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|視点|(人間の)歴史の終わり?(セルジオ・ドゥアルテ科学と世界問題に関するパグウォッシュ会議議長、元国連軍縮問題上級代表)

【ニューヨークIDN=セルジオ・ドゥアルテ

フランシス・フクヤマの論文『歴史の終わり?』が出版されてからおよそ30年が経つ。タイトルに疑問符「?」が付いていることから、社会科学者・哲学者であるフクヤマが、国家間の矛盾や対立の終結を宣言したのではないことがよくわかる。フクヤマが主に問うていたことは、西洋の自由民主主義が人類の社会文化的進化の最終段階であり、永続する統治の最終形態であると考えることができるかどうか、ということであった。

19世紀にヘーゲルマルクスが論じた「歴史の終わり」という概念は、社会、統治システム、経済などに大きな変化がなく、人類の存在が未来に向かって無限に続いていく状態を前提としていた。

Russian President Vladimir Putin addresses participants of the Russia-Uzbekistan Interregional Cooperation Forum in Moscow, Russia/ By Kremlin.ru, CC BY 4.0
Russian President Vladimir Putin addresses participants of the Russia-Uzbekistan Interregional Cooperation Forum in Moscow, Russia/ By Kremlin.ru, CC BY 4.0

フクヤマが30年前に提示した主な問いは、ソ連崩壊後のロシアが、第二次世界大戦後の西欧の軌跡をなぞるのか、それとも「自らの独自性を自覚し、歴史の中に閉じこもる」のか、どう進化していくのかという点であった。フクヤマは論文の最後で、「歴史が存在した時代へのノスタルジア」は競争と紛争を煽り続けるだろうと指摘した。まさに、プーチン政権下のロシアがフクヤマの問いに答えを出しているかに見える。

ロシアによるウクライナ軍事侵攻後の現状を巡る多くの分析が、ロシアの行動を駆り立てたものは、帝政ロシア時代とソ連時代の50年間に存在したと言われている大ロシア再編への願望であるという点で一致している。つまり、フクヤマの言葉を借りれば、ロシアは「歴史の中に閉じこもる」ことを決意したのだ。もちろん、現在の北大西洋条約機構(NATO)とロシアの敵対状態の根源や原因はもっと複雑で、彼の論文の範囲には収まらないだろう。

フクヤマ論文が発表された時、米国とソ連との間の相互確証破壊がゆっくりと自己満足に陥りつつあったことを明確にしておこう。その頃までには、世界のほとんどの国々が、安全保障のために核兵器に依存することはあまりに危険であり逆効果だと判断していたのだ。

核兵器は暫く存在しつづけるであろうという核不拡散条約(NPT)の想定にも関わらず、世界の圧倒的多数の国々は、第6条の約束(=核軍縮義務)がいつかは実現するだろうという淡い期待を抱きつつ、NPTに埋め込まれた差別を黙認し、自らは核兵器開発を放棄した。核兵器国と、その安全を核兵器国の与える積極的安全保障に委ねている非核兵器国にとってのNPTとは、合法的な核保有者として条約が認めている5カ国が核兵器を強化し続けるためのライセンスとみなされるようになったのである。

今日まで確かに、2つの超大国(米国、ロシア)はより破壊的な兵器の開発競争を続けており、中国もかなりの距離を置いてそれに追従している。次の2つの核兵器国(英国、フランス)は、潜在的な敵方を抑止することを目的としたより小規模な核戦力を維持することで当面は満足しているようである。一方、1970年以降に登場した核保有国(インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮)は、条約に拘束されないため、先行した国々が辿った道を遠慮なく追従している。

2009年、米国のバラク・オバマ大統領とロシアのディミトリ・メドベージェフ大統領は新戦略兵器削減条約(新START)を締結して両国の核戦力を削減し、近い将来さらなる削減がもたさられるのではないかと期待をもたらした。しかし、その希望はすぐに裏切られた。耐用年数を過ぎるか、維持にあまりにコストがかかるようになった核兵器は確かに解体されたが、その後すぐに両国は、廃棄された兵器よりはるかに鋭く速い新しい破壊手段の技術改良と製造に多額の資金を投入した。また両国は、こうした削減を完全廃絶の目標に明確に結びつけることもしなかった。削減は、旧式の兵器に代わる新兵器のように、経済的、技術的な理由から行われたようであり、この削減が核兵器の脅威を廃絶するという真の意志を体現しているわけではない。

Photo: US President Joe Biden and Russian President Vladimir Putin shake hands at the Villa la Grange on June 16 in Geneva, Switzerland. Credit: Visual China Group (VCG)
Photo: US President Joe Biden and Russian President Vladimir Putin shake hands at the Villa la Grange on June 16 in Geneva, Switzerland. Credit: Visual China Group (VCG)

わずか9か月前の2021年6月、米ロの現首脳であるジョー・バイデンとウラジーミル・プーチンはウィーンで会談し、「核戦争に勝者はなく戦われてはならない」というミハイル・ゴルバチョフとロナルド・レーガンの1985年の宣言を共同で再確認し、将来的な軍備管理とリスク軽減措置に向けた下準備をするため「戦略的安定」対話を行うことを約束して、世界中の市民社会の後押しを受けたのであった。

これまでのところ、これらの提案に対するフォローアップは行われていない。新STARTは当初の期限から5年間延長されたが、米露関係の状況を考えると、短期的にも中期的にも、新たな軍備削減や二国間安定のための交渉が進展することは疑わしい。

すべての核保有国は、表現としてはさまざまであるが、必要あるいは正当化されるときには核兵器を使うと宣言している。中国はこの強力な武器を先制使用する予定はないと宣言している唯一の国であり、市民社会の中には他国も同様の方針を採るべきだとの声もある。

しかし、核兵器の先制不使用は、この破壊的な兵器を維持することを結局のところ認めるものであり、核保有国が、先制不使用を正当化するために、より殺傷力の高い戦争手段の開発を続けることが許されると感じる状況を助長することになる。無邪気さと二重基準を描いた啓蒙思想家ヴォルテールの物語に登場するカンディ―ドは、こう問いかけるだろう。「あなた自身がそれを使う知恵を疑っているなら、なぜそんなに固執するのですか?」

核兵器を保有している9カ国は形こそ違えど、「核兵器が存在し続ける限り」、人類文明を消滅させることのできるこの力を維持する権利があるとの自己満足的な考え方を共通して持っている。核兵器が戦争で使われて以来、国際社会は多国間軍縮交渉や軍縮措置を採用する努力を怠ってきた。

1946年、第1回国連総会は「原子兵器および大量破壊に応用できるその他すべての主要兵器を各国の軍備から廃絶するための特定の提案を成す」任務を与えられた委員会を立ち上げた。予想通り、米ソ超大国間の不信と敵意によってその方向での進展は見られなかった。

時が経つにつれ、その他の国々も核兵器を保有するようになり、まるで、核兵器そのものの存在ではなく、それを保有する国の数が主な問題であるかのように、軍縮から拡散防止へと徐々に重点が移された。今日までに、別の国々がこの排他的な「核クラブ」への加盟を求めないようにするための厳しいルールの確立以上のものは、既存の多国間条約では打ち出せていない。

Photo: Thousands of Ukrainians seek safety in neighbouring Poland. © WFP/Marco Frattini
Photo: Thousands of Ukrainians seek safety in neighbouring Poland. © WFP/Marco Frattini

NATOの東方拡大に対するロシアのウクライナへの軍事侵攻が引き起こした国際関係の急激な変化は、全世界を震撼させ、自己満足から恐怖や不安へと移行させた。突然、核兵器の使用が、敵対関係にある国々だけでなく、全世界にとって現実的な危険であるかのように思われた。戦場で比較的低出力の戦術核爆弾を使用することさえ、戦闘員や市民を完全に抹殺するまでに至る、より強力な爆発が避けられない連鎖を引き起こすという恐怖がもたらされたのである。

Ambassador Sergio Duarte is President of Pugwash Conferences on Science and World Affairs, and a former UN High Representative for Disarmament Affairs. He was president of the 2005 Nonproliferation Treaty Review Conference.
Ambassador Sergio Duarte is President of Pugwash Conferences on Science and World Affairs, and a former UN High Representative for Disarmament Affairs. He was president of the 2005 Nonproliferation Treaty Review Conference.

