ニュース米国は荒廃したガザに生と死の両方をもたらす

米国は荒廃したガザに生と死の両方をもたらす

【国連IPS=タリフ・ディーン】

バイデン政権の偽善ぶりは、荒廃したガザに食糧を投下する一方で、飢えと飢餓に苦しむパレスチナの市民を殺すためにミサイルや重砲でイスラエルを武装させ続けている政策に表れている。

ロ・カンナ下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)は先週、 「(パレスチナ人への)援助と、食糧輸送車を爆撃する武器をイスラエルに与えることを、同時に行うことはできない。」と語った。

そしてニューヨーク・タイムズ紙は、 「ガザの上空から、アメリカの爆弾とアメリカの食料パレットが落下し、死と生を同時に届けている。」と報じた。

ジャダィーヤ紙の共同編集者であり、独立調査機関の紛争人道研究センター(本部カタール)で客員研究員を務めるムイン・ラバニ氏は、米国がガザ地区の包囲されたパレスチナ人住民に形ばかりの援助を行っていることには、相互に関連したいくつかの側面があると語った。

そのひとつは、空中投下や移動式桟橋の計画などは、イスラエルのガザ地区に対する中世的な包囲を含む虐殺的攻撃への米国の積極的な関与や共謀から監視の目をそらすことを意図した、いわば見せかけの演出であるということだ。

「現在の危機は、イスラエルが米国に並々ならぬ依存を抱いていること、そして米国の支援なしには、持続的な軍事作戦を実施したり、説明責任を回避したりすることができないことを示している。しかし米国は、イスラエルに対して、大量殺戮的な猛攻撃を止めることも、飢饉や疫病などの発生を明確に意図した包囲を止めることも指示しないことを方針としている。」と、ラバニ氏は語った。

ラバニ氏は、「こうした芝居じみた空中投下は、イスラエルの入植者4人を制裁することで、ヨルダン川西岸の入植地拡大というイスラエルの国策に反対するイメージを広めようとした最近の決定と同様、見せかけのものだ。」と指摘したうえで、「米国がガザ地区のパレスチナ住民に提供したパンと爆弾の比率を計算すれば、米国の意図、優先順位、嗜好についてすべてわかる。」と語った。

IPSに寄稿したアロン・ベン=ミール博士は、国際関係学の教授を退任し、最近ではニューヨーク大学のグローバル・アフェアーズ・センターで教鞭を執っている。イスラエルの安全保障上のニーズを支援する一方で、パレスチナ人への人道支援も行うという二重のアプローチは、この地域における利害のバランスを取るという米国の広範な外交努力の一環である。

しかし、米国はイスラエルの自衛権を支持することで地域の安全保障を推進する一方で、パレスチナ人の人道的ニーズを擁護し、それに基づいて行動するという努力は、バイデン大統領にジレンマをもたらす。

「バイデン政権は、ネタニヤフ首相に政策を変更させるために、直接的な手段に訴えなければならないかもしれない。」とミール博士は付け加えた。

Donald Trump/ The White House
Donald Trump/ The White House

「11月に予定されている米国大統領選挙が、ネタニヤフ首相の戦略に一役買っていることに注目すべきだ。この秋の選挙でドナルド・トランプ候補に勝ってほしいと思っている人が世界に2人いるとすれば、1人目はトランプ氏自身、2人目はネタニヤフ首相だ。彼はバイデン大統領の再選を弱体化させるために全力を尽くすだろう。」

ネタニヤフ首相は、バイデン大統領が、何万人ものパレスチナ人が死亡しているにもかかわらず、イスラエルを揺るぎなく支持していることに反対する多くの若い有権者だけでなく、一部の議会民主党議員からも激しく批判されていることに喝采を送っている。彼は、自身の利益のためになる限り、戦争を長引かせ、再選キャンペーンに着手しているバイデンを政治的に弱体化させようとするだろう。

「バイデン大統領は、ネタニヤフ首相にアジェンダを設定させるべきではない。イスラエルの国家安全保障に対する米国のコミットメントは揺るぎないが、米政権はイスラエル国家と、根本的な意見の相違がある現在のネタニヤフ政権とを区別していることを、イスラエル国民に警告する決定的な措置を今取らなければならない。」と、国際交渉と中東研究のコースで教鞭をとったベン・ミール博士は語った。

ラバニ氏はさらに詳しく説明し、(援助物資の)空中投下についてコメントしたすべての専門家や機関は例外なく、この手段では、米国とイスラエルがガザ地区に作り出した人道的な事態に対処することは不可能であり、既に存在している陸路を通じた援助で対処できると結論付けていると述べた。

