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スイスが「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク」に加わる

【ベルンIDN=ジャヤ・ラマチャンドラン】

世界的な「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク」(SDSN)が、25番目のネットワークにあたるSDSNスイスを立ち上げた。ベルン大学開発環境センターと、エコな開発を目指す「バイオビジョン基金」が中心を担う。多くのステークホルダーと対話の場を作り、持続可能な開発ソリューションを生み出し、2030アジェンダパリ協定(気候変動)の履行に関して政策決定者に助言を行うことを目的としている。

SDSNスイスは「社会・科学・政治が解決策を生み出すとき」と題する会議でもって、2月15日に正式発足した。このネットワークには、地域レベルで持続可能な開発目標(SDGs)推進に取り組むスイス全土の19機関が参加している。

Sustainable Development Solutions Network Logo

世界全体のSDSNは、2012年8月に国連の潘基文事務総長が設立を発表したグローバルなネットワークで、持続可能な開発に役立つ実践的な解決策を推進するために、世界の科学技術の知見を活用している。SDSNは国連機関や多国間金融機関、民間部門、市民社会と協働している。持続可能な開発に関するおよそ100人の世界のリーダーからなる「リーダーシップ評議会」がSDSNの理事会として機能している。

6つの大陸に広がっているSDSNネットワーク・プログラムは現在、700以上の加盟機関の知識や教育能力に依存している。そのほとんどが大学で、約25の国別・地域別のセンターに集約されている。国別日本では国連大学とIGESがホストしている:INPS)・地域別のSDSNは、持続可能な開発に向けた長期的な転換の道を探り、2030アジェンダをめぐる教育を推進し、地域レベルで取り組みを進めている。

SDSNスイス発足会議には、科学技術界、シンクタンク、政府、市民社会、企業、国際機関から約250人が集まり、スイス内外で持続可能性をめぐるこの国際的な合意(「2030アジェンダ」と「気候変動に関するパリ協定」)をどう効果的に履行するかについて話し合われた。

会議の全体会では、▽橋を架け解決策を生み出すツールとしてのSDSN▽スイスの「持続可能な社会」化を推進する▽持続可能な社会に向けたスイスの機会と責任、といったさまざまなテーマが議論された。また、経験やアイディアを交流させる「集団的ストーリー収穫」といった革新的な方法などを用いて、9つの分科会が同時並行的に開催された。

「2030アジェンダ」は、「持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラム」(HLPF)に対して、国連経済社会理事会(ECOSOC)の支援の下、パートナーシップの基盤を提供するために、自発的あるいは国が主導した政策見直しを実行するよう求めている。

リオ+20」は2012年に、その成果文書「我々の望む将来」において、HPLFの設置を勧告した。この普遍的な政府間ハイレベル政治フォーラムは、「持続可能な開発に関する国連委員会」の後継となるものだ。2012年以来、HPLFは5回の年次会合を開いている。2017年7月の第5回会合では「変化する世界において貧困を根絶し、繁栄を促進する」と題して、テーマごとの見直し、いくつかのSDGs履行の見直し、閣僚宣言の採択を行っている。

ローザンヌ・ビジネス・スクールのカトリン・マフ氏が発足会議の進行役を務めた。マフ氏は、SDSNスイスは単なる新しい取り組みというわけではなく、既存の取り組みの規模とスピードを増し、新たな繋がりを生み出すためのネットワークである、と強調した。

Dr. Katrin Muff

マフ氏は、共同議長であるオーシャン・デイヤー氏(気候問題スイスユース)、ウルス・ヴィースマン氏(ベルン大学)を紹介した。「健全な地球」を実現するうえでの平和と正義の役割を強調したデイヤー氏は、意味のある持続可能性は、問題をひとつひとつ解決していくということではなく、持続可能な世界が学際的な活動と協力を必要としているということなのだ、と語った。

ヴィースマン氏は、スイスにおける持続可能性の課題とSDGsへのコミットメントの歴史を概説した。SDGs17目標の間の相互関係に着目し、社会的な次元を考慮に入れながらそれらに協調的に対処するという課題を明らかにした。

ヴィースマン氏は、「持続可能性は各国の国内だけで達成できるものではなく、世界的な取組みを要するものです。」と指摘したうえで、持続可能性関連の政策を従来の部門別の取り組みから、政府や市民社会を含む全ての部門を巻き込んだ、持続可能な社会に向けた広範な動きへと移行することを呼びかけた。彼は、さまざまな利害関係者や知識の形態を結集する見込みのある構想の重要な役割を強調した。

デイヤー氏は、発足会議は、これまでになかったような連携を可能にし、変革的な解決策を促進し、意思決定者に助言を行うことを目的とする、と語った。

Guido Schmidt-Traub, SDSN Global/ Peter Lüthi, Biovision.

SDSNグローバルのグイド・シュミット=トラウブ氏は開会にあたって、持続可能な社会に向けた世界中の重大な問題を指摘した。このネットワークは知識を通じて持続可能な開発を促進し、政策決定者を後押しする解決策を提案することを目的とすると強調した。

シュミット=トラウブ氏は、SDSNスイスがグローバルなネットワークに加わったことを歓迎して、「SDSNスイスには、教育や訓練を向上させ、データに関する実践的な解決を含め、持続可能な社会への移行に向けた道を提示することで、国際的な役割をスイスが果たす後押しをするよう期待しています。」と語った。

太陽エネルギーを動力源とする有人固定翼機による世界一周飛行を始めて成功させた「ソーラー・インパルス基金」の創設者であるベルトランド・ピカール氏が基調講演を行った。ピカール氏は、この世界一周飛行実験を成し遂げたとき、「残りの世界は過去を生きている」と感じたと語った。また、今日の世界では、環境保護を求めて闘う人々と、経済や利益ばかりを追求する人々との間に「大きな溝」が生じている、と指摘した。

Bertrand Piccard. /Photo courtesy of NVP User:nvpswitzerland

産業や政治の言葉で話す必要があると主張したピカール氏は、「運輸や建設、産業からのCO2排出を半減させ、同時に雇用を創出し利益をもたらす解決策はすでに存在しています。」と指摘したうえで、「私たちにとっての出口は、とりわけ時代遅れで非効率な技術を刷新することによって産業のための大きなマーケットを創出することにあります。」と語った。

ピカール氏は、技術が持つ力強い牽引力について強調したが、現在の法的枠組みは「完全に時代遅れ」と感じている、と語った。ピカール氏は、この問題は政府レベルで是正すべきで、まずは、すべての実コストを含めると持続可能な発電が既に旧来型の発電よりも安価になっているという事実など、情報分野から着手すべきと提言した。

ピカール氏はまた、利益を生む形で環境を保護する1000の方法を集めることを目的とした「ソーラー・インパルス」の取り組み「#1000solutions」を紹介した。「気候変動を否定し、環境に何の共感も持たない人であっても、持続可能な社会には利益しかありません。」とピカール氏は語った。

スイス連邦環境局のシビル・アンワンデル氏は30年前のハイチでの経験について語った。非効率な政治体制が、教育の質の低下と貧困の蔓延につながり、結果として、重大な環境問題が引き起こされることがある、という。アンワンデル氏は、「ゴー・フォー・インパクト」(Go for Impact)の枠組みの事例を引き合いに、総体的なアプローチを用い、世界的な問題に対処する革新を推進する必要性を強調した。

ETHチューリッヒのニコラ・ブルム氏は、持続可能な開発の推進に関する自身の研究と起業家経験について語った。持続可能性を促進する社会に対して解決策をもたらすために、さまざまなステークホルダー間の協力を生み出す必要性を強調した。

Collective Story Harvesting” group: Defining Research Agendas. Photo: © Peter Lüthi, Biovision.
Collective Story Harvesting” group: Defining Research Agendas. Photo: © Peter Lüthi, Biovision.

ピカール氏は、続くパネル討論で、「善意をもった人々によって世界を変えることができると考えるのはナイーブだ。」と指摘し、その理由として、「彼らは世界を動かしている人々ではないからです。世界動かしているのは、自らビジネスを展開する金持ちか、再選したい政治家です。」と語った。これに対してブルム氏は、「だからこそ将来的に世界の指導者になる人々を教育することが重要なのです。」と応じた。(原文へPDF

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翻訳=INPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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|米国|難民申請した母親と7歳の娘が再会

【ニューヨークIDN=リサ・ヴィヴェス】

残酷かつ恐ろしい出来事の末に、米国に難民申請していた母親と娘がシカゴで再会を果たすことができた。7歳になったばかりの娘は、2017年11月以来、母親から数千マイル離れた場所に収容されていたのだ。

この親子の代理人であるアメリカ自由人権協会ACLU)の弁護士によると、長らく引き離されていた親子は、再会の瞬間、思わず走り寄って抱きしめ合いながら泣き崩れたという。

Map of USA
Map of USA

コンゴ民主共和国出身のエルさんは、「とてもつらい時期でした。こうして娘と再び一緒になれて感謝しています。私達親子を支援してくださった全ての方々に心からお礼を言いたい。」と語った。

ACLUの弁護士によると、コンゴ民主共和国から逃れたこの親子には、本国への帰還を恐れる信憑性のある理由があったという。しかし、親子が米国への入国に必要な書類を全て提出したにもかかわらず、入国管理当局は、少女が実の子ではないという誤解に基づいて母親を収監する決定を下した。

しかし、この女性が少女を虐待したり放置したりしたという証拠はなく、母親が収監されることになった理由についてもなんら説明がなされなかった。また、この少女(エス・エスちゃん)がエルさんの娘であるか否かを確認できるDNAテストも実施されなかった。結局のところ、エスさんがサンディエゴの施設から釈放され、DNA検査が実施されたのは、この問題に関する訴訟がおこされ、シカゴ・トリビューン紙をはじめとするマスメディアが大きく取り上げるようになってからだった。DNA検査の結果、エルさんとエス・エスちゃんは親子であることが証明された。

