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|米国|国内で使用される言語トップ10にアフリカの諸言語が占める

【ニューヨークIDN=リサ・ヴィヴェス】

米国国勢調査局の最新統計によると、アフリカの諸言語( スワヒリ語、ヨルバ語、アムハラ語、トウィ語)が米国で最も話されている上位10言語内に入っている。米国に暮らす黒人人口のうち、外国生まれの黒人が占める割合は39%(2000年時の24%から大幅増加)、米国に難民として入国してくる人々の主な出身国はコンゴ民主共和国とアンゴラ。米国に移民として入国してくる人々の主な出身国は、ナイジェリア、ガーナ、南アフリカ、タンザニアである。(原文へ) FBポスト

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|オーストラリア|危機にひんする先住民族の言語

アイスランドで基地増強に懸念

【レイキャビクIDN=ロワナ・ヴィール】

米軍は2006年に、アイスランドにあるケフラビク国際空港に附属する基地(同国南西端)を放棄し、撤退したとみなされていた。

しかし、マイク・ペンス副大統領の今年9月初めのアイスランド訪問、マイク・ポンペオ国務長官の2月の訪問といった最近の出来事は、それとは違う動機を明らかにしている。

Mike Pompeo, 70th United States Secretary of State, official photo/ Public Domain
Mike Pompeo, 70th United States Secretary of State, official photo/ Public Domain

ポンペオ国務長官は同国滞在中に安全保障問題について協議し、同国の祝日である6月17日には、「アイスランドは北大西洋条約機構(NATO)のゆるぎなき同盟国」であり、「アフガニスタンでの『確固たる支援任務』と『ISISに対抗する有志連合』にアイスランドが協力していることに感謝する。」との声明を発した。

ペンス副大統領の訪問に先立って、核兵器を搭載したB-2ステルス爆撃機がアイスランドに飛来している。米国の欧州空軍/アフリカ空軍の8月の報道発表は「アイスランドでの戦略爆撃機の運用によって、ケフラビク海軍航空基地をB-2の前進配備地として利用することが容易になり、ますます複雑化する安全保障環境において我が国とその同盟国に安心を供与し、抑止し、防衛するために、B-2が信頼性をもって関与し、準備態勢を整えることができる。」と述べている。

同爆撃機が、エンジンを切らずに航空機に給油することを意味する「ホットピット給油」の訓練のためにアイスランドに送られたことは明らかだ。

改革党の党首でアルシング(アイスランド国会)外務委員会の委員でもあるトールゲルドゥル・カトリン・ギュナルスドッティル氏は、この爆撃機が核兵器を搭載していないとの確認を同委員会は得ていないが、なぜそれがアイスランドにいるのか、核兵器を搭載しているのかを確認することが重要だと述べた。

2016年に策定されたアイスランド国家安全保障政策は、「軍縮と平和を促進するという我が国の国際公約に従って、我が国とその領海には核兵器が存在しない状態にしなくてはならない。」と記している。

アイスランドのグドゥロイグル・トール・トールダルソン外相との会談中、ペンス副大統領は、米国はアイスランドの防衛を強化し安全を確保する決意であり、ケフラビクの保安地帯はこの点で重要な要素だと述べた。

Vice President Micheal Pence poses for his official portrait at The White House, in Washington, D.C., on Tuesday, October 24, 2017.  (Official White House Photo by D. Myles Cullen)
Vice President Micheal Pence poses for his official portrait at The White House, in Washington, D.C., on Tuesday, October 24, 2017. (Official White House Photo by D. Myles Cullen)

同氏はアイスランド滞在中、2006年の基地閉鎖決定は正しかったかとメディアから質問された。彼は直接答えず、同基地の職員と話をし、状況についてドナルド・トランプ大統領に報告したいと述べた。

米軍がアイスランドを撤退して以来、基地跡地のほとんどはハイテク産業のために再開発された。しかし、保安地帯となっている一部の土地は、依然として立ち入り禁止になっている。アイスランド沿岸警備隊の管轄下にあるが、ペンス副大統領の同国訪問に帯同した『ワシントン・ポスト』の記者はこの地区についてこう書いた。「灰色で窓がない。高度に安全が保たれている。ホワイトハウスの意向に沿って、軍やNATOの活動が多くみられる。」

ペンス副大統領は「司令センターを簡単に視察した。センターはアイスランドや北極海の空と海の動きを追跡するスクリーンであふれている。ここは、海軍ケフラビク航空基地の一部なのである。」しかし、記者団は立ち入りを禁じられ、「副大統領は機密情報に関するブリーフィングを受けることができた」。

アイスランドは、自らの軍隊は持たないがNATOに加入しており、1951年にアイスランド防衛協定に署名している(現在も有効)。トランプ大統領は最近、アイスランドはNATOの予算に十分貢献していないと不平を口にしている。

だが他方で、アイスランドは、基地跡地の保安地帯にある施設を更新して1000人の兵士が居住できるようにし、格納庫を2棟更新して2飛行大隊(戦闘機18~24機)を一度に収納できるように、3000億クローネ(33億7000万ドル)を拠出することを約束している。

この増強ははじめ、現在とは異なる政党が政権にあった2016年に議論され合意されたが、その詳細が明らかになってきたのは最近のことである。

現在、国会の第二党は、軍隊とNATOに敵対的な左翼緑運動党である。

2018年の文書によると、レイキャビクの米国大使館は「ケフラビク海軍航空基地が2006年に突如として閉鎖されたことで、米国・アイスランド関係は根本的に変わってしまった。米国はアイスランドの防衛に責任を持つ点で法的な縛りがあるが、その約束を物理的に表現する手段は消滅した。」

大使館は、金融危機以後のアイスランドの政治状況が「平和主義的な政治の傾向を強化」し、「現在の政府は、一般的に言って米国との緊密な連携を望んではいるものの、『左翼緑の運動』の指導層は、安全保障問題に関する米国やNATOの方針にあまり前向きではない。連立政権内でこの問題が微妙であることを特に認識したうえで、この領域におけるコミットメントを維持する綱渡りを強いられるだろう。」と述べている。