「陸路を通じた援助の再会であれば、ホワイトハウスからイスラエル政府に電話をかけるだけで済む。ワシントンはこの選択肢を追求しないという政策決定を下したのだ。」

第二に、これらの見せかけは、イスラエルのガザ地区に対する大量虐殺的な猛攻撃を正当化するためのものである。11月の一時休戦は、アントニー・ブリンケン米国務長官の言葉を借りれば、イスラエルの戦争に対する西側の支持を維持し、昨年12月初旬に戦争を再開・激化させるために必要だったのだ。

「以上のことから、パレスチナ人たちにとっては、このような空中投下はない方がよい。特に、少なくとも5人がすでに空中投下によって死亡しているのだから。」とラバニ氏は語った。

一方、ヨハネスブルグを拠点とする市民社会国際連合(CIVICUS)は、3月13日に発表した第13回年次報告書『市民社会の現状』において、「2023年にルールに基づく国際秩序を弱体化させ、人権の促進や世界で最も破壊的な戦争を解決することを難しくしているのは、強力な国々による偽善である。」と指摘し、これらの強国がいかに選択的に国際法を尊重し、同盟国を庇い、 敵国を非難しているかを詳述した。

最も露骨な例は、ロシアの侵攻に対してウクライナ防衛に駆けつけながら、イスラエルによるガザの市民への攻撃を支持した国々である。

「世界中の軍隊、反乱軍、民兵が2023年におぞましい人権侵害を行ったのは、二重基準だらけの国際システムのおかげで逃げおおせるとわかっていたからです。」と、CIVICUSのエビデンス・エンゲージメント担当のマンディープ・ティワナ最高責任者は語った。

「国連安全保障理事会を手始めに、人々を意思決定の中心に据えるグローバル・ガバナンス改革が必要です。」とティワナ氏は語った。

ガザでの死者が31,000人を超えたというガザ保健省の報告について問われたステファン・デュジャリック国連報道官は、3月13日の記者会見で、「またも悲惨な犠牲者数が明らかになった。このまま手をこまねいて事態が改善するのを傍観していないことを望む。」と語った。

「ガザの市民が苦しみから解放され、食料を手に入れ、必要な基本的サービスを受けられるようにするためだ。

「私たちが今一度求めているのは、人道的な即時停戦である。つまり、必要な人道的アクセスを確保し、必要な規模の人道支援活動を行えるようにすること、そしてガザの市民が苦しみから解放され、 食料を入手し、必要な基本的サービスを 受けられるようにすること、そして、ガザで拘束されているイスラエル人その他の人質が直ちに解放されるようにすることだ。」

一方、ガザでの人道的大惨事が続く中、バーニー・サンダース上院議員、クリス・ヴァン・ホーレン上院議員、ジェフ・バークレー上院議員、および民主党の同僚議員5名はジョー・バイデン大統領に書簡を送り、ネタニヤフ首相に対し、ガザへの人道援助アクセスを制限することをやめさせるか、イスラエルへの米軍援助を没収するか、連邦法を執行するよう求めた。

Photo: US President Joe Biden. Source: The Conversation.
Photo: US President Joe Biden. Source: The Conversation.

書簡の中で上院議員たちは、ネタニヤフ首相によるガザでの米国の人道的活動への干渉は、人道援助回廊法としても知られる1961年外国援助法第6201条に違反することを明らかにした。

この法律は以下のように規定している。 サンダース上院議員の事務所からのプレスリリースによると、「この章または武器輸出管理法の下で、いかなる国に対しても、その国の政府が米国人道援助の輸送または配達を直接的または間接的に禁止または制限していることが大統領に知られた場合、援助は提供されない。」

バイデン大統領に対し、上院議員たちは次のように書いた。「公的な報告やあなた自身の発言によれば、ネタニヤフ政権はこの法律に違反している。この現実を踏まえ、我々はネタニヤフ政権に対し、人道的アクセスを即座に劇的に拡大し、ガザ全域への安全な援助物資の輸送を促進しなければ、米国の現行法で規定されているように、深刻な結果を招くことを明確にするよう強く求める。米国は、米国の人道支援を妨害するいかなる国にも軍事援助を提供すべきではない。」

「連邦法は明確であり、ガザ危機の緊急性と、ネタニヤフ首相がこの問題に関する米国の懸念に対処することを繰り返し拒否していることを考えると、同首相の政策変更を確実にするために、早急な行動が必要である。」(原文へ

INPS Japan

*INPS Japanでは、ガザ紛争のように複雑な背景を持つ現在進行中の戦争を分析するにあたって、当事国を含む様々な国の記者や国際機関の専門家らによる視点を紹介しています。

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