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カザフ外務省、年次コンテストで国際ジャーナリストを表彰

【アスタナINPS Japan/Atana Times=浅霧勝浩/アイバルシン・アフメトカリ】

カザフスタンの外務省にて、第9回年次コンテスト「海外メディアの目から見たカザフスタン」の受賞者である8人の外国人ジャーナリストが表彰された。

Award ceremony of the media contest "Kazakhstan through eyes of foreign media" took place at MFA on Sept 7, 2024.
Award ceremony of the media contest “Kazakhstan through eyes of foreign media” took place at MFA on Sept 7, 2024.

2014年に開始されたこのコンテストは、世界中の外国メディアから寄せられた優れた文章や映像資料を称えるものである。今年で9回目を迎えるこのコンテストには、歴史、文化、教育から観光、国の料理、国際関係、カザフスタンの投資の可能性まで、カザフスタンに関する多様なテーマを扱うメディアの代表が集まっている。

カザフスタンのロマン・ヴァシレンコ外務副大臣は、この機会に受賞者たちを祝福した。

2014年に初めて 「海外メディアの目から見たカザフスタン 」コンテストを立ち上げたときの興奮を今でも覚えています。毎年、応募作品を読むたびに、カザフスタンにはまだ多くの発見があることを思い知らされます。受賞者に選ばれた8人のジャーナリストやコンテンツ制作者は、カザフスタンの世界的な関与の拡大や戦略的な二国間関係の発展から、伝統的なスポーツや観光に至るまで、幅広いテーマをカバーし、私たちの国に新鮮な視点をもたらしてくれました」とヴァシレンコ外務副大臣は語った。

外務副大臣によると、今回の年次コンテストでは、30か国から約80人のジャーナリストが応募し、前年に比べて応募数が大幅に増加したという。

「応募総数の増加は、世界のメディアがカザフスタンに対してますます関心を寄せていること、そして私たちが国際舞台での役割を拡大していることを示しています。この注目の高まりは、平和的でバランスの取れた現実的な外交を基本とするカシム・ジョマルト・トカエフ大統領の効果的な外交政策の証です」とヴァシレンコ外務副大臣は付け加えました。

Katsuhiro Asagiri
Katsuhiro Asagiri, President and efitor of INPS Japan.

アジア太平洋地域からの受賞者である日本人ジャーナリストの浅霧勝浩INPS Jpan理事長は、カザフスタンへの関心は、彼の通信社が2009年から創価学会インタナショナル(SGI)と進めてきた2つの重要なテーマ、つまり①国際的な核軍縮においてカザフスタンが果たしている重要な役割と、②宗教間の対話を含む持続可能な開発目標(SDGs)の促進からきていると語った。

「この2つのテーマがきっかけで、2016年8月に初めてカザフスタンを訪れ、29日のセミパラチンスク(核実験場)閉鎖記念関連イベントを取材しました。以来、カザフスタン外務省とSGIは新型コロナ時期を除くほぼ毎年、アスタナ、国連、ウィーンなどで核不拡散条約、核兵器の人道的側面、非核兵器地帯、核兵器禁止条約等核軍縮関連のサイドイベントを共催してきており、その結果、INPS Japanのカザフスタンに関する記事配信数は累計で100本を超えます。」と浅霧理事長は語った。

INPSJ SGI Logo

「これらの二つの重要なイニシアティブに関する私の通信社のレポートを通じて、少なくとも日本人の10%が、カザフスタンが核兵器のない世界を目指して主導している非常に重要なイニシアティブ、そしてアスタナで3年ごとに開催される(次回は2025年)『世界伝統宗教指導者会議』というもう一つの非常に重要なイニシアティブについて、より多くの認識を持つようになっています。」と語った。日本で最大規模の信仰に基づく団体(FBO)である創価学会は2018年以来、世界伝統宗教指導者会議に参加している。

中東・アフリカ地域からの受賞者であるエジプト人ジャーナリスト、ファトマ・バダウィ氏は、上海協力機構に関する記事で表彰され、感謝の意を表した。

「今日、この賞を受賞できてとても嬉しく、誇りに思います。カザフスタンを訪れたのは今回で3回目ですが、私は毎日カザフスタンに関する記事を配信しています。」とバダウィ氏は語った。

バダウィ女史はカザフスタンの豊かな歴史と文化に魅了され、それが記事を書く際のインスピレーションの源となっていると語った。 「私はこの国がとても好きです。歴史ある国ですからね。カザフスタンの観光や、民俗学、芸術、文化について多くの記事を書いています。」と語った。

 『フォコ・ナ・ポリティカ』誌に掲載した一連の記事が最優秀に選ばれたブラジル人ジャーナリスト、ミルトン・アタナジオ氏とって、この日はブラジルの独立記念日と重なる特別な日だった。 「日々強化されている我々の外交関係と二国間貿易において、カザフスタンとブラジルの素晴らしい関係を祝福します。」とアタナジオ氏は語った。

The 5th World Nomad Game 2024

ヨーロッパ地域からは、イタリア人ジャーナリスト、ダニエラ・ブリッカ氏がイタリア放送協会「Rai」で放映したカザフスタンに関するビデオレポートが最優秀と評価された。

独立国家共同体(CIS)・ユーラシア地域からは、アゼリ人ジャーナリスト、エレナ・コソラポヴァ氏がCBC TVアゼルバイジャンで放映したレポート「『中部回廊』(ミドルコリドー):アゼルバイジャンとカザフスタンがシルクロードを復活させる」が最優秀に選ばれた。

*中央回廊とは、ロシアを通過する北部回廊が厳しく制限される中、注目を浴びている、中央アジア、カスピ海、南コーカサス、黒海、地中海、東ヨーロッパを結ぶ複合輸送路。

カザフスタン観光部門のノミネーションでは、スペイン人ジャーナリスト、ヨランダ・ガルシア氏の「La Voz de Galicia」(スペイン・ガリシア州で発行されている日刊紙)連載記事が選ばれた。

CICAのノミネーションでは、「ロシースカヤ・ガゼータ(ロシア新聞)」に掲載されたアレクサンダー・ガシュク氏の作品が選ばれた。

新設の国民スポーツノミネーションでは、キルギス人ジャーナリスト、エルメク・アクタノフ氏が国営ラジオ「ビリンチ・ラジオ」で放送した一連の番組が最優秀に選ばれた。

Awardees on a press tour in Mangistau region, western Kazakhstan
Awardees on a press tour in Mangistau region, western Kazakhstan.

受賞者は9月7日の授賞式を皮切りに、文化交流を深め、カザフスタンへの理解を深めるため、アスタナアルマトイマンギスタウ地方を含むカザフスタン各地を訪問(7日~13日)したほか、また8日・9日には、世界89カ国から2500人の競技者がアスタナに集って開催された第5回ワールド・ノマド・ゲームズ(国際遊牧民競技大会)を観覧した。INPS Japanでは本人も受賞者である浅霧理事長が他の受賞者に随行して全工程を以下の映像に収録した。(原文へ

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教皇フランシスコ、アジア太平洋使徒的訪問で社会の調和のための4原則を強調

【Agenzia Fides/INPS Japanローマ=ヴィクトル・ガエタン】

教皇フランシスコは、9月2日から13日にかけて、インドネシア、パプアニューギニア、東ティモール、シンガポールの4か国を歴訪する。各々の国では数えきれないほど多彩な出会いが予定されており、教皇は、その国々の人々や指導者たちにインスピレーションを与えることを目指している。

 教皇の外交における優先事項と成果は、この旅の全行程を通じて示されることになるだろう。とりわけ、この教皇在任中のテーマである、宗教間対話への教皇フランシスコの献身が示されることになるだろう。

 このミッションをテーマ別に捉える一つの方法は、教皇フランシスコが使徒的勧告「福音の喜び(Evangelii Gaudium)」で概説した4つの魅力的な原則(217-237)を通して見ることである。なぜなら、それぞれの訪問国がこれらの原則(①「一致は対立に勝る」②「全体は部分よりも大きい」③「時間は空間に勝る」④「現実は理念に優る」)の一つを象徴しているからだ。

同じ使徒的勧告(238-258)の中で、教皇フランシスコは共通善を追求する上で重要な3つの対話領域を挙げている。それは、国家、社会、カトリック以外の信者との対話である。今回の教皇の旅程は、これらの優先事項をカレイドスコープのように反映している。

インドネシア: 一致

バチカン通信( Agenzia Fides)とのインタビューで、インドネシアのイグナツィウス・スハリョ・ハルジョアトモジョ枢機卿は、宗教間の調和は1945年のオランダからの独立時に国の基盤に組み込まれた目標であると説明した。

 「イスラム教徒との関係は実に良好です。この調和のとれた関係は、インドネシア独立時にまで遡り、以来維持されてきました。」とスハリョ枢機卿は語った。これは、社会亭一致を分断よりも重視する姿勢の表れである。

 例えば、インドネシアの初代指導者スカルノ大統領は、植民地主義を克服する象徴として、ジャカルタにあったオランダの城跡にモスクを建てることを奨励した。このモスクは、1900年代のカトリック大聖堂の向かいに建てられ、二つの信仰伝統間の友好を示すものでもあった。最近では、この二つの建物をつなぐ地下トンネルが追加されている。

 フランシスコ法王は、ジャカルタ大聖堂と東南アジア最大のイスティクラルモスクの両方を訪問し宗教間会議に参加する。スハリョ枢機卿は、「これは宗教の自由と信仰共同体間の共存と調和を重んじるインドネシアの人々に対する教皇の感謝の意を示すものです。」と説明した。


インドネシア宗教省によると、同国の人口は約2億4,200万人のムスリムと2,900万人のクリスチャン(内850万人がカトリック)を含んでおり、その数は増加傾向にある。

