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|エクアドル|持続可能な開発目標達成のカギを握る民衆

【キトIDN=ネルシー・リザラーゾ】

15年前にエクアドルのサンパブロを訪れたことがある。それはまさしく、マナビ州都ポルトビエホの中で最も貧しい地区であった。

当時、安全な飲料水へのアクセスはなかった。人々は、中等教育はおろか、すべての人々にとっての基本的な無償教育の可能性など、想像すらつかなかった。夕方5時以降に出歩くことなどできず、診療所には十分な医療スタッフも薬もなかった。

今年9月初め、サンパブロをふたたび訪ねてみた。

そこで会ったのがモニカさん。年は29で、8歳の娘を持つシングルマザーである。その半年前、「マッチョ」な伝統に反して、彼女は地域評議会の会長の座を勝ち取っていた。今日、彼女は「マダム・プレジデント」となり、来る日も来る日も地域住民のために尽力している。

モニカさんは、確信を持って私にこう語った。「この10年の進展がなければ、すべての子ども達のための教育を実現することはできなかったし、今日のような医療体制を享受することはできなかったと思います。同様に、地域全体で飲み水を確保することも、障害者が必要とするケアや機会を得ることもできなかったでしょう。」

「私たちの生活が変わったなどと説明するまでもないと思います。ただ、サンパブロに来て、自分の目で確かめてほしいです。」

モニカさんは、彼女と地域社会の大部分の暮らしが変化したことを認識している。おそらく彼女は、これらの変化の背後に、社会政策、とりわけ保健・教育分野の政策を重点化するという明確な決定があったことは知らないだろう。

Versiones del Plan Nacional/ Secretaría Nacional de Planificación y Desarrollo
Versiones del Plan Nacional/ Secretaría Nacional de Planificación y Desarrollo

モニカさんはおそらく、これらの変化がミレニアム開発目標(MDGs)と結びついていることは知らないかもしれない。MDGsはエクアドルによって採用され、「良き暮らしのための国家計画」という同国のより大きな公共政策戦略の中にこの12年にわたって組み込まれていたのである。

エクアドルは、社会的投資や具体的事業、行動に反映されたこの政治的決定のために、21のMDGsのうち20の目標を単にクリアする以上の指標を示すことができた。「予定よりはるかに早期に、合意された以上の水準で」これを成した、というのは、2015年9月に国連が招集した「持続可能な開発サミット」におけるラファエル・コレア大統領の演説での言葉である。

同様に、エクアドル政府は、唯一達成できなかった目標である「妊婦死亡率の削減」を、今年末までに68%まで達成する目標を立てている。

モニカさんはこうした細かい事情は把握していないが、こうした開発目標の達成が彼女が日々向き合っている人々にとってどういう意味合いを持つのかは経験している。

ラファエル・コレア政権がMDGsに関してこうした成果を示すことができるのは、ひとつのパラドックスであるかのようだ。というのも、これが、2007年の大統領就任スピーチでこれらの目標を手厳しく批判していたのと同じ政権だからだ。そのときコレア氏は、巨大かつ歴史的な社会的・経済的非対称構造が世界にあることに関してまったく議論が行われていないことを批判していた。

この点はさまざまな国際会議の場で、いわゆる「市民革命」政府(コレア大統領が自らの政権を指して使っている用語)のさまざまな政府関係者らによって、幾度も繰り返されてきた。

こうした高官のひとりが、つい最近まで国家計画大臣を務めていたパベル・ミュノス氏である。彼は、MDGsは「北の国々が南の国々のために設定した目標であり、政府であれ、その地域の市民団体や市民であれ、地元の利害関係者と関係のないところで決められた」と発言した記録が残っている。

今日、MDGsに対する批判的な立場は、持続可能な開発目標(SDGs)に対する受容と楽観に取って代っている。

政府代表によると、収入と資産の再分配に関連付けられた行動の明確な位置づけが、これらの目標にはすでに組み込まれているという。事実、「持続可能な開発サミット」で演説したミュノス氏は、SDGsとその目的は「我が国(エクアドル)の開発計画と一致する」と述べている。

実際、SDGsは、貧困削減やジェンダー平等、気候変動など、2013~17年の「良き暮らしのための国家計画」の鍵を握るものとして策定・提供されている問題や目標を組み込んでいる。

元社会開発調整大臣のセシリア・ヴァカ・ジョーンズ氏は、SDGsの17項目のうち9つが社会政策に直接関わっており、MDGsとは異なり、平等と公正の達成に緊密に関係していると説明している。SDGsは、同国の公共政策の基礎となる開発提案により焦点を当てるものになると彼女は理解している。

SDGsに関連してエクアドルの重点項目を決定し、それを2016年度予算に明確に反映することに関して、ヴァカ・ジョーンズ氏は、「包摂と公平の基準を確実に満たす質の良い教育(SDGs第4目標)を実現していくためにあらゆる取り組みを行っていきます。」と語った。

SDGs Goal No. 4
SDGs Goal No. 4

さらに、これまでにも見られたように、中核的な問題は、あらゆる形態の貧困の根絶(SDGs第1目標)であり、現政権にとっての課題でもあり続けるだろう。加えて、SDGs第12目標に設定された持続可能な消費・生産の達成という既に開始された取り組みも継続されるだろう。

政府報道官らは、複数の公的な発言において、エクアドルの憲法と「自然の権利」の認識に従って、環境問題に関連したすべての目標の達成に向けた進展への関心を強く示している。

エクアドルがいかにしてSDGsの達成に向けて前進していくかは興味深い問題であり、その答えは4つの中核的な要素の周辺に探ることができる。それらは、成果を手に入れるために、この10年で実行に移されてきたものだ。

第一に、明確な財政政策。社会協約は財政協約なしに達成不可能であり、エクアドルでこれまでに実行されてきた社会的投資の大部分は、徴税によって可能となったものであった。

この政策は、継続的に市民の意識を高めながら、維持・深化していかなければならない。税の支払いが、この国に依然として存在する格差と不平等を縮小するために政府の政策に反映されるということを、民衆が明確に理解することが肝要だ。

Map of Equador
Map of Equador

第二に、いわゆる「反循環政策」である。経済循環の重要局面では、社会的投資を減らしてはならない。この政策は、社会的投資が増えれば増えるほど、生産性や成長、危機からの脱出の可能性が増すという原則を基礎にしている。

第三に、地域の活動を強化し、歴史的に排除されてきた集団や特に配慮を要する集団と緊密に協力すること。

最後に、この10年間行政を導いてきた基本認識、すなわち、開発の第一の、かつ主要な資源である人間とその能力を支援することである。

SDGsで提示された目的を達成するカギは、サンパブロの住民であるモニカさんのような民衆と、全国の地域社会の能力を支援することにある。(原文へ

※ネルシー・リザラーゾは、プレセンサ・インターナショナル・プレス・エージェンシーの会長。

翻訳=INPS Japan

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スポットライトを浴びる先住民族の語り

北朝鮮の核実験、冷戦時代的な反応の放棄を求める

【バンコクIDN=カリンガ・セネビラトネ】

ラオスの首都ビエンチャンで開かれた「東アジアサミット」で採択された不拡散に関する特別声明のインクも乾かぬうちに、北朝鮮が核実験の成功を発表した。こうして北朝鮮の核問題は、軍事化が一層強まっている域内の現実に対して関係諸国の関心を引き寄せる結果となった。

今回の核実験は、東アジアサミットに出席した首脳らが北朝鮮に対して核・ミサイルの放棄を求める声明を採択してから1日も経たないうちに行われた。米国、中国、ロシア、日本を構成国に含むこの地域機関(加盟18カ国)が、議長声明以外で特定の問題に焦点を絞った声明を出したのは初めてのことであった。

UNSC/ UN photo
UNSC/ UN photo

声明は、「(北朝鮮による)1月の核実験と2月の長距離ミサイル発射を明確に非難した」今年3月2日の国連安保理決議第2270号を東アジアサミットは「完全に支持」し、「安保理の関連決議に違反し完全に無視する形で朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)がその後も繰り返し弾道ミサイルを発射していることへの深い憂慮を表明」する、と述べていた。

