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欧州議会議員ら核軍縮促進を呼びかけ

【ジュネーブIDN=ジャムシェッド・バルーア】

欧州議会議員らが、核軍縮に向けた「具体的な措置」を取り、これを「2023年の優先事項」とする必要性を強調している。これは、核兵器を絶対悪のものとし、2021年1月22日に発効した国連核兵器禁止(核禁)条約のような軍縮諸条約を強化する取り組みへの補完になると議員らは考えている。

3月9・10両日にノルウェーのオスロで開催された「ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)市民社会フォーラム」では、ベルギー・デンマーク・ドイツ・アイスランド・ノルウェー・スコットランド・スロベニア・スウェーデンの欧州8カ国から17人の欧州議会議員が参加し、核軍縮を進める上で議員の重要な役割が強調された。

ICAN
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会議は、ノルウェーのキリスト教民主党と自由党、社会主義左翼党が共催した。

参加議員らは総括声明で、「安全保障戦略における核兵器の役割を減らし、核の脅威を継続的に非難し、G7の同盟パートナーに対し、象徴的な都市である広島で(5月に開催される)2023年G7サミットを核軍縮協議の出発点とすべきことを各国政府に」呼びかけた。

総括声明にはさらに、核軍縮と核禁条約の推進、そして「核兵器のない世界の実現」に向けた議員としての役割について議論するためにここに集ったと記されている。議員らは、各国の状況や立場を説明し、核軍縮に向けたさらに大胆かつ具体的な行動を促すための意見交換を行った。

The Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons, signed 20 September 2017 by 50 United Nations member states. Credit: UN Photo / Paulo Filgueiras
The Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons, signed 20 September 2017 by 50 United Nations member states. Credit: UN Photo / Paulo Filgueiras

まとめ声明はさらに、ノルウェーが「第1回核兵器の人道的影響に関する国際会議」を主催してから10年が経過したと指摘した。こうした動きを受けて成立した核禁条約は、現在署名国92、締約国68を数え、国際法によって核兵器を禁止している。

「核禁条約は、核使用のリスクが高まり、核使用のタブーが損なわれつつある現在、核軍縮・不拡散体制の強化に資する重要なツールである。ロシア政府による核使用の威嚇によってウクライナに仕掛けられた違法かつ残虐な戦争は、核兵器に伴う容認不可能なリスクを白日の下に晒した。私たちは、あらゆる核使用の脅威を明確に非難し、世界の完全な核軍縮を通じて、核兵器が二度と使用されないようにすることを指導者や政治家に強く求める。」

議員らは、核シェアリングの取り決めを含め、核政策において透明性が欠けていることを議論した。また、核不拡散条約(NPT)の補完となる核禁条約は、この目的を達成するための最も包括的な法的ツールであると指摘したうえで、各国政府に対して、核禁条約の普遍化を図り、早期に同条約に参加するよう呼びかけた。

Photo: Applause after the adoption of the political declaration and action plan as 1MSPTPNW ended on June 23 in Vienna. Credit: United Nations in Vienna
Photo: Applause after the adoption of the political declaration and action plan as 1MSPTPNW ended on June 23 in Vienna. Credit: United Nations in Vienna

議員らは、核禁条約の発効と、2022年6月にウィーンで開催された同条約に関する第1回締約国会議の成功を歓迎した。この会議において締約国は、NPT締約国としての取り組みを補完する形で、軍縮レジームを強化する大胆な計画に踏み出すことに合意した。

核禁条約は、核兵器使用の威嚇を禁止する唯一の条約として、また、あらゆる核の脅威に対する締約国の強い非難を通じて、数十年に及ぶ核使用のタブーを強化する方法について国際社会に模範を示した、と議員らは主張した。

議員らは、核禁条約の第一回締約国会合にオブザーバーとして参加した国々の建設的な関与を称賛し、他のすべての非締約国に対して、条約の署名・批准に向けた中間的なステップとして今年11月~12月の第2回締約国会合にオブザーバー参加するよう訴えた。

「私たちは、各々の政府に対して、とりわけ核禁条約の第6条・7条に定めた被害者支援と環境修復の分野において締約国と協働するオプションを探るよう求めます。」

ICANがオスロで開いた「市民社会フォーラム」には、専門家や活動家、パートナーが世界各国から2日間にわたって集い、「核兵器に加担している国々」に対して核軍縮と核禁条約の重要性を訴えるために利用できる説得材料やツールについて意見交換を行った。

「核兵器に加担している国々」は自前の核兵器を持っているとは限らない。それでもなお、核軍縮に賛同するふりをしながら、自国の国家安全保障政策において核兵器の役割を積極的に是認することで、現状維持に一役買っているのである。実際には、これらの国々が軍縮運動の支援することはほとんどない。

ICAN

ベルギー・ドイツ・イタリア・オランダ・トルコの5カ国はいずれも領内における米国の核配備を認めている。さらに、(この5カ国に加え)29カ国が、北大西洋条約機構(NATO)や集団安全保障条約機構(CSTO)などの防衛同盟の一環として、自国のための核兵器使用の可能性を認めることによって、核兵器の保有と使用を「是認」している。

これら合計で34の「核兵器に加担している国々」は、アルバニア・アルメニア・オーストラリア・ベラルーシ・ベルギー・ブルガリア・カナダ・クロアチア・チェコ・デンマーク・エストニア・フィンランド・ドイツ・ギリシャ・ハンガリー・アイスランド・イタリア・日本・ラトビア・リトアニア・ルクセンブルク・モンテネグロ・オランダ・北マケドニア・ノルウェー・ポーランド・ポルトガル・ルーマニア・スロバキア・スロベニア・韓国・スペイン・スウェーデン・トルコである。

この暗澹たる状況を背景に、核禁条約締約国や都市、市民社会、議会、[核被害の]生存者、その他専門家、活動家の代表が、2017年にノーベル平和賞を受賞したICANが組織した今回のフォーラムで、「核兵器に加担している国々」をその時代遅れで警戒すべき姿勢から遠ざける方法と手段に関して議論した。

彼らには、核兵器がこれまでの兵器の中で最も破壊的で、最も非人道的かつ非差別的であるという信念がある。人間がこれにまともに対応することなどできない。「容認できないリスクがあるからこそ、私たちは行動をおこさねばなりません。」と議員らは訴えた。(原文へ

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この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています。

【Global Outlook=ハルバート・ウルフ】

現在、ドイツでは中国との関係が再考されている。これは、EUでも起こった、より長い経緯の結果である。ロシアのガス、石炭および石油の供給にドイツが依存していたことのショックが、中国との関係を特にセンシティブなものにしている。ドイツは、ロシアの原材料と化石燃料への依存度が高いだけでなく、中国とも、経済的により緊密な相互関係がある。というのも、中国は、ドイツの輸出相手国第2位であり、輸入相手国としては第1位なのだ。この議論は、経済的依存度およびアジア内外における中国の強気な外交・安全保障政策の両方が理由で加速している。(

ロシアの経験を経た今、中国への経済的依存について嘆く声は多い。産業、貿易、メディアおよび政治の各分野の専門家らは、正しい対応を巡り、「従来通り」や、抜本的な「デカップリング」、あるいは「封じ込め」に至るまで、様々な主張を述べている。パンデミックの間、経済的にセンシティブなサプライチェーンが一時的に崩壊したことが、自立度を高めようという思いを著しく強めた。しかし、経済的依存度をまったく減らすことなどできるのだろうか?また、デカップリングを行うなら、どの程度とするべきなのだろうか?

