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EEPA(アフリカに関する欧州海外プログラム)アフリカの角地域状況報告(12月20日現在)

*エチオピア連邦政府軍による北部ティグレ州(同州政府を率いるティグレ人民解放戦線(TPLF)への軍事侵攻(11月5日)は、スーダンへの多数の難民流出(過去20年で最悪の1日当たり4000人規模の強制移動/UNHCR)やTPLFと対立関係にあるエリトリアの軍事介入を誘発しており、もはや内戦の域を超えて、「アフリカの角地域」全体に大きな影響を及ぼす国際紛争に発展しつつある。EEPA(事務局長:ミリアム・ヴァン・ライゼンINPS顧問)では、エチオピア連邦政府による厳しい情報封鎖下にある流動的な情勢の中で、国境を越えて逃れてきた難民や人道支援団体、外交筋、市民社会等から収集した最新状況報告(情勢を把握するための参考資料として、各種報道や発表と比較チェックすることを勧めている)を、11月9日以来随時IDNを通じて配信している

軍事状況

エチオピアと難民が多数流入しているスーダン間の緊張が高まっている。スーダン政府は急速支援部隊と装備をエチオピア国境地帯に派遣した。(エチオピア・エリトリア国境に近い)カッサラ州、ガダーレフ州のバニアメール族とアルハブ族が食料・資金支援を行う。現在、スーダンとエチオピア間の交渉は中断したままになっている。

Tigray Province and the map of Ethiopia/ Nationalnews.com

3人のエジプト政府関係者と欧州の外交官の証言によると、アラブ首長国連邦(UAE)がエリトリアのアッサブに保有する軍事基地からエチオピアのティグレ州に対してドローン攻撃を行ったという。ベリングキャット(ファクトチェックとオープンソースインテリジェンスを専門とする調査ジャーナリズムのウェブサイト)は、エリトリアのアッサブ基地に中国製のドローンが配備されていることを確認している。

報道によると、エジプトはトランプ政権の仲介で9月に国交樹立したUAEとイスラエル間の関係強化の動きを憂慮している。とりわけ両国がスエズ運河に代わるルートをイスラエルのハイファから建設するのではないかと危惧している。

報道によれば、エジプトはスーダンに対してティグレ州のTPLFを支援するよう働きかけている。エジプトは、同じくエチオピアの下流に位置する国として影響を受けるスーダンに対して、グランドルネッサンスダムを巡るエチオピアとの交渉で足並みを揃えられるよう関係強化を志向している。

報道によるとスーダン当局はアムハラ人特殊部隊と共にスーダン国境地帯で戦っていたアムハラ民兵の軍服を着たエリトリア兵を捕虜にした。

外交筋によると、「数千人規模の」エリトリア兵がティグレ州内で作戦に従事している。2人の外交官が、エリトリア兵がエチオピア北部国境の街ザランベッサラマバドメの3か所からエチオピアに侵入したと述べている。

Map of Eritorea

報道によると、ティグレ州の小さな街エドガ・ハムスでエリトリア兵による住民虐殺事件が起こった。犠牲となったのは聖職者と教会に避難していた女性達を含む約150人。マリエアム・デンゲラートと周辺の村々(マイメゲルタ、デンゲラート、ツァア、ハンゴダ)は、エリトリア軍の支配下にある。兵士達は家畜を殺害し、地元民らが餓死している。

ティグレ州の州都メケレの住民と情報集に当たっている2名の外交官によると、メケレ市内でエリトリア兵が確認されており、中にはエリトリア兵の制服を着ている者もいれば、エチオピア連邦軍の制服を着ている者いたが、「いずれもエリトリア語訛りでティグリニャ語を話していたほか、ライセンスプレートがないトラックを運転していた。」

エチオピア連邦政府軍がスール社(エチオピアの建設会社)を略奪し略奪品をアジスアベパに運んでいるとする複数の報告がなされている。

アディグラトでは、アディス薬品工場を略奪から守ろうとした助祭と15人の民間人がエリトリア軍の兵士とエチオピア連邦政府軍の兵士に殺害された。

国際的な動き

コリー・ブッカー上院議員(ニュージャージー州/民主党)とトッド・ヤング上院議員(インディアナ州/共和党)は、共同声明を発表しその中で、「アビー・アハメド首相は軍事作戦は完了したと主張しているが、エチオピア紛争は未だに終結からは程遠い状態にある。我々は、ティグレ州内のエリトリア難民(難民キャンプ4か所に約96,000人が暮らしていた)がエリトリア軍によって殺害、拉致、強制送還されているという報告や、より安全な地域に逃れようとする人々が足止めされているとする痛ましい報告に、深く憂慮している。」と述べた。両上院議員はまた、「紛争の国際化は米国の利益を脅かすもの」と指摘したうえで、エチオピアに対して公約を順守するよう求めた。」

米国家安全保障会議のキャメロン・ハドソン元アフリカ担当ディレクターは、「ティグレ州におけるエリトリアの関与を公に語ることについては、戦略・戦術面の配慮から、米国政府内で意見が分かれている。」述べた。

エリトリアのイサイアス・アフェウェルキ大統領の力は弱まっており、TPLFの排除に成功すれば、将軍たちはイサイアス大統領を排除してエリトリアとエチオピアの「統合」(エチオピアに紅海の港へのアクセスを確保)に動くと分析する専門家の見方が報じられている。

欧州連合(EU)は、ティグレ州は周辺地域を不安定化する人道的大惨事の瀬戸際にあると述べた。EUはこの地域に向けた人道支援資金を12月19日に2370万ユーロ増資した。EUの人道支援はエチオピア、ケニア、スーダンに対して実施される。

アントニオ・グテーレス国連事務総長の副報道官は、ティグレ州では多くの民衆が全く支援を受けられておらず、いくつかの援助団体による支援も制限を受けていると述べた。国連は引き続き、民衆が戦闘の影響を受けているあらゆる地域に「迅速かつ自由なアクセスが確保されるよう求めている。」

ティグレ州の状況に関する報道

ティグレ州の首都メケレは、警察とTPLF不在により無法地帯と化している。特に若者らがエチオピア連邦政府軍兵士らの標的となっている。

メケレでは、電気と電話線が断続的に繋がるものの、ティグレ州の大半の地域では繋がらない。インターネットは依然として使えない状況が続いている。

公務員はティグレ州の臨時政府により職場に戻るよう指示されているが、出勤するものはほとんどいない。

ティグレ州の住民の多くが、食料、水、現金、電気、電話へのアクセスができていないと指摘する国連報告書が公開された。

アディグラトのテスファセラシエ・メディン司教は、自宅で安全が確保されていることが報じられた。駐エチオピア教皇大使であるアントワーヌ・カミレリ大司教は、教区における戦闘が激しくなったために集会を欠席していたメディン司教との連帯を表明していた。

