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米国はエジプトの人権侵害に目をつぶる

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【ワシントンIPS=エマド・ミケイ】

エジプトが民主的な運動や反体制派を抑圧しているにもかかわらず、ブッシュ政権は来年度も20億ドルの財政支援続行を議会に要求している。下院の予算小委員会が政府の求める全額を承認したのは、カイロとアレクサンドリアで多くの反体制活動家がエジプト治安部隊に暴行を受けて逮捕された翌日のことだった。

米政府はエジプトにアラブ諸国の民主的改革を主導する役割を求めており、米国の戦略的利益のためにムバラク政権への援助は削減できないとしている。確かにエジプトは中東で米国に政治的軍事的に協力している。議会の公聴会で、元駐エジプト大使だったデビッド・ウェルチ国務次官補(近東問題担当)は、「エジプトとの戦略的連携はこの地域の米国政策のかなめである」と語った。

さらに「エジプトはイラン、シリア、スーダンなどの問題に親米姿勢で取り組んでいる」とし、ウェルチ次官補はエジプトのナジフ内閣の米国の意向に沿った「市場開放」政策、所得税減税、国家予算の透明化、国営企業の民営化を称えた。マイケル・クルター国務次官補代理(政治・軍事問題担当)もエジプトへの支援が米国の「テロとの戦い」においていかに重要かを力説した。

しかしながら人権活動家が非難する、ブッシュ政権によるエジプトへのテロ容疑者の強制送還問題は取り上げられない。またエジプトは人道的危機が懸念されているにもかかわらず米国とイスラエルのハマス抑圧政策に資金移転を停止する等協力している。今後イラン攻撃が行われることになれば中心的役割を担う可能性もある。

昨年の大統領選でムバラク大統領と競ったアイマン・ヌール氏は選挙違反の罪で5年の懲役刑となっている。与党勝利の議会選挙の不正を告発した判事は懲戒処分となった。多くの反体制派が現在獄中にある。こうした抑圧にもかかわらず議会のタカ派はハマスやムスリム同胞団の台頭を不安視してエジプトを批判しない。米国政府は当面ムバラク政権に警備役を任せておこうと考えている。米国の対エジプト政策について報告する。(原文へ)

翻訳/サマリー=IPS Japan

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エジプト野党のつまずき

|米国|移民の現実を無視する英語の国語化

【アルベルト・メンドーサ】

25日の上院の改正移民法案可決を控えた22日、米社会における移民の権利支援を求めて様々な文化と宗教を背景に持つ移民と支持者がサクラメントに集結した。

上院は英語を「国語」とする修正案を可決しており、移民の社会的権利との衝突が問題となっている。デモの参加者は各種社会サービスを母国語で受けることのできる権利を高く評価している。情報の提供が英語のみとなれば、享受できる権利について知識を得ることができなくなる。

 災害時の案内が英語では理解できない者のことを考えると、国家安全保障、災害救助の面でも問題が大きい。また、母国語を封じることは移民が背景として持つ文化を否定することだという主張もある。

ヒスパニック系のゴンザレス司法長官は21日「英語を共通・統一言語と捉え、チャンスにつながる道」とする考えを示したうえで、「英語を国語と宣言すること」は象徴的規定であり、言語アクセスを提供する他の連邦法、州法を損なうものではないと述べた。

上院が可決した法案には一定条件を満たす何百万人もの非登録移民にゲストワーカー(一時労働者)の資格を認め、将来の市民権獲得に道を開く計画を盛り込んでいる。下院が昨年末に通過させた不法滞在を重罪とみなす強硬な法案との調整が難航することが予想される。

英語を母国語と規定し、各種情報の提供が英語のみになると移民の権利が大きく損なわれるとする主張について報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan 

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米国への移民、ようやく暗いトンネルから抜け出せるか?

|ネパール|君主制の縮小

【カトマンズIPS=マーティ・ローガン】

民政復帰したネパールの国会議員は5月18日、君主制を縮小し、国王の軍最高司令官の役割を剥奪する準備をした。下院宣言が予想通り採択可決されれば、世界最後のヒンズー王国は王室支配を初めて離れ、国王は王室ネパール軍の最高指揮権を失うことになる。

5月17日には、暫定政権のマハト外相が外交団と援助機関に「民衆の強い願望に応え、国王の従来の権限と特権は縮小されることになっている」と語ったと伝えられたが、その前日政界の長老が国王の軍最高指揮権は維持されるべきだろうと述べたと伝えられると、首都カトマンズでは抗議デモの群衆が集まり、若者のグループが数台の車を破壊し、交番を放火、夜遅くまで街頭を行進し、声を挙げた。

