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|視点|核兵器なき平和を目指した闘士が逝く、しかし彼のメッセージは死なず

【ルンド(スウェーデン)IDN=ジョナサン・パワー】

核時代における影の英雄の一人であったブルース・ブレア氏が7月19日、72歳で亡くなった。ブレア氏は1970年代の一時期、大陸間横断核ミサイルの発射管理官を務めていた人物である。彼の任務は、ロシア西部の都市やその住民、あらゆる階級の労働者、高齢者、無垢な子どもたちを跡形もなく全滅させる核ミサイルの発射命令を、昼夜を分かたず地中深くの部屋に籠って待機する生活だった。

『ニューヨーク・タイムズ』紙は追悼記事のなかで「核攻撃を開始することがいかに容易であるか、それに対する防護手段がいかに欠落しているかについて、ブレア氏は警告を発し続けた。核軍備管理を要求するリーダーの一人として、彼は各国に核先制不使用政策を採るよう強く求めた。」と述べた。

ブレア氏が配置されていたのはモンタナ州マルムストロム空軍基地で、1945年に広島を破壊した原爆の100倍以上の爆発力を持つ核弾頭を装着した大陸間弾道ミサイル「ミニットマン」50基を担当していた。ブレア氏は2018年に「プリンストン同窓会ウィークリー」紙の取材に対して、「私はこの経験をとおして、このプロセスがいかに迅速に行われるか、命令に疑問をさしはさむ余地がいかに存在しないかを明確に認識しました。」と語っている。

A Minuteman-III missile in its silo/ Public Domain

新型コロナウィルス感染症(COVID-19)を巡る騒ぎの中で、この困難で政治的に不安定な時期にあって核のボタンに指をかけているのが、あの不安定かつ移り気で怒りっぽいドナルド・トランプ大統領であることを議会やメディアで指摘する声はほとんどなかった。

米国の世論は、偶発的な発射か、あるいは大統領の狂気ゆえに起こりうる核のハルマゲドンについて無視を決め込んでいるかのようだ。理論的に、そして法的に言って、議会も軍も大統領の核発射命令を止めることはできない。もちろん、精神に異常をきたした大統領の命令を妨げる秘密の緊急対応計画を軍が持っていないとは考えられないが。

大統領には決断するまでに、敵のミサイルが飛来してきているとの通告からは5分、発射命令から核ミサイルが呼び戻し不能な状態になるまでは12分しか時間が与えられていない。ブレア氏は、潜在的な脅威に対応してほんのわずかな時間でなされる意思決定において時間を稼ぐための方法を見つけようとしてきた。

ブレア氏は、例えば1977年、建前としては大陸間弾道ミサイル「ミニットマン」を守るための「解除コード」のプログラムをやり直すよう空軍を説得した。それまで、すべての解除キーが、発射担当者が覚えやすいように「00000000」にセットされていたのだ。いかにもばかばかしい話ではあるが、悪意を持った、あるいは不安定なミサイル発射担当者がいれば、大統領からの発射命令がなくても、核ミサイルを発射できる状態にあったのだ。ブレア氏は、核弾頭をミサイルから分離して保管することを求めた。

ブレア氏は、アウトサイダーでも、デモをする人でも、単に座して様子を見るような人でもなかった。あくまで空軍といる組織の中で彼独自のやり方で行動した。プレア氏は、1982年から85年にかけて、米議会技術評価局のために軍の核関連命令系統の見直しを指揮した。1987年から2000年まではブルッキングズ研究所で上級研究員として外交政策の研究をしたが、同研究所はかつて政府高官であった外交専門家や核専門家を多く抱えていた。

ブレア氏は、ソ連の核システム管理と安全策は米軍のものより脆弱なのではないかと恐れていた。1993年に『ニューヨーク・タイムズ』紙に寄せた文章で、ロシア軍の司令部が仮に破壊されたとしても、ソ連の破滅的なシステムが自動的に発射命令を下す可能性があると警告している。また、別の機会では、PBSのテレビ番組「フロントライン」で、「今日私たちが直面している最大の問題は、抑止の問題ではなく、とりわけロシアにおける管理の失敗の問題だ」と述べている。

また、3年前には、ふたたび『ニューヨーク・タイムズ』紙で、外部のハッカーが米国のミサイルシステムを乗っ取る可能性があると警告していた。

ブレア氏をはじめとした米国の核政策に批判的な少数の専門家、それに一部の元将官らの働きによって、より強靭な指揮管理系統の構築を含めた安定化のための改革が進み、深刻な不安定リスクを引き起こしていた核システムの比重を下げる方向へ一定程度進んだ。

Strategic Command and Control by Bruce G. Blair

ブルッキングズ研究所のマイケル・オハンロン上級研究員はブレア氏に敬意を表して、彼は「世界の重みをその肩で感じていた人物だった。」と同研究所のウェブサイトに投稿した。オハンロン氏によれば、ブレア氏は「時として、自身が闘っている問題の重みゆえに、そして、人類を救う努力をするという責任を重大なものとして引き受けているがゆえに、憂鬱であるかにみえた。」という。

ブレア氏の有名な著作『戦略的指揮・管制:核の脅威を再定義する』は、ブルッキングズ研究所が外交政策に関して出版した書物の中でも、とりわけ重要なものである。潜在的に欠陥がある脆弱な電気システムが、より欠陥のあるオペレーターや組織と結びついたときに起きうる問題から演繹して、多くの人々が認識したり、信じたがるよりもはるかに大きな偶発的核戦争の危険があることを、ブレア氏は説得力をもって説明した。

オハンロン氏はまた、「ブレア氏は後年、核軍縮運動『グローバルゼロ』に大きく貢献した。なぜなら、マーチン・ルーサー・キング牧師がいうところの『今の緊急事態(the fierce urgency of now)』を痛感していたからだ。彼は、もし自分の世代が核兵器の危険を低減するための行動をとらなければ、後の世代が、生き残って同じような行動をとれないかもしれないと考えていた。ブレア氏は、長年ワシントンDCの住人でありながら、途方もない難題に直面して漸進的な対応で満足するような政界の習性には染まらなかった。ブレア氏の発想は大きく、問題を解決しようとしていた。彼は少なくとも、核攻撃による大災害で人類が自らを破壊してしまう可能性こそが、最大の問題であると考えていた。」(原文へ) 