エチオピア情勢(ティグレ州以外)に関する報道

引き続き、ティグレ人を対象にした人種選別が行われている。首都アジスアベバ在住の著名なティグレ人活動家や弁護士が19日にエチオピア警察に逮捕された。また、ティグレテレビ局の元職員やティグレ系聖職者らも逮捕されたと報じられた。先週、エチオピア航空に勤務するティグレ人1名も逮捕された。(原文へ

INPSの顧問を務めるミリアム・ヴァン・ライゼン 欧州政策アドバイザーが率いるEEPA(Europe External Programme with Africa) はベルギーを拠点とするシンクタンク。エチオピア、エリトリア、ケニア、ジブチ、ソマリア、スーダン、南スーダン、ウガンダを含むアフリカ諸国の専門家、大学、市民社会組織と協力して、アフリカの角地域における平和構築、難民保護、レジリエンス強化に取組んでいる。また、アフリカの角地域及び地球海中部ルートにおける難民の移動及び人身売買問題に関する報告書を出版している。

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グローバルサミットでバイオエコノミーへの移行を提唱

*「バイオエコノミー」とは、生物資源(バイオマス)やバイオテクノロジーを活用して、天然資源枯渇、気候変動、少子高齢化、食料安全保障など、人類が直面する地球規模の諸問題を解決し、長期的に持続可能な成長を目指す概念であり、第5次産業革命とも言われる社会構造改革の原動力である。そのアウトプットは2030アジェンダ(SDGs)のほぼ全ての項目を網羅している。

【ベルリンIDN=リタ・ジョシ】

グローバル・バイオエコノミー・サミット2020」(11月16~20日)がベルリンで開催され、参加者らは、危機的な脅威に直面している地球環境の現状や、科学の進歩が可能にした様々な機会、さらには新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の世界的な大流行(パンデミック)がもたらした甚大な影響を踏まえて、バイオエコノミーへの移行の必要性を訴えるコミュニケ(共同声明)を発表した。同サミットは、世界各地から参画した約40人の先導的なバイオエコノミーの専門家から成る「国際諮問委員会」(IACGB)が開催したものだ。声明は、「(移行時期について)これほど緊急性を帯びている時はない。」と指摘している。

3回目となる今年のサミットは、COVID-19の影響でオンライン開催(1000人以上が視聴した)となったが、政府・産業界・学術界などから主要な利害関係者が参加した。サミットの目的は、世界中で持続可能なバイオエコノミー政策を展開していくために、忌憚なく話し合いができるプラットフォームを構築することにあった。4日間の会期中、参加者らはバイオエコノミー政策と、世界の持続可能な開発や気候問題との密接な関連について協議した。

国際諮問委員会は当初、2015年の「第1回グローバル・バイオエコノミー・サミット」を支援するために発足し、サミットのプログラム作りを担当してきた。諮問委員会のメンバーは、帰属する政府や組織を代表するのではなく、専門家として個人資格で活動している。現在は非公式なメカニズムだが、専門家のシンクタンクとして信頼性と正当性を獲得しており、さらなる発展に向けて積極的な取り組みを行っている。

Global Bioeconomy Summit 2020

今回の声明は、「バイオエコノミーは、供給サイドでは産業や製造部門で、また、需要サイドでは消費の変革や廃棄物の削減といった分野において、影響力が強い変革の力として頭角を現してきた。」と強調している。実際、近年、世界各国において、地域の実情に応じてバイオエコノミーの実現に向けた産業育成が政策的取り組みとして進められている。

また、バイオエコノミーが人間や地球にもたらす全般的な貢献を3つ指摘している。第一は、コロナ禍、さらにポストコロナの時代において社会を復活させるための主たる要素として、人間の健康や幸福に貢献するバイオエコノミーの側面。第二に、持続可能なバイオエコノミーを前進させる科学的・技術的なブレイクスルー(躍進)。第三に、持続可能なバイオエコノミーに伴い、それをめざす気候関連の行動や生態系、生物多様性の保護である。

さらに声明には、「グローバルで持続可能なバイオエコノミーへのビジョン」という文書が付属している。ビジョンでは、「バイオエコノミーは、持続可能な経済成長を基盤とした経済システムを追求し、資源の消費を減らし、生態系を保護し再生することで、人間や地球の状態をよりよいものにする。生物資源や生物学的プロセスに価値を与えるべく科学を利用することで、バイオエコノミーは、再生可能性や循環性といった原則を取り込む。」と強調している。

さらに、バイオエコノミーは、人間と自然のニーズを調和させることも目的としており、今日の経済システムよりも遥かに優れたシステムを追求する。すなわち、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」や17項目の持続可能な開発目標の達成を目指すシステムであり、人間の幸福や社会的不平等を改善し、資源消費を減らして生態系の回復を図ることを目的とした、持続可能な経済成長を基盤とするシステムである。

「ビジョン」は、バイオエコノミーの活動は経済・社会・生態系のレジリエンスを高め、都市と農村社会がたとえ経済危機に見舞われても、苦境を切り抜けることを可能にする、と明言している。グローバルで持続可能なバイオエコノミーは社会のあらゆるレベルを包含し、全ての人々の生活の質を向上させる一方、経済成長に対する生物物理的な限界を尊重するものである。

Sustainable Development Goals affected by bioeconomy activities. Blue arrow: socioeconomic targets; green arrow: ecological targets; red arrow: clean industry and economic targets./ by Tobias Heimann

また、自然はバイオエコノミーにおける最大のインスピレーション源であると指摘している。生物は、貴重な再生可能な物質であり、エネルギー源となるだけではなく、自然のサイクルやシステム、プロセスに関する重要なノウハウを提供する。生命科学は、新たな高価値の解決策や応用策を生み出すために、自然界の生物のこうした特徴や能力、機能を探求する学問である。

「現在、多くのバイオイノベーションが依然として初期段階にあるが、すでに、社会や健康、生態系に明確な利益をもたらす前途有望な解決策を示しつつある」とビジョンは指摘している。

ヘルスケア部門における先進的な事例としては、例えば、がん免疫療法や生分解性インプラントやセンサー、バイオプリンティング器官など、生物学的療法がなされている。

繊維・ファッション業界では、バイオイノベーションが持続可能な素材とプロセスに貢献している。例えば、バイオ技術を用いて大量生産が可能となったクモ由来の新素材「スパイダーシルク(柔らかくしなやかで、鋼のように強い)」や、バイオ技術による防水加工、染色、洗濯プロセスなどである。

IT部門では、高度に効率的なデータ貯蔵のためのDNAテスト(DNAストレージ)がすでに成功しているし、大気汚染を測定する装置に培養細胞が組み込まれるようになった。食料・飼料産業におけるバイオイノベーションは、善玉菌を含んだ健康食品や、菜食主義者向けに開発されたタンパク質オプション(大豆由来の代替肉等)、廃棄食品から生まれた高価値の産品(農業廃棄物由来のバイオプラスチック)を生み出している。さらに、微生物を使った肥料のように、農業に対する解決策、動物の飼料となり人間の健康にも貢献することを目的とした、肥満と非感染性疾患対策の解決策も開発されている。