 5月17日Subhas Nembang下院議長は、事態は鎮静化したとIPSの取材に応えて述べ、「国民は政府を支持し、政党を信頼している」と語った。だが多くの国民が、政権を握った主要7政党(SPA)に疑念を持っている。

国民の第一の要望は、ネパールの君主制の今後を決定することになる憲法を制定するための制憲議会の選挙である。共和制を求める声も大きい。

週始め、コイララ首相は、ネパールの「世俗国家」への転換を含む宣言をまもなく下院が提出すると約束した。だが、将来の国王の役割を含め、SPA内で意見の相違が表面化したため、宣言は18日まで延期を余儀なくされた。「明日(18日)には下院宣言が出される」と下院議長はIPSの取材に対し語り、宣言は「ネパールのマグナカルタ」になるとも言われていると言い添えた。

しかし皆が下院宣言の提出を確信しているわけではない。SPAのひとつ統一左翼戦線(ULF)の指導者Sitaram Tamangは、宣言の遅れについて人々は王室による陰謀を疑っていると述べている。彼は宣言の提出を求めて政治家に圧力をかけるため、17日に抗議デモの組織を手伝った。またネパール共産党毛沢東派は、主張を通すためはるかに暴力的な戦術を引き続き使うと報じられている。

国王の実権剥奪の下院宣言を待つネパールについて報告する。(原文へ

翻訳/サマリー:IPS Japan

IPS関連ヘッドラインサマリー:
見えないところでの闘い
国際社会の承認を跳ね返すネパールの民衆

「世界と議会」2006年5月号

特集:国民本位の行政改革を目指して

■講演
行財政改革に求められる意思決定の質
宮脇淳(北海道大学公共政策大学院長・教授)

懸念が現実となった小泉道路関係四公団の民営化
田中一昭(拓殖大学政経学部教授)

■議員に聞く
林芳正(参議院議員)

■解説
行政改革推進法案

■第十回『咢堂賞』贈賞式・記念講演会

■IPS特約
ブッシュの外交課題に疑いを強める米国民

世界と議会
1961年創刊の「世界と議会では、国の内外を問わず、政治、経済、社会、教育などの問題を取り上げ、特に議会政治の在り方や、
日本と世界の将来像に鋭く迫ります。また、海外からの意見や有権者・政治家の声なども掲載しています。
最新号およびバックナンバーのお求めについては財団事務局までお問い合わせください。

カンボジア国際法廷の問題ある人選

【バンコクIPS=マルワーン・マカン・マルカール

1975年から79年の間に約170万人を死に至らしめたといわれるカンボジアのポルポト派を裁くため、特別法廷が設置された。

カンボジア外からの13名の裁判官・検察官は、ニュージーランド・フランス・オーストリア・日本・ポーランド・オーストラリア・オランダ・米国・スリランカを出身とする法律家から構成されている。

また、ルワンダや旧ユーゴスラビアの国際法廷の場合とは異なり、地元カンボジアの裁判官の数が最大であるのが大きな特徴だ。

しかし、カンボジアのフンセン首相は、この国際法廷をあまり好意的に捉えていない。国連とカンボジア政府は、約10年にもわたる協議の末、ようやくこの国際法廷の設置にこぎつけたのである。

そのためかどうかはわからないが、フンセン首相は、17名のカンボジア裁判官の中に、陸軍大将でありカンボジア軍事裁判所の所長でもあるネイ・トル氏を入れてきた。この人選に対しては、カンボジア内外の人権団体から批判の声が上がっている。

特別法廷のヘレン・ジャービス広報部長によれば、裁判は2007年初めにも開始されるという。

カンボジア国際法廷をめぐる動きを伝える。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩

IPS関連ヘッドラインサマリー:
貧困という荷を負う女性

尊属殺人容認の部族集団に非難高まる

【ペシャワールIPS=アシュファク・ユスフザイ

パキスタン・ヒンドゥークシ山中のある集落で行なわれたジルガ(村の長老の寄合)において、「尊属殺人」(名誉殺人ともいう)を警察に通報した者は死刑に処するとの決定が下され、これに対して人権団体などが猛反発している。

尊属殺人は、北西辺境州(NWFP)においてイスラム教が広まる以前から現地の部族が守ってきた慣習で、姦通などの罪を犯した女性を家族が内々に処刑することを容認するものである。

パキスタン人権委員会によれば、1998年から2002年までの間に、1,339件の尊属殺が報告されている。もちろん実勢はこれよりはるかに多い。これらの事件のうち、逮捕された容疑者はわずか202名に過ぎない。