INPS Japan

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共通の未来のためにヒロシマの被爆体験を記憶する

【東京IDN=モンズルル・ハク】

人間の「記憶」というものは、とりわけ戦争と破壊を記録するという点においては長続きしないようだ。人間の苦悩や窮状を描いた様々な時代の詳細な記録が無数に残されているが、人類は恐らくそうしたものを、何か曖昧で抽象的なこと、或いは、日常の現実とは全く関係ない、何か遠いかけ離れた出来事であるかのように捉えるのだろう。漠然と認識されたものは確かな証拠とはなり得ず、かけ離れた出来事が、良心を激しく揺さぶることもないことから、私たちは、打ち続いた悲劇的な現実が落ち着きを見せ、たとえ短期間でも比較的平穏な状況への道筋が見出されれば、瞬く間に、戦争や破壊が人類にもたらしたものを忘却の彼方に葬り去ってしまう傾向にある。

人類の「記憶」が持つこうした脆弱な特性は、いわゆる「より大きな集団の利益」のためという大義名分のもとに記憶を消し去ろうとする人々に常に利用され、進歩の歩みを逆行させてしまうのである。こういう訳で、戦争とそれに続く自滅行為が、平和で平穏な生活を求めているはずの人類の永遠の旅の一部となってきたのである。

こうした過ちの大部分について、真の原因は、人類が、戦争が常にもたらす人間の苦しみの深淵を理解する能力に欠けているというところにあるのかもしれない。私たちがその深淵のほどを無視し続けるかぎり、剣を鋤に打ち直す(=戦いをやめて平和な暮らしをする)のは、今後もはかない夢であり続けるだろう。さてここで、「記憶」が今一度、非常に重要な役割を果たしうるのである。つまりそれは、人類が持つ破壊能力が想像の領域を遥かに超える今日のような時代に、戦争がもたらしうる悲劇の深淵を、少なくとも現実的に捉えることを可能にする役割である。1945年8月6日の広島の原爆を生き延びた14人の被爆者は、まさにこうした理解から、その朝原爆によって引き裂かれた無垢な青年時代の記憶を回想し語ることで、私たちの良心に訴えかけているのである。

沈黙は破られた

『男たちの広島―ついに沈黙は破られた』は、(来年8月6日の)広島長崎の被爆70周年を前にして今年4月に出版された時宜を得た書物である。この本のジャンルは、1927年から39年までに生まれた広島原爆の被爆者14人の体験談を収録したオーラル・ヒストリー(口述歴史)である。彼らはいずれも原爆投下直後の惨状を生き延び、心と身体に深い傷を負いながら、長い人生を歩んできた方々である。彼らの歩んだ道は、被爆の後遺症に苦しみ生涯に亘って通院を余儀なくされるなど、決して平坦なものではなかった。身体に負った傷については、多くの場合、長年の治療を通じて癒すことができたものの、彼らの多くが直面した、社会から暗黙の内に向けられた差別的な態度は、恐らく彼らにとって身体の傷以上に痛みを伴うものであり、長きにわたって心の奥深い部分に傷を残しただろう。

Soka Gakkai Hiroshima Peace Committee

原爆投下直後の時期は、日本が(敗戦間近の)混乱に陥った時期であった。さらに混沌とした戦後期の日本は米国の占領下にあり、戦勝者(=連合国最高司令部:GHQ)は自らが行った邪悪な行為が露見することに当然ながら反対だったことから、当時は被爆者の悪夢のような記憶を語ることはタブーとされた。さらに被爆者は、被爆時の負った惨たらしい傷や変形した身体で生きていかなければならない現実に複雑な心境を抱えており、徐々にこの悪夢の記憶を心の奥底に封印していった。爆心地近くにいたことで余儀なくされた経験について、多くの人が沈黙を保った。しかし、世界にとって幸運なことに、かなりの数の被爆者がのちに沈黙を破り、それぞれの体験を語り始めたのである。『男たちの広島―ついに沈黙は破られた』に収録された14篇の証言は、それぞれがユニークなものである。被爆者が経験してきた苦しみの深さは、ひとつとして同じものがないからだ。

焼け爛れた女性、息絶えた乳児、孤児

木原正さんは、原爆投下直後に遭遇したある悲劇的な光景が脳裏からずっと離れないでいる。木原さんは被爆時に自身も負傷していたが、仲間とともに広島市内各地で路地や崩れた建物の陰に怪我人がいないか捜索・支援活動を続けていた。そんなある夜のこと、見回りをしていると、水を懇願する声が聞こえた。その声はか細く、必死に訴えていたという。木原さんが近づいてみると、それは、乳児を抱いたひどい火傷を負った女性だった。彼女の体は全身が焼けただれており、乳児は母親の乳房を口に含んでいた。しかしよく見てみると、乳児はすでに死んでいることが分かった。木原さんは、その女性が既に息絶えた我が子になお授乳しているかのように抱き続けていたのは、恐らく現実を受け入れられなかったのだろうと思った。木原さんはその時の心情を、「私には何もしてやれませんでした。私は手を合わせて詫び、その場を去りましたが、いまも心が痛みます。」と証言している。

木原さんは若いころ、被爆者であることを隠していた。しかし、65歳になって考えを変え、若い世代に自分の経験を語る決心をした。木原さんは今、息絶えたわが子を焼け爛れた体に抱き水を懇願したあの母親のような恐ろしい経験について、若い世代の人たちには忘れてほしくないと強く思っている。木原さんは、長年に亘って心を痛めてきたあの無惨な光景について、世界のどんな母親にも同じような経験をしてほしくないという望みを抱きながら、他の人びとに証言することができたことで、安堵の気持ちを持っているに違いない。

この最新の証言集にそれぞれの体験を語っている14人の被爆者はいずれも、被爆当時は元気旺盛な少年期の子どもだった。原爆は彼らの明るい将来の夢を奪っただけではなく、悪夢の中でさえ誰も想像できないような形で、彼らの人生を変えてしまったのである。

