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|軍縮|核兵器のない世界という新たな約束

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【ベルリンIPS=ラメシュ・ジャウラ】

米ロの首脳が、戦略兵器削減条約(START)に代わる新たな核軍縮条約に取り組む意志を発表したことで、軍縮を推進するリーダーたちは新たな光明を見出している。 

ロシアのドミトリー・メドヴェージェフ大統領とアメリカのバラク・オバマ大統領が共同声明を発表したのは、ロンドンで催された20カ国・地域(G20)首脳会合開催前夜の4月1日。世界の95%の核兵器を所有する米ロ両大統領は、「我々両国は、核兵器のない世界を実現するため、約束を交わした。」と言明した。

Mikhail Gorbachev/ photo by Katsuhiro Asagiri

 4月16日と17日にローマで開催された会議に参加した世界の著名な軍縮支持者たちは、核廃絶に向けたこの新たな趨勢をさらに前進させることに賛同するだろう。「核の危機を超えて」と題したこの国際会議には、約20カ国から70名の現役・元政府高官や専門家が参加した。 

この国際会議を共催したイタリアのフランコ・フラッティーニ外相は、米ロ首脳の共同声明について、「軍縮と軍備管理に対する新たな勢いを創出するものであり、2010年に開催される核不拡散条約(NPT)運用検討会議の成功に向けた全参加国の協力意識を高めた。その他の核保有国もアメリカとロシアに続くべきだ。」と述べた。 

フラッティーニ外相はまた、「軍縮及び核兵器不拡散に関する諸条約を完全に履行すること、とりわけNPTを順守することが、(核廃絶という)私たちの目標達成に向けて本当の意味で前進を図るための必要不可欠な条件となる」と語った。 

「しかし、その道のりには数知れない障害が立ちはだかっている。」とミハイル・ゴルバチョフ元ソ連大統領は警告した。1985年から1991年に亘ってソビエト連邦共和国(当時)の最後の最高指導者を務めたゴルバチョフ氏こそ、ロナルド・レーガン米国大統領(当時)とSTARTを署名した人物である。 

世界政治フォーラム(WPF)の会長を務めるゴルバチョフ氏は、「国際関係を非武装化する必要性、軍事予算の削減、新型兵器開発の禁止、そして宇宙での武装を防ぐという話し合いを行わない限り、核兵器のない世界についてどんな話をしたとしても、単なる筋の通らない美辞麗句で終わってしまう。」と語り、米ロ両国に対してそのハードルを取除く努力を強く促した。 
 ゴルバチョフ氏の手によってイタリアのピエモンテ州で創設された国際非政府組織(NGO)WPFは、今回、本

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World Political Forum/ photo by Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director, IPS Japan

国際会議を核脅威イニシアティブ(NTI)と共催した。WPFの渉外担当役員、ロベルト・サビオ氏は、「WPFは文化、宗教、世界のリーダー、及び市民社会組織の代表が集う交流の場を提供している。こうした相互に依存しあう課題に対する分析をオープン・フォーラムで行うことで、新たな世界の政治的な枠組みが形成される」とIPSに語った。米国を拠点とし、核・生物・化学兵器の拡散や使用のリスクを軽減することで、世界の安全保障の強化を目指すNTIは、CNNのテッド・ターナー氏と元上院軍事委員会委員長、サム・ナン氏が共同で議長を努めている。 

この会議では、核のない世界を築く、という山の頂に至るまでの、“ベースキャンプ”を設けることを提案。これらのベースキャンプは、核兵器のない世界に向けた最良の道筋を考案するためのプラットフォームを提供するだけでなく、軍備管理や安全保障協力といったその他の分野においても支援策を討議する場として、核兵器のない世界へと導く役目を果たすだろうと、ゴルバチョフ氏、ジョージ・P・シュルツ氏(レーガン政権下の1982年~89年に国務長官を務めた)、フラッティーニ外相は共同声明を発表した。 

同会議の声明では、核兵器のない世界というビジョンを受入れ、核がもたらす脅威を克服するため早急に手を打つ必要があるとの意識が、政府の内外から高まっている、とある。 

東京に本部を持つ仏教団体、創価学会インタナショナル(SGI)平和運動局長・寺崎広嗣氏はIPSの取材に対し、「国際政治の場で、非現実的なビジョンとしてしか捉えられていなかった核廃絶への流れが生まれていることは、極めて重要なチャンスの到来だ」と述べた。 

