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女性をエンパワー、人間をエンパワー:絵に描いてみよう!(プムジレ・ムランボ‐ヌクカ国連ウィメン事務局長)

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【国連IPS=プムジレ・ムランボ‐ヌクカ】

おおよそ20年前、世界の人びとが北京に集い、第4回世界女性会議に臨みました。そこで189か国の政府が「北京宣言及び行動綱領」という、ジェンダー平等に向けたロードマップを採択しました。

1万7000人以上の政府代表団と3万人の活動家が、女性・女児が人生のあらゆる局面において平等の権利、自由、機会を持てる世界を描き出しました。

この20年間で進歩は見られたものの男女平等を達成したと言える国はありません。今こそ世界はもう一度女性・女児のために結集してこの旅を完結する時にきていると思います。

国連ウィメン」は、北京女性会議で描かれたビジョンにもう一度息を吹き込むため1年間に及ぶキャンペーンを立ち上げました。私たちの目標は簡潔で、つまり、ジェンダー平等や女性のエンパワーメント、人権を実現する取り組みを新たにし、アクションを強化し、そのための資源を増大させることを目指しています。私たちはこの取り組みを「女性をエンパワー、人間性をエンパワー:絵に描いてみよう。」のスローガンのもとに進めています。

UN Women
UN Women

北京宣言は、世界中の女性・女児が持つ12の重大関心領域に対処する行動について示しています。

政府、民間部門、そのほかのパートナーは、女性・女児の貧困を減らし、教育・研修を受ける権利を保証し、女性・女児を差別や暴力から守り、健康(性やリプロダクティブヘルスを含む)を守り、技術革新がすべての人に利益をもたらし、女性が社会・政治・経済に平等に参加できるよう、努力することが求められています。

それでも今日、私たちは進歩を祝うことができます。学校に通える少女は増え、仕事を持つ女性、選挙に勝つ女性、指導的な地位につく女性も増えています。しかしどこの国でも、どこの地域でも女性は女性であるという理由だけで未だに差別を受けています。

私たちはそれを日常的に目にしています。報酬の不平等、職場での機会不均等、公的及び民間部門での女性リーダーの少なさ、児童婚の悲劇、世界中で3人に1人の女性(それは欧州の全人口より多い)が経験する暴力の猛威など…。

おそらくもっと驚くべことは、もし北京での交渉が現在行われていたら、もっと弱い合意にしか達せなかったであろうという事実です。私たちには、合意の完全履行に向けて前進しつづける義務があります。なぜなら女性・女児が差別や暴力で進歩を阻まれることは人類の損失だからです。

北京会議以来、女性をエンパワーすることは人類をエンパワーすることであるという疑いようのない証拠が次々と出てきています。

絵に描いてみて欲しい!

高いレベルのジェンダー平等を実現している国は経済成長率も高いのです。経営陣に多くの女性を迎えている企業はより高い利益を株主に還元しています。女性議員の比率が高い議会では、より広範な問題を検討し、保健や教育、反差別、子ども支援に関してより多くの決議を採択しています。男女一緒に作り上げた平和合意はより長く続き、安定しています。

女性が受ける教育が1年長くなるごとに、小児死亡率が9.5%減少するとの研究結果があります。女性農民による資源とサービスへのアクセスを平等化すると生産が増強され、1億5000万人の飢餓が減らせます。10年後には10億人の女性が世界経済にかかわることになります。彼女たちが平等な機会を持てるようになれば、私たちの将来の繁栄への流れを大きく変えることができるでしょう。

私たちはこのような未来図を現実のものにしていかなくてはなりません。現在どこの国も2015年までにミレニアム開発目標を達成し、(その後継となる)新しいグローバル開発計画を策定するための努力を続けています。

北京宣言及び行動綱領」は女性のエンパワーメントおよびジェンダー平等に関する、これまででもっとも包括的な世界的合意です。ただし、実行されていればですが!

UN Photo/Milton Grant
UN Photo/Milton Grant

私たちは、この一世一代の機会を利用してジェンダー平等、女性の権利、女性のエンパワーメントをグローバルアジェンダの中心にしっかりとすえなければなりません。それは、正しい行動であり、人類にとって最善の選択なのです。

男性・男児は今まであまりにも長く沈黙を保ってきましたがUN Womenの#HeForSheキャンペーン(彼女のために彼ができること)などによって、やっと立ち上がり、女性・女児の人権について声を上げるようになってきました。男性・男児もぜひ私たちと手を携えていってほしいと思っています!

北京会議から約20年が経過した今、世界は男女平等のビジョンを実行する用意ができています。

今日私たちは、ジェンダー平等を実践している人びとや効果的な取り組みに焦点を当てて、その進展状況を確認する「北京+20」キャンペーンを立ち上げ、全ての国が、この20年における女性・女児の状況に関する報告を行うことになっています。またこのキャンペーンでは、北京綱領のビジョンを実現化するためにあらためて行動を開始するよう、各国の指導者や一般市民に呼びかけています。

6月にはスウェーデンで多くの人が女性・女児の人権保護のために集まることになっており、9月にはニューヨークで気候サッミットが開かれ、女性国家元首や活動家が環境保護分野で女性が果たす役割を主張します。またインドでは11月に男性・男児がジェンダー平等への支持を力強く訴えることになっています。

そして、来年3月8日の「国際女性デー」には、世界中の人々がよりよい世界の実現に向けて声を上げることになっています。

私たちは、ともに男女平等を実現していかなくてはなりません。もう時間を無駄にできないのです。

女性をエンパワー、人間をエンパワー。絵に描いてみよう!(原文へ

※プムジレ・ムランボ‐ヌクカは国連ウィメン事務局長、元南アフリカ共和国副大統領。

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【アブダビWAM】

「中東では紛争に直面している諸地域からの死と破壊に関するニュースが絶えないなか、5月13日、サウジアラビアから新鮮な変革の兆しを予感させるニュースが飛び込んできた。」とアラブ首長国連邦(UAE)の英字日刊紙が報じた。同日、サウジアラビアのサウード・ファイサル外相が、「我が国の政府は、イランのモハンマド・ジャヴァード・ザリーフ外相にリヤドを訪問するよう招待状を渡している。」と明らかにし、イラン政府も「招待を歓迎する」と応じたのである。

昨年8月のイラン大統領選で、前政権下で悪化した米国および近隣諸国との関係改善を訴えて当選したハサン・ロウハニ新大統領は、駐イランサウジアラビア大使に対して「両国間の対話と協力は中東地域全体の安定にとって重要であり、両国の関係改善の可能性は高い。」と述べていた。

そうしたことから、ザリーフ外相が昨年12月に湾岸諸国を歴訪(クウェート、カタール、オマーン)した際には、イランと地域最大のライバルであるサウジアラビアとバーレーンとの間に関係改善の動きが出るのではないかとの期待が湾岸地域全体に広がった。しかし同外相の湾岸諸国歴訪は今年4月のUAE訪問をもって終了し、結果的にサウジアラビアとバーレーンを外す形となっていた。

「中東各地の紛争はイランとサウジアラビアの代理戦争の様相を呈して既に長年が経過している(両国はサウジアラビア及びバーレーン国内のシーア派への支援や、レバノンのヒズボラ、イエメン北部のアルホウシ族への対応を巡って対立してきた:IPSJ)ことから、中東地域が抱える諸問題の大半は、イランとサウジアラビアの関係改善が進めば解決されるはずだと一般に考えられる傾向にあるのは無理もないと言えよう。」とガルフ・ニュース紙は5月17日付の論説の中で報じた。

またガルフ・ニュース紙は、「従って、両地域大国の間で関係改善が進めば、両国の国民はもとより、むしろ(両国の支援を背景にした)宗派闘争による社会分裂に悩まされてきた近隣諸国の利益にかなうことになるだろう。」と報じた。

