が核兵器禁止条約によって「ハイジャックされた」と主張したかった同条約の強硬な反対勢力は、批判することができなくなってしまった。

しかし、2018年のNPT準備委員会で米国が新たな要素を持ち込んだ。「核軍縮の条件を作る(CCND)」提案がそれで、1995年、2000年、2010年のNPT再検討会議での合意を回避する狙いがあった。

米国はさらに、「ステップ・バイ・ステップ」のアプローチは既に成果なく失敗に終わっており、すべての核保有国を巻き込んだ核兵器のさらなる削減を導く条件と環境を創出するには完全に新しいやり方が必要だという認識に基づいて、昨年の提案をさらに改訂した「核軍縮のための国際環境を整備する(CEND)」という新たな提案を行った。

これまで米国のやりかたに無条件で従ってきた同盟国は、「ステップ・バイ・ステップ」「ブロック積み上げ型」「踏石(ステッピング・ストーン)」アプローチを頑強に支持してきたが。単独行動主義に彩られた米国の新提案を受けて、動揺を隠せないでいた。こうした様子は、あたかも蝶やユニコーンが現れて、新しい時代と海図なき核軍備管理の新世界に導いてくれる魔法をかけてくれることを夢見ているかのようだった。(原文へ)(PDF版)

※著者は、国際原子力機関(IAEA)のNPT代表団長を2002年から2010年まで務め、1987年から2019年までのすべてのNPT会合に参加している。本稿の見解は全て個人のものである。

INPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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北欧の「2030世代」がSDGに取り組む

【レイキャビクIDN=ロナワ・ヴィール】

国連が「アジェンダ2030」と持続可能な開発目標(SDGs)を採択してから2年目の2017年9月5日、北欧諸国が共同で「2030世代」プログラムを立ち上げた。北欧の公的な協力を通じてアジェンダ2030の履行を加速しようとの目的だ。

2020年12月までの予算192万5000ドルがプロジェクトに割り当てられた。

北欧閣僚会議(NCM)のプロジェクト・オフィサーであるファニー・レフラ氏は、このプロセスは実際には「ヘルシンキで討論会が開かれた」2016年秋に始まっていると語った。当時、SDGsの第12目標(持続可能な消費・生産)に焦点を当てることが決められたが、持続可能な消費・生産の下支えになる活動がSDGsの他の目標(第5、6、7、8、13、14、15、17目標)と関連付けられるべきであるとされた。青年会議の構想も、このときに生まれている。

「2030世代」の当初の目標の一つは、変革の担い手として、アジェンダ2030の履行に子どもや若者が果たす重要な役割を強調するというものであった。「2030世代」のウェブサイトには「今日の子どもや若者のための持続可能な将来を保証するための積極的な努力が強調され、アジェンダ2030に関する北欧の取り組みの中でとりわけ彼らが重要な対象集団と目された」と記されている。

Location of the Nordic countries/ Public Domain
Location of the Nordic countries/ Public Domain

変革の担い手として若者の役割を強調する方針は、いくつかの活動につながっている。その一つは、北欧閣僚会議の現在の議長国であるアイスランドで開かれたNCM会合に付随して同国で開催された会議である。「持続可能なライフスタイルを牽引する若者たち」というテーマのこの会議(レイキャビク会議)では、ラウンドテーブルや、北欧各国の環境関連閣僚との質疑応答、アイスランド教育相や同国首相、NCMのポーラ・レトマキ新事務局長との短い対話などがあった。

モデレーターを務めたルンド・ギュンシュタインドッティル氏とセーバル・ヘイギ・ブラガソン氏はこの会議を「若者を引き付ける対話」と呼び、会議を収録した動画を2019年7月に開かれる「持続可能な開発目標に関する国連ハイレベルフォーラム」で上映する予定だと語った。

レトマキ事務局長は、北欧の全5カ国(スウェーデン・デンマーク・ノルウェー・フィンランド・アイスランド)が、CO2の実質排出ゼロを目標とした声明を2019年1月に発している、と会議参加者に指摘した。この声明には、SDGの第12目標や若者に関連して、「気候変動による個別の影響を緩和する方法に関する情報提供を強化し、既存の消費者情報の枠組みと取り組みを利用し、気候にやさしい消費者行動に関する意識喚起において若者組織に明確な役割を与えることで、『北欧共通の声』が気候問題への意識が高い消費者の選択を促すことになるだろう。」と述べられている。