確かに、国会の中で唯一の反NATO政党である左翼緑運動党は、旧基地の一部分を再開発する予算を認めたことで、批判の嵐にさらされている。しかし、カトリン・ヤコブスドッティル首相がペンス副大統領に語ったように、彼らは反撃を始めており、旧基地の開発が将来的に進むようなことがあれば、まずは国会で民主的かつ透明な形で議論がなされねばならないだろう。同党は今後数カ月以内に、この方向での提案を出す予定でいる。

Katrín Jakobsdóttir at Göteborg Book Fair 2012 03/By Arild Vågen - Own work, CC BY-SA 3.0
Katrín Jakobsdóttir at Göteborg Book Fair 2012 03/By Arild VÃ¥gen – Own work, CC BY-SA 3.0

保安地帯を管轄するアイスランド沿岸警備隊は、海洋の安全や、アイスランド周辺の海洋の監視、法執行をその任務としている。安全や防衛の問題がこの地帯内で議論されたものの、ペンス副大統領はまた、ロナルド・レーガン大統領とソ連の指導者ミハイル・ゴルバチョフ氏が1986年に会談し、最近失効した中距離核戦力(INF)全廃条約への第一歩を築いた場所である「ホフディ」でも会談を行っている。

この場所でペンス副大統領は、レイキャビクのダグール・B・エガートソン市長と会談した。エガートソン市長は、INF条約の失効を「残念に思う」と述べた。その歴史を考えれば、エガートソン市長はこの建物を軍縮に関する議論を将来的に行う場所として提供したわけである。「なぜなら、もし核兵器の問題に関連して人々がふたたび協力することがあるとするならば、ホフディは最高の場所になるはずだ。」とエガートソン市長は説明した。

ペンス副大統領はこのアイディアを否定しなかったが、「もし新しい協定を作るならば、中国や、さらにはインドが議論に参加しなければならないと米国政府は考えている。」と語った。

トールダルソン外相との会談でペンス副大統領は、北極海におけるロシアの軍事行動の強化に懸念を示し、ヤコブスドッティル首相とも安全保障問題について話し合いたいと述べた。首相は、北欧貿易同盟評議会の会議に出席していたスウェーデンから戻って、すぐにペンス副大統領と会談した。

ペンス副大統領は後にこうツイートしている。「今日のNATO管制センターの訪問はとてもよかった!ケフラビク航空基地からのNATOの作戦に関するアイスランド沿岸警備隊司令官のすばらしい説明に感謝。

ヤコブスドッティル首相には別の大事な問題もある。アイスランドは北欧での軍備増強に反対する政策を掲げるだけではなく、気候変動やジェンダー平等、LGBTQ+の権利が政権の重要課題だと首相は述べている。ロシアの北極海における活動よりも気候変動の方が大事だという立場だ。(文へ

スウェーデン語

INPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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不確実性の時代の軍縮:レイキャビクで議論

|アイスランド|頭の痛いNATOからの要求

北欧の「2030世代」がSDGに取り組む

SGI Anti-Nuclear Exhibition in Kazakhstan, Field Trip to Former Nuclear Test Site

2019 marks the 30th anniversary of the end of nuclear weapons testing in Semipalatinsk, the primary testing venue for the Soviet Union’s nuclear weapons, the 10th anniversary of the entry into force of the Treaty on a Nuclear-Weapon-Free Zone in Central Asia, and the ratification by Kazakhstan as the 26th country to ratify the Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons.

This year also marks the first showing of the Russian-language version of the exhibition ‘Everything You Treasure – For a World Free from Nuclear Weapons’, from October 2-13 in Nur-Sultan city, the capital of Kazakhstan.

The exposition which Soka Gakkai International (SGI) made in collaboration with International Campaign to Abolish Nuclear Weapons (ICAN) was first shown in 2012 in Hiroshima, the sight of first ever nuclear bombings along with Nagasaki. It has since been seen in 90 cities in 20 countries. Kazakhstan is the 21st country to host it.

IDN-INPS Multimedia Director Katsuhiro Asagiri, after covering the opening ceremony of the exhibition at the Library of the First President of the Republic of Kazakhstan – Elbassy, joined the SGI delegation headed by Mr. Hirotsugu Terasaki, Director General of Peace and Global Issues of the SGI, a two-day field trip to Semey city and Kurchatova town in East Kazakhstan Region, once the center of operations for the adjoining Semipalatinsk Nuclear Test Site.

Below are print and video coverage by INPS and its partner media Kazinform:

Read Articles:

Nuclear Abolition Exhibition Boosts Japan-Kazakh Relations (by IDN-InDepthNews)

Antinuclear policy consolidates Japan and Kazakhstan (by Kazinform)

SGI Japan delegation visited Semey (by Kazinform)

The International Traveling Exhibition “Everything You Value – For a World Free of Nuclear Weapons” Opened in the Library of Elbassy  (by Elibassy)

Watch Videos: 

Opening Ceremony of the Exhibition “Everything You Treasure – For a World Free from Nuclear Weapons”

Remark by Mr. Gennadi Shipovckih, member of the Mazhilis of the Parliament of the Republic of Kazakhstan

Field Trip by SGI Delegation to Semey City and the former Nuclear Test site of Semipalatinsk.