Hiroshima aftermath/ Public Domain

中でも私の心に迫ってきたのは川本省三さんの体験談だ。川本さんは、原爆投下から3日後に両親を探し求めて疎開先から広島市内に戻った時、自身が「原爆孤児」になってしまったことを知った。疎開先の寺では僅かな食事が提供されていたが当時11歳で育ちざかりの川本さんにとって、空腹を満たすには十分でなかった。市内に戻ったものの孤児となり引き取り先がなかった川本さんは、やがて浮浪児となり、ただただ生きていくために、時には露天商から餅を盗み、時には(寝場所と食料を提供する見返りに)浮浪児を組織的に搾取していた暴力団の下で働かざるを得なかった。川本さんは、こうした広島原爆がもたらした2重苦(孤児になったのちに、施設に入れず浮浪児として町中に放置され究極の困難)を強いられた子どもたちについて、これまで多くが語られていないことを残念に思っている。川本さんの証言によると、原爆投下前に疎開した広島の小学生は約8600人。そのうち2700人が孤児となったが、幸運にも孤児院に収容されたのは僅か700人で、残りの約2000人は町に放置され浮浪児となったという。

新たな恐怖

14人の被爆者全員を結びつけるものは、共通の苦しみだけではない。自らが体験してきた恐怖を他人に語らずに長い間沈黙を保つという、自らに孤立を課していた点でも共通している。そのような彼らが、沈黙を破り自らの経験を語っていこうと決心した背景には、2011年3月の福島第一原発事故以後に噴出した新たな恐怖に対する危機感がある。それ以降、彼らは、放射性降下物が引き起こす被害について自らの経験を語り伝えていくことを厳粛な責任だと考えているのである。

fact-finding team from the International Atomic Energy Agency visits Fukushima Dai-ichi nuclear power plant in May 2011. Credit: IAEA Imagebank/ CC by 2.0

下井勝幸さんは、テレビ番組で福島第一原子力発電所の建屋で働く作業員の姿を見たのを契機に、原爆投下後数日の間に彼の弟の身に起こったことを思い出し、「放射線被爆後に目撃した生と死のストーリーを語らねばならないと思い立った。」と述べている。弟の明夫さんは当時まだ13歳で、原爆投下時には同級生の中村君と路面電車に乗っていた。下井さんは、次に起こったことをこう証言している。「20日ほどたったころでしょうか。弟は髪の毛が抜け、全身に赤い斑点が出はじめました。……弟の肩や腕は、割り箸のように細くなっていきました。……弟はまだ13歳なのに老人のような顔になって死にました。あのとき一緒にいた同級生の中村君も、同じ日に死んだと後から聞きました。」

それから65年以上が経ち、テレビのニュースで福島第一原子力発電所の建屋で作業している人の姿を見て、その作業員の腕にかつて弟を苦痛に満ちた死へと追いやったのと同じ赤い湿疹が出ているように思えた。下井さんはこのことに戦慄を覚え、今こそ沈黙を破って声をあげていかないといけない、と思ったという。

被爆者の証言を記録することは、創価学会広島平和委員会が実施した時宜を得たイニシアチブである。同委員会は、核時代に終止符を打つには、さらに大きく核廃絶を支持する国際世論を高めなくてはならないと考えた。『男たちのヒロシマ―ついに沈黙は破られた』は、長年にわたって記録されてきた広島発の被爆証言集の9冊目であり、「2011・3・11福島原発事故」以降、初めての被爆証言集である。

創価学会広島平和委員会は、被爆者の声を日本国内のみならず世界各国の人々にも広く伝えていくために、最新刊には証言の英訳も付けて発行することを決めた。世界があの最悪の人災からあと1年で70周年を迎えようとする中、この証言集の発行は、単に過去の恐怖を思い起こさせるだけではなく、人類共通の破壊につながるような死の競争を永遠に止めさせるために私たちがとるべき道筋をも示してくれている。(原文へ

※モンズルル・ハクは、バングラデシュのジャーナリストで、日本などのテーマに関するベンガル語の著作が3冊ある。ダッカの国連広報センターとロンドンのBBCワールドサービスで勤務したのち、1994年に日本に移住。バングラデシュの主要全国紙2紙(『プロトム・アロ』と『デイリー・スター』)の東京支局長で、バングラデシュのその他の重要発行物に定期的に寄稿している。日本や東アジアの問題について英語およびベンガル語で手広く執筆。東京外大、横浜国立大学、恵泉女学園大学で客員教授を務め、日本政治、日本のメディア、途上国、国際問題などを教える。NHKラジオにも勤務。2000年より外国人特派員協会のメンバーで、理事を2期務めたのち、同協会会長も歴任した。

翻訳=INPS Japan浅霧勝浩

This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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「世界と議会」2020年春夏号(第585号)

特集:議会政治の父・尾崎行雄生65年の集い

◇記念講演「議会政治の未来」/大島理森
◇記念スピーチ「咢堂精神の普及活動、25年を振り返って」/土井孝子

■特別寄稿「考憲」のススメ/中村一夫

■歴史資料から見た尾崎行雄
 第3回「尾崎行雄と武藤山治-尾崎行雄宛武藤山治書簡」/高島笙

■INPS JAPAN
 国連事務総長、誤った議論や嘘を正すべきと熱心に訴える

■連載『尾崎行雄伝』
 第十五章 桂と西園寺

「咢堂ブックオブザイヤー2019」選考結果

1961年創刊の「世界と議会では、国の内外を問わず、政治、経済、社会、教育などの問題を取り上げ、特に議会政治の在り方や、
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|カメルーン|中央アフリカで最後の手つかずの熱帯雨林の保護を決める

【ニューヨークIDN=リサ・ヴィヴェス】

環境保護に取り組む人々にとって、明るい知らせは決して多くない。だが今回、環境活動家や先住民コミュニティー、研究者らは、粘り強い働きかけの末に勝ち取った成果をようやく共有することができた。