SGIは、2007年9月から「核兵器廃絶へ向けての民衆行動の10年」を、1985年にノーベル平和賞を受賞した戦争防止国際医師会議(IPPNW:60カ国から集う医師組織の連盟)が立ち上げた核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)等の国際反核運動と協力し、スタートさせた。 

「“核兵器廃絶への民衆行動の10年”の目的は、核兵器の存在を拒絶する人々を増やすことにあります。核兵器を拒否する一般市民や市民社会こそが、核廃絶を求める世論のうねりを作り、政策決定者に影響を与える主体者である。」と寺崎氏は語った。 

SGIはこのローマでの国際会議に参加した三つの民間団体のうちの一つ。他の2団体は、1500団体超の市民社会組織や地元当局のネットワークを結ぶイタリア平和円卓会議(Italian Peace Roundtable)と、米国に本拠を置き核軍縮、特に核の軍備管理・拡散防止・軍縮を焦点に、法律に基づく国際安全保障協力の強化を目指す世界安全保障研究所(GSI)である。 

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Mikhail Gorbachev, president of World Political Forum(2nd from left) with the delegation of Soka Gakkai International led by Hiromasa Ikeda, SGI Vice President(fourth from left) during World Political Forum held at Italian Foreign Ministry. Photo by Francesca Palozzo, WPF.

GSI所長のジョナサン・グラノフ氏はIPSの取材に対し、「現状、化学兵器や細菌兵器は世界的に非難されているにも関わらず、それよりもっと恐ろしい核兵器は、非難されることなく、9カ国(イギリス、フランス、ロシア、中国、カナダ、米国だけでなく、インド、パキスタン、北朝鮮)で容認されている。こんなことは一貫性に欠け、支持できるものではない。」と語った。 

また、「唯一の解決策は、世界のすべての国が、この恐ろしい兵器の使用を許すのか、廃絶させるのかを選択することだ。明らかに前者は受け入れられない。」と述べた。 

IPSの取材に対し、元インド外務次官で軍縮専門家のラリット・マンシン氏は、「誰も核廃絶を5年後に実現させる、といったような夢のような期待はしていない。世論を整え、主役である米国とロシアが実際に行動するよう、周りが説得しなければいけないと自覚しているからだ。両国が行動すれば、世界から核兵器を廃絶するという頂きへ、徐々に進むことができるだろう。」と語った。 (原文へ

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩

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世界政治フォーラムを取材

|タンザニア|障害者への偏見を打ち破る工芸品ビジネス

【イリンガ(タンザニア)IPS=サラ・マクレガー】

タンザニアに2003年設立されたNPO法人ネーマ工芸は、障害者は肉体的、知的に厳しくても仕事をしながら人生を精一杯生きることが出来るという信念の下で運営している。出来ることもなく通りで過ごす障害者を雇用し、仕事を実地訓練し、消費者が本当に欲しい物を生産し、施しとしてではなく購入してもらうのを目指す。

製作製品は、ゾウの糞から作った紙や贈答用のカード、ビーズアクセサリー、色彩豊かなハンモック、スカーフ、クッションカバー、絞り染めの服、クリスマスの飾り、ランプシェード、キルト、パッチワーク、その他の珍しい品物だ。旅行者、ボランティア、地元の宗教団体職員に人気で、インターネット経由(http://www.neemacrafts.com/)でも注文を受け、英国、米国、ドイツの小さなフェアトレードショップの店頭に並んでいる。

Wheelchair-bound weavers at Neema Crafts in Iringa. Credit: Sarah McGregor/IPS
Wheelchair-bound weavers at Neema Crafts in Iringa. Credit: Sarah McGregor/IPS

併設する聴覚障害者運営のカフェでは、客は注文する時、紙に書いたりメニューにある手話を使ったりする。何か必要がある時にはテーブルにあるスイッチを押してライトを点滅させる。