Lee Gelernt/ ACLU

ACLU移民の人権プロジェクトを担当しているリー・ゲラント氏は、シカゴ市内の集会で、「ACLUは、トランプ政権が、難民が米国に押し寄せるのを防ごうと、米国へ到達した難民家族を意図的に引き離していると確信しています。ACLUはエルさんとエス・エスちゃんのケースや、ブラジル人の母親と14歳の息子が今も遠く離れたテキサス州とシカゴで別々に収監されている事例など、数百にのぼる家族が不当に離れ離れになることを余儀なくされているとして、集団訴訟を起こしている。」

「これは実に恐ろしい事態であり、私達市民がこのような慣行を止めさせなければなりません。エルさんとエス・エスチャンを救出した事例は始まりに過ぎません。私たちはこれまでに数百人に上る子供たちが家族と引き離されている現状を見てきましたので、当局に対する訴訟を拡大しています。」と語った。(原文へ

翻訳=INPS Japan

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勢いを増すインドの核抑止政策

【バンガロールIDN=スダ・ラマチャンドラン】

「インドは心から核大国であること欲しているわけではないが、核抑止は今後数十年のインドの国家安全保障戦略の要であり続けるだろう。」こう語るのは、インド防衛分析研究所(IDSA)の特別研究員であるグルミート・カンワル准将である。

カンワル准将はその理由を近著『戦力の先鋭化:進化するインドの核抑止政策』の中で、「容認しがたい人命への損失と、前例のないような物質的損害を与えられる懲罰的な報復を伴う核攻撃で対抗する政治的・軍事的意志とハードウェアをインドが備えていると敵対国が信ずるかぎりにおいて、敵対国は抑止されるだろう。」と記している。

こうした認識を背景にして、インドは1月18日、核兵器搭載可能な大陸間弾道ミサイル(ICBM)である「アグニ5」の実験に成功した。

「同ミサイル5回目の実験であり、移動式発射機のキャニスターからの3回連続の発射実験だ。実験は5回とも成功した」とインド防衛省は声明で述べ、これはインド核抑止力の信頼性を確認するものだ、とした。

短距離の「アグニ1」「アグニ2」はパキスタンを念頭に置いたものだったが、「アグニ5」は「中国に対する抑止力をインドに提供する。」アグニ5は5000キロの射程を持ち、ほぼ中国全土に核弾頭を撃ち込むことが可能となる。

アグニ5は、繰り返し実験に成功したことで、間もなくインドの戦略軍に組み込まれることになるだろう。

防衛研究開発機構」(DRDO)の高官は、IDNの取材に対して、これは「核ミサイル能力近代化を目指すインドの取り組みにおけるさらなるステップとなる」ものであり、インドの「国家安全保障の基盤としての核抑止への信頼性は強化された。」と語った。

グローバルな核軍縮に対するインドの長年にわたるコミットメントのルーツは、1945年にさかのぼる。米国が広島・長崎に原爆を投下した際、マハトマ・ガンジーは「科学の最も邪悪な利用法だ」と非難した。核兵器なき世界への独立インドのコミットメントは、核兵器を非道徳的なものと見なすインドの見方に影響されている。

ブリティッシュ・コロンビア大学グローバル問題リュー研究所で「軍縮・グローバル・人間の安全保障」問題の責任者を務め、『約束の力:インドの核エネルギー検証』の著者であるM・V・ラマナ氏は、IDNの取材に対して、4つの大きな局面を通じたインドの軍縮政策の進化をたどって、第1期、すなわち、ジャワハルラル・ネルーが首相であった時期(1947~64)には、インドの核軍縮への関与は最も強かったと論じた。

India’s First Prime Minister – Jawaharlal Nehru/ Royroydeb – AFP, Public Domain

ネルー首相は「グローバルな核軍縮を前進させるために自分に何ができるかについて、真剣に関心を寄せ、核軍縮に長期的な影響をもつ取り組みに貢献しました。」とラマナ氏は語った。重要なことは、ネルー首相下のインドは核兵器開発を控えたという事実だ。

しかしこれは第2期(1964~74)に変化する。1962年に中印国境紛争に敗れ、1964年に中国がロプノールで核実験に成功すると、インドは核兵器開発を開始し、1974年には「平和的核爆発」を実行する。同時にインドは、この時期にグローバルな核軍縮を追求した、「あまり成果をもたらさない」「弱い試み」であったと、ラマナ氏は語った。

インド軍縮政策の第3期(1974~98)は、ポカランでの核実験に始まり、同所での核実験に終わる。インドの核兵器政策は「ゆっくりと動き始めた。」とりわけ、ミサイルの「プリットヴィー」「アグニ」の開発である。しかし、「核政策には自己抑制が組み込まれていた。」とラマナ氏は指摘した。

同時に、インディラ・ガンジー首相と、その息子で継承者でもあるラジブ・ガンジー氏は、グローバルな核軍縮に向けて努力した。ラジブ・ガンジー首相(当時)は、1988年の国連総会での演説で、時限的な「非核兵器世界と非暴力世界秩序を導く行動計画」を明らかにした。

最初の3つの時期と異なり、1998年に始まるインド核軍縮政策の第4期は、「核軍縮に向けた意義ある取り組みが存在しない」時期だとラマナは指摘した。ここで重要な点は、インドが、自国の核兵器開発を抑制する条約の支持を回避したことだ。

例えば、インドは2017年7月に歴史的な核兵器禁止条約を採択した国連の協議に参加しなかった。

Rajiv Gandhi/By Santosh Kumar Shukla – CC BY-SA 2.0

「起こりつつある軍縮についてほとんど触れないのは、非常に偽善的だ。」とラマナは論じる。というのも、それに核戦力の増強が伴っているからだ。

空軍力研究センター(CAPS、ニューデリー)上級研究員で、国家安全保障プロジェクトのリーダーでもあるマンプリート・セティ氏は別の意見だ。セティ氏はIDNの取材に対して、「インドの軍縮への願望は見せかけではありません。」「インドの軍縮へのコミットメントと、アグニ5の運用を含めた信頼性ある抑止の構築に向けた努力は、安全保障上の必要に関わる2つの柱です。」と語った。

「核保有した隣国」の存在を考慮に入れれば、インドには、現状において核抑止力を放棄する余裕はない。結果として、短期的にはインドは核抑止力を維持することになるが、長期的には、安全保障は核兵器なき世界によって最もよく実現されることを理解している。2つの間に矛盾はない、とセティ氏は論じた。

セティ氏によれば、多国間で協議され、普遍的で、検証可能な軍縮合意に世界が達しない限り、インドの抑止力追求は安全保障を実現する堅実な方法であるという。とりわけ、国連安保理の5常任理事国(英国・フランス・ロシア・中国・米国)の戦略における核兵器の重要性が著しく高まっている現状ではそうだ。

米国のドナルド・トランプ大統領の「核態勢見直し」は、「極端な状況」、場合によっては、インフラや民間人への非核攻撃への対応も含めて、核兵器使用に米国が以前にもまして前向きであることを示した。

「これはインドや中国のような国々に悪いシグナルを送ることになりました。大規模な通常兵器能力を持つ米国のような国がより使用可能な核兵器に投資するとすれば、インドや中国の軍事戦略家らも同じような考えに傾くということになります。」とラマナ氏は指摘した。

今日インドでは、核弾頭や運搬手段の近代化を求める声が強くなってきている。

インドが、長く保ってきた「先制不使用」政策を放棄するかもしれない兆候も強まってきている。もしそうなればインドは、同国の都市がパキスタンの核攻撃にさらされないようパキスタンを完全に非武装化すべく、パキスタンに先んじて核兵器を使用する意志を一層固めることになるだろう。(原文へ

INPS Japan

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国連条約の署名は、核兵器なき世界に向けた重要なステップ

|視点|核兵器禁止条約のあとに来るもの(スージー・スナイダーPAX核軍縮プログラム・マネージャー)

|視点|トラテロルコ条約から核兵器禁止条約へ(ホルヘ・A・L・レチュガOPANAL研究・コミュニケーション責任者)

【メキシコIDN=ホルヘ・アルベルト・ロペス・レチュガ】

2月2日、米国政府は、国家安全保障における核兵器の役割を拡大する戦略を盛り込んだ2018年の「核態勢見直し」(NPR)を発表した。今回のNPRでは、米国の核戦力を近代化するために費用を(現在の国防総省予算の)3%から6.4%にまで倍増する必要があるとしている。

これはつまり、今後30年間で1兆ドル以上の投資を意味する。また今回のNPRは、「低出力オプションをも含む柔軟な米国の核オプションを拡大することは、地域侵略に対する信頼性のある抑止力の維持にとって重要」であり、これは「核のハードル」を引き上げる戦略であると記している。

Jorge Alberto López Lechuga/ OPANAL
Jorge Alberto López Lechuga/ OPANAL

2018年NPRは、低出力の核兵器を含めることで、起こりうる攻撃(非核攻撃の場合も含む)に対する対応能力が強化され、「潜在的な敵対国が限定的な核のエスカレーションにより優位になりうると考えないよう保証するのを助け、核使用の可能性を低減する」としている。

問題は、低出力核兵器への依存が増す限り、その影響が「容認可能」なものとみなされるようになり、核兵器使用の可能性が増してしまうことにある。低出力核兵器は、1945年に使用された原子爆弾よりもはるかに強力なものだ。