産業部門では、合成生物学や微生物工学がプラスチックや鉄に替わる生体材料につながるだけではなく、より持続可能な製造プロセスを刺激してきた。バイオテクノロジーとそれに関連した技術の収斂が、持続可能な開発を推し進め、革新的なスタートアップ企業の立ち上げや、グローバルなパートナーシップを通じた雇用創出を加速する潜在能力を大いに発揮している。

今回のサミットでは、ドイツのアンヤ・カルリツェク教育・研究相が冒頭で登壇し、同じくドイツのユリア・クロックナー食料農業相が、持続可能なバイオエコノミーにおける農業と食料システムの重要な役割を強調した。

国連食糧農業機関(FAO)屈冬玉事務局長は、技術と社会的インパクト、倫理を結びつける必要性と、複数の利害関係者から構成されるプラットフォームとしての「グローバル・バイオエコノミー・サミット」の意義を強調した。

Joachim von Braun/ Global Bioeconomy Summit 2020

ドイツ政府がサミットを主催・支援し、東アフリカ、ASEAN(タイが代表)、EU委員会、ラテンアメリカ・カリブ海地域、日本が公的パートナーとなった。これらの地域や国々の同サミットへの貢献は、この動きがいかに世界的なものであるかということ、そしてバイオエコノミーがいかに多様なものであるかを示していた。

「バイオエコノミーは、地域で応用され、グローバルにつながっているものです。人々がバイオエコノミーを地域のニーズと状況に応用していることには感心させられます。」と国際諮問委員会の共同議長であるホアキム・フォン・ブラウン教授は語った。

バイオエコノミーが持つ多様な側面は、サミットのサイドイベントとして開催された「バイオエコノミー若者大使ワークショップ」にもよく表れていた。このワークショップは、若い世代がそれぞれの国で地域のバイオエコノミーの概念をいかにして形成するか、それを成功に導くのに必要な前提条件は何かについて活発に話し合う出発点となった。

8人の「バイオエコノミー若者大使」の一人である米国のロニット・ランガー氏は「より良い未来を実現するために優れた政策が必要であることを若い参加者が深く理解していること、そして、今日我々がいる場所から未来へ向かってどう進んでいくかについて人々がビジョンを持ち寄ったことに感銘を受けました。」と語った。(原文へ)|フランス語 |

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【ニューヨークIDN=リサ・ヴィヴェス】

世界各地のメディアは、イスラエルとモロッコ間の外交関係樹立をトランプ政権の外交努力による「歴史的な快挙」として喧伝しているが、両国は数十年に亘って密接な関係を築いており、協力分野は、諜報・軍事分野から野党指導者の暗殺まで含むものだった。

ニューヨークタイムズ紙の最近の報道によると、モロッコは少なくとも過去60年間に亘ってイスラエルから高性能兵器や諜報活動機器の提供及び使用訓練を受けてきた。モロッコはそれと引き換えに、1967年の6日戦争(第3次中東戦争)ではイスラエルの勝利に貢献したとされている。また、アメリカ同時多発テロ前の時点で、失敗に終わったものの、イスラエルの諜報機関(モサド)によるオサマ・ビンラディン暗殺の試みを支援したと報じられている。

Map of Morocco

イスラエルで最大の発行部数を持つ日刊紙「イェディオト・アハロノト」のルポライターであるローネン・ベーグマン氏は、このようにイスラエルが共通の利益や敵が存在する場合にアラブの政権とも秘密裏の繋がりを構築する協力関係を「周辺戦略(periphery strategy)」と説明している。

1961年にハッサン2世がモロッコ国王に即位するとイスラエルとの2国間関係はまもなく好転した。国王は国内ユダヤ人のイスラエル移住を禁じた従来の政策を転換。イスラエルはその見返りに、諜報員を通じて野党党首メフディー・ベン・バルカ氏による国王追放の陰謀を伝えた。ベン・バルカ氏はフランスでモサド工作員により殺害されたとみられているが、遺体が発見されることはなかった。

1965年、ハッサン国王は、モサドが来訪中のアラブ指導者との会議や宿泊先に盗聴することを許可した。これにより、イスラエル政府は極めて重要な情報を入手することが可能となり、2年後に6日戦争が勃発した際には、こうした情報がアラブ軍の侵攻を回避し撃破するうえで役立ったとされている。

イスラエルとモロッコは長年に亘って同盟関係を維持してきたが、1999年に即位したムハンマド6世は、未解決の西サハラ問題(1975年に旧宗主国のスペインが去ったあと、モロッコが軍事侵攻して西3分の2を実効支配中。東部の砂漠地帯に追われた地元住民は亡命政権サハラ・アラブ民主共和国を樹立して抵抗中。亡命政権は国連には加盟してはいないが、アフリカ・中南米諸国を中心に承認されており、アフリカ連合にも加盟してる。一方、欧米や日本などの先進諸国は、モロッコとの関係上からサハラ・アラブ民主共和国を国家としては承認していない。)に不満を露わにしていた。国王は国際社会の反対を押し切って領地奪回を決意し、今年11月にモロッコと亡命政権による実効支配地の中間に国連が設けた緩衝地帯に軍を侵攻させた。これにより停戦の終了が宣言される局面もあったが、現在のところ本格的な戦争には至っていない。

Map of states which have recognized independence of Sahrawi Arab Democratic Republic. The information is taken from en:International recognition of the Sahrawi Arab Democratic Republic

(上記地図:青色:サハラ・アラブ民主共和国の実効支配地域。緑色:サハラ・アラブ民主共和国を承認している国。赤色:承認を撤回した、もしくは凍結している国。灰色:未承認の国。)

Photo: U.S. Secretary of State Mike Pompeo speaks with Benjamin Netanyahu, the Prime Minister of Israel, in Tel Aviv, on 29 April 2018. (State Department photo by Ron Przysucha / Public Domain).

