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なぜ核兵器を廃絶するのか(梅林宏道)

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【IPSコラム=梅林宏道】

「なぜ核兵器廃絶なのか?」この素朴な問いが最先端の問題になっているように思われる。広島、長崎の原爆投下を経験した日本においては、核兵器のもたらす非人道的な惨害が核兵器廃絶を求める深い願望として存在している。しかし、これだけでは「核兵器のない世界」のビジョンを描くには不十分だ。核兵器廃絶の努力は、より平等で、公正で、人間的な地球社会を創り出そうとする挑戦に強く結び付くものでなければならない。 

米国で新たに反核イニシアチブが始まり「核兵器のない世界」という概念が現実的な目標として再浮上したことで、私は改めてこの「なぜ」という問いに直面した。 

貧困や気候変動といった問題に対するグローバルな取組みは、あたかも人間社会が律せられるべき暗黙の規範に導かれているかのように、当然のことと考えられる傾向にある。しかし核兵器廃絶運動は、それとは対照的に、国の安全保障との関連から個別兵器の問題の枠組みに閉じ込められがちである。核廃絶の問題は、倫理上の、グローバルな人間にかかわる問題として見られないのである。従って、核廃絶運動を成功させるためには、私たちは思考基盤において、より広い空間に出る必要がある。

Hiromichi Umebayashi

 私は10年前に元英国海軍中佐のロバート・グリーン著「核兵器廃絶への新しい道」を日本語に翻訳したが、それ以来ずっと気にかかっている問題があった。そこには、200年前の奴隷制度廃止運動と核兵器廃絶運動とのアナロジーを語る中で、「ただ奴隷制度の残酷さのみを語るのではなく、それを法的問題として語ることによって、奴隷制度廃止運動は成功した」という趣旨が述べられていた。 

グリーン中佐の研究から教訓として学んだことは、国内法、国際法にかかわらず重要な法律を制定させた政治意志の背景には、人類が経験した時代時代の苦しみや苦悩が刻まれているという事実であった。そして、そのような法律には、制定過程で妥協を強いられたとしても、新たな時代を切り開く取組みにおいて活用できる法的規範、語法、概念体系が含まれていることを学んだ。 

兵器を禁止・制限する国際諸条約の前文には基本的な法規範や原理が謳われている。しかし核兵器を制限する諸条約とその他の兵器に関するものとでは、その内容が大幅に異なっている。生物兵器禁止条約、化学兵器禁止条約、対人地雷禁止条約、そして最近のクラスター弾禁止条約には、「禁止は文明世界の当然の要件であり、人間の良心が命じる法に従うものである」として、人道的、道徳的根拠が明確に解説されている。一方驚くべきことに、核不拡散条約(NPT)や包括的核実験禁止条約(CTBT)のような核兵器に関する諸条約では、事情が全く異なるのである。 

生物・化学兵器禁止条約にあるこれらの規範を読んだ読者は、これらすべては、核兵器の禁止・制限にとっても当然の規範として記述されるであろうと想像するに違いない。しかし、それは全くない。NPTやCTBTのどこにも、同様の人道的・道徳的規範に関する記述はないのである。はたしてこのように脆弱な法的立場で、「核兵器のない世界」が実現できるのだろうか。 

核兵器が上記のような規範状況に留まっている理由は明らかである。それは核兵器保有国の参加を確保するためにはそのような婉曲語法が必要だからである。しかしこのような手法を受入れている限り、国際社会は、核兵器の本質とそれが人類の未来の世代に及ぼす影響を踏まえた法規範を確立することに失敗するかもしれない。そうなれば、「核兵器のない世界」を、人類社会にとってより良い世界としてビジョンを描くことはできないだろう。 

従って、私たちが取り組むべき第一の課題は、たとえ核保有国が、核兵器の未曾有の脅威に見合った倫理規範を規定しているがゆえに受け入れなかったとしても、なお有効であるような国際的な法律文書を確立する道を探求することである。 

その方向性を示唆する試みとしては、レベッカ・ジョンソン女史が最近の論文(「軍縮外交」2009年春季号)の中で議論している、核兵器の使用・威嚇を禁止する条約案がある。ここでは、市民社会と同志国家が協力し合う、いわゆる「オタワプロセス」が有効なアプローチになるだろう。 

また私たちは、今日の世界がいかに軍事力を背景とした威嚇外交によって歪められているか、そしてその最たる事例が核兵器使用の威嚇であったという事実を、詳細に明らかにしてゆく必要がある。国連憲章に謳われている「人民の同権及び自決の原則の尊重に基礎をおく諸国間の友好関係」(第1条第2項)や「差別なくすべての者のために人権及び基本的自由を尊重する」(第1条第3項)といった規範は、核兵器の恐怖が支配する世界においては、決して実現をみることはないだろう。「核兵器のない世界」に向けた道のりは、人類がそのような規範が体現される新たな人道社会を思い描くことを可能にするようなものになるべきであろう。(原文へ) 
 
翻訳=IPS Japan浅霧勝浩 

※梅林宏道はNPO法人ピースデポ(平和資料協同組合)の創設者・特別顧問。工学博士(磁性物理学専攻)。 



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【東京IDN-InDepth News=浅霧勝浩】

もし「核兵器のない世界」を、現実からかけ離れた単なる夢で終わらせないとするならば、核兵器保有国は、来年5月にニューヨークで開催予定の歴史的な核不拡散条約(NPT)運用検討会議において、政治的な意思、リーダーシップ、及び柔軟性を発揮しなければならない。 

これは日本の本州北西部に位置する新潟市を舞台に、米国、中国、フランス、ドイツ、日本、中東諸国を含む21カ国から約90人の政府関係者や研究者らが参加して3日間に亘って開催された国連軍縮会議における結論である。国連軍縮会議は、89年以降、毎年日本で開催されており、今回で21回目となる。

 この年次会合は、国際社会が直面している差し迫った安全保障問題や軍縮関連の問題について率直な対話や意見交換を行うことができる重要な公開討論の場と考えられている。また会合では、アジア・太平洋地域の国々に関わる軍縮及び核不拡散の問題についても検討がなされている。 

今回の軍縮会合は、「新潟から世界へ:核兵器のない世界に向けた新しい決意と行動」をテーマに、国連軍縮部と国連アジア太平洋平和軍縮センターの主催(新潟県、新潟市、外務省の協力)で、9月24日に予定されている国連安全保障理事会首脳級特別会合まで4週間をきるタイミングで開催された。 

米国のバラク・オバマ大統領は、同首脳級特別会合において議長を務め、国連における最もデリケートな問題の中から、「核不拡散」と「核軍縮」の問題を取り上げる予定である。 

スーザン・バーク米大統領特別代表(核不拡散担当大使)は、初日のセッションにおける講演の中で「核兵器のない世界」実現を目指すオバマ大統領の決意を再確認し、「米国単独では無理だが、(各国を)主導することはできる」と語った。 

