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「ならず者国家」が憲章を無視し、戦争犯罪をエスカレートさせる中、国連は麻痺状態が続く

【国連IPS=タリフ・ディーン】

国連は事実上麻痺状態にあり、二つの激しい紛争の中で政治的に無力な状態が続いている。ロシアとイスラエルが国連に反抗し続けているためだ。

特にイスラエルによる市民の殺害と都市の破壊が悲惨な状況にあり、国連、人道支援機関、国際刑事裁判所(ICC)、国連人権専門家、そして安全保障理事会からの再三の警告にも関わらず、現在も続いている。

ここで疑問が生じる。国連は10月24日の国連記念日に79周年を祝ったが、その存在意義はすでに終わってしまったのだろうか?

パレスチナ、アフガニスタン、イエメン、西サハラ、ミャンマー、シリア、そして最近ではウクライナなど、世界で続くいくつかの内戦や軍事紛争の解決に失敗してきた国連は、昨年4月の安全保障理事会での演説中にウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領から異議を唱えられた。

同大統領は正しくも、「国連が保証するはずの平和はどこにあるのか?安全保障理事会が保証するはずの安全はどこにあるのか?」と問いかけた。

米国によるイスラエルへの停戦要請も無視され続け、昨年10月7日以降、ガザでの戦争犯罪や大量虐殺の非難が国連憲章に対する違反として続いている。

匿名を条件にIPSに語ったアジアのある外交官は、国連憲章に違反し戦争犯罪を犯す国々は「ならず者国家」であり、国連から追放されるべきだと述べたが、その指摘は的を射ている。

しかし、拒否権を持つ安全保障理事会がある限り、そうしたことは決して起こり得ない。

サラ・リー・ホイットソン氏(アラブ世界の民主主義のための組織(DAWN)事務局長)はIPSの取材に対し、国連安保理は世界の平和と安全にとって最大の障害となっており、世界各地の紛争終結に向けた取り組みを支援するどころか、むしろそれを妨げてきたと語った。

ロシアがウクライナやシリアで起こしている紛争であれ、米国が支援するガザ地区、レバノン、イエメンでの戦争であれ、世界で最悪の紛争を煽り立てているこの2つの大国の拒否権を廃止しなければ、国連は今後も無力で信頼されない機関であり続けるだろう、とホイットソン氏は語った。

『パレスチナ・クロニクル』の記者で編集者であるラムジー・バロウド博士は、国連の有用性が失われたかどうかは、私たちがこの組織の創設と当初の目的をどう理解するかにかかっているとIPSに語った。

「もし私たちが、そして多くの人が正しくもそう信じているように、国連が第二次世界大戦の荒廃の後、戦勝国の利益を保護するために設立されたと考えるのであれば、その使命は概ね成功していると言えるでしょう。」

実際、国連、特にその執行機関である安全保障理事会は、主に世界の勢力均衡を反映しており、最近までそのほとんどが米国とその西側同盟国に有利な内容であったと彼は語った。

「この状況は多少変わりつつありますが、米国は依然として有罪当事国に国際法や人道法を適用するという名目上の役割すら国連に果たさせない大きな障害であり続けています。」

「しかし、もし私たちが、国際法の制定と施行を通じて世界的な平和の保証者として国連が存在してきたという誤った考えに同意するならば、国連が惨めなまでに失敗してきたことは疑いの余地がないでしょう。」と彼は断言した。

10上旬の記者会見で、国連のステファン・ドゥジャリク報道官は質問に答えて次のように述べた。「国連の失敗について人々が語る場合、私があなたに問い返したいのは、どの国連について語っているのかということです。「安全保障理事会が重要な問題についてまとまれないことをおっしゃっているのでしょうか? 決議を尊重せず、実施しない加盟国についておっしゃっているのでしょうか? すべての加盟国が署名している国際司法裁判所の判決を支持しない加盟国についておっしゃっているのでしょうか?また、事務総長が十分に活動していない、あるいは人道支援が十分でないと感じていることについてもおっしゃっているのでしょうか?ですから、そのような質問は極めて妥当だと思いますが、どの組織について言っているのかを検証する必要があると思います。」とドゥジャリク報道官は指摘した。

10月24日、カザンで開催されたBRICSサミットの合間に、アントニオ・グテーレス事務総長はロシア連邦のウラジーミル・プーチン大統領と会談し、ロシアによるウクライナ侵攻は「国連憲章および国際法に違反する」との立場を繰り返した。しかし、ロシアの反応は発表されず、違反行為は続いている。

10月29日にコロンビアでの記者会見で質問に答える形で、グテーレス事務総長は次のように述べた。「私たちは互いに平和を必要としています。そのために私は国連憲章、国際法、そして総会決議に沿った形で訴え続けているのです。」

「だからこそ、ガザでの即時停戦、人質全員の解放、ガザへの大規模な人道支援を求めているのです。また、レバノンに平和をもたらし、レバノンの主権と領土の一体性を尊重することで政治的解決への道を開くことを求めているのです。」

「また、甚大な悲劇が続くスーダンにおける平和も求めています」とグテーレス事務総長は語った。

これらの訴えは、答えのないまま続くかもしれない。

さらに詳しく述べると、バロウド博士はIPSに対し、「特に苛立たしいのは、明らかな失敗にもかかわらず、国連が世界の権力の不均衡を反映し、米国やイスラエルなどが国際法を完全に無視している現状を変える意図もなく存在し続けていることです。」と語った。

国連は第二次世界大戦後の惨劇を受けて設立されたが、現在ではガザ、ヨルダン川西岸、レバノンでの同様の惨事を防ぐことができない無力な存在となっている。現在の形のままで国連が存在し続けることに、道徳的にも理性的にも正当性はないとバロウド博士は主張した。

グローバル・サウスが政治、経済、法律の面で独自のイニシアティブを発揮し、ついに立ち上がろうとしている今こそ、これらの新しい組織が国連に代わる完全な代替案を提示するか、あるいは、現状では機能していない国連に対して真剣かつ不可逆的な改革を推進すべき時であると、イスラムとグローバル・アフェアーズ・センター(CIGA)の非常勤上級研究員であるバロウド博士は語った。

IPSへの寄稿記事で、元ニューヨーク大学国際関係学センターのアルン・ベン=メイアー博士は、安全保障理事会の構造、とりわけ常任理事国5カ国が持つ拒否権が行動を阻むことが多いと指摘した。

この拒否権により、国際的な支持が広く集まっている場合でも、これらの国の一つが決議を阻止することが可能である。このため、シリア内戦、ウクライナ紛争、イスラエル・パレスチナ紛争などの重大な問題で膠着状態が生じていると彼は語った。

「特にイスラエルとロシアによる市民の殺害や都市や町の破壊は、壊滅的であり、国連やその人道支援機関を通しても衰えることなく続いている。」国際刑事裁判所や国連の人権専門家は、安全保障理事会に繰り返し行動を呼びかけている。

「もし安保理がこれらの改革の一部を採用しなければ、国連は事実上、その有用性を失うでしょう。特に紛争解決の分野では、世界中で日々起こる恐ろしい死や破壊が、国連の惨めな失敗を証明しています」と彼は断言した。

一方で、地政学における国連の役割が減少していることは、その一方で人道支援組織としての役割の強化により補われている。

これらの取り組みは、世界食糧計画(WFP)、世界保健機関(WHO)、国連児童基金(UNICEF)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、国連人口基金(UNFPA)、国連食糧農業機関(FAO)、国際移住機関(IOM)、および国連人道問題調整事務所(OCHA)など、複数の国連機関によって主導されている。

これらの機関は、数百万人の命を救い続け、戦争に巻き込まれた国々、特にアジア、アフリカ、中東で、食料、医療、住居を提供し続けている。国境なき医師団、セーブ・ザ・チルドレン、国際赤十字、ケア・インターナショナル、アクション・アゲインスト・ハンガー、ワールド・ビジョン、リリーフ・ウィズアウト・ボーダーズなどの国際的な救援団体の取り組みにも密接に続いている。(原文へ

INPS Japan/IPS UN BUREAU

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共感から始まる平和:SGIが目指す核軍縮と社会変革への道(寺崎広嗣創価学会インタナショナル平和運動総局長インタビュー)

【パリ/東京INPS Japan】

インタビュー担当:ラザ・サイードLondon Post, Managing Director

撮影担当:浅霧勝浩、ケヴィン・リン(INPS Japan) 編集担当:ケヴィン・リン, ゲーリー・キルバーン

Q: パリ平和フォーラムが核軍縮に関する幅広い国際対話にどのように貢献するとお考えですか?

