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毛沢東派共産ゲリラ、ネパール政治の主流入りを提案か?

【ニューデリーIPS=ランジット・デブラジ】
 
インド政府が、同国の諜報機関のエスコートでネパール毛沢東派共産ゲリラ指導者バブラム・バタライとプラカシュ・カラットインド共産党 (CPI-M)総書記が秘密裏に会談していたとするインドの主要紙「The Times of India」の報道内容を否定する中、専門家たちは今回の会談を隣国(ネパール)の手に負えない政治危機を収束させるための鍵として歓迎している。

著名なネパール専門家S.D.ムニ教授は「インドが毛沢東派共産ゲリラ勢力との接触をとることは『良い考え』である」と語った。

「インドの指導者層は当初、ネパールに共和国建設を訴えて軍事闘争を展開している共産ゲリラ勢力に関して、ネパールのギャレンドラ国王及び側近との連携のもとに活動している『右派ロビイスト』からの圧力もあり、距離を置く姿勢を見せていた。」とムニ教授は指摘する。

 ムニ教授(名門ジャワハルラル・ネルー大学で国際関係論を教授している)はIPSの取材に応えて、その『右派ロビイスト』の内訳をインド国軍、米国政府(インド政府とネパール危機に関して密接な連携関係にある)、インド上層階級(ネパール王室との姻戚関係をもつ者もいる)と語った。

さらに毛沢東派共産ゲリラに反対しネパール王室擁護の立場をとっているロビー勢力にヒンズー原理主義者があり、彼らはインド国会の主要野党勢力を形成しているインド人民党(BJP)に関連した諸団体に属している。

著名なBJP指導者でラジャスタン州首相のヴァスンダラ・ラジャ・シンディアはかつての王族であるがネパール王室と親戚関係にある。

国内の(親ネパール王室傾向にある)政治事情は別にしても、インドには毛沢東派共産ゲリラの武装闘争が(1996年以来隣国ネパール全土で政府軍と戦闘を繰広げ11,000人の命が失われている)、インド国境(両国の国境はオープンボーダーとして開放されてきた:IPSJ)を越えて、貧困層が多く左翼過激派の活動が既に活発なインド北部一帯に拡大することを恐れる十分な理由がある。
 
 今年2月1日、ギャレンドラ国王は、毛沢東派共産ゲリラ勢力に対する適切な対応ができていないとして政党内閣を解散、非常事態宣言を発令して政治、民間、プレス活動を厳しく制限するとともに、民主主義に逆行する国王親政体制を敷いている。

 しかし、ネパール国王のこのクーデターに対してインドを始めとする国際社会は強く反発し、厳しい経済制裁を発動した。そこで国王は態度を少し軟化させ、4月29日に非常事態宣言を解除した(政治、プレスに対する規制はそのまま継続されているが)。

このような事態の中、毛沢東派共産ゲリラは、インド共産党に対して共感の意思を示している。しかも、インド共産党は昨年5月の前回選挙(BJPと国民会議が与野党逆転:BJP)で大きく躍進し、現在の与党であるインド国民会議派が率いる統一進歩連盟(United Progressive Alliance:UPA) に対してキャスティングボード的な外部協力の手を差し伸べられる立場にある。

先週、インドの主要紙「The Times of India」が毛沢東派共産ゲリラ指導者のバブラム・バタライとインド共産党書記長プラカシュ・カラットの秘密会談を報じた際、それを歓迎するコメントから激しく非難するコメントまで非常に幅広い物議をインド国内に巻き起こした。

インド外務省のナブテジ・サルナ報道官は、5月27日に開かれた記者会見の中で、「ネパール共産党(毛沢東派共産ゲリラ)に対するインド政府の姿勢は変更ない。我々は毛沢東派共産ゲリラによるテロ活動がネパールの人々に多大なる苦痛をもたらしてきたことを明白に非難する。」と語った。そして、「ネパールに恒久平和と安定を取り戻すには、政治解決を図るより方法はなく、中でも、毛沢東派共産ゲリラが戦闘終結を宣言し武器を置くことが必要条件となる」とサルナ報道官は付け加えた。

サルナ報道官の政府見解に対して、評論家のC.ラジャ・モハンは政府を批判する論説をし掲載し、その中で、「インド政府の一貫性のない外交姿勢は(国際社会に対して)混乱したシグナルを発してしまっている。」と語った。モハンは、「インド政府は一方で世界におけるテロとの戦いを支持するとの立場を表明しながら、対ネパール外交政策に関しては民主主義を瓦解させたばかりの絶対君主を支援しているのが現状である」指摘した。