「中東における全ての紛争の責任をサウジアラビアとイランの対立に求めるのは誇張しすぎだろう。しかしその多くについて解決の鍵を握っているのが両国であることは、ほとんど疑いの余地がない。とりわけイエメンイラク、レバノンといった国々の内戦は、両国の協力なくして解決の見通しは立たないだろう。」

また同紙は、「サウジアラビアとイラン両国は中東地域全体に対して両国間の食い違いを解決する義務がある」と強調したうえで、「そうした対立点の解消は(武力によるものではなく)交渉のテーブルに臨んで行う必要があるという姿勢を示したことは、成熟の兆候であり、中東地域に対して両国が負っている極めて重要な責任を認めたことの表れだろう。」と報じた。

「中東地域の命運と諸問題は域内においてのみ解決が図られるということを、サウジアラビアとイラン両国が理解して初めて、真の意味での永続的な平和が中東で実現することになるだろう。域外の諸大国は今後も、中東地域への進出を図っては、各々の都合で去っていくだろう。従ってそうした域外勢力がいつまでも中東の国々の隣国との関係を規定し続けることはできない。それができるのは中東域内の国々自身なのである。」とガルフ・ニュース紙は報じた。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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89%のアラブの若者が万博開催によるアラブ世界のイメージ向上に期待

【ドバイWAM】

新たに発表された意識調査によると、アラブ首長国連邦(UAE)で2020年に開催予定の万国博覧会(万博)について、89%のアラブ人青年が国際社会のアラブ世界に対する認識を向上させる効果が期待できるのではないか、と見ていることが明らかになった。

ASDA’A Burson-Marsteller『アラブ人若者意識調査』最新版によると、「UAEの万博招致成功は、国際社会のアラブ世界に対する見方にプラスに作用すると思うか?」との質問に対して、全回答者の62%が「そう思う。」、27%が「そうかもしれない。」と回答。一方、「期待できない。」と回答したのはわずか4%だった。なお、「分からない。」と回答したのは7%であった。

Arab Youth Survey 2014
Arab Youth Survey 2014

国際世論調査会社「ペン・ショーン&バーランド(PSB)」(ASDA’A Burson-Marstellerの関連会社)はこの度、これまでで最大規模となった第6回『アラブ人若者意識調査』を発表した。今回は湾岸協力会議(GCC)加盟国6カ国に加えて、イラク、エジプト、ヨルダン、レバノン、リビア、チュニジア。モロッコ、アルジェリア、イエメン、そして(今回初めて)パレスチナにおいて、18-24歳のアラブ人青年男女3500人を対象に面接調査を実施した。

「MENASA(中東・北アフリカ・南アジア)地域で史上初となる2020年万博のドバイ誘致の成功は、同市を将来世界有数の国際都市にすべく邁進してきたUAEにとって大きな転機となる出来事でした。また今回の誘致は、ドバイ市が、同地の多様な文化や、世界クラスのインフラ、未来を見据えた明確なビジョンを記念する世界クラスのイベントを主催できるとの信任を国際社会から獲得したことを意味しています。」とASDA’A Burson-Marstellerのスニル・ジョンCEO(最高経営責任者)は語った。

Dubai Expo 2020
Dubai Expo 2020

2013年11月、UAEは他の最終選考候補都市(ブラジルのサンパウロ市、ロシアのエカテリンブルク市、トルコのイズミル市)を下して、2020年万博のドバイ市への誘致に成功し、中東初の万博主催国となることが決定した。6か月間に亘るドバイ万博開催期間中には、世界から2500万人の観光客とUAE全体で277,000人分の雇用創出が見込まれている。

ドバイ万博の開催はアラブ世界の国際イメージ向上にプラス効果が期待できると回答したアラブ青年の回答率は、当然ながらUAEの85%が最も多かった。しかし、レバノン(67%)とモロッコ(66%)でも若者の間に大きな期待があることが明らかになった。またこうした回答率は、GCC加盟国の平均で64%、非加盟国の平均で61%であった。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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【IPSコラム=ヘーゼル・ヘンダーソン】

日本の仏教者で創価学会インタナショナル(SGI)の会長である池田大作氏2014年の「平和提言」は、日常のニュースから、人類共通の未来を確かなものにするためのより平和的で平等、持続可能な人間社会に向けたより長期的な関心へと私の焦点を引き上げてくれました。これらの幅広い関心は、今では、個人的、地域的、国家的な目標を超越した何百万人もの世界市民によって共有されています。

私たちの社会の既存のしくみの崩壊は、今では日常的な危機を引き起こしています。しかし同時に、人類が新たな解決策を求める中で新たな突破口も創り出しています。この惑星に38億年に亘って受け継がれてきた生命体に刻まれているように、ストレスは常に進化の手段であり続けてきました。

今日の危機は、いずれもシステム全体に及ぼす長期的な影響を考えることなく短期的な問題にのみ対処しようとしたかつての近視眼的な技術及び社会的革新の結果です。私が1960年代に人類がいかにして化石燃料を燃やしエネルギーを求めて地球を掘り起こしているかに関心を持ち、「世界未来協会」に参加したのは、まさにこうした問題意識からでした。当時私は、自分を含む母親たちが子どもを遊ばせていた公園に煤煙をまき散らしていた巨大な石炭発電所の近くに住んでおり、ニューヨークの汚れた空気を浄化する運動に率先して取り組んでいました。

それから時代は流れて2014年になりましたが、私は今でも徹底した未来主義者であり、「人類15のグローバル課題」を追及する「ミレニアムプロジェクト計画委員会」のメンバーでもあります。私たちが今年発表した最新の『未来展望レポート』では、これらの課題に対処するにあたってどの分野で前進し、どの分野で不足があるのかを検討しています。これらの課題とは、①持続可能な開発と気候変動②水③人口と資源④民主化⑤長期的な政策決定⑥情報技術のグローバル化⑦貧富の格差⑧健康⑨意思決定の能力⑩紛争解決⑪女性の地位の改善⑫越境組織犯罪⑬エネルギー⑭科学技術⑮グローバル倫理です。この「ミレニアムプロジェクト」には、50か国の学界、政府、市民社会、産業界から専門家が参加しています。

同時に、私が尊敬する『地球対談 輝く女性の世紀へ(Planetary Citizenship)』の共著者であり、1200万人の会員のリーダーである池田大作SGI会長も、今年1月に2014年の「平和提言」を発表しています。1928年生まれの池田会長は、1983年以来、毎年平和問題をはじめ様々な地球的問題を解決するための提言を行ってきており、世界で最も著名な世界市民の一人です。

Daisaku Ikeda/ Photo Credit: Seikyo Shimbun
Daisaku Ikeda/ Photo Credit: Seikyo Shimbun

池田会長の「地球革命へ価値創造の万波を」と題された2014年の「平和提言」は、国連が取り組んでいる課題、つまり、(2015年に期限を迎える)ミレニアム開発目標(MDGs)の後継目標に関連して、191の加盟国が2012年の「リオ+20会議」で策定した持続可能な開発目標(SDGs)について言及しています。今やこれらの目標には、化石燃料や原子力から、現在進行中の、より分権的で、クリーンで、環境にやさしく、知識を豊かにするグリーン経済への移行が取り込まれています。私も、近著『太陽光時代への地球的移行を整理する』(2014)の中で同じような結論に至りました。人類が化石燃料やウラン、原発、核兵器の使用をやめることは、2014年の「グリーン移行成績表」で言及された多くの報告書で述べられているように、現在の技術によって今や実行可能となっているのです。

多くの国の政治的意思は依然として、特殊権益や従来からのしがらみがあるセクターからのロビー活動やカネ、そしてその歪んだ補助金の人質状態にあります。世界の市民運動が年金基金や大学の財団に働きかけて、化石燃料から、よりクリーンで環境にやさしく、より持続可能な領域へと投資を移すよう圧力をかけています。ジェレミー・グランサム氏ロバート・A・G・モンクス氏といったベテラン金融専門家たちが、汚い資産よりもしばしばよいリターンを見せる「化石燃料フリー」なポートフォリオを提案する資産マネージャーらとともに、こうした批判の輪に加わっています。より安価な風力や太陽光、効率的な代替案の存在によって米国や欧州で原発が廃炉になる中、アジアの多くの国は依然として原発を計画しています。今や太陽光発電で世界をリードする中国からしてそうなのです。