またバーク大使は、核軍縮に向けた米国の戦略について、「米国は核兵器の備蓄量を削減することで(核兵器が有する)軍事的な役割の比重を低下させていきます。そして他の核兵器保有国に対しても同様の削減策をとるよう要請していきます。」と説明した。 

 「さらに、米国は現在ロシアと交渉中の第一次戦略兵器削減条約(START1)に替わる新条約には、法的に拘束力のある検証機能を盛り込むことを目指しています。その目的は、新条約を実質的に機能させるものにするためです。」とバーグ大使は付け加えた。 

日本政府を代表して歓迎の挨拶に立った浅野勝人官房副長官は、オバマ米大統領が「米国は核兵器のない世界に向けた具体的な措置を取る」と述べた4月のプラハ演説を挙げ、「世界で核軍縮の機運が高まっています。今こそ協調する時です。」と訴えた。 

「核兵器のない世界」のビジョンを行動に 

ハナロア・ホッペ国連軍縮部長兼軍縮担当上級代表次席は、開会発言の中で、「核兵器のない世界を実現するには、核兵器保有国と非保有国の双方が共に努力していく必要があります。」と語った。 

今回の会議では、「核兵器のない世界」のビジョンを具体的な行動に移す方法が模索された。 

協議された具体的な行動には、大幅な核兵器保有量削減を目標とした準備的な措置、包括的核実験禁止条約(CTBT)発効に向けた取組みの強化、核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)交渉の推進等が含まれる。 

「現存の核兵器が及ぼす脅威や、核兵器の拡散、非国家の所有というリスクは、国際社会の平和と安全にとって最も憂慮すべき課題です。」とホッペ国連軍縮部長は語った。 

川口順子元外務大臣は、現在の国際情勢について、「米ロ両国が核兵器削減に向けた交渉を開始するなど、核軍縮を取り巻く最近の情勢は数年前とは対照的なものとなっています。」と指摘した。 

「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会(ICNND)」の共同議長を務める川口元外相は、核軍縮に向けた取組みのあるべき方向性について、「私たちは核兵器を保有する諸国間の信頼醸成を促進するとともに、法的拘束力を持って検証できる国際ルールを策定し、それぞれの地域が置かれている安全保障環境を反映した議論を展開していく必要があります。」と自らの信念を語った。 

2010年5月の核不拡散条約(NPT)運用検討会議で議長を務めるフィリピンのリブラン・カバクチュラン駐アラブ首長国連邦大使は、広島に本拠を持つ日刊紙『中国新聞』の取材に対して、「NPT運用検討会議の成功には、政治的な意志とリーダーシップが必要です。私はその機運が高まっていることを嬉しく思います。」と、NPT運用検討会議の行方について前向きな見通しを示した。 

カバクチュラン大使はとりわけ、包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准を追求するオバマ大統領について「大統領の意欲は、NPT運用検討会議への追い風となっている。」と高く評価した。 

また同時に、カバクチュラン大使は、過去のNPT運用検討会議での合意事項が進展していない現状が「締約国の間で不満を招いている」と指摘し、来年の会議ではNPTの3分野(核軍縮、不拡散、原子力の平和利用)全てにおいて議論を進展させる必要性を強調した。 

それらの合意事項には、「中東非大量破壊兵器地帯」の創設や、「核兵器保有国による、核兵器廃絶の明確な約束」を含む13項目の核軍縮措置が含まれる。 

新潟会議では、来年5月の核不拡散条約(NPT)運用検討会議の展望の他にも、朝鮮半島の非核化から軍縮におけるメディアや市民社会の役割まで、幅広い話題について協議が行われた。 

北朝鮮 

中国政府代表者は、現在進められている朝鮮半島の非核化に向けた外交努力について言及し、「中国の役割に注目するというよりも、むしろ米国、韓国、日本、中国、ロシア間の共同努力によって(朝鮮半島の非核化を)目指すべきです。」と語った。 

「中国はこれまでも、そしてこれからも(半島の非核化という)目標達成に向けた役割を果たしていきます。しかし、他の6カ国協議参加国の重要性や米国との直接対話を望む朝鮮民主主義人民共和国の希望についても十分考慮しなければなりません。」と中国外交部軍備管理軍縮局の江映峰副処長は語った。 

朝鮮民主主義人民共和国は北朝鮮の正式名称である。 

核拡散防止に取り組むカザフスタンのカナット・B・サウダバエフ国務長官は、基調講演の中で、「核兵器保有国は、核兵器削減に取り組むことによって、核廃絶に向けた取組みの手本を示さなければなりません。」と語った。 

サウダバエフ国務長官は、カザフスタンがかつて旧ソビエト連邦の構成国であった過去に言及し、「我が国はソ連時代に繰り返し行われた核実験により深刻な被害を受けました。私たちはその経験から自主的に核廃絶に向けた道を歩き始めたのです。核兵器保有国は、核軍縮に取組むことで、率先して手本を示さなければなりません。」と会場の参加者に訴えた。 

核の傘 

日本共産党の日刊紙「赤旗」によると、今回の軍縮会議では、「核の傘」の問題についても協議が行われた。日本は、米国の「核の傘」による安全保障上の保護を受けている。 

川口元外相は、「北朝鮮の『深刻な脅威』に直面している日韓両国が、自国の安全を不安定化させることなしに、どのように『核の傘』の役割を減らせるだろうか」と発言した。 

川口元外相は、核抑止をなくすのに資する条件として、安全保障情勢の好転と核兵器以外の兵器への依存等を挙げ、それらが達成されるまでは「核の傘」が必要であるとの見解を述べた。 

ニュージーランドの市民団体の代表からは、「非核保有国に対して核攻撃を行わない」とする「消極的安全保障」に法的拘束力を持たせ、「核の傘」から離脱すべきだとの発言があった。 

同代表は参考事例として、北大西洋条約機構(NATO)加盟国の間でも、ベルギーやイタリアなどの国々が、非核ニュージーランドのように「核の傘」からの離脱を図りつつある現状を指摘した。 

今回国連軍縮会議を初めてホストした新潟市は、第二次世界大戦末期、広島、長崎、小倉と並んで米軍による核爆弾投下候補地となっていた都市である。国連軍縮会議はこれまで、京都市で6回、世界初の原爆投下地である広島市で3回、札幌市で3回、長崎市で2回、仙台市、秋田市、金沢市、大阪市、横浜市及びさいたま市で各1回開催されている。 

篠田昭新潟市市長は、オバマ大統領が核廃絶を国家目標として宣言した後のタイミングで新潟市が今回の国連軍縮会議の会場となったことに満足の意を表明し、「今この時期に、新潟の地においてこの問題を協議できることは意義深いことです。」と述べた。 

