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│キューバ│ローマ法王訪問に向けた環境づくり進む

【ハバナIPS=パトリシア・グロッグ】

ローマ法王のベネディクト16世が来春にキューバを訪問する計画が進んでいる。これによって、キューバ政府とカトリック教会の関係改善が図られるのではないかと期待されている。

キューバ司教会議(COCC)のホセ・フェリックス・ペレス・リエラ事務次長は、IPSの取材に対して、「喜びと希望に満ち溢れています。ローマ法王のキューバ訪問は、キューバ人の間の一体感を高めるとともに、和解も促進することになるでしょう。」と語った。

 また、宗教学が専門のエンリケ・ロペス・オリバ教授は、ラウル・カストロ国家評議会議長とハバナ大司教のハイメ・オルテガ枢機卿が昨年会談したことを踏まえて、「ローマ法王のキューバ訪問は、国家と教会の関係を新たな段階へと進める契機となる可能性があるだけに、大変重要な出来事になるでしょう。」と語った。

キューバ司教会は、今回のローマ法王庁の発表について、「全てのキューバ人の母なるマリア様からの恵みにほかありません。」と歓迎の意を表明している。キューバ国内では、昨年8月から年末までの予定で、「エルコブレ聖母」像(La Virgen de La Caridad del Cobre)の巡回が行われている(キューバ革命後はじめてのこと:IPSJ)。
 
この聖母像は、普段はキューバの南端の県の一つ、サンティアゴ・デ・クーバ(ハバナの東861キロ)から12キロ郊外の大教会堂(básilica)に安置されている。布衣装を着て幼子を抱えたこの聖母像は、1612年に、島の北岸にあるニペ湾に浮かんでいるところを、インディアンの兄弟フアンとロドリゴ・デ・オヨスと黒人の少年フアン・モレノによって発見された。伝説によると、この聖母像が乗っていた板には「私は、この島の住民を保護するマリア」と刻まれていたという。来年は聖母像発見400周年となり、キューバ人、外国人を問わず多くの巡礼者が聖地エル・コブレを訪問することが見込まれている。

「特に来年は聖年にあたる年ですから、ローマ法皇が巡礼に来訪されるには素晴らしい機会だと思いますし、大変嬉しく思っています。(現在行われている)聖母像の全国巡回はキューバ国内における信徒の信仰心を深める上で重要な役割を果たしていると思いますし、ローマ法王の来訪に向けたよい環境作りができつつあると思います。」とペレス・リエラ司祭は語った。


ベネディクト16世の前の法王であるヨハネ・パウロ2世は、1998年1月にキューバを訪問したことがある。 ヨハネ・パウロ2世 フィデル・カストロ国家評議会議長(当時)と会談し、それまで必ずしも容易ではなかった国家とカトリック教会との間に架け橋を築くことに成功した。

その後カストロ議長は、2006年に体調を崩して現役を退く前に、その前年に法王となっていたベネディクト16世に少なくとも2度にわたって招待状を出していたが、訪問は実現していなかった。

フィデルの後を継いで執政しているラウル・カストロ議長は、オルテガ枢機卿、COCCのディオニシオ・ガルシア総裁と2010年5月に長い会談を行い、カトリック教会と国家の関係改善について話し合っていた。この会談の結果、2003年に一斉検挙され米国の陰謀に加担して国家転覆を図ったとして厳しい判決を受けた(「 黒い春事件」)最後の57人を含む100人以上の政治囚が釈放されている。ちなみに今回釈放された元政治囚の大半はキューバを離れることに同意している。

ラウル・カストロ議長は、キューバ共産党第6回大会への報告の中で、政治犯釈放交渉においてカトリック教会指導部が果たした役割を高く評価するとともに、彼らとの交渉は「相互に尊重し合い、誠実さと、透明性を確保したものであった。」と力説した。またカストロ議長は、「この対話を通じて、私たちはキューバの歴史及び革命プロセスにおいてもっとも重要なレガシー、すなわち『国としてのまとまり』を強化することを選択したのです。」と語った。専門家は、カストロ議長のカトリック教会に対するこうした方針は、今後も引き継がれていくだろうと見ている。

ロペス・オリバ教授は、ローマ法王のキューバ訪問は、オルテガ枢機卿による従来の努力を後押しする効果があると指摘して、「キューバ政府に対する対話者として、カトリック教会内におけるオルテガ枢機卿の地位を固めることになるだろう。」と語った。オルテガ枢機卿は教会法に従って75歳になった際、ハバナ大司教の職を辞したいと願い出たが、バチカン法王庁が慰留した経緯がある。

また、ロペス・オリバ教授は、「オルテガ枢機卿は、キューバ内外の反対勢力からは、『カストロ政権に対して融和的すぎる』として批判の対象となってきました。しかし、ベネディクト16世がキューバを訪問することで、オルテガ枢機卿は教皇の支持を得ていることが内外に示されることになるのです。」と語った。

さらにロペス・オリバ教授は、「ローマ法王のキューバ訪問は、在外のキューバ人カトリック教徒、とりわけ米国在住のキューバ人のキューバ国家に対する態度を変えることになるかもしれません。」と語った。こうした在外キューバカトリック教徒の多くが、来年の聖母像発見400年祭には、エルコブレ大教会堂への巡礼にキューバを訪れると見られている。(原文へ