 尊属殺人の容疑者は、「キサス・ディヤット法」(qisas and diyat)という慣習法によって保護されている。これによれば、死亡した人間の法定相続人には容疑者を免罪する権限があり(309条)、また、容疑者から補償を受け取ることにより容疑者を免罪することができる(310条)。

しかし、「法定相続人」とはたいてい殺された女性の夫あるいは両親であり[すなわち、えてして実行犯そのもの:IPSJ]、尊属殺自体が家族の黙認のうちに行なわれていることが多いため、実際には容疑者のかなりの部分が許されてしまうのである。

女性の人権を守るNGO「オーラット財団」(Aurat Foundation)などは、4月30日に集会を開き、ジルガの権限に対して連邦・州・地方政府が厳しい態度をとるよう要求した。

北西辺境州議会のナイーマ・キシュワール議員(宗教政党「ジャミアート・ウレマイ・イスラム」所属)は、「名誉の名の下に女性や男性を殺すのは反イスラム的だ。この汚い伝統と私たちは闘わねばならない」と憤る。

また、アワミ国民党のザヒーラ・ハタック副党首もまた、「政府はこの慣習にストップをかけるのを怠ってきた」と批判した。

昨年、尊属殺人を禁止する法律が連邦議会に上程されたが、反イスラム的だという理由で廃案になってしまった。

パキスタンの尊属殺人をめぐる議論を紹介する。

翻訳=IPS Japan

どうしても伝えたい10大ニュース

【国連IPS=タリフ・ディーン】

毎年国連広報局(DPI)は、メディアにもっと取り上げてもらいたい世界の10大ニュースを発表する。これは貧困、平和構築、経済開発よりも政治、殺人、セックススキャンダルが優先されていると暗に示唆したものである。 

国連が15日に公表したリストは、世界のメディアがわずかしか、あるいはまったく扱うことのなかったさまざまな内容を含み、紛争が継続する地域での亡命希望者と避難民の窮状から地震の救済や戦後の復興にまで及んでいる。

 「誰もが知っているとおり、武力衝突や紛争とその脅威が見出しになり、血が流れればトップ記事で、心温まる話はニュースにならない」とシャシ・タルール国連広報担当事務次長は話す。 

「長年、読者の関心を引くような側面を指摘し、読むに値し、注目に値し、面白い内容にできるように協力して、開発問題はいい記事になると訴え続けてきた」とタルール事務次長はIPSの取材に応じて語った。 

「今後も全力を尽くすつもりだが、読者や視聴者が記者にそうした開発関連記事をもっと見たいと伝えなければ(特に記事を見たときに圧倒的多数が肯定的な反応を示すなど)、メディア側にそうした内容は視聴者が興味を示す素材だと説得するのは難しい」と2004年からこの10大ニュースの発表を始めたタルール事務次長は語る。 

なぜ主流のメディアや主要な国際通信社がいまだに政治的問題ばかりに注目し、開発関連問題への注目度は低くなる一方なのか問われ、タルール事務次長は逆に記者に「これはジャーナリストと記者が答えるべき問題だ」と反論した。 

タルール事務次長が率いるDPIによると、世界が耳を傾けるべき10大ニュースには、リベリアの戦後復興、正当な亡命希望者が直面する新たな問題、コンゴ民主共和国の来るべき歴史的選挙、ネパールで継続している紛争に巻き込まれる子供たち、戦争で荒廃したソマリアの安定を脅かす干ばつの悪影響などが盛り込まれている。 

さらに世界のメディアがあまり取り上げなかったニュースとして選ばれたのは、放置された数百万の難民の窮状、南アジアで起きた地震と津波被害の救援活動の問題、法を破ったとして拘束されている驚くほど多くの子供たち、乏しい水資源をめぐる争いを防いだ協力的な解決策、コートジボワールの和平プロセスを阻む可能性のある新たな武力衝突などである。 

スリランカの元新聞記者で、以前駐米大使を務めたアーネスト・コリア氏は「先進国の(あらゆる)メディアは、読者や視聴者が大きな関心を持つという理由で、イラク、イラン、核拡散といった問題に注目する」という。 

「こうしたメディアは争いの文化に影響されている」とコリア氏はIPSの取材に応じて語り、「そのためにどんなものでも面白い戦いがニュースになり、戦いが起きる前にニュースになることもある」と語った。 

