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|アフリカ|いかに効率的なコミュニケーションが域内貿易促進に資するか

【ニューヨークIDN=モシュ・マツェナ】

世界貿易機関(WTO)創設以来最大の自由貿易協定(13億人・3.4兆ドル市場)といわれる、アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)協定が運用を開始して10か月。AfCFTAという自由貿易圏のメリットを最大化していくために克服すべき諸課題を指摘するとともに、植民地支配からの経済構造から脱し、グローバル経済に依存しすぎないアフリカを実現していくための処方箋を提案したモシュ・マセナ(南アビジネスコンサルタント)による視点。(原文へ

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|気候変動|この危機がSDGsの達成にどう影響する?(フェルナンド・ロザレス「サウスセンター」持続可能な開発・気候変動プログラムのコーディネーター)

【ジュネーブIDN=フェルナンド・ロザレス】

2015年に採択された持続可能な開発目標(SDGs)は、人類が今日直面している最も重大な諸問題に対処するための多数の国々のコンセンサスを表している。17の目標は多くの次元を持ち、互いに結びついている。同時に、気候変動危機は人類の生命そのものへの最も深刻な脅威であり、この30年でより悪化している。他方で、SDGsの第13目標は「気候関連アクション」に特に関連しており、気候危機はその他多くのSDGsの達成に影響を与える可能性が高いとみられる。

40年以上前、国際社会は、第1回世界気候会議において、科学的知見を基にして、「地球に対する人類の活動が拡大し続ければ、気候が地域的に、さらには世界全体で変化する可能性に対する重大な懸念」を表明した。それ以降、こうした懸念や気候問題は世界で拡大しつづけ、国際社会は1992年の地球サミットで「国連気候変動枠組み条約」(UNFCCC)を採択した。

UNFCCCは、先進国および途上国の責任を条項化して、国際協力の基本原則を打ち立てた。歴史的に見れば、世界の人口のわずか2割しか占めていない先進国が、世界の温暖効果ガス排出のおよそ7割の責任を負っている。UNFCCCは、過去および現在の温室効果ガスの排出は先進国を原因としていることを認識している。従って、先進国はこの責任を引き受け、気候変動との闘いを主導し、条約上の義務を遵守する途上国の取り組みを資金面で支援するなど、途上国支援を行うべきことが期待されている。

この条約は次に2015年のパリ協定につながった。同協定は「産業革命前からの世界の平均気温上昇を『2度未満』に抑える。加えて平均気温上昇『1.5度未満』を目指す」との世界的な目標を打ち立て、「こうした活動が気候変動のリスクと影響を相当程度に減ずると認識する」とした。それ以降、上記の目標を達成するための国別目標である「国が決定する貢献」(NDCs)を各国は採択した。パリ協定では、NDCsは5年ごとに検討され、毎回より高い目標を設定することが望まれている。

このように進歩してきた国際協力でも、気候危機に対抗するには不十分だ。地球温暖化は前例のないペースで進んでいる。気候変動に関する最新のIPCC報告書(2021年8月)は、今後30年間で気温が1.5度上昇する5つのシナリオを示している。この科学的機関の分析によれば、5つのシナリオすべてにおいて、今後20年間(2021~2040)のうちに1.5度気温が上昇してしまうという。

credit: IPCC Sixth Assessment Report

残念なことに、地球の気温が上昇すれば必ず人間の生活に悪影響を及ぼす。IPCCの2018年報告書によれば、気候変動は人間の生活のほぼすべてに悪影響を与えているという。例えば、マラリヤやデング熱のように病原媒介生物による疾患が増えるであろうことからも、健康への影響があることがわかる。熱波がより頻発するようになり干ばつや洪水を引き起こし、農業がさらに難しくなり、作物の収穫量が減り、食料不足を引き起こす。