翻訳=山口響/IPS Japan浅霧勝浩

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メコン川流域の不法地帯警備に中国が介入

【バンコクIPS=マルワーン・マカン-マルカール】

中国は、軍閥や麻薬密輸者が跋扈している東南アジアの一角(=メコン川上流地域)に武装巡視艇を派遣する意向である。中国はメコン川を通じて5か国(タイ、ビルマ、ラオス、カンボディア、ベトナム)と接している。

中国の『人民日報』ウェブサイトによれば、タイ北部のチェンセンと中国雲南省の關累をむすぶ河川輸送ルート(対象の保護船舶は約130隻)を5隻の中国巡視艇が警備するとのことである。

 ラオス、タイ、ビルマ三国の国境が交わる岩だらけの山岳地帯は、麻薬密輸で有名な「黄金の三角地帯」と呼ばれており、メコン川もここを通っている。「中国の巡視艇は、これらの国々を行き来する中国、ラオス、ビルマ、タイの合法的な貨物輸送を警備する予定です。」と、メコン川を交易に利用している中国人船主協会のFang Youguo事務局長は述べている。

中国は10年前にタイ、ラオス、ビルマとメコン上流域における大型船舶の航行を可能にする浚渫工事に合意し、この地域への戦略的な足場を獲得することに成功した。

現在ではタイ(チェンセン)から中国(雲南)へのメコン川輸送ルートは、セメント、鉄、果物、石油など、年間15億ドル以上の物資を取り扱っている。一方、中国からは、にんにく、玉葱、リンゴ、タイ市場向けのプラスチック製品等を積載した船がタイに航行している。

今回の中国政府の決定は、2隻の中国貨物船が何者かによって襲われ、中国人乗組員13人が殺害されるという10月5日の事件をきっかけとしている。

当初タイ軍特殊部隊は、ビルマの少数民族シャンの麻薬密売組織のリーダーNor Khamを容疑者として挙げていたが、10月末までには、タイ警察は9名のタイ軍兵士を容疑者に指名した。

一方11月上旬にはメコン地域のラオス領でカジノを経営している中国人実業家Zhao Wei氏の名が容疑者として浮上した。Zhao氏は、中国人顧客を呼び込んでいた彼の違法賭博場を手入れした中国官憲とトラブルを起こしていた。

中国人船員が殺害されたこの事件は、中国国内で大きな反響を呼び、中国政府は警備体制が整うまで、中国向け河川輸送を一時停止する措置をとった。陸上通商ルートと共にメコン河川を通じた輸送ルートは、中国と南に隣接した各国とのユニークな協力関係を構築することに貢献している。

「10月5日(の殺人事件)については多くの人々が関心を持ち、怒りと共に真相究明を呼びかける声が高まっています。治安問題は、地域協力を安定化する上で極めて重要な問題です。」とコラムニストのDing Gang氏は大手日刊紙「グローバルタイムス」に寄稿している。

中国政府は、タイ、ラオス、ビルマ各政府に、事件の捜査を強化するよう圧力をかける一方、国境地帯の共同警備を可能にする四カ国協定を10月31日に結んだ。

国際人権 NGO「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」(本部・ニューヨーク)の中国担当上級調査員であるニコラ・ベクイリン氏は、IPSの取材に対して、「これは(中国が)この地域の支配的な勢力になろうとしている意思表示なのです。」と語った。

「正義が勝つためには、犯人と扇動者を追い込み、法の裁きを受けさせなければならない。『黄金の三角地帯』をとりまく複雑な状況を考えれば、国境を越えた多国間の捜査と連携が重要である。」と先週中国の英字日刊紙「チャイナ・デイリー」は論説の中で報じた。

しかしこのような新協力体制のレトリックが、無法が蔓延る「黄金の三角地帯」で機能するかどうかはこれからの課題である。警察を含む従来の地域協力体制の下では、密輸、射殺問題に対して有効な成果を上げられずにきた経緯がある。

メコン川と国境をまたがる犯罪は、関連各国による最善の努力にも関わらず、引き続き大きな問題である。この地域の犯罪例には、麻薬関連のものの他に、ゆすり、強盗、発砲事件があります。」と国連薬物犯罪事務所(UNODC)東アジア・. 太平洋地域センターのゲイリー・ルイス所長は語った。

「黄金の三角地帯の中には人里離れて、立ち入りが困難な場所が多々あり、メコン流域全般を警備するのを極めて困難にしています。こうした環境が犯罪組織に理想的な活動拠点を提供しているのです。」とルイス所長は語った。

国連薬物犯罪事務所(UNODC)は、9月に発表した報告書の中で、「黄金の三角地帯」を流れる全長4880キロのメコン川を、ビルマのシャン州で製造されたメタンフェタミン錠剤の主要な密輸ルートとなっている点を指摘している。この内容は、黄金の三角地帯がかつて世界最大の麻薬・ヘロインの密造地帯であったことを髣髴とさせるものである。

「黄金の三角地帯の密輸業者や軍閥は、麻薬取引から利益を得ていないときは、メコン川を航行する中国船舶から、『保護手数料』と称して金品を脅し取ってきました。」とシャン族の通信社で編集長をつとめるクエンサイ・ジャイエン氏は語った。