[INPS-IDN – October 2019]

「気候変動との闘いの道は長い」―国連事務総長の嘆き

【ニューヨークIDN=シャンタ・ロイ】

国連が主催して9月23日に開催された「気候行動サミット」は、世界の指導者らが集うハイレベル会合であると謳われていたにも関わらず、それほど印象的な結果を残すことなく終わった。

ハリケーン・干ばつ・洪水・熱波といった、差し迫った「気候の緊急事態」に関して国連のアントニオ・グテーレス事務総長からの警告があったにも関わらず、そのほとんどが元首であるサミットの発言者は、わずかに64人であった。

この画期的な会合は、地球温暖化に対処し、CO2排出を削減して気候変動と継続的に闘うための拠出金増額を誓うためのプラットフォームを提供すべく戦略を策定することが任務だったが、国連の193加盟国中、129カ国が不在であった。

SDGs Goal No. 13
SDGs Goal No. 13

世界のCO2排出国ワースト5は、中国・米国・インド・ロシア・日本である。しかし、日米両国はこの会合には参加しなかった。

オックスファム・インターナショナルのウィニー・ビャナイマ代表は、サミットに関して「気候行動サミットの残念な状況を見るにつけ、来たるCOP25(チリで12月2日~12日に開催予定)とCOP26(英グラスゴーで2020年末に開催予定)の重要性が増したと言えます。これらの会議で指導者らは、事態を前に進めるのかそれとも押しとどめるのか、改めて問われることになります。決定を先延ばしにしているわけにはいきません。時間はなくなりつつあるのです。」と総括し、警告した。

公正な安全2020」の代表で、スチムソンセンター(米ワシントンDCの政策研究シンクタンク)の主任研究員でもあるリチャード・J・ポンジオ氏は、今回のサミットで意義のある公約や具体的な行動があったのかという問いに対して、「ドイツやカタールなど一部の国は資金提供を約束したが、全体として見れば、最大のCO2排出国が、パリ気候協定に定められた目標に達するのに必要な課題を実行に移していません。」と語った。

しかし、学生や若者の活動家が中心となって、気候の危機に対する懸念が世界的に高まっているにも関わらず、ほとんどの指導者が、2050年までのCO2純排出ゼロという目標を達成するために必要な経済構造改革(民間部門に排出削減のインセンティブと罰を与えるもの)を行う意思を見せていない。

ポンジオ博士は、今後のことに関連して、国連のグテーレス事務総長をはじめとして一部には良識のある指導者もいるが、「私たちの気候変動対策ガバナンスは、ほとんどの科学者が支持している1.5度以下の目標はおろか、2度以下に抑えられそうにもありません。」と語った。

「1945年に設立された国連そのものが、失敗に終わった前身組織である国際連盟に対するグローバル・ガバナンス上の革新であったように、世界が必要としているのは、国連の大きな構造改革であり、気候変動という難題に対して世界の集合的行動がいかに対処していくのかということです。」と、ポンジオ博士は語った。

国際環境開発研究所(IIED)のアンドリュー・ノートン所長はIDNの取材に対して、「サミットは不十分だった」とコメントした。

ノートン所長は、科学的知見は明確であり、「1.5度の上昇を超えてはなりません。『2度』の目標設定は、放棄すべき時にきています。」と語った。

「(気候行動サミットは)気候変動の緊急性というメッセージを受け取り、行動を起こす意思を、すべての指導者が明確にする大事な機会であったにも関わらず、経済力があり、歴史的にも気候変動の原因を作ってきた国々は責任を果たしていません。」と、ノートン所長は批判した。

ノートン所長は、「『貧困国の中の最貧国』と称される後発開発途上国(LDCs)47カ国が、気候変動に対する強靭な社会を2030年までに作り、CO2純排出ゼロを2050年までに達成すると宣言して、真のリーダーシップを発揮しました。」と指摘した。また、「数十億ドルをかけた新しい取り組みが無数に提起されたが、そのほとんどが、気候変動に対して脆弱な立場にいる人々のニーズに対処できていません。」と語った。

「多くの富裕国が『緑の気候基金』への資金提供を倍増すると約束しているが、それが効果的であるためには、資金が直接に草の根レベルに届き、貧困国がそれを直接に利用できるようにすべく、根本的な改革がなされねばなりません。」

「今から2020年までにできることはたくさんあります。指導者らは腕まくりして、遅くとも、グラスゴーで2020年下旬に国連気候サミットが開かれるまでの計画を練り直さねばなりません。」

ノートン所長は、「各国政府は、援助、貿易、農業などあらゆる政策領域が気候変動対策に向けられたものにしなければなりません。現在の各国の公約を積み重ねても、今世紀末には地球の温度は3度上昇し、壊滅的な影響が出かねない状況にあるのです。」と指摘した。

「子供達の声は権力者らの耳には依然として届いていないし、科学的知見も活かされていません。指導者らはもっとスピーディーに前進すべきで、来年を無駄にしてはなりません。」

世界的な危機に対処する民衆の能力を付けることを目的としたグローバルな運動体である「アバーズ」(Avaaz)のキャンペーン担当イアン・キース氏は、最近の状況についてこうまとめた。「気候変動への異議申し立ての声が高まっています。子どもたちは勇気をもって学校をボイコットし、国連は加盟国に厳しい要求を出し、先住民族はアマゾンの山火事と闘っているのです。」

「世界のすべての人々が、気候変動への行動を『今こそ』求めているのです。新しい道に向けて第一歩を踏み出すのは大変なことだが、汚染を排出している指導者らはそのことに気付くべきです。さもなくば、15歳からの要求で行動を強いられるまでだ。」とキース氏は語った。

「公約ばかりがたくさんありますが、パリ協定で決まった『2度』の上限を下回るようにするには、具体的な計画があまりにも足りません。しかし、これをパリ協定と比べるならば、正しい方向への進歩がみられます。とはいえ、IPCC報告が『1.5度』を主張していたことに比べれば、まだまだ目標としては不十分と言わざるを得ません。」

グテーレス事務総長によれば、今回の国連気候行動サミットではいくつかの好ましい結果があったという。

Photo: UN Secretary-General António Guterres speaks at the University of Geneva, launching his Agenda for Disarmament, on 24 May 2018. UN Photo/Jean-Marc Ferre.
Photo: UN Secretary-General António Guterres speaks at the University of Geneva, launching his Agenda for Disarmament, on 24 May 2018. UN Photo/Jean-Marc Ferre.

