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|視点|気候変動:人間中心の取り組み(池田大作創価学会インタナショナル会長)

【東京IDN=池田大作

「最も多くの人が共有するものは、最も注意が払われにくい」とは、古代ギリシャの哲学者・アリストテレスの箴言である。

人間が陥りやすい心理を剔抉した言葉だが、現代においてその意識転換が特に急務となっているのは、地球温暖化の防止に向けた取り組みといえよう。

4年前、その国際的な枠組みとなる「パリ協定」が合意され、対策の強化が目指されるようになったものの、国連のアントニオ・グテーレス事務総長が人類の「生存の脅威」と警鐘を鳴らすように、“気候変動が我々の取り組みを上回るスピードで進んでいる”という状況が生じているからだ。

実際、今年に入ってからも、ヨーロッパ各国やインドを熱波が襲ったほか、シベリアやアラスカなどの北極圏が記録的な高温に見舞われた。世界気象機関(WMO)は、各地で起こる異常気象の原因は一様ではないが、長期的な地球温暖化の傾向と関係している面は否めず、極端な異常気象は今後も続くとの予測を示している。

こうした状況を踏まえ、「気候危機」や「気候非常事態」との言葉も叫ばれる中、9月23日にニューヨークの国連本部で気候行動サミットが開催される。温室効果ガスの削減といった温暖化の“原因”をめぐる対策とともに、異常気象がもたらす被害という温暖化に伴う“影響”をめぐる対応について、各国が連帯した行動を強めていくことができるのかどうか――。その正念場を迎えているのである。

南極とグリーンランドの巨大な氷床の融解が引き起こす海面上昇や、熱波と集中豪雨などの異常気象による被害は、さまざまな国の経済や産業に打撃を与えるだけではない。今や気候変動は、強制的な移動を余儀なくされる人々を増加させる要因ともなっている。

Toda Peace Institute
Toda Peace Institute

私が創立した戸田記念国際平和研究所では、近年、この問題に焦点を当てた「気候変動と紛争」と題する研究プロジェクトを推進してきた。その研究を通して浮き彫りになったのは、太平洋の島嶼国の人々が直面している状況の深刻さである。

この地域では、海面上昇などの影響を特に強く受ける中で、他の場所への移住を迫られる人々が少なくない。しかし、その移住がどのような重い意味を持つのかという現実は、しばしば見過ごされてきた。

多くの島では、生まれ育った土地を“母”のような存在として捉える伝統があり、深い精神的つながりをもった土地からの移動を迫られることは、自分自身の根源的なアイデンティティーを失うことに等しい。そしてまた、生まれ育った土地には、新しい場所への移住による「物理的な安全環境」の確保だけでは決して得ることのできない、「存在論的な安心感」ともいうべきものがあるのではないか――。

研究プロジェクトでは、こうした人間と土地との関係性に対する眼差しを、気候変動の対策を考える上での重要な要素の一つとして組み込む必要があると提起しているのだ。

この眼差しの問題を考えるにつけ、私が思い起こすのは仏教で説かれる「沙羅の四見」の話である。同じ一つの場所を見ても、見る人の心の状態によって風景の映り方が違ってくることを示唆した譬えだ。

例えば、同じ森林を見ていても、自然の美しさに着目する人もいれば、経済的な生産性の観点から価値を判断しようとする人もいる。

問題なのは、その映り方の違いによって、自分の意識にないことが自分の世界から欠落してしまうことだ。その結果、ある人々にとって“かけがえのない重み”を持つものが奪われる危機が生じていても、多くの人が気づくことなく事態が悪化してしまう恐れがある。

同じように、気候変動の対策を考える際にも、経済的な影響のような数値化されやすいデータだけに目を向けるのではなく、温暖化に伴う被害で苦しむ各地の人々をはじめ、ジェンダーなどの差別構造によってもともと弱い立場にある人々の思いを、十分に汲み取った対策を講じていく必要があるといえよう。

その意味で、気候行動サミットに出席する各国の首脳らに求められるのは、地球温暖化という課題を通して“世界とどう向き合うのか”を共に見つめ直し、行動の連帯を強固にすることではないだろうか。

「パリ協定」の積極的な推進のために、発電や移動手段、食料の生産と流通をはじめ、あらゆる分野での温室効果ガスの削減とともに、植林などの温室効果ガスの吸収量を高めるための方策に関し、英知を結集しなければならない。

国連では、この開催に先駆ける形で9月21日に、世界の青年たちの代表が集っての「ユース気候サミット」も行われる。

地球温暖化に歯止めをかけることは容易ではないが、青年たちによるイニシアチブを積極的に受け止めて、そこから希望のシナリオを紡ぎ出し、より多くの人々の行動を喚起していけば、持続可能な地球社会を築くための道は必ず開くことができるはずだ。その挑戦を成し遂げることに、21世紀の人類の命運がかかっていると思えてならない。(原文へ

https://events.daisakuikeda.org/2019/0919-idn-op-ed-news/

INPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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核兵器のない世界はあらゆる人々にとって共通の問題―カリプベク・クユコフ氏から学べること(イリヤ・クルシェンコCTBTO Youthメンバー)