北朝鮮は今年1月6日に3年ぶり4回目の核実験を行い、2月7日には、同国が人工衛星を軌道に乗せたと主張する長距離ロケット発射を行った。

8月24日には潜水艦からの弾道ミサイル発射に成功し、9月5日には約1000キロ飛翔した弾道ミサイル3発を発射し、いずれも日本の排他的経済水域内に到達した。

9月9日に北朝鮮の核実験場近くで探知された震度の浅いマグニチュード5.3の地震は5回目の核実験を示しており、北朝鮮もそのことを認めている。

韓国の朴槿恵大統領は、「東アジアサミットの声明を拒絶して北朝鮮が核実験を行ったことは、金正恩体制の無謀な狂気を証明するものだ」と、ソウルで政府高官と緊急の安全保障会議を開催するためにビエンチャンから急遽帰国後、メディアに対して語った。

「金正恩政権が核実験を通じて得るものは、国際社会によるさらに強い制裁と孤立だけであり、自滅の道を招くだろう。」と朴大統領は警告した。

朴大統領は、韓国政府は国連安保理や関係諸国と協力して強力な追加制裁を追求する一方、核の野望を北朝鮮に放棄させるためにあらゆる手段を採っていく、と語った。

報道によれば、韓国紙の多くが北朝鮮の指導者金正恩を「核のマニア」と呼び、韓国から1990年代に撤去された米国の戦術核を再配備するよう同国を説得すべきだと論じているという。ある新聞は、北朝鮮への石油供給を断つよう中国に求めるべきだとまで示唆しているという。これは、北朝鮮に経済的混乱と飢餓をもたらしかねない。

しかし、そうした極端な措置に対して警告を発し、地域を軍事化することで北朝鮮の「軍事的脅威」とされるものに対抗しようとする米韓両政府の対応に疑問を呈する向きもある。

韓国の左派日刊紙『ハンギョレ』は、北朝鮮の核の脅威に対する韓国政府の対応は、「冷戦思考」に支配されていると論じた。同紙は、悪化する危機への従来型アプローチの失敗を、繰り返される実験は示していると指摘した。

『ハンギョレ』は「北朝鮮に対する怒りを表明し、圧力をかけ続けることでは、解決にならない。冷戦型の対立を超えなければならない。」と指導者らに警告している。「北朝鮮の自滅が近いという非現実的な理論に希望を託すのをやめるべきだ。かわりに、新しい、包括的な戦略が求められる。」と論じている。

今回の実験は、弾頭を小型化したミサイルへの搭載を可能にすることによって核戦争を開始する能力を強化させたと評価されるものの、アジア諸国の多くが、核によって注目を集めようとの北朝鮮のやり方にあまり関心を示していない。他方で、こうした実験に通常は反応を見せる4大国は、よく準備された同調的な反応を見せた。韓国は北の指導者を「マニア的な無謀」だと非難し、中国は実験に「断固として反対」し、日本は「強い抗議」を表明し、米国は「重大な帰結」を招くと警告した。

核大国への道を歩んでいるかもしれない北朝鮮の最高指導者金正恩は、韓国と米国に対して「朝鮮民主主義人民共和国の尊厳と安全を棄損するようなことは慎むべきだ」と警告した。

ミサイル・核実験のタイミングはつねに、この4大国の指導者からの反応が確実であり北朝鮮の体制に注目を集められるように、大きな国際イベントに合わせたものとなっている。これは、北朝鮮が韓国や米国の挑発を理由として挙げられるような余地を国際的なメディアに与えている。

8月22日から9月2日にかけて、毎年開催されている軍事演習「ウルチ・フリーダム・ガーディアン」が北朝鮮沖で開かれた。2万5000人の米兵が、韓国軍、豪州や日本といった他の同盟国の軍隊に加わった。

この演習では、北朝鮮の核の脅威を想定して、先制攻撃を行う内容も含まれていた。北朝鮮政府は国連事務総長への書簡で、こうした演習は北に対する「先制的核戦争」のリハーサルだとして非難した。

北朝鮮は、高高度で固形燃料を使用した潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射でこれに応えた。500キロメートル以上を飛翔し、日本の防空識別圏内に落下した。通常の角度で発射されたならば、1000キロ以上飛ぶ可能性もあった。

「韓米研究所」のトン・キム研究員は『コリア・タイムズ』紙で、「軍事演習は、和平プロセスを通じた脅威の削減が行われない中では、抑止力を向上させるものとして必要なものだ。しかし、抑止力は、朝鮮問題の平和的解決をもたらすためには十分ではない。毎年春と夏の年次演習は、緊張の激化をもたらしている」と指摘している。

北朝鮮のSLBM発射は、米国が2017年末までに予定している韓国への「終末高高度防衛」(THAAD)システムの配備に関して懸念を強める結果となった。中ロ両国は配備に反対し、韓国内にも批判的な勢力がある。

キム氏は、「中国は、韓国政府の決定に対応して韓国の利益を抑制する具体的な措置を採り始めている。韓国の地域住民は、自らの居住地域にミサイル部隊が配備されることに強く反対している。多くの野党政治家が、配備に関して国会で見直し論議を行うことを要求している」と、「あらたなゲームを引っ張る北朝鮮」と題した記事で指摘している。

コリア・タイムズ』はその論説で、もし中国が韓国へのTHAAD配備を望まないのならば、「北朝鮮の核の野望を抑えるために積極的に動くべきだ」と論じた。この韓国の英字紙はまた、オバマ政権に対して、「北朝鮮対応に関して腰が重く、北朝鮮政府の行動を変えることができなかった。」として非難した。

Thaad missile and launcher/ National Missile Defense, Public Domain
Thaad missile and launcher/ National Missile Defense, Public Domain

「北朝鮮が9月9日に行った核実験は、米国が韓国にTHAADの配備を計画していることを考えれば、それほど驚くべきことではない。」

「言い換えれば、対ミサイル防衛システムであるTHAADの配備がほぼ確定している中で、北朝鮮が好ましくない外交政策の継続を決めたということになる。」と『チャイナ・デイリー』で論じたのは、ワン・ジャンシェン氏である。中国社会科学院でアジア太平洋戦略の研究を進めている同氏は、北朝鮮の核実験は通常、米韓の軍事的な動きに続いて行われていると指摘した。

「隣国における核の脅威の高まりに直面して中国が取れる戦略的選択の幅は、地政学的な複雑さゆえに限られたものになる。また非核化プロセスは、完成までに5年から10年の月日を要するかもしれない。」とワン氏は語った。

「とりわけ、米韓両政府は、朝鮮半島へのTHAAD配備の決定を真剣に再考し、北朝鮮に誤った道を取らせたその他の戦略的な過ちを見直してみるべきだ」とワン氏は論じた。

ワン氏はまた、「今日、悪循環に陥っており、1953年の休戦協定を和平条約に作り直す貴重な機会も潰えたことから、米韓両国が採用してきた朝鮮半島政策は、平和の永続にとって有益であったとは言えません。」と警告した。(原文へ

翻訳=INPS Japan

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国連、レソトの貧困撲滅支援強化へ

【マセルIDN=マジャラ・モルーペ】

国連は「天空の王国(Kingdom in the Sky)」と呼ばれるレソトで、2015年9月25日に国連加盟国が採択した17項目の目標から成る「2030アジェンダ」を達成するために、今後15年で持続可能な開発目標(SDGs)、とりわけその第1目標(あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ)の実現に向けた支援を進めている。

国連ボランティア(コミュニケーション担当)のシルビア・ティーセツォ・カベレ氏はIDNの取材に対して、「国連がSDGsに関して今年特に重視していることは、たとえば、アジェンダ2030の実行に向けた各国及び国連システムのキャパシティ強化です。」と語った。

SDGs Goal No. 1
SDGs Goal No. 1

カベレ氏はまた、「私たちは、レソト政府がミレニアム開発目標(MDGs)に関する最終報告書を仕上げるのを支援していきます。これは、これまでの教訓と振り返るとともに、SDGsを実現するためにそれらの教訓をどのように活かしていくべきかについても反映したものになるでしょう。」と説明した。

2015年のレソトに関する「国連国別報告」によると、同国は最近、「中所得国」(MIC)に格上げになったが、依然として貧困と格差の問題は解消されていない。つまり、人口の57.1%は貧困層で、とくに農村部に集中している。

「レソトは、バソト族、とりわけ若者を貧困から引き上げるために、包摂的な成長と強力な民間部門の参加を必要としています。というのも、レソトの人口の半分以上は24才以下だからです。」とカペレ氏は語った。バソト族はバントゥー系の民族集団に属し、その先祖は、5世紀頃から南部アフリカに居住している。

