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カザフスタン、国連軍縮フェローに核軍縮の経験を共有

【アスタナThe Astana Times=アイバルシン・アフメトカリ】

カザフスタン外務省は6月19日、2025年度国連軍縮フェローシップ・プログラムの参加者をアスタナに迎え、同国がリーダーシップを発揮してきた核軍縮の取り組みと、世界平和の推進に向けた努力について紹介した。

世界各国から集まった19人のフェローたちは今後、アバイ州クルチャトフ市にあるカザフスタン国立原子力センターや、旧ソ連時代に468回の核実験が行われた旧セミパラチンスク核実験場を訪れる予定だ。クルチャトフはかつて、ソ連の核兵器開発の拠点として一般立ち入りが禁止されていた都市である。

外交政策研究所のボラート・ヌルガリエフ所長(元駐日大使)は、カザフスタンが核兵器を放棄するという歴史的な決断を下した当時の状況を振り返り、フェローたちに自身の経験を語った。

「カザフスタンにとって、この問題は非常に痛ましく、かつ慎重な対応が求められる問題でした」とヌルガリエフ氏は語る。「核兵器が存在しない状況で、将来の安全と国民の福祉をどう確保するかについて、政府や各方面で多くの議論が交わされました。」

「私たちが選んだ道は、外国からの投資を呼び込み、主要国との間で政治的にも経済的にも建設的な関係を築いていくことでした。そのためには、核兵器という要素を何らかの形で解決する必要があったのです。」

プログラム参加者のひとり、ナイジェリア・バイエロ大学の再生可能エネルギー・持続可能性転換センターで核研究官を務めるアブバカル・サディク・アリユ氏は、核物理学者として核軍縮に強い関心を持っている。

「私は核物理学者として、カザフスタンの核実験場について以前から関心を持っていました。実際に核実験場がどのような場所なのかをこの目で見てみたいと長年思ってきました。カザフスタンが豊富なウラン資源を持ち、さらにIAEA(国際原子力機関)の低濃縮ウラン(LEU)バンクを保有していることもよく知っています」とアリユ氏は語った。

このIAEA低濃縮ウランバンクは、軽水炉の燃料として使用可能な90トンの六フッ化ウランを保管する現物備蓄施設であり、カザフスタン東部のウスケメン市にあるウルバ冶金工場に設置されている。同施設の安全性、保安、保障措置は、カザフスタンの関係当局が責任を持って管理している。

「カザフスタンが核兵器プログラムを放棄したという事実は非常に興味深く、私にとっても軍縮をさらに推進する上での励みになります。加えて、同国が核燃料供給国であるという点も、大きなインスピレーションになります。」

アリユ氏は、今回の訪問とフェローシップ・プログラムで得た知見を、ナイジェリアにおける軍縮推進や教育活動に活かしていく考えだ。

「ナイジェリアは核エネルギーの平和利用に関心を持っており、NPT(核不拡散条約)の締約国でもあります。現在は研究と教育目的の原子炉を保有しており、将来的には原子力発電の導入を目指しています」と語った。

「ナイジェリアは、核を含むあらゆる形の軍縮を強く支持しています」とアリユ氏は付け加えた。(原文へ

INPS Japan/ The Astana Times

Original URL: https://astanatimes.com/2025/06/kazakhstan-shares-nuclear-disarmament-experience-with-un-fellows/

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抑止から軍縮へ:グローバルな提唱者たちが正義と平和を訴える

【サンタバーバラ/東京INPSJ=浅霧 勝浩

核時代の幕開けから80年を迎えた2025年3月12日・13日、世界各地の平和活動家、外交官、教育者、被爆者が「希望の選択」シンポジウムに出席し、核兵器廃絶への新たな決意を共有した。シンポジウムは、核時代平和財団(NAPF)と創価学会インタナショナル(SGI)の共催により、サンタバーバラ市のウエスト音楽アカデミーで開催された。

Tomohiko Aishima of SGI opens the symposium with reflections on the dialogue between Daisaku Ikeda and David Krieger, which he witnessed during his time as a reporter at Seikyo Shimbun Credit: SGI
Tomohiko Aishima of SGI opens the symposium with reflections on the dialogue between Daisaku Ikeda and David Krieger, which he witnessed during his time as a reporter at Seikyo Shimbun Credit: SGI

2001年に刊行された、NAPF創設者デイビッド・クリーガー氏とSGI会長・池田大作氏による対談集『希望の選択』をテーマに、核廃絶の倫理的・戦略的緊急性があらためて提起された。

「これは単なる遺産ではありません」とNAPF会長のイヴァナ・ニコリッチ・ヒューズ博士は語った。「私たちは彼らの歩みを継承し、核の脅威のない世界を築くためにここに集まっています。」

SGI平和運動局長の相島智彦氏は、両者の対談を目の当たりにした経験に触れ、「彼らの対話は、単なる理念の共有ではなく、現実的な解決策に根ざした行動への呼びかけだったことが最も印象的でした」と語った。

核抑止への警鐘

Annie Jacobsen, Pulitzer Prize finalist and author of Nuclear War: A Scenario delivers the 20th Frank K. Kelly Lecture on Humanity’s Future at the start of the symposium. Credit:Nuclear Age Peace Foundation

基調講演では、ピュリッツァー賞最終候補の記者で『核戦争:一つのシナリオ』を出版した作家のアニー・ジェイコブセン氏が、「核抑止が破綻したらどうなるのか?」という問いを投げかけた。米国政府関係者から得た機密情報に基づく洞察をもとに、「核戦争はどのように始まっても、最終的には完全な破壊で終わる」と警告した。

続くパネルディスカッションでは、プリンストン大学のリチャード・フォーク名誉教授、社会的責任を果たすための医師団ロサンゼルス支部(RSR-LA)のジミー・ハラ博士、アメリカン大学のピーター・クズニック教授、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のメリッサ・パーク事務局長が登壇。ヒューズ博士の進行のもと、核政策の転換を訴えた。

The Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons, signed 20 September 2017 by 50 United Nations member states. Credit: UN Photo / Paulo Filgueiras
The Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons, signed 20 September 2017 by 50 United Nations member states. Credit: UN Photo / Paulo Filgueiras

翌日には、「抑止から軍縮へ:未来への道」と題するセッションが行われ、SGI軍縮・人権担当ディレクターの砂田智映氏が司会を務めた。砂田氏は、核兵器が国家の安全保障政策に組み込まれている現状に警鐘を鳴らし、「核兵器禁止条約(TPNW)第3回締約国会議では、核抑止そのものが生存への脅威であると確認された」と報告した。

2017年のTPNW国連交渉会議で議長を務めたエレイン・ホワイト元コスタリカ国連大使は、「意見の異なる者とも誠実に対話を続けることの重要性」を強調した。

証言に耳を傾ける

Nagasaki, Japan, before and after the atomic bombing of August 9, 1945./ Public Domain
Nagasaki, Japan, before and after the atomic bombing of August 9, 1945./ Public Domain