古いパラダイムと机上の理論に導かれた盲目を変えるためには、大胆な発想の転換が必要です。そうしたものの一つが、プランク財団による「イランは太陽光を使う」という開発提案で、もしイランがこれを採用すれば、民生用原子力開発の権利に関するすべての政治的論議に終止符を打つことが可能となります。またイランは、これによって、全ての(対イラン経済)制裁や、中東に新たな核保有国が生まれるかもしれないとのイスラエルの懸念を打ち消すことができ、さらに、来たる(2015年5月の)核不拡散条約(NPT)運用検討会議に「(いい意味で)衝撃を与える」ことができるのです。

池田会長は正しくもNPTの下での「(核兵器の)不使用」協定を求めていますが、プランク財団の計画はこれまでの発想を根本的に変革するものといえるでしょう。イランは、中国の太陽光エネルギー会社の株を取得し、できるだけ多くのソーラーパネルを購入することで、核燃料と化石燃料の両方からの移行を加速することが可能なのです。またこれは、原子炉や火力発電所を建設するよりも、はるかに安価な代替案と言えます。

そうすれば、イランの豊かな石油備蓄は、燃やしてしまうよりも、産業利用のための貴重なストックとして地下に保存されることになるでしょう。実は私は1965年にNBCで放送された「トゥデイ・ショー」のなかでこれをすでに提案していたのです! また、プランク財団の「イランは太陽光を使う」計画の詳細に見ると、(イランから)中国へと向かうシルクロードに沿って鉄道網を拡大するとともに、これまで多くの砂漠地帯で海水を利用した農業を拡大してきた「デザートコープ」(DeseatCorp)の技術を取り入れて、塩水を好む植物で沿線の砂漠地帯を緑化する計画が提案されています。

今日の私たちが直面している既存のしくみの崩壊は、長らく未来主義者と世界市民が提案してきた新たに体系的な計画と突破口を実際に生み出しつつあります。私たち共通の未来とグリーン経済に資するこうした諸計画については、「倫理的市場メディア」(米国およびブラジル)で余すところなく報じられていますが、主流メディアでは見落とされていることが少なくないのが現状です。

翻訳=INPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between Inter Press Service and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

※ヘーゼル・ヘンダーソン氏は「倫理的市場メディア」(米国およびブラジル)代表で、「グリーン移行成績表」の創始者。

│朝鮮半島│ルールを打破する

【ワシントンIPS=ジョン・フェファー】

小規模な低開発国家は、国内で突然石油か金でも発見されない限り、世界の中で不利な状況に立たされる。こうした国々は、ルールに従っているだけでは、将来においても低開発国のままである。この半世紀で第三世界から世界の富裕国入りした国はほとんどない。

韓国はその一つの例外だ。韓国はこの開発ギャップを「幸運」と「決意」、そして「ルールを打破する意志」によって、なんとか乗り越えてきた。「幸運」とは、韓国がベトナム戦争時におかれていた戦略的な立ち位置のことで、米軍の軍需を支える企業が戦争特需の恩恵に浴した。

Flag of South Korea
Flag of South Korea

「決意」とは、多くの犠牲を払ってもあえて子どもたちを大学に送り、韓国を農民の国から技術者や医師、弁護士の国へと変貌させた韓国民衆の気概である。

3つ目の「ルールを打破する意志」というのは、もっとも問題含みのものかもしれない。1960年代から70年代の開発独裁政権は、原料輸出という比較優位に甘んじることなく、当時のルールに従っていれば他国から輸入していたであろう鉄鋼、自動車、造船といった分野への投資をあえて戦略的に進め、世界を主導する産業へと育て上げた。こうした最新技術への献身が、のちにコンピューター、ソフトウェア、コミュニケーション分野で新機軸を生み出す韓国経済の素地を作ることになった。

北朝鮮もまた、コメコンとして知られるソ連主導の経済協力ブロックの支配下に入ることを拒否し、韓国と同じように独自路線を歩んでいった。しかし(韓国とは異なり)資本主義グローバル経済から締め出された結果、この独自路線はまもなく壁にぶつかることとなり、70年代以降北朝鮮経済は衰退していった。

しかし北朝鮮は、ついにルールを打破して世界の列強と伍していくための別の方法を見つけだした。北朝鮮の経済規模は韓国と比較して相対的に縮小していったため、抑止力としての通常戦力を維持し続けるだけの軍事費予算を確保することが困難になっていた。

Flag of North Korea
Flag of North Korea

そこで北朝鮮は、より安価な選択肢として「核兵器開発」に舵を切ったのである。しかし、これによって北朝鮮は、国際的ルールを破り、米国を敵に回すことになってしまった。

イラクのサダム・フセインやリビアのムアンマール・カダフィなど他の独裁政権による類似した試みがことごとく失敗したなかで、これまでのところ、金王朝はこの戦略である程度の成功を収めたようにみえる。つまり経済は依然として低迷し国際社会による厳しい経済制裁に喘ぎながらも、政治体制はほぼ影響を受けることなく3代目へと引き継がれているのである。

こうしていずれもルールを打破しながら各々の国家開発路線を進めてきた北朝鮮と韓国であるが、今日両国が置かれている状況は大きく異なるものである。北朝鮮は今やのけ者国家であり、最も近い同盟国であるはずの中国からさえ、疑念を持った扱いを受けている。それとは対照的に、韓国はグローバル経済と西側同盟諸国との安全保障ネットワークへの統合を成し遂げている。

また北朝鮮の場合、ルール破りのマイナスの影響は明らかである。つまり政治体制は維持されたが、それは民衆の犠牲に依るものであった。一方韓国の場合、ルール破りのマイナスの影響はもう少し慎重に考えてみる必要がある。

例えば、韓国社会では数十年で富裕国に追いつくという野望を実現するために、「(法令違反)ショートカット」が横行し、時にその致命的な欠陥を露呈している。

その結果、韓国では長年に亘って安全対策が軽視され、建設関連の大事故がいくつも起こっている。例えば、70年代には臥牛アパートが、1994年には聖水(ソンス)大橋がそれぞれ崩落、さらに[1995年には]三豊(サムプン)デパートが崩落し建物倒壊事故として古代ローマ時代以来最悪といわれる500人以上が死亡した。これらの3つの事故は、いずれも建設会社による法令違反が原因だった。

先日の大型旅客船「セウォル号」転覆事件も、同じような法令違反、とりわけ安全軽視により引き起こされた悲劇だった。事故は起こるものである。しかしその事故が一時的な不便をもたらすもので終わるか多くの人命を奪う大惨事に発展するかは、日頃から防災にどれほどお金と時間を費やしているかで結果が異なってくる。「セウォル号」転覆事件の場合、実際には多くの人命を救える時間があったにも関わらず、乗務員はこうした不測の事態に対する準備が全くできていなかったことが明らかになっている。

しかし少数の人々による不正行為をもって、その社会全体を非難するようなことはしてはならない。多くの点で、北朝鮮と韓国は双方とも、例えばより自由奔放な(無責任な)米国よりもはるかに規則に縛られた社会である。しかし、朝鮮半島の両国民は、善かれ悪しかれ、深層心理のレベルにおいて、ルールとは強者に対して有利に働くものであるということを認識している。

課題は、ルールを打破することで無法者の誹りを買うのではなく、それを正当な地位を獲得するための手段に如何にして転換するか、その方法を見出すことである。この意味において、ルールの打破とは、蹴飛ばされる前に成功の頂点を極めるために用いる「梯子」のようなものでなければならない。今や韓国は、ルールを順守するグローバル経済の一員なのである。