「いくつか具体的に述べよう」とグテーレス事務総長はまとめの会合で語った。

グテーレス事務総長が指摘したのは、その多くが先進国である77カ国が、2050年までのCO2純排出ゼロを約束したということだ。さらに、世界の10地域・100都市以上がこれに加わっているが、この中には世界最大の都市もいくつか含まれている。

他方、70カ国が2020年までに国別目標(National Determined Contributions)を強化すると表明し、民間部門のリーダー100人以上が、グリーン経済に向けて対策を加速すると述べた。

2000以上の都市が気候危機問題を政策決定の中心に置き、利益を生みうるような環境スマート都市事業が1000件以上打ち出されている。

今日、パキスタンからグアテマラ、コロンビア、ナイジェリア、ニュージーランド、バルバドスに至る世界の多くの国々が、110億本以上の植樹を行うことを公約した。

また、合計で2億ドル以上の資産運用を行っている世界の資産保有者らのグループが、2050年までにCO2排出ゼロの投資を行うことを表明した。

多国籍・国家開発銀行も公約を行った。国際開発ファイナンスクラブが、後発開発途上国20カ国において2025年までにクリーンエネルギーに対する投資を1兆ドル以上行うことを発表した。

同クラブはまた、化石燃料を減少させることでCO2排出ゼロを目指し、石炭火力向け金融からの出口戦略を策定する予定だ。

UN Secretariate Building/ Katsuhiro Asagiri
UN Secretariate Building/ Katsuhiro Asagiri

世界の銀行部門の3分の1にあたる130の銀行は、パリ協定と「持続可能な開発目標(SDGs)」にあわせて事業を行うことを約束した。

世界の投資資本の半分以上(約340兆ドル)を占める資産運用者らによる明確な呼びかけに加えて、これらのすべてが、気候に関する緊急の行動を求め、世界の指導者に対して、CO2排出に適切な価格をかけ、化石燃料と石炭火力発電への補助から脱却するよう呼びかけている。

「気候関連の資金援助を増やすと約束した国々、とりわけ、緑の気候基金に対する分担金を倍増することを約束した国々に対して、あらためて感謝を申し上げたい」とグテーレス事務総長は述べたが、こうした公約のうちどれだけが実際に実行されることになるのかという、いつもの問題が残されている。

そのことは、グテーレス事務総長の次の言葉が裏付けている。「雰囲気づくり、協力、意欲においては、前向きな姿勢を見せていただいた。しかし、実現までの道のりは長く、私たちまだそこに到達していません。」(原文へPDF

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SGI代表団が旧セミパラチンスク核実験場とセメイを訪問

Filmed by Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director, President of INPS Japan.

創価学会インタナショナル(SGI)は、10月2日に、展示会「核兵器なき世界への連帯―勇気と希望の選択」展をカザフスタンの首都ヌルスルタンで開催した後、ソ連時代の40年間に456回の核実験が繰り返されたクルチャトフ(当時は秘密都市)、旧セミパラチンスク核実験場跡、セメイを訪問した。INPSからは、INPS Japanの浅霧勝浩マルチメディアディレクターが同国の提携メディアKazinformと協力して、展示会開会式並びに、SGI一行のクルチャトフ、旧セミパラチンスク核実験場跡、セメイ訪問を取材した。FBポスト

INPS Japan

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「核兵器なき世界への連帯―勇気と希望の選択」展

Filmed by Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director, President of INPS Japan

この展示会は、10月2日~13日にカザフスタンの首都ヌルスルタンで開催された。創価学会インタナショナル(SGI)は、長崎と並んで原爆が初めて使用された広島で2012年に最初の展示会を開催して以来、これまで20カ国90都市で開催してきたが、ロシア語版の展示が披露されたのは今回が初めてだった。INPSからは、INPS Japanの浅霧勝浩マルチメディアディレクターが、ヌルスルタンでSGI代表団と合流し、展示会開会式と、旧セミパラチンスク核実験場跡、セメイ訪問に随行し、ドキュメンタリーを制作した。

2019 marks the 30th anniversary of the end of nuclear weapons testing in Semipalatinsk, the primary testing venue for the Soviet Union’s nuclear weapons, the 10th anniversary of the entry into force of the Treaty on a Nuclear-Weapon-Free Zone in Central Asia, and the ratification by Kazakhstan as the 26th country to ratify the Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons.

This year also marks the first showing of the Russian-language version of the exhibition ‘Everything You Treasure – For a World Free from Nuclear Weapons’, from October 2-13 in Nur-Sultan city, the capital of Kazakhstan.

The exposition which Soka Gakkai International (SGI) made in collaboration with International Campaign to Abolish Nuclear Weapons (ICAN) was first shown in 2012 in Hiroshima, the sight of first ever nuclear bombings along with Nagasaki. It has since been seen in 90 cities in 20 countries. Kazakhstan is the 21st country to host it.

IDN-INPS Multimedia Director Katsuhiro Asagiri, after covering the opening ceremony of the exhibition at the Library of the First President of the Republic of Kazakhstan – Elbassy, joined the SGI delegation headed by Mr. Hirotsugu Terasaki, Director General of Peace and Global Issues of the SGI, a two-day field trip to Semey city and Kurchatova town in East Kazakhstan Region, once the center of operations for the adjoining Semipalatinsk Nuclear Test Site.

カザフスタン下院議会議員Gennadi Shipovckihが展示会開会式に寄せたメッセージ

Filmed by Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director, President of INPS Japan

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[INPS-IDN – October 2019]

「足るを知る経済」を実践するタイ農民

【チャンタブリ(タイ)IDN=ブロンウェン・エバンズ】

タイの農民が有機農業を始めるのには2つの理由がある。ひとつは健康面、もうひとつは経済面である。クムナン・チャンタシットさん(73)にとっては経済面が動機だった。タイ東部チャンタブリ県に住む彼は、幼少期から同じ土地を耕し続けている。豊かな火山性の土壌であるにも関わらず、かつては必要だと考えていた肥料や除虫剤の代金を支払うために、彼はますます借金地獄にはまり込んでいった。

26年前、彼はようやく他の方策に目覚めた。それは、タイの故プミポン・アドゥンヤデート国王が提唱した「足るを知る経済」だ。わずか4エーカーで家族の生活を支えられるという統合的な農業のやり方である。これに対し、クムナンさんの土地は8エーカーもあった。