国連決議が、西サハラ人民の「民族自決権」を認め、モロッコによる占領状態に「深い懸念」を表明しているにもかかわらず、トランプ政権は12月10日、モロッコ政府がイスラエルを「承認」することと引き換えに、西サハラにおけるモロッコの領有権と認める宣言に署名した。退任直前になされたトランプ大統領のこの「業績」は、物議を醸している。

戦略国際問題研究所アフリカ所長のジャッド・デヴァーモント氏は、トランプ大統領が発表したいわゆる「歴史的な快挙」に異議を唱えている。「米国はイスラエル政策で短期的な勝利を優先するあまり、アフリカ諸国に対して公正さを欠く外交を進めている。今回の決定は、早速多くのアフリカ諸国に問題をもたらすことになるだろう。」とデヴァーモント所長は語った。(原文へ

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「世界と議会」2020年秋冬号(第586号)

特集:咢堂塾・特別講義録

◇「咢堂塾」発足22年を迎えて
◇「渋沢栄一と論語」/長峯基
◇「地方政治と日本の未来」/北川正恭
◇「地方自治を取り戻すただ一つの道」/高橋富代

■歴史資料から見た尾崎行雄
 第4回「尾崎行雄日記と「唐様で売家と書く三代目」」/高島笙

■連載『尾崎行雄伝』
 第十六章 東京市長

■INPS JAPAN
 軍縮に向けた議会の行動に関する新たなハンドブック発行

1961年創刊の「世界と議会では、国の内外を問わず、政治、経済、社会、教育などの問題を取り上げ、特に議会政治の在り方や、
日本と世界の将来像に鋭く迫ります。また、海外からの意見や有権者・政治家の声なども掲載しています。
最新号およびバックナンバーのお求めについては財団事務局までお問い合わせください。

ジスカールデスタン大統領とボカサ一世のダイヤモンド

【ルンドIDN=ジョナサン・パワー】

12/2に逝去した故ヴァレリー・ジスカールデスタン元フランス大統領と中央アフリカ帝国(現中央アフリカ共和国)のボカサ一世の黒い関係に焦点を当てたジョナサン・パワー(INPSコラムニスト)による視点。冷戦の最中、ジスカールデスタン大統領は反共産主義を掲げていたボカサ独裁政権を支持し、個人的な友好関係(ダイヤモンド等の収賄やボカサが用意した個人的な狩場での休日等)も育んでいたが、国際人権擁護団体により人権侵害(デモに参加した約100名の子どもを含む400名を虐殺)の実態が明るみに出て国際世論から批判を受けると、態度を一変して軍事介入し、ボカサ政権を崩壊させた。(原文へ

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国連事務総長が警鐘:「自然に対する戦争」は「自殺的」

この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています。

【Global Outlook=フォルカー・ベーゲ 】

「地球の状態は壊れている」。これは、人類が今日陥っている状況を端的にまとめた国連事務総長の言葉である。12月2日、世界の気候変動非常事態と環境の劇的劣化についての講演の中で、気候と環境が現在直面する危機の深刻さを示す最も重要な事実をいくつか挙げている。「この10年間は、人類の歴史上最も暑い10年間だった」、「二酸化炭素濃度は依然として記録的に高く、さらに上昇している」、「今世紀、われわれは摂氏3~5度という途方もない気温上昇に突き進んでいる」、「いつものことだが、最も深刻な影響を受けるのは世界で最も脆弱な人々である。問題を引き起こすようなことを最もしていない人々が最も苦しんでいる」。「われわれが気候の大惨事にいかに近づいているか」を示すこれらの事実に注意を引くことによって、グテーレス事務総長は国連加盟国がより断固とした行動を起こす必要があることを強調するとともに、パリ協定5周年の日である12月12日に国連、英国、フランスがオンラインで共同開催した「気候野心サミット」への布石を打とうとしたのである。このサミットで事務総長は、世界中のすべてのリーダーに気候非常事態を宣言するよう求めた。(原文へ 

平和研究者および平和構築者の観点から見ると、グテーレス事務総長が気候危機を紛争と平和に明確に関連付け、気候危機は「平和のための取り組みをいっそう困難にする。なぜなら、この混乱が不安定化、避難民化、紛争に拍車をかけるからである」と述べている点が興味深い。これにより彼は、気候変動は“脅威の増幅要因”という主流的見解を追認している。すなわち気候変動に関連する(暴力的な)紛争は、国内レベルから国際レベルまでさまざまな規模で、平和と安全保障上の重要な課題となっているということである。実際、気候変動に起因する避難民化は、特に避難民と受け入れ側のコミュニティーの対立のような紛争を引き起こしやすいことが分かっている。

しかし平和研究者および平和構築者の観点から見てさらに興味深く、また、気候変動/平和/安全保障をめぐる言説に新たな視点をもたらす要素は、事務総長が目の前の問題を人間と自然の関における戦争と平和という枠組みで捉えたことである。「人間は自然に対して戦争を仕掛けており」、それは「自殺的」だと述べた。それに基づき「自然と和解することは、21世紀を決定付ける課題である」と宣言した。このような自然との和解は「すべての人、すべての場所にとって最優先課題」でなければならないとグテーレス事務総長は述べた。目標は、「自然と調和して生きる道筋に世界を導くこと」でなければならない。

国連事務総長が、「自然」、そして自然と「調和して」生きる必要性を議論の中心に置いたことは、もちろん大いに称賛に値する。真剣に受け止めれば、これは、そもそもわれわれを気候の大惨事に向かわせた世界観や考え方からの根本的な転換である。しかしその一方で、上に引用した言葉に表れている思考の流れは、依然として“世界”や“人間”を“自然”と切り離しており、“自然”を人間に尽くすものとして捉えている。「自然は、われわれに食料を与え、衣服を与え、渇きを癒し、酸素を作り、われわれの文化や信仰を形成し、まさにわれわれのアイデンティティーを作り上げている」。確かにそれは真実であるが、同時に、二元論的、人間中心主義的世界観を具象化している。それは、過去何世紀にもわたって圧倒的に支配的で、また、国連システムの根底にあり、気候危機の原因の根底にもある世界観である。

これ以外にも、世界における在り方、世界に関する考え方はある。それらは今日、世界規模できわめて周縁化されているが、それでもなお、気候危機を脱する道を模索するにあたって検討するだけの価値があるものだ。グテーレス事務総長は講演の中で、気候危機という文脈においては先住民族と在来知が重要であると強調し、正しい方向性を示した。「先住民族が住んでいる土地は、気候変動と環境劣化に対して最も脆弱な土地に含まれていることを考えると、今こそ彼らの声に耳を傾け、彼らの知識に報い、彼らの権利を尊重するべきである」。そして「何千年にもわたって自然と密接かつ直接的に接触する中で集約されてきた在来知は、道を指し示すために役立つだろう」

実際世界各地の先住民族は、グテーレス事務総長の講演に今なお染み込んでいる、世界中で支配的な世界観に対して異議を唱えている。彼らは人間を自然から切り離された存在とも、自然を支配する存在とも考えておらず、関係性に応じて自然に組み込まれる存在と考えている。このような考え方に基づけば、気候危機に対する人間中心のアプローチを克服し、人間と人間社会を関係性に応じて理解するアプローチを推進することができるだろう。それは他の人間との関係性だけでなく、人間以外の存在(「自然」)との関係性である。“人類”を脱中心化することによって、「自然と和解する」新たな道筋を切り開くことができるだろう。それは、国連の文脈において非常に影響力を持っている“人間の安全保障”という進歩的概念さえも超越していく道である。“人間の安全保障”はなおも区分を作り、自然と社会の分断を具象化し、人間を創造物の頂点として概念化している。