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩 

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│タジキスタン│古きよきソビエト時代を懐かしむ

【パミール山脈IPS=ゾルタン・ドゥジジン】

ソ連の崩壊によって、タジキスタン東部は忘れされられた土地になった。ソ連のなかでもっとも貧しい共和国から、世界でもっとも貧しい国のひとつになってしまったのである。独立国家になったことで、国家所有の農場や灌漑施設、鉱山、交通網、エネルギー工場は失われ、人々はふたたび遊牧生活を余儀なくされている。 

東部のパミール高原があるゴルノ・バダクサン県は、国の半分の土地を占めているにもかかわらず、人口はわずか3%程度。 

パミール高原は、19世紀には「世界の屋根」と呼ばれていた。かつて、シルクロードを利用する商人たちが通過し、のちには、この地をめぐって地政学的な角逐を繰り広げるロシアと英国のスパイたちが通り過ぎていった。

 パミール高原を通っている唯一の道路は、1930年代初頭にソ連軍が建設したパミール・ハイウェイである。この道路は現在かなり老朽化が進み、使っているのは、アフガン北部からケシやヘロインを運ぶ業者ぐらい。なかには、かつてのシルクロードを「ケシ・ハイウェイ」と呼ぶ者もいるぐらいだ。 

半遊牧民生活をしているアジズさんは語る――「ソ連時代にはいろんな食べ物が店にあったし、燃料も安かったし、バスや道路の状況もよかった」。傍らでは、アジズさんの妻が、ヤクのミルクで作ったバターとヨーグルトをごく粗末な機械を回しながら作っていた。 

スターリンが好きだったってわけじゃない。でも、みんなソ連時代を懐かしんでるんだ。信仰の自由はなかったけど、食べ物と仕事はあった」。 

遊牧民の生活が営めるのは夏だけだ。寒い冬には、近隣の街に退避して暮らす。しかし、この間買うことができるのは、法外な値段で売っている輸入のクッキー、パン、チョコレートバー、魚や肉の缶詰(たいていは賞味期限切れ)ぐらいだ。 

エネルギー不足も深刻である。そのために、運営できなくなる学校や病院も相次いでいる。(原文へ) 
 
翻訳/サマリー=IPS Japan 

|パキスタン|「タリバン掃討作戦は効果がでてきている」とUAE紙

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【ドバイWAM】

「内戦が続くパキスタン北西辺境州に130万人のパキスタン難民が帰還を果たしたことは、国軍による対タリバン軍事掃討作戦が効果を挙げている証拠である。」とアラブ首長国連邦(UAE)の主要日刊紙は、本日の論説で報じた。 
ドバイに本部を置く『ガルフ・ニュース(Gulf News)』紙は続けて「総数230万人にのぼる難民が来年の3月までに同地域へ帰還予定で、それによって近年で最大の国内難民を出した内戦に一区切りがつくこととなる。」 

「より重要なことは、国軍が治安を回復する中で難民の軍への信頼が回復されつつあることである。そうしたなかユースフ・ラザー・ギーラーニーパキスタン首相は、タリバン民兵に対する作戦は成功したと宣言した。」 

「タリバン勢力の軍事力及び影響力は、国軍による継続的な攻撃のみならず地域住民の抵抗に晒される中で徐々に弱まりつつある。」

 「パキスタン人タリバングループTTP(Tehrik-e-Taliban)の幹部スポークスマンであるマウルヴィ・オマールの逮捕はパキスタン政府にとって重要な前進となったほか、TTPリーダーのバイツッラー・メスード師死亡報道のあと、次席指導者のファキール・モハンマド氏が新指導者を名乗るなどTTP内部で対立が深まっているようである。また、タリバン民兵たちの集団投降も相次いでいる。」 

ガルフ・ニュース氏は論説の最後に「パキスタン政府は軍事面に留まらず良い統治(good governance)の面でも取り組みことで、これらの有利な状況を活かしていかなければならない。」と締めくくった。 

翻訳=戸田千鶴/IPS Japan浅霧勝浩

アフリカが世界最大の非核大陸となる

【カイロIDN-InDepth News=ファリード・マハディ】

アフリカは面積、人口においてアジアに次ぐ世界第二の大陸であるが、今や域内に約10億人が居住する53カ国からなる世界最大の非核大陸となった。 

このニュースは、イランの核開発疑惑の動向に目を奪われている殆どの主流メディアに注目されることはなかったが、世界最大級のウラニウム産出量を誇る地域の非核化に関する問題であり、重要な出来事である。 

事実、国際原子力機関(IAEA)とアフリカ連合(AU)は8月中旬、欧州及び中国資本の多国籍企業がアフリカにおいて合法及び非合法な手段でウラニウム採掘を盛んに行っているとの報道が飛び交う中、アフリカ非核地帯化条約(NWFZ:通称ペリンダバ条約)の発効を発表した。これにより、南半球の全地域が非核地帯となった。

 ペリンダバ条約の発効に向けた手順は、ブルンジが7月15日に28番目の批准国となったことで完了した。因みにこの条約の最初の批准国はアルジェリアとブルキナファソで、条約署名の2年後にあたる1998年に批准している。 

ペリンダバ条約は、核兵器の不拡散を検証するため、全ての締結国に対してIAEAとの「包括的保障措置協定」を締結することを義務付けている。これらの協定は核不拡散条約(NPT)に関連して締結が義務付けられている諸協定に相当するものである。 

また、同条約は締結国に対して「核物質及び核関連施設や機器を盗難や不正使用から防護するために、最高水準のセキュリティーを適用すること。また、非核地帯内の核施設に対する武力攻撃の禁止」を義務付けている。 


非核兵器地帯 

ペリンダバ条約の発効によってアフリカ大陸は正式に非核兵器地帯と宣言された。1995年6月にヨハネスブルクとペリンダバで草案が作成され、1996年4月11日にカイロで署名開放された(アフリカ諸国42カ国が調印。28か国の批准が発効要件とされた:IPSJ)。この条約の名称は南アフリカ共和国(南ア)プレトリアの西に位置するハートビースプールト・ダム近郊にあるペリンダバ原子力研究所に因んで付けられたものである。 

ペリンダバ原子力研究所は、南ア原子力公社が運営する同国の主要な核研究センターで、1970年代には南ア政府による核爆弾の開発と製造、それに続く備蓄の舞台となった場所である。 

モハメド・エルバラダイIAEA事務局長は、「アフリカ非核地帯は、ラテンアメリカ、カリブ海地域、東南アジア、南太平洋、中央アジアにおける非核地帯に準じる重要な地域レベルの信頼醸成、安全保障措置であり、核兵器のない世界に向けた我々の努力を後押しするものである。」と宣言した。 

またエルバラダイ氏は、「ペリンダバ条約が核科学技術を平和目的のために活用することを支持していることを歓迎し、そのような核技術の活用がアフリカ大陸の経済・社会開発に寄与すると確信している。」と語った。 