レトマキ事務局長はまた、「実際、北欧諸国は、各国別でもそうだし、北欧全体の協力を通じても、持続可能性に関しては既に多くのことを行っています。そうした事例の1つに、『北欧スワンエコラベル』があります。これによって、この30年間、消費者は環境にやさしい選択をすることが容易になりました。」と語った。

「もうひとつの事例は、循環経済の発展に資する取り組みを行う北欧のベンチャー企業を支援するイノベーション加速プログラム『ループ』だ。」

レトマキ事務局長は、「北欧の平均的な人々と同じレベルの消費を世界全体の人々がしたら、地球が4つ必要になります。しかし、地球は一つしかありません。だから私たちは努力しているのです。」と問題の背景を説明した。

2007年から11年までフィンランドの環境相だったレトマキ事務局長は聴衆に対して、多数の若者が参加したある会議で受けた質問について披露した。若者たちは「あなたたちは、変化を起こす最初の世代になるのか、それとも、そうしなかった最後の世代になるのか。」と問うていた、というのだ。

今回の会議では、いまや世界的な現象になった「気候スト」を始めたスウェーデンの学生活動家グレタ・トゥーンベリ氏がビデオを通じた短いプレゼンを行い、同じような点を指摘した。

トゥーンベリ氏は飛行機での移動を認めていないため、自身が出席することはかなわなかったが、会議のために用意した声明のなかで、「私たち若者は未来であり、私たちは生存上の危機である気候変動の危機に直面しています。私たち若者はこの危機を発生させたわけではなく、危機のある時代に生まれてしまったわけだが、それでも、この影響を最も受ける世代なのです。これは不公平です。」と述べている。

彼女は、変革の必要性を強調して、「私たちは、年長世代に対して、これまで行ってきたこと、或いは今も私たちにし続けていることについて、責任を取るよう要求する必要があります。そして、私たち自身も行動する必要があるのです。必要な行動がないまま過ぎる一日は失敗であり、そうした1年は完全なる大惨事となります。だからこそ、私たちは、今こそ何らかの行動に移らねばならないのです。」と述べた。

レトマキ事務局長も同じ趣旨の発言をした。「若者は行動を求めています。私も含めて、政治家や企業人、利害関係者は、彼らの声を真剣に受け止めねばなりません。気候変動の負担を若者に負わせてはならないのです。必要な変化を起こす立場にいる人々がこれを実行し、解決に導かねばなりません。」

北欧閣僚会議のレフラ氏は、「トゥーンベリ氏は、スウェーデンで政治家へ気候変動問題に対する積極的なアクションを求めた気候ストライキ『未来のための金曜日』を始めたが、これまでに『2030世代』が彼女と何らかの形で協力してきただろうか? そうではありません。しかし、気候ストライキに関しては、まだ特に計画はないものの、今後若者が変革の担い手として『2030世代』プログラムの活動の中で継続的に関与することになるだろう。」と語った。

アイスランドのギュドミュンドゥル・インギ・グドブランドソン環境相とカトリン・ヤコブスドッティル首相が学生気候ストライキの主催者らと会合を持つ意向であることが会議の参加者らに伝えられた。ノルウェーのオラ・エルヴェストゥエン気候・環境相もまた、気候ストライキに対応して一連の会合を立ち上げると述べた。

北欧閣僚会議や「2030世代」とは別に、アイスランドとフィンランドでは、SDGsに向けた活動に関して若者の評議会が設置されている。

北欧閣僚会議は、若者に焦点を当てる観点から、「2030世代」の活動の一環として「再生2030」(ReGeneration 2030)運動の若者らと3回のサミットを開くことを決めた。

「再生2030」は、北欧・バルト三国の15~29才の若者による活動である。オーランド諸島で毎年1回開かれるこのサミットでは、メッセージと持続可能な解決策を履行し、それらを政治家や学者、利害関係者、その他の指導者らに提出している。第1回のサミットは2018年に開催された。