長崎の被爆者である和田征子さん(日本被団協)はビデオメッセージで登壇し、「被爆の現実を語り継いでほしい」と訴えた。

米国の「ダウンウィンダー(風下住民)」で甲状腺がんを患ったメアリー・ディクソンさんは、「私たちは意図的に被曝させられました。マーシャル諸島、カザフスタン、ポリネシアなどの犠牲者にも正義が必要です」と語った。

「核使用と核実験の遺産:正義への呼びかけ」と題されたセッションでは、SGI国連事務所軍縮プログラム・コーディネーターのアナ・イケダ氏が、被爆者や核実験被害者の健康・差別・心理的影響に関する証言を紹介。「核の正義とは、核の使用・実験・威嚇がいかなる状況でも正当化されないという意識を社会に根づかせること」と語った。

カザフスタンのセミパラチンスク旧核実験場での世代を超えた健康影響については、トグジャン・カッセノヴァ博士が研究成果を報告した。

キリバス代表およびYouth for TPNW代表として参加したクリスチャン・シオバヌ氏は、被害者支援と環境回復のための国際基金設立を提案。赤十字国際委員会(ICRC)のヴェロニク・クリストリー氏は、人道の視点から軍縮の必要性を訴えた。

Anna Ikeda of SGI (center) speaks as a panelist on the second panel discussion, “Legacy of Nuclear Use and Testing: A Call for Justice” Credit: SGI
Anna Ikeda of SGI (center) speaks as a panelist on the second panel discussion, “Legacy of Nuclear Use and Testing: A Call for Justice” Credit: SGI

気候正義との交差点

「気候と核の正義の交差点:若者の力で変革を」と題された最終パネルでは、SGI軍縮プログラム・コーディネーターの堀口美幸氏が司会を務めた。

NuclearBan.USのアンドゥイン・デヴォス氏は、気候危機への不安から核軍縮運動に参加した経緯を語り、「核兵器に費やされる資源を気候対策に回すべきだ」と訴えた。

若手活動家のケヴィン・チウ氏とヴィクトリア・ロク氏は、核政策に若者の声を反映させる重要性を共有。堀口氏は「地球は祖先から受け継いだものではなく、子どもたちから借りている」というアメリカ先住民の言葉と、「希望とは若さの別名である」との『希望の選択』の一節を引用し、若者が理想を掲げて時代を切り開く力を象徴するものとして紹介した。

Miyuki Horiguchi of SGI (left) moderates the final panel discussion, “The Intersection of Climate and Nuclear Justice: Empowering Youth for Change” Credit: SGI
Miyuki Horiguchi of SGI (left) moderates the final panel discussion, “The Intersection of Climate and Nuclear Justice: Empowering Youth for Change” Credit: SGI

文化がもたらす変革

映画監督アンドリュー・デイヴィス氏とアーティストのステラ・ローズ氏は、芸術が意識を変え行動を促す力について語った。「芸術は単に真実を映すだけでなく、それを感じさせ、行動へと導くものです」とデイヴィス氏。

シンポジウムの宣言文でも、連帯と創造性を通じた平和の促進と、文化的関与の役割が強調された。

閉会宣言:「希望」を選ぶ

シンポジウム後に発表された「希望の選択」宣言は、終末時計が「午前0時まで残り89秒」と迫る中、「核兵器のない世界は、意識的で集団的な選択によってこそ実現する」と強調。「私たちは絶望ではなく、希望を選ぶ。」と述べている。(英文へ

「希望の選択」宣言の要約
「希望の選択」宣言では、核兵器廃絶への緊急性が改めて強調された。宣言は、核抑止の論理が安全保障ではなく破滅をもたらすリスクであると断じ、核の使用・威嚇・実験がいかなる状況でも正当化されないとの倫理的立場を明示している。
さらに、核のない世界は「選択」の問題であり、連帯、創造性、市民社会の力を通じて築くべきものであると呼びかけた。文化や芸術の力にも言及し、想像力と共感を育む表現活動が、核兵器のない未来を築く鍵であると認識された。
宣言は、「希望を選ぶことは、責任ある行動を選ぶことであり、未来を信じることである」との言葉で結ばれている。(宣言の全文はこちらへ

This article is brought to you by INPS Japan in collaboration with Soka Gakkai International, in consultative status with the UN’s Economic and Social Council (ECOSOC).

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出生登録の進展回復は子どもの保護に不可欠

【シドニーIPS=キャサリン・ウィルソン】

多くの国では当たり前とされている新生児の出生登録だが、これは子どもの健康、保護、そして生涯にわたる福祉に深く関わる極めて重要な行為である。今世紀初頭には世界的に出生登録率が上昇したものの、過去10年間で再び低下傾向に転じている。特に太平洋諸国やサブサハラ・アフリカの一部では深刻な課題に直面しており、技術革新の導入、政治的意思の強化、そして親たちの意識向上が、こうした傾向を逆転させる鍵となる。

国連児童基金(UNICEF)の報告によると、現在5歳未満の子どものうち約75%が出生登録を受けており、2000年の60%から改善している。

しかし、ニューヨークのUNICEF本部で子どもの保護を担当するバスカル・ミシュラ氏は、近年の進展が鈍化していると警鐘を鳴らす。

「特にサブサハラ・アフリカでは急速な人口増加が登録システムの能力を上回っており、インフラの脆弱さや資金不足、政治的な優先順位の低さも要因となっています。さらに、登録には高額な手数料や煩雑な手続き、アクセスの困難さといった障壁もあります。」とミシュラ氏はIPSの取材に対して語った。

こうした障害は、出生登録率が41%にとどまる東アフリカや、26%の太平洋諸国にも見られる。国別では、タンザニアが29%、パプアニューギニアが13%、ソマリアとエチオピアはわずか3%にすぎない。世界で推定6億5400万人の5歳未満の子どもたちのうち、約1億6600万人が未登録であり、2億3700万人が出生証明書を持っていない。

「システムと社会的な障害、さらに新型コロナウィルスの余波によって過去の成果が後退しました。2030年までにすべての子どもの出生登録を達成するという持続可能な開発目標(SDGs)を実現するには、現在の進捗スピードを5倍に加速させる必要があります。」とミシュラ氏は強調する。

In Papua New Guinea, the birth registration rate is being raised with the aid of mobile registration, an important means to reach rural and remote communities and help protect children living in vulnerable circumstances. Mangem IDP Camp, Madang Province, PNG. Credit: Catherine Wilson/IPS

この課題に取り組んでいる国の一つが、太平洋諸国で最も人口の多いパプアニューギニア(PNG)だ。約1100万人が暮らすこの国は、山脈が連なる本島と点在する島々から成り、多くの人々が山道や未舗装の道路を何時間もかけて移動しなければならない環境にある。

人口の80%以上が農村部に住んでおり、北東部のマダン州では、カントリー・ウィメンズ・アソシエーションが妊産婦への保健啓発に取り組んでいる。

「一部の女性は非常に遠隔地に暮らしており、医療施設に行くには何時間もかかります。そのため、出産は村で行うのが一般的です。医療施設が老朽化している上、医療従事者もいない地域もあります。これが最大の課題です」と同団体マダン支部のタビサ・ワカ氏は語る。