寺崎:今回の会議は、ローマに本部がありますカトリック系の団体である聖エディジオ共同体が主催をしてくれた会議です。彼らは毎年、このような大きな、特にインタフェース(諸宗教間)の国際会議を開き、多様な現代社会が抱える課題に対話と、そしてそれぞれの知見の共有、そういう場をこのように提供してくださっています。そういう会議の中で、特に核軍縮をテーマにしたフォーラムに私たちが創価学会インタナショナル(SGI)として参加できることは大変有難いことだと感じています。核兵器の問題は言うまでもなく、現代社会においては、とりわけ重要な課題です。それを世界各国の宗教者の代表とともに問題意識を共有する機会を作れることは、大変私たちにとってもやりがいのあるチャレンジの場だと感じています。

Paris 2024 Peace Meeting. Credit INPS Japan

Q: SGIの代表として、グローバルな平和と安全保障の問題にどのような独自の哲学的視点をもたらしますか?

寺崎:私たちの平和運動の、とりわけ核兵器のない世界を目指す取り組みというのは、1957年の9月に創価学会の第二代会長である戸田城聖先生による原水爆禁止宣言というものを源流にしています。その当時は言うまでもなく、核実験の競争によって、核の拡大が懸念されている状況下でした。この中で戸田会長がポイントとして、当時集まった青年たちに遺訓の第一として伝えたかったことは、「人類の生存の権利を守る戦い」であるという視点でした。核兵器を物理的に無くすと言うことは第一の目標ですが、しかし核兵器を持ってまで、人類が戦争を起こすというその事態が、人類の生存の権利を侵すという視点を持って、私たちは核兵器の具体的な取り組みとともに、その人類の生存の権利を守るというその後の大きな活動につながっていく運動になったわけです。 

Photo: Dr. Daisaku Ikeda. Credit: Seikyo Shimbun.
Photo: Dr. Daisaku Ikeda. Credit: Seikyo Shimbun.

その意味で私たちの核軍縮、あるいは核廃絶への取り組みというのは、一つはやはり人類の生存という視点から言うと核兵器を使うことによってどのようなことが起こるのか、その人道上の問題、あるいは被爆の実相というものを大きくクローズアップさせ、訴える活動を長年にわたって取り組んできました。もう一つは、戸田会長の後を継いだ池田大作会長が仰った言葉ですけども、要するに核兵器の問題の本質というのは、核兵器という無差別の大量殺戮兵器を所有してまでさえ、自分たちの支配欲を貫徹するという、その「核兵器を所有するその思想との闘い」である。こういう観点を私たちは明確にして取り組んでいるところが我々の大きな特徴だと思っています。 

Q: 差し迫る地政学的緊張の中で、核軍縮を加速するために世界のリーダーが今すぐ取れる具体的なステップは何だとお考えですか?

寺崎:大変難しい危機的な状況にあると思いますが、多くの人たちがこの近況の中でまさに悲観している、あるいはなす術を持たない、そのことで大変に差別というものが増幅されかねない状況下にある。今回のこの会議でも、テーマとして掲げられましたけども、Imagine peace、要するに「平和を想像しよう」というテーマになっています。今我々にとって一番これは大きなテーマだと思っています。 

Filmed by Katsuhiro Asagiri, President and Multimeda Director. Edited by Levin Lin and Gary Kilburn.

過去にどうやったかという、もちろん教訓を学ぶことも重要ですが、やっぱり新しい発想、新しい挑戦に、そのことにどれだけ全人類が集中しているのか、私はそういう意味ではまさにこの悲観、あるいは無関心との戦いこそが、今の危機にとってまず乗り越えなければならない課題だと思っています。 

我々市民社会でも、あらゆる可能性、あらゆるチャレンジというものを模索して、市民社会もその危機を共有しながら、これまでかつてないほど連帯して声を上げていく、その中で大きな突破口を見出す、あるいは政策決定者に影響を与えていく。そういう意味では若い人たちが受け身ではなく、この時代の危機をともに乗り越える側に立つ。こういう連帯の仕方を私たちは望まなければいけないと思っています。そういう意味では、このような会議は非常に重要です。だから私たちも参加しています。 

Q: あなたは「先制不使用」政策の強力な提唱者ですが、この政策が世界的な核軍縮にとってなぜ重要であるのか、詳しくお聞かせいただけますか?

寺崎:もちろん20世紀にもこの議論はありました。この時は一方でこれは核保有国に時間を与えるだけのもので、真の核軍縮にはならないという批判もあったことは、私たちもよく承知しています。 

しかし、今ある危機はそれとは比べ物にもならないぐらいの危機だと言ってもいいと思っています。今までのNPTの体制を担う側にいた核保有国が紛争の当事者になっているという、未だかつてない事態が生じているわけです。そういう意味では、すぐに核軍縮の方向に向きを変えることは大変に困難です。むしろ今、核兵器が使える兵器として近代化を図るという流れさえある状態です。そういう中である意味では、どのようにしてこの事態に対応したら良いか、多分いろんなこの事態を真剣に考えている人ほど非常に苦労の思索の中にあると思います。私たちは運動家に留まらずに、いわゆるアカデミックの専門家の人たちとこの議論をずっと続けてきましたが、まずできることは何か、その中で唯一可能性があるのはNo First Use(先制不使用)という結論に至りました。そのことを入り口にして、信頼醸成のための、まず会話のテーブルを作る。このことにつながっていく流れを私たちは目指したいと思っています。よって、このテーマで年内に大きな国際会議を開いて、さらに発信を高めたいと今検討を進めているところです。 

Q: 長年にわたって核軍縮と平和のために尽力されてこられたわけですが、個人的にこうした活動に携わる動機或いはきっかけは何でしょうか?

Photo: The remains of the Prefectural Industry Promotion Building, after the dropping of the atomic bomb, in Hiroshima, Japan. This site was later preserved as a monument. UN Photo/DB
Photo: The remains of the Prefectural Industry Promotion Building, after the dropping of the atomic bomb, in Hiroshima, Japan. This site was later preserved as a monument. UN Photo/DB

寺崎:日本の創価学会が、被爆の実相を伝えていくために、戦争を知らない世代が直接被曝をされた方々に、あるいは戦争を経験された方々に取材を出向いて聞き書き運動をして、その記録を残し、出版するという運動を1970年代に始めました。12年間で80冊出版しました。私も若い青年として、当時この運動の事務局長をさせていただくようになり、被爆者の方々のところを訪問して話を伺うということにも取り組みました。今でもそうですけども、当時はさらに被曝をされた方々が自分の体験を語るということを大変に苦痛に思われている方々が多い時代でした。何回も通う中でこの活動の趣旨を理解していただいて、重い口を開きながら時には嗚咽を吐きながら一言一言紡ぎ出される被爆者の方達の言葉を聞いて私は強い衝撃を受けるとともに、生涯この活動には関わっていこうとした、それが私たちの大きなベースになっています。その思いは、核被害者の方々への核問題だけに留まらずに世界中のいろんなサポートを必要としている地域や人々へ何かしらできることはないかと常に考える自分自身のベースにもなっていると思います。 

Q: SGIは平和構築の取り組みにおいて若者の積極的な参加を促進してきました。若者は核軍縮のための戦いにおいて、さらに幅広い役割を果たすことができます。若者に向けたメッセージをお願いします。

寺崎:もちろん、時代を変えてきたのはいつでも若い方々の力です。時代を、社会を大きく変える時に、青年のエネルギーなくして成立したことなど一つもないと思います。そういう意味では、若い方々に何かをしてあげるという感覚は私にはありません。 

彼らに一つでも多くの活動の場を与え、そして自分自身の経験を積んでもらって、自分たちの活動として、特に世界中の若い方々と連帯の輪を広げる、このことに全力をあげてほしいし、そのためにできることを私も応援をしていきたいと思っています。それが伝統的な私たちSGIの考え方です。 

Q: SGIの核軍縮に関する取り組みは、気候変動や経済的不平等といった地球規模の課題にどのように交差していますでしょうか?

UN Photo
UN Photo

寺崎:もちろん私たちが、団体としてできることも挑戦してることはありますが、より大きな意味では、私たちは、一人一人に色々と教育や啓発の機会を与えてそれぞれ一人ひとりが自分にできることに挑戦する、その流れの中でしか大きな仕事は形成されない、という運動論を自覚しています。例えば核兵器の問題、あるいは気候変動の問題、あるいは人権や貧困の問題、優秀なまた非常に感受性の豊かな方々にとっては自分ごととして取り組んでいただく、そういう素晴らしい方々もたくさんいらっしゃると思います。しかし、もっと大きな流れを作るためには、自分自身が身近な人たちに親切で優しく接し、その方々の苦労に同苦ができるような、そういう自分の生き方を大事にするかどうか、その一人一人の生き方が広がる中でしか、大きな意味のある連帯はできないし、また社会を変えていく力にはならない。私たちは社会市民側の人間ですけれども、とりわけ信仰をベースにしている団体として、そのことの重要さを強く感じています。時々国連の場等で紹介されることもありますけども、SGIは一貫して市民社会において平和のための教育を推進している団体だ、とこのように紹介されることがあります。それはそういう背景を持っているからだと思います。 

Q: 非国家主体の役割が国際外交においてますます重要になる中で、SGIのような市民社会組織が世界平和の取り組みにどのような貢献ができるとお考えですか?