国連諸機関は、国々をSDGsに取り組ませ、それを各国の計画・政策の主流に取り込み、実行させるうえで極めて重要な枠割を果たしている。国連システムは、各国による「持続可能な開発のための2030アジェンダ」履行を支援するために、「主流化・加速・政策支援」(MAPs)と呼ばれる指導ツールを開発している。

View of Roma Village; Lesotho/ By Martin Schärli – Own work, CC BY-SA 3.0

国連は、MAPsの策定に続いて、レソトのパートナー諸団体との協議に向けた「SDGsロードマップ」を起草した。

「政府との協議は、貧困や保健といった多分野にわたる問題に対処するための既存のメカニズムの強化に焦点を当てることになります。政府の行動計画を支援するためには、証拠に基づいたさらなる勧告や、介入に向けた詳細なコスト計算が必要となるかもしれません。」と、カベレ氏は付け加えた。

国連は、欧州連合(EU)やレソト統計局、開発計画省との協力の下、持続可能な開発プロジェクトにむけたデータの策定も目指している。

こうした介入は、質の高いデータの利用促進や、利害関係者間の調整、リーダーシップの強化、開発データの普及・利用を促進することによって、国家戦略開発計画(NSDP)やSDGsに体現された国家的、地域的、世界的目標の実現に貢献することになるだろう。

カベレ氏は、「国連はNSDPに沿って、持続可能な農業の成長、食料安全保障、エネルギーへのアクセス、気候変動への対応力を強化するための支援をレソトの民衆や政府に対して行う一方、天然資源の持続可能な利用を確保し、環境保護も推進しています。」と強調した。

Sylvia Tiisetso Khabele, UN Volunteer in Communications at United Nations, Office of the Resident Coordinator.
Sylvia Tiisetso Khabele, UN Volunteer in Communications at United Nations, Office of the Resident Coordinator.

「レソトは、貧困と飢餓を半分にするというMDGsの目標達成においてかなりの後れを取りました。この国の地理と社会経済的条件を考えれば、農業や環境、天然資源管理は、レソトが今後SDGsを達成できるかという問題において重要な役割を果たすことになるでしょう。残念ながら、これまでのところ関連部門の全体的な成果は期待に見合うものではなく、貧困や慢性的な食糧不足を悪化させ、多くの国民の健康を害しています。」

今日まで、かなり多くの進歩的な農民が、様々な国連機関の支援を得て、中小規模の農業ビジネスベンチャーを立ち上げている。「これらのビジネスは主に園芸(温室栽培)関係で、小規模な畜産(家禽類、豚など)はあまり着目されていません。」

カベレ氏はさらに続けて、「国連諸機関は、レソト国民の中で最も脆弱な立場にある人々が多面的な対応力を身に付けることができるように、取り組みを続けています。2014年だけでも、国連は、『国連食料・資産交換プログラム』を通じて、2万5000人以上に対し栄養補強食品を提供しました。これらの能力強化プログラムには、食料危機に対する緊急早期警戒、対応準備、緊急対応に向けた主要機関の能力強化のための技術支援も伴っています。」と語った。

国連はまた、補助金の受給者の間で家庭菜園や栄養教育を促進することを通じて、社会的保護と農業の統合に向けても取り組みを進めている。

カベレ氏は、環境・天然資源管理が地域住民の生活を改善し維持するうえで重要であることを強調し、「国連は、持続可能な土地管理や、保全を基盤とした農業生産技術/実践、再生可能エネルギー技術の応用に関して地域社会を動員し訓練を提供しています。」と語った。

「レソトの若者失業の経済的影響、2012年11月」によると、2010年におけるレソトの若者失業率は国際労働機関(ILO)の推計で38.0%であった。

他方で、開発計画省のムフォ・モシリ広報官は、「とりわけ貧困撲滅に向けてSDGsを実行するに際して拠り所となるロードマップはすでに存在しています。」と指摘したうえで、「議会に対する説明も既に終えており、国会議員からも高く評価されています。これからすべきことは、実際に地域に出向いて、SDGsとそれに何が伴っているかについて人々の理解を広めていくことです。」と語った。

レソト国連開発支援計画2013-17」によれば、開発計画省は、政府の優先順位とすり合わせながら国連の活動を導くために設置される「国連国家プログラム運営委員会」の構成メンバーになる。

この点で、この文書は、レソト政府が、国連諸機関が支援しているプログラムの定期的なレビューや関連する計画会合に同機関を招く予定だと述べている。

レソトでは貧困が蔓延しており、農村部がもっとも打撃をこうむっている。というのも、雨水に頼った農業が主流であり、生き延びるためのその他の手段を持ち合わせていないからだ。

国連が作成した「国連諸機関が一体となった任務遂行(Delivering as One)」ツールキットによれば、「国連は、証拠に基づく政策助言を行い、イノベーションと国際的な実践を共有することによって、レソトのかかえる開発上の難題解決の支援を行う。」さらに、「国連は、レソト政府が、開発アジェンダに取り組み、国家能力を強化し、さまざまな利害関係者をまとめて多分野に亘るプロセスを促進し政策やプログラムを成功に導く支援を継続していく。」と述べられている。(原文へ

ドイツ語

翻訳=INPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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相馬雪香さんとFAWA(アジア太平洋女性連盟)

【東京IDN=石田尊昭】

アジア太平洋女性連盟(Federation of Asia-Pacific Women’s Associations)―略して「FAWA」と言います。

尾崎行雄の三女・相馬雪香さんは、1950年、スイスで開催された国際会議に出席。そこで、フィリピンの上院議員ペクソン女史と出会います。かつて日本がフィリピンを占領していた頃、まだ若い娘さんだった女史は、日本を憎み、戦後も日本人を大変嫌っていたそうです。しかし、その国際会議で出会った相馬さんの言動に触れ、「日本の女性は変わった! 日本は変わる!」と感動されたそうです。

FAWA Logo
FAWA Logo

そして、1959年、相馬さんと女史が中心となって設立したのが「アジア婦人団体連盟」、現在の「アジア太平洋女性連盟」=FAWAです。アジアの女性の連帯を通じ、アジアひいては世界の平和の実現、女性の福祉向上を目的としています。

設立後は、各国・地域で、FAWA国際会議を2年ごとに持ち回りで開催しています。相馬さんは、韓国、台湾、グアム、インドネシア、シンガポール、フィリピンなどで開催された同会議に団長として出席し、そこでの研究成果を取りまとめるなどしました。

FAWA国際会議は、日本では、1970年(神奈川)、92年(大阪)、2007年(東京)と開催されています。特に2007年(相馬さんが亡くなる前年)、東京で開催された会議では、アジアにとどまらず世界73カ国の代表と、広く一般市民も参加しました。相馬さんは、そこで大変力強いスピーチを行ない、参加者に大きな感動を与えました。

この時、会議に全面協力し、成功に導いたのが「NPO法人一冊の会」(大槻明子会長)です。相馬さんは当時、同団体の最高顧問を務めていました。以後、台湾(2010年)、グアム(2012年)、韓国(2014年)で開催された会議では、相馬さんの遺志を継ぎ、「一冊の会」が日本代表団を務めました。そして、今年9月末から10月にかけてシンガポールで開催されるFAWA国際会議にも、「一冊の会」が日本代表として参加します。

「憲政の父」と呼ばれた政治家・尾崎行雄。その精神を継ぎ、平和のために行動した相馬雪香。さらにその精神を継いだ様々な団体―「NPO法人咢堂香風」、「尾崎財団・咢堂塾」、「尾崎を全国に発信する会」、「NPO法人難民を助ける会」、「国際IC日本協会」等々が、それぞれの形で平和に貢献しています。

「平和、平和って言うけど、誰でも、最初から大きなことはできないの。できないことをウダウダ言ったってしょうがない。とにかく、できることから始める。自分から動く。そう、だから……身近なことでいいんですよ。少しずつでいいんです。あなたにできる平和から始めなさい!」(『平和活動家・相馬雪香さんの50の言葉』より)

相馬さんの遺志を継いだ多くの仲間たちが、相馬さんの言葉を胸に、「できることから始めています。」(原文へ

Yukika Sohma/ Ozaki Yukio Memorial Foundation
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INPS Japan

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「2030アジェンダ」達成へ向け若者に目を向ける国連

【ニューヨークIDN=J・ナストラニス】

国連事務総長としての2期目の任期を2016年12月31日に終える潘基文氏が、世界の若者の関心と意欲に焦点を当てる取り組みを強化している。過去のパターンを打破し、世界をより持続的な将来に向けた軌道に乗せるための取り組みを世界的にリードするよう、若者らに促している。