カメルーン政府は8月14日、同国南西部のエボ森林約17万エーカーに及ぶ伐採計画を中止すると発表した。エボ森林は、道具を使うことで知られるナイジェリア・カメルーン・チンパンジーやニシゴリラ、巨大ガエルをはじめ、数百種に及ぶ希少な動植物が生息する生物多様性の宝庫である。

今回の決定は、先住民コミュニティー、自然保護団体、科学者らによる組織的な反対運動を受けたものである。

エボ森林は生態学的価値だけでなく、バネン先住民にとって文化的・社会的にも極めて重要な意味を持つ。彼らはこの森を、神聖な祖先伝来の土地とみなしている。

バネンの人々は1960年代に森林から立ち退きを余儀なくされたが、その後も境界近くに暮らし、食料や薬草など生活資源の多くを森に依存してきた。コミュニティーは数十年にわたり、故郷の村々への帰還を求めて闘ってきた。

バネンの伝統的指導者の一人であるビクター・イエティナ氏は英紙『ガーディアン』に対し、「私たちは昔からこの森と、その豊かな多様性と調和して生きてきた。しかし人々は、ただ利益を得ようとしているだけだ」と語った。さらに、「私たちの歴史の大部分はいまも森の中に残っている。60年たった今でも、先祖が育てたカカオ農園を見つけることができる。埋葬された人々もそこに眠っている」と述べた。

エボ森林をめぐる危機が表面化したのは7月である。ジョゼフ・ディオン・ングテ首相が、森林の半分を「森林管理単位」に指定する政令に署名し、政府が伐採権を売却できる道を開いたためだ。

しかしニュースサイト「Afrik21」によると、ングテ首相は8月11日、ポール・ビヤ大統領の指示によりこの政令を撤回し、伐採計画を停止した。さらにビヤ大統領は、追加で約16万エーカーを再区分し、さらなる伐採の可能性を広げかねなかった措置についても延期を命じた。

エボ森林の大型類人猿保護に取り組んできたサンディエゴ動物園グローバル中部アフリカ・プログラム責任者のベサン・モーガン氏は声明で、「このかけがえのない森林の差し迫った破壊を食い止めるためのカメルーン政府の介入を、強く歓迎する」と述べた。

そのうえでモーガン氏は、「国際社会がこの機会を捉え、カメルーン政府と協力しながら、困難な状況に置かれた地域社会との共生のもとで長期的な保全を実現する模範例として、エボ森林を位置づけていくことを期待している」と強調した。(原文へ

INPS Japan

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|創立100周年|カズインフォルムは歴史の証人

【ヌルスルタンKAZINFORM=ラメシュ・ジャウラ】

中央アジア最大の国際通信社でインデプスニュースのパートナーメディアである「カズインフォルムが8月13日に創立100周年を迎え、カザフスタン政府をはじめ、ロシアのタス通信、中国の新華社通信、日本の共同通信、イタリアのアンサ通信等、世界各国の提携メディアからメッセージが寄せられた。カズインフォルムが掲載した当通信社編集長ラメシュ・ジャウラからのメッセージの日本語翻訳版を配信します。

「国際通信社カズインフォルムのご友人・パートナーの皆様!(新型コロナウィルス感染拡大の影響で)オンライン形式のご挨拶となりましたが、皆さんとカズインフォルムの創立100周年を共に祝えることを大変嬉しく思っています。貴通信社にとりまして、次の100年も一層実りあるものとなりますよう心よりお祈り申し上げます。」

「100年という月日は、人の一生としても、また組織の活動の歴史としても実に長い時間軸です。カズインフォルムは、本拠地があるカザフスタン同様、第一次世界大戦後に顕在化してきた歴史の生き証人であり続けてきました。カザフスタンは1920年にソビエト連邦の構成下で自治共和国となり、16年後の1936年に正式にソ連構成国カザフ・ソビエト社会主義共和国に昇格しました。」

「第二次世界大戦後の1949年には、カザフスタン東部のセミパラチンスク核実験場でソ連による初の核実験が行われました。1961年にはカザフスタン南部のバイコヌール宇宙基地からソ連発の有人宇宙船が打ち上げられました。そして1991年8月には、ヌルスルタン・ナザルバエフ初代大統領が大胆かつ歴史的な行動を起こし、セミパラチンスク核実験場の閉鎖を命じる大統領令に署名しました。以来、カザフスタンとカズインフォルムは、「核兵器を含む大量破壊兵器なき世界」の構築に向けて貢献するなど、世界平和と安全保障を推進するリーダーであり続けています。こうしたカザフスタンの貢献については、当通信社が近年カザフスタンでの取材を重ねる中で確信するに至りました。私はこうしたカザフスタン訪問の中で、アスカール・ウマロフ理事長をはじめカズインフォルムのご同僚の方々とお会いする機会がありました。」

「今日、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大や核軍拡競争の再燃が、世界平和と人間の安全保障にとって脅威となっています。私たちメディア関係者は、距離の制約を克服しながら信頼できる情報提供に努め、20世紀の世界が大きな犠牲を払った壊滅的な状況の再来を防ぐために、あらゆる努力を傾倒していかなくてはなりません。」(原文へ)(カザフ語版

INPS Japan

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核兵器廃絶展を通じて絆を深める日本とカザフスタン

カザフスタンが非核世界推進の立役者を表彰

国連ハイレベル会合、CTBT早期発効を訴え

|視点|トランプ大統領とコットン上院議員は核実験に踏み出せば想定外の難題に直面するだろう(ロバート・ケリー元ロスアラモス国立研究所核兵器アナリスト・IAEA査察官)

米国が近い将来の核実験の実施を検討していると囁かれている。米上院に提出された法案を見れば、それが単なる口先だけの脅しでないことが見て取れる。最近の修正案の文言には「必要ならば核実験の実施に要する時間を短縮することに関連した事業を行う」となっている。こうした脅しは、この種の動きが政治的、技術的に引き起こす困難について、まったく理解を欠いているとしか言いようがない。