寺崎:先ほども述べたかもしれませんが、やはり国連という多国間の対話の場においても市民社会に席が用意されるようになって、私は非常に良い流れができていると思います。もちろん国をマネージする人、リーダーたちの仕事も重要ですけども、同時に、やはり実際の生活の現場の中で人々がどのような安心や安寧、平和というものを感じられるか、それは我々がそっちに近い側にいる人間ですよね、市民社会の声が圧倒的に大きくなっていくことが私は平和や民主主義のベースというものを強固にしていくものだと確信しています。そのためには普通の人々が懸命になり、また信念を持ち、強くなっていく中で、事実を知る権利というものを確保していくことが、より重要だと思います。市民社会の私たちがそういうことに大きな役割を果たせると信じています。 (英語版

INPS Japan

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奴隷から自由の戦士へ

【ワシントンDC Nepali Times=サントシュ・ダヒト】

ネパール出身の元強制労働者の被害者で反奴隷制活動家のウルミラ・チャウダリー氏が、「世界反人種差別チャンピオン賞」の受賞者の一人となった。

授賞式は10月21日にワシントンDCで行われ、アントニー・J・ブリンケン米国務長官から同賞が授与された。

チャウダリー氏は先月、病気の父親の看病のためにコハルプルへ出発する準備をしていたところ、カトマンズのアメリカ大使館から受賞の連絡を受けた。彼女は受賞を喜ぶ一方で、父親のことを心配していた。

良い知らせを聞いた彼女の父親は、授賞式に出席し、自分の心配をしないでほしいと主張した。しかし残念ながら、父は娘の受賞を見届けることはできなかった。

「受賞の喜びを父と分かち合いたかったのですが、それは叶いませんでした。」とチャウダリー氏は言う。

今回の受賞はチャウダリー氏にとって初めてのことではなく、西部のタライにおけるカマラリ制度という少女強制労働の撲滅に大きく貢献したことが評価された。

「この賞は、恵まれない地域の子どもたちのために働く励みになりました。私と共に救出されたすべてのネパール人や、カマラリの慣習を根絶するために手を携えてくれた友人たちに捧げます。」と彼女はネパーリ・タイムズに語った。

月曜日にワシントンDCで行われた本賞の他の受賞者は、ガーナのディンティ・スレ・タイル氏、オランダのジョン・レルダム氏、北マケドニアのエルビス・シャクジリ氏、メキシコのターニャ・ドゥアルテ氏、ボリビアのトマサ・ヤルフイ・ハコメ氏である。

米国務省によって2023年に設立されたこの賞は、人種的公平性、正義、人権を推進する模範的な活動をした世界中の市民社会の個人を表彰するものである。

チャウダリー氏は、受賞は誇りであるが、正義と平等のためになすべきことはまだたくさんあると言う。「解放された何百人ものカマラリはまだ社会復帰しておらず、社会復帰の権利のために闘い続けています。」

テライではかつて、カムラリ(女性奴隷労働者)とカマイヤ(男性奴隷労働者)が一般的だった。ダン地区で生まれた6歳のチャウダリー氏は、住み込みのメイドとしてカトマンズの土地所有者の家に連れて行かれた。

「本やおもちゃで遊んでいるはずの年齢のとき、私は汚れた皿を洗ったり、雇い主のために洗濯をしていました。」と彼女は振り返る。17歳まで、チャウダリー氏は学校に行くこともなく、賃金をもらうこともなかった。

児童労働者として12年間働いた後、彼女はスワン・ネパールの活動家によって救出された。自由を手にした後、チャウダリー氏は学業を始めると同時にカマラリ制度廃止のためのキャンペーンを立ち上げた。彼女の活動が評価され、すぐにダン地区のカマラリ撲滅キャンペーンのリーダーとなった。彼女のリーダーシップの下、ダン地区は債務奴隷から解放された地区として宣言された。

チャウダリー氏は現在、法律の学位を取得し、彼女のような恵まれない家庭の子どもたちに法的支援を提供することを目指している。「私の痛みや苦しみを乗り越えて、私と同じように困難な生活を送っている子供たちのために、友人として支援したいのです。」と彼女は話す。

米国務省の賞は、毎年6人の市民社会のリーダーを表彰し、「人種的平等、正義、人権の推進に対する卓越した勇気、リーダーシップ、そして献身」を称えている。

授賞式後、受賞者たちはワシントンDCとニューヨークでインターナショナル・ビジター・リーダーシップ・プログラム(IVLP)に参加し、疎外されたコミュニティのメンバーの人権と基本的自由を促進し、体系的な人種差別、差別、暴力、外国人排斥と闘うことについて、米国の同業者と情報交換を行う。(原文へ

INPS Japan/ Nepali Times

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|アスタナ|カザフスタンの未来都市が2026年に日本からの直行便就航で観光客を歓迎

【アスタナ/ 東京INPS Japan=浅霧勝浩】

カザフスタンの首都アスタナは、前衛的な建築群、文化の多様性、豊かな歴史を体感できる観光地として急速に注目を集めている。2026年春には日本とカザフスタン間の直行便が開設される予定で、アスタナの魅力はさらに高まるだろう。アスタナは「中央アジアのドバイ」としても知られ、現代的な都市計画と伝統が融合した独自の魅力を持っている。9月、私は第9回「外国メディアの目を通したカザフスタン」コンテストの受賞者である8人の国際ジャーナリストたち(アゼルバイジャン、キルギス、イタリア、スペイン、マレーシア、ロシア、エジプト、ブラジル)とともにプレスツアーに参加し、アスタナの最も象徴的な観光スポットをいくつか訪れる機会があった。

日本人建築家が描いた未来のビジョン

Kisho Kurokawa

アスタナが急速に近代的な首都へと変貌を遂げたのは、1990年代後半に都市のマスタープランを作成した日本人建築家、故黒川紀章氏の先見性のある設計によるところが大きい。黒川氏の未来的なビジョンは、洗練された現代的な建造物とカザフスタンの遊牧民の過去を反映する要素を組み合わせたもので、都市のスカイラインと都市全体のレイアウトを形成している。彼の作品は伝統と現代性の相互作用を際立たせ、アスタナを世界の首都の中でも際立った存在としている。

日本の旅行者にとって、アスタナとこの偉大な日本人建築家とのつながりは、さらに魅力的なポイントとなるだろう。アスタナの街を歩くと、黒川氏のモダニスト的なアプローチが、カザフスタンの未来を象徴する都市にどのように実現されているかを直接目にすることができる。

文化のモザイク

Kazakhstan celebrates peoples unity day. Cedit Silkway TV
Kazakhstan celebrates peoples unity day. Cedit Silkway TV

この多様性は、地元の料理シーンにも反映されている。プレスツアー中、私たちは市内のレストランで様々な料理を楽しんだが、カザフ、ロシア、カフカス、韓国、そして、ウズベキスタンなど中央アジアの文化の影響が感じられた。

伝統的なカザフ料理であるベシュバルマック(茹でた肉と麺で作られる料理)や、ユーラシアの多彩な味を楽しむことで、アスタナでの料理体験はその人々の多様性を豊かに映し出している。特に日本からの観光客にとって、アスタナの料理はその多文化的なアイデンティティを体感できる貴重な機会となるだろう。

未来的なスカイライン

アスタナのスカイラインは、大胆で未来的な建築によって形作られ、「中央アジアのドバイ」としての評価を得ている。その中でも最も象徴的な建物の一つが、カザフスタンの独立と未来への希望を象徴するバイテレクタワーである。ツアー中、私は他のジャーナリストと共にバイテレクを訪れ、地上97メートルの展望台からの眺めは息を呑むほどの美しさだった。アスタナのスカイラインのパノラマビューは、ガラスの高層ビルと広々としたオープンスペースが融合した都市の姿を映し出している。

Astana Expo site/ photo by Katsuhiro Asagiri
Astana Expo site/ photo by Katsuhiro Asagiri
Golden man Credit: Astana City Pass
Golden man Credit: Astana City Pass

もう一つのハイライトは、2017年の万博の遺産である世界最大の球形建築物、ヌル・アレムだ。この未来的な建造物は現在、再生可能エネルギーや持続可能な技術に関する展示を行っており、エネルギー生産の未来についてインタラクティブに学ぶことができる。他のジャーナリストと共にヌル・アレムを探索し、カザフスタンが持続可能性に対してコミットしているだけでなく、世界的なエネルギー革新における役割も強調されていることを感じた。