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【モスクワIDN=イリヤ・クルシェンコ】

今日私たちの世代は、冷戦下で平和の脆さを痛感して育った親の世代ほど、核兵器に対して恐怖心を抱いていない。親の世代が抱いていた懸念を、私たちの世代は共有できていないようだ。恐らく私たちは、歯止めのきかなくなった軍拡競争の結果を目の当たりにするか、その被害を蒙った人々に直接会ってはじめて、私たちが暮らすこの時代に前世紀の恐ろしい遺物が存在する余地などないということを理解し始めるのだろう。

私の場合、カリプベク・クユコフ氏に出会ったのを契機に、核兵器の廃絶こそが自分自身にとっての大義となった。カザフ人のクユコフ氏は、ソ連の核実験場近くの村で暮らしていた母親の胎内で被爆し、その影響で深刻な障害を持って誕生した。彼の物語は、核実験がもたらず悲惨な人道被害を伝えている。これは極めて個人的なケースだが、核兵器の問題が全ての人々の関心事であることを如実に示している。私たちがどのような世界に暮らしたいのか、それを決めるのは私達次第だ。そして今日、核軍縮を実現するという大義に市民が積極的に参加することが、何にもまして求められている。

Karipbek Kuyukov/ Atom Project
Karipbek Kuyukov/ Atom Project

クユコフ氏は1968年にポリゴンの名称でも知られるセミパラチンスク核実験場近くの村で誕生した。国連ニュースサービスによるインタビュー取材で、クユコフ氏が最初に話したのが、「母が(私を出産した)ショックと恐怖を克服して私の様子を見に来たのは3日目のことでした。」という部分だ。両手がない状態で生まれたクユコフ氏は、セミパラチンスク核実験場(大きさは日本の四国に相当する:INPS)周辺の広大な地域で放射線に晒され、遺伝子レベルで引き起こされた多くの健康被害に苦しんできたひとりだ。

クユコフ氏の両親は核実験場からわずか48マイルしか離れていない村に生活していた。彼の幼少時、クユコフ氏の母親は、丘を登った際に周り一帯を閃光が埋め尽くしたかと思うと瞬く間に漆黒の闇に包まれた経験を語って聞かせたという。

ベルリンの壁が崩壊すると、カザフスタンでもソ連の核実験場の閉鎖を要求する抗議活動が盛んになり、クユコフ氏はこの運動に身を投じた。カザフ国民は、カザフスタンの国土から核兵器を一掃するというヌルスルタン・ナザルバエフ大統領の判断を強くし支持した。クユコフ氏は、自身の使命を、「自分が核実験の最後の犠牲者になる」ことだと言う。彼はまた、自身の作品のなかで世界の美しさを表現し続ける芸術家でもある。クユコフ氏の絵画作品の1つは、彼が理念と価値観を強く支持する米国のバラク・オバマ前大統領に寄贈された。

Atom Project
Atom Project

ソ連が支配していた時代、誰もクユコフ氏のような症例に関するデータにアクセスすることはできなかった。全てが厳格に秘密とされ、医師達は、核実験場の周りで起こっていた健康異常を訴える患者を診断することは、固く禁じられていた。それどころか当時は、医師たちが深刻な問題を抱えて生まれた子供に、薬物注射を投与して安楽死を勧めることが一般的だったという。クユコフ氏の父は、その時息子の顔を覗き込むと自分を見つめる彼の視線を感じ、どうしも安楽死を選択できず、母親とともに彼を引き取って病院から連れ帰ったという。

Ilya Kursenko
Ilya Kursenko

クユコフ氏はこうした経験を経て、持ち前の意志の強さと行動力で核軍縮に貢献する原動力となっていった。今日私たちは、新たな軍事技術の登場と無関心が広がる中で、これまで構築してきた協調的な安全保障環境が崩壊しかねない帰路に立っている。世界が平和的に共存していくためのアジェンダを前進させていくためには、クユコフ氏のような市民社会の活動家の活躍が極めて重要になっていく。もしこの方向にあらゆる人々が参加すれば、私たち青年の未来を「明るい未来」から「明るい現実」へと変貌させることが可能だ。つまり、核兵器のない世界は、あらゆる人々にとって共通の問題なのだ。(原文へ

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世界の貧困層が地球温暖化の影響に最も苦しむことになる

【ジュネーブIDN=ジャムシェド・バルーア】

国際労働機関(ILO)が発表した報告書よると、地球温暖化による熱ストレス(=身体が生理的障害なしに耐え得る暑熱の上限)の増加がもたらす生産性の低下は、2030年までに世界全体で、フルタイム労働換算で8000万人分の雇用に相当する規模になると予想されている。これは世界全体で失われる労働時間に換算すると世界合計の2.2%に上り、経済損失の規模は2兆4000億ドルに達すると見られている。貧しい国々や貧困層の人々が最も顕著にこの影響を受けることになるだろう。