2019年のサミットは「気候を変える、ライフスタイルを変える」をテーマに、SDGsの第12目標、第13目標に着目する。

「再生2030」は「持続可能なライフスタイルを牽引する若者たち」会議の主催団体の一つであり、会議への参加は30才以下の若者に制限されていた。

ヤコブスドッティル首相は今回のレイキャビク会議の閉会の挨拶で、「子どもや若者たちは、世界の仲間たちと同じように、この数週間にわたって毎週金曜日にレイキャビクでデモを行い、将来世代のための気候変動への真の行動を要求しています。将来はあなたたちのものであり、あなたたちはそれを実現し、手にしつつあります。私たちは、あなたたちを失望させたくありません。」と述べた。(原文へ)PDF |スペイン語|

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古代シルクロードの要衝、近代的な観光開発に踏み出す

【ブハラ(ウズベキスタン)IDN=カリンガ・セネビラトネ】

ブハラ市は、アジアとアラブ世界や欧州を繋ぐシルクロードにおいて、交易上の要衝であった。ウズベキスタン政府が2016年に外国人観光客に対する規制を撤廃し、シルクロードに対する世界的な関心が高まる中、2000年の歴史を持つブハラは中央アジアの主要な観光地を目指す方針だ。

ブハラは、ペルシアやインド、中国、ロシアから訪れる商人らによって栄え、10世紀から17世紀にかけてのシルクロード発展の中で人気の中継拠点となった。

ブハラはまた、学問・宗教・文化の中心地でもあった。古くは8世紀にまで遡るペルシア文化の影響を色濃く残す、よく保存されたイスラム都市の典型と言ってよいだろう。

SDGs Goal No. 4
SDGs Goal No. 4

ペルシア式の大規模なマドラサ(イスラム神学校)の建物群は、1993年にユネスコの世界文化遺産に指定されて以来、修復措置が取られてきた。こうしたマドラサはイスラム学問のための場所ではなく、アートギャラリーや土産物店、レストラン、劇場として機能している。おそらくこれは、旧ソ連時代からの流れであろう。

地元投資家や、とりわけトルコやロシアからの多くの外国人投資家が、かつてのマドラサ式を模倣した小さなホテルを旧市街に建設している。

地元の元文化人類学者エリザベタ・ネクラソワ氏は、この古代都市で観光インフラばかりが整備されることをあまり歓迎しているわけではない。ネクラソワ氏は、「ブハラは、年間数百万人の観光客を誘致できるだけのポテンシャルを備えてはいますが、観光開発は単に観光客が落とすカネだけではなく、民衆と文明が育んできた豊かな文化的知恵を伝えるものでなくてはなりません。例えば、ブハラには140カ所以上の文化的な見所がありますが、観光客を惹きつけ教育的効果もある場所を、さらに絞り込む必要があります。」と語った。

ネクラソワ氏はさらに、「開発事業の大半が進行している旧市街には、約100カ所の貯水槽と水を地域コミュニティーに運ぶ地下運河体系から成る古代からの水道システムがあります。これは旧市街の新たな観光スポットになる可能性があります。この街独自の作りや歴史に観光客を誘う新たなガイドブックが必要なのです。」と語った。

SDGs Goal No. 8
SDGs Goal No. 8

春は、桑の木に紅白のみずみずしいマルベリーが豊かに実る時期である。ブハラでは、旧市街の運河や通路に沿って「野生」のマルベリーが群生しており、地元の人々も観光客も、道すがらマルベリーを摘んで食べることができる。

ネクラソワ氏は、「ブハラにはかつてシルクロードが繁栄した時代に遡る興味深い歴史があります。この歴史に、この交易路がなぜシルクロードと呼ばれてたのかを観光客に伝える興味深いストーリーをつなげることができるのです。例えば、この古代都市にはかつて多様な独自のバザール(市場)が点在し、それらを発掘することが可能です。こうした歴史的な遺構を、シルクロードを再興しようとする現在の取り組みとうまく結びつける興味深いストーリーを構築すれば、観光客の関心を惹くことが可能です。」と語った。

ウズベキスタンは、近隣の中央アジア諸国と共同で、欧州のシェンゲン・ビザに似た「シルクロード・ビザ」の導入を検討している。同国は2017年、電子ビザシステムと、多くの欧州・アジア諸国市民向けのビザなし渡航制度を導入し、昨年の観光客は450万人以上と、それ以前の2倍に伸びた。

Photo by Kalinga Seneviratne | IDN-INPS

しかし、観光客のほとんどは首都のタシケントとムガール・イスラム文化揺籃の地であるサマルカンドを訪問している。ブハラはタシケントから列車で約8時間もかかる。近年、日本から導入した新幹線が開通し、移動時間は半分になった。