「彼らは、長年に亘って貨物船を襲って荷物を奪い取ってきました。中には、停船を拒否したことから撃ち殺された中国人船員も少なくありません。」とジャイエン氏は語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan

|リビア|「過去の失敗は繰り返してはならない」とUAE紙

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【アブダビWAM】

「リビア人は過去の失敗や落とし穴を避けるべきだ。暫定国民評議会(NTC)には、全ての囚人が適正な法の手続きに則って裁かれるよう保証する義務がある。」とアラブ首長国連邦(UAE)の英字日刊紙が報じた。

ガルフ・ニュースは12月3日付の論説の中で、「最近国連がリビアの革命勢力による捕虜の扱いに関する報告書を公表したが、内容は驚くべきものだ。」と報じた。

「現在捕虜の総数は7000人で、弁護士の接見も許されない状況で拷問や虐待を受けているものも少なくない。」と同紙は報じた。

また同紙は国連報告書の以下の部分を引用している:「暫定国民評議会(NTC)は、捕虜の管理・監督権を軍の部隊から、正式な国の担当組織に移行させる手続きを進めているが、囚人を拘束する規則の整備や虐待の防止、拘束期限が切れている囚人の釈放問題など、すべきことはまだたくさんある。」

 「リビアは長年に亘ったカダフィ独裁政権の崩壊を受けて、大規模な再建プロセスの渦中にある。しかしだからと言って、不正を許容する余地があってはならない。」とガルフ・ニュース紙は強調した。(原文へ

翻訳=IPS Japan戸田千鶴

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国連の査察機関、2003年以前のイラン核兵器研究について詳述する

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【ワシントンIPS=バーバラ・スラヴィン】

イランの核開発疑惑に関する最新の国際原子力機関(IAEA)報告書は、2003以前にイランが核兵器製造に関する幅広い研究を行っていたとする有力な証拠を提供している。しかしその後どの程度作業が継続されたかについては明確に示していない。

IAEAは11月8日、10以上の加盟国やイランの核開発事業に関与したことがある外国人科学者から提供された情報を含む「幅広い独立情報源」を引用しながら、「イランは、1990年代末から2003年まで、『核起爆装置の開発に関する』様々な活動を行っていた。」と述べた。

 通常のIAEA報告書に添付された14ページに亘る付属文書に詳述されている内容は、IAEAや国際社会がイランに対して、(核兵器開発疑惑に関する)より明確な回答や、核関連施設への一層のアクセスを要求するうえで、十分な攻撃材料となるものである。しかし、イランが実際に核兵器を製造したことを示すものは、記されていなかった。
 
今回のIAEA報告書には、新たな情報として、「イランは、核弾頭製造に必要なウランメタルの製造実験や、高性能爆薬を使った起爆実験、さらに中距離弾道ミサイル(ハジャブ3)に装着する小型核弾頭の研究を行った。IAEAが入手した衛星写真によると、イランはテヘラン郊外の(パルチン軍事)施設に、起爆実験を行うための鋼鉄製大型コンテナを設置している。」と記されている。

「こうした活動は、核不拡散条約(NPT)の規定の下で平和的な核利用に専念するとしてきたイラン自身の公約に違反するものであり、イランには説明責任がある。」とIAEAは主張している。

一方報告書は、イランが、ナタンツにウラン濃縮工場、さらにアラクに重水製造プラントと原子炉の建設を進めていることをIAEAに説明し、少なくとも一時的に核開発計画を停止したとされる2003年以後の状況については、あまり触れていない。

この点について報告書は、「IAEAがイランの核開発の状況を把握できる能力は、2003年末以降、イランに関する情報入手がより困難となったため、限定的なものとならざるを得なかった。」と認めている。

従って、IAEA最新報告書の内容は、批判が強い2007年の米国家情報評価(NIE)の内容に概ね一致するものである。NIEは、米政府の各省庁にまたがる16情報機関が、外交安全保障の主要課題について総意をまとめたもので、2007年半ばの段階で、イランが核兵器計画を再開していない見込みは「中程度の信頼性がある」と分析していた。

今回のIAEA報告書を受けて、早速保守派グループは、イラン中央銀行に対する制裁と「全てのオプション‐つまり軍事攻撃を意味する‐」を視野に入れた、より厳格な対策を新たにイランに対して講じるべきとの要求をはじめた。

主要ユダヤ組織会長会議のリチャード・ストーン議長とマルコム・ホーンライン副議長は、「(IAEA報告書によって)核兵器開発に関するイランの意図や方向性について、もはや疑念の余地はなくなりました。イランは核兵器開発を急速に進めているのです。」「報告書の内容は明らかであり、『全てのオプション』を含んだ迅速、かつ包括的な対応策を求めています。」と語った。

しかしイラン核開発計画に関する主要な側面については、何年も前から知られているものであり過去のIAEA報告書においても議論されてきている。

元IAEAの査察官で、現在は、米シンクタンク、科学国際安全保障研究所(ISIS)の所長を務めるデイビッド・オルブライト氏は、IPSの取材に対して、「『イランに対する圧力が功を奏し』、IAEAが『構造化された』プログラムと呼んでいた核兵器開発を、イランが2003年段階で停止していたとの新たな証拠に接し、勇気づけられました。イランが自国のミサイルに装着可能な信頼性が高い核弾頭の開発に成功しなかったと知ることは、重要なことです。なぜならその時点で実際に開発が停止していたということは、私たちの立場をずっと安泰なものにするからです。」と語った。