母親が子どもの出生を登録するには、バスを乗り継ぎながら悪路を進み、登録所まで長距離を移動しなければならず、交通費の負担も重い。

「情報不足も大きな障害です。農村の母親たちは出生登録の重要性を知らされていませんし、地域の伝統や慣習によって、出産は村でしかできないとされているところもあります。」とワカ氏は続ける。政府の統計によれば、PNGでは出生の半数以上が医療機関ではなく自宅で行われている。

それでもPNGでは近年、大きな進展が見られる。2023年から2024年にかけて、出生証明書の発行数は2万6000件から7万8000件へと3倍に増加。昨年7月にはUNICEFの支援で、手持ち型の出生登録デバイス44台が政府に提供され、地域への訪問登録が開始された。

Births are registered and birth certificates issued to mothers at Nijereng Primary Health Centre, Adamawa State, Nigeria. Photo credit: UNICEF/Esiebo

さらに昨年12月、同国議会は国民身分登録制度を整備する法案を可決。ジェームズ・マラぺ首相は11月に「私たちの政府は全国にわたる包摂的な政策を推進しており、正確かつ信頼できる身元情報は、公共サービスの提供や国民の福祉に極めて重要です」と述べている。

UNICEFパプアニューギニア事務所の子どもの保護担当責任者ポーラ・バルガス氏は、「目標は年間50万人の出生登録です。その実現には、技術の拡充とキットの全国展開、そして証明書発行の分権化が必要です。」と指摘する。「現時点では、手作業で出生証明書に署名する権限がある職員が国内に1人しかおらず、これが大きなボトルネックになっています。」

一方、世界の未登録児の半数以上が暮らすサブサハラ・アフリカでは、エチオピアも同様の課題に直面している。

アフリカ東部の角(ホーン)に位置するエチオピアは、PNGの2倍以上の面積を持ち、出生率は人口1000人あたり32人で、世界平均の16人の2倍となっている。1億1900万人を超える人口の大半が広大な遠隔地に住んでいる。

政府は出生登録を無料としており、医療拡充員への研修も進めているが、都市部と農村部との格差は依然として大きい。登録完了のために複数回役所に行かなければならず、距離と交通費が農村の親たちにとっては大きな負担となっている。南部諸民族州(SNNP)では出生登録率がわずか3%で、首都アディスアベバの24%と比べても大きな差がある。

エチオピア・ゴンダール大学の公衆衛生学助教授タリク・ニガツ氏は、次のような改善策を提案する。「出生登録サービスを保健システムに統合し、リソースを確保して介入を支援し、リアルタイムでの出生報告が可能なインフラを整備すべきです。」

UNICEFもまた、エチオピアの不安定な地域や人道危機下にある遠隔地の医療従事者にモバイル登録キットを提供している。ミシュラ氏は「これにより、緊急時や避難中に生まれた子どもたちも法的な身元と保護から取り残されることがないようにしています」と述べた。エチオピアでは2020年から2022年の内戦後、北部ティグレ地域で人道危機が続いている。

一部の地域社会には出生登録に対する誤解や迷信も残っていると、ニガツ氏は指摘する。

「生後すぐに人間として“数える”と不運を招くという迷信が一部にあります。新生児が生き延びるか分からない段階では、人間として認めるべきではないと考えられているのです。」この背景には、エチオピアの新生児死亡率が1000件中30件と高く、そのうち半数が出生24時間以内に亡くなるという現実もある。

Birth registration is the first step to reducing the risk of children being exploited, abused, trafficked and coerced into child marriage. A young mother in Mozambique ensures her newborn is protected with a birth certificate and legal identity. Photo credit: UNICEF/Fauvrelle

出生登録が一生の重要性を持つことを、社会全体で理解しなければならない。公式な存在を持たない無数の子どもたちは、貧困からの脱出、性的搾取や虐待、児童労働や人身売買のリスクから身を守ることが難しくなる。法的保護や投票権、正規雇用、財産権の取得にも障害が生じる。

しかし出生登録は、子どもたちの保護と福祉に向けた第一歩にすぎない。

「登録が効果を持つのは、それがワクチン接種、病院での出産、学校入学などのサービスと連携している場合に限ります。」とミシュラ氏は語った。

そしてより広い視点で見ると、出生および人口データの正確な把握は、政府が公共サービスや国家開発を計画する上で不可欠であり、SDGsの進捗を評価するためにも極めて重要である。(原文へ

This article is brought to you by IPS Noram, in collaboration with INPS Japan and Soka Gakkai International, in consultative status with the UN’s Economic and Social Council (ECOSOC).

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米国が世界の舞台から後退する中、軍事衝突が歴史的水準に

オスロ、ノルウェーIPS=ピース・リサーチ・インスティチュート・オスロ(PRIO)】

世界は第二次世界大戦後で最も暴力的な時代に突入している。PRIOが発表した報告書『Conflict Trends: A Global Overview(紛争動向:世界概観)』によると、2024年には過去70年以上で最多となる36か国で61件の国家ベースの武力衝突が記録された。

「これは単なる一時的な急増ではありません。構造的な変化です。現在の世界は10年前と比べ、はるかに暴力的で分断が進んでいます」と、PRIOの研究ディレクターで報告書の筆頭著者であるシリ・オース・ルスタッド氏は警告する。

「米国をはじめとする大国が、国際的関与から後退する時ではありません。世界的な暴力の増加を前に孤立主義に転じるのは、長期的にみて甚大な人的被害をもたらす大きな過ちです。」

この報告書は、スウェーデンのウプサラ紛争データプログラム(UCDP)のデータに基づいている。
それによれば、2024年の戦闘による死者数はおよそ129,000人で、2023年と同水準にとどまったものの、この数値は過去30年間の平均を大きく上回っている。2024年は冷戦終結以降で4番目に致命的な年となった。

戦場で特に注目を集めたのは、ロシアのウクライナ侵攻(推定死者76,000人)とガザ戦争(同26,000人)の2大戦争だ。しかし、これらの大規模戦争は氷山の一角にすぎない。

特に懸念されるのは、単一国家内で複数の武力衝突が発生しているケースが急増していることだ。現在、紛争に巻き込まれている国の半数以上が2件以上の国家ベースの紛争を抱えており、そのうち9か国では3件以上の武力衝突が同時進行している。

「いまや紛争は孤立したものではなく、重層的で国境を超え、終結が困難になっています。」とルスタッド氏は述べる。「どの政権の下であろうと、米国が国際的連帯を放棄することは、第二次世界大戦後に同国が築いてきた安定そのものを手放すことになるのです。」

報告書では、武装勢力の活動拡大が新たな暴力の主因となっていることも明らかにされている。イスラム国(IS)は依然として12か国で活動を継続しており、西アフリカの5か国ではJNIM(イスラムとムスリムの支援のための集団)が勢力を拡大している。