核実験が必要と見なされる可能性があるとすれば、備蓄核兵器に解決すべき問題があるか、新システムの開発を迫られている場合だろう。そうでなければ、敵を脅し、核拡散を勧奨し、軍備競争を再び煽る政治的な威嚇になってしまう。

包括的核実験禁止条約(CTBT)は未だに発効していない。米国は署名したが未批准のままだ。他にも批准を済ませていない国々があり、CTBTは長らく無視された状態にある。しかし、1990年代中盤以来、核兵器5大国は自発的に核実験停止を続けている。CTBTを実際に発効させるよりは、この状況を無期限に続けることが望ましいと考えているかのようだ。

他の4核保有国(英国・フランス・ロシア・中国)は、緩い意味で非公式の核実験停止を守っている。ただ、世界で唯一、北朝鮮だけは21世紀に入ってから6回の核実験を行っている。

実際の核実験は、単なる「テスト」ではない。それは、極めて複雑な核の実験なのだ。単に大爆発を起こして優越性を主張するための政治的なショーでないのであれば、準備に数年の期間と数百万ドルの費用がかかる。核実験とは、科学の名においてなされるものだ。

科学的実験を嫌悪しているトランプ政権の姿勢を考慮すると、同政権が核実験に関心を示していることは皮肉と言えよう。核実験を実施すればするほど問題が起きることは歴史が証明している。複雑な核実験を行うには、数百人の熟練労働者と技術者、それに、安全保障や広報いった部門からの支援が必要だ。

もし米国がそうした措置を取ることを決めるならば、まずは、何の実験をするかを決めなくてはならない。米国には、2つの優秀な核兵器研究所がある。それぞれが、米国の核備蓄の半分ずつを担当しており、実験をするとすれば、いずれかの研究所にある「永続的貯蔵弾頭」から核爆発装置を造ることになるだろう。

備蓄核兵器に何か問題があるとは報告されていない。だとすれば、核実験の再開は、2つの研究所と米政府との間で競合する利害関心の問題を解決し、理由をこじつけるものとなるだろう。米エネルギー省が、実験の遂行も含め備蓄核兵器の維持に完全な責任を負っている事実は、見過ごされやすい。

ICAN
ICAN

国防総省は軍務遂行のために核兵器の管理責任を負っているに過ぎない。2つの省庁と米議会は、実験をするとすればそれは何の実験なのかを明確にする必要が出てくる。エネルギー省ではなく国防総省に1000万ドルの予算を追加するという上院の動きは、この基本的な組織構造に関する無知をさらけだしている。

永続的貯蔵弾頭の大半の爆発力は150キロトンを超える。これは新たな問題を引き起こす。米国は、地下核実験における最大核出力を150キロトンに制限する地下核実験制限条約(TTBT)を締結しているからだ。

米国の備蓄核兵器の大多数は、もし100%の爆発力で実験しようとするならば、150キロトンを超えてしまう。非公式の合意から離脱するのとは異なり、これは批准した条約に実際に違反してしまうことを意味する。

核実験の再開に備えることが、すでに米国の優先事項になっている。エネルギー省は、1993年の大統領決定指令(PPD)15号によって核実験を実施する能力を維持することが義務づけられている。毎年数千万ドルが、かつてネバダ核実験場と呼ばれた「ネバダ国家安全保障施設」を運用する業者に支払われている。

私は1990年代末、この核実験場を運営する管理チームの一員であり、24~36ヶ月以内に核実験を行う能力を維持することが任務であった。例えば、物理的な準備として、砂漠における実験用坑道の設置、核装置を地下で接続する機器とケーブルの設置、国立研究所が核装置を設置し爆発させるのを支援するための考えうる限りあらゆる作業が挙げられる。

Nevada Test Site, Area 6. Control Point./ Public Domain

当時最も重大なステップの1つは、厳密に封印された実験用坑道深くに核装置を据えることで、放射能漏れを防ぐようにすることであった。この点に関する技術については相当の経験があるにもかかわらず、国立研究所は放射能漏れゼロの達成に常に成功してきたわけではない。この問題点は、冷戦期の思考であれば、必要なコストとして容認されただろうが、2020年代には認められないであろう。

1970年の地下核実験「ベインベリー」は実験用坑道を吹き飛ばし、放射性物質を含んだ大量の塵を噴出させた。ネバダ核実験場から発生したこの放射能雲は、共和党の地盤である東方の地域に流れていった。風下に住む有権者らが、1960年代や1970年代と同じように、2020年代においても放射性降下物を引き受けるモルモットの地位に甘んじるだろうか。

トランプ政権は、数億ドル規模の巨大プロジェクトを決まった予算とスケジュールの範囲に収めることができないという、米エネルギー省のこれまでの経歴を考慮に入れていない。

核実験を行う日が発表されたその日から、遅延とコスト増は始まる。もしエネルギー省が期限を守ろうとして手順を飛ばすなら、大惨事が起きかねない。でなければ、新政権が2024年に誕生するまでに実験が再開されることはありそうもない。

1997年当時、経験豊かな科学者・技術者・地質学者のチームをもってしても、24~36ヶ月の準備期間で核実験を実施することは楽観的過ぎると感じていた。ましてや当時と異なり、21世紀の今なら核実験に対する市民(とりわけ、核実験が1963年に地下に移行する以前にネバダ実験場で行われた地上実験で多くの犠牲者を出したユタ州の「風下住民」達)から起こるであろう抗議も考慮に入れなければならない。

ネバダ実験場の入口には隔離された2つの留置所がある。反核実験デモを防ぐ目的で1990年代に設置されたものだ。21世紀の今、これらの施設は大幅に拡張し、警備員も増やす必要があるだろう。

実験は多国間協力も促進しうる。米国は、英国がオーストラリアの核実験場を失ってから、同国のための実験も行ってきた。フランスとの緊密な協力もある。イスラエルの科学者に、同国の装置を実験させるか、あるいは米国の実験への参加を認める可能性もあるが、これは今日の米国の外交政策とも整合している。

思慮を欠いたトランプ政権には別の方策もある。同政権は1963年の部分的核実験禁止条約に意図的に違反するかもしれない。同条約は、大気圏内・宇宙空間及び水中における核爆発を禁じている。

