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|アルゼンチン|暴力的な警察、「若者と貧困者」が犠牲に

【ブエノスアイレスIPS=セバスティアン・ラクンサ】

アルゼンチンでは、独裁的軍政から民政に移管された1983年からこの25年間に、警察署や刑務所における虐待、即決処刑、あるいはすぐに発砲する警察官などによる死亡者が2,557人を数えることが、弁護士を中心メンバーに警察の虐待による被害者擁護のために活動する団体「警察および制度上の抑圧に対抗する協会」(CORREPI)の最新年次報告書(2008年末発表)で明らかにされた。

CORREPIは、被害者の大半は「暴力の横行する貧困地区に暮らす浅黒い肌の若者」と説明、被害者の2分の1以上が25歳未満、3分の2が35歳未満であるとしている。 

CPRREPIのグスタヴォ・フィログラッソ氏はIPSの取材に対し「警察の虐待による犠牲者2,557人は氷山の一角。実際はもっと多い」とし、次のように語った。「これは不法な抑圧の話ではない。次々と承認されている立法改革によって合法化されつつある国家による抑圧なのだ」 

CORREPIは、2003年から2007年までのキルチネル政権そしてその夫人クリスティーナ・フェルナンデス・キルチネルが大統領に就任した現政権こそ、最大の抑圧の責任者と結論づけている。

 フィログラッソ氏によれば、この2政権は1976年から1983年までの独裁政権中における人権侵害の責任者の裁判を促進する政策で評価されているにもかかわらず、治安当局の手による死亡者が最大だという。 

ただ、このCORREPIの結論に対し、他の主要人権団体には異なる見解も見られる。訓練や武器に関してだけでなく、権限や士気に関しても、警察は不活性化されており、犯罪者の権利を擁護するための施策は間違っているとの声も聞かれる。 

アルゼンチンにおける警察の虐待による被害者について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

ロシア・ウクライナ間でガス紛争発生

【モスクワIPS=ケスター・ケン・クロメガー】

ロシアのガスプロム社とウクライナとの間でガスの価格をめぐる交渉が不調に終わり、1月1日、ロシアのプーチン首相は、ガスプロムに対してウクライナへのガス供給量を減らすよう命じた。

ロシアは、本来であればウクライナを経由して欧州連合(EU)各国に向かうはずのガスをウクライナが途中で抜き取っているとの疑いをかけている。ウクライナはこれを否定している。

またロシアは、ウクライナに供給したガスの代金が不払いであると主張し、同時に、今年については適正な価格を求めていくとしている。EU各国は現在1000立方メートルあたり500ドルを支払っているが、ウクライナには450ドルを要求している。

EUはガス供給の4分の1をロシアに依存しており、そのうち80%がウクライナ経由だ。ウクライナへの供給量低下は、さっそくEU各国にも影響を及ぼしている。

たとえば、ルーマニアでは33.8%、トルコでは22%、ギリシャでは15.9%、それぞれガスの供給量が減った。東欧では平均して24.7%の減少である。

欧州各国はロシア以外のエネルギー源を模索し始めている。エストニアのウルマス・パエト外相は、EUはガスプロムへの依存を低め、共通のエネルギー政策を持たねばならない、とテレビで語った。と同時に、現在のEU議長国であるチェコがこの問題に関与しない方針を採ったことに驚きを示した。

ロシアによるウクライナへのガス供給停止問題を取り上げる。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan

|東アフリカ|魚の頭さえ手に入らない

【ジンジャ(ウガンダ)IPS=ワンビ・マイケル】

ビクトリア湖には、英国の植民地であった1950年代に、肉食のナイル・パーチが持ち込まれた。以来、在来生態系を破壊している。ウガンダ、ケニア、タンザニアはナイル・パーチを欧州に大量に輸出し、外貨獲得という意味ではコーヒー、綿花といった換金作物をしのぐほどである。例えばウガンダからは20か所の加工工場が年間3万トンを輸出し、1億5,000万ドルを稼いでいた。

 しかし乱獲がすすみ、漁獲量が激減し、価格が高騰しているために、近隣4,000万人の生活が脅かされている。ウガンダの漁業担当官によると、2007年の輸出は1億1,730万ドルで前年より1,940万ドル減少した。輸出も2005年以来、6,000万ドルの減少である。同担当官によると、地域の加工工場は稼働率が30-50%で、輸送費と燃料費の上昇が追い打ちをかけている。 