最後に、国連事務総長は「体系的な適応支援は……特に存続の脅威に直面している小島嶼開発途上国にとって緊急に必要である」と表明した。実際、ツバル、キリバス、マーシャル諸島のような小さな太平洋島嶼国を見ると、上記の問題すべてが合体している状況である。これらの国々は気候非常事態の原因となることをほとんど何もしていないにもかかわらず、海面上昇、自然災害、食料と水の不安定など気候変動による影響に際立って脆弱であり、深刻な影響を受けている。これらの国々の国民にとって気候変動に起因する避難民化は緊急の問題となっており、気候変動の経済的、社会的影響に起因する暴力的な紛争は、生計、福利、安全を脅かしている。同時に、太平洋諸島の人々は豊かな在来知を持っている。それは彼らの世界における在り方や世界観に根差したものであり、人間と自然の分断や、気候非常事態への取り組みにおける世界的に支配的なアプローチに内在する人間中心主義を超越するものである。彼らの脱人間中心主義的な、関係性に基づく振る舞い方や考え方はまさに「道を指し示すために役立つだろう」。

そのため、太平洋島嶼国における平和研究や平和実践に焦点を当てるだけの多くの十分な理由がある。

フォルカー・ベーゲは、戸田記念国際平和研究所の「気候変動と紛争」プログラムを担当する上級研究員である。ベーゲ博士は太平洋地域の平和構築とレジリエンス(回復力)について幅広く研究を行ってきた。彼の研究は、紛争後の平和構築、混成的な政治秩序と国家の形成、非西洋型の紛争転換に向けたアプローチ、オセアニア地域における環境劣化と紛争に焦点を当てている。

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世界大会が核兵器廃絶と気候変動対策を呼びかけ

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人類の生存を危機にさらす核兵器と気候変動(デイビッド・クリーガー核時代平和財団会長インタビュー)

核兵器国は使用後責任を受け入れるか?受け入れないなら、それはなぜか?

この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています。

【Global Outlook=ジョージ・パーコビッチ 】

核兵器禁止条約(TPNW)を批判する者も支持する者もほとんど注意を払っていないが、この条約には過去および将来起こり得る核兵器の爆発に対する法的責任を定める条項がある。条約は個々の締約国に対し、特に「核兵器の使用または実験により被害を受けた締約国に、技術的、物質的、財政的支援を提供する」こと、そして「核兵器または他の核爆発装置の使用または実験の被害者に支援を提供する」ことを求めている(第7条)。ここに述べられている被害者とは、核保有国の決定に対する発言権も、決定による利益もない非交戦国かもしれない。(原文へ 

核兵器使用による被害の補償を軽視することにより、各国政府は核兵器がもたらす危険という問題から安易に逃げ続けている。このような姿勢は、多くの国が抱いている「核抑止に依存する国は、そうでない国に対して共感を持っていない、他国の指導者の罪なき人質として生きることがどういうことか分かっていない」という感覚を裏付けるものである。そのような共感性の欠如は、世界の核秩序の根底にある不正義にさらに追い打ちをかける。1970年の核不拡散条約の下では、5カ国が核兵器の保有を認められ、それ以外の国は認められていない。

核軍縮は、これらの問題を解決する一つの方法である。しかし、たとえ核兵器保有9カ国すべてが核兵器を放棄することに同意したとしても(今のところそのような気配はまったくないが)、核軍縮を実施するには長い年月を要する。核兵器が廃絶されるまでの間も、武力衝突が大量の犠牲者を出す核戦争へとエスカレートするという大惨事を防ぐために何らかの核抑止を維持する必要が出てくるだろう。法的責任の問題がより大きく注目されれば、核兵器保有国の間で自制と抑止が強化され、TPNWの擁護派からも批判派からも評価が得られるはずである(これらの問題について詳しくは、Journal for Peace and Nuclear Disarmament(「平和と核軍縮」)に掲載された筆者の論文を参照されたい)。

使用後責任に目を向けることを批判する人々は、核兵器保有国がTPNWに署名および批准することはないのだから、結局、義務も生じないと主張するかもしれない。しかし、この点は、核兵器禁止条約の考え方の欠点ではなく、目玉である。核兵器保有国が核兵器を放棄したくないというのであれば、少なくとも、彼らが国民や環境に害を及ぼすかもしれない国々を支援する気があるかどうかを明言するべきである。核兵器保有国は、自らを防衛主体の責任ある国家であると表明し、少なくともそのうちの一部の国は核兵器の使用は限定的なものにできると主張している。それならば、彼らはなぜ、非交戦国に与え得る害を是正することに反対しなければならないのだろうか?

これらの国々が自国の核兵器使用による被害者に技術的、物質的、財政的支援を提供する責任を拒めば、核軍縮を求める世界の声はますます大きくなる。また、核兵器の使用は限定的なものにとどめられるという自国や他国の国民への主張も揺らぐことになる。核兵器使用の影響は必ずしもそれほどひどくないというのなら、なぜその使用した結果を受け止めようとしないのか?

責任を受け入れるという国々は、誓約した支援をどのように実行するかを説明し、そのために用意した人的、財政的資源を示すよう(繰り返し)求められるかもしれない。生じ得る損害の大きさと、その結果必要となる支援の規模は、使用する核兵器の想定される数、爆発出力、標的によって決まる。また、核兵器の種類や数、および標的設定計画に伴うリスクについて国際的に議論することで、最も高いリスクの低減に注力することができるだろう。

使用後責任という概念に対するもうひとつの反応は、「馬鹿げている、どうせみんな死ぬんだから」である。核軍縮論者も核抑止論者も、同じようにこれを言う。軍縮論者は、ある標的に対して、ある数、あるタイプの核兵器を使用すれば、人道的、環境的大惨事をもたらさずに済むという考え方を信じていない、あるいは認めることができないからである。抑止論者は、限定核戦争を想定することは核兵器使用に対する自制を緩め、ひいては抑止力を弱める、あるいは、国家を核による反撃戦というきわめて高コストで不安定な道に進ませると考える人々がいるからである。国際的責任、外国人への支援、環境修復のための支出、という考え方が概して好きではないという人々もいる。

核爆発がもたらし得る破滅的な影響に焦点をあてることは、多くの非核兵器保有国、さらには核兵器保有国の一部同盟国においても市民社会の注目を集めている。しかし、核兵器保有国が国民に対し、核兵器はそれを使わなくても済むように戦争を抑止するものなのだ、と言い聞かせて軍縮(そしてTPNW)への圧力をそらすことはあまりにも容易である。抑止は機能するのか、核兵器のあらゆる使用が人道的大惨事をもたらすのかについて勝者なき論争を展開するよりも、保有国がその核行動の結果を(もし生き残っていれば)修復することに責任を取るつもりがあるか否かを知るほうが、国際社会にとっては明確さが得られるだろう。