今回のNPRは「2010年の NPR 以来、世界的な脅威の状況は明らかに悪化してきた。」と指摘している。また、「主要な通常兵器、化学、生物、核兵器、宇宙、サイバーの脅威および暴力的な非政府主体を含めて、これまでになかった範囲と種類の脅威が存在しており、この変化は増大する不確定性とリスクを生み出した。」そして、「それこそが、米国が政策と戦略を策定し、核戦力の持続と交代を開始した理由である。」と述べている。

「不確実性」のない世界を想像することは難しいことではない。しかし、それを実現することは不可能だ。実際には、不確実性のない世界を手にすることは、核兵器のない世界の実現よりも、現実性が薄い。

こうした「前例のない」21世紀型の脅威が存在するとすれば、20世紀型の戦略、とりわけ、人類を脅かす戦略に依存しながらそうした脅威に直面することは、ますます事態を悪化させることになるのではないか。もし私たちが、脅威や不確実性が増した世界に住んでいるとするのならば、そのような世界に核兵器があってはならない。誰が手にしているのであれ、核兵器の存在そのものが、核兵器保有国を含むすべての人々にとって、脅威となっているのだ。

核兵器の使用に関する仮定の中で、核兵器を保有する国々は、国家の存在がかかっている場合、とりわけ一般的には核攻撃の可能性に直面した場合、核兵器を使用する必要性に通常は言及することになる。しかし2018年のNPRはさらに多くのシナリオを盛り込み、核兵器使用をより容認可能なものにしている。

もちろん、問題は米国の核兵器に限られたものではない。他に核保有国は8カ国あり、米国の核戦力がその中で恐らく最強であるために、2018のNPRに対抗してこれらの国々が「核のオプション」を強化する方向に流れないとも限らない。

「核兵器なき世界」は望ましいが現時点では非現実的という考え方が、依然として存在する。しかし、中にはそうは考えない国々もある。

51年前の1967年2月14日、ラテンアメリカ・カリブ海地域諸国はこうした考え方に対抗して、ラテンアメリカ・カリブ海地域核兵器禁止条約(トラテロルコ条約)によって、同地域における核兵器の法的拘束力ある禁止を打ち立てた。2018年2月14日は、トラテロルコ条約の署名開放51周年にあたる。

トラテロルコ条約によってつくられたモデル(=非核兵器地帯)は成功をおさめ、他の4つの地域で模倣された。南太平洋(ラロトンガ条約)、東南アジア(バンコク条約)、アフリカ(ペリンダバ条約)、中央アジア(中央アジア非核兵器地帯条約)、モンゴル(同国の非核地帯化宣言は、国連総会決議55/33Sの採択という形で国際的に承認されている)である。今日、114カ国が、非核兵器地帯を設置した条約の加盟国・署名国になっている。

2017年7月7日、国連において、122カ国が核兵器禁止条約を採択し、すべての国家に対して署名開放された。いわゆる「核禁条約」は、とりわけ、「核兵器あるいはその他の核爆発装置の開発・実験・生産・製造・取得・保有・備蓄」を禁じている。さらに、「核兵器あるいはその他の核爆発装置の使用あるいは使用の威嚇」も禁じている。

Nuclear Weapon Free Areas/ UNODA
Nuclear Weapon Free Areas/ UNODA

核禁条約は、50カ国が批准すると発効する。2017年9月20日の署名開放以来、5カ国(ガイアナ、タイ、バチカン、メキシコ、キューバ)が批准を済ませている。少ない数に見えるかもしれないが、国連加盟国の63%にあたる122カ国が採択に賛成したという事実を覚えておいてほしい。つまり、世界の多数の国々が非核兵器世界を前進させるべきだと考えていると言えるだろう。

核保有国とその同盟国が核禁条約に反対しているのは驚くには当たらない。これらの国々は、核兵器を保有する国々の参加なしに核禁条約は効果的なものにならないと主張している。しかしそこで疑問が出てくる。もしこれらの国々が本当にそう考えているのなら、なぜそこまで熱心に反対したのだろうか? おそらくそれらの国々は、この条約が、彼らの主要な力の源泉(=核兵器)に悪の烙印を押すことに寄与すると認識しているのだろう。

2018年のNPRは、核禁条約は「国際安全保障環境の転換という前提条件抜きに核兵器の廃絶をまったく非現実的に期待する傾向によって炊き付けられた」と述べている。NPRですら核禁条約に言及したという事実そのものが、その意義を明らかにしているのだが。

核禁条約の支持者は、核兵器の廃絶に「国際安全保障環境の転換という前提条件」が必要だとの見方に同意しない。むしろ彼らは、核兵器の廃絶こそが国際安全保障の望ましい「転換」であると見なしている。

核禁条約でもって直ちに核兵器の廃絶がもたらされるわけではないことは明白だ。しかし、核兵器禁止が法的に定立される前に「核兵器なき世界」が達成されると考えるのも非現実的だ。核兵器の禁止に関する国際規範は、「核兵器の完全廃絶に向けた」必要なステップなのだ。

Alfonso Garcia Robles/ Marcel Antonisse - [1] Dutch National Archives, The Hague, Fotocollectie Algemeen Nederlands Persbureau (ANEFO), 1945-1989, CC BY-SA 3.0 nl
Alfonso Garcia Robles/ Marcel Antonisse – [1] Dutch National Archives, The Hague, Fotocollectie Algemeen Nederlands Persbureau (ANEFO), 1945-1989, CC BY-SA 3.0 nl

核兵器を非正当化するためにも核兵器を禁止する必要がある。かつて、生物兵器や化学兵器の場合もそうであった。核禁条約を支持するどの国も、条約自体が目的などとは言っていない。それはひとつの前進であって、最終ステージではないのだ。

トラテロルコ条約の交渉を成功に導いたアルフォンソ・ガルシア・ロブレス氏(1982年のノーベル平和賞受賞者)の言葉から、核禁条約の教訓をひとつ考えてみたい。「ラテンアメリカの条約で打ち立てられたシステムは、いかなる国も他国に対してそうした非核地帯への加盟を義務づけることはできないが、一方で、非核地帯への加盟を望む国々が、自国領土から核兵器を完全に追放する体制に従おうとするのを止めることもできない、ということを証明した。」

いかなる国も、国家主権の自由な行使として、人類を危機にさらす安全保障体制を拒否する決定を下そうとする他国の意思を妨げることはできない。トラテロルコ条約がそうした道への最初の成功のステップだとすれば、核兵器禁止条約はそれをさらに積み重ねるものだと言えよう。(原文へ

翻訳=INPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

ホルヘ・A・L・レチュガ氏は、ラテンアメリカ・カリブ海核兵器禁止機構(OPANAL)研究・コミュニケーション責任者。この記事における見解は、必ずしもOPANAL及びその加盟国の見解を反映したものではない。

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【ベルリン/東京IDN=ラメシュ・ジャウラ】

国際社会が核兵器のない世界に向けて道を切り開こうとする中、2020年核不拡散条約(NPT)運用検討会議第2回準備委員会会合(4月)と核軍縮に関する国連ハイレベル会合(5月)が今後の焦点となる。

核兵器禁止条約が2017年7月に採択されて以来、「これらは、核保有国や核依存国も交えての初の討議の場となるものです。」と著名な仏教哲学者である池田大作氏は述べている。池田氏は、世界192カ国・地域に1300万人の会員を擁する創価学会インタナショナルの創立者・会長である。

ICAN
ICAN

2017年の核兵器禁止条約交渉に参加しなかった9つの核保有国には、安全保障理事会の5つの常任理事国(米国・ロシア・英国・フランス・中国)と、いわゆる「核クラブ」の4つの非公式メンバーであるインド・パキスタン・北朝鮮・イスラエルが含まれる。

その他交渉に参加しなかった国としては、とりわけ、安全保障同盟の一環として米国の核の傘を享受している日本や韓国、オーストラリア、北大西洋条約機構(NATO)の加盟国が挙げられる。唯一の例外がオランダだが、核兵器禁止条約の採択に際して反対票を投じている。

しかし、「光明が見えなかった難題に、今回の条約が突破口を開きました。」「しかも、被爆者をはじめとする市民社会の力強い後押しで実現をみたのです。」と池田会長は、2018年の平和提言「人権の世紀へ 民衆の大河」で述べている。

核兵器を禁止する必要性について意識を高める上で市民社会が果たした貢献が認められ、2017年のノーベル平和賞は核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)に授与された。ICANは条約に基づく核兵器禁止の実現に向けて努力を続けているNGOの連合体である。

Photo (left to right): The Norwegian Nobel Committee Chair Berit Reiss-Andersen; ICAN campaigner Setsuko Thurlow who survived the bombing of Hiroshima as a 13-year-old; ICAN Executive Director Beatrice Fihn. Credit: ICAN
Photo (left to right): The Norwegian Nobel Committee Chair Berit Reiss-Andersen; ICAN campaigner Setsuko Thurlow who survived the bombing of Hiroshima as a 13-year-old; ICAN Executive Director Beatrice Fihn. Credit: ICAN

2018年の平和提言は、1983年以来毎年発表されてきた平和提言の第36回目にあたる。とりわけ、統合的な人権を中心としたアプローチが、核の脅威を含むグローバルな問題を解決する鍵であることが今年のメインテーマになっていることから、この提言の重要性は際立っている。

池田会長は、このことを視野に、今年が世界人権宣言採択70周年であることを踏まえて、一人一人の生命と尊厳(つまり、あらゆる人間が本来的に貴重でかけがえのないものであるという事実)を中心に据える必要性を強調している。

同時に、池田会長は核兵器禁止条約の採択を歓迎し、「核兵器のない世界に向けた建設的な議論が行われるよう」強く呼びかけている。

池田会長は、4月23日から5月4日までジュネーブで開かれるNPT運用検討会議第2回準備委員会会合において、「2020年のNPT運用検討会議に向けて各国が果たすことのできる核軍縮努力について方針を述べる」ことが望ましい、としている。