ネーマ工芸の運営、維持費は売上収益と寄付でまかなわれる。

タンザニアで障害者は、教育も就業の機会も与えられず、貧困の中にとどまらざるを得ないので、社会では貧しい家族の重荷とみなされている。タンザニアでは人口4千万人の3分の1が1日1ドル以下で暮らし、80%が自給自足で、手足が不自由な障害者は肉体労働の畑仕事を手伝えないからだ。

ネーマ工芸の運営を手伝う英国人スージー・ハート氏は、次のように言う。

「ネーマ工芸があるイリンガ州はタンザニアの最貧地域で、貧困ゆえに子供達が障害を持って生まれてくる。ここでは女性も重労働を担っており、妊娠してから出産まで重い水を運ばなければならず、お腹の子に悪影響を与えている。妊娠中の栄養不足や、出産に対する不十分なケア(出産時、胎児の酸素不足が多発)、未然に防げない脳マラリアなどもある」

また、東アフリカの障害者は、のろわれているという烙印を押され、社会からの疎外にも苦しむ。そして、リハビリ施設もほとんどなく、どこへ行くにも道路も建築物も障害者に全く考慮されて造られていない。

ネーマ工芸では、働き始めて自尊心を取戻し、仕事を楽しむ60人の作業者に人員を追加したいと考えている。しかし、その前に賃金を支払うため、新しく製品を売る市場を見つけねばならないとハート氏は言う。今年に入って、働きたいと言う人を1週間に9人も断らねばならないという最もつらい仕事をしたからだ。

障害者に職と生きがいを提供するタンザニアのネーマ工芸について報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=INPS Japan 浅霧勝浩 

|キューバ|世界的危機を超えて、そしてその裏で(レオナルド・パドゥラ・フエンテス)

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私たちキューバ人は、世界中を襲っている「経済危機」という言葉を聴いても、おそらくもっとも小さな恐れしか抱かない人々であろう。というのも、ポストソ連期の1990年代、私たちは長期にわたるモノ不足と貧困に悩まされたからだ。それは、婉曲的に、「平和な時代の特別期」と呼ばれている。私たちは、食料や電気、交通手段、住宅、医療、衣服などあらゆるものがない時代を生き抜くすべを学んできた。 

停電が毎日のように起こり、主要な移動手段が自転車であった90年代、キューバではあるジョークがはやっていた。それは、「キューバ人にはたった3つの悩みしかない。それは、朝食、昼食、夕食だ」。

 世界的な経済危機の中で、昨年来の食料価格、燃料価格の上昇にキューバ政府が対処しなければならな

かったのは事実だ。しかし、私たちが長く苦難のときを経験してきたことを考えれば、現在の危機はそれほどキューバの現状と関係がないのである。問題は、キューバにおける生産性の低さの方だ。 

その意味で、キューバは、G7やG20よりも、あるいは、資本主義的な金融・経済システムの改編よりも、キューバ政府自身が2年前に開始した社会的・経済的改編の方に希望を持っている。 

 とりわけワシントンからもたらされた最近の変化は、キューバへの渡航や送金への制限が緩和されたことだ。いまだ禁輸の解除まではいっていないが、キューバ人に希望を与えている。 

1980年以降に生まれた世代は、生まれて以降ずっと、物資不足の中を生きてきた。彼らの中には、国外に逃げたり、暴力に走ったりする者も少なくなかった。世界的な経済危機は私たちを縮みあがらせるものではないけれど、90年代以降の状況は、私たちの社会に消えない影響を残し続けているのである。(原文へ) 
 
翻訳=山口響/IPS Japan浅霧勝浩

世界政治フォーラムを取材

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Mikhail Gorbachev, president of World Political Forum(2nd from left) with the delegation of Soka Gakkai International led by Hiromasa Ikeda, SGI Vice President(fourth from left) during World Political Forum held at Italian Foreign Ministry. Photo by Francesca Palozzo, WPF.