ILO報告書『温暖化する地球で働く:労働生産性とディーセント・ワークに対する熱ストレスの影響) 』は、気候、生理学、雇用に関するデータをもとに、各国、地域、世界全体の現在及び予想される生産性低下を推定している。

報告書によると、熱ストレスとは、一般に多湿時で35℃を上回ると生理的な障害が発生し、「労働時の過度の暑熱は労働衛生上の危害に相当し、労働者の身体機能や身体能力、労働能力、したがって生産性が制限されることになる。極端な場合には、命に関わる熱中症に至る可能性がある。」とILOは警告した。

Working on a warmer planet: The effect of heat stress on productivity and decent work/ ILO
Working on a warmer planet: The effect of heat stress on productivity and decent work/ ILO

本報告書の主要な著者の一人であるカトリーヌ・サゲILO調査研究局勤労所得・公平ユニット長は、「熱ストレスの労働生産性に対する影響」について、「気候変動により深刻な結果を招くもの」と説明し、「低所得国と高所得間の不平等が拡大し、最も脆弱な人々の労働条件が悪化する可能性」を指摘した。

世界的に最も影響が大きいと見られる産業は、世界全体で9億4000万人が従事する農業で、2030年までに熱ストレスによる世界の労働時間損失の6割が農業で発生すると見られている。

次に大きな影響を受けるのは建設業で、世界の労働時間損失の推定19%がこの産業で発生すると見られている。このほかに特にリスクが高いと見られる産業としては、環境関連の商品やサービス、廃棄物回収、緊急補修工事、運輸、旅行観光、スポーツ、ある種の産業労働を挙げることができる。

「影響は地域によって異なり、労働時間損失が最も高いと見られる地域は南アジアと西アフリカで、それぞれ2030年までに5%近い労働時間が失われると見られている。これは、フルタイム労働換算では約4300万人分と900万人分の雇用に当たる。」とILO報告書は指摘している。

経済損失が最も大きいのは、とりわけ効果的な暑熱対策を講じるための資金・資源が少ない下位中所得国や低所得国といった最貧困地帯の人々であると見られている。このように熱ストレスによる経済損失は、既に存在する経済的に不利な立場(高い勤労貧困者層、非正規かつ脆弱な雇用状況、自給自足農業、社会保障の欠如)を一層強めるように作用すると見られている。

報告書はさらに、「自給自足農業の労働者の大半を構成する女性、建設産業の圧倒的多数を占める男性が受ける影響が特に大きいと見られている。熱ストレスの社会的影響の一つとして、農山漁村地帯からより良い展望を求めた移住が増加する可能性がある。」と指摘している。

気候変動の提示する課題は、今年6月のILO総会で採択された「仕事の未来に向けたILO創立100周年記念宣言 」が焦点を当てる分野の一つであり、今後のILOの活動及び調査研究を形作るテーマの一つとなる。この報告書はまた、「熱ストレスが及ぼす経済、社会、健康に対する影響は、貧困問題への取り組みや人間開発の促進を困難にし、従って、国連の持続可能な開発目標(SDGs)のほとんどの達成を困難にするだろう。」と指摘するなど、国連の「持続可能な開発のための2030アジェンダ 」にも幅広い影響が及ぼすと述べている。

SDGs Goal No. 8
SDGs Goal No. 8

「熱ストレスによる膨大な経済的コストに加え、低所得国と高所得間の不平等の拡大、最も脆弱な人々の労働条件の悪化、移動を強いられる人々が出てくる可能性があります。この新しい現実に適応するには、最も脆弱な人々の保護に焦点を当てた、政府、雇用者、労働者による適切な措置が緊急に求められています」とサゲユニット長は語った。

報告書は、適切なインフラ構造と暑熱事象用早期警報システムの改善、労働安全衛生分野の国際労働基準などといった暑熱関連危害に取り組む政策の設計を手助けする基準の実施改善など、熱ストレスのリスクに対処し、労働者を保護する国内政策の設計・財源確保・実行のための努力の強化を求めている。

労働者が高温に対処し、仕事を続けられるよう、リスクを評価し、職場における適切な行動を講じるのに最も適した立場にあるのは雇用主と労働者である。雇用主は飲料水や熱ストレスの認識・管理に関する訓練を提供することができ、屋内外の労働方法に関する合意形成や、労働時間や服装規定、装備の適応、新技術や日陰、休憩の活用において社会対話は決定的に重要な役割を果たすことができる。(原文へ

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【東京IDN=石田尊昭

尾崎行雄は、1890年の第1回総選挙から第25回まで連続当選し、衆議院議員を60年以上にわたり務めました。この当選回数と在職期間は、日本の議会史上、まだ誰にも破られていない偉大な記録です。
しかし、それは「尾崎が打ち立てた」というより、「有権者が打ち立てた」記録です。