確信を持てるような戦略は見えてこない。数週間前、中国との関係に関するある議論がドイツ政府内でヒートアップしていることが明らかとなった。問題の案件とは、中国系の物流グループCoscoの、ハンブルク港における投資の計画であった。Coscoは、ターミナルの持分の35%の購入を希望していた。六つの省と秘密情報機関が、ドイツのインフラのきわめて重要な部分が中国の影響を受けることになりかねないとして、この取引に強く反対した。元ハンブルク市長で、今日でもハンブルクとの関係が深いオラフ・ショルツ首相は、中国の関与を求めた。ショルツは、ハンブルク港がヨーロッパの他の港との競争に負けるかもしれないことを恐れた。同首相は、全ての反対派との(恥ずべき)妥協を得て、25%未満の投資を承認した。

次の争点は、11月初めに、ショルツが経済界の代表団とともに、11時間のフライトで中国の習近平国家主席を訪問したことである。これは、過去にアンゲラ・メルケルが中国との経済関係を強化するために何十回と実践してきたこととほぼ同じである。ショルツは厳しいロックダウンの後で中国を訪問した初めての西側の首脳である。ヨーロッパ諸国の多くは、ドイツの単独行動主義に憤慨した。実際のところ、ショルツとエマニュエル・マクロン仏大統領は一緒に中国を訪問しようと考えていた。マクロンが時期尚早と考えたため、ショルツのみが、ドイツ政府内でもEUでも戦略的協調を図ることなく訪問してしまった。

緑の党のアンナレーナ・べアボック外相が率いる連邦外務省は、現在、対中国戦略を検討中である。59頁の草稿が、政府内およびEU諸国との調整が行われる前にメディアにリークされた。この草稿だけでなく、同じく緑の党所属で、責任者であるロバート・ハベック経済相の声明も、経済依存度を下げ、人権の優先順位を高めるという願望を明確にしていた。こうした立場は、「民主主義的統治か、権威主義的統治か」というアメリカ的な二極化におおむね呼応する。しかし、このナラティブは論争を呼ぶものだ。

中国政府は、ドイツ外務大臣の戦略草稿に対し「過激な反中国勢力」と反発した。ベアボックの見解の一部は、中国を「パートナー、競争相手、体制的ライバル」とする2019年に公表されたEU・中国戦略に一語一句対応している。「ライバル」という語は、中国の解釈によれば、「冷戦時代の考え方の名残」だという。中国国営メディアは、ドイツ・中国関係が「大口叩き」や「親米勢力」によって乱されてはならないと厳しい口調で述べた。中国政府がハンブルク港におけるCosco の契約の件でショルツ首相に非常に感謝している一方、ショルツは、核兵器に関する習主席との共同声明を、北京への短い訪問の最も重要な成果と見なしている。この共同声明で両国は、ロシアを名指しすることなく、国際社会に対し「ユーラシア大陸の危機を防ぐため、核兵器の脅威を拒み、核戦争に反対を唱える」ことを呼びかけている。

ドイツ外務省は、中国の首脳は「自らの政治体制は優れており、自国の『核心的利益」を疑問の余地がないものと見なしている」と書いている。中国は、より強気の外国政策を追求しており、経済的な依存関係を政治的目標の達成のために利用している。グローバルな観点からいえば、これは新しい知見では全くない。しかし、結論は広範囲なものとなるかもしれない。なぜなら、新しい戦略は、「中国は変化している。中国に対する我々の対応も変わらなければならない」と主張しているのである。EU加盟国であるリトアニアは、最近、中国の強気な外交を直接経験した。台湾貿易センターの開設を受け、中国政府はリトアニアとの貿易関係を断絶したのである。オーストラリアなど他国でも、過去に似たような脅迫を経験してきた。インドもまた、慎重に「デカップリング」戦略を用いて、アジアにおける自国の立場の強化を図っている。

「Wandel durch Handel(貿易を通じた変化)」、すなわち、経済的な関係を通じて社会の中の動きにポジティブな影響をもたらす、という概念は、ロシアによって完全に失墜させられた。したがって、中国との関係についても問われなければならない。「中国との貿易は自由を促進する」という2000年5月のジョージ・W・ブッシュ大統領の声明は米国では長年棚上げにされている。EUでは、これも今やコンセンサスである。

中国との戦略的ライバル関係が、米国の外交・安全保障政策策定上の決定的な原則となった一方、ヨーロッパ諸国の首脳らは中国に対する封じ込め戦略を提唱することをためらっている。もっとも、米中関係は、経済的には「市場主義」対「国家資本主義」、政治モデルとしては「民主主義」対「権威主義」という、イデオロギー対立の様相が色濃くなってきている。

しかし、EUあるいはNATOは、米国の提案を一致して支持する姿からは程遠い。このライバル関係におけるNATOの役割については加盟国の間でも異論があり、EUは中国に対して矛盾したシグナルを送っている。しかしそれでも欧州委員会は、「今日の米中競争の中で負け組になることを避けるには、我々はパワーの言語を学びなおし、ヨーロッパを第一級の戦略地政学的アクターとして捉えなければならない」と、EUの強い役割を構想している。この声明が出されてから3年近くになる。この「パワーの言語」が具体的に何を意味するのかは今でも確かではなく、何より、物議を醸すものだ。また、EUのインド太平洋戦略は、現時点では非常に初期段階にあり、まだおおむね文書上のものである。これと対照的に、中国政府は「関係を非政治化する」ことを飽くことなく主張している。

「関与」か「封じ込め」の両極端の間で適切なポジションを見つけることは容易ではない。完全な「デカップリング」には、経済的依存度が高すぎる。加えて、ドイツおよびEUは中国を気候交渉の重要なプレイヤーと見なしている。COP 27における中国の期待外れな行動の後でもこれが通用するかは、まだ分からない。だが問題は、西側諸国もEUも、ドイツ政府さえも、中国の強硬度を増す政策にどう対処するかについて、一致した戦略を追求していないことだ。オラフ・ショルツが北京訪問の前に表明したように、「スマートな多様化のために一方的な依存関係をやめる」ことを目指すのが確かに望ましい道だが、現時点でドイツとEUの大半は、経済的な必要性と政治的な独立性との間で身動きがとれないままである。

ハルバート・ウルフは、国際関係学教授でボン国際軍民転換センター(BICC)元所長。2002年から2007年まで国連開発計画(UNDP)平壌事務所の軍縮問題担当チーフ・テクニカル・アドバイザーを務め、数回にわたり北朝鮮を訪問した。現在は、BICCのシニアフェロー、ドイツのデュースブルグ・エッセン大学の開発平和研究所(INEF:Institut für Entwicklung und Frieden)非常勤上級研究員、ニュージーランドのオタゴ大学・国立平和紛争研究所(NCPACS)研究員を兼務している。SIPRI(ストックホルム国際平和研究所)の科学評議会およびドイツ・マールブルク大学の紛争研究センターでも勤務している。

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|日本|広島G7サミットに向けてグリーン開発を提起

【シドニー/東京IDN=カリンガ・セネビラトネ】

3月29日、創価大学(東京八王子市)で「G7広島サミットにおける安全保障と持続可能性の推進」をテーマとした政策提言国際会議が開催され、参加者らは5月に広島で開催される先進7カ国首脳会議(G7サミット)に向けて、政策課題の焦点をウクライナ戦争からグリーン開発や食料・エネルギー問題へと振り向けるという複雑な問題について議論した。G7サミットは、仏、米、英、独、日、伊、加(議長国順)の7か国並びに欧州理事会議長及び欧州委員会委員長が参加して、毎年開催される国際会議である。

Professor Miranda Schreurs delivering her presentation online from Munich, Germany. Credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of IDN-INPS.