地下核実験制限条約やCTBTの非公式な遵守に違反することを厭わない米政権にとって、大気圏内核実験を行うという選択も些細な無分別に過ぎない。もし核実験を実施する目的が純粋に政治的なものならば、カメラの前で分かりやすく爆発を起こして見せることはプラスになるだろう。飛行機から核爆弾を投下するか、太平洋の真ん中でミサイル実験か爆発実験を行えば、非常に目立つ。環境への被害は機密扱いされるだろうが、こうした核実験は世界のマスコミに取り上げられるだろう。

実験がどのような形で行われたとしても、それは他国に攻撃力を印象付けて威嚇するように仕組まれた政治的な発言に他ならない。もし実験内容が、本当の意味で、兵器が抱える深刻な問題を検証したり新兵器を開発したりするためのものならば、政治家らは、科学者らが既に知っていることを知らなくてはならない。

Radioactive materials were accidentally released from the 1970 Baneberry shot in Area 8./ Public Domain

実験と試験は時として、予期した結果を生まない場合がある。仮に実際の核実験を手掛けたことがないアマチュアによる実験をオブザーバーに観察させて、何も起こらなかったらどうなるか。あるいは、爆発力が予想を超えたために、隣接する州やより広範な地域に放射性降下物が拡散する事態になったらどのような反応が起こるか想像してほしい。

トランプ大統領には他にも決まりの悪い難題が待ち受けている。核実験を実施すると大統領が発表した途端に、実際にそれを実行するまでには数年かかることに気づくことになるのだ。しかもこの決定は同時に、ロシアや中国に対しても、同じように核実験を行う自由を与えることになる。民主主義や環境という制約に縛られない両国の場合、科学者に対して予定を繰り上げて実験を行うよう要求できるだろう。プーチン大統領や習国家主席がこうした核実験競争でトランプ大統領を打ち負かす事態を想像してほしい。

トランプ政権は、その任期を通じて、軍備管理協定を積極的に破棄してきた。中距離核戦力(INF)全廃条約新戦略兵器削減条約(新START)、領空開放(オープンスカイ)条約からの脱退には一つの共通点がある。短期的には、見た目に何の変化もないということだ。査察や委員会の会合、協力的なやり取りの終了が、戦争のリスクの拡大と予算の縮小とあいまっても、一般市民の目には見えない。市民が気づくような形で近い将来に何かが変わるということはない。

しかし、自発的な核実験停止から離脱するとなると、そうはいかない。事態は大きく展開することになるだろう。実際に核実験を行うには、数億ドルの予算を確保し、支出しなくてはならない。また、多くの科学者や技術者を新たに雇い、28年間も実行されてこなかった複雑な実験を行うことになる。

一方、政治的な効果を持たせるには、実験について広く宣伝がなされねばならない。そうでなければ意味がない。しかし核実験を強行すれば、大規模な抗議活動やデモ、活動家による核実験場への侵入、逮捕を誘発する反対運動が目に見えて高まるだろう。この場合、市民の目から遠く離れたところで、旧来の義務からそっと離脱するのとはわけが違う。核実験の実施は、極めて高くつき、大きな注目を浴びる一方で世論の分断を招くこととなる。

核実験の実行は極めて複雑なプロセスであり、実行までには紆余曲折がある。この力技を唱える政治家らは、自分たちがどんな世界に足を踏み込もうとしているのかを理解していない。外交の世界と包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)準備委員会では、核実験に反対する議論が多く起こされることになるだろう。

ICAN
ICAN

レーガン政権とブッシュ政権が英知と抑制を見せて以来、世界をより安全にしてきた軍備管理協定を毀損するという点から、核実験には反対論が噴出することだろう。トランプ政権は、科学的な利点が実質ゼロであるにも関わらず、はっきりと目に見える失敗の可能性が表面下に潜んでいるような下り坂を滑り落ちようとしている。

もちろん、核実験の再開は、とりわけ5つの核兵器国の思慮深く経験豊富な外交官たちが30年近くにわたって瓶の中に封じ込めてきた「魔神」を解き放つことになる。核実験の再開は、非常に高くつく行為であり、「核の平和」を維持する観点からは不毛な試みであり、使用可能な核兵器が戦場に戻ってきたことを明確に示すものとなる。軍備管理にとっての悲しい日がまたやってくることになる。(原文へ) 

※著者のロバート・ケリーは、米エネルギー省勤務時代、国際原子力機関(IAEA)に派遣され、1992年と2001年の2度にわたってイラクの核査察を陣頭指揮した。現在はウィーン在住。20カ国以上で任務を果たしてきた。

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This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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国連事務総長、誤った議論や嘘を正すべきと熱心に訴える

【ニューヨークIDN=ジャヤ・ラマチャンドラン】

国連のアントニオ・グテーレス事務総長が、とりわけ世界の貧しい人々に対して投げかけられている「誤った議論や嘘」を厳しく批判する異例の行動に出た。新型コロナウィルス感染症の拡大は、あらゆる嘘を白日の下に晒している。例えば、自由市場が全ての人に医療を提供できるという嘘、 無給の介護はうまくいかないという虚構、私たちは人種差別が解消された後の世界に住んでいるという妄想、だれもが同じ船に乗っているという神話である。

グテーレス事務総長は、これらの誤った神話を明らかにして、「私たちは同じ海の上を漂流していますが、明らかに、高性能ヨットに乗っている人もいれば、浮遊する残骸にしがみついている人もいます。」と語った。

From Wash D.C. Longworth building October 4, 1994. Mandela’s first trip to the United States./ By © copyright John Mathew Smith 2001, CC BY-SA 2.0

この激しい発言は、新型コロナ感染症の拡大により初めてオンラインで開催された「2020年ネルソン・マンデラ年次レクチャー」においてなされた。このイベントは、アフリカの象徴であり、南アフリカで史上初の民主的選挙で大統領となったネルソン・マンデラ氏の誕生記念日に「ネルソン・マンデラ財団」が毎年開いているレクチャー・シリーズで、著名人を招いて主要な国際問題を討議することで、対話を促進することを目指している。