研究者らは、先の9カ国が合計1万3000発超(そのうち95%をロシア・米国)の核兵器を保有していると推定している。その一部でも使用されることがあれば、音速の数倍の速さで飛来する核攻撃によって実際の破壊を被った国々は、放射性物質を含んだ雲で覆われ、その結果として生じる「核の冬」によって農業を行うことが難しくなり、飢餓が広範に発生することになろう。わずか数百発の核爆発でも爆発すれば、環境は人間の生活には適さなくなり、文明は消滅する。

これはヘーゲル的な意味での人類の歴史の終わりを意味するのではなく、地球という惑星における人類の歴史の終わりを意味する。なぜなら、地球は太陽の周りを回り続け、不毛で放射能に満ちた冷たい岩と水の塊となり、少数の原始的だがたくましい種だけが生き残ることができるかもしれないからである。人類の文明が進化し、立派な成果をあげるには、数千年を要した。わずか数秒の爆発によってそれを消し去ってよいはずがない。(原文へ

INPS Japan

平等

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ウクライナにおけるロシア軍の1週間の死者数はアフガニスタン侵攻時のソ連軍を上回る

この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています。

この記事は、2022年3月9日に「The Strategist」に初出掲載されたものです。

【Global Outlook=アミン・サイカル】

ロシアは、ウクライナ侵攻の最初の6日間に死傷したロシア兵の数はごくわずかだと主張しているが、ウクライナは戦死者数が5,000人以上、負傷者はそれをはるかに超えると発表している。どちらの主張も立証することはできないが、たとえロシアの公式な数字に基づくとしても、1980年代の10年間にアフガニスタンで戦死したソ連兵の数に比べてはるかにハイペースである。これにより、ウラジーミル・プーチンが指揮するロシア軍の能力と有効性について、ソ連時代の前任者たちが指揮を執ったアフガン戦争時の軍隊と比較した場合、深刻な疑念が生じる。(原文へ 

アフガニスタンとウクライナには多くの違いがある。アフガニスタン侵攻時のソ連軍は、険しく危険な地形の国で戦わなければならなかった。彼らは、山、川、砂漠が困難な障壁として立ちはだかるまったく見知らぬ土地で、進路を切り開いていかなければならなかった。ソ連の戦略は主に、その脆弱な傀儡政権であるアフガニスタン人民民主党政権を維持するために、カブールと他の主要都市、入境地点などの戦略的地点、主要な通信手段を守ることに重点が置かれていた。ソ連軍は、アフガニスタン人のイスラム抵抗勢力(ムジャヒディン)と主に地方で戦った。その過程で、当初はソ連空軍が優勢となって、ムジャヒディンは守勢に立ち、特にパキスタンと国境を接する州で抵抗勢力と市民の死者数が増えていった。

しかし、1986年から米国と英国が抵抗勢力にそれぞれ「スティンガー」と「ブローパイプ」ミサイルを提供したことで、状況は一変した。肩撃ち式ミサイルのスティンガーは、ムジャヒディンが何としても必要としていた防空手段を提供した。その結果、彼らは、1986~1987年に平均で2日に1機のソ連機を撃墜することが可能になった。これによりソ連が払う戦争の代償は大幅に増大した。ソ連指導者のミハイル・ゴルバチョフは、すでにアフガニスタンを「血の止まらない傷」と評していたが、ついに1989年5月に屈辱的な軍事的撤退を余儀なくされた。結局、ソ連が発表した戦争犠牲者の総数は、戦死者が約1万5千人、負傷者が約3万5千人であった。

ウクライナの場合、ロシア軍の1週間あたりの死傷者はソ連軍のそれよりはるかに少なく抑えられるはずだった。ウクライナの地形は比較的平坦で、ドニエプル川、ドニエストル川、南ブーフ川、セヴェルスキードネツ川、カルパチア山脈といった、数少ない比較的容易な自然の障壁しかない。モスクワは、最初の1週間の戦闘による戦死者を約500人、負傷者を約1,600人と公式に発表した。これらの数字は、アフガニスタンにおける同様の時期に平均で約28人だったソ連軍の戦死者を上回る。ロシア軍の戦死者がこのペースで増え続け、戦争が今後何週間も何カ月も長引けば、ウクライナにおけるロシアの軍事実績は、アフガニスタンにおけるソ連軍の軍事行動を大幅に下回ることになる。

ウクライナの抵抗が力を維持し、NATO加盟国が引き続き情報と武器、中でも重要なスティンガー・ミサイルの供給を保証するなら、それが現実になるかもしれない。たとえロシア軍がキーウや他の主要都市を制圧しても、ウクライナ人は、特にドニエプル川西岸地域から、ムジャヒディンの抵抗と同様、実効性のある抵抗運動に従事することが十分にできるだろう。アフガニスタンでは、米国とその同盟国が、パキスタンを経由していくつかのムジャヒディンのグループに武器や資金を供給していた。パキスタンは、2,640キロメートルにわたってアフガニスタンと国境を接しており、ソ連はそれをコントロールできなかったのである。米国も、2001年10月から2021年8月まで20年間のアフガニスタン介入で同じ轍を踏んだ。

ウクライナも、西側の長い国境をNATO加盟国と接していることから、同様の優位性を持つ。ウクライナ人は、いかなる犠牲を払ってもロシアの侵略に対抗しようという強い決意を示している。問題は、米国とNATO同盟国が、戦闘以外の面でウクライナの抵抗を支援し続けることについて、同程度の決意を示すことができるかどうかである。ロシアへの厳しい経済制裁と併せることで、ウクライナはプーチンにとって、アフガニスタンがソ連の指導者たちにとってそうだったように、血の止まらない傷になるかもしれない。

別の可能性としては、プーチンがウクライナを征服し、そこを足掛かりにソ連時代のサラミ・スライス戦術を駆使して、ソ連の東欧衛星国だった残りの国々の不安定化を狙うことも考えられる。プーチンは、主に二つの事柄に駆り立てられている。ロシアにおける自身の圧倒的な独裁的地位とその維持、そして、ロシアの西側国境の安全保障に関する深い懸念である。これらはまさに、彼以前にも帝政ロシア時代とソ連時代の指導者たちの気を揉ませた要因である。

最後に、もしロシアが勝った場合、あるいはいかなる形であれ戦争が長引いた場合、最も多くを失うのは民間の人々である。アフガニスタンの場合、100万人以上が死亡し、300万人以上が国内避難民となり、500万人以上がパキスタンやイランで国外難民となった。これは甚大な悲劇であり、ウクライナの人々が今直面していることなのである。