国の存続・繁栄と国民の幸福のために立憲政治を命懸けで実現させようとした政治家・尾崎の生き方は、未来に大いに語り継ぐべきものだと思います。と同時に、地元に直接的な利益をもたらさなかった尾崎を、「国のために」という思いで国会に送り続けた当時の有権者の姿も忘れてはいけません。

尾崎行雄は、時の政府・権力と厳しく対峙しますが、同時に有権者に向けても厳しい要求を突きつけます。真の立憲政治・民主政治の実現のためには、有権者こそがしっかりしなければならないからです。

前回の参議院議員通常選挙が行われた2016年、私は『18歳からの投票心得10カ条』という本を書きました。この本は、政治や選挙と初めて向き合う若い人たちだけでなく、これまでの政治や選挙に慣れてしまった大人の皆さんにも、改めて民主主義の本質を見つめ直してほしいという思いで書いたものです。「投票率を高める」ことよりも「投票(一票)の質を高める」ことを目的に書きました。

この本には、尾崎行雄が説き続けた政党・議会・選挙のあり方、そして、尾崎が掲げた「有権者の投票心得(10項目)」を載せています。その中から、以下二つ、ご紹介します。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(第1条)
何よりもまず、自分はいかなる政治を希望するかという自分の意思を、はっきり決めてかかることが大切だ。選挙は、国民の意思を国政に反映させるために行われる。つまり、反映する本体がしっかりしていなければならない。有権者自身に政治的意思――どのような政治、どのような国・社会を実現したいと考えるのか――がなければ、いくら投票しても意味がない。

Mr. Takaaki Ishida
Mr. Takaaki Ishida

(第7条)
演説会場その他あらゆる機会をとらえて、有権者は各政党または候補者に向かって、具体的な政策を明示するように要求しなければならない。そして政党本部で発表した政策と候補者の言質(げんち)を箇条書きにして、台所の壁にでも貼っておき、実行された公約の上には○をつけ、実行されなかった公約の上には×をつけるようにすること。公約を裏切った政党や議員に対しては、次の選挙の時に絶対に投票しないことを覚悟すれば、政党も議員も、完全に有権者によってリードされるようになる。

『18歳からの投票心得10カ条』より
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
この二つは、いずれも「当たり前」のことで、「心得」などと大袈裟に言うほどのものではない、と思われるかもしれません。しかし、この二つを私たちは確実に実行できているでしょうか。ついつい面倒臭くなって「思考停止」になることはないでしょうか。

選挙になると、政党も候補者も様々な政策を掲げます。

聞き心地は良いが実現性に乏しいもの、分かりやすいが具体性に欠けるもの、今の自分にとっては「お得」でも社会全体で長期的に見た場合は負担が大きすぎるものなどなど。

INPS Japan

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尾崎咢堂の精神を今日に伝える日本のNGO

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|カザフスタン|教育改革を成功させるには新卒の教師が必要

【タラスIDN=ミレナ・メルニコヴァ】

Photo: Visitors scanning lists of vacancies. Credit: Milena Melnikova | INPS-IDN.

中央アジアのカザフスタンでは、2050年までに世界の先進30か国入りすべく様々な改革が実施されている。なかでも大幅な予算拡充を背景に進められている教育改革に焦点を当てた記事。同国ではカザフ語のラテン文字(ABC)表記導入をはじめ、旧来のロシア式教育に代わってアメリカ式教育の導入が進んでいる。IDNが中央アジア大学と進めているメディアプロジェクト。(原文へ

INPS Japan

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カザフスタンの村祭りを取材

「核実験に反対する国際デー」記念行事を取材

Filmed by Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director, President of INPS Japan

CTBTO Executive Secretary Lassina Zerbo, IAEA Director General Yukiya Amano’s brother Mari Amano and the former Foreign Minister of Italy, member of the Prize Award Committee Franco Frattini highlight the importance of the Nazarbayev Prize for Nuclear-Free-World and Global Security instituted by Kazakhstan’s First President Nursultan Nazarbayev.

核軍縮・不拡散で世界をリードする存在だと広く認められているカザフスタンが、今年の「核実験に反対する国際デー」に際して、「核兵器なき世界」の実現に尽力してきた2人の人物を表彰した。中央アジアに位置するカザフスタンは、1991年に崩壊したソ連の構成国として、かつては世界第4位の核戦力を保有していた。10回目の「核実験に反対する国際デー」を国連が公式に記念した今年の8月29日、カザフスタンの初代大統領ヌルスルタン・ナザルバエフ氏が、包括的核実験禁止条約機構(CTBTO)準備委員会のラッシーナ・ゼルボ事務局長と、7月18日に逝去した国際原子力機関(IAEA)の故・天野之弥事務局長に対して「ナザルバエフ賞」を首都ヌルスルタン市で贈呈した。受賞のために、故天野事務局長の妻の幸加氏、弟で元ジュネーブ軍縮会議日本政府代表部特命全権大使の天野万利氏が親族としてカザフスタンに到着した。

INPS Japanの浅霧勝浩理事長・マルチメディアディレクターは、2日にわたった、国際プレスチームとの旧セミパラチンスク核実験場跡、セメイを取材訪問した後、首都ヌルスルタンで授与式と記者会見を取材した。上記の映像は、受賞者の記者会見の模様。

Photo: The Prize ceremony took place in the Nazarbayev Center in Nur-Sultan.The collage includes photos from Katsuhiro Asagiri and Yukie Asagiri | INPS Japan.
Photo: The Prize ceremony took place in the Nazarbayev Center in Nur-Sultan.The collage includes photos from Katsuhiro Asagiri and Yukie Asagiri | INPS Japan.