「核の危機を超えて」というテーマを掲げてミハイル・ゴルバチョフ元ソ連大統領が主催した世界政治フォーラム(World Political Forum)がイタリアのローマで開催(4/16-17)され、IPS Japanから浅霧勝浩理事長(WPF日本事務局)がラメシュ・ジャウラIPS欧州総局長と共に取材した。フォーラムには、現役・元政府高官、市民社会組織の代表など約20か国から70名が参加した。 
日本からは、2007年9月から「核兵器廃絶へ向けての民衆行動の10年」を立ち上げ、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)等の国際反核運動と協力している創価学会インタナショナル(SGI)が参加した。平和運動局長・寺崎広嗣氏はIPSの取材に対し、「国際政治の場で、非現実的なビジョンとしてしか捉えられていなかった核廃絶への流れが生まれていることは、極めて重要なチャンスの到来だ」と述べた。 
SGIはこのローマでの国際会議に参加した三つの民間団体のうちの一つ。他の2団体は、1500団体超の市民社会組織や地元当局のネットワークを結ぶイタリア平和円卓会議(Italian Peace Roundtable)と、米国に本拠を置き核軍縮、特に核の軍備管理・拡散防止・軍縮を焦点に、法律に基づく国際安全保障協力の強化を目指す世界安全保障研究所(GSI)である。

World Political Forum photo by Katsuhiro Asagiri
World Political Forum photo by Katsuhiro Asagiri
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World Political Forum/ photo by Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director, IPS Japan
Ramesh Jaura, Bureau CHief of IPS Europe and George Shultz, Former Secretary of State of USA.
WPF Secretariat Staff/ photo by Francesca Palozzzo, WPF

IPS Japan

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|視点|緊急性を増した核軍縮(ミハイル・ゴルバチョフ)

|軍縮|核兵器のない世界という新たな約束

 

|核兵器廃絶|ノルウェーが新たな動きを模索

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【オスロIPS=ラメシュ・ジャウラ】

Norwegian Foreign Minister Jonas Gahr Støre/ Arctic Forum Foundation
Norwegian Foreign Minister Jonas Gahr Støre/ Arctic Forum Foundation

ノルウェーのヨーナス・ガール・ストーレ外相は、1989年のベルリンの壁崩壊以来、忘れ去られてきた核軍縮への新たな取り組みを求めた。 

ベルリンの壁崩壊は、ベルリンの分断の終焉のみならず、ドイツ統一への道を開き、米ソの冷戦に終止符を打った。 

「核の脅威はなくなったという認識のもと、核軍縮よりもグッドガバナンス(良い統治)や人権が優先事項となった。」と外相は語った。 

「アメリカの新政権誕生によって、核軍縮プロセスを押し進めようという気運が高まっている。」また、「アメリカの大統領が、核兵器のない世界に向けて手を打とうと呼びかけるのは、めったにあることではない」とストーレ氏は述べた。 

「世界は今、岐路にある。」「一方では核不拡散の問題が切迫しているため核軍縮が急務となっており、もう一方では、その実現のチャンスと可能性はこの十年来でおそらく最も高いだろう。」とストーレ外相は語った。 

これに先立ち、4月15日にオスロ市庁舎東ギャラリーにて行われた「核兵器廃絶への挑戦」展オスロ展のオープニング・レセプションのスピーチで、同外相は、ノルウェーは核軍縮問題を中心に据えるべく、あらゆる影響力を行使していくと述べた。

 ストーレ氏によると、4月初旬にストラスブール(フランス)とケール(ドイツ)で行われた北大西洋条約機構(NATO)のサミットでも、ノルウェーはドイツと共にこの点を取り上げた。4月4日に発表されたNATOの宣言では、軍備管理、軍縮および不拡散が、平和と安全保障と安定に重要な貢献をし続けることを強調している。 

また、NATO加盟国は核不拡散条約(NPT)の重要性を再確認し、2010年に行われるNPT運用検討会議で成果を出すべく、前向きに貢献していくと述べた。 

Kjell Magne Bondevik/ By Magnus Fröderberg/norden.org, CC BY 2.5 dk
Kjell Magne Bondevik/ By Magnus Fröderberg/norden.org, CC BY 2.5 dk

核兵器廃絶への挑戦と人間精神の変革展―平和の文化と人間の安全保障のために」のオープニング・レセプションでは、ノルウェーのヒェル・マグネ・ボンデビック元首相が以下のように述べた。 

「忘れてはならないのは、NPTが核保有国である5カ国(イギリス、フランス、ロシア、アメリカ、中国)に対し、その特別な地位を永久に認めたわけではないという点です。」(訳者注:今年の平和提言) 