海水面の上昇は、今後数十年で水面下に沈んでしまうかもしれない沿岸地帯の人々に明らかに影響を及ぼす。小島嶼国はこの点で特に脆弱である。北極の夏は既にほぼ氷がない状態に近づきつつある。いったんその状態になるとそれは毎年続くことになるが、この状態は過去200万年の間、起こったことがない。虫や植物、脊椎動物の多くの種が絶滅の危機に立たされるだろう。もし2度上昇に達することがあれば、事態はより深刻になる。

状況はあまり芳しいものではない。2020年は既に、史上3番目に暑い年だった。地球の平均気温は産業化前の段階より1.2度高く、この気温だけでも、西ヨーロッパや日本、中国で洪水が起こり、イラクで干ばつが起き、北米・南米・オーストラリアなどで熱波や山火事などが発生している。2021年5月、世界気象機関(WMO)は、今後5年のうちに産業革命前からの世界の平均気温が1.5度上昇する可能性は40%だと警告している。

UNFCCCの第26回締約国会議(COP26)はこのような状況の下で10月31日から11月12日まで開かれる。この会合に期待される大きな成果は、より野心的なNDCsで2030年までに1.5度以内を達成するという大きな目標であり、「適応に関するグローバル目標」、気候変動ファイナンスに関する新たな集合的数値目標(2025年以後)、パリ協定の実施指針(ルールブック)における未決定要素である第6条(市場メカニズム)について合意といったことである。

これらの問題は、途上国にとって極めて重大な意味を持つ。気候変動への闘いにおいて途上国が貢献することを可能にする重要な問題の1つは、気候変動ファイナンスだ。途上国の各政府は、それぞれの社会経済的なニーズや増加する対外債務に悩まされている。コロナ禍がさらに状況を難しいものにしている。

適切な履行手段がなければ、これらの国々はパリ協定の目標を達成できないかもしれない。国際社会、とりわけ先進国は、自らの国際公約の実行と並んで、途上国による気候変動対応を支援する決定的な行動をとることを考えなくてはならない。

1つだけ明白なことは、もし人類が気候危機を止めることができないならば、SDGsの多くを2030年までの枠内で達成することは極めて困難だということだ。既に説明したように、人々の健康状態が影響を受けるだけではなく、食料安全保障や清潔な水の入手、衛生面での影響もある。気候変動はまた不平等を加速する。環境危機において最も被害を受けやすいのは社会的弱者だからだ。

私たちは、COP26において、全ての当事者、とりわけ先進国が、気候危機への実際的な解決策を見つけるという見通しの下に、途上国のニーズと利益を考慮に入れるよう期待している。(原文へ

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This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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【ブラワヨIDN=ブサニ・バファナ】

膨大な温室効果ガス(牛のゲップ由来のメタンガス)を排出するとして、先進国では畜肉に代わる植物由来の代替肉の使用を推奨する動きや、なかには極論として「地球を救うには、牛と車とどちらをキープするか?」という議論さえされるようになっている。先進国の工業的牧畜業の弊害に対処する必要性は強く支持しつつも、畜産そのものを一括して「悪」とする風潮に警鐘を鳴らした報告書「 Are livestock always bad for the planet(家畜は常に地球にとって悪しきものなのか?) 」の著者とのインタビュー記事。COP26直前に報告書を発表した著者は、先進国視点に偏った「畜産をひとまとめにして悪とする論議」には、他の穀物生産が不可能で牧畜が地域住民にとって唯一の収入・栄養源となっている地域が世界各地に存在することや、生物多様性の保護、山火事の低減につながっている側面などが無視されている、と指摘している。(原文へ

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【ニューヨークIDN=メディア・ベンジャミン、 ニコラス・デイヴィス 】