アミン・サイカルは、西オーストラリア大学で社会学の非常勤教授を務めている。共著に“Islam Beyond Borders: The Umma in World Politics” (2019)、共編に“Afghanistan and Its Neighbours After the NATO Withdrawal” (2016) がある。

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ウクライナをめぐる核戦争を回避するために

世界政治フォーラムを取材

アフリカの女性作家がフェローシップの主要な賞を受賞

【ニューヨークIDN=リサ・ヴィヴェス】

自然科学、社会科学、人類、および舞台芸術を除く創造芸術の分野で並外れた能力を発揮した180人に対するフェローシップが、ジョン・サイモン・グッゲンハイム記念財団によって4月7日に発表された。

約2500人の応募者の中から、これまでの実績と将来性に基づいて、専門家による厳正な相互審査により選ばれた。

今年は、アフリカ系黒人女性として唯一、作家のマーザ・メンギステ(1974年生まれ)が受賞した。彼女の小説には、『ライオンの視線の下–エチオピア革命の激動と血なまぐさい年を乗り切るのに苦労している家族の物語–』(2010年)、『影の王』(2019年)があり、イギリスの権威ある2020年ブッカー賞の最終選考に残っている。

『ライオンの視線の下』は、エチオピア革命の激動と流血の時代を生き抜こうと奮闘する家族の物語である。アルジャジーラの『The Stream 』で、司会者のフェミ・オケに、10年かけて本を完成させた苦労について語っている。この物語は、紛争における犠牲者としての女性という伝統的な型に挑戦している。物語の多くは、メンギステの個人的な経験から着想を得ている。

彼女の2作目の作品『シャドウ・キング』(2019年)は、ベニト・ムッソリーニによる1935年のエチオピア侵攻を舞台に、アフリカ史ではほとんど語られてこなかった女性兵士に光を当てている。

メンギステはエチオピアのアディスアベバで生まれたが、4歳のときにエチオピア革命から逃れるため家族と共に国を離れた。その後、ナイジェリア、ケニア、米国で幼少期を過ごした。その後、フルブライト奨学生としてイタリアに留学し、ニューヨーク大学でクリエイティブ・ライティングの修士号を取得した。

メンギステは、人権活動にも携わってきた。世界各地の紛争を取り上げる独立系オンラインマガジン「Warscapes」と子供たちの慈善団体「Young Center for Immigrant Children’s Rights」の諮問委員会に所属している。また、Words Without Bordersの理事も務めている。

メンギステはリチャード・ロビンズ監督が2013年に制作した世界中の女子教育に関するドキュメンタリー映画『Girl Rising ~私が決める、私の未来~』に、エドウィージ・ダンティカやモナ・エルタハウィと共に参画している。この作品には、メリル・ストリープ、アン・ハサウェイ、アリシア・キーズ、ケイト・ブランシェットなど、ハリウッドを代表する豪華俳優陣がナレーターとして参加している。

メンギステは現在、ウェスリアン大学で英語を教えている。 以前は、ニューヨーク市立大学クイーンズカレッジでクリエイティブ・ライティングの客員教授、プリンストン大学のルイス芸術センターでクリエイティブ・ライティングの准教授を務めていた。

ジョン・サイモン・グッゲンハイム記念財団は1925年の設立以来、4億ドル近いフェローシップを18000人以上に授与しており、受賞者には、後にノーベル賞、ピューリッツァー賞などの著名な賞を受賞した者が数多くいる。今年の受賞者の中には、アフリカ系男性作家が4名、アフリカ系女性作家が11名含まれている。(原文へ

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国連安保理で批判に晒されるロシア軍

【ニューヨークIDN=J.ナストラニス】

国連安全保障理事会は、「特別軍事作戦」の一環としてロシア軍による残忍な殺害の証拠が次々と出てきていることを明らかにした。安保理は国際の平和と安全の維持に第一義的な責任を負っている。

人権団体「ラ・ストラダーウクライナ」のカテリーナ・チェレパカ会長は、地元の人権団体は現在、市民の命を救い、ロシア連邦が犯した戦争犯罪に関する生存者の証言を収集するための取り組みを強化していると語った。

チェレパハ会長は、4月8日のウクライナ東部ドネツク州のクラマトルスク駅やマリウポリでの産院、幼稚園、避難所への攻撃例を挙げながら、明らかに民間人であることが識別でき、しかも避難しようとしている丸腰の女性や子供たちがロシア軍によって残酷に殺害されていると指摘した。

Russian bombing of Mariupo/ Автор: Mvs.gov.ua, CC BY 4.0,
Russian bombing of Mariupo/ Автор: Mvs.gov.ua, CC BY 4.0,

チェレパハ会長はまた、女性や女児が誘拐、拷問、殺害の脅威にさらされやすくなっていることを強調する一方で、それでもウクライナの女性をロシア軍の侵略の単なる犠牲者と見なさないよう警告した。「実際に女性達は、ボランティア、活動家、ジャーナリスト、人権擁護者として、ウクライナの抵抗運動にとって不可欠な存在です。」と彼女は語った。

4月11日の安全保障理事会で、UNウィメンのシマ・バホス事務局長は、ウクライナでロシアの侵略が続き大規模な避難民が発生している中で、女性や子どもに対して行われたとされる強姦などの性的暴力や人身売買の報告が増えていると警鐘を鳴らした。

「ロシア軍に徴兵された兵士や傭兵が存在し、市民が残忍に殺害される中、膨大な数のウクライナ人が家屋を後にし続けており、その中で性的暴行やその他の犯罪に関する報告が浮上しています。」

また先日のモルドバ共和国訪問を振り返り、「不安で疲れ切った女性や子どもたちが乗ったバスが、思いやりのある市民団体職員らによってウクライナの国境で出迎えられるのを目撃しました。」と語った。

ジェンダー平等と⼥性のエンパワーメントに向けた活動を⽀援、統合する役割を担うUN Womenは、「ウクライナ危機において、ジェンダーに配慮した対応がなされるよう」市民社会活動家らを支援している。

UNSC/ UN photo
UNSC/ UN photo

バホス事務局長は、4月8日にクラマトルスクの駅がミサイル攻撃され、ウクライナからの避難を待っていた女性や子どもたち50人以上が死亡したことを最も強い言葉で非難するとともに、「このトラウマは世代を破壊する危険がある。」と警告した。

国連児童基金(ユニセフ)緊急支援局のマニュエル・フォンテーヌ局長は、4月8日の攻撃当時、駅から1キロメートルほど離れた場所でユニセフ職員が救急キットなどの支援物資を届ける準備をしていたと語った。

一方、ウクライナの子どもたちや家族、コミュニティは依然として攻撃を受けており、多くの人が十分な食料を得られず、水設備への攻撃により、約140万人が安全な水道を利用できない状態にある。

国連は4月10日現在、142人の子どもの死亡と229人の子どもの負傷を確認しているが、「この数字はもっと多い可能性があることは分かっている」という。また、何百もの学校や教育施設が攻撃されたり、軍事目的に利用されたりしている。

Photo: The Ukraine Refugees Response Moldova - IsraAID
Photo: The Ukraine Refugees Response Moldova – IsraAID

フォンテーヌ局長は、「紛争が始まって以来、ウクライナの子どもたち全体の3分の2近くが自宅などを追われている」ことを明らかにした上で、「ユニセフとパートナーは、ウクライナ国内外において、搾取や虐待のリスクが高まる中、女性と女児の健康、権利、尊厳を慎重に監視するなど、あらゆる手段を講じている。」と語った。