ブハラには、かつての文化・交易の中心地として、色とりどりの民族舞踊や細密画、人形など観光客を魅了するものが数多くある。旧市街の中心には、「アルク」と呼ばれている1500年の歴史を持つ土煉瓦でできた要塞があり、見事に修復されたマドラサや、美しい彫刻が施されたカラーン・ミナレット(尖塔)、そして精巧に積み上げた煉瓦で作られた世界で最も美しい建物群の一つであるサマニ霊廟に囲まれている。これらは、この古代イスラム都市の豊かな建築美を示すものである。

SDGs Goal No. 11
SDGs Goal No. 11

5月から9月にかけての観光シーズンには、 ナディール・ディヴァンベギ・マドラサが毎晩美しく彩られる。日中には土産物街なのだが、夜になると食事を楽しめる劇場に変わる。90分に及ぶ色とりどりの民族音楽・舞踊や中央アジア砂漠地帯のファッションショーをブハラ・フィルハーモニー・民族センターで観ることができる。

音楽は、インド・ラジャスタン州の民族音楽に非常によく似ている。「私たちは政府に雇用され毎日練習を積み重ねています。観光シーズンには毎日約500人の前でパフォーマンスをしています。」とグループのあるメンバーはIDNの取材に対して語った。

ブハラにはまた、起源がペルシアの写本が盛んに作られた10世紀に遡る、細密画芸術を育んできた歴史がある。この古い都市には多くのアートギャラリーがあり、その多くがアトリエも併設している。

Credit: Kalinga Seneviratne | IDN-INPS
Credit: Kalinga Seneviratne | IDN-INPS

地元の大学で8年間、細密画を教えているフェルズ・テムロフ氏は、ブハラで自らのアトリエ兼店舗を経営している。テムロフ氏は、「この仕事は教鞭をとるよりも面白いですね。いろんな人が来るし、海外に行く機会もあります。これまでに、フランスで2回、モスクワで3回、ウィーンで1回、展示会を開きました。ブハラ芸術はとても有名で、観光客もやってくるし、これで生計も立てられます。」と述べる一方で、あまりにも多くの人々が観光客需要を当て込んでこのビジネスに参入している現状に不満を抱いていた。

紙人形もまた地元名産品の一つであり、親指と人差し指を使った人形劇が繰り広げられる。父親から紙人形の作り方を習ったというファルーク・アクメドフ氏は、「3家族・17人でこの人形劇団を運営しています。」と語った。

観光シーズンには、この伝統工芸を学びに観光客が店を訪れる。アクメドフ氏の父親は紙人形を使った3分間のライブショーを実演してみせている。客はアトリエで自ら作った人形を50~100ドルで買うこともできる。「これは年間を通じてできる仕事ですが、私たちはオフシーズンにも人形を作っています。」とアクメドフ氏は語った。

Credit: Kalinga Seneviratne | IDN-INPS

細い路地沿いに住む多くの旧市街の住民らは、観光客向けの商売を始めるよう勧める政府に従って、家を増築している。

ソ連時代には政府所属のプロカメラマンだったシャフカート・ボルタエフ氏は、現在は年金暮らしだ。古い自宅の2階に3部屋を増築し「ホームステイリゾート」を作り上げた。フェイスブック上の5000人の友達を活用して、ビジネスを宣伝している。

「ソ連崩壊後は厳しい時代でした。でも、今は政府が観光産業を奨励しており、新しい機会が生まれています。」と語るボルタエフ氏は、ブハラの昔ながらの写真を展示するギャラリーを開設し、そこでポストカードも作っている。

「私は人に会うのが好きで、写真業界で出会った知人を通じて観光客を呼び込み、ここに泊まってもらおうと思っています。クリエイティブな人たちにここに来てもらって、セミナーを開き、この古代都市やこの地域の面白いところを勉強していってほしいですね。」と楽観的な調子でボルタエフ氏は語った。(原文へ)PDF

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【ニューヨークIDN=シャンタ・ロイ】

無謀にも多国間条約を次々と攻撃しているトランプ政権は、核不拡散条約(NPT)の再検討会議が来年4~5月にニューヨークで開催される際に、試練に直面することになりそうだ。