気候活動家等の抗議活動の背景にある、地球を危機的な状況に追い込んでいる政治・経済システムの問題点と、「待ったなしの」抗議活動を展開している市民社会の主張を解説したメディア・ベンジャミン、ニコラス・デイヴィス氏による視点。国連気候変動枠組条約締約国会議はこれまでに26回の協議を重ねてきたが、既に世界の気温は1.2度上昇し、エネルギーをクリーンで再生可能ものに転換する技術が既に存在し、多数の雇用を生み出すことが分かっているにも関わらず、政治的意思の欠如から温暖化抑制に向けた効果的なアクションはとられていない。しかも、単独組織としては最も温室効果ガスを排出している「米軍」をはじめ、軍事活動からの排出は国家の排出量にカウントされず報告する必要もないため、気候変動の進行状況に関して世界で最も信頼される「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」でさえ、軍事部門からの排出は今でも計算に含まれていない。(原文へ

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【グラスゴーIDN=クルト・レイノルズ】

国連気候変動枠組条約第26回締約国会議に向けて発表された宗教界から訴えと、アントニオ・グテーレス国連事務総長による危機感に満ちた訴えを収録した記事。ローマ教皇フランシスコは「前代未聞の生態系危機」から地球を救うために具体的な解決法を打ち出すよう呼び掛けた他、全大陸から72の宗教組織が、石化燃料会社からの資金引き揚げと気候問題解決への投資を訴える共同声明を発表した。同共同声明に署名したSGI-UKはCOP26の公式関連行事において池田SGI会長の平和提言などを踏また意見表明(気候変動の影響を受けている弱者を置き去りにしないことや、行動を喚起する教育の推進、意思決定における若者の参画促進、変革の主体者としての市民のエンパワーメントなどを訴えた)を行った。グテーレス国連事務総長は、パリ気候条約が合意されてからの6年間が史上最も暑い6年間であった事実を指摘したうえで、「我々が化石燃料を止めるか、化石燃料が我々を止めるかだ。もうたくさんだと声を上げる時が来た。炭素で自滅するのはもうたくさんだ。自然をトイレのように扱うのはもうたくさんだ。燃やしたり採掘したりして、どんどん深みにはまるのはもうたくさんだ。我々は自分たちの墓穴を掘っているようなものだ」と述べ、「化石燃料への依存が人類を瀬戸際に追い込んでいる」との危機感を露わにした。(原文へFBポスト

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【ニューヨークIDN=リサ・ヴィヴェス】

2018年12月に30年に亘ったバシール独裁政権を倒して以来、民政移管に向けて統治評議会による軍民合同統治が続いていたスーダンで、軍トップのアブデル・ファタ・ブルハン将軍(統治評議会議長)によるクーデター(10/25)が発生した。既に最大の権力を掌握していたブルハン議長があえてここでクーデターを起こした諸要因(公約どおり民間人に統治評議会の主導権を引き渡せば権力を失うことを恐れた、ICCからダルフール虐殺の責任を問われることを恐れた等)と内外の反応を分析した記事。(原文へ

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【ニューヨークIDN=リサ・ヴィヴェス】

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クリントン、ブッシュ、オバマ、トランプの大統領外交政策における最悪の失敗

この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています。

(この記事は、最初に2021年9月7日に「The Strategist」に発表されたものです。)

【Global Outlook=ラメッシュ・タクール】

よくある知的な室内ゲームに、米国大統領の偉大な順ランキングがある。エイブラハム・リンカーン、ジョージ・ワシントン、フランクリン・D・ルーズベルト、セオドア・ルーズベルトは、政治を専門とする米国のケーブル放送局、C-SPANの大統領歴史家調査で、長年にわたってトップ4の座に君臨してきた。切り口と時間軸を切り替えてみると、米国がアフガニスタン撤退を決めたことを疑問視する人はほとんどいないが、そのやり方を擁護する人もほとんどいない。国内政治への破滅的な影響に加え、米国の世界的な評判と利益にも永続的ダメージを与えるだろう。そこで、こんな問いが思い浮かぶ。最近の大統領による最悪の失敗は何か?(原文へ 