しかし、戦闘が続いているため、こうした人道支援の手は、多くの場所で支援を最も必要とする人にたどり着けないでいる。(原文へ

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フランシスコ教皇、カザフスタン訪問を決定

【ヌルスルタンIDN=KAZINFORM】

カシム・ジョマルト・トカエフ大統領はフランシスコ教皇とオンラインで会談し、カザフスタンローマ教皇庁の協力関係強化の見通しや、宗教間の調和・対話推進に関する問題などについて話し合った。なかでも特に強調されたのが、来る9月にカザフスタンの首都ヌルスルタンで開催される「第7回世界伝統宗教指導者会議」(2003年の第1回会議以来3年に1度カザフスタンで開催。前回は2018年に開催されたが今回はコロナ禍で延期されていた)の議題についてであった。

Congress of the Leaders of World and Traditional Religions/ Photo by Katsuhiro Asagiri
6th Congress of the Leaders of World and Traditional Religions haled in Asatana(Nursultan) in 2018/ Photo by Katsuhiro Asagiri

同会議は2001年9月11日に発生した同時多発テロを契機にバチカン法王庁とカザフスタンが、キリスト教、イスラム教、仏教、ヒンズー教、ユダヤ教等世界の主要な宗教指導者らと共に立ち上げた宗教間対話のイニシアチブで、長年運営に関与してきたトカエフ大統領はフランシスコ教皇に対して、このイベントが多民族・多宗教国家として国民の間の調和と結束を実現してきたカザフスタンにとっていかに重要であるかを指摘した。大統領はまた、現在政府が取り組んでいる大規模な政治・経済改革についても説明した。

フランシスコ教皇は、トカエフ大統領との会談の機会に感謝の意を表し、カザフスタンへの公式訪問と、第7回世界伝統宗教指導者会議への参加を確認した。教皇は、来る公式訪問と会議への参加について、「宗教間対話の促進と、今日の世界が切実に必要としている、国々を結ぶ結束という観点から、この極めて重要なイベントに参加できることを楽しみにしています。」と語った。

フランシスコ教皇は、現在の困難な地政学的状況において、世界に調和を結束を実現することの格別な重要性を強調した。「私たちはカザフスタン社会がいかに多様性を尊重しつつ同時に結束しているかを理解しています。このことは社会の安定の基礎をなすものです。カザフスタンでは皆さんがこのことを理解してくれていることを嬉しく思っています。私はそのような皆さんを支持しますし、皆さんの努力に感謝しています。」とフランシスコ教皇は語った。

Kazinform
Kazinform

一方、トカエフ大統領は、精神的な調和と相互尊重の領域において、カザフスタンがローマ教皇庁との協力をさらに発展させるという強いコミットメントを確認した。(原文へ

INPS Japan

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プーチンのウクライナでの行動は卑劣だが、ロシアはNATOにひどく挑発された

この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています。

【Global Outlook=ラメッシュ・タクール】

アルタ・モエイニは、バラク・オバマ大統領が「ワシントンプレイブック」と呼んだ外交政策の台本(その多くは軍事力の行使につながっている)に触れながら、西側の支配的エリートが主流メディアと結託して、善悪二元論の枠で誰もが感じる同情という自然な反応を特定の報復を求める道徳的な怒りへと仕向けている、と記している。その結果、アメリカの戦争マシーンが有効化され、高貴にさえなっている。しかし、これが機能するには、まずもってこの危機を引き起こした自らの責任というものを強力に否定してかからねばならない。(原文へ 

2022年3月12日、英「デイリー・テレグラフ」紙の評論家ジャネット・デイリーは「あらゆるレベルにおいて、北大西洋条約機構(NATO)にもこの戦争の責任があるという嘘はばかばかしいものだ」と記した。また3月3日には、「オーストラリアン」紙の評論家ヘンリー・アーガスは「NATOがプーチンのウクライナ侵攻の引き金を引いたのではない」と同様に主張した。このような拒絶反応は、思いがけず大統領に導かれたウクライナの英雄的な抵抗によって強く揺さぶられた西側の良心を癒すものかもしれないが、まったくの誤りである。

第1に、大国は歴史の弧の中で栄枯盛衰を繰り返すという単純な観察から始めてみよう。スペイン、ポルトガル、イタリア、オランダは、かつて海外に植民地を持つ欧州の列強だったが、もはや大国の仲間入りをしていない。太平洋地域の日本も同様である。第2に、大国のアイデンティティーの変化と相対的なバランスを反映し、国境が絶えず再調整されるのは必然である。第3に、このプロセスの一環として、戦勝国が敗戦国に対して不当な条件を課すことがある。それは、戦力格差が最大化した瞬間、敗戦国が勝利に酔いしれる勝者の独断に対抗できる立場にない時に結ばれる不平等条約である。

第一次世界大戦後にドイツに課されたベルサイユ条約の取り決めが自滅的なまでに過酷で懲罰的であったことは、今では広く受け入れられている。一方、ドイツ人の間では、この取り決めを中心に構築された欧州の秩序に対する不満が高まり、この秩序を転覆することを決意したヒトラーの台頭を促すこととなった。こうした議論を展開している歴史家は、ヒトラーの弁明者として非難されているわけではない。ベルサイユ体制に批判的であると同時に、ナチス・ドイツの行いに対して嫌悪感を抱くことは可能だ。一方、連合国の国民もベルサイユ体制を根本的に不当と考えるようになり、ベルサイユ体制を守る決意が弱くなった。敗戦などで弱体化した大国が自信を取り戻し、国を再建する際には、不平等条約の再交渉を試み、それが失敗すれば脱退を試み、それに抵抗すれば再び戦争が起こるかもしれない。

これに関連して、米国のウィリアム・バーンズ駐露大使が2008年2月1日に本国に送った電信は大いに示唆するところが多い。その最後の一文にはこうある。「1990年代半ばのNATO拡大の第1ラウンドに対するロシアの反発は強かったが、今やロシアは、自国の国益に反するとみなす行動に対してより強力に反発する自信を身につけている。」この電信についてはまた後で触れるが、まずはここで、NATOの継続的な東方拡大に対するこれまでのロシアの強い反発の歴史を概観しておこう。

パーヴェル・パラシチェンコはソ連高官の会議通訳で、1985年から91年までミハイル・ゴルバチョフやエドアルド・シェワルナゼ外相の英語の主任通訳官を務めていた。著書『ソ連邦の崩壊―旧ソ連政府主任通訳官の回顧録』(1997年)の第19章で、NATO拡大をめぐる論争に触れている。ゴルバチョフは、「NATOは東側に1インチも拡大しない」としたジェームズ・ベーカー米国務長官のよく知られた1990年の発言は、「もっぱらドイツ統合に関連したものである」と明言していた、とパラシチェンコは説明している。しかしゴルバチョフは、自身が大統領職を退いてからのNATO拡大は「間違いなく……ドイツ統一時の合意の精神に違反するものであった」と述べている。しかしそれは米国人だけが関わっているわけではない。米国国家安全保障アーカイブが2017年に公開した文書のタイトルは「ベイカー、ブッシュ、ゲンシャー、コール、ゲーツ、ミッテラン、サッチャー、ハード、メイジャー、ウォーナーからソ連指導者への、NATO拡大に対する安全の保証を示す機密指定解除文書」となっている。