ボンデビック氏はまた、「国連事務総長を交えて「核軍縮のための5カ国首脳会議」を継続的に行い、彼らの核軍縮の義務の履行を具体化させるためのロードマップ(行程表)を作成すべきだと語った。 

また、「核不拡散と軍縮は、唯一つ意味のある“核兵器のない世界”というゴールに向けての、ステップに過ぎない。」と強調した。 

ボンデビック氏は1997年から2000年、2001年から2005年まで首相を務め、北欧諸国の中では第二次世界大戦以来、非社会主義系首相として最長の任期を務めた。2006年1月、「平和と人権のためのオスロセンター」を創立し、以来所長を務めている。 

ボンデビック氏はまた、「世界の核兵器の95%を保有する米ロ両国が、本年末に期限が切れるSTART1(第一次戦略兵器削減条約)に代わる法的拘束力を持つ条約について、新たな話し合いを示唆したのは有望な事だ。」と語った。 

同氏の発言は、東京に本部を置き、世界192カ国・地域に会員を擁する仏教団体・創価学会インタナショナル(SGI)の池田大作会長のそれと軌を一にしている。 

今回、この展示をノルウェーの主要な5つの市民社会団体と共に開催したSGIは、明年のNPT運用検討会議が、核兵器廃絶への第一歩としての核軍縮にとって、重要な鍵となると見ている。 

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2009年4月、ノルウェーの首都オスロで行われたSGI主催の「核兵器廃絶への挑戦と人間精神の変革」展。「原水爆禁止宣言」発表50周年にあたる2007年からスタートし、世界14カ国・地域の50以上の都市で反響を広げてきた。/ SGI

4月22日まで開催される同展は、「核兵器にノー(NTA)」、「ノルウェーIPPNW(核戦争防止国際医師会議)」、「ノルウェー・パグウォッシュ会議」、「ノルウェー大西洋委員会(NAC)」および「ノルウェー国連協会」が後援している。 

池田博正SGI副会長は、「本展示の大きなテーマは、「人間の安全保障」という考え方を基礎に、「平和の文化」の建設という大きなビジョンを提示し、その実現に向かって行動していくことを人々に幅広く訴えていくことであります」と述べた。 

「これまで核兵器廃絶など非現実的だと見なされてきた国際政治の場において、廃絶に向けての変化が起こりつつある今、これは大変重要な機会です。」と、SGI平和運動局の寺崎広嗣局長は語った。 

ノルウェーのボンデビック元首相は、「NPTへの信頼性の回復は、保有国の誠実な行動があってこそ成り立つもので、こうした保有国の軍縮努力があってこそ、NPTの枠外にある国々の信頼を勝ち得て、核兵器能力や開発計画の凍結と放棄へ向けての誓約を求めることができるのです。」と語った。 

また、ノルウェー外務省のステファン・コングスタッド大使(安全保障政策・極北地域局長)は、現在の金融危機が軍縮プロセスを促してくれるかもしれないと述べた。 

Map of Norway
Map of Norway

「決して使われることはないと想定されている大量の兵器を維持するために何十億ドルも費やしていることを、人々が問題にし始めるかもしれません。」とコングスタッド大使は展示開催記念セミナーにて述べた。 

さらに氏は、「これらの核兵器の存在自体が、安全保障の厳しい課題を象徴している。いい核兵器と悪い核兵器の区別などつけようもない。」と言う。 

米ロは前向きな姿勢を見せているものの、安心はできないと大使は警告する。「主要各国においては、いまだ根強い核兵器推進圧力があるのは確かだし、この問題においてはアメリカ以外にも当事国/関係国があることを認識しなくてはならない。」と主張した。 

「具体的な成果をあげるには、有権者、市民社会、そして学者/識者からの政治的圧力が不可欠である。」とコングスタッド大使は語った。1997年の対人地雷全面禁止条約および昨年のクラスター爆弾禁止条約では、こうした圧力が功を奏した。(原文へ) 

翻訳=INPS Japan

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|軍縮|核兵器のない世界という新たな約束

│米国│人権放免と引き換えに沈黙を強いられる「テロ」容疑者

【ニューヨークIPS=ウィリアム・フィッシャー】

英国の高等法院は、3月23日、米国のグアンタナモ基地に収監されていた男が、放免と引き換えに、所内での拷問等に関して沈黙を貫くよう取り引きを持ちかけられていた、と事実認定する判決を下した。 