インド諜報機関が、カラット書記長との秘密会談にバタライ(国際刑事警察機構:ICPOの指名手配犯)をエスコートしたとする報道に関しては、サルナ報道官は特に言及することを避け、カラット書記長が先にその事実を否定したことを引用することに終始した。一方、カラット書記長はこの点に関して、インド諜報当局の役割に関しては慎重に報道内容を否定した。しかしバタライとの会合の事実関係そのものを明白に否定することは避けた形となった。

ムニ教授によると、バタライとカラットは1970年代ジャワハルラル・ネルー大学で同窓であり、両者が互いに会おうと思えば特にインド諜報当局の助けは必要なかったと指摘している。「しかし収拾がつかないネパール情勢を解決していくには毛沢東派共産ゲリラ勢力を交渉の表舞台に載せる以外、選択肢が見当たらないのが現状です。しかし残念なことに、インド政府、特にインド外務省が毛沢東派共産ゲリラとの接触を極度に嫌っているのも現状です」とムニ教授は語った。

ムニ教授は、「今回の秘密会合疑惑のエピソードは、毛沢東派共産ゲリラとネパールの主流諸政党との関係改善を図ることでギャレンドラ国王を孤立させることを目論んでいるバタライに対して、ネパールの政権を掌握している王党派がバタライの信憑性を崩そうと動いている政治状況の中で理解しなければならない」と解説した。

5月19日、ネパール軍当局はプレスブリーフィングの中で日付入ビデオテープを公開した。そこには毛沢東派共産ゲリラ最高指導者のプラチャンダの映像が映し出されており、その中でプラチャンダは、ゲリラメンバーに対して、「バタライはインドに接近しすぎており、彼を全ての職務から更迭する」と発表している。ネパール軍当局は、この際、バタライが「インドの手先」として信頼が失墜している点を演出するとともに、バタライとプラチャンダの違いを改めて強調し、毛沢東派共産ゲリラ内の内部亀裂が深刻であることを印象付けることに余念がなかった。

しかしムニ教授は、「もしインドがネパールの和平に仲裁者としての役割を得ようとするならば、最終的には毛沢東派共産ゲリラの信頼を獲得しなければならいのが現実である」と語った。

ジャワハルラル・ネルー大学博士課程に留学中のハリ・ロカを含む他の専門家も、ムニ教授の状況評価を支持している。

「ネパールの主流諸政党と毛沢東派共産ゲリラが同盟関係を結ぶという(バタライの目指すシナリオ)事態は、インド-米国-英国枢軸のタカ派にとってなんとしても避けたいシナリオです」と、ネパールの安定は2つの柱(立憲君主制、複数政党制民主主義)によって維持されるとするインドの公式外交スタンスに批判的なロカは語った。

「現実的にネパールに平和と安定を取り戻す2つの柱は、複数政党制民主主義と毛沢東派共産ゲリラの主流政党への編入です」とロカは語った。(原文へ
 
翻訳=IPS Japan

ラテンアメリカにおける犯罪と下されるかもしれない罰

【ローマIPS=ミレン・グティエレス】

ラテンアメリカでは、20世紀後半に地域全体を席捲した軍事独裁政治の影響で、体制側によって行われた政治犯罪は責任の所在を追及されることなく、未来志向と和解のみが強調される傾向にあった。 

しかし今年になって互いに関連のない数十年前の政治犯罪の責任を問う動きが表面化しており(チリ:先月、元独裁者アウグスト・ピノチェトが1970年代に競合相手2名暗殺容疑で告発される。ペルー:ウラディミーロ・モンテシーノ元諜報局長官に15年前の虐殺事件の責任を問い35年懲役求刑。 

コロンビア:アルベルト・サントフィミオ元法相が1989年の大統領候補暗殺容疑で逮捕。)、これを契機に、過去に暗殺や虐殺事件に関与した当時の指導者たちが法の裁きを受けるようになるかもしれない。3つの政治事件に焦点を当てながら、従来の沈黙の文化を捨て、過去と向き合おうとするラテンアメリカ諸国の現在を報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

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|人権|アムネスティ米国代表:ラムズフェルト氏にピノチェト氏と同様の扱いを適用するよう求める