来日して会議に参加することができずやむを得ずオンラインでミュンヘンから発表をしたスピーカーがいたことに、このジレンマは象徴的に表れている。彼女は、会場の聴衆(とオンライン参加した聴衆)に向かって、ドイツで発生した労働争議のために来日することができなかったと語った。

自宅から参加したミュンヘン工科大学のミランダ・シュラーズ教授は、「運輸産業の労組による大規模ストライキのために公共交通が止まり、空港が閉鎖されてフライトがキャンセルになったために、空港に行くことができませんでした。ストライキは、ウクライナ戦争によるドイツ国内のエネルギー価格の高騰が原因です。」と語った。

G7諸国によるウクライナ軍への武器供与と(エネルギーや食料価格の高騰など)長引く世界的な苦難の関連性について、あえて問題提起するスピーカーはいなかったが、この日の会議ではしばしばウクライナ戦争への言及がなされた。ドイツとフランスでは生活費の高騰に対して暴力的な抗議行動も発生している。

シュラーズ教授は、「G7はかつて民主主義をリードしていました。」と指摘しつつも、「私の国ドイツでは状況は危うくなってきています。はたしてG7は民主主義を支えるために何ができるでしょうか。」と警告した。

Takashi Ariyoshi, Deputy Secretary General, G7 Hiroshima Summit Secretariat; Director, Economic Policy Division, Ministry of Foreign Affairs, giving the keynote address. Credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of IDN-INPS.
Takashi Ariyoshi, Deputy Secretary General, G7 Hiroshima Summit Secretariat; Director, Economic Policy Division, Ministry of Foreign Affairs, giving the keynote address. Credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of IDN-INPS.

G7広島サミット事務局の有吉孝史副事務局長は、「核兵器使用の威嚇も取りざたされるような前代未聞の難題に世界が直面する中」で、(被爆経験がある)広島がこの状況を象徴している都市としてサミット会場に選ばれた、と語った。

有吉副事務局長は、国際秩序の基本原則が問われている今日、G7諸国は、昨年3月の国連総会緊急特別会合の投票で、「(ロシア軍による)露骨な侵略に直面しながら」35カ国がロシアに反対票を投じなかった理由を理解する必要があると語った。

G7は今日の問題を(自分たちで)すべて解決することはできず、グローバル・パートナーと協力する必要があります。」と有吉副事務局長は述べ、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的な大流行)やウクライナ戦争に伴う悪影響を受けているという意味でも、「(世界秩序における)重要なプレイヤーであるという意味においても」、グローバル・サウスが重要になってきていると指摘した。

有吉副事務局長は、日本がインドやブラジル、クック諸島(太平洋諸島フォーラム議長国)、コモロ(アフリカ連合議長国)、インドネシア(東南アジア諸国連合議長)、ベトナムを広島G7サミットに招聘したのはこのためであると指摘したうえで、「国際秩序を守るうえで積極的な役割を果たす意思を持つ国々を招聘しました。」と語った。

G7 Hiroshima Summit Logo
G7 Hiroshima Summit Logo

また、G7の中で日本は唯一のアジアの国であり、中国とロシアがインド太平洋地域の重要性を理解していることに触れ、「中国にどう対処するかは重要な課題です。」と指摘した。「したがって、広島サミットは、自由で開かれたインド太平洋について、この地域の協力を発展させるための重要な会合となるだろう。」と語った。

有吉副事務局長は、経済安全保障について取り組むことが広島サミットの重要議題になるだろうと述べ、日本はその実現に向けて、サプライチェーンとインフラの強靭化、、経済的な威圧や非市場的慣行を用いない、デジタル空間における「悪意のある行為」をコントロールするなど、7つの道筋を提案していると語った。

また、日本には保健医療分野で優れた実績があるとし、サミットの重要課題の一つとして、コロナ禍からの教訓を念頭に置いた「グローバルヘルス・アーキテクチャー」を挙げるとともに、「健康安全保障という概念は非常に重要であり、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジは重要なアジェンダである。」と語った。

Hirotsugu Terasaki, Director General, Peace and Global Issues, SGI, making the welcome speech at the opening session.Credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of IDN-INPS.

会議の共催団体である創価学会インタナショナル(SGI)の寺崎広嗣平和運動総局長は開会の挨拶で、「今日、私達が直面する世界を楽観視することは難しいかもしれない」との見解を示した上で、「私達の共通の願いは、どの国も他国の犠牲の上に自国の幸福と繁栄を追い求めない、という考えです。そのためには、まず私たち一人ひとりが、他人の不幸の上に自分の幸福を築くことはできないという価値観を共有していくことが、その基盤になります」と主張した。

「G7研究グループ」アカウンタビリティ問題責任者のエラ・ココシス氏は、化石燃料への補助金を削減する必要性や、気候変動対策資金を貧困地域の支援に充てる年間1千億ドルの公約など、広島サミットにおける8項目の勧告を提示した。また、途上国がグリーンテクノロジーをより早いペースで適応できるよう、グリーンインフラや技術移転の支援にもっと力を入れるようG7諸国に対して求めた。

ココシス氏は、「(これらの行動に関する)透明性とアカウンタビリティを確保することが重要です。」と指摘したうえで、「広島サミットは、気候アクションに対する(G7の)影響を強化するきわめて重要な機会となります。」と語った。

At this hybrid, live streamed event, experts from the educational, academic, civil society and government communities gathered in person and virtually to share their perspectives and offer their best analysis and advice on what Japan’s Hiroshima Summit should do to control nuclear, climate, and global health risks.This photo shows a session titled, "Streangthening Climate, Energy and Health Security" Credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of IDN-INPS.
At this hybrid, live streamed event, experts from the educational, academic, civil society and government communities gathered in person and virtually to share their perspectives and offer their best analysis and advice on what Japan’s Hiroshima Summit should do to control nuclear, climate, and global health risks.This photo shows a session titled, “Streangthening Climate, Energy and Health Security” Credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of IDN-INPS.

シュラーズ教授は、「ドイツではウクライナ戦争の影響により、化石燃料への補助金が増加しています。民主主義の機能に影響を与えないような工夫が必要です。」と述べ、ドイツのようなG7諸国が2040年代半ばまでに炭素排出ゼロを達成することは、現在の政治状況では困難であると警告した。

シュラーズ教授はまた、日本の農地に設置されたソーラーパネルの画像を示しながら、「これを設置するために木が伐採されたかもしれません。太陽光のような再生可能エネルギーを導入する際には、政策決定者は環境への影響に配慮する必要があります。」と指摘した。

Mark Elder, Director of Research, IGES delivering his presentation at a session titled, “Strengthening CLimate, Energy and Health Security. Credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of IDN-INPS.

