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「変革の世代」が、核兵器廃絶の実行を誓う

【広島INPS=ロナルド・ジョシュア】

新しい「変革の世代」が、「地球上の全ての人々にむごたらしい死の脅威を突き付けている」1万6000発から7000発の核兵器を世界からなくすことを明確に呼びかけるとともに、(広島・長崎への原爆投下から)70年間に及ぶ核廃絶の約束を実行することを誓い、存在感を示した。

広島・長崎の街を壊滅させた原爆投下から70年を記念して広島で3日間にわたり開催された「核兵器廃絶のための世界青年サミット」のまとめとして8月30日に発表された「核兵器廃絶のための青年の誓い(誓い)」はこう述べている。「核兵器は過ぎ去った時代の象徴であり、私たちの目の前の現実に大きな脅威をもたらしている。しかし、私たちが創造している未来に、その居場所はない。」

International Youth Summit for Nuclear Abolition

青年サミットは、国連アジア太平洋平和軍縮センター(UNRCPD、バンコク)が主催して広島で開かれた第25回国連軍縮会議に続いて行われたものである。

青年サミットには、地方・地域・国際の各レベルで核軍縮やその他の関連分野に積極的に関わっている世界20か国以上(オーストリア、カナダ、コスタリカ、ドイツ、インド、イタリア、日本、ケニア、ラトビア、モンゴル、オランダ、パキスタン、フィリピン、ルーマニア、タイ、チュニジア、イギリス、アメリカ)から30人の主要な青年活動家が集まった。

彼らはまた被爆者とも会い、世界から核兵器をなくすための将来的な戦略について話し合った。

「誓い」はこう締めくくられている。「あなたも、私たち『変革の世代』と共に声をあげ、行動を呼びかけよう。私たちは、核兵器が私たちの生命を、未来の世代を脅かし続けているのに、何もせずにいることを拒否する。さあ、私たちと一緒に行動して、変革を起こそう!」

参加者らは、「70年間にわたって『二度と繰り返さない』という演説が行われ、声明が発表・支持されてきた。それでも私たちは、いまだに核兵器の人質にとられたままでいる。」と指摘したうえで、「私たち世界中の青年は、これら数十年に及ぶ核廃絶の約束を果たすべく、立ち上がろうと勇気を奮い起こしている。私たちは、共通の未来への脅威を根絶しなくてはならない。あなたも、私たち『変革の世代』に加わってほしい。さあ、行動を起こす時だ。」と訴えた。

Working group in session | Credit: Katsuhiro Asagiri, President of INPS Japan

「誓い」はさらにこう続く。「私たち青年は、人間の安全保障と持続可能性を求める。核兵器が存在したまま、これを完全に実現するのは不可能だ。青年の目には、核兵器のない世界への可能性が見える。私たちの目には、恐怖と軍拡ではなく、外交・協力・信頼にもとづく安全保障への可能性が見えるのだ。」

「核兵器の廃絶は私たちの責務であり、権利だ。核廃絶のチャンスが失われるのを、もはや黙って見過ごしはしない。私たち青年は、あらゆる多様性と深い団結のもと、この目標の実現を誓う。私たちは『変革の世代』なのだ。」

「核兵器が存在し続けることは受け入れられない。私たちの共通の未来を守るために、行動を起こさねばならない」と「誓い」は述べ、「変革の世代」として次のことを誓った。

・仲間の意識を広く啓発するために、自らが知識を学び、自信をつける。

・活動する上で多様性が重要であることを自覚し、ジェンダーの視点が軍縮に影響を与えることを自ら学んでゆく。

・各自の地域社会や国で行動を起こし、声をあげ、核廃絶を求める。

・核兵器の非人道性や、被爆者・核実験被害者の体験を周囲と共有する。

・核廃絶運動への参加を周囲に促し、活動する全員の一致団結を築く。

・すべての国家に、核兵器を禁止・廃絶する国際条約の交渉開始を呼びかける。

・各自の国の議会に、核兵器の製造・投資・実験・配備・威嚇・使用を禁止および違法化する国内法制の整備を呼びかける。

「誓い」は、250人が参加した公開フォーラムで発表された。フォーラムでは、核時代平和財団のリック・ウェイマン氏と創価学会インタナショナル(SGI)のアナ・イケダ氏が共同議長を務め、国連事務総長の青少年問題特使であるアフマド・アルヘンダウィ氏に「誓い」が手渡された。

Credit: Katsuhiro Asagiri, President of INPS Japan

アルヘンダウィ特使は「平和を可能とする世代になろう。この青年サミットは、青年は平和と核兵器のない世界を求めているという力強いメッセージを世界に発信しました。国際社会はこの声に耳を傾けねばなりません。」と発言した。

公開フォーラムではまた、幼少時代を広島原爆ドームのすぐ隣の実家で過ごした被爆者の田邊雅章氏制作の映画も上映された。田邊氏は、「私の映画を観ることで、(原爆が投下されるまで)実際にそこには人々の生活と営みがあったのだということを知っていただきたい。是非世界の指導者にも、この真実を知ってほしいのです。」と語った。