5月10日まで開催されていたNPT再検討会議準備委員会会合の議長を務めたマレーシアのサイード・モハマド・ハスリン・アイディッド大使はサイドイベントで、広島・長崎両市長に対して「やるべきことがたくさん残っています。とりわけ、来年はNPT発効50周年です。」と語った。

Ambassador Syed Mohamad Hasrin Aidid photo: Katsuhiro Asagiri/ INPS
Ambassador Syed Mohamad Hasrin Aidid photo: Katsuhiro Asagiri/ INPS

多国間条約に対するトランプ政権の強硬な態度は、イランとの多国間核協定(2015年)、ロシアとの中距離核戦力(INF)全廃条約(1987年)、武器貿易条約(ATT、2013年)という3つの条約からの離脱に現れている。

NPT再検討会議は、条約が1970年に発効して以来、5年に1度開かれている。国連軍縮局によると、2005年と2015年の再検討会議では、実質的な成果文書に関して合意に至ることができなかった。

アクロニム軍縮外交研究所の創設者で『未完の仕事』の著者であるレベッカ・ジョンソン博士はIDNの取材に対して、「準備委員会は予想よりも良かったが、2020年に向けての真の問題は、再検討会議の手続きを巡るものではなく、むしろ条約そのものが危機に瀕している点です。その主な理由は、国の狭量な要望ばかり優先して集団的な国際安全保障を軽視し、国際的な法的合意よりも単独行動的な威嚇を選ぶトランプ政権の視野の狭さにあります。」と語った。

2020年に向けては「核兵器の使用や生産、配備を禁じた新たな国連条約(=核兵器禁止条約)を発効させ、私たちの目前にある核と気候変動の災禍から人類を守るのに必要な国際安全保障の仕組みのあらゆる側面を強化しなくてはなりません。」とジョンソン博士は語った。

ジョンソン博士はまた、5月10日に終了したばかりの準備委員会は、マレーシアのサイード・ハスリン大使の冷静かつ効果的な議事進行によって、多くの人々が不安視していたよりは良いものだったと指摘した。

「サイード・ハリスン議長は、アルゼンチンのラフェエル・グロッシ大使を2020年NPT再検討会議の議長に選出することなど、主要な手続的問題を解決するためにさまざまな問題をうまく回避しました。」

ジョンソン博士はさらに、「INF条約失効へとつながった米ロ間の厳しい対立や、イランの核開発を抑えるための合意を米国が台無しにしようとしていること、さらに、シリアや北朝鮮など現実の問題が山積していることに鑑みれば、テーマごとの勧告に関して準備委員会が全会一致での成果なく終了したのは驚くべきことではありません。」と語った。

Photo: The writer addressing UN Open-ended working group on nuclear disarmament on May 2, 2016 in Geneva. Credit: Acronym Institute for Disarmament Diplomacy.
Photo: The writer addressing UN Open-ended working group on nuclear disarmament on May 2, 2016 in Geneva. Credit: Acronym Institute for Disarmament Diplomacy.

「核兵器廃絶国際キャンペーン」の共同議長やICAN欧州・中東・アフリカグループ(EMEA)の初代代表を務めたのち、現在は「核分裂性物質に関する国際パネル」(IPFM)のメンバーやICAN国際運営委員を務めるジョンソン博士は、「いいことも悪いことも含め、今後1年の間にはいろんなことが起こり得る。」と語った。

「私たちはこの年を、狭い国家的利益よりも人間の安全保障を優先し、気候変動による破壊と核戦争という、人類が直面している2つの危機を予防するための地域レベル・世界全体での活動を強化する年にしなくてはなりません。」

現在の米国の攻撃的なスタンスは、マイク・ポンペオ国務長官とジョン・ボルトン大統領補佐官(安全保障担当)という2人のタカ派高官が導いているものだ。彼らは、イランに対する軍事オプションを支持している。

ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)のタルジャ・クロンバーグ準研究員はIDNの取材に対して、「そもそもNPTは、1960年代に米国(とソ連)自身が生み出した条約です。」と指摘した。

「条約では核軍縮が義務づけられているものの、同時に、5か国に対して核兵器を維持する権利を認めています。なぜなら、そのことによって他国による核保有を防ぐことができるからです。」とクロンバーグ氏は指摘した。