非核化への遠き道のり 

アフリカを非核地帯とする試みの起源は、1964年7月17日から21日にカイロで開催された当時のアフリカ統一機構(OAU)(2002年にアフリカ連合に発展改組:IPSJ)首脳会議に遡る。その際、加盟国首脳達はアフリカ非核地帯を設立することを決定した。 

カイロに集ったアフリカ各国の首脳達は、「国際連合主催の下で締結される国際合意を通じて核兵器の製造及び同技術を駆使する能力を取得しないことを約束する」用意があるとの宣言を行った。 

その際、アフリカ各国の首脳達は、自らの立場を「非核地帯が、核兵器の水平的拡散(非核国が核兵器開発に乗り出すことによって核保有国が増えること)及び垂直的拡散(核保有国が自分らの安全保障戦略で核兵器に対する依存度を高めながら核戦力の質的・量的増強を図ること)を防止する最も効果的な手段のひとつである」とした1975年12月11日の国連総会決議をはじめとする全ての関連合意に基づくものとした。 

アフリカ諸国の首脳達はまた、「核兵器のない世界構築という究極の目標達成に向けてあらゆる手段を講じる必要があり、全ての国々がその目標に向けて貢献する義務がある」との信念を強調した。 

彼らはまた、「アフリカの非核化は、核不拡散管理体制を強化し、核エネルギーの平和的利用における国際協力を促進するとともに、包括的かつ完全な軍縮に向けた歩みを促し、地域及び国際社会の平和と安全保障を向上させることと確信している」との声明を述べた。 

ペリンダバ条約の発表に際して、アフリカ諸国の首脳達は「非核地帯化条約がアフリカ諸国を核攻撃から守る」と確信している点を強調した。 

また同条約は、締結国に核廃棄物の投棄を禁じていることから、アフリカを放射線廃棄物やその他放射性物質による環境汚染から保護することになる。 

しかしながら、アフリカ諸国の首脳達は同時に、NPT第4条を厳格に順守していく意向を表明した。 

平和的利用が絶対条件 

NPT第4条は、「全ての締結国が等しく、核エネルギーを平和目的のために開発、研究、及び生成、活用する不可譲の権利を有している」ことを認めている。 

同条項はまた、締約国が原子力の平和的利用のため設備、資材並びに科学的及び技術的情報を最大限交換することを不可譲の権利として認めている。 

また、カイロに集ったアフリカ各国の首脳達は、アフリカ諸国の持続可能な社会経済開発のために、平和利用を目的とした核エネルギーの開発と実用的な適用を目的とした地域協力を推進していく決意である旨を強調した。 

豊富なウラニウム資源と核廃棄物 

アフリカは世界有数の豊富なウラニウム鉱床を有する地域である。多くの工業先進国がアフリカの鉱物資源一般に、特にウラニウム資源に深く依存している。例えばフランスの場合、国内58か所の原子力発電所を稼働し続けるため、ニジェールのウラニウム資源に完全に依存している。 

アフリカにおける他のウラニウム産出国は、アルジェリア、ボツワナ、中央アフリカ共和国、コンゴ民主共和国、ガボン、ガンビア、ギニア、マラウィ、モロッコ、ナミビア、タンザニア、ザンビアである。 

しかしながら、アフリカはそれと同時に、東南アジアと並んで世界最大の放射能性及び毒性廃棄物の投棄地域と報道されている。 

ソマリアは核廃棄物の主な投棄地域で、同国近海の海賊活動もこの不法活動に関連しているとの疑惑も報じられている。 

アジア、ラテンアメリカにも広がる非核化地帯 

事実、類似した非核化条約が南アメリカ(トラテロルコ条約)、南太平洋(ラトロンガ条約)、東南アジア(バンコク条約)及び南極(アトランティック条約)においても発効している。 

さらに中央アジアに非核兵器地帯を創設するセメイ条約(カザフスタンのセメイの旧名はセミパラチンスク:IPSJ)が、今年の3月21日に発効した。この条約にはカザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタンの五カ国が加盟している。 

セメイ条約(中央アジア非核地帯条約)は、中央アジアの旧ソ連加盟諸国で構成されたこの種のものとしては最初のものであり、北半球における最初の非核地帯である。また同条約には中央アジアならではの環境問題を取り扱った項目が含まれている。 

これら中央アジアの5カ国には、旧ソ連時代に核兵器関連施設が建設され、いずれの国も当時の核兵器製造や実験を起因とする深刻な環境被害に直面している。 

アフリカ非核地帯化条約と同様、中央アジア非核地帯条約も締結国による、域内における核爆発装置の開発、製造、貯蔵、取得、及び所有を禁止している。 

このように地域レベルで発効に漕ぎつけている非核化条約の動きは、核兵器の廃絶を目指して活動を展開している世界の市民社会にとっての一里塚となっている。(原文へ) 

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩 

This article was produced as a part of the joint media project between Inter Press Service(IPS) and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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|軍縮|エジプト、米国の「核の傘」を拒絶する

エジプト、米国の「核の傘」を拒絶する

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【カイロIDN-InDepth News=ファリード・マハディ】

今週開催された米国・エジプト首脳会談においては、中東をめぐる米国の「核の傘」という亡霊がつきまとった。5年ぶりとなるエジプトのホスニ・ムバラク大統領の訪米に向けた準備段階で、同大統領と側近の高官は、中東包括和平案の一部として米国政府が核攻撃から中東地域を守ることを提案しているとする疑惑を、きっぱりと否定していた。 

米国による「核の傘」の起源は米ソ冷戦時代に遡り、通常、日本、韓国、欧州の大半、トルコ、カナダ、オーストラリア等の核兵器を持たない国々との安全保障同盟に用いられるものである。また、こうした同盟国の一部にとって、米国の「核の傘」は、自前の核兵器取得に代わる選択肢でもあった。

Hosni Mubarak and Barak Obama/ IPS
Hosni Mubarak and Barak Obama/ IPS


消息筋によると、ムバラク大統領はオバマ大統領との8月18日の首脳会談に際して、「中東に必要なものは平和、安全、安定と開発であり、核兵器ではありません。」と主張した。 

ムバラク大統領はそうすることで、1974年以来エジプト政府が国是としている「中東非核地帯」設立構想をあくまでも推進する決意であることを改めて断言した。 

またムバラク大統領は、首脳会談に先立つ8月17日、エジプトの主要日刊紙アル・アハラムとの単独インタビューに答え、「エジプトは中東湾岸地域の防衛を想定した米国の『核の傘』には決して与しません。」と語った。 

「米国の『核の傘』を受け入れることは、エジプト国内に外国軍や軍事専門家の駐留を認めることを示唆しかねず、また、中東地域における核保有国の存在について暗黙の了解を与えることになりかねない。従って、エジプトはそのどちらも受け入れるわけにはいかないのです。」とムバラク大統領は語った。 