さらにオルブライト氏は、「しかし、イランは核兵器の製造方法やそれを信頼性の高いものにするために克服しなければならない問題点も知っているのです。」と付加えた。

報告書の主張の中で、2003年以降のイランによる核開発疑惑とされる部分については、論拠に乏しいものである。例えば、「イランは2004年以降に、核爆発につながる連鎖反応を引き起こすために必要な『中性子起爆装置』の製造を試みた。」との情報を提供したのは、IAEA加盟の僅か匿名の1か国にすぎない。

また、「イランは2008年と2009年に、信頼性が高い核爆弾を製造するための次のステップとなる、核装置のコンピュータ・シュミレーション(通常の爆破による衝撃波が、核装置の中核部にある球状燃料をどのように圧縮するかを検証するもの)を行った」との情報提供をおこなったのは、IAEA加盟の匿名の2か国であった。

「新たに詳述された報告が含まれているものの、今回の報告書が伝えている全体像は、以前に聞いたことがあるものばかりです。(核兵器開発の兆候を示す)新たな場所だとか実験分野に関する情報は全く示されていません。」と、軍備管理協会のダリル・キンボール事務局長は語った。

この報告書はIAEA理事国(35ヶ国)に配布され、まもなく内容がメディアにリークされた。これに対しイランは現時点では反応を示していない(その後、マームード・アフマディネジャド大統領は、「イランは核兵器を必要としない。IAEAの報告は米国の主張の代弁に過ぎない。イランは核計画で絶対後退しない。」(イラン国営放送)と反論した:IPSJ)。イランは過去においても、IAEAが調査をある程度実施していることは認めつつも、「偽造文書を根拠にイランと対峙している」としてIAEAを非難したことがある。

バラク・オバマ政権は、報告書の内容を慎重に検討し、対イラン制裁のさらなる強化を含めて、外交的解決に一層努力していく意向を表明した。
 
この報告書の中で最も憂慮すべき個所は、保障措置の対象となるイランのウラン濃縮施設について記された冒頭の部分であった。報告書は、「イランはゆっくりではあるが着実に核濃縮作業を継続しており、今日では既に5%まで濃縮したウラン235を5トン近く、そして20%まで濃縮したウラン235を74キロ近く保有している。この備蓄量は、兵器級ウラン(濃縮度90%以上)に変換された場合、核爆弾数個を製造するに十分な量である。」と指摘している。

報告書は翌週に予定されているIAEA定例理事会を前に発表された。これをうけて同理事会は紛糾することが予想される(同理事会は18日、イランに対し核兵器開発疑惑の解明を強く求める決議を賛成多数で採択した。しかし欧米が主張した国連安全保障理事会への付託や、イランに対する強い非難は、ロシアと中国の反対で見送られた:IPSJ)。

「最も重要なことは、イランが核兵器開発疑惑について明らかにすることです。もしイランがこれに取り組むならば、核濃縮活動がこれほど問題視されることもなくなるでしょう。」とオルブライト所長は語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩

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【アブダビWAM】

アラブ首長国連邦(UAE)のシェイク・アブダッラー・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン外務大臣によると、湾岸協力会議(GCC)の全加盟国(アラブ首長国連邦・バーレーン・クウェート・オマーン・カタール・サウジアラビア)は域内経済ブロックを創出すべく共同して経済システムの構築を進めており、来年までには成果を出したいと考えていると語った。

アブダッラー外相は12月6日・7日にアブダビで開催予定のGCC首脳会議に先立って開かれた第117回閣僚級会合の開会式で挨拶に立ち「今日私たちは、GCC各加盟国の国境の枠を超えて湾岸地域全体にとって脅威となっている諸問題に直面しており、問題解決には加盟各国が積極的に意見交換し健全な対応策が練られる必要がある。そのためにもGCCを通じて湾岸諸国として統一したアプローチがはかられる必要がある。」と語った。

同閣僚会議には他のGCC加盟国から外務大臣が出席した。

「湾岸地域は現在様々なデリケートかつ複雑な政治問題に直面しており、私達は地域及び国際情勢さらに各加盟国の指導者の意向を踏まえながら議論を尽くして問題解決のための共通の立場を見いだしていく必要があります。」と同外相は語った。

今回の閣僚級会合で協議された政治議題は、パレスチナ問題、イランが実効支配中でUAEが直接交渉か国際司法裁判所を通じた平和的な解決を求めているUAEの3島(大・小トンブ島とアブムサ島)領土問題、レバノン、イラク、スーダン、ソマリア問題である。また同会議では、バーレーンが提案している包括的GCC長期開発計画(2010~25)や域外諸国や他の経済ブロックとの自由貿易交渉、関税同盟、統一した都市開発戦略、災害対策センター構想、メディア戦略、イエメンとの協力問題、その他、閣僚級委員会から提出された報告や勧告について協議が行われた。(原文へ

翻訳=IPS Japan戸田千鶴

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【大連IDN=浅霧勝浩】

中国東北部の遼寧省に位置する大連市と、日本の北九州市は、公害抑制と環境浄化に、ともに積極的に取り組んできた自治体として知られている。かつて1960年代から70年代にかけて、両都市は、重化学工業を中心とする工場から排出される産業公害により、深刻な環境汚染に直面していた。しかしその後大きな変貌を遂げ、今日では、持続可能な開発のため、地球温暖化抑制にも協力して取り組むまでになっている。