核兵器を保有する権利と核拡散の予防は、ともに米国の根本的な利益になることから、トランプ政権が2020年NPT再検討会議を「ぶちこわし」にすることは考えにくい。

「むしろ、NPTを支持する全会一致の文書の採択で会議を終了させることが米国の利益にかないます。」とクロンバーグ博士は指摘した。

クロンバーグ博士はまた、「米国の行動の自由を規制する武器貿易条約やINF全廃条約のような米国が脱退しようとしている他の条約とは違い、NPTは、米国自身が核兵器を維持することを認め、同時に、とりわけイランや北朝鮮のような国々が核兵器を取得することを防ぐ基盤を米国に与えています。この意味において、米国は、NPTの多国間的な性格に反対するのではなく、むしろ支持すると考えられます。」と指摘した。

「しかし、今日の状況は、イランの核武装を予防する多国間協定であるJCPOA(共同包括的行動計画)の行方が暗い影を落としています。もし、米国の2018年の脱退を受けて、残りの当事国が2020年NPT再検討会議以前に協定から抜けるようなことがあれば、NPTを弱体化させることにつながりかねません。」とクロンバーグ博士は付け加えた。

さらに、「結果としてイランがNPTを脱退することになれば(現状では考えにくいが)、NPTの存在そのものが危機に直面することになります。この場合、米国は、NPT崩壊の責任を間接的に負っていることになります。」とクロンバーグ博士は指摘した。

またクロンバーグ博士は、「ニューヨークで終了したばかりの2019年の準備委員会は、軍縮の柱を強化したい勢力と、NPTを単なる拡散防止条約としてしか見ていない勢力との間の、NPTに埋め込まれた積年の不満を白日の下にさらしました。」と指摘した。

UN Secretariate Building/ Katsuhiro Asagiri
UN Secretariate Building/ Katsuhiro Asagiri

「核兵器禁止条約から力を得た非核兵器国の多くは、2020年NPT再検討会議の議長勧告案に大きな影響力を持ちました。核兵器禁止条約が米国などの核兵器国やその同盟国から反対を受けている現状は、核兵器をめぐる現在の秩序が二極化しつつあることの表れと言えます。」

クロンバーグ博士は2020年NPT再検討会議の見通しについて、「核兵器国が妥協の基礎となるような軍縮措置に同意することができなければ、再検討会議は今年の準備委員会と同様に割れることになるだろう。」と語った。

「とはいえ、条約発効50周年と重なる次のNPT再検討会議では、条約の成果を祝う意味からも、どんなに薄い内容ではあっても最終文書に合意しようとの強い圧力が働くだろう。」とクロンバーグ博士は語った。

他方、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は、ポンぺオ国務長官と同席したソチ(ロシア)での5月14日の記者会見で、「米露関係を今日の憂うべき状況から改善する方策を生み出すことができると期待しています。その理由は客観的なものも主観的なものもありますが、これが私たちの任務ですし、ヘルシンキサミットや5月3日の会談で米ロ両大統領が確認した事柄に基づく指示もあるからです。」と語った。

ラブロフ外相はまた、「米ロともに、緊急の解決、および、長期的で持続可能な解決の両方を要する複数の問題を抱えています。」と指摘したうえで、「そのことは、戦略的安定の領域、テロへの効果的な対処方法、世界のさまざまな地域でのさまざまな衝突への解決策といった状況と関連しています。」と語った。

ラブロフ外相はまた、「両方に疑念と偏見がありますが、それがめざすべき道ではありません。私たちの間の不信が他方の、そして共通の安全保障を損なっており、世界に懸念を引きおこしています。従って、ウィンウィンの状況を導くことが重要です。」と語った。

Russian Foreign Minister Sergey Lavrov/ Photo by U.S. Department of State.
Russian Foreign Minister Sergey Lavrov/ Photo by U.S. Department of State.