ムバラク大統領は、「中東地域には、たとえそれがイランであれイスラエルであれ、核保有国は必要ありません。中東地域に必要なものは、平和と安心であり、また、安定と開発なのです。」と断言した。「いずれにしても、米国政府からそのような提案(核の傘の提供)に関する正式な連絡は受けていません。」と付け加えた。 

同日、エジプト大統領府のスレイマン・アワド報道官も、米国の「核の傘」について論評し、「『核の傘』は、米国の防衛政策の一部であり、この問題が取り沙汰されるのは今回が初めてではありません。ただし今回の場合、問題が中東との関連で取り沙汰されている点は新しいと言えます。」と語った。 

事実、中印国境紛争が最も緊迫した時期(ちょうど米国が1962年10月のキューバ危機に直面した時期と重なっていた)、ジョン・F・ケネディ政権は、中国から自国を防衛するため米国の軍事支援を求めざるを得ないと考えていた当時のインド政府に対して、非公式に米国の「核の傘」の提供を申し出たことがある。 

アワド報道官は、現在浮上している中東地域に向けられた米国の「核の傘」疑惑についてコメントし、「そのようなものは形式においても内容においても全く承認できない。今は米国の『核の傘』疑惑について話題にするよりも、むしろイランの核開発問題について、欧米諸国・イラン双方による柔軟性を備えた対話の精神を基調として、取り組むべきです。」と語った。 

アワド報道官はまた、「イランは、核開発計画が平和的利用を目的としたものであることを証明できる限り、他の核不拡散条約(NPT)締結国と同様、核エネルギーの平和的から恩恵を受ける権利があります。」と付け加えた。 

「このイランに対する取り組みには、2重基準との誹りをかわすためにも、同時並行で、イスラエルの核能力の実態解明に向けた真剣な取り組みが伴わなければなりません。」とアワド報道官は強調した。(エジプト政府は、核兵器保有国のイスラエルに対し、NPTに調印し、国際原子力機関の監視を受けるよう国際社会が圧力をかけることを求めている:IPSJ) 

これら一連のムバラク大統領の報道官による発言は、「中東非核地帯」設立を目指して35年に亘ってエジプト政府が取り組んできた方針に一致するものである。ムバラク大統領は、1990年4月、このイシニアチブを更に推し進めるべく、守備範囲を更に拡大した「大量破壊兵器フリーゾーン」構想を新たに提案している。 

このエジプトの取り組みは殆どのアラブ諸国の支持を獲得し、最近でも22カ国のアラブ諸国で構成するアラブ連盟のアムレ・ムサ事務局長がこのイシニアチブの正当性を改めて是認する発言を行った。 

ムサ事務局長は7月5日、「中東の非核化は必ず実現しなければならない問題です。」と宣言した。 

「中東非核地帯」構想へのアラブ諸国の支持は、米国、イスラエル、欧州諸国がイランの核兵器開発疑惑を問題視するようになってから、特に湾岸地域のアラブ諸国において益々強まっている。 

イランはこうした欧米諸国からの嫌疑を全面的に否定し、同国の核開発プログラムはあくまでも平和的利用と原子力発電を目的としたものであると主張している。一方、米国、イスラエル、欧州諸国は、イランに核兵器開発を許さないとして一歩も譲らない構えである。 

このような欧米諸国の強硬姿勢は、イランの核武装は望まないものの、その他の事態収拾策を望むロシア、中国の姿勢とは対照的である。アラブ諸国も、欧米諸国が主張するイランの核兵器開発意図について、どちらかと言えば疑念を抱いている。 

欧米の見方については国際原子力機関(IAEA)の天野之弥新事務局長(12月1日就任予定)が暗に異議を唱えている。天野氏は、新事務局長選出後の7月3日、記者団に対して「イランが核兵器を開発する能力を取得しようと試みているとの動かしがたい証拠は見当たりません。」と語った。 

ロイターのシルヴィア・ウェスタール記者による「イランが核武装を試みているとの見解をお持ちですか?」との質問に対して、ベテラン外交官で核不拡散問題の上級専門家でもある天野氏は、「この問題に関するIAEAの公式記録を見ても、そのような疑惑を裏付ける証拠は一切見当たりません。」と答えた。 

2日後の7月5日、アラブ連盟のムサ事務局長は、クウェートの日刊紙『アル・アンバ』との単独インタビューで、「イランは中東地域にとって現実的な脅威か?」との質問に対して、「イランが軍事目的の核開発計画を行っていると証明できる書類化された証拠は何もありません。」と答えた。 

「(中東には)核兵器を保有する国は1つしかありません。それはイスラエルです。」と、ムサ事務局長は強調した。 

イスラエルは60年代半ばに核兵器開発を開始したが、同国の歴代政府は、核兵器の保有に関して、意図的に肯定もしなければ否定もしない政策をとってきた。 

それにも関わらず、ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は、イスラエルを2009年1月現在における核弾頭配備数で世界第6位の核兵器大国とランク付けしている。 

SIPRIのデータによると、イスラエルが配備している核弾頭数は、安保理常任理事国の5大国(米国、ロシア、英国、フランス、中国)に次ぐ80基で、インド(60~70基)、パキスタン(60基)の配備数を上回っている。 

またSIPRIによると、北朝鮮は、使用可能な核兵器を保有しているかどうかについては不明だが、既に若干数の核弾頭を組み立てるには十分なプルトニウムを生成していると考えられている。 

イスラエルは、米国、ロシア、英国、フランス、中国と異なり、1968年に署名開放された核不拡散条約(NPT)に加盟していない。 

しかしながら、イスラエルは、今年1月の時点で総計23,300発超と見積られている世界の核弾頭を保有している8カ国の一角を構成している。このSIPRI発表の核弾頭数には、「即時使用可能核弾頭」、「非現役予備核弾頭」、活性及び不活性の「備蓄核弾頭」、及び解体待ちの「退役核弾頭」が含まれている。 

「インド、パキスタン両国も、イスラエル同様、NPT未加盟の事実上の核兵器保有国であり、引き続き、核弾頭を搭載可能な新型ミサイルシステムの開発と核分裂性物質の生成能力強化に取り組んでいる。」とSIPRIは報告している。 

しかし、SIPRI発表の核弾頭数については、疑問を呈する声も上がっている。例えば、ジミー・カーター元米国大統領は、「イスラエルは150基ないしそれを上回る数の核弾頭を保有している。」と主張している。 

エジプトの高名なジャーナリスト、作家、政治評論家で、故ガマール・アブドゥン・ナセル、故アンワル・サダト両大統領の側近として顧問を務めたモハメド・ハサネイン・ヘイカル氏は、イスラエルは200基の核弾頭を保有していると語っている。 

米国に本拠を置く軍備管理協会(ACA)は、効果的な軍備管理政策に対する公衆の理解と支援を促進する目的で1971年に設立された無党派のシンクタンクであるが、イスラエルの保有核弾頭数は75基から200基と見積もっている。 