潘氏は、「深刻な貧困が広がる一方でこれ見よがしにひけらかされている富、飢餓が拡大する一方で横行している食材廃棄、豊かな天然資源と地球環境を蝕む企業活動…若者らは世界に蔓延するこうした悲劇的な矛盾に直接的に影響を受けています。」と、「国際青少年デー」に寄せたメッセージで述べた。

世界における青少年層の男女は現在12億人を数え、若者世代としては史上最大の規模になっているが、彼らは、「持続可能な開発に向けた2030アジェンダ」の中核を占める諸問題に解決策を提供できる世代だ。

「より健康で、安全で、公正な未来をめざす15年計画の初めの年において、国際社会は、財やサービスの生産・消費を変革することで、すでに限界を超えつつある生態系へのさらなる負担をかけることなく世界の貧しい人々の基本的ニーズと願望を満たす主体として、若者の積極的な関与に期待しています。」と潘事務総長は語った。

「青少年は従来から時代の最先端を行く存在であり、今日の若者は、これまでのいかなる世代よりも多くの情報を手にしています。彼らのダイナミズム、創造性、理想主義が合わされば、より持続可能な産業を作り出すよう要求しその手助けをする態度を形成していくことが可能です。」と潘事務総長は語った。

潘事務総長はまた、「若者はすでに、世界の生産・分配・消費に影響を及ぼし、より持続可能な製品やサービスを創出して『グリーン起業』を促進しています。」と指摘した。

若者らは、意識の高い消費者として、より公正で、平等で、持続可能な購入パターンへの移行の先頭に立っている。若者らは、リサイクルや再使用、廃棄物抑制の強力かつ効果的な主唱者であり、省エネ経済の形成に向けた技術的イノベーションをリードしている。

潘事務総長は、「私たちが若者に投資すれば、彼らは、新しいマーケットやまともな仕事、フェアトレード、持続可能な住宅や交通・観光、そして、地球と人間に裨益するより多くの機会に貢献することが可能となります。」と指摘したうえで、「国連が、第12目標(持続可能な消費・生産パターン)を含む持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けて貢献できる若者のリーダーシップ支援に積極的に関与していることを誇りに思っています。」と語った。

SDGs Goal No. 12
SDGs Goal No. 12

「私は、すべての若者の対して、SDGsを前進させ、それぞれの政府に行動を要求するよう求めたい。私の青少年問題特使(アフマド・アルヘンダウィ氏)は、国連全体で実行されている様々なキャンペーンと皆さん方とを喜んでつないでいくことでしょう。」と語った。

潘事務総長は他の人々に対して、進歩に向けたこのグローバルな動きに加わり、若者らが世界で永続的な変化をもたらすことができるように、必要な資源や支援、スペースを提供してエンパワーすることを強く訴えた。

国連教育科学文化機構(ユネスコ)のイリナ・ボコヴァ事務局長は「国際青少年デー」に寄せたメッセージの中で、「若者は積極的な変化をもたらす強力な主体であり、2030アジェンダを前進させるために不可欠な存在です。」と語った。

次期国連事務総長のポストに立候補しているボコヴァ事務局長は、「よりよい明日を希望するだけでは不十分です。今こそ私たちは行動しなくてはなりません。変革は既に起こっており、数多くの市民らが、私たちの生産・消費・行動・コミュニケーションのあり様を変え始めています。」と語った。

ボコヴァ事務局長は、「#YouthofUNESCO」の「持続可能な消費主唱者」であるローレン・シンガー氏のような若者らが、廃棄物ゼロのライフスタイルに至る道筋を指し示している、と話す。シンガー氏は、この4年間で自身が生み出したゴミをたったひとつのビンに詰め込むことができるという。

「これは、この年のテーマである『2030への道:貧困を撲滅し、持続可能な生産・消費を達成する』に対してインスピレーションを与えるものです。こうした取り組みには枚挙に暇がなく、新しい人間主義、貧困や周縁化、絶望と闘う新しい形態の連帯やシティズンシップを具体化するものです。」とボコヴァ事務局長は強調した。

ボコヴァ事務局長はさらに、「楽観主義と自信は、行く先の課題を過小評価することを意味しません。今日の若者の多くは最貧国で暮らしており、紛争や貧困の最も重い負担を背負っています。」と指摘したうえで、「若者をマイナーな立場に追いやっているかぎり、持続可能な開発の実現はありえません。私は、すべての加盟国とユネスコのパートナーに対して、彼らの取組みを支え、彼らに声を与え、彼らに成長を認め、私たちが今日築き上げようとしている尊厳ある未来を共に形作っていくことを呼びかけたい。」と語った。(原文へ

翻訳=INPS Japan

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【アスタナIDN=ラメシュ・ジャウラ、浅霧勝浩】

核軍縮の達成方法に関する国家間の見解の相違が大きくなる中、カザフスタンのような国が、共通の基盤と包摂的な対話に向けた道をリードしなくてはならない。そうしたリーダーシップこそが、私たちの世界を真に安全なものにしていくために緊急に求められている、と国連の潘基文事務総長が、「核兵器のない世界の構築」を目指す核軍縮国際会議に寄せた声明の中で各国に訴えた。

ヌルスルタン・ナザルバエフ大統領は、参加者を歓迎して、なぜ同国が核軍縮についてリーダーシップを取っているのかについて説明した。「1991年8月29日は、わが国にとっても世界全体にとっても歴史的に重要な意義を持つ日です。私たちは25年前、それまでほぼ40年にわたってこの大地と国民を常に苦しめてきた軍事主義がもたらした最も邪悪な実験(=核実験)に、法的な終止符を打ちました。また国際社会は、それ以前の数十年間にわたって、核兵器削減プロセスや核実験モラトリアムを通じて、核の脅威を引き下げる努力を続けてきました。」

ナザルバエフ大統領はさらに、「カザフスタンは、当時世界最大のセミパラチンスク核実験場を閉鎖する法令を採択することで『ゴルディアスの結び目』(核兵器依存という難題)を断ち切る最初の国になりました。この決定の後、すべての主要な核保有国の実験場は利用されなくなりましたが、未だに閉鎖はされていません。カザフスタンは核実験場の閉鎖に踏み切った初めての国になりました。これは我が国の国民の意志の力で実現したものです。従ってこの出来事は、地球全体にとっても重要な先例となっています。」と語った。

Semipalatinsk former nuclear weapon test site/ photo by Katsuhiro Asagiri
Semipalatinsk former nuclear weapon test site/ photo by Katsuhiro Asagiri

8月29日の国際会議は、カザフスタン共和国上院議会、同国外務省、核軍縮・不拡散議員連盟(PNND)の共催で首都アスタナの「独立宮殿」で開催された。

世界50カ国から、議員、宗教指導者、学者、科学者、医学関係者、法律家、青年、その他市民社会の代表らが会議に集った。国際機関の代表には、マイケル・モラー国連ジュネーブ軍縮会議事務局長、ラッシーナ・ゼルボ包括的核実験禁止条約機構準備委員会(CTBTO)事務局長、ジャヤンタ・ダナパラパグウォッシュ会議議長が含まれる。

他にも、PNND共同議長で列国議会同盟のセイバー・ホサイン・チョウドリー議長、汎アフリカ議会連合のロジャー・ヌコド・ダン会長、世界宗教会議のアブドゥル・マリク・ムジャヒド議長、創価学会インタナショナル(SGI)の石渡一夫平和運動局長も参加した。

潘事務総長は、「カザフスタンは、この会議を主催することで、『今一度』核兵器なき世界の実現を追及する同国のコミットメントを示しました。」と語った。

潘事務総長はまた、「カザフスタンは中央アジア非核兵器地帯の創設に主導的な枠割を果たしました。また、国連総会における「核兵器なき世界の達成に関する普遍的宣言」に関する決議案(70/57号)採択の原動力となりました。ナザルバエフ大統領は、核軍縮を世界の最重要課題とするよう呼びかけてきました。」と語った。

間もなく任期を終える潘事務総長の発言は的を射たものだった。この会議で採択された「アスタナ・ビジョン:放射線に汚染された霞から非核兵器世界へ」と題された宣言は、潘事務総長が熱心に掲げてきた国連の未完の課題を追求するうえでのカザフスタンとナザルバエフ大統領の歴史的役割を認めている。

