ホーム ブログ ページ 203

非核世界への道をリードするカザフスタン

【アスタナIDN=ラメシュ・ジャウラ、浅霧勝浩】

核軍縮の達成方法に関する国家間の見解の相違が大きくなる中、カザフスタンのような国が、共通の基盤と包摂的な対話に向けた道をリードしなくてはならない。そうしたリーダーシップこそが、私たちの世界を真に安全なものにしていくために緊急に求められている、と国連の潘基文事務総長が、「核兵器のない世界の構築」を目指す核軍縮国際会議に寄せた声明の中で各国に訴えた。

ヌルスルタン・ナザルバエフ大統領は、参加者を歓迎して、なぜ同国が核軍縮についてリーダーシップを取っているのかについて説明した。「1991年8月29日は、わが国にとっても世界全体にとっても歴史的に重要な意義を持つ日です。私たちは25年前、それまでほぼ40年にわたってこの大地と国民を常に苦しめてきた軍事主義がもたらした最も邪悪な実験(=核実験)に、法的な終止符を打ちました。また国際社会は、それ以前の数十年間にわたって、核兵器削減プロセスや核実験モラトリアムを通じて、核の脅威を引き下げる努力を続けてきました。」

ナザルバエフ大統領はさらに、「カザフスタンは、当時世界最大のセミパラチンスク核実験場を閉鎖する法令を採択することで『ゴルディアスの結び目』(核兵器依存という難題)を断ち切る最初の国になりました。この決定の後、すべての主要な核保有国の実験場は利用されなくなりましたが、未だに閉鎖はされていません。カザフスタンは核実験場の閉鎖に踏み切った初めての国になりました。これは我が国の国民の意志の力で実現したものです。従ってこの出来事は、地球全体にとっても重要な先例となっています。」と語った。

Semipalatinsk former nuclear weapon test site/ photo by Katsuhiro Asagiri
Semipalatinsk former nuclear weapon test site/ photo by Katsuhiro Asagiri

8月29日の国際会議は、カザフスタン共和国上院議会、同国外務省、核軍縮・不拡散議員連盟(PNND)の共催で首都アスタナの「独立宮殿」で開催された。

世界50カ国から、議員、宗教指導者、学者、科学者、医学関係者、法律家、青年、その他市民社会の代表らが会議に集った。国際機関の代表には、マイケル・モラー国連ジュネーブ軍縮会議事務局長、ラッシーナ・ゼルボ包括的核実験禁止条約機構準備委員会(CTBTO)事務局長、ジャヤンタ・ダナパラパグウォッシュ会議議長が含まれる。

他にも、PNND共同議長で列国議会同盟のセイバー・ホサイン・チョウドリー議長、汎アフリカ議会連合のロジャー・ヌコド・ダン会長、世界宗教会議のアブドゥル・マリク・ムジャヒド議長、創価学会インタナショナル(SGI)の石渡一夫平和運動局長も参加した。

潘事務総長は、「カザフスタンは、この会議を主催することで、『今一度』核兵器なき世界の実現を追及する同国のコミットメントを示しました。」と語った。

潘事務総長はまた、「カザフスタンは中央アジア非核兵器地帯の創設に主導的な枠割を果たしました。また、国連総会における「核兵器なき世界の達成に関する普遍的宣言」に関する決議案(70/57号)採択の原動力となりました。ナザルバエフ大統領は、核軍縮を世界の最重要課題とするよう呼びかけてきました。」と語った。

間もなく任期を終える潘事務総長の発言は的を射たものだった。この会議で採択された「アスタナ・ビジョン:放射線に汚染された霞から非核兵器世界へ」と題された宣言は、潘事務総長が熱心に掲げてきた国連の未完の課題を追求するうえでのカザフスタンとナザルバエフ大統領の歴史的役割を認めている。

宣言は、セミパラチンスク核実験場の閉鎖は「世界の軍縮の歴史の中で初めてのこと」だと述べた。

カザフスタン東部にあるこの実験場でソ連が行った456回の核爆発実験は、現在および将来の世代に対して、人間の健康や自然環境に壊滅的な悪影響を及ぼした。

太平洋、アジア、北アフリカ、北米を含めた世界各地の核実験の遺産や、広島・長崎への原爆投下の経験、事故・誤算・故意による核兵器使用のリスクは、核兵器廃絶をグローバルな重要課題に押し上げてきた。

Map of Kazakhstan
Map of Kazakhstan

宣言はまた、「我々は、世界第4位の核戦力を自発的に放棄し、包括的核実験禁止条約(CTBT)に加わり、中央アジア非核兵器地帯を創設し、核実験の危険と長期的な帰結に関して世界を教育するATOMプロジェクトを立ち上げ、国連を動かして8月29日を『核実験に反対する国際デー』に設定し、2015年に国連によって採択された『核兵器なき世界に向けた普遍的宣言』を主導し、戦争の惨禍を失くすためのマニフェスト『世界:21世紀』を促進したことに関して、ナザルバエフ大統領とカザフスタン国民のリーダーシップを賞賛する。」と述べた。

会議の参加者らは、非核世界の実現は21世紀の人類の主要な目標であるべきであり、この目標は国連創立100周年にあたる2045年までに達成すべきであるという、マニフェストで表明された願望を支持した。

宣言は、世界の指導者らが、核保安サミットやその他一連の国際的行動を通じて核兵器やその構成要素がテロリストの手に落ちることを防ぐ措置を講じたことを称賛した。そして、「核軍縮に対しても同様の高い優先順位を与える点でナザルバエフ大統領に続くよう」世界の指導者らに要請した。

宣言は、カザフスタンが国連安保理非常任理事国(2017~18)に選出されたことを歓迎した。「カザフスタンが他の安保理理事国と緊密に協力して、核拡散を予防し、非核世界の平和と安全を前進させるであろうと信頼している」と宣言は強調した。

宣言は、今会議においてナザルバエフ大統領が行った、核軍縮への顕著な貢献と核なき世界の達成に関する国際的な賞を創設するとの提案と、2016年にアスタナ平和サミットを開催するとの発表を支持した。

宣言は、諸政府に対して、とりわけ次のことを呼びかけた。

Closing Session/ K.Asagiri of INPS Japan
Closing Session/ K.Asagiri of INPS Japan

1.この会議が、セミパラチンスク核実験場閉鎖から25年、CTBT署名開放から20年という象徴的な年に開かれたことに鑑みて、CTBTを署名・批准していない国、とりわけ核保有国は、速やかにCTBTを署名・批准すること。

2.2010年NPT運用検討会議で採択された行動計画と、国際司法裁判所が1996年に確認した完全核軍縮に向けた交渉を行う普遍的義務に従って、交渉と実質的議論を開始すること。

3.1995年のNPT再検討・延長会議で合意されたように、中東非核・非大量破壊兵器地帯を創設すること。国連事務総長はこの任務を前進させること。北東アジアや欧州、北極においてさらに非核兵器地帯を創設すること。

4.すべての核兵器を高度な作戦準備態勢から外し、先制不使用政策を採用し、核兵器を使用するとの威嚇を控えることによって、核兵器使用のリスクを低減すること。

5.核兵器ゼロを達成するために、条約上・慣習法上の義務を完全に履行すること。

6.核兵器を禁止・廃絶するための多国間交渉を2017年に開始すること。

7.核実験や人口稠密地帯への核使用の禁止を含めた、核軍縮に関する中間的措置を国連安保理が支持すべきこと。

8.「核軍縮検証に向けた国際パートナーシップ」への参加を通じたものを含め、グローバルな核軍縮を検証・執行するための方法とメカニズムをさらに発展させること。

9.安全保障ドクトリンにおいて核抑止に依存することをやめ、そのかわりに、外交や法、地域メカニズム、国連、その他の平和的方法を通じた国際紛争の解決を目指すこと。

10.できるだけ早く、しかし確実に国連創設100周年までには核兵器を完全廃絶することを目指して、すべての核兵器国が核兵器備蓄を大幅に削減すること。

国際会議においてさまざまな分野間での協力が行われることは、核軍縮達成に向けたグローバルな運動を構築する基盤を提供する、と宣言は述べる。

Astana Conference: Building a Nuclear Weapon Free World
Astana Conference: Building a Nuclear Weapon Free World

会議の参加者らは、人類の将来を深く憂慮し、核軍縮分野におけるカザフスタンの例に刺激を受けながら、遠い将来のことではなく、「私たちが生きている間に核兵器なき世界の平和と安全を達成する可能性と必要性を確認」した。

しかし、これには政治的な決断が必要だ。潘事務総長がメッセージの中で述べたように、「政治的意志が、私たちの世界を支配している高価かつ分裂的で、危険な敵対関係を打ち消すために不可欠であり、それには私たちの共有された将来に向けたグローバルな連帯の感覚が伴わねばなりません。私は、核兵器なき世界というビジョンの実現に向けて前進するための政治的意志を呼び起こすことを、すべての加盟国に求めます。」(原文へFBポスト

翻訳=INPS Japan

関連記事:

国連と広島市民が核なき世界の実現を強く求める

核実験禁止へのとりくみ:カザフスタンが「アトムE」を開始(カイラト・アブドラフマノフ・カザフスタン国連大使)

「核兵器なき世界」推進のカギを握る2016年

会議参加者の一部が8月31日に参加したセメイ、クルチャトフ、旧セミパラチンスク核実験場視察の模様を記録した映像(浅霧撮影・編集)