一方、エジプト軍諜報筋はイスラエルが保有する核弾頭数を230基から250基の間と見積もっている。 

イスラエル政府は、これらの報告や数値に関して否定(も肯定も)していない。 

アラブ諸国の支持を集めているエジプトの中東非核地帯化イシニアチブは、イスラエルが域内唯一の核兵器保有国として、中東地域全体の脅威となっている現実を踏まえたものである。 

匿名を条件に記者の取材に応じたエジプト政府高官は、「我々は常々、中東地域で唯一の明らかな核兵器国(イスラエル)を特別扱いしている米国には、未だ核兵器の開発をしていないイランに対して、核開発計画を中止するよう要求する正当性は持ち合わせていないと主張してきた。」と語った。 

また同政府高官は、「ムバラク大統領はオバマ大統領との会談の席でこの議論を持ち出しました。エジプトは、もし米国がイスラエルに圧力をかけて核兵器廃棄に持ち込んでいたならば、イランの潜在的な核開発の野望を止めさせる上で、正当かつ強固な立場を構築できていただろうと常々明言してきたのです。」と語った。 

また同政府高官は、ムサ事務局長が最近述べた声明に言及した。「中東の非核化は必ず実現しなければならない問題です。イスラエルの核兵器の存在は、核不拡散の原則を破り、非核保有国を核開発に走らせる原因となっているのです。」 

エジプト外務省のハッサム・ザキ報道官は今週初旬に行った公式声明の中で、「エジプトは、政府のあらゆるレベルで、また、国際会議などあらゆる機会を捉えて『中東地域は非核兵器地帯と宣言されるべき』と一貫して論じてきました。」と語った。 

ザキ報道官は、米国・エジプト首脳会談は、核軍縮を協議するのに相応しいタイミングで開催された点を指摘した。オバマ大統領は4月5日、チェコ共和国の首都プラハで行った演説で、「核兵器のない世界」の実現に向けて取り組んでいくことを誓った。 

7月6日、米国のオバマ大統領は、ロシアのメドベージェフ大統領との間に、向こう7年以内に双方の備蓄核兵器の一部削減を目指した共同文書に署名した。 

このモスクワ合意は、大陸間弾道ミサイルと潜水艦発射ミサイル双方を含む戦略核弾頭を削減対象としたもので、今年12月に失効する第1次戦略兵器削減条約(SART1)の後継条約について骨子を合意したものである。 

米国・エジプト首脳会談は、また、核兵器廃絶に向けた重要なステップとして世界的な核軍縮キャンペーンが展開されている最中に開催された。 

核兵器廃絶を目指す世界的な核軍縮運動「グローバルゼロ(Global Zero)」キャンペーンは、政治や軍事、経済、宗教、市民活動など、様々な政治路線を横断的に網羅した有識者およそ100人の署名人によって、昨年12月にパリで創設された。 

このキャンペーンは、「グローバルゼロ宣言」の中で運動の目的を、「2大核兵器大国(世界の核兵器の95%を保有する米国とロシア)が、段階的かつ検証を伴う削減システムの確立を通じて、世界の核兵器廃絶に向けた包括的合意を実現できるよう運動を通じて支えていくこと。」としている。 

現在グローバルゼロでは、段階を踏んだ核廃絶を実現していくための政策立案を進めており、世界的なメディア、オンラインコミュニケーション、市民社会組織を通じた幅広い一般民衆による支持態勢の構築に取組んでいる。 

グローバルゼロの署名人は、2010年上旬に数百人の各界の指導者を集めて、同キャンペーンのヨルダンのヌール王妃が「核の狂気(the nuclear folly)」と呼ぶ「核兵器」の廃絶をテーマとしたグローバルゼロ世界サミットを開催すると発表している。(原文へ) 
*編集:ラメシュ・ジャウラ

翻訳=IPS Japan 

核兵器に反対しつつも伸び続ける米国の武器輸出

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【国連IPS=タリフ・ディーン

「『核兵器のない世界』に向けて具体的な措置をとる‐」と誓った米国のバラク・オバマ大統領による発言は、世界中の平和活動家たちから圧倒的な支持を獲得した。 

しかし同時に、オバマ大統領は、通常兵器の販売については(核兵器に対するような)削減の意向について全く触れていない。少なくとも増加し続ける米国製兵器輸出の今年の動向を見る限り、このことは明らかである。 

「今までのところ、オバマ政権は従来の武器輸出政策に関して、殆どメスを入れていない。」と、ジョージタウン大学エドモンド・A・ウォルシュ外交学部平和・安全保障センターシニアフェローのナタリー・J・ゴールドリング女史は語った。

 
ゴールドリング氏は、「戦闘機、ミサイル、軍艦、戦車を含む主だった米軍の武器体系の輸出実績は伸び続けている」と言う。 

「2009年の米国の武器輸出高が空前の規模となることが予想されていることからも明らかなように、要するに、通常兵器の輸出に関しては『平常通り』ということです。」とゴールドリング氏はIPSの取材に対して答えた。 

米国防総省によると、今年末までの米国の対政府武器輸出総額は、2008年の実績が364億ドルであったのに対して、想定された400億ドルを突破すると予想されている。 

2000年代初期の通常兵器の年間平均輸出額は、約80億ドルから130億ドルの間であったが、2009年の前半期の輸出実績だけでも270億ドルに達しており、さらに記録を伸ばす勢いである。 

これら通常兵器の主な輸出先は、エジプト、イスラエル、パキスタン、アフガニスタン、トルコ、ギリシャ、韓国、バーレーン、ヨルダン、タイ、アラブ首長国連邦等の米国と同盟関係にある国々である。 

「この傾向は、歴史的に国防予算の削減圧力に対抗して武器の売却を試みてきた請負業者にとっては朗報と言えるでしょう。」とゴールドリング氏は語った。 

「しかし、このことは同時に、オバマ政権が米国の武器輸出政策の見直しを行うと期待していた人々にとっては悪い知らせと言わざるを得ない。」と同氏は付け加えた。 

一方、世界有数のシンクタンクであるストックホルム国際平和研究所(SIPRI)兵器輸出プログラムのシモン・ベイズマン主任研究員は、「米国防総省提供のデータはやや不明確」と言う。 

ベイズマン氏は、「想定された400億ドルという数字は、はたして2009年度の武器輸出実績額を指すのか、それとも単なる目標額を示したものなのか定かでない。しかしながら、そうは言っても米国の通常兵器輸出額が右肩上がりで伸び続けているのは事実で、それにはいくつかの理由が考えられます。」と語った。 

そしてその理由として、「おそらく最も重要な点は、今日では10年から20年前に比べて先端兵器を大規模に製造できる業者が少なくなっていることだと思います。つまり武器を購入する側の選択肢がより限られているのです。」と語った。 