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米ロの行動が冷戦を引きおこすとの懸念が強まる

【ニューヨークIDN=サントー・D・バネルジー】

核問題の専門家や平和活動家が、中距離核戦力(INF)全廃条約の崩壊に関して強い懸念を表明する中、互いに相手が約束に違反しているとして非難の応酬を続ける米ロ両国は、あたかも冷戦時代を想起させる行動をおこしている。

INF条約は、米国のロナルド・レーガン大統領とソ連の指導者ミハイル・ゴルバチョフの間で1987年に調印された。射程500~5500キロメートルの地上発射型の弾頭・巡航両ミサイルを、核兵器と通常兵器の双方に関して廃絶し、恒久的に保有しないことを約したものである。

ダリル・G・キンボール氏が指摘するように、同条約は、二大核大国が初めて核兵器の削減に踏み切り、特定のカテゴリーの兵器を全廃し、検証のための広範な現地査察を容認することに合意したものである。この条約の結果として、米ソ両国は、短・中距離のミサイルを、条約の履行期限である1991年6月1日までに計2692発、廃棄した。

ロシアの主張:「アメリカは軍拡競争の準備を進めている」

8月22日に安保理を舞台に交わされた激しい議論で、ロシアのドミトリ・A・ポリャンスキー国連次席大使は、「ロシア・米国両国は、一時期はINF条約を履行していたが、この条約は米国にとって『望ましくないもの』になってしまった。」と指摘したうえで、「米国はルーマニアにミサイルを配備し、中距離ミサイルがこの地域で使用可能なものである事実を明確にした。そして今や、同様のシステムの開発・配備に関する制約はなくなり、軍縮の取り決めは脇に押しやられてしまった。」と語った。

SDGs Goal No. 16
SDGs Goal No. 16

ポリャンスキー次席大使はまた、「米政権の中心人物らが、ロシア・米国間の新戦略兵器削減条約(新START)を現在の形では履行するつもりがないことを明確にしてきた。」と指摘したうえで、「米国は少しずつ、武力で威嚇しながら、かつての時代に回帰しつつある。我々は今、軍拡競争の寸前にある。もしドナルド・トランプ(米大統領)を信じるなら、米国は軍拡競争に突入する準備ができているということだ。」と語った。

ポリャンスキー次席大使はまた、「ロシアの軍事予算は、米国の7000億ドルや北大西洋条約機構(NATO)の1兆ドルよりも遥かに少ない。さらに、米国では兵器開発の予算が軍事予算に含まれているにもかかわらず、ロシアが非難されている。」「ロシアは地上発射型巡航ミサイル『9M729』に対する米国の非難について、その内容を明らかにするよう再三要請した無視された。またこのミサイルを議題とした協議の開催を米国に打診したが、米国からの代表は欠席した。」と語った。

米国の主張:「ロシアには欧州の標的を撃破する能力がある」

米国のジョナサン・コーエン国連大使代行は、「ロシアは条約に違反する決定を下して、新型ミサイルを配備した部隊を複数編成している。」と主張した。そして、「米国は中距離核戦略全廃条約の履行に復帰するようロシアに促したが、結局条約からの脱退を決めた。」と語った。

コーエン大使代行は、現在の状況について、「中露は平然と軍備増強を続けながら、米国が自制心を働かせる世界を望んでいるようだ。」と説明した。また、「米国とNATOの同盟国は、ロシアは欧州の標的を撃破する能力を見せつける行動をとり、現在は失効してしまったINF条約に違反していたと認識している。中国もまた同様のシステムを配備している。」とコーエン大使代行は語った。

コーエン大使代行は、米国の活動に関して、「現在のところ地上発射型の[中距離]ミサイルは保有していない。」と強調したうえで、「中国は条約当事国であれば禁止されていたミサイル約2000発を保有している。」と語った。また、「米国のミサイル発射システムが条約義務を遵守しているのに対して、ロシア・中国は真逆の方向に進みつつある。新型核兵器の開発、ミサイルの増強、戦力の近代化、水中ドローンなどの新兵器の追加取得がなされている。」と語った。

コーエン大使代行は、ロシアで8月9日に核関連の爆発を引き起こした原因に言及しつつ、ロシア・中国が引き起こした他の懸念すべき出来事にも触れた。米国は、INF条約の義務を超える効果的な軍備管理に対して前向きであると同氏は述べた。