Filmed by Katsuhiro Asagiri, President of INPS Japan
Filmed by Katsuhiro Asagiri, President of INPS Japan

|チリ|より公正な社会を求める木曜日

【サンチアゴIDN=ピア・フィグエロア】

チリの学生らは2011年以来、自由で良質な教育制度を要求して、毎週木曜に街頭に繰り出してきた。

こうした学生たちに、ラテンアメリカ全体で最も高い学費に悩まされている親たちや、教育キャリアの適切な評価を求める教員らも、徐々に抗議の輪に加わるようになってきている。

そして、事実上この5年間、毎週木曜日になると、こうしたデモ隊の抗議活動は放水砲や催涙ガスを用いた警察当局による弾圧を受けて、それが不幸な事故につながってきた。

Michele Bachelet, Presidente of Chile speaks during Special Session of the Human Rights Council. 29 March 2017. UN Photo / Jean-Marc Ferré
Michele Bachelet, Presidente of Chile speaks during Special Session of the Human Rights Council. 29 March 2017. UN Photo / Jean-Marc Ferré

現政権は、民衆を満足させる適切な対話を打ち立てられないまま、主要な教育改革の一環と見なされるいくつかの立法を行ってきた。ミシェル・バチェレ大統領はこれを「歴史的な」変革だと見なし、税制改革や年金制度改革、選挙制度改革、同性パートナシップ制度・中絶の権利などの市民的自由の領域における改革と並んで、自らの「遺産」のひとつと考えているようだ。

遠目から見ると、それは意味のある行動のパッケージのようにみえる。それは、チリの教育・経済・政治の基礎を変革してアウグスト・ピノチェト時代からの古いシステムを廃棄することをめざす立法提案である。他の取組みは、南米地域で最も保守的な国のひとつであるチリを近代化することを目指した社会変化を前進させようとしている。

しかし、おそらくは、民衆からの継続的な要求に耳を貸さず、密室で提案をまとめようとする政権のスタイルと形態のために、これらの提案のいずれも、合意や前進、よりよい将来といった感覚を民衆にもたらしていない。それどころか逆に、内閣支持率や大統領への支持率は一貫して低落傾向にある。バチェレ大統領への支持率は、チリ政府始まって以来の低率となっている。

バチェレ大統領が提案し2014年9月に施行された租税改革は、主に、教育制度の財源に変更を加えることを目的としたものであった。チリ政府は、国民総生産の3%にあたる83億米ドル分の増税を2018年までに行い、そのうち50億ドルを教育に割り当てようとしたのである。

しかし、法人税が増税され、個人向けの税が減税され、アルコール・砂糖入り飲料・大気汚染をもたらす乗用車の排出に対する付加税が創設され、租税回避に対処するメカニズムが作られたものの、経済はそれ以降減速し勢いが失われた。

今年、2016年10月、チリでは地方議員や首長を選ぶ選挙が行われる。これは各政党勢力を把握するための指標となり、改革後初の国政選挙が行われる2017年に向けての試金石となる。

これらの選挙では、下院議員の数が120人から155人に、上院議員の数が38人から50人に増員される。またこの選挙から候補者の少なくとも4割が女性であることが要件とされ、議会におけるジェンダー平等の強化が目指される。

おそらく、これらの変化は、ピノチェト独裁時代に形成された規則や標準に則って依然として統治されている国会ではなかなか声を聴いてもらうことができなかった新しい政治集団や院外勢力の強化に余地を与えることになるだろう。

「暗い時代」からチリが保持しつづけてきた全ての法的実情を打破することは、文化的保守主義との闘いでもあった。同性愛を犯罪化する法が廃止されたのは1999年のことであり、同性間のシビル・ユニオンが認められたのはようやく2015年になってのことである。

LGBT parade in front of La Moneda, Santiago de Chile/ By CiudadanoGay – Picasa, CC BY 3.0

しかし、いわゆるシビル・ユニオン合意(AUC)では、数年前に類似の法律を通過させた隣国のアルゼンチンウルグアイに後れを取ることになった。というのも、AUCは、法的な意味で資産を共有し、遺産や年金を受け取り、医療制度の利益を共有することをカップルに認める一方で、養子をとる権利を認めていないからだ。

市民的自由の領域では、中絶が今年に入ってようやく合法化された。ただし中絶が認められるのは、母親の生命に危険が及ぶ場合やレイプによる妊娠、そして、胎児の生存可能性がない場合の3つの場合に限られている。チリが、中絶がいかなる状況においても禁止され、タブーであり続けてきた世界でも数少ない国であったことを考えると、これは前進といえる。しかし、女性運動が中絶の問題を自らの身体に関する自己決定権であるとして要求しているレベルにははるかに及ばないものだ。

これらすべての改革によって、チリは国連の持続可能な開発目標(SDGs)に向かって前進していると言うこともできよう。また実際、そうなのだろう。

たしかに、チリはクリーンエネルギー源(太陽光、風力、地熱、小規模水力など)に向けてエネルギー構成を多様化し、エネルギーの効率化も進めている。イノベーション、海水の脱塩化、天然資源の効率的利用、砂漠化や気候変動への対応も、環境への高まる意識という文脈の中で遂行されてはいる。しかし、これだけでは不十分だ。

今日、チリの人々は社会変革を強く望んでおり、教育制度の大幅な変革をもって今の時代に区切りをつけたいと考えている。教育制度は、より平等な社会を目指すうえで基盤となるものと理解されているからだ。

SDGs Goal No.4
SDGs Goal No.4

教師からの要求の線に沿った教育キャリアが提案されている。それは、教師の声に耳を傾けることもなく、恣意的に教師を制限しようとする教育省によって課せられたやり方とは異なるものだ。教師らは、新たな教育キャリアに異議を申し立てる全国的な動きを組織し、大規模抗議の証として全土の学校で警鐘を鳴らし続けている。

チリの人々は、政府に対して、あらゆる社会階層のなかで生み出された社会的不平等と不満に終止符を打つよう望んでいる。

経済協力開発機構(OECD)が2015年11月末に「チリ経済調査2015」を発表したことはほとんど知られていない。この調査報告書にはチリが世界で最も不平等な国々に含まれることを示した、収入分配に関する最新の調査結果も含まれている。2006~11年にかけてのジニ係数は0.503であり、トルコやメキシコに並んで悪かった。ジニ係数は、一国の不平等さを測定する際に最もよく使われる指標である。

このOECD報告書は、最富裕層10%が最貧層10%の26.5倍の富を有し、OECD加盟国平均の100%を超えているチリに対し、より包摂的な経済成長を目指すように求めている。

これは受け容れがたい貧富の格差であり、彼らが毎週木曜にそうしているように、教育制度や年金制度に抗議するために民衆が街頭に繰り出す時、彼らが本当に訴えているのは、全ての人々が発展する機会を持ち、進歩が全ての人々の利益になるような、包摂的で公正な社会なのである。(原文へ

※ピア・フィグエロア氏は、プレセンサ・インターナショナル・プレス・サービスの共同代表。生涯の人文主義者、多くの論文・書籍の著者。

翻訳=INPS Japan

関連記事:

スポットライトを浴びる先住民族の語り

|国連|「2015年以後の開発アジェンダの中心に世界市民を」の声

母になることを強いられるニカラグアの少女妊婦たち

|日本|「神都」の伝統を守る若き市長

【東京IDN=ラメシュ・ジャウラ/浅霧勝浩】

鈴木健一氏は、今年5月に開催されたG7伊勢志摩サミットに際して日本の安倍晋三首相がカナダ、フランス、ドイツ、イタリア、英国、米国、欧州連合の首脳を出迎えた伊勢神宮がある伊勢市の市長である。伊勢神宮は日本で最も神聖な神社のひとつであり、天照大神を祀っている。

東京から約460キロ西に位置する伊勢市はまた、かつて衆議院議員を63年(1890年~1953年)務め、「憲政の神様」「日本の議会制民主主義の父」として今日なお尊敬を集めている故尾崎行雄(雅号〈ペンネーム〉は咢堂)氏の選挙区でもあった場所である。

尾崎咢堂記念館は、尾崎が逝去してから5年後の1959年に彼の政治家としての偉業を顕彰する施設として旧尾崎邸の土地と建物を伊勢市が譲り受けて開設したものだが、現在の建物は施設の老朽化に伴い2002年に全面改装したものである。

1930年代から40年代の前半にかけて、相次ぐクーデターと戦争を背景に政党政治の灯がかき消されようとしていたなか、尾崎は独立系無所属議員として、政治介入を強める軍部を痛烈に批判した。こうした自らの信念に基づき議会制民主主義の原理原則を貫き通そうとする尾崎の政治姿勢は、第二次世界大戦中に当局から危険視され、投獄されることもあった。しかし、戦後は一転して、反軍国主義・反ファシズムの姿勢を貫いた「議会政治の父」として時代の脚光を浴び、民主主義、軍縮、人権に対する尾崎の信念は幅広く評価されるようになった。

尾崎の民主主義的価値観に対する確固たる信念は、見解を異にする他者に対する寛容な態度に見出すことができる。1924年のある日、尾崎を暗殺しようとした青年の父親が尾崎に近づき、息子の行動について謝罪をしようとしたところ、尾崎は「国のため 命惜しまぬ 誠あらば 我を刺すてふ 人も貴し(もしその青年を私の暗殺へと駆り立てたものが愛国心に拠るものならば、それは称賛に値するものです。)」という短歌を詠んで応えている。