すでに食糧危機によって、ウガンダの首都カンパラでは、1キロ0.5ドルだったナイル・パーチが3.5ドルになっていた。そのため人々は欧州向け輸出に切り身を取った後の、頭や骨を買っていた。しかしそれすら今では買えなくなっている。コンゴ民主共和国、中央アフリカ共和国、南スーダンへ輸出されるようになったのだ。 

東アフリカ共同体とウガンダ、ケニア、タンザニア3カ国によって1994年設立されたビクトリア湖漁業機構(Lake Victoria Fisheries Organization:LVFO)は、ビクトリア湖の資源管理を目的とする。LVFOのニエコ氏は、「2005年以来登録船舶数は16%増加し、加工工場の稼働を挙げるために、より遠くまででかけ、違法な漁法を用いてさえいる。」と指摘している。かつては一度に100キロの水揚げのあった漁師も、今では20-30キロしか獲れない。湖の島々で薪を集め、売るようになった人もある。 

ビクトリア湖内の領域はウガンダが43%、ケニアが6%、タンザニアが51%有する。ケニアの船舶は毎日推定300隻がウガンダ領域に入っている。逮捕され、乗組員が拘留されたこともあった。ウガンダはケニア及びタンザニアが無策で、多くの協定が無視されていると批判している。昨年10月、LIVOの大臣レベル協議では、保護区を作ることも検討された。 

資源の枯渇が地域経済を圧迫し、近隣国との間で紛争の種ともなりかねないビクトリア湖の漁業について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan 浅霧勝浩 

|米国|米3大ネットワークの2008年海外報道、最低を記録

【ワシントンIPS=ジム・ローブ】

権威あるティンドール・レポートが発表した最新の報道年次報告によると、米兵20万人強が関係する2つの戦争およびグローバル経済危機にも拘わらず、米3大テレビ局による2008年外国関連ニュースは最低を記録した。

大統領選および石油高騰、その後の金融危機の国内影響報道に押され、米市民の殆どが国内/国際ニュースの第1情報源としている3大ネットワークの夜30分のニュース番組が取り上げた国際/海外問題は、同報告が始まった1988年以来最も少なかった。

ティンドールの創設者で発行人のアンドリュー・ティンドール氏は、IPSに対し「2008年は国内ニュースにとって特別な年であったので、1年後には、国内ニュースが比較的少なければ外国報道がもり返すのか、あるいは2008年の傾向が大手メディアの真の転換期であったのかを検証する」としている。

 「大きな選挙がなく、経済問題も解決されれば国際ニュースは復活するだろう。あるいは、世界のニュースに関心のある人は、インターネットを更に活用することになるかも知れない。そしてテレビ・ネットワークは‘国際問題に関心のある個人はどうぞインターネットへ’と言うかも知れない」と同氏は語る。

約2,300万人の米国居住者は、平日夜の3大ネットワーク・ニュース番組を22分見ている。CNN、フォックス・ニューズ、MSNBCを含むケーブル・ニュースを見ている視聴者の数は大幅に増加しているが、ネットワーク・ニュースの視聴者は依然10倍に上る。

ピュー・リサーチ・センターが先月発表したピープル&ザ・プレスのための最新調査では、2008年には約70パーセントの人がテレビを国内/国際ニュースの主要情報源にしていたという。また、インターネットが、国内/国際ニュースの主要情報源として、特に若者の情報源として日刊紙を上回ったという。

ABC、CBS、NBCの3大ネットワークは国内/国際ニュースに年間合計約15,000分を、あるいは夜の30分ニュース番組のうち約22分を費やしている。

同報告書によれば、2008年に最も多く取り上げられた話題は大統領選で、放送時間は約3,700分。少なくとも1988年後のどの大統領選よりも多く報道された。

住宅市場低迷、ガソリン価格高騰から9月中旬の金融危機とその後の救済策といった経済関連報道は約2,800分と過去21年間で最も多く、1990年および2001年の2回の不況時と比べ放送時間は約1,000分多かった。

ティンドール氏によれば、国際関係報道は約1,900分で、共和党議会がビル・クリントン大統領の国際課題、特に国連および他の多国参加フォーラムへのコミットメント抑制に成功した1990年代中頃のレベルに近かったという。