従って、2007年、2009年、2011年の夏に世界経済フォーラム「ニュー・チャンピオン年次総会」の開催地となった大連市が、今年10月19日から26日にかけて、「第1回低炭素地球サミット2011(LCES-2011)」をホストしたのは驚くにあたらない。

TTA Delegation after the welcome Ceremony/ Katsuhiro Asagiri
TTA Delegation after the welcome Ceremony/ Katsuhiro Asagiri

 
「サマーダボス会議」としても知られる「ニュー・チャンピオン年次総会」は、アジアで最も著名なビジネス会合であり、中国政府との密接な協力、とりわけ温家宝国務総理の強力な後押しを得て、2007年に設立された。

第1回低炭素地球サミット」は、中国国家外国専家局情報研究所中国国際貿易促進委員会大連市分会が共催し、「エコ経済をリードし、調和した自然に戻ろう」というテーマのもと、8日間に亘って開催された。主催者の発表によると、中国のほか米国、カナダ、ドイツ、インド、日本など57カ国から専門家や企業代表者、政府関係者など4,000人余りが参加した。
 
低炭素経済」に移行する必要性は、とりわけ2009年にコペンハーゲンで開催された国連気候変動枠組条約第15回締約国会議(COP15)以来、国際社会で広く認識されてきているが、大連の「低炭素地球サミット」の重要性は、まさに「低炭素経済」と産業について、研究者、企業代表者、政府関係者など幅広い分野の専門家が情報交換をし、地球温暖化防止への課題解決に向け、多角的な議論を行うプラットフォームを提供したことであった。

Mahatoma Gandhi/ Wikimedia Commons
Mahatoma Gandhi/ Wikimedia Commons

インドから参加した、アミティ大学地球温暖化生態学研究所のJ.C.カラ事務総長は、数名のサミット参加者の感想を代弁して、「かつてマハトマ・ガンジーが『地球はすべての人間の必要を満たすのに十分なものを与えてくれるが、貪欲は満たしてくれない。』と述べたように、低炭素社会の実現を目指すこのサミットは、極めて重要な試みだと思います。」と語った。


グリーン・エコプロジェクト

日本から参加した東京都トラック協会(大髙一夫会長)の遠藤啓二環境部長は、環境分野における日中協力の歴史を踏まえて、中国やその他の国々においても効果が期待されている「グリーン・エコプロジェクト」に関する発表を行った。
 
グリーン・エコプロジェクトには、4つの重要な側面があります。すなわち、①持続可能性、②コスト削減、③収拾したデータの正確性、そしてなによりも、④ドライバーの『やる気』を持続する活動であるという側面です。また重要な要素として、プロジェクトにはエコドライブ教育が組み込まれています。優良ドライバーの会社はトップランナーとして表彰され、やる気を引き出すよう配慮されています。またプロジェクトには上司もドライバーと同等の立場で参加し、1年間に7回のセミナーが提供されています。」と遠藤氏はサミット参加者に語りかけた。

また遠藤氏は、エコプロジェクトの成果について、「プロジェクトへの参加企業数は増加し続け、2011年7月時点で、530社以上の企業と12,214台以上の車両が参加しています。加えて、燃料消費もこの4年間で減少しました。それは、546台の大型タンクローリーに積載できる量に匹敵し、金額に換算すると1,440万ドル(1,000万ユーロ)に相当します。」「この省エネで、22,888トンのCO2排出削減がなされました。これは杉の植樹に換算すると1,635,000本に相当します。また交通事故も4年間で4割減少しています。」と報告した。

その上で遠藤氏は、「このプロジェクトは、国民経済の面だけでなく、社会全体に対しても大きな成果を上げていると言えます。」と結論付けた。そして、「次のステップは、各車両タイプ毎に、省エネデータベースを構築することです。」と今後の抱負についても語った。

Mr. Keiji Endo of TTA/ TTA
Mr. Keiji Endo of TTA/ TTA

日本では、デジタルタコグラフやドライブレコーダーのように、エコドライブをサポートする多くの先進的な装置が利用可能である。しかし、遠藤氏が発表の中で強調したように、グリーン・エコプロジェクトの最大の特徴は、巨額の投資も高度な技術も必要としない点にある。必要なのは、「運転管理シート」と呼ばれる1枚の紙と鉛筆だけである。これだけで、環境を守り、燃料コストを削減し、交通事故を減らし、従業員間での意思疎通の円滑化を図れるのである。
 
米国から参加した石油探索企業大手シュルンベルジェ株式会社のムルタザ・ジアウディン顧問は、遠藤氏の発表について、「良い政策決定を行う上で最も重要なことは、正確なデータを集めることです。しかし代表値を得るのは至難の業です。多くの場合、データ集積のプロセスは必要以上に複雑になりがちで、参加もなかなか得られないものです。遠藤氏が紹介した『グリーン・エコプロジェクト』の優れている点は、それがシンプルでありながら極めて効果的だということです。すなわち、このプロジェクトでは、代表値の集積が可能なだけでなく、適切に参加者の『やる気』を引き出す仕組みが出来上がっており、プロジェクトに関わる全ての人々に満足できる状況(win-win situation)を創出している点が素晴らしいと思います。」と語った。