今回の取材に際して、鈴木市長は、NPO法人咢堂香風の土井孝子理事長とともに、まさにこの尾崎咢堂記念館の入口で出迎えてくれた。尾崎咢堂を顕彰するNPO法人咢堂香風(2006年設立)は、2010年より尾崎咢堂記念館の管理運営を委託されているほか、幅広い教育関連活動を展開している。

NPO Gakudo Kofu members escorting the 2015 US Cherry Blossom Queen and Hanamizuki Queen to Ise Grand Shrine/ Katsuhiro Asagiri of INPS Japan
NPO Gakudo Kofu members escorting the 2015 US Cherry Blossom Queen and Hanamizuki Queen to Ise Grand Shrine/ Katsuhiro Asagiri of INPS Japan

鈴木市長は、「今回G7サミットが伊勢志摩地域(伊勢市、鳥羽市、志摩市、南伊勢町の一部を含む伊勢志摩国立公園とその周辺を構成する志摩半島)で開催されたことについては、重要な歴史的な側面があります。それは、日本が次回ホストするまで向こう7年間はG7サミットが日本で開催されないというだけではなく、この伊勢の地が故尾崎咢堂の選挙区であったという歴史的な背景です。」と語った。

G7サミット開催地の首長として、来日した6か国の首脳を歓迎した鈴木市長は、そのことを誇らしげに思う十分な理由があるが、記者の質問に対して、市長は終始謙虚な面持ちで「政治活動においても企業活動においても、根っ子の部分は人の役に立つかどうかという点にあります。」と語った。

鈴木市長はまた、伊勢市が、通称「伊勢神宮」としても知られる「神宮」を擁することから「神都」の異名を持つ門前町であることを指摘したうえで、「私は伊勢市長として、何をする場合でも、『神宮』が体現している価値観に寄与すること、そして、世界平和の実現と人権の確立に生涯をかけて取り組んだ尾崎行雄の精神を生き続けさせていくことを、常に念頭に置くことにしています。」と語った。

鈴木市長のこうした信念は、移民問題にも向けられた。市長によれば、世界人権宣言や1951年の難民の地位に関する条約、1967年の難民の地位に関する選択議定書といった法的合意が結ばれているだけでは十分ではなく、国際合意に謳われている原理原則が実際に順守され人権が侵害されていないことが極めて重要だという。

G7 Ise-Shima Summit 2016 Logo
G7 Ise-Shima Summit 2016 Logo

「人が生きている限り、人権概念の根底にある精神が理解されており、世代を超えて継承されていくよう、不断の努力をしていかなければなりません。」と、鈴木市長は語った。

こうした観点から、鈴木市長は、アンゲラ・メルケル首相が、シリアや中東諸国における内戦から逃れて欧州に流入してきている多数の難民に対して「歓迎」の姿勢を示してきたことに対して、感銘を受けるとともに、その気持ちをメルケル首相に伝えた。

鈴木市長はまた、米国のバラク・オバマ大統領についても、感銘を受けていた。鈴木市長は「大統領就任直後(そしてまもなくノーベル平和賞を受賞した)オバマ大統領と、2期目最後の年にある現在のオバマ大統領を比較せざるを得ません。」と指摘したうえで、「この8年間、オバマ大統領は大変ご苦労されたということを見てて感じました。」と語った。

鈴木市長は、オバマ大統領が(米国による広島と長崎に対する原爆投下から71年を経て)広島を訪問する決定をしたことについて、高く評価している一方で、このことやオバマ政権に関する米国発の様々なニュース記事を読む限り、オバマ大統領は恐らく厳しい政治環境の中で慎重に行動せざるを得ないのではないかという印象を持っていた。

にもかかわらず、鈴木市長は5月27日のオバマ大統領による広島演説は、日米の歴史にとって新たな時代の幕開けにつながったと確信している。従来日本では、被爆者が存命中に米国の現職大統領による広島訪問が実現されるかどうか懸念する声が根強くあった。

「被爆者の平均年齢を考えると、被爆者自身が原爆の実体験を直接語ることができる状況はまもなく厳しくなってくることが予想されます。その観点から、オバマ大統領の広島訪問は、これによって日米関係の新たな時代へと前に進むことができるという意味で、大変素晴らしい出来事だったと思います。」と語った。

しかし鈴木市長は、被爆者より若い世代の一日本国民として、広島と長崎への原爆投下がもたらした惨状について、戦争を終わらせるために必要であり後悔する必要はないとの意見が海外において依然としてあることについて、どのように考えているのだろうか?

Shinzō Abe and Barack Obama shaking hands at the Hiroshima Peace Memorial Park/ Public Domain
Shinzō Abe and Barack Obama shaking hands at the Hiroshima Peace Memorial Park/ Public Domain

「まったくもってそのような考え方は理解できません。戦争を境に、それまで人を殺してはいけない、人を傷つけてはいけないという一線が、ある瞬間に敵を殺したことが勲章や称賛に変わる瞬間があります。」

「しかし、戦争中であっても、兵士が戦場で敵の兵士と戦い殺されるのと、生まれたばかりの赤ちゃんを含む民間人が原爆やその他の手段で無差別に殺されるのとでは、違いがあります。同じく、テロリストが民間人の間に潜り込んで、無辜の子供たちを殺戮することは、許されないことです。従って、私には民間人に対して原爆を投下する判断を支持すると主張する人々がいることが、理解できないのです。」と鈴木市長は語った。

Nagasaki 1945 - Before and after/ Public Domain
Nagasaki 1945 – Before and after/ Public Domain

オバマ大統領は広島訪問に際して謝罪すべきと考えているかとの私たちの質問に対して、鈴木市長は、「この質問に答えるのは容易ではありません。日本国民は恐らくオバマ大統領から謝罪の言葉を聞きたいと考えていると想像しますが、一方でオバマ氏は米国の大統領として同国の国益を代表する立場にあることも理解しています。このことを考えれば、日本の人々の感情はそれとして、まずは米国の現役大統領が広島訪問を決断したことを評価すべきだと思っています。」と語った。

「それでは、オバマ大統領が(原爆投下について)遺憾の意の表明や謝罪はしなかったが、広島を訪問し被爆者と面会したことは、よかったと考えておられますか。」と鈴木市長に尋ねたところ、「オバマ大統領の広島訪問は、米国内で様々な議論を呼び起こすことになったと理解しています。また、今回の訪問は日本にも大きなインパクトを残しました。私は、日本と米国双方において人々が賛否両論で議論したこと、その事実を最重要視したいと考えています。なぜなら、こうした議論が次のステージへとつながっていくと思うからです。」と鈴木市長は語った。

今回のインタビューは、2009年11月から現職の40歳の市長との印象的な出会いとなった。鈴木市長は、記者らの質問に対して、政治用語や外交用語に訴えるのではなく、尾崎行雄と2000年の伝統に裏打ちされた「神宮」が象徴する精神を踏まえて、率直にご自身の見解を語ってくれた。(原文へ

翻訳=INPS Japan

関連記事:

米国民は、もし挑発されれば核攻撃を容認か

オバマ大統領の広島初訪問でも核兵器禁止は進まず

世代を超えて受継がれる平和と友情の絆

国連安保理、極度の飢餓を引き起こす紛争について説明を受ける

【ベルリン/ローマIDN=ジャヤ・ラマチャンドラン】

国連安全保障理事会は、前代未聞とまでは言わないまでも極めて深刻な問題に直面している。「17カ国に影響を及ぼしている長引く紛争」の影響によって、5600万人以上が食料安全保障の「危機」あるいは「緊急事態」のレベルに追い込まれており、栄養不良の解消を目指す国際社会の取り組みも妨げられている、と警告されたのである。

同時に、国連環境計画(UNEP)世界資源研究所(WRI)が発表した最近の報告書によると、世界の食料生産の約3分の1(およそ1兆ドルに相当)が、食料の生産・流通・消費過程において廃棄あるいは浪費されているという。

暴力と飢餓の負の連鎖に巻き込まれている5600万人という数は、南アフリカ共和国の人口より約500万人多く、イタリアの人口より約500万人少ない。紛争によって食料安全保障が悪影響を受けている人々の数が最も多いのは、イエメンシリアである。

SDGs Goal NO.10
SDGs Goal NO.10

イエメンでは、人口の半数以上にあたる1400万人が、飢餓の危機か緊急事態にある。シリアでは、870万人(5年前の紛争勃発以前の人口の37%)が、食料と栄養、生存のための緊急の支援を必要としている。

国連食糧農業機関(FAO)世界食糧計画(WFP)が17カ国について調べた最新シリーズの報告書によると、現在レバノンに在留しているシリア難民の実に89%が、緊急の食料、栄養、生存のための支援を必要としている、としている。

紛争により食料安全保障が悪影響を受けている17カ国は、ハイチ、コロンビア(以上、ラテンアメリカ・カリブ海地域)、ブルンジ、中央アフリカ共和国、コンゴ民主共和国、ギニアビサウ、コートジボワール、リベリア、マリ、ソマリア、南スーダン、スーダン(アフリカ)、レバノン、イラク、シリア、イエメン(中東)、アフガニスタン(アジア)である。