中国:「米国は条約脱退で単独行動を取ろうとしている」

UN Secretariat Building/ Katsuhiro Asagiri
UN Secretariat Building/ Katsuhiro Asagiri

中国の張軍国連大使は、「ロシアと米国は、条約遵守を巡る意見の相違について対話を通じて適切に処理すべきだった。しかし米国が条約から脱退したことで、条約の範囲を超えた負の影響が及ぶことになるだろう。中国を口実とする条約の放棄は受け入れられず、米側のむやみな非難も認められない。」と強調した。

「突出した不安定要因により国際安全保障を脅かされており、多国間主義こそがこうした難題に対処するためのカギを握る。あらゆる国々が、全人類の持続可能な共通の未来構築に向けた努力を行い、他国の安全保障を損なうような行動を慎むべきだ。」と張大使は語った

さらに張大使は、「米国の条約脱退は、条約を破壊し、ミサイル配備などの単独行動を取ることを意図したものだ。中国は関連条約を遵守している。最大の核戦力を保有するすべての国々は、自らの軍縮義務を緊急に果たすべきである。」と指摘したうえで、ロシアと米国に対して、「対話に復帰し、戦力を削減し、現在の新START条約の更新も含めて、軍縮の目標に向かって前進する条件を作り出すべきだ。」と訴えた。さらに、「中国自身は専守防衛的政策を追求しており、多国間の軍備管理に加わり、いかなる軍拡競争にも反対している。」と語った。

ポーランド:ロシアに単独の責任がある

ポーランドのジョアンナ・ロネッカ国連大使(8月の安保理議長)は、「軍備管理と軍縮の約束は検証され、すべての当事国が信義をもって守らねばならない。」と語った。また、INF条約の下で約3000発のミサイルが撤去され、検証可能な形で廃棄されたことを指摘し、米国が条約を維持しなかったことに遺憾の意を示した。

ロネッカ大使は、「欧州の安全保障枠組みの重要な要素が喪失したことは、国際安全保障にとってさらなる試練となるだろう。」と指摘したうえで、INFの失効は一義的にロシア側に責任があり、効果的かつ検証可能で透明な形で条約を履行する措置をとる意思をロシアが示さなかったことに遺憾の意を表明した。

ポーランドは他の米同盟国と同じく米国のINF脱退の決定を支持しており、ロネッカ大使は、「(米国の決定は)ロシアの行動に対する合理的かつ理解可能な反応だ。」と語った。

南アフリカ共和国(南ア):「米国とロシアは新STARTの協議を再開すべき」

以前から一部の核保有国が核不拡散条約(NPT)に明白に違反する形で、核戦力や運搬手段の近代化を主張していることに懸念の声を上げていた南アのジェリー・マシューズ・マトジラ国連大使は、「(INF条約のような)確立されてきた軍備管理枠組みが破棄され、欧州だけではなく世界全体を核戦争の危険に晒していることは、きわめて遺憾だ。」と語った。

マトジラ大使は、米ロ両国に新STARTが失効する2021年を前に同条約の延長に向けた協議を再開するよう求めた。また、南アが核兵器を開発しながら自発的にそれを廃棄した唯一の国である事実を指摘した。

マトジラ大使は、国連加盟国に対して、2017年に採択された核兵器禁止条約を署名・批准するよう呼びかけ、核軍縮と核不拡散は相互に補強的なプロセスであることを強調した。そして、核不拡散ばかりを選択的に強調しながら、核軍縮に関しては何の努力もなされないことで、核不拡散体制は弱体化していると警告した。

国連軍縮問題上級代表:INF条約の失効で重大な制約が外された

「国際の平和と安全への脅威:ミサイル問題」と題して安保理に対してブリーフィングを行った中満泉国連軍縮問題上級代表は、「INF条約が最近失効したことで、不安定要素となるカテゴリーのミサイルの開発・配備に対する数少ない制約の1つが除去されることになった。」と遺憾の意を述べた。

Izumi Nakamitsu/ photo by Katsuhiro Asagiri
Izumi Nakamitsu/ photo by Katsuhiro Asagiri

中満氏は、「今日、ロシアと米国だけが、両国が保有する特定のミサイルの数に法的拘束力のある制約を課している国であっただけに、INF条約の失効により、ミサイルの開発や獲得、拡散の無制限な競争が引き起こされてはならない。」と強調した。

中満氏は、国連事務総長が全ての加盟国に対して国際的な軍備管理への共通の新たな道に関する合意を緊急に追求すべきと訴えたことに呼応し、「既存の多国間協定に未加盟の国々も含めて、ますます多くの国々が弾道ミサイル能力を獲得し開発するようになってきている。」と語った。

実際、「ミサイル技術管理レジーム」が定義するところの「核能力」の基準を超える弾道ミサイル能力を持つ国は、20カ国を超えている。核保有国は、顕著なミサイル能力やミサイル防衛能力を積極的に追求しており、国際の平和と安全に不明瞭かつ潜在的にマイナスの影響を与えている。」と中満氏は主張した。

「超音速で運用できるミサイル技術を利用した兵器システムの開発は安全をさらに損ない、不安定な軍拡競争を招きかねない。」と中満氏は警告した。(原文へ) |ドイツ語

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世界政治フォーラムを取材

Kazakh First President’s Nazarbayev Award, A Field Trip to Former Nuclear Test Site

Kazakhstan, widely acknowledged as a leader in nuclear disarmament and non-proliferation, has availed of this year’s International Day against Nuclear Tests to honour two eminent advocates of a world free of nuclear weapons.