さて、2008年のバーンズ大使(現CIA長官)の公電に話を戻そう。外交史上最も有名な外交公電の一つは、ジョージ・ケナンによる1946年2月22日の「長い電報」で、戦後のソ連の変化を分析し、封じ込め戦略の要諦を示したものだ。ウィキリークスが機密指定の米外交電信を大量に公開した際に多くの一般読者を驚かせた二つの点は、一部の電信にみられる政治分析の精巧さと、その文才であった。その第1の要素は、確かにバーンズ大使の電信にも当てはまる。この公電は、四つの重要なポイントを非常に明確に、しかも切迫感を持って伝えていた。

第1に、NATOの拡大、特にウクライナを含む拡大は、ロシア人にとって「感情的で神経質な」問題であった。第2に、モスクワの反対は、「この問題が国を二分し、暴力やいくつかの要求、中には内戦に発展し、ロシアが介入するかどうか決断を迫られる可能性がある」という戦略的な考慮にも基づくものであった。第3に、セルゲイ・ラブロフ外相をはじめとする高官は、「強い反対を繰り返し、ロシアはさらなる東方拡大を潜在的な軍事的脅威とみなすと強調」していたことである。この点について、ロシア側は、西側がNATOの穏健で防衛的な性格を強調するだけでは、最近のNATOの軍事活動による安全保障上の懸念を相殺するには不十分であり、「表明された意図ではなくその可能性を評価せざるを得ない」と明言していた。モスクワは「戦略的封じこめ」と「この地域におけるロシアの影響力を損なう努力」を見て取り、「ロシアの安全保障上の利益に深刻な影響を与える予測不可能で制御不能な結果」についても恐れを抱いていた。そして第四に、バーンズは、ウクライナがNATO加盟を目指すのは国内の権力闘争の一環であり、これが米ロ関係を複雑にすることにワシントンは慎重であるべきという一部の独立した専門家の意見を指摘していた。しかし、その2カ月後の4月3日、NATO首脳会談で発表されたブカレスト宣言は、ウクライナとジョージアが将来NATO加盟国になるという決定を確認した。

プーチンが2007年2月のミュンヘン安全保障会議で行った演説の衝撃を、当時の報道は伝えている。この演説でプーチンは、NATOが東方拡大することはないと約束したことを忘れたのか、と迫った。プーチンが今回、2月24日に国民向け演説でウクライナでの軍事行動を発表した際、「軍事インフラをロシア国境にますます近づけているNATOの東方拡大」がもたらす脅威を強調するところから演説を始めた。つまり、問題なのは、ロシアからの警告がなかったことではなく、ロシアが本気で反対していないか、さもなければ、どうしようもないから無視しても大丈夫だという、誤った考え方に米国が憑りつかれていたことだったのである。バーンズは、2019年3月の「アトランティック」誌によるインタビューで、2005年に「あなた方米国人はもっと聞く耳を持つべきだ」とプーチンから言い返されたと語っている。このことは、歴史家の間の学術的な議論にとどまらず、大国のライバルの戦略的世界観を故意に無視することから生じる政策の危険性を浮き彫りにしている。軌道修正に失敗すれば、西側諸国が他の主要な大国の正当な安全保障上の利益を無視し続けることになる。このことはとりわけ、中国との武力紛争という、もう一つの、より危険な道を開くことにもなりかねない。

ラメッシュ・タクールは、国連事務次長補を努め、現在は、オーストラリア国立大学クロフォード公共政策大学院名誉教授、同大学の核不拡散・軍縮センター長を務める。近著に「The Nuclear Ban Treaty :A Transformational Reframing of the Global Nuclear Order」 (ルートレッジ社、2022年)がある。

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ウクライナから逃げてきた黒人に対する人種的偏見

【ニューヨークIDN=リサ・ヴィヴェス

米国が戦争から逃れた何万人ものウクライナ人を迎える準備をしている一方で、アフリカやカリブ海諸国からの難民の多くは、レイプや拷問、任意逮捕などの虐待を受ける不安定で暴力的な祖国へ送還されている。これは人種的偏見だろうか。あるアフリカ系難民はそう考えている。

カメルーン・アメリカ評議会の主要メンバーであるウィルフレッド・テバさんは、米国への 亡命を試みた自らの体験を振り返って、「当局は黒人のことなど気にも留めていない」と語った。

Map of Cemeroon
Map of Cameroon

「米国には多くのカメルーン人がいて、まだ拘留中だったり、国境で立ち往生している人もいます。もし私が強制送還されたら、刑務所に入れられ、拷問され、殺されるかもしれない。人間として、私の命も重要(my life matters too)なのです。」とテバさんは語った。

テバさんは現在、オハイオ州コロンバスに住んでいる。彼は英語を話すカメルーン北西州南西州の人々がフランス語圏の中央政府から迫害の対象となっている西アフリカのカメルーンから逃れてきた。

英語圏の人々による分離独立闘争となったカメルーン内戦*では、多くの人々が殺され、100万人以上が避難民となっている。

人権擁護団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は2月の報告書で、カメルーン人が米国への入国を許可されない場合に直面する危険について列挙している。そのリストには、恣意的な逮捕や拘留、拷問、レイプ、恐喝、国民IDの没収、親族に対する虐待などが含まれている。

Human Wrights Watch
Human Wrights Watch

HRWは、「カメルーンで害をなす強制送還」と題する149ページの報告書(関連映像)の中で、「多くの亡命希望者が、米国で拘束されている間に医療放棄やその他の虐待を受けたと報告している」と記している。

HRWの難民研究者であるローレン・サイベルト氏は、米国政府が信憑性のある亡命申請をしているカメルーン人を送還したこと、また送還前や送還中に既にトラウマを抱えている人々を虐待したことを非難している。

1カ月前、ジョー・バイデン大統領は、米国は10万人のウクライナ難民を歓迎し、すでに米国にいる別の3万人にウクライナ国籍を持つ滞在者についても一時保護資格(TPS)の対象に追加すると発表した。

しかし、戦争から逃れたウクライナ人には米当局から連帯感が示される一方で、有色人種の亡命希望者はメキシコや収容施設、あるいは自国に戻って待機を余儀なくされている。

国土安全保障省のアレハンドロ・マヨルカス長官は、カメルーン人や他のアフリカ国籍の亡命希望者に対するTPSを再検討していると語った。TPSは6カ月から18カ月間合法的に滞在を続け、労働許可を与えるものだ。

移民差別に反対するカトリック」の立ち上げを支援したリサ・パリオ氏は、TPSプログラムは危険から逃れる何百万人もの難民を保護するのに大いに役立つが、歴史的に十分に活用されておらず、過度に政治的な影響を受けていると語った。

有色人種に対する偏見は、ツイッターに投稿された欧米のニュース報道にも見られる。CBSニュースの外国特派員のチャーリー・ダガタ氏は、ウクライナからのリポートで、「失礼ながら、ここウクライナはイラクやアフガニスタンのように何十年も紛争が続いている場所とは違います。比較的文明化し、ヨーロッパ的な都市で、今回のようなことが起こるとは予想もできないような場所です」と語った。また、ウクライナの元次長検事であるデヴィッド・サクヴァレリゼ氏はBBCのインタビューで、ロシアの攻撃によって「青い目とブロンドヘアーのヨーロッパ人が殺されているのを見ると、非常に感情的になる」と発言した。

Photo: Thousands of Ukrainians seek safety in neighbouring Poland. © WFP/Marco Frattini
Photo: Thousands of Ukrainians seek safety in neighbouring Poland. © WFP/Marco Frattini