フランシスコは、分裂したイスラム教徒との関係を継承した2013年以来、外交上の優先事項として、スンニ派イスラム教徒との関係を常に強化している。

教皇フランシスコは使徒的勧告「福音の喜び」の中で、「和解のプロセスに絶えず参加できるのであれば、多様性は素晴らしいものです。」(230)と記している。 

パプアニューギニア: 全体

Pope Francisco/ Wikimedia Commons
Pope Francisco/ Wikimedia Commons

パプアニューギニアに住む約1,000万人のうち、95%以上がキリスト教徒である。その大半はさまざまなプロテスタント宗派に属しているが、カトリック教会も国内信者の約30%を占める最大の信仰共同体とみなされている。キリスト教は現地の先住民の慣習と豊かに融合し、文化的に多様な教会を形成している。

1881年に教会を設立したのは、聖心宣教会(MSC)の宣教師たちだった。ジョン・リバット枢機卿はMSCの司祭であり、2016年に教皇フランシスコによって任命された同国初の枢機卿である。

 現地の教会指導者たちは環境問題に非常に懸念を示しており、回勅『ラウダート・シ:共に暮らす家を大切に』が発表されてからは、特に環境保護を優先事項とし、鉱業部門での搾取や企業による森林伐採に反対する活動を展開している。

この擁護活動は、全体を構成する個々の要素よりも全体をより重要視する素晴らしい例です。教皇は使徒的勧告「福音の喜び」の中で、自然の比喩を用いてこの原則を説明している。「私たちは常に視野を広げ、すべての人に利益をもたらすより大きな善を見つける必要があります。しかし、それは回避や根絶を伴わずに行われるべきです。私たちは自分たちのふるさとの肥沃な土壌と歴史により深く根を下ろす必要があります。」(235)


 東ティモール: 時間

東ティモールは2002年に独立を果たし、世界で最もカトリック信者が多い国(98%)として広く知られている。1975年までポルトガルの植民地であった東ティモールは、その後99年までインドネシアに占領されていた。さまざまな研究によると、インドネシアの軍事占領下で恣意的な処刑、失踪、飢餓により17万人以上が命を落としたとされている。

1989年に教皇ヨハネ・パウロ2世が訪問した際(まだ東ティモールはインドネシアの支配下にあった)、国民意識の種が蒔かれたが、教会は常に暴力に反対した。迫害された市民を守り、コミュニティを構築することで、信仰は徐々に成長した。1975年には国民の約20%がカトリック信者であったが、98年には96%まで増加した。これは、教会が国の希望と密接に結びついていたためである。

 東ティモールが独立を達成したプロセスは、時間こそが空間よりも重要であるというフランシスコ法王の原則の優れた事例である。聖霊は時間をかけて生まれた空間に入り込むことができ、時間は信頼を育み、地域の解決策が生まれる余地を与える。

教皇は使徒的勧告「福音の喜び」の中で、「この原則により、私たちは即時の結果にとらわれることなく、ゆっくりとではあるが確実に活動することができる。それは、困難で逆境に満ちた状況や、計画の変更を忍耐強く受け入れる助けとなります」と記している。

21世紀最初の新国家である東ティモールへの教皇の訪問は、2022年に教皇フランシスコによって任命された同国初の枢機卿、ビルジリオ・ド・カルモ・ダ・シルバ枢機卿がディリの大司教を務めており、きっと喜びに満ちたものとなるでしょう。

シンガポール: 現実

シンガポールは経済的繁栄とグローバルな統合が進んでおり、教皇フランシスコが訪問する国の中で最も発展した国である。環境に関する教皇のメッセージは、人工知能の規制を訴えるものと同様に重要なテーマとなるだろう。

 教皇フランシスコ教皇は、2022年にシンガポールで初めて大司教から昇格させたウィリアム・ゴー・セン・シー枢機卿と合流する。同枢機卿は、シンガポールの宗教的調和のための大統領諮問会議に所属し、同国最大の宗教である仏教コミュニティと緊密に連携している。

教皇フランシスコは、シンガポールが宗教の自由を保護し、すべての信仰と協力するという明確な取り組みに感銘を受けている。ゴ枢機卿はEWTNバチカン(米国に本拠を置くカトリック系テレビネットワーク)に対し、「国は私たちをパートナーとして見ています。私たちは国民の共通善のために政府と協力しているのです。私たちは人々の精神的なニーズをケアし、政府が公正に統治できるよう支援し、意見を表明します。そして政府は非常に感謝しています。」[4]と説明した。

 また、ローマ教皇は、世界のどの大国にも依存しない独自の外交政策を追求するシンガポールを称賛している。これは、文化の自治を尊重する多極的世界という教皇のビジョンと一致している。教皇は、このグローバリズムのビジョンを多面体やサッカーボールに例えて説明することがよくある。つまり、どの国家にも支配されることなく、すべての文化が繁栄すべきであるという考えだ。

 原則は、現実は理念に勝るというものである。使徒的勧告「福音の喜び」が説明しているように、「言葉のみ、イメージや修辞のみの世界に留まることは危険である。

今週、教皇フランシスコは使徒的巡礼としてアジアとオセアニアを訪れ、現実の世界に飛び込む。何百万人ものキリスト教徒、イスラム教徒、仏教徒、無宗教の人々が、ペテロの後継者からの祝福を喜びをもって目撃し、無条件に受け入れるだろう。神が教皇フランシスコの世界への奉仕を引き続き祝福されますように。(フィデス通信社 2024年2月9日)

Victor Gaetan
Victor Gaetan

ヴィクトル・ガエタンはナショナル・カトリック・レジスター紙のシニア国際特派員であり、アジア、欧州、ラテンアメリカ、中東で執筆しており、口が堅いことで有名なバチカン外交団との豊富な接触経験を持つ。一般には公開されていないバチカン秘密公文書館で貴重な見識を集めた。外交専門誌『フォーリン・アフェアーズ』誌やカトリック・ニュース・サービス等に寄稿。2023年11月、国連本部で開催された核兵器禁止条約(TPNW)第2回締約国会議を取材中に、SGIとカザフスタン国連政府代表部が共催したサイドイベントに参加。2024年4月、IPS Japanの浅霧理事長と共に長崎を取材訪問。INPS Japanでは同通信社の許可を得て日本語版の配信を担当している。

*Agenzia Fidesは、ローマ教皇庁外国宣教事業部の国際通信社「フィデス」(1927年創立)

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核兵器の遺産は世代を超えてなされてきた不正義の問題である(メリッサ・パークICAN事務局長インタビュー)

【アスタナINPS Japan/アスタナタイムズ=アセル・サトゥバルディナ】

世界は1945年以来、2000回以上の核爆発を目撃してきた。何百万人もの人々が今もその影響に苦しんでいる。この問題に対処することは、世代を超えてなされてきた不正義との戦いであるであると、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のメリッサ・パーク事務局長が、アスタナタイムズの取材に対して語った。

ICANは核兵器の禁止と廃絶を推進する世界的な連合組織である。本部はジュネーブにあり、2017年の核兵器禁止条約(TPNW)採択に重要な役割を果たし、その努力が認められて同年にノーベル平和賞を受賞した。 この連合には650以上のパートナー組織が参加している。

核兵器ほど大きな不正義はない

パーク事務局長は、非核兵器地帯間ワークショップ、核被爆者フォーラム、そして若者フォーラムに出席するため、アスタナを訪問している。

すべてのイベントは、8月29日の「核実験に反対する国際デー」を記念して開催される。この記念日は、2009年にカザフスタンの主導により国連で制定された。今年は、セミパラチンスク核実験場での最初のソ連による核実験が行われてから75年を迎える。

Malissa Parke, executive director of ICN (Extreme left) attending Nuclear Survivors Forum in Astana. Photo: Katsuhiro Asagiri of INPS Japan.

パーク事務局長は、紛争地域で国連と協力した経験(国際法務専門家として、コソボ、ガザ、ニューヨーク、レバノンにおいて国連に勤務)から、戦争や兵器が罪のない人々に与える影響を直接的に目の当たりにしてきた。

「私は生涯をかけて人権と正義のために戦ってきました。私は、核兵器ほど人類と地球に対する不正義はないと感じています。それが私を突き動かしているのです。私は、より平和な世界を実現するための運動に貢献できることは何でもしようと決意していました。」と、元オーストラリア国際開発大臣のパーク氏は語った。

主導的な声

Semipalatinsk Former Nuclear Weapon Test site/ Katsuhiro Asagiri
Semipalatinsk Former Nuclear Weapon Test site/ Katsuhiro Asagiri

パーク事務局長は、核軍縮を提唱するカザフスタンの「長く誇り高い歴史」を強調して、「カザフスタンは、450回以上のソ連による核実験が実施された場所であり、また、同時に核実験の終焉をもたらした並外れた活動が展開された場所でもあります。」と語った。

パーク事務局長は、自らの体験を語ることで、世界的な軍縮および核不拡散の取り組みを推進する上で、カザフスタン国民が多大な貢献をしていることを認めた。そして、「カザフスタンは核軍縮を推進する上で主導的な役割を果たしています。キリバスとともに、カザフスタンは核兵器禁止条約(TPNW)の被害者支援と環境修復に関する作業部会をリードしています。」と語った。

カザフスタンはまた、2025年3月にニューヨークで開催予定のTPNW第3回締約国会議の議長も務める。

「カザフスタンの核廃絶におけるリーダーシップは非常に重要であり、ICANとして非常に感謝しています。私たちはカザフスタンと協力して、世界に大きな変化をもたらすことができると信じています。」とパーク氏は語った。