「(米ロ関係は)新しい、より建設的で、責任感のある関係性と相互認識を生み出す時に来ています。米側がそれを支持するなら、私たちにはその準備があります。」

「対話を成功させる重要な条件は、トップレベル、事務レベルなど、あらゆるレベルにおいて信頼を再構築することです。この2週間で2回会談を行ったことを考えれば、状況は楽観していいと考えています。」

「まずはやるだけのことをやってみようではありませんか。」とラブロフ外相は語った。

国連軍縮局によると、NPTは、核兵器と核兵器技術の拡散を予防し、原子力の平和利用を促進し、核軍縮および一般的かつ完全な軍縮を達成するという目標を前進させることを目的とした画期的な国際条約である。

NPTは、核兵器国が軍縮という目標を支持した唯一の多国間の法的拘束力ある協定である。1968年に署名開放され、1970年に発効した。

1995年5月11日、NPTは無期限延長された。5つの核兵器国を含め191の加盟国がある。武器を制限し軍縮を進めるどの条約よりもNPTの加盟国の方が多いという事実は、同条約の重要性を示していると言えよう。(原文へ)

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核軍縮の行き先はなお不透明(セルジオ・ドゥアルテ元国連軍縮問題担当上級代表、パグウォッシュ会議議長)

アフリカ文学の先駆者逝く

【 ニューヨークIDN=リサ・ヴィヴェス 】

ケニアの著名な作家で同性愛者の権利擁護に尽くした故ビンヤバンガ・ワイナイナ氏の追悼とLGBTを取り巻く諸議論に焦点をあてた記事。奇しくもケニア高等裁判所は5月24日、同性愛行為を犯罪とした刑法の規定は憲法に違反するとして、ワイナイナ氏らが無効を求めた控訴審の判決で、原告の訴えを棄却した。現在、アフリカ54カ国のうち30カ国以上で同性愛行為が禁止されている。LGBTを狙った政府による弾圧や襲撃が頻発し、ケニアの司法判断が注目されていた。(原文へ)

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核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議第3回準備委員会を取材

Filmed by Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director, President of INPS Japan.
Filmed by Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director, President of INPS Japan.

INPS Japanでは、2019年4月29日から5月10日に国連本部で開催された核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議第3回準備委員会を取材しました。活動家、専門家のインタビュー映像と関連取材記事を掲載します。

INPS Japan provided in-depth video coverage of the final phase of the third session of the preparatory committee from April 29 to May 10, 2019 for the 2020 Review Conference of the Parties to the Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons (NPT) at United Nations Headquarters in New York. The centrepiece were interviews with experts and activists. These were backed by viewpoints and analysis published by IDN.

Watch the following videos:

Youth Activist for Nuclear Abolition Stresses Importance of UN Talks

Alyn Ware Underscores the Importance of Talks Ahead of 2020 NPT Review Conference

Veteran Disarmament Expert Explains Why UN Talks Failed

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宗教コミュニティーが核兵器廃絶を呼びかける

|視点|核軍備枠組みが崩壊する間に…(タリク・ラウフ元ストックホルム国際平和研究所軍縮・軍備管理・不拡散プログラム責任者)

米国という障害にぶつかりかねないNPT再検討会議

(INPS-IDN May 2019)

より平等な世界を求めて

【ルンド(スウェーデン)IDN=ジョナサン・パワー】

おそらく、結局のところ、社会をより平等にしようとすれば、世界には少なからず暴力が必要であるという議論がある。これは、スタンフォード大学のウォルター・シャイデル教授による新刊『グレイト・レベラー』(Great Leveler)の結論の一つである。

シャイデル氏は、同書の中で私たちがよく知る事実―世界で最も裕福な62人が貧しい方から数えて人類全体の半数が保有する富の合計と同じだけのものを持っているという事実―から書き起こしている。ちなみに62人と言えば、ロンドンの2階建てバスにちょうど収まるぐらいの人数だ。

Pope Francisco/ Wikimedia Commons
Pope Francisco/ Wikimedia Commons

この不平等は年を追って悪化しているようだ(もっとも、1929年まで遡れば状況は今と同じ程度になるが)。2000年前の帝政ローマ時代、富める者は平均的な市民の約150万倍の富を有していたが、これは今日でいえば、ビル・ゲイツ氏と平均的な米国人との間の比率と同じぐらいである。

プラトンは紀元前4世紀に「1つではなく2つの国家がある。片方は貧者の国、他方は富める者の国である。」と、当時の貧富の格差に当惑する気持ちを記している。イエス・キリストも後に同じテーマを取り上げた。今日のローマ教皇もそうだ。一部の者に富が集中し貧者の暮らしむきが一向に改善しないという状況は、キリスト教・イスラム教・仏教・ユダヤ教のいずれの教えにおいても全く認められていない。これらの宗教の信者が自らの富を正当化しているとしたら、彼らは事実上の棄教者ということになる。