地球環境戦略研究機関(IGES)のマーク・エルダー研究部長は、「ウクライナ戦争のせいだけでなく、人類の生存を支える地球の能力は危機に瀕しているのです。」と述べ、ウクライナ戦争のために気候危機の問題を軽く見てはならないと警告した。

エルダー研究部長は、「省エネを強化するとともに、電気自動車を導入するよりも、むしろ公共交通機関を増やす必要があります。電気自動車の生産には、特定の重要な鉱物の採掘が必要であり、環境や労働者の権利という面で問題含みだからです。」と指摘した。

「ウクライナ戦争よりも気候安全保障に目を向ける必要があります。」とエルダー研究部長は聴衆に語りかけた。

有吉副事務局長は、「事務局では広島サミットに向けて、コロナ禍と戦争という二重の危機が取り残してきた人びとをいかにして支援するかという問題に取り組んできた。」と指摘したうえで、「開発金融がここで重要になってきます。持続可能な開発目標(SDGs)が脆弱な人々に焦点を当てる支援をしたい。一部の国々は最近、きわめて不透明な援助を受け苦しんでいます。開発支援を持続可能にする国際規範を打ち立てる必要があるのです。」と語った。(原文へ

A Glimps of the Conference: “Advancing Security and Sustainability at the G7 Hiroshima Summit” Credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of IDN-INPS

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創価大学平和問題研究所

|1923-2023|ネパール・イギリス友好条約100周年は、かつてネパールの指導者が戦略的思考を持っていた時代を想起させる。

この記事は、ネパーリ・タイムズ(The Nepali Times)が配信したもので、同通信社の許可を得て転載しています。

【カトマンズNepali Times=クンダ・ディキシット

1816年のスガウリ条約で英・ネパール戦争が終結した後、ネパールは名目上は独立していたが、大英帝国からは単なるインドの藩王国の一つとして扱われていた。

1847年、王宮大虐殺事件で政権を握ったジャンガ・バハドゥル・ラナは、1816年に失った領土を取り戻すために英国と戦争することが賢明かどうかを判断するため、ヴィクトリア女王の招きに応じ、1850年にインド亜大陸の王族としては初めて英国を訪問した。

MoD description (from source): “5th Royal Gurkha Rifles North-West Frontier 1923″/ Public Domain

大砲の工場や軍事施設を視察したジャンは、大英帝国の強大さに目を見張った。その後100年に亘りネパールを支配した彼とラナ家の子孫らは英国に傾倒し、1857年のセポイの乱の鎮圧をはじめ、その後大英帝国が推進したアフガン戦争やその他の帝国主義戦争にグルカ兵を提供した。第一次世界大戦のフランダースの野原やガリポリなどの戦場では、推定2万人のグルカ兵が戦死した。

チャンドラ・シャムシェル・ラナ首相は、巧みな外交術と2年間にわたるデリーとロンドンでのロビー活動を通じて、グルカ兵らの貢献と犠牲を英国政府に巧みに訴え、1923年にはネパールを主権国家として認めさせる友好条約の署名に漕ぎつけた。

チャンドラ・シャムシェル自身、1908年にロンドンを訪問している。彼は、英軍や王族を軟化させて条約に署名させるため、ホレイショ・ハーバート・キッチナー卿をもてなし、チトワンではジョージ6世とエドワード王子を招いて手の込んだトラ狩り外交を展開した。

A contemporary portrait of Chandra Shamsher Jang Bahadur Rana (1863-1929), former Prime Minister of Nepal and Maharaja of Kaski and Lamjung/Public Domain

プリトヴィ・ナラヤン・シャーはネパール建国の王であったかもしれないが、ネパールに初めて世界での地位を与えたのはチャンドラ・シャムシェル首相であった。1937年、ネパールはケンジントン・パレス・ガーデンズ12Aに大使館を設立し、現在に至っている。当時、ネパールはロンドンに公館を持つ4つのアジア諸国のうちの1つであった。

1947年のインド独立後、状況は一変し、ラナ家の世襲独裁はまもなく終焉を迎えた。

今年は、1923年12月21日にネパール・イギリス友好条約がシンガ・ダルバール宮殿で締結されてから100周年にあたる。この条約は、スガウリ条約によるネパールの歴史的屈辱に対処するためのものであった。

英国のネパール特使ウィリアム・オコナーは、調印式のためにラジンパットからシンガ・ダルバールまで20頭の馬で護衛されたが、これは当時国王だけに許された栄誉だった。

ラナ政権は2日間の祝日を宣言し、夜間の建物のライトアップを命じ、賭博の禁止を一時的に解除し、囚人を解放した。カトマンズの英国使節は、それまで「駐在員」と呼ばれていたのが、正式な大使になった。

ネパールが植民地化されることはなかったが、この条約によって、ネパールはついに独立国として世界に認められるようになった。条約文書はシンハ・ダルバール宮殿に保管されており、オコナーとチャンドラ・シュムシェルの署名がある。

British envoy to Nepal William O’Connor and Prime Minister Chandra Shamsher after signing the treaty on 21 December 1923.
British envoy to Nepal William O’Connor and Prime Minister Chandra Shamsher after signing the treaty on 21 December 1923.

この条約は、ネパールの主権を保証し、スガウリ条約を再確認し、安全保障に取り組み、ネパール軍による武器輸入の道を開き、英国・ネパール間の貿易に関する関税障壁を取り除くという7つの条項で構成されている。

しかし、この条約はすべてのネパール人に歓迎されたわけではない。反ラナ派の反体制派やグルカの徴兵に反対する人たちは、この条約に反対した。チャンドラ・シュムシェルは条約調印の6年後に亡くなり、後継者たちはこの条約を十分に活用することなく、例えば国際連盟に加盟してネパールの存在をより強力にアピールすることはできなかった。

チャンドラ・シャムシェルは、条約の安全保障条項を利用して、英領インドにおける反ラナ、反グルカ兵の徴兵活動に従事する活動家らを、インドに駐在する英軍に弾圧させたほどである。

ネパールは英連邦のメンバーではないが、8000人ほどのネパール国民が英軍に所属していたことで、ネパールと英国の関係はより緊密になり、政治、経済、貿易分野における協力関係をより活用できるはずだった。

ネパールはグルカの徴兵という「ソフトパワー」を十分に生かしきれていない。摂政でネパール好きのブライアン・ホートン・ホジソン、植物学者のフランシス・ブキャナン=ハミルトン、博物学者のジョセフ・ダルトン・フッカー、ヒマラヤ探検家のA Wティルマンやエリック・シプトン、ポカラを故郷としたマイク・チェニーやジミー・ロバートなど、過去2世紀にわたってネパールについて研究し探索した冒険家も英国ではほぼ知られていない。

その多くは、ネパール自身の長年にわたる外交の不手際に起因している。しかし、1961年のエリザベス女王の初訪問を皮切りに、英国王室のメンバーが何度もネパールを訪れている一方で、これまで英国の現役首相がわざわざカトマンズに来訪したことはない。

1923年のネパール・イギリス友好は、英国やインドでもあまり注目されず、ネパールでも政治的な論議ではスガウリ条約や1950年のインド・ネパール通称・通過条約の陰に隠れている。また、ネパール国境を越えて周辺国に在住する人々の中には、1950年のインドとの条約が1923年のネパール・イギリス友好条約よりも優先されると主張する人々も少なくない。

歴史は巡り、帝国は興亡を繰り返す。英国の栄光は、今や歴史書の中だけのものとなってしまった。ネパールの隣には、台頭する中国がある。ネパール人は、1923年の条約で門戸が開かれた、当時世界的な大国であった大英帝国とのビジネス機会に、自分たちが応えてきたかどうかを熟考する必要がある。

その答えは否(=応えることができていない。)である。最近、2つの大きな隣国(インドと中国)と米国は、ネパールの指導者を不信と軽蔑の目で見ている。つまり、ネパールの政治家は約束を守らず、自分を最高額を提示する者に売り渡そうとする、よって、ネパールの安定と存続のために必要な地政学的な綱渡りをすることができないと見られているのだ。