高まる核兵器使用のリスク

核兵器が使用されるシナリオについて考えたくない人はほとんどいないが、リスクは蔓延している。パーク氏によると、核兵器が使用されるリスクは、これまでになく高まっている。

「私たちは、核保有国が関与する2つの大規模な紛争が進行中で、新たな核の脅威が生まれています。その中で、軍備管理協定の崩壊や新たな核軍拡競争が進行中です。」とパーク事務局長は語った。

核問題は、もはや冷戦時代のような2つの核保有国間の二元的な対話ではない。

「現在、核保有国は9カ国あり、その他のアクターも存在します。つまり非国家主体、テロリスト集団です。サイバーハッキングや軍事における人工知能の利用の可能性もあります。 これらすべてが核兵器使用の危険性とリスクを高めているのです。さらに、現在の核兵器は広島と長崎に投下された原爆よりも何倍も強力になっています。」とパーク事務局長は語った。

パーク氏は、これは世代を超えてなされてきた不公平の問題であると強調した。「私たちは、核兵器の放射能の影響が何世代にもわたって続くのを目にしています。 核保有国が毎年910億ドルを核兵器に費やしている一方で、その費用は環境保護や、より良い医療や教育、若者にとって重要な他の事柄に充てられる可能性もあります。 核保有国は、非常に無責任にも、自国が認識する安全保障の必要性を、世界の安全保障よりも優先しているのです。 そして、それは容認できるものではありません。」とパーク事務局長は語った。

核抑止力、つまり、核兵器で攻撃されれば強力かつ破壊的な核兵器による反撃が起こることを明確にすることで攻撃を防ぐという考え方は、「深刻な欠陥理論」であるとパーク事務局長は語った。

「この理論は、敵も含めたすべての行動主体が、常に100%合理的かつ予測可能であるという仮定に基づいている。敵の意図を完全に把握しているという前提だ。「これは大胆な仮定です」と、パーク事務局長は説明した。

多くのことは抑止できません。2023年12月のTPNW第2回締約国会議では、参加者はこのような理論の使用を非難し、「抑止は証明されていない賭けである」と強調した。

「過去数十年間、核兵器に関する多くの事故や誤算がありましたが、幸運にも大災害には至りませんでした。国連事務総長が述べたように、『幸運は戦略ではない』のです。抑止力は機能するかもしれませんが、それが機能しなくなる日が来れば、その時には核の傘の下に避難場所はありません。」と、パーク事務局長は語った。

一方で、市民社会によるアドボカシーも活発化している。パーク事務局長は、「世界には対話、外交、軍縮が必要です。」と強調した。また、「カザフスタンはまさにその声を代表する国です。私たちは、カザフスタンと協力できることを大変嬉しく思います。」と付け加えた。

Political Map of the Caucasus and Central Asia/ Public Domain
Political Map of the Caucasus and Central Asia/ Public Domain

パーク事務局長は、カザフスタンの例が他の中央アジア諸国をTPNWへの参加へと動機づけることを期待している。これまで、中央アジアの5か国はいずれも条約に署名も批准もしていない。

被爆者支援のための国際信託基金

パーク事務局長は、2025年3月にニューヨークで開催されるTPNW第3回締約国会議では、被害者支援や環境修復に関連するプロジェクトに資金を提供する国際信託基金の設立に焦点が当てられると明らかにした。 カザフスタンとキリバスは、TPNWの作業部会の議長を務めており、この構想を提案している。

この2カ国はまた、2023年10月に国連で採択された決議「核兵器の遺産に対処する:核兵器の使用または実験によって影響を受けた加盟国への被害者支援と環境修復の提供」の後ろ盾でもあった。この決議には171カ国が賛成票を投じ、6カ国が棄権したが、フランス、北朝鮮、ロシア、英国の4カ国は反対票を投じた。

「何よりも、カザフスタンは影響を受けたコミュニティーの声を中心に据え、キリバスや他の国々と協力して、これらの人々がヒーローであることを確認しています。彼らは自らの体験を何度も勇敢に語り続けてきました。(核実験に反対する国際デーを控えた)今週、私たちは彼らを称えます。」とパーク事務局長は語った。

被災地域のコミュニティーに正義をもたらすことが最優先事項です。「彼らは、自分たちが被った被害の認定や認知だけでなく、補償についても長い間待ち続けてきました。この国際信託基金は、被害者支援と汚染された環境の修復に大きく貢献するでしょう。」とパーク事務局長は語った。

ICANの主な焦点は、TPNWを「普遍化」し、「できるだけ多くの国を参加させること」である。パーク事務局長は、そのようなシナリオが核保有国に核兵器を放棄するよう圧力をかけることを期待している。

「これは、他の大量破壊兵器や非人道的な兵器、例えば地雷やクラスター弾に対して非常に成功した戦略でした。」とパーク事務局長は付け加えた。

核問題はすべての人に関係する

パーク事務局長は、これらの問題への取り組みには安全保障や軍縮の専門家だけでなく、誰もが声を上げるべきであると考えています。

「ICANでは、この問題がすべての人に関わる問題であり、誰もがこの問題について発言する権利を持っていることを人々に知ってもらうことに非常に力を入れています。誰もが政府に対して核兵器に「ノー」と言う権利を持っています。そして、その運動は広がっています。」とパーク事務局長は語った。

核軍縮は国際的な議論では後回しにされがちだが、パーク事務局長は、核軍縮は最も複雑でない問題だと指摘した。

「なぜなら、核兵器は人間が作ったものだからです。人間がだけがそれを解体することができます。必要なのは、それを実現するための政治的意思とリーダーシップだけです。それが今、必要とされています。」とパーク事務局長は語った。

核兵器のない世界は実現可能かと尋ねられたパーク事務局長は、自信を持って「イエス」と答えた。

「私は心の底から、核兵器のない世界が実現すると信じています。そうしなければなりません。核兵器と人類は共存できないため、核兵器が存在する限り、それが意図的であれ偶発的であれ、使用される可能性があり、その可能性は高まっているのです。」とパーク事務局長は語った。(原文へ

INPS Japan/The Astana Times

この記事は、The Astana Timesに初出掲載されたものです。

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自助努力する農民を支援

ネパールの山岳地帯の農民たちは、すでに気候変動の影響に自力で適応している

【ポカラ、ネパールタイムズ=ベンジャミン・ジマーマン】

ヒマラヤの農民は、気候危機の最前線に立っており、極端な暑さや寒さ、長期間の干ばつや過剰な降雨、地滑りや洪水に対処することを余儀なくされている。

しかし、彼らは最もたくましい農民でもあり、何世代にもわたって、斜面の脆弱な表土に丹精込めて刻み込んだ棚田で十分な食糧を生産するために、自力で奮闘してきた。

「政府は、私たち農民のことは知ろうとも気にかけようともしませんでした。気候変動には、過去に直面した他の問題と同様、自分たちで適応するしかありません。」と、70歳のスーリヤ・アディカリ氏は語った。

実際、ヒマラヤ地域の山岳農業の問題は気候変動よりも前から存在しており、アディカリ氏のような農民にとっては、それは対処すべき最新の危機に過ぎない。

アディカリさんの生涯の中で、彼の村であるポカラ近くのスンダリ・ダンダの上にそびえるアンナプルナ山脈の雪線が後退し、かつて予測可能だった気象パターンが不安定になったのを目の当たりにしてきた。アディカリさんは、作物の多様化、灌漑の確保、そして在来種の種子の保護を行うことで対応してきた。

気候科学者によると、ヒマラヤ山脈は「高度効果」と呼ばれる現象により、世界平均よりも0.7℃以上も温暖化しているとのことだ。2023年には、世界の平均気温は産業革命以前の水準から1.5℃上昇し、この山々では2.2℃上昇したことになる。

その影響の一部として、ポカラ近郊の標高1,500mの村々でも記録的な暑さが続き、乾燥した冬が何年も続いている。今年の春には、全国的に数ヶ月にわたる記録的な山火事が発生し、ベグナス湖やルパ湖周辺の斜面にはまだ火災の傷跡が残っている。

こうした変化と経済的要因が相まって、カスキ郡のように2011年以来人口が17%減少した地域もあるなど、ネパールから国外への人口流出が加速している。

農村部の若者たちが都市部へと流出しているとはいえ、ネパールは依然として農業が主な産業であり、人口の3分の2が農業に依存し、GDPの33%が農業から生み出されている。

したがって、モンスーンの時期が遅れて米の植え付けが遅れたり、干ばつで作物が全滅したりすると、農業セクターだけでなく、国の経済全体が打撃を受けることになる。ネパールはすでに食料製品の純輸入国であり、過去10年間で輸入量が著しく増加している。

今年のモンスーンはこれまでのところ平年より多く、水田の作付けはほぼ全国で100%行われる見込みだが、集中豪雨が地滑りや鉄砲水を引き起こしている。今週、グルミとバグルンで新たに12人が土砂崩れにより死亡し、6月以降の死者は少なくとも175人に上った。

過去10年間の傾向として、モンスーン雨が例年より遅れて始まり、乾燥期間が長引き、局地的な豪雨が発生している。地下水位は、十分な補給がなく、過剰な汲み上げにより低下し、湧き水が干上がっている。

灌漑システムの建設と維持管理に十分な政府投資が行われない限り、多くの農村地域の農民は雨の恵みに完全に頼るしかない。

植え付けが遅れると、畑を荒廃させ、栄養価の高い表土の侵食を招き、収穫サイクルも遅れる。雨が降ると、激しい嵐が作物を損傷させたり、破壊したりする。

同様に、タライ地方にしか生息していなかった害虫や、トウモロコシを標的にするアメリカシロヒトリのようなネパールにはまったく生息していなかった害虫が、山を登ってきている。ネパールの農業はもともと自給自足がほとんどであるが、気候危機によって追い打ちをかけられ、多くの農民が畑を放棄して都市部や海外へと移住せざるを得なくなっている。