歴史を巡る旅

カザフスタンの歴史に興味のある方には、カザフ国立博物館で同国の豊かな文化と歴史の変遷を詳しく知ることができる。 プレスツアー中、私たちは古代遊牧民の遺物から現代アートまで、同博物館の膨大なコレクションを探索する機会があった。 この訪問は、カザフスタンの歴史が、同国が現代の独立国家としてどのようなアイデンティティを持つに至ったかを理解する上で、貴重な洞察を提供してくれた。

National Museum of Kazakhstan
National Museum of Kazakhstan

直行便就航で観光促進

2026年に予定されている日本とカザフスタン間の直行便就航は、両国の関係において重要な進展となるだろう。この新しい路線により、日本の観光客がカザフスタンの活気あふれる首都を訪れることがこれまで以上に容易になり、文化交流や観光の機会が拡大するだろう。

アスタナは最先端の建築物と文化の多様性、そして歴史の深みが融合した都市であり、海外からの観光客にとって魅力的な目的地だ。日本人観光客にとっては、日本の最も象徴的な建築家の一人である黒川氏によって設計された都市であることも魅力の一つだろう。プレスツアーの一環として他の7人の国際ジャーナリストと共にこの街を探検した経験を通じて、アスタナが伝統と革新のユニークな融合によって際立っていることを強く感じた。

直行便就航の期待が高まる中、アスタナはダイナミックに発展するその風景を体験したいと願う新たな観光客の波を迎える準備ができている。 ようこそカザフスタンへ(Казакстанға қош келдіңіз!)。

この記事で紹介したアスタナの観光アトラクションは今回のプレスツアーを収録した前半の映像で観ることができます。(原文へ

INPS Japan

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インドの気候災害

この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています。

現実的な視点から韓中関係を根本的に見直すことが緊急に必要である。

【Global Outlook=ロバート・ミゾ

気候変動とその影響に関する文献では、起こり得る潜在的または将来的な災害を指して「差し迫った影響」という言葉が使われる傾向がある。しかし、近年の自然災害の発生率、それらが発生する際の頻度と強度を見ると、それらの影響はまだ「差し迫って」いるだけなのだろうかと考えずにいられない。この数カ月間インドが直面している破壊的な災害は、気候変動がすでに姿を現しており、人々の生活をズタズタにしないまでも変えてしまっていることを如実に示していると思われる。

2024年の初夏の時期、インドで観測史上最も暑い熱波が発生し、北部の州では気温が49℃を超えた。公式発表によれば、熱波関連の症状による死者数は110人である。しかし、保健専門家らは、これが実際の数字を大きく下回っていると主張する。医師が死亡診断書に死因として熱中症を記載することはあまりないからだ。保健専門家らは、2024年の熱中症による死者数は数千人に上ると考えている。(

熱波が北インド地方で猛威を振るう一方、北東部のアッサム州とマニプール州は豪雨とそれがもたらした壊滅的な洪水に見舞われていた。継続する民族紛争によってすでに傷ついているマニプール州は、1988年、2015年に続いて、2024年には3度目の最悪の洪水に直面した。5月最後の週にサイクロン「レマル」が前例のない豪雨をもたらし、ナンブル川とインパール川の堤防が決壊した。インパール渓谷の洪水により、一夜にして3人が死亡し、数千人が家を失った。マニプール州とアッサム州を結ぶ国道37号線沿いで土砂崩れが報告された。両州の洪水状態は本記事を書いている時点でも続いており、死者の合計は48人に達し、100万人以上が家を失って避難キャンプに身を寄せている。軍、国家災害救援隊(NDRF)、州の救援隊は、災害対応とインフラ復旧のためにギリギリの努力を続けている。これらの災害の経済的損失は、納税者による税金で負担されなければならず、その額は膨大である。これらの惨禍が開発アジェンダを妨げ、地域を何年も後退させて貧困に押し戻し、インフラや経済の衰退をもたらすのは明白である。

最近では、2024年7月30日に南インドのケララ州ワイナード地域で雨が降り続いた後に大規模な土砂崩れが発生した。美しい風景が広がり、普段は大勢の観光客や旅行者が訪れる地域で、ムンダッカイ、チョーラルマラ、アッタマラ、ヌールプザの各村が二度にわたる大規模な土砂崩れに押し流されたことにより、住民の生活は一変した。この破滅的災害による死者数は本記事を書いている時点で308人に上り、数千人が負傷し、その多くは重症である。そして、救援活動はなおも継続中である。災害により1万人近くが避難を余儀なくされ、州内91カ所の仮設避難キャンプに身を寄せている。陸軍、海軍、NDRF、地元ボランティアが力を合わせて精力的に救援活動を行っているが、長引く悪天候のために厳しい負担と遅れが生じている。

極端な天候に関連する災害の事例は、もう一つある。8月3日にインド北部のウッタラカンド州とヒマーチャル・プラデーシュ州では、豪雨により合わせて少なくとも23人が死亡し、多数が行方不明となっている。ヒマーチャル州サメージ村のアニタ・デービーは、胸がつぶれるような苦しみと喪失を語る中で、自分の家だけを除いて村中が豪雨に押し流された様子を物語った。「うちの家だけが破壊を免れたが、それ以外の全てのものが目の前で押し流されていった。もう誰のところに身を寄せたらいいか分からない」と、デービーは報道陣に語った。同じ村の年配の住人バクシ・ラムは、その破滅的な夜、村を離れていた。親族の「15人ぐらいが、洪水で流されてしまった」と、彼は記者らに語った。ここでも、軍、中央警察予備隊、NDRF、州の救援隊、ホーム・ガードなどを中心とする救援活動が、生存者発見を願って継続中である。道路、橋、衛生設備などのインフラの再建にしばらく時間がかかることは間違いなく、その一方で何百人もの人々の生活は永遠に変わってしまった。

首都ニューデリーとその衛星都市グルグラムとノイダも、豪雨に対する備えが極めて脆弱であることが露呈している。7月30日、デリー首都圏(NCR)では1時間ほどの間に100 mmの降雨があった。これにより複数の地区で浸水が発生したことを受けて、気象当局者は非常警報を発した。大規模な渋滞や通行止めが発生し、ラッシュアワー時の通勤者は大変な不便をこうむった。デリー首都圏の豪雨関連の事故により、10人が死亡したと報じられた。豪雨による浸水に関連したもう一つの異様な事件として、予備校で権威あるインド公務員試験の受験勉強をしていた3人の学生が浸水した地下図書室から脱出できず、早すぎる死を迎えたというものがある。

2024年前半だけでもインドでこれだけ発生した極端な気象現象は、気候変動が大地とそこに住む人々にいかにその影響を及ぼしているかを示しており、それと同時に、いかにこの国がこれらの災害に対応する準備ができていないかを露呈している。このような気象現象の破壊的影響は、より良い準備、調整、計画によって最小限に抑えられることを示唆する報告もある。また、インフラ開発プロジェクトが環境脆弱性を十分考慮することなく設計され、実施されてきたことに問題を見いだす人々もいる。ケララ州の事例では、耳に入っていたはずの警告が聞き入れられなかったことに関して、政治的な責任のなすり合いが後から起こった。残念な事実は、上記の主張の全てに一定の真実があるということだ。

甚大な損害と取り返しのつかない人命の損失が誰の責任かに関わらず、インドが気候変動の課題に対応するには準備不足であるという厳しい現実に変わりはない。今後インド亜大陸で頻繁かつ強烈な天候関連災害が起こるという科学的裏付けの信頼性は、ますます高まっている。これらが人々の生活、インフラ、経済に及ぼす影響は、十分に対処する能力を備えた地域と比べて数倍も大きいものになるだろう。気候変動は、人々、ひいては国家の安全保障全体に対する脅威であると考える必要がある。気候変動の世界的影響を抑制するための残り時間は急速になくなりつつあり、インドは、特に多くの脆弱な生態系や地域において適応と回復メカニズムを強化するために総力を挙げて取り組まなければならない。気候変動を政治の表舞台に取り上げ、政治的課題の対象としなければならない。2024年総選挙においてもそうであったが、この論点ははなはだしく欠如している。このままでは、この国の未来は非常に危うい。この数カ月に起こった災害は、深刻な予兆である。

ロバート・ミゾは、デリー大学政治学部の政治学・国際関係学助教授である。気候政策研究で博士号を取得した。研究関心分野は、気候変動と安全保障、気候政治学、国際環境政治学などである。上記テーマについて、国内外の論壇で出版および発表を行っている。ミゾ博士は、国際交流基金(Japan Foundation)のインド太平洋パートナーシップ・プログラム(JFIPP)リサーチフェローとして戸田記念国際平和研究所に滞在し研究を行った。

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ステップの精神を甦らせる:カザフスタンで第5回ワールド・ノマド・ゲームズ(世界遊牧民競技大会)が開催される