グテーレス事務総長は、「パンデミックは、私たちが数十年間にわたって無視してきた世界的なリスク、すなわち不十分な医療制度、社会保障の格差、構造的な不平等、環境の劣化、気候危機を露呈しました。」と語った。なかでも最も犠牲になるのが、貧困層や高齢者、障害者、既存の疾患がある人々といった社会的弱者である。

グテーレス事務総長は、「不平等は多くの形をとります。」と指摘したうえで、「収入の格差はあまりにも大きい。世界のお金持ち26人が世界の人口の半分と同じぐらいの富を持っています。一方で、人生で得ることができるチャンスも、性別、家族や民族の出自、人種、障害の有無などによって決まってしまう。」と語った。

だれもがこうしたことの影響を受けている。なぜなら、高レベルの格差は、「経済的不安定、汚職、金融危機、犯罪の増加、貧弱な心身の健康」と結びついているからだ。

Caricature of Cecil John Rhodes, after he announced plans for a telegraph line and railroad from Cape Town to Cairo./ public Domain

グテーレス事務総長は、次に植民地主義に言及して、「今日の反人種主義運動は、不平等の源泉である植民地主義に向けられています。グローバルノース、とりわけ私の出身地である欧州大陸は、暴力と威圧によって何世紀にもわたってグローバル・サウスの多くに植民地支配を押し付けました。」「植民地主義は、大西洋奴隷貿易や南アフリカのアパルトヘイト政権という害悪を含め、国内外に大きな格差を生み出しました。私たちはこれを、経済的・社会的不正、ヘイトクライムや外国人嫌悪の増加、制度化された人種差別と白人覇権の持続の中に見出せます。」と語った。

また、人種差別と植民地主義の遺産について、「ジョージ・フロイド氏の殺害を受けて米国から世界に広がった反人種差別運動は、人々が肌の色にもとづいて犯罪者扱いされるという格差と差別、および人々の基本的人権を否定する構造的な人種主義や制度的不正義にうんざりしているというもう一つの現れです。」と指摘した。

また、「アフリカは二重の犠牲になってきた。」と強調し、その理由として、「第一に、植民地主義的プロジェクトの標的となった。そして第二に、アフリカ諸国は第二次世界大戦後、つまりほとんどのアフリカ諸国が独立を勝ち取る前に設立された国際機関で過小評価されてきた。」と語った。

さらに、グローバル・ガバナンスにおける格差について、「70年以上前にトップに君臨してきた国々は、国際機関の力関係を変えるために必要な改革を検討することを拒否してきました。国連安全保障理事会ブレトンウッズ体制の理事会の構成と議決権はその典型です。不平等はトップにおいて、すなわち国際機関において始まっています。不平等にとりくむことは国際機関を改革することから始めなければなりません。」と語った。

UN Secretariat Building/ Katsuhiro Asagiri
UN Secretariat Building/ Katsuhiro Asagiri

また、不平等のもう一つの大きな源泉である家父長制について、「私たちは、男性支配文化をともなう男性支配世界に生きています。いたるところで、女性は単に女性であるという理由で男性よりも困窮した状況にあります。不平等と差別が常態化しているのです。女性に対する暴力は、女性殺し(フェミサイド)を含めて、エピデミックの段階にあります。」と語った。

「誇りあるフェミニスト」を自称するグテーレス事務総長は、自身はジェンダー平等の実現にコミットしており、「国連の幹部レベルでは既にジェンダー平等を実現しました。」と語った。また、南アフリカ・ラグビーチームのキャプテンであるシヤ・コリシ氏を、女性・女児に対する暴力との闘いに男性を巻き込むためのキャンペーン「スポットライト・イニシアチブ」の大使として任命したことを発表した。

「男性が牛耳るテクノロジー業界は世界の専門知識と展望の半分を見逃しているだけではありません。性差と人種差別をさらに定着させる可能性のあるアルゴリズムを使用しています。」

グテーレス事務総長は、格差との闘いの最前線にいる人々を称賛し、気候変動を予防する行動だけではなく「気候正義」が必要だと呼びかけた。政治指導者らに対しては目標を高く掲げること、経済界に対しては視野を広く持つこと、そして一般の人々に対しては意見を表明することを求め、「それが、私たちがとるべきより望ましい道筋だ。」と語った。

また、社会の中で、若者が尊厳をもって生き、女性が男性と同じ展望と機会を持ち、病人や社会的弱者が守られるような「新しい社会契約」を提唱するとともに、人類の未来を開き平等をもたらす二大要因として、教育とデジタル技術の必要性を訴えた。

グテーレス事務総長は、こうしたことを背景に、国際レベルで権力や富、機会がもっと広範かつ公正に共有されるようにするための「新しい世界的取り決め(グローバル・ディール)」を呼びかけた。そして、「グローバル・ガバナンスの新しいモデルは、国際機関における完全かつ包摂的、平等な参加を基礎としなくてはならない。」と指摘したうえで、「グローバルな意思決定において途上国の声がより強力なものにならなくてはならない。」と高らかに呼びかけた。

次に現代の不平等の問題に目を転じて、「貿易の拡大や技術の進歩が『収入分配のこれまでにない変化』につながってきた。」と指摘し、「未熟練労働者がその犠牲になっており、新技術や自動化、生産のオフショア化、労働組合の劣化といった『攻撃』に晒されています。」と警告した。

グテーレス事務総長はさらに、「一方で、税制上の特権や税金逃れ、脱税の広まりに加え、法人税率の引き下げで、不平等を是正するうえで重要な役割を担える社会保障や教育、医療予算が減っている。」と指摘したうえで、「一部の国々は、富裕層や広い人脈を持つ人々が租税制度から利益を得られるようにしているが、だれもが公平に負担すべきです。各国政府は、社会的規範と法の支配を弱める汚職の『悪循環』に対処し、気候危機に対応すべく、税の支払い負担を労働者からCO2へと移さねばなりません。」と語った。(原文へ

UN Photo
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森林破壊と闘うギアナとトーゴの先住民コミュニティー