ポカラを拠点とするLI-BIRD(生物多様性、研究、開発のための地域イニシアチブ)は、生物多様性を保全しながら小規模農家の生活を向上させるために、23の地区で活動している。LI-BIRDは、気候危機の影響に適応するための実証済みの方法を提供しており、政府がこれらの対策を全国的に拡大することを望んでいる。

農場に焦点を当てる

在来の稲、小麦、雑穀、蕎麦の種子は、輸入されたハイブリッド品種よりも耐久性があり、暑さに適応しやすいです。これらの作物は、地元の土壌や微気候に進化しており、遺伝的に変化に対応するのに適している。

Local seeds on display at the Pingdanda Community Seed Bank in Sindhupalchok. Photo: LI-BIRD PHOTO BANK

ポカラを拠点とする行動研究組織LI-BIRDが行っているのは、この在来作物の品種を種子銀行で保存し、農民所有の協同組合を通じて配布することだ。

「農業を改善するためには、農民を最前線に据え、彼らの伝統的な知識を重視しなければなりません。外部の知識を持ち込んでも、ここでは通用しません。」と、LI-BIRDのビシュヌ・ブシャル氏は語った。

LI-BIRDの参加型植物育種イニシアチブでは、農民から地元の作物のさまざまな種子サンプルを集め、それらを並べて植える。収穫量、天候、害虫への耐性などの観点から農民が最も適していると判断したサンプルは、コミュニティ・シード・バンク協会によって全国に配布される。

地域特有の種子を農民に提供する地域シードバンクは、ブサル氏が言うところの「利用を通じた保全」を可能にする。これにより、在来作物が進化するチャンスが確保され、自然災害や気候変動による絶滅を回避できる。

収穫量の多い外国産の種子は魅力的だが、高価な化学肥料や農薬も必要となり、土壌を破壊することにもつながる。 在来種の種子は、はるかに耐久性があり、信頼性が高い。

「最小限の手入れと投入でも、地元の品種は生き残ります。これにより、肥料、農薬、水の必要量が少なくなります。」と、LI-BIRDのジェニー・シュレスタさんは説明した。

「在来種の種子は、地元の環境条件に自然に適応しているため、害虫、干ばつ、その他の災害に対しても耐性があります。」と、シュレスタさんは付け加えた。

A Farmers Field School in Kanchanpur observing a plot with diverse varieties of rice with help from LI-BIRD. Photo: LI-BIRD PHOTO BANK

「気候が変化すると、収穫量の減少は、輸入品種よりも地元の在来品種で大きくなります。」とシュレスタ氏は言い、ドティの在来品種であるセト・ダブディ小麦が、2022年の試験で冬の干ばつにもかかわらず、輸入小麦よりも高い収量を示したことを指摘した。

作物の信頼性は重要だが、持続可能な収入も同様に重要である。ある特定の地域に固有の農産物を高付加価値で販売する「ランドスケープ・ブランディング」は、農家が地元の在来作物に戻ってくるためのインセンティブとなっている。

そのような作物の例として、ポカラに自生し、その香りで称賛される米「ポカレリ・ジェトブド」や、ベグナス湖やルパ湖周辺の畑で栽培される雑穀「セト・カグノ」がある。これらの農産物は、社会的企業「アンナパット」によってブランド化され、販売されている。農民には最低価格が保証されており、地方自治体との協力により、その価格以上で販売できない場合には、農民に補償が支払われる。セト・カグノの場合、その価格は1キログラムあたり120ルピーである。

LI-BIRDの種子に関する成功事例は、現在、政府によって拡大されている。農業省の作物開発・農業生物多様性保全センターは、地元の作物を保存するために、30の地区の農民に資金を提供している。

有機農薬に対する政府の補助金も持続可能な農法を奨励しているが、このイニシアチブを推進しているのが政府なのかNPOなのかについては懐疑的な見方がある。

代替現金作物

気候危機の影響に対するレジリエンス(回復力)は、現金作物への多様化からも得られる。農家はこれにより、家計収入を増やし余裕を持てるようになる。

スルヤ・アディカリさんはベグナスで有名な植物育種家であり、40年以上農業に従事する中で、環境の変化に気づき始めている。

Photo: JANA AŠENBRENNEROVÁ

「ここ5年間は、村に留まるのが難しいほど暑くなり、作物が育たないほど虫や害虫が多くなりました。」とアディカリさんは語った。

そこで、アディカリさんは、以前栽培していた米の代わりに、耐熱性が高いとされるコーヒーや果物の栽培を始めた。コーヒーは最小限のスペースで栽培でき、土壌の質を向上させるだけでなく、他の作物も同時に栽培することができる。

しかし、近年は害虫や不安定な降雨がさらに大きな脅威となっているため、アディカリ氏はさらに多様化を進め、数多くの薬効があることから「ミラクルツリー」の愛称で呼ばれるモリンガに注目している。モリンガの葉は栄養補助食品として使用され、ビタミンが豊富で抗酸化作用があり、高い市場価格で取引されている。

モリンガは成長が早く、乾燥にも強い。アディカリさんはネパールにモリンガを初めて導入した先駆者であるが、政府がこの独自の製品を市場に出すのをもっと積極的に支援してほしいと願っている。

政府の無策は当然のことだとアディカリさんは考えている。つまり、彼のような農家が、気候危機に適応するための革新的な方法を自力で見つけなければならないということだ。

「政府は政策を作りますが、それは往々にして近視眼的であり、現場での実施はほとんど行われません。」とアディカリさんは語った。

種子の保存であれ、気候変動教育であれ、農村部の農民は自力で取り組まざるを得ない。つまり、気候の影響が、雇用機会の欠如とともに、移住を増加させていることを意味する。

「政府は海外在住のネパール人からの送金で十分な収入があるため、農民の苦境を放置しても構わないと思っているのです。私たちは自分たちの力で変化をもたらさなければなりません。」と、アディカリさんは語った。

だからこそ、アディカリさんは農民たちを組織化し、数の力を持たせ、適応策のアイデアをより広く共有できるようにしている。全国農民グループ連盟は、村、地区、中央の各レベルにおけるアドボカシー団体の統括組織として、この役割を担っている。

力強い雑穀

公式な肩書こそないものの、アンビカ・バンダリは村のリーダーです。5年前、彼女はそれまで多くの地元住民と同じようにトウモロコシを栽培していたが、地元のキビの一種であるセト・カグノを自分の農場で試験的に栽培し始めた。

Farmers harvesting Proso Millet in Humla. Photo: LI-BIRD PHOTO BANK

バンダリさんの収穫量の多さと、彼女のキビの市場価値の高さを目の当たりにして、カスキ郡カファルガリ村の近隣農家たちは、彼女に倣った。

気象パターンの変化と熱ストレスにより、農家はトウモロコシからキビへの転作を決断した。それから5年後、カファルガリ村は現在、国内最大のセト・カグノ生産地となり、昨年は2.56トン以上を収穫した。

バンダリさんはLI-BIRDの種子バンクから種子を入手し、その作物をLI-BIRDの種子保存活動に触発された学生たちが運営する非営利団体「メリット・ポカラ」に販売している。

メリット・ポカラは、バンダリさんのような農民に、雨や気温のパターンを追跡する携帯アプリの使用方法を指導し、植え付け、収穫、乾燥を最適な時期に行うことを可能にしている。

メリット・ポカラのモデルに基づき、地方政府は農民が公正な価格で作物を販売できるように補償制度を採用した。「官民の協力体制は本当に助かっています。また、外部からの支援がなくても、私たちは自らの運命を切り開くことができることを証明しています。」と、バンダリさんは語った。(原文へ

INPS Japan/The Nepali Times

This article is brought to you by Nepali Times, in collaboration with INPS Japan and Soka Gakkai International, in consultative status with UN ECOSOC.

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女性ボランティアがインドの水の未来を形作る

【ブバネーシュワルIPS=マニパドマ・ジェナ】

ブバネーシュワルのスラム街にある唯一の給水所では、数百世帯がこの非飲用水源に頼っていたため、毎日のように争いが絶えませんでした。しかし、それも今では過去のことです」と語るのは、インド東部のこの都市で、現在ではすべての家庭が24時間、飲用可能な水道水を自宅で利用できるようになったことに大きく貢献した水ボランティアの一員であるアパルナ・クンティアさんだ。

インド東部のオリッサ州の州都であるブバネーシュワル市が、農村から都市への移住者であふれていることを考えると、これは決して小さな偉業ではない。オリッサ州の886万戸の農村世帯のうち、3世帯に1世帯が農村から都市部へ移住しているという政府データがあります。 そのうち70%は州内での移住であり、その大半は急速に発展する州都に流れ込んでいる。

都市に新たに移住してきた人々は、捨てられたフラックスバナー(ビニール広告)と竹の棒を使ってシェルターを作ることができまるが、水へのアクセス、ましてや飲用可能な水へのアクセスは依然として大きな課題である。

「2019年の私たちの居住区のような政府公認のスラムでは、1日に2時間しか水が供給されませんでした。大きな家族は十分な水を蓄えることができず、非常に困難を抱えていました。多くの人が数日に一度、水タンク車にお金を払わなければなりませんでした。違法な水道接続も横行しており、政府にとって大きな収益損失を招いていました」と、336歳のクンティアさんはIPSの取材に対して語った。

2030年になっても、20億人が安全な飲料水なしで暮らすことになる

Map of India
Map of India

「2030年までの道のりの半ばが過ぎた。世界は持続可能な開発目標(SDG)の目標の17パーセントしか達成できていない。」と、最近公表された2024年国連SDG報告書は明らかにしている。