宣言は、セミパラチンスク核実験場の閉鎖は「世界の軍縮の歴史の中で初めてのこと」だと述べた。

カザフスタン東部にあるこの実験場でソ連が行った456回の核爆発実験は、現在および将来の世代に対して、人間の健康や自然環境に壊滅的な悪影響を及ぼした。

太平洋、アジア、北アフリカ、北米を含めた世界各地の核実験の遺産や、広島・長崎への原爆投下の経験、事故・誤算・故意による核兵器使用のリスクは、核兵器廃絶をグローバルな重要課題に押し上げてきた。

Map of Kazakhstan
Map of Kazakhstan

宣言はまた、「我々は、世界第4位の核戦力を自発的に放棄し、包括的核実験禁止条約(CTBT)に加わり、中央アジア非核兵器地帯を創設し、核実験の危険と長期的な帰結に関して世界を教育するATOMプロジェクトを立ち上げ、国連を動かして8月29日を『核実験に反対する国際デー』に設定し、2015年に国連によって採択された『核兵器なき世界に向けた普遍的宣言』を主導し、戦争の惨禍を失くすためのマニフェスト『世界:21世紀』を促進したことに関して、ナザルバエフ大統領とカザフスタン国民のリーダーシップを賞賛する。」と述べた。

会議の参加者らは、非核世界の実現は21世紀の人類の主要な目標であるべきであり、この目標は国連創立100周年にあたる2045年までに達成すべきであるという、マニフェストで表明された願望を支持した。

宣言は、世界の指導者らが、核保安サミットやその他一連の国際的行動を通じて核兵器やその構成要素がテロリストの手に落ちることを防ぐ措置を講じたことを称賛した。そして、「核軍縮に対しても同様の高い優先順位を与える点でナザルバエフ大統領に続くよう」世界の指導者らに要請した。

宣言は、カザフスタンが国連安保理非常任理事国(2017~18)に選出されたことを歓迎した。「カザフスタンが他の安保理理事国と緊密に協力して、核拡散を予防し、非核世界の平和と安全を前進させるであろうと信頼している」と宣言は強調した。

宣言は、今会議においてナザルバエフ大統領が行った、核軍縮への顕著な貢献と核なき世界の達成に関する国際的な賞を創設するとの提案と、2016年にアスタナ平和サミットを開催するとの発表を支持した。

宣言は、諸政府に対して、とりわけ次のことを呼びかけた。

Closing Session/ K.Asagiri of INPS Japan
Closing Session/ K.Asagiri of INPS Japan

1.この会議が、セミパラチンスク核実験場閉鎖から25年、CTBT署名開放から20年という象徴的な年に開かれたことに鑑みて、CTBTを署名・批准していない国、とりわけ核保有国は、速やかにCTBTを署名・批准すること。

2.2010年NPT運用検討会議で採択された行動計画と、国際司法裁判所が1996年に確認した完全核軍縮に向けた交渉を行う普遍的義務に従って、交渉と実質的議論を開始すること。

3.1995年のNPT再検討・延長会議で合意されたように、中東非核・非大量破壊兵器地帯を創設すること。国連事務総長はこの任務を前進させること。北東アジアや欧州、北極においてさらに非核兵器地帯を創設すること。

4.すべての核兵器を高度な作戦準備態勢から外し、先制不使用政策を採用し、核兵器を使用するとの威嚇を控えることによって、核兵器使用のリスクを低減すること。

5.核兵器ゼロを達成するために、条約上・慣習法上の義務を完全に履行すること。

6.核兵器を禁止・廃絶するための多国間交渉を2017年に開始すること。

7.核実験や人口稠密地帯への核使用の禁止を含めた、核軍縮に関する中間的措置を国連安保理が支持すべきこと。

8.「核軍縮検証に向けた国際パートナーシップ」への参加を通じたものを含め、グローバルな核軍縮を検証・執行するための方法とメカニズムをさらに発展させること。

9.安全保障ドクトリンにおいて核抑止に依存することをやめ、そのかわりに、外交や法、地域メカニズム、国連、その他の平和的方法を通じた国際紛争の解決を目指すこと。

10.できるだけ早く、しかし確実に国連創設100周年までには核兵器を完全廃絶することを目指して、すべての核兵器国が核兵器備蓄を大幅に削減すること。

国際会議においてさまざまな分野間での協力が行われることは、核軍縮達成に向けたグローバルな運動を構築する基盤を提供する、と宣言は述べる。

Astana Conference: Building a Nuclear Weapon Free World
Astana Conference: Building a Nuclear Weapon Free World

会議の参加者らは、人類の将来を深く憂慮し、核軍縮分野におけるカザフスタンの例に刺激を受けながら、遠い将来のことではなく、「私たちが生きている間に核兵器なき世界の平和と安全を達成する可能性と必要性を確認」した。

しかし、これには政治的な決断が必要だ。潘事務総長がメッセージの中で述べたように、「政治的意志が、私たちの世界を支配している高価かつ分裂的で、危険な敵対関係を打ち消すために不可欠であり、それには私たちの共有された将来に向けたグローバルな連帯の感覚が伴わねばなりません。私は、核兵器なき世界というビジョンの実現に向けて前進するための政治的意志を呼び起こすことを、すべての加盟国に求めます。」(原文へFBポスト

翻訳=INPS Japan

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Filmed by Katsuhiro Asagiri, President of INPS Japan
Filmed by Katsuhiro Asagiri, President of INPS Japan

|チリ|より公正な社会を求める木曜日

【サンチアゴIDN=ピア・フィグエロア】

チリの学生らは2011年以来、自由で良質な教育制度を要求して、毎週木曜に街頭に繰り出してきた。

こうした学生たちに、ラテンアメリカ全体で最も高い学費に悩まされている親たちや、教育キャリアの適切な評価を求める教員らも、徐々に抗議の輪に加わるようになってきている。

そして、事実上この5年間、毎週木曜日になると、こうしたデモ隊の抗議活動は放水砲や催涙ガスを用いた警察当局による弾圧を受けて、それが不幸な事故につながってきた。

Michele Bachelet, Presidente of Chile speaks during Special Session of the Human Rights Council. 29 March 2017. UN Photo / Jean-Marc Ferré
Michele Bachelet, Presidente of Chile speaks during Special Session of the Human Rights Council. 29 March 2017. UN Photo / Jean-Marc Ferré

現政権は、民衆を満足させる適切な対話を打ち立てられないまま、主要な教育改革の一環と見なされるいくつかの立法を行ってきた。ミシェル・バチェレ大統領はこれを「歴史的な」変革だと見なし、税制改革や年金制度改革、選挙制度改革、同性パートナシップ制度・中絶の権利などの市民的自由の領域における改革と並んで、自らの「遺産」のひとつと考えているようだ。

遠目から見ると、それは意味のある行動のパッケージのようにみえる。それは、チリの教育・経済・政治の基礎を変革してアウグスト・ピノチェト時代からの古いシステムを廃棄することをめざす立法提案である。他の取組みは、南米地域で最も保守的な国のひとつであるチリを近代化することを目指した社会変化を前進させようとしている。

しかし、おそらくは、民衆からの継続的な要求に耳を貸さず、密室で提案をまとめようとする政権のスタイルと形態のために、これらの提案のいずれも、合意や前進、よりよい将来といった感覚を民衆にもたらしていない。それどころか逆に、内閣支持率や大統領への支持率は一貫して低落傾向にある。バチェレ大統領への支持率は、チリ政府始まって以来の低率となっている。

バチェレ大統領が提案し2014年9月に施行された租税改革は、主に、教育制度の財源に変更を加えることを目的としたものであった。チリ政府は、国民総生産の3%にあたる83億米ドル分の増税を2018年までに行い、そのうち50億ドルを教育に割り当てようとしたのである。

しかし、法人税が増税され、個人向けの税が減税され、アルコール・砂糖入り飲料・大気汚染をもたらす乗用車の排出に対する付加税が創設され、租税回避に対処するメカニズムが作られたものの、経済はそれ以降減速し勢いが失われた。

今年、2016年10月、チリでは地方議員や首長を選ぶ選挙が行われる。これは各政党勢力を把握するための指標となり、改革後初の国政選挙が行われる2017年に向けての試金石となる。

これらの選挙では、下院議員の数が120人から155人に、上院議員の数が38人から50人に増員される。またこの選挙から候補者の少なくとも4割が女性であることが要件とされ、議会におけるジェンダー平等の強化が目指される。