もし北朝鮮が核開発計画の放棄と引き換えに平和条約の締結と安全保障、経済開発支援の確保に成功したならば、北朝鮮も同様のトリックを成し遂げられるかもしれない。

北朝鮮と韓国が直面する最大の試練はまだこれからである。世界的に貧富の格差が拡大し続けている今日、両国はいかにして共同でルールを打破し、両国間の巨大な経済的、政治的、社会的ギャップを乗り越えなければならない。

東西ドイツが統一した際に見られたようなこれまでのルールは、強者が弱者のそれまでの体制を否定した形で、丸ごと呑み込むというものであった。

しかし北朝鮮と韓国が、(東西ドイツの場合よりは)より平等な形、すなわち、北朝鮮の一般大衆に韓国人のように振る舞うよう強制するのではなく、むしろ彼らのこれまでの貢献や視点を尊重した形で、南北朝鮮の再統一を成し遂げるためには、それぞれの「ルール破り」の伝統を朝鮮半島全体の新たな正当性の源に転換していく必要がある。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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【カイロIPS=レイチェル・ウィリアムソン】

小さなかすれ気味の声で話すレイラさん(仮名:19歳)は悲しそうな眼をしている。彼女の顔には無数の傷跡があるものの、きちんとした身だしなみからは、彼女が9年間もカイロ北部の路上で生活を余儀なくされてきたとはとても思えない。

レイラさんはIPSの取材に対して、「父に強姦された時はまだ子どもだったの…。」とぽつりぽつりと語り始めた。その後母親にうそつき呼ばわりされ、残りの家族からも拒絶された彼女は、暴力から逃れたい一心で家から飛び出した。そしてふと気が付くと、近年増え続けるカイロの危険な路上で暮らす若い女性の仲間入りをしていた。

路上生活は楽ではなかった。そこで彼女を待ち受けていたものは、暴力、性的虐待、警察による嫌がらせなどだった。なんとか仕事にありついても、路上で生活していると雇い主に知れると解雇された。

昨年、こんな生活から抜け出せる展望が開けたかに見えた。エジプト北東部シャルキーヤ県出身の男性と結婚することになったのだ。しかし、彼女が妊娠すると、今度は義理の母親から家を追い出された。夫に助けを求めたが、無駄だった。

レイラさんの話は、近年エジプトでこのような身の上話がますます一般的になってきているだけに(具体的なデータがあるわけではないが)、なおさら恐ろしい響きをもって記者の心に伝わってきた。

ヘンド・サミー氏は、貧しいエル・サレク・サレー地区でホームレスの母親たちのためのNGO「バナト・アルガド」(通称「私の娘」を意味するバナティの名で知られている)を運営している。

壁には写真や子どもたちが明るい色で描いた絵が飾られていた。記者が施設を訪問した時には、職員が朝食のテーブルをまだ片付けている最中で、各階の廊下や階段では子どもたちが楽しそうにはしゃぎ回る姿が見受けられた。

他に取材した人々と同じくサミー氏も、2011年以来、路上に住む少女、それも子どものいる少女が増えてきたと感じている。

2009年、全国児童母親協議会(NCCM)はエジプトのストリートチルドレンの数を5299人だと発表した。しかし、NGO「エジプト児童保護協会」の1999年の推計では200万人としている。

「バナティ」「プランエジプト」「ホープビレッジ」などのNGOは、ホームレスの母親を対象に待ち望まれていた法的・医療・社会的支援を提供している。NCCMや社会連帯省といった政府機関にもストリートチルドレンのニーズに応えるプログラムがあるが、カイロ以外では対象を絞り込んだ支援活動は殆ど実施されていないのが現状だ。

カイロのアメリカン大学のシャーリー・ワン研究員は、政府とNGOの連携が悪く二重サービスが生じている点と、ストリートチルドレンを「汚い」「犯罪者」とする一般認識を誰も変えようとしない問題点を指摘した。

このような一般認識は、女性の純潔を重んじる社会で弱い立場に置かれている若い女性にとってとりわけ危険である。

この点についてレイラさんは、「ストリートチルドレンは、人間ではなく犬のように見なされているわ。」と語った。

エジプトでストリートチルドレンの擁護を訴えているネリー・アリ氏は、自身のブログに14歳のバスマという名前の少女が置かれている境遇を紹介している。上エジプトに暮らしているバスマの祖父は、彼女が近所の男に強姦された家族の「恥」を世間の目から隠すとして、生まれた子供を鶏舎に閉じ込めているという。

現在はベルリンに在住しているアミラ・エル・フェキ氏は、以前「ホープビレッジ」で12歳から18歳の路上生活している少女たちを世話していたことがあり、IPSの取材に対して路上生活に潜む危険について次のように語った。「路上生活をおくる多くの少女がなんらかの形で性的暴力を経験していました。中には、性的虐待を伴う関係を強いられていたものや、強姦され売春婦として働くことを強制されているものもいました。」

こうした過酷な環境にいる少女たちにとって、薬物が一時の慰めになっていることが少なくない。フェキ氏は、少女らの中には頭痛やストレスから一時的に解放されるとして鎮痛剤を常用しているものや、夜間寝ている間に襲われるリスクを避けるために覚せい剤を使用しているものもいる、と語った。

路上生活者の中で最も弱い立場にあるのが子どもを抱えた若い母親たちで、彼女たちには法律による保護が最も及んでいない。

「彼女たちには何の権利も保障されていません。だからこそ彼女たちの保護を訴えるNGOがあるのです。」と「バナティ」のラニア・ファミー代表はIPSの取材に対して語った。

ファミー氏は、2014年のエジプト新憲法のうち、路上暮しの人々を助けるために使える条項が2つあると考えている。ひとつは、人身売買を禁じた第89条で、立場の弱い若い女性を、一時的な「結婚」の名目で身売りされるリスクから保護する第一歩となるとみている。もうひとつは、子どもを暴力と搾取から守る国家の義務を規定した第80条である。

また第80条は、エジプト史上初めて「子ども」と分類されるべき法的年齢を条文に明記したものである。この点についてファミー氏は、「2012年の憲法改正時には、ムスリム同胞団側に児童婚を合法化させたい思惑があったことから、当時の(同胞団主導の)ムハンマド・モルシ政権が、子どもの法的年齢を明記することに反対しました。しかし新憲法の発布により、今では子どもは全ての18歳未満の国民を指します。」と語った。

憲法によると、国民には身分証明書を持つ権利が認められている。しかしレイラさんは生後3か月になる息子の話になると不安で声を震わせていた。この幼児は一見健康そうだが、同年齢の幼児と比べると体重が少なく、さらに出生証明書がないということだった。

出生証明書がなければ、この子は教育や保険診療といった公的サービスを受けることができない。そこで「バナティ」や「ホープビレッジ」では、ホームレスの母親が子供の身分証明書を入手するのを支援する法務部門を設けている。

しかし国連児童基金(ユニセフ)のハビエル・アグイラ児童保護官によると、「ホープビレッジ」がこの5年間でID獲得にかろうじて成功したのは僅か2~3件に過ぎないという。

さらにアグイラ氏は、「エジプトの児童保護法はなかなかよくできており、条文を読む限り地域密着型の取り組みなども含まれています。しかし、せっかくの法律も実施に移されていないのが問題なのです。公共サービスを実際に機能させるには途方もない努力を必要とします。」と語った。

レイラさんは人生の半分を路上で過ごしてきた自身の経験から政府が何をすべきか心得ている。彼女は、行政にはホームレスのための住居の整備や、仕事・医療・教育の提供を行ってほしいと考えている。

しかし、それ以上に重要なのは、彼女のように本人が望まない人生を送らざるを得ない人々への共感だという。「この子にはこんな生活を経験してほしくないわ。世間の人たちには、私たちのような境遇にある人たちの気持ちに寄り添ってほしいと訴えたいです。」とレイラさんは語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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【国連IPS=タリフ・ディーン

