SDGsGoal16(平和と公正を全ての人に)武力紛争、資金削減、サプライチェーンの混乱が世界の飢餓リスクを一段と深刻化

武力紛争、資金削減、サプライチェーンの混乱が世界の飢餓リスクを一段と深刻化

【国連本部IPS=マクシミリアン・マラウィスタ

武力紛争、経済的混乱、そして気候変動による圧力が、世界で最も脆弱な地域における食料不安を一層深刻化させている―。国連世界食糧計画(WFP)と国連食糧農業機関(FAO)が共同で公表した最新の「飢餓ホットスポット報告書(2026年6~11月見通し)」は、このように警告している。|英語版

報告書は、2026年6月から11月にかけて深刻な食料不安の悪化が予測される13の「飢餓ホットスポット」を分析した。その中でも、イエメン、パレスチナ自治区、スーダン、南スーダン、ソマリア、ナイジェリア、ハイチが、特に深刻な懸念地域として挙げられている。

報告書によれば、13地域のうち12地域で、食料不安を引き起こす最大の要因は武力紛争である。

さらに、過去5年間で世界の紛争件数は約2倍に増加し、2025年には世界人口の6人に1人が武力紛争や暴力の影響を受けたとしている。

また、2025年時点で約1億1,730万人が強制的な避難を余儀なくされており、受け入れ地域の負担を著しく増大させるとともに、食料不安をさらに深刻化させているという。

複数地域で飢饉の危険性

報告書は、複数の地域で飢饉(Famine)の危険性が依然として続いていることにも警鐘を鳴らしている。

中でもスーダンは世界で最も深刻な食料危機の一つに直面していると指摘された。

さらに、イエメン、ガザ地区、南スーダン、ソマリアでも飢饉発生の危険性が続いている。

また、ナイジェリアとソマリアについては、食料安全保障の見通しが一段と悪化したことから、警戒レベルが最高水準へ引き上げられた。

今後の見通し期間中、両国では人口の大部分が壊滅的なレベルの食料不安に直面する可能性があるとしている。

特にナイジェリアでは、約3,480万人が深刻な急性食料不安に直面すると予測されており、すべてのホットスポットの中で最大規模となる見込みである。

サプライチェーンの混乱が危機を増幅

食料不安の最大要因は依然として武力紛争だが、経済的圧力やサプライチェーン(供給網)の混乱も新たな脆弱性を生み出している。

6月18日に行われた報告書発表会で、WFPとFAOの担当者は、世界の物流網の混乱が食料危機をさらに悪化させる恐れがあると警告した。

London Post
ホルムズ海峡  資料:ロンドンポスト

FAOによれば、世界の石油供給量の約4分の1と、世界の肥料貿易の約3分の1がホルムズ海峡を通過している。

そのため、海峡で輸送が妨げられれば、燃料価格や輸送費、保険料、さらには肥料価格までもが上昇する可能性がある。

FAOは、こうした影響が連鎖的に広がることで、人道支援活動のコストが増加し、食料価格が上昇するとともに、すでに深刻な食料不安に直面している人々への支援物資の到着が遅れる恐れがあると指摘している。

もともと購買力が極めて低い世帯や、慢性的な資金不足に苦しむ人道支援機関にとって、こうしたコスト増加は極めて深刻な影響を及ぼす。

気候変動リスクも拡大

WFPとFAOは、気候変動によるリスクも高まっていると警告する。

特にエルニーニョ現象によって降雨パターンが不規則となり、多くの脆弱地域で農業生産が混乱する可能性があるという。

半減した支援資金、倍増した飢餓人口

一方で、人道支援機関は、対応に必要な資金そのものを失いつつある。

WFPとFAOによれば、人道支援機関への資金提供は2022年から2025年の間に約59%減少した。

これは2016~2017年当時と同程度の低水準である。

しかし同じ期間に、深刻な急性食料不安に直面する人口は約2倍に増加した。

つまり、人道支援機関は2016~2017年当時の半分以下の資金で、2倍の支援対象者に対応しなければならない状況に置かれている。

支援ニーズが増え続ける一方で資金は減少しており、多くの機関は支援規模の縮小を余儀なくされている。

「地域で食料を生産することが解決策の一つ」

インタープレスサービス(IPS)は記者会見で、サプライチェーンの混乱への対応策について質問した。

これに対し、FAO緊急・レジリエンス局長のライン・ポールセン氏は、地域での食料生産能力を強化することが解決策の一つだと語った。

同氏は、スーダンでは1,770万ドルの投資によって約5億1,500万ドル相当の食料生産が実現したと説明した。

また、一部地域では、紛争や物流混乱が続く中でも、雑穀(ミレット)栽培によって数十万世帯の生活を支えることができたという。

「地域での生産を重視することが答えの一部です。」

ポールセン氏はそう強調した。

FAOによれば、このミレット生産プログラムでは、1ドルの投資につき約29ドル相当の食料生産が実現した計算になる。

飢饉は防ぐことができる

A local farmer harvests sorghum produced from seeds donated by the Food and Agriculture Organization (FAO) through the “Improving Seeds” project. Credit: FAO/Fred Noy

WFPとFAOは、現代の飢饉の多くは予測可能であり、防ぐことも可能だと強調している。

そのためには、

  • 継続的な資金提供
  • 人道支援への安全なアクセス
  • 危機が深刻化する前の早期対応

が不可欠である。

両機関は、こうした取り組みこそが、深刻な食料不安が破局的な飢饉へと発展するのを防ぐ鍵になると訴えている。

INPS Japan/ IPS UN Bureau Report

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