Kunda Dixit
Kunda Dixit/ Nepali TImes

ネパールの指導者たちの外交的な振る舞いは、被害者面して跪くか、無謀にも隣国同士を対立させるかのどちらかだ。彼らは権力の座に就くために、空虚なナショナリズムに頼ったり、ポピュリズムを煽ったりする。

ネパールは、世界最大の新興経済国2カ国(インド・中国)と国境を接している。この2つの経済大国が常に我が国(ネパール)を巡って争っているわけではないことに早く気づくことができれば、私たちはネパールの発展のためにこの地の利を生かすことができるようになるだろう。(原文へ

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世界的な水危機-いくつかの事実

【コペンハーゲンIDN=ジョン・スケールズ・アベリー

国連は2021年の「世界水の日」のホームページで、次のような事実を指摘している。 現在、3人に1人が安全な飲み水なしで暮らしている。2050年には、最大57億人が1年に1カ月以上、水が不足している地域で生活する可能性がある。

気候変動に強い水供給と衛生設備があれば、毎年36万人以上の乳児の命を救うことができる。世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べて、1.5度に抑えることができれば、気候に起因する水ストレスを最大50%削減することができる。

異常気象は、過去10年間に発生した大災害の90%以上を引き起こしている。2040年までに、世界のエネルギー需要は25%以上、水需要は50%以上増加すると予測されている。

水が極めて重要な資源であることは明らかであり、人類社会の未来の幸福は、世界に存在する淡水の供給をいかにうまく管理するかにかかっている。そのためには、高いレベルの国際協力と社会正義が必要である。

モード・バーロウ:人権としての水

Maude Barlow,CC BY-SA 3.0
Maude Barlow,CC BY-SA 3.0

多くの国で、大企業が水の供給をコントロールし、貧しい市民にとって手の届かない価格で販売している。1947年カナダ生まれのモード・バーロウ氏は、20年以上に亘って水の商品化に反対する運動を牽引してきた。国連はこうした運動の盛り上がりを受けて、2002年11月、「水は人権である」と宣言した。真水がますます不足している現在、この宣言はとりわけ重要な意味合いを持つようになっている。

モード・バーロウ氏の言葉をいくつか引用する:

「この時代に起こっている非常に現実的で大きな社会問題や環境問題に対して、自分にできることは何もないと言う人たちの言葉に耳を傾けてはいけない。」

「今や、健康や教育、食べ物や水、空気、種や遺伝子、伝統など、かつては神聖視されていた生活領域でさえも、あらゆるものが売りに出されている。」

「今日の地球の水危機についてはいくら強調してもしすぎることはない。」

「私たちは、人類、地球、そして他の生物種のために、異なるモデルと異なる未来を構築することに命をかけている。私たちは、経済のグローバル化に代わる道徳的な選択肢を構想しており、それが実現されるまで歩みをとめない。」

「断片的な解決策では、社会全体や生態系の崩壊を防ぐことはできない…価値観や優先順位、政治システムを根本的に考え直すことが急務である。」

中国で水位が低下し続ければアフリカに飢饉が起こるかもしれない。

Lester Brown
Lester Brown

コペンハーゲン大学での講演後、アースポリシー研究所のレスター・R・ブラウン博士は、「最初に決定的に不足する資源は何か」という質問をされた。聴衆の誰もが「石油」と答えるだろうと予想していたが、ブラウン博士は「淡水」と答えた。

博士は、「このまま中国で水位が下がりつづければまもなく人口を養えなくなる。しかし今の中国の経済力では、世界市場で穀物を購入できるため、国内で飢饉が起こることはないだろう。しかし、中国で淡水が不足すれば、アフリカなどで飢饉が発生することになる。なぜなら、中国の穀物需要は、世界市場の価格を引き上げ、貧しい国々の支払い能力を超えてしまうからだ。」と説明した。

世界的な大規模飢饉の脅威

世界人口を安定化させ、最終的には減少させる努力をしなければ、気候変動、人口増加、化石燃料時代の終焉が重なり、21世紀半ばには大規模な飢饉が発生するという深刻な脅威がある。

ヒマラヤやアンデス山脈の氷河が溶け、インドや中国、南米の夏の水源が奪われ、海面が上昇して東南アジアの肥沃な米作地帯が浸水し、干ばつで北米や欧州南部の食糧生産が減少し、中国、インド、中東、米国で地下水位が下がり、化石燃料投入量が不足して高収量農業が困難になれば、数百万人ではなく、数十億人を巻き込む飢餓状態になる危険がある。(原文へ

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コロナ禍、気候変動、不処罰と人身売買を悪化させる紛争

【ウィーンIDN=オーロラ・ワイス

新型コロナウィルス感染症のパンデミックにより、ソーシャルネットワークやインターネットをプラットフォームとした人身売買が増加していると、国連薬物犯罪事務所(UNODA)「人身売買に関する世界報告」の主執筆者であるファブリッシオ・サリカ氏はIDNの取材に対して語った。

サリカ氏は、国連総会が2010年の人身売買と闘う世界行動計画を通じて義務付けた7番目の報告書である、2022年「人身売買に関する世界報告」の顕著な側面を強調した。

2023年1月24日に発行されたこの報告書は、141カ国を対象とし、2018年から21年の間に検知された人身売買の事例を分析することにより、世界、地域、国レベルでの人身売買への対応を概観している。今回の報告書は、UNODCが2003年にデータの収集を開始して以来、過去の傾向と比較して重要な変化を示している事件と有罪判決の傾向に主な焦点を当てている。

Photo: Artwork from the Global Report on Trafficking in Persons 2018, UNODC.
Image: Enlarged and cropped image on Cover of 2016 UNODC Global Report on Trafficking in Persons.

「仮想世界で起こることはすべて、現実世界の出来事に反映されます。人身売買業者が被害者をリクルートするために使う新しい手段があるだけです。彼らは狩りのテクニックを使い、ソーシャルネットワーク上のプロフィールを次々と見て回り、潜在的に弱い立場の被害者を見つけます。若い世代は何でも公表する傾向があるので、ハンターはインターネットやソーシャルネットワークを利用して、被害者の身元やプロフィールを確認するのです。」とUNODCの人身売買の専門家は説明した。

「例えば、インターネットを利用して、若い女の子で、とても魅力的で、同時に彼女が人生で経験している段階を判断することが可能です。こうしてプロフィールチェックを行い、ターゲットになりそうな女性を特定し、被害者候補と親交を深め、勧誘を始めるのです。そうすると、「直接会おう、私の国に来ないか。」と勧誘がオフラインになる可能性があります。そして、実際に会うことでいろいろと搾取されるのです。しかし、インターネットのプラットフォームが、業者間による被害者の売買や、犯罪ネットワーク間のコミュニケーションに利用されるケースもあります。」とサリカ氏は指摘した。

また、ウェブカメラの前で子どもが直接性的搾取を受けるケースもある。研究者によると、これも人身売買の道具として使われることが多くなっている。人身売買業者の立場からすれば、こうしたIT機器は商業的に都合がよいものとなっている。

「ウェブカメラの前に被害者がいれば、世界各地の何百万人もの顧客が同時に一人の被害者を搾取することができるし、その画像を何度も再利用することができるので、犯罪者の立場からすれば、とても儲かる仕組みと言えるのです。」

女性や子どもはより暴力的な搾取に直面している

2020年に発見された被害者のうち、女性の被害者(女性・少女)は全体の60%を占めている。性的搾取の摘発が著しく減少したことにより、人口10万人あたりの女性被害者数が減少している(1年間で11%の減少)。