青年参加者らは、このサミットへの参加を通じて、より緊張感が深まったと述べた。「マインズ・アクション・カナダ」のエリン・ハント氏は、「青年によるこのネットワークは、核兵器が何を引きおこすかについて共通した理解を持つに至りました。これはきわめて重要なことだと思います。」と語った。

核時代平和財団のデイビッド・クリーガー会長、国際平和教育研究所名誉創設者のベティー・リアドン氏、SGIの池田大作会長、核戦争防止国際医師会議(IPPNW)のマイケル・クライスト議長などの平和活動家から支援メッセージが寄せられた。

このイベントは、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)、マインズ・アクション・カナダ、核時代平和財団、SGI、婦人国際平和自由連盟(WILPF)の代表らによって主催された。

後援には、広島市、長崎市、広島平和文化センター、核兵器廃絶長崎連絡協議会、核兵器廃絶地球市民長崎集会実行委員会、平和首長会議、ICAN、IPPNW、バーゼル平和事務所グローバル・ゼロ核兵器禁止世代(BANg)が加わっている。

全世界で1200万人の会員を擁し、平和・文化・教育を推進し核兵器廃絶を50年以上にわたって訴え続けている仏教者のネットワークSGI本部の平和運動担当の浅井伸行氏は、「若者には、現状を変化させる潜在力と能力がもともと備わっています。広島・長崎への原爆投下から70年を迎える中、世界は重大な岐路に立っています。世界中の若者が手を取り合って、核兵器なき世界に向かって突破口を作り出す時にきています。」と語った。(原文へ

翻訳=INPS Japan

撮影・編集:INPS Japan浅霧勝浩

This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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【広島IPS=ラメシュ・ジャウラ】

広島で3日にわたって開催された国連軍縮会議が、「核実験に反対する国際デー」を翌日に控えるなか閉幕した。会議では、核兵器なき世界を実現する必要性は強調されたが、その目標にどう向かうかについてはコンセンサスが得られなかった。

国連アジア太平洋平和軍縮センター(UNRCPD、バンコク)が日本の外務省、広島市、広島県との協力の下で8月26日から28日に開催したこの会議には、世界の各地域から80人以上の政府関係者や専門家が参加した。

日本でこの会議が開催されるようになって25回目だが、今年は、広島・長崎への原爆投下及び国連創設から70年という節目の年にあたり、とりわけ重要な会議であった。

The atomic bomb dome at the Hiroshima Peace Memorial Park in Japan was designated a UNESCO World Heritage Site in 1996. Credit: Freedom II Andres_Imahinasyon/CC-BY-2.0
The atomic bomb dome at the Hiroshima Peace Memorial Park in Japan was designated a UNESCO World Heritage Site in 1996. Credit: Freedom II Andres_Imahinasyon/CC-BY-2.0

UNRCPDのユーリー・クリボノス所長代理は、会議の内容を総括して、「核軍縮と核不拡散における機会と課題」に関する討論は「率直かつダイナミックなものでした」、と語った。

プレゼンテーションやパネル討論では、4月27日から5月22日にかけて国連本部で開催された2015年核不拡散防止条約(NPT)運用検討会議の件が注目された。

2015年NPT運用検討会議の議長を務めたアルジェリアのタウス・フェルーキ大使は、広範な重要問題に関してかなりのコンセンサスが得られていたにも関わらず、なぜ会議は普遍的に受け入れられるような最終文書の合意に失敗したのかについて、詳細に説明した。問題は、「中東非核・非大量破壊兵器地帯の創設に関する国際会議」を2016年3月1日までに招集するという提案を、米・英・加が拒絶したことにあった。

日本の岸田文雄外相は、この問題に関して、他の政府関係者や専門家らと同じく、「中東非核・非大量破壊兵器地帯の創設に関する国際会議」問題のために最終成果文書が採択されなかったことを遺憾に思うと述べた。

岸田外相は、2015年NPT運用検討会議で新たな行動計画を策定できなかったことでNPTの有効性を疑問視する議論が出てきている点を指摘する一方で、「しかし明確に申し上げておきたいのは、NPT体制は、これまで国際社会の平和と安定に極めて重要な役割を果たしてきており、その役割は今日でも変わっていないということです。」と語った。

広島軍縮会議は、NPTの効果的な履行を確保する措置に関する様々な見方について議論しただけではなく、核兵器廃絶という目標達成における、未発効の包括的核実験禁止条約(CTBT)の役割、核兵器の使用がもたらす人道的影響、核不拡散・軍縮体制強化のための非核兵器地帯(NWFZs)の重要性についても話し合われた。

各セッションのパネリストらは、自治体や市民社会、核軍縮教育の役割が大きくなってきていることをとりわけ指摘した。核軍縮教育に関しては、核兵器国であろうとなかろうと、世界中のすべての国の人々に対して核兵器がもたらす脅威に対する共通の理解を形成するうえで、被爆者(平均年齢が80歳を超えた)の証言の重要性が指摘された。

Sesson 4: Collaboration with Civil Society, the 25th UNConference on Disarmament Issues in Hiroshimia/ Katsuhiro Asagiri of International Press Syndicate