マーシャル諸島のトニー・デブルム外相が、先月国連で開催された核不拡散条約(NPT)運用検討会議第3回準備委員会での演説で、「この会場におられる方々の中で、直接核爆発を見たことがある方はどれほどおられますか?」と問いかけた。

はたして、会場は水を打ったように静かになった。

60年前にビキニ環礁「ブラボー」核実験が行われた当時まだ9才の少年だったデブルム外相は、核爆発の瞬間に生じた白い閃光を鮮明に覚えている。デブルム外相は、核軍縮を支持する国が大半を占める準備委員会の代表団を前に、「(その際の)核爆弾は、広島を壊滅させた原爆の1000倍の破壊力を持っていました。」と語った。

Marshall Islands politician Tony deBrum/ By U.S. Department of State - This file has been extracted from another file, Public Domain
Marshall Islands politician Tony deBrum/ By U.S. Department of State – This file has been extracted from another file, Public Domain

2015年NPT運用検討会議に向けて2週間に亘って開催された準備委員会は、予想どおり、残念な結果に終わった。

核政策法律家委員会」の事務局長で「国際反核法律家協会」(IALANA)国連事務所の代表であるジョン・バローズ氏は、IPSの取材に対して、「準備委員会は2015年会議に向けた議題の採択に成功した。」と指摘したうえで、「しかし、驚くことではないが、その他には何の成果もなかった。」と語った。

マーシャル諸島政府を支援する国際法律顧問団の一員であるバローズ氏は、準備委員会での最も劇的な出来事は、マーシャル諸島が4月24日に9つの核保有国を訴えたと発表したことです、と語った。9か国とは、国連安保理の常任理事国である米国、英国、フランス、中国、ロシアに加え、イスラエル、インド、パキスタン、北朝鮮である。

ハーグの国際司法裁判所(ICJ)に提起された訴えでは、これらの国々が、NPTおよび一般国際法の下における核軍縮および核軍拡競争停止の義務に違反している、と主張している。

1946年から58年にかけて米国は67回の核実験を行い、人口わずか6万8000人超のマーシャル諸島の人々に対して今日に続く健康・環境被害を引き起こしている。

1970年に発効したNPTは5年ごとに運用検討会議を開催するよう定めている。前回の会議は2010年に開催された。

現在核保有国でNPTへの参加を拒否しているは、インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮(いったん加盟したが後に脱退)のみである。

大量破壊兵器(WMD)に関する国連安保理会合の議長を務めた韓国の尹炳世(ユン・ビョンセ)外交部長官は5月7日、「北朝鮮は21世紀に入ってから核実験を行った世界で唯一の国です。国際社会の努力にも関わらず、北朝鮮は20年にわたって核兵器開発を続け、いまや4回目の核実験を強行しようとしている。」と指摘したうえで、「もし北朝鮮が核兵器取得に成功すれば、NPT体制にとっては深厚な打撃となり、北東アジアにおける緊張と不安定状態は悪化するだろう。」と語った。

今回準備委員会の議長を務めたペルーのエンリケ・ロマン・モレイ大使は、準備委員会は来年開催予定のNPT運用検討会議に向けた行動計画に合意できなかったことを認めた。ただしその原因は「時間切れのためであって、政治的意思の欠如のためではない。」と述べ、準備委員会は交渉のための場ではないと指摘した。

交渉担当者を悩ませる問題は何かという質問に対してロマン・モレイ大使は、核問題が討論される際には、交渉の対象となる文書の「最初の文字から最後の文字に至るまで」問題が持ちあがる、と語った。

準備委員会が出した「作業文書」(翌年の運用検討会議に示す「勧告案」に各国が同意できなかったため議長の勧告草案を修正する形で各国の意見を列挙したもの:IPSJ)が、運用検討会議における先々の交渉の基礎となる。

NPTでは、全ての加盟国が、非核兵器国に核兵器を移転したり、あるいは、核兵器の製造または取得を支援または奨励してはならないことになっている。

同様に、各非核兵器国は、核兵器を受領したり製造・取得したりしない義務を負っている。

バローズ氏は、「今回の準備委員会は、これまでの運用検討会議に先立つ準備委員会と同じく、運用検討会議に向けた勧告に関して合意に至ることができませんでした。」と語った。

多くの国が、妥協的文書(勧告草案)を採択しようとするロマン・モレイ議長の努力に協力しなかった。この点についてバローズ氏は、「公式核保有国が、核軍備管理・核軍縮に関して2010年運用検討会議で行った公約を、実質的に次の5年間に持ち越すべきと主張したのに対して、非同盟運動(NAM)やその他の非核兵器国からなる諸グループは、予見可能な将来において、核兵器を検証可能な形で時限を切って廃絶できるような、より包括的な行動計画を採択すべきだと主張して意見が対立したのです。」と語った。

さらに多くの非核兵器国が、ロマン・モレイ議長が提示した勧告草案は、ノルウェーおよびメキシコで開催された「核兵器の非人道性に関する国際会議」、および、国連総会が昨年9月に招集した史上初の「核軍縮に関するハイレベル会合」における勧告内容をもっと十分に取り入れるべきだと主張した。

ICAN
ICAN

バローズ氏は、来年の運用検討会議に向けて重要な問いを検討するべく、準備委員会の討論で方向性が打ち出された、と語った。その問いとは、「非核兵器国は、合意された成果に仮に結びつかないとしても、2015年運用検討会議において、核兵器なき世界の実現に関する多国間協議へのうねりを生み出すよう主張すべきか?」というものである。

2010年の運用検討会議ではこうした方向で真剣な努力がなされたが、核保有国からの反対にあった。

「それとも、(非核兵器国は、)1995年、2000年、2010年の運用検討会議でそうであったように、ほとんど実行にも移されないような小幅な合意をまたなすべきだろうか?」とバローズ氏は語った。

しかし、こうした公約のほとんどは、2015年運用検討会議がどうなろうと、依然として有効かつ意義のあるものである。

またカントリーマン氏は、「米国は、5核保有国が合意した共通の枠組みを用いて、2010年行動計画の主要要素の履行に関してこれまでに実施した措置をまとめた我が国の国別報告書を提出する予定です。」「また、疾病対策、食料安全保障の向上、水資源の管理といった原子力の平和利用を進めるための国際原子力機関(IAEA)のプログラムへの我が国の貢献についても強調する予定です。」と語った。(原文へ

米国務省国際安全保障・不拡散局のトーマス・M・カントリーマン次官補は準備委員会で、「米国政府は2015年会議において、NPTの44年の歴史においてその種のものとしては初めて64項目の包括的な行動計画に合意した2010年運用検討会議の成功を基礎としてゆく所存です。」と語った。

翻訳=IPS Japan

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注目を浴びるナイジェリア拉致問題

【ワシントンIPS=ジム・ローブ】

イスラム過激派武装集団「ボコ・ハラム」が先月中旬(先月14日深夜から15日未明)にナイジェリア北東部ボルノ州チボクで寄宿舎学校を襲撃し、女子高生200人以上を拉致したというニュースが、今月上旬から米国でも注目を集めている。

政治家や活動家らが、米政府に対して、ナイジェリア政府を支援して拉致被害者の所在を特定し救出するよう強く求める一方、主要テレビネットワークも、朝晩の報道番組で拉致された少女らに関する最新情報を伝えるなど、こぞって報道合戦を繰り広げている。

指導者のアブバカル・シェカウが5月5日のビデオ声明の中で「少女らを奴隷として売り飛ばす」と脅しをかけたボコ・ハラムについては、オバマ政権内外のアフリカ専門家の間では、従来からその凶暴さと北アフリカ及びサヘル地域の他のイスラム過激派との結びつきが指摘されてきたものの、一般の米国人の間では全く無名に近い存在だった。ところが今回の一連の報道で、一気にその悪名を馳せることとなった。