エチオピア人のビンヤン・モハメドは、10代の時に英国に移住してきた。2002年にパキスタンで逮捕され、同国とモロッコにおいて拷問を受けた。2004年にはグアンタナモに移送されたが、ついに、今年2月、無罪放免によって英国に帰国とあいなった。

モハメドの訴えは、米国当局による「特別移送(RENDITION)」と収監中の拷問に関して、英諜報当局が米中央情報局(CIA)と共謀したというものである。 

判決では、グアンタナモの恐るべき人権侵害が外部に漏れないようにするために、米当局がモハメドにさまざまな提案をもちかけたことが明らかにされている。英国に帰国させる代わりに、所内で虐待はなかったとの供述書にサインすること、帰国後メディアの取材は受けないこと、有罪だと認めること、米国への補償要求を放棄することなどを米当局は要求していた。 

他方で、米当局は、モハメドの無罪を証明するための情報に弁護士がアクセスすることを最後まで容認しなかった。 

モハメドを支援している法律団体「リプリーブ」のクレア・アルガー代表はこう語る。「米国は、メンツを保つために、とにかく何でもいいからモハメドを有罪にしようとしていた。最後に出てきた『提案』は、元々はもっとも危険なテロリストだと言われていたモハメドを、懲役わずか10日で有罪にしようというものですよ。これじゃ、道交法違反の罪にも及ばない。モハメドはこの提案を蹴って、最後まで無罪を主張し続けたんです」。こうして、モハメドは今年2月にようやく英国に帰国することができたのである。 

ところで、今回の判決からは、米当局がモハメドに拷問を加えていたとの主張の証拠となる7パラグラフが削除されている。高等法院は、情報を開示すれば今後は英諜報当局と協力しないとの米当局からの脅迫によって、情報を開示しない決断を下した、と述べた。 

高等法院によれば、この脅迫の文書が英外務省に送られたのは昨年9月。ミリバンド外相はこの事実を否定している。裁判所は、オバマ政権にこの方針を再考するよう促している。 

米グアンタナモ基地に収監されていた「テロ容疑者」に米当局がかけた圧力について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=山口響/IPS JAPAN浅霧勝浩 

 

│ジンバブエ│多剤耐性結核拡大のおそれ

【ハラレIPS=スタンリー・クウェンダ】

ジンバブエでは、医療システムが崩壊し、多剤耐性結核(MDR-TB)や超耐性結核(XDR-TB)がかなり広がりつつあるのではないか、と恐れられている。 

ハラレ市立の2つの感染症病院の院長であるクレメンス・ドゥリ博士は「実際に何を治療しているのかわからない。まるで闇の中で決闘しているようなものだ」と話す。ドゥリ博士によれば、患者に関する記録収集ができないために、MDRやXDRのケースがどれだけあるかはわからないという。

 ジンバブエにおける患者発見率はわずか42%で、世界保健機構(WHO)の目標とする70%にはるか遠く及ばない。また、治療成功率は68%で、これもWHO目標の85%に届いていない。 

こうした状況を導く一因となっているのが、人的資源の不足である。ジンバブエ人権医師の会(ZDHR)によると、この9年間で国内から10万人もの医療関係者が流出した。残っている医師や看護士についても、昨年8月に始まった給与をめぐるストの影響で、実際に職務に就いている者が少ない状況だ。 

治療薬も不足していて、政府系病院は、国際援助機関からの支援を受けた農村部の病院に患者を送らざるを得なくなっている。 

首都ハラレにある国内唯一の結核実験施設パリレンヤトワ病院も、診断機器の劣化や破壊のために、まったく機能していない。 

そのため、医師らは、患者の症状と自らの「勘」だけをたよりに結核を診断している。 

昨年8月以降、コレラの蔓延によって3500人以上が死亡し、さらに状況は悪化している。英国の「福祉トラスト」からの支援を受けてベアトリス感染症病院で開始された結核に関する研究も、コレラ対処にすべての資源を奪われる中で、立ち行かなくなってしまっているという。 