Bhumibol Adulyadej/ By John Dominis, Public Domain
Bhumibol Adulyadej/ By John Dominis, Public Domain

彼は、この原則に従って、果実樹、魚の生息する池、薬草や鶏などのある豊かな農場を作り上げ、防虫剤や肥料を止めてコンポストを使い、自分の作った薬草と余った果物で作った有機茶を作ることにした。このやり方はうまくいって借金を返すこともできた。今では、孫やひ孫を十分養うだけの収入があり、この手法を駆使して尊敬を集める先駆者になった。

彼の農場を訪問してまず気づくことは、虫や腐葉を含んだ土壌であり、巨大なタコノキやカルダモンを含んだ豊かな表土である。長年にわたって耕され、育てられてきたものだ。果樹に共に育てられているこれらの木々は生物多様性を増すものであり、微生物を繁殖させ、年間を通じた収穫を可能にする。農業用水は、土壌に栄養を加える魚が生息する池から来る。

他方で、タイ土着の赤ヤケイの子孫である野生の鶏100羽が土地を耕し、昆虫を遠ざけ、卵を産んでくれる。クムナンさんはその卵を使って、果実の栽培や木々の育成に役立つホルモン剤を自家製造している。

森の木々は生い茂り健康である。葉の緑は深く、土壌が豊かであることを示している。彼は主に、ドリアンやマンゴスチン、ロンゴン、ランブータンといった、タイ東南部でよく育つ熱帯の果実を育てている。パパイヤやバナナ、ココナッツ、ライムもある。最も高い木々は東南アジア原産のドリアンだ。木は45メートルの高さにもなり、ちょうどフットボールサイズでとげのある果実を持つ太い枝が生えている。

ドリアンはタイでは「果実の王様」と呼ばれている。甘くクリーミーな果肉はアジアで人気があり、価格も高い。クムナンさんの果樹園のドリアンの木の一つは樹齢55年。年間100~150キロの実を生らせ、3000ドル以上の収入を生む。森林の中層にはロンゴンとマンゴスチン、ライムの木があり、地面近くには、ハーブや、最近植えたばかりのドリアンの木が生えている。

SDGs Goal No. 15
SDG Goal No. 15

木々が成長すると、太陽光に向かう性質のあるバナナの木よりも高くなる。バナナが切られると、土壌には繊維や微生物、カリウムが加えられる。コショウの木が、他の木々に沿って成長する。

土壌かく乱の制限、植物による土壌の被覆、生体系への動物の統合といった、バイオダイナミックスとパーマカルチャーに共通した考え方に加えて、クムナンさんは、「足るを知る経済」に関するプミポン国王の哲学的な教えを取り入れている。

その教えとは、穏健、合理性、予測不能な出来事や危機に対する適切な防衛といった面で、人間の行動や資質の涵養を謳うものだ。我々は、広い知識を持ち、行動において思慮と他者へのケア、倫理を絶やさず、正直・誠実・勤勉・自制をもって活動せねばならない。タイは仏教国であるから、「足るを知る経済」は仏教からの考えを引用している。それは、「中庸」を重んじ、自己からの極度の収奪や行き過ぎた消費といった極端を避けるものだ。

Map of Thailand
Map of Thailand

この哲学の不可欠の部分は、日常生活における独立を目指すという点だ。したがって、浪費をせず、適度な収入と、生存を維持するに足るレベルの生産を旨とする。それ以上のものに関しては分割をし、一つは他者に与え、一つは自ら取り、一つは販売する。この道を取ることによって、我々は強さを備え、生活における均衡と調和を保つことができる。

クムナンさんは最近、自分の土地を3人の子どもに分け与えた。たった8エーカーで多くの人の生存を支えることができるとは驚くべきことだ。土壌を育て、植物を植え、ダイナミックな生態系を作っていくことの価値をこれほど証明するものはない。(原文へ

※ブロンウェン・エバンズは、ニュージーランド出身で、受賞歴のあるジャーナリスト、キャスター。タイに移住して20年、東南岸チャンタブリにあるファアサイ・リゾート&スパでエコリゾートを作っている。パーマカルチャーの原則に依りつつ、責任ある観光や、自然の聖地・有機農場づくりに励んでいる。

INPS Japan

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国連ハイレベル会合、CTBT早期発効を訴え

【ニューヨークIDN=J・ナストラニス】

10年前の2009年12月2日、第64回国連総会が8月29日を「核実験に反対する国際デー」と定める決議64/35を全会一致で採択した。決議は、カザフスタンを中心とする多くの共同提出国によって出されたもので、1991年8月29日にセミパラチンスク核実験場が閉鎖されたことを記念するものだ。

第74回国連総会は9月9日、世界各地で8月29日に行われた各種イベントのフォローアップとして、ハイレベル会合を招集した。8月29日は旧ソ連・セミパラチンスク核実験場が1991年に閉鎖された日でもあり、1949年にソ連の核実験が初めて実施された日でもあるという、象徴的な一日である。

決議は「核爆発実験やその他の核爆発の効果と、核兵器なき世界という目標を達成するための一つの手段として核実験を禁止する必要性に関して」社会に認識を高め教育を充実させることを求めている。

UN Secretariate Building/ Katsuhiro Asagiri
UN Secretariate Building/ Katsuhiro Asagiri

さらに、「核軍縮と核兵器の完全廃絶が、核兵器使用および使用の威嚇を予防する唯一の保証であるとの考えから」、国連総会は9月26日を「核兵器の全面的廃絶のための国際デー」と定め、国際的な取り組みを通じて、核兵器の完全廃絶という目的を前進させることを狙っている。

あらゆる形態の核実験を禁止する国際法としては、1996年に採択された包括的核実験禁止条約(CTBT)がある。しかし、発効要件国(=付属書IIの諸国)44か国中8カ国が批准していないことから未発効の状態にある。8カ国とは、中国・エジプト・イラン・イスラエル・米国(署名済み)、インド・北朝鮮・パキスタン(未署名)である。