「政策研究所」のアフリカ専門家エミラ・ウッド氏は、「メディアは拉致事件が発生した当初は、この問題に注目していませんでした。」と指摘したうえで、「しかし今では、ミシェル・オバマ大統領夫人が『少女を取り戻せ』(#BringBackOurGirls)というハッシュタグを書き込んだパネルと掲げた自身の写真をツイートし、ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーもこの問題解決を訴える発言をしています。」と語った。

ジョージワシントン大学のスティーブン・リビングストン教授(政治コミュニケーション論)は、「米国のほとんどの報道機関や米国民にとって、ナイジェリアは日常的に意識する対象とはなっておらず、例えば米国民の大半は、世界地図上でナイジェリアの場所を特定するのは難しいでしょう。」と指摘するとともに、このニュースを国際社会が注目するスポットライトの下に持ってきた功績は、ソーシャルメディアを積極的に活用したナイジェリアの市民社会組織にある、と語った。

またリビングストン教授は、「とりわけ子供を持つ人々にとっては、このニュースは、感情的なレベルで非常に理解しやすい話題です。ボコ・ハラムの所業は明らかに悪であり、事件を理解するのに多くの時間を必要としません。(誘拐された少女たちの救済を訴える)署名運動には、気持ちよく応じられるトピックです。」「その点では、ウガンダ中央アフリカ共和国の一部を10年以上に亘って恐怖のどん底に陥れてきた『神の抵抗軍(LRA)』の指導者ジョセフ・コニーの逮捕と、そのための米軍の関与強化を訴えた30分のユーチューブビデオが数千万人に視聴され、社会現象となった『Kony2012』と類似しているといえるでしょう。」と語った。

オバマ政権は、『Kony2012』キャンペーンが始まる前から、コニ―と側近の動きを追跡、妨害、そして最終的には捕まえるため100人の軍事顧問団(緊急の場合には戦闘に対応はできるが、その任務はあくまで、コニ―と側近幹部の排除を目的とする現地国軍パートナーに対する情報提供や助言に限定:IPSJ)を周辺諸国に派遣している。驚くにあたらないが、ボコ・ハラムについても、拉致された少女たちを救出しLRAの場合と類似の措置をとるよう、オバマ大統領に対する国民の風当たりが強まっている。

President Barak Obama
President Barak Obama

これまでのところ、オバマ政権の対応としては、ナイジェリアのグッドラック・ジョンソン大統領が各国から受入れていると報じられている軍事顧問並びに現地治安部隊との連絡調整及び情報提供・助言を任務とする総勢10人の「連絡班」を派遣したにとどまっている。

また米当局は、拉致された少女たちが連行されたと思われるナイジェリア北部と周辺地域を対象にした無人偵察機による捜索体制を構築していることを明らかにした。米軍は、カメルーン、チャド、ニジェールに無人偵察機の基地を持っている。

しかし米連邦議会議員の中からは、より強力な軍事介入を求める声が日増しに強まっている。共和党のスーザン・コリンズ上院議員は、5月8日、CNNの取材に対して「少女たちを救出するために特殊部隊を派遣すべきだ。」と語った。

同様に、情報特別委員会の委員長をつとめている民主党のダイアン・ファインスタイン上院議員も「連絡班の派遣はあくまでも問題解決に向けた第一歩の措置に過ぎません。この卑劣な罪を犯したテロリストを見つけ出して捕獲、取り除くために必要な措置ならば、なんでも支持するつもりです。」と述べている。

女性上院議員20人全員が、ボコ・ハラムに対してより強力な措置をとるよう訴える書簡に署名した。さらにそのうちの数名は、5月8日、女性に対する暴力の防止と対策を米外交官と対外援助事業の最優先事項に義務付ける「国際女性に対する暴力反対法(I―VAWA)」案を上院に再提出した。

全米3大ネットワークで平日に放映されるイブニングニュース(夜の30分ニュース番組のうち約22分)の内容を1988年以来統計にして蓄積している「ティンドール・レポート」を発行しているアンドリュー・ティンドール氏も、先述のウッド氏と同じく、米国のマスメディアが事件発生時ではニュースを無視し、2週間後の5月8日になってようやく取り上げた点を指摘した。

ティンドール氏は、「問題は、不注意というより、これがセンセーショナルな話題だということに(メディアが)気付くのに時間がかかったということでしょう。」「サハラ以南地域の問題は、特に米国人が関わっていない場合は、通常主要メディアでほとんど取り上げられることはありません。しかしこの事件の場合は、女性の教育を受ける権利を否定するアルカイダとのつながりが疑われるイスラム過激派武装集団が関与していることや、少女たちが寄宿学校から誘拐されるというセンセーショナルな側面があったことから、例外的に強い注目を集めることになりました。」と語った。

またティンドール氏は、昨年タリバンの襲撃を生き延びて少女の教育を受ける権利を訴えるグローバルキャンペーンを率いたマララ・ユスフザイさんに関するニュースがメディアで大いに注目された事例を挙げながら、「イスラム社会における少女教育の問題は、視聴者の注目を浴びるトピックであることが証明されています。」と語った。

「しかし、本来ならば事件発生直後に大きく取り上げられるべきところがそうはならず、先週になって突然全米のメディアが大々的に報じるようになったのです。」とティンドール氏は指摘した。

5月8日以来、全米の3大ネットワークは全体の放映時間の約1割にあたる32分をこの「ボコ・ハラムによる女子高生拉致事件」に関する報道に充てている。またそのうち2つのネットワークは今週になって記者をナイジェリアに派遣している。この報道熱は、2012年の『Kony2012』報道(12分)を大きく上回るものである。

ちなみにこの32分の報道時間は、全米3大ネットワークが今年になって扱ったサブサハラアフリカ関連の最大のニュースである、南アフリカ共和国のオスカー・ピストリウス氏の裁判に関する報道時間の半分弱を占めている。

義足をつけた南アの陸上選手で恋人を殺害したと疑われている有名人オスカー・ピストリウス氏に関する2013年における報道(51分)は、サブサハラアフリカ関連ニュースとしてはネルソン・マンデラ元南ア大統領の死去・葬儀関連の報道に次ぐものだった。ティンドール氏は、「ボコ・ハラムによる女子高生拉致事件」に関する報道は、今後も引き続き三大ネットワークの注目を浴びていく勢いだとみている。

しかし、ウッド氏もリビングストン氏も、メディアが騒いだことで強力な軍事介入が行われれば、逆効果になる可能性があると危惧している。この点について、リビングストン氏は、米国が軍事介入すれば、「ナイジェリア政府は西側石油資本や米英の傀儡」というボコ・ハラムの主張を裏付けるような形になってしまう恐れがあると指摘している。

ウッド氏は、米国は昨年末にボコ・ハラムをテロリストリストに加えたが、ナイジェリアでは現状に不満を抱いている貧しい若者たちの間で「かえって、ボコ・ハラムの地位を高める結果になった。」と指摘したうえで、「軍事介入は、拉致された少女たちの救出と問題の根本原因に対処するうえで、事態をかえって悪化させかねない。」と語った。

他方、右派勢力はこの事件を利用して政治的攻勢を開始した。ジョン・ボルトン元国連大使は、今回の拉致事件はイスラム急進勢力の危険性を「改めて示したもの」だと指摘するとともに、オバマ政権は北アフリカとサヘル地域におけるイスラム過激派武装勢力の拡大を無視してきた、と主張した。

またネオコン系のウィークリー・スタンダード紙は、(2016年民主党大統領候補として有望な)ヒラリー・クリントン前国務長官を、ボコ・ハラムをテロリストに加えるよう求める下級職員からの提言を認めようとしなかったとして批判している。(原文へ

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【ワシントンIPS=ミシェル・トゥロ】

米国政治における宗教の未来は、保守派よりもむしろ宗教的進歩派が担っている、と社会科学者らは言う。信仰を基盤にした運動が、社会正義を求める新たな運動に推進力を与えうる、というのだ。