池田会長はさらに、核兵器禁止条約の7項目にわたる禁止内容について、実施が今後検討できる項目を表明することが望ましい、としている。例えば、「移譲の禁止」や「新たな核保有につながる援助の禁止」は、NPTとの関連で核保有国の間でも同意できるはずだ、と主張している。

池田会長は、「国際法は、条約のような”ハード・ロー”と、国連総会の決議や国際的な宣言などの”ソフト・ロー”が積み重ねられ、補完し合う中で実効性を高めてきました。」と論じている。

また軍縮分野でも、包括的核実験禁止条約(CTBT)において、条約に批准していない場合に個別に取り決めを設けて、国際監視制度に協力する道が開かれてきた事例がある、と池田会長は述べている。

池田会長は、核兵器禁止条約においても、署名や批准の拡大を図る努力に加えて、宣言や声明という形を通じて、各国が実施できる項目からコミットメント(約束)を積み上げていくべきだ、と論じている。

池田会長はさらに、「何より核兵器禁止条約は、NPTと無縁なところから生まれたのではありません。条約採択の勢いを加速させた核兵器の非人道性に対する認識は、2010年のNPT運用検討会議で核保有国や核依存国を含む締約国の総意として示されていたものに他ならず、核兵器禁止条約は、NPT第6条が定めた核軍縮義務を具体化し、その誠実な履行を図っていく意義も有しているからです。」と述べている。

核軍縮の停滞に加え、核兵器の近代化が進み、拡散防止の面でも深刻な課題を抱える今、「NPTの基盤強化」と「核兵器禁止条約による規範の明確化」の相乗効果を図るべきだと池田会長は述べている。

池田会長は、2020年NPT運用検討会議に向けて日本が核軍縮の機運を高める旗振り役になることを望んでいる。「日本は、5月のハイレベル会合を機に核依存国の先頭に立つ形で、核兵器禁止条約への参加を検討する意思表明を行うことを強く望むものです。」「日本は、被爆国として道義的責任から目を背けることは決してできないはず」と訴えている。

SGI会長は、禁止条約の基底には、どの国も核攻撃の対象にしてはならず、どの国も核攻撃に踏み切らせてはならないとの、広島と長崎の被爆者の切なる思いが脈打っている、と指摘している。

これに関連して池田会長は、核兵器禁止条約の採択にあたって「思い出したくもない過去を語り続ける努力は、間違いでも無駄でもなかった」との感慨を述べた広島の被爆者サーロー節子さんに触れている。

Applause for adoption of the UN Treaty Prohibiting Nuclear Weapons on July 7, 2017 in New York. Credit: ICAN
Applause for adoption of the UN Treaty Prohibiting Nuclear Weapons on July 7, 2017 in New York. Credit: ICAN

池田会長は、2020年NPT運用検討会議第1回準備委員会(ウィーン、2017年5月2~12日)で日本政府が「非人道性への認識は、核兵器のない世界に向けてのすべてのアプローチを下支えするもの」と強調したことに改めて着目し、したがって、「日本の足場は、『同じ苦しみを誰にも味わわせてはならない』との被爆者の想いに置かねばならない。」と指摘している。

池田会長は、核兵器禁止条約の意義は一切の例外なく核兵器を禁止したことにあるとして、市民社会の連帯をさらに広げていくことを訴えている。

条約では、2年ごとの締約国会合や6年ごとに行う検討会合に、条約に加わっていない国などと併せて、NGOにもオブザーバー参加を招請するよう規定されている。

池田会長の見解では、これは、世界のヒバクシャをはじめ、条約の採択に果たした市民社会の役割の大きさを踏まえたものだ。同時に、核兵器の禁止と廃絶は、すべての国々と国際機関と市民社会の参画が欠かせない“全地球的な共同作業”であることを示した証左である。

また、条約の前文では、平和・軍縮教育の重要性が強調されている。この点は、SGIが、国連での交渉会議に提出した作業文書や交渉会議における市民社会の意見表明のなかで繰り返し訴えてきたことだ。

SGI会長は、「核兵器の使用が引き起こす壊滅的な人道上の結末に関する知識が、世代から世代へと継承され、維持されるためには、平和・軍縮教育が不可欠であり、それが禁止条約の積極的な履行を各国に促す土台ともなると考えるからです。」と述べている。

SGIはそこで、核兵器禁止条約の早期発効と普遍化の促進を目指し、「核兵器廃絶への民衆行動の10年」の第2期を今年初旬から開始した。これは、池田会長が2006年8月に発表した国連提言のなかで呼び掛けた、「核兵器廃絶への民衆行動の10年」の活動を踏まえたものだ。

「核兵器廃絶への民衆行動の10年」は、戸田城聖第2代会長の「原水爆禁止宣言」50周年を機に2007年9月に開始した。

池田会長は、核兵器禁止条約の普遍性を高めるには、各国の条約参加の拡大を市民社会が後押しするとともに、グローバルな規模での市民社会の支持の広がりを目に見える形で示し続けることが、大きな意義を持つとの見解だ。

SGI会長は、ICANや平和首長会議など多くの団体と協力する形で、核兵器禁止条約を支持する各国の自治体の所在地を国連のシンボルカラーである青の点で示した世界地図を制作したり、さまざまなNGOから寄せられた条約支持の声を集めて幅広く紹介し、国連や軍縮関連の会議の場で発信していくことを提案している。

同様に、青年や女性、科学界や宗教界など、あらゆる角度から連帯の裾野を広げ、各国の条約参加を呼び掛けるとともに、条約の発効後は、非締約国に締約国会合へのオブザーバー参加を、市民社会として働きかけることを提案している。

UN General Assembly Hall/ Wikimedia Commons
UN General Assembly Hall/ Wikimedia Commons

池田会長は、ICANや平和首長会議などが築いてきた世界的なネットワークが、核兵器廃絶を求めるグローバルな民意を示していると確信している。

「その民意の重みが、やがては核保有国と核依存国の政策転換を促し、核時代に終止符を打つことにつながっていくと、私は確信してやみません。」とSGI会長は述べている。(原文へPDF

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タイの露天商を「持続可能性」の観点から見る

【カオサン(バンコク)IDN=カリンガ・セレヴィラトネ】

持続可能な開発の問題が語られるとき、タイ、そしてアジアの全域で見られる、街頭で生計を立てる多くの露天商たちのことが触れられることはほとんどない。

街頭から露天商を一掃しようとして失敗したバンコク都知事の試みのように、彼らの商売を阻止しようとする動きですら、メディアで触れられることはない。

Map of Thailand
Map of Thailand

「露天商のおかげでバンコクに観光客が集まるようになっています。露天商はタイの生活の一部であり、観光客もそれを体験したがっています。安くておいしいストリート・フードを求めてタイにくる観光客もいるのです。」と、観光コンサルタントのパッタマ・ヴィライラートさんは語った。

ヴィライラートさんは、「例えば多くの中国人観光客は、バンコクを旅した後で、急速に広まるソーシャルメディア上に露天や屋台の写真をアップし、それを見た人々が、食べに行って写真を撮り、同じソーシャルメディアにアップするという流れができています。つまり、露店や屋台体験が旅の醍醐味になっているのです。」と語った。昨年、実に1000万人もの中国人観光客がタイを訪れた。

CNNが、バンコクが世界でもっとも素晴らしい食べ歩きの町だと報じた翌月の昨年4月、バンコク都庁は、衛生・安全・秩序の観点からバンコクの街頭から露天商を一掃すると発表した。

当時バンコク都知事の首席顧問を務めるワンロップ・スワンディー氏は、「露天商はあまりにも長い間、歩道を占拠してきました。合法的に食べ物やその他の商品を売るスペースを市場ですでに提供しているので、計画は粛々と進めていきます。」と語っていた。

昨年6月、バンコク市内50地区の露天商の代表らがプラユット・チャンオチャ首相に対して、生計を守るために街頭での商売を続けることを認めるよう求める嘆願書を提出した。「ネイション」メディアグループによれば、指定区域にバンコクの露天商を閉じ込める政府とバンコク都庁による措置はあまりに厳しすぎると訴えているという。

今回の禁止措置から除外されているエリアのひとつが、チャオプラヤ川に接している歴史地区で、バックパッカーたちが集うカオサン地区である。この地区は、もう何十年にもわたって、安宿と屋台で、節約志向の旅行者を引き寄せてきた。

今日、欧米人にとどまらずアジア各国からの旅行者も露天文化に惹きつけられている。日が落ちると、カーニバルのような雰囲気が漂い、街角では折り畳み式の机や椅子が拡げられて、交通は事実上遮断される。すでに街頭にテーブルや机を広げている近所のホテルやパブに加えて、服や靴、バッグ、お土産品などを売る数多くの「テント」屋台が歩道に広げられる。

露天商は、高等教育を受けていないタイ国民の多くにとって主な生計手段となっており、しばしば農村部から移住してきた都市部の貧民層にとって大きな収入源になってきた、と長年指摘されている。

SDGs Goal No. 1
SDGs Goal No. 1

ここカオサンの露天商たちは、食べ物を売っている店のある土地や店のオーナーに対する場所代や、警察への賄賂、非公式の地元組織に対する代金など、何らかの形で毎月の支払いをしている。

移動式屋台で長年麺類を売っている40代の露天商ナットさんはIDNの取材に対して、移動店舗は警察に対して支払いをしていない、と語った。「もし私の店が固定の店だったら支払いをしなくてはなりません。私には、ここでの稼ぎで食べさせていかなければならない家族がバンコクにいます。」と語った。しかし、「トット」と名乗ったジュース売りの男性は、「この仕事をするには毎日支払わないといけません。カネを出さないと警察は私を逮捕します。毎日ここに来て、カネを取っていくのです。」と不満を漏らした。