【アスタナ/東京 INPS Japan=浅霧勝浩】

活気あふれる文化と伝統の祭典として、カザフスタンは最近、首都アスタナで第5回世界遊牧民競技大会を開催した。この大会は、近代化とグローバル化が進む中、遊牧民の伝統文化の不滅の精神を称えるものである。2年に一度開催されるこの大会には、日本を含む89カ国から選手や観客が集まり、伝統スポーツのショーケースとしてだけでなく、かつてソ連統治下で絶滅の危機に瀕した遊牧文化の強靭さ(レジリエンス)を思い起こさせる機会ともなった。|インドネシア語タイ語

9月8日から13日にかけて開催されたこの競技会では、かつて中央アジアの広大なステップを駆け巡った遊牧民の生活様式を思い起こさせる100以上の多彩なアクティビティが展開された。馬上レスリングからアーチェリーまで、各競技は何世紀にもわたって磨かれてきた祖先の技能を反映している。しかし、多くの参加者や訪問者にとって、これらの競技の意義は単なるスポーツを超えるものだった。それは彼らが長らく抑圧されてきたアイデンティティの回復を体現していたからだ。

1930年代のヨシフ・スターリンによる農業集団化政策の下、遊牧民の生活様式は事実上解体された。ソビエト政権が農業モデルを牧畜民として繁栄していた人々に押し付けたため、コミュニティ全体が根こそぎにされた。この残忍な変革により、伝統的慣習が衰退し、多くの命が失われた。この文化的ジェノサイドの傷は深く、何十年にもわたって遊牧文化の豊かな伝統はほとんど沈黙を強いられた。

スターリンの強制的な農業集団化政策によって、カザフスタンの人々は生活の糧であった家畜を奪われ、遊牧文化を破壊された。その結果、飢饉によって230万人が死亡したと推定されている。

しかし、1991年のソビエト連邦の崩壊は、カザフスタンや他の新たに独立した旧ソ連邦の国家にとっての転換点となった。独立後、遊牧文化を復活させ、祝うための取り組みが積極的に行われるようになり、歴史的な惨事を前向きな発展の基盤へと変えてきた。カザフスタンにとって、この復興は国家アイデンティティの中心的な柱となり、外国勢力による植民地的な押し付け以前の豊かな歴史と再びつながる方法となっている。

世界遊牧民競技大会は、この文化的ルネサンスの象徴である。2014年の創設以来、この競技大会は80以上の国から参加者を集め、遊牧民の遺産を共有する人々の間で友情を育んでいる。「これは単なる競技ではなく、私たちのルーツを祝うものです。」と、カザフスタンのIT起業家で元産業省の官僚であるマディヤル・アイップ氏は語った。「私たちは世界に自分たちが何者であるかを示しているのです。」

The 7th Congress of leaders of the World and Traditional Religions photo credit: Katsuuhiro Asagirio

カザフスタンが歴史的な挑戦を機会に変革する卓越した能力は、遊牧文化の復活だけでなく、マルチベクトル外交に表れている。同国は「世界伝統宗教指導者会議」のような重要なイベントを開催し、130の民族集団間での対話と寛容を促進することへのコミットメントを強調している。この多様性は、スターリン時代の民族的・政治的迫害の遺産に根ざしているが、新たに独立したカザフスタンは、背景に関わらず、すべての市民に憲法の下での平等を保証している。

Semipalatinsk former Nuclear test site. Photo Credit: Katsuhiro Asagiri

カザフスタンの指導力は文化外交の領域にとどまらず、世界的な軍縮の面でも大きな進展を見せている。1949年から1989年にかけて456回もの核実験が実施されたセミパラチンスク核実験場は、独立したカザフスタンにより閉鎖され、核兵器もすべて廃棄された。この大胆な決断により、同国は世界第4位の核保有国から、核兵器のない世界を強く支持する非核兵器国へと変貌を遂げた。セミパラチンスク核実験場の閉鎖は、核実験反対運動における重要な転換点として国連に認められている(同実験場が閉鎖された8月29日は核実験に反対する国際デー)。

May 1 is the national unity day in Kazahstan. more than 130 ethnicities enjoy peace in Kazakhstan. Photo credit: Embassy of Kazakhstan in Singapore

競技会が終了するにつれ、雰囲気は祝賀と誇りに満ち、消滅することを拒んだ遊牧文化の証となった。強靭で適応力のある遊牧民の精神は、カザフのアイデンティティの一部として再び織り込まれつつある。アスタナで競技者たちが最後のお辞儀をする中、過去と現在が絡み合い、遺産と革新の両方を称える未来を築いていることは明らかだった。

カザフスタンは、歴史的な災難を積極的な変革の場に変え、世界的な舞台で平和と協力を推進する模範となっている。世界遊牧民競技大会は、文化的ルーツの重要性を生き生きと思い起こさせるだけでなく、多民族・多宗教社会が対話と理解を通じて繁栄できることを示している。過去を受け入れることで、カザフスタンは世界における自国の位置を再定義し、遊牧民の生活様式は過去の遺物ではなく、国家のアイデンティティと未来への希望の生き生きとした一部であることを証明している。(原文へ

Inter Press Service, Londo Post

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新たな戦いの拡大:核兵器と通常兵器

【国連(IPS)=タリフ・ディーン】

国連や反核活動家たちからの警告は、ますます無視できないものになっている。意図的であれ、偶発的であれ、世界はかつてないほど核戦争に近づいている。核保有国と非核保有国との間で起きている現在の争いや言葉のぶつかり合いがなされているロシア対ウクライナ、イスラエル対パレスチナ、北朝鮮対韓国においては、危機をさらに深刻化させている。

また、9月27日のニューヨーク・タイムズの報道によれば、ロシアのプーチン大統領は、核兵器の使用基準を引き下げる計画であり、ウクライナによる通常兵器での攻撃が「わが国の主権に対する重大な脅威」をもたらす場合、核兵器を使用する用意があると述べたという。

この新たな脅威は、先月ワシントンD.C.を訪れたウクライナのゼレンスキー大統領が、長距離ミサイルや、戦闘機および無人機の追加供与を要請したことを受けたものだ。

米国務省の政治軍事局によると、米国は2022年2月24日に「ロシアが計画的で、無差別で残忍なウクライナへの全面侵攻を開始して以来」613億ドル以上、2015年にロシアが最初にウクライナに侵攻して以来約641億ドルの軍事援助を提供してきた。

米国はまた、2021年8月以来53回にわたり、緊急の大統領権限(PDA)を行使し、自国の備蓄から総額約312億ドルの軍事援助をウクライナに提供しており、これらすべてがプーチンからの核の脅威を引き起こしている。

Melissa Parke took up the role as ICAN’s Executive Director in September 2023. Photo credit: ICAN
Melissa Parke took up the role as ICAN’s Executive Director in September 2023. Photo credit: ICAN

2017年にノーベル平和賞を受賞した「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」のメリッサ・パーク事務局長は、現在進行中の戦争に忍び寄る核の脅威は現実のものなのか、それとも純粋なレトリックなのかと問われ、IPSにこう答えた。「現在、冷戦以来最も核戦争のリスクが高まっています。ウクライナと中東の核保有国が関与する2つの大きな戦争があり、ロシアとイスラエルの政治家が核兵器の使用を公然と脅している。」

パーク事務局長は、核保有国間の地政学的緊張が高まっていると述べた。「それは、ウクライナに対する西側の軍事支援をめぐるロシアと米国の間だけでなく、米国が中国を包囲する同盟ネットワークを構築を試みていることや、台湾への支援をめぐる米国と中国の間でも緊張が高まっている。ただし、幸いにも、米国と中国からは、核による明白な脅威は聞こえてこない。」と語った。

「しかし、西側諸国では、評論家や政治家たちの間で、ロシアがまだ核兵器を使用していないからといって、ロシアが核兵使用について本気ではないと主張する危険な傾向がある。恐ろしい現実として、プーチン大統領や、あるいは核保有国のいかなる指導者であっても、いつ核兵器を使用するかどうか、私たちには確かなことはわからないということだ。」とパーク事務局長は語った。

すべての核保有国が支持する抑止ドクトリンは、このような不確実性を生み出だしてしまう。パーク事務局長は、「我々は、何が事態をエスカレートさせ、制御不能に陥らせるかはわからない。」と指摘したうえで、「しかし、そうなった場合に何が起こり得るかはわかっている。核兵器が使用された場合、生存者を助ける能力を持つ国家は存在しません。」と、語った。パーク事務局長は、かつて国連でガザ、コソボ、ニューヨーク、レバノンに勤務し、オーストラリアの国際開発大臣を務め、戦争や兵器で罪のない人々に与える影響を直接目の当たりにしてきた。