この問題について(可能な国では国内で、すべての国にとっては世界で)議論することは、多くの人にとって、核兵器そのものに関する論争より包括的で興味深いものとなるだろう。また、核使用の影響に対する責任を問い続けることによって、各国の指導者たちは核軍縮が進捗しない責任は自国と敵対国のどちらが重いかを議論するよりも、真剣さと自制を示さざるをえなくなるだろう。たとえTPNWの核軍縮目標が達成されなくても、条約にある責任を定める条項がそれにふさわしい大きな注目を集めるのであれば、十分に役立っているといえるだろう。

ジョージ・パーコビッチは、ワシントンDCのカーネギー国際平和基金でケン・オリビエおよびアンジェラ・ノメリーニ寄付講座教授および研究担当副所長である。彼は、Abolishing Nuclear Weapons: A Debate (2009)の共同編集者であり、直近では “Toward Accountable Nuclear Deterrents: How Much is Too Much?” という論文を執筆した。

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【ダルエスサラームIDN=キジト・マコエ】

注いだカップから豊饒な香りが立ちのぼるジンジャーミントティーの味ほど、素晴らしいものはない。ダルエスサラームにある「ソルト・レストラン」の客なら誰でもわかることだが、この美味な飲物はお金で買える最高の楽しみと言えるだろう。

緑豊かな高級住宅地オイスターベイに佇むしっとりとした雰囲気の外観と荘厳なフランス風建築を誇るこのレストランは、多くの紅茶愛好家を引き寄せている。

絶妙な味付けをしたジンジャーティーは、ミルクや砂糖、あるいはレモンを加えても、プレーンのままでも、絶品だ。

Map of Tanzania

茶葉の育て方や加工の仕方によって味が変わるこの濃い色の飲み物は、街の一流ホテルからショッピングプラザ、田舎のスーパーマーケットに至るまで、人々の生活に浸透してきている。

顧客はしばしば、微かに謎めいた感覚に捕らえられながら、驚きをもってお茶を嗜む。タンザニアのティーブレンダーが作った最高級ティーブランドがどんな味なのか、想像もつかないからだ。

スワヒリ語で「私たちの仕事」を意味する「カジ・エトゥ」(Kazi Yetu)は、タンザニア産茶葉に価値を付加することで、巨大な農産物バリュー・チェーンの中で、女性に仕事と経済的機会を与えている新興企業だ。

この会社は、フェアトレードで調達した茶葉を加工・調合・包装・輸出する企業で、タンザニア経済に貢献している。

アフリカの農産品は海外で加工・調合・包装されることが多いが、タンザニアを含めた原産国が必ずしもスケール・メリットを享受できているわけではない。

起業家のタヒラ・ニザリ氏(32)と、彼女のビジネス・パートナーであり夫でもあるヘンドリック・ブールマン氏は、こうした現状を覆す取り組みに挑戦している。

アフリカ東部と南アジアで非営利開発部門を経済的に包摂する開発機関で働くなど、申し分のない学歴と豊かなビジネスの経験をもつニザリ氏は2018年、意欲的なビジョンを持って「カジ・エトゥ」を立ち上げ、付加価値を通じてアグリビジネスの経済的潜在能力を引き出すべく奔走してきた。

Tahira Nizari/ Kazi Yetu

ニザリ氏が言うところの「追跡可能な製品」を生産する女性従業員だけの「カジ・エトゥ」の工場は、ダルエスサラームにあり、いわば活動の中心拠点になっている。

ニザリ氏は、地域と世界両方のレベルで綿密な市場調査を行って機会を把握し、タンザニアの農民のネットワークと関係を築くことで、地元の味のアクセントを利かせた主力商品「タンザニア・ティー・コレクション」の7つのブレンド商品を提供している。また、持ち前の鋭い感性で、同胞の多くが気づいていないような農業分野に多くのチャンスがあるとみている。

「タンザニアの若い人は農業で起業することにあまり魅力を感じていないようだけど、私たちは、利益も上がる農業のバリューチェーンに沿って新しい機会を創出しています。」とニザリ氏は語った。

そして、その優れたコミュニケーション能力と、官民両部門の地元のパートナーとの垣根を越えた交流によって、女性を貧困の苦しみから救い出す収入創出の機会を生み出そうと努力している。

「カジ・エトゥ」は、社会的企業として、新興のアグリビジネスとパートナーを組み、パッケージやブランディング、マーケティングを通じて価値を付与し、機会を創出して、国際市場とつながっている。

小規模農家や女性起業家の生活を変革し、収入向上をはかるニザリ氏とブールマン氏の仕事は、事業を始めた時から、将来に向けての明確なビジョンを持っていた。

「私たちは、投資と成長を持続可能な形で加速するような社会的企業を作りたかった。」とニザリ氏は振り返る。

「カジ・エトゥ」は、消費者の幅広い需要を満たすために、タンザニア全土の農家から倫理的に調達(エシカルソーシング)した茶葉にハーブを配合した様々なブレンド茶を製造している。

「世界の消費者は、商品がどのように作られ、サプライチェーンの中で商品が人々にどのように影響を与えているのかを知りたがっています。」とニザリ氏は語った。

彼女によれば、今年初め発生した新型コロナウィルス感染症の拡大で、会社や物流、消費者、施設が悪影響を被り、ほとんど倒産寸前まで追い込まれた。2020年度はほとんどの期間で、観光客がタンザニア行きの旅行をキャンセルしたからだ。

Image: Virus on a decreasing curve. Source: www.hec.edu/en
Image: Virus on a decreasing curve. Source: www.hec.edu/en

「4月には、工場を一時的に閉鎖して、安全を確保するために従業員たちを自宅待機にせざるを得ませんでした。また、ほとんどの国の政府が渡航制限とロックダウンをかけていたため、空路と海路で商品を輸出することが物流面で困難になりました。」とニザリ氏は語った。

資金繰りが悪化し、物流面で困難をきたしたにも関わらず、その後「カジ・エトゥ」の活動は徐々に回復した。

会社は現在、欧州市場を主に念頭に置いて、ドイツでオンラインストアを経営している。ニザリ氏は、オンライン消費者の反応はきわめて良好と感じており、オンライン販売に期待を寄せている。

「欧州の消費者を開拓できるのは嬉しいし、事業は北米や中東にも拡大しつつあります。」と彼女は語った。

「カジ・エトゥ」は、ドイツにある支社を通じて、同じような意志を持つ社会的企業と連携し、価値を創出してアフリカのマーケットに進出しようとしている。

彼女のビジネスパートナーやサプライヤーの間で高まるニーズを把握し、それに応えるために、「カジ・エトゥ」は、協力者に対して、有機農業の原則にこだわった教育訓練を提供している。