報道の自由に光を当てる

【ナイロビIPS=ジョイス・ムラマ】

国際新聞編集者協会(International Press Institute 〈IPI〉本部:ウィーン)の第54回総会が、世界各国のプレス関係者400人を一堂に会してケニアの首都ナイロビで5月22日より(3日間)開催されている。

報道関係者への圧力と迫害(年間に殺害された報道関係者は年々増加し2004年は78人、今年は既に25人が死亡)が強まる状況の中で、報道の自由の確保と国際的な報道内容の質向上にむけた意見交換が行われた。

近年、政府関係者を巻込んだスキャンダルが報道されている総会のホスト国ケニア、アバチャ軍事政権の下で人権侵害が横行したナイジェリア、及び1994年の虐殺報道の影を引きずるルワンダの事例について、政府及びメディア関係者双方の主張を紹介しながら、報道の自由を巡る問題点を報告する。

 「報道の自由が政府によって侵されており、これは危険なシグナルと言わざるを得ません」と、IPI代表のヨハン・フリッツは語った。

政府による「報道の自由」に対する攻撃は、厳しい法規制で記者の活動を抑圧する形で行われている。ジャーナリスト達も少しずつ、そのような圧力が自らに飛び火してくる危険性を感じつつある。IPIによると、今年に入って既に25人の記者が勤務中に殺害されており、昨年は78人、2003年は64人、2002年は54人と被害に遭うジャーナリストの数は増加傾向にある。

総会の開会式で演壇に遭ったホスト国ケニアのキバキ大統領は、「ケニア政府は『報道の自由』を守るため全力を尽くしている」と語り、「我々は『報道の自由』を守りつつ、同時にその自由がプレスと一般国民双方にとって責任をもって執行されるような予防措置を伴う適切な法的枠組みを構築すべく、協議を重ねているところです」と会場の参加者に語りかけた。

しかし、最近のケニアにおけるメディアを取巻く状況を見れば、大統領の演説を聞いてもあまり明るい未来が想像できないのが現状である。今月初めにも、ルーシーキバキ大統領夫人が報道カメラマンを攻撃して物議を醸し出したばかりである。

キバキ婦人は彼女の家族に関する記事について、報道内容がフェアでないとして抗議していたが、皮肉なことに、(報道カメラマンを襲った)事件は世界報道自由デー(5月3日)の前日に起こり、大きな注目を浴びる結果となった。 

また昨年には、メディアがキバキ政権内の不正疑惑を報道したのを契機に、公務員に対してメディアに対する緘口令がひかれた。その報道は、パスポート印刷機械導入と司法施設建設事業に関して、ある外国企業に数百万ドルの予算が割当てられたスキャンダルに、キバキ政権の複数の閣僚が関与していた内容を報ずるものであった。

2005年4月、世界各国の「報道の自由」度をモニターしている米国に拠点を置くフリーダムハウスは、ケニアの現状に関して「自由でない:Not Free」の評価を付けた。ちなみにケニアの昨年における評価は、「一部自由:Partly Free」であった。

今回のIPI総会では、ナイジェリアにおける「報道の自由」の現状についても注目された。ナイジェリアの著名な活動家でノーベル文学賞受賞者のウォレ・ソインカは本総会に提出した報告書の中で、故サニ・アバチャ軍事政権(1993年~98年)下でいかに多くのジャーナリストが迫害の対象にされ、拷問にさらされたかを詳しく報告した。

そしてソインカは、「アフリカのジャーナリスト達は、アフリカ大陸で横行しているメディアに対する抑圧に、もっと非難の声をあげるべきだ」と訴えた。

一方、総会に参加したポール・カガメルワンダ大統領は、「外国のメディアはアフリカ大陸のネガティブな側面にのみ集中して報道している」として、欧米のメディアを非難した。

「アフリカ諸国が外国からの直接投資を受けれない要因の一つに、欧米のメディアがアフリカに関して常にネガティブな報道をし続けている現状がある」と、カガメ大統領は「欧米メディアによるアフリカ報道」と題した論文の中で語った。

カガメ大統領は、そのメディア・バイアスの事例として、欧米メディアのルワンダ報道は1994年の大量虐殺時(少数民族のツチ族約80万人と穏健派フツ族住民が犠牲となった)のものに圧倒的に集中しており、その後10年に亘る国の再建に向けたルワンダの取組みは、ほとんど報道されていない点を挙げた。

「私達ルワンダ人は、世界に対して内戦の灰塵から再び立ち上がる意志と決意を示しているのです。……ルワンダは400万人近い難民の本国帰還と定住を成し遂げました。しかし、残念なことに、このような事実は、欧米メディアの目には留まらない(記事の対象にならない)ものなのでしょう」(原文へ

翻訳:IPSJapan 浅霧勝浩

|スリランカ|津波の影響|被災者の声:援助の表明は相次ぐものの、家はいったいどこに建つのか?