SDGの第6目標は、すべての人々の水と衛生設備の確保と持続可能な管理に焦点を当てており、2015年から22年の間に、安全な管理が行われている飲料水を利用している世界の人口の割合は、69%から73%に増加したと報告されている。安全な飲料水を利用できる人々は増えているものの、2022年には、依然として22億人がこの基本的人権を享受できていない。2030年までに普遍的な普及を達成するには、安全な飲料水の普及率を現在の6倍に引き上げる必要があると警告している。

国連によると、2022年には世界の人口のおよそ半分が、少なくとも1年のうちのある時期に深刻な水不足を経験した。4分の1は「極めて高い」水ストレスレベルに直面した。

このような状況は、2024年のインドの経済の中心地であるバンガロールとデリーで、この極端な夏に経験された。

気候変動はこうした問題をさらに悪化させている。格付け機関のムーディーズは6月、水不足がインドの今後の経済成長に打撃を与える可能性があると警告した。

それでも、報告書によると、インドの人口の93.3%は現在、国連が「中程度に改善している」と評価する最低限の飲料水サービスを利用しています。

女性水管理者の下では女性が最も恩恵を受ける

SDG-6のさらなる進展を目指し、2020年にオリッサ州が「水道水飲用ミッション」を開始し、各都市の家庭に設置された水道から24時間いつでも認定された品質の飲料水を提供することを目指しました。この取り組みでは、地元の自助グループ(SHG)から厳選された女性水ボランティアが活躍した。彼女たちは「ジャル・サティ」(水のパートナー)と呼ばれ、訓練を受け、変化をもたらす意欲にあふれていた。

そして、彼女たちは実際に変化をもたらした。「政府の住宅・都市開発部門が実施した調査によれば、水道料金の徴収率が約90%増加しました。都市の水管理におけるコミュニティパートナーシップを代表する彼女たちは、斬新な取り組みの重要な利害関係者なのです。」とクンティア氏は語った。

州政府の水供給ミッションを展開する州所有の非営利企業オリッサ州水道公社(WATCO)の元代表である政府高官のG・マティ・ヴァタナン氏は、女性ボランティアの活躍を讃える書籍を執筆し、この取り組みの成功の多くを彼女たちに帰している。

「水ボランティアの女性たちは、各家庭の玄関先に水を届けるという目標を現実のものとするために尽力しました。このミッションの成功は、彼女たちが人々の政府への信頼を築いたおかげです。」とヴァタナン氏は語った。

これらの女性ボランティアが各家庭に提供したサービスにより、貧困層、特に子供たちを苦しめていた下痢、黄疸、腸の不調の状況が好転した。

国連の2024年持続可能な開発報告書では、インドのSDG進捗状況は166カ国中109位と評価され、「中程度の改善が見られるが、目標達成には不十分」とされています。

インド連邦政府は、オリッサ州の「ピュアウォーター・スキーム」の成功を他の州でも再現することを検討している。

これらの女性マネージャーは、飲料水や調理用の水を各家庭の玄関先まで届けることで、他の家庭の女性たちを助け、インドにおける女性への不均衡な水の負担を解消した。

変革者たちの貢献:水パートナーの一日の仕事

女性ボランティア達は、1,200世帯の指定世帯を担当し、自身の住居と高級住宅の両方を担当している。彼女たちの顧客との親しみやすさは、政府職員には難しい信頼とオープンな対話を可能にし、彼女たちが成功を収める一因となっている。

毎月、彼女は各家庭を訪問し、設置された水道メーターを検針し、請求書を作成する。しかし、支払うことができない人々に対しては、ウォーター・パートナーは何度も何度も訪問し、支払いを促し、説得する。

「私たちは、水のような貴重なものを無駄にしないよう強く求め、新規接続が遅れた人には、そうするよう説得しました。」また、「水道メーターが設置され、支払いが義務化されたことで、各家庭は水を無駄にしない傾向にあります。スラム街では、水道料金は50~65ルピー(1ドル以下)であることが多く、最貧困層でも払える金額です。」と、クンティア氏は語った。

「この水道飲料水ミッションは、政府にとっても消費者にとってもメリットがありました。」と、2児の母であるクンティア氏はIPSの取材に対して語った。また、これはSDG-11における持続可能な都市とコミュニティの実現にも貢献している。政府に収益が生じることで、水インフラの維持が確保されるからだ。

クンティア氏は、「水ボランティアたちは水利用者の要望に応じて、携帯しているキットで水道水を検査しています。また、水に関する問題や、水の純度を低下させるパイプの漏れの情報を、政府のメンテナンススタッフに報告し、すぐに対応してもらっています。」と語った。

「以前は、水道パイプの損傷に気づいてもスタッフに連絡することはほとんどありませんでした。時には、水の盗難を目的に故意に損傷させることもありました。しかし、私たちは頻繁に家庭を訪問し、住民と親しい関係を築いているため、こうした情報を非常に迅速に入手できます。」とクンティア氏は付け加えた。

2030年持続可能な開発目標(SDG)の6-1目標は、すべての人が安全で安価な飲料水を普遍的かつ公平に利用できるようにすることを求めている。この水道水飲用ミッションは、この目標を達成するための動きである。

WATCOによると、2023年3月までに、オディシャ州の115の都市地方自治体(ULB)のうち29のULBに住む450万人の都市住民が、水道水利用を開始または利用の準備が整っている。

SDGs Goal No. 6
SDGs Goal No. 6

この計画では、水の公平性が確保されるだけでなく、各家庭の水道管に水道メーターを取り付けることで、持続可能性も確保されている。各家庭は水道料金を支払っているため、無駄遣いをしない傾向にある。

しかし、4年間奉仕活動を続けてきた女性ボランティアたちは、その奉仕活動に対する金銭的な評価を改善するよう要求している。現在、彼女たちが得ているのは、インセンティブとして請求書回収額の5%、新規顧客を水道接続に登録させた場合の100ルピー、そして自転車である。アパルナ・クンティア氏はIPSの取材に対し、1日4時間をこの仕事に費やし、月収はおよそ5000~7000ルピー(60~84米ドル)だと語った。その多くは、3輪オートリキシャを運転する夫の収入15000ルピー(180米ドル)を補い、ワンルームの家賃を含む家計に充てている。余ったお金は、お祭りのときや村の親戚を訪ねたときに使っている。

「今年6月の選挙で政権が交代し、オリッサ州の新政府は女性の自助グループ全体を再編成しようとしています。ジャル・サティは新しい名称を得る可能性がありますが、非常に成功したこのプログラムは継続されるでしょう。」と、WATCOの最高執行責任者であるサラト・チャンドラ・ミシュラ氏はIPSの取材に対して語った。(原文へ

INPS Japan/IPS UN Bureau

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ドキュメンタリー映画『私は生きぬく(I Want to Live On)』がセミパラチンスク核実験の生存者の声を届ける

【アスタナINPS Japan/Atana Times=アイバルシン・アフメトカリ】

セミパラチンスク核実験場の生存者たちは8月28日にアスタナで行われたドキュメンタリー「私は生きぬく:語られざるセミパラチンスク」(創価学会インタナショナル(SGI)の支援を得てカザフを拠点とするNGO国際安全保障政策センター(CISP)によって制作された)の上映会で、ソ連による核実験がもたらした恐ろしい人的被害について証言した。

Semipalatinsk former nuclear weapon test site/ photo by Katsuhiro Asagiri
Semipalatinsk former nuclear weapon test site/ photo by Katsuhiro Asagiri

このドキュメンタリーはアリムジャン・アクメートフ氏とアッセル・アフメトワ氏の共同監督作品であり、ソ連邦時代の1949年から89年にかけてセミパラチンスク核実験場(面積は約1万8000平方キロメートルで日本の四国の大きさに相当:INPSJ)で行われた450回以上の核実験が及ぼした影響について、当時実験場の周辺で暮らしていた人々の証言に基づいて制作したものだ。取材に応じた人々の多くは様々な遺伝性疾患に今も苦しんでいる。

このドキュメンタリー作品は、自殺者の多さ、今も家畜が育てられている汚染された土地や湖、不十分な政府支援、遺伝性疾患を子孫に遺さないため子供を持たない決断を強いられた個人の苦悩等、核実験にまつわるあまり知られていない影響についても光を当てている。

アクメートフ監督は、核実験の被害者(ヒバクシャ)個々人の経験を収録することは、セミパラチンスクにおける核実験がもたらした悲劇が世代を超えて続いているという悲惨な実相を伝える上で、より説得力があります。」と語った。

Filmed and edited by Katsuhiro Asagiri, Presidetn of INPS Japan.

「このドキュメンタリー作品を制作するインスピレーションは日本の経験から得ました。2019年にニューヨークを訪れ、国連総会第一委員会に出席していたとき、市民社会フォーラムが開催されていました。彼らは国連の場や主要なアメリカの大学で講演を行ってきました。日本のNGOの1つが、過去10年間に1000人の被爆者(ヒロシマ・ナガサキへの原爆投下の生存者)を国連に連れてきたというプレゼンテーションを行っていました。 その時、私はこれが実に力強い情報発信の手段だと気付きました。 多くの場合、人々が文書や数字を扱う際には、その背後に生身の人間・個人が存在することを忘れてしまいがちです。」と、アクメートフ監督は語った。

「このドキュメンタリーの目的は、観客が作品に登場する核実験被害者の方々の目を真剣に見つめてもらうことで、この問題の本質を、抽象的なものではなく、個人的なレベルで現実の問題として感じてもらうことです。私たちは、カザフ人だけでなく世界中の人々がこの作品に共感できるように、字幕を作成しました。」とアクメートフ監督は付け加えた。

Dmitriy Vesselov Photo: Katsuhiro Asagiri of INPS Japan.
Dmitriy Vesselov Photo: Katsuhiro Asagiri of INPS Japan.