一方、ロシアがウクライナに侵攻したとき、東部の都市ドニプロで医学を学んでいたジンバブエ出身のコリーヌ・スカイさん(26歳)は、4日かけてルーマニアに退避して以来、ウクライナから依然として出国できずに困窮しているアフリカ出身者を支援するために、Black Women for Black Livesgofundmeを通じて、募金活動を続けている。(原文へ

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*カメルーン内戦:元イギリス委任統治領だった、英語話者が多い北西州と南西州の2州で南カメルーン連邦共和国(アンバゾニア共和国)の名のもと中央政府からの分離独立を求めている。南カメルーンの分離独立運動の背景には、1982年のビヤ大統領就任以来、フランス語話者が中央政府の要職を占め、フランス語圏がインフラ整備で優遇され経済格差が開いていることへの不満がある。国際社会の関心が薄いことにノルウェーの人権団体が警鐘を鳴らしている。

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|視点|緊急に必要な気候アクション(ジョン・スケールズ・アベリー理論物理学者・平和活動家)

【コペンハーゲンIDN=ジョン・スケールズ・アベリー】

グラスゴー気候変動会議(2021年10月~11月)が緊急に求められている気候アクションを生み出せず悲惨な結果に終わった一つの理由は、人間が自らの目前にあることにしか反応できないということにある。支払うべき家賃は緊急の問題だが、気候の破滅は遠い脅威のように映っているようだ。

第二の理由は、文化的な慣性だ。私たちは自分のライフスタイルを急速に変化させることに困難を感ずる。教育・政治のシステムもゆっくりとしか変わらない。自動車工場を建設するには長い時間がかかり、工場ではガソリン車を延々と作り続けている。多くの人々が化石燃料を使う産業によって生計を成り立たせている。

最後に、気候の破滅の回避は国際的な問題であるということがある。歴史的に見れば、工業化を済ませた国々が温暖効果ガスの排出の大部分に責任があり、インドのような発展の度合いの低い国々の人々は、生活の水準を上げ貧困と闘うために豊かな石炭を使う権利が自分たちにはあると考えている。

南極・北極からの警告

気候変動の破滅的な最悪の影響が現れるのはずっと先のことではあるが、気候の破滅が思っていたよりも近いことを物語る警告は顕在化している。北極や南極は、世界のその他の地域よりも2倍以上の速さで温暖化しているという事実がそれである。

南極では、時に「終末の氷河」とも呼ばれる広大なスウェイツ氷河に最近多くのひび割れが現れ、科学者らはそれが車のフロントガラスのように粉々に割れてしまうのではないかと恐れている。もしそうしたことが起きると、「海洋性氷床の不安定」と呼ばれるメカニズムを通じて、近くの氷河の崩壊を引き起こしかねない。これによって海水面は数メートル上昇し、世界中のすべての沿岸都市に脅威を与えることになる。

北極からの別の警告もある。たとえば、北極圏から70キロ北に位置するシベリアの街ベルクホヤンスクでは2020年6月に気温が摂氏38度に達した。この計測は世界気象機関(WMO)が確認している。こういう温度はふつう、スペインかイタリアで見られるものだ。

グリーンランドの表層の氷を観測している研究者によれば、夏の湖から水があふれ出てクレバスに流れ込み、氷の層の下部に達しているという。こうした水の動きは潤滑剤的な働きをして、氷の層全体の海洋への移動を促進してしまうことになる。

北極海ではまもなく、年に1、2カ月は完全に氷のない時期が訪れることになろう。これによって、アルベド効果の絡んだサイクルが生まれることになる。つまり、氷が日光を反射し、一方では太陽からの熱を海洋が吸収して、北極海のさらなる温暖化につながるというメカニズムである。

気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)も重大な警告を発している。最近のIPCCの報告書は、緊急の行動が伴わなければ、気候変動は我々の対応能力を早晩超えてしまうと警告した。

キーリング曲線

キーリング曲線」は、ハワイ・マウントロア観測所で大気中のCO2濃度を測定している。2013年には400ppmを超え、それ以降は濃度が上昇しているだけではなく、上昇率も高くなってきている。科学者によれば、現在のCO2濃度レベルは少なくともこれまでの200万年で最高だという。

壊滅的な気候変動を避ける取り組みに失敗したらどうなるのだろうか? 長期的には地球上の表面のほとんどは居住不可能になるだろう。植物や動物の多くの種が移動できなくなって死に絶える。人類は生き残るかも知れないが、熱波や飢餓、戦争による死亡によって人口は大幅に減ることだろう。

緊急かつ大胆な行動が必要

これらの理由のために、まだ時間のあるうちに大胆な気候アクションに取り組む必要がある。

「私たちには希望があります。もちろんそうですが、希望以上に必要なのは行動することです。行動し始めれば、希望はあちこちに現れるのです」というグレタ・トゥーンベリの言葉を思い出そうではないか。

将来世代のために、そして美しい地球のために、今こそ行動しよう。

どんな行動が必要か

1.化石燃料の採掘を止めねばならない。現在、中国とインドが石炭を大量消費している。ロシアやサウジアラビアのような国々は石油や天然ガスを採掘・輸出している。カナダのタールサンド事業は大量の温暖効果ガス排出につながっている。米国ではバイデン政権が気候アクションを取ると公約しているにもかかわらず、海洋や北極にある石油採掘権を売却している。

John Scales Avery
John Scales Avery

2.化石燃料関連企業への補助金を止めるべきだ。最近の報告書では、これらの企業は2020年に計5兆9000億ドルの補助金を受け取ったという。

3.再生可能エネルギー事業を促進・支援すべきだ。グリーンニューディールはルーズベルト大統領のニューディール政策と同じく政府の行動を目に見えやすくし、緊急に必要とされる再生可能エネルギー構造を生み出す。再生可能エネルギーは現在、化石燃料由来のエネルギーよりも安価であるが、政府の支援が依然として求められている。(原文

※ジョン・スケールズ・アベリー(1933年、レバノンで米国の両親から生まれる)は、量子化学、熱力学、進化、科学史における研究で有名な理論化学者。1990年初め以来、積極的に平和活動も行う。「科学と世界問題に関するパグウォッシュ会議」のメンバーでもあった。

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【ニューヨークIDN=フランツ・ボウマン】

戦争は地理について様々なことを教えてくれる。今年2月中旬時点では、マリウポリハルキウ、ブチャ、ケルソン、チェルニヒフ、イルピンといった地名について、私の携帯電話のオートコレクト機能は認識せず、西ヨーロッパや米国在住者で、これらの場所の位置を地図上で特定できた人はほとんどいなかった。しかし今では、ウラジーミル・プーチン大統領が発動した「特殊軍事作戦」の衝撃的な映像のせいで誰もが知るところとなった。

プーチンの命令がもたらしたもの

Image source: Sky News
Image source: Sky News

戦争は、国の強さやレジリエンス(強靭性)についても教えてくれるし、弱点も明らかにしてくれる。ドイツのヘルムート・シュミット元首相がかつてロシアを「ロケットのあるガソリンスタンド」と呼んだように、核兵器保有国であることを除けば、世界にとってこの国の重要性は、資源輸出と政治をとおして地球温暖化の緩和を阻害していることだろう。ロシアの輸出品は主に原材料で、石油、ガス、石炭は世界の供給量の約20%を占め、連邦予算の5割を占めている。特に欧州連合(EU)の一部の国における、ロシア産天然資源への依存度は高い。