This year when the UN officially commemorates the Tenth Anniversary of the Day, August 29, Kazakhstan’s First President Nursultan Nazarbayev presented to the Comprehensive Nuclear-Test-Ban Treaty Organization (CTBTO) Executive Secretary Lassina Zerbo and the relatives of late International Atomic Energy Agency (IAEA) Director General Yukiya Amano, who passed away on July 18, 2019, the Nazarbayev Prize for a Nuclear-Free-World and Global Security in Nur-Sultan.

Prior to the award ceremony, IDN-INPS Multimedia Director Katsuhiro Asagiri joined journalists from UN, Japan, Latvia, Italy, Portugal, Israel, Mexico, and U.S.A. a two-day press trip to Semey city and Kurchatova town in East Kazakhstan Region, once the center of operations for the adjoining Semipalatinsk Nuclear Test Site.

Below IDN-INPS print and video coverage:

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Press Conference on Nazarbayev Prize for Nuclear Weapon Free World and Global Security.

Press trip to Semey city and Kurchatova town in East Kazakhstan Region

 [INPS-IDN – August | September 2019]

インドで持続的開発を阻むもの

【バンガロールIDN=スジャ・ラマチャンドラン】

インドでは発育不全の子供を減らす取り組みを一層強化する必要がある。それは、心身両面で子供たちの発達を促進し学習能力を高め人生の可能性を広げるのみならず、同国の「国家栄養ミッション」が設定した2022年という目標期限を満たし、国際社会が2030年までに持続可能な開発目標を達成できるようにするためでもある。

インドの国家家族保健サービス3、4(NFHS-3、4)の統計によると、5歳以下の子供の中で発育不全の子供が占める割合は、2006年の48%から2016年には38%まで減少している。この10年間の減少幅は大きいが、1年毎の減少は僅か1%程度にとどまっている。

これは新興国の中で最も遅いペースで、このままだと2022年には依然として31.4%のインドの子供が発育不全の状態におかれていることになる。国連食糧農業計画がインドの統計・事業実施省と協力して作成した「インド食料・栄養安全保障分析2019年版」によると、「2022年までに発育不良の子供の割合を25%以内に抑える」とする国家栄養ミッションの目標を達成するには、年率2%のペースで減少させる必要がある。

インドの女性・子供発達省の担当官は、「発育不良(年齢のわりに身長が伸びない状態)は慢性的な栄養不良に起因する問題で、インドは世界で最も多くの発育不良児を抱えています(4660万人)。従って、この問題への対処で前進を計れるかは、世界全体があらゆる形態の飢餓と栄養不良の根絶を謳ったSDGsの第2目標を達成できるかを測る上で『きわめて大きな影響』をもっています。」と語った。

SDGs Goal No. 2
SDGs Goal No. 2

発育不全やその他の形態の栄養不良は、世界全体の児童死亡数の約半分の原因だと言われている。脳の発達不全によって、知的能力や学習能力が減退し、学校での成績も悪化する。また、糖尿病や高血圧、肥満などの栄養関連の慢性疾病のリスクも高まる。

「オブザーバー研究財団」(ニューデリー)健康イニシアチブのショーバ・スーリ上級研究員は、「発育不全の子供は、就学期に能力を十分に発揮できず就職先が限定されるなど、影響は生涯に及びます。」と語った。またその影響は生計を得る能力にも響く。発育不全の子供は、健康な人に比べて収入が2割減になると推定されている。

スーリ上級研究員は、世界銀行の調査報告書を引用して、「発育不全はインドの経済成長にも悪影響を及ぼしています。」と指摘した。同調査によれば、幼児期の発育不全によって成人の身長が1%失われるごとに、経済的生産性が1.4%失われるという。

国内で発育不全を削減することで「経済の生産性が改善される」と政府関係者はいう。発育不全の予防に成功すれば、単なる経済成長だけではなく、2030年までの包摂的な成長を目指したSDGsの第8目標を世界が達成できるかどうかにも影響を及ぼすことになる。「第8目標は、多数のインド国民が発育不全の状況に置かれた完全かつ生産的な雇用を得られない状況ではとても達成できません。」とスーリ上級委員は語った。

SDGs Goal No. 8
SDGs Goal No. 8

子供の発育不全のような関連する問題を予防するために栄養不良の問題に対処することが、インド政府が児童の栄養問題に取り組む理由である。とりわけ重要なものが、1975年に始まった「統合児童発展サービス」(ICDS)である。この事業は、0~6歳児に栄養補給サプリメントやワクチン投与、健康診断を提供することで、児童の栄養状況や健康を改善することを目的としている。