UNRCPDのクリボノス所長代理は、広島会議は、「核使用のリスクからこの地球を守るという目標にどのように到達するのかについて新たな考えを模索する良い出発点になりました。」と語った。

広島県の湯﨑英彦知事と広島市の松井一實市長(世界161の国・地域の6779自治体から成る平和首長会議の会長で、被爆者を父に持つ)は、長崎市の田上富久市長とともに、核兵器なき世界に向かって協力してキャンペーンを強化することを訴えた。田上市長はまた、日本非核宣言自治体協議会の会長でもある。

Post Press Conference of the 25th UN Conference on Disarmament Issues in Hiroshima/ Katsuhiro Asagiri of International Press Syndicate
Post Press Conference of the 25th UN Conference on Disarmament Issues in Hiroshima/ Katsuhiro Asagiri of International Press Syndicate

広島・長崎両市長は、(軍備管理協会事務局長でモデレーターをつとめたダリル・キンボール氏が打ち出した)来年5月の主要国主要会議(伊勢志摩サミット)に合わせて広島で核軍縮サミットを開催するという提案に関して、核兵器なき世界に向けた意識喚起が促進されるとして、歓迎の意を示した。

外務省関係者は、この提案に関して公的に発言することはなかったが、広島出身の岸田外相は、「核軍縮における真の前進を得るために、実際的かつ具体的な措置を着実に前進させるうえで」核兵器国と非核兵器国が協力する必要性を強調した。

岸田外相は、来る国連総会に「核兵器の完全廃絶に関するあらたな決議案」を提出するとの意向を明らかにした。こうした決議は、「原爆投下から70年にふさわしく、NPT運用検討会議を基礎として、今後5年に関する国際社会のガイドラインとして機能しうるもの」だと語った。

次回のNPT運用検討会議は2020年の開催が予定されている。

平和首長会議は、2020年までに「核兵器がない世界」を達成するという「2020ビジョンキャンペーン」をその取り組みの中核に据えている。

このキャンペーンは、2003年10月に英国マンチェスターで開かれた平和首長会議の幹事会において暫定的に開始された。そして同年11月の「第2回核兵器廃絶地球市民集会ナガサキ」において、「核兵器禁止緊急キャンペーン」として立ち上げられている。

2005年8月、全体会議において「2020ビジョンキャンペーン」としてこれを継続することが決められた。

岸田外相は、会議へのメッセージで「被爆の実相は世界で十分に理解されているとは言いがたい」と述べて、広島・長崎両都市の住民らの見解を代弁するとともに、「核兵器なき世界を達成するために、世界の政治指導者や若者などが広島・長崎を訪問し、被爆の実相を目で確かめてみることがきわめて重要です。これを通じて、核兵器なき世界という希望を共有することができるものと信じます。」と語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan

Filmed by Katsuhiro Asagiri, President of INPS Japan
Filmed by Katsuhiro Asagiri, President of INPS Japan
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Filmed by Katsuhiro Asagiri, President of INPS Japan
Filmed by Katsuhiro Asagiri, President of INPS Japan

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【広島IPS=浅霧勝浩、ラメシュ・ジャウラ

国際社会が、来年の包括的核実験禁止条約(CTBT)署名開放20周年に向けて取り組みを強めるなか、CTBTの早期発効を実現するため2年前に発足した「賢人グループ」(GEM: Group of Eminent Persons)が初めて日本で有識者会合を開催し、同条約発効のために批准が必要な8か国に対して緊急に批准することを強く求めるなどとした「広島宣言」を発表した。

8月25日・26日の2日間に亘って「賢人グループ会合」の開催地となった広島市は、日本の本州に位置する近代都市であるが、第二次世界大戦末期には長崎市と並んで投下された原子爆弾により街の大半が壊滅し、無辜の老若男女が非人道的な被害を被った世界で唯一の被爆都市である。そして、その凄惨な被爆の実態については(核攻撃を生き延びた)被爆者の方々によって今日まで語り継がれている。

「被爆地ヒロシマほど、CTBTの発効を実現する緊急性が明白であり、『賢人グループ』ほど、この目標の実現につながる経験と専門知識を備えた人々はいません。」と、包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)ラッシーナ・ゼルボ事務局長は、会合の参加者に語り掛けた。

Lassina Zerbo/ CTBTO
Lassina Zerbo/ CTBTO

ゼルボ事務局長のイニシアティブにより2013年9月にニューヨークの国連本部で発足した「賢人グループ」は、各国の元政府高官や国際的に認められた核軍縮・不拡散の専門家ら21人で構成され、あらゆる核実験の全面禁止を目指し、CTBTの発効を促進する取り組みを支持・補完するとともに、この目標が達成されるよう国際社会における取り組みを再活性化することを目的としている。

原爆投下から70周年となる「賢人グループ会合(第4回広島会合)」は、日本政府と広島市の後援を得て実現したが、ゼルボ事務局長は会合に先立つ8月6日、広島の平和記念式典に出席するため来日していた。