この減少にもかかわらず、女性や少女は、男性や少年よりも多くの人身売買の被害者を構成している。しかし、より多くの男性被害者が特定される傾向は2020年に加速したようだ。UNODCが収集したケースサマリーの分析によると、人身売買業者は女性や子どもの被害者、特に少女に対してより多くの暴力を行使することが示唆されている。

これらのケースに記載されているあらゆる年齢の女性被害者は、人身売買の際に身体的または極度の暴力(性的暴力を含む)を受ける可能性が男性の3倍も高い。同じデータセットによると、子ども(女の子と男の子)は大人(男性と女性)より1.7倍、女の子は大人の女性より1.5倍、身体的または極端な暴力に遭う可能性が高いことが示されている。これは、関与する犯罪の種類や搾取の形態にかかわらず、被害者のすべての出身地域のケースに共通して言えることである。

より多くの不処罰=より多くの犠牲者

有罪判決を受けた人身売買組織は、多くの場合、ビジネスタイプの取り決めによって緩やかにつながった小規模なグループで、個人またはペアで行動している。しかし、近年の有罪判決を分析すると、地域を支配する大規模な犯罪組織が人身売買に関与する場合、組織化されていない犯罪者と比較して、より暴力的で、長期間にわたり、より遠距離でより多くの被害者を売買していることが判明している。

本報告書の特筆すべき点は、裁かれた事件で確認された被害者のほとんどが「自己救済」であることだ。裁判例を検討した結果、大半の事件で、搾取から逃れ、自ら名乗り出た被害者によって当局に持ち込まれていることが判明している。

人身売買の多様な形態

このような人身売買の被害者のプロフィールは、複合的な搾取の種類に応じて変化するのが一般的である。多様な形態の他の例としては、強制労働で搾取される被害者が挙げられる。

この形態の人身売買の被害者は圧倒的に男性で、とりわけ少年が68パーセントを占めている。UNODCが分析した強制犯罪のための人身売買に関わるケースサマリーには、万引き、スリ、その他車やガソリン、宝飾品の窃盗、薬物売買、様々な形態の詐欺が含まれていた。その他の形態の搾取のうち、搾取的な物乞いは、2020年に世界で確認された被害者の約1%を占めた。

また、2020年に確認された人身売買の被害者の1%は、強制結婚の対象になっていた。この犯罪は、UNODCに報告された裁判例の概要に記載されているように、様々な形態をとっている。1つの形態は、外国人男性との偽装結婚で越境した女性を搾取するものである。このような人身売買は、欧州連合(EU)加盟国にも存在する。

Map of Europe
Map of Europe

また強制結婚を伴う人身売買の形態には、有害な社会的慣習の中で結婚を強いられる少女に関するものがある。

その他の形態として、主に労働と性的搾取が混在する状況で被害者が発見されているケースがある。このような被害者の割合は、世界的に増加傾向にあり、2018年には全被害者の2%、2020年には10%を占めていた。

例えば、英国で発見された被害者全体の21%以上が強制労働と性的搾取の被害者で、その3分の2が女性、3分の1が男性であった。一方、米国で発見された被害者の8%以上がこの種の混合搾取を受けており、被害者のほとんどが女性であった。

UNODC と共有した、混合型人身売買の有罪判決に至った裁判例の概要の中には、女性が人身売買されて家事労働に従事し、その後、その後雇い主の男性に性的搾取を受けるというものがあった。また、バーで給仕をしていた女性が、客との性的関係を持つよう強要されたケースや、農場で強制労働させられ、労働時間後に雇用主や第三者と性交渉を持つことを強要される女性に関するものがあった。

「被害者の募集を専門に行うリクルート集団が存在し、彼らは通常女性を使い、『乳母として働ける。私の店で働いてもらう。教育を受けられる。』といった約束をして、若い女性を勧誘する。しかし、彼女たちが目的地に着くと、女性の搾取を専門とする他の犯罪集団に売り渡すのだ。このように、被害者を勧誘して、搾取集団に売り渡すリクルート集団による取引が横行している。」

「その瞬間、搾取グループは被害者を従わせ、引き留めるために暴力を行使し始める。騙して引き寄せ、暴力で搾取する。これは、小さなグループが国から国へと被害者を交換する、明らかな犯罪詐欺です。」とサリカ氏は強調した。

欧州内の人身売買の流れ

中・南東ヨーロッパで確認された人身売買被害者の80%近くは、自国内で人身売買された人々である。こうした国内人身売買被害者の割合は、半数に近かった2019年に比べ、2020年には大幅に増加していた。国内人身売買の被害者の多くは、性的搾取を受けた、若い女性または少女であった。これは、この地域で横行している国境を越えた人身売買の被害者にも当てはまり、こうした被害者らは、域内の近隣諸国や欧州全域に売買される傾向がある。

「欧州の数字を見ると、南東ヨーロッパは、イタリア、フランス、スペイン、英国、オランダといった西ヨーロッパの国々に売られる犠牲者の重要な供給地となっています。少女や女性は通常、性的搾取のために人身売買されている。」

「その他の搾取」のカテゴリーでは、南東ヨーロッパから西ヨーロッパおよびスカンジナビア諸国への強制犯罪のための人身売買も記録されている。また、違法な養子縁組も、明らかになった人身売買の犠牲者の2.5%を占めている。

戦争:人身売買の好機

Image source: Sky News
Image source: Sky News

戦争は、紛争地域内外の人身売買に影響を及ぼす。人身売買組織は、避難を余儀なくされ、経済的に困窮している人々を効率的にターゲットにしている。分析によると、2014年と15年にウクライナ東部で発生していた紛争から脱出を余儀なくされた人々と、その後の数年間にウクライナから西・中央ヨーロッパへ売られた人身売買の犠牲者が増加したことの間に関連性があることが示されている。

しかし今回の紛争(ロシアによる軍事侵攻)では、欧州連合(EU)がウクライナ国民に提供する定期移住制度により、2014年当時と比較して、人身売買の犠牲になるリスクは軽減される可能性がある。

「紛争地域内外の人身売買」について取り上げるのは、今回が初めてではない。2019年にリビアの紛争に関する特別報告書でも取り上げた。紛争は常に人身売買と密接な関連を持っている。紛争地で戦闘に駆り出される子ども兵士の問題は、アフリカをはじめ世界各地で起きている。また、ウクライナから紛争を逃れてきた人々、難民、あるいは国境内で避難生活を送る人々は、仕事、家族、家、コミュニティを失い脆弱な立場にあり、搾取や人身売買に遭遇しやすい。そうした人々が増えていることを国際社会に警告する必要がある。サリカ氏は、「2015年と比較して、リスク軽減策の1つは、ウクライナ難民が欧州連合で正規の移民になれることです。」と強調した。

その他、例えば中東やサブサハラアフリカで進行中の紛争も、人身売買のリスクを高めている。サリカ氏は、「西バルカンルートを特別な監視下に置くべきだ。」と指摘した。また、アフガニスタンの難民や移民は、トランジットや目的地の人身売買ルートにおいて脆弱な立場にあり、危険に晒されていることを強調した。また、バングラデシュやパキスタンから逃れてきた南アジアからの移民は、現在、トルコ、ギリシャに向かい、西バルカンルートで北上している。

弱者が逃亡中に遭遇する人身売買には、さまざまな種類がある。加害者は日和見的に被害者を見出している。例えば、女性、少女、少年、男性など、困窮した人を見つけては、その人を強制労働や性的搾取、物乞いに利用するのだ。また、こうした難民は、犯罪集団にも狙われている。