ワシントンDCに本拠を置く米国のリベラル系シンクタンク「ブルッキングス研究所」の新たな報告書によると、現在の宗教的社会正義運動は、20世紀半ばの公民権運動の時期に比せられるという。

E.J. Dionne/ Brookings Institution
E.J. Dionne/ Brookings Institution

「現在、多くの点で公民権運動と類似する社会正義を求める宗教運動が、活発になってきています。具体的には、最低賃金、予算削減、移民といった問題を巡って、そうした動きが出てきているのです。」と、ブルッキングス研究所上席研究員で報告書の執筆にあたったE・J・ディオン氏はIPSの取材に対して語った。

「社会正義の問題に関しては、宗教は長らく革新勢力であり続けてきました。現在、ローマ法王フランシスコは、民衆が無意識に抱いてきた『宗教とは保守的な勢力』という通念に挑戦しています。…私たちは長らく、宗教的保守派にばかり着目してきましたが、宗教は右派にばかり存在するのではないのです。」

米国では、奴隷制の廃止や半世紀前に実現した公民権や社会福祉の制度化など、社会正義を追及する運動において、宗教集団が重要な役割を果たしてきた。にもかかわらず、宗教と進歩主義は、今日相容れないもののようにみなされることが少なくない。

例えば、この報告書によれば、白人の福音派(保守的な信仰理解に立つ米国のプロテスタント。伝統的に共和党支持者が多い:IPSJ)の中で、政府は貧富の格差を縮小するためにより多くのことをする必要があると考えていたのは47%だったのに対して、民主党支持層で同じような信念を持つ者は85%にのぼっていた。

こうした分裂は、過去20年間に亘って米国の宗教ランドスケープ(実勢)を特徴づけてきた2つの流れを印象づけるものである。ひとつは礼拝に定期的に参加する人の減少、もうひとつは保守的な「宗教右派」の台頭である。

またこの報告書によれば、2つの流れは互いに関連性を持っている。「多くのアメリカ人の若者は、信仰そのものではなく、指導者の中に彼らが見て取る右派的な傾向にうんざりしているのである。彼らにとって、『宗教』は『共和党』であり、『非寛容』であり、『同性愛嫌い』なのである。」

しかしディオン氏は、世俗化の傾向が進む一方で、「貧困層や社会から無視された人々のための運動、そしてまた、不平等の時代にあってますますプレッシャーを感じている米国の中産階級のための運動にとって、宗教界からの声は、今後も不可欠なものであり続けるだろう。」と語った。

ディオン氏はさらに、「人口統計によれば、この宗教界からの声は、保守的な勢力からのものではない」と示唆した。2012年の大統領選では、バラク・オバマ大統領と共和党の対立候補ミット・ロムニー氏に投票した宗教連合の年齢層は、相当に違っていた。

宗教面で自らを活発に活動していると考える人の中では、ロムニー投票層は基本的に高齢者が多く、一方、オバマ投票層は若い人が多かった。「この結果から明らかなことは、宗教右派が(米国政治の)未来への道を指し示すものではないということだ。」と報告書は指摘している。

教会組織の衰退

ブルッキングス研究所の研究者らは、社会正義を求める米国の宗教運動が初期にぶつかる厳しい問題について指摘している。

第一の難題は教会組織そのものの衰退である。1958年には毎週日曜日に教会の礼拝に参加する米国人が約49%もいたが、今日では約18%にまで落ち込んでいる。

このような衰退はそのまま、[運動の]連携の規模や、草の根活動に必要な寄付者の縮小につながる。さらに、これにはしばしば宗教組織への敬意の低下も伴い、敬虔な信者だと自認する人々と、世俗派だと自認する人々の間の分断が深刻化する傾向にある。

また宗教団体が、道徳的に曖昧な政治的手法に頼らずに、政治問題に関与しようとするときにも緊張が生まれる。例えば、多くの宗教的進歩派の指導者は、政治的取引の「見返り」供与的なやり方には与しようとしない。

また、宗教コミュニティー内部でのイデオロギー的分断、とりわけシングルイシュー(単一争点)団体からの反対は、社会正義活動家の活動を脅かしかねない側面もある。

例えば、様々な信仰に基づく草の根組織を支援している「人間開発のためのカトリック・キャンペーン」(CCHD)は昨年、214団体に900万ドル以上の資金を提供した。しかし、カトリックの反中絶団体が米カトリック司教会議(CCHDの上部組織)に対して、カトリック組織からの寄付を厳密に規制するよう要求した結果、活動内容が中絶や同性結婚の問題とはほとんど関係ないにもかかわらず、CCHDからの助成が打ち切られるケースがでてきている。

一方、多くの団体がこうした問題を乗り越えて活動を展開している。

Nuns on the Bus/Wikimedia Commons
Nuns on the Bus/Wikimedia Commons

この点で際立った事例としては、政府の貧困層支援プログラムを予算削減から守るために集まったキリスト教指導者の連合である「保護サークル」がある。また同様に、社会正義改革を求めて全米各地をロビー活動して回るカトリック尼僧の集団「バスの修道女たち」は、2012年の大統領選挙で重要な役割を果たした。

「今日、宗教からの声が非常に重要な理由のひとつは、とりわけ労働運動の弱体化に伴って、教会こそが、あまりに多数の貧しい人びとを代表する唯一の大衆組織になっているということです。」「例えば、私たちが行った調査では、地域開発の領域において、牧師が銀行からの注目を集めうる唯一の主体であることが明らかになっています。」とディオン氏は語った。

上記の報告書は、こうした宗教的進歩派の団体はきわめて活発で、しばしば成功をおさめているが、広く社会からの注目を集める広報手段に欠けていると指摘している。

連合の形成

倫理的投資を呼びかける機関投資家の団体「企業の責任に関する宗教横断センター」(ICCR)は、およそ半世紀の間、宗教横断的な観点から、米国内外の企業の意思決定に影響を与えるべく活動してきた(活動紹介映像)。

ICCRのローラ・ベリー代表はIPSの取材に対して、「率直に言えば、イデオロギー的あるいは政治的に意見を異にする人でも、ICCRの活動から得るものはあると思います。」「最終的に左派と右派が合意できるような領域はありますし、両者による連合を形成できるようなそのような領域を見つけることが、不平等における傾向を逆転させるための素晴らしい機会になるのです。」と語った。

ベリー代表は、昨年バングラデシュの商業ビル「ラナ・プラザ」(8階建て)が倒壊し、ビル内の衣料工場で働いていた1100人以上が犠牲となった事件以降のICCRの活動を紹介した。ICCRはそれ以来、合計の管理資産が4兆1000億ドル以上にも上る組織連合を形成し、160以上の企業に対して、海外工場の監察や労働監督官の雇用・育成、労働安全基準の強化を求めてきた。

ベリー代表によると、ICCR自身の経験が、このブルッキングス研究所報告書が示した傾向をいくらか説明しているという。

Pope Francisco/ Wikimedia Commons
Pope Francisco/ Wikimedia Commons

「幅広いキリスト教コミュニティーにおいて、イデオロギー的分断があるからと言って、不平等の問題に取り組まないわけにはいきません。…今日、この問題について声を大にして訴えるフランシスコ法王のような指導者が出てきており、人びとは『これは革新なのか、保守なのか』と自問自答を始めているのです。」

「ますます世俗化する革新勢力の声を含めた広範な連合が私たちの活動の力になっています。ICCRは当初は宗教系メンバーのみからなる組織でした。しかし今では、労働組合や資産管理者といった、世俗系のメンバーとも協力するようになっています。」

ベリー代表はまた、ICCRがブルッキングス報告書で指摘された多くの問題、とりわけイデオロギー的な分断の問題に直面している点を指摘したうえで、「一方で、重要な領域では両者の関心が重なっている部分があり、(イデオロギーの相違を乗り越えて協力できる)機会は多くなっています。」「例えば、福音派と進歩的キリスト教徒の間で、人身売買のような人権問題の分野で、積極的に協力関係を進めていこうとするよい兆候が出てきています。」と語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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【ワシントンIPS=ミシェル・トゥロ】