おそらく、これらの変化は、ピノチェト独裁時代に形成された規則や標準に則って依然として統治されている国会ではなかなか声を聴いてもらうことができなかった新しい政治集団や院外勢力の強化に余地を与えることになるだろう。

「暗い時代」からチリが保持しつづけてきた全ての法的実情を打破することは、文化的保守主義との闘いでもあった。同性愛を犯罪化する法が廃止されたのは1999年のことであり、同性間のシビル・ユニオンが認められたのはようやく2015年になってのことである。

LGBT parade in front of La Moneda, Santiago de Chile/ By CiudadanoGay – Picasa, CC BY 3.0

しかし、いわゆるシビル・ユニオン合意(AUC)では、数年前に類似の法律を通過させた隣国のアルゼンチンウルグアイに後れを取ることになった。というのも、AUCは、法的な意味で資産を共有し、遺産や年金を受け取り、医療制度の利益を共有することをカップルに認める一方で、養子をとる権利を認めていないからだ。

市民的自由の領域では、中絶が今年に入ってようやく合法化された。ただし中絶が認められるのは、母親の生命に危険が及ぶ場合やレイプによる妊娠、そして、胎児の生存可能性がない場合の3つの場合に限られている。チリが、中絶がいかなる状況においても禁止され、タブーであり続けてきた世界でも数少ない国であったことを考えると、これは前進といえる。しかし、女性運動が中絶の問題を自らの身体に関する自己決定権であるとして要求しているレベルにははるかに及ばないものだ。

これらすべての改革によって、チリは国連の持続可能な開発目標(SDGs)に向かって前進していると言うこともできよう。また実際、そうなのだろう。

たしかに、チリはクリーンエネルギー源(太陽光、風力、地熱、小規模水力など)に向けてエネルギー構成を多様化し、エネルギーの効率化も進めている。イノベーション、海水の脱塩化、天然資源の効率的利用、砂漠化や気候変動への対応も、環境への高まる意識という文脈の中で遂行されてはいる。しかし、これだけでは不十分だ。

今日、チリの人々は社会変革を強く望んでおり、教育制度の大幅な変革をもって今の時代に区切りをつけたいと考えている。教育制度は、より平等な社会を目指すうえで基盤となるものと理解されているからだ。

SDGs Goal No.4
SDGs Goal No.4

教師からの要求の線に沿った教育キャリアが提案されている。それは、教師の声に耳を傾けることもなく、恣意的に教師を制限しようとする教育省によって課せられたやり方とは異なるものだ。教師らは、新たな教育キャリアに異議を申し立てる全国的な動きを組織し、大規模抗議の証として全土の学校で警鐘を鳴らし続けている。

チリの人々は、政府に対して、あらゆる社会階層のなかで生み出された社会的不平等と不満に終止符を打つよう望んでいる。

経済協力開発機構(OECD)が2015年11月末に「チリ経済調査2015」を発表したことはほとんど知られていない。この調査報告書にはチリが世界で最も不平等な国々に含まれることを示した、収入分配に関する最新の調査結果も含まれている。2006~11年にかけてのジニ係数は0.503であり、トルコやメキシコに並んで悪かった。ジニ係数は、一国の不平等さを測定する際に最もよく使われる指標である。

このOECD報告書は、最富裕層10%が最貧層10%の26.5倍の富を有し、OECD加盟国平均の100%を超えているチリに対し、より包摂的な経済成長を目指すように求めている。

これは受け容れがたい貧富の格差であり、彼らが毎週木曜にそうしているように、教育制度や年金制度に抗議するために民衆が街頭に繰り出す時、彼らが本当に訴えているのは、全ての人々が発展する機会を持ち、進歩が全ての人々の利益になるような、包摂的で公正な社会なのである。(原文へ

※ピア・フィグエロア氏は、プレセンサ・インターナショナル・プレス・サービスの共同代表。生涯の人文主義者、多くの論文・書籍の著者。

翻訳=INPS Japan

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【東京IDN=ラメシュ・ジャウラ/浅霧勝浩】

鈴木健一氏は、今年5月に開催されたG7伊勢志摩サミットに際して日本の安倍晋三首相がカナダ、フランス、ドイツ、イタリア、英国、米国、欧州連合の首脳を出迎えた伊勢神宮がある伊勢市の市長である。伊勢神宮は日本で最も神聖な神社のひとつであり、天照大神を祀っている。

東京から約460キロ西に位置する伊勢市はまた、かつて衆議院議員を63年(1890年~1953年)務め、「憲政の神様」「日本の議会制民主主義の父」として今日なお尊敬を集めている故尾崎行雄(雅号〈ペンネーム〉は咢堂)氏の選挙区でもあった場所である。

尾崎咢堂記念館は、尾崎が逝去してから5年後の1959年に彼の政治家としての偉業を顕彰する施設として旧尾崎邸の土地と建物を伊勢市が譲り受けて開設したものだが、現在の建物は施設の老朽化に伴い2002年に全面改装したものである。

1930年代から40年代の前半にかけて、相次ぐクーデターと戦争を背景に政党政治の灯がかき消されようとしていたなか、尾崎は独立系無所属議員として、政治介入を強める軍部を痛烈に批判した。こうした自らの信念に基づき議会制民主主義の原理原則を貫き通そうとする尾崎の政治姿勢は、第二次世界大戦中に当局から危険視され、投獄されることもあった。しかし、戦後は一転して、反軍国主義・反ファシズムの姿勢を貫いた「議会政治の父」として時代の脚光を浴び、民主主義、軍縮、人権に対する尾崎の信念は幅広く評価されるようになった。

尾崎の民主主義的価値観に対する確固たる信念は、見解を異にする他者に対する寛容な態度に見出すことができる。1924年のある日、尾崎を暗殺しようとした青年の父親が尾崎に近づき、息子の行動について謝罪をしようとしたところ、尾崎は「国のため 命惜しまぬ 誠あらば 我を刺すてふ 人も貴し(もしその青年を私の暗殺へと駆り立てたものが愛国心に拠るものならば、それは称賛に値するものです。)」という短歌を詠んで応えている。

今回の取材に際して、鈴木市長は、NPO法人咢堂香風の土井孝子理事長とともに、まさにこの尾崎咢堂記念館の入口で出迎えてくれた。尾崎咢堂を顕彰するNPO法人咢堂香風(2006年設立)は、2010年より尾崎咢堂記念館の管理運営を委託されているほか、幅広い教育関連活動を展開している。

NPO Gakudo Kofu members escorting the 2015 US Cherry Blossom Queen and Hanamizuki Queen to Ise Grand Shrine/ Katsuhiro Asagiri of INPS Japan
NPO Gakudo Kofu members escorting the 2015 US Cherry Blossom Queen and Hanamizuki Queen to Ise Grand Shrine/ Katsuhiro Asagiri of INPS Japan

鈴木市長は、「今回G7サミットが伊勢志摩地域(伊勢市、鳥羽市、志摩市、南伊勢町の一部を含む伊勢志摩国立公園とその周辺を構成する志摩半島)で開催されたことについては、重要な歴史的な側面があります。それは、日本が次回ホストするまで向こう7年間はG7サミットが日本で開催されないというだけではなく、この伊勢の地が故尾崎咢堂の選挙区であったという歴史的な背景です。」と語った。

G7サミット開催地の首長として、来日した6か国の首脳を歓迎した鈴木市長は、そのことを誇らしげに思う十分な理由があるが、記者の質問に対して、市長は終始謙虚な面持ちで「政治活動においても企業活動においても、根っ子の部分は人の役に立つかどうかという点にあります。」と語った。

鈴木市長はまた、伊勢市が、通称「伊勢神宮」としても知られる「神宮」を擁することから「神都」の異名を持つ門前町であることを指摘したうえで、「私は伊勢市長として、何をする場合でも、『神宮』が体現している価値観に寄与すること、そして、世界平和の実現と人権の確立に生涯をかけて取り組んだ尾崎行雄の精神を生き続けさせていくことを、常に念頭に置くことにしています。」と語った。

鈴木市長のこうした信念は、移民問題にも向けられた。市長によれば、世界人権宣言や1951年の難民の地位に関する条約、1967年の難民の地位に関する選択議定書といった法的合意が結ばれているだけでは十分ではなく、国際合意に謳われている原理原則が実際に順守され人権が侵害されていないことが極めて重要だという。

