北大西洋条約第5条は、締約国であるNATO諸国は「欧州または北米における1カ国またはそれ以上の締約国に対する武力攻撃を全締約国に対する攻撃と見なすことに合意」し、武力行使を含む個別または集団の対応が必要であると定めている。第6条は、第5条に定める武力攻撃とは (i) 「欧州または北米におけるいずれかの締約国の領土」、および (ii) 「いずれかの締約国の軍隊、船舶、または航空機で、前記の領土または欧州内の他の地域またはそれらの上空にあるもの」に対する「攻撃を含むと見なされる」と明確にしている(いずれの条項も、強調は筆者によるもの)。
ラメッシュ・タクールは、元国連事務次長補。現在は、オーストラリア国立大学クロフォード公共政策大学院名誉教授、同大学の核不拡散・軍縮センター長、および戸田記念国際平和研究所の上級研究員を務める。「The Nuclear Ban Treaty :A Transformational Reframing of the Global Nuclear Order」の編者。
早い段階で「損失と損害」基金に関する議案が採択され、資金拠出が表明されたことは歓迎すべきニュースだが、この決定がもたらすはずの喜びに水を差したのは、基金の運用や最も脆弱で最も責任のない国やコミュニティーによる基金へのアクセス、影響を受けるコミュニティーの尊厳や価値を保つ形で非経済的な損失と損害を算定する方法などに関して、なすべきことがなおも多いということである。最初から、太平洋島嶼国は立場を明確にしていたし、パリ協定が2015年のCOP21で採択されて以降それは明確だった。すなわち、これ以上極端で不可逆的な気候影響を回避するためには、産業革命以前と比較した世界の平均気温の上昇を1.5°C以内に抑えるべきだという立場である。太平洋諸国による“生き延びるために1.5度達成を(1.5 to stay alive)”というスローガンは、パリ会議以降のCOPで毎回掲げられている。今年は太平洋小島嶼国にとって1.5は「レッドライン」だった。「もし」も「しかし」もない。
ハルバート・ウルフは、国際関係学教授でボン国際軍民転換センター(BICC)元所長。現在は、BICCのシニアフェロー、ドイツのデュースブルグ・エッセン大学の開発平和研究所(INEF: Institut für Entwicklung und Frieden)非常勤上級研究員、ニュージーランドのオタゴ大学・国立平和紛争研究所(NCPACS)研究員を兼務している。SIPRI(ストックホルム国際平和研究所)の科学評議会およびドイツ・マールブルク大学の紛争研究センターでも勤務している。Internationalizing and Privatizing War and Peace (Basingstoke: Palgrave Macmilan, Basingstoke, 2005) の著者。