加えて、イスラム過激集団ボコ・ハラムに関連した暴力によって悪影響を受けているのが、ナイジェリア、ニジェール、チャド、カメルーンである。この地域で居住地を追われた人々の数はこの2年で3倍になっており、飢餓と栄養不良も拡大している。

状況が急速に悪化している南スーダンでは、人口の4割にあたる480万人が緊急の食料や栄養、生存のための支援を必要としている、との認識を上記の国連2機関は示している。

中央アフリカ共和国やコロンビアのように内戦が長引いている国では、数百万人が極めて深刻なレベルの食料不足と闘っている。

その他の国で食料不足に直面している人びとの絶対数はより少ないが、厳しいレベルの食料不足を経験している人びとの割合は、全人口の半分を超える。

FAOのジョゼ・グラジアノ・ダ・シルバ事務局長とWFPのアーサリン・カズン事務局長は、安全保障理事会に対する説明の導入部分で、いかにして飢餓が紛争を助長し、さらなる不安定化を招いているかを説明した。「紛争は飢餓の主な発生原因となっています。現代におけるあらゆる飢饉は、紛争によって特徴づけられています。」と両名は警告した。

José Graziano in Itamaraty Palace press meeting/ Renato Araújo/ABr – Agência Brasil [1], CC BY 3.0 br

さらに両名は、「紛争は様々な面で食料安全保障に悪影響を与えています。例えば、作物や家畜、農業インフラの破壊、市場の阻害、避難民の発生、将来ニーズが満たされないのではないかとの恐怖と不安の創出、人的資本の棄損、そして疾病の拡大への寄与が挙げられる。紛争はまた、支援を求める人々に手を差し伸べようとしている諸政府や人道支援団体によるアクセスを阻むという問題もある」。

安全保障理事会がFAOやWFPから定期的に受ける紛争地帯の食料安全保障の状況に関する説明が重要であることは、安保理が「平和への脅威や侵略行為の認定を主導する」という事実に表れている。

両国連機関はまた、最新の推計では、世界の貧困層のおよそ半分が紛争や暴力で特徴づけられる国々に居住していると説明している。そうした国々では、より安定した状況下にある国々と比べ、栄養不良に陥る確率が3倍高くなる。

「飢餓の問題に対処することは、平和構築への意義ある貢献となる」とFAO・WFPの両事務局長は強調し、さらに、「持続可能な開発に向けた2030アジェンダは、平和は、開発の条件であると同時に、それ自体、開発のひとつの結果であるとも捉えている。」と語った。

安保理は、「平和構築委員会」(PBC)を関与させることによって、食料安全保障の「危機」や「緊急事態」のレベルに対応することができる。PBCとは、「紛争から抜け出そうとしている国々での平和の取り組みを支援し、広範な平和アジェンダにおける国際社会の能力を強化する政府間諮問機関」である。

平和構築委員会は、(1)国際ドナー、国際金融機関、各国政府、軍隊提供国をふくめたすべての関連主体を統合し、(2)資源を募り、(3)平和構築と回復に向けた統合的戦略に関して助言・提案し、適切な場合は、平和を妨げかねない欠点に焦点を当てるという、独自の役割を果たしている。

PBCが対象としている国々は、ブルンジ、シエラレオネ、ギニア、ギニアビサウ、リベリア、中央アフリカ共和国である。

国連は、世界のさまざまな地域において、紛争から平和への困難な道筋を案内する支援に巨額の費用を投じている。国連総会は今年6月17日、今後12カ月間で78億6000万米ドルを15件の平和維持活動に支出することを承認した。

World map of UN Peacebuilding Commission and UN Peacebuilding Fund locations. Current as of April 2012./By Nadhika99 – Own work. Information from organizations’ websites. Map derived from File:BlankMap-World6.svg by Canuckguy, released under PD-self. Map colored using Inkscape, CC BY-SA 3.0

2015年7月1日から16年6月30日までの会計年度に関して承認された予算は82億7000米ドルであり、これは、2013年に1兆7470億米ドルだった世界の軍事支出の0.5%にも満たない額だ。

2013~15年に国連平和維持活動に多くの分担金を支払った国のトップ10は、米国(分担率28.38%)、日本(10.83%)、フランス(7.22%)、ドイツ(7.14%)、英国(6.68%)、中国(6.64%)、イタリア(4.45%)、ロシア連邦(3.15%)、カナダ(2.98%)、スペイン(2.97%)である。

2016年7月1日~17年6月30日の会計年度の国連平和維持活動は、スーダンのアビエイ地区、中央アフリカ共和国、コートジボワール、キプロス、ダルフール、コンゴ民主共和国、ゴラン地区、ハイチ、コソボ、リベリア、マリ、ソマリア、南スーダン、西サハラ、ソマリアである。これらの国々の多くが、緊急の食料不足に陥っている。(原文へPDF

翻訳=INPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

関連記事:

|児童労働|シリア危機の隠された悲劇

「男女の双子」がもたらす気象被害の緩和に奮闘する国連

毎年数百万人もの人々が飢える一方で、数億トンの食品が捨てられている。

核兵器の法的禁止協議に広範な支持

【ジュネーブIDN=ジュムシェッド・バルーア】

大量破壊兵器である核兵器を禁止する協議を2017年に開始する提案を多くの非核兵器国が押し通した。核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)はこれを「ドラマチックな最終日」と呼んでいる。

核軍縮に関する公開作業部会(OEWG)は8月19日、2月以来開催されてきた一連の会期の第3ラウンドを終了した。核兵器を禁止し、最終的にはその廃絶につながるような法的措置に関する交渉を開始することを10月に開かれる国連総会に勧告する報告書を賛成多数で採択した。

公開作業部会は、2月22~26日、5月2~4日、9~13日、8月5・16・17・19日の間に合計30回の実質的な会合を持ってきた。また、一部、非公式会合も開かれた。

この勧告は、国連総会に提出される公開作業部会による報告書の一部分である。報告書には、核兵器使用のリスクの削減と除去のための措置を採ること、核兵器に関する透明性を高めること、あらゆる核兵器の使用が人間に及ぼす影響に関する意識を喚起することについても、国連加盟国に勧告している。

この報告書案の採択に際しては、62カ国が賛成(すべて非核兵器国)、27カ国が反対(大部分が北大西洋条約機構加盟諸国、韓国)、8カ国が棄権(スウェーデン、スイス、日本など)した。

公開作業部会の設置を主導したメキシコの大使は、この報告書の採択について「この20年で核軍縮に対する最も重要な貢献です。」と語った。

「UNFORD ZERO」、核不拡散・軍縮議員連盟、ICANは、報告書の採択を受けた共同声明で公開作業部会の作業を称賛し、2017年に「核兵器の禁止のための法的拘束力のある文書」の交渉会議を始めるとの勧告に支持を表明した。

核兵器禁止条約への大多数の支持は、アフリカ諸国(54カ国)、ラテンアメリカ・カリブ海諸国(33カ国)、(一定数の)東南アジア、太平洋諸国の共同声明、さらには、一部の欧州諸国からの声明によっても裏付けられている。

しかし、公開作業部会の会期中、核兵器は国家安全保障に不可欠だと主張しつづける少数の国々からの抵抗が続いた。

「こうした国々は、核兵器禁止条約に向けた交渉会議を始めるとの勧告を含んだ報告書案を阻止すると脅していましたが、結局、公開作業部会が成功裏に報告書を採択することを阻止する影響力はなかったことになります。」とICANはコメントした。

長い審議の後、参加各国は、核兵器禁止条約に関する双方の見解を盛り込んだ妥協的な報告書に合意するかに見えた。しかし、非公式の会合において合意がなされるかと見えた後、オーストラリアが土壇場で立場を変え、報告書案に反対し採決を呼びかける旨の意向表明を行った。

オーストラリアやその他の核兵器の抑止力に依存している国々からの反対にも関わらず、大多数の参加各国は意志を貫いた、とICANは報じた。これを基礎にして、公開作業部会は、核兵器の禁止のための法的拘束力のある文書の交渉会議を始めるよう勧告することができたのである。

「このブレイクスルーは、核兵器に関する新たな世界的議論の結果だ。3回の会議は、諸政府や学者、市民社会を巻き込み、核兵器が人間に及ぼす壊滅的な影響や、事故であれ意図的なものであれ核使用にはリスクが伴うことについて、新たな証拠を明らかにしてきた。『人道イニシアチブ』によって生まれた機運はついに、国際社会を核兵器禁止を交渉する寸前のところにまでたどり着かせたのである。」とICANは声明で述べた。

ICAN
ICAN

核兵器は、その非人道性、無差別性にも関わらず、国際法で依然として禁じられていない唯一の大量破壊兵器である。

禁止によって、諸国による核兵器の使用や保有が違法化されるだけではなく、その完全廃絶への道も切り拓かれる。廃絶という目標にコミットしている国々は、来年にも交渉を始める用意があるとの意思を示した。

問題は、10月に開かれる国連総会第一委員会が、交渉プロセス開始の任務を与えることによって、プロセスを前進させるかどうかである。

「ウィーン軍縮・不拡散センター」(VCDNP)の博士研究員あるジェニー・ニールセン氏は、「より広範な核政策の中にあって核軍縮と核抑止への支持が益々二極化している問題をどの程度おさめることができるかは、予断を許しません。」と、「欧州リーダーシップネットワーク」のブログに記している。