ゼルボ事務局長はまた、「賢人グループ会合」開催前日の8月23日にも、ペリー元国防長官、湯崎英彦広島県知事と核軍縮をテーマとしたパネルディスカッションに参加し、多くの学生をはじめ会場を埋めた約100人の聴衆との意見交換にも臨んだ。

ゼルボ事務局長は、開会の挨拶で、世界の指導者に対して、イランと主要国(E3+3:中国、フランス、ドイツ、ロシア、英国、米国)間の最近の核合意によって生まれた機運を生かし、核不拡散と核軍縮を巡る協議においてもCTBT発効に向けて希望を持ち積極性に取り組むよう強く訴えた。

イラン核合意が私たちに示唆しているのは、軍備管理と国際安全保障に関して「多国間外交は可能だというだけではなく、21世紀の複雑で重層的な難題に対処していくうえで最も効果的な方法ということです。またいかなる安全保障合意や軍縮協定についても、その価値を判断する基準は検証体制に対する信頼度にあります。イラン核合意の場合と同じく、CTBTの有用性もその検証と実施体制に対する信頼度にかかっています。この点については条約発効前の現段階でも検証体制に十分な信頼が確保されています。」とゼルボ氏は語った。

同じく開会の挨拶に登壇したペリー氏は、CTBTへの批准は安全保障政策として、国際レベルのみならず、国内レベルにおいても米国の国益にかなうものだという信念を表明した。ペリー氏はまた、現在の政治情勢はCTBT発効の見通しに暗い影を落としているという認識を示すとともに、同条約が発効するまでの間、核爆発を伴う実験をしない「モラトリアム」を維持していくことの重要性について改めて表明した。

GEM meeting in HIROSHIMA/ CTBTO

今回の賢人会議にはメンバーからは、阿部信泰氏元軍縮問題担当国連事務次長(日本)、デス・ブラウン元国防大臣(英国)、ジャヤンタ・ダナパラ元軍縮問題担当国連事務次長(スリランカ)、セルジオ・ドゥアルテ元国連軍縮担当上級代表(ブラジル)、ミシェル・デュクロ元外務省軍縮局長(フランス)、ウォルフガング・ホフマンCTBTO準備委員会事務局元事務局長(ドイツ)、リー・ホジン国連協会副会長(韓国)、ウィリアム・ペリー元国防長官(米国)ら10人が参加した。

さらに、イシュトヴァーン・ミコラ国務大臣(ハンガリー)、ユスロン・イーザ・マヘンドラ駐日大使(インドネシア)、北野充外務省軍縮不拡散・科学部長(日本)、イェルザン・アシクバエフ外務次官(カザフスタン)が、職権上の会員として参加した。

「賢人グループ会合」は、第一回ニューヨーク会合(2013年9月)、第二回ストックホルム会合(2014年4月)及び第3回ソウル会合(2015年6月)において合意された行動計画の進捗状況を確認するとともに、来るCTBT署名開放20周年を念頭に現下の国際的な環境を検討した。そして、核兵器の完全な廃絶を目標として、核兵器の拡散及び更なる開発の防止を支援するために国際社会を結束させる緊急性があることで一致した。

参加者はまた、日本とカザフスタンが共同議長国を務める予定の第9回CTBT発効促進会議(9月末にニューヨークで開催)に向けて、関連する諸問題について協議するとともに、CTBTの発効を促進するためにとりえる実践的な方策について議論した。

CTBTには、これまでに183か国が署名を終え、そのうち核保有国であるフランス、ロシア、英国を含む163か国が批准も済ませている。しかしCTBTが発効するには、核技術を有する(条約の附属書2に掲げられている、ジュネーヴ軍縮会議の構成国であって、IAEA「世界の動力用原子炉」の表に掲げられている)44か国すべてが署名並びに批准を終えなければならないこととなっている。そのうち、中国・エジプト・イラン・イスラエル・米国の5か国は署名しているが未批准、インド・パキスタン・北朝鮮の3か国は署名すらしていない。

CTBTO
CTBTO

「賢人グループ」は、広島宣言を採択し、グローバルな核兵器の廃絶を達成すること、とりわけ、「核軍縮・不拡散のために最も不可欠かつ実践的な手段の1つである」CTBTの発効に対する彼らのコミットメントを再確認した。さらに、それぞれの批准プロセスを円滑化することを目的に,附属書2の残る8カ国の指導者に働きかける多国間アプローチを要請した。

「賢人グループ」はまた、「政治指導者,各国政府,市民社会及び国際的な科学者団体に対して,核軍縮・不拡散の観点及び核兵器の使用が人類に及ぼす壊滅的な影響を防止する観点から、 CTBTが必要不可欠な役割を有していることについて,認識を高めることを呼びかけた。」(原文へ)(スペイン語版

翻訳=IPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between Inter Press Service(IPS) and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

Filmed by Katsuhiro Asagiri, President of INPS Japan

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アフマド・アルヘンダウィ国連事務総長青少年問題特使インタビュー

Filmed by Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director, President of INPS Japan.