同氏は、「9・11後に皆が、国内問題に没頭する余り90年代にグローバルな展望を持たなかったことは大きな誤りだったと言った。ネットワーク・メディアは、世界、特にイスラム世界の報道に大きな努力を払ったが、それは、2001年以来最低の国際報道となった昨年のレベルにまで落ち込んでしまった」と語る。

3大ネットワークの2008年報道トップ20では、未だ13万人を超える米兵が派遣されているイラク戦争が放送時間244分で、海外トピックの第1位。オバマ次期大統領、ジョン・マケイン氏、ヒラリー・クリントン氏の選挙戦、金融安定化策、石油/ガソリン価格、株の暴落に次いで7位にランクされた。

しかし、244分は、合計約1,200分の2007年イラク戦争報道と比べればほんの僅かである。7月に発表された特別報告書の中で、ティンドール氏は当時のイラク米司令官デイビッド・ペトレイアス大将が議会公聴会において「拡大」戦略を首尾よく擁護してから2007年9月までのイラク報道急減を追った。

2003年から2007年末まで、3大ネットワークは同戦争を毎週平均31分放送したが、昨年は平均僅か6分となった。ニューヨーク・タイムズは先週、3大ネットワークはバグダッドへの正規雇用特派員派遣を停止した旨明らかにした。実際、昨年の244分ののうちイラクからの中継は僅か88分であった。

海外トッピック第2位、全体第9位は、放送時間236分の北京オリンピックであった。しかし放送のほとんどは米国選手のメダル獲得に集中していた。更に、そのスポーツ部局が米国への独占放送権を所有していたNBCの北京放送は他の2社を大幅に上回っていた。

同報告書のトップ20にランクされていた他の外国トピックはアフガン戦争で、放送時間126分、第17位。米国を襲った竜巻の報道と同位であった。2008年は、米国およびNATOの7年に及ぶ戦闘の最悪の年であった。そして、米政府が今後約6か月間で兵士35,000人を派遣し約6万人とすれば、同戦争は2009年の海外トピック第1位となろう。

他の海外トピックには、オリンピック直前の中国四川大地震(119分。うち94分は中国からの報道)、先月のムンバイ同時多発テロ(70分。うち40分はインドからの報告)、ミャンマーのサイクロン・ナルギス(65分)、ロシア・グルジア紛争(53分。うち44分は外国通信)、イスラエル・パレスチナ紛争(47分)、ジンバブエ情勢(47分。うち26分は市域からの報道)などが含まれる。

フォーリン・ポリシー・マガジンの編集者モーゼス・ナイムはネットワークの国際報道激減を憂慮している。「国際的性質の金融危機に直面している時に、この国が2つの戦争を行っているとは、また国民の運命が米国の国境を越えて起こる事柄にこれまでになく深く関係している時にネットワークが外国報道の削減を決定するとは、皮肉かつ矛盾している」と同氏は語る。

ナイム氏は、過去2年間急激に発行部数、広告収入が減っている新聞は、海外支局を閉鎖していると指摘する。(しかし)「これは国民にとっては残念なことだが、我々のような雑誌には良いことだ」という。

実際、ピューのジャーナリスム向上プロジェクト(Project for Excellence in Journalism)が7月に発表した報告書によれば、米新聞の2/3が海外ニュースの報道紙面を縮小したという。(原文へ

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩


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|キューバ|孤立から中南米諸国仲間入りへ

【ハバナIPS=パトリシア・グロッグ】

2008年キューバは活発な外交政策を展開し、実り多い成果を得た。2月にキューバの大統領に就任した前大統領フィデル・カストロ氏の弟ラウル・カストロ氏は初の公式訪問国としてベネズエラとブラジルを選び、ラテン・アメリカ諸国やカリブ海諸国と統合する意思を表明する一方で中国やロシアとの外交関係も維持する構えを見せた。 

12月16日から17日にかけてブラジルで開かれた初の統合と開発に関するラテン・アメリカおよびカリブ海諸国首脳会議においてキューバは地域の21カ国が加盟する政治討議と調整フォーラムであるリオグループに正式加盟を認められた。

 この地域が完全に統合を全うするにはキューバを排除している米州機構を解体し、米国の介入を受けないラテン・アメリカの組織を設立することが必要だと考えられている。1962年に米国の圧力を受けた米州機構はキューバが共産主義国であることを理由に同国の排除を決定した。メキシコ以外の中南米地域の政府はすべてキューバとの外交関係を断交した。 