CTBTは、どこでも、誰によるものであっても、あらゆる核爆発を禁じている。ジュネーブ軍縮会議で条約交渉がなされ、国連総会が採択、1996年9月24日に署名開放された。それ以降、条約はほぼ普遍的な地位を確立した。現在、184カ国が署名し、168カ国が批准を済ませている。

条約が発効すれば、核実験を禁止する法的拘束力のある規範が確立することになる。また、核実験が引き起こす人的被害や環境汚染の予防にも寄与することとなる。

国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、ハイレベル会合での開会挨拶で、「CTBTは最も多くの支持を集めている条約の一つであり、『国際監視制度(IMS)』というその検証メカニズムによって平和と安全が促進されてきた。」と指摘したうえで、条約発効に批准が必要な8カ国に対して速やかに批准するよう訴えた。

グテーレス事務総長は、核兵器が人類と環境にもたらす深刻な影響を指摘して、「21世紀の今、核実験は容認しがたい。また、CTBTの発効を阻止する動きも、核兵器の質的・量的拡散に対する制約と核廃絶に向けた実践的な措置を押しとどめようとする動きも、容認しがたい。」と語った。

IMS/ CTBTO
IMS/ CTBTO

グテーレス事務総長が昨年5月24日に発表した軍縮アジェンダ「私達共通の未来を守る」で示していたように、核実験に反対する規範は、軍縮と不拡散双方の目的に寄与する基準となるものの一例だ。CTBTは、新型核兵器の開発を抑制することで、軍拡競争に歯止めをかけている。また、別の国が不拡散の約束を破って、核兵器を開発・生産し、結果として取得することに対する強力な規範的障壁ともなっている。

Photo: UN Secretary-General António Guterres speaks at the University of Geneva, launching his Agenda for Disarmament, on 24 May 2018. UN Photo/Jean-Marc Ferre.
Photo: UN Secretary-General António Guterres speaks at the University of Geneva, launching his Agenda for Disarmament, on 24 May 2018. UN Photo/Jean-Marc Ferre.

CTBTO準備委員会のラッシーナ・ゼルボ事務局長は、「CTBTはきわめて重要かつ長らく待ち望まれているものであり、国際的な核不拡散・軍縮レジームの活力を保たせるのに一役買うであろう。我々が協力̪しあえばこの崇高な目的を達することができると確信している。核実験禁止への我々のコミットメントを強化することで、この『核実験に反対する国際デー』を迎えよう。」と語った。

ゼルボ事務局長は基調講演で、「『核実験に反対する国際デー』は、我々の仕事は未完のまま(=CTBTが発効に至っていない)とのメッセージを国際社会に対して明確に示す機会だ。」と語った。

ゼルボ事務局長はまた、「核実験を永遠に廃絶する任務は、まだ終わっていない」と指摘するとともに、「今日の記念日が、核実験の危険から世界を解き放つという目的を最終的に実現するための具体的措置をとるよう各国に促すものであることを期待する。この崇高な目標に我々を導く唯一の道は、CTBTを検証可能にすること、普遍性を達成することである。」と語った。

ゼルボ事務局長は、核兵器の保有を放棄し、国内に配備されていた旧ソ連の核弾頭をロシアに移送し、セミパラチンスク核実験場を永久に閉鎖する歴史的決定を下したカザフスタンのヌルスルタン・ナザルバエフ初代大統領の勇気とリーダーシップを褒め称えた。

また、セミパラチンスクで実施された500回近くの核実験によって影響を受け、実験場閉鎖に重要な役割を果たした科学者、公務員、芸術家、一般市民など、カザフスタンの人々の勇気と決意に賛意を送った。

「本日、核実験のすべての犠牲者に哀悼の意を示し、人生に悪影響を受けた人々に敬意を払いたい。核実験と核爆発の恐怖を繰り返すことのないようにできるかどうかは、彼らと来たる世代に掛かっている。」と、間もなく退任するマリア・フェルナンダ・エスピノーサ・ガルセス国連総会議長は語った。

Semipalatinsk Former Nuclear Weapon Test site/ Katsuhiro Asagiri
Semipalatinsk Former Nuclear Weapon Test site/ Katsuhiro Asagiri

ガルセス議長は開会挨拶の冒頭で、「1996年に国連総会がCTBTを採択したことは、軍縮に向けた道のりにおいて重要な瞬間であった。」と指摘するとともに、付属書IIの諸国に対して、「このきわめて重要な条約が発効するように」早期にCTBTを批准するよう訴えた。(原文へ) |アラビア語

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国連、インドの原子力供給国グループ入り支持を否定

【ニューヨークIDN=シャンタ・ロイ】

核兵器を保有するインド、パキスタン、イスラエルの3カ国は、核不拡散条約(NPT)の「核兵器国」として認知されていない。この核兵器国という「特権」は米国・英国・ロシア・フランス・中国だけに与えられているものであるが、この5カ国は同時に「原子力供給国グループ」(NSG)の加盟国でもある。

しかし、『エコノミック・タイムズ誌』(ニューデリー)は、「待ち望まれたインドのNSG加盟をアントニオ・グテーレスが支持」と題する記事で、「インドは民生用核事業に対して国連という大きな支援を得た。アントニオ・グテーレス事務総長が、ナレンドラ・モディ首相との会談でインドのNSG加盟支持を表明したのである。」と報じた。

国連のファルハン・ハク副報道官に、事務総長による支持の有無について尋ねると、「事実ではありません。その議題は会合で上がっていません。」と回答した。

しかし、インドのNSG加盟に関する報道は、核専門家の間に懸念を引き起こしている。

Jayantha Dhanapala
Jayantha Dhanapala

元スリランカ大使で元国連事務次官(軍縮担当)のジャヤンタ・ダナパラ氏はIDNの取材に対して、「インドは事実上の核保有国ではあるが、法律上の核兵器国ではない。」と語った。米国や英国、ロシア、フランス、中国のようなNPT加盟国の目からすれば、インドは「核兵器国」ではないのである。