「私たちは農家と協力して、彼らの特定のニーズを把握し、ビジネスの拡大に寄与しています。」と語った。

彼女の会社は、例えば、食用ハーブの乾燥に太陽光をエネルギー源とする乾燥機を必要とする北部キリマンジャロ地域の小規模農家を支援している。

「私たちは太陽光乾燥機の設置を支援し、相手は分割で返済しています。」とニザリ氏は語った。

「カジ・エトゥ」は、ダルエスサラーム市内に貯蔵・製造・包装のための施設を複数持ち、12人の女性従業員を雇っている。

「お茶の包装機械を導入して、農家からの購入量を増やし、女性にもっと職を与えたいと考えています。工場では2022年までに女性を65人雇い、取引先の農家も7500戸まで拡大したい。」とニザリ氏は抱負を述べた。

会社は、公正に生産された、オーガニックで自然志向の商品を求めるお茶好きの消費者をターゲットとしている。

「オーガニック商品を扱うスーパーや商店を狙っています。」と彼女は語った。

カナダ生まれ、ドバイ育ちのニザリ氏は、タンザニアに深く刻まれた彼女の家族のルーツゆえに成功を収めたといえる。彼女の母は、キリマンジャロ山麓のモシで育った。

「私の祖父は農場と、街の中心部に店を構えていました…私は、自分のルーツがあるここに戻りたいといつも思っていました。」と、夫がアフリカ東部・西部において多くのアグリビジネスに関わっているニザリ氏は話してくれた。

子どものいないニザリ氏は、「ピリピリ」と名付けた、元は野犬だった愛犬と一緒にインド洋沿いの海岸を散歩するのを楽しんでいる。(原文へ

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禁止には触れないでくれ:核兵器禁止条約を回避しようとするオーストラリア

この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています。

【Global Outlook=ジェム・ロムルド】

核兵器禁止条約(TPNW)は、ひとつのゲームチェンジャーである。この条約はすべての核兵器保有国を国際法違反の状態に置いた。安全保障ドクトリンに核兵器を組み込んでいる国も同様である。この条約は、各地域の非核兵器地帯を連合させ、他の核兵器管理条約の上に立脚し、10ページの簡素な文言で核兵器を許すいかなる活動も断罪する。(原文へ 

この条約は、展望を述べる声明でも野心的なマニフェストでもなく、中身の薄い会議成果文書でもない。包括的な、国連で交渉された条約であり、2021年1月22日に恒久的な国際法となることが決まっている。

核兵器の禁止だけでなく、この条約は締約国が遂行しなければならない積極的義務のほか、核兵器保有国との備蓄量削減交渉の枠組みも定めている。条約が発効すれば締約国は条約義務に拘束される。締約国は第12条に基づき、非締約国に条約批准を奨励することによって普遍性を追求する義務を負う。これは国際的な会議や2国間会議の場で行われてもよい。国際原子力機関と包括的保障措置協定をまだ締結していない国は、締結が義務付けられる。また追加議定書を締結済みの国は、それを維持することが義務付けられる。

また、第6条および第7条に基づき、締約国は核兵器の使用や実験によって身体や環境が被った長期的被害に対して協力して取り組むことが初めて義務付けられる。このような協力や支援は能力に応じて提供されるが、核実験プログラムを実施してきた国はそうした支援を提供する義務を負う。

オーストラリアはTPNWの交渉に参加せず、連邦議会でこの問題を論じる努力を避け続けている。たとえば2020年11月、緑の党および労働党の連邦議会議員提出の動議を否決した。オーストラリア外務省が運営するウェブサイトには、TPNWに対するオーストラリア政府の見解を示す一段落の文章が掲載されている。このパラグラフは、簡潔でありながらも虚偽にまみれており、そのすべてがICANの新たな刊行物『For the record…』において反論されている。

オーストラリアは、自国を核軍縮に熱心な国としてアピールしているが、その一方で米国の核兵器はオーストラリアの安全保障に不可欠であると主張している。これは矛盾した立場であり、わが国のリーダーたちもそれを知っている。TPNWは核兵器のいかなる合理的な役割または目的を否定するために、そのような偽善を露呈させる。オーストラリアの消極的な姿勢も、つまるところはそれである。自国の名で核兵器が使用される可能性があることを黙認する国家は、軍縮の進捗を遅らせている。既存の条約の枠内で核兵器保有国に軍縮を強いる努力は、明らかに失敗している。

米国が実際にその核兵器でオーストラリアを守るという明確な約束はないにもかかわらず、オーストラリアの安全保障は米国の核兵器に根差すと本気で信じている人々もいる。そのような人々にとって、“核の傘”を閉じてもよいとすることは、耐えがたい盲信である。しかし、世界の大多数の人にとって、核兵器によって極限まで武装した世界で日々を過ごすことは受け入れがたいほどリスクに満ちており、防止こそが唯一の選択肢であり、廃絶こそが唯一の保証なのである。

2017年7月、122カ国がTPNWの採択に賛成票を投じ、核兵器保有9カ国による少数派支配を拒絶した。以来、業界の資金提供を受けた防衛シンクタンクの人々による全力の努力にもかかわらず、核なき外交政策を求めるオーストラリア人の声は高まり続けている。2020年7月、イプソス社の世論調査でオーストラリア人の71%がTPNW参加に賛成しており、反対はわずか9%であることがわかった。地方自治体から連邦議員まで、行政のあらゆるレベルの人々がこの問題に取り組み、そのうち88人がオーストラリアの禁止条約参加を目指して尽力することを誓った。オーストラリア労働党は、政権を取った場合にはTPNWに署名し批准することを公約として掲げている。オーストラリア医学会、オーストラリア赤十字社、オーストラリア労働組合評議会など、多くの労働組合、宗教団体、医療団体、人道団体、環境団体がこの動きに加わっている。

TPNWが発効の基準である50カ国目の批准を獲得する目前、米国の政権はすべての締約国に書簡を送り、彼らが「戦略的誤り」を犯していると示唆するとともに、批准を取り下げるよう要求した。このような死に物狂いの行動は意外であるが、その意図は意外ではない。核兵器保有国は、あの手この手を使って禁止条約に反対し続けるだろう。

オーストラリアは、核兵器以外の容認しがたい兵器の禁止については、主要な軍事同盟国に異議を唱えてきた。核兵器についても、そうしなければいけない。同盟のために大量破壊兵器への忠誠が必要なのだとしたら、それは一体誰のための同盟なのだろうか? この禁止条約に関しては、同盟国間で核兵器によらない継続的な軍事協力を可能にすることを目的とした交渉が行われている。オーストラリアは、太平洋安全保障条約(ANZUS条約)の下でもそれ以外でも、核“抑止”政策を維持する法的義務は一切負っていない。核抑止政策は、われわれを守るどころではなく、サイバー戦争、技術的失敗、現在および将来における核保有国リーダーの気まぐれといった複合的なリスクをわれわれに負わせる。