その後の50年間は1998年に当時大統領だったフィデル・カストロ氏が認めているようにキューバはメキシコを除いた地域の全ての国における武装革命運動を支援してきた。1975年に米州機構は加盟国にキューバとの外交、通商、領事関係を断行するよう求めた1962年の決議を修正した。これによりエルサルバドル以外の国々との関係は次第に正常化に向かうことになる。 

1990年代には国連人権委員会でキューバを非難する姿勢がとられたため再び中南米諸国との対立が表面化した。メキシコとの関係においては2000年から2006年までのフォックス氏のメキシコ大統領在任期間中は険悪であった両国関係も後任のカルデロン氏が大統領に着任してからは親交が深まり、2009年には相互の公式訪問が予定されている。 

キューバは現在ではエルサルバドルとコスタリカの2カ国とは領事関係を持つのみにとどまっているものの他の全ての中南米諸国との関係は良好である。また2008年の国連総会では米国による禁輸解除措置に対して多くの賛成票を(賛成185カ国、反対3カ国)得ている。 

1990年代以来、キューバは医療や教育の分野で中南米、カリブ海諸国と協力を強化している。1999年に創設されたキューバの医大には中央アメリカの27カ国から集まった学生が学び、2005年には1612人の医師が卒業し、母国で非営利の活動を行うことを志している。このような姿勢はキューバによる地域貢献の証であるとして評価されている。フィデル・カストロ自身も武装蜂起は革命の目的を果たすのに、もはや現実的手段ではないと1993年に述べている。現在84歳のフィデルしは大統領職を辞し、与党共産党の第一書記を務めている。 

ラテン・アメリカ諸国やカリブ海諸国と統合する意思を見せたキューバ現政権について報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

|ラテンアメリカ|老齢者のエイズ感染リスク高まる

【ブエノスアイレスIPS=マルセラ・ヴァレンテ】

エイズ予防キャンペーンは、感染者の大半を占める若者を対象とする傾向があるが、ラテンアメリカの専門家は、性生活の活発化傾向にある年配者のリスクが見落とされていると警告する。 

7月に発表された国連エイズ合同計画(UNAIDS)の2008年報告書によれば、ラテンアメリカ/カリビアンのHIV感染者は190万人で、前年に比べ16万人増加したという。但し、同統計には50歳以上は含まれていない。

 しかし、ブラジル保健省によれば、2000年から2007年の間に50歳から59歳の女性感染者数は2倍に増加。60歳から69歳の女性については88パーセント、70歳以上は190パーセント増加しているという。男性も、女性程ではないが増加の傾向にある。NGO「ブラジル学際エイズ協会」(ABIA)のヴェリアノ・テルト会長は、「これが新たな感染か、過去の感染がたまたま発見されたのかは分からない」としているが、アフリカ系女性組織「マリア・ムリェール」のマリア・ルイザ・ペレイラ氏は、年配女性のエイズ感染は急増していると語る。「既婚カップルの性行為は安全と思われているが、婚外性交もあり得る。しかし、既婚女性が夫にコンドーム使用を説得するのは難しい。また、年をとると妊娠のリスクが減ることからコンドームを使用しなくなり、女性の感染リスクは一層高くなる」と同氏は言う。 

メキシコのHIV/エイズ予防管理センター(CENSIDA)によれば、同国のHIV陽性者の11.7パーセントは45歳以上という。老人学の専門家アグスティン・ポランコ氏は、バイアグラの出現で老齢者の性生活が活発になっており、今後さらに感染者数が増加するだろうと語っている。 

ブエノスアイレス州ルハン大学のリリアナ・ガストロン氏は、「閉経後は膣組織が弱くなり、体内へのビールス侵入リスクは一層高まる」という。 

最近アルゼンチンで開催された「退職者および年金生活者のための社会サービス研究所」主催の専門家会議で、ガストロン氏は年配女性の感染リスクについて説明したが、参加者の反応は驚きばかりで現象把握は不十分であったという。ガストロン氏は、「国際機関でさえ、老齢者は中性化し、特定の年齢に達すると性的欲求は無くなるとの先入観を持っている。バイアグラの出現で老人の性行為も増えている。禁欲主義を唱える訳ではないが、バイアグラを処方する際に、予防カウンセリングをする必要があるだろう」と語っている。 