「したがって、インドには、NPTの認める核兵器国が享受する権利が与えられない。仮に原子力供給国グループに入るなら、それは正当化されることになる。」とダナパラ氏は語った。

NPTは5つの「核兵器国」を認知しているだけである。イスラエルは核保有の事実そのものを認めていない。

「もちろん、NPTは署名当時の現状を反映したものだ。インドはこれに不満を持ち、『大国クラブ』に属するために核兵器国としての認知を得ようと多大なる努力をしてきた」とダナパラ氏は語った。

ブリティッシュ・コロンビア大学リュー国際問題研究所長で、軍縮・グローバル・人間の安全保障プログラムの代表を務めるM・V・ラマナ博士は、「インドのNSG加盟問題が国連事務総長との会談で話題に上がったといくらインドの首相が主張したとしても、2つの点が強調されねばならない。」と語った。

第一に、事務総長がこの問題で対処できることはない、という事実である。NSGは、核燃料・技術の貿易を規制する一種のカルテルであり、全会一致方式で運営されている。したがって、48の加盟国すべてが決定に合意しなくてはならない。

現実には、そうした意見の一致が得られる可能性はほとんどない。「従って、インド首相が国連事務総長の意向について何事かを語ったとすれば、それは単にこの問題への注目を集める手段であり、インドにCO2削減を迫る圧力を逸らすものでしかない。」とラマナ博士は語った。

第二に、NSGに加盟しても、インドの原子力開発に影響はない。「NSG加盟国が2008年に合意した例外措置によって、インドは既に原子炉やウランを輸入できるようになっている。」とラマナ博士は指摘した。

「原子力がインドの発電量のごく一部である僅か3%しか占めていない理由は、原子力がきわめて高価だからだ。」「実際、輸入された原子炉は国内で設計されたものよりもはるかに高価である。従って、輸入が増えれば電気はもっと高くなる。」とラマナ博士は主張した。

軍備管理協会(ACA、米ワシントン)によれば、1975年創設のNSGは加盟48カ国から成り、非核兵器国に対する輸出管理の調整を自発的に行っている。

NSGは、民生用核物質と核関連機器・技術の移転を規制している。

加盟国は以下の通り。アルゼンチン、オーストラリア、オーストリア、ベラルーシ、ベルギー、ブラジル、ブルガリア、カナダ、中国、クロアチア、キプロス、チェコ共和国、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイスランド、アイルランド、イタリア、日本、カザフスタン、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、ロシア、セルビア、スロバキア、スロベニア、南アフリカ、韓国、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ、ウクライナ、英国、米国。

NSGは、商業用・平和目的の核輸出が核兵器に使用されることの予防を目的としている。

ACAによると、核輸出が兵器開発に使用されないようにするために、NSG加盟国は信頼醸成的な国際措置や査察に従わない国々との核貿易を禁止することが期待されている。

「戦争を超える世界」の理事長であり、「核時代平和財団」の国連NGO代表であるアリス・スレイター氏は、「インドのNSG加盟を支持することは、すでに傷ついているNPTの意義を大きく損なうものだ。」と語った。

Alice Slater
Alice Slater

1970年に成立したNPTは、当時の核兵器国(米国・ロシア・英国・フランス・中国)に核軍縮に向けた誠実な努力を行うことを義務づけている。見返りに、非核兵器国は核兵器を取得しないことを約束しているが、インドやパキスタン、イスラエルは、その後核兵器を自ら製造して、この枠からは外れている。

NPTは、加盟している非核兵器国は、核兵器を取得しないとの約束を行う見返りに、原子力の平和利用を認められると規定している。

しかし、平和目的での核技術を共有するためにはNPTに加盟していなくてはならないとスレイター氏は説明する。彼女は、「宇宙への兵器と原子力の配備に反対するグローバルネットワーク」の理事、「アボリション2000」グローバル評議会委員、「核兵器禁止US」アドバイザーのひとりでもある。

軍民両用核技術の販売を規制するというNSGの本来の目的は、いわゆる「原子力の平和利用」という形で非核兵器国が核爆弾製造へのカギを手にする「不可侵の権利」を認めたNPTの致命的な欠陥を補おうとした、ただの「ザル法」以上のものではない。

NPT非加盟国の加入容認という、NSGが認めようとしている今回の新たな例外は、既に疑問符がつけられているNPTの意義に対する重大な一撃となる。「これまでのNPTは、核軍縮を実行するという核兵器国の約束を履行することができていない。」とスレイター氏は語った。

IAEAでNSG連絡官をかつて務めたことのあるタリク・ラウフ氏はIDNの取材に対して、「第一に、インドメディアにおけるこの報道は、ニューヨークの国連本部そのものによって否定されている。このインドメディアは、記事によって事態を動かそうとしたのではないか。こうしたやり方は珍しくない。私の見方では、過去にもインドメディアは意図的に誤った報道をしたことがある。あるいは、インドのNSG加盟に対する国際的支持に関して前進をもたらそうとしたか。インド外務省の直接・間接の支援がこの記事にあったかどうかは、わからない。」と語った。

第二に、ラウフ氏の意見によると、国連や国際原子力機関(IAEA)、あるいはその他の国際機関にも、NSGやMTCR、ワッセナー協定、オーストラリア・グループのような自発的組織に、ある国が加盟することに賛成だとも反対だともいう権限や義務はない。

上記の組織はそれぞれ、核兵器、ミサイル、通常兵器、化学・生物兵器の輸出規制を自主的に行うグループだが、これらは国連憲章の統制には服していないし、国連総会によって承認されたものでもない。「NSGに関しては、NPT再検討会議の成果文書や総会で承認されたものでもない。」とラウフ氏は語った。

「IAEAは情報通知(INFCIRC/254)という形でNSGガイドラインを公にしているが、これらの文書は単に情報提供のためのものであり、IAEA加盟国からの要請によって配付され、法的な根拠はない。」とラウフ氏は語った。ラウフ氏は、2015年NPT再検討会議軍縮委員会議長の元特別アドバイザーであり、IAEA検証・安全保障政策調整局長、IAEAのNSG連絡官も務めた経験がある。