ニューヨークの国連本部で核不拡散条約(NPT)運用検討会議第3回準備委員会が翌週から開かれるのを前にして、世界の11の宗派から関係者含め100人以上の代表(宗教者、学術関係者、非政府団体関係者ら)が集い、世界の核兵器廃絶を目指す取り組みを強化することを誓い合った。

ワシントンDCのアメリカ平和研究所(USIP)に、仏教、キリスト教、ユダヤ教、イスラム教団体等を代表して参加した有力指導者らは、それぞれの教義によれば、核兵器による脅威は「受け入れがたく、廃絶されるべきである。」と述べた。

More than 100 representatives of 11 faith groups from around the world have pledged to step up their efforts to seek the global abolition of nuclear weapons. Credit: Courtesy of SGI
More than 100 representatives of 11 faith groups from around the world have pledged to step up their efforts to seek the global abolition of nuclear weapons. Credit: Courtesy of SGI

日本に本拠を構える仏教組織創価学会インタナショナル(SGI)がこの宗教間シンポジウム「いかに変革を起こすか―宗教コミュニティーと核兵器の人道的影響」(4月24日)を主催した。

シンポジウムの最後に採択された「共同声明」には、「核兵器の存在によって、人類は壊滅的破壊の脅威の中で暮らすことを余儀なくされています」「核兵器の使用により生じうる壊滅的な人道的結果は、数や統計といった手段で十分に伝えることは到底出来ません。合理的な分析も通常の想像力も、何の役にも立ちません。」と記されている。

この共同声明には、アメリカ・イスラム社会協会(MACCPAC)国内立法に関するフレンズ委員会パックス・クリスティ・インターナショナルなど14団体の宗教者が署名した。

今回の会議は、核兵器がもたらす人道的影響について検討した一連の国際会議の最新のもので、世界各国の代表者が4月28日から5月9日にかけてニューヨークに集い開催される準備委員会に先立って開催された。準備委員会は、不拡散および核兵器軍縮等のNPTの目標履行に関して、同じくニューヨークで開催される予定の2015年NPT運用検討会議の下地を作るものである。

創価学会の副会長でSGI平和運動局長の寺崎広嗣氏はIPSの取材に対して、「核抑止理論はかつてのようには機能していません。核兵器の脅威を削減する唯一の道は、核兵器のない時代を作ることなのです。」と指摘するとともに、「池田大作SGI会長は、『核兵器は必要悪ではなく絶対悪』だと述べてきました。」と語った。

プロセスを前進させる

Andrew Kanter Photo Credit: SGI
Andrew Kanter Photo Credit: SGI

この宗教間シンポジウムの目的の一つは、核攻撃直後の放射性降下物の問題に関する詳しい検討を含め、核兵器が及ぼしうる致命的な影響を具体的に示すことであった。

たとえば、「社会的責任を果たすための医師団」の前会長であるアンドリュー・カンター博士の基調講演では、小規模の核爆発でも、気候変動を促進し世界の農業を破壊することによって広範な飢饉を引き起こしかねないとの科学的知見が参加者に提示された。

このシンポジウムではまた、(核兵器がもたらす人道的影響について検討した一連の国際会議をボイコットしてきた)安保理五大国を、より広範な対話に巻き込む必要性も議論された。そしてその第一歩として、準備委員会の議長に、共同声明が提出される予定だ。

「私たちは、安全保障という言葉で何を意味し、安全保障をどう経験しているのかについて、改めて考えてみなくてはなりません。」「宗教団体として、私たちはこの種の問いを出す立場にあるのです。」とパックス・クリスティ・インターナショナルのマリー・デニス共同代表は語った。

NPTが発効した1970年以来、定期的に開催されてきた運用検討会議は、たとえばマーシャル諸島において実験目的で行われたものなど、あらゆる核実験のための爆発を禁止する包括的核実験禁止条約(CTBT)の他には、見るべき成功を収めてこなかった。

さらに、5つの核兵器国は2009年以来、毎年会合を重ねている。先週には北京で会合があり、過去の誓約を再確認するとともに、条約履行に関する各国の進展状況を明らかにする報告枠組みを具体化した。

Anita Friedt Photo Credit: SGI

またこのシンポジウムには、米国務省で核政策を担当するアニータ・フリート筆頭次官補代理も参加した。フリート氏は、核廃絶がなぜこれほどまでに進まないのかについて、次のように語った。

「なぜ私たちは、立ち止まって核兵器をなくすことができないのでしょうか? これは本当に困難な課題です。」「もし(米国政府が)今単純に『核兵器を放棄します』と宣言したとしても、他の国が必ずしもそれに追随するとは限りません。残念なことですが、表面で見るよりも事態はもっと複雑なのです。」

現在進行中のNPTでの協議には重大な機構上の課題もある。たとえば、米議会は1999年にCTBT批准に失敗し、バラク・オバマ大統領がロシアとの間で2010年に結んだ戦略兵器削減合意である「新START」をかろうじて批准したに過ぎない。

「(核軍縮の進捗状況は)私が望んでいるよりも遅いペースです。また、オバマ大統領が望んでいるよりも遅いペースです。」とフリート氏は語った。

しかしSGIの寺崎氏は、世界の宗教コミュニティーは、幅広い影響力を駆使して核軍縮プロセスに影響を与え加速を試みるうえで有利な立場にある、と語った。また、4月24日に開催された宗教間シンポジウムは、米国でこのような議論が行われた初めての機会であった、と指摘した。

「宗教コミュニティーの声に再び活力を与える手助けをするとともに、核兵器の非人道的な性質について世論を喚起する道を探っていきたい。」と寺崎氏は語った。

軍縮する義務

この宗教間シンポジウムが開催されたのと同じ日、マーシャル諸島政府は、米国および他の8つの核兵器国がNPTおよび国際法上の義務を果たしていないとして、国際司法裁判所(ICJ)に対する前例のない提訴を行った。

「(NPT)第6条は、核軍拡競争を終わらせ軍縮を進める協議を誠実に行う義務を定めています。」と語るのは、核時代平和財団の会長で、24日に提訴したマーシャル諸島政府の顧問を務めるデイビッド・クリーガー氏である。

「この裁判はそれぞれの核兵器国が自国の核戦力の近代化を進めている事実を示しています。核戦力の近代化を進めながら『誠実に(核軍縮を)交渉している』などとは言えないでしょう。」

中国、フランス、ロシア、英国、米国の5か国は現在NPTの加盟国である。しかし、マーシャル諸島は、インド、イスラエル、北朝鮮、パキスタンも提訴の対象に加え、これらの国々も国際法の下で同じ核軍縮義務に拘束されていると主張している。

太平洋のミクロネシアに位置するこの小さな島嶼国は、金銭的補償を求めて提訴したのではない。むしろ、9か国が条約上の義務に違反していることを確認し、誠実な交渉を開始する命令をICJが下すことを期待している。

クリーガー氏は、米国が1946年から58年にかけて行った核実験の結果としてマーシャル諸島は「重大な被害を被った」としている。

ICAN
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クリーガー氏はまた、「彼らは、自分たちが被った害を他の国や人びとに経験してほしくないと考えているのです。」と述べ、マーシャル諸島の住民は核実験が終わって以降も何世代にもわたって健康被害を受け続けていると指摘した。たとえば、死産や異常に高いガン罹患率の問題がある。

提訴された9つの核武装国のうち、ICJの管轄権を受諾しているのは英国、インド、パキスタンのみである。米国を含めた他の6か国は、NPT上の義務を果たしていない理由を陳述するために法廷に召喚されることはない。

他方、NPTに対する責任について米国政府からの答弁を確実に引き出すために、マーシャル諸島政府はサンフランシスコの米連邦地裁でも訴訟を起こしている。(原文へ

翻訳=INPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between Inter Press Service and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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