UN Secretary-General António Guterres briefs the General Assembly on the work of the organization and his priorities for 2024. | UN Photo: Eskinder Debebe
UN Secretary-General António Guterres briefs the General Assembly on the work of the organization and his priorities for 2024. | UN Photo: Eskinder Debebe

アントニオ・グテーレス国連事務総長は、核兵器の全面的廃絶のための国際デーを記念し推進するハイレベル会合で演説し、核兵器は 「二重の狂気 」であると述べた。

最初の狂気とは、一度の攻撃で住民全体、地域社会、都市を一掃できる兵器の存在である。「核兵器が使用されれば、人道的な大惨事、すなわち悪夢が国境を越えて広がり、私たち全員に影響を及ぼすことを私たちは知っている。核兵器がもたらすのは、真の安全や安定ではなく、私たちの存在そのものに対する差し迫った危険と絶え間ない脅威だけなのだ。」二つ目の狂気とは、これらの兵器が人類にもたらす巨大で存亡に関わるリスクにもかかわらず、「10年前と比べ、廃絶することに近づいていない。」とグテーレス国連事務総長は指摘した。

「実際、私たちは完全に間違った方向に向かっている。冷戦の最悪の時代以来、核兵器の恐怖がこれほど暗い影を落としていることはない。」「核による威嚇は最高潮に達している。核兵器使用の脅威さえ聞かれる。新たな軍拡競争の恐れがある。」とグテーレス事務局長は警告した。

一方、通信社の報道によると、ロシアは米国の核態勢の変化と、西側諸国がウクライナの戦争に何十億ドルも投入している動きに反応し、自国の核の「レッドライン」を引き直そうとしている。

先週、ロシアの安全保障理事会でプーチン大統領は、「核保有国によって支援された非核保有国によるロシアへの攻撃は、共同攻撃として扱われるべきである。」と発表した。

Tariq Rauf
Tariq Rauf

国際原子力機関(IAEA)のタリク・ラウフ前検証・安全保障政策部長はIPSの取材に対し、ロシアは事実上、NPT締約国や非核兵器地帯(NWFZ)に対して、従来から定めてきた安全保障の条件を再提示している、と述べた。

これは米国の政策と本質的に類似しており、ロシアは、非核保有国が他の核保有国と共同してロシアを攻撃しない限り、ロシアはNPTまたはNWFZ条約に加盟している非核保有国を核兵器で攻撃したり、攻撃すると脅したりすることはない、という内容である。

「現在、核兵器保有国である、米国、英国、フランスが、ウクライナが国際的に承認されたロシアの領土境界線内を攻撃するのを実質的に支援する代理戦争に突入しているのだから、ロシアがウクライナとそのNATO支援国に対して、ロシアの戦略的軍事基地を標的にしたロシアに対する長距離砲撃がロシアの核攻撃の引き金になり得ると警告したのは驚くべきことではない。」

さらなる質問に対し、パーク事務局長は、核保有国の9カ国(米国、英国、フランス、中国、ロシア、イスラエル、インド、パキスタン、北朝鮮)すべてが核兵器を近代化し、場合によっては拡大しているとIPSに語った。ICANの調査によれば、これら9か国による昨年の核兵器関連支出が推計914億ドル(約14兆4千億円)に上っており、米国は他のすべての国を合わせたよりも多く費やしている。

これらの国はすべて、抑止ドクトリンを支持しているが、それは核兵器を使用する用意と意思があることを前提としているため、全世界にとって脅威となっている。

つまり、南アジアで核戦争が起きれば、25億人が死亡する世界的な飢饉につながるという調査結果もある。

The Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons, signed 20 September 2017 by 50 United Nations member states. Credit: UN Photo / Paulo Filgueiras
The Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons, signed 20 September 2017 by 50 United Nations member states. Credit: UN Photo / Paulo Filgueiras

良いニュースは、大多数の国が核兵器を否定し、核兵器禁止条約(TPNW)を支持していることだ。TPNWは、紛争に覆われた世界において、唯一の光明である。TPNWは2021年に発効し、国際法となった。ほぼ半数の国がこの条約に署名、批准、あるいは加入しており、今後さらに多くの国が批准する予定だ。

「近い将来、世界の半数以上の国がこの条約に署名または批准すると確信している。世界中の市民社会や活動家からの圧力や呼びかけが、TPNWの実現と、より多くの国々の参加を確保する上で重要な役割を果たしてきた。」とパーク事務局長は述べた。

核軍縮において国連が果たした役割について、また国連がさらに何かできることはないかとの質問に対して、パーク事務局長は次のように答えた。

第1回の国連総会で、核兵器の廃絶を呼びかけた。それ以来、核兵器禁止条約やTPNWだけでなく、核拡散防止条約(NPT)や包括的核実験禁止条約(CTBT)など、核兵器に関する主要な多国間条約を各国が交渉する場となっている。

グテーレス事務総長は、核兵器の容認できない危険性と、その廃絶の緊急性を強く訴え、道徳的、政治的に強力なリーダーシップを発揮し続けている。

国連軍縮部(UNODA)も重要な役割を果たしており、国連加盟国によるTPNWへの参加を支援し、促進している。今週の総会ハイレベル会合では、TPNWを正式に批准する国が増えるだろう。

「国連が核兵器廃絶のために力強い声を上げ続けることは不可欠であり、条約を支持するより多くの国が参加できるよう支援し、また、核兵器の使用を支持する核保有国とその同盟国に対して、その義務を果たし、核兵器とそれを支えるインフラを廃絶する必要性を喚起することが必要です。」とパーク事務局長は訴えた。

This article is brought to you by IPS NORAM, in collaboration with INPS Japan and Soka Gakkai International, in consultative status with UN ECOSOC.

INPS Japan/ IPS UN Bureau Report

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日本被団協が2024年ノーベル平和賞を受賞  被爆者の核廃絶への呼びかけを拡大する

【ニューヨークATN=アハメド・ファティ】

ノルウェー・ノーベル委員会は、広島と長崎の被爆者を代表する日本の草の根団体「日本被団協」に2024年のノーベル平和賞を授与した。これは、依然として核問題に苦しむ社会への強いメッセージとなっている。金曜日に発表されたこの賞は、核兵器の非合法化を求める数十年にわたるキャンペーンと、1945年に投下された2発の原子爆弾がもたらした悲惨な被害についての感動的な記述を称えるものである。

日本被団協のメンバーたちは、その破壊を自らの身をもって表現してきた。家、家族、都市が灰と化すのを目の当たりにした精神的な重みに加え、多くの被爆者は体を引き裂かれた放射線の痕を背負っている。このような大量破壊兵器が二度と使われてはならないことを強調する被爆者の体験談は、核軍縮に関する世界的な議論を形成する一助となっている。

「被爆者は、筆舌に尽くしがたいものを描写し、考えられないことを考え、核兵器によって引き起こされた理解しがたい苦痛を何とかして把握する手助けをしてくれました。」とノーベル委員会からの引用文は述べている。この組織の絶え間ないキャンペーンは、核兵器が引き起こす恐ろしい人的犠牲を生々しく思い起こさせるものであり、さらなる紛争へと向かう社会における道徳的な羅針盤として機能する。

 日本被団協の三牧敏之共同代表は、広島から取材に応じた。頬をつねりながら信じられない様子で、「本当に信じられないです。」と語った。自らも被爆した経験を持つ三牧代表は、この受賞が非核社会に向けた団体メッセージとイニシアチブをより際立たせる一助になることを期待した。永続的な平和は手の届くところにあるというグループの信念を強調し、「核兵器は絶対に廃絶されるべきです。」と述べた。 

この意識は、今まさに必要とされている。ノーベル委員会の選出は、ロシアや北朝鮮のような国々が自由に核兵器を近代化・増強し、地政学的緊張が高まる中で、人類が直面している危険を鋭く思い起こさせるものである。ヨルゲン・ワトネ・フライドネス委員長は、このようなリスクと向き合うことをためらわなかった。「紛争が絶えない世界において、核兵器の使用に対する国際的な規範を強化する必要性を強調したかったのです。」とヨルゲン委員長は語った。

「被爆者は核戦争による悲惨な経験をしてきた。彼らの戦いは、自分たちの生存だけでなく、次世代の尊厳のためでもあります。もともと戦後の日本で疎まれ、虐待されてきた被爆者たちは、核兵器反対の声として発展してきた。今日でも10万人以上の被爆者が存在し、平均年齢は85.6歳だが、彼らの声はいまでも重要だ。」

日本人のノーベル平和賞受賞は、123年の歴史の中で2度目である。最初の受賞者は1974年の佐藤栄作元首相で、核拡散防止条約(NPT)の締結と環太平洋の安定に尽力したことが評価された。日本被団協の受賞は、広島と長崎の原爆投下からほぼ80年後の出来事であり、歴史の教訓についての重要な考察となっている。 