アクメートフ監督は、この映画が人々の生活に小さいながらも具体的に意味ある影響を与えたことを誇りに思っていると語った。作品の中でインタビューを受けた一人、ディミトリー・ヴェセロフ氏は、鎖骨が完全に欠如するマリー・サントン症候群という遺伝性疾患を抱えているが、障害者として認定されていなかった。しかしこのドキュメンタリー作品が公開され、関係省庁の注目を集めた結果、彼の症状は正式に認定された。

「8年間の苦闘の末、ヴェセロフ氏はようやく障害者として認定されました。ですから、私たちは啓発活動を継続すべきだと思います。カザフスタンの若者たちでさえ、多くの人々が、もう何年も前のことだと考え、今では何の影響もないと思っていることを知り、私はとても驚き、ショックを受けました。」とアクメートフ監督は語った。

アクメートフ監督はまた、このドキュメンタリー作品を40分に拡張する計画があることを明らかにした。

「全体的な考えとしては、これらの物語と(作品で勇気をもって証言に応じた)ヒーローたちをさらに深く掘り下げていくことです。すでに多くの素材を撮影済みなので、新たなヒーローを紹介するつもりはありません。これはどちらかというとアマチュア作品です。しかし、登場するヒーローたちのストーリーには、さらに掘り下げるべき内容があります。20分版をご覧になった視聴者の方々にも、40分版をご覧いただき、彼らのストーリーをより深く理解していただけるでしょう。」とアクメートフ監督は語った。(原文へ

INPS Japan/The Astana Times

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アクタウ、2025年にテュルク世界の文化首都に

【アスタナINPS Japan/アスタナタイムズ=ナミマ・アブオヴァ】

カザフスタン西部のアクタウは2025年にテュルク世界の文化首都に指定され、都市とその住民にとって重要なマイルストーンとなる。この新たな地位は、多くの文化的および発展的機会をもたらすと期待されている。どのようなイベントが開催され、この都市の成長にどのような影響を与えるのだろうか。テングリニュースがアクタウ市当局に問い合わせたところ、さまざまな文化やスポーツイベントの準備がすでに進められているとのことだ。

予定されているイベントには、クラシック音楽や民族音楽のコンサート、写真展や絵画展、劇団のフェスティバル、音楽や舞踊団による講演、さらにテュルク世界各地のアーティストによる出演などがある。

また、テュルク語圏諸国の文化大臣常設理事会、フォークロア・フェスティバル、コンテスト、アイティス(全国作曲コンクール)、国際フォーラム、芸術家や彫刻家のためのシンポジウム、科学的および実用的な会議、歴史や観光名所のガイドツアーも開催される予定だ。

イベントのスケジュールはまだ最終決定されておらず、フェスティバルにかかる費用も未定である。

「多くのイベントがカザフの文化を紹介し、ゲストや参加者が私たちの習慣や伝統を体験できるようにします。「アクタウは地理的に恵まれているため、カザフスタンの観光成長、特に海洋観光とビーチ観光の重要な原動力となっています。この地域の観光ポテンシャルはカスピ海に支えられており、海辺のシーズンは3ヶ月から6ヶ月続きます。」とアクタウ市からのメッセージが伝えている
Photo credit: Advantour

マンギスタウ地方は、南北および東西を結ぶ国際輸送回廊が交差する戦略的な場所に位置している。地域の中心であるアクタウは、カザフスタン唯一の海港であり、欧州・コーカサス・アジア輸送回廊(TRACECA)と北南輸送回廊(ロシア、イラン、インドなどを結ぶ国際輸送回廊)という2つの主要な国際輸送回廊がマンギスタウ地方を通過している。

TOP10 – Mangystau/ Meet Me In QAZAQStan

2023年、この地域には39万人の観光客が訪れ、そのうち34万6,000人がアクタウを訪れた。そのうち30万6,000人がカザフ国民で、8万4,000人が外国人であった。これは2022年と比較して25%の増加である。アクタウ市当局は、リゾート地とサービスの拡大により、観光客数は2.5倍になると予測している。

アクタウ出身のブロガー、アザマット・サルセンバエフ氏は、複雑な心境であると語った。「一方では、テュルク世界の首都に選ばれたことは刺激的であり、励みになります。マンギスタウの自然の美しさや街のインフラを高く評価する観光客が集まることを期待しています。しかし、これをアスタナで開催された2017年万国博覧会と比較すると、公園やアトラクション、インパクトのあるアートインスタレーションなど、インフラに大きな変化がなければ、コンサートやイベントにお金をかけるだけでは無意味なのではないかと心配しています。」とサルセンバエフ氏は語った。

「このイベントのために、1年以内にアクタウに何か意味のあるものが建設されることを望んでいます。これらの建造物は、このイベントを記念するだけでなく、イベントが終わった後も市民が楽しみ、交流できるような永続的な特徴として残るべきです。」と付け加えた。

アクタウを2025年のテュルク世界の文化首都とする決定は、昨年10月13〜14日にアゼルバイジャンのシュシャで開催されたテュルク文化発展国際機構(TURKSOY)の第40回加盟国会議でなされた。

会議の後、TURKSOYのスルタン・ラエフ事務局長は、アクタウが選ばれた理由として、その豊かな歴史的遺産と、テュルク世界全体の共有文化遺産を象徴する数多くのモニュメントを挙げた。

Map of the distribution of Turkic languages across Eurasia. By GalaxMaps - This PNG graphic was created with Medibang., CC BY-SA 4.0
Map of the distribution of Turkic languages across Eurasia. By GalaxMaps – This PNG graphic was created with Medibang., CC BY-SA 4.0
「以前は、アスタナとトルキスタンがカザフスタンのテュルク世界の首都として機能していました。アクタウがその名誉を守ることに疑いはありません。国際社会は、テュルクの伝統と兄弟愛に満ちたテュルク民族を結びつける絆を目にし、学ぶことでしょう。TURKSOYの使命は、共通のテュルク文化を世界中に広めることであり、私たちはこの使命に全力を尽くしています。」とラエフ事務局長は語った。(原文へ

INPS Japan

Original article: https://astanatimes.com/2024/08/aktau-prepares-to-become-cultural-capital-of-turkic-world-in-2025/

*チュルク系民族の人口を持つ国々は国際文化組織を通じて毎年、「テュルク世界の文化的首都」を定め、都市を選んでいる。選ばれた都市は、テュルク文化を祝うために多くのイベントを主催している。今年の文化首都はアゼルバイジャンの古都シュシャ。来年はカザフスタン西部のアクタウが文化首都を引き継ぐことになる。(INPS Japan)

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国連の中満泉氏、核軍縮におけるカザフスタンの道徳的リーダーシップを強調

【アスタナINPS Japan/Atana Timesアセル・サトゥバルディナ

核拡散のリスクが高まり緊張が深まる中、国際連合(UN)は引き続き核軍縮を推進している。この分野で比類なき道徳的権威を持つカザフスタンは、この取り組みの重要な支援国であると、国連事務次長兼軍縮担当上級代表の中満泉氏は、アスタナタイムズの取材に対して語った。

「カザフスタンは、これらの問題においてすでに非常に強力なリーダーシップを発揮しています。カザフスタンが提案した『核実験に反対する国際デー』は、国際社会に大きな勢いをもたらしました。NPT(核不拡散条約)やTPNW(核兵器禁止条約)など、多くの条約メカニズムにおいて、カザフスタンは多国間協議や交渉を主導しています。」と中満氏は語った。

中満氏は、8月27日から28日にかけてカザフスタンの首都アスタナで開催される非核兵器地帯に関するワークショップに出席するため、同地を訪問している。このワークショップは、カザフスタンと国連軍縮部(UNODA)との協力により開催されている。

The workshop on nuclear-weapon-free zones is being held at MFA of Kazakhstan on Aug. 27-28. Photo: Katsuhiro Asagiri, President of INPS Japan.
The workshop on nuclear-weapon-free zones is being held at MFA of Kazakhstan on Aug. 27-28. Photo: Katsuhiro Asagiri, President of INPS Japan.
「これはカザフスタンの道徳的権威と非常にユニークな経験によって支えられていると思います。そして、カザフスタンが核軍縮の強力なリーダーの一つとして台頭したことは、国連やニューヨークでの文脈において非常に役立っています。」と中満氏は語った。

1991年にソ連の崩壊に伴い独立を果たしたカザフスタンは、当時世界第4位の核兵器を自発的に放棄した。その数ヶ月前の1991年8月29日、カザフスタンは40年間にわたりソビエト連邦が450回以上の核実験を行ったセミパラチンスク核実験場を閉鎖した。この大胆な決断が、核兵器のない世界を提唱するカザフスタンのその後数十年にわたる道のりの礎となった。

Semipalatinsk former nuclear weapon test site/ photo by Katsuhiro Asagiri
Semipalatinsk former nuclear weapon test site/ photo by Katsuhiro Asagiri

カザフスタンの継続的な活動には、中央アジア非核兵器地帯の設立や、2009年8月29日を「核実験に反対する国際デー」と定めることなどが含まれ、同国の立場を確固たるものにしている。

中満氏は、「国連の軍縮アジェンダは、核兵器の廃絶こそが世界的な安全保障にとって不可欠であるという信念に根ざしています。」と強調した。

「核兵器廃絶への道筋を取り戻すことは、世界の平和と安全保障のために最も重要な課題の一つです。核兵器のない世界という共通の目標は依然として保持されていますが、最近の情勢を見ると、多くのリスクが増大していることが分かります。これは国連にとって非常に憂慮すべきことです。」と中満氏は語った。
Izumi Nakamitsu, UN Under-Secretary-General and High Representative for Disarmament Affairs. Photo: Katsuhiro Asagiri, President of INPS Japan.
Izumi Nakamitsu, UN Under-Secretary-General and High Representative for Disarmament Affairs. Photo: Katsuhiro Asagiri, President of INPS Japan.