最も多くの紛争が記録されたのはアフリカ地域で28件。これは10年前のほぼ倍に相当する。次いでアジアが17件、中東が10件、欧州が3件、アメリカ大陸が2件だった。

ルスタッド氏は次のように警鐘を鳴らしている。

「我々の分析は、世界の安全保障状況が改善していないどころか、深刻に断片化していることを示しています。国際社会の継続的な関与がなければ、市民の安全、地域の安定、そして国際秩序そのものがさらに深刻なリスクにさらされるでしょう。」(原文へ

👉 こちらからPRIO報告書『Conflict Trends: A Global Overview, 1946-2024』全文をダウンロードできます。

INPS Japan/IPS UN Bureau Report

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視点|忠誠か、駆け引きか? トランプがマスクを見限る中、湾岸諸国が再考する賭け(アハメド・ファティATN国連特派員・編集長)

『America First, The World Divided: Trump 2.0 Influence』より分析抜粋

【ニューヨークATN=アハメド・ファティ】

数週間前、イーロン・マスクがドナルド・トランプ大統領とともに湾岸諸国を巡るハイレベル訪問団に加わった際、そのメッセージは明確だった。米国は技術と革新の競争において再び主導権を握り、湾岸諸国はただの観客ではなく、共同投資者でもあるということだ。

Ahmed Fathi.
Ahmed Fathi.

サウジアラビア、カタール、アラブ首長国連邦の政府では、マスクはまるで王族のように歓迎された。テスラのヒューマノイドロボット「オプティマス」が披露され、スターリンクの中東展開も示唆された。会場ではAI(人工知能)、インフラ、火星移住といった未来構想が、金色に装飾された会議室で自由に語られていた。

しかし今、トランプがマスクとの関係を公然と断絶し、連邦契約の打ち切りや「数十億ドル規模の支援」の撤回を宣言する中、湾岸諸国は厄介な立場に置かれている。つまり、「テック界の先駆者」と「政治の覇者」の狭間に挟まれているのだ。

湾岸の戦略的ジレンマ

拙著『America First, The World Divided』の第10章「アメリカ・ファーストの世界進出」ではこう書いた。

「ポスト・グローバル化時代の湾岸諸国は、資本と忠誠の両方の言語を話す術を身につけた。彼らの影響力は、どちらの側につくかではなく、“あえて決めない”ことで生まれる。」(p.209)

しかし今回に限っては、中立では済まされないかもしれない。 サウジアラビア、UAE(アラブ首長国連邦)、カタールはいずれも、AI都市、宇宙開発、自動運転、デジタルインフラなど未来経済に深く関与しており、その中核にマスクの存在がある。一方で、政権に返り咲いたトランプは依然として米国の武器供与、外交的後ろ盾、政治的恩恵の“門番”であり続けている。

第7章「忠誠というレバレッジ」で私はこう警告した:

「トランプ2.0政権下では、外交関係は条約ではなく忠誠心によって試される。大統領との“私的な一致”こそが入場料だ。」(p.157)

湾岸諸国とマスクの関係

サウジアラビア

2025年4月、テスラはリヤドに旗艦店をオープンし、サウジでの事業展開を公式に開始。トランプとの中東訪問中、マスクはサウジ政府がスペースXのスターリンクを航空・海運用途で承認したと発表。関係の修復を象徴した。

カタール

マスクはカタールの政府系ファンドの会長と会談し、投資協議を行った。2025年のカタール経済フォーラムにも登壇し、同国のテック・グリーンエネルギー分野での台頭を印象づけた。

UAE(アラブ首長国連邦)

「Stargate UAE」プロジェクトが2025年5月に発表された。エミラティ企業G42と、Nvidia、OpenAI、Cisco、Oracle、日本のソフトバンクなど米系企業との協業により、世界最大規模のAIデータキャンパス構築を目指す。これはUAEの国家AI戦略の一環であり、米ハイテク企業との連携を強化する動きだ。

今後の戦略的選択肢

湾岸諸国にとって:

  • バランス外交の維持:トランプ政権ともマスクとも関係を保ち、国家利益の最大化を図る。
  • パートナーの多様化:特定企業に依存せず、テック分野での協力相手を分散させ、リスク管理を強化。

イーロン・マスクにとって:

  • 外交的対話:米政権との溝を埋め、国家利益への貢献を示すことで不安を和らげる。
  • 国際的な提携強化:米国以外の市場との連携を強め、地政学的リスクへの耐性を高める。
結論:複雑な同盟関係をどう乗り越えるか

今回のトランプとマスクの対立は、単なる個人的な衝突ではなく、地政学的なストレステストだ。湾岸諸国にとっての焦点は、どちらが正しいかではなく、「どちらが影響力を持つか」である。

「トランプの世界では、彼に背いても生き残れるかもしれないが、決して繁栄はできない。」(第9章「忠誠の代償」、p.193)

マスクには、技術、知性、資金があるかもしれない。だが、ホワイトハウスの“政治的認可”がなければ、彼の中東戦略は始まる前に静かに幕を閉じるかもしれない。(原文へ

アハメド・ファティは、American Television Network (ATN)の国連特派員で国際問題アナリスト。著書『America First, The World Divided: Trump 2.0 Influence』では、外交、多国間主義、権力と認識、そしてグローバル政治の本質を論じている。

Original URL: https://www.amerinews.tv/posts/trump-musk-and-the-gulf-states

INPS Japan/ATN

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第2期トランプ政権:多国間主義と国連への試練(アハメドファティATN国連特派員・編集長)

関税と混乱――トランプ貿易戦争がもたらした持続的な世界的影響

金持ちがますます富み、貧困者がさらに苦しむ世界 — そして増加する億万長者

なぜ海洋を中心に据えたグローバル開発が必要なのか

第3回国連海洋会議(UNOC 3)が6月9日から13日にかけてフランス・ニースで開催され、各国首脳、科学者、市民社会、企業リーダーが一堂に会し、地球最大かつ最も重要な生態系とも言える「海洋」の静かなる崩壊を食い止めるという共通の目標に取り組む。

【ニューヨークIPS=フランシーヌ・ピックアップ】

海洋は単なる広大な水域ではなく、生命の基盤であり、持続可能な開発を推進する重要な原動力である。人間の発展と海洋との複雑な相互関係は、海洋ガバナンスと持続可能性がグローバルな進展にとっていかに不可欠であるかを物語っている。これは特に**小島嶼開発途上国(SIDS)**において顕著であり、そこでは海は資源であると同時に、アイデンティティと生存そのものと深く結びついている。

SIDSは世界最大規模の排他的経済水域(EEZ)を有しており、世界の動植物・爬虫類の20%が生息する広大な海洋および沿岸地域を保護している。多くの国が自国海域の広範囲を海洋保護区に指定し、グローバルな自然保護の最前線に立っている。こうした自然資産は観光業や漁業といった海洋依存型経済の根幹を成している。しかし同時に、SIDSは気候変動の最前線にも立たされている。