プーチン政権下の20年間、化石燃料の輸出で稼いだ数兆ドルは、軍需産業を支え、利潤を追求するオリガルヒ(新興財閥)層を作り上げた。彼らの莫大な富は、西側各地の高級不動産に投資され、2022年3月までは、そこで彼らの子どもたちが勉強し、彼らのジェット機が駐機し、彼らのヨットが停泊していたのである。

過去20年間に発展した、この持ちつ持たれつのビジネスモデルは、今や破綻している。欧州諸国はロシアの化石燃料を購入し、ロシア政府の暗黙の了解の下でオリガルヒが横領した販売収入のかなりの部分をリサイクル、いや、洗浄していたのだ。30年前、ロシアのGDPは中国並みだったが、今では中国の10分の1、或いは人口が6700万人とロシアの1億4400万人の半分以下で天然資源もないフランスの約半分程度になった。

圧倒的な優勢が喧伝されていたロシア軍の苦戦は予想外の展開だった。2週間でキエフを占領するというプーチンの壮語は見事に崩れ去った。そうした軍事目標を成し遂げるには、より優れた軍隊とより脆弱な敵が必要だったのだ。今回の経験から改めて得られた教訓は、独裁者を宥めても紛争は回避できず、かえって紛争を誘発しより凶暴なものにするということだ。

プーチンがもたらした破壊

ロシアのウクライナに対する戦争は、その無計画な破壊と徹底的な残酷さにおいて恐ろしいものである。病院、劇場、アパート、ショッピングセンター、学校、教会、博物館、郵便局、スポーツ施設、老人ホーム、橋、さらには原子力発電所やホロコースト記念館までもが爆撃されている。ロシアは、表向きの大義名分として、特別軍事作戦は、ナチス勢力に支配されたウクライナを開放し、ドンバス地域で横行している大量虐殺を防ぎ、退廃した西側により脅かされているロシアの安全保障上の利益を前進させるためとしている。

国際司法裁判所はウクライナの主張を受け入れ、ロシアの侵略を正当化する証拠がないと指摘し、ロシアに軍事作戦を即時停止するよう命じた。平和維持に責任を負っている国連安保理の常任理事国が、国連憲章の原則に反して、侵略戦争を仕掛け、国境を侵し、組織的に民間人を狙い(国際人道法上の戦争犯罪)、核兵器の使用を威嚇したことは、理解しがたいことである。

プーチンの人命軽視は、ウクライナ人に限ったことではない。プーチンの焦土作戦により、この1カ月で1万人を超えるロシア軍兵士が死亡した。20年間のアフガニスタン紛争での米軍兵士の死者数が2218人であるのに比べれば、その差は歴然としている。ロシア軍兵士の中には、2002年に期限切れとなった食糧を携行する者もいれば、無線で食糧や水、燃料を要求する者もいた。プーチンの犯罪性は、ロシアという国家を人質に取り、国と国民を国際的な悪者に仕立て上げたことだ。これを元に戻すには何世代もかかるだろう。

プーチンが引き起こした混乱

Photo Credit: climate.nasa.gov
Photo Credit: climate.nasa.gov

混乱はプラスにもマイナスにも作用する。プラス面では、プーチンはウクライナ、北大西洋条約機構(NATO)、EUを団結させ、新型コロナのパンデミックに直面してもなし得なかったこと、すなわち世界経済の脱炭素化を加速させ、パリ協定の目標を復活させたことである。新型コロナのパンデミックからグリーンリカバリーを実現する機会が無駄にされたのだから、早すぎるということはない。2020年と21年に、G20は約14兆ドルの景気刺激策を支出したが、そのうち温室効果ガスの排出を削減する分野に割り当てられたのはわずか6%で、3%は排出を増加させる活動に充てられた。

しかし、これはプーチンが関与する前の話だ。今、世界では、第一に化石燃料からの脱却、第二に効率化に真剣に取り組もうとしている。つまり、化石燃料への補助金を減らし、グリーンエネルギーや省エネルギー技術に投資が行われている。電気自動車や公共交通機関にはインセンティブを与え、建物には断熱材やヒートポンプを導入する動きが加速している。

Wheat (Triticum aestivum) near Auvers-sur-Oise, France, June 2007/ Wikimedia Commons
Wheat (Triticum aestivum) near Auvers-sur-Oise, France, June 2007/ Wikimedia Commons

気候変動に左右されない世界経済への移行に重要なことは、公共政策の問題である。しかし、そのためには、銅、ニッケル、プラチナ、パラジウム、アルミニウム、リチウムなど、グリーンテクノロジー(ソーラーパネル、風力タービン、電気自動車)の製造に使われるいわゆるエネルギー遷移金属(その多くはロシアとウクライナが保有)の入手も必要である。再生可能エネルギーシステム用の原料を確保するには、研究、公共政策のインセンティブ、コストの問題がある。

しかし、ロシアのウクライナに対する侵略がもたらしたもう一方の「破壊要因」は、特に開発途上国における食糧不安である。食糧とエネルギーの価格高騰は、依然としてパンデミック対策に苦労している多くの途上国の貧困と食糧不安を悪化させるため、重い追加負担となっている。エネルギー遷移金属と同様に、ウクライナとロシアは世界の小麦とヒマワリ油の主要生産国であるため、今回の戦争は大きな影響を及ぼしている。ウクライナの農家が今年の春作の収穫を阻まれているため、小麦の先物価格が急上昇し、かつてない高水準に達している。インフレ圧力は多くの国で政治的安定を脅かしている。

Photo: A wide view of the Security Council meeting on threats to international peace and security. 22 August 2019. United Nations, New York. Credit: UN Photo/Manuel Elias.
Photo: A wide view of the Security Council meeting on threats to international peace and security. 22 August 2019. United Nations, New York. Credit: UN Photo/Manuel Elias.

ウクライナ国内では600万人以上が避難し、500万人近くが海外に避難している。その数は膨大で、西ヨーロッパの受け入れ国のキャパシティを圧迫しているが、これまでのところ、多くの善意が寄せられている。幸いなことに、公的な制度も、シリア、イラク、アフガニスタンからの難民が欧州に殺到した2015年当時と比べれば、かなり良くなっている。

国際社会全体を見回すと、今回の危機にそれほどうまく対処できていない。弱肉強食の復活と主権国家が自らの将来を決定する権利を否定することを目的とした、プーチンの大胆な嘘、ひどい残虐行為、国際規約の明白な違反は、誰もが世界中の反感を買ったと思っただろう。しかし、実際にはこのような見方がどこでも共有されたわけではない。ブラジル、中国、インド、イスラエル、パキスタン、南アフリカ、トルコ、アラブ首長国連邦(UAE)など、多くの国がロシアを非難するどころか、曖昧な態度をとっている。このことから、紛争の平和的解決、ルールに基づく行動、協力という国連の基本原則を揺るがす事態となっている。

Portrait of President Harry S. Truman / By National Archives and Records Administration. Office of Presidential Libraries. Harry S. Truman Library, Public Domain
Portrait of President Harry S. Truman / By National Archives and Records Administration. Office of Presidential Libraries. Harry S. Truman Library, Public Domain