和田征子日本原水爆被害者団体協議会事務次長による被爆証言(2017年バチカン会議)撮影・編集:浅霧勝浩

日本被団協は、ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)やエリー・ウィーゼル氏など、大量破壊兵器に反対し、未来を守るために過去を思い起こす必要性を訴えてきた過去の受賞者の仲間入りを果たした。核による大惨事を防ぎ、平和を基調とする未来を創造するためには、国際社会は被爆者に注意を払わなければならない。なぜなら、被爆者は、人類が壊滅的な被害をもたらすという最悪の事態を目の当たりにしてきた人たちだからだ。

 日本被団協は、ノーベル平和賞を定めたアルフレッド・ノーベルの命日である12月10日に、オスロで正式にノーベル平和賞を受賞する。今年のメッセージは明確だ。世界は核兵器の完全廃絶に向けて歩み始めなければ、歴史上最も暗い出来事を繰り返す危険性がある。 

広島と長崎の被爆者たちは、その揺るぎない精神と回復力によって、人々が瓦礫の中から立ち上がることができるということを私たちに教えてくれる。彼らの語りによって、正しいことのために戦う信念、言いようのない残虐行為に立ち向かう勇気、そしてこのような苦しみが二度と繰り返されないことを保証する他者への慈悲が、世界中に伝えられる。(原文へ

INPS Japan/American Television Network

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隔離を禁止するだけでは不十分

 アチャム郡=ダヌ・ビシュワカルマ

2016年12月20日、ネパールの西部に位置するアチャム郡のティミルサイン村に住む45歳のダマラ・ウパディヤが、生理中という理由で窓のない小屋に隔離され、寒さをしのぐために焚いた火の煙で窒息死した。

同じ日、同郡のガジャラ村の15歳のロシュニ・ティルワさんが「チャウ」と呼ばれる「生理小屋」の中で窒息死した。

2018年1月11日、アチャム郡のトゥルマカドのガウリ・ブダさんがチャウ小屋で窒息死した。

2018年6月10日、22歳のパルバティ・ブダが生理小屋でヘビに咬まれて死亡した。

2018年6月18日、バージュラ郡のアガウパニ村で、35歳のアンバ・ボハラさんと幼い息子のスレシュくん、ラミットくんが、生理小屋の火災で死亡した。

2019年12月1日、22歳のパルバティ・ブダ・ラウトさんが生理小屋の中で窒息死した。警察は彼女を小屋に強制的に追いやった義理の兄を逮捕し、裁判所は彼に45日の禁固刑を言い渡した。

そのパルバティ・ブダ・ラウトの悲劇的な死の後、カトマンズの内務省は、全国的な怒りを受けて、カルナリ州とスドゥルパシム州全域で生理小屋の撤去運動を開始した。

同省は2つの州の19の郡に対し、すべての生理小屋を捜索し、破壊するよう指示した。1万棟以上の小屋が壊され、そのほとんどがアチャム郡にあったと報告され、100の地方自治体が「チャウ・フリー」を宣言した。

地元政府によって取り壊された生理小屋

しかし、パンデミックの後、多くの小屋が再建された。地元の人々は、月経中の女性は不浄であり、家にいることは、収穫の失敗や病気、家畜の死といった神の怒りを招くと信じているからである。

アチャム郡のセルパカ村に住む40歳のトゥリ・サウドさんは、何十年も生理中は生理小屋で過ごしてきた。現在、彼女には2人の娘と2人の義理の娘がいるが、全員が毎月、生理中の5日間、裏庭にある同じ小屋で過ごす。

その小さな小屋には窓がない。土の床はモンスーンの間ずっと湿っており、藁で覆われている。同時に月経になることが多く、トゥリさんと家族の他の女性たちは狭くて暗い空間を共有しなければならない。

アチャム郡の生理小屋取り壊しキャンペーン中に、トゥリさんの月経小屋も取り壊された。彼女は村の他の小屋の破壊にも協力した。

しかし、チャウパディの習慣や月経にまつわる汚名を改めることは、生理小屋を破壊よろも遥かに難しかった。トゥリさんが生理になったとき、彼女は以前生理小屋があった場所にテントを張って5日間過ごした。

結局、テントは居心地が悪いので、一家は別の泥と藁葺きの小屋を建てた。トゥリさんが恐れているのは、生理小屋に自分を隔離しないと、家族の誰も家に入ってこなくなり、自分が作った料理も食べられなくなるのではないかと心配している。

実際、同調圧力は社会全体からだけでなく、生理の不浄ついての迷信を信じている村の年配の女性たちからきている。

「村の他の女性たちが生理小屋に行くのをやめるなら、私もそうするつもりよ。」とトゥリさんは言う。「閉経が待ち遠しい。」

トゥリさんの隣人である40歳のデウサリ・アウジさんも小屋を再建し、そこで生理期間を過ごしている。彼女は5人の子供を出産した後、それぞれ数週間、その小屋で過ごした。出産直後の母親もこれらの小屋に隔離される。

「これは私たちの習慣であり、もしそれをやめれば近くのお寺にいるカーリー女神を怒らせることになる。」とアウジさんは確信を持って言う。

アウジさんは、母親と義理の姉が同じ時期に生理になると、狭い小屋を共有している。「息をするのも眠るのも大変です。でも、私たちはその苦難に耐えなければならないのです。」

女性たちの多くの死は、山間部の厳寒の冬の中、窓のない閉ざされた空間で火を焚くため、窒息が原因で起こっている。

生理小屋の中

ラム・バハドウール・サウドさんの妻と娘は、4年前に家族の生理小屋が取り壊された後、家の中で生理期間を過ごすようになった。しかし、彼の家族は村人から村八分にされたため、彼は取り壊された小屋を再建せざるを得なかった。

カマルバザール郊外に住む14歳のニシャ・ネパリは、学校でリプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)について学び、生理を小屋で過ごすことのリスクを学んだ。しかし、彼女は毎月生理期間の5日間、家族によって小屋に隔離され、学校に通うことができないでいる。 

「小屋には明かりがないので、宿題もできません。」と、家族でネパールに戻る前はインドで育ったニシャさんは言う。

地元の教師であるスリジャン・ダカル・クンワルさんは、女性たちが近くの寺院の神々を怒らせることができないと固く信じているため、生理小屋に自らを隔離し続けていると説明する。

アチャム郡に住むカドガKCは、政府によって古い生理小屋が取り壊された後、怒りを感じ、2人の義理の娘のために新しい小屋を作った。 

KCはシャーマンであり、生理中の女性に触れると健康を害すると信じており、一度生理中の女性に触れられたことが自分の慢性的な病気の原因だと考えている。

「誰が何を言おうと気にしない。私の家の生理小屋はここにある。」と彼は言う。「なぜ自分の神の言うことを聞かずに、他人の言うことを聞かなければならないのか。」

チャウルパティ村のバサンティ・サウドさんのような地元選出の役人でさえ、月経期間を家族の生理小屋で過ごし、実際には以前よりも状況が良くなったと信じている。

サウドさんはその理由をこう語る。「私たちの小屋が取り壊される前は、小屋は遠くにあったのですが、今はそうではありません。今はどの家族も自分の小屋を持っています。」

アチャム郡のチーフ・ディストリクト・オフィサーのシバ・プラサド・ラムサル氏は、法律や取り壊しキャンペーンだけでは、深く根付いた信仰を変えることはできないと認めている。そのため、彼の事務所は迷信に対する意識を高めることに集中している。

アチャム警察署長のイシュワリ・プラサド・バンダリ氏は、小屋の取り壊しを再開し、再建されないようにするためには、コミュニティの支援が必要であることに同意している。

活動家たちは、生理小屋に隔離されなくても、ネパール全土の多くの女性が教育を受けた家族でさえ、何らかの形で差別や汚名に苦しんでいると指摘する。生理に対する差別は犯罪であるだけでなく、女性の深刻な健康リスクでもある。

栄養士のアルナ・ウプレティさんは、産後や生理中の少女や女性に牛舎での生活を強いることは、事故や感染症を引き起こしやすく、バランスの取れた食事が必要な時期に栄養不足になりがちだと言う。

根深い文化的信念は根絶するのは難しく、州政府や地方政府も社会的な反発を恐れて抜本的な改革を推進することに消極的である。抑圧的な月経差別が最も蔓延している地域は、ネパールの首相を5度務めたシェル・バハドゥル・デウバ氏のような有力な政治家の選挙区でもある。

尊厳ある活動家であるラダ・パウデル氏は、この慣習を終わらせるためには地方政府が動員されなければならないことに同意している。

小屋でのレイプ

過去17年間でスドゥルパシム州で生理小屋で死亡した16人の女性のうち、14人がアチャム郡で死亡している。窒息やヘビ咬傷による死亡の他に、月経中の女性がレイプや性的暴行の被害者になったケースもある。

6月、アチャム郡で若い少女が生理小屋で寝ているときに親戚にレイプされた。近隣の人々が彼女を意識不明の状態で発見し、マンガルセンの地区病院に搬送した。

警察に告訴されたが、それは暴行から19日後のことだった。小学生の少女は、母親が亡くなり、父親が再婚した後、母方の祖母に弟と一緒に育てられていた。 

「彼は6か月前から私をつけまわし、一度私が一人で家にいるときに入ってきて、私に無理やり迫った」と少女は最近のインタビューで語った。警察はレイプ現場となった小屋を取り壊し、事件は裁判中である。

法律

チャウパディは2005年にネパールの最高裁判所によって禁止され、その3年後には女性・児童・社会福祉省がこの慣習を禁止するガイドラインを策定した。

2017年の国家刑法第168条3項では、「月経中または出産時に女性を生理小屋隔離すること、または同様の差別、不可触、非人道的な扱いなどを女性に強いること、または強いられることを禁止する」と規定している。このような犯罪を犯した者は、3か月の禁固刑、3,000ルピーの罰金、またはその両方が科される。(原文へ

This article is brought to you by Nepali Times, in collaboration with INPS Japan and Soka Gakkai International, in consultative status with UN ECOSOC.