軍縮努力における最も差し迫った課題の一つは、核保有国を交渉の場に引き出すことです。

「私たちはさまざまな方法、さまざまな場所で核兵器国を実際に集めています。もちろん、これらの国々には枠組みがあります。それはNPTの枠組みにおけるN5協議プロセスと呼ばれるものです。私たちは、核兵器のリスクや核保有国が負う核軍縮の義務と責任に関する問題について、各国が直接話し合うことを奨励しています。」と中満氏は説明した。

国連が軍縮アジェンダを促進する方法について、中満氏はNPTとTPNWの既存のプロセスに言及した。両者は核兵器に対処することを目的とした国際条約であるが、その範囲と法的枠組みは異なる。

NPTは1970年に発効した条約で、核兵器の拡散防止、核軍縮の奨励、原子力の平和利用の促進に焦点を当てた国際協定の礎となるものである。

「ところで、今年7月にジュネーブで開催された2026年NPT運用検討会議第2回準備委員会の議長はカザフスタンが務めました。」と中満氏は付け加えた。

カザフスタンは1994年以来、非核兵器国としてNPTに加盟している。

The Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons, signed 20 September 2017 by 50 United Nations member states. Credit: UN Photo / Paulo Filgueiras
The Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons, signed 20 September 2017 by 50 United Nations member states. Credit: UN Photo / Paulo Filgueiras

2024年、カザフスタンはNPT再検討サイクルにおける主要イベントの議長国を初めて務めることとなった。NPT再検討会議は5年ごとに開催され、条約の履行状況を評価し、その目的を達成するための今後のステップの概要を策定する。第11回NPT再検討会議は2026年にニューヨークで開催される予定である。

TPNWは2017年6月に採択され、21年1月に発効した。この条約は画期的なもので、それまで違法とされてこなかった最後の大量破壊兵器である核兵器の保有を初めて国際法で禁止したものである。

カザフスタンは2018年3月2日にTPNWに署名し19年8月29日に批准した。現在、93の署名国と70の締約国がある。

カザフスタンは2025年3月にニューヨークで開催される第3回TPNW締約国会議の議長国を務める予定である。

UN Summit of the Future
UN Summit of the Future

「さらに、非常に重要な準備も進められています。それは「国連の未来サミット」と呼ばれるもので、国連総会のハイレベル週間にニューヨークで開催される予定です。国連加盟国によって、未来のための協定が交渉されています。交渉は現在も進行中ですので、最終的にどのような結果になるのかはまだわかりません。しかし、その文書では、核兵器問題と、廃絶目標を達成する方法に重点が置かれています。」と中満氏は語った。(原文へ

INPS Japan/Astana Times

この記事は、The Astana Timesに初出掲載されたものです。

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【東京/アスタナINPS Japan=浅霧勝浩】

核紛争の脅威がますます影を落とす中、カザフスタンは世界的な軍縮運動への取り組みを強化している。2024年8月27-28日、国連軍縮局(UNODA)と共同で、カザフスタンはアスタナで重要なワークショップを開催する。5年ぶりの開催となるこの会合は、既存の5つの非核兵器地帯(NWFZ)を活性化し、非核兵器地帯間の協力と協議を強化することを目的としている。

このイニシアチブは、アントニオ・グテーレス国連事務総長の「軍縮のためのアジェンダ」、特にアクション5に沿ったもので、各非核兵器地帯間の協力強化を通じて非核兵器地帯全体を強化し、核保有国に対して関連条約の尊重を促し、中東などでの新たな非核兵器地帯の設立を支援することを強調している。この取り組みは、核の脅威を削減し、地域と世界の平和を促進するという国際社会の継続的な取り組みを反映したものである。

10-Minute Documentary on Nuclear Testing in Kazakhstan. Credit: The ATOM Project.

カザフスタンの軍縮への歴史的コミットメント

核兵器のない世界に向けたカザフスタンのビジョンは、世界的な軍縮努力における同国のリーダーシップに深く根ざしている。このビジョンは単なる願望ではなく、核兵器がもたらす壊滅的な影響に関する同国の実体験に基づくものである。カザフスタン北東部にあるセミパラチンスク核実験場は、しばしば「ポリゴン」と呼ばれ、1949年から89年にかけてソ連が456回の核実験を行った場所である。これらの核実験によって150万人以上が被曝し、ガンや先天性異常などの深刻な健康被害や環境悪化がもたらされた。

被害の全容が明らかになったのは、ソ連崩壊後にカザフスタンが独立してからである。1991年、カザフスタンは当時世界第4位だった核兵器を放棄し、セミパラチンスク核施設を閉鎖するという歴史的な決定を下した。この行動により、カザフスタンは世界的な軍縮・不拡散の強力な擁護者となり、その辛い歴史を核兵器のない世界へのコミットメントへと変えた。

カザフスタンの軍縮への献身は、8月29日を国連が認定する「核実験に反対する国際デー」とするイニシアチブをとったことでさらに強調されている。この日は、1949年にセミパラチンスクで行われたソ連初の核実験と、91年の核実験場閉鎖を記念するもので、核実験の恐ろしさを想起させるとともに、国際社会に行動を呼びかける日となっている。

世界の安全保障における非核兵器地帯の役割

非核兵器地帯(NWFZ)は、世界の核不拡散・核軍縮体制の重要な構成要素である。条約によって設立されたNWFZは5つある:トラテロルコ条約(ラテンアメリカ・カリブ海地域)、ラロトンガ条約(南太平洋地域)、バンコク条約(東南アジア地域)、ペリンダバ条約(アフリカ地域)、セメイ条約(中央アジア地域)。さらに、自国の宣言に基づいて国連総会決議で承認された一国非核兵器地帯というモンゴルのユニークな地位は、核不拡散に対する国家のコミットメントを例証している。

非核兵器地帯は、国際的な検証・管理システムによって強化され、領土内での核兵器の存在を禁止している。NWFZは、地域の安定を維持し、核紛争のリスクを軽減し、世界的な軍縮を推進する上で極めて重要な役割を果たしている。

Nuclear Weapon Free Zones. Credit: IAEA
Nuclear Weapon Free Zones. Credit: IAEA

アスタナワークショップ :軍縮のための重要な集まり

アスタナで開催されるワークショップは、5つのNWFZ条約の締約国が、国際機関の代表者とともに、これらの地帯が直面する課題の克服を目指す議論に参加するための重要な機会である。核戦力が国家安全保障の中心であり続ける地域において、地政学的緊張が高まっていることを考えると、今回の会合は特に時宜を得たものといえる。

ワークショップでは、国連事務総長の軍縮アジェンダにあるように、非核兵器地帯間の協力強化に重点が置かれる。これには、地帯間の協議を促進し、核保有国がこれらの条約の議定書を遵守するよう促すことが含まれる。このワークショップは、2019年にヌルスルタン(現在のアスタナ)でUNODAとカザフスタンが共催した「非核兵器地帯とモンゴル間の協力」と題するセミナーを基礎とするもので、非核兵器地帯間の協力を活性化することを目的とした重要な勧告が出された。

参加者は、加盟国の安全保障上の利益を強化し、より強固な協議メカニズムを育成することに重点を置きながら、NWFZの目的を推進するための戦略について議論する。ワークショップではまた、特定の核保有国、特に米国が、いくつかのNWFZ条約に関連する議定書の批准に消極的であることがもたらす課題についても議論する。米国は核拡散防止条約(NPT)の締約国であるにもかかわらず、南太平洋(ラロトンガ条約)、アフリカ(ペリンダバ条約)、中央アジア(セメイ条約)を対象とする条約の議定書をまだ批准していない。このような消極的な姿勢が、これらの地域が提供しうる安全保障上の利益を完全に実現することを妨げている。

核兵器禁止条約(TPNW)におけるカザフスタンのリーダーシップ

UN Secretariate Building. Photo: Katsuhiro Asagiri
Kazakhstan will preside over the 3rd meeting of state parties to TPNW which will take place at the United Nations Headquarters in New York from March to 7 in 2025. Photo: Katsuhiro Asagiri, President of INPS Japan.

核軍縮におけるカザフスタンの役割は、NWFZにとどまらず、核兵器禁止条約(TPNW)におけるリーダーシップにも及んでいる。2025年3月、カザフスタンは国連で第3回TPNW締約国会議を主催し、核軍縮の擁護者としての地位をさらに強固なものにするだろう。

カザフスタンはTPNWを協力に支持しており、同条約の第6条と第7条に沿って、核実験の被害者を支援し、影響を受けた環境を修復するための国際信託基金の設立を積極的に推進してきた。

TPNW第1回締約国会議で策定された「ウィーン行動計画」は、国際信託基金の実現可能性を検討し、影響を受ける締約国に対し、核兵器の使用や核実験の影響を評価し、実施のための国家計画を策定するよう促すなど、これらの条文を実施するための行動を概説している。

カザフスタンとキリバスが共同議長を務めたTPNW第2回締約国会議(2MSP)では、進展が見られたが、課題も残っている。被害者支援、環境修復、国際協力に関する非公式作業部会は報告書を提出し、第3回締約国会議(3MSP)で国際信託基金の設立に関する勧告を提出することを目標に、そのマンデートが更新された。この分野におけるカザフスタンのリーダーシップは、セミパラチンスクでの核実験がもたらした壊滅的な影響に関する自国の経験から、核兵器の人道的影響に取り組むという同国のコミットメントを強調するものである。

市民社会の重要な役割

A brochure of the side event titled "I want to Live on: The Untold Stories of the Polygon Film Screening Event" . Photo: Katsuhiro Asagiri, President of INPS Japan.
A brochure of the side event titled “I want to Live on: The Untold Stories of the Polygon Film Screening Event” . Photo: Katsuhiro Asagiri, President of INPS Japan.