「その結果、3人の同性愛の候補者の争いということで、カリフォルニアの司教選挙の準備運動がニュースの見出しを飾る。話題の3人は皆落選という結末だったのだが」 

対照的に、途上国では読者や視聴者の主な関心は開発関連問題にあるとコリア氏は指摘する。けれども公正を期していえば、世界の主要新聞が開発関連問題を扱うときは優れた理解と内容を備えた記事になっているとコリア氏は話す。コリア氏は現在ワシントンで国際的な金融機関のコンサルタントをしている。 

これまでに、非同盟通信社連合、ジェミニニュースサービス、デプスニュースなど、途上国に焦点を当てた通信社を設立しようと国際的な努力がなされてきたがうまく進展していない。 

政治的に偏り、報道の専門知識が足りなかったのだろうか。あるいは欧米の巨大メディアに対抗するためには資金不足だったのだろうか。 

「何よりもこうした通信社は、政府の意向を受け売りする組織になるのではないかという当然の不安があった。というのも政府の資金援助を受けており、関与する政府が発するメッセージについて自由なメディアが正当な疑問を持つときに、歓迎されない自由な通信社に代わるメディアの役割を果たすと思われた」とタルール事務次長はいう。 

「もちろん政府の支援にもかかわらず嘆かわしいほどに資金不足で、ニュース市場でも彼らのニュースは信用を勝ち得ることができなかった」 

コリア氏は別の見方をする。これまでの努力はすべて、それぞれ事情は異なるが、共通の問題を抱えていたとコリア氏はいう。「途上国のメディアの協力」が得られなかったことである。 

「ジェミニとデプスニュースは通信社というより、特集記事を配信していた。ジェミニの特集は十分に専門的な商品であり、創立者のデレク・イングラムは果敢にもその路線の維持に努めたが記事を買ってくれる顧客が足りなかった」とコリア氏は言い添えた。 

今年初めに、マレーシアは非同盟運動に加盟する114カ国の議長国の立場から、非同盟ニュースネットワーク(NNN)の創設に乗り出した。 

このNNNが現在の問題の解決になるのかと問われると、タルール事務次長は「解決する可能性はある。というのも情報を操作するのではなく開かれた情報交換のモデルに基づいており、各国の通信社の特派員と共にフリーのジャーナリストに投稿を解放していると理解している」と語った。 

そうであれば情報を抑圧するのではなく貴重な情報源を増やすネットワークと考えられ、「NNNの実際の活動を楽しみにしている」とタルール氏は話す。 

コリア氏は「マレーシアが始めたこのNNNは、経済的支援がしっかり確保され、通信専門機関として運営されれば十分に成功するチャンスはある」とする。 

現在途上国の多くは国連の記者団に代表をあまり派遣していない。おそらく第三世界の多くの国、あるいはその通信社には、ニューヨークに正規の特派員を常駐させる余裕がないからだ。 

この事態を改善するために国連は何ができるか問われると、タルール事務次長は「残念ながら何もない」と答えた。もし国連が途上国のジャーナリストに何か補助金のようなものを出して経済的負担を軽減しようとすれば「国連は記者団に金で影響を与えようとしていると責められても仕方ない」。 

「途上国が認定したジャーナリストが国連に来れば、できる限り便宜を図り支援して、仕事場、交通手段などに関して不利な条件を最小限に抑えて仕事に専念できるようにすることは保証できる。国連に来ている途上国のジャーナリストがその点で不満を持っているとは思わない」と言い添えた。 

コリア氏は「国連の支援を求めて問題解決を図るのははっきりいって間違った方法だ」とし、途上国の新聞などの間での協力が問題解決につながるのではないかという。 

さらに「途上国のメディアには国連で活躍するインタープレスサービス(IPS)を支援し、時間と空間を共有して協力していくという選択肢もある」と語った。(原文へ) 

翻訳=IPS Japan 浅霧勝浩 

スペイン、押し寄せるアフリカ移民

【マドリッドIPS=アリシア・フラーマン】

カナリア諸島の保安警察は、5月5日から8日までに、モーリタニア、モロッコからカヌーに乗ってやってきた500人強の不法移民を拘束した。4月30日にも、テネリフェ島の南2マイルの海上で、62人を乗せた浅瀬専用船「パテラス」が拿捕されている。

地元警察によると、5月6日(土)には15時間の間に259人が押しかけ、3月13日の372人、3月14日の314人に次ぐ大量拘束を記録したという。また、スペイン警察の2005年12月発表によると、密入国中に死亡した者は、1,200~1,700人という。

 カナリア諸島自治政府のスポークスマンは5月7日、同島は不法移民の圧力に曝され、無防備状態にあるとの声明を発し、スペイン政府に国境取締り強化を要請。アロンソ内務大臣は、政府は既に電子監視システムSIVEの導入を決定していると発表した。