【ハバラドゥワIPS=アマンサ・ペレラ

ピヤセナは68年の人生の中で、過去5カ月間ほど悲惨な経験をした時期はなかった。彼は昨年12月26日の津波(約30,000人が死亡、100万人が国内難民となった)で娘を失い、半壊した家(テントを張って雨をしのいでいる)に妻と取り残された。

先週(5月17日閉幕)、スリランカ開発フォーラムに参加した援助供与国・団体はスリランカの津波被害の再建支援として前例のない30億ドルの供与を約束したが、ピヤセナのように、遅々として進まない被災地の復興計画の下で、未だにテント生活を強いられている多くの被災者にとっては、現実に住宅が再建されない限り国際社会の支援を実感することはできない(5月15日現在、津波被災者向け住宅として建設予定の77,561棟中、実際に建設されたのは僅か119棟に過ぎない)。最貧困層を直撃したスリランカにおける津波被害の影響と、国際社会の援助表明にも関わらず復興作業が遅々として進まない被災地の現状を報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩

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|津波の影響|津波被災からの復興は未だに途方もない取組みである

アフリカのバイオセーフティー使節、カナダでの国際会議から締め出される

【ブルックリンIPS=スティーブン・リーヒ

遺伝子組換え食品に関する国際的な枠組み合意を話し合う各地域・レベルの会合が進められている中、5月30日からカナダのモントリオールで開催予定の会合への出席を予定しているアフリカからの使節テウォルデ(2000年スウェーデン国王からノーベル賞に相当するというRight Livelihood Awardを受賞した科学者でバイオセーフティ合意の父と言われる)のビザ申請が拒否される事態が発生した。

テウォルデは、カナダ政府、米国政府の方針に反して、人体に害を及ぼす恐れのある遺伝子組換え組織(種や作物)に対する国際的な法的枠組みを構築することを主張しており、今回のビザ発給の拒否は各方面で物議を醸し出している。バイオセーフティーを巡る諸議論と今回のビザ発給拒否が及ぼした一連の国際会議への影響を報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩

|米国|新移民規制政策、憤慨したメキシコの抗議に直面する

【メキシコシティーIPS=ディエゴ・セバジョス】

「メキシコ政府は米国政府が導入した新たな移民規制政策に関して、正式かつ厳重な抗議を行う予定である」と、ヴィセンテ・フォックス・メキシコ大統領は木曜日(5月12日)、発表した(過去における同様の抗議は米国政府に黙殺されてきた経緯はあるが)。

ブッシュ政権が5月11日に施行した通称「Real ID Acts」は、事実上、米国に在住する不法移民約800万人にとって唯一の身分証明証としての役割を果たしていた運転免許証発行を拒否するもので、約500万人が米国に不法滞在しているメキシコにとっては大きなダメージとなる(在米メキシコ人の2004年の本国送合計は170億ドルでメキシコ国内の160万人がその送金に依存している)。

また、米政府は外国人の米国への亡命手続きを厳格にした他、メキシコとの国境に沿って建設してきたメキシコ不法移民の米国への侵入を妨げるフェンスの延長を決定した。米国の農家を中心に低賃金労働需要が高まっている(米農業セクターの労働人口に占める不法移民の占める割合は1994年には38%であったが、2003年には60%に上昇している)にも関わらず、外国人テロへの警戒感から不法移民の締出しを図る米国の現状と、それに伴って燻っているメキシコとの軋轢について報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩

日本における「ソフトパワー」の台頭

【ワシントンIPS=ティム・ショロック】

90年代に「バブル経済」が崩壊し、日本の工業製品の生産・輸出国としての相対的な地位が低下していく中で、それまで圧倒的に男性が支配してきた日本社会に変化が生じ、新たに女性たちが活躍する道筋が開けてきた。

「バブル崩壊後15年が経過し、日本社会はそれまでの経済的な価値観をベースにおいたものから、民主的な価値観が支配するものへと変化した。その結果、女性たちは自らの権利をより積極的に主張するようになった。…」「つまり日本はハードパワーを失ったが、それに代わってソフトパワーを育んできた」と昭和女子大学副理事長の坂東眞理子は語った。