INPS Japanの浅霧勝浩マルチメディアディレクターは、来日中のラメシュ・ジャウラ編集長と共に、広島・長崎の街を壊滅させた原爆投下から70年を記念して広島で3日間にわたり開催された「核兵器廃絶のための世界青年サミット」を取材した際に、国連事務総長の青少年問題特使であるアフマド・アルヘンダウィ氏とのインタビューを行った。

青年サミットには、地方・地域・国際の各レベルで核軍縮やその他の関連分野に積極的に関わっている世界20か国以上(オーストリア、カナダ、コスタリカ、ドイツ、インド、イタリア、日本、ケニア、ラトビア、モンゴル、オランダ、パキスタン、フィリピン、ルーマニア、タイ、チュニジア、イギリス、アメリカ)から30人の主要な青年活動家が集まった。

サミットでは、核時代平和財団のリック・ウェイマン氏と創価学会インタナショナル(SGI)のアナ・イケダ氏が共同議長を務め、国連事務総長の青少年問題特使であるアフマド・アルヘンダウィ特使に成果文書である「誓い」が手渡された。

Credit: Katsuhiro Asagiri, President of INPS Japan

翻訳=INPS Japan

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国連内部監査、ジェンダーの不均衡など体質改善を勧告

【ベルリン/ニューヨークIDN=ラメシュ・ジャウラ】

国連政治局は、世界中の武力紛争を予防し解決する国連の取組みにおいて中心的な役割を果たしている。しかし、安全保障理事会が次期国連事務総長の12人の候補に関する非公開の「調査投票」の第1ラウンドを7月21日に開始するなか、政治局は安保理の視野には入ってこないようだ。

5つの常任理事国(米国・ロシア・中国・英国・フランス)によって受け入れられ、後に国連総会によって選出される候補者は、今年12月31日に2期目の任期(1期5年)を終える潘基文氏の後継者となるが、いずれにせよ、国連政治局(DPA)に対する評価に注意を払わねばならない。

というのも、5月31日に公表された国連内部監査部(OIOS)による政治局に対する最新評価には、政治局の成果を評価する言葉だけではなく、厳しい批判も並べられていたからである。

内部監査部は、2006~08年の評価以来、政治局はデスクワーク中心の部局から、より現場中心の活動へと進化し、現場での紛争予防・解決(CPR)支援に活動の軸足を移した、と肯定的に評価した。

CPRは主に、2008年以来数が増えている特別政治ミッション(SPMs:軍事要員や文民警察を中心とする国連平和維持活動とは別に、文民要員を中心に現地の情勢に応じてアドホックに設置して活動している国連ミッション)と、ミッションベースではない「国連カントリーチーム」を通じて実行されている。

国連政治局は、本局から、現場における支援活動がスムーズに進展する環境を整えるために、加盟国やその他の国連機関、関連団体と連携を取りながら、現地で活動に従事している様々な組織を支援している。また現場レベルでは、CPR任務を達成する現場の能力を強化することを目的として、一般的支援(例:政策指導、行政指導)から特別専門指導(例:選挙支援、調停)にいたる多岐にわたる支援を行っている。

最新の評価では、2008~15年の現場レベルでのCPRに対する政治局の実質的支援に関して、その意義、効果、効率性を査定している。評価は幅広い質的かつ量的な情報分析に基づいて作成されたものである。

内部監査部の評価によれば、政治局は、評価期間において、最重要紛争地のほぼ全てに支援を実施していた。また、地域事務所の設置や、国連ミッション不在地への「平和・開発アドバイザー」の派遣を通じて、そのグローバルな展開力を増強してきた。

「しかし、最重要紛争地以外の地域については、政治局のプレゼンスはあまり広範囲に及んでいなかった。」と内部監査部は指摘した。たしかに、すべての紛争地のニーズを満たすには財源上の制約があることは内部監査部も認めている。しかし同時に、「戦略計画書を見ても、支援が求められる他の状況に対して政治局がその限られた財源をいかに重点配分するかについて、明確で、具体的なデータに基づく考察は認められなかった。」とも述べている。

政治局の職員、彼らが支援する現場の諸団体、さらに内部監査部による直接観察が、共通して強調しているのは、政治局が従来のデスクワーク中心の分析作業から(現場中心の活動へと)軸足を移したことによって、とりわけ、平和への脅威が潜む状況を予測し行動するための早期警戒分析能力が弱まったという点である。

しかし内部監査部は、こうした欠落があるものの、政治局による支援は効果的であり、現場の活動に対して積極的な貢献を成したと評価した。また、様々な現場の機関の職員らが、そうした実例を指摘している。

ジェンダーや人権問題に対する政治局の感度は増したものの、「本局と現場のリーダーシップの両方においてジェンダーの不均衡がみられ、現場ではジェンダー・人権いずれに対する配慮に関しても優先順位が低い」と内部監査部は批判している。

SDGs Goal No. 5
SDGs Goal No. 5

同時に、政治局が対応しなければならない現場活動の数がますます増える中、その人的・財政的資源はその要請に追いついていない。

「より広範な国連の内部手続きが、その効率性を阻害している。加えて、政治局は、成果に対する全体的な任務のアカウンタビリティや、任務が国連の原則に合致しているかどうか、最終的な出口戦略をモニターするには、弱い立場に置かれている。政治局は、成果に関する知識を利用しようという態度に欠けるためアカウンタビリティを向上させることに失敗し、成功と欠点から学ぶことができなくなっている」と内部監査部の評価は指摘している。