G7 Ise-Shima Summit 2016 Logo
G7 Ise-Shima Summit 2016 Logo

「人が生きている限り、人権概念の根底にある精神が理解されており、世代を超えて継承されていくよう、不断の努力をしていかなければなりません。」と、鈴木市長は語った。

こうした観点から、鈴木市長は、アンゲラ・メルケル首相が、シリアや中東諸国における内戦から逃れて欧州に流入してきている多数の難民に対して「歓迎」の姿勢を示してきたことに対して、感銘を受けるとともに、その気持ちをメルケル首相に伝えた。

鈴木市長はまた、米国のバラク・オバマ大統領についても、感銘を受けていた。鈴木市長は「大統領就任直後(そしてまもなくノーベル平和賞を受賞した)オバマ大統領と、2期目最後の年にある現在のオバマ大統領を比較せざるを得ません。」と指摘したうえで、「この8年間、オバマ大統領は大変ご苦労されたということを見てて感じました。」と語った。

鈴木市長は、オバマ大統領が(米国による広島と長崎に対する原爆投下から71年を経て)広島を訪問する決定をしたことについて、高く評価している一方で、このことやオバマ政権に関する米国発の様々なニュース記事を読む限り、オバマ大統領は恐らく厳しい政治環境の中で慎重に行動せざるを得ないのではないかという印象を持っていた。

にもかかわらず、鈴木市長は5月27日のオバマ大統領による広島演説は、日米の歴史にとって新たな時代の幕開けにつながったと確信している。従来日本では、被爆者が存命中に米国の現職大統領による広島訪問が実現されるかどうか懸念する声が根強くあった。

「被爆者の平均年齢を考えると、被爆者自身が原爆の実体験を直接語ることができる状況はまもなく厳しくなってくることが予想されます。その観点から、オバマ大統領の広島訪問は、これによって日米関係の新たな時代へと前に進むことができるという意味で、大変素晴らしい出来事だったと思います。」と語った。

しかし鈴木市長は、被爆者より若い世代の一日本国民として、広島と長崎への原爆投下がもたらした惨状について、戦争を終わらせるために必要であり後悔する必要はないとの意見が海外において依然としてあることについて、どのように考えているのだろうか?

Shinzō Abe and Barack Obama shaking hands at the Hiroshima Peace Memorial Park/ Public Domain
Shinzō Abe and Barack Obama shaking hands at the Hiroshima Peace Memorial Park/ Public Domain

「まったくもってそのような考え方は理解できません。戦争を境に、それまで人を殺してはいけない、人を傷つけてはいけないという一線が、ある瞬間に敵を殺したことが勲章や称賛に変わる瞬間があります。」

「しかし、戦争中であっても、兵士が戦場で敵の兵士と戦い殺されるのと、生まれたばかりの赤ちゃんを含む民間人が原爆やその他の手段で無差別に殺されるのとでは、違いがあります。同じく、テロリストが民間人の間に潜り込んで、無辜の子供たちを殺戮することは、許されないことです。従って、私には民間人に対して原爆を投下する判断を支持すると主張する人々がいることが、理解できないのです。」と鈴木市長は語った。

Nagasaki 1945 - Before and after/ Public Domain
Nagasaki 1945 – Before and after/ Public Domain

オバマ大統領は広島訪問に際して謝罪すべきと考えているかとの私たちの質問に対して、鈴木市長は、「この質問に答えるのは容易ではありません。日本国民は恐らくオバマ大統領から謝罪の言葉を聞きたいと考えていると想像しますが、一方でオバマ氏は米国の大統領として同国の国益を代表する立場にあることも理解しています。このことを考えれば、日本の人々の感情はそれとして、まずは米国の現役大統領が広島訪問を決断したことを評価すべきだと思っています。」と語った。

「それでは、オバマ大統領が(原爆投下について)遺憾の意の表明や謝罪はしなかったが、広島を訪問し被爆者と面会したことは、よかったと考えておられますか。」と鈴木市長に尋ねたところ、「オバマ大統領の広島訪問は、米国内で様々な議論を呼び起こすことになったと理解しています。また、今回の訪問は日本にも大きなインパクトを残しました。私は、日本と米国双方において人々が賛否両論で議論したこと、その事実を最重要視したいと考えています。なぜなら、こうした議論が次のステージへとつながっていくと思うからです。」と鈴木市長は語った。

今回のインタビューは、2009年11月から現職の40歳の市長との印象的な出会いとなった。鈴木市長は、記者らの質問に対して、政治用語や外交用語に訴えるのではなく、尾崎行雄と2000年の伝統に裏打ちされた「神宮」が象徴する精神を踏まえて、率直にご自身の見解を語ってくれた。(原文へ

翻訳=INPS Japan

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国連安保理、極度の飢餓を引き起こす紛争について説明を受ける

【ベルリン/ローマIDN=ジャヤ・ラマチャンドラン】

国連安全保障理事会は、前代未聞とまでは言わないまでも極めて深刻な問題に直面している。「17カ国に影響を及ぼしている長引く紛争」の影響によって、5600万人以上が食料安全保障の「危機」あるいは「緊急事態」のレベルに追い込まれており、栄養不良の解消を目指す国際社会の取り組みも妨げられている、と警告されたのである。

同時に、国連環境計画(UNEP)世界資源研究所(WRI)が発表した最近の報告書によると、世界の食料生産の約3分の1(およそ1兆ドルに相当)が、食料の生産・流通・消費過程において廃棄あるいは浪費されているという。

暴力と飢餓の負の連鎖に巻き込まれている5600万人という数は、南アフリカ共和国の人口より約500万人多く、イタリアの人口より約500万人少ない。紛争によって食料安全保障が悪影響を受けている人々の数が最も多いのは、イエメンシリアである。

SDGs Goal NO.10
SDGs Goal NO.10

イエメンでは、人口の半数以上にあたる1400万人が、飢餓の危機か緊急事態にある。シリアでは、870万人(5年前の紛争勃発以前の人口の37%)が、食料と栄養、生存のための緊急の支援を必要としている。

国連食糧農業機関(FAO)世界食糧計画(WFP)が17カ国について調べた最新シリーズの報告書によると、現在レバノンに在留しているシリア難民の実に89%が、緊急の食料、栄養、生存のための支援を必要としている、としている。

紛争により食料安全保障が悪影響を受けている17カ国は、ハイチ、コロンビア(以上、ラテンアメリカ・カリブ海地域)、ブルンジ、中央アフリカ共和国、コンゴ民主共和国、ギニアビサウ、コートジボワール、リベリア、マリ、ソマリア、南スーダン、スーダン(アフリカ)、レバノン、イラク、シリア、イエメン(中東)、アフガニスタン(アジア)である。

加えて、イスラム過激集団ボコ・ハラムに関連した暴力によって悪影響を受けているのが、ナイジェリア、ニジェール、チャド、カメルーンである。この地域で居住地を追われた人々の数はこの2年で3倍になっており、飢餓と栄養不良も拡大している。

状況が急速に悪化している南スーダンでは、人口の4割にあたる480万人が緊急の食料や栄養、生存のための支援を必要としている、との認識を上記の国連2機関は示している。

中央アフリカ共和国やコロンビアのように内戦が長引いている国では、数百万人が極めて深刻なレベルの食料不足と闘っている。

その他の国で食料不足に直面している人びとの絶対数はより少ないが、厳しいレベルの食料不足を経験している人びとの割合は、全人口の半分を超える。

FAOのジョゼ・グラジアノ・ダ・シルバ事務局長とWFPのアーサリン・カズン事務局長は、安全保障理事会に対する説明の導入部分で、いかにして飢餓が紛争を助長し、さらなる不安定化を招いているかを説明した。「紛争は飢餓の主な発生原因となっています。現代におけるあらゆる飢饉は、紛争によって特徴づけられています。」と両名は警告した。

José Graziano in Itamaraty Palace press meeting/ Renato Araújo/ABr – Agência Brasil [1], CC BY 3.0 br

さらに両名は、「紛争は様々な面で食料安全保障に悪影響を与えています。例えば、作物や家畜、農業インフラの破壊、市場の阻害、避難民の発生、将来ニーズが満たされないのではないかとの恐怖と不安の創出、人的資本の棄損、そして疾病の拡大への寄与が挙げられる。紛争はまた、支援を求める人々に手を差し伸べようとしている諸政府や人道支援団体によるアクセスを阻むという問題もある」。