日本から参加した株式会社アスアの間地寛社長はIDNの取材に応じ、「このプロジェクトは、高価な機器を利用することなく、紙とペンがあればすぐに取り組めることを考えると、中国や他の国々でも十分応用が可能だと思います。」と語った。

また間地氏は、「遠藤氏が講演の中で指摘した通り、グリーン・エコプロジェクトは、小さな取り組みでも大勢で取り組めば、環境対策において大変大きな成果が得られるという良い事例だと思います。」と付け加えた。

日中環境協力

また、北九州市出身の間地氏は、「『第1回低炭素地球サミット』の会場を大連市としたのは、適切な選択だと思います。」と語った。大連市は、戦前は(1906年から日本が太平洋戦争に敗れた1945年まで日本の満州経営の中核となった)南満州鉄道株式会社の本社が置かれていた場所であり、戦後は北九州市と門司港を通じた長年に亘る交流の歴史を持っている。一方、大連市とその周辺地域には、20世紀、とりわけ戦争史の観点から、日中両国による重要な史跡が点在する地域である。

日中環境協力に関する報告書によると、大連市は1979年5月に北九州市と姉妹都市提携を結んだ。以来、大連市環境保護局と、北九州市環境保護局並びにKITA((財)北九州国際技術協力協会)は、交流を深めてきた。「大連市からの環境保護研修生は、北九州市で環境保護に関する認識を深めるとともに、関連分野の技術や管理スキルを大いに高めて帰国した。」と報告書に記されている。

1997年、橋本龍太郎首相(当時)は、日中国交正常化25周年の節目に訪中した際、環境保護分野における日中協力の推進(「21世紀に向けた日中環境協力」構想)を提唱し、その一環として「環境対策モデル都市」を中国国内に1つか2つ選定するよう中国側に提案した。

李鵬国務院総理(当時)は、橋本提案を支持し、日中環境協力は国レベルで推進されることとなった。報告書には、「(自治体レベルで日中環境協力を従来から進めてきた)大連市は、北九州市の支援を得て積極的にキャンペーンを展開し、『環境対策モデル都市』の一つに認定されることに成功した。」と記されている。

国際協力事業団(現独立行政法人国際協力機構:JICA)は、1996年から2000年まで「大連環境モデル地区計画」(北九州市が提案しJICAが共同で実施)を支援した。日中の専門家は、この開発調査事業を通じて、大連市の環境改善計画のマスタープランとなる「環境モデル地区開発調査報告書」を共同で策定した。

「モデル地区」開発事業は、大連市の環境改善に貢献したのみならず、報告書が指摘しているように、環境保護に取り組む企業にも恩恵を与えるものであった。

この日中環境協力パートナーシップにとって、幸いだったことは、北九州市が、東京都と上海市のちょうど中間に位置し、公害抑制とリサイクル技術において日本で最も先進的な自治体であったことである。事実、北九州市は「世界の環境首都」を自認している。

北九州市は、1960年代、外で干していた洗濯物がいつも黒く汚れることに危機感を抱いていた戸畑区三六町の主婦たちが立ち上がった、戦後日本で最初の公害反対運動が起こった地でもある。今日、北九州市は、大連をはじめとした姉妹諸都市に対して、水質浄化に関する助言を行っている。
 
1992年、北九州市は、ブラジルで開催された地球環境サミットにおいて、それまでの環境問題への取り組みが評価され、世界各地の11の自治体と共に「国連地方自治体表彰」を受賞した。また日本国内においても、若松区に北九州エコタウンを建設し、環境対策及びリサイクルへの取り組みにおいて最も先進的な取り組みを進めている。

Green Eco Project
Green Eco Project

また北九州市には、北九州国際会議場と西日本総合展示場を擁する「西日本産業貿易コンベンション協会」があり、とりわけ環境や教育に関する国際会議を積極的に開催している。また、八幡東区にはスペースワールドというテーマパークや、JICAが運営する研修施設(JICA九州国際センター)がある。

こうした北九州市の足跡について、経済協力開発機構(OECD)は、「『灰色の街』から『緑の街』へ変貌を遂げた都市」として高く評価し、国際社会に紹介した。一方大連市も、2001年、北九州市との長年に亘る環境協力の成果が評価され、中国の都市では初めて、国連環境計画(UNEP)の「グローバル500」を受賞した。(原文へ

翻訳=INPS Japan浅霧勝浩

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女性をとりまく深刻な人権侵害の実態が明らかになる

【ベルリンIDN=ユッタ・ヴォルフ】

新たに発表された女性・女児の保護状況に関する報告書によると、性的暴行、差別、人身売買、性的搾取等の人権侵害に晒されるリスクが「極めて高い」国は、全世界197カ国のうち、実に40%以上に及んでいる。

リスク分析を専門とするメイプルクロフト社が出した「女性・女児の人権インデックス(WGRI)」によると、「極めて高い」に分類された国は80カ国で、その内訳は、サブサハラアフリカ地域の33か国、ほぼ全ての中東諸国、北アフリカ地域、及び多くの新興経済国であった。

 その中で「リスクが最も高い」10カ国は、イラン、スーダン、ソマリア、シリア、コンゴ民主共和国、サウジアラビア、アフガニスタン、ブルンジ、ハイチ、ナイジェリアであった。

一方、対極の「リスクが低い」と分類された国は、デンマーク、ベルギー、スウェーデン、カナダ、ニュージーランドを含む全体の僅か5%であった。しかしながら、これらの国々においてさえも、いわゆる名誉関連の犯罪や強制結婚を含む人権侵害は依然として残っている。