その答えは、どのような基準を用いるかによってアナリストごとに異なるだろうし、異論も多々出るだろう。実社会で経験がある教授として、長期的な影響を重要な尺度としている私の選択は、ビル・クリントンのコソボ介入、ジョージ・W・ブッシュのイラク戦争、バラク・オバマのドローン政策、ドナルド・トランプのイラン核合意からの離脱である。

冷戦が平和的に終結した在り方、つまり、敗北した側が負けを認め、新たな秩序に同意し、勝利した側との和解と統合を目指すという在り方は、歴史上まれなことである。全体主義的な共産主義のくびきから放たれたロシア国民は、西側との良好な関係が見込まれることを歓迎した。その親善ムードは、1999年のNATOによる一方的なコソボ介入によって水を差されて消失し、その代わりに西側の意図と誠意への疑念が再燃した。これを機にロシアは、NATOの潜在的なパートナーから再び不倶戴天の敵へと変わったのである。

ひどく弱体化したが、米国のほかに唯一の核兵器保有国であり、悪事を働く可能性が大いにあったロシアは、教訓を学び、好機をひたすら待ち、辛抱強く努力を重ねて欧州と中東における妨害屋へと返り咲いた。NATOは「1インチも東に拡大しない」という保証はコソボで裏切られ、2014年のウクライナで再び裏切られた。西側は冷戦における歴史的敗北を何度も蒸し返してはロシアに屈辱を与え、ロシアの利益や不満を無視した。しかし今や、ロシアの前庭で戦略的ライバルが敵対的買収を仕掛けてきたときにロシアが腹を立て、大国であれば当然するであろう反応をしたことに、西側の首脳たちは驚いたふりをしている。

コソボ介入を支持した西側の者でさえ、イラク戦争については賛否が明確に分かれた。現在では、米国史上最悪の外交政策上の失敗に数えられるというのが大多数の見解である。侵攻は占領、内乱、内戦へと発展し、米軍の死者4,500人総費用3兆5,000億米ドルという悲惨な代償を招いた。米国は最も多くの血と財源を費やしたが、戦略的に最大の勝利を手にしたのはイランだった。イラク戦争は、ジハード主義の炎を焚きつけるとともに、対テロ戦争から注意を逸らした。ハードパワーの限界をいやというほど見せつけ、米国のソフトパワーを大幅に損なった。

オバマに関する私の選択は、より抽象的だが、だからといって現実性が低くなるわけではない。彼はドローン攻撃政策を大幅に拡大し、この新たな戦闘ツールにどのような法体制が適用されるかを検討することもなかった。標的殺害は、既存の法秩序における欠落を補うために、国境を越えて国家の規範的権限を拡張したものなのか、あるいは、外国法域における行為に関する国家の法的能力の限度を踏み越えようとする密かな試みなのか?

ドローンへの依存は、その利便性ゆえに拡大した。ドローンは耐久性が高く、低コストで、米軍兵士のリスクをゼロにし、罪のない民間人の死者を減らし、危険が潜む荒涼とした地形を長距離にわたって長時間飛ばすことができる。敵のテロリストを捕獲し、逮捕し、裁判にかけるよりも、テロリストを抹殺する方が、より早く、より複雑でなく、より好都合であるという魅力があった。

ニューアメリカ財団調査報道局、米国の報道機関であるCNNマクラッチーによるいくつかの調査によると、ドローン攻撃で殺害された人々のうち重要な武装勢力のリーダーはごくわずかであると結論づけられた。ほとんどは低位の従軍者や罪のない民間人であった。スタンフォード大学およびニューヨーク大学の法科大学院による徹底的な調査では、ドローン攻撃は全住民にトラウマと恐怖を与え、国際人道法に基づく区別、均衡性、人道性、軍事的必要性の要件に違反していたと結論づけた。

しかし、ドローン攻撃によって米国が全体的に安全になったという証拠は曖昧である。なぜなら、それは殉教者を生み出し、腹を立てて理性を失った若者たちを増やすことによってジハードへの勧誘活動の機能を果たしていた。また、法の支配と国際的な法的保護の尊重を損ない、殺傷力のあるドローン技術が複数の国によって開発されている状況下で、危険な前例となった。北京はいつか、政府がテロとして糾弾する国内の暴力的抗議運動に対してドローンを使うのだろうか?  ネパールで集会を開くチベット人活動家たちに対して?  もし中国がドローン攻撃でダライラマを抹殺してしまったら?