安全保障理事会がFAOやWFPから定期的に受ける紛争地帯の食料安全保障の状況に関する説明が重要であることは、安保理が「平和への脅威や侵略行為の認定を主導する」という事実に表れている。

両国連機関はまた、最新の推計では、世界の貧困層のおよそ半分が紛争や暴力で特徴づけられる国々に居住していると説明している。そうした国々では、より安定した状況下にある国々と比べ、栄養不良に陥る確率が3倍高くなる。

「飢餓の問題に対処することは、平和構築への意義ある貢献となる」とFAO・WFPの両事務局長は強調し、さらに、「持続可能な開発に向けた2030アジェンダは、平和は、開発の条件であると同時に、それ自体、開発のひとつの結果であるとも捉えている。」と語った。

安保理は、「平和構築委員会」(PBC)を関与させることによって、食料安全保障の「危機」や「緊急事態」のレベルに対応することができる。PBCとは、「紛争から抜け出そうとしている国々での平和の取り組みを支援し、広範な平和アジェンダにおける国際社会の能力を強化する政府間諮問機関」である。

平和構築委員会は、(1)国際ドナー、国際金融機関、各国政府、軍隊提供国をふくめたすべての関連主体を統合し、(2)資源を募り、(3)平和構築と回復に向けた統合的戦略に関して助言・提案し、適切な場合は、平和を妨げかねない欠点に焦点を当てるという、独自の役割を果たしている。

PBCが対象としている国々は、ブルンジ、シエラレオネ、ギニア、ギニアビサウ、リベリア、中央アフリカ共和国である。

国連は、世界のさまざまな地域において、紛争から平和への困難な道筋を案内する支援に巨額の費用を投じている。国連総会は今年6月17日、今後12カ月間で78億6000万米ドルを15件の平和維持活動に支出することを承認した。

World map of UN Peacebuilding Commission and UN Peacebuilding Fund locations. Current as of April 2012./By Nadhika99 – Own work. Information from organizations’ websites. Map derived from File:BlankMap-World6.svg by Canuckguy, released under PD-self. Map colored using Inkscape, CC BY-SA 3.0

2015年7月1日から16年6月30日までの会計年度に関して承認された予算は82億7000米ドルであり、これは、2013年に1兆7470億米ドルだった世界の軍事支出の0.5%にも満たない額だ。

2013~15年に国連平和維持活動に多くの分担金を支払った国のトップ10は、米国(分担率28.38%)、日本(10.83%)、フランス(7.22%)、ドイツ(7.14%)、英国(6.68%)、中国(6.64%)、イタリア(4.45%)、ロシア連邦(3.15%)、カナダ(2.98%)、スペイン(2.97%)である。

2016年7月1日~17年6月30日の会計年度の国連平和維持活動は、スーダンのアビエイ地区、中央アフリカ共和国、コートジボワール、キプロス、ダルフール、コンゴ民主共和国、ゴラン地区、ハイチ、コソボ、リベリア、マリ、ソマリア、南スーダン、西サハラ、ソマリアである。これらの国々の多くが、緊急の食料不足に陥っている。(原文へPDF

翻訳=INPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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核兵器の法的禁止協議に広範な支持

【ジュネーブIDN=ジュムシェッド・バルーア】

大量破壊兵器である核兵器を禁止する協議を2017年に開始する提案を多くの非核兵器国が押し通した。核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)はこれを「ドラマチックな最終日」と呼んでいる。

核軍縮に関する公開作業部会(OEWG)は8月19日、2月以来開催されてきた一連の会期の第3ラウンドを終了した。核兵器を禁止し、最終的にはその廃絶につながるような法的措置に関する交渉を開始することを10月に開かれる国連総会に勧告する報告書を賛成多数で採択した。

公開作業部会は、2月22~26日、5月2~4日、9~13日、8月5・16・17・19日の間に合計30回の実質的な会合を持ってきた。また、一部、非公式会合も開かれた。

この勧告は、国連総会に提出される公開作業部会による報告書の一部分である。報告書には、核兵器使用のリスクの削減と除去のための措置を採ること、核兵器に関する透明性を高めること、あらゆる核兵器の使用が人間に及ぼす影響に関する意識を喚起することについても、国連加盟国に勧告している。

この報告書案の採択に際しては、62カ国が賛成(すべて非核兵器国)、27カ国が反対(大部分が北大西洋条約機構加盟諸国、韓国)、8カ国が棄権(スウェーデン、スイス、日本など)した。

公開作業部会の設置を主導したメキシコの大使は、この報告書の採択について「この20年で核軍縮に対する最も重要な貢献です。」と語った。

「UNFORD ZERO」、核不拡散・軍縮議員連盟、ICANは、報告書の採択を受けた共同声明で公開作業部会の作業を称賛し、2017年に「核兵器の禁止のための法的拘束力のある文書」の交渉会議を始めるとの勧告に支持を表明した。

核兵器禁止条約への大多数の支持は、アフリカ諸国(54カ国)、ラテンアメリカ・カリブ海諸国(33カ国)、(一定数の)東南アジア、太平洋諸国の共同声明、さらには、一部の欧州諸国からの声明によっても裏付けられている。

しかし、公開作業部会の会期中、核兵器は国家安全保障に不可欠だと主張しつづける少数の国々からの抵抗が続いた。

「こうした国々は、核兵器禁止条約に向けた交渉会議を始めるとの勧告を含んだ報告書案を阻止すると脅していましたが、結局、公開作業部会が成功裏に報告書を採択することを阻止する影響力はなかったことになります。」とICANはコメントした。

長い審議の後、参加各国は、核兵器禁止条約に関する双方の見解を盛り込んだ妥協的な報告書に合意するかに見えた。しかし、非公式の会合において合意がなされるかと見えた後、オーストラリアが土壇場で立場を変え、報告書案に反対し採決を呼びかける旨の意向表明を行った。

オーストラリアやその他の核兵器の抑止力に依存している国々からの反対にも関わらず、大多数の参加各国は意志を貫いた、とICANは報じた。これを基礎にして、公開作業部会は、核兵器の禁止のための法的拘束力のある文書の交渉会議を始めるよう勧告することができたのである。

「このブレイクスルーは、核兵器に関する新たな世界的議論の結果だ。3回の会議は、諸政府や学者、市民社会を巻き込み、核兵器が人間に及ぼす壊滅的な影響や、事故であれ意図的なものであれ核使用にはリスクが伴うことについて、新たな証拠を明らかにしてきた。『人道イニシアチブ』によって生まれた機運はついに、国際社会を核兵器禁止を交渉する寸前のところにまでたどり着かせたのである。」とICANは声明で述べた。

ICAN
ICAN

核兵器は、その非人道性、無差別性にも関わらず、国際法で依然として禁じられていない唯一の大量破壊兵器である。

禁止によって、諸国による核兵器の使用や保有が違法化されるだけではなく、その完全廃絶への道も切り拓かれる。廃絶という目標にコミットしている国々は、来年にも交渉を始める用意があるとの意思を示した。

問題は、10月に開かれる国連総会第一委員会が、交渉プロセス開始の任務を与えることによって、プロセスを前進させるかどうかである。

「ウィーン軍縮・不拡散センター」(VCDNP)の博士研究員あるジェニー・ニールセン氏は、「より広範な核政策の中にあって核軍縮と核抑止への支持が益々二極化している問題をどの程度おさめることができるかは、予断を許しません。」と、「欧州リーダーシップネットワーク」のブログに記している。

「ギャップを埋める取り組み、とりわけ、核兵器を禁止する法的措置を交渉する会議を2017年に招集するという(公開作業部会を通じて生み出されてきた)高まる機運を活かそうとの意欲があるかどうかは、疑わしい。」とニールセン氏は論じている。

ニールセン氏はまた、「各国やアナリストは、問題が指摘されている核兵器への依存を超えて、戦略的な安全性を維持し(さらには安全の保証を提供し、不確実性に備える)実行可能性のあるどのような選択肢が存在するかという時宜にかなった建設的な議論をすべき時にきています。とりわけ核抑止を基盤とした戦略的安定性について課題と選択肢の両方を与える新たなテクノロジーが出てきていることを考えると、このことが非常に重要な意味を持ちます。もし、核兵器の役割と価値に関する二極化する見方をこのまま放置するならば、核兵器使用のリスクを低減し、核兵器のない安全な世界を実現するための積極的な貢献はもたらされないだろう。」と語った。(原文へ

翻訳=INPS Japan

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