また、経済成長が著しい新興経済国において、女性や女児の人権侵害事件に、現地に進出している多国籍企業が巻き込まれるリスクが高い。それに該当する国々は、ナイジェリア、バングラデシュ、パキスタン、フィリピン、中国、エジプト、メキシコ、ロシア、インドネシア、インド、トルコで、いずれの国もWGRIで「極めて高いリスク」に分類されている。

これらの国々で、治安機関その他の関係者による人権侵害に多国籍企業が巻き込まれるケースとしては、性的暴行、雇用上の差別、児童労働、人身売買と性的搾取が挙げられている。
 
WGRIは、重要な調査結果として、石油掘削事業や鉱山、プランテーションといった価値が高い資産を守るために多国籍企業が雇用した、国の或いは民間の治安要員の行状について、言及している。

英国に本拠を置くメイプルクロフト社は、地下資源が豊富なコンゴ民主共和国(DRC)、コートジボワール、シエラレオーネ、ミャンマーを含む政府の統治体制が脆弱な国において、治安要員による強姦事件が頻発している現状に言及している。

WGRIに5年連続で「極めて高いリスク」とランク付けされた国々においては、多国籍企業が、女性の人権侵害事件に巻き込まれるリスクが特に高い。2011年7月、国連の調査ミッションは、コンゴ民主共和国国軍(FARDC)の兵士たちが、2011年の1月から2月にかけて北キブ州マシシ地方のブシャニ村とカランバヒロ村において、1人の未成年者を含む47人の女性に対して、強姦を含む性的暴行を加えていたことを明らかにした。

伝達環境が整っていないことから、これらの国における性的暴力事件に関する正確な数値を得ることは困難であり、数値があったとしても情報源によって様々である。とはいえ、2011年5月、「アメリカ公衆衛生ジャーナル」は、コンゴ民主共和国(DRC)では毎日1,152人の女性と女児が強姦されていると報告した。一方、国連人口基金(UNFPA)は、DRCで過去5年間に強姦された女性と女児の数を20万人と報告している。

性器切除(FGM)を含む人権侵害に最も晒されやすいのが思春期の少女達である。世界の思春期の少女達が置かれている状況に関するデータを集積したウェブサイト「Girls Discovered」(メイプルクロフト社、ナイキ財団、国連財団が共同開発)の2011年版データによると、サブサハラアフリカの多くの国では、FGMを含む様々なジェンダーに基づく暴力が頻発している。例えば、シエラレオーネ、ソマリア、ギニアといった国では、少女の80%から90%がFGMを経験している。

「男女平等の実現は基本的人権であり、開発において最も重要な部分です。企業は、自らのサプライチェーンを通じて、注意深く人権状況をモニタリングし、そうしたリスクを特定・緩和することで重要な役割を果たすことが可能なのです。また企業は、市民社会や国際機関、各国政府とも積極的に協力して、女性や女児の人権擁護を促進するプロジェクトを支援することもできます。」とメイプルクロフト社の分析官であるシオブハン・トゥオヒースミス氏は語った。

「女性・女児の人権インデックス(WGRI)」は、2011年12月10日の「国際人権デー」に発表される予定の年次報告書「人権リスクアトラス第5版」に用いられている23の指標のうちの一つである。この年次報告書は、メイプルクロフト社が、多国籍企業が事業やサプライチェーンを通じて、人権侵害に関与する潜在的なリスクを監視するツールとして開発したものである。

最新のインデックスを見ると、世界全体では、僅かながら女性と女児を取り巻く状況が改善しているのが分かる。つまり、「極めて高いリスク」と次のランクの「高いリスク」のカテゴリーに分類された国が、昨年は156カ国であったのに対して今年は144カ国と8%減少している。しかし本報告書を担当したリスク分析官によると、これはほんの僅かな改善に過ぎず、女性に対する暴力と差別は、引き続き新興経済国や開発途上国において深刻な問題であり続けている。

翻訳=IPS Japan

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|UAE|「砂漠のスーパースター3D」が初公開される

【アブダビWAM】

UAEで初めての3D作品となる映画「砂漠のスーパースター」がアブダビのシネロイヤルカリディアモールにおいて、シェイク・ディアブ・ビン・サイフ・アルナヒヤン殿下、シェイク・シャクブート・ビン・アルナヒヤーン殿下、モナコ公国のシャーロット王女の臨席を得て上映された。

この作品は11月30日まで毎日、デルマモール並びにシネロイヤルカリディアモールにおいて上映される予定である。

 作品は、ラクダのブリーダーとしても知られるシェイク・ディアブ・ビン・サイード・アルナヒヤン殿下の後援を得て、アル・ダフララクダフェスティバル(Al Dhafra Camel Festival)に参加する同殿下を追って撮影したものである。この35分間に及ぶドキュメンタリー映画は、カナダの映画製作会社「3Dカメラカンパニー」との協力のもと、ドバイを拠点に活動しているピエール・アブ―・チャクラ氏が監督した。

作品は、同フェスティバルの中でも最も重要なラクダ美人コンテスト(Al Dhafra Camel Beauty Pageant )の模様を収録しており観光客に対してUAEの砂漠に長年息づいてきた人々の生活と豊かな文化的伝統を紹介することを目的としている(原文へ