海面上昇、激甚化する気象災害、環境悪化の加速はもはや将来の脅威ではなく、すでに現実として直面している問題である。SIDSは、将来を見据えた包括的な開発アプローチを採用しているにもかかわらず、債務の悪循環に陥っており、今後間違いなく増加するであろう気候ショックへの備えと対応能力を損なわれている。

解決策の「海」

SIDSはパリ協定での**「1.5度」目標**の合意に大きく貢献した国々でもある。彼らは、海洋・沿岸資源の保全と持続可能な利用、再生可能エネルギーの推進、デジタル化と地域能力の強化、雇用創出など、複数の課題を統合的に解決する大胆なアプローチを先導している。

2024年5月に開催された第4回小島嶼開発途上国国際会議(SIDS4)と、「アンティグア・バーブーダ・アジェンダ(ABAS)」の採択により、今後10年間の行動計画が策定された。これは気候・生物多様性への取り組みの強化、海洋の持続可能な利用の促進、レジリエンス強化を柱としている。

また、SIDSは昆明・モントリオール生物多様性枠組み(KMGBF)、パリ協定、国連砂漠化対処条約(UNCCD)戦略枠組みにも積極的に貢献しており、海洋保全や陸海両面からの環境劣化対策を優先事項としている。

「ライジング・アップ・フォー・SIDS」(Rising Up for SIDS)は、今後10年間に向けた変革的ビジョンを描く戦略であり、UNDPとSIDSが約60年にわたり築いてきた協力関係、そして**小島嶼国連合(AOSIS)**とのパートナーシップを基盤としている。これにより、政策や実践の中でSIDSのニーズが確実に反映されるようになっている。

**ニースでの第3回国連海洋会議(6月9日~13日)**には、こうしたSIDSの革新的かつ拡張可能な解決策が示され、彼らが「海洋ポジティブ(ocean-positive)」な取り組みの最前線にいることが明らかにされるだろう。世界はその声に耳を傾けなければならない。以下、SIDSが示す3つの重要な教訓を紹介する。

1.海洋は人間開発の原動力である

SIDSにとって海洋は境界ではなく、まさに「生命線」である。小規模漁業は何百万人もの食と生計を支えている。海洋・沿岸観光はGDPの多くを占めている。ブルーカーボン生態系(マングローブ、海草、塩性湿地)は炭素を隔離し、海岸を守り、多様な生物の生息地となっている。海洋の遺伝的・生物学的な豊かさは、将来の医療や持続可能な産業、気候適応の可能性も秘めている。

SIDSでは、海洋の取り組みと経済開発は切り離せない。環境リスクの深刻化は経済的不安定さを悪化させているが、海洋経済の活用は食料安全保障、観光、貿易、気候レジリエンスに資する持続可能な成長と多様化を促す。

しかし、SIDSだけでこの道を切り開くことはできない。グローバルなパートナーシップと国際的な資金支援が不可欠であり、誰ひとり取り残さない包摂的で公平な開発の実現が求められている。

2.統合的な解決策が必要である

海面上昇、生態系の劣化、経済的脆弱性は別個の問題ではない。その解決策も同様である。SIDSでは沿岸生態系の修復・保護の取り組みが持続可能な観光や漁業にもつながっている。こうした取り組みは人間開発の機会を広げ、雇用と繁栄を生み出す。

「島全体のアプローチ(Whole of island approach)」は、持続可能な開発の力強いモデルとなっている。脱炭素化と地域社会のエンパワーメント、生物多様性の保護と機会・安全保障の拡大、伝統的・地域の知恵を基盤とした革新が統合されている。

SIDSは、複雑に絡み合う課題に対して、海洋を中心に据えた統合的な解決策を世界に示している。

3.イノベーションは加速装置である

SIDSは、世界に応用可能な革新的な海洋ベースの解決策を試行・拡大している。多くの島では、海洋経済分野への移行と優良事例の創出に向けた新たな投資可能な取り組みが進行中である。

セーシェルは世界初の「ブルーボンド」を発行し、海洋保全を資金面で支えている。キューバでは自然ベースのソリューションでサバナ・カマグエイ生態系の劣化が回復しつつある。モルディブでは地域コミュニティが使い捨てプラスチック禁止に成功している。

新たに開始された**GEF資金によるUNDP主導の「ブルー&グリーン・アイランズ」**イニシアティブは、都市開発、食料生産、観光の3つの主要経済セクターにおいて自然ベースのソリューションを促進している。これはシステム全体の変革を目指す世界初の取り組みであり、グローバルな環境利益と持続可能な開発の両方を推進する。

また、グローバル・コーラルリーフ基金のような革新的なパートナーシップは、公共・民間・フィランソロピー資金を呼び込み、民間投資のリスクを軽減しつつサンゴ礁生態系の保護と回復を支えている。これらの新たなモデルはすでに他国にも波及しつつある。

SIDSからの海洋アクション

第3回国連海洋会議(UNOC3)や、6月30日から7月3日に開催される第4回開発資金国際会議(FfD)に際して、メッセージは明確である。世界はSIDSの先駆的な解決策をさらに拡大・支援すべき時にある。SIDSのリーダーシップを後押しすることは、人と地球がともに繁栄する新たな「機会の海」を生み出し、SIDSだけでなく世界中の海岸線に恩恵をもたらす持続可能な開発の道を切り開くことにつながる。(原文へ

フランシーヌ・ピックアップは、国連開発計画(UNDP)政策・プログラム支援局 副局長・副アシスタント事務局長

INPS Japan/IPS UN Bureau

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人口は増加する一方で雇用は減少──米国の消費主義に左右される世界の雇用市場

【国連IPS=マキシミリアン・マラウィスタ】

アジア太平洋地域では雇用やGDP成長が活況を呈しているように見えるものの、その市場は米国の消費主義に依存した不安定で脆弱な構造を抱えている可能性が、複数の報告書から明らかになっている。

国際労働機関(ILO)が2025年5月に発表した「世界の雇用及び社会見通し」によれば、世界の雇用市場に関する予測は大幅に下方修正されており、その背景には依存性の高い脆弱な雇用市場の現状がある。

報告によると、世界のGDP成長率予測は3.2%から2.8%に引き下げられ、それに伴い雇用成長率も1.7%から1.5%へと減少、700万人分の雇用減少につながるとされている。この原因の根底には米国の消費主義があり、高関税による貿易の混乱が直接的に雇用減少に結びついていると分析されている。

世界市場が一国の消費に依存している状況は、雇用市場の弱体化を象徴している。さらに、労働所得比率(GDPに占める労働者の取り分)は2014年の**53%から2024年には52.4%**に低下しており、実質購買力平価(PPP)の減少を反映している。

スキル構造の変化も顕著だ。高所得・中所得国では低~中スキル職から高スキル職への移行が進んでいる。2013年から2023年の間に、職務に対してスキル不足の労働者は37.9%から33.4%に減少した一方、スキル過剰の労働者は15.5%から18.9%に増加した。