Tariq Rauf
Tariq Rauf

第三に、「参加政府」(PG)と自らを呼ぶNSG加盟国は、ブッシュ政権からの強い圧力と嫌がらせによって、自らの指針と政策に違反した。インドにNSGガイドラインからの「逸脱」を認め、核関連品目をインドと取引することを容認したのである。

インドに課された条件は、軍民の核施設を分離し、民間施設をIAEAの保証措置下に置くこと、IAEAの追加議定書を履行すること、輸出管理に関する国内法を制定することであった。

「インドはIAEAに既存及び建設中の22の民間核施設のリストを提出し、(包括的ではなく)項目ごとの保障措置下に置いた。しかし、インドが建設した、プルトニウムが製造可能なすべての重水炉(CANDU炉のコピー)や、プルトニウム再処理施設はここから外された。また、外国からの原子力協力が得られるという条件を保障措置受け入れの条件にした。そうした協力がなければ、保障措置はないということである。」

ラウフ氏はまた、「NSGがインドに与えた『免除」』は、1995年と2000年にNPTが全会一致でなした合意に反するものだ。」と指摘した。これは、NPT上の非核兵器国との原子力協力にあたっては、フルスコープの(=包括的な)保障措置を条件としなくてはならない、とするものだった。

第四に、2008年のNSGの免除によって、インドが核保有国として認知されたり正当化されたわけではない。単に核関連品目の貿易を容認したに過ぎない。しかしインドは、そうした解釈を施している。

「第五に、インド、続いてパキスタンが、NSGへの加盟を正式に申請しているが、NSGの多くの加盟国がインドはよくてもパキスタンは受け入れられないという態度を取っている。」と、ラウフ氏は指摘した。

ラウフ氏は、中国とトルコが、印パ両国を同時に加盟させるか、さもなくば両者とも認めないとして、インドに関するNSGの全会一致の合意を阻んでいる、と語った。もしインドが(先に)加盟すれば、パキスタンが加盟する全会一致の決定を阻むこともできるからだ。

NSGはこの問題に対処し続けている。NSGは、新加盟に関して「基準によるアプローチ」を追求しているが、一部の加盟国は、ある国がそうした基準を満たしていたとしても、政治的理由からその国の加盟を阻みたいと考え、同アプローチには反対している。

「NSG加盟国が、自らは包括的核実験禁止条約(CTBT)に署名しながら(中国やアメリカの例にみられるように、すべてが批准しているわけではないが)、CTBT加盟をNSG加入の要件にすることに否定的なのは、きわめて残念だ」とラウフ氏は主張した。(原文へ

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This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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移民らが、リビアからルワンダに移送される

【IDN/GINニューヨーク=リサ・ビベス】

欧州諸国は、アフリカからの移民が欧州側に上陸しないように「壁(海の壁)」を構築している。欧州連合からの資金とアフリカ諸国の協力のもと、難民らは地中海から遥か離れた難民収容センターに移送され、そこで難民申請をすることになっている。ちょうど、ルワンダが破壊的なリビアの内戦から逃れようとする約500人の難民を一時的に受入れる契約に署名したところだ。

しかし、ルワンダのポール・カガメ大統領は単に寛容さから難民の受入れに合意したわけではない。この措置に対する外交的な見返りを欧州諸国に求める可能性が高い。つまり、今回の措置でもって、移民・難民問題に対してルワンダ政府が示したリーダーシップを欧州諸国が強調する一方で、最近同国で起った人権侵害については黙認するという要求だ。

またこの措置は移民や難民に代償を強いる可能性がある。ルワンダは既に148,000人の難民を受入れており、彼らには働く権利を含む社会的・経済的権利が保障されてはいるが、書面上の権利が必ずしも実際に守られているわけではない。ルワンダ在住の難民は、しばしば公共サービスや就労機会を得るのに四苦八苦しているのが現状である。さらにルワンダ政府は、難民キャンプにおける差別や食料不足について抗議した難民を暴力的に抑圧してきた。

Map of Ruwanda
Map of Ruwanda

ルワンダはまた、深刻な人権侵害の問題を抱えている。昨年、難民に対する月当たりの食糧支援額が8.9ドルから6.7ドルに引き下げられたことから、コンゴ民主共和国からの難民が国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の外で抗議活動を行った。これに対して警察が難民に発砲する事態に発展したのである。その結果9人が死亡。この発砲事件から1年が経過するが、ルワンダの警察当局は、この死者を出した発砲事件に関する調査報告書を公表していない。また、この過剰な武力行使を行った責任者の特定もしていない。

「非武装の抗議参加者に対して発砲するなど決して正当化できません。その発砲事件で実際に何人が犠牲になったのかを認めようとせず、責任者に責任を問わないウガンダ政府の姿勢は、あたかも犠牲者の墓を踏みつけているような行為です。」とヒューマン・ライツ・ウォッチの中央アフリカ事務所長のルイス・ムドゲ氏は語った。

一方、必死の難民を受入れるルワンダ政府の新たな役割によって、リビアから既に3000人近くの難民を受入れていると報じられているニジェールの難民収容施設にかかる負担が緩和されることが期待されている。

ニジェールの難民キャンプに避難してきた人々はこの施設を一時的な受け入れ場所として、国連の移住機関の支援を得て故郷に帰還するか、欧州に移住することとなっている。しかし欧州連合による避難民の受入れが遅々として進まないため、この事業はこれまでに何度も問題にぶつかってきた。この実態は、この難民対策における根本的な欠陥を浮き彫りにしている。つまり、地中海から遠く離れた国に設けた難民収容施設の規模があまりにも小さく、難民の再定住に関する受入国による誓約もあまりにも少ないという欠陥だ。

この間、数万人におよぶ移住者や難民申請者が、リビア各地に点在する民兵組織が支配する収容所で身動きがとれないままでいる。そしてこれらの収容所では移住者らが奴隷や売春婦として売られたり、横になって寝る空間が確保できないほどすし詰め状態で拘置されている。(原文へ

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