悪意ある強国としての中国の拡大を阻止する意志と方策を確認したトランプの判断は正しかったのか、あるいは、中国との破滅的な戦争という<トゥキディデスの罠>に米国を追い込んだのかは、時間が経たなければわからないだろう。彼の誤りだらけの外交政策決定の数々から私が選ぶ最悪のものは、疑惑のあったイランの核兵器プログラムを封じ込めた2015年の包括的共同行動計画(JCPOA)から離脱する決定である。断固とした解体、透明性、査察体制によって、機微な核物質、活動、施設、関連インフラが大幅に削減され、イランは国際原子力機関(IAEA)による前例のない国際的査察を受け入れ、IAEAはイランが合意を遵守しているかどうかの確認を最後まで続けた。

JCPOAを破棄し、イランに新たな厳しい制裁を課し、イランと禁止品目の取引を行う者に対して二次的制裁を課すことにより、トランプはテヘランを合意の制約から解放した。それ以降の一連の決定で、テヘランはウラン備蓄量を増やし、査察を制限し、より高度なIR-6 遠心分離機を取得し、濃縮ウランの量を増やし、濃縮度をJCPOAの定める上限の3,67%ではなく20%にまで引き上げた。それもこれも、「最大限の圧力」によって有利な取引をするためである。

NATOの地理的制限について、以前ロシアへの一方的な保証を反故にしたことに加え、国連安全保障理事会が全会一致で承認した6カ国の国際協定を破ったことも、米国の信頼性の欠如をいっそう際立たせるものとなった。このことは、欧州の主要な同盟国、中国、ロシアの米国に対する信頼を傷つけた。そして、北朝鮮の非核化に関する合意を得るための努力も損なわれた。なぜなら、平壌は当然ながら、前もっての米国の大幅かつ不可逆な譲歩と非核化後の完全な保証を要求しているためである。

ラメッシュ・タクールは、国連事務次長補を努め、現在は、オーストラリア国立大学クロフォード公共政策大学院名誉教授、同大学の核不拡散・軍縮センター長を務める。近著に「The Nuclear Ban Treaty :A Transformational Reframing of the Global Nuclear Order」 (ルートレッジ社、2022年)がある。

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ソマリアのラブストーリーがアフリカ国際映画祭のグランプリを獲得

【ニューヨークIDN=リサ・ヴィヴェス】

ブルキナファソのワガドゥグーで開催されたアフリカ最大の国際映画祭、通称フェスパコ(FESPACO)でグランプリを獲得した作品に焦点を当てた記事。ソマリア出身のサダール・アハメド監督作品「墓堀人の妻(The Gravedigger’s Wife)」は、人は愛のために何をするかというテーマを探求している。主人公グレドの職業は墓堀人で、日々病院の外で患者が亡くなるのを待つのが仕事だ。しかし同時にこうすることが、病気の妻の命を救う手段でもある。(原文へ

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ウガンダの環境活動家らが全長900マイルのパイプライン計画への反対で投獄

【ニューヨークIDN=リサ・ヴィヴェス】

ジョー・バイデン米大統領などの世界の指導者が集う主要な環境関連会議である国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)の開会を前にして、ウガンダ政府が、2つの東アフリカ諸国を貫通して西ウガンダの原油を国際市場に供給するための全長900マイル・総額35億ドルのパイプライン計画に反対する活動家6人を逮捕した。