メキシコの「HIV/エイズ感染者戦線」は、年配者のための特別キャンペーンの必要を訴えている。 

見落とされている年配者のエイズ感染リスクについて報告する。(原文へ


翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩

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若い命を救うために性教育を

|欧州|極右の台頭で被害を受けるロマ人

【ブダペストIPS=ゾルタン・ドゥジジン】

中央ヨーロッパで警報ベルが鳴り響いている。経済危機に身構えるなか、ロマ人(14世紀にインドからヨーロッパに移住したと考えられるジプシーと呼ばれる少数民族)を攻撃対象とする極右が勢力を伸ばしている。

「ジプシーは、左派にとっても右派にとっても政治的分裂を引き起こすような問題ではない。ところが極右勢力はこれを利用し、政治を離れた所で勢力拡大を図っている」とハンガリーの人類学者Gergo Pulay氏はIPSの取材に応えた。

人口1,000万人の6%をロマ人が占めるハンガリーでは2007年8月にハンガリアン・ガードという自警団のような組織が作られ、ロマ人の居住区で示威的なデモを行った。各地でロマ人への襲撃が急増し、11月にはペックの町でロマ人の家に手榴弾が投げ込まれ4人の死傷者が出た。

10月にはチェコでナショナル・ガードという同じような組織が作られ、北部リトビノフ市で極右勢力とロマ人の衝突が続いた。11月17日には極右の労働者党支持者がロマ人居住区に侵入、警察、住人を巻き込む衝突となった。極右勢力に加担する高齢者が多数いたことに震撼した人は多い。

チェコ全土に300ヶ所のロマ人ゲットーが存在する。およそ8,000人の住人は失業して社会保障に頼り、教育も受けていない者が多い。隔離保護的な住居の提供を受けても社会に統合できない。

ロマ担当政府協議会のCyril Koky氏はリトビノフの事件を受けて、チェコの政治エリートが対応を怠っていることを非難した。しかし、この地域の政治家はこの手の衝突への対応が鈍い。政治家の中にはロマ人が旧共産主義国で過剰保護され、社会保障を食い物にしているという考え方がある。

極右運動はナチスのシンボルを放棄して独自のイメージやイデオロギーを採用する一方、国際的連携を強めている。地域の担当部局はとりわけ武装化したグループの動きを監視すると約束している。しかし、これらグループは違法行為を巧妙に避ける。

ハンガリーの極右集団は、反対勢力の弁護士、裁判官、ジャーナリストの個人情報を公表して威圧する。スロバキアでは極右政党が2006年に連立政権入りしてから、人種偏見的な犯罪が急増した。

中央ヨーロッパにおける極右勢力の台頭について報告する。(原文へ)

翻訳/サマリー=IPS Japan

│パレスチナ│ガザの大虐殺で西岸でも抗議行動

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【ラマラIPS=メル・フリクバーグ

イスラエル軍がガザに対して行っている空爆は、ヨルダン川西岸に住むパレスチナ人の間にも怒りや衝撃、嫌悪感をもたらしている。 

これまでに[12月28日現在]、イスラエル軍の空爆によって300人以上が殺害され、少なくとも900人が負傷している。 

ハマスの指導者で現在ダマスカスで亡命生活を送っているカレッド・メシャール氏はイスラエルに徹底抗戦するようパレスチナ人に訴え、パレスチナ自治政府も3日間の同情ストを呼びかけている。

 イスラエル国内でもガザでの虐殺に対する抗議行動が広がっている。ベドウィンの多く住むネゲヴ砂漠のラハト村では、約400人の村民が抗議行動に加わり、村の放送ではモスクからの祈りの声が流されている[IPSJ注:イスラエルの人口の約1%は、アラブ系ムスリムであるベドウィンであり、彼らは社会的に差別されている民族マイノリティである]。 

また、左翼の組織した数百名規模のデモもテルアビブにおいて起こっている。参加した人びとは、「イスラエル政府は戦争犯罪を犯している」「殺戮ではなく協議を」「ガザの包囲をやめよ」などと書かれたプラカードを持ち、国防省の本部に向かって歩いた。 

もちろん、ヨルダン川西岸でも大規模なデモが発生している。ラマラでもここ数年間で最大規模のデモが行われた。参加者の中には、ファタハとハマスは違いを乗り越えて手を結ぶべきだとの声もあった。デモ隊の中にはファタハの旗も少なくなかった[IPSJ注:ガザはハマスが実効支配している]。 