内部監査局は4つの重要な勧告を行い、政治局はそのすべてを受け入れた。つまりその内容とは、①現場レベルのアカウンタビリティ強化における政治局の役割の組織化を、事務総長室と協議しながら行うこと。②早期警戒・早期行動のための全体的な文脈分析と評価の両面において、主要な分析上の欠落を埋めること、③本局と現場レベルの計画プロセスを強化すること、④中核的な機能の欠落に適切に財源を割り当てるための措置を実行することが求められた。

政治局は、ニーヨークの国連本部で勤務する250人以上の専門・管理部門の職員に加え、アフリカ・アジア・欧州・中東で、その権限下にある政治・平和構築任務活動に従事する、国別・国際スタッフを1700人以上雇用している。

政治局は、加盟国と緊密に協力し、紛争予防と解決において必要に応じて支援と助言を与えるための国連地域事務所を設置している。(原文へPDF

翻訳=INPS Japan

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【国連IPS=タリフ・ディーン】

国連が、主に若い世代の才能を活かして、不寛容や過激主義、人種差別、外国人排斥の拡大に対抗する世界的キャンペーンを展開する計画をたてている。

国連の潘基文事務総長は、教育がカギを握ると指摘する。「教育の力を理解したければ、過激主義者らがいかにして教育を叩き潰そうとしているかを見れば分かります。」「過激主義者らが10代の活動家マララ・ユサフザイさんとその友人らを殺害しようとしたのは、まさに彼女たちが学校で教育を受けることを望んだからです。」と語った。

暴力的な過激主義者がナイジェリアのチブックで200人以上の女子生徒を誘拐し、数多くの学生がケニアのガリッサやパキスタンのペシャワールで学校にいたところを襲撃され殺害された。

「過激派が最も恐れているのは、教科書を手に教育を受けようとする女児や若者の存在なのです。」と潘事務総長は語った。潘事務総長は、宗教間対話を促進する宗教指導者による諮問機関を創設するとともに、「包括的な『暴力的過激主義を予防する行動計画』」をまもなく発表する予定である。

提案されているこの計画は、9月第3週に始まる第70回国連総会に提出されるとみられている。

不寛容と過激主義に対抗する世界的なキャンペーンの一環として、国連広報局は、世界中の若者による10件のプロジェクトを最近選出した。「多様性コンテスト」と題されたこの企画では、様々な差別や偏見、過激主義の問題に対処する創造的なアプローチが選ばれた。

Lara-Zuzan Golesorkhi

31か国、100件以上のエントリーから選ばれたこのプロジェクトには例えば、同性愛者排斥への対抗(インド・メキシコ)、民族紛争軽減のための水紛争の解決(ブルンジ)、宗教間調和の促進(パキスタン)、移住人口の受け入れ促進(南アフリカ)、イスラム教徒(ムスリム)女性の雇用機会の増進(ドイツ)を目的とした取組み等がある。

今回の受賞プロジェクトの応募者であり、ニュースクール(ニューヨーク)の大学院生でインストラクターでもあるララ=ズザン・ゴレソルキ氏は、IPSの取材に対して、「(このプロジェクトは)今日ドイツで最も論じられている政治課題の一つであるムスリム移民の統合の問題に取り組むものです。」と語った。

「こうした論議の背景には、1998年に起こったいわゆる『ルディン事件』に端を発する『スカーフ論争』があります。」とゴレソルキ氏は指摘した。

論争の発端はこの年、(アフガニスタン移民の娘である)フェルシュタ・ルディン氏が、教壇に立つ時もスカーフを外すことを拒んだため、バーデン・ヴュルテンベルク州のシュトゥットガルト上級教育庁が「ドイツ基本法に則ってルディン氏は教師に不適格で能力に欠ける」として、州の公立校への採用を拒否したことにあった。

ルディン氏はこの決定を憲法が保障する信教の自由を侵害するものとしてその後長らく裁判で争った。一方、公立学校の教員に対してスカーフを取って仕事をするよう求める州が相次いだ。

「結局、8州がスカーフ禁止措置を採用しましたが、本質的にみて差別的なこの政策を見直すよう求める憲法裁判所の判決が出されたため、最近ではスカーフ禁止措置に対して疑問が付されるようになってきています。」とゴレソルキ氏は語った。

国連広報局によると、ゴレソルキ氏はドイツに戻り、ムスリム女性に対する差別に対抗する取り組みを進めるという。

ゴレソルキ氏は、企業に対して象徴的な意味でムスリム女性を雇用するという誓約を求めていくとともに、ムスリム女性が安心して職場に応募できるよう誓約に応じた企業のリストを作成する予定である。