先週ワシントンで開催されたセミナー(日本大使館、笹川平和財団共催)に参加した3人の日本人女性講演者の発言を通じて、日本で台頭しつつある「ソフトパワー」の今を報告する。(原文へ

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩

|エジプト|グローバルの影響にさらされるローカル

【カイロIPS=アダム・モロー、カレッド・ムーサ・アルオムラニ】

エジプトでは、この数週間、国の助成により一般小売価格の5分の1でパンを配給するパン屋に並ぶ長い列が日常風景となった。インフレの急騰で、基本食料品の国内価格がこの数カ月で3倍に高騰した。

低所得層に低価格のパンを確保しようと、政府は3月、カイロ市内および周辺においてパンの製造と配給の手助けに軍隊と警察を投入すると発表した。その直後にはナジフ首相が国家公務員の15%賃上げを発表した。

 しかし世界的な小麦価格の急騰を考えると、こうした措置も一時しのぎに過ぎないと地元評論家は見る。

かつては地中海の「穀倉地帯」であったエジプトも、今では小麦の国内消費量の約55%を輸入している。エジプトが小麦の純輸入国であるかぎり、国際価格の変動の影響を免れない、と評論家は指摘する。

ナジフ首相は、最近の政策声明で、国内の食料品価格の急騰は、原油および小麦を中心とする国際価格の上昇に原因があると述べた。

また一部専門家からは、小麦さび病Ug99の拡大が世界の小麦供給をさらに阻害するだろうとの懸念が指摘されている。

国連後援の「開発のための農業科学技術国際評価」(IAASTD)は今月発表した報告書で、食糧価格の高騰の原因のひとつは、伝統的な食用作物を犠牲に増大しているバイオ燃料の生産にあるとしている。IAASTDはまた、収穫量の減少、エネルギー価格の上昇、穀物先物市場の投機をもたらしている気候変動も原因のひとつと指摘する。

地元評論家は、食品価格の社会的影響を緩和するためには、農業の自給自足にその答があると言う。カイロのサダト・アカデミーの元経済学教授ハムディ・アブデル・アジム氏は「小麦の国内生産の増加なしには危機は解決しない。政府が国際市場から調達するという政策を止め、国内の農家に実入りがいい農作物に代わって小麦を栽培するよう説得することが必要だ」と、IPSの取材に応えて述べた。

エジプト農務省の砂漠研究センター農業経済助教授のモハメド・サミ氏は、自給自足の見通しは、政府が大企業に肩入れして海外からの小麦調達の政策に固執していることが障害だと指摘する。

エジプトの小麦価格高騰の問題について諸議論を報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan

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水不足は国境を越える

|アフリカ|ミレニアム目標はそう遠くにある訳ではない

【ベルリンIPS】

「先進国の人々は『サブサハラ・アフリカの風刺画(が示すステレオタイプ)』を捨て去り、代わってミレニアム開発目標に向けた実質的な成果を認め、支援する必要がある。」と、ミレニアムキャンペーンのエヴェリン・ハーフケンズは先週ベルリンのIPS地域センターで開催された会合で発言した。

ハーフケンズは、ミレニアム開発目標(MDGs)の殆どが達成されていないとの批判に対して、サブサハラ・アフリカ諸国における同目標に向けた具体的な自助努力の成功例(ウガンダのHIV/AIDS抑制の成功、10カ国が全員就学目標達成コースにあること等)を挙げながら、先進諸国の一層の開発支援の重要性を訴えた。ハーフケンズは言う、「私達は、貧困に終止符を打つことが出来る最初の世代なのです。従って、私達はこの機会を捉えることを拒否すべきではない。」(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩

|人権|カメルーンのピグミー族にとって踏込めない森はない

【ヤウンデINPS=シルベスタ・テチアダ】

バカ・ピグミー族はカメルーン南部・東部の森林地帯に暮らしているが、常に移動を伴う狩猟・採集生活をしているため、彼らの集落は地図上記録されることはなく、また、カメルーン政府による人口統計にも記載されいないのが実情である。

そのため、ピグミー族には先祖代々暮す森林に対する権利をはじめ、選挙権などカメルーン国民としての権利が認められておらず、さらに現代教育から隔絶された環境に暮すピグミー族に対する都市住民や官憲の偏見、差別が、ピグミー族に森林生活での孤立を余儀なくしている側面もある。さらに、カメルーンのGDPの10%を占める木材輸出需要を背景に、森林伐採業者が、ますますピグミー族の生活圏を侵食している。

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