しかし、ICDSは、初期の目標を達成できずにいる。「プログラムの不十分な履行状況や、モニタリング不足、支援対象者間の格差、コミュニティ・ワーカーの技量不足などが、発育不全やその他の栄養不良関連問題を効果的に解決できていない理由です。」とスーリ上級委員は語った。

加えて、インドにおける大半の栄養改善事業は出生後を対象としたものだ。しかし、妊婦の栄養と健康は胎児の発達に影響をもたらすことから、妊婦も政策の対象にしなくてはならない。

重要なことは、発育不全は栄養問題と直接的に関わる問題だが、多くの学術研究が、衛生やジェンダーエンパワメント、ワクチン、教育、貧困軽減、農業生産といった他の要素が、発育不全を予防する上で重要だと指摘している点である。「従って、発育不全の問題は、もはや女性・子供発達省だけの問題ではなくなっているのです。部族問題や水・衛生、地域開発などを担当する複数の省庁が協力して、インドにおける発育不全の問題に対処するペースを上げていく必要があります。」と政府関係者は語った。

2017年、インド政府は、首相による包括的栄養スキーム「アビヤアン」を立ち上げた。2022年までに、発育不全や栄養不良、低体重をそれぞれ毎年2%、貧血を3%減少させる目標を立てた。「省庁横断的な連携を求めている」このスキームは「おそらく成功するだろう」とスーリ上級委員は語った。

Map of India/ Wikimedia Commons

しかし、この期待される事業はそれほど関心を呼んでおらず、履行も遅々として進んでいない。女性・子供発達省は最近インド議会に対して、複数の州政府が「アビヤアン」実施のために割り当てられた予算を行使していないと通知した。ビハール州は割当予算のわずか4分の1しか利用しておらず、西ベンガル州やオディシャ州では事業実施の最初のステップすらとられていない。ゴア州やカルナタカ州では発育不良問題対策予算の利用すら始まっていない。

「最も対応が遅いこれら4州では、発育不良は既に深刻なレベルに到達しており『アビヤアン』の履行を遅らせている余裕はないはずだ。カルナタカ州30地区のうち9地区において発達不良児占める割合が全国平均を上回っている。同州の低体重の子供の割合は全国平均と同じぐらい高い。この状況下では、栄養不良を無視するようなアプローチを州政府が正当化することは受け容れがたい。」と『デカン・ヘラルド』紙の社説は伝えた。

スーリ上級委員はさらに、「児童の栄養状態を改善する事業は『絶好の機会』である幼児の生後1000日に集中すべきです。また、栄養不良や母乳による育児、さらには児童の成長に関する意識を喚起することが重要です。」と語った。

重要なことは、政府諸機関が単独で栄養不良問題対策や関連事業を行うことはできない、ということだ。民間部門や市民社会、学校もまた、栄養のある食事を重視することで、この輪に加わる必要がある。(原文へ

INPS Japan

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INPS Japanが国際プレスチームと共に旧セミパラチンスク核実験場とセメイを取材

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Filmed by Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director, President of INPS Japan

国連が「核実験に反対する国際デー(8/29)」公式に記念して10年目となる今年、この国際デーの由来となった旧セミパラチンスク核実験場閉鎖を記念する行事がカザフスタンの首都で開催された。

それに先立つ8月27日ー28日、INPS Japanの浅霧勝浩理事長・マルチメディアディレクターは、国連、ラトビア、イタリア、ポルトガル、イスラエル、メキシコ、米国のジャーナリストと共に、かつてソ連時代に核実験の中心的な地であった東部のクルチャトフ(ソ連時代は秘密都市)、旧セミパラチンスク核実験場と、セメイを取材訪問し、取材団を対象としたドキュメンタリーを作成した。

Katsuhiro Asagiri at Ground Zero of former Semipalatinsk Nuclear Test Site (Polygon)
Katsuhiro Asagiri at Ground Zero of former Semipalatinsk Nuclear Test Site (Polygon)

This year when the UN officially commemorates the Tenth Anniversary of the Day, August 29, Kazakhstan’s First President Nursultan Nazarbayev presented to the Comprehensive Nuclear-Test-Ban Treaty Organization (CTBTO) Executive Secretary Lassina Zerbo and the relatives of late International Atomic Energy Agency (IAEA) Director General Yukiya Amano, who passed away on July 18, 2019, the Nazarbayev Prize for a Nuclear-Free-World and Global Security in Nur-Sultan. Prior to the award ceremony, IDN-INPS Multimedia Director Katsuhiro Asagiri joined journalists from UN, Japan, Latvia, Italy, Portugal, Israel, Mexico, and U.S.A. a two-day press trip to Semey city and Kurchatova town in East Kazakhstan Region, once the center of operations for the adjoining Semipalatinsk Nuclear Test Site.

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