例えば、2018年7月、スロベニアでは、東アジア出身の4人を人身売買していた国際犯罪集団が起訴され、同国各地で多くの被害者を搾取していたことが判明した。彼らは長期間、コールセンターに拘束された被害者に、スロベニアにいる東アジアの国民に対して詐欺行為を行わせていた。犯人は被害者をコールセンターに閉じ込め、移動の自由を制限して外界から隔離し、親族との接触を制限・管理し、個人文書、金銭、電話などを没収していた。各コールセンターの責任者は、さまざまな規則、指示、要求、脅し、罰則を駆使して、被害者に犯罪的詐欺行為を強要していた。その後、2020年には、このグループの別の5人の犯罪者も人身売買の罪で有罪になっている。

2020年にモンテネグロで起きた類似の事件では、女性12人、男性25人を含む東アジア出身の37人の特定された被害者に影響を及ぼした。すべての被害者は、これらの国に居住する東アジア国籍の人々に対するオンライン詐欺に利用されていた。

Photo Credit: climate.nasa.gov
Photo Credit: climate.nasa.gov

気候変動の影響

気候変動は、一部の人々の人身売買に対する脆弱性を高めている。2021年には、2370万人が災害によって国内避難民となり、多くの人が気候による貧困から逃れるために国境を越えた。気候変動が人身売買に与える影響について、世界的な系統だった分析はないが、世界各地のコミュニティレベルの研究では、天候による災害が人身売買の根本原因であることが指摘されている。気温の上昇や天候の変化は、農業や天然資源の採取など、主要な経済部門に依存する貧しいコミュニティに深刻な悪影響を及ぼしている。

Aurora Weiss, UN Global Reporter
Aurora Weiss, UN Global Reporter

経済的苦難やその他の課題は、より多くの人々を人身売買の直接的な危険に晒すと同時に、他の人々が人身売買活動に従事する誘因を増大させている。

過去20年間で、気候関連の災害が発生する頻度は倍増しており、生計の喪失や避難民の増加につながっている。2021年だけでも、2370万人以上がこのような災害によって避難している。世界各地がますます居住不能になるにつれ、避難民は移動ルートで搾取される高いリスクに直面することになる。熱波、暴風雨、干ばつ、洪水、海面上昇などの「遅発性気候変動の影響」により、2050年までに推定2億1600万人が自国内での移住を余儀なくされる可能性がある。(原文へ

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森のゾウたちが炭素吸収を促進する―ゾウを殺してはならない

【ヤウンデ(カメルーン)IDN=ヌガラ・キラン・チムトム】

アフリカの森林に生息するゾウたちは、森を破壊するネガティブな存在と考えられてきたが、この大食漢たちは危機にある気候問題を救う重要な役割を実は果たしていると考えられるようになってきた。

アフリカの森林に生息するゾウは、かつて食事を通じて森林を破壊すると見られていたが、それが森林を健全に保ち世界的な気候問題の対処にも役立つものであると科学者らは考えている。

NGO「リバランス・アース」の共同創設者であり、1976年からゾウを研究しその保護を図ってきたイアン・レドモンド氏は、イタリアの生物学者ファビオ・ベンガジ氏がコンゴの熱帯雨林で行った比較研究について言及した。

Map of DRC
Map of DRC

「ベンガジ氏はコンゴ盆地の熱帯雨林2カ所を比較した。一つはゾウがいる森であり、もう一つは数十年前に象牙密猟者によってゾウが絶滅させられてしまった森だ。すると、ゾウのいる森では、地上の生物量、すなわち、森林における木の重量が7~14%多いことが分かった。」

森のゾウは直径が30センチに満たない木々や植物を一般的に食する。これらの木々は最終的に死に絶えるが、その結果として、より成長が遅く炭素吸収量の多い木々が水分や栄養分、光を得て、生存競争に勝つことができるのだという。

研究者らは、ゾウが長年にわたって小さな木を食べてきた森林がどのような姿になるかをモデルで予測した。彼らによれば、ゾウがいる森では、木の量が減ってそれぞれの木の密度が増し、地上の生物量が多くなったという。

レドモンド氏は、そのような森林ではより多くの炭素が吸収されるとIDNに説明した。研究者によると、現実の世界では、ゾウのいる森では、そうでない森と比較して、木々の密度が1平方メートルあたり75グラム増すという。

「ゾウは、食物を選って食べることで、食べた植物を消化し大量のフンをする。ゾウ1頭あたり1週間に平均でおよそ1トンのフンをする。森を歩き回りながらフンをすることで、それは第一級の有機肥料となる。つまり、ゾウが実際上行っていることは森の『雑草取り』だ。炭素吸収量の少ない木々や草、ツル植物を食べ、より炭素吸収量の大きい大型の木の栄養になるようなフンをするということだ。これが長期的にもたらす効果は、森林が炭素を吸収する能力を向上させるということである。」とレドモンド氏はIDNの取材に対して語った。

SDGs Goal No. 15
SDGs Goal No. 15

しかし、コンゴの森林のゾウは急激に減少している。東南アジアにおける象牙需要が当地において密猟を加速させているが、研究者らは同時に、もしゾウが生きていたらそれがどの程度の利益をもたらしたのかということについて知識が十分でないことも理由の一つであるとしている。

コンゴの森林にはかつて110万頭のゾウがいた。しかし、森林破壊と密猟によってかつての10分の1以下の頭数になってしまった。

ベンガジ氏は、もしゾウの頭数が以前と同等に復活したならば、森林1ヘクタールあたりの炭素吸収量は13トン増すことになるだろうと試算している。つまり、アフリカの森林のゾウは1平方キロメートルあたり6000トン以上の炭素吸収に寄与するということであり、これは25万本の木が吸収できる炭素量に匹敵する。

森林のゾウのもたらす経済的価値に関するパイオニア的研究を行った国際通貨基金のラルフ・チャミ博士は、ゾウを生かすことによって密猟者も地域社会も諸国も大きな経済的利益を引き出すことができると指摘している。

「密猟者には選択肢がある。ゾウを殺してカネを生み出すか、ゾウを生かして長期的にもっと多くのカネを得るか、という選択だ」とチャミ博士はIDNに取材に対して語った。

森林のゾウがもたらす経済的価値について試算したところ、ゾウ1頭当たり175万ドルにもなるとチャミ博士は述べている。ゾウを1頭殺して密猟者が得る平均4万ドルに比べるとはるかに高額だ。

 Forest elephant, Loxodonta africana cyclotis/ By dsg-photo.com - Own work, CC BY-SA 3.0
 Forest elephant, Loxodonta africana cyclotis/ By dsg-photo.com – Own work, CC BY-SA 3.0

「密猟は自暴自棄になった人の最後の手段です。密猟者は市民科学者になり、象の世話をするように再訓練を受け、象の密猟で得られるお金をはるかに上回る年俸を稼ぐことができるかも知れません。」と、チャミ博士は語った。

レドモンド氏は、自身の組織は「地球のバランスを取る」ことを目的としていると語った。地球の生態系的なバランスは崩れており、森林の破壊や産業の拡大、採鉱、道路や鉄道の敷設によってさらに状況は危機的になっている。

「森林は単に木が生えているところではありません。生態系そのものなのです。」とレドモンド氏は語った。森のゾウたちは、その生態系において極めて重要な役割を担っているのである。(原文へ

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グローバル核軍縮に向けた豪州・インドネシアパートナーシップの形成?