【ポート・オブ・スペインIDN=P.I.ゴメス】

南米ギニアで先住民女性グループが幅広い役割を果たしている熱帯雨林管理・再生プロジェクトについて紹介したパトリック・I・ゴメス アフリカ、カリブ、太平洋諸国機構(OACPS:旧名称ACP)前事務局長によるコラム。ゴメス氏はIDNが先般報じた西アフリカのトーゴで開始される農村地域で女性グループに所得機会を提供する森林再生プロジェクト(創価学会とITTO共同プロジェクト)にも注目し、SDGsを推進する観点から情報交換や交流など南南協力の可能性についても言及している。(原文へ

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国連開発計画、新型コロナウィルス感染症の影響から最貧層を保護するため臨時ベーシック・インカム(最低所得保障)の導入を訴える

【ニューヨークIDN=キャロライン・ムワング】

国連開発計画(UNDP)は7月23日に発表した報告書のなかで、世界の最貧層を対象に臨時ベーシック・インカムを直ちに導入すれば、約30億人が自宅に留まれようになり、現状の新型コロナウィルス感染症(COVID-19)患者の急増を抑えられる可能性があると訴えている。

報告者『臨時ベーシック・インカム:開発途上国の貧困・弱者層を守るために』は、1カ月当たり1990億ドルあれば、132の開発途上国で貧困ライン以下か、そのわずか上で生活する27億人に一時的にベーシック・インカムを保証できると試算している。

Temporary Basic Income, Protecting Poor and Vulnerable People in Developing Countries/ UNDP

その結論によると、新型コロナの新規感染者が1週間に150万人を超えるペースで増加する中で、この措置は実行可能であると同時に、緊急に必要とされている。とりわけ開発途上国では、労働者の10人に7人がインフォーマルセクターで生計を立てているため、自宅に留まっていては収入が得られない状態にある。

社会保険制度の対象とされていない夥しい数の人々の中には、インフォーマル労働者や低賃金所得者、女性と若者、難民や移住者、さらには障害者が多く含まれており、今回のコロナ危機で最も深刻な打撃を受けている。

UNDPはここ数か月の間に60カ国以上で、新型コロナによる社会経済的影響の評価を行ってきたが、その結果を見ても、社会保障の対象となっていない労働者が所得なしに家に留まれないことは明らかである。

臨時ベーシック・インカムを導入すれば、こうした人々に食料を買い、医療費や教育費を賄うための収入を提供できるだろう。しかもこれは財政的に可能な選択肢である。例えば、6か月間、臨時ベーシック・インカムを配布するのに必要となるのは、2020年中に予測される新型コロナ対策費の12%にあたり、これは、開発途上国が2020年に支払うことになっている対外債務の3分の1にすぎない。

アヒム・シュタイナーUNDP総裁は、「前例のない時代には、前例のない社会的・経済的措置が必要です。その一つの選択肢として浮上してきたのが、世界の最貧層を対象とする臨時ベーシック・インカムの導入です。ほんの数か月前には、不可能と見られていた措置かもしれません。」と語った。

Achim Steiner/ UNDP
Achim Steiner/ UNDP

シュタイナー総裁はさらに、「救済措置や復興計画の対象を大きな市場や企業のみに絞ることはできません。臨時ベーシック・インカムにより、政府はロックダウン(都市封鎖)下にある人々に命綱となる資金を提供し、資金を地域経済に還流させて中小企業の存続を支援するとともに、新型コロナの破壊的な蔓延のペースを落とせるかもしれません。」と語った。

しかし、臨時ベーシック・インカムは、今回のパンデミックがもたらした経済的苦境の特効薬的解決策にはならない。各国が導入できる措置としては、雇用を守ること、零細・中小企業への支援を拡大すること、デジタル・ソリューションを用いて社会的に排除された人々を特定し、手を差し伸べることが挙げられる。

今年の債務返済に充てられる予定だった資金の使途を変更し、臨時ベーシック・インカムに充てることも、各国が必要な資金を賄う方法の一つである。正式なデータによると、開発途上国と新興経済国は今年、債務返済に3.1兆ドルを費やすことになっている。

「国連事務総長の呼びかけに応じ、すべての開発途上国を対象に包括的な債務返済凍結を認めれば、各国はその分の資金を一時的に、新型コロナ危機の影響に対処する緊急措置に振り向けることができるだろう。」と報告書は指摘している。

SDGs Goal No. 1
SDGs Goal No.1

すでに、臨時ベーシック・インカムの導入に向けて舵を切った国もいくつかある。例えば、西アフリカのトーゴ政府は、インフォーマルセクターで働く女性をはじめとする人口の12%を越える人々を対象に、現金給付プログラムを通じ毎月1,950万ドルを超える資金援助を提供しています。

スペイン政府も最近になって、弱者層の家族85万世帯230万人の個人を対象に、月額2億5,000万ユーロの予算で、最低基準額まで所得補填を行うことを承認した。

新型コロナは既存の世界的、国内的不平等をさらに悪化させただけでなく、最弱者層に最も大きな影響を及ぼし新たな格差も作り出している。2020年には、最大でさらに1億人が極度の貧困に陥り、14億人の子どもが学校閉鎖の影響を受け、失業や生計手段の損失も記録的水準に上ると見られる中で、UNDPは全世界の人間開発が今年、その理念の導入以降初めて後退を強いられると予測している。(原文へ

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【ベルリンIDN=フランジスカ・コーン】

ドイツで法制化に向けた議論が進んでいる、人権・環境デューデリジェンス(組織が人権・環境及ぼすマイナスの影響を回避・緩和することを目的として、事前に認識・防止・対処するために取引先などを精査するプロセス)を巡る議論を分析した記事。今年欧州連合(EU)理事会議長国を務めるドイツ政府は、2020年政策目標のなかで、国内企業による自主対応が不十分だと判明した場合、国内法を制定し、EU全体の規制を推進する方針を打ち出しており、実現すれば今後欧州規模で、グローバルサプライチェーンにおける人権・環境侵害に一層厳しい目が注がれていくことになる。(原文へ

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