さらに、生成AI(ジェネレーティブAI)による影響も進行している。現在、4人に1人の労働者が業務の一部がAIによって自動化される可能性があるとされ、16.3%が中程度の影響、7.5%が高度な影響に晒されている(特に高スキル職において)。

不確実性が雇用予測を左右

いま、世界の市場が拡大しインフレ圧力が緩和しているにもかかわらず、企業は雇用拡大に慎重な姿勢を取っており、既存の従業員は維持するものの新規雇用には慎重になっている。地政学的混乱と構造的な転換が雇用情勢を大きく変え、企業にとって前例のない新たな局面を迎えている。

インフレ率はほとんどの国で低下が見込まれており、2025年には4.4%まで下がるとされている(2024年は5.8%)。これは世界的な経済拡大の縮小とも関連している。米国の報復関税(2025年4月)は世界貿易の構造を大きく変化させ、全地域にわたって同期的な景気減速を引き起こしている。

これにより企業は新たな戦略を模索するか、新たな市場条件に適応せざるを得なくなっている。

2025年には4億700万人が就職を希望しているが職に就けておらず、その結果、質の低い職や不安定な職に甘んじる人々が増えている。

アジア太平洋地域は世界最速の成長を続ける経済圏であり、3.8%の成長が見込まれている。これに対し、アメリカ大陸は1.8%、欧州・中央アジアは1.5%。

しかし、2023年の推定ではアジア太平洋地域の5600万件の雇用がサプライチェーンを通じて最終需要に依存しており、これは世界で最も高い依存度であり、米国の輸入需要に左右される最大の脆弱性を抱えている。

雇用成長率はアジア太平洋地域が1.7%(3400万件)と最も高く、次いでアフリカ、アメリカ大陸は1.2%、欧州・中央アジアは0.6%にとどまっている。

世界的逆風の中の経済成長と生産性

2014年から2024年の間に世界のGDPは33.5%成長、アジア太平洋は55%成長しており、コロナ禍を経た力強い回復を示している。

ILOの報告によれば、アジア太平洋の成長は新規雇用創出ではなく生産性向上によるものであり、これとは対照的にアフリカとアラブ諸国では経済成長が雇用増を伴っている。

インフォーマル(非正規)雇用はなおも正式雇用をわずかに上回っており(+1.1%)、現在世界で20億人(全労働者の57.8%)がインフォーマル労働に従事している。

アフリカでは労働者の85%がインフォーマル雇用であり、過去10年間で29.3%成長している。一方、アジア太平洋では過去10年でインフォーマル雇用は11.3%減少しており、正規・非正規を問わず経済成長への寄与は変わっていない。

労働所得比率はアフリカ、アメリカ、欧州・中央アジアでは低下しているが、アジア太平洋とアラブ諸国では増加しており、技術革新や市場構造の地域差を示している。

職種構成は国ごとに大きく異なり、高所得国ほど農業や単純労働から専門職・技術職・管理職にシフトしており、技術・教育志向が強まっている。

世界全体では、いまだに半数以上の労働者が職務とスキルがミスマッチしているが、この状況は過去10年で大幅に改善しており、教育水準の向上が貢献している。

変化の激しい雇用情勢

かつてない速度で世界の雇用市場は変化している。今回の報告は、こうした雇用市場の不安定性と、地域ごとの要因がいかに異なる影響を及ぼしているかを浮き彫りにしている。

農業・縫製産業・低スキル労働中心の国々と、生産性・教育・技術スキルを重視する国々とでは、異なるアプローチながら類似した経済成果が見られ、安定したグローバル経済の「万能解」は存在しないことが示されている。

SDGs Goal No. 8
SDGs Goal No. 8

ILOのギルバート・フンボ事務局長は、「今回の雇用情勢に関する報告は厳しい現実を示しているが、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)創出の道しるべにもなる」と述べた。

「社会保障の強化、スキル開発への投資、社会対話の推進、包摂的な労働市場の構築によって、技術革新の恩恵がすべての人に届くようにしなければならない。そのためには、緊急性・野心・連帯が不可欠だ」と強調した。

とりわけ「包摂性の確保」は、世界経済を拡大するうえで最重要な要素といえる。各国が同じ方向に進まないのであれば、それぞれの地域特性と経済の重点分野に応じた対応が求められる。

国際通貨基金(IMF)のクリスタリナ・ゲオルギエバ専務理事は2月に、「各国政府は政策の優先順位を転換しつつある」と述べた。「米国では貿易政策、税制、公共支出、移民政策、規制緩和といった分野で重大な政策変更が行われつつあり、米国経済と世界経済全体に影響を及ぼしている…。政策変更の影響は複雑で、今後数か月の間により明確になるだろう」と語った。

ゲオルギエバ氏はまた、現代は「不確実性の時代」であり、米国の貿易政策がその不確実性をさらに高めているとも指摘し、各国の政策がそれぞれの経済構造に応じて異なる結果を生んでいることを改めて示した。(原文へ

INPS Japan/IPS UN Bureau

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揺らぐ中立外交──ネパール、北と南のはざまで

ネパールの「等距離外交」戦略が揺らぎ始めている。カトマンズは北と南から相反する圧力にさらされている

【カトマンズNepali Times=シュリスティ・カルキ】

260年に及ぶ歴史の中で、ネパールは2つの巨大な隣国との間で均衡を保つことに努めてきた。歴代の統治者たちは、インドと中国という、必ずしも友好関係にない隣国双方と友好関係を築こうとしてきた。

しかし、この綱渡りのような外交がいかに繊細なものであるかは、先週の二つの出来事で改めて浮き彫りになった。

先月、カシミールで起きた襲撃事件でネパール人1人が死亡した。今週カトマンズで開かれた地域テロ対策に関するセミナーでは、ネパールがパキスタン非難に及び腰だったことで、インドを不必要に苛立たせたという見方が示された。

一方、カトマンズ国際山岳映画祭(KIMFF)では、中国の資金提供による『シーザン(Xizang)パノラマ』という枠組みでチベット関連の中国制作ドキュメンタリーが上映された。これに対しては直ちに反発が起き、中国資金の受け入れと「Xizang」というチベットに対する中国名の使用が問題視された。上映作品は「植民地主義的プロパガンダ」であり、北京のチベット文化や民族的アイデンティティ、独立・自治の抹消の試みだとの批判が寄せられた。

「“Xizang”という用語は単なる地理的呼称ではありません。これは中国が国際社会における“チベット”という呼称を意図的に置き換えようとするキャンペーンの一環であり、独自かつ豊かな芸術・文学・精神文化のアイデンティティの抹消を狙っています。」と、チベット人映画制作者や作家たちのグループがKIMFF開催中にネパール・タイムズ紙に寄稿した。

ネパール政府は外交文書ではすでに「Xizang」という呼称を使用し始めており、中国がネパール政府に働きかけてKIMFFにチベット関連作品を上映させたのではないかとの憶測も流れた。KIMFF側は本紙からのコメント要請に応じなかった。