中国とカザフスタン、永続する友情と独自のパートナーシップを強化

【アスタナLondon post/Xinhua】

中国の習近平国家主席は7月2日、中央アジアのカザフスタンへの国賓訪問中、中国とカザフスタンの間に確立された独特の恒久的な包括的戦略的パートナーシップと、両国の長年にわたる友情を称賛した。

習主席は同日早くカザフスタンに到着し、上海協力機構(SCO)首脳理事会の第24回会合にも出席する。

カザフスタンのカシムジョマルト・トカエフ大統領は空港で盛大な歓迎式典を行った。火曜日の夕方、両首脳は和やかで温かい雰囲気の中で夕食を共にし、二国間関係や共通の関心事について親切で友好的な意見交換を行いました。

独特のパートナーシップ

これは習主席のカザフスタンへの5回目の訪問であり、2022年9月の前回の国賓訪問に続く2年以内で2回目の訪問となる。

「32年前、中国はカザフスタンの独立を最初に認めた国の一つでした。それ以来、中国とカザフスタンの関係は新たな旅を始めました。」と、習主席は訪問に先立ち火曜日にカザフスタンのメディアに掲載された署名記事で述べた。

一方、アスタナ到着時の書面声明で、習主席は両国が外交関係を樹立してからの32年間、その関係は時の試練と国際情勢の変遷に耐え、独特の恒久的な包括的戦略的パートナーシップへと進化したと述べた。

習主席は11年前、カザフスタンでシルクロード経済ベルトの共同建設というイニシアチブを初めて提唱したことを振り返り、現在、中国とカザフスタンの間の一帯一路の協力が豊かな成果を上げていると語った。

双方向の経済・貿易協力は新たな高みに達し、人文交流は多くのハイライトがあり、両国の国際協力は緊密かつ効率的であり、これは両国民の福祉を改善するだけでなく、国際・地域情勢にさらなる安定と正のエネルギーを注入していると習主席は付け加えた。

2023年、中国はカザフスタンの最大の貿易相手国であり、双方向の貿易は前年同期比32%増の410億米ドルに達した。カザフスタンから中国への主要な輸出品は原油、金属、農産物であり、中国はカザフスタンに機械、電子製品、消費財を供給している。

過去1年だけでも、相互のビザ免除政策の実施、3番目の鉄道検問所の建設、文化センターの設立、2024年を中国における「カザフスタン観光年」とする発表など、多くの重要な合意が締結された。

「カザフスタンと中国の関係は、強固な友情と善隣関係の強い絆の上に築かれています。」と、トカエフ大統領は習主席の訪問に先立つ新華社通信とのインタビューで述べ、2022年の習主席の前回の訪問で両国の協力が新たな「黄金の30年」に乗り出したと指摘した。この年は両国の外交関係樹立30周年を迎えた。

カザフスタンのカシムジョマルト・トカエフ大統領が、22024年7月2日、カザフスタンのアスタナ空港で中国の習近平国家主席を歓迎する盛大な式典を開催した。(新華社/尹博古)

今回の習主席の訪問は、二国間関係と協力の多面的な側面に新たな焦点をもたらすことが期待されている。

トカエフ大統領との一連の会談で、習主席は両国間の協力をさらに強化するための詳細な議論を行う予定だ。習主席の言葉を借りれば、彼とトカエフ大統領は「中国とカザフスタンの関係のさらなる発展のための道筋を計画し、中国とカザフスタンの恒久的な包括的戦略的パートナーシップを新たな高みに引き上げる方法について議論する」予定である。

「カザフスタンと中国は親しい隣国であり、真の友人であり、パートナーです。今日、両国はともに発展と復興の重要な段階にあります。」と、カザフスタン中国研究センターのグルナール・シャイメルゲノワ所長は語った。

両国の指導者は二国間協力の新たな「黄金の30年」を開いたと彼女は述べ、二国間関係が高いレベルで成長している中、今回の習主席の訪問が二国間協力の新たな展望を開くことになると信じられていると付け加えた。

中国の習近平国家主席が2024年7月2日、カザフスタンのアスタナに到着した。上海協力機構国家元首理事会の第24回会合に出席し、カザフスタンのカシムジョマルト・トカエフ大統領の招待により国賓訪問を行う。(新華社/鞠鵬)

中国の習近平国家主席が2024年7月2日、カザフスタンのアスタナに到着した。上海協力機構国家元首理事会の第24回会合に出席し、カザフスタンのカシムジョマルト・トカエフ大統領の招待により国賓訪問を行う。(新華社/鞠鵬)

永遠の友情

習主席はアスタナ到着時に、両国の永遠の友情は時を経てますます強くなり、隣国間の団結、相互利益、相互成功の模範を示していると語った。

「中国とカザフスタンの友好的な交流の歴史は、我々の二国間関係の発展が歴史と我々の時代の潮流に合致しているという強力な証です」と、習主席は「共通のコミットメントを堅持し、中国とカザフスタンの関係の新たな章を開く」というタイトルの署名記事の中で語った。

時間は両国間の深い友情を象徴する多くの心温まる物語を提供してきた。

2000年以上前、中国の皇帝の使節である張騫は西域への外交使節団を率い、中国と中央アジア間の友情と交流への扉を開いた。張騫が先駆者であった古代シルクロードは、中国とカザフスタン間の友好的な交流と相互学習に貢献した。

そして新しい時代は、眼科医のサウレベク・カビベコフ、珍しい血液型を持ち中国で自主的に献血した「パンダマン」ことルスラン・トゥレノフ、人気歌手のディマシュ・クダイベルゲンなど、より多くの親善使者を歓迎しました。

永遠の友情はまた、習主席の到着時にアスタナ空港での心温まる雰囲気を通じて十分に示された。

「広大で美しい大地に我々の愛する祖国が立つ。我々は平和を愛し、故郷を愛する。団結と相互愛が我々を鋼のように強くする。」と、一群のカザフスタンの少年少女たちが白い衣装で、習主席を中国語の歌詞「祖国賛歌」で迎え、習主席への尊敬とカザフスタン国民からの温かい歓迎を示した。

空港では、トカエフ大統領が政府高官のチームと共に習主席を迎えた。習主席は時折、中国語を流暢に話すトカエフ大統領と会話を交わした。トカエフ大統領は大学時代に中国語を学び始めたと述べ、最近の新華社通信とのインタビューで、彼は現在も定期的に中国語の本を読み、中国の政治と社会経済の発展について情報を得ていると語った。

文化センターの相互設立に関する二国間協定が署名された。中国とカザフスタンの映画製作者は、初の共同制作である「作曲家」という映画を共同制作した。中国の大学キャンパスのカザフスタンへの設置、魯班工坊、中医学センターなど、文化協力の二国間プログラムが実施されている。

2024年7月2日、カシムジョマルト・トカエフ大統領と握手を交わす中国の習近平国家主席。(新華社/謝環馳)

相互のビザ免除措置のおかげで、2023年には合計60万人の越境旅行が記録された。今年の第1四半期には、双方向の訪問者数は20万人に達し、新たな高みに達することが期待されていると、双方の公式データが示している。

「文化・人的協力は、二国間関係を強化し、我々の国民間の友情を育む上で重要な役割を果たします。」と、トカエフ大統領は語った。

「我々の二国は、中国とカザフスタンの永遠の友情のための公共の支持を強化する必要があります。より深く強い中国とカザフスタンの友情は、我々両国民が望むところです。そのため、我々はこの友情を継承し、多様な文化・人的交流プログラムを通じて我々の国民間の相互理解と親近感を高めることが重要です。」と、習主席は署名記事のなかで語った。(原文へ

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