スペイン政府は2004年12月30日に新移民法を制定。2005年2月7日から1ヶ月間で約70万人の市民権申請があったと発表している。しかし、貧困が原因の移民問題は1国または地域だけでは解決できない。

スペイン政府は、移民問題をグローバル問題と捉え、夏にモロッコのラバト市で、モロッコ/スペイン共同主催の国際会議を開催する予定である。また、6月22-24日には、リバス・ヴァシャマドリッドで、世界75各国、750NGOの代表が参加する第2回World Social Migrations Forumが開催される。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩

|コロンビア|妊娠中絶の部分解禁で破門された判事

【コンスタンザ・ビエイラ】

あらゆる妊娠中絶が刑罰に処されるコロンビアにおいて10日、憲法裁判所は人工妊娠中絶を一部合法化する判断を行った。ところがカトリック教会は翌11日、賛成票を投じた5人の判事に破門を言い渡した。破門は共産ゲリラも恐れる厳しい処罰。

今回の判断は強姦による妊娠や、母体に著しい危険を及ぼす場合、胎児に生存の見込みがない場合の中絶を合法化するもの。

 この件を憲法裁判所に提訴したモニカ・ロア(Monica Roa)議員は女性の世界的連携を目指す団体(Women’s Link Worldwide)のメンバー。国際条約や憲法に女性の権利を盛り込むことに一定の成功を収めてきた。今回はもう一歩踏み込み、妊婦が子宮ガン治療も受けられないような状況を改善するため、実生活に即した権利を守る判断を判事に託した。

コロンビア世論の54%も今回の決定を支持。議論の核心をカトリック教会のモラルから周産期の母体保護に移すべく、70年代中期より続いた長期間の活動が実を結んだかたち。

ロア議員はIPSへの書簡で、教会はカトリック信者の私生活に干渉する権利はあるが、憲法の判断は公的分野と指摘。憲法裁判所のロドリゴ・エスコバール(Rodrigo Escobar)副長官も、ラジオのインタビューで抗議の声を上げている。

コロンビアにおいては妊婦の30%、19歳以下では44%が違法中絶を行い妊婦死亡原因の17%となっている。妊産婦死亡率の4分の3低減を目指すミレニアム開発目標(MDGs)達成には、この問題に対処することが急務。

憲法裁判所の判断は適切な立法化を通じて実行されていくのか?妊娠中絶を禁じるカトリック教会と母体保護をめぐる問題について報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩

EUと中南米、協力それとも搾取?

【ウィーンIPS=ジュリオ・ゴドイ】

第4回EUラテンアメリカ/カリビアンサミットが、ウィーンで開催される。議題は、自由貿易、麻薬/組織犯罪/テロ対策、科学/技術/エネルギー問題が主となるが、両地域間の経済格差、ラテンアメリカ諸国間の結束の欠如などから、具体的成果は期待薄である。

ECの外交・欧州近隣政策担当コミッショナーは先月、相互理解と新たな対話/機会の創造を謳ったEUの対ラテンアメリカ/カリビアン関係強化戦略を発表したが、欧州/ラテンアメリカの非政府団体は、「国家開発援助および協力は、ラテンアメリカの資源の吸い上げ」と批判。ブラジルのLandless Rural Workers Movementのペドロ・ステディレ氏は、「15年に亘るネオリベラル自由市場政策の結果、ブラジルの天然資源、樹木、水、種子までもが多国籍資本に支配されてしまった」と語っている。

サミットに先立つ5月10日には、同じくウィーンでPermanent People’s Tribunalが、ヨーロッパの最大手30企業のラテンアメリカ/カリビアン地域における人権違反、経済/環境不正を糾弾する公聴会を開催している。冒頭、ボリビア資料情報センターのフェレイラ氏は、「英国の石油会社BPとスペイン/アルゼンチン合弁のRepsol YPFが計画しているボリビア南部チャコ盆地のパイプライン建設は、ボリビア資源の略奪」と批判した。

更に、オーストリア経済省および連邦経済会議所は、サミットに合わせEUラテンアメリカ/カリビアン・ビジネスフォーラムを開催する。同フォーラムには約300人の企業経営者が参加の予定だが、Corporate Europe Observatoryのアナリスト、アベル・エステバン氏は、「ラテンアメリカの代表は、実際には欧州企業の子会社代表で、欧州側が支配するロビイング集団の会合である。彼らは、ラテンアメリカ政府に対し、自由協定の早期締結をすでに要求しており、単にラテンアメリカにおけるビジネスチャンスを探るだけの会議である」と語っている。

INPS Japan浅霧勝浩