「ギャップを埋める取り組み、とりわけ、核兵器を禁止する法的措置を交渉する会議を2017年に招集するという(公開作業部会を通じて生み出されてきた)高まる機運を活かそうとの意欲があるかどうかは、疑わしい。」とニールセン氏は論じている。

ニールセン氏はまた、「各国やアナリストは、問題が指摘されている核兵器への依存を超えて、戦略的な安全性を維持し(さらには安全の保証を提供し、不確実性に備える)実行可能性のあるどのような選択肢が存在するかという時宜にかなった建設的な議論をすべき時にきています。とりわけ核抑止を基盤とした戦略的安定性について課題と選択肢の両方を与える新たなテクノロジーが出てきていることを考えると、このことが非常に重要な意味を持ちます。もし、核兵器の役割と価値に関する二極化する見方をこのまま放置するならば、核兵器使用のリスクを低減し、核兵器のない安全な世界を実現するための積極的な貢献はもたらされないだろう。」と語った。(原文へ

翻訳=INPS Japan

関連記事:

国連作業部会、核の行き詰まりの打開策を探る

米選挙戦で致命的な問題になる核戦争

核兵器禁止会議に備えるアスタナとジュネーブ

‘Building a Nuclear-Weapon-Free world’

INPS-IDN reported on an international conference on 'Building a nuclear-weapon-free world' in Kazakh capital Astana on August 29 on the occasion of the 25th anniversary of closing the Soviet nuclear test site. The conference was as co-hosted by the Parliament of the Republic of Kazakhstan, the country's Ministry of Foreign Affairs and Parliamentarians for Nuclear Disarmament and Non-Proliferation (PNND). The conference endorsed a 10-point Declaration titled: 'The Astana Vision: From a Radioactive Haze to a Nuclear-Weapon Free World'.

Kazakhstan Leads the Way to a Nuclear-Weapon Free World

By Ramesh Jaura and Katsuhiro Asagiri

ASTANA (IDN) – As divisions between States on how to achieve nuclear disarmament grow, countries like Kazakhstan must lead the way to common ground and inclusive dialogue. Such leadership is urgently needed to make our world truly secure, said UN Secretary-General Ban Ki-moon in a message delivered to the conference on ‘Building a Nuclear-Free World’.

Welcoming participants, President Nursultan Nazarbayev explained why Kazakhstan was leading the way: “August 29, 1991, is marked by an event of historic significance both for our country and the whole world. 25 years ago, we legally stopped the most sinister experiment of militarism, which had been tormenting our land and our people for almost 40 years. Several decades before that event, the world tried to lower the threshold of nuclear threat through the processes of nuclear weapons reduction, and a moratorium of its testing.” [P20] CHINESE TEXT VERSION PDF | JAPANESE TEXT VERSION PDF

He added: “We, in Kazakhstan, were the first to cut the ‘Gordian knot’ by adopting a decree on closing the largest nuclear test site in the world. After our decision, test sites of all leading nuclear powers became silent but they have still not been closed anywhere. Kazakhstan was the first to take such a step. This was the will of our people. It shows the great importance of this event for the entire planet.”

The conference on August 29 was co-hosted by the Parliament of the Republic of Kazakhstan, the country’s Ministry of Foreign Affairs and Parliamentarians for Nuclear Disarmament and Non-Proliferation (PNND).

Legislators, religious leaders, academics, scientists, medical professionals, lawyers, youth and other representatives of civil society from 50 countries from around the world participated in the conference. Representatives of international organisations included:

Secretary General of the Disarmament Conference in Geneva, Michael Møller; Executive Secretary of the Preparatory Commission of the Comprehensive Nuclear Test-Ban Treaty Organization (CTBTO), Lassina Zerbo; President of the Nobel Peace Laureate Pugwash Conferences, Jayantha Dhanapala.

Jayantha Dhanapala/ photo by Katsuhiro Asagiri, INPS Japan

Others were: President of the Inter-Parliamentary Union (IPU) and Co-Chairman of PNND Saber Chowdhury; President of the Pan African Parliament Roger Nkodo Dang; Chairman of the Parliament of World’s Religions Imam Abdul Malik Mujahid; and Soka Gakkai International (SGI) Executive Director for Peace and Global Issues, Kazuo Ishiwatari.

In hosting the conference, Ban said, Kazakhstan had “once again” demonstrated its “commitment to the pursuit of a world free of nuclear weapons”.

In addition, the UN Chief said: “Kazakhstan has played a leading role in the creation of a Central Asian Nuclear-Weapon-Free Zone. It spearheaded the Universal Declaration on a Nuclear-Weapon-Free World at the General Assembly. President [Nursultan] Nazarbayev has called nuclear disarmament a top global priority.”

The outgoing UN chief was hitting the nail on the head. The Declaration adopted by the conference – ‘The Astana Vision: From a Radioactive Haze to a Nuclear-Weapon Free World’ – acknowledges Kazakhstan and President Nazarbayev’s historical role in pushing for finishing the unfinished UN agenda, vigorously promoted by Ban.

The Declaration recalls that closure of the Semipalatinsk nuclear test site was “the first such step in the world history of disarmament”.

The 456 nuclear weapons explosions conducted by the Soviet Union at the test site in eastern Kazakhstan have indeed created a catastrophic impact on human health and environment, for current and future generations.

The legacy from the nuclear tests around the world, including the Pacific, Asia, North Africa and North America, and the experience of the nuclear bombings of Hiroshima and Nagasaki, and the risks of nuclear-weapons-use by accident, miscalculation or design – have established a global imperative to abolish these weapons.

The Declaration says: “We commend the leadership of President Nazarbayev and the people of Kazakhstan for voluntarily renouncing the world’s fourth largest nuclear arsenal, joining the Comprehensive Nuclear-Test-Ban Treaty (CTBT), achieving a Central Asian Nuclear-Weapons-Free Zone, launching The ATOM Project to educate the world about dangers and long-term consequences of nuclear tests, moving the United Nations to establish August 29 as the International Day Against Nuclear Tests, initiating a Universal Declaration for a Nuclear-Weapon-Free World adopted by the United Nations in 2015, and advancing a Manifesto ‘The World. The 21st Century’ to end the scourge of war.”

The conference participants supported the ambirion expressed in the Manifesto that a nuclear-weapons-free world should be the main goal of humanity in the 21st century, and that this should be achieved no later than the 100th anniversary of the United Nations in 2045.

The Declaration commends world leaders for taking action, through the series of Nuclear Security Summits and other international action, to prevent nuclear weapons or their components from falling into the hands of terrorists. It call upon world leaders to “join President Nazarbayev in placing a similar high priority on nuclear disarmament”.

It congratulates Kazakhstan on the country’s election as a non-permanent member of the United Nations Security Council (UNSC) for 2017-2018. “We are confident that Kazakhstan will work closely with other Security Council members to prevent nuclear proliferation and advance the peace and security of a nuclear-weapon-free world,” states the Declaration.

The Declaration supports the initiative put forward at this conference for President Nazarbayev to establish an international prize for outstanding contribution to nuclear disarmament and the achievement of a nuclear weapon free world, and the announcement of the Astana Peace Summit in 2016.

The Declaration specifically calls on governments to:

1. Sign and Ratify the CTBT, in particular the nuclear armed States, if they have not already done so, noting the symbolism of this conference taking place on the 25th anniversary of the closure of the Semipalatinsk nuclear test site and the 20th anniversary of the opening for signing of the CTBT;

2. Initiate negotiations and substantive discussions in accordance with the adopted 2010 Nuclear Non-Proliferation Treaty (NPT) Plan of Action, and the universal obligation to negotiate for complete nuclear disarmament affirmed by the International Court of Justice in 1996;

3. Establish a Middle East Zone free from Nuclear Weapons and other Weapons of Mass Destruction as agreed at the 1995 Review and Extension Conference, and call upon the United Nations Secretary-General to advance this mandate; and establish additional nuclear-weapon-free zones, such as in North East Asia, Europe and the Arctic;

4. Reduce the risks of nuclear-weapons-use by taking all nuclear forces off high-operational readiness, adopting no-first-use policies and refraining from any threats to use nuclear weapons;

5. Fully implement their treaty and customary law obligations to achieve zero nuclear weapons;

6. Commence multilateral negotiations in 2017 to prohibit and eliminate nuclear weapons;

7. Support interim measures by the UN Security Council regarding nuclear disarmament, including to prohibit nuclear tests and nuclear targeting of populated areas;

8. Further develop the methods and mechanisms for verifying and enforcing global nuclear disarmament, including through participation in the International Partnership for Nuclear Disarmament Verification;

9. Eliminate the reliance on nuclear deterrence in security doctrines, and instead resolve international conflicts through diplomacy, law, regional mechanisms, the United Nations and other peaceful means; and

10. Calls on all nuclear weapon states to undertake deep cuts to their nuclear weapons stockpiles with the aim to completely eliminate them as soon as possible, but definitely no later than the 100th anniversary of the United Nations.

The cooperation between different constituents at the international conference provides a platform for building the global movement to achieve nuclear disarmament, states the Declaration.

Deeply concerned for the future of all humanity, and encouraged by the example of Kazakhstan in the field of nuclear disarmament, the conference participants “affirm the possibility and necessity to achieve the peace and security of a nuclear-weapon-free world in our lifetimes” – not somewhere in a distant future.