翻訳=IPS Japan戸田千鶴

|ウクライナ|戦争は選挙を引き起こし、金融危機は選挙を延期する

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【ブダペストIPS=ゾルタン・ドゥジシン】

グルジアとロシアの戦争はウクライナの政争を触発した。深刻な経済危機の打撃とグルジアとの違法な武器取引問題に直面しているウクライナでは、連立与党の崩壊により、次の選挙への思惑が錯綜している。 

親欧米の民主的なユーシチェンコ大統領の「我々のウクライナ」と、ティモシェンコ首相の勢力との対立が、8月のグルジア紛争以来、和解できない状況になっている。経済危機で早期選挙は保留となったが、大統領は来年の選挙で経済危機の責任を首相に負わせたい。

大統領と首相は1年にわたって権力闘争を続けてきたが、ウクライナは経済危機の影響をもっとも受けた国の一つで、国際通貨基金(IMF)は緊急融資を拡大しており、誰もが経済問題を優先すべきだと思っている。国民の80%は3年間で3度目の選挙に反対で、政治家には経済問題に集中してほしい。 

ティモシェンコ首相がグルジア紛争に沈黙し、黒海でのロシア艦隊の活動制限に反対していることを、次の選挙をにらんでロシアの経済的政治的支援を期待した裏切りだと、ユーシチェンコ大統領側は批判している。大統領はウクライナの自治共和国であるクリミアが次のグルジアになるのではないかと懸念している。 

一方で圧倒的に不人気の大統領は、グルジア支持をあまりに素早く表明してロシアとの不要な緊張をもたらしたと非難されている。大統領はグルジア大統領と個人的に親しい。ウクライナ最大の経済相手国であるロシアは、大統領のNATO寄りの姿勢に怒り、政府がグルジアとの違法武器取引を行っていると非難した。 

ウクライナ政府は武器取引を認めて合法性を主張したが、ウクライナ議会の特別委員会はその武器取引が不当に安価で行われ、大統領が関わっていたと断定した。ユーシチェンコ大統領はウクライナ保安庁(SBU)に武器取引を探っている個人の調査を命じている。 

ユーシチェンコ大統領は、ウクライナとグルジアがNATO加盟できないでいたことがロシアを強気にさせてグルジア紛争を招いたとし、早期に加盟を認めるべきだと主張している。だが12月にブリュッセルで開かれるNATOサミットにおいて、政府や議会が揺れ動いているウクライナが加盟を認められる見込みはない。 

グルジア紛争と経済危機の影響を受けるウクライナについて報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

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|アルゼンチン|拉致政治犯の子ども、自らの経験を語る

【ブエノスアイレスIPS=マルセラ・ヴァレンテ】

軍事独裁政権時代(1976-1983)に拉致され行方知れずとなった人々の子どもたちのその後の人生を綴った本De vuelta a casa: Historias de hijos y niertos restituidos(帰宅:発見された子どもおよび孫の話)が11月、アルゼンチンで出版された。 

政治犯収容所で生まれたあるいは幼くして両親と共に拉致された後、子どものいない軍人や警察官夫婦に育てられた10人の心境告白を読めば、何故過去を捨て育ての親に背を向ける者がいる一方で、真実を知り肉親に会ってもなお育ての親の苗字を維持し、依然彼らを父さん、母さんと呼ぶ者がいるのか理解できるだろう。

 同本の著者アナリア・アルジェントは、「行方不明になった子どもたちの捜索を行ってきた人権擁護団体“マヨ広場のお婆さん”の活動は知られているが、我々は今では30歳を超えたこれらの子どもたちの本当の苦しみを理解できなかった。彼らの多くは心に葛藤を抱えており、自らの経験を話すことで解放された」と語る。また、同本により、身元に不安を感じている者も真実究明に乗り出すのではないかと話している。 

「マヨ広場のお婆さん」は、これまでに行方不明の子ども93人を探し出したが、真実を知らずに暮らしている者がなお400人いると予測している。 

両親と共に拉致され、その後軍将校夫婦に育てられたククラディア・ポブレーテは、「亡くなった両親の知り合いから話しを聞いて心の扉が開いた」と語った。しかし、彼女は、自宅軟禁の判決が下った育ての親と今も暮らしている。 

「マヨ広場のお婆さん」は、収容所で生まれ、警察官夫婦に育てられていたレッジャルド・トルサ兄弟の居所を突き止めた。当時10歳であった兄弟は、DNAや精神鑑定、長引く裁判を経験。兄弟の1人マシアスは、当時を振り返り「モルモットのようだった」と言う。彼は今でも育ててくれた女性を母と呼び、彼女のことを幸せな子供時代を過ごさせてくれた「人生の支え」と語っている。 

拉致されたウルグアイの労働組合のリーダー、ホセ・デリアの息子カルロスは、アルゼンチンの海軍大尉に引き取られた。カルロスは、同夫妻にとても可愛がってもらったと話す。今は亡き実父と同じ経済学者となったカルロスは、本当の親族と共に育ての親とも良い関係を維持している。「彼らのしたことは間違っていた。しかし、彼らが私を本当の子どもの様に愛してくれたのも事実だ。私の彼らに対する気持ちは変わらないし、背を向けることはできない」と語っている。 

軍事政権の犠牲となった子供たちの心の葛藤について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan 浅霧勝浩 


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