国際関係専門家のインドラ・アディカリ氏は「私たちは市民社会やメディアにおいてチベット人コミュニティの権利とアイデンティティを擁護することはできますが、外交上の呼称は中国との関係を考慮した政府の外交方針に沿うものとなります」と述べている。

今回のテロ対策セミナーや映画祭の騒動は、ネパール政府と市民社会が2つの隣国からの相反する圧力にますます挟まれている現状を象徴する事例の一つにすぎない。

ドナルド・トランプ政権下で米国の国際的影響力が後退し、中国とインドといった新興大国がその空白を埋めつつある。結果として、政治的に弱体化したネパール国家はこれまで以上に従属的な立場に追い込まれている。

北と南からの圧力にさらされる中、ネパールの「等距離外交」戦略はほころびを見せ始めている。

元南アジア地域協力連合(SAARC)事務総長のアルジュン・バハドゥール・タパ氏は「最近のネパールの政治指導者たちは“国益”の定義をその時々の都合に合わせて変更しています。つまり、政権によって対中・対印外交の姿勢が変わるのです」と指摘する。

とはいえ、ネパールが主体性を示す場面もある。リムピヤドゥラ国境問題ではインドの反発を招いたが、パハルガームでの襲撃事件でもネパール人が犠牲になったにもかかわらず、ネパール政府はパキスタンを名指しで非難することを拒んだ。

インド政府は「等距離外交」という言葉自体を快く思っていない。また、ネパール国内でも、地理的近接性、文化的親和性、経済・貿易関係を考慮したより現実的な対印外交を模索すべきとの意見がある。

アディカリ氏は「そろそろ“等距離”という概念を超え、より現実的なアプローチをとるべき時かもしれません。ネパールの対印・対中関係は性質が異なっており、その違いを外交方針にも反映させるべきです。」と述べている。

一方、タパ氏は「欧米諸国の関心低下がインドや中国をより強硬にさせている」という見方には慎重である。「確かに欧米の関心は薄れていますが、米国や欧州がこれまでインドや中国以上にネパールに影響力を持ったことはありません。」と語る。

さらに、ネパール国内で高まっている「ヒンドゥー君主制復活」運動について、両隣国がどう見ているのかという憶測も飛び交っている。王政復古を掲げるRPP(国民民主党)とRPP-Nは連携を組んだものの、最近は首都での集会への参加者が減少しており、抗議活動の場を地方都市へと広げる方針に転じている。

インドのメディアはカトマンズでの王政復古集会を大きく報道しており、ほぼIPLクリケット並みの扱いだ。一方、中国はこの件に関して多くを語っておらず、むしろネパール国内の分裂した共産勢力をまとめることに関心があるようだ。

インドの与党BJPと中国共産党には、それぞれネパールの望ましい政権像があるものの、両国が必ずしも対立しているわけではない。インドと中国政府はいずれも、自国間の緩衝地帯であるネパールに政治的安定を求めている。

アディカリ氏は「BJPの一部にはネパールをヒンドゥー国家化したいと考えている勢力があり、ヒンドゥー君主制復活を望む声も存在します。」と話す。その一方で「中国側は安定した協力的な政権を求めており、できれば左派連合による政権を望んでいます。」と述べた。(原文へ

著者:シュリスティ・カルキ
シュリスティ・カルキ氏はネパーリ・タイムズの特派員。2020年にインターンとして同紙に参加し、カトマンズ大学芸術学部を卒業後、正式に編集部メンバーとなった。政治、時事、芸術、文化に関する記事を執筆している。

INPS Japan/Nepali Times

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ドイツのアナレーナ・ベアボック氏、第80回国連総会議長に選出

【国連ATN=アハメド・ファティ】

ドイツの前外相アナレーナ・ベアボック氏が月曜日、第80回国連総会(UNGA)議長に選出された。ロシアによる反対を受け、異例の秘密投票が実施され、167票という支持を得ての当選となった。

Ahmed Fathi.
Ahmed Fathi.

44歳のベアボック氏は、2025年9月9日に正式に議長職に就任し、カメルーンのフィレモン・ヤン現議長の後任となる。193加盟国を擁する国連総会において、女性としては5人目、ドイツ人としては約半世紀ぶりの議長就任となる。世界的な分断が進む中、多国間外交にとって象徴的かつ戦略的な節目となった。

通常は満場一致で形式的に選出されるこの議長選出だが、今回は異例の展開となった。ロシアは、ウクライナへの全面侵攻以降、ドイツの外相としてロシアを強く批判してきたベアボック氏の指名に反対。そのため総会は秘密投票を実施し、国連の意思決定過程にも地政学的緊張が入り込んでいる現状を浮き彫りにした。

難しい状況下での選挙だったが、ベアボック氏は圧倒的多数を獲得。14か国が棄権し、別のベテランドイツ外交官ヘルガ・シュミット氏に7票が投じられたが、大多数の加盟国がベアボック氏の指導力を信任した形だ。

ベアボック氏は就任受諾演説で、「Better Together(共により良く)」という理念を掲げ、世界的な危機が相次ぐ時代における集団行動の重要性を訴えた。「世界はいま、不確実性という綱渡りの上にある」と述べ、武力紛争、気候危機、貧困、食料不安、国際制度の機能不全といった課題に直面していると指摘。「信頼を再構築し、人間の尊厳を守り、ルールに基づく国際秩序への信頼を取り戻そう」と加盟国に呼びかけた。

ベアボック氏の議長任期は国連にとって極めて重要な時期と重なる。1945年の国連創設記念行事に加え、各国首脳が一堂に会する年次一般討論も開催予定だ。近年、安保理の常任理事国による拒否権行使で行き詰まりが目立つなか、国連総会の役割が再評価されている。ガザやウクライナの戦争、平和と安全保障に関わる広範な問題でも、総会が重要な討議の場となっている。

グテーレス国連事務総長は、今回の選出を歓迎し、「地政学的な分断が拡大するなか、合意形成が不可欠な時期だ」と強調。「我々は団結し、共通の解決策を見出し、行動を起こさねばならない」と述べ、国連総会は「道徳的な羅針盤であり、良心の声を届ける場」でなければならないと語った。

ベアボック氏は、気候外交、人権擁護、外交政策の分野で豊富な経験を持つ。2021年から2025年まで独外相を務め、欧米間の関係、多国間協力、ウクライナ支援に注力してきた。2018年から2022年まではドイツ緑の党の共同党首も務め、持続可能な開発と民主的価値観の推進にも尽力している。2013年からは連邦議会議員を務め、London School of Economics と Hamburg 大学で政治学と国際法を学んだ経歴を持つ。

また、彼女の選出は国連におけるジェンダー平等の前進という意味でも画期的だ。創設以来、国連総会議長に女性が就任するのは今回でわずか5人目。ベアボック氏は前任の女性議長たちの功績に敬意を表し、「若者や女性が多国間意思決定にもっと関与できるよう努める」と表明した。

外交関係者や観測筋は、今回の議長職が、国連総会が制度疲労や政治的分断の中で対話と行動の場として再び機能できるかを占う試金石になると見ている。議長職に執行権限はないものの、議論を主導し合意形成を促進し、声なき人々の声を届ける重要な役割を担う。