「米国は、世界で最も進んだ軍事技術と幅広い品揃えを誇る兵器製造国であり、とりわけ人気の新鋭戦闘機や各種航空機、ミサイル、軍事用電子部品といった分野で、基本的に顧客のあらゆる要望に応えることができるのです。」とベイズマン氏は指摘した。 

 またベイズマン氏は、「大手競合相手がかなり限られてきている中で、世界の兵器市場に占める米国の割合は大きくなってきており、今後もその傾向は続くと思われます。」と語った。 
この点に関して良い例が、2009年に諸外国との関連諸契約が結ばれた、統合打撃戦闘機(JSF:米国のロッキード・マーティン社が中心となって開発中の単発単座のステルス性を備えたマルチロール機で、F-35ライトニングII戦闘機のことを指す:IPSJ)開発計画である。前述の米国防総省による400億ドルにのぼる武器輸出想定額には、2009年におけるJSF追加発注額が含まれている可能性がある。 

JSF計画は既に取引額で史上最大の兵器輸出契約となっている。そして、世界市場で他の追従を許さない商品競争力を有していることから、今後さらに大幅な発注増加が見込まれている。 

「JSF計画だけでも、向こう20年以上の期間に亘って米国の武器輸出総額を高いレベルに維持し続けることができるだろう。」とベイズマン氏は付け加えた。 

また、米国製の兵器を伝統的に購入してきたアジア・オセアニア(日本、台湾、韓国、パキスタン、オーストラリア)、中東(サウジアラビア、アラブ首長国連邦)、欧州・近東(英国、トルコ)の国々が、いずれも最近大規模な発注を行った、或いは近く行う予定である点も重要である。 

「金融危機にも関わらずこれらの国々の多くは、軍備費を大幅に増強し、最新の軍装備の発注を計画している。」とベイズマン氏は語った。 

ベイズマン氏は、その理由の一部として、「これらの国々が各々感じている脅威 – 例えば、「テロ」に対する戦争、台頭する中国の近代化、北朝鮮及びイランの核開発計画、長引くアフガニスタン紛争 – に対応しているものです。」と語った。 

例えば、台湾の場合、昨年まで米国からの武器輸入額は低いレベルに留まっていたが、米国との約8年に及ぶ交渉が妥結し、今年には台湾一国で数十億ドル規模の発注を行う予定である。 
一方、サウジアラビアは100億ドル規模を超える米国製武器を発注する計画を発表した。そしてその一部については、既に契約が行われたか或いは2009年-2010年中に行われる予定である。 

それに加えて、米国は、20億から30億ドル規模の「前菜(=米国製兵器)」を手始めに、巨大なインド市場への参入を果たした。関連契約が最近結ばれており、今年中に更なる発注がなされるものと期待されている。 

また、米国は現在イラクに対する主要武器供給国である。(発注計画規模は100億ドル近くに及び、その大半は2009年-2010年に最終決定する予定である。) 

ジョージタウン大学のゴールドリング氏は、「米国防安全保障協力局(DSCA)の記録によると、オバマ政権は、ゆっくりではあるが、新たな武器輸出案件を許可し始めている。」と語った。 

オバマ政権発足から最初の5カ月間に、DSCAは議会に対して合計最大8件の大規模な兵器輸出案件がある旨を通知している。 

しかしその後ペースは加速化し、DSCAは7月だけで、それまでの5カ月分に匹敵する最大8件の更なる大規模兵器輸出案件を報告している。そして8月に入ると同月の最初の1週間だけで、DSCAは更に10件の案件を議会に報告している。 

 「オバマ政権関係者の発言内容から、彼らも既に、『米国による親善の象徴』及び『2国間及び多国間関係重視の約束』として、米国製武器の売却を活用する誘惑にかき立てられていることが窺えます。」とゴールドリング氏は語った。 

米政府関係者は、過去においても米国製武器の売却が輸入国の国防力増強に貢献すると度々主張してきた。 

「しかし米国の武器供与は、(米政府関係者の主張に反して)軍拡競争や地域における対立国との関係悪化、紛争が勃発した際の人的被害の増大といった、武器輸入の目的である輸入国が直面している脅威そのものを、しばしば増大させてきたように思われます。」とゴールドリング氏は付け加えた。 

政策責任者たちは、過去の行き過ぎを繰り返すのではなく、こうした武器輸出が長期間にもたらしうるマイナス面の影響について計算に入れておかなければならない。 

ゴールドリング氏は、「この因果関係についての立証責任は、こうした武器取引を止めようとする側にではなく、武器を売却する側にあるのです。」と語った。

オバマ大統領は、小型武器・小火器が引き起こしている被害について従来雄弁に言及してきていることから、無秩序に行われている小型武器・小火器輸出が及ぼす不安定作用については、理解しているようである。 

オバマ大統領は既に、小型武器・小火器輸出の分野におけるブッシュ前政権の政策の一部を見直す作業に着手している。 

「米国の安全保障も、この見直し作業を全ての通常兵器を対象に広げていくことによって十分確保できると思います。」とゴールドリング氏は語った。(原文へ) 

翻訳=IPS Japan

│ロシア-トルコ│スルタンと仲直りをするツァー

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【イスタンブールIPS=ヒルミ・トロス】

この300年間で12回もの戦争を交わした長年の仇敵だと考えられていたロシアとトルコが、最近急速に歩み寄っている。 

先週トルコを訪問したロシアのウラジミール・プーチン首相は、トルコのエルドアン首相と実に20もの協定に署名した。合計で400億ドル相当の取引である。

中でも注目は、ガスパイプラインのナブコサウスストリームは「競合的」ではなく、「相互補完的」だと宣言されたことだ。欧州と米国が支援するナブコは、トルクメニスタン・カザフスタン・アゼルバイジャンの天然ガスをロシアを通過せずに欧州に運ぶ(2014年に供用開始予定)。サウスストリームは、ロシアからトルコ領土の黒海を経由して欧州までガスを運ぶが(2016年開始予定)、そのポイントは、ウクライナを通過しない点にある(現在、ロシアから欧州向けのガスの80%が同国を通過)。 