プロジェクトではそうすることで、ドイツにおけるムスリム女性に対する差別を軽減し、雇用を増進させることを目指している。

『ニューヨーク・タイムズ』がドイツの「宗教研究メディア・情報サービス」の情報を引用して先月報じたところによると、ムスリムの人口は、人口8100万人のドイツにおいて、キリスト教徒の4900万人に対して、人口の約5%を占めるという。

同記事は、ハンブルグ・ホルン地区の労働者集住地域に長らく放置されていた教会をモスクに改修することを巡って論争が強まっている現状を報じたものだ。

ハンブルグにある「イスラムセンター『アルノア』のダニエル・アブディン代表はニューヨーク・タイムズの取材に対して、「教会は10年間も放置され、だれも気にしていませんでした。しかし、ムスリムがそれを購入する段になって、急に話題の種となったのです。」と語った。

ゴレソルキ氏は、IPSの取材に対して「私が立ち上げたNPO「共に、それとも、なしで」(With or Without: WoW)は、最も抽象的な形態において、ドイツという国の2つの重要な側面である移民と宗教の交わる領域における問題に取り組むことを目的としています。」と語った。

ドイツの法律や多様な社会的構成、そして、反イスラム感情の拡大(イスラム恐怖症)、(とりわけ9・11以降の)ムスリムに対して差別的な法律の制定に関して、移民と宗教はドイツの国民形成プロセスにおいて重要な役割を果たしてきた。

ゴレソルキ氏によれば、ドイツにおけるムスリム人口は、1990年の250万人から2010年には410万人へ増え、2030年には550万人にまで増える見通しだという。

ドイツにおけるムスリム移民の3大出身地は、トルコ、旧ユーゴスラビア、モロッコである。

ムスリムの存在が相当程度に、かつ継続的に大きくなってきていることで、国家や社会において様々な反応が顕在化してきている。

2008年の調査でインタビューされた人々の大部分(72%)が、「マイノリティ集団の人々がこの国の文化的生活を豊かにする」と答えているものの、同じ年のデータが示すところでは、ムスリムがもっとも望ましくない隣人であるという答えが出ている。

さらに、ドイツにおける調査回答者の23%がイスラムをテロと結び付けて考えている。また、16%が、ムスリムが頭に被るスカーフである「ヒジャブ」はヨーロッパ文化への脅威だと考えていた。

ベルテルスマン財団」が2014年末に行った反イスラム感情に関する最新調査によると、非ムスリム回答者の57%がイスラム教を「きわめて脅威的」だと答えている。また、24%がドイツへのムスリム移民の禁止に賛成し、過半数の61%がイスラム教は「西側」社会にそぐわないと考えていた。

近年の反ムスリム感情の文脈においてとりわけ注意すべきなのは、欧州の「イスラム化」なるものを拒絶し、移民政策の刷新を求めるPEGIDA(西側のイスラム化に反対する欧州愛国者)の台頭であろう。

前出のゴレソルキ氏のプロジェクトは例えば、ムスリム女性がドイツ労働市場で働く準備をする「ジョブ・レディ」(Job Ready)セミナーやワークショップ、象徴的にムスリム女性を雇用するよう使用者に促していくオンライン、オフライン双方(ツイッターと写真)の「私は誓うキャンペーン」、ドイツの雇用部門におけるムスリム女性の困難についての意識を喚起するオンライン、オフライン双方(ツイッターと写真)のキャンペーンなどがある。

誓約したことで雇用が保証されるわけではないが、ムスリム女性の雇用に前向きな企業のデータベースをWoWが作成することが可能になる。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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オクサパンパの再森林化:ペルーの課題と優先事項

【リマIDN=フェルナンド・トーレス・モラン】

オクサパンパは、ペルー高地ジャングル地帯のパスコ県にある郡である。ここには、国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)が2010年に認証したオクサパンパ・アシャニンカ・ヤネシャ生物圏保護地区がある。

ここには、ヤナチャガ・チェミレン国立公園(面積12万2000ヘクタールで、ワンカバンバ、オクサパンパ、ビジャ・リカ、ポスソ郡に広がる)やサンマルティナス・サンカルロス保全森林(面積14万5818ヘクタールで、パルカズ、プエルト・ベルミュデス、ビジャ・リカ地区に広がる)といった自然保護区域がある。

Pronaturaleza

数十年にわたって同地帯では森林が破壊されてきた。自然保護に取り組むペルーの非政府組織「プロナチュラレザ」は、ヤナチャガ・チェミレン国立公園で森林が違法に伐採されていたことを問題視している。タイムやスギ、イチジクなどの木から10万枚の厚板が取られたとされる。

この地域では貧困のために、先住民族らがこの伐採に関わっている。彼らは、違法な伐採業者からわずかばかりのお金をつかまされて、割り当てられた地帯において森林を伐採する許可を得るのである。

生物多様性が豊かなこの地帯の森林破壊の歴史は、木々が倒され他国へ輸出され始めた20世紀中盤にまでさかのぼる。最初の伐採地帯は60年前に設置された。

時が過ぎるにつれ、伐採業者は地帯外の部門にも手を伸ばすようになり、歴代政権の下で野放図かつ監督なしの伐採がなされることになった。かつては森林が豊かであったオクサパンパ山岳地帯は、植生の乏しい地域に変わってしまった。