【シドニーIDN=ニーナ・バンダリ

原子力潜水艦取得に向けたオーストラリア(豪州)の動きに懸念が高まっているが、豪州とインドネシアは、世界の核不拡散・軍縮体制を強化し、アジア太平洋地域における実用的な核安全保障能力の構築で協力する方針を表明している。

豪州・米国・英国が2021年9月に締結した強化された安全保障協定である「AUKUS」によって、豪州は非核兵器国として初めて原子力潜水艦を取得することになる。

ICAN
ICAN

核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)豪州支部のマーガレット・ビービス博士は、「これらの潜水艦はよくない前例となるだろう。兵器級高濃縮ウランの非核兵器国への移転や取得が可能となってしまいます。また、潜水艦のような目に見えないプラットフォームにおいて保障措置を実行することは不可能です。」と語った。

国際戦略研究所の「ミリタリー・バランス」2021年版によると、現在、米・英・仏・ロ・中・印の6カ国が原子力潜水艦を保有している。

潜水艦にはディーゼル推進型と原子力推進型の2種類があるが、いずれにも核兵器を搭載することができる。

インドネシアとマレーシアは、予定される潜水艦には核兵器は搭載されないと豪州が主張しているにも関わらず、原潜取得計画が地域において核拡散のリスクを高めるとの懸念を示している。

ICAN豪州支部が昨年発表した報告書『トラブルの海』は、豪州による原潜取得計画は「不必要かつ時代錯誤的なもの」であり、「他国が同じような論理を取って、核不拡散条約(NPT)保障措置協定の第14条の抜け穴(=海軍用核燃料に用いる相当量の高濃縮ウランを保障措置の対象外とする)を利用して核物質や機微の技術を取得しようとする前例を生むだろう」と指摘した。

NPTには、不拡散、軍縮、(人間の健康や農業、食料・水の安全保障を支援する)原子力技術の平和的利用という三本柱がある。NPT保障措置協定の第14条は、条約締約国に対して、核物質保有の意図や、保有物質の量や構成、保障措置からの脱退の想定期間について通知するように義務付けている。

Photo: An artist rendering of the future U.S. Navy Columbia-class ballistic missile submarines. The 12 submarines of the Columbia-class will replace the Ohio-class submarines which are reaching their maximum extended service life. It is planned that the construction of USS Columbia (SSBN-826) will begin in the fiscal year 2021, with delivery in the fiscal year 2028, and being on patrol in 2031. Source: Wikimedia Commons
Photo: An artist rendering of the future U.S. Navy Columbia-class ballistic missile submarines. The 12 submarines of the Columbia-class will replace the Ohio-class submarines which are reaching their maximum extended service life. It is planned that the construction of USS Columbia (SSBN-826) will begin in the fiscal year 2021, with delivery in the fiscal year 2028, and being on patrol in 2031. Source: Wikimedia Commons

インドネシアのジョグジャカルタ市にあるガジャ・マダ大学国際関係学部のムハディ・スギオーノ上級講師は、IDNの取材に対して、「原子力潜水艦がNPTと両立可能かどうかについては争いがあり、インドネシアは2022年のNPT再検討会議に提出した作業文書で、豪州の原潜取得計画に懸念を示し、原潜をIAEAの保障措置・査察の対象にすべきだと要求しました。同国は、特に海洋国家としての立場から、豪州の原子力潜水艦計画に大きな関心を寄せています。AUKUSは、この地域にとって深刻な課題となっています。」と、語った。

2月9日に豪州のキャンベルで開催された豪州・インドネシア外務・防衛閣僚会合後の共同声明では、IAEAの創設メンバーである両国は「NPTを維持する上で重要な役割と使命を果たすIAEAの確固たる支持者であり続ける」と述べた。

4人の閣僚は「核兵器なき世界実現の希望と、グローバルな核不拡散・軍縮体制、とくにその礎石であるNPTの強化に向けた我々のコミットメントを強調する」と述べ、「アジア太平洋保障措置ネットワーク(APSN)の文脈において、実践的な保障措置能力の構築に向けた協力を歓迎する。」と述べた。

豪州とインドネシアは2009年、日本・韓国とともにAPSNを創設し、アジア太平洋地域における原子力保障措置能力の地域的ネットワーク構築をめざしている。

ビービス博士はIDNの取材に対して「インドネシアは核兵器禁止(核禁)条約に署名することによって核軍縮への真のコミットメントを証明しました。もし豪州が軍縮に真剣ならば、インドネシア同様に核禁条約に署名するという選挙公約を尊重する必要があるだろう。」と語った。

「豪州は、核兵器の使用を是認する米国の『核の傘』に依存している。米国の同盟国であり続けながらも、大量破壊兵器の中で最悪なこの無差別的で壊滅的な兵器を拒絶することは依然として可能です。ニュージーランド、タイ、フィリピンはすべて核禁条約に署名しているが米国の同盟国でもあります。」とビービス博士は指摘した。

2021年1月22日に発効した核禁条約は、核兵器の開発、配備、保有、使用、使用の威嚇も含め、核兵器を初めて包括的に禁止した条約である。市民社会や多くの非核兵器国が同条約を歓迎したが、核兵器国やその同盟国は、NPTを基盤とした既存の核秩序を同条約が揺るがすとみている。

Photo: Applause after the adoption of the political declaration and action plan as 1MSPTPNW ended on June 23 in Vienna. Credit: United Nations in Vienna
Photo: Applause after the adoption of the political declaration and action plan as 1MSPTPNW ended on June 23 in Vienna. Credit: United Nations in Vienna

豪州は2022年6月にオーストリアで開催された第1回核兵器禁止条約締約国会合にオブザーバー参加した。

豪州のペニー・ウォン外相は豪州のNPT批准50周年を記念して2023年1月23日に発表した論説で、「我が国は、核禁条約が2年前に発効したことを歓迎します。同条約は検証制度を備えるべきであり、NPTの成功を下支えしてきたのと同じ普遍的な支持を獲得すべきであると考えますが、核兵器なき世界という同条約の理念は共有しています。」と述べている。

2022年6月29・30両日、核脅威イニシアチブ(NTI)は、「核不拡散・軍縮を求めるアジア太平洋リーダーシップネットワーク」(APLN)と共催で、ジャカルタでワークショップを開催した。その概要報告書によると、「核戦力が拡大・近代化されており、規制がなくなりつつある国際環境の中で、非核両用兵器のような新たな破壊的技術が拡散している。」「NPTが義務付ける軍縮のペースをめぐり、核兵器国と非核兵器国の間の溝が拡大している。」という懸念を共有した。

インドネシア外務省アジア・太平洋・アフリカ局のアブドゥル・カディール・ジャイラニ局長は、IDNの取材に対して、「インドネシアは核兵器の禁止が重要だと考えています。核禁条約自体で核兵器が廃絶できるわけではないが、核兵器の使用をさらに非正当化し、その使用に反対する国際規範を強化することに貢献するものである。インドネシアは、この目的のためにできるだけ早く条約を批准したいと考えています。」と語った。

ジャイラニ局長はまた、「この条約は、すべての国が平和利用のために原子力技術を使用する権利、特に開発途上国の権利を保護することになります。」と語った。

2022年初めの時点で、米国・ロシア・英国・フランス・中国・インド・パキスタン・イスラエル・北朝鮮の9カ国が合計で1万2705発の核兵器を保有しており、そのうち9440発が軍事的に使用可能な状態で備蓄されていると推定されている。

ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の2021年の年鑑によると、これらの核弾頭のうち約3732個が作戦部隊に配備され、そのうち約2000個が作戦上の厳戒状態に保たれていると推定されている。(原文へ

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This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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