ある露天商(ビルマ人従業員によると、カンボジア出身だという)は、店を24時間開けていると語った。彼は名前を明かさなかったが、「私は夜の店番。朝になると姉が交代に来ます。」と説明した。また彼は、警察にカネを渡さないといけないかどうかは言いたくない様子だったが、商売をするためには「誰か」に支払いをしないといけない、と話してくれた。

この男性は、ミャンマー出身の8人の若い男女を店員として雇っている。彼は、5張のテントの下に厨房と客用のテーブルと椅子を広げている。これらすべてのものは、月曜の朝にトラックの荷台に詰め込まれ、火曜の夕方には路上に戻される。露天商は月曜に商売をしてはいけないことになっているからだ。

露天商と話をしてみると、服や靴、バッグといった、食べ物以外のものを売る人々はミャンマー出身者が多く、一部にはネパール人もいるようだ。ほとんどが20代か30代で、取材に対して名前は言いたがらなかった。鞄を売っていた30代のビルマ人女性は、彼女の「ボス」は、1日あたり350バーツ(約10ドル)の給料と、それに加えて、売上1000バーツあたり2%の歩合を支払っていると語った。

クマールと名乗った28才の男性は、元はネパール出身だが、マンダレイから来たミャンマー市民だという。「国境でパスポートを破り捨ててここで働いていいます。ここにいるのは合法です。」と彼は主張する。「マンダレイには仕事がありませんし、そこで飢えるわけにはいかない(のでタイに来ました)。ボスからは月に1万5000バーツ(約425ドル)もらえます。これは自分の店ではありません。この店を維持するためにボスが代わりに警察に払ってくれています。…(支払っているのは)自分ではありません。」

タイ当局が、主にミャンマー、カンボジア、ラオス出身の、露天商やレストランなどで働く1600人以上の不法滞在者を逮捕したとの報道が1月にあった。新法によって彼らは5年以下の懲役・10万バーツ(約2800ドル)以下の罰金に処せられる可能性がある。違法移民の雇用者にも高い罰金が科せられる。

20年以上もミャンマー移民とともに活動しているがタイ人のあるソーシャルワーカー(匿名を希望)は、「タイでは約400万人のミャンマー人が働いているが、そのうち合法に働いているのはわずか20万人にすぎません。」と指摘したうえで、「彼らは国境地帯でブローカーにカネを払って労働許可証を得ています。タイのブローカーたちは1人あたり数千バーツも取るのです。」と説明した。

また、「タイ語が話せる限り、彼らは滞在を認められ、タイ人の方も気にしません。」「こうした移民たちは、ほとんどすべてのことが違法になされる文化から来ていますから、誰かにカネを払って何かを得ようとすることが悪いこととは思っていません。」と説明した。

彼女は、街頭の商取引から得る持続可能な収入という点から見れば、(たいていは食べ物を売っている)こうしたタイの露天商には問題がないとの見解だった。

One of the main streets in Yasothon was turned into a street food market during the Yasothon Rocket Festival/ By Takeaway - Own work, CC BY-SA 3.0
One of the main streets in Yasothon was turned into a street food market during the Yasothon Rocket Festival/ By Takeaway – Own work, CC BY-SA 3.0

「実際、これらの移民は、地元の人々にとって露天商をより収益性が高く持続可能なものにする上で貢献しているのかもしれません。なぜなら、不法移民は高い収入の仕事には就けない…だから彼らは、ボスに協力して、屋台を営んだり、厨房で働いたりしているからです。」と匿名希望のソーシャルワーカーは語った。(原文へ)  

翻訳=INPS Japan

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「世界の終わりの日」までの核軍拡競争が始まる(セルジオ・ドゥアルテ元国連軍縮問題担当上級代表、パグウォッシュ会議議長)

【ニューヨークIDN=セルジオ・ドゥアルテ

まるで偶然であるかのように、国際社会は、「世界終末時計」の針が真夜中に近づけられたという決定と、米国政府による2018年核態勢見直し(NPR)のニュースをほぼ同時に知ることになった。

これらは、非常に異なった世界観をベースにしているが、いずれも安全保障上の懸念に対応したものだ。前者は、核兵器による目前の危険とその廃絶の必要性を印象的な形で突きつけるものであるのに対して、後者は、国際的な緊張に対応する能力を持つ核兵器の役割と、既存の核戦力をより柔軟かつ多様に運用することで、そうした危機を回避する役割について強調したものだ。

Image credit: Bulletin of the Atomic Scientists
Image credit: Bulletin of the Atomic Scientists

世界終末時計は、核兵器を管理し最終的には禁止する各国ごとの措置や国際的な措置こそが、紛争時の核使用を実際に防ぐための最善の保証であるとして要求する、重大かつタイムリーな警告になっている。

多くの識者は、2018年核態勢見直しは、核兵器使用の可能性を高めるとともに、他の核保有国が、これを攻撃的な態勢とみなし、対抗手段として自らの核戦力強化を正当化する口実を与え、新たな核軍拡競争を導きかねないものと見ている。

核態勢見直しの中心的な議論は、核兵器は核・非核攻撃を抑止する重要な役割を果たしており、また今後もそうであり続けるというものであり、現在、および、予見しうる将来において潜在的な敵対国による攻撃を予防するために必須であるというものだ。また、米核戦力が有する相互補完的な役割としては、①同盟国・パートナー国への安心の供与、②抑止が失敗した場合の米国の目標達成、③不確定な将来に対して防衛手段を講じる能力が挙げられている。

2018年核態勢見直しによれば、米国の核戦力の抑止能力は、核オプションの柔軟性と多様性を向上させることで強化できるとされている。こうした核オプションには、限定的な核のエスカレーションにおいて潜在的な敵対国が有利な立場に立つことを阻止する低出力の核兵器も含まれている。

この新たな核態勢に対しては、より小規模で低出力の核装置は、核・非核兵器の境界線を曖昧にして、核使用のしきいを下げてしまうとの批判が出されている。さらに、どんな規模のものであっても、核兵器がひとたび戦争で使用されることがあれば、エスカレーションのサイクルが限定的なものにとどまる保証はない。

Nuclear Posture Review/ US Department of Defense

加えて、2018年核態勢見直しは、米国に対する非核攻撃に対応するものとして核兵器の使用を予定し、その先制使用を排除していない。これでは、現在は非核兵器国でも、核兵器を取得することで国家目的を達成でき、核保有国からの攻撃を予防できると確信すれば、核兵器を取得する方向に流される国々が出現するかもしれないと論じることも可能だ。

国連の創設以来、国際社会は核紛争の恐るべき見通しに対処すべく忍耐強い努力を積み重ねてきた。それは、1946年の国連総会決議第一号の目的でもあったが、残念なことに、具体的な成果を出すには至らなかった。

その後数十年間は、一部の国々が核能力を開発する一方で、大多数の国々が、核兵器を取得しないとの法的拘束力がある約束を受け入れ、国際関係に本来備わっている不確実性と予測不能性に対する防護策として、信頼醸成措置と協調的安全保障の取り組みに対して信頼を置くという流れが存在した。

米国とロシアは、互いに条約違反を非難しつつも、協議を通じた二国間措置によって、冷戦期に蓄積してきた恐るべき量の大量破壊兵器を相当程度削減することに成功してきた。

国連のアントニオ・グテーレス事務総長は最近、新戦略兵器削減条約(新START)によって確立されたレベルにまで米ロ両国が戦略核戦力を削減してきたことを称え、「核軍縮や核不拡散、軍備管理における努力がいまほど重要な時はありません。」と強調した。

Antonio Guterres/ DFID - UK Department for International Development - CC BY-SA 2.0
Antonio Guterres/ DFID – UK Department for International Development – CC BY-SA 2.0

米ロ両国が保有する核弾頭数の合計は、現在史上最低のレベルにある。核兵器の完全廃絶という長きにわたる目標を達成するためにも、これはさらに措置を進めていくべき賞賛に値する取り組みだ。

グテーレス事務総長はさらに、米ロ両国に対して「さらなる戦力の削減につなげるために必要な対話を行い、多国間の軍縮問題において歴史的なリーダーシップを発揮する」よう求めた。地球上でもっとも多くの軍備を保有している米ロ両国による強力なリーダーシップは、さらなる軍縮の取り組みと、世界全体の集合的な安全保障のためにも肝要である。

軍縮分野における現在の法律文書は、核兵器が完全に廃絶されるまでは核兵器の保有を認めるというものであり、この目的を達成するための行動を呼びかけている。しかし、この基本的な前提は、この法律文書が(核兵器国に対して)この恐るべき破壊手段を独占的かつ無期限に保有することを正統化しており、その廃絶に向けた特定の措置を先延ばしし続けることを容認しているという概念が広がる中で誤解されてきた。

明確な時限を伴った核軍縮に向けた強力かつ法的拘束力のある約束がないかぎり、核保有国は、少なくとも数十年先までは核兵器を保有し続ける権利があると考える一方で、自らの安全を確実にするために他者には同じ手段の保有を拒む状況が続くだろう。

核保有国の数が増えることで、国際の平和と安全が危機にさらされることについては疑いの余地がない。しかし、国際社会の圧倒的多数が、いかなる主体が核兵器を保有しているにせよ、核兵器の存在そのものが平和と安全保障への真の脅威だと繰り返し主張している。不平等な基準は決して永続化しえない。

このことは、核兵器の保有を、核兵器を恣意的な日付で既に取得していた5カ国に限定した核不拡散条約(NPT)が発効して以来、明白なものとなった。結果として、他の4カ国(インド・パキスタン・北朝鮮・イスラエル)が自力で核兵器を開発し、数少ない国々が、同じ道をたどらないように説得を受けてきた。

また別の所では、防衛取極めの不確実性から自らを解放するために独自の核戦力を持つことを大っぴらに主唱する世論も一部には存在する。事実、核抑止の強調はそうした感情の拡大を促してきた。しかし、ほとんどの非核兵器国が、自らの安全保障は核兵器を取得することによっては実現できないと固く信じている。

1945年の第二次世界大戦終結から数十年にわたり、数多くの多国間取極めが、核兵器、化学兵器生物兵器という大量破壊兵器の野放図な拡散の予防に成功してきた。しかし、その重要性にもかかわらず、2つの条約がまだ発効していない。

ひとつは、1996年の包括的核実験禁止条約(CTBT)である。カギを握る8カ国が依然として署名・批准を拒んでいるが、これが、この条約の発効要件となっているのである。この8カ国のなかで北朝鮮だけが、国連安保理決議に抵抗し、その制裁が繰り返され強化されているにも関わらず、21世紀になっても核実験を実施している。その他すべての国々は、核実験の自発的な一時停止を遵守している。

2018年核態勢見直しによれば、米国はCTBTの批准を追求しないが、CTBT準備委員会や、国際監視制度、国際データセンターを引き続き支持すると表明している。その他の未批准・未署名国は、その意思をこれほど明確には示していない。いずれにせよ、こうした(CTBTの発効を妨げている)国々を引き込むために主要な核保有国のリーダーシップが、明らかに必要とされている。

まだ発効していないもう一つの国際法は、核兵器の完全廃絶に導く核兵器禁止条約である。大多数の国々によって2017年7月17日に採択されたが、署名・批准のペースは予想されたよりも遅い。これは、核兵器国やその同盟国からの積極的かつ強固な反対にあっていることが一因と思われる。

ICAN
ICAN

これらの国々は核兵器禁止条約を否定するとともに、同条約が既存の核不拡散体制内部での緊張をさらに悪化させ、核兵器のさらなる拡散を予防する取り組みを損なうナイーブかつ不毛なジェスチャーに過ぎないと印象付けようとしてきた。

一方核兵器禁止条約の推進派の方はどうかというと、これはNPTと何ら矛盾するものではなく、NPT第6条における(軍縮)義務の履行に道筋を与えるものだと主張している。核兵器禁止条約はまだ広範な加盟を得ているわけではないが、国際社会の大多数の国々の具体的な核軍縮措置に対する強力な支持表明となっている。

もっとも強力な軍備を保有する国々や、自らの管理下にない兵器に安全保障を依存している国々の主流メディアは、軍隊の強化を通じて外の脅威に対抗する必要性についてひっきりなしに記事や論評を流しているが、平和への取り組みを報じることはめったにない。戦争の文化が平和の文化を乗っ取ってしまったかのようだ。核保有国は現在、核軍備の増強・近代化に取り組んでおり、現実世界の安全保障環境は、予見しうる未来において核軍縮を許さないものだと主張している。一方識者は、そういう態度や行いこそが緊張を高め、不信と危険な風潮を永続させている効果を持つのだと指摘している。

にもかかわらず、核兵器のいかなる使用であっても、人間や環境、社会にどのような帰結をもたらすのかということについて、世界的な関心が高まったことで、意図的なものであれ偶発的なものであれ、核爆発によって引き起こされる災害を予防するために核リスクを削減する措置について前進する機会が与えられているかもしれない。

核保有国の専門家や著名な高官らが、全面的な核戦争勃発の瀬戸際まで世界を追いやった多くのニアミス的な事件について明らかにしている。それらは、致命的なボタンを押さないという責任を一身に背負った、一連の指揮系統における一個人の判断によって避けられたきたのである。

市民団体や一部の国々は、人類全体に壊滅的な帰結をもたらしかねない核対立の危機を和らげる行動を進めることで、現状を変えようと試みている。

そうした一つの機会は、現在のNPT運用検討サイクル(=2020NPT運用検討会議第2回準備委員会)によって提供されている。また、5月にニューヨークで予定されている「核軍縮に関する国連ハイレベル会合」もある。

この会議に参加する世界の指導者らは、具体的な行動を取るか、発表するものとみられている。その多くが、核軍縮に向けたさらなる努力を加速するもので、市民団体によって提唱されてきたものだ。例えば、▽すべての核兵器を警告即発射、高度警戒態勢から解く、▽核戦争を開始しない政策の採択(「先制不使用」政策)、▽新型核兵器システムを開発しないとの合意、▽全ての前進配備核兵器の撤去(欧州に配備されている米国の核兵器など)、▽核備蓄の段階的削減及び廃棄に関する協議の開始、▽気候保護と化石燃料からの段階的脱却を推進するための資源を生み出すために、核兵器関連予算を削減すること、といったことが挙げられる。

かつて自らの意志で核兵器を放棄したカザフスタンの大統領は、同国が議長国をつとめた1月の国連安保理において、国連創設100年周年にあたる2045年までに核兵器の世界的な廃絶を達成すべきとの目標を掲げた。

同じ安保理の席上、グテーレス事務総長は「冷戦終焉後、核兵器に関する世界の懸念が現在、最も大きくなっている。」と警告し、グローバルな軍縮アジェンダに向けた新たな方向性と推進力を生むための機会を追求していく意図を明らかにした。サイバー戦争のような新しい技術を含めいくつかの分野の兵器を包摂した軍縮に関する大きな取り組みを開始するものと見られる。

多くの方面からなされた提案を現実的な方策に変換していくには、相当な政治的意志を前提とする。意識の高い世界の指導者らは、自国の至高の利益は人類全体の利益に包摂されることを知っているだろう。どの国も、とりわけ、莫大な資源と富を抱える国は、人類の正当なニーズと希望を考慮に入れることなく、国家の目的の充足だけに勤しむことなどできない。それは、自国民も、人類全体の不可分の一部を成しているからだ。

Sergio Duarte
Sergio Duarte

核兵器の存在によってもたらされるとてつもない危険を完全に除去し、すべての人々にとっての安全を実現する取り組みを成功させるには、この簡潔で、しかし否定しえない真実を理解することが不可欠であろう。(原文へ

※セルジオ・ドゥアルテ氏は、1995年にノーベル平和賞を受賞した「科学と世界問題に関するパグウォッシュ会議」の議長であり、重要ポストを歴任したブラジルの元大使である。2005年には第7回核不拡散条約(NPT)運用検討会議の議長、2007~12年には国連軍縮担当上級代表(国連軍縮局長、UNODA)を務めた。

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憲政の父・尾崎行雄に学ぶ「国会議員の資格十カ条」(石田尊昭尾崎行雄記念財団事務局長)

【IDN東京=石田尊昭

昨年10月の解散・総選挙から今日にいたるまで、野党の「迷走」が止まらない。

民進党時代、安保法制に先陣を切って反対していた某議員は、同法に肯定的な希望の党に嬉々として移り当選を果たした。しかし、選挙期間中からその後にかけて、希望の党が失速するやいなや、再び安保法制には反対だと言い出した。

その言動があまりにも露骨だったため、今でも彼に対する批判の声は多い。しかし、某議員だけの問題ではない。あの解散時、同じような動機(すなわち自己保身)で動いた候補者の数は、少なくとも一ケタではないはずだ。さらにそれは民進党に限ったものでもなかった。

安保法制の是非はともかく、こうした自己保身で政党や政策を変える政治家に、多くの有権者が失望や怒りを覚えたことだろう。今となっては、個々の政治家よりも、野党全体に対する不信や失望が強まっているように思える。

この1月に行われたNHKの世論調査では、政党支持率が自民党38.1%に対し、野党では最も高い立憲民主党で9.2%、次の共産党が3.6%だ。民進党、希望の党、日本維新の会はいずれも1%程度しかない。時事通信でも、自民28.1%に対し、立民が6.2%、共産が2%で、民進・希望・維新はいずれも1%を切っている。野党全体を合わせても、自民党の半分もしくはそれ以下という状況だ。

政党政治における「一強多弱」は、国民にとって望ましい姿とはいえないだろう。一強状態では緊張感が薄れ、政治運営も政策も緩慢になる可能性が高い。また、反対勢力を気にする必要がないため、誤った方向へ独善的に突き進む可能性もある。

憲政の父・尾崎行雄は、善政を敷くためには与野党が互いに睨み合い、いつでも政権交代可能な緊張状態にあることが重要だと言う。政権担当能力を持った、より良い対案を示せる野党が存在し、政権・与党に緊張感を与えながら互いに競い合うことで、より良い政治・政策が実現されるというわけだ。

前述の安保法制を取りまとめた、現・自民党副総裁の高村正彦氏は、近著『国家の矛盾』の中で民主党政権の誕生と凋落に触れ、「今度は5年10年は国民が納得するような提案を出して、政権を取ってもらいたい・・・自民党が困るくらいの野党が出たほうが、日本の政治のためになる・・・」と述べている。これは「一強多弱」の余裕から出た皮肉ではない。国家国民のためには与野党の健全な対峙が必要であるという、政党政治家としての矜持である。

野党を育てるのは、われわれ有権者の責務でもある。そのためには、政党を構成する議員一人一人の資質を厳しく見定め、声を上げていくことが不可欠だ。

以下は、日本で最初の国会が開催される前年に、尾崎行雄が記した「国会議員の資格十カ条」である。もちろん野党のみを念頭に置いたものではないが、健全な野党を育む一助として、多くの有権者に常に見つめ直してほしい内容である。

「国会議員に重要な資格中、最も重要なるものの十カ条」

(一)国会議員は広く内外の形勢を明らかにし、当世の事務に通ずるを要す。

 これは政府の法律によって設定することの出来ない資格で、それは財産年齢などより重要である。

(二)国会議員は道徳堅固なるを要す。
 これ自体に誰もが同意するが、世の人は金科玉条を軽率に看過するので、却って実行されないものである。実行こそ重要なことだと注意すべきである。

(三)国会議員は公共心に富むを要す。
 これを如何に養成することが出来るかは容易ではないが、しかし、公共心の有無、厚薄が常に国家の盛衰興亡の原因となっていることから、この公共心の価値を知るべきである。

(四)国会議員は権勢に屈せざるの勇気あるを要す。
 我が国では多年にわたり官吏を威張らした為、とかく官吏は人民を侮り、人民は官吏を畏れる傾向がある。

(五)国会議員は名利心の薄きを要す。
 権勢に屈しない勇気があって、名利心薄くなければ毀誉の為に屈し、利害の為に迷うの憂いがある。

(六)国会議員は自説を固守するの貞操あるを要す。
 間違った主義を持つと、全く無主義よりは優るとは、西哲の金言である。無主義の変改ほど無益なものはない。

(七)国会議員は独立の見識あるを要す。
 独立した見識なく、恰も楊柳の風に靡くが如く誘わるるまま西に行き、東に赴く者多ければ、一定不変の進路を取ることも出来ない。

(八)国会議員は思慮周密なるを要す。
 政令が度々変化して、朝令暮改が多いのは弊害が大きい。

(九)国会議員は穏当着実なるを要す。
 過激の言論、痛快の挙動は避ける必要がある。過激粗暴の人は深く時勢民情を洞察することが出来ない。

(十)国会議員は多少の弁舌あるを要す。
 充分に其の思想を説明するの弁舌を有しながら、みだりにこれを使用せざる人物を選ぶべし。

INPS Japan

*石田尊昭氏は、尾崎行雄記念財団事務局長、INPS Japan理事、「一冊の会」理事、国連女性機関「UN Women さくら」理事。

世界の最も貧しい国々への公約果たすよう、国連が呼びかけ

【ベルリン/ジュネーブIDN=ラメシュ・ジャウラ

最近発表された研究調査によると、国際社会が緊急の行動を採らない限り、既に世界で最も不利な状況に置かれている47カ国が、「2030アジェンダ」において国連が設定した持続可能な開発目標(SDGs)を達成しえないと警告している。

国連用語で後発開発途上国(LDCs)と呼ばれるこの47カ国は、国際社会からの特別な配慮が必要とされる国々として知られている。そのほとんどがアフリカのサハラ砂漠以南に位置する国々であり、内40カ国は、アフリカ、カリブ、太平洋(ACP)諸国(79カ国で構成)にも属している。

国連貿易開発機構(UNCTAD、本部ジュネーブ)によるこの研究調査は、後発開発途上国の2017年の成長率が5%で、2018年には5.4%に達するだろうと予測している。これは、持続可能な開発第8目標「すべての人のための持続的、包摂的かつ持続可能な経済成長の推進」の第1ターゲットで掲げられた7%の成長率を下回っている。

2017年に7%以上の成長を達成した後発開発途上国はわずか5カ国であった。ACP諸国のエチオピア(8.5%)、ジブチ(7%)、ネパール(7.5%)、ミャンマー(7.2%)、バングラデシュ(7.1%)である。

こうした現状を踏まえて、UNCTADアフリカ・後発開発途上国・特別事業局のポール・アキウミ局長は、「誰一人取り残さないという(SDGsの)公約に従って後発開発途上国への支援を強化する」よう国際社会に呼びかけている。

「グローバル経済の復調が緩やかなペースにとどまっている中、開発パートナーは後発開発途上国への支援を拡大して持続可能な開発目標を達成させるにあたって様々な制約に直面しています。こうしたなか、後発開発途上国と他の開発途上国との間の格差が拡大する恐れがあります。」とアキウミ局長は語った。

UNCTADの分析は、あまりに多くの後発開発途上国が一次産品の輸出に依存しすぎていると指摘している。

「ほとんどの一次産品の国際価格は2016年末以降上昇しているものの、このゆっくりとした回復は、2011年以来の大幅な国際価格の下落を埋め合わせるものとはなっていない。とりわけ、重油や鉱物、鉱石、金属といった産品にこの傾向が顕著である。」とUNCTADの研究調査は指摘している。

2017年、後発開発途上国はグループ全体として、500億ドルの経常赤字を記録した。これは名目値で、史上2番目に大きな赤字幅である。それとは対照的に、同年の後発開発途上国でない途上国、途上国全体、さらに先進国グループのいずれも、黒字を記録していた。

Least Developed Countries (LDCs)/ UNCTAD
Least Developed Countries (LDCs)/ UNCTAD

2018年には後発開発途上国の経常赤字がさらに拡大し、国際収支の脆弱さがさらに悪化するものと予測されている。

国際通貨基金の推定によると、2017年、ごく一部の後発開発途上国のみが黒字を記録している。比較的大きな額の援助を得たアフガニスタン、南スーダン両国と、エリトリア、ギニアビサウACP加盟2カ国だけである。

その他すべての後発開発途上国が、額の違いはあれ経常赤字を記録した。その内訳は、GDPの1%に満たないバングラデシュやネパールから、25%を超えたブータンやACP加盟国のギニア、リベリア、モザンビークまで、さまざまである。

後発開発途上国への特別海外援助の約束額は総計432億ドルであるが、これは途上国全体への援助額の推計値のわずか27%でしかない。年単位の実額で言うと、0.5%増えたにすぎない。

こうした傾向は、世界的景気後退にあたって後発開発途上国への援助が底を打つのではないかとの懸念を裏打ちするものだ。2016年に持続可能な開発第17目標の第2ターゲット(先進国は、開発途上国に対するODAをGNI比0.7%に、後発開発途上国に対するODAをGNI比0.15~0.20%にするという目標を達成するとの多くの国によるコミットメントを含むODAに係るコミットメントを完全に実施する。ODA供与国が、少なくともGNI比0.20%のODAを後発開発途上国に供与するという目標の設定を検討することを奨励する。)を達成したのはごく一部のドナー国だけであったと、UNCTADの研究調査は分析している。

SDG Goal No. 17
SDG Goal No. 17

デンマーク・ルクセンブルク・ノルウェー・スウェーデン・英国は国民総収入の0.2%以上を後発開発途上国に提供し、オランダは0.15%の基準に到達している。

「この分析は、行動を強く求める呼びかけになっています。」「国際社会は後発開発途上国に対する公約にもっと目を向けるべきです。」とアキウミ局長は語った。

この研究調査結果は2月5日、スイスのジュネーブで開催されたUNCTADの会合で加盟国に提示された。

この研究調査で指摘されたその他の要点は以下のとおり。

・後発開発途上国は、経済の全般的な再構築を進めないかぎり、持続可能な開発目標を達成しえない。

・後発開発途上国の構造改革のペースは緩慢であり、持続可能な開発第9目標ターゲット2(強靭なインフラを整備し、包摂的で持続可能な産業化を推進するとともに、技術革新の拡大を図る)で示された包括的で持続可能な工業化の目標に到底達していない。

SDGs Goal No. 9
SDGs Goal No. 9

・2006~16年の間に、ほぼすべての後発開発途上国において製造業部門の付加価値は増加しているが、同時にこれには、全付加価値における製造業の割合の低下が伴っている。つまり、後発開発途上国の間では未成熟段階の脱工業化の懸念があるということだ。

・2016年に後発開発途上国が世界の輸出に占める割合はわずか0.92%だった。これは2007年とほぼ同レベルである。

・後発開発途上国全体での貿易赤字は、2009年の450億ドルから2016年の980億ドルへと、金融危機後に相当拡大している。つまり、国内生産能力の脆弱さと、貿易収支の構造的赤字が結びついていることが示されている。

・後発開発途上国への援助額は、1981年に合意された、ドナー国の国民総収入の0.15~0.2%という目標にはるかに及んでいない。

・援助は後発開発途上国の一部の国々に集中する傾向がある。人道的危機や紛争の影響をしばしば受けているトップ10カ国がそうである。後発開発途上国全体への援助のおよそ半分がこれらの国に向けられている。

・最近のデータによれば、(国民総収入に対する)資産の面でも、元利金返済の面でも対外負債のレベルが後発開発途上国において急上昇してきている。

Photo: The scale of destruction in Aleppo is massive and heavy equipment is urgently needed to remove debris. Credit: UNHCR/Bassam Diab
Photo: The scale of destruction in Aleppo is massive and heavy equipment is urgently needed to remove debris. Credit: UNHCR/Bassam Diab

・後発開発途上国全体に対する個人送金は2017年には369億ドルだったが、ピーク時(2016年)の379億ドルよりも2.6%減少している。

・絶対額で言えば、後発開発途上国の中で送金受け取り額が大きいのは、バングラデシュ(136億ドル、2016年)、ネパール(66億ドル)、イエメン(34億ドル)、ハイチ(24億ドル)、セネガル(20億ドル)、ウガンダ(10億ドル)である。

・2016年、送金はネパールのGDPの31%を占めていた。ハイチでは29%、リベリアでは26%、ガンビアでは22%、コモロ諸島では21%、レソトでは15%であり、セネガル・イエメン・ツバルでは10%を超えていた。(原文へPDF

翻訳=INPS Japan

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朝鮮半島の危機を北東アジアの安定的平和へ

【東京IDN=浅霧勝浩】

「北東アジアにおける平和の構築:朝鮮半島における危機管理とその転換」というテーマの国際会議が、地域の一触即発の状況を背景に、米国・中国・韓国・日本から東北アジア地域の平和と安全保障に関する専門家、政策立案者、市民社会の参加者が集まって開催された。

北朝鮮が「世界のどこにでも到達」できる大陸間弾道ミサイルの実験に成功したと主張する以前、1995年のノーベル平和賞受賞団体「科学と世界問題に関するパグウォッシュ会議」が2017年5月4日の声明で、「北朝鮮との対立の激化は、重大な危険性を高めている。」と懸念を示していた。

それから約9カ月後の2018年1月25日、象徴的な「世界終末時計」の針が30秒進められ真夜中まで残り2分となった。時計の針は、冷戦真っ只中の1953年以来、象徴的な世界滅亡の時間(=午前0時)まで最も近付いている。

Image credit: Bulletin of the Atomic Scientists
Image credit: Bulletin of the Atomic Scientists

こうした不安を感じさせる状況は、オタゴ大学国立平和紛争研究所(ニュージーランド)、戸田記念国際平和研究所(日本)、ノルウェー国際問題研究所(NUPI)が2月1日に共催した国際会議(第2回東京会議)の重要性をより増している。

第2回東京会議は、地政学的に不安定な状況に直面して、「危機や不確実性をもたらしている要因」を探求するとともに、「北朝鮮問題への外交や対話による対応を妨げている諸問題」を分析するものであった。さらに、「生存を危機にさらす核の脅威は、予防外交や交渉、協調的な問題解決の手法を通じて対処しうるかについても焦点があてられた。」

影響力のある学識者や政策立案者が、「北東アジアにおける安全保障の脅威への対処」と「朝鮮半島における危機管理 – 北朝鮮問題の打開」をテーマとした2つのパネルセッションにおいて、知見と知恵を共有した。

Toda Institute Director Kevin P. Clements briefing media on the Colloquium. Credit: Kotoe Asagiri | IDN-INPS
Toda Institute Director Kevin P. Clements briefing media on the Colloquium. Credit: Kotoe Asagiri | IDN-INPS

会議は「チャタム・ハウス・ルール」に則って行われたため、記者会見では、戸田記念国際平和研究所所長でオタゴ大学国立平和紛争研究所所長でもあるケビン・P・クレメンツ氏が、両セッションの概要を紹介した。

クレメンツ所長は、第一パネルでは、「北東アジアにおける緊張と問題一般について、いかに創造的かつ非暴力的に対応するかについて話し合われた。とりわけ、議論の俎上に上がっている多くの問題にとってきわめて重要な二国間関係である日中関係の改善についても焦点があてられた。」と語った。さらに、「紛争を非暴力的に管理するために必要な地域の安全保障枠組みについて検討がなされ、日中間、日韓間、南北朝鮮間でいかにして信頼と尊重を構築するかについて焦点がしぼられた。」と説明した。

クレメンツ所長はさらに、第二パネルでは、「北朝鮮の核の脅威と、これにいかにして『創造的かつ非暴力的に、そして軍事攻撃を伴わずに』対処するかということに焦点が絞られた。」と説明した。

パネリストらはまた、「南北朝鮮間、米朝間で俎上に上っているさまざまなオプションについて、米朝間で建設的な協議をいかに促進するかについて」検討し、「北朝鮮によって地域全体が直面している問題が創造的かつ国際的に対処しうるような環境の創出に向けて、北東アジアのすべての国々が協力できる方法」を追求した。

記者会見に加わった米国国務省のジョセフ・ユン北朝鮮担当特別代表は、北朝鮮が核戦力の増強を続ける傍らで、その戦略的・戦術的目標や真の意図はどこにあるのかという質問に対して、「北朝鮮の交渉相手が私に伝えてきているのは『(北朝鮮は)安全保障や経済的繁栄などを求めている。』という点です。」と語った。

Joseph Yun, U.S. Special Representative for North Korea Credit: Kotoe Asagiri | IDN-INPS
Joseph Yun, U.S. Special Representative for North Korea Credit: Kotoe Asagiri | IDN-INPS

スティムソンセンター東アジアプログラムの主任研究員であり、ブルッキングス研究所の客員研究員でもあるユン・スン氏は、この見方を支持し、「北朝鮮の希望は安全保障と経済的繁栄にあります。」と語った。

ユン特別代表は、「北朝鮮と交渉してくる中で、彼らの主な反論として、彼らが米国の『敵対政策』とみなすものを伝えてきました。私はその時の交渉に挑んで、米国の一貫した立場を説明しました。つまり、米国は北朝鮮の核武装化もその核兵器も認めないという立場です。」と語った。

ユン特別代表はまた、先制攻撃を米国政府が最終的に考えているとの憶測を否定して、「(軍事攻撃が)近づいているとは思っていません。我々には信憑性のある交渉が必要なのです。一方で、我々は、全てのオプションがテーブルの上にあると一貫して言ってきました。『全てのオプション』というのは、その中に軍事オプションも入れざるを得ません。」と語った。

米国政府による「全てのオプション」の追求は、北朝鮮の金正恩最高指導者に対して制限的な対北朝鮮先制打撃を意味する「鼻血戦略」と伴う目標であるとの厳しい意見記事を元ホワイトハウスの高官が『ワシントン・ポスト』紙に寄せているが、(外交優先を強調した)ユン特別代表の発言は、この記事が出てまもなくのタイミングでなされたものだった。

「危機に晒されているリスクの大きさを考えれば、米国人の犠牲と、朝鮮半島におけるより広範な戦争は取るべきリスクだと論じる者もいるかもしれない。」「しかし、軍事攻撃は(より大規模なものであったとしても)北朝鮮のミサイル・核開発を少し遅らせるにすぎないだろう。なぜならそうしたミサイル・核施設は、バンカーバスター爆弾によっても攻撃不能な未知の場所に地中深く隠されているからだ。」と、ジョージタウン大学教授で戦略国際問題研究所上級顧問のビクター・チャ博士は「ワシントン・ポスト紙」に記している。チャ教授は、一時は米国の次期中韓大使に指名されると目されていた人物だ。

一方、ユン北朝鮮担当特別代表は、米国政府の「平和的圧力」政策は、「対話のチャンネルを開けておく一方で、極めて強力な圧力をかけ続けるもの。」と主張したうえで、「米国は北朝鮮との意思疎通のチャンネルを確保している。」と語った。

ユン特別代表は、2月9日に始まった平昌オリンピックに北朝鮮が参加するのに合わせて南北朝鮮間で協議が行われることに言及して、「誰もが外交に成功してほしいと願っています。」と語った。米国政府もまた、北朝鮮が「侵略への準備」と見なしている韓国との合同軍事演習「フォール・イーグル」をオリンピック後まで延期することを決めている。

ユン特別代表はまた、外交は「狼煙で行うものではない」と警告し、北朝鮮は、米国が協議入りに同意できるように、挑発行為をやめると約束すべきだと語った。米国のドナルド・トランプ大統領は1月30日の一般教書演説で、北朝鮮の核兵器は近いうちに米国を脅かす可能性があるとの認識を示していた。

「こうした状況の下、圧力を最大化するために、すべての国が北朝鮮に対して可能な限り制裁を履行することが重要です。」と、ユン特別代表は指摘した。

中国は既に、石炭や鉄鉱石、消費財、繊維品の貿易に対して制裁をかけているが、米日両国は、北朝鮮経済に大きな影響力を持つ中国に対して、制裁を強化するようたびたび要請してきた。

ユン特別代表は、「中国は国連安保理決議を履行しているとは思います。しかし、もちろん、制裁に関しては、当局があずかり知らないところで密輸や貿易が横行しているという事実もあります。」と語った。

復旦大学(中国)の沈丁立教授と、同じく記者会見に登壇したスティムソンセンター(ワシントンDC)のユン・スン研究員は、「中国は北朝鮮に対する石油輸出を完全に断ってはいませんし、北朝鮮船舶に対する海上輸送阻止といった問題も解決していません。しかしこれらはいずれも安保理決議において未だ合意されていない内容だからです。」と指摘した。

Yun Sun, of the Stimson Centre in Washington D.C (left) and Professor Shen Dingli, of Fudan University in Shanghai (right) Credit: Kotoe Asagiri | IDN-INPS
Yun Sun, of the Stimson Centre in Washington D.C (left) and Professor Shen Dingli, of Fudan University in Shanghai (right) Credit: Kotoe Asagiri | IDN-INPS

同時に、第2回東京会議の参加者の間での一般的な見方は、一連の国連制裁決議は北朝鮮に対して効果をもたらしつつある、というものだった。これは、北朝鮮の金正恩最高指導者が平昌オリンピックに同国が出場すると申し出たことに示されている。この申し出は、韓国政府に対する和平の呼びかけだと広く見られている。また、北朝鮮の冬の軍事演習は、今回は小規模なものであった。

2017年に日本の沿岸に打ち上げられた北朝鮮の「幽霊船」が104隻に上り、35人の死者と42人の生存者を出したことは、漁船の管理の不備、燃料不足、遠くまで航海に出ようとする漁民の間に広がる絶望を示していると、第2回東京会議の参加者らは示唆した。

スティムソンセンターのユン・スン研究員は、オリンピックの後に膠着状態に陥りそうだと記者らに示唆した。「これは体制の正統性と国家の誇りの問題です。北朝鮮は信頼性のあるICBM(大陸間弾道ミサイル)能力の保有に近づいており、これを放棄することは現実問題として考えにくい。」と語った。(原文へPDF |

Photo: Toda Institute Director Kevin P. Clements briefing media on the Colloquium. Credit: Kotoe Asagiri | IDN-INPS
Photo: Toda Institute Director Kevin P. Clements briefing media on the Colloquium. Credit: Kotoe Asagiri | IDN-INPS

https://www.youtube.com/watch?v=3dFYzdNjk9M

INPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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