さらに、この状況は農業活動の拡大によって悪化している。土地は果実生産向けに転用され、牛を育てる牧畜用に利用された。これは、人々の移住現象につながることになった。利用され尽くした土地は、再生されることなく放置され、農業用に新しい土地が求められた。

オクサパンパ地区で長く伐採業を営んでいるマデレラ・ボゾヴィッチ社のイヴォ・ボゾヴィッチ社長によれば、農業・畜産が森林破壊の原因の87%を占めているという。「なぜなら、それによって森林が伐採されたり燃やされたりするからだ。これが起きると、3年も経てば土地はだめになってしまいます。」とボゾヴィッチ氏は語った。

一部の環境保護活動家らによれば、いくつかの伐採地帯では持続可能な形で活動が続けられている。伐採されるのは十分育った木だけで、若い木々は残したままにされている(ある種の間引き)。かりにこれが事実だとしても、他方では、森林は無差別に利用され、かつては木々が覆っていた広大な土地は丸裸にされている。

Map of Peru
Map of Peru

今日、事態は好転しているように見える。ペルーは、国連加盟国であり、持続可能な開発目標(SDGs)にコミットしている国として、「気候変動緩和に向けた国家森林保全プログラム」を実施に移している。衛星監視システムが利用され、環境省の下で、違法な森林伐採を阻止・起訴する特別の規則が適用されている。

また、森林破壊と違法森林伐採の防止、統制、起訴などのための11の主軸を備えた計画戦略がこのプログラムには含まれている。

さらに今日、「森林・気候変動国家戦略」も策定されている。この目的は、「森林破壊と森林の劣化を食い止め、温室効果ガスの排出を抑制する」ことであり、公的・民間両部門の参加を促している。

一つの例は、オクサパンパ郡を含む様々な地方の14地域と協力し、持続可能な土地管理を確立している「プロナチュラレザ」の活動である。

同様の取り組みが、SDGsの第15目標(陸上生態系の保護、回復および持続可能な利用の推進、森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および逆転、ならびに生物多様性損失の阻止を図る)を達成するために求められる。

ProNaturaleza

政府が設定した目標のひとつは、2030年までに少なくとも200万ヘクタールで再森林化を達成することであり、地域コミュニティーも、小さな行動を通じてこの目標に寄与することができる。

オクサパンパ郡キジャズ町にある「アナ・モガス教育研究所」の事例は、持続可能な開発と利益追求が両立しうることを示した一例だ。10年前、同研究所は、3ヘクタールの土地に3300本のユーカリの木を育てていた。8年後、その木から取れた木材を売って、教育目的で15台のコンピュータを購入することができた。

生徒の保護者からの寄付と協力によって木を植えることが可能になった。これは、管理された森林伐採と商売の可能性に気づき始めた人々にも利益をもたらす森林再生と持続可能な開発プロジェクトの好例である。

にもかかわらず、さらなる政府の取組みが求められる。たとえば、ヤナチャガ・チェミレン国立公園では、資金不足のために森林監視員がわずか20名しかいない。これでは森林全体をカバーすることは不可能だ。オクサパンパ森林・動物技術管理局では、管理業務に携わっている職員がわずか2名で、公園を監視することができずにいる。

SDGs Goal No. 15
SDGs Goal No. 15

ペルー政府が同国最大の公園のひとつである同公園にさらなる投資をすることが必要だ。ヤナチャガ・チェミレン国立公園には、インカ・ヤネシャ文化時代からの考古学的な遺跡が残っている。また、2584種の植物相、59種の哺乳類、427種の鳥、16種の爬虫類、31種の魚類を含む動物相を含んだ、世界的にも豊かな公園である。

数百年にわたって同地域に居住してきた先住民族社会には、尊厳を持って自然と共生してきた生活の知恵がある。必要なものは、より多くのエネルギーと資源を投じて彼らにツールと知識を提供し、大企業ではなく(もちろん、違法伐採業者ではなく)先住民族自身が地域の資源を抑制的に利用することで利益を得ることができるようにすることだ。

ペルー政府は、同国の広大な土地の保護と再森林化に向けた長期計画を策定する方向で、重要な措置を採ってきている。にもかかわらず、それぞれの地域の特定の問題を解決するためにさらなる予算と関心が必要とされている。(原文へ

翻訳=INPS Japan

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冷戦期にソ連による核実験で100万人以上が被爆した経験を持つカザフスタンは、独立と同時に核実験場の閉鎖と当時世界第4位の核兵器を全廃した経験を持つ。国連などを舞台に、広島、長崎への原爆投下という核兵器による被ばく経験がある日本と連携して、核実験の全面禁止と核廃絶を国際社会に訴えている。

At the 25th UN Conference on Disarmament Issues in Hiroshima 26-28 August 2015, International Press Syndicate interviewed the Kazakh Deputy Foreign Minister Yerzhan Ashikbayev on Japan-Kazakh move to facilitate the entry into force of the Comprehensive Test Ban Treaty (CTBT) as soon as possible.

INPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between Inter Press Service(IPS) and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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