地球規模の問題、特に気候変動問題や生物多様性の喪失は、多国間でしか解決できない。つまり、特に強大な国家に適用される、自らに課した制約の枠組みの中でしか解決できない。この思いは、一世代のうちに2度の破滅的な戦争を経験した世代が創設した国際連合の基礎となるものであった。フランクリン・D・ルーズベルト米大統領は、国際連合の創設について、「何世紀にもわたって試みられ、常に失敗してきた単独行動、独占同盟、勢力圏、力の均衡、その他あらゆる方便の終焉を告げるはずだ」と力強く主張したのである。同様に、彼の後継者であるハリー・S・トルーマン米大統領も、「大国の責任は、世界の人々に奉仕することであり、支配することではない」と述べている。しかし、世界は大国に支配されている。世界人口のごく少数、つまりどこの国でも金持ちと先進国は、集団として地球の資源の大部分を消費している。もし、この消費が普遍化されれば、いくつかの惑星が必要になるだろう。

プーチンのウクライナへのいわれのない攻撃は、世界を変えた。それは、人類文明を救うという緊急プロジェクトから恥ずかしくも目を逸らすことになる。あるいは、いくつかの深刻な危機に対する相乗的な反応の触媒となるのかもしれない。つまり、化石燃料(=ロシアの資源)への依存を減らすことは、気候危機を救い、公衆衛生を改善し、産油国家から収入を奪い、規模を拡大した自然エネルギー産業で十分な報酬を得られる雇用を創出することになるのだ。思うに、プーチンの破壊的な行為は、皮肉にも人類をして自らを救うための活力を与えることになるかもしれない。(原文へ

フランツ・バウマン博士は、元国連事務次長補で、ニューヨーク大学客員研究教授。直近では、環境と平和活動に関する特別顧問として、事務次長補の地位にあった。この記事は、ウォールストリート・インターナショナルが配信したもので、同通信社の許可を得て転載しる。

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欧州連合と米国、モルドバの難民支援に資金を配分

【モスクワ|キシナウIDN=スター・ケン・クロメガー】

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、戦争で荒廃したウクライナから国境を越えて隣国のポーランド、バルト三国、モルドバ、ルーマニア、ハンガリー等に流出した難民数を約500万人を記録している。

UNHCRの統計によると、4月初旬の時点で、500万人以上がウクライナから逃れた。ポーランドには350万人近く、ルーマニアには58万6,942人、モルドバには38万1,395人、ハンガリーには34万9,107人の難民が逃れている。

2月24日に始まったロシアのいわゆる「特別軍事作戦」によって、ウクライナでは凄まじい残虐行為が横行し人道的状況が悪化しており、米国や欧州連合(EU)加盟国は支援を呼びかけている。

Image: Destruction in Ukraine caused by the Russian invasion. Source: The Daily Star.
Image: Destruction in Ukraine caused by the Russian invasion. Source: The Daily Star.

ウクライナ情勢を受け、欧州、特にポーランドやバルト地域では大量の難民が流入している。ロシアはウクライナと長大な国境を接しており、ウクライナはEUや北大西洋条約機構(NATO)への加盟を求めてきた。

ポーランド当局は、これまでウクライナで高まる人道危機を繰り返し指摘し、このままでは最大800万人の避難民が発生すると警告してきた。ルーマニアやウクライナと国境を接するモルドバ(面積は九州とほぼ同じ)にも、難民が流入している。モルドバはウクライナと同じくロシアが一方的に独立を承認した地域を領土内に抱えている他、ともに黒海に面している。

米国は、ウクライナ難民の流入による危機に対処するため、先にモルドバに約束した2000万ドルの援助に加え、さらに5000万ドルを提供すると、4月1日にモルドバを訪問したリンダ・トーマス=グリーンフィールド国連大使がモルドバのナタリア・ガブリリタ首相との共同記者会見で語った。

「最近、ウクライナ難民が流入する勢いはおさまってきている。しかし、難民数は既にモルドバの対応能力を超えており、私たちは難民がここから他の欧州諸国に直行できるようなトランジット回廊の設立を他の国々と協議しています。」とガブリリタ首相は語った。

ロシアのウクライナへの軍事侵攻が始まった2月24日以来、39万人以上がウクライナからモルドバに到着している。そのうち4万8000人の子どもを含む10万人近くがモルドバ領内に留まっている。

Map of Moldova
Map of Moldova

欧州連合はモルドバに対し、融資および助成金の形で1億5千万ユーロのマクロ金融支援活動を行った。「ブリュッセルで発表されたプレスリリースによると、「この支援は、現在の地政学的状況におけるモルドバの回復力を強化し、国際通貨基金(IMF)のプログラムに明記されているモルドバの国際収支のニーズを補填することに貢献するものである。

このマクロ経済支援は、モルドバの経済安定化と改革アジェンダを支援することを意図している。この援助は、2022年から2024年にかけて実施される予定。総額のうち、最大1億2000万ユーロが「有利な融資条件での」中長期融資として、最大3000万ユーロが助成金として提供される予定だ。

しかし、4月上旬、マイア・サンドゥ大統領は、モルドバは中立の立場を維持し、ウクライナ紛争をめぐるロシアに対する欧米の制裁には加わらないことを改めて繰り返した。隣国の紛争がモルドバの経済状況に影響を及ぼしているというのが、彼女の言い分である。

サンドゥ大統領は、「現在、ウクライナ、ロシア、ベラルーシの市場にはアクセスできていません。紛争の結果、これらの国々への輸出入は事実上ブロックされています。」と述べ、輸出入に関する規制が行われている可能性についてコメントした。

その上、モルドバはロシアからの燃料供給に強く依存している部分が多い。「天然ガスも電気も入手できない状態に国を放置しておくことはとてもできない。モルドバ国民のため、そして5万人の子供を含む10万人のウクライナ難民のためにも、そんなこと(=対ロ経済制裁に参加すること)はできない。」とサンドウ大統領は語った。

最新の動向としては、ロシアとウクライナの和平交渉がこの4月にもオンラインで継続している。ロシアの地元メディアは、プーチン大統領とウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領の具体的な会談日程を決める前に、合意文書のすべてのパラメータが徹底的に準備されると報じている。

様々な解釈や評価によれば、ロシアとウクライナは、ウクライナの中立的地位と安全の保障に関して、各々の立場を近づける可能性があるという。

国連、欧米諸国と国際社会は、ロシアが民主主義と独立国の主権、及び国際法を無視していると非難している。

Russian President Vladimir Putin addresses participants of the Russia-Uzbekistan Interregional Cooperation Forum in Moscow, Russia/ By Kremlin.ru, CC BY 4.0
Russian President Vladimir Putin addresses participants of the Russia-Uzbekistan Interregional Cooperation Forum in Moscow, Russia/ By Kremlin.ru, CC BY 4.0

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、NATOが(冷静終焉した東西ドイツ統一時に)東方拡大しないとした約束を守っていないことに危機感を抱き、連邦議会上院と下院の承認を得て2月24日にウクライナの「非軍事化」と「非ナチ化」を目的とする特別軍事作戦に乗り出した。

しかし世界の指導者たちは、すべての国が国際法を尊重し、その範囲内で行動しなければならないこと、そして、内政不干渉、国家主権と領土保全の尊重という原則に深く導かれる必要があると主張している。(この原則を逸脱した)ロシアは現在、米国とカナダ、欧州連合、日本、オーストラリア、ニュージーランド、その他多くの国々から制裁を受けている。(原文へ

*モルドバは、ウクライナの首都キーウ近郊などで多数の市民がロシア軍によって殺害されていたことを受け、4月4日を追悼の日とし、首都キシニョフにある政府庁舎に半旗を掲げた。またモルドバには、1990年に一方的に分離独立を宣言し、ロシア軍が駐留している「沿ドニエストル地方」があり、ウクライナに侵攻しているロシア軍の動きを警戒している。
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