これ以上に悪いタイミングもない。

世界的な環境団体「地球の友」「サバイバル」によると、活動家らはカンパラ近郊の警察署に未起訴状態で留置されている。両団体は活動家の即時釈放を求めている。

両団体は、多額の投資を伴うこの石油輸送計画を批判する人々への典型的な嫌がらせだと批判する。

COP 26 Logo
COP 26 Logo

主要な気候サミットである今回の国連会議は、10月31日から11月12日までスコットランドのグラスゴーで開催される。COP26と呼ばれるこの会議には、英国のボリス・ジョンソン首相、同国の女王、イスラエルのナフタリ・ベネット首相、オーストラリアのスコット・モリソン首相、米国のジョー・バイデン大統領、スコットランドのニコラ・スタージョン第一首相ら120人の世界の指導者が集う。約2万5000人の代表団が参加予定だ。

ジョン・ケリー気候問題特別大使が会議の議長を務める。

環境活動家によれば、このパイプラインは、野生生物の保全区やビクトリア湖の水源地域など、パイプルート沿いの微妙な自然環境を破壊することになるだろうという。ウガンダ・タンザニア・コンゴ民主共和国・ケニアの地域社会、水供給、生物多様性に重大な脅威をもたらしかねない。

石油産業はしばしば、パイプラインは石油やガスを別の場所に輸送する最も安全かつクリーンな方法であると主張する。石油の漏出や溢れは「めったにない」という。問題は、そのパイプラインそのものが人々や近くの環境に広範な被害をもたらすということだ。

パイプラインの漏出や溢れ、割れ、爆発はよく起こっている。原油が漏出する映像をニュースで見ることはきわめて多いが、それが周辺の野生生物に与える影響は特に甚大だ。石油はあらゆるものに吸着し、その中を動き回ったり石油を飲み込んでしまったりした野生生物の命を奪い、地面に毒物として流れ、地域の水源を汚染することになる。

ティップ・オブ・ザ・ミット流域評議会によれば、最悪なことは、石油は環境が「浄化」された後でも何年にもわたって環境中に残るということだ。

ウガンダにこの教訓が伝えられるべきかもしれない。

これまでのところ、ウガンダ・タンザニア両政府が、ウガンダのマーチソン滝国立公園からタンザニアのインド洋沿いにあるタンガ港までのパイプラインを建設するために、フランスの石油大手トタル、中国海洋石油集団(CNOOC)と協定を結んでいる。

2025年にも最初の石油輸出が行われる予定だ。

反対派は、保護区域770平方マイルが影響を受け、1万2000世帯が移住させられたとしている。

この35億ドルのパイプラインは、完成時には、ウガンダ最大の国立公園内にある油井130か所以上から重油を運ぶ予定になっているが、この公園内には、絶滅の危機にあるアフリカゾウやライオン、数多くのナイルワニ、400種以上の鳥が生息している。自然保護家らは、野生生物が危機に晒されるだけではなく、汚れた燃料に投資を固定することによって地球温暖化を抑制しようという取り組みにも反することになるとしている。

「食料安全保障・環境に関するアフリカイニシアチブ」のアトゥヘイレ・ブライアン氏は、ウェブサイト「モンガベイ」の電子メール取材に対して、「私たちはウガンダの産油地帯で活動している。多くの産油地帯とは違って砂漠ではなく、極めて生物の多様な地域だ。」と答えている。「秘密裏に結ばれた協定などあっていいはずがないが、それがウガンダの現状だ。」

「我が社は、我々が陸上で実施する計画が微妙な環境と社会に与える影響を十分考慮に入れている」とトタル社のCEOパトリック・プヤンネ氏は語った。

しかし、パイプラインに反対するNGOの連合は、パイプラインの計画プロセスは全体として不透明であり、司法・立法の手続きを無視していると批判する。

他方で、セネガルでは、数百人の女性が気候変動への関心を高めるためにダカールでデモを行った。

彼女たちの目的は、気候問題に人々を巻き込むことであり、セネガルやアフリカの女性として彼女たちが持っている気候変動への懸念を、グラスゴーで開かれる気候サミットに反映させることにある。(原文へ

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