若者たちの一部は、イスラエルの設置した検問所に近づき、投石を始めた。イスラエル軍は催涙ガスやゴム弾で応戦し、デモ隊の中に多数のけが人が出ている。パレスチナ警察の機動隊もこれに加わって、デモ隊を解散させようとした。参加者の中には、イスラエル軍とパレスチナ警察は連携してデモを抑えにかかっている、と言う者もいた。 

ガザ大虐殺に対するさまざまな抗議行動について伝える。 (原文へ

翻訳/サマリ=IPS Japan 
 

|中東|イスラエル、ガザに壊滅的爆撃

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【ラマラIPS=メル・フリクバーグ】

イスラエルは、1967年のアラブ・イスラエル戦争後最大規模のガザ爆撃を継続。パレスチナ人の死者は少なくとも300人に達し、負傷者も900人を超えた。 

イスラエルのバラク国防相は、国連やEUによる停戦要求も拒否し、イスラエルは地上戦を含む攻撃拡大も辞さないと国際メディアに語った。 

「私たちにハマスとの停戦を要求するのは、あなたたちにアルカイダとの停戦を要求するようなもの」と国防相はフォックスニュースの取材に応えて述べた。

 死傷者の多くはハマス軍事部門関係者や警察関係者だが、パレスチナ民間人の犠牲者も報道されている。 

民間人の犠牲者は増えるものと予想される。ハマスの関連施設は人口密集地にある。最初のガザ空爆が行われたときはちょうど学校からの帰宅時に当たった。 

ガザの病院や遺体安置所の廊下にもこの大虐殺の惨状が広がる。病院のベッドも安置所のスペースも不足しているからだ。 

イスラエルによる厳しい境界封鎖にさらされてきたガザでは電力、医薬品、医療機器、非常発電機用燃料の供給が滞っており、医療スタッフは過酷な状況下で負傷者の治療に当たっている。人道援助も限られた状態にある。 

ガザ住民のあまりの窮状に、エジプトはラファの境界検問所を開け、シナイの病院に負傷者の搬送を認めたほどである。 

イスラエル、パレスチナ双方のアナリストの間では、現在の軍事侵攻は、抑止が目的というよりも、バラク国防相が首相の座を狙う2月の総選挙を睨んだものという見方がされている。 

イスラエル市民は、ガザからのロケット弾攻撃を受けて殺戮を求めており、いかなる首相候補に対してもパレスチナ人への軍事的強硬策を期待するだろう。 

イスラエルによるガザ攻撃について報告する。 (原文へ
 
翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 


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|パキスタン|テロ組織指定を受けた民間組織が猛反発

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【カラチIPS=ゾフィーン・エブラヒム

インド・ムンバイの同時テロ事件をめぐり印パ間の緊張が高まる中、国連安保理(UNSC)の制裁委員会は今月初め、テロとの関与が指摘されるパキスタン民間組織ジュマトーウドーダワ(Jamaat-ud-Dawah: JuD)に対して制裁を課すことを決定した。 

JuD最高幹部ハフィズ・サイードはパキスタン当局に自宅軟禁を命じられる前、ムンバイのテロとは一切関係がないことを主張。「我々は国際司法裁判所(ICJ)の決定に異議申し立てを行うつもりだ」と怒りを露にした。 

テロ事件以降、インドはパキスタン政府に対し国内で活動を続ける武装組織の壊滅を強く要求してきた。その後、国連はイスラム過激派ラシュカレ・トイバ(LeT)との結びつきもあるとされるJuDへの制裁措置を決めた。

 しかし、JuDはパキスタンで(表向きには)カシミール解放を標榜し社会的な救済活動を行っている慈善団体である。JuDスポークスマンのAbdullah Muntazirは「JuDを追放した国連の対応に激しく抗議する。もちろん、我々はアルカイダやタリバン、LeTとは無関係だ。制裁が続けば慈善活動は行えない」と訴えた。Muntazirによると、JuDは国内で診療所156箇所、8つの病院、12の血液バンクを運営しているという。 

一方、インドではパキスタン当局によるテロ組織撲滅への約束が国際社会の批判を避けるためのものに過ぎなかったという憶測が強い。ベテラン記者のZahid Hussain氏は「パキスタンでは長年にわたり、軍と政府がカシミールやアフガニスタンなど外交問題に関して武装組織を上手く利用し保護してきた」と説明した。国連がパキスタン民間組織に発動した制裁措置について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

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