ロシア・トルコ間の貿易は現在年間380億ドル規模。この8年間で8倍に伸びた。トルコにとってロシアは最大の貿易相手にまで成長した。 

2007年にはトルコで「ロシア文化年」が開かれ、翌年には逆にロシアで「トルコ文化年」があった。トルコへの観光客数は、ドイツに続いてロシアが第2位に入った。 

トルコは欧州共同体入りを50年にわたって望むなど、長らく欧州よりの姿勢を見せてきたが、エネルギー問題は対ロシア外交に新たな次元を持ち込みつつある。 

しかし、英字紙『ハリエット』(Hurriyet)のコラムニスト、ユスフ・カンリ氏は、トルコがロシアに急接近し始めたことで、トルコの地政学上の重要さを欧州が改めて認識することになり、逆に欧州とトルコの距離は縮まるのではないか、との見方を示している。 (原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan 

|ブラジル|男性服役者に輪姦された少女の事件は氷山の一角

【リオデジャネイロINPS=ファビアナ・フレシネット

パラ州の刑務所内で、15歳の少女が1カ月にわたり、20人の男性服役者に強姦され続けた。少女は窃盗の疑いで連行されたまま、法的な手続きなしに、拘留されていた。

パラ州のカレパ知事は、同州の刑務所の状況が憂慮すべきものであることを認めた。同事件について十分調査すると述べた上で、同州の市営刑務所132カ所のうち男女別に収監できるのは、6カ所だけであると報道陣に伝えた。

 
ブラジル法務省の統計によれば、女性服役者は5%のみであるが、アムネスティ・インターナショナルは、その比率は上昇傾向にあるとし、政府の対応を早急に求めている。

当局の発表によると、根本的にブラジルの刑務所は過密問題を抱えており、暴力や暴動の原因となっている。1,050カ所の施設は定員26万2千人のところ、42万人を収容している。

アムネスティのブラジル研究者ティム・ケイヒル氏は、「今回の事件は特別なものでなく、我々が受けてきた報告と一致している。多くの女性服役者が性的暴力、拷問、健康管理の欠落など、非人間的状況におかれている。訪問調査で生後11カ月の赤ん坊や病気の幼児が、母親といっしょに収監されているのを見た。手錠をはめたまま、出産した者もある。」とIPS記者に語った。

「当局やメディアはより年少者に刑事責任を問うことを訴えているが、今回の事件で明らかになったように、ブラジルの現状では収監した若者を最低限保護することもできない。刑事責任年齢を下げても、犯罪は減らない。ブラジルの更正制度が服役者を非人間的にし、より多くの暴力的な人間を生み出している。」と同氏は主張する。

超法規的、即時、恣意的処罰に関する国連特別報告者のフィリップ・アルストン氏は、今月ブラジルを11日間訪問し、予備報告で、ペルナンブコ州だけでもこの10ヶ月間に61人が刑務所内で殺害されていると伝えた。「70%が集団による殺害と思われ、その集団の多くが、現在または以前の警察官である。」

国連の拷問禁止委員会でも、ブラジルの刑務所では拷問が「広範囲に渡り、組織ぐるみである。過密、不衛生、高温、暗室、永久収監などの劣悪な条件に加え、暴力が一般化しており、監督がいないため、告発されない。」という報告がされている。

さらに米州人権委員会にも、ブラジル国立司教会議によって、同様の内容が報告され、5つの州において、女性服役者への暴力が認められたと訴えた。

ダ・シルバ内閣も状況改善に動いている。タルソ・ゲンロ法務大臣は、今回の「野蛮な」事件は特別なものでなく、服役施設に対する公的投資が「慢性的に」不十分であったためと述べた。最近立ち上げられた「安全保障と市民権の国家プログラム」によって、パラ州には1200万ドルが拠出され、2カ所の女性用収監施設が建設される。

ケイヒル氏は数十年に渡って、国内外のNGOが、拷問や暴力について訴えてきたことを指摘し、行政の対応は遅いと言う。メディアで注目されたこの事件だけに対応するのでなく、すべてのケースに対応する対策が必要であると訴える。

ブラジルの刑務所問題が、少女輪姦事件で注目を集めている。(原文へ

翻訳/サマリー=INPS Japan浅霧勝浩

|ブラジル|男性服役者に輪姦された少女の事件は氷山の一角

【リオデジャネイロINPS=ファビアナ・フレシネット

パラ州の刑務所内で、15歳の少女が1カ月にわたり、20人の男性服役者に強姦され続けた。少女は窃盗の疑いで連行されたまま、法的な手続きなしに、拘留されていた。 

パラ州のカレパ知事は、同州の刑務所の状況が憂慮すべきものであることを認めた。同事件について十分調査すると述べた上で、同州の市営刑務所132カ所のうち男女別に収監できるのは、6カ所だけであると報道陣に伝えた。

 ブラジル法務省の統計によれば、女性服役者は5%のみであるが、アムネスティ・インターナショナルは、その比率は上昇傾向にあるとし、政府の対応を早急に求めている。 

当局の発表によると、根本的にブラジルの刑務所は過密問題を抱えており、暴力や暴動の原因となっている。1,050カ所の施設は定員26万2千人のところ、42万人を収容している。 

アムネスティのブラジル研究者ティム・ケイヒル氏は、「今回の事件は特別なものでなく、我々が受けてきた報告と一致している。多くの女性服役者が性的暴力、拷問、健康管理の欠落など、非人間的状況におかれている。訪問調査で生後11カ月の赤ん坊や病気の幼児が、母親といっしょに収監されているのを見た。手錠をはめたまま、出産した者もある。」とIPS記者に語った。 

「当局やメディアはより年少者に刑事責任を問うことを訴えているが、今回の事件で明らかになったように、ブラジルの現状では収監した若者を最低限保護することもできない。刑事責任年齢を下げても、犯罪は減らない。ブラジルの更正制度が服役者を非人間的にし、より多くの暴力的な人間を生み出している。」と同氏は主張する。 

超法規的、即時、恣意的処罰に関する国連特別報告者のフィリップ・アルストン氏は、今月ブラジルを11日間訪問し、予備報告で、ペルナンブコ州だけでもこの10ヶ月間に61人が刑務所内で殺害されていると伝えた。「70%が集団による殺害と思われ、その集団の多くが、現在または以前の警察官である。」 

国連の拷問禁止委員会でも、ブラジルの刑務所では拷問が「広範囲に渡り、組織ぐるみである。過密、不衛生、高温、暗室、永久収監などの劣悪な条件に加え、暴力が一般化しており、監督がいないため、告発されない。」という報告がされている。 

さらに米州人権委員会にも、ブラジル国立司教会議によって、同様の内容が報告され、5つの州において、女性服役者への暴力が認められたと訴えた。 

ダ・シルバ内閣も状況改善に動いている。タルソ・ゲンロ法務大臣は、今回の「野蛮な」事件は特別なものでなく、服役施設に対する公的投資が「慢性的に」不十分であったためと述べた。最近立ち上げられた「安全保障と市民権の国家プログラム」によって、パラ州には1200万ドルが拠出され、2カ所の女性用収監施設が建設される。 

ケイヒル氏は数十年に渡って、国内外のNGOが、拷問や暴力について訴えてきたことを指摘し、行政の対応は遅いと言う。メディアで注目されたこの事件だけに対応するのでなく、すべてのケースに対応する対策が必要であると訴える。 

ブラジルの刑務所問題が、少女輪姦事件で注目を集めている。(原文へ) 

翻訳/サマリー=INPS Japan浅霧勝浩