But this would require political determination. As Ban said in his message: “Political will is essential to replace the costly, divisive and dangerous rivalries that prevail in our world with a sense of global solidarity for our shared future. I call upon all States to summon the political will to advance progress towards realizing our vision of a world free of nuclear weapons.” [IDN-InDepthNews – 29 August 2016]

Photo: (left to right) Chairman of the Senate of the Parliament of Kazakhstan, Kassym-Jomart Tokayev; President Nazarbayev; Executive Secretary of the Preparatory Commission of the Comprehensive Nuclear Test-Ban Treaty Organization (CTBTO), Lassina Zerbo. Credit: www.kazembassy.org.uk | 2nd Photo (left): Jayantha Dhanapala. Credit: Katsihiro Asagiri/IDN-INPS.

オクサパンパの再森林化:ペルーの課題と優先事項

【リマIDN=フェルナンド・トーレス・モラン】

オクサパンパは、ペルー高地ジャングル地帯のパスコ県にある郡である。ここには、国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)が2010年に認証したオクサパンパ・アシャニンカ・ヤネシャ生物圏保護地区がある。

ここには、ヤナチャガ・チェミレン国立公園(面積12万2000ヘクタールで、ワンカバンバ、オクサパンパ、ビジャ・リカ、ポスソ郡に広がる)やサンマルティナス・サンカルロス保全森林(面積14万5818ヘクタールで、パルカズ、プエルト・ベルミュデス、ビジャ・リカ地区に広がる)といった自然保護区域がある。

Pronaturaleza

数十年にわたって同地帯では森林が破壊されてきた。自然保護に取り組むペルーの非政府組織「プロナチュラレザ」は、ヤナチャガ・チェミレン国立公園で森林が違法に伐採されていたことを問題視している。タイムやスギ、イチジクなどの木から10万枚の厚板が取られたとされる。

この地域では貧困のために、先住民族らがこの伐採に関わっている。彼らは、違法な伐採業者からわずかばかりのお金をつかまされて、割り当てられた地帯において森林を伐採する許可を得るのである。

生物多様性が豊かなこの地帯の森林破壊の歴史は、木々が倒され他国へ輸出され始めた20世紀中盤にまでさかのぼる。最初の伐採地帯は60年前に設置された。

時が過ぎるにつれ、伐採業者は地帯外の部門にも手を伸ばすようになり、歴代政権の下で野放図かつ監督なしの伐採がなされることになった。かつては森林が豊かであったオクサパンパ山岳地帯は、植生の乏しい地域に変わってしまった。

さらに、この状況は農業活動の拡大によって悪化している。土地は果実生産向けに転用され、牛を育てる牧畜用に利用された。これは、人々の移住現象につながることになった。利用され尽くした土地は、再生されることなく放置され、農業用に新しい土地が求められた。

オクサパンパ地区で長く伐採業を営んでいるマデレラ・ボゾヴィッチ社のイヴォ・ボゾヴィッチ社長によれば、農業・畜産が森林破壊の原因の87%を占めているという。「なぜなら、それによって森林が伐採されたり燃やされたりするからだ。これが起きると、3年も経てば土地はだめになってしまいます。」とボゾヴィッチ氏は語った。

一部の環境保護活動家らによれば、いくつかの伐採地帯では持続可能な形で活動が続けられている。伐採されるのは十分育った木だけで、若い木々は残したままにされている(ある種の間引き)。かりにこれが事実だとしても、他方では、森林は無差別に利用され、かつては木々が覆っていた広大な土地は丸裸にされている。

Map  of Peru
Map of Peru

今日、事態は好転しているように見える。ペルーは、国連加盟国であり、持続可能な開発目標(SDGs)にコミットしている国として、「気候変動緩和に向けた国家森林保全プログラム」を実施に移している。衛星監視システムが利用され、環境省の下で、違法な森林伐採を阻止・起訴する特別の規則が適用されている。

また、森林破壊と違法森林伐採の防止、統制、起訴などのための11の主軸を備えた計画戦略がこのプログラムには含まれている。

さらに今日、「森林・気候変動国家戦略」も策定されている。この目的は、「森林破壊と森林の劣化を食い止め、温室効果ガスの排出を抑制する」ことであり、公的・民間両部門の参加を促している。

一つの例は、オクサパンパ郡を含む様々な地方の14地域と協力し、持続可能な土地管理を確立している「プロナチュラレザ」の活動である。

同様の取り組みが、SDGsの第15目標(陸上生態系の保護、回復および持続可能な利用の推進、森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および逆転、ならびに生物多様性損失の阻止を図る)を達成するために求められる。

ProNaturaleza

政府が設定した目標のひとつは、2030年までに少なくとも200万ヘクタールで再森林化を達成することであり、地域コミュニティーも、小さな行動を通じてこの目標に寄与することができる。

オクサパンパ郡キジャズ町にある「アナ・モガス教育研究所」の事例は、持続可能な開発と利益追求が両立しうることを示した一例だ。10年前、同研究所は、3ヘクタールの土地に3300本のユーカリの木を育てていた。8年後、その木から取れた木材を売って、教育目的で15台のコンピュータを購入することができた。

生徒の保護者からの寄付と協力によって木を植えることが可能になった。これは、管理された森林伐採と商売の可能性に気づき始めた人々にも利益をもたらす森林再生と持続可能な開発プロジェクトの好例である。

SDGs Goal No. 15
SDGs Goal No. 15

にもかかわらず、さらなる政府の取組みが求められる。たとえば、ヤナチャガ・チェミレン国立公園では、資金不足のために森林監視員がわずか20名しかいない。これでは森林全体をカバーすることは不可能だ。オクサパンパ森林・動物技術管理局では、管理業務に携わっている職員がわずか2名で、公園を監視することができずにいる。

ペルー政府が同国最大の公園のひとつである同公園にさらなる投資をすることが必要だ。ヤナチャガ・チェミレン国立公園には、インカ・ヤネシャ文化時代からの考古学的な遺跡が残っている。また、2584種の植物相、59種の哺乳類、427種の鳥、16種の爬虫類、31種の魚類を含む動物相を含んだ、世界的にも豊かな公園である。

数百年にわたって同地域に居住してきた先住民族社会には、尊厳を持って自然と共生してきた生活の知恵がある。必要なものは、より多くのエネルギーと資源を投じて彼らにツールと知識を提供し、大企業ではなく(もちろん、違法伐採業者ではなく)先住民族自身が地域の資源を抑制的に利用することで利益を得ることができるようにすることだ。

ペルー政府は、同国の広大な土地の保護と再森林化に向けた長期計画を策定する方向で、重要な措置を採ってきている。にもかかわらず、それぞれの地域の特定の問題を解決するためにさらなる予算と関心が必要とされている。(原文へPDF

翻訳=INPS Japan

関連記事:

次なる最重要開発課題としての森林投資

先住民族が全ての権利の平等を主張

|パプアニューギニア|民衆不在の土地取引で国土の3分の1が外国企業の手に

米選挙戦で致命的な問題になる核戦争

【ニューヨークIDN=ロドニー・レイノルズ】

米国大統領選が熱を帯びるなか、人類の生存そのものを巡る問題が、激しい論争を引き起こす主要な課題になってきている。それは、意図的あるいは不慮の核戦争の脅威が迫っているという問題だ。

11月8日には、米国民は実質的に2人の候補者の間で選択をすることになる。一人は、民主党候補で元国務長官のヒラリー・クリントン氏、もう一人は、共和党候補でニューヨーク出身の自称大富豪実業家ドナルド・トランプ氏である。

クリントン氏は、米国の核戦力近代化を含む、まもなく任期を終えるバラク・オバマ大統領の核政策を受け継ぐと約束しているものの、自制的な態度を保っている。他方で、トランプ氏は米国による核兵器の使用に関して「無謀」だとか「抑制不能」だとか言われてきた。

ある懐疑的な人物が指摘したように、「トランプ氏には確固とした政見も、政策に関する理解力も、15分後に翻さないいかなる一貫した立場も持ち合わせていないと言われている。彼は少なくとも7回、所属政党を変えている。」

『ニューヨーク・タイムズ』紙によれば、クリントン氏は、「ツイートで釣れるような人物に核兵器を委ねることはできません。」と発言したと伝えられている。

米科学者連盟」核情報プロジェクトの責任者で核兵器に関するもっとも著名な民間専門家のひとりであるハンス・M・クリステンセン氏が8月4日の『ニューヨーク・タイムズ』に寄せたコメントによれば、最高司令官としての米国大統領は、広島型原爆1万7000発以上の破壊力を持つ925個もの核弾頭を発射する決定をわずか数分の間に下すことができるという。

他国(日本)に対する核攻撃を命令した唯一の大統領は、ハリー・トルーマンである。第二次世界大戦の最終盤、1945年8月のことであった。

米国が関与し得る核シナリオについて、ワシントンDCを拠点とする「公共情報精度向上研究所」 のノーマン・ソロモン事務局長は、IDNの取材に対して、「核兵器に関する問題が大統領選の主要候補者によって一貫性のある形で論じられ、かつ大きく取り上げられるかどうかについては、確信が持てません。」と語った。

ソロモン事務局長はさらに、「ドナルド・トランプ氏は恐ろしいほどに無謀なレトリックを用いていますし、ヒラリー・クリントン氏は、今後30年で1兆ドルをかけて新世代の核兵器開発を始めるという、オバマ政権の極めて無責任な方針を継承する意思表示をしています。トランプ氏は狂気を漂わせる一方で、クリントン氏は社会学者のC・ライト・ミルズ氏が『狂気の現実主義』と呼んだものの典型です。」と指摘した。