この2日間のイベントの一環として、創価学会インタナショナル(SGI)と国際安全保障政策センター(CISP)は、9月28日の夜にサイドイベントを開催し、ドキュメンタリー映画「私は生きぬく:語られざるセミパラチンスク」を上映する。このドキュメンタリーは、SGIの支援を受けてCISPが制作したもので、昨年のTPNW第2回締約国会議の際に国連で初めて上映された。このサイドイベントは、SGIとカザフスタンが共同で取り組んできた広範なイニシアチブの一環であり、近年、国連、ウィーン、アスタナで核兵器の人道的影響に焦点を当てたいくつかのイベントを共催してきた。

また、アスタナでのワークショップと同時に、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)は、いくつかの国の被爆者を含む市民社会団体や活動家を招集して会議を開催する予定だ。アスタナで政府と市民社会の取り組みが融合するこの瞬間は、世界的な軍縮運動において重要な意味を持つだろう。外交官や国家代表が公式ワークショップで政策や協力について議論する一方で、市民社会が並行して開催する活動は、人道的メッセージを増幅し、核兵器のない世界の緊急の必要性を強調するものとなるだろう。

Though two separate events, both two day workshop attended by 5 existing nuclear weapons free zones coorganized by Kazakhstan and UNODA and a Civil Society conference organized by ICAN will take place at this hotel in Astana. Photo: Katsuhiro Asagiri, President of INPS Japan.

世界的な緊張が高まる中、アスタナでのワークショップは希望の光であり、軍縮に向けた世界的な旅路における重要な瞬間である。協力、対話、そして平和への共通のコミットメントを通じて、核兵器のない世界という夢は、依然として手の届くところにある。カザフスタンは、国際社会の支援を得て、この重要な取り組みの最前線にいる。(原文へ)

INPS Japan

This article is brought to you by INPS Japan in partnership with Soka Gakkai International, in consultative status with UN ECOSOC.

The Astana Times, Inter Press Service, London Post,

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【エルサレムINPS Japan=ロマン・ヤヌシェフスキー】

イランとイスラエルの「影の戦争」は数十年にわたり続いており、徐々に勢いを増している。イスラム共和国の高官たちは、イスラエルを破壊する意図を何度も表明してきている。この目的のために、イランはレバノン、シリア、イラク、イエメンなどの地域で軍事組織を設立し、資金提供を続けている。

イランは、イスラエルに対する包括的な攻撃計画を綿密に策定し、それがユダヤ国家にとって致命的となる可能性がある。しかし、この計画は10月7日にハマスによって阻止されたかもしれない。ハマスは事前に同盟国に知らせずに計画の一部を加速させて実行した。本来、この計画はすべての組織が協調して行動することを想定しており、単独での行動は想定されていなかった。

On July 27 Lebanese Hezbollah hit a Druze village on a border with Syria and Lebanon. 12 children were killed by this strike. Credit: Roman Yanushevsky.

地域で最も強力な親イラン派組織であるレバノンのヒズボラは、ハマスを言葉で支持しつつも、戦争に加わったのは翌日の10月8日であり、その行動は比較的抑制されていた。その結果、イスラエルは約10か月間、ハマスの拠点であるガザ地区に対する軍事作戦を展開し、ヒズボラはイスラエル北部に対してロケット弾やドローンを使った攻撃を徐々に増やしている。そのため、レバノン南部だけでなく、国境地帯からも住民が避難している。

昨年秋以降の親イラン派との対立の中で、イスラエルはダマスカスのイラン領事館を攻撃し、イスラム革命防衛隊(IRGC)クッズ部隊の上級司令官であるモハマド・レザ・ザヘディ准将らIRGC幹部7人を殺害した。

これに対して4月13日、イランは1979年以来初めて、数百発の無人機とロケット弾を使ってイスラエルを直接攻撃した。そのほとんどは迎撃されたが、イスラエルはその報復としてイスファハン近郊のイランの核施設を守るレーダーを標的とした反撃を加えた。

その後、双方は核兵器をめぐる脅迫を交わした。4月18日、核安全保障を担当するIRGCのアフマド・ハグタラブ上級司令官は、「イランの核施設に対するシオニスト政権の威嚇は、われわれの核ドクトリンの再考とこれまでの考慮事項の放棄につながる可能性がある。」と述べ、イスラエルの核施設に強力なミサイル攻撃を仕掛け、破壊すると脅した。

Ayatollah Khamenei, the leader of the Islamic Republic of Iran, congratulated Nowruz 1403 CH in a televised message. Credit: By Khamenei.ir, CC BY 4.0,

5月9日には、イランの最高指導者アリ・ハメネイ師の顧問であるカマル・ハラジ氏も同様の発言をしている。イスラエルがイランの存在を脅かせば、イランは核兵器の開発を余儀なくされるかもしれない、と。

「われわれは核爆弾を作ると決めたわけではないが、イランの存在を脅かすようなことがあれば、われわれの軍事ドクトリンを再考せざるを得なくなるだろう。」

こうした脅迫に対する政権の鋭い批判を受け、イランの外務省は態度を軟化させ、イランが大量破壊兵器の拡散を禁止する国際的な協定を遵守し続け、核ドクトリンを変更する意図はないと発表した。

イラン外務省のナセル・カナニ報道官は、大量破壊兵器に関するイランの原則的な立場は、イランの最高指導者であるアリ・ハメネイ師によるファトワ(宗教上の命令)に基づいており、そのような兵器の製造を禁止していると述べた。報道官によれば、イランはそのような兵器が国際社会への脅威をもたらすと考えている。

イスラエルはイランの脅しに対し、対抗措置をとる構えを見せた。6月末、イスラエル航空宇宙産業(IAI)のヤイル・カッツ作業委員長は、イスラエルに対する大規模な攻撃があった場合、イスラエルは核兵器を使用する用意があることを示唆した。

「四方八方から同時に大規模な攻撃があった場合、私たちには終末兵器がある。私たちは、彼らが私たちに押し付けようとしている状況を覆す兵器を持っている。」と述べた。「イラン、イエメン、シリア、イラク、そして中東のすべての国々が、私たちと決着をつける時が来たと判断した場合、私たちは世界の終末兵器を使用する能力を持っている。」

Secretary of Defense Jim Mattis meets with Israel’s defense minister, Avigdor Lieberman, at the Pentagon in Washington, D.C., March 7, 2017. (DOD photo by U.S. Air Force Staff Sgt. Jette Carr)

数日後の7月8日、イスラエルのアヴィグドール・リーベルマン元外相も、ラジオインタビューでイランの核計画とテヘランの勢力拡大について言及した。彼によれば、イスラエルはあらゆる手段を用いるべきだと言う。

「彼らの核計画を終わらせなければならない」と彼は述べ、第二次世界大戦で日本に対して核兵器が使用されたことで戦争が終結したことを想起させた。

これらの発言は、イスラエルが核兵器を使用する可能性を示唆していると多くの人々が受け止めた。

イスラエルは核不拡散条約(NPT)に署名していない。イスラエルは何十年もの間、この問題に関してあいまいな政策を維持してきた。専門家は、イスラエルが少なくとも200発の核弾頭を保有していると確信している。1960年代後半、イスラエルはフランスの協力を得て秘密裏に核兵器を開発したが、公式には宣言していない。イスラエルの指導者たちは公式には否定している。

ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の年次報告書によれば、核保有国は過去5年間で核兵器への支出を3分の1増やした。地政学的緊張の高まりを背景に、核兵器の近代化が進んでいるのだ。報告書によれば、過去1年間で、核保有国9カ国すべてがこうした取り組みに関与している。

Negev Nuclear Research Center at Dimona, photographed by American reconnaissance satellite KH-4 CORONA, 1968-11-11. Credit: Public Domain

イスラエルについては、核兵器とディモナのプルトニウム生産炉の近代化を進めていると専門家は見ている。イスラエルにおける核兵器への支出は、2018年以降33%以上増加している。

イランについては、7月中旬、アントニー・ブリンケン米国務長官がコロラド州アスペンでの安全保障会議で、イランが核保有能力に近づくスピードについて非常に気になる発言をした。「イランが原爆を製造するのに十分な核分裂性物質を濃縮するのは、せいぜい2週間先だ。」とブリンケン国務長官は語った。

米国家安全保障研究所のイラン核開発計画の専門家によると、2024年5月の国際原子力機関(IAEA)報告書の主要なポイントは、イランがウラン濃縮計画を進め続け、60%まで濃縮した物質の蓄積に注力していることを示している。

IAEA
IAEA

しかしこのことが、イランが核兵器製造の瀬戸際にいることを意味しない。なぜなら、ウランの濃縮と核爆弾製造との間には依然として技術的なギャップがあるからだ。

専門家は、イランは早ければ明日にも兵器級レベル(90%)のウラン濃縮を開始できると見積もっているが、欧米の反応を恐れて現在は控えている。しかし、イランは660%までウラン濃縮を続け、備蓄を増やしている。

このように、イランとイスラエルの対立と核兵器使用の脅威は、直接的な軍事衝突が起きた場合、当事者の一方が冷静さを保てず、禁止兵器の使用に踏み切る可能性がある危険な状況を生み出しています。(原文へ

INPS Japan

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