シャイデル氏の主張は、「ショック療法なしに何も変わらない」というものだ。歴史を紐解けば、黒死病がそうした一例にあたる。黒死病によりあまりにも多くの労働者が死亡したため、深刻な労働力不足に直面した地主層は、賃金を相当に引き上げざるを得なかった。

驚くべきことに、戦争でさえも特別な状況を除いて平等をもたらさなかった。第一次世界大戦までは、戦闘は地理的に局所的なものだった。それまでの時代における戦争は、一般的に、社会に深く浸透することがなかった。他方で、第二次世界大戦は、英国社会の大部分を巻き込み、富める階級に変革を強いることになった。彼らは、労働党政権が戦争の矢面に立たされた一般兵士たちの負担に「報いる」政策として国民保険サービスを導入するなど、社会改革の推進に協力していかざるを得なくなった。

The New National Health Service leaflet/ Public Domain
The New National Health Service leaflet/ Public Domain

歴史を数世紀遡れば、農民蜂起や内戦は不平等の解消に資するところがほとんどなかった。フランス革命もまたしかりだ。

そうしたなか、中国共産党が主導した土地改革は例外的なものだった。しかし、毛沢東の革命は鄧小平によってひっくり返され、不平等解消のプロセスは終わった。毛沢東の土地改革は、根の深い革命ゆえに不平等解消のプロセスを実現することができたが、それは暴力や暴力による脅しがあって初めて機能した。

では、非暴力運動はどうだろうか。 暴力なしに不平等解消を実現した唯一の確実な事例は、ラテンアメリカ諸国が2000年代初頭にたどった道である。しかし実現された内容はかなり限定的なものであった。それは持続可能であろうか。ブラジルでは、労働党のルラ・ダシルバ大統領の成果が、保守派の新大統領ジャイール・ボルソナーロ氏によって脅かされている。他方、メキシコでは社会主義的な新大統領が改革を前進させるとみられる。

冷戦後の今日の世界においては、米英では労組の力が弱められ、いくつかの国では税率が引き上げられ、各地の非熟練労働者らがグローバル化の波に苦しんでいる。不平等はさらに深刻になっている。冷戦は、社会組織にそれほど深く浸透した戦争ではなかった。

共産主義が終焉し、ロシアや中国、東欧諸国はみな一層不平等な社会になった。ロシアや中国では、不平等の問題はとりわけ深刻である。

ひとつの希望的な神話を再審に付さねばならない。一般的に言って、民主主義の導入は、経済成長を刺激することによって貧困層の賃金や教育、保健、福祉を向上させはしたが、それ自体ではより平等な社会を実現することはなかった。

世界が不平等だとしても、それは問題だろうか。実に大いに問題なのだ。次から次に出される国際通貨基金や世界銀行による調査報告書が、不平等によって経済成長が妨げられていることを証明している。

しかし、どのような対処方法があるというのでろうか。 大量動員の時代は終わりを告げた。ロベスピエールや毛、ゲバラといった革命家による血塗られた革命は、もう誰も経験したくないのだ。トマス・ピケティ氏やスティーブン・ピンカー氏が近著で証明しているように、世界はより暴力的でない場所になりつつある。暴力に起因する死に直面する可能性は、この数世紀にわたって下がってきた。欧州やロシア、日本、中国のような高齢化社会では、高齢者が(若者と比べて)暴力に不寛容であり、政治的解決策としての暴力に比較的魅力を感じない傾向にあることから、より暴力的でない社会になっていくだろう。

SDGs Goal NO.10
SDGs Goal NO.10

「この問題への解決策はそれほど多くない。」とシャイデル氏は記している。将来的には、「高まる不平等の波を抑えるために、大陸ヨーロッパの社会民主主義国が高税率と広範な再分配の仕組みを維持・調整し、アジアの民主主義諸国が課税前収入の例外的に平等な分配を維持することは、難しくなってくるだろう。グローバル化と前例なき人口構成上の変化の圧力がこれに加わって、不平等はますます強まるばかりだろう。」

歴史を通じて、取得の均等を目指す試みのほとんどが、悲しみや不幸をもたらしてきた。私たちは、何を望むべきかについて慎重であらねばならない。(原文へ)

※ジョナサン・パワー氏は『インターナショナル・ヘラルド・トリビューン』紙で17年にわたり国際問題のコラムニスト・コメンテーターを務めた。

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