「クリントン氏はワシントンで支配的な主流のコンセンサスの範囲内にとどまっています。従って、従来のメディア通念からいえば、彼女は合理的で責任感があるということになります。事実、核兵器近代化計画へのクリントン氏の支持は、ある種の狂気を体現していますが、同時に米国で最も強力な政治勢力が『冷静な合理性』とみなすものの範疇に収まっているのです。」

「クリントン氏に関して特に危険なのは、さらなる米国の核開発・配備に対する彼女の支持が、ロシアへの好戦的なアプローチと結びついていることです。東への勢力拡大を続けてきた北大西洋条約機構(NATO)がロシア国境にまで近づき、ロシア政府が国の安全に関わるとみなすものに対してそれとなく脅威を及ぼしているなかで、こうしたことが起こっているのです。」とソロモン事務局長は訴えた。

「もし核兵器政策に関して公的論議に対する首尾一貫性のある建設的な寄与があるとすれば、それは、民主党や共和党の大統領候補者以外のところからくるだろう」と、『よく分かる戦争―われわれを死に導く大統領と政治評論家』の著者であるソロモン氏は語った。

国際平和・地球ネットワーク」の共同呼びかけ人で、「国際平和ビューロー」の理事でもあるジョセフ・ガーソン氏は8月4日、IDNの取材に対して、「選挙戦を通じて、ドナルド・トランプ氏の無知や、民衆や状況に対する冷酷なアプローチ、情緒の不安定さについての疑問やそれに関する恐怖について語られることが多くなってきました。」と語った。

「ある外交政策アドバイザーが行ったブリーフィングの際に、トランプ氏が、危機や戦争に際して、『米国はなぜ核兵器を使うことができないのか?』と繰り返し訪ねたというジョー・スカーボロ氏(米国のテレビ・ラジオキャスター)による報道は、こうした恐怖を裏付けるもののように思えます。」と広島で取材に応じたガーソン氏は指摘した。

予想どおり、トランプ氏はこの報道内容を否定した。

「トランプ氏はそれ以前にも、米国の核兵器の『三本柱』が何か知らないと明言したうえで、イスラム国(ISIS)に対して核兵器を使用する可能性を排除しませんでした。」とガーソン氏は語った。

核兵器使用の可能性を巡るトランプ氏の問題発言をとりあげたこの報道は、ウィリアム・ペリー元米国防長官が、今は冷戦期よりもむしろ核兵器が使用される可能性が高まっていると警告している時期になされたものである。

「これまでのトランプ氏の発言を考えると、これは実際にありそうなことです。」とガーソン氏は警告した。

「核兵器について既に長らく知られていること、つまり、①人類と核兵器は共存できないこと、②たった一発の核兵器でも都市に対して使われたならばその爆発が引き起こす人道的帰結にまともな対応をすることが不可能であること、③核攻撃はいうに及ばず、海上における小規模な事件であっても、全面的かつ地球破壊的な戦争へと発展しかねないこと、を考え合わせると、トランプ氏の発言は、(1964年のハリウッドの風刺映画「博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか」に出てくるドクター・ストレンジラブ博士の核の狂気を彷彿とさせるものです。」

「ここ広島でも、そして『核軍縮に関する公開作業部会』(OEWG)の重要な第3会期(8月5日、16~19日)が開催されるジュネーブでも、トランプ氏の発言は、地球上の普通の人々や活動家、政府高官らを震え上がらせることでしょう。」

ガーソン氏は、「トランプ氏の言動は既に、米国の行く末に関する疑問と恐怖を引き起こしています。」と指摘したうえで、「さらに悪いことに、彼の言葉は核兵器拡散への圧力を強め、攻撃的な米国を抑止するために核戦力を開発する必要があるとの見方を強化してしまうことになります。」と語った。

こうなると、核兵器が今世紀ではなく「数世紀後に」廃絶できると語った女性、ヒラリー・クリントン氏と彼女のアドバイザーらがトランプ氏の発言や彼に関する報道内容をいかに自らの選挙戦に活用していくか、クリントン陣営の動向をこれまで以上に注視して見守る必要がある。

ガーソン氏は、「現在の状況は、かつて1964年の大統領選挙戦で、リンドン・ジョンソン民主党候補の陣営がバリー・ゴールドウォーター共和党候補に対して効果的に用いた、タンポポの花びらを無邪気にカウントしながらむしり取る少女のイメージと核爆発へのカウントを重ね合わせた広告を打つのが適切な状況に思えてきます。」と語った。

「それはトランプ氏の選挙戦にとってのとどめの一撃になるかもしれません。」

「私たちは、ジョー・スカーボロ氏が彼の番組で言及した『ある外交政策アドバイザー』が、自ら名乗り出てトランプ氏の核兵器使用の可能性を巡る疑惑の発言内容について、実際のやりとりを公表する勇気を持つことを願うばかりです。もしそうすればこの専門家は職を失うことになるかもしれませんが、同時に人類を救うことにもなるのです。」とガーソン氏は強調した。(原文へ

翻訳=INPS Japan

関連記事:

|NATO・ロシア|危険な核陣営間の言論戦

大統領令による「オバマ核ドクトリン」の実施に支持を

2016年核セキュリティサミット:オバマ最後の努力(ジャヤンタ・ダナパラ元軍縮問題担当国連事務次長)

会員・支援者が紡いだ60年の歴史(石田尊昭尾崎行雄記念財団事務局長)

【東京IDN=石田尊昭

尾崎行雄記念財団は、今年60周年を迎えました。

この60年は、尾崎行雄の理念を基に民主政治の発展と世界平和に尽くそうという強い信念・志を持った人たちが紡いだ歴史です。

それは、設立者や運営者のことではありません。この財団の活動に心から賛同し、惜しみない協力を頂いた会員や支援者のことです。

尾崎財団はもともと、現在の憲政記念館の前身「尾崎記念会館」建設の寄付を集めるために、数名の国会議員と民間有志だけで立ち上げた組織です。尾崎行雄が「資産」を残したわけでもなく、設立時から財源基盤がほとんどない、「財団」とは名ばかりの組織でした。

そんな「脆弱な」組織が、時の衆議院議長を会長に戴きながら、超党派の独立した公益団体として、国からも自治体からも一切の補助を受けることなく今日まで歩んでこれたのは、ひとえに会員・支援者の「力」によるものです。

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: chiyoda55.jpg
尾崎記念会館竣工記念切手/ Japan Post – personal stamp collection, パブリック・ドメイン

活動の財源は、年会費・個別寄付・催事参加費のみで、今も昔も財源基盤は脆弱です。しかし、活動内容は年々広がりを見せ、人材育成(咢堂塾)や出版活動(尾崎・政治関連書籍)はここ数年、これまでにないくらい活発になっています。そして2011年以降は、NPOと連携しながら被災地支援にも取り組んでいます。

会員による支援・協力はもとより、特に近年は、尾崎行雄の選挙区・伊勢を中心に活動する「NPO法人咢堂香風(がくどうこうふう)」(土井孝子理事長)や、途上国・被災地の教育物資支援に取り組む「NPO法人一冊の会」、尾崎の生誕地・相模原で活動する「尾崎行雄を全国に発信する会」、また国際通信社「インターナショナル・プレス・シンジケート・ジャパン(INPS Japan)」などの関連団体と連携を深めることで、活動の幅が広がっています。

これまでの60年を支えて頂いた皆様、そしてこれからの活動を共に歩んで頂ける皆様へ感謝を込めて、今年10月28日、「尾崎財団設立60周年・感謝の集い―さらなる飛躍に向けて」を開催します。詳細は決まり次第ご案内します。

Yukika Sohma/ Ozaki Yukio Memorial Foundation
Yukika Sohma/ Ozaki Yukio Memorial Foundation

以下は、尾崎行雄三女・相馬雪香さんの言葉です。

「私はちっとも偉くなんかないですよ。本当に偉いのは、同じ志を持って集まってくれて、活動の輪を広げていってくれている人たちです。私はただ言い出すだけなんだから。周りが偉いんです。」(『平和活動家・相馬雪香さんの50の言葉』より)

尾崎行雄の25回連続当選、衆議院議員勤続60有余年という記録は、尾崎行雄の偉大さではなく、伊勢の有権者の偉大さを意味するものです。

18歳からの投票心得10か条出版記念パーティー/Katsuhiro Asagiri of INPS Japan
18歳からの投票心得10か条出版記念パーティー/K.Asagiri of INPS Japan

同じく、尾崎財団設立60周年も、設立・運営者によるものではなく、会員・支援者の成果であり、信念・情熱・行動力によるものなのです。(原文へ

INPS Japan/尾崎行雄記念財団

関連記事:

世代を超えて受継がれる平和と友情の絆

被災地支援の取り組み:一冊の会『雪香灯』プロジェクト

「人生の本舞台は常に将来に在り」―明日への希望(石田尊昭:尾崎行雄記念財団事務局長)

希望と絶望の間で揺れる非核スローガン

【ベルリンIDN=ラメシュ・ジャウラ】

国連の潘基文事務総長は、日本の2つの都市に対する破壊的な原爆攻撃を心に刻むために毎年原爆記念日に際して、「ノーモア・ヒロシマ、ノーモア・ナガサキ 二度と再び」というスローガンを繰り返してきたが、依然として核兵器なき世界を招来するには至っていない。また、2008年10月24日の国連デーに彼が提出した「5項目の核軍縮提案」は、実際のところ無視され続けている。