政治的困難を乗り越えて得た強固な支持は、多国間主義が試練に直面するいまなお、外交・対話・民主主義的価値に根ざした道徳的リーダーシップが強く求められていることを示している。

「この国連総会は、絶望の反響室であってはなりません。世界協力の灯台となるべきで」とベアボック氏は締めくくりの言葉で呼びかけた。「この機関に解決策を求めて訪れる人々のために、我々はその期待に応える責任があります。彼らは希望を抱いてやってくるのです。」(原文へ

INPS Japan/ American Television Network

Original URL: https://www.amerinews.tv/posts/germany-s-annalena-baerbock-elected-to-lead-80th-unga-session

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ケニアの少女たち、外来種マセンゲの木を家具に再利用

【カクマ(ケニア) IPS=ファライ・ショーン・マティアシェ】

ケニア北部トゥルカナ郡、カクマ乾燥地帯中等学校。16歳のチャー・ティトさんは、教室棟の外で強い日差しのもと、木材に釘を打ち込み、伝統的な椅子を製作している。

彼女が使っている木材は、この地域では好まれていないものだ。中南米原産のマメ科樹木プロソピス・ジュリフローラ(現地名マセンゲ)だ。

トゥルカナ郡の住民は、この繁殖力が強い外来種マセンゲを嫌っている。トゲが鋭く、人や家畜を傷つけ、川やダムの水が早く枯れる原因ともなる。また、他の植物の生育を妨げるとも言われている。

長年にわたり、住民はマセンゲを薪や木炭用に利用してきたが、いま若者たち、特に少女たちが、この木を家具、特に椅子に作り変える取り組みを始めている。

「プラスチック製の椅子は高価なんです。だから私は今月からマセンゲで椅子を作り始めました」と、2017年に南スーダンの戦争から逃れてカクマ難民キャンプに来たティトさんは語る。

Char Tito, a learner at Kakuma Arid Zone Secondary School in Kakuma, is seated on a chair made from mathenge wood. Credit: Farai Shawn Matiashe/IPS

「学校で作り方を教わりました。マセンゲは豊富にあるし、ずっと薪に使ってきましたが、椅子が作れるとは知りませんでした」

収入源となる取り組み

カクマは乾燥した土地で植生はまばら、農業に適さない痩せた土壌だ。年間降水量も非常に少なく、5年もの間、雨が一滴も降らないこともある。

この地域の木々の大半はアカシアとマセンゲ。厳しい高温と水不足の中でも常緑を保つ。

政府の統計によると、マセンゲは年間15%の速度で拡大し、すでにケニア国内100万エーカーを占めている。住民の一部はこの木を家の囲い柵や家畜小屋にも利用している。

地域の主な生業は家畜飼育と薪・木炭の取引だ。

ティトさんたちを支援している草の根NGO「ガール・チャイルド・ネットワーク(GCN)」のデニス・ムティソ副ディレクターは、この取り組みが学習者にグリーンスキル(環境関連の技能)を与えていると語る。

「国家の気候計画にも貢献しており、学校教育のカリキュラムにも合致しています」

Magdalene Ngimoe, a learner at Kakuma Arid Zone Secondary School, is making chairs from mathenge wood in Kakuma. Credit: Farai Shawn Matiashe/IPS

椅子作りを学んだ若者たちは、未習得の仲間に技術を教え、地域全体に知識を広げている。

母親と3人の兄弟姉妹と暮らすティトさんは、現在は自宅用に椅子を作っているが、いずれ近隣に販売することを目指している。

「一生役立つ技術だと思います。これから大工仕事で生計を立てたいです」と笑顔で話す。

マセンゲは1970年代、劣化した乾燥地の再生を目的にケニアに導入された。乾燥に強く、深く根を張るため、トゥルカナのような地域の植林に適していた。風食も防いだが、住民にとっては負の側面もあった。

マセンゲは伐採してもアカシアなどと違い再生が非常に早い。

トゥルカナ郡林業局のルイス・オバム氏は「地域社会にはマセンゲへの否定的な見方がありました。ヤギがマセンゲを食べて死亡することもあり、トゲも問題でした」と話す。

「もともとは砂漠化防止のために導入された善意の取り組みでした。ですが、この木の硬材は椅子作りに適しており、多くの可能性があります。この地域で2番目に硬い木材なんです。最大限活用すべきです」

環境保護に貢献

ティトさんや他の少女たちは、マセンゲ以外の木も学校や自宅で植えている。ティトさんは自宅で5本、学校でも多く植樹したが、気温が47度にも達する中、水の確保が課題だ。

「気候変動対策に貢献できて誇りに思います」

Magdalene Ngimoe, a learner at Kakuma Arid Zone Secondary School in Kakuma, planting a tree. Credit: Farai Shawn Matiashe/IPS

少女たちは時に自宅から水を持参して学校の木々に水やりしている。樹木は大気中の二酸化炭素を吸収し、気候変動の緩和に役立つ。

ケニア政府は2032年までに150億本の植樹を目指している。

同校のもう一人の生徒、16歳のマグダレン・ニグモエさんも自宅で2本の木を植えたという。

「マセンゲは嫌い。生活が大変になる。でも、その木で椅子が作れるのはうれしい。学校でも木を植えていて、将来、他の生徒に日陰を作れるでしょう」と語る。

7人兄妹の長女で、家族は食肉販売で生計を立てている。彼女も椅子作りの技術で収入を得ることを期待している。

ケニア難民局のエドウィン・チャバリ氏は「マセンゲはこれまでキャンプ内外で厄介者扱いされてきましたが、地元の若者が収入源にできるのは良いことです」と話す。

GCNはカタールのEducation Above All財団からの資金提供を受け、これまでカクマとダダーブで89万6000本を植樹、来年までに240万本を目指している。

科学が好きなニグモエさんは将来、弱い立場の子どもたちを守る弁護士になりたいという。

1992年設立のカクマ難民キャンプには、南スーダン、ブルンジ、ソマリア、コンゴ民主共和国など10カ国以上から30万4000人が暮らしている。

ケニア教員委員会(TSC)トゥルカナ郡支部のジョセフ・オチュラ氏は、植樹活動によって学校の学習環境が改善されていると語る。

「支援を受けた学校では大きな木陰が見られます。休み時間には生徒も教員もそこで過ごしますし、時にはその木陰で授業が行われることもあります」

政府目標の150億本のうち、TSCには2億本の植樹が割り当てられている。

一部の学校では自前の苗木園も設けており、育った苗は学校や地域に植えている。

「少女たちが植樹活動をリードしているのは素晴らしいことです。学校外でも地域で続けてほしいと伝えています」とオチュラ氏は述べた。

英語が好きで医師を目指すティトさんは、カクマで生まれつつあるグリーンジョブの一端を担っていることを誇りに思っている。

「女の子として、自分が環境保護に貢献しているのが誇らしいです」(原文へ

INPS Japan/ IPS UN Bureau

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