TPNWには、人々の支持、明確な目的、そして首尾一貫した前進の道筋がある。断じてこれは、新たに設立された委員会でも、懇談会でも、あるいは曖昧な“イニシアチブ”でもない。禁止条約は、核軍縮に向けた数十年来最も強力な貢献を行うメカニズムをオーストラリアにもたらす。オーストラリアが核兵器保有国への圧力を発揮するための最適の立ち位置は、禁止条約という天幕の下である。

TPNWの第1回締約国会議は、条約発効日の2021年1月22日から1年以内に開催されなければならない。第1回会議はオーストリアで開催され、すべての締約国が招待されるほか、非締約国もオブザーバーとして出席する選択肢が与えられる。オーストラリアは禁止に加わらなければならず、その第一歩はオーストリアの参加招待を受け入れることだろう。流れは核兵器禁止へと変わりつつある。われわれは、その流れに沿って進んでいくほうが賢明である。

ジェム・ロムルドは、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)オーストラリアの事務局長。Australians for War Powers Reformおよび3CR Radioで働いた経験を持つ。コミュニケーション学および法学で学位を取得しており、シドニー/ウォロンゴングを拠点としている。

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軍拡競争を引き起こしかねないミサイル防衛

【トロント/ワシントンIDN=J・C・スレシュ】

トランプ大統領が遺したものを見ると、暗い気持ちになってくる。ジョー・バイデン次期大統領と政権移行チームは数多くの重要な決定に直面している。軍事政策の専門家らは、新政権が直面している重要な決定の一つは「長距離弾道ミサイルを撃墜可能な新型の海上発射ミサイルでミサイル防衛体制の強化を図るトランプ時代の計画を前進させるべきかどうかと、どのように進めるのか」という点にあるとみている。しかしこの計画は間違いなく、軍備管理の進展を妨げることになるだろう。

核保有国を念頭に置いた戦略的ミサイル防衛には効果がないどころか、そのミサイル防衛を乗りこえ、掻い潜るためのより強力なミサイルシステムの開発を招きかねないと核戦略家たちは考えてきた、と ワシントンのアドボカシー団体「軍備管理協会」のダリル・キンボール会長は語る。

11月16日に実験に成功したイージス艦搭載迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」は、短期的に見れば北朝鮮から発射される弾道ミサイルの防衛に役立つかもしれない。しかしこれにより、ロシアや中国は、米国からのミサイル攻撃に備えて自国の核戦力をさらに強化する必要性を痛感することになる、と専門家らはみている。

Daryl Kimball/ photo by Katsuhiro Asagiri
Daryl Kimball/ photo by Katsuhiro Asagiri

かつて米ロ両政府は、高価で安定を脅かすミサイル開発競争を防ぐために、1972年に締結したABM条約で、戦略的迎撃ミサイルを100基以下に制限する合意をした。この上限にそって、核兵器を保有する敵国からの攻撃があった際に、限定的な数の迎撃ミサイルを配備できるようになっていた。

米国の政策決定者らは、2002年にABM条約から脱退して以来、「ならず者」国家からの限定的なミサイルの脅威に対抗するための能力強化に力を注いできた。しかし、米国防総省は、地上型中距離防衛システムの一環としてカリフォルニア州とハワイ州に44基の迎撃ミサイルを配備したのみである。

他方で、北朝鮮は近年、弾道ミサイル能力を強化し、米議会は、新技術を開発・取得・実験・研究するためにミサイル防衛局に数十億ドルを投資してきた。2019年、トランプ政権の『ミサイル防衛見直し』は、「ならず者」国家の脅威から米国を防衛するために本土防衛能力を強化すべきと勧告した。

トランプ大統領は「我々の目標は、 いかなる場所からいつ米国にミサイルが発射されても感知し、破壊することを確実にすることだ。」と語った。このシステムは、陸上発射の大陸間弾道ミサイル(ICBM)でも、海上発射ミサイルや大陸間ミサイル、地対空ミサイルでも迎撃可能なものになるだろう。

11月16日、ミサイル防衛局は、飛翔してくる大陸間弾道ミサイル(ICBM)に対して、イージス艦搭載迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」による迎撃実験をおこなった。国防総省の現在の計画では、2030年までに世界各地の陸上と海上両方で1000基のミサイル防衛システムを構築・配備するというものだ。

ICBMと地対空ミサイルの迎撃能力を強化するために1億8000万ドル近い予算が割り当てられている。もし採用されれば、このアプローチは、北朝鮮やロシア、中国、イラン、その他の「ならず者国家」やその弾道ミサイルの脅威に対する防衛における重要な一歩となることだろう。

キンボール会長は、こうしたことを念頭に、バイデン政権は、その第一歩として、米国の本土ミサイル防衛能力は、ロシアや中国のより高度なミサイル能力を対象としたものではなく、第三者の脅威から防衛するためのものであることを明確にすべきだと述べている。

「しかし、そう明確にするだけでは不十分だ」とキンボール会長は記している。それは、ロシア政府が、自らが攻撃用核兵器をさらに削減する見返りとして、米国のミサイル防衛に制限をかけることを要求しており、水中魚雷や超音速滑空機、原子力推進巡航ミサイルといった大陸間を横断する新たな核運搬システムの開発は、米国のミサイル防衛を打ち破るためのものだと主張しているからだ。

中国はすでに、複数の弾頭を搭載したサイロ収納のICBMの数を増やすなどして、核による打撃能力を強化し、米国のミサイル防衛能力に対処し始めている。

Official portrait of Vice President Joe Biden in his West Wing Office at the White House, Jan. 10, 2013. (Official White House Photo by David Lienemann).
Official portrait of Vice President Joe Biden in his West Wing Office at the White House, Jan. 10, 2013. (Official White House Photo by David Lienemann).

キンボール会長は、「ロシアの核兵器にさらに制約をかけ、中国を軍備管理プロセスに参加させようとする米国の試みは、米国がSM3ブロック2A』などの自身の長射程ミサイル防衛能力について真摯に議論することを認めなければ、推進力を得ることはないだろう。」と指摘したうえで、「北朝鮮やイランからの限定的な弾道ミサイル攻撃に対して十分なミサイル防衛を展開することと、そうした防衛の量や場所、能力に制限をかけることに同意することが、相互に矛盾するものであってはならない。」と警告した。

しかし、バイデン政権がそうした方向に進むためには、米国のミサイル防衛に対するいかなる制約も認めないとする単純な考えから離れることが必要だ。

20年前、当時は上院議員だったバイデン氏は「地域の安定性を強化する戦域ミサイル防衛」の開発を支持する一方で、「ロシアや中国から脅威と見られてしまう」戦略ミサイル防衛システムには反対の立場だった。いまや、大統領になろうとしているバイデン氏は、バランスの取れたミサイル防衛戦略を採用する責任を負っているのである。(原文へ) |アラビア語 | ドイツ語 ||

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This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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