しかしこの責任は潘事務総長にはない。世界が今年で71年目となる8月6日の広島と8月9日の長崎への原爆投下を祈念する中、核兵器なき世界の実現を望む人々の心に浮かぶ疑問は、「はたして今日、絶望よりも希望を信じる理由があるのかどうか」という点である。

Lift-off of the Dnepr launch vehicle/CC BY 2.5

こうした疑問が出てくる背景には、少なくとも12万9000人を殺害した、第二次世界大戦最終盤に行われた2回の原爆投下が、歴史上戦争で核兵器が使用された唯一の事例であるが、今日、9カ国もの国々が合計で1万5000発以上の核兵器を保有しているという現実がある。

9カ国とは、米国、ロシア、英国、フランス、中国、インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮である。

米国と英国は、おおよそ1800発の核兵器を高度警戒態勢においている。これは、警告からわずか数分で発射できる準備ができていることを意味する。そのほとんどが、1945年8月に日本に投下された原爆よりもはるかに強力なものだ。

また、核廃絶国際キャンペーン(ICAN)が指摘するように、さらに大きな問題は、欧州の5カ国が北大西洋条約機構(NATO)の核共有取り決めの一環として自国の領土に米国の核兵器を配備することを認め、おおよそ20以上の国々が安全保障のために米国の核に依存しているという点にある。

さらに、兵器使用に転用可能な原子炉・研究炉を保有している国々が多くある。核のノウハウの拡散は、より多くの国が核兵器を開発するリスクを高めてきた。

潘事務総長は8月6日、このことを念頭にして、国連軍縮担当上級代表のキム・ウォンス氏が広島平和記念式典で代理で読み上げたメッセージの中で、「今、世界はかつてないほどに被爆者の精神を必要としています。」と訴えた。

潘事務総長は、1945年の広島・長崎の被爆者の決意と忍耐について、平和を訴え、全ての人にとってのよりよい未来を追求している事例として、言及した。

「実際、被爆者の方々は自身の悲劇的な体験を人類に対する呼び掛けへと発展させました。そして、ヒロシマが身をもって経験した惨事が忘れられることのないよう、自身の体験を語ってきました。」

潘事務総長はまた、「被爆者は、平和とより良い世界の真の擁護者となったのです。」と指摘したうえで、「緊張感が高まり、核軍縮における進展は見いだし難くなっている今日、世界はかつてないほどに被爆者の精神を必要としています。」と強調した。

さらに、「この荘厳なる式典で、すべての国々が被爆者のメッセージに耳を傾け、互いの違いを乗り越え、核軍縮に向けた世界の志を強固なものとするよう求めます。これは、平和的な協力にとって不可欠なことです。」と述べ、「核保有国は、ヒロシマの悲劇を繰り返さないという特別な責務を負っています。」と説明した。

そして、「核保有国は、自国のコミットメントを守り、対話への道を拓いていかなければなりません。」としたうえで、すべての国々に対しては、包括的な対話を通じ、共通点を見いだすよう求めた。

さらに潘事務総長は、「広島への原爆投下により、核兵器は、性別、年齢、宗教、思想、国籍に関係なく、無差別なものだということが示されました。」と強調し、「すべての人々にとって、より安全で平和な未来、より良い世界のため、これからも力を合わせ取り組んでいきましょう。『ノーモア・ヒロシマ、ノーモア・ナガサキ 二度と再び』というメッセージを今後も広めていく所存です。」と結んだ。

被爆者の方々が高齢化するなかで、若い人々が平和のメッセンジャーの役割を果たしていかなければならなくなる。潘事務総長のメッセージは、国連が核兵器なき世界の実現に取り組む若者の側に立つことを明確に表明したものだった。

「私は長崎の若き平和の創造者である皆さんに対し、核兵器によってもたらされた苦難が決して忘れ去られることのないよう、この課題に取り組むことを呼びかけます。仲間たちと一緒に、ぜひこのメッセージを全世界に広げてください。核兵器を作り出したのは皆さんではありませんが、これを最終的に廃絶する任務は、皆さんの世代が担えるのです。」と付け加えた。

Setsuko Thurlow/ ICAN
Setsuko Thurlow/ ICAN

著名な広島の被爆者で1945年8月6日に広島に原爆が投下された当時13才であった平和活動家のサーロー節子氏は、6月にオバマ大統領に対して宛てた手紙で同じようなメッセージを発していた。

「オバマ大統領、あなたには、変化を生み出す、他の人にはない力があります。これこそがあなたの『レガシー』になるのではないでしょうか。核戦争の脅威を取り去った真の軍縮の時代を招来することで、すべての人々が日常を平和裡に過ごすことができるでしょう。それは何と大切なことでしょうか。それは守る価値のあるものであり、すべての子どもたちに対して拡げられるべきものです。」

サーロー節子氏はまた、次の3点を示しながら、こう述べている。「核軍縮を現実のものにすることで『私たちの道義的な目覚め』を加速しようと本当に望んでおられるのなら、次の3つのステップをすぐにでも取り掛かるべきです。」

「第一に、国際的な核軍縮会合への米国のボイコットを取りやめ、核兵器廃絶・禁止の一歩としての核兵器禁止条約に向けた新たな法的文書や新たな規範の創設を求める『人道の誓約』を支持する127カ国の輪に加わること。」

「第二に、今後30年で1兆ドルという巨額の資金を米核戦力の近代化に投資するのをやめ、この資金を人間のニーズや地球環境の保護のために使うこと。」

「第三に、核兵器の高度警戒態勢を解くこと、そして、怠慢の文化と、恐ろしいほど定期的に起こっている核兵器の絡んだ事故の現実を暴露した最近の研究の対象になっている、老朽化した指揮・管制システムを見直すこと。」

サーロー節子氏がオバマ大統領に提示した問題が一つでも解決されるのかどうかはわからない。

しかし、『ワシントン・ポスト』紙が8月4日に報じたように、「オバマ大統領は、核兵器の禁止を訴え、包括的核実験禁止条約(CTBT)を支持する新たな国連安保理決議を目指す事を決めた。」

これは、オバマ大統領が任期終了前の数か月間に自身がこだわっている核政策の少なくとも一部を大統領令を通じて実行に移そうとしていると報じた、同紙の7月10日付記事の続報である。

これらのオプションには、米国の核戦力に関する「先制不使用」政策の宣言や、CTBTによって予定された核兵器実験の禁止を確認する国連安保理決議が含まれる。

Tomihisa Taue, Mayor of Nagasaki City, attended the United Nations Conference on Disarmament Issues at the Hotel Buena Vista in Matsumoto City, Nagano Prefectureon July 27, 2011.
Tomihisa Taue, Mayor of Nagasaki City, attended the United Nations Conference on Disarmament Issues at the Hotel Buena Vista in Matsumoto City, Nagano Prefectureon July 27, 2011.

しかし、長崎市の田上富久市長は、8月9日に長崎平和公園で行われた式典で読み上げた長崎平和宣言でさらに一歩踏み込み、もし人類の未来を破壊から防ごうとするならば、核拡散への対抗を目的としたあらたな枠組みが必要だと語った。「今こそ、持てる限りの『英知』を結集してください」と田上市長は訴えた。

3日前の松井一實広島市長による同様の宣言と比べると、田上市長は、非核世界実現のための次の道筋がいくつも示されていた点、そして日本政府を率直に批判した2点において、より大胆であったと共同通信は報じている。

田上市長は、米国の核抑止に依存しながら核兵器廃絶を訴える日本政府の政策を批判し、政府に対して、核兵器の「持たず、作らず、持ち込ませず」を定めた戦後日本の「非核三原則」を法制化するよう求めた。

また田上市長は、核抑止に依存しない安全保障の枠組みとして、「北東アジア非核兵器地帯」(NEA-NWFZ)の創設に向けて努力するよう、政府に要求した。

Susi Snyder/ ICAN
Susi Snyder/ ICAN

広島・長崎の両式典において安倍晋三首相は「核兵器なき世界」の実現のためにさまざまな取り組みを行うと誓ったものの、具体的な方策については触れなかった。

実際のところそうした声明は空虚なものだと語るのは、オランダの「パックス・クリスティ」核軍縮プログラムの責任者であるスージー・スナイダー氏である。スナイダー氏は、ICANに寄稿したの論説で、7月8・9日にワルシャワ(ポーランド)で行われたNATOサミットに参加した元首らが、核兵器禁止の可能性を示唆しない一連の文書や声明に合意したと論じている。

「世界の多数の国家は、核兵器がもたらす危険を終わらせ、核兵器を禁止する条約の交渉を望んでいるが、NATO文書も『環大西洋安全保障に関するワルシャワ宣言』も核兵器に対するNATOの依存を再確認し、NATOコミュニケには、核共有政策に関する冷戦時代をほうふつとさせる文言が復活している。」とスナイダーは論じている。(原文へ

翻訳=INPS Japan

関連記事:

国連軍縮会議が野心的な目標を設定―しかし、それをどう達成するか?

共通の未来のためにヒロシマの被爆体験を記憶する

大統領令による「オバマ核ドクトリン」の実施に支持を