ジンバブエにおける結核蔓延の現状について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリ=山口響/IPS Japan浅霧勝浩 

|カンボジア|白日の下に曝されるクメール・ルージュの残虐行為

【プノンペンIPS=マルワーン・マカン・マルカール

クメール・ルージュ元指導者の残虐行為を裁くカンボジア特別法廷(ECCC)による裁判が5月30日から始まる。 

4人の被告のうち最初に裁かれるのは、クメール・ルージュ時代(1975年4月から1979年1月まで)最大のトゥールスレン刑務所(S-21)の所長カン・ケ・イウである。同刑務所では女性、子どもを含む少なくとも12,380人が拷問、強制労働などで死亡している。 

ヒューマン・ライツ・ウォッチのカンボジア人調査員サラ・コルム氏は、「トゥールスレン刑務所がカン・ケ・イウ(俗称ドッチ)裁判の中心となる。我々は、同刑務所がどの様に機能していたか、そこでどの様な犯罪が行われていたかを知ることになろう」と語る。

 著名な政治アナリスト、チェア・ヴァンナス氏(65)は、「従妹が同刑務所で殺された。別のクメール・ルージュ刑務所で所長をしていた夫がまず殺され、後に彼女が殺害されたのだが、実際何が起こったのか我々は知らない。ドッチの裁判で新たな事実が明かされるだろうが、カンボジア人にとっては、辛い過去の追体験になる」と語る。 

1995年設立のカンボジア文書センター(DC-Cam)は、戦争犯罪裁判に備え2万か所の無名墓地、198か所のクメール・ルージュ刑務所を突き止めた他、約百万人の犠牲者へのインタビューを行い、その結果を公表している。 

DC-Camのある出版物は、3月から学生の教育教材として全国の高校に配布されており、殆どの学生は民主カンプチア(クメール・ルージュ政権下のカンボジアの名称)の残虐行為について知っているが、議論は家庭内やメディアに止まり、一般の議論となっていない。 

DC-Camの高校教材「民主カンプチアの歴史」は、トゥールスレン刑務所について、大部屋に収容された逮捕者の足は鎖で鉄のバーに繋がれ、頭を下にして眠らなければならなかった。S-21では、情報を引き出すため、殴打やむち打ち、電気ショック、更には傷口にアルコールを注ぐ、生爪を剥がすなどの残虐行為が行われていた。また、性的虐待は禁じられていたにも拘わらず、女性に対しては強姦や乳房の切除も行われていたと述べている。 

これらの恐怖は、トゥールスレン刑務所の生存者11人の1人であるヴァン・ナト氏が30年の記憶を辿り描いた絵画にも見てとれる。彼の絵は同刑務所の壁および同氏の私設ギャラリーに展示されているが、同氏は、「ドッチの裁判が終われば、私は刑務所の絵を描くのを止めようと思う」と語っている。 

5月30日から始まるカンボジア特別法廷の裁判とそれに対するカンボジア市民の思いについて報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan 浅霧勝浩 

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|カンボジア|裁かれるクメール・ルージュ幹部は増えるのか

|カンボジア|クメール・ルージュ裁判で画家が当時の看守と対面に

アフガン増派に疑問を投げかける戦略家

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【ワシントンIPS=ガレス・ポーター

オバマ大統領が27日に発表したアフガニスタン増派戦略は、国民的論議にはなっていない。だが有力な戦略家の中には、この増派の論拠はアルカイダ問題を誤って解釈しており、パキスタンに課する深刻な危機を無視していると考えるものもいる。 

退役した海兵隊将校で、米国が直面する新しい戦争の形態について論じた「The Sling and the Stone」(2004年)の著者T.X.ハメス大佐(Col. T. X. Hammes)は、アルカイダはその勢力をすでにパキスタンに移しているとし、アフガニスタンの安定化という米軍の論拠を疑問視している。同大佐は現在、国防省と契約している防衛分析研究所に参加している。 

ブルッキングス研究所中東政策サバンセンターのK.ポーラック研究部長(Kenneth Pollack)も、アフガニスタンの米軍増強に疑念を表明した。イラク派兵を強く支持したポーラック氏だが、アフガニスタンには大きな利害関係はないとし、ハメス氏と同様、アルカイダの指導者が権勢を維持しているのはパキスタンにおいてだと主張する。

 
ポーラック氏はアフガニスタンへの米軍の増派が国境を越えたパキスタンのタリバン攻撃につながるとして、ベトナム戦争時のカンボジア攻撃の二の舞になる可能性を憂慮している。「タリバン掃討には大規模な鎮圧作戦が必要だが、パキスタンでは無理だ」 

アフガニスタンの米軍による国境を越えたパキスタンへの攻撃については、米国の情報機関もパキスタン軍との結束に関して懸念している。実際に国境付近での米軍の奇襲攻撃でパキスタンの民間人が20人近く死亡し、パキスタン軍はこれに抗議している。 

奇襲攻撃は現在中断されているが、オバマ政権の新戦略はこの再開を示唆している。また無人飛行機による空襲は増えている。対テロ政策専門家で元CIA 分析官のD.バイマン氏(Daniel Byman)は、空襲はアルカイダをパキスタン内部に移動させるだけで、パキスタン政府を弱体化させるという。さらにパキスタン国民は空襲を不快に感じており、パキスタン政府はこれを看過できない。 

ところが米国議会はそうした反対意見に耳を貸そうとしない。下院の政府運営委員会のアフガニスタンに関する公聴会に出席した4人の参考人はすべて増派を強く支持し、アフガニスタンを新たなアルカイダの聖地にしないための戦いという見解は議論すらされなかった。 

アフガニスタンへの米軍増派に反対する意見について報告する。(原文へ) 
 
翻訳/サマリー=IPS Japan 浅霧勝浩

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|米国|オバマ政権のタリバン分離政策

お好きなだけどうぞ、沢山ありますから

【ナイロビIPS=ジョイス・ムラマ】

 アフリカ大陸は豊かな天然資源に恵まれている。しかし、鉱業に携わる多国籍企業との取引で、アフリカ諸国なかんずく国民はそれに相応しい利益を得ていない。 

アフリカにおける公正な税に関する活動を行うTax Justice Network for Africa (TJN-A)、アクションエイド、南アフリカ・リソースウォッチ、第三世界ネットワーク・アフリカ/クリスチャンエイドなどのNGOが『Breaking the Curse: How Transparent Taxation and Fair taxes can Turn Africa’s Mineral Wealth into Development』(仮題:呪縛からの解放:課税の透明性と公正な税制でアフリカの豊かな鉱物資源を開発に結びつける方法)とする報告書を発表した。

 報告書は豊かな鉱物資源を有するガーナ、タンザニア、マラウィ、ザンビア、南アフリカ、コンゴ民主共和国、シエラレオネの7カ国で行った調査に基づき、多国籍企業の不正な会計と国内法の不備を糾弾する。 

報告書によればザンビアの法律では採掘権の供与が1人の大臣にゆだねられ、汚職の温床となっている。 

また、世界銀行が外資導入を促すために強いた税金の優遇措置もあり、ガーナ、タンザニア、南アフリカは2008年に本来徴税すべき6,800万ドル、3,000万ドル、3億5,900万ドルをそれぞれ失っている。マラウィは1億6,800万ドル、シエラレオネは800万ドル、コンゴ民主共和国では1件の採掘契約で毎年36万ドルの国税を失う。 

アクションエイド・インターナショナルのB.カゴロ氏は「アフリカ諸国が教育、水、衛生などに莫大な資金を先進国から借り入れている」ことを指摘。「公正な税制、公平な採掘権料が実現すれば、この負債が帳消しになることが分かるはずである」と言う。 

多国籍企業に一方的に有利な税制は、世界銀行が海外私企業に鉱業を解放するようアフリカ政府に迫った結果1990年代初期に導入された。報告書によれば多国籍企業は子会社間の取引を利用する会計処理で、巨額の法人税を免れている。これを是正するには、アフリカ大陸統一の税制と税優遇期間を定め、汚職を許さない法制度の制定が必要である。 

汚職は贈賄と収賄が関わる問題であり、その是正には先進国側の努力も必要である。また、アフリカ諸国では会計処理が手作業で行われていることもあり厳密な会計監査が難しく、報告書の提言を実現するまでの道のりは長い。 

アフリカが豊かな鉱物資源を自国の開発に利用できない状況について報告する。 (原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan 浅霧勝浩