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|アイスランド|土地回復の知識を途上国と共有

【レイキャビクIDN=ロワナ・ヴィール】

1907年、主に過放牧と薪の過剰採取による深刻な土地劣化の問題に直面していたアイスランドで、土壌劣化の防止と劣化した土地の原状復帰を任務とする政府機関「アイスランド土壌保全局」(SCSI)が設置された。

「アイスランド土壌保全局」はその後多くの教訓を学び、その専門的経験を伝えるために、アイスランド農業大学と協力して、途上国からの参加者を念頭に置いた国連大学の訓練プログラムを現在運営している。

国連大学土地回復訓練プログラム」(UNU-LRT)として公式には知られるこのプログラムは、アイスランドを拠点に実施されている国連大学の4件の訓練プログラムの一つである。他の3件は、漁業地熱ジェンダー平等をテーマとしている。

UNU-LRT
UNU-LRT

主に外務省と様々な国際開発機関によって財政支援を受けた「国連大学土地回復訓練プログラム」は2007年に始まり、最初の3年は実験段階とされたが、現在は恒久的なプログラムとなっている。

このプログラムで「フェロー」と呼ばれている学生らは、主にガーナ・ウガンダ・モンゴル・レソト・エチオピア・カザフスタン・ウズベキスタン・マラウィ・ニジェール・ナミビアなどの途上国から参加している。

参加者の年齢層は25~40歳で、パートナーとなる大学や政府機関、地元の研究機関で既にこの分野で実務に従事している人々で、各々の所属機関からの推薦を受けたのち、「国連大学土地回復訓練プログラム」のスタッフによる面接を受けている。

訓練終了後は元の職場に戻り、アイスランドで新たに得た知識を同僚らと共有する。毎年、およそ12~15人のフェローが訓練を受けている。

Hafdís Hanna Ægisdóttir/ UNU-LRT
Hafdís Hanna Ægisdóttir/ UNU-LRT

「土地劣化に関連して多くの途上国が直面している問題は、過放牧や森林破壊、持続不能な土地利用、気候変動、自然災害などです。」とプログラム・ディレクターのハフディス・ハンナ・イージスドティール氏はIDNの取材に対して語った。

イージスドティール氏は、「訓練プログラムの参加者は、アフリカや中央アジア出身者ですが、土地劣化の問題に関しては、世界中どこでも驚くほど類似点があります。従って、参加者らは、自分の国で適用可能な技術や方法、理論を学ぶことになります。」「もちろん、土地を回復するためにどの植物を植えるかは、場所によって環境が違ってきますから一概にはいえません。しかし、特定の植物を利用することに伴う長所と短所や、侵入生物種によって引き起こされる問題について話すことはできます。」と語った。

イージスドティールによると、土地劣化の問題は気候変動と強く結びついている。というのも、土地劣化によって土壌と植生からCO2が排出され、結果として大気中に出されることになるからだ。「しかし、CO2は土地回復によって生態系に再び戻すことができるという良い面もあります。」とイージストティール氏は語った。

「国連大学土地回復訓練プログラム」による半年に及ぶ訓練の間に、フェローたちは土地劣化のプロセスと土地評価の方法、土地回復のエコロジー、土地利用と回復計画、持続可能な牧畜管理(開放的土地の場合と放牧地の場合)、土壌劣化と土壌保全について学ぶ。

ジェンダー平等も「国連大学土地回復訓練プログラム」の不可欠の一部を構成している。訓練プログラムにおいてジェンダーバランスが重視されるだけではなく、フェローたちは土地回復や持続可能な土地管理の分野においてジェンダー平等の観点を育むよう期待されている。というのも、ジェンダーによって権限と意思決定に平等にアクセスできない状態では、土地回復を含めた環境問題に対処するためのあらゆる取り組みを阻害することになると考えられているからだ。

訓練の主要な部分を成すのは、フェロー自身が実施する研究活動だ。自国から集めたデータか、アイスランド滞在中の研究で得たデータを利用する。「フェローたちは訓練内容と同じく、この研究活動に非常に満足しています。」とイージスドティール氏は語った。

Azamat Isakov/ UNU-LRT

元フェローのアザマット・イサコフ氏は、2013年に訓練プログラムに参加後に「キャンプ・アラトゥー財団」の代表に就任し、のちに「国連大学土地回復訓練プログラム」の一部として自身の指導教官とともに実施したキルギスの放牧の問題に関する研究報告書を発表している。

また、北部ガーナ出身の別の元フェローであるエステル・エクア・アモアコ氏は、子どもたちのための環境リテラシー向上プログラムのようなものに参加したいと長年考えていた。彼女は、地域教育にするのかラジオを使うのか思い悩んでいたが、同時に、地域社会を関与させるための時間とコストの問題にも気づいていた。

2012年、アモアコ氏はアイスランドでの土地回復訓練プログラムに参加するよう招待されたが、これが大きな転機になったという。「知識と実践を結びつけた環境リテラシーのコースは、アイスランドにおける土地回復プログラムに子どもたちを参画させた成功事例を学ぶもので…なかでも『子どもランドケアクラブ』から深い見識と方向性を学びました。」とアモアコ氏は語った。

「そして私は、自国に戻ってこの知識を実践に移そうと決意しました。アイスランドで学んだ子どもたちを教育するこのアプローチは、資金的に実行可能で、信頼性があり、より安価で、大きな影響を与えられると確信したのです。」

アモアコ氏は3つの学校で5つの『子どもランドケアクラブ』を設置することから始めた。大規模校では少なくとも40人、小規模校では25人に教えている。「いくつかの学校で環境リテラシークラブを立ち上げるための支援を、環境保護庁の地方支部と私の大学の学部(開発研究大学天然資源・開発学部)から得ることができました。現在、学部はクラブを公認団体にすることに合意し、他の学校にも広げることを予定しています。」とアモアコ氏は語った。

Chantsallkham Jamsranjav/ UNU-LRT

2010年に訓練に参加しその後米国で博士号を取得したモンゴル出身のチャンツァー・ジャムスランジャフ氏は、「『国連大学土地回復訓練プログラム』で得た知識は、私がモンゴルに帰ってから(モンゴル放牧地管理協会の)『グリーン・ゴールド・プロジェクト』の地域開発専門家としての活動に大いに役立ちました。アイスランドの訓練で得た知識を、ここで訓練に参加した地元参加者と共有し、彼らからさらに改善していくためのフィードバックを得られたのは有益だったと思います。」と語った。

ジャムスランジャフ氏はさらに、「地域を基盤とした放牧地管理組織の放牧者たちは、連携の強化、知識の共有、情報アクセスの結果として、季節ごとに牧草地を休ませローテーションさせていくことに積極的になりました。また、放牧地の植生管理も始まり、これは自身の放牧地の状況を把握するうえで非常に重要な第一歩となり、管理スキルの向上につながりました。」と語った。

ジャムスランジャフ氏は現在、国際NGO「マーシー・コープ・モンゴリア」でプログラム評価・改善コーディネーターとして働いている。「私は(2016年3月に)マーシー・コープに参画後、農村社会のレジリエンス(=リスク対応能力)に関する評価を行い、この結果は『強靭な(レジリエント)コミュニティープログラム』とよばれる新たなプログラムの策定にあたって活用されました。このプログラムの重点は、経済や自然に起因する災害や圧力を乗り越える農村社会のリスク対応能力をつけることにあります。」と語った。

「国連大学土地回復訓練プログラム」は、イージスドティール氏らが2015年にパリで開催された国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)に参加して財政支援を受けるようになってから、各地で短期コースを開き、パートナー国における活動を拡大している。手始めに今年後半にウガンダで2週間のコースが開かれるが、これには地方自治体の環境部門職員約25人が参加予定だ。

UNU-LRT
UNU-LRT
SDGs Goal No. 15
SDGs Goal No. 15

「国連大学土地回復訓練プログラム」はまた、最近活動を進めつつあるENABLE(欧州ビジネス・土地管理教育促進ネットワーク)にも関与するようになってきている。ENABLEは欧州委員会の「エラスムス+計画」の一部だ。

このプロジェクトでは、生態系の機能と持続可能な土地管理がもたらす恩恵について意識を高めるための教育基盤が確立される。誰でも参加可能だが、とくに、ビジネスやマネジメント専攻の学生や専門家、政策決定者を念頭に置いている。

「国連大学土地回復訓練プログラム」と同様に、このプロジェクトも国連の持続可能な開発目標(SDGs)の第15目標の実現へと直接に向かうことになる。(原文へ

翻訳=INPS Japan

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画期的なトラテロルコ条約の成功から50年

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2017年2月14日、ラテンアメリカ・カリブ海地域核兵器禁止条約(トラテロルコ条約)は50周年を迎える。同条約は、核兵器の実験・使用・製造・生産・取得を禁止している。同地域の全33カ国がこの条約に加盟している。本記事は、同条約の重要性を詳しく検討するものである。

【ニューヨークIDN-INPS/TMS=セルジオ・ドゥアルテ、ジェニファー・マックビー】

地球上の人間の住む地帯に初めて非核兵器地帯が設置されたものとして、トラテロルコ条約は、世界および地域の軍縮・平和・安全保障に重要な貢献をしてきた。条約効力の無期限化、留保の禁止、核兵器の定義、消極的安全保障を通じて非核兵器地帯の地位を尊重するという核兵器国による約束、加盟国による平和目的に限定した原子力エネルギー利用の容認等、この条約は数多くの革新的な条項を含んでいる。

Treaty of Tlatelolco Logo/ OPANAL

トラテロルコ条約は、非核兵器地帯はそれ自体が目的ではなく、将来における全面的かつ完全な軍縮、とりわけ核軍縮を達成する手段だとする原則を体現している。この条約はまた、国家間の平等と、加盟国間の差別禁止の原則を掲げている。

OPANAL(ラテンアメリカ・カリブ海核兵器禁止機構)は、トラテロルコ条約の義務遵守を確保する責任を担う国際組織である。1992年、国際原子力機関(IAEA)は査察実施に関する完全な権限を付与された。ラテンアメリカ・カリブ海地域の全ての国々が核不拡散条約(NPT)に加盟していることから、これらの国々はNPT第3条に規定されたIAEA保障措置に従っていることになる。また、これらの国々は包括的核実験禁止条約(CTBT)にも署名・批准している。さらに、4者協定によって、ブラジル・アルゼンチン両国は、IAEA並びに両国が1991年に設立した「アルゼンチン・ブラジル核物質計量管理機関(ABACC)」による査察にも服している。

この間、世界の他の地域もラテンアメリカの範に倣った。現在、南太平洋、東南アジア、アフリカ、中央アジアと、4つの地域に非核兵器地帯が存在する。現在113国がこうした非核地帯の加盟国であり、これに加えて、国連によって1998年に非核地位を確認されたモンゴルがある。その大多数が南半球に位置しており、南半球は事実上の非核半球となっている。

トラテロルコ条約交渉の起源と成功は、ラテンアメリカ諸国に共通するイベリア半島の起源とその外交的伝統、平和的共存と協力、国際法への信頼、地域の問題に対処するメカニズムを協議することへの信頼に負っていると言ってよい。

Nuclear Weapon Free Zones
Nuclear Weapon Free Zones

1962年、ブラジルのアフォンソ・アリノス・デメロ・フランコ国連大使は、ラテンアメリカに非核兵器地帯を確立することを初めて提案した。この数週間後、キューバにソ連がミサイルを設置したことから生じた国際危機が、この理念への一般的な支持を確固たるものにした。1963年には、ボリビア・チリ・エクアドルがブラジルとともに非核兵器地帯創設を提案する決議草案を提出した。

翌年、この4カ国にメキシコを加えた5カ国の大統領が、ラテンアメリカ大陸の非核化をもたらす国際文書の協議および署名を行うとの正式決定を発表した。協議は1964年にメキシコシティで始まり、1967年2月14日に署名開放され、翌年4月に発効した。そして2002年にはキューバが批准し、ラテンアメリカ・カリブ海地域の全33カ国について条約が完全発効した。また、メキシコのアルフォンソ・ガルシア・ロブレス大使は、この協議プロセスを主導した功績と、核軍縮・核不拡散への貢献が評価されて、1982年にノーベル平和賞を授与されている。

トラテロルコ条約の付属議定書2の下で、(NPT上の)5つの核兵器国は、ラテンアメリカ・カリブ海地域の非核兵器地位を尊重し、条約加盟国に安全の保証を与える義務を負っている。しかし中国を除く4か国は、議定書批准に際して、自国の義務に関して一方的な解釈宣言を行っている。(フランスは国連憲章第51条の下での自衛権の行使について、また米国、英国およびソ連〈当時〉は核兵器国に支援された締約国による侵略の事態に消極的安全保障の義務を再考する権利について、それぞれ留保を付している。)

条約の加盟国は、こうした解釈は議定書の目的や精神に反しているとして、解釈の見直しか取り消しを要求している。というのも、こうした解釈は、条約が適用される地帯内で核兵器の通過が可能となったり、一定の状況下で核兵器の使用あるいは使用の威嚇が可能となったりするようにみなしうるからだ。

条約の締約国と議定書の締約国がこれらの問題に関して共通の理解を持つことが重要である。そのため、OPANALは相互の利益になる問題について共通の立場に到達すべく、核保有国やその他の非核兵器地帯の諸機構と協議している。

興味深いのは、包括的核実験禁止条約(CTBT)が採択された1996年から先立つこと29年前に、既にトラテロルコ条約の中に核実験の広範な禁止が盛り込まれていたことだ。このことは、CTBTが依然として正式に発効していないという事実を浮き彫りにしている。CTBTの発効には批准が必要とされる残り8カ国による批准が必須だ。非核兵器地帯を確立した5つの国際条約と同様に、CTBTの発効は核拡散を阻止するうえで極めて重要な要素となる。

トラテロルコ条約50周年は、2016年の国連での歴史的な決定を受けて核兵器禁止に関する協議が開始されるという状況と時を同じくしており、幸先良いものを感じさせる。この協議が成功するならば、国連憲章が1945年に署名されて以来、国際社会のほとんどの国々が追求してきた目的の達成(=全ての核兵器および大量破壊兵器の廃絶)に大きく近づくことになるだろう。

同様に、核物質の保安を確保する効果的な措置を全ての加盟国が採ることが、核兵器の拡散を防止する取り組みにおいて重要だ。核兵器を永遠に廃絶することは、核の大惨事を予防し、人類の生存を保証するための緊急かつ死活的な任務だ。(原文へ

※セルジオ・ドゥアルテは、ブラジル大使、国連の軍縮問題元高等代表、核不拡散条約運用検討会議の元議長、国際原子力機関元理事長。ジェニファー・マックビーは、米国科学者連盟上級研究員。

翻訳=INPS Japan

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「核への抵抗」を象徴する国連会議

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国連の分担金削減の危機が迫る中、「希望の持てる領域」を探す動き

【ベルリン/ニューヨークIDN=ラメシュ・ジャウラ】

米国による分担金の大幅削減というリスクが、まるで「ダモクレスの剣」のようにアントニオ・グテーレス国連新事務総長の頭上にぶら下がっているなか、政府高官や市民社会の代表らが、「永続的な平和」と「持続可能な開発」のネクサス(関連性)を強調し、ニューヨークの国連本部という舞台を超えて、この関連性に関する意識を広く喚起する必要性を訴えている。

「公正で、平和的で、包摂的な社会」の必要性に焦点を当てた「持続可能な開発のための2030アジェンダ」第16目標は、そうした本来的な関連性を強調しているが、国連が2015年9月に全ての加盟国の賛同を得て持続可能な開発目標(SDGs)の履行が開始されてから既に1年が経過しているにもかかわらず、一般の人々や外交分野における関心は依然希薄なままである。

国連総会は、このことを視野に、「持続可能な開発」と「継続的な平和」の本来的な関連性を強調する画期的な第一歩として、2日間にわたるハイレベル対話を1月24・25両日に開催した。

カザフスタンのイェルザン・アシクバエフ外務次官は、「開発と安全保障の関連性」の重要性を強調して、「世界各地で安全保障上の問題が、開発から得られる成果を脅かしています。」と語った。カザフスタン政府は、従来から、地域・世界レベルにおいて、武力紛争を予防し終結させる取り組みに外交努力を集中すると断言してきた。

アシクバエフ外務次官は、「しかし、国家間には残念ながら信頼感が欠如しています」と指摘したうえで、国連に対して仲裁の努力を抜本的に強化するよう訴えた。この点に関しては、国連安保理が義務として取り扱うテーマを拡大(例:「永続的な平和」と「持続可能な開発」の関連性を協議)したり、国連諸機関間における協力関係が一層緊密化させたりするなど、新しい道筋が最近開けてきている。

アシクバエフ外務次官はさらに、資金不足が開発の大きな障害であると指摘したうえで、加盟国に対して、防衛予算の1%を2030アジェンダ履行のために振り向けるよう訴えた。

アシクバエフ外務次官は、「多面的な難題には多方面からの対応を必要とします。」と指摘したうえで、「平和的で公正で包摂的な社会に関する第16目標を促進する取り組みは、この点において特に意味があります。」と語った。カザフスタンは、民主的なガバナンスや法の支配、人権擁護を基礎にして持続可能な開発目標を国家レベルの戦略に統合する取り組みを進めている。

General Assembly Seventy-first session, 59th plenary meeting Appointment of the Secretary-General of the United Nations.
General Assembly Seventy-first session, 59th plenary meeting Appointment of the Secretary-General of the United Nations.

グテーレス事務総長は、1月1日の就任以来初となる国連総会での演説において、「紛争の根本原因に対処し、思想から実行のレベルに至るまで、平和、持続可能な開発、人権を全体的視野の下に統合するグローバルな対応策が必要だ。」と既に述べていた。

不平等が引き続き世界中を覆っており、世界で最も裕福な8人が最貧困層の36億人と同じだけの富を所有しているという。民衆や国々全体が取り残されたと感じており、破滅的な紛争が新たに発生する一方で、旧来からの紛争がしつこく続いている。

インドのスジャータ・メフタ対外関係相も同様の観点から、慢性的な格差拡大と継続的な不平等、それに暴力的過激主義のような非旧来型の脅威の登場に注意を向けた。

技術の進歩により、世界はますます小さくなり、遠く離れた国々に暮らす人々の生活が一層相互に関連性を持つようになってきた。また諸国の経済はますます緊密化し、感染症は拡散しやすくなり、テロのネットワークは、世界のどこでも容易に攻撃を仕掛けられるようになった。

「同時に、『経済成長』と『包摂的な開発の安全性』、そして『人々の一般的な健康問題』も相互に密接に関連するようになっており、たとえある場所でこうした側面が満たされたとしても、必ずその影響は他の場所に及ぶことになるのです。」と、メフタ氏は語った。

メフタ氏はまた、「平和と開発の関連がパリ合意と2030アジェンダの双方の基盤にあります。」と指摘したうえで、「合意形成以降の進展具合は『けっして好ましいものではなく』、合意履行のための資金調達ではドナーからの資金提供が減少しています。」と語った。

メフタ氏は、「一旦なされた公約を違えることは、皆にとってマイナスとなります。」と警告し、より長期的な観点から開発問題に着目すべきと呼びかけた。「私たちは『グローバル・ヴィレッジ(地球村)』の住人です。国連加盟国に対して持続可能な開発目標の達成に向けて努力するよう、また、国連に対してその支援を行うよう求めます。」と語った。

ナイジェリアのアンソニー・ボサー氏は、「持続可能な開発」、「平和」、「経済成長」が保障されるべきだと述べ、この点に関する協調的な取り組みを訴えた。「2030アジェンダと持続可能な平和の追求は、一体をなすものです。暴力の実行者ら(新たに登場した勢力もあれば、長きにわたってそうした行為を行っている勢力もいる)が、紛争を乗り越えようとしている国々を支援する国際的、地域的取り組みに対して深刻な影響を及ぼしているのが気掛かりです。」とボサー氏は語った。

ボサー氏はまた、地域レベルと準地域レベルの諸機関との提携を通じて新たな「アジェンダ」と持続可能な平和の間に相乗効果(シナジー)を作り出そうとする国連の努力を歓迎するとともに、「西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)は紛争解決において大きな成果を残してきました。」と語った。

「真実を語る基準(ベンチマーク)」

国連総会のピーター・トムソン議長(南太平洋メラネシアの島嶼国フィジー出身)は、「国連総会と安保理が、持続的な平和に関する諸決議を採択したことは、平和と開発に対する部門横断的で包括的、統合的な新アプローチを象徴するものです。」と語った。

トムソン議長は、相互に平和を維持する方法を補強し、同時に2030アジェンダの17項目からなる持続可能な開発目標を実行する方法を模索するよう、参加者に呼びかけるとともに、今回のハイレベル対話をこの課題に関する「真実を語る基準(ベンチマーク)」とするよう強く訴えた。

トムソン議長はまた、「2030アジェンダと持続的な平和に関する諸決議は、加盟国が『持続可能な開発』と『持続的平和』を、不可分の2つのアジェンダとして捉えるよう明確にしたものです。」と指摘したうえで、「SDGsを履行する止めようもない潮流を生み出し、『持続可能な平和』と『持続可能な開発』が互いの要因であるとともに成果でもあることを認識する必要性があります。」と強調した。

トムソン議長はさらに、「長引く紛争に現在17カ国が影響を受けており、不安定化しているか、紛争、暴動状況などにある国々に20億人が暮らしています。また、難民と途上国内の内地避難民の95%が、1991年以降、10件の紛争によって影響を受けてきました。」と語った。

トムソン議長はまた、加盟国からの積極的な支援と関与を得て、事務総長のリーダーシップの下での国連システムによる行動と改革の必要性を強調し、「2日間に亘った今回のハイレベル対話の議事録は、国連総会の第72会期において今年後半に招集される予定の『平和構築と持続的な平和に関するハイレベル会合』の準備に貢献するだろう。」と語った。

「2030アジェンダ」は普遍的なツール

スウェーデン外相で1月の国連安保理議長をつとめたマルゴット・ヴァルストローム氏は安保理を代表して、「最近ノルウェーで開催された「北極協議会」の会合に参加しましたが、そこでは科学者らが北極の環境について暗い見通しを報告していました。その中で、『どうしたら夜安心して眠れるか』と問いかけられたある科学者が、『自分は解決策が議論されうる希望の持てる領域に目を向けたい。』と答えていました。このハイレベル対話がそうした 『希望の持てる領域』の一つになりうると思います。ナショナリズムや恐怖と分断が台頭しつつある昨今、私たちはこのハイレベル会合で、『変化は可能だ』という希望のメッセージを届ける必要があります。」と語った。

ヴァルストローム外相はまた、安保理が紛争予防と平和構築に関して1月に行った公開討論に言及して、「各加盟国は、潜在的な紛争に関する報告に接して、行動に移る意思と能力、そしてまた手持ちのツールについても考えてみなくてはなりません。」と語った。

ヴァルストローム外相はさらに、「2030アジェンダは平和構築と紛争防止に全ての国々と民衆が関与することを要請する普遍的なツールです。」と指摘したうえで、「SDGsの第16目標に規定された平和と正義の推進(=法の支配の強化とグッド・ガバナンスの必要性)を強調した。

SDGs Goal No. 16
SDGs Goal No. 16

そして具体的に重要なポイントとして、①リスク管理、根本原因、早期警戒、早期行動の重要性、②国連が世界銀行等の他の機関との協力を強化すること、③早期警戒と代替的な紛争予防措置に対して貢献する女性の役割、を指摘したうえで、「紛争予防は経済的な面からも望ましいことであり、より効果的に紛争予防を行えば、人道支援にかける開発予算を削減することができます。」と語った。

「平和構築委員会」委員長の職責で発言したケニアのマチャリア・カム大使は、「SDGsはより強靭な世界を実現するためのロードマップです。今回のハイレベル対話は、平和に向けた活動の一里塚として歴史に名を留めることになるだろう。」と述べ、今回のハイレベル対話を国連がSDGsという公約を果たすための出発点と認識するよう加盟国に求めた。

カンボジアのライ・トゥイ国連大使は、「(内戦を経験した)我が国は戦争の代償についていやというほど痛感しています。」と指摘したうえで、「全ての人々にとって持続可能な平和を構築することが最優先課題の一つです。」と語った。教育が平和構築にとって中心的な意味を持つことから、カンボジアの国家戦略的開発計画は、男女に平等な経済的機会を拡大することに焦点を当てている。

モルジブトリニダード・トバゴからの発言者は、気候変動という文脈から平和と開発について論じた。モルジブ代表は、水没が懸念される島嶼途上国にも国連安保理における議席が与えられ、「まだ行動する余裕があるうちに」気候変動と海面上昇の問題が議題とされ続けるようにすべきだ、と訴えた。

エルサルバドルのザモラ・リヴァス国連大使は、「和平協定と政治改革によって我が国は武力紛争を克服することができました。」と語った。しかし、そうした大きな成果を収めた一方で、エルサルバドルは、依然としてすべての社会階層において社会経済的発展を必要としており、事務総長に対してその実現のために必要な支援を行うよう要請した。

Building Sustainable Peace for All - General Assembly of the United Nations
Building Sustainable Peace for All – General Assembly of the United Nations


国連経済社会理事会のフレデリック・ムシーワ・マカムレ・シャバ議長(ジンバブエ)は、2030アジェンダと「開発資金に関するアジスアベバ行動目標」、気候変動に関するパリ協定国連の平和構築体制の見直し作業との間の連関を強調した、数多くの発言者の一人である。これらは一体となって、より望ましく、より包摂的で持続可能な世界への道を切り開いてきた。

コンゴ女性基金」および「平和と開発の統合をめざす女性の連帯」を代表して発言した市民社会代表のジュリエン・ルセンジ氏は、そうした紛争の原因に関する具体的な経験を共有した発言者の一人である。紛争の原因とは例えば、ルセンジ氏の祖国コンゴ民主共和国で起こった天然資源の違法な搾取、その結果としての不平等な富の分配などである。(原文へ

翻訳=INPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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Getting to Know UN Office for South-South Cooperation

IDN-INPS Editor-in-Chief and Director-General Ramesh Jaura met with Jorge Chediek, Director of the UN Office for South Cooperation (UNOSSC) at his office in New York on February 17, 2017 to acquaint himself with activities of this important constitutent of the UN system.

Among the issues discussed was what South-South Cooperation really means.

Simply put: South-South Cooperation is a broad framework for collaboration among countries of the South in the political, economic, social, cultural, environmental and technical domains. Involving two or more developing countries, it can take place on a bilateral, regional, subregional or interregional basis. Developing countries share knowledge, skills, expertise and resources to meet their development goals through concerted efforts. Recent developments in South-South cooperation have taken the form of increased volume of South-South trade, South-South flows of foreign direct investment, movements towards regional integration, technology transfers, sharing of solutions and experts, and other forms of exchanges.

Collaboration in which traditional donor countries and multilateral organizations facilitate South-South initiatives through the provision of funding, training, and management and technological systems as well as other forms of support is referred to as triangular cooperation.

READ our interview with the UNOSSC Director Chedek > Mainstreaming South-South Cooperation in the UN System

「核への抵抗」を象徴する国連会議

【ロンドンIDN=サマンサ・セン】

一部で語られてきた「世界新秩序」というものが、今や「世界新無秩序」へと崩壊していく恐れがある。なかでも、新たな懸念は、それを巡って米ロ両国が合意できないものではなく、むしろ合意できる問題なのかもしれない。かつて米ロ首脳はなにかにつけ反対側に立っているとみられていたが、ドナルド・トランプ大統領ウラジーミル・プーチン大統領は、お互いが、反対側から同じ方向を見据えている政治上の「双子」であることに気付いた。こうしたなか、核戦力の強化という問題ほど、この両者の見解の一致が致命的となる領域はないだろう。

米ロ首脳は、自国が保有するあらゆる兵器に肯定的であり、さらなる軍備増強を承認している。また両者とも、自国の核能力の「強化」について論じている。いったい何の目的でどの程度強化するのだろうか? 両国でいったい何度世界を破壊することができるのか。これは恐るべき計算だ。しかし、それを数える必要などない。たった一度の核戦争で十分だからだ。

UN General Assembly approves historic resolution on December 23, 2016. /ICAN
UN General Assembly approves historic resolution on December 23, 2016. /ICAN

国連総会は、トランプ候補の大統領当選以前に、核兵器を禁止する法的拘束力のある合意をまとめるために、3月と6・7月に会議を開くことを決議した。米ロ首脳が核兵器が実際に使用される前に事の真理を理解するだろうと期待している者はほとんどいないだろう。来る国連会議は、この政治的な双子を、その親戚(=他の核兵器国と核抑止を支持する国々)とともに正気への道、すなわち、人類が生き残る道へと引き戻す世界政治を強化する、時宜を得た動きとなるだろう。

この国連会議は、「改宗者」(=核抑止理論をもはや信奉しない国々)の間でのみ合意が交わされる単なる「しゃべり場」と化し、問題となっているその他の人々(=核保有国とその同盟国)が会議場からはるかに離れた所にいるだけのものになるという、冷ややかな見通しも出てきている。核を「持つ者」と「今後持つかもしれない者」がいかにして改心し軍縮に向かうのか? あまりありそうにないことだが、英国について、そのような希望がはたして持てるだろうか? 核軍縮キャンペーン(CND)は明らかにそのように考えているようだ。それは、CNDが単に英国に本拠を置いているという理由からだけではない。英国は米国の核兵器とその兵器システムに歴史的にも最も緊密に結びついている。しかし、英国内における核に対する抵抗は強く、しかも近年一層強まってきている。

CNDのケイト・ハドソン議長はIDNの取材に対して、「(非核化を訴えている)野党勢力が強い英国が、世界の核兵器体系の鎖において『最も脆弱な部分』であり、もし英国で核政策に変化をもたらすことができれば、他の核保有国にも波及効果があるのではないか、という推測もあります。」「それこそ、私たちが目標として活動していることです。」「核兵器を現在支持している世界の少数の指導者らが、いったいどんなメカニズムで核に関して正気を取り戻すのかは不明ですが、もし人類に将来があるとするならば、彼らはそうせねばなりません。」と語った。

Kate Hudson/ Campaign for Nuclear Disarmament
Kate Hudson/ Campaign for Nuclear Disarmament

そうしたメカニズムが英国でどう機能するかは不明だが、一つの「脆弱な部分」を指摘することは可能だ。それは、ヴァンガード級原子力潜水艦が配備されているスコットランドである。潜水艦発射弾道ミサイル「トライデント」システムの改修には約3000億ドルが必要とされており、核ミサイルシステムの改修はスコットランド市民の圧倒的多数にとって、危険で高価なうえ、おそらく機能しないとして反対する政治的な意見を民衆の声が後押ししている。

英国の欧州連合(EU)離脱投票を受けてスコットランドが英国から離脱する可能性は、今すぐとはいえないにしても、かなり高いものがある。このことが核兵器の将来に影を投げかけている。伝統に生き、観光客の目からは離れた風光明媚な沿岸の村々は、朝食をとりながら湾の向こうに停泊する核潜水艦を見やるなどという事態を決して歓迎しないだろう。英国市民の圧倒的多数は、その指導者らが見過ごしている正気を見せている。かつて「サダム・フセインの大量破壊兵器?」という民衆に投げかけられた幻影を根拠に(当時の英国政府が)イラクに侵攻した事実を誰も忘れてはいない。100万人がイラク侵攻に反対して「ダウニング街10番地」前を行進し、その中には数十万人の子ども達が含まれていた。そのとき街頭に繰り出した子どもたちは間違っていなかった。間違っていたのは政府だったのである。

子どもたちと民衆は再び、今回は核軍縮に関して正しい判断を下した。ブリストル大学の調査によると、核兵器によって安心感を得ると回答したのはわずか3%であった。このような結果を示す事例は、世界で枚挙に暇がない。

「世界的なトレンドは、冷戦終結以来相当程度に減少してきた核弾頭の数に関しても、国家と市民社会の両レベルにおける意見に関しても、『核兵器反対』にシフトしています。」「非核兵器地帯に参加する国々の数は増えており、今では南半球の全域と北半球の一部をカバーしています。また、数多くの主要な政治家が、核兵器はあまりに危険で保有するに値しないと認識するようになってきています。」と、ハドソン議長は語った。

僅か一握りの指導者が世界の生存に対する拒否権を持ちうるものだろうか? そして今、根本的に道徳的で政治的な問題が国連総会の会議で試練に付されることになる。行動する能力への信頼は、それ自体限定されている。国連安保理は、つまるところ、一部の国による決定権を認めている。この限界の中で、今年7月に核兵器が劇的に禁止されるというわけではないけれども、限定的な可能性は確かに存在する。停滞の20年を経て核軍縮が正式に国際的な議題に上り、それが最終目標地点というわけではないにせよ、もうあと数歩というところまで見えているのである。核兵器に対する圧倒的な民衆の反対は強まっており、核兵器への民衆の抵抗はさらに拡大していく勢いだ。

「世界的な核兵器禁止条約の確立を止められる世界の指導者は誰もいないが、実際にそれに署名させようとするプロセスは恐らく困難なものになるだろう。」とハドソン議長は語った。その困難とは、一部の指導者に自分たちとその国民にとって何が正しいかを理解させるという点にある。「核軍縮は彼ら自身にとっての利益でもあります。」とハドソン議長は付け加えた。「無用な大量破壊兵器に国の資源をこれ以上浪費することはできないし、自国絶滅の脅威を永続化させることもできません。指導者自身もこの脅威から逃れることなどできないのです。彼らを交渉のテーブルにつかせ、核兵器禁止を支持させることが私たちの仕事です。そしてそれは、事故であれ意図的なものであれ、核兵器が実際に爆発する前に実現しなければなりません。」

ICAN
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この論理は、まずもってトランプ大統領とプーチン大統領の面前で明確に示されることになるだろう。しかし、問題なのはこの2人だけではない。CNDが指摘するように、英国・フランス・イスラエルのような(すべてではないにせよ)その他の核兵器国も核兵器禁止に反対している。一方、北朝鮮はこれを支持し、中国・インド・パキスタンは棄権した。反対したその他の国々は主に、北大西洋条約機構(NATO)加盟諸国や日本・韓国・オーストラリアのように、米国と軍事同盟を結んでいる国々だ。

UN Secretariat Building/ Katsuhiro Asagiri
UN Secretariat Building/ Katsuhiro Asagiri

「国連での交渉は、国連総会の圧倒的多数によって支持されてきました。」とハドソン議長は言う。「世界的な核軍縮を望む願望は、数十年にわたって多くの国によって表明されてきましたが、核不拡散条約に体現された国際法に反対するほんの一握りの核保有国によって妨害されてきました。」

国連会議は、この核兵器体系の鎖を一撃の下に叩き斬るということにはならないだろうし、そう懸念する理由もある。しかし、(核兵器禁止という)困難な仕事を考えると、この鎖が「脆弱な部分」で弱められるだけでも意味があるだろう。この鎖の弱体化は、世論の力を通じてのみ成しうるものであり、英国においてのみ起こるものではない。世論の力には既に世界中で圧倒的なものがあり、必ずしも為政者自身が生み出したわけではない政治的決定につながってきた。(核抑止を信奉する)残された一部の指導者たちについても、今や民衆が政策に影響を及ぼすことが可能になっている。来る国連会議は、停滞しがちな外交チャンネルでの諸事を超えて、民衆へのシグナルとなることだろう。(原文へ

翻訳=INPS Japan

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【サンタバーバラ(米加州)IDN=リック・ウェイマン】

2016年10月24・25の両日、核時代平和財団は、様々な分野から核問題に取組んできた少人数の専門家(学者、活動家、思想家等)を招集して、核軍縮に向けたグローバルな言説をいかにして変えていくかを議論した。シンポジウム「喫緊の課題である核兵器廃絶」において、参加者らは、核の脅威をめぐる現状、核兵器廃絶に立ちはだかる地政学的・心理学的障害、今後進むべき道筋について議論した。

シンポジウムから僅か2週間後にドナルド・トランプ氏が米国の新大統領に選出されるという新たな政治的現実を盛り込むために、シンポジウム最終声明の発表は大幅に遅れることとなった。

今日の世界は、壊滅的な核の脅威に満ちている。最も破壊的な脅威は米国とロシアによるものであり、世界に1万4900発存在する核兵器の内、両国が実に93%を保有している。これらの核戦力が使用されれば、間違いなく「核の冬」が訪れ、人類文明の将来は深刻な危機に立たされるだろう。例えば、インド・パキスタン間の核交戦でも、地球の気温は相当程度に低下し、広範な飢餓と世界合計で20億人の死を招来する可能性が高い。

ICAN
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シンポジウムの最終声明は、シリアの多面的な紛争、米軍の太平洋への軸足シフト、大西洋条約機構(NATO)の戦争演習、東欧における米ミサイル防衛、引き続く北朝鮮との緊張関係など、数多くの極めて不安定な状況について指摘している。2017年1月21日にこの最終声明が公表されて以来、「核兵器廃絶(=核ゼロ)」を実現させる緊急性はますます明らかになってきている。

イランによる1月末の中距離弾道ミサイル実験後、トランプ大統領はツイッターで「イランに公式に警告する」と述べた。他方、米空軍は2月7日に大陸間弾道ミサイル「ミニットマンⅢ」の実験を計画している。米国は全米5州のミサイル格納庫に核兵器を搭載した「ミニットマンⅢ」を約400基配備している。

米空軍当局は、大陸間弾道ミサイルの実験後に、「攻撃からの防護を求める我々の同盟国と、平和を脅かす敵国に対して我々が送るメッセージ」だとして実験を称賛するのが通例だ。今週行われたミサイル発射を巡るダブルスタンダードは、米国以外の国々にとっては明らかだろう。

時計の針が進む

1月26日、『原子科学者紀要』の「世界終末時計」の針が、午前零時(=人類の絶滅)まで「あと2分半」に進められた。1950年代以来、午前零時に最も近付いたことになる。これにも関わらず、そして、上記の恐るべき状況にも関わらず、私達人類を破滅の淵から救い出すために一般市民の支持を必要とする前向きな取り組みが存在する。

Image credit: Bulletin of the Atomic Scientists
Image credit: Bulletin of the Atomic Scientists

エドワード・マーキー上院議員(マサチューセッツ州選出)と、テッド・リュー下院議員(カリフォルニア州)は米議会に、核兵器の先行使用を一方的に命令する大統領の権限を制限する法案を提出している。もっとも、かりにこの法案が可決したとしても、米議会が敵国に対して宣戦布告すれば、米国は依然として核兵器を先行使用することが可能であることから、十分な内容とは言えない。

しかし、トランプ大統領が不規則に行動し、非合理的な報復に打って出る傾向があることを踏まえれば、この法案制定が必要なものであることは明白だ。核兵器は決して民主主義と折り合うものではない。ハリー・トルーマン氏からトランプ氏に至る全ての米大統領は、巨大で、責任など取りようもない力を自らの手中に収めてきたのである。

3月15日、米連邦第9巡回区控訴裁判所は、マーシャル諸島共和国(RMI)が米国に対して起こした訴訟の口頭尋問を行う。RMIは米国が核不拡散条約第6条(次の段落を参照)に従うよう求めている。

各締約国は、核軍備競争の早期の停止及び核軍備の縮小に関する効果的な措置につき、並びに厳重かつ効果的な国際管理の下における全面的かつ完全な軍備縮小に関する条約について、誠実に交渉を行うことを約束する。

マーシャル諸島はとりわけ、米国は「これまで一度もなされたことがない交渉、すなわち、核軍拡競争の停止と核軍縮に関連した交渉を呼びかけ誠実に追求すべき」だと訴えている。米国に対する訴訟はもともと2014年にオバマ政権に対して提起されたが、審理が裁判所で続いていたため、現在はトランプ政権が相手となっている。

そして、3月27日には、核兵器禁止条約に関する歴史的な交渉が国連で開始される。昨年12月に国連総会で113カ国が支持したこの取り組みは、「核兵器の使用・開発・生産・取得・貯蔵・保持・移転に加え、あらゆる禁止行為に関与するあらゆる者への支援・勧奨・誘導も含め、核兵器に関連した幅広い行為」を禁止する条約につながることであろう。

昨年12月22日、当時は次期大統領だったドナルド・トランプ氏は「米国は、世界が核に関してまともな感覚を取り戻すまでの間は、核能力を大幅に強化し拡大しなくてはならない」とツイートした。しかし現実には、世界の大多数の国々は、核兵器廃絶を達成する緊急の必要に関して、実際のところまともな感覚を持ちあわせているのである。他方で、世界9つの核保有国とその支援国が、引き続き全人類を脅かし続けている。

United Nations Headquarters in New York City, view from Roosevelt Island. Credit: Neptuul | Wikimedia Commons.
United Nations Headquarters in New York City, view from Roosevelt Island. Credit: Neptuul | Wikimedia Commons.

核時代平和財団シンポジウムの最終声明が述べるように、「核兵器廃絶に向けて努力すべき倫理的な必然性が存在する。人類やその他の複雑な生命体が将来生き残れるか否かは、この必然性を踏まえた行動にかかっている。」(原文へ

※リック・ウェイマンは、「核時代平和財団」事業・運営部門の責任者。

翻訳=INPS Japan

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A Stimulating Meeting at the Kazakh Mission to the UN

IDN-INPS Editor-in-Chief and Director-General Ramesh Jaura had a stimulating meeting with Ambassador and Permanent Representative of the Republic of Kazakhstan, Dr. Kairat Umarov, on February 8, 2017 at the Central Asian country’s Permanent Mission to the UN in New York.

Before moving to New York, he was in Washington serving as Ambassador to the U.S. since January 2013 – after serving as Kazakhstan’s Deputy Foreign Minister since 2009. Prior to the Deputy Foreign Minister’s post, Dr. Umarov was Ambassador to India and Sri Lanka for five years.

His appointment as PR to the UN coincides with the beginning of Kazakhstan’s two-year (2017-2018) tenure as non-permanent member of the Security Council.

Another highlight of 2017 is President Nursultan Nazarbayev’s announcement “to build a more efficient, sustainable, modern system of governance” (Kazakhstan Moves Toward Democratic Development). The Kazakh Mission hosted on February 17 a special event entitled “Political and Economic Reforms: Steps in Implementing SDG 16”.

Yet another 2017 highlight is Expo 2017 (between June 10 and September 10, 2017) in Astana, which would not only demonstrate the future energy, but also the problematic issues of developing countries. Expo’s theme is “Future Energy”, and aim is to create a global debate between countries, nongovernmental organizations, companies and the general public on the crucial question: “how do we ensure safe and sustainable access to energy for all while reducing CO2 emissions?”

アフリカ連合、米国の移民政策を非難

【ニューヨーク/アジスアベバIDN】

アフリカ連合(AU)は、物議を醸している米国新政権が打ち出した反移民措置について、アフリカの黒人拉致の歴史を想起して、「かつてアフリカ人を奴隷労働力として強制的に連行していながら、米国政府は、今や、自国に入国しようとするイスラム教徒の移民に門戸を閉ざした。」と非難する声明を出した。

「世界は明らかに大変困難な時代に突入しつつあります。」と、アフリカ連合のヌコサザナ・クラリス・ドラミニ=ズマ前委員長は、エチオピアの首都アジスアベバで1月30日~31日に開催したアフリカ連合首脳会議で語った。

「かつて大西洋奴隷貿易においてアフリカの人々が奴隷として送り込まれたまさにその国(=米国)が、我々の一部加盟国からの難民の受入れを禁止する決定をしました。」とズマ前委員長は語った。

1月27日、ドナルド・トランプ大統領は、移民の受入を停止しイスラム教徒が多数を占める7カ国からの入国を禁止したが、そのうち3か国はアフリカ連合の加盟国である。

トランプ大統領は27日に署名した大統領令により、ビザ発給の手続きについて見直しを命じ、アフリカの3か国(リビア、ソマリア、スーダン)及び中東の4か国(シリア、イラク、イエメン、イラン)の人々については、90日間、入国を停止した。

すべての国からの難民の受け入れも27日から120日間停止し、シリア出身の難民については、受け入れを無期限停止とした。

アフリカ連合首脳会議に出席したアントニオ・グテーレス新国連事務総長は、「アフリカ諸国が暴力を逃れてくる難民の受け入れに大変寛容であるのとは対照的に、先進国を含む他の地域では、一部の国が国境を閉じ、壁を築いている。」と批判した。

Map of countries affected by Executive Order 13769, issued by President Donald Trump, that restricts both the travel and immigration of people in said countries./ JayCoop - Own work, CC BY-SA 4.0
Map of countries affected by Executive Order 13769, issued by President Donald Trump, that restricts both the travel and immigration of people in said countries./ JayCoop – Own work, CC BY-SA 4.0

グテーレス事務局長は、アフリカ諸国は世界で最も寛容に難民を受入れている、と称賛した。

Chadian Foreign Minister Moussa Faki Mahamat/ Par Foreign and Commonwealth Office

アフリカ連合首脳会議では、まずズマ委員長の後任となる新委員長の選出が行われ、7度におよぶ投票の結果、最後まで対立候補として残ったケニアのアミーナ・モハメッド外相を含む4人の候補を抑えて、チャドのムーサ・ファキ・マハマト外相(56歳)が新委員長に就任した。

ファキ氏は、同国のイドリス・デビ大統領がアフリカ連合議長職をギニアのアルファ・コンデ大統領に引き継ぐ中、アフリカ連合の執行機関である「委員会」のトップである委員長職に就任した。

チャドの首相経験者でものあるファキ外相は、これまでナイジェリア、マリを含むサヘル地域におけるイスラム教主義者との闘いの最前線で活躍してきた人物であり、アフリカ54カ国が加盟するアフリカ連合の執行機関のトップとして、「開発と安全保障」を最重要課題に取り組んでいくと述べた。

ファキ新委員長は、「私は、銃の音が民謡や工場の喧騒にかき消されるアフリカを夢見ています。」と述べ、向こう4年の任期中に、アフリカ連合の官僚体質を改めていくことを約束した。

モロッコの再加盟を承認

今回のアフリカ連合首脳会議のハイライトは、33年ぶりにモロッコの再加盟が実現し、これでアフリカ大陸全ての54カ国と西サハラがアフリカ連合に加盟したことである。モロッコの加盟を巡っては、土壇場になって一部の反対国から「他の加盟国の領土の一部を占領している国(=モロッコ)の加盟が可能か疑問を呈する」意見書が提出される場面もあったが、主要加盟国(ナイジェリア・南アフリカ共和国・アルジェリア・ケニア・アンゴラ等)を含む39カ国の賛成多数で認められた。

African Union
African Union

モロッコは、実効支配している西サハラについて、「この旧スペイン植民地はモロッコの不可分の一部」として領有権を主張している。一方、西サハラにおける独立国家の建設を目指すポリサリオ戦線は、帰属に関する住民投票の実施を要求している。

アルジェリアと南アフリカ共和国がポリサリオ戦線の主な支援国である。南アのジェイコブ・ズマ大統領は、先月、ポリサリオ戦線の指導者ブラヒム・ガリとの会談後、「西サハラが、今なお植民地化されている現状は理解しがたい。」と指摘したうえで、「南アは、西サハラの人々が自らの土地で自由に暮らし将来を決定できるようになるまで、引き続き西サハラの民衆を支援していきます。」と語った。

モロッコの加盟決議に先立ち、集中的なロビー活動が行われた。それは、モロッコが加盟すれば既にアフリカ連合に加盟しているサハラ・アラブ民主共和国が除名されるのではないかという懸念が西サハラの人々の間で広がっていたからである。昨年、アフリカ連合には加盟国の意思に反して除名する方針について明確な規定がないにも関わらず、28の加盟国がサハラ・アラブ民主共和国の除名を求める嘆願書に署名していた。

しかしアフリカ連合の法律顧問は、「こうした根本的な懸念事項は十分に考慮されなければならない」と指摘しつつも、モロッコの再加盟について許可する判断を下した。

Map of Morocco
Map of Morocco

モロッコは1984年に、アフリカ連合の前身組織である当時のアフリカ統一機構がサハラ・アラブ民主共和国の加盟を認め、事実上西サハラの独立を承認したことに抗議して、脱退した。

今回モロッコの再加盟が支持された背景には、同国の経済的な豊かさがある。アフリカ連合は重要な資金提供者であった リビアの最高指導者ムアンマール・カダフィ大佐が死亡して以来、新たな資金提供者を必要としていた。

欧米諸国で孤立主義的な傾向が増し、アフリカ連合が域外からの経済支援から脱却して独立独歩の体制構築を志向するなか、アフリカ連合は、モロッコの加盟によって、欧米との密接な関係を持つ加盟国を得たことになる。モロッコは米国の緊密な同盟国として、「テロとの戦い」に協力しているほか、欧州連合に協力してアフリカ人移民の欧州渡航を阻止する支援を行っている。(原文へ

翻訳=INPS Japan

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Introducing IDN-INPS to UNDPI Chief Cristina Gallach

In a warm-hearted meeting on February 7, 2017 at the United Nations headquarters, Ramesh Jaura, Editor-in-Chief and International Correspondent of IDN-InDepthNews introduced the International Press Syndicate (INPS) Group of which IDN is flagship agency to Ms Cristina Gallach, UN Under-Secretary-General for Communications and Public Information, Department of Public Information (DPI).

In the ensuing interview, the DPI Chief answered questions such as: What has happened since the UNDPI / NGO Conference that concluded on June 1, 2016 in Gyeongju, South Korea? What role are youth groups playing in the second year of implementation of Sustainable Development Goals (SDGs) endorsed by the international community in September 2015? Will there be a DPI / NGO conference in 2017 despite a new Secretary-General and management team taking office in January? What does it mean serving as Under-Secretary-General for Communications and Public Information at the United Nations?

To read the Q&A in full: Young People Drivers of UN Sustainable Development Agenda

著名な仏教指導者、核軍縮のために首脳会談の開催を求める

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【ベルリン/東京IDN=ラメシュ・ジャウラ、浅霧勝浩】

日本の仏教哲学者・平和活動家である池田大作氏は、世界の核兵器の90%以上を保有している米国とロシアの首脳会談を早期に開催し、核軍縮に向けた世界的なうねりを生み出すことを提唱した。

仏教団体である創価学会インタナショナル(SGI)の池田会長の提案は、2017年1月26日に発表された第35回平和提言「希望の暁鐘 青年の大連帯」に盛り込まれている。

Mihail Gorbachev/ Katsuhiro Asagiri
Mihail Gorbachev/ Katsuhiro Asagiri

この提言は、ミハイル・ゴルバチョフ元ソ連大統領が「まるで世界が戦争の準備を進めているかのようだ」と警告する中で出されたものである。ゴルバチョフ氏は『タイム』誌に寄稿した記事の中で、「今日の世界は問題で溢れかえっている。政策当事者たちは困って、どうしたらいいか分からないようだ。しかし、政治の軍事化と新たな軍拡競争ほど、今日において緊急の問題はないだろう。この破滅的な競争を止め、反転させることが、私たちの最優先課題であるべきだ。現在の状況はあまりにも危険だ。」と述べている。

ゴルバチョフ氏は、国連安保理が「元首級」の会合を開き、「核戦争は許されず、決して遂行されてはならないと謳う決議を採択する」よう求めた。

池田会長の平和提言はまた、米国のドナルド・トランプ大統領が核の危険を減らすのか、それとも自滅的な軍拡競争につながる行動に訴えるのかについて、専門家が読み切れずにいる中で発表されたものでもある。

トランプ大統領が1月20日に第45代米国大統領に就任する5日前、『サンデー・タイムズ』紙は、「トランプ大統領の初外遊として恐らくはアイスランドの首都レイキャビクでロシアのウラジミール・プーチン大統領との首脳会談を計画している、とトランプ大統領の側近が英国当局に対して語った。」と報じた。同紙は、匿名筋の情報として、トランプ大統領が核兵器を制限する協定の策定を始めることを計画し、ロシアも会談開催に合意したと報じている。

Josei Toda/ Seikyo Shimbu
Josei Toda/ Seikyo Shimbun

同紙によれば、トランプ大統領はアイスランドの首都で1986年にロナルド・レーガン大統領(当時)がソ連のゴルバチョフソ連共産党書記長(当時)と行った首脳会談に追随しようとしているという。米ソ両首脳は、冷戦の最中、重要な核軍縮条約を策定すべく会談を行った。しかし、トランプ政権のショーン・スパイサー報道官はこの報道を否定し、ツイッターで「100%事実無根」と述べている。

池田会長は平和提言で、師である創価学会の戸田城聖第2代会長が60年前の1957年に発表した「原水爆禁止宣言」を想起している。戸田会長は、核抑止は幻想に過ぎないことを明らかにしようとし、核兵器の使用は決して正当化されないと力説した。

池田会長は12月23日に国連総会で採択された決議を歓迎している。これは、(軍縮と国際安全保障問題を扱う)国連総会第一委員会が10月27日に採択した決議を受けたものである。同決議は、一部の核保有国からの強い反対を受けながらも、核兵器禁止条約に関する交渉を開始することを決定したものである。

国連総会は、「核兵器を禁止しその完全廃絶につなげるような法的拘束力のある文書」を交渉するすべての加盟国に開かれた会議を2017年3月から開始することを決めた。ニューヨークの国連本部で開催される予定のこの会議は、3月27日~31日と6月15日~7月7日の2つの会期に分かれている。

池田会長は、この交渉に核保有国の参加が厳しい予想ではあるが、唯一の戦争被爆国である日本には、できるだけ多くの国々に参加を働きかける道義的責任がある、と強調している。

UN General Assembly approves historic resolution on December 23, 2016. /ICAN
UN General Assembly approves historic resolution on December 23, 2016. /ICAN

池田会長は、そうした法的文書の制定は、いかなる国にも核戦争による惨劇が絶対に繰り返されないための地球的共同作業である、と指摘したうえで、核兵器禁止条約は、核不拡散条約(NPT)に一致すると強調している。NPTの第6条は、完全な核軍縮に向けて誠実に交渉を行うことを締約国に求めている。

池田会長は、この交渉プロセスにおける市民社会の行動は、核兵器禁止条約を「民衆の主導による国際法」として確立する流れを作り出す力になると見ている。

SGIの35回目の平和提言の重要性は、この提言が『原子科学者紀要』の科学・安全保障理事会が、「世界終末時計」の70年の歴史上初めて、この象徴的な時計の針を、午前0時(=人類の絶滅)に向けて30秒進めた(=あと2分30秒)日と同じ1月26日に発表された点にある。

Image credit: Bulletin of the Atomic Scientists
Image credit: Bulletin of the Atomic Scientists

世界終末時計の針を動かす決定は、『原子科学者紀要』科学・安全保障理事会が、15人のノーベル賞受賞者を含む同誌の支援者会議との協議のうえで行っている。

『原子科学者紀要』は「理事会は、米国の新大統領であるドナルド・トランプ氏というたった1人の言葉を元にこの決定をなしたが、これもまた初めてのことだ。」と述べている。

終末時計に関する科学・安全保障理事会の声明全文は、2016年1月には時計の針は動かされず「午前0時まで3分」に留まったと指摘している。なお、2015年には時計の針が「午前0時まで5分」から「3分」に進められ、1980年代の軍拡競争の時代以来、午前0時に最も近づいていた。

理事会はさらに、「2016年を通じて、核兵器と気候変動という人類の存在を脅かす最も緊急の脅威に効果的に取り組むことに国際社会が失敗する中で、世界の安全保障環境は悪化した。」と述べている。

「この既に危機的な世界情勢は、2016年にナショナリズムが世界的に高揚したことが背景にある。例えば、米国大統領選で勝利を収めることになるドナルド・トランプ氏は選挙期間中、核兵器の使用と拡散について不安感を煽る発言をし、気候変動に関して科学的に圧倒的な一致を見ている事柄についての不信を表明した。…」

「史上初めて、針を1分未満動かすという理事会の決定は、この声明を発表する時点で、トランプ氏が米国大統領に就任してほんの数日であるという、単純な事実を反映している。…」

Dr. Daisaku Ikeda/ Seikyo Shimbun
Dr. Daisaku Ikeda/ Seikyo Shimbun

こうした背景により、核兵器を禁止し「核兵器なき世界」を導くための重要なステップとして、核軍縮に向けた世界的な流れを構築するよう繰り返し訴えてきた池田会長の提言に、さらなるスポットライトが当たることになる。

また池田会長は、こうすることで、アントニオ・グテーレス国連新事務総長をはじめとする勢力と、手を携えていくことになる。グテーレス事務総長は、「軍縮は、既存の紛争を終わらせ、新たな紛争の発生を予防するうえで、重要な役割を担いうる。」と論じ、「すべての大量破壊兵器の廃絶と通常兵器の厳格な規制を積極的に追求する」ことを誓っている。

グテーレス事務総長は、1月23日に2017年(全3会期)の第1会期を開始したジュネーブ軍縮会議へのビデオメッセージで、「私は核兵器なき世界の実現に向けて最大限努力します。」と宣言している。(原文へ

翻訳=INPS Japan

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