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|アスタナ国際フォーラム|メキシコの創意工夫が高付加価値化のカギとなるカザフスタン(ギエルモ・アヤラ・アラニスユーラシア研究グループレポーター)

【アスタナINPS Japan/GESE=ギエルモ・アヤラ・アラニス】

ギエルモ・アヤラ・アラニス記者

「2022年初頭に起きた騒擾や、ロシアとウクライナの地域紛争などの緊張状態から巧みに脱してきたカザフスタン政府の能力は、カシム=ジョマルト・トカエフ大統領の経験と優れたリーダーシップの賜物です。」と、メキシコのホセ・ルイス・マルチネス駐トルコ大使(カザフスタン兼任)は語った。

6月8日から9日にかけてカザフスタンの首都で開催されたアスタナ国際フォーラムに参加したマルチネス大使は、「カザフスタンと中央アジア地域の安定に寄与できる経験と才覚の多くは、トカエフ大統領が外相として同国の外交を牽引した時期(2002年~07年)に育んだものです。」と語った。

「トカエフ大統領の経験は、中央アジア地域の平和と安定を確保する上で大いに役立っています。カザフスタンは、この地域をまとめる最も安定した地域大国であり、我が国(メキシコ)がカザフスタンに近く大使館を新たに設置するのは素晴らしいことだと考えています。」(ホセ・ルイス・マルチネス駐トルコ大使(カザフスタン兼任)

マルチネス大使は、ユーラシア研究グループ(GESE)のギエルモ・アラヤ記者の取材に対して、「今年下半期に予定されているメキシコ大使館の開設が、カザフスタンをメキシコを恒常的に結び続ける機会となり、そこではメキシコ人の経験が協力メカニズムを開く大きな可能性を秘めている。」と強調した。

アスタナ国際フォーラムでのインタビューに答える、メキシコのホセ・ルイス・マルチネス駐トルコ大使(カザフスタン兼任)撮影:ギレルモ・アラヤ・アラニス
Flags of Kazalhstan and Mexico

「これにより、あらゆる分野でのグローバルなコミュニケーションが可能になるでしょう。とりわけ今日の世界情勢を鑑みれば、(カザフスタンが設立を主導した)中央アジア非核地帯と、(メキシコのノーベル平和賞受賞者、アルフォンソ・ガルシア・ロブレス氏が設立に寄与した)ラテンアメリカ及びカリブ海地域非核地帯の重要性が増しています。両非核地帯創設の経緯や有効性などについて両国は非核・軍縮を進めていくための協力を一層模索していくべきです。」と、マルチネス大使は語った。

 マルチネス大使はまた、トルコでトウモロコシ粉製品を販売しているグルマ社のように、現在この地域にメキシコ企業が存在することを指摘した。「中央アジア市場は、既にこの地域に進出しているメキシコ企業にとっても、これから市場拡大を目指すメキシコ企業にとっても、非常に重要になる可能性があります。」と語った。

大使は、カザフスタンには約15人のメキシコ人が暮らしていると語った。「首都アスタナとカザフスタン最大の人口を誇る都市アルマトイの2つの主要都市に暮らしており、職業は医師、アスタナ・オペラで活躍するダンサー、スペイン語の教師などです。彼らは、言葉や習慣、メキシコからの距離といった壁を取り払い、能力を発揮しています。」

ボルサ研究所(BIVA)のコミュニケーション部長であり、アスタナ国際フォーラムの分科会「創造的な経済:持続的かつ包摂的な成長の促進」でモデレータを務めたサルバドール・レアル氏は、「中央アジア・ユーラシアにおける経済大国として発展を目指すカザフスタンにとって、経済のさまざまな分野でメキシコが蓄積した経験は貴重なものだ。」と語った。

アスタナ国際フォーラムで語るBIVAのコミュニケーションディレクター、サルバドール・レアル氏 撮影:ギレルモ・アラヤ・アラニス
“カザフスタンは、ソフトパワー、音楽、文化、芸術分野、アイデアの面でメキシコから学ぶべきことが多い。メキシコは文化大国です。” (サルバドール・レアルBIVAコミュニケーション部長)

GESEは在メキシコ・カザフスタン大使館のオルジャス・イサべコフ臨時代理大使の招待でアスタナ国際フォーラムを取材した。レアル氏は、「両国には経済全般で大いに協力を拡大する機会がある。」と強調した。

“カザフスタンはビジネスチャンスを求めて全力を尽くしています... メキシコには提供できるものがたくさんある。例えば農業部門が思い浮かびます。メキシコの農産物には非常に多くの需要があり、気候の問題を考慮してもカザフスタンの需要に応じた協力が可能です。” (サルバドール・レアルBIVAコミュニケーション部長)
Political Map of the Caucasus and Central Asia/ Public Domain
Political Map of the Caucasus and Central Asia/ Public Domain

「また、一帯一路構想に関連して、物流の重要な拠点であるカザフスタン領内で大規模に建設が進められている高速道路などのインフラにもメキシコが協力できる機会があるかもしれません。また、メキシコが自らの経験を活用する方法に精通している観光業や電気通信の分野でも、メキシコとカザフスタンの間で協力する可能性があります。」

分科会「創造的経済:持続的かつ包摂的な成長の促進」に参加したカザフスタンのアリベク・クアンティロフ経済大臣は、「この国にとって、国民の10人中3人、つまり、人口の 30% が子供であることから、創造性の発達を奨励することが非常に重要であり、問題に直面した時に解決策を考えたり、工夫したりするノウハウに関しては、おそらくメキシコの子供たちの経験が参考になるだろう。」と語った。

ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのスペイン人教授であるアンドレス・ロドリゲス=ポゼ氏は、「カザフスタンは大規模な市場である中国や欧州連合とのダイナミックな連携を実現するため、自国の領土が戦略的な位置にあることをうまく活かしています。また、自然資源を有効に活用して、1991年の独立時には想像もつかなかったレベルの成長と発展を遂げました。」と語った。

ポゼ教授はまた、「カザフスタン市場は魅力的で安定しており、特にクリーンエネルギーへの転換を目指すエネルギー分野では多くのビジネスチャンスがあるため、イベロアメリカ諸国は投資の機会を逃してはならない。」と強調した。

インタビューに答えるアンドレス・ロドリゲス=ポゼ教授 撮影:ギレルモ・アラヤ・アラニス
“カザフスタンは非常に大きな潜在能力を持つ市場であり、新興市場です。経済成長が低迷しているイベロアメリカ諸国は成長機会がある市場に目を向け、それを利用する必要があります。ここには多くの機会があります。”(アンドレス・ロドリゲス=ポゼ ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス教授)

ポゼ教授は、米州銀行、アフリカ開発銀行、アジア開発銀行など、さまざまな開発銀行で勤務した経験を持つエコノミストである。2000年初頭からアジア市場に精通し、2021年からはカザフスタン問題に取り組んでいる。教授は、イベロアメリカ人の創造力がカザフスタンの日常生活にますます広がる可能性を否定していない。(原文へ

マルチネス駐トルコ大使(カザフスタン兼任)とBIVAのレアルコミュニケーションディレクター 撮影:ギレルモ・アラヤ・アラニス
セメイの平和記念公園でレポートするギレルモ・アラヤ記者

* ギエルモ・アヤラ・アラニスはメキシコのジャーナリスト・テレビレポーター。メキシコ国立自治大学(UAM)ソチミルコ校では核軍縮を研究、国際関係学の修士号を取得。カザフスタンには、2019年に国際プレスチームのメンバーとしてセミパラチンスク旧核実験場とセメイ、アスタナでは「ナザルバエフ賞」を取材した。「アスタナ国際フォーラム」には、ユーラシア研究グループのレポーターとして取材。

INPS Japan/GESE

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欧州の公務員が児童人身売買に関与した疑い

【ウィーンIDN=オーロラ・ワイス】

2022年12月、ザンビアのヌドラ空港入国管理局が8人のクロアチア人を児童人身売買と文書偽造の容疑で逮捕したとのニュースが伝わり、クロアチア当局関係者がこれに関与したのではないかとの疑いが持ちあがった。

当初は、コンゴ民主共和国出身の児童の養子縁組に関する文書の真実性が疑われた。と言うのも、2017年以来、同国の児童を国境を越えて養子にすることは法的に禁じられているからだ。逮捕された容疑者は児童人身売買未遂によって訴追され、ザンビア最高裁で審理が間もなく開かれる。

養子縁組に関わる文書の偽造に関わったとされるコンゴの弁護士もあわせて逮捕されており、すべて違法と知りつつ行ったとの容疑を認めている。

ザンビアのディクソン・マテンボ内務大臣は3月21日、数ヶ月の沈黙を破り、「強制的失踪に関する国連委員会」の場で初めて待望の情報を確認した。

児童人身売買未遂容疑で12月にザンビアで逮捕された8人のクロアチア人は、偽の養子縁組書類に基づいて入手した旅行書類を使用していた。また、ザンビア政府は「正式なクロアチア国民」となった子供たちを母国コンゴ民主共和国に送還したいとの意向を持っている。

Map of Congo
Map of Congo

資源豊かなコンゴ民主共和国は1998年以来続く紛争によって混乱状態に陥っている。紛争によって500万人以上が亡くなり、100万人がHIVに感染している。これによって70万人以上の孤児が残された。しかし、新たな家族法制が制定された2017年以来、外国人が同国の子どもを養子縁組することは法的に禁じられている。

コンゴ民主共和国で作成されクロアチアの裁判所に提出された(IDNも確認した)偽造文書によって、元の文書の真正性を確認しないまま養子縁組が認定されていた。つまり、コンゴから届いた養子縁組に関する虚偽の判決がクロアチアで認められ公式なものとなっていたのだ。

これらを基礎としてこの児童らが登録され、内務省がビザを発行することになる。そののち、児童らはザンビアを通じてクロアチアに送られることになっていた。

児童の権利と養子縁組の専門家であるローリー・ポスト氏は、「このようなケースでは標準的な手続きである外交ルートを通じて書類が届かなかったため、養子縁組の信憑性そのものが疑われる状況にあった。」と語った。

「養子を取る親に一度も会ったことがないか、あるいは、クロアチアに一度も行ったことのない子どもに関して、受入国でビザを発行することはクロアチア内務省では通常行っていない。」

社会福祉家族省の広報は、(コンゴ民主共和国のように)ハーグ条約の署名国でない国からの国際養子縁組に関して同省は監督権限を持っていない、と主張した。

この10年間でクロアチアの裁判所が何人の児童の国際養子縁組を認めたのかは不明だ。内務省は94人の子どもに関してビザを出したが、社会福祉家族省のマリン・ピレチッチの報道声明によると、131人のコンゴ民主共和国出身の子どもが養子になったという。両者の数字は合わず、IDNが匿名の情報源から得た情報によると、クロアチアの家族の一員になったはずの残り37人の子どもたちの行方がわからなくなっているという。

新たに創設された「コンゴ民主共和国の国際養子縁組里親協会・クロアチア」のデータによると、104人に加えて4人の子どもが、クロアチア外に住む3家族へと里子に出されたという。国土安全保障省では正確な数を把握しておらず、子どもの行方も、現在どのような状況で暮らしているのかもわからない。クロアチア当局は自国出身の児童に対してはこのような粗雑な扱いはしないだろう。

信頼できる情報筋がIDNに語ったところによると「子ども一人当たりの値段は1万5000~4万ユーロ。子どもの養子縁組を媒介する孤児院のオーナーであるエマニュエル・コバンゴ氏は、子供1人につきおよそ1万ドルを請求する。また、弁護士や裁判の通訳、移動・宿泊費など別の費用もかかり、結局コストは1万5000ユーロから4万ユーロとなる。」という。

Photo: Artwork from the Global Report on Trafficking in Persons 2018, UNODC.
Image: Enlarged and cropped image on Cover of 2016 UNODC Global Report on Trafficking in Persons.

里親自身がIDNに語ったところによると、クロアチアの都市ズラタルの裁判官は賄賂をもらって養子縁組を承認したという。

IDNは、法的枠組みからこの問題を検討している家族法の専門家ドゥブラフカ・フラバル教授に、文書や裁判所の決定が欠如している問題について見解を問うた。

「このような行為は、刑事上の犯罪とは言えないにしても、懲罰の対象にはなる。捜査中に証拠を隠したり、証人に影響を与えたりする可能性を減らすために、彼らは職務から外されるべきだった。しかし、重要な問題は、クロアチアでは何の捜査も行われていないという点だ。」とフラバル教授は警告した。

「外国の裁判所の決定を右から左に承認するだけの行為は正当化できない。電子的記録だけではなく紙の形態でも記録が残されるべきなのだから、『記録が残っていない』は通用しない。裁判所の決定はそれぞれ別のものとして記録され、50年間は保存されるべきだ。」

「法的推論は裁判所の決定の不可欠の要素で、すべての裁判官が提示しないといけないものだ。このような判決文に何も説明が書かれていないのはどうしてか。」とフラバル氏は疑問を呈した

コンゴ民主共和国から到着したとみられる児童を迎えるためにクロアチアから里親がザンビアに来た際ですら、支払いは続いている。里親がホテルの部屋につくと、子どもを連れて行く前にさらなる書類の準備が必要だという口実の下に、里親と子ども双方から渡航用の文書を取り上げてしまう。

そこまでに多額の支払いを済ませてしまっているから、今さら断るわけにもいかない。そののち、同じ人物らが戻ってきて、さらなる文書準備のための金を請求するが、たいていは約2000ドルかかる。状況を目撃したことのある人物は「詐取は非常に巧妙な形で行われる」と話す。違法な養子縁組の手続きを経験したことのあるクロアチアの人物は匿名で、渡航用の文書を取り上げられているから「帰りようがなかった」と語った。

こうした行為は、5月26日にザンビアのヌドラ空港でクロアチア人を逮捕した警察官の裁判での証言でも裏付けられた。彼らは、コンゴの児童の人身売買の黒幕であったと検察が主張するスティーブ・ムリジャ氏は、コンゴ民主共和国の孤児院からザンビアまで児童を連れてくるのに一人当たり2040ドルを要求していたと証言した。この警察官はさらに、起訴されたクロアチア人の一人と、児童の出身地であるコンゴの孤児院を運営してたエマニュエル・コボング氏と共謀していたスティーブ・ムリジャ氏との間で、アプリ「ワッツアップ」を通じたやり取りがなされていたと証言した。

子どもの権利とルーマニアからの違法養子縁組の問題のパイオニアとして欧州委員会で20年以上も働いてきたオランダ人専門家ローリー・ポスト氏は、国際養子縁組のメカニズムを熟知している。彼女はまた『ルーマニア:輸出のみの国』と題する書籍の著者でもあり、「国際『養子縁組店ストアー』がルーマニアでの活動を閉鎖した後、コンゴ民主共和国に移ってきた。」と指摘した。

「これは国連の子どもの権利条約に違反しているだけではなく、今回のように注文・支払い・配達という手順を踏んでいるなら、まぎれもなく人身売買に他ならない。人間を売り買いするのは禁じられている。腐敗した養子縁組の慣行は子どもの権利とは何の関係もなく、ただ市場の需要に応えているだけだ。」とポスト氏は強調した。

表面上は利他的な行為であり、単に子どもを貰い受けているだけと里親側では考えるかもしれないが、それが媒介人側の手口なのだ。より深く事態を眺めてみると、養子縁組産業は、実際には孤児ではない「孤児」から搾取しようと手ぐすねを引いている者ばかりである。これが、コンゴ民主共和国の子どもたちに起こったことだ。

(匿名を希望した)一部の里親はIDNの取材に対して、コンゴ民主共和国にいる子どもの実の親たちから定期的に連絡を受けていたから、子どもが誘拐されてきたとは思わなかった、と話している。しかし、このケースにおいては、子どもの実の親だと主張する人物らがクロアチアの里親に対して金を請求しており、いわば精神的なゆすりのような状況になっている。

ポスト氏は、マフィア(つまり組織犯罪勢力)が国際養子縁組の媒介者の背後にいるとし、「このクロアチアのケースの偽造文書に加えて、里親になりたいという西側諸国の人々の要望に応えるために親から無理やりに引きはがされた子どもたちのケースもある。」と指摘した。

Aurora Weiss, UN Global Reporter
Aurora Weiss, UN Global Reporter

ポスト氏は、「同じ人物らがこの産業で暗躍しており、同時期に複数の国で活動している。」と指摘した。彼女によると、これはいわばサーカス一座のようなものだ。仲買人たちは「店」を構え、捕まれば別の国へ行き、そこで店を開く。この産業で創出されている商品は子どもだ。消費者が望むのであれば、子ども達は地球の裏側のまったく違った文化の国にでも連れて行かれる。

クロアチア政府に捜査の意思がないことは、公務員がこの組織犯罪に加わっており、それを隠蔽しようとの圧力が働いていることを示唆している。クロアチアは昨年、強制的失踪に関する条約を批准しており、国連人権高等弁務官事務所の強制失踪委員会(CED)がこの問題を管轄している。(原文へ

注:法手続きが進行している関係上、多くの関係者が本件の報道にあたって匿名を希望した。

※この件が報道されたのち、ザンビアの裁判官が6月1日にクロアチアの4組の夫婦に無罪を言い渡したと報じられた。彼らは児童人身売買の容疑で半年近く収監されていた。首都ルサカ北方にあるヌドラの裁判所でメアリー・ムランダ裁判官は、この8人に対する「訴追には十分な証拠が得られなかった。したがって無罪を言い渡す」と述べた(AFP通信による)。違法な養子縁組に関する捜査はクロアチアと欧州各国で続けられることになる。

INPS Japan

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核兵器禁止条約の普遍化が不可欠(寺崎広嗣創価学会インタナショナル平和運動総局長インタビユー)

【ベルリン/東京IDN=ラメシュ・ジャウラ

仏教指導者で世界平和の構築を一貫して訴え続けてきた池田大作氏(創価学会インタナショナル(SGI)会長、東京)は、5月19日から21日まで広島で開催された主要国首脳会議(G7サミット)に先立ち提言を発表し、G7首脳に対し、ウクライナ紛争の解決に向けて大胆な措置を取り、「核兵器の先制不使用」の誓約に関する協議を主導して人類の安全を保証するよう呼びかけた。

今回のG7サミット開催地は、1945年の米国による原爆弾投下により広島・長崎合計で22万6000人以上が殺害されている(両都市では広島の方が被害が大きかった)ことから、象徴的な場所であった。

しかし、G7(カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国の7カ国と欧州連合)の首脳は、ロシア・ウクライナ紛争や「核兵器の先制不使用」の誓約について大胆な措置を取ることができたのだろうか。

IDNは、寺崎広嗣SGI平和運動総局長にインタビューした。全文は以下のとおり。

Q: ウクライナ問題が焦点となり、ロシアと中国がG7を批判する中で5月21日に終了した広島サミットの結果をどのように考えておられますか。

Hiroshima Peace Memorial (Genbaku Dome) Photo Credit: SGI
Hiroshima Peace Memorial (Genbaku Dome) Photo Credit: SGI

寺崎:人類史上、初めて原爆が落とされた広島は、平和の原点であり、この地で核兵器全廃のための首脳会議を開くべきだ―池田SGI会長が1975年以来、繰り返し訴えてきたことです。

今回のサミットで核軍縮に向けて具体的前進があったとは言い難いですが、それでもなお、G7の首脳が、核兵器の惨禍を象徴する広島に会し、直接、被爆者の話に耳を傾け、被爆の実相に触れたことは、意義深いと感じています。

コミュニケが出されましたが、問われるのは、グローバルな危機に対処する、主体的な行動です。各国がイデオロギーや利害の壁を越えて、世界の平和のために開かれた対話を促進することを、強く望みます。

Q: 広島G7サミットは、ロシアとウクライナの敵対行為の停止に関して何を達成したと見ておられますか。停戦に向けた具体的な計画は策定されたでしょうか。

寺崎:まさに人々の悲願も、国家指導者たる者の責務も、第一に、壊滅的な結末の回避にあるはずです。

Wreath-Laying at the Cenotaph for the Atomic Bomb Victims by G7 leaders—Italy’s PM Meloni, PM Trudeau of Canada, President Macron of France, Summit host Fumio Kishida, US President Biden, and Chancellor Scholz—flanked by European Commission president von der Leyen (right) and European Council president Michel (left). Credit: Govt. of Japan.
Wreath-Laying at the Cenotaph for the Atomic Bomb Victims by G7 leaders—Italy’s PM Meloni, PM Trudeau of Canada, President Macron of France, Summit host Fumio Kishida, US President Biden, and Chancellor Scholz—flanked by European Commission president von der Leyen (right) and European Council president Michel (left). Credit: Govt. of Japan.

残念ながら、サミットではウクライナへの支援とロシアへの制裁強化や非難は表明されたものの、停戦に向けての交渉の具体的な計画は十分に示されていないと感じます。しかし、「グローバルサウス」との連携が強化された点は歓迎するものです。

これ以上、戦火によって苦しむ人々が拡大しないよう、私たちも、関係国が戦闘の全面停止に向けて協議の場を設けられるよう、より以上、声を上げ続けて参ります。

Q: 池田博士は提言の中で「先制不使用の誓約」は、核不拡散条約(NPT)と核兵器禁止条約をつなぐ車軸として、「核兵器のない世界」の実現を加速させることができる「希望の処方箋」となると訴えましたが、G7は広島サミットでこの議論をリードすることを約束したでしょうか。

寺崎:実際のところ、確たる成果は見えません。しかし、「種」は植えられたと信じたい。後世の人から「あれが時代の転換点だった」と言われる現実的な一歩を踏み出すべきではないでしょうか。

NPTと核兵器禁止条約の目的は、「核兵器なき世界」という点で一致しています。核兵器使用のリスクがかつてないほど高く、長期化する今、それを脱するための土台となるのが、核兵器国による「核兵器の先制不使用」にほかなりません。それこそが、NPTと核兵器禁止条約を繋ぐ土台になるものであり、「核兵器の先制不使用」の誓約に関する協議をG7が主導して進められるよう、引き続き働きかけていきたいと思います。 

Q: 「核兵器禁止条約の精神」は、G20バリサミットの首脳宣言に明記した「核兵器の使用又はその威嚇は許されない」との認識にも反映されていますが、G7は、広島から世界に向けてこの精神を力強く発信することに成功したでしょうか。

寺崎:今回のサミットで「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」が出され、G20バリ首脳宣言についても確認したことは、特筆すべきことでしょう。

SGI joined with other NGOs to hold a side event at UN Headquarters during the NPT Review Conference to emphasize the urgency of the pledge of no first use of nuclear weapons. / Source: INPS Japan

しかし、「他国の核兵器は危険だが、自国の核兵器は安全の礎である」との思考に基づく核抑止政策を転換していかなければ、人類は、いつ崩落するかわからない断崖に立ち続けるようなものです。この強い危機感から、被爆者や市民社会が後押しして誕生したのが核兵器禁止条約であり、その普遍化がますます必要です。

そのためにも、「核兵器の先制不使用」の誓約を基に、厳しい現実を乗り越える協議が前進するよう、引き続き核兵器の非人道性の認識を地域に、世界に広げて参ります。(英文へ

INPS Japan

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気候変動はオーストラリアの国家安全保障にとって脅威か?

この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています。

【Global Outlook=トビアス・イデ】

気候変動活動家から、新しいティール政治運動、そして著名な防衛専門家まで、より多くのオーストラリア人たちが、気候変動がもたらす安全保障上の影響について懸念を表明するようになっている。同国が長い海岸線を有し、山火事やサイクロン、干ばつ、そして最近ではオーストラリア史上最悪の洪水が頻繁に発生していることを考えると、このことは驚くには当たらないかもしれない。

ある最新の論文が、気候変動がオーストラリアの国家安全保障を損なっているか否か、損なっているとすればどのように、という問いに対して包括的な答えを示している。従来の学術研究は、大半が様々な分野に散らばっていた(その多くが有料閲覧であり一般の人はアクセスできない)。様々なNGO政府機関がその隙間を埋めようと挑み、いくつかの画期的な作業を行ったが、科学的な研究は選択的にしか活用されていない。このトピックに関する最近の政府報告書は、機密扱いのままである。(

まず、既に2050年までに、オーストラリアの平均気温は現在より1.1°Cから1.5°C上昇すると予測されており、山火事が起こりやすい気象条件の発生する可能性は8%高まり、洪水のリスクは大幅に増加し、干ばつが農業生産性を低下させるといわれている。これらの展開が相まって、人々の健康と経済の安定の点で、人間の安全保障にとっての深刻な脅威となっている。

海面上昇と、国土全体にわたる洪水、火災、干ばつ及び熱波のリスクも、国家安全保障に深刻な影響を及ぼしている。最近の研究によれば、二つの脅威が特に深刻である。

第1の脅威は、気候変動が主要なインフラ、特に輸送部門とエネルギー部門を混乱させるということだ。オーストラリアでは、海岸沿いや洪水や火災のリスクがある地域に何千キロメートルもの道路、鉄道、電線が走っている。2050年までに、海岸浸食だけでも、300を超える警察署、消防署および医療施設に脅威が及ぶと予測されている。熱波の際には、空調需要の高まりと、火災によるエネルギー・インフラの損傷で、送電網に負荷がかかる。より強力な熱帯性低気圧は、複数の種類のインフラを破壊する力があり、最近ではサイクロン「ガブリエル」がニュージーランドを襲った際にそういった例が見られたが、被害のリストはさらに続く可能性がある。

この新しい研究は、気候変動が国家安全保障にもたらす第2の主な脅威として、軍事力への影響を指摘する。オーストラリア国防軍は、民間と同じインフラに依存していることが多いため、その脆弱性を共有することになる。例えば、(アリス・スプリングスとキンバリーを結ぶ)タナミ・ロードは、オーストラリアがインド太平洋地域における国際紛争に関与する必要が生じた場合には、重要な戦略資産になりうる。しかし、この道路は熱波と洪水の被害に対して非常に脆弱である。

軍専用のインフラも同様に脅威に晒されている。この点に関する情報は一部、機密扱いとされているままだが、国防省は、沿岸部の基地のいくつかは、洪水と海面上昇によって高い危険に晒されていると考えている。それに加えて、オーストラリア国防軍は、気候変動後の世界では、より多くのリソースと人員を災害対応に投入しなければならなくなるだろう。国内でもアジア太平洋地域でも、大災害の時には、オーストラリア軍は主要な救援部隊となることが多い。こうした気候変動の影響が同時に発生したり、国際的緊張が非常に高い時期に発生したりした場合、これはオーストラリア国防軍の能力を非常に酷使することになる可能性がある。

研究は、他にも多くの国家安全保障上の脅威を指摘している。

気候変動は、国際的な戦争を引き起こすわけではないが、オーストラリアの近隣諸国の政治的不安定性のリスクを高める可能性は大いにある。大規模災害によって反政府感情が高まり、絶望した被災者が援助や収入を求めて過激派グループを頼るということがあり得る。また専門家たちは、災害によって引き起こされた移住と、一部の太平洋島嶼国における地域紛争を関連付けている。気候関連の災害は、人口が多く、少数民族への政治的差別があり、人間開発のレベルが低い国で、暴動を引き起こす可能性が非常に高いことが証拠によって示されている。これら三つの要素は、インド、フィリピン及びパプア・ニューギニアを含め、(東)南アジアおよび太平洋地域に多く見られる。

新型コロナウイルス感染症の流行は、グローバルなサプライチェーンに大きく依存している国がいかに多いかを示した。もし気候変動がナイジェリアやイラクのような主要産油国の政情不安を促進した場合、オーストラリアの社会、経済そして軍事は、燃料価格の高騰に対応しなければならなくなるだろう。さらに、オーストラリアは、経済およびインフラにとって欠かせない、自動車、電子部品、医療品など複数の製品の主要な輸入国でもある。それらの製品の多くは中国南西部で生産されているが、同地域では最近、猛烈な熱波のため数日間にわたり工業生産が停止した。このような熱波は、洪水や暴風雨とともに、気候変動の未来ではより頻繁に発生すると予想され、民間、軍事および経済のインフラにとって不可欠な産品の供給の障害となる可能性がある。

この論文は、気候変動によってもたらされるその他の国家安全保障上の脅威、例えば、大規模な移住や国際的な漁業紛争などについても論じているが、それらは可能性が低いか、重要度が低いと見なしている。それでも、今後30年間で気候変動はオーストラリアの国家安全保障の様々な側面を損なうであろうことがかなり明確であると言及している。これらの影響に対応するために、政策立案者らは、大胆な気候変動低減策、避けられない気候変動に対する、紛争に配慮した持続可能な適応策、そして、協調的な国際平和・開発政策という三つの面からなる戦略を追求するのが賢明であろう。

トビアス・イデは、マードック大学(パース)で政治・政策学上級講師、ブラウンシュヴァイク工科大学で国際関係学特任准教授を務めている。環境、気候変動、平和、紛争、安全保障が交わる分野の幅広いテーマについて、Global Environmental Change、 International Affairs、 Journal of Peace Research、 Nature Climate Change、 World Developmentなどの学術誌に論文を発表している。また、Environmental Peacebuilding Associationの理事も務めている。

INPS Japan

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サイクロンとモンスーンの季節に直面するパキスタンで食糧不安の恐れ

【ペシャワールIPS=アシュファク・ユスフザイ

パキスタンが今後数ヶ月の間に深刻な食糧不安に直面する可能性があるという国連による警告は、人々が依然として避難所や薬、適切な食糧なしで暮らしている洪水の被災地に焦点を当てるよう政府に呼びかけるものだ、とアナリストは述べている。

この警告は、イスラマバードの国立予報センターが、今後数日以内に超大型のサイクロンビパルジョイがパキスタンに上陸すると予想される中で発せられた。

今後サイクロンの移動に伴い激しい嵐と強風が予想されるパキスタンのシンド州とインドのグジャラート州では約8万人の集団避難が行われている。

嵐とモンスーンシーズンの到来を前に、最近発表された国連の報告書は、もしパキスタンの経済・政治危機がさらに深刻化し、2022年の洪水被害(パキスタンはその被害から未だに回復していない)が悪化すれば、パキスタンにおける急性食料不安は今後数ヶ月でさらに悪化する可能性があると警告している。

FAO/WFP
FAO/WFP

国連食糧農業機関(FAO)と世界食糧計画(WFP)が共同で発表した「ハンガー・ホットスポット」と題する報告書は、昨年6月から7月にかけて大洪水に見舞われた住民のニーズに応えることができていないパキスタン政府に対して痛烈な警告を発している。さらにこれら2つの国連機関は、2023年6月から11月までの見通し期間中に、パキスタンを含む22カ国・81の飢餓地域で、深刻な食料不安がさらに悪化する可能性が高いと警告している。

この報告書によると、パキスタン、中央アフリカ共和国、エチオピア、ケニア、コンゴ、シリアは深刻な飢餓は発生する懸念があるホットスポットであり、ミャンマーにも警告が及んでいる。

パキスタンのタリク・バシール・チーマ連邦国家食料安全保障・研究大臣は、パキスタンで「急性食料不安」が起こりうるとしたこの報告書について、「センセーショナリズムを広め、(パキスタンを)アフリカ諸国のように飢餓ホットスポットと断定しようとする試みだ。」と述べて異議を唱えた。

チーマ大臣は、「2つの国連機関がパキスタンをアフリカ諸国のような飢饉の『ホットスポット』と宣言することを望んでいる。しかし、パキスタンは今年小麦が豊作で、前年の繰越在庫と合わせて2850万トンの小麦生産が記録された。」と、IPSの取材に対して語った。

しかし、現地で活動するアナリストやNGOは、この国連報告書の内容は正確であるとし、新たな洪水の波が来る前に食料安全保障のための強力な対策を講じるようパキスタン政府に促した。

経済学者のムハンマド・ザヒール氏はIPSの取材に対して、「パキスタンを襲った未曾有の大洪水からほぼ1年が経過したが、洪水の被災地に住む1000万人以上の人々が安全な飲料水へのアクセスを奪われたままであり、被災者の家族は病気になる可能性のある汚染水を使うしかない環境にある。」と語った。

1月、ジュネーブで開催された会議では、パキスタン洪水被災者への支援として、163億米ドルの復旧費用に対して107億米ドル以上の拠出が約束された。

「会議で約束された金額はすべて融資であり、随時パキスタン政府に送られることになります。しかし、洪水に見舞われた人々はまだその恩恵を受けていません。シンド州、バロチスタン州、カイバル・パクトゥンクワ州の一部で被災者らは、今後さらなる豪雨に見舞われる恐れがあることから一層の支援を必要としています。」と語った。

The projected path of Cyclone Biparjoy.  About 80,000 people are expected to be evacuated ahead of the storm. Credit: India Meteorological Department
The projected path of Cyclone Biparjoy.  About 80,000 people are expected to be evacuated ahead of the storm. Credit: India Meteorological Department

報告書によると、850万人以上の人々が高レベルの急性食料不安に見舞われる可能性がある。

昨年の洪水により農業部門に300億ルピーの損害と経済的損失が発生し、今般のサイクロン来襲で状況はさらに深刻化している。

国連開発計画(UNDP)によると、災害後のニーズアセスメント(PDNA)では、洪水被害が149億米ドル以上、経済損失が152億米ドル以上、復興需要が163億米ドル以上と見積もっている。

また、経済・政治危機により家計の購買力が低下し、食料やその他の必需品を購入する能力が低下しているため、食料不安と栄養不良の状況は見通し期間中に悪化する可能性が高いと指摘している。

ユニセフの報告書によると、栄養不良が多く、水や衛生設備へのアクセスが悪く、就学率が低いなど、厳しい状況にある地区では、960万人の子どもを含む推定2060万人が人道支援を必要としている。

「衰弱し飢えた被災地の子どもたちは、重度の急性栄養失調、下痢、マラリア、デング熱、腸チフス、急性呼吸器感染症、痛みを伴う皮膚疾患に苦しんでいる。」

「ユニセフは、緊急の人道的ニーズに対応すると同時に、故郷に帰還する被災者のために、既存の保健、水、衛生、教育施設の修復やリハビリ支援を続けていく予定だ。推定350万人の子どもたち、特に女児が、永久に学校からドロップアウトする高いリスクにさらされている。」

「しかし、洪水により避難したすべての家族に確実に手を差し伸べ、この気候災害を克服できるようにするためには、さらに多くの支援が必要だ。また、被災者がこの深刻な被害から立ち直るには、数年とは言わないまでも、数カ月はかかるだろう。」と報告書は述べている。

この洪水により3300万人が被災し、1700人以上の人命が失われ、220万棟以上の家屋が損壊・破壊された。洪水により被災地のほとんどの水道が被害を受け、250万人の子どもを含む540万人以上が池や井戸の汚染された水のみに頼らざるを得なくなった。

スワット地区の洪水で家と数頭の家畜を失ったスルタナ・ビビさん(50歳)は、これまでのところ政府からの援助はないと語った。

「初期のころは地元のNGOから食料品をもらっていましたが、家を再建するには資金援助が必要です。多くの人がまだ親戚と暮らしています。」と、ビビさんはIPSの取材に対して語った。

スワット地区やその他の地域で支援活動を行っているパキスタンのNGOアルーキドマット財団の代表は、「状況はまだ改善されていない。」と指摘した上で、「栄養失調の根本的な原因は、安全でない水と不衛生な環境です。下痢などの感染症は、子どもたちに必要な栄養の摂取を妨げます。栄養失調の子どもたちは、すでに免疫力が低下しているため、水系感染症にも罹りやすく、栄養失調と感染症の悪循環が続くことになります。」と語った。

「6月に入り、さらなる洪水が懸念されています。昨年はこの月に大洪水に見舞われました。政府は国民を助けなければなりません。今年再び洪水に見舞われた場合、昨年の大洪水の被害から回復していない人々は、一層深刻な被害を被るだろう。」と、アナリストのアブドゥル・ハキム氏は語った。

A flooded village in Matiari, in the Sindh province of Pakistan. Credit: UNICEF/Asad Zaidi
A flooded village in Matiari, in the Sindh province of Pakistan. Credit: UNICEF/Asad Zaidi

パキスタン医師会のアブドゥル・ガフール博士は、「洪水で破壊された医療施設が稼働していないため、人々は依然としてNGOが主催する医療キャンプに頼っています。」と指摘した上で、「パキスタン政府はFAO/WFPの報告書を真摯に受け止め、水や食品を媒介とする病気から被災者を守ってほしい。」とIPSの取材に対して語った。(原文へ

INPS Japan/ IPS UN Bureau Report

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│パキスタン│紛争地の子どもたち

カホフカダム崩壊の影響について、今最も重要なのは人々を救うこと。(マーティン・グリフィス国連緊急援助調整官兼人道問題担当事務次長)

国連人道問題事務所は、カホフカ水力発電所のダム崩壊によって被災した地域を支援するための3段階の計画を策定した。当面は、もっぱら人命救助と人々の避難にあたっている。一方で、ウクライナのロシア占領地域に暮らす被災者へのアクセスを得るため、ロシア政府とも交渉中である。グリフィス国連緊急援助調整官兼人道問題担当事務次長は、国連ニュースサービスのナルギス・シェキンスカヤの独占インタビューに応じ、次のように語った。

【国連ニュース/INPSJ=ナルギス・シェキンスカヤ】

シェキンスカヤ: この3日間、報道によると、ウクライナの国連は、ゼレンスキー大統領自身(=「国際機関が災害地域にいないのであれば、それは存在しないか、あるいは能力がないことを意味する」と語った。)を含め、批判されています。こうした批判はどこまで妥当だとお考えですか?

グリフィス:こうした批判は理解できます。現在ウクライナが置かれている状況下では、危機対応活動を組織することは、国連のみならず、すべての人道支援団体にとって困難なのが実情です。しかし、ゼレンスキー大統領の反応はよく理解できます。彼は国民に寄り添った人物で何が起こっているのかをよく理解しているからこその批判だと思います。だから、私たちはそのことにこだわってはいません。私たちは、できるだけ早く人々を助けることに集中しています。

シェキンスカヤ:このような批判が、現地にいる国連職員を困難にさせていると思いますか?

Фото ООН/Э.Шнайдер Заместитель Генерального секретаря по гуманитарным вопросам и Координатор чрезвычайной помощи ООН Мартин Гриффитс дает интервью Службе новостей ООН.
Фото ООН/Э.Шнайдер Заместитель Генерального секретаря по гуманитарным вопросам и Координатор чрезвычайной помощи ООН Мартин Гриффитс дает интервью Службе новостей ООН.

グリフィス:過去数ヶ月間、私たちはウクライナ政府と地方当局の両方と強い絆を築いてきました。私自身もクリスマスイブにへルソンミコライウを訪れ、地元当局と面会しました。私たちはこれまでずっと、現地で人道支援を続けてきましたし、今も続けています。

例えば、昨日、人道支援物資を積んだ2つの輸送隊がへルソンに送られましたし、今日も1隊が向かっています。つまり、国連の人道支援メカニズムは機能しているのです。

シェキンスカヤ:今、短期的、長期的に優先すべきことは何でしょうか?

グリフィス:今は、緊急救援活動を行っている段階です。まずは、浸水した地域から人々を脱出させる必要があります。一両日中にボートで全ての被災者のところへ行けるようにしたい。それが今、最も重要なことです。次に、清潔な水、医療品、食料を提供し、人々が立ち直るのを支援する必要があります。

そして、次の段階に進みます。大型ダムを決壊させるという衝撃的な行為がもたらす人道的な結果を検証し始めるのです。約70万人の人々が清潔な飲み水を失っているという事実、そして世界で最も地雷が多い地域で起こった水害で地雷が漂流している現実を検証しなければなりません。また、被災住民、とりわけ子供たちの生活、水供給、医療サービスに配慮しなければなりません。

第3段階では、経済的、環境的な影響に対処することになりますが、これは衝撃的なものになると思います。なぜなら、その影響はウクライナだけにとどまらないからです。例えば、ウクライナは穀倉地帯であり、被災地域の大部分で、すぐに作物を生産できないことを鑑みれば、世界の食料価格にも悪影響を与えるでしょう。

シェキンスカヤ:そのような長期的な影響の規模を何とか小さくするために、今日何かできることはないでしょうか?

グリフィス:今大切なことは、人々を救助し、安全な場所に移動させることです。特に子どものいる家族には、病気にならないよう、食料ときれいな水を提供しなければなりません。それが現時点での最優先事項です。

しかし、その後、中長期的な被害状況を把握することができれば、これまで世界の他の地域について国連が行ってきたように、緊急アピールを開始することになるでしょう。

シェキンスカヤ:緊急作戦といえば。ヘルソンの地元当局は、被災者を救助するためにモーターボート、ドローン、その他の高度な機器が必要だと述べています。国連にそれを支援する能力はあるのでしょうか?

グリフィス:はい、そうした経験はあります。例えば、世界食糧計画には、被災者を水上で安全な場所に運ぶための船が用意されています。

ジュネーブにある国連人道問題調整事務所は、トルコ・シリア地震の後、同様のオペレーションを行いました。救助隊は、最も助けが必要な場所で活動し、捜索と救助活動を調整しました。ウクライナでも、間違いなく、そのような支援を動員する準備が整っています。

シェキンスカヤ: 既にそのような依頼は来ているのでしょうか?

グリフィス:まだですが、デニス・ブラウン ウクライナ人道支援調整官が既にこのテーマで交渉しているとしても私は驚かないでしょう。彼女は、ウクライナにおける国連の最高位の代表者で、現在へルソンとミコライウを訪れています。彼女はきっと、このテーマで地元当局と話をすることでしょう。

シェキンスカヤ:ユニセフの報告によると、ダム破壊の結果、川を挟んだ対岸のロシア占領地には、支援を必要とする人々が約2万5千人いるとのことです。これらの地域への国連のアクセスについて、何かニュースはありますか?

グリフィス:ダムが決壊して以来、私たちはロシア当局と連絡を取り合っています。私自身、国連常駐代表部の人たちと会いましたが、文字通りこの30分(金曜日の夕方、編集部注)、彼らと連絡を取り合い、前線を越えて安全にアクセスする許可を求めています。

これは人道支援機関にとっては標準的な手続きです。シリアでもスーダンでも、他の国でもそうでしたし、ウクライナでも戦争が始まって以来、この方式で活動しています。いつ、どこに、何人、どんな荷物を運ぶのか、計画を双方に伝える。合意できることを期待しています。

シェキンスカヤ:今、洪水について、大きな誤報キャンペーンが行われています。このキャンペーンへの対策を緊急対応計画に盛り込むべきだとお考えでしょうか?

グリフィス:私は、人道主義者は情報戦に巻き込まれることなく、もっと大きな仕事をするべきだと確信しています。私たちは、人々のニーズについて真実を伝え、そのニーズを満たすための方法について明確な考えを持つ。これが私たちの義務です。私たちは、戦争がもたらす他の結果には関与しません。

シェキンスカヤ:ウクライナの被災地の人々に伝えたいことは?

グリフィス: 私は彼らに連帯と共感の言葉をかけたい。あなた方は、もう1年以上も続いている戦争を経験しなければなりませんでした。そして今回の大洪水。あなた方は夜中に爆発で起こされた。洪水は、あなた方が望んでいた未来を奪っていく。生活を破壊し、生計を奪う。このような状況において、メッセージは非常にシンプルです:私たちは、この困難な時にあなた方と共にいます。そして、神様がこの悪夢を止めてくださることを願っています。

シェキンスカヤ:次にスーダン情勢についてですが、これも今日、国連が対処しなければならない危機的状況です。 スーダンの国連事務所長がペルソナ・ノン・グラータとなった場合、現地での人道支援活動にどのような影響があるのでしょうか?

MG:今、スーダンで私たちが優先しているのは、人道的アクセスの確保です。ご存知のように、最近、24時間の敵対行為停止計画が策定されました。停戦は6月10日(土)に開始されます。私たちは、これがうまくいくことで、人道支援を提供する機会が得られることを望んでいます。住民はこの援助を切実に必要としています。私たちは現在、スーダン国軍と即応支援部隊双方と連絡を取っています。彼らは輸送隊の自由な移動のための手配を約束しました。私たちは、チャドから西ダルフールまでの国境を越えた作戦に合意したのです。内戦勃発以来5、6週間何も物資が届かなかった人々にとって、これはとても重要なことです。

それ以上に、この内戦を終わらせ、スーダンを民政に戻すプロセスを開始することが根本的に重要なのです。 紛争が最終的に解決され、支援が必要なくなること、それが、援助に携わる者たちの願いです。(原文へ

UN News Service/ INPS Japan

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21世紀の核凍結は現実となるか?

【国連IDN=タリフ・ディーン】

米国のエドワード・マーキー上院議員(民主、マサチューセッツ州選出)は5月4日、核兵器の実験・生産・配備に関する「21世紀の核凍結」ともいうべき法案を再提出する方針を発表した。

元米陸軍予備役で「核不拡散軍縮議員連盟」(PNND)の共同代表でもあるマーキー氏は米上院に「軍備制限協議加速法案」(HALT)を提出する予定だ。[訳注:「HALT」は「停止させる」の意]

同法案は、米国の政策は次のような要素を含むべきだとしている。

1.全ての核兵器及びその運搬手段の実験・生産・配備を検証可能な形で停止する合意。

2.新戦略兵器削減条約(新START)による現地査察・検証措置の再開。

3.非戦略核兵器、あるいは、新STARTが扱っていない戦略兵器に関する、ロシア連邦との二国間条約か協定の締結。

4.ジュネーブ軍縮会議か別の国際的な場での、検証可能な核分裂性物質生産禁止条約の交渉。

5.兵器級核分裂性物質の削減に向けた、米国の主催するサミットの開催。

6.包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効に向けて、米国が同条約を批准すること、および、その発効要件となっている付属書2規定の国々による批准の促進。

7.将来の多国間軍備管理・軍縮・リスク削減に関する協定を交渉・締結するための、すべての核保有国との協議。

8.米国による核兵器爆発実験実施または準備のための予算支出の禁止。

PNNDによると、HALT法案が出された今年は、核兵器の「凍結」を求めて100万人がニューヨークのセントラルパークに集った米国史上最大の平和デモから41年目にあたるという。

1982年6月12日、当時下院議員だったマーキー氏は演説を行い、ロナルド・レーガン大統領による新たな核兵器システムに対する不必要な支出の停止を要求し、大統領がソ連との核軍縮交渉を開始するよう呼びかけた。

識者らは、この核凍結運動は、米国とソ連(のちのロシア)間の二国間軍備管理条約交渉に必要な政治的意志を生み出すことに寄与した、としている。

4月14日、「核兵器・軍備管理作業グループ」の共同代表でもあるマーキー上院議員は、テッド・リュー下院議員とともに、「核兵器の先行使用を制限する法案」も再提出した。議会からの事前承認なしに核攻撃をする権限を大統領から奪うことを目的としている。

また、この法案は、紛争時に大統領が核兵器を導入することを防ぐためのセーフガードを制定し、議会が戦争を宣言する唯一の憲法上の権限を再確認するものである。「核兵器の先制使用を制限する法案」の再提出は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナに対し無謀な核の恫喝を行ってから1年というタイミングで出された。

西部諸州法律家財団(WSLF、カリフォルニア)のジャッキー・カバッソ代表は、核不拡散条約(NPT)発効から53年、今回のHALT法案は、高まる核の危機に対処するための政策提言メニューを示している、と語った。

Jackie Cabasso
Jackie Cabasso

この法案は、もし成立すれば、NPTの前文と第6条に体現された軍縮義務の履行開始を意味する。この義務は、1995年のNPT無期限延長決定や、2000年と2010年のNPT再検討会議の合意、それに、NPT第6条の権威的な解釈を示した1996年の国際司法裁判所の勧告的意見で繰り返し示されてきたものだった。

勧告は全会一致で「厳格かつ効果的な国際管理の下であらゆる側面における核軍縮につながる交渉を誠実に追求し妥結に導く義務が存在する」ことを認めた。

「しかし、残念ながら、米国政府やその他の核保有国の政府は、核軍縮はおろか軍備管理ですら実行する政治的意思がないようだ。」とカバッソ代表は指摘した。

動かしがたい真実は、HALT法案や、ジム・マクガバン下院議員が提出した「核兵器禁止条約の目標と条項を受け入れる決議」(そのいずれの背景にも精力的な草の根運動がある)のいずれも、近い将来には実現の見通しがないということだ。

米国の核兵器政策を分析する非営利の公益団体であるWSFLのカバッソ代表は、「どの核保有国も、婉曲的に『抑止』という言葉で表現されている核兵器による強制力ではなく、『共通の安全保障』に立脚したグローバルな仕組みを改めて構想する気がないことは明らかである。」と語った。

ブリティッシュコロンビア大学(バンクーバー)公共政策・グローバル問題大学校「グローバル・人間安全保障大学院プログラム」の責任者を務めるM・V・ラマナ教授は、「HALT法案を提出したマーキー議員には感謝しなくてはならない。」と、IDNの取材に対して語った。

M.V.-Ramana
M.V.-Ramana

「主要な核保有国間で軍拡競争が起こっており、米国あるいはロシア(あるいはその両者)は、従来自国の核兵器を制限していた多くの軍備管理条約から離脱しています。それに加えて、現在、軍事的緊張が高まっています。激しさを増す軍拡競争を抑えるためにある程度の合理性を導入する努力が求められています。」

「とはいえ、戦時における破壊の規模を減するためだけではなく、そもそもの戦争のリスクを減じるためにも、マーキー議員のような方々が一定の軍備管理を求める法案を出してくれるといいと思う」。

他方で、1970年に発効したNPTには、条約発効当初の核保有国である米国・英国・旧ソ連/ロシア・フランス・中国が、軍縮という目標を果たす法的拘束力のある義務が盛り込まれている。

第6条では、核兵器国を含むすべての締約国が、「核軍備競争の早期の停止及び核軍備の縮小に関する効果的な措置につき、誠実に交渉を行うことを約束する。」とされている。

しかし、今日、どの核保有国も安全保障政策における核兵器の役割を拡大し、核戦力を削減しようとはしていない。

ロシアによる違法なウクライナ戦争、核兵器使用の威嚇、台湾、朝鮮半島、南アジア、中東などの潜在的な核紛争地など、核戦争の危険性は1962年のキューバ危機以来、最も高いレベルに達している。

Photo credit: Republic of Korea Air Force
Photo credit: Republic of Korea Air Force

核演習や頻度を増すミサイル実験、核保有国の軍隊間の対立の増加などに見られるように、核保有国とその同盟国による核戦力運用部隊の訓練を含むウォーゲームの規模とテンポは増しており、そのことが核戦争の危機を増大させている。

ある核軍縮の専門家は匿名を条件にこう語った。「表面だけ糊塗しようとして軍縮措置のリストがいろいろと挙げられていますが実際にはなんの行動も生まず、何の戦略もなく、誰もそれを真剣には受け取りません。残念ながら、それが現実です。」

プラウシェア財団代表のエマ・ベルチャー博士は、「ウクライナでは核のリスクが高まり、ロシアと中国による新たな軍拡競争は危険度を増しています。こうした中、米国が核戦力を強化するのではなく世界的に縮減していくことがこれまで以上に重要になっています。」「マーキー上院議員は、新STARTのような軍備管理外交がこうした危機に対処する唯一の確かな道であることを思い起こさせてくれました。軍備管理競争に勝つ唯一の道は、逃げないことです。この重要な時期にあってリーダーシップを発揮してくれるマーキー議員には感謝したい。」と語った。

「核先行不使用を求める会」グローバル運営委員会のジョン・ハラム氏は、「HALT法案は二国間核軍備管理が消えてしまわないようにするための重要な動きです。つまり、この法案は、核兵器の実験、製造、さらなる配備の凍結を米国政府に求めることで、米国が自ら模範を示し、ロシアと関与する可能性を提供するものです。そして、先制不使用の呼びかけは、危機の拡大、計算違い、事故による核戦争の発生を防ぐのに役立ちます。」と語った。

UN Photo
UN Photo

アボリション2000」核リスク低減作業部会の共同呼びかけ人でもあるハラム氏は、「この立法の意図が米ロ二国間で現実化すれば、軍備管理の大義が戻ってきます。現在はその精神がまさに消えようとしているわけですから」と語った。

PNNDのグローバル・コーディネーターであるアラン・ウェア氏は、核軍拡競争を止め、核兵器の先制使用の脅しなどの挑発的な政策を止め、軍備管理・軍縮協議を再開しない限り、米国と、ロシア・中国・北朝鮮などの他の核保有国との間での紛争は核戦争へと波及していく可能性があります。HALT法案は、すべての人にとっての安全を向上させる健全かつ実行可能な提案を行っています。」と語った。(原文へ

INPS Japan

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【キーウINPS=ピエールパオロ・ミティカ

かつて米軍の核攻撃に備えてウクライナに建設された施設が、今やロシア連邦の攻撃から国民を命を守るために初めて使用されるようになっている。

 首都キーウ市内だけでも、冷戦中のソビエト連邦時代に建設された400以上の核シェルターが点在している。これらの施設には、200人から4000人が収容可能で、想定された米軍からの核攻撃から生き残るために必要な設備が備えられていた。ウクライナでは、チェルノブイリ原発事故が起きたときでさえ、こうした核シェルターが実際に使われることはなかった。当時のソビエト連邦中央政府(モスクワ)は、放射能雲からウクライナの住民を守るために核シェルターを使用できたにも関わらず、チェルノブイリ原子力発電所事故の深刻さを西側諸国や地元住民から隠蔽するために、あえて使用しない選択をしたのだ。

 冷戦時代が終わり、1991年にソビエト連邦が崩壊すると、地下シェルターは閉鎖され放棄された。近年は、地元業者がこうした核シェルターの一部を観光用に開放し、ソビエト連邦の歴史やダークツーリズムに関心を持つ人々を対象にしたアトラクションとしていた。

しかし皮肉なことに、昨年ロシアによるウクライナ軍事侵攻が始まると、冷戦時代の遺物であるこうした旧核シェルターが、地元住民にとって極めて重要な存在となった。実際、ロシア軍による首都キーウへの絶え間ない攻撃、ほぼ毎週のように発射される無人機やミサイルの中で、地元住民は市の地下鉄だけでなく、初めてこうした核シェルターに避難している。(原文へ

INPS Japan

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【セメイINPS Japan=アイダール・サディルバエフ】

昨年、中央アジアのカザフスタン共和国の首都アスタナで「第7回世界伝統宗教指導者会議」が開催されました。わが国がこのような国際的なイベントを主催することは光栄なことであると思います。カザフスタンがこのフォーラムを率先して開催したことは、決して無意味なことではありません。なぜなら、カザフの地は何世紀にもわたって西洋と東洋を結ぶ架け橋となってきたからです。かつてこの地には、いくつもの巨大な遊牧文明が繁栄しましたが、そのすべてに共通する特徴は諸宗教に対する寛容さでした。

Ethnic Diversity in Kazakhstan/ Astana Times
Ethnic Diversity in Kazakhstan/ The Astana Times

現在、カザフスタンには100を超える民族が相互理解と調和のもとで暮らし、18の宗派からなる約4000の宗教団体が、自由に活動しています。これらはすべて、わが国の平和と民族の団結の結果であると信じています。

このような広範な諸宗教対話の経験は、精神的指導者たちに、さまざまな平和への取り組みを積極的に推進する力を与えています。今日、世界各地で起こっている敵対行為や戦争を止めることは非常に重要です。

宗教指導者は、人々を平和に導き世界に慈悲と正義をもたらす存在です。今日、世界はこれまでにない創造的な活動を必要としています。私たちは皆、新しい国際安全保障システムを構築するために、平和のための新たな世界的な行動を必要としています。この問題においては、精神的な指導者の役割が非常に重要です。

デジタルテクノロジーの時代には、意見の対立が増大し、仮想世界が現実世界に取って代わり始めました。したがって、精神的価値観と道徳的資質の問題は議題に戻されるべきです。

Photo: Pope Francis delivering his inaugural keynote speech at the Seventh Congress of Leaders of World and Traditional Religions in the Kazakh capital on September 14. Credit: Katsuhiro Asagiri | INPS-IDN Multimedia Director
Photo: Pope Francis delivering his inaugural keynote speech at the Seventh Congress of Leaders of World and Traditional Religions in the Kazakh capital on September 14. Credit: Katsuhiro Asagiri | INPS-IDN Multimedia Director

宗教は、あらゆる時代において、主要な教育機能を果たしてきました。聖典は、ヒューマニズム、慈悲、慈愛の思想を促進します。また、寛容と自制を呼びかけています。現代では、宗教指導者の最高の使命は、人々に優しさと正義を呼び起こすことです。(原文へ

アイダール・サディルバエフはカザフスタン共和国アバイ州政府の社会開発局長。前セメイ副市長。

創価学会インタナショナル(SGI)がセメイを訪問した際に、サディルバエフ副市長がセメイ空港で出迎え、市長との面談や旧セミパラチンスク核実験場や平和公園等の視察をアレンジした。
第6回世界伝統宗教指導者会議

INPS Japan

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SGI代表団が旧セミパラチンスク核実験場とセメイを訪問

ミッシングリンク – 太平洋先住民の気候知識

この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています。

【Global Outlook=タフエ・M・ルサマ】

世界における気候変動の論調は、主にヨーロッパ中心の哲学、枠組み、概念によって形成されている。ほとんどの場合、適応と緩和対策は太平洋地域の外で策定され、それらが太平洋島嶼国にとって最善の解決策であるという前提のもとに太平洋地域において試行され、そして実施される。草の根レベルで確かに存在する先住民の知識が考慮されることはない。

このようなアプローチの例として、キリバスやツバルのような国々に導入されたタイプの防波堤がある。これは失敗だった。というのも、ひとえに費用がかかり過ぎ、また材料が国外から持ち込まれるからである。(

支配的な欧州中心の視点とは対照的に、太平洋神学大学(PTC)は、気候変動を太平洋の文脈で理解するために、太平洋先住民コミュニティーの哲学、枠組み、概念を取り入れる試みとして、「気候に関する先住民知識研究所(Institute for Climate Indigenous Knowledge:ICIK)」を設立した。同時に、研究所は若い世代の人々に、気候変動の解決策を求めて外(外国の哲学や神学)に目を向けるより、内(自分たちの哲学、精神性、世界観)に目を向けるよう教育することを目的としている。

太平洋先住民は、世界中の他の先住民コミュニティーと同様、自分たちの哲学や精神性を生かしながら、外国の哲学に依存することなく、何世紀にもわたって持続し存続してきた。彼らは、土着の科学的知識を生かして、多くの環境問題を乗り越えてきた。先住民の知識は、狩猟、漁労、植物栽培、航海術、建築、芸術、治療など、多岐にわたる技術を生み出す。そこには通常、ホリスティックな価値観が包含されているため、環境に影響を及ぼす可能性のある行為に関し、長期的に見た費用と便益について比較検討する機会が生まれる。

このような太平洋の関係性の中に、ICIKは自らを次のように位置付けている。

  1. 「生命全体」(訳者注=人間も自然という大きな生命体の一部であるという世界観)という太平洋的な新しい気候意識の形成に重点を置く。
  2. 太平洋コミュニティーのレジリエンスと先住民の気候知識に関する「生命全体」的研究を開発する。
  3. 太平洋コミュニティーに今も息づく気候をめぐる先住民の精神的伝統を気候政策に反映することに影響力を発揮する。
  4. 生命を肯定する信仰と先住民の知識に基づく教育的訓練、刊行物、会議を開発する。
  5. 先住民の若い環境活動家が、コミュニティーを基盤とする気候正義のアプローチを策定できるよう手助けする。
  6. 国内、地域、世界の気候関係者との有意義なパートナーシップと関係構築に関与する。

これらの目標を追求することによって、ICIKは、気候移住と適応の取り組みや対策の枠組み策定に当たって先住民の気候知識や理解に対する認識を高めることに寄与する。ICIKは、コミュニティーに存在する先住民の気候知識に関する調査研究を行う。例えば、地元先住民の専門家による研究成果を検証するために重要なセミナーやワークショップの実施、研究成果を共有・公表する会議の開催、太平洋地域各国の政策立案者に向けた提案を行う資料を発表することである。

現在の主流をなす気候変動の論調に欠けているものは、気候に関する先住民の知識と理解である。それらが議論に組み込まれるだけでなく、国、地域、世界の気候政策に意味のある影響を与えることができるようなプロセスを開始することが不可欠である。ローカルな先住民コミュニティーは国際的な気候議論に参加し、さらには彼ら先住民の気候知識に根差した解決策を策定することである。

太平洋神学大学(PTC)の「生命全体」というビジョンは、変革的プログラムを生み出すことを目的としている。それはコミュニティーを基盤とし、コミュニティーの特徴を反映し、草の根の地元地域が持つ生態系に関する知識、信仰、精神性に根差したプログラムである。このビジョンは、「生命全体」を神学、教育、開発、教会の務めの中心に置いて、生命を肯定する哲学、価値観、ベストプラクティスに基づいた、持続可能な太平洋のやり方を構築する助けとなる。何世紀にもわたって太平洋のコミュニティーにおける開発を形作ってきた破壊的な植民地主義的価値体系による約束に対し、取って代わるものを提供することを目指すビジョンである。

現在、太平洋の視点で捉え直した開発戦略では、開発において「文化と人々」が持つ意義を認識することに重点が置かれているが、コミュニティーとその知識体系を中心に据えない限り、それだけでは不十分である。「生命全体」のアプローチに伴う変革は、太平洋的な「神の家族」とその「生命全体」的構造の破壊を促した既存のイデオロギー的、哲学的な開発原理を再考し、解体することによって、教会、政府、より広範な太平洋のコミュニティーが改革的な変化をもたらす一助となることを目指している。

この変革の一環として、太平洋の人々が環境をより良く管理し、共有する太平洋の伝統を保護するのに役立つ、安価で持続可能な実用的方法やアプローチをを確立する新たな意識の確立や解放の道筋の開くことが求められる。

タフエ・M・ルサマ牧師(博士)(Rev. Dr. Tafue M Lusama)は、フィジー共和国スバの太平洋神学大学で気候変動担当者(Climate Change Officer)を務めている。また、ツバル